JP7410255B2 - 飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境保護の観点から、海洋プラスチックごみ問題が取り沙汰されるようになってきた。海洋プラスチックごみは世界中で年間800万トンに達し、その内約半数はペットボトルを含めたパッケージングによるものとされている。そのため、海洋プラスチックごみ削減に向けた取り組みが各国で進んでいる。日本においても循環型社会の形成に向けた法改正が進み、リサイクル性に優れたアルミ缶への注目が高まっている。そのような状況の中で、市場から回収された使用済みアルミニウム飲料缶(以下Used Beverage Can=UBCと呼称)からなるアルミニウムスクラップを再利用して再び飲料缶用のアルミニウム合金板を製造するニーズは非常に高い状況にある。UBC配合率の高いアルミニウム合金板を製造すると、アルミニウム新地金を採用する場合に比べ、COの発生量を大幅に抑制し、環境負荷を低減できる。
しかし、一般的に飲料缶は缶ボデイ(缶胴)にAl-Mn系(3000系)合金、缶エンド(缶蓋)にAl-Mg系(5000系)合金を用いた2ピース缶の組み合わせであるため、UBCを再溶解して缶ボディに用いると缶蓋の分だけMg添加量が高くなる傾向にある。アルミニウム合金に含まれるMg量は缶の成形性に大きな影響を及ぼす。
Mg量が高いと材料強度および成形加工時の加工硬化が大きくなり、アルミ缶のDI成形性、ネック部成形性が低下する。特にアルミボトル缶はネック成形での縮径率が大きく、加工硬化性の大きな材料では成形時の割れ等の不具合に繋がる課題があり、UBC配合率の高いアルミニウム合金板をアルミボトル缶などに適用する事は技術的な難しさがあった。
例えば、以下の特許文献1には、飲料缶のボトム成形性やボトム強度を勘案してアルミニウム合金の組成を調整し、均質化条件や圧延条件などの製造条件を調整することで飲料缶ボディ用に優れたアルミニウム合金板を提供する技術が開示されている。
また、以下の特許文献2には、30%以上のリサイクル内容物を含む2000系~7000系の溶融アルミニウム合金から、第1熱間圧延ステップでホットバンドを鋳造し、次いで第2の熱間圧延により厚さを50%減少させたゲージを得る技術が開示されている。
特許第6850635号公報 特許第6964770号公報
本発明者らは上記課題に鑑み、UBC配合率の高いアルミニウム合金板を飲料缶材に適用することを目的に、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、熱処理などアルミニウム合金板の製造工程を最適化する事で材料の異方性、集合組織、各添加成分の固溶・析出状態、結晶粒サイズ、加工硬化性、熱軟化性などを適宜制御することで、UBC配合率の高いアルミニウム合金板の課題であった缶成形性を高い次元で満足できる技術を得る事ができ、本願発明に到達した。
(1)本形態の飲料缶用アルミニウム合金板は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備し、質量比で80%以上のアルミニウムリサイクル材を含むアルミニウム合金溶湯からの鋳造材であるアルミニウム合金の素板からなり、素板表面においてCube方位を持つ結晶粒の方位密度と、Goss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が2以上であり、さらに圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下であることを特徴とする。
(2)本形態の(1)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板では、素板表面においてCube方位を持つ結晶粒の方位密度とGoss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が5以上であり、さらに圧延方向における伸びが5.0%以上であることが好ましい。
(3)本形態の(1)または(2)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板では、前記素板において、圧延方向に対し、0°、45°、90°方向のそれぞれの方向について引張試験により求められる耐力の最大値から最小値を引いた値が15MPa以下であることが好ましい。
(4)本形態の(1)または(2)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板において、前記素板の質量比でMg固溶度が1.0~1.2%、Si固溶度が0.10~0.30%であり、前記素板の導電率が38~41%IACSであることが好ましい。
(5)本形態の(3)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板において、前記素板の質量比でMg固溶度が1.0~1.2%、Si固溶度が0.10~0.30%であり、前記素板の導電率が38~41%IACSであることが好ましい。
(6)本形態の(1)または(2)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板において、前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることが好ましい。
(7)本形態の(3)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板において、前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることが好ましい。
(8)本形態の(4)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板において、前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることが好ましい。
(9)本形態の(5)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板において、前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることが好ましい。
(10)本形態の飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部Alと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊であり、使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を質量比80%以上となるように原材料に投入したアルミニウム合金溶湯からの鋳造材であるアルミニウム合金の鋳塊を鋳造後、均質化処理を500~600℃で4~10時間加熱する条件で行ない、均熱処理を470~560℃で1時間以上加熱する条件で行ない、熱間粗圧延に続いてシングルスタンド圧延機を用いて、1パス目100~400m/minの圧延速度、350~450℃の巻取温度、2パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻取温度、3パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻取温度で熱間仕上圧延を行い、仕上板厚を2.0~3.6mmとし、その後冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍、最終焼鈍を行い板厚0.20~0.55mm、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下である飲料缶用アルミニウム合金板を製造することを特徴とする。
(11)本形態の飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部Alと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊であり、使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を質量比80%以上となるように原材料に投入したアルミニウム合金溶湯からの鋳造材であるアルミニウム合金の鋳塊を鋳造後、均質化処理、均熱処理および熱間圧延を行った後、次いで、行う冷間圧延の途中で連続焼鈍装置を用いて1回または2回、300~550℃の温度に5~60秒保持する連続焼鈍を行い、最終冷間圧延率を40~95%に設定して前記冷間圧延を行い、最終冷間圧延後に昇温速度3℃/min以上、保持温度100~200℃、保持時間1~10時間、冷却速度10℃/min以上の条件で最終調質焼鈍を行い、板厚0.20~0.55mm、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下である飲料缶用アルミニウム合金板を製造することを特徴とする。
(12)本形態の飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法は、前記アルミニウム合金の鋳造時に投入する原材料の全てについて、市場から回収した使用済みアルミ缶(UBC)と、飲料缶用アルミ材の製造工程及び製缶工程で発生する工程端材を少なくとも含むアルミニウムリサイクル材を用いて、少なくとも焙焼、再溶解工程を経るリサイクル工程により作製し、前記鋳造に用いる前記(10)または(11)に記載の飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法に関する

本発明によれば、Cube方位を持つ結晶粒の方位密度と、Goss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が2以上であり、さらに圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下の飲料缶用アルミニウム合金板を提供できる。この飲料缶用アルミニウム合金板であれば、例えばアルミボトル缶に適用した場合、DI成形性とボトム成形性、ネック成形性のいずれにも優れ、座屈強度も高い特徴を有する。
本発明に係る製造方法において、特定組成のアルミニウム合金を用い、特定条件の均質化処理および均熱処理と熱間圧延条件および冷間圧延条件と焼鈍条件の調整により、耐力と伸びに優れ、良好な平均結晶粒径の飲料缶用アルミニウム合金板を製造できる。
本発明に係る飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法によれば、アルミニウム合金の鋳造時に投入する原材料について、使用済みアルミ缶と工程端材を含むリサイクル材を焙焼し、再溶解を経るリサイクル工程により作製できる。これにより、使用済みアルミ缶と工程端材を有効活用し、リサイクル効率を向上させながら飲料缶用として優れたアルミニウム合金板を得ることができる。
本発明に係るアルミニウム合金板の第1実施形態を示す平面図である。 本発明に係る製造方法を実施する際に、熱間圧延工程において用いる装置と工程を示す説明図。 本発明に係る製造方法の実施に用いる連続焼鈍装置の一例を示す概略構成図。 焙焼炉と溶解炉を備えるアルミニウム缶リサイクル工程の一例を示す説明図。 DI缶の製造方法の一例を示す工程図。 DI缶を示す部分断面図。 実施例において作製したボトル缶を示す部分断面図。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態の一例について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
図1は、本発明に係るアルミニウム合金板の一実施形態を示す平面図である。
図1に示す飲料缶用アルミニウム合金板1は、後述する鋳造法により得られた鋳塊を熱間圧延し、更に冷間圧延して得られた素板からなり、図1では一定幅を有し長さ方向を左右に向けた帯状体の素板として描かれている。
このアルミニウム合金板1の圧延方向は図1に示す左右方向(アルミニウム合金板1の長さ方向)であり、便宜的に圧延方向に対し0°の方向は図1の左右方向を意味し、圧延方向に対し45°方向とは図1に示す45°と記載した矢印方向を意味し、圧延方向に対し90°方向とは図1に示す90°と記載した矢印方向を意味する。アルミニウム合金板1において圧延方向に対し90°方向とは、換言すると帯状のアルミニウム合金板1の幅方向(図1の紙面上下方向)を意味する。
次に、本実施形態に係る飲料缶用アルミニウム合金板1の組成について説明する。
本実施形態の飲料缶用アルミニウム合金板1は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備するアルミニウム合金の素板からなる。
以下、本実施形態で使用するアルミニウム合金1の組成限定理由について説明する。
なお、本明細書において記載する各元素の含有量は、特に限定しない限り質量%であり、また、特に規定しない限り上限と下限を含むものとする。例えば0.90~1.10%とする表記は0.90%以上1.10%以下を意味する。また、温度や時間等の範囲を表記する場合も、特に明記しない限り、上限と下限を含むものとする。例えば、500~600℃は500℃以上600℃以下を意味し、1~2時間は1時間以上2時間以下を意味する。
「Mn:0.90~1.10%」
Mnは、Al-Mn-Fe系、Al-(Mn,Fe)-Si系金属間化合物等を形成し、晶出層及び分散層となることにより分散硬化作用を発揮し、これにより飲料缶用アルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Mn含有量が0.90質量%未満であると上記金属間化合物の分散状態が不十分となり、所望する硬化特性が得られなくなることから耐力が低下する。Mnの含有量が1.10質量%を超えると上記金属間化合物の割合が増加することにより耐ゴーリング性(DI加工時の耐焼き付き性)が低下する。
「Mg:1.20~1.50%」
Mgは、固溶硬化作用を有し、圧延加工時に加工硬化性を高めるとともに、SiやCuと共存することで分散硬化作用及び析出硬化作用を発揮して、飲料缶用アルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Mgの含有量が1.20質量%未満であると、十分な耐力が得られず、缶体強度が不足する。また、使用済みアルミ缶と工程端材を含むリサイクル材の希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Mgの含有量が1.50質量%を超えると分散硬化作用及び析出硬化作用により耐力が高くなりすぎて、飲料缶用アルミニウム合金板1の伸びが低下する他、成形性も悪化する。
「Si:0.25~0.40%」
Siは、同時に含有されるMg等とともに金属間化合物を形成し、固溶硬化、分散硬化作用及び析出硬化作用で飲料缶用アルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Siの含有量が0.25質量%未満であると十分な耐力が得られず、また、使用済みアルミ缶と工程端材を含むリサイクル材の希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Siの含有量が0.40質量%を超えると分散硬化作用及び析出硬化作用により耐力が高くなりすぎて、飲料缶用アルミニウム合金板1の伸びが低下する他、成形性も悪化する。
「Fe:0.35~0.55%」
Feは、Al-Mn-Fe系金属間化合物の析出量を増加させ、結晶を細分化させることにより、飲料缶用アルミニウム合金板1の耐力、伸びを向上させる。
Feの含有量が0.35質量%未満であると結晶粒粗大化により十分な伸びが得られないとともに使用済みアルミ缶と工程端材を含むリサイクル材の希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Feの含有量が0.55質量%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が生成し、成形時のフランジ割れ等に繋がる。
「Cu:0.20~0.45%」
Cuは、固溶硬化により飲料缶用アルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Cuの含有量が0.20質量%未満であると十分な耐力が得られないとともに、使用済みアルミ缶と工程端材を含むリサイクル材の希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Cuの含有量が0.45質量%を超えると耐力が高くなりすぎて、飲料缶用アルミニウム合金板1の成形性が悪化する他、耐食性が低下する。
本実施形態のアルミニウム合金板1は、一例として、素板表面においてCube方位を持つ結晶粒の方位密度と、Goss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が2以上であることが好ましい。
さらに、本実施形態のアルミニウム合金板1は、圧延方向における耐力が220~320MPa、0°方向の伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下であることが好ましい。前述の伸びについては、5.0%以上であることがより好ましい。
本実施形態のアルミニウム合金板1は、一例として、圧延方向に対し0°方向、45°方向、90°方向のそれぞれの方向について、引張試験により求められる耐力の最大値から、最小値を引いた値が、15MPa以下であることが好ましい。前述の耐力の最大値から最小値を引いた値は、10MPa以下であることがより好ましい。
本実施形態のアルミニウム合金板1は、一例として、素板の質量比でMg固溶度が1.0~1.2%、Si固溶度が0.10~0.30%であり、前記素板の導電率が38~41%IACSであることが好ましい。
本実施形態のアルミニウム合金板1は、一例として、素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、0°方向の伸びが3.0%以上であることが好ましい。
上述の特徴を有するアルミニウム合金板1は、アルミボトル缶用として用いた場合、DI成形性とボトム成形性、ネック成形性のいずれにも優れ、座屈強度も高い特徴を有する。
「アルミニウム合金板の製造方法」
図1に示す飲料缶用アルミニウム合金板1を製造するには、上述の組成を満足するアルミニウム合金溶湯を作製し、このアルミニウム合金溶湯を用いる鋳造法によりアルミニウム合金鋳造材を得る。なお、この鋳造法に用いる合金溶湯を作製するための原材料について、後述するリサイクル材を用いることができる。リサイクル材を用いる方法については後に詳しく説明する。
次に、前述のアルミニウム合金鋳造材に対し均質化処理、均熱処理を施した後、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上圧延による熱間圧延を行い、後に冷間圧延を行うことにより所望の板厚の飲料缶用アルミニウム合金板を得ることができる。
前記の工程において、冷間圧延の途中で連続焼鈍装置を用いて後に詳述する1回または2回の連続焼鈍(CAL焼鈍)を行い、最終冷間圧延率を特定の範囲に設定して冷間圧延を行い、最終冷間圧延後に後に詳述する最終調質焼鈍(最終焼鈍)を行う。
以上の工程により、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下であるアルミニウム合金板1を得ることができる。
上述の鋳造材の厚さは、例えば500~600mm程度とすることができる。次に、鋳造材の面削を行い、鋳造材の表面を1~25mm程度切削し、面削体を作製する。なお面削は後述する均質化処理の後に行っても良い。
「均質化処理」
上述のように作製した面削体に均質化処理を施す。均質化処理は一般に、溶湯の凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出、凝固によって形成された準安定相の平衡相への転移などのために行われる。
均質化処理において、均質化温度を500~600℃の範囲内にすることができる。均質化温度が500℃未満では後述の連続焼鈍の効果が得られず、後述の熱間圧延工程や冷間圧延工程においてクラックが発生し易くなる。また、均質化温度が600℃を超えると、鋳塊が溶融するおそれがある。
均質化処理において、均質化温度に保持する時間(均質化時間)は4時間以上10時間以下とすることが好ましい。均質化時間が4時間未満では、均質化が充分に進行しない場合がある。しかし、均質化時間が長すぎても効果はなく生産効率が低下する。以上の観点から、好ましい均質化時間は4~10時間の範囲内である。この均質化処理は、均質化時間が比較的長いので、通常、バッチ方式の炉中に設置することで行われる。
「均熱処理」
本実施形態において、均質化処理後の面削体を500~560℃まで冷却し、所定時間保持する均熱処理後、熱間圧延を開始する。470~560℃の温度範囲での保持時間(均熱時間)は、1時間以上行うことが望ましい。
「熱間圧延」
熱間圧延は、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上圧延からなり、本実施形態においては、例えばシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機(シングルスタンド圧延機)を使用して熱間仕上圧延を行うことが好ましい。
熱間圧延工程においては、図2に示すように、熱間粗圧延機20を用いて板厚20mm程度まで熱間粗圧延した後、熱間仕上圧延機30を用いて板厚2.0~3.6mmまで熱間圧延する。
図2に示す熱間粗圧延機20は、例えば上下のワークロール21、22、およびバックアップロール23、24と、複数の搬送ローラが配列された搬送路4、6を備え、搬送されてきたアルミニウム合金の板材5をワークロール21、22の間に通して目的の厚さに圧延する装置である。
図2において、ワークロール21、22の前後両側の搬送路4、6から繰り返しアルミニウム合金の板材5をワークロール21、22の間に供給して順次粗圧延することにより、熱間粗圧延機20は板材5を必要な厚さまで圧延して板材7とすることができる。
図2に示す熱間仕上圧延機30は、シングルミルのリバース式熱間仕上圧延機であり、例えば上下のワークロール31、32およびバックアップロール33、34と、これらロールの入り側に設置されたリール型の送出巻取装置35と、出側に設置されたリール型の送出巻取装置36とを具備している。
熱間仕上圧延機30は、送出巻取装置35から送り出してワークロール31、32間を通過させて熱間圧延した板材を送出巻取装置36で巻き取る操作と、送出巻取装置36から再度ワークロール31、32間を通過させて熱間圧延した板材を送出巻取装置35で巻き取る操作を繰り返し必要回数行うとともに、圧延操作の度に徐々にワークロール31、32間の間隔を調節することにより、アルミニウム合金の板材を目的の板厚まで熱間仕上圧延する装置である。
均熱処理後、均熱炉から取り出した鋳塊(スラブ)は通常直ちに熱間粗圧延を開始するが、スラブ温度が500℃未満にならなければ、熱間粗圧延開始を遅延してもよい。熱間粗圧延のパス数は、スラブ厚さ、仕上厚さ、スラブ幅、合金組成などに依存するが、十数パス~二十数パスの範囲が一般的である。
そのため、搬送テーブルで保持するには、板厚が十数mm以上必要である。したがって、粗圧延機から仕上圧延機に板を送る際の最低板厚は、コイル重量や板幅に依存するが、工業的に用いられている重量・幅の場合、16mm程度以上であることが好ましい。
また、粗圧延機から仕上圧延機に送る際の板厚が厚すぎる場合には、仕上圧延機での圧延パス回数の増加を招き、生産性を低下させる。したがって、仕上圧延機に送る際の板厚の上限は40mm以下であることが好ましい。上述の厚さ上限から下限の範囲内までアルミニウム合金の板材が薄くなった場合に、図2に示す構成のシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機30で熱間仕上圧延を行うことができる。
圧延機の前後両側に巻取装置があるシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機(図2に示す熱間仕上圧延機30)を使用することにより、熱間仕上板厚を小さくすることができる。
従って、以降の冷間圧延の圧下率を小さくできるので、冷間圧延のパス回数を削減でき、生産性を向上させることができる。これに対し、例えば、巻取装置が片方にだけ設置された熱間仕上圧延機を用いた場合、搬送テーブル上で保持できる板厚に最小値が存在するために、熱間圧延で圧延可能な最小板厚が増加することになる。このため、熱間圧延後の冷間圧下率が増加する。
前述の如く、熱間圧延の仕上り板厚の薄肉化は、冷間圧延パス回数の削減による生産性の向上に寄与する。そのため、本実施形態において、熱間仕上圧延の仕上板厚は、2.0~3.6mmの範囲内とすることが好ましい。
熱間仕上圧延機30により、例えば、1パス目100~400m/minの圧延速度、350~450℃の巻取温度、2パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻取温度、3パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻取温度で熱間仕上圧延を行うことができる。
「冷間圧延」
次に、熱間圧延後の板材に対し、最終冷間圧下率40~95%の範囲内となるように冷間圧延を施す。最終冷間圧延の圧下率を40~95%の範囲内とすることにより、必要な機械的性質、特に塗装焼付け処理後の耐力が好適な範囲となるとともに、缶成形において異方性、ネック成形性がバランスよく得られるという効果がある。
最終冷間圧延の圧下率を40%未満にすると、缶成形による加工硬化が進み、ネック成形性が悪化する。
冷間圧延の圧下率について95%を超えると、加工率が過剰となって異方性が悪化するとともに、板材の強度が高くなり過ぎて後述するDI成形性が損なわれるおそれがある。
冷間圧延により、板厚0.20~0.55mmの飲料缶用アルミニウム合金板を得ることができる。
「冷間圧延途中の1回または2回の中間焼鈍」
中間焼鈍工程は、前記冷間圧延途中の板材に対し、図3に基本構成を示す連続焼鈍装置を用いて、加熱速度10~200℃/秒の範囲で加熱し、保持温度300~550℃の範囲(300℃以上、550℃以下の範囲)に5~60秒保持した後、冷却速度10~200℃/秒の範囲で冷却することで行う。
この中間焼鈍工程は、アルミニウム合金板材を半軟化状態にもたらすものであって、焼鈍後の耐力:YS(Yield Strength)を好適な範囲とすることが好ましい。
焼鈍温度が300℃未満では軟化が不十分で、冷間加工不良となり易い問題がある。焼鈍温度が550℃を越えるか、または、保持時間が60秒を越えると溶質元素の固溶度が過剰になり、最終製品の機械的性質が高くなり、飲料缶のネック成形性が悪化する。さらに保持時間が60秒を超えると生産性が低下する。
図3に連続焼鈍装置(Continuous Annealing Line:略称CAL)の基本構成の一例を示すが、この例の連続焼鈍装置40は、供給ロール41から長尺のアルミニウム合金の板材42を引き出して緩衝装置43を介し数10m~100m程度の長い炉本体44に供給し、この炉本体44内で移動中に前記の条件で焼鈍し、焼鈍後に炉本体44から板材42を引き出し、緩衝装置46を介し巻取ロール47に巻き取ることができる装置である。この連続焼鈍装置40によれば、炉本体44を通過するアルミニウム合金の板材42を連続単体処理できるために、バッチ式の焼鈍炉よりもより正確な加熱条件と冷却条件で中間焼鈍処理を行うことができる。
連続焼鈍装置40であるならば、アルミニウム合金の板材42を供給ロール41に巻き付けた状態のコイルの幅や径が異なっても、換言するとアルミニウム合金の板材42の幅や厚さ、処理するべき長さが異なっていても、製造したい順番に焼鈍処理できるために、同一の大きさのコイルのみを焼鈍炉に搬入して焼鈍していたバッチ式の焼鈍炉の場合に比べて中間在庫の増加を抑えることができる。
「最終調質焼鈍」
最終冷間圧延後に最終調質焼鈍を行う。最終調質焼鈍は、最終冷間圧延後に昇温速度3℃/min以上、保持温度100~200℃、保持時間1~10時間、冷却速度10℃/min以上の条件で行うことが望ましい。
昇温速度3℃/min未満ではアルミニウム合金板の結晶粒界に微量元素が析出するおそれがあり、アルミニウム合金板が局部的に加工不良となるおそれがある。
保持温度が100℃未満では十分な効果が得られずアルミニウム合金板の成形性が不良となるおそれがあり、保持温度が200℃を超える場合は析出が過剰となりアルミニウム合金板の成形性が不良となるおそれがある。
保持温度が1時間未満ではアルミニウム合金板の成形性不良となるおそれがあり、保持温度が10時間を超えるようでは生産性が低下する問題がある。
冷却速度が10℃/min未満ではアルミニウム合金板の結晶粒界に微量元素が析出するおそれがあり、アルミニウム合金板が局部的に加工不良となるおそれがある。
最終調質焼鈍を行うことで圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下の飲料缶用アルミニウム合金板1を得ることが可能となる。
以上説明の製造方法に従い、前述の組成のアルミニウム合金板からアルミボトル缶ボディを製造すると、前述のアルミニウム合金板はDI成形性とボトム成形性、ネック成形性のいずれにも優れるので、シワやクラックなどの欠陥の無い、座屈強度も高いアルミボトル缶ボディを製造できる特徴を有する。
なお、前述の組成のアルミニウム合金板から飲料缶を製造する場合、アルミニウム合金を溶製するための合金溶湯について、得られるアルミニウム合金鋳塊に対し80%以上の割合(質量比)となるように、使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と後述する工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を原材料として投入し、鋳造することが好ましい。
前述の組成のアルミニウム合金板から飲料缶を製造する場合、鋳造用原材料として所定組成の母合金などを用いることなく、以下に説明するアルミニウムリサイクル材を100%用いることもできる。
例えば、市場から回収した使用済みアルミ缶(UBC)と、飲料缶用アルミ材の製造工程及び製缶工程で発生する工程端材などのリサイクル材について、焙焼、再溶解工程などを経たものを100%使用し、前述の飲料缶用アルミニウム合金板を製造してもよい。
使用済みアルミ缶として例えば、缶蓋および缶ボディからなる2ピース缶、ボトル缶およびボトルキャップ、アルミカップなどが用いられる。前記工程端材として例えば、鋳造・圧延などの板材製造工程途中で発生する工程スクラップや、板材を種々の飲料缶に成形する際の打ち抜き端材(スケルトン)、加工端材などが挙げられる。
以下、図4に示す回収再生設備を用いるリサイクル工程に基づき、飲料缶用アルミニウム合金板を製造する方法の一例について説明する。
市場から回収した使用済みアルミ缶などのアルミスクラップは、トラック等の運搬手段により搬入された塊状の使用済みアルミ缶を主体とする回収物を受け入れる図4に示す受入設備Aを備えた回収再生設備8に搬入される。回収物は一例として、プレスにより一定の大きさのブロック状に圧縮成形された複数のアルミニウム缶の集合体である。
回収物は、回収再生設備8の敷地内に設けられている置場9に集積される。置場9には、一部成形されないまま回収されたアルミ缶や前述の工程端材も集積される。
なお、置き場9に集積する前の段階において回収物を図示略の薫蒸装置を用いて水蒸気により薫蒸処理することができる。この薫蒸処理により、回収物に含まれている異臭の原因となる微生物を死滅させる。あるいは、回収物の内部に含まれる蟻、ゴキブリ等やその卵を死滅させることができる。
回収再生設備8は、前記回収物を破砕するブレーカー(破砕機)2と、この破砕機2によって破砕された回収物から、磁力、風力を用いて非アルミニウム材を分離する選別手段3と、この選別手段3を経たアルミ缶を焙焼処理するロータリーキルン(焙焼炉)4を備えている。また、ブレーカー2の前段に粗破砕機Bを設け、回収物を一端粗破砕した後、ブレーカー2により破砕することもできる。
選別手段3は磁選機3aと風力選別機3bを備え、一次ストックホッパー11を介しロータリーキルン4にアルミ缶の破砕物が投入される。ブレーカー2からロータリーキルン4までの各設備間にはベルトコンベアー10a、10b、10c、10dが設けられ、各設備で処理されたアルミ缶あるいはアルミ缶の破砕物が搬送される。
磁選機3aは回収物中にスチール缶(鉄缶)が混入していた場合、破砕片の中からスチール缶による着磁性の破砕片を除去するために設けられている。風力選別機3bは破砕物に圧縮空気を送ってアルミ缶の破砕片よりも比重の軽いプラスチック片や紙くずなどのくずを吹き飛ばして除去するために設けられている。なお、風力選別機3bにおいては、アルミ缶より重量が大きい銅やステンレス等の非着磁性の金属やコンクリート片などの夾雑物を分離除することもできる。これらは比重の大小により吹き飛ばされる場合の距離が相違するため、吹き飛ばす際の距離の大小に応じ選別することができる(選別工程)。
このようにして、分離されたアルミ缶またはその破砕物の表面には、塗料や樹脂層などの有機物が付着しており、そのまま溶解処理すると塗料や樹脂層の燃焼により溶湯中にガスが激しく発生する。ガスが発生すると、アルミニウムの酸化ロスが増加する問題がある。更には、塗料中のTiOから溶湯中にTiが混入し、アルミニウムと包晶反応による初晶金属間化合物を晶出し、後の加工工程における割れ等の欠陥の原因となる。
そこで分離されたアルミ缶またはその破砕物をロータリーキルン4により焙焼し、塗料や樹脂層を除去する(焙焼工程)。
先の選別工程において選別されたアルミ缶またはその破砕物を1次ストックホッパー11に蓄え、次に、コンベアー10dによって一定量毎にロータリーキルン(焙焼炉)4へ投入することができる。
ロータリーキルン4は内部に使用済みアルミ缶を攪拌する攪拌装置を有する。ロータリーキルン4により目的の温度に加熱焙焼した後のアルミ缶の塊が連続的にあるいは間欠的にコンベアー10eを介し振動篩12に排出される。
ロータリーキルン4ではアルミニウムの融点より低い温度で焙焼することにより、アルミ缶表面に付着していた塗料や樹脂などの有機物を直接加熱して気化させ、あるいは燃焼させて炭化物や酸化物とすることができる。
次に焙焼したアルミ缶あるいはその破砕物を200~550℃程度の温度に維持したまま、コンベアー10eにより振動篩12に供給し、前述の炭化物や酸化物を分離する(分離工程)。
回収再生設備8は、ロータリーキルン4から排出されるアルミ缶を溶解処理する溶解炉5と、この溶解炉5において得られたアルミニウムを溶解状態に保持するとともに合金調整などを行う保持炉6と、この保持炉6において合金調整された溶湯からスラブを得る鋳造機7を備える。また、これらを含む装置類が、同一の敷地内に配置され、回収再生設備8が構成されている。
振動篩12を通過したアルミ缶あるいはその破砕物を順次ベルトコンベアー10fによって溶解炉5に投入し、溶解する(再溶解工程)。
また、飲料缶用アルミ材の製造工程及び製缶工程などで発生する前述の工程端材も溶解炉5に投入し、アルミ缶とともに溶解することができる。
この溶解工程では、溶解炉5に対し、使用済みのアルミ缶と前述の工程端材をまとめてリサイクル材として投入し、溶解することができる。
溶解炉5の排出側には、トラフ13を介し溜め炉14が接続され、この溜め炉14の吐出側がトラフ15aによって保持炉6の投入側に接続されている。保持炉6の下流側にはトラフ15bを介し鋳造機7が設けられている。
また、溶解炉5と溜め炉14と保持炉6にはそれぞれドロス回収部(図示略)が設けられ、これらのドロス回収部がドロス搾り機16に接続され、ドロス搾り機16に残灰ホッパー17が接続されている。ドロス搾り機16は溶解炉5と溜め炉14と保持炉6のドロスから必要な金属を回収する目的で設けられている。各炉から回収したドロスから必要な金属を除去した残灰は残灰ホッパー17に回収される。
なお、回収されたアルミ缶は、缶重量の80%以上が、通常Al-Mn系合金であるA3004材などによって成形されたボディ材によって占めているものの、当該アルミニウム缶を構成するエンド材としてはAl-Mg系合金であるA5052A、5082材またはA5182材等が使用されており、またタブとしてはA5182材等が用いられている。
そこで、使用済みアルミ缶を再生して、新規のアルミ缶として使用する場合には、合金成分を調整する必要がある場合がある。そこで、上記保持炉6において、再利用に要請されるアルミニウム合金となるように合金調整を行なう。
あるいは、ここで合金調整を行わず、前述したように、80%以上の割合(質量比)となるように、使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を原材料として、目的組成の母合金とともに投入し、後の鋳造工程に供することができる。また、100%の割合(質量比)となるように、使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を原材料として投入し、後の鋳造工程に供することもできる。
溶解炉5においてリサイクル材を溶解してアルミニウム合金溶湯を作製した後、溜め炉14、保持炉6に溶湯を順次移送する。各炉において成分調整、炉内脱ガス、精製などを施した後、アルミニウム合金溶湯を図示略のインライン脱ガス装置、溶湯ろ過装置などを経て鋳造機7に供給し、鋳造に供することができる。
なお、100%リサイクル材とする場合は、保持炉6における前述の成分調整を行わず、使用済みアルミ缶あるいはその破砕物と工程端材のみで構成したアルミニウム合金溶湯を鋳造機7に送ることとする。
鋳造機7によりアルミニウム合金鋳塊を作製することができる。
回収再生設備8においては、溶解炉5と溜め炉14と保持炉6を経る再溶解工程を経て鋳造機7に必要量のアルミニウム合金溶湯を供給することができる。
以上説明したように回収再生設備8においては、回収した使用済みアルミ缶と工程端材をまとめてリサイクル材として溶解し、鋳造機7に送って鋳造することができる。
このため、アルミニウム合金の鋳造時に投入する原材料の全てについて、市場から回収した使用済みアルミ缶(UBC)と、飲料缶用アルミ材の製造工程及び製缶工程で発生する工程端材を少なくとも含むリサイクル材を用いることができる。
また、鋳造機7によって鋳造された鋳塊に対し、先に説明した均質化処理と均熱処理を施し、図2に示す粗圧延機20と仕上圧延機30を用いて熱間圧延を施し、前述した条件により冷間圧延と中間焼鈍、最終焼鈍を施すことで、目的の飲料缶用アルミニウム合金板1を得ることができる。
なお、前述の回収再生設備8において、保持炉6と鋳造機7の間に、図示略の脱ガス装置や溶湯ろ過装置を設けることができる。
脱ガス装置は、溶湯中の水素ガスを除去することができる装置であることが好ましい。溶湯ろ過装置は、浮遊スラグや固体粒で存在する非金属介在物を除去する装置であることが好ましい。
保持炉6において合金調整された溶湯中には、アルミニウムに溶解し易い気体である水素が含まれている場合がある。この水素は、アルミニウムと化合物を作らないが、溶湯中における溶解量が固体の場合と比較して数十倍大きいために、鋳造時に過飽和状態となってスラブ中に気孔を発生するか、あるいはひけ巣欠陥を助長する原因となる場合がある。
また、上記溶湯中には、アルミニウム合金の液相以上の温度で固体粒として存在する酸化物等の非金属介在物も含まれており、そのまま鋳造すると機械的特性の低下や表面欠陥の発生を招くおそれもある。
このため、上述の脱ガス装置と溶湯ろ過装置を設けて、脱ガスや非金属介在物の除去を行うことが望ましい。
「アルミニウム合金板1の方位密度」
上述の工程により製造されたアルミニウム合金板1は、素板表面においてCube方位を持つ結晶粒の方位密度と、Goss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が2以上である特徴を有する。Goss方位を持つ結晶粒の方位密度の和は5以上であることがより好ましい。
Cube方位を持つ結晶粒は、{001}<100>方位を持つ結晶粒であり、Goss方位を持つ結晶粒は、{110}<001>方位を持つ結晶粒である。
Cube方位{001}<100>方位を持つ結晶粒の方位密度(Cube方位密度)と、Goss方位{110}<001>を持つ結晶粒の方位密度(Goss方位密度)はXRD(X-ray Diffractometer)により測定することができ、両者の合計値を求めることができる。
Cube方位を持つ結晶粒の方位密度と、Goss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が2以上とは、上述のCube方位密度とGoss方位密度の和が2以上であることを意味する。
「アルミニウム合金板1の平均結晶粒径」
アルミニウム合金板1の平均結晶粒径は200μm以下であることが好ましい。結晶粒径については、圧延方向平行断面を研磨し、水洗乾燥後に、バーカー氏液中で陽極酸化処理し、偏光顕微鏡により観察し、切断法により平均結晶粒径を算出できる。
「Mg固溶度、Si固溶度」
Mg、Siに関し、素板の質量比でMg固溶度が1.0~1.2%、Si固溶度が0.10~0.30%であり、前記素板の導電率が38~41%IACSであることが好ましい。
MgとSiの固溶度に関しては、熱フェノール溶液で溶解後、ろ液に溶け込んだ固溶体中についてICP発光分析法(誘導結合プラズマ発光分析)を用いて定量することができる。
以下に、上述のアルミニウム合金板を用いてDI(Drawing and Ironing)缶を製造する工程とDI缶の概要について説明する。
図5は、DI缶の製造方法の工程図を、図6はDI缶を示す部分断面図であり、これらの図において符号50は、DI缶を示している。
DI缶50は、アルミニウム合金製の有底筒状のDI缶であって、アルミニウム合金板に、適切なしごき率の絞りしごき加工を施して成形されており、例えば、缶軸方向の大きさ、すなわち高さが約122.5mm、外径が65mm以上67mm以下とされる。
また、底部52は、図6に示すように、胴部51の缶軸方向における内側に向けて凹むドーム部52aを備えるとともに、このドーム部52aの外周縁部が胴部51の缶軸方向における外側に向けて突出する環状凸部52cとされている。この環状凸部52cの缶軸方向における頂部が、DI缶50が正立姿勢となるように、このDI缶50を接地面L上に配置したときに接地面Lに接する接地部52bとされる。
また、DI缶50は、ポリエステル系塗料を使用して、文字情報等の印刷部分も含め、胴部51の外面を印刷、塗装し、この外面印刷及び外面塗装がされたDI缶50を180℃×30秒間加熱することにより塗膜を形成するとともに、DI缶50の内面にエポキシ系塗料を使用して塗装し、200℃×60秒間加熱することにより定着させた内面塗装がなされる。
このDI缶は、例えば、以下の工程により製造される。
前述の工程で得られたアルミニウム合金板を打ち抜いて直径が約150mmとされた図5に示す円板状の板材(0ブランク)Wを成形する。
次に、この板材Wをカッピングプレスによって絞り加工することによりカップ状体W1に成形する。
次いで、DI加工装置によって、カップ状体W1に再絞りしごき加工を施して有底筒状体W2を形成する。
再絞りしごき加工に用いるDI加工装置は、再絞り加工するための円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される円形の貫通孔を有する複数枚(例えば、3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、上記それぞれのアイアニング・ダイの各貫通孔の内部に嵌合可能とされ、軸方向に移動自在とされる円筒状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合された円筒状のカップホルダースリーブとを備えている。
DI加工装置による再絞り加工は、カップW1をパンチスリーブと再絞りダイとの間に配置して、カップホルダースリーブ及びパンチスリーブを前進させてカップホルダースリーブが、再絞りダイの端面にカップW1の底面を押し付けてカップ押し付け動作を行ないながら、パンチスリーブがカップW1を再絞りダイの貫通孔内に押し込むことにより行われる。その結果、所定の内径を有する再絞り加工されたカップが成形される。引き続き、再絞り加工されたカップを複数のアイアニング・ダイを順次通過させて徐々にしごき加工をして、カップ状体の側壁をしごいて側壁を延伸させて側壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして有底筒状体W2を形成する。
しごき加工が終了した有底筒状体W2は、パンチスリーブがさらに前方に押し出して底部をボトム成形金型に押圧することにより、底部が、例えばドーム形状に形成される。
この有底筒状体W2は、側壁がしごかれることで冷間加工硬化されて強度が高くなる。
次に、有底筒状体W2の開口端部W2aをトリミングする。
DI加工装置によって形成された有底筒状体W2の開口端部W2aは、その缶軸方向に波打つような凹凸形状とされ不均一であるため、有底筒状体W2の開口端部W2aを切断してトリミングすることにより缶軸方向における側壁の高さを全周に亙って均一にする。
このようにして、胴部51と底部52とを有する横断面円形のDI缶50を形成することができる。
前述の製造方法により得られたアルミニウム合金板であるならば、上述のDI缶の製造方法においてしごき加工を受けた場合であってもネック成形性に優れさせることができ、傷や成形不良などの問題を生じないアルミニウム缶を得ることができる。
また、前述の製造方法により得られたアルミニウム合金板であるならば、ネック部の缶軸方向での強度、換言すると、ボトム座屈耐性が向上したアルミニウム缶を得ることができる。
以下、実施例を示して、本発明に係る飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法について更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解し、脱ガスおよび溶湯ろ過後、半連続鋳造により厚さ600mm、幅1100mm、長さ4.5mのスラブに鋳造した。
次に、前記スラブを面削後、均質化・均熱兼用炉を用いて、それぞれ表2に示す条件で均質化処理と均熱処理を実施した。
続いて、図2に示す構成の熱間粗圧延機を使用して板厚20mmまで熱間粗圧延した後、図2に示す構成のシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機を使用して、以下の表3に示す圧延3パス条件にて板厚2.5mmまで圧延を実施した。
次に、熱間仕上圧延後のアルミニウム合金板材に所定の第1冷間圧延を施した後、それぞれ表4に示す条件で中間焼鈍(連続焼鈍CAL450℃)、冷間圧延および最終調質焼鈍を負荷することで板厚0.370mmの飲料缶用アルミニウム合金板を得た。
得られた飲料缶用アルミニウム合金板に対し、以下に説明の条件にて0.2%耐力の測定、伸びの測定、平均結晶粒径の測定、方位密度の測定、固溶度の測定、導電率の測定、Cube方位密度、Goss方位密度、Cube+Goss方位密度、DI成形性の評価、ボトム成形性の評価、ネック成形性の評価、座屈強度の測定をそれぞれ実施した。
各測定結果と評価結果を後述する表5、表6にまとめて記載する。また、表6には、素材→40%圧延後の耐力増加率、素材→40%圧延→210℃熱処理後の耐力と伸びの測定結果も併記した。
「0.2%耐力の測定」
0.2%耐力の測定については、JISZ2241に準ずる方法により実施した。具体的には、得られた各試料から圧延方向と平行(0°)にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作製し、常温で引張試験を実施し、耐力(MPa)を測定した。なお、引張速度は、5mm/分とした。また、圧延方向に対して、45°、90°に対しても、同様に試験片を作製し引張試験を実施した。
「伸びの測定」
伸びの測定については、JISZ2241に準ずる方法により測定した。具体的には、得られた各試料から圧延方向と平行にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作製し、常温で引張試験を実施し、伸びを測定した。なお、ここでいう伸びとは、JISZ2241に基づく破断後の永久伸びを原標点距離に対する百分率で表したものである。
「結晶粒径」
金属組織を露出させる方法として、アルミニウム合金板の圧延方向に対し平行に切断した断面をエメリー紙にて研磨し、荒バフ研磨、仕上研磨を施した後、水洗、乾燥を実施し、更に、バーカー氏液中で、浴温:25℃、印加電圧:30V、印加時間:120秒の条件で陽極酸化処理を施す方法を適用した。処理後の試料について、偏光をかけた光学顕微鏡を用いて撮影し、切断法により平均結晶粒径を算出した。
「方位密度」
Cube方位{001}<100>方位を持つ結晶粒の方位密度(Cube方位密度)と、Goss方位{110}<001>を持つ結晶粒の方位密度(Goss方位密度)をXRD(X-ray Diffractometer)にて測定し、両者の合計値を求めた。
「固溶度」
Mg、Siの固溶度に関しては、各供試材を熱フェノール溶液で溶解し、この試料溶液をろ過することで、残渣(化合物)とろ液(固溶体)を分離させた後、ろ液に溶け込んだ固溶体中のMgおよびSiについてICP発光分析法(誘導結合プラズマ発光分析)を用いて定量した。
「導電率」
渦電流式導電率計(AutoSigma3000)を用いて、材料表面の任意箇所5点の導電率を室温環境下で測定しその平均値を評価した。
「DI缶の製造方法」
以下に、上述の板厚0.370mmのアルミニウム合金板を用いてDI(Draw and Ironing)缶を製造する工程とDI缶の概要について説明する。
図5はDI缶の製造方法の工程図を示している。
DI缶50はアルミニウム合金製の有底筒状のDI缶であって、しぼり加工、次いで行われるしぼりしごき加工により、缶軸方向の高さ164.0mm~168.0mm、缶胴の外径65mm~67mm、最薄部を含むウォール厚0.115mm~0.140mm、ネック予定部であるフランジ部のフランジ厚0.200mm~0.230mmのDI缶を製造した。
「DI成形性の評価」
DI成形性は、DIプレスにより、10000缶の連続製缶時に缶胴切れが全く発生しなかったものを「○」、1缶以上発生したものを「×」と評価した。
「ボトム成形性」
ボトム成形性は、DIプレスにより、10000缶の連続製缶時にボトム周辺部の亀裂又はしわが全く発生しなかったものを「○」、1缶以上発生したものを「×」と評価した。
「ボトル缶の製造方法」
以下に前述のDI缶から図7に示すボトル缶55を製造する概要を説明する。
前記DI缶の開口部にネッキング加工(縮径加工)を15~30回繰り返し行い、缶胴部55Aの径よりも小径の口金部55Bを形成する。次いで、口金部55Bに雄ねじ55dを形成し、そして、前記雄ねじ55dの上方の開口端部を折り返して、カール部55Eを成形し、図7に示すボトル缶55を製造した。
このボトル缶55のカール部55Eの外径は、32mm~36mmである。また、このボトル缶55の満中容量は、440ml~446mlであった。
このボトル缶55の縮径率は、「縮径率=(缶胴外径-カール外径)÷缶胴外径×100%」で計算でき、具体的な縮径率は、44.6%から52.2%であった。
なお、ボトル缶55の底部側にはDI缶作製の段階で形成された底部52と同じ形状のドーム部55aと設置部55bと環状凸部55cを備えた底部55Fが形成されている。
「ネック成形性」
ネック成形性の評価は、すべての試料について10000缶をアルミボトル缶に成形して実施した。DI成形後の缶の口端部をトリムにより除去し、洗浄乾燥後、缶内外面に塗装印刷を施した後、DI缶の開口部に前述の加工を行い、ボトル缶を製造した。
各試料の製缶を行い、ネック部のしわの程度を目視評価し、しわが認められなかったものを「○」、極軽微なしわが認められたものを「△」、しわが明瞭に認められたものを「×」とした。なお、実施例では、カール割れの発生はなかった。
「座屈強度」
成形したアルミボトル缶ボディ(サンプル数=10)の軸方向に圧縮荷重を負荷し、ネジ部またはボトム部が座屈したときの荷重を測定し、それらの平均値を座屈強度とした。この座屈強度は、1500N以上であるものを良好「○」、1500未満であるものを不良「×」とした。
Figure 0007410255000001
Figure 0007410255000002
Figure 0007410255000003
Figure 0007410255000004
Figure 0007410255000005
Figure 0007410255000006
表1に示す実施例No.1~15の試料は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備するアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板である。このアルミニウム合金板は、表2に示す条件A~Cの均質化処理条件と均熱処理条件を選択し、表3に示す圧延条件A~Cの熱間仕上1パス目条件と熱間仕上2パス目条件と熱間仕上3パス目条件を選択し、表4に示す条件A~C、Eの最終冷間圧延条件と最終調質焼鈍条件を選択し、これらの条件を表1に示すように組み合わせて作製している。
実施例No.1~15の試料は、表5に示すように、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下を示した。
より具体的には、圧延方向における耐力が236~313MPa、伸びが2.5~7.4%、平均結晶粒径が71~190μmであった。
実施例No.1~15の試料は、圧延方向に対し、0°、45°、90°方向のそれぞれの方向について引張試験により求められる耐力の最大値から最小値を引いた値が15MPa以下を示した。具体的には、耐力の最大値から最小値を引いた値が5~15MPa以下を示した。
実施例No.1~15の試料は、アルミニウム合金板(素板)に対し板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合、冷間圧延後のアルミニウム合金板の耐力の増加割合(増加率)が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上を示した。具体的には、耐力の増加割合が16~23%、熱処理負荷後の耐力が264~302MPaであり、伸びが3.6~4.8%であった。
また、実施例No.1~15の試料は、DI成形性、ボトム成形性、ネック成形性、座屈強度のいずれにおいても優れていた。実施例No.1~15の試料は、使用済みアルミニウム缶の配合率を81~90%としているが、いずれの試料においても特性上問題は無く、優れた特性を有するとともに、上述の耐力、伸びを有する優れたDI缶を得ることができた。
比較例No.1、2の試料はMn含有量を調整した試料であるが、Mn含有量が低い場合、耐力不足、座屈強度不足となり、Mn含有量が多い場合、DI成形時にゴーリングと呼ばれるすり傷、焼き付きが多数発生し、外観不良によりNGとなった。
比較例No.3~6の試料は、Mg含有量、Si含有量を調整した試料であるが、Mg含有量とSi含有量が個々に望ましい範囲より少ないか多い場合、耐力と伸びのいずれかが目的の特性を得られないか、DI成形性とボトム成形性とネック成形性と座屈強度のいずれかに問題を生じた。
比較例No.7、8の試料はFe含有量を調整した試料であるが、Fe含有量が低い場合、結晶粒径が大きくなり、ボトム成形性が低下した。また、Fe含有量が多い場合、DI成形性とボトム成形性に問題を生じ、カール割れが生じた缶が発生しNGとなった。
比較例No.9、10の試料はCu含有量を調整した試料であるが、Cu含有量が低い場合、耐力が不足し、最大-最小の耐力も15MPaを超えて大きくなり、Cu含有量が多い場合、最大-最小の耐力が15MPaを超えて大きくなり、耐力が高くなり過ぎ、導電率も低くなった。これらの試料は、DI成形性、ボトム成形性、ネック成形性、座屈強度のうち複数の特性に問題を生じた。
比較例11の試料は、均質化処理条件と均熱処理条件に関し、表2に示す条件Dを採用した試料であるが、結晶粒径が大きくなり、Cube方位密度とGoss方位密度の和が5未満であった。
比較例12の試料は、熱間仕上圧延条件が表3に示す条件Cを採用した試料であるが、40%圧延、210℃熱処理後の耐力が不足し、座屈強度が悪くなった。
比較例13の試料は、冷間圧延率、調質焼鈍条件に関し、表4に示す条件Dを採用した試料であるが、最大-最小の耐力が15MPaを超えて大きくなり、DI成形性、ボトム成形性、座屈強度に問題を生じた試料であった。
比較例14の試料は、表2に示す均質化処理条件Dと均熱処理条件Dを採用し、表3に示す熱間仕上条件Dを採用し、表4に示す中間焼鈍条件E、最終冷間圧延条件E、最終調質焼鈍無しの試料である。比較例14は、DI成形性、ボトム成形性、座屈強度に問題を生じた。
1…飲料缶用アルミニウム合金板、2…ブレーカー(破砕機)、3…選別手段、4…ロータリーキルン(焙焼炉)、5…溶解炉、6…保持炉、7…鋳造機、8…回収再生設備、14…溜め炉、50…DI缶、51…胴部、52…底部、20…熱間粗圧延機、30…熱間仕上圧延機、40…連続焼鈍装置。

Claims (12)

  1. 質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備し、質量比で80%以上のアルミニウムリサイクル材を含むアルミニウム合金溶湯からの鋳造材であるアルミニウム合金の素板からなり、素板表面においてCube方位を持つ結晶粒の方位密度と、Goss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が2以上であり、さらに圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下であることを特徴とする飲料缶用アルミニウム合金板。
  2. 請求項1に記載の飲料缶用アルミニウム合金板で、素板表面においてCube方位を持つ結晶粒の方位密度とGoss方位を持つ結晶粒の方位密度の和が5以上であり、さらに圧延方向における伸びが5.0%以上であることを特徴とする飲料缶用アルミニウム合金板。
  3. 前記素板において、圧延方向に対し、0°、45°、90°方向のそれぞれの方向について引張試験により求められる耐力の最大値から最小値を引いた値が15MPa以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飲料缶用アルミニウム合金板。
  4. 前記素板の質量比でMg固溶度が1.0~1.2%、Si固溶度が0.10~0.30%であり、前記素板の導電率が38~41%IACSであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飲料缶用アルミニウム合金板。
  5. 前記素板の質量比でMg固溶度が1.0~1.2%、Si固溶度が0.10~0.30%であり、前記素板の導電率が38~41%IACSであることを特徴とする請求項3に記載の飲料缶用アルミニウム合金板。
  6. 前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飲料缶用アルミニウム合金板。
  7. 前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることを特徴とする請求項3に記載の飲料缶用アルミニウム合金板。
  8. 前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることを特徴とする請求項4に記載の飲料缶用アルミニウム合金板。
  9. 前記素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が15~25%、且つ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が250~310MPa、伸びが3.0%以上であることを特徴とする請求項5に記載の飲料缶用アルミニウム合金板。
  10. 質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部Alと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊であり、使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を質量比80%以上となるように原材料に投入したアルミニウム合金溶湯からの鋳造材であるアルミニウム合金の鋳塊を鋳造後、均質化処理を500~600℃で4~10時間加熱する条件で行ない、均熱処理を470~560℃で1時間以上加熱する条件で行ない、
    熱間粗圧延に続いてシングルスタンド圧延機を用いて、1パス目100~400m/minの圧延速度、350~450℃の巻取温度、2パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻取温度、3パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻取温度で熱間仕上圧延を行い、仕上板厚を2.0~3.6mmとし、
    その後冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍、最終焼鈍を行い板厚0.20~0.55mm、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下である飲料缶用アルミニウム合金板を製造することを特徴とする飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
  11. 質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部Alと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊であり、使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を質量比80%以上となるように原材料に投入したアルミニウム合金溶湯からの鋳造材であるアルミニウム合金の鋳塊を鋳造後、均質化処理、均熱処理および熱間圧延を行った後、次いで、行う冷間圧延の途中で連続焼鈍装置を用いて1回または2回、300~550℃の温度に5~60秒保持する連続焼鈍を行い、
    最終冷間圧延率を40~95%に設定して前記冷間圧延を行い、最終冷間圧延後に昇温速度3℃/min以上、保持温度100~200℃、保持時間1~10時間、冷却速度10℃/min以上の条件で最終調質焼鈍を行い、
    板厚0.20~0.55mm、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが2.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下である飲料缶用アルミニウム合金板を製造することを特徴とする飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
  12. 前記アルミニウム合金の鋳造時に投入する原材料の全てについて、市場から回収した使用済みアルミ缶(UBC)と、飲料缶用アルミ材の製造工程及び製缶工程で発生する工程端材を少なくとも含むアルミニウムリサイクル材を用いて、少なくとも焙焼、再溶解工程を経るリサイクル工程により作製し、前記鋳造に用いることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
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