JP7402461B2 - 地盤取り込み式の締固め工法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 平成30年7月5日に、第43回 海洋開発シンポジウムにて発表(開催期間 平成30年7月5日~7月6日)、平成30年7月25日に、第53回地盤工学研究発表会にて発表(開催期間 平成30年7月24日~7月26日)、平成30年8月29日に、平成30年度全国大会 第73回年次学術講演会にて発表(開催期間 平成30年8月29日~8月31日)
本発明は、地盤の密度を増加させて地盤強化を図る地盤改良技術に関するものであり、特に、無振動・低騒音で地盤を締固める静的圧入締固め工法と、この工法を利用して造成された地盤改良体に関するものである。
なお、静的圧入締固め工法以外にも、各種の注入工法(薬液注入、セメント系注入、ジェットグラウトなど)があるが、静的圧入締固め工法は、薬液注入工法等とは全く異なる技術である。
すなわち、薬液注入では、注入材が土粒子間へ浸透し固結する。セメント系注入では、地盤内でセメントグラウトが脈状に固結する。ジェットグラウトでは、固化材と土粒子を高圧噴射により強制的に攪拌混合しソイルモルタル状の固結体を形成する。これに対して静的圧入締固め工法では、改良材を地盤中に圧入して改良体(塊)を造成し、この改良体による締固め効果で周辺地盤を圧縮強化する。
したがって、静的圧入締固め工法の改良原理は「密度増大」であるのに対し、薬液注入工法などの注入工法の改良原理が「固化」又は「固結」であり、静的圧入締固め工法と他の注入工法は全く異なる技術である。
軟弱な砂質土地盤では、地震が起きると過剰間隙水圧が発生し、土粒子が流動化し、地盤の支持力が一時的に消失する「液状化現象」が発生する。かかる液状化現象の防止対策の一つとして「静的圧入締固め工法」が知られている。
「静的圧入締固め工法」とは、動的エネルギー(打撃や振動)を与えることなく、静的な力(ポンプ圧送による静的圧入)で締固めを行う工法である。静的圧入締固め工法の代表例には、コンパクショングラウチング工法などがあり、液状化対策に優れた地盤改良工法として広く一般に利用されるに至っている。
特許文献1には、静的圧入締固め工法の一種であるコンパクショングラウチング工法の基本技術が開示されている。
特許文献2には、コンパクショングラウチング工法の改良技術が開示されている。
又、上記の静的圧入締固め工法のほか、地盤改良工法として深層混合処理工法が知られている。深層混合処理工法は、セメントなどの固化材を地中に供給し、原地盤の軟弱土と固化材を強制的に混合攪拌する地盤改良工法である。
特開平6-116936号公報 特許第5598999号公報
(特許文献1の開示技術とその課題)
図1には、静的圧入締固め工法の施工態様の概略が示されている。この静的圧入締固め工法では、ボーリングマシンを用いて、ロッド状の注入管11を複数本継ぎ足しながら所定深度まで削孔する。注入管下端が目標深度まで到達したら、貫入状態の注入管11に注入管リフト装置13をセットするとともに、該注入管を流量圧力監視装置15,圧送ホース19を介して特殊注入ポンプ21に接続する。特殊注入プラント23で生成された改良材(例えば特殊骨材・固化材・水で構成される流動性の極めて低いモルタル状の地盤改良材)は、特殊注入ポンプ21で強制圧送され、圧送ホース19、流量圧力監視装置15、注入管11を介して地盤中に圧入される。改良材の圧入工程では、改良材の圧送と注入管11の一定の深度毎にステップアップ(注入管の引抜き)とを繰り返す。
地盤中に圧入された改良材は、土中で迷走や浸透することなく所定の位置で改良体(改良材の塊)を形成する。したがって、上述した特殊注入ポンプによる改良材の圧送と、注入管のステップアップとを繰り返すことにより、図示するような球根状の改良体1が連続的に造成される。そして、各改良体1の体積増加により周辺地盤を圧縮し、密度を増大させることで液状化地盤を非液状化地盤へと改良することができる。
静的圧入締固め工法において地盤内に改良材を圧入する際には、例えば図2に示すように改良深度の下端から上方へ向かう順序で改良体を複数段造成する。かかる静的圧入締固め工法による締固め効果を得るためには、理想的には地盤内に圧入した改良材が地盤隆起(鉛直変位)を招くことなく周辺地盤を押し広げて圧縮強化することが望ましい。圧入によって地盤が隆起するということは、隆起した体積分だけ圧縮されていないことから、その分の地盤密度増加効果が得られないことになる。
しかしながら締固め工法の実施工では、地盤条件によっては、圧入した改良材の影響が地表面へ伝わって地盤を隆起させることがあり、特に、図2に示すように改良深度の下端から上方へ向かう順序で改良体を複数体造成する施工において、地盤が隆起し易いといった問題があった。又従来、このような地盤隆起はコントロールすることができなかったため、隆起が発生すると施工を中止せざるを得なく、その場合、十分な地盤改良を行うことができなかった。
このように、特許文献1に開示の技術(以下必要に応じて「CPG施工」又は「従来技術1」という。)では、地盤に対して改良材を必要以上に圧入した場合に地盤隆起が発生するため、それ以上改良材を圧入できなくなっていた。例えば、設計注入率が10 %の改良に対して注入率が5 %の段階で許容隆起量に達した場合、これ以上の圧入ができなくなっていた。
そして、締固め工法において上述したような隆起が発生すると、隆起した体積分だけ地盤を側方に圧縮していないことになるため、地盤の締固めが低減し、地盤の密度及び静止土圧係数(K0値)の増加がそれぞれ低減していた。
又従来技術1では、地盤隆起や改良体形状等に関連して次のような問題が生じていた。
地盤の密度及び静止土圧係数の増加がそれぞれ低減するため、N値及び液状化強度の増加等の改良効果がそれぞれ低減していた。
上記の通り、設計注入率に達しなかった場合は、十分な改良効果が得られなかった。
所定の改良効果を得るために追加の圧入を行っていた。
追加の圧入のため、この作業が余分に発生して工期が伸び経済性が悪かった。
追加の圧入のためさらに隆起を引き起こしていた。
隆起によって既設構造物の損傷が発生していた。
既設構造物を損傷するため、許容隆起量がシビアな重要構造物等に対して適用できなかった。
圧入後の改良体の断面がいびつな形状のため、改良体の有効径が小さかった。
改良体の断面がいびつな形状且つ有効径が限定できないため、改良後の原地盤(無改良部)の強度増加は、改良部と無改良部との複合地盤としての平均強度として扱われなかった。
(特許文献2の開示技術とその課題)
特許文献2には、上述した地盤隆起の問題を解決する手段が開示されており、具体的には、圧入実施中又は圧入工程完了後に、その時圧入していた区間の改良体中を、注入管で上下に繰返し移動させて隆起抑制することが、特許文献2に開示されている。
特許文献2の開示によれば、「地盤に貫入させた注入管を繰返しアップダウンさせる」ことにより、改良体が脈動する(圧入済み改良体の体積が膨れたり縮んだりする膨縮動作)。この改良体の脈動は周辺地盤に対し繰返し載荷を与え、すなわち周辺地盤に対し載荷と除荷を交互に与え、この作用によって、締固め工法の施工時に発生し得る地盤隆起を抑制できる。
特許文献2に開示された「地盤に貫入させた注入管を繰返しアップダウンさせる」といった施工方法(以下必要に応じて「アップダウン施工」又は「従来技術2」という。)は、地盤隆起をある程度抑制できるという点で優れているが、その従来の施工方法には次のような問題があった。
地盤が圧入量と同じ分だけ圧縮される比例限界の圧入量は従来技術1を上回るものとなったが、それ以降は、従来技術1と同様に圧入によって隆起が発生していた。図4参照。そのため、従来技術2による地盤隆起抑制効果は必ずしも満足できるものではなく、更なる隆起抑制を達成できる技術が望まれていた。
又、隆起発生のため、圧入(施工)ができなくなることがあった。
隆起発生によって、本来側方に地盤を圧縮する力(地盤の締固め)が低減するため、地盤の密度、静止土圧係数(K0値)の増加等が低減していた。
地盤の密度及び静止土圧係数の増加がそれぞれ低減するため、N値及び液状化強度の増加等の改良効果がそれぞれ低減していた。
所定の改良効果を得るために追加の圧入を行っていた。
追加の圧入のため、この作業が余分に発生して工期が伸び経済性が悪かった。
追加の圧入のためさらに隆起を引き起こしていた。
隆起によって既設構造物の損傷が発生していた。
既設構造物を損傷するため、許容隆起量がシビアな重要構造物等に対して適用できなかった。
(深層混合処理工法とその課題)
深層混合処理工法では、セメント等の固化材を地盤に供給し、原地盤の軟弱土と固化材を強制的に混合攪拌する。この深層混合処理工法には次のような問題があった。
地盤に材料を供給しているため、盛り上がり土が発生していた。
この盛り上がり土は、セメント等の固化材を含む為、産廃処理費が発生していた。
改良後の原地盤(無改良部)の強度増加は0、又は改良部と無改良部との複合地盤としての平均強度として扱われる。
C=Cp×ap+κ×C0×(1-ap)
ここに、C: 深層混合処理工法の複合地盤の平均強度、Cp:改良体のせん断強さ、ap:改良率、C0:原地盤のせん断強さ、κ:係数、である。このように,深層混合処理工法では,改良体間の地盤のせん断強さが原地盤と同じであり,締固め工法のようなせん断強さの増加を見込むことはできない。
改良体と改良体の間の地盤の密度増加、静止土圧係数(K0値)の増加は見込めなかった。
(本発明の目的)
そこで、上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、施工に伴う隆起等の地盤変位を更に抑制することができ、従来よりも有効径が大きい改良体を造成することを可能にする、地盤取り込み式の締固め工法を提供することにある。
又、本発明の他の目的は、造成時における隆起等の地盤変位を抑制することができ、
従来よりも有効径が大きい地盤改良体を提供することにある。
上記目的は、
周辺地盤を締め固めるための改良材を注入管を介して地盤内に圧入する工程と、
圧入済み改良材の内部に地盤が取り込まれるように、注入管を進退動させる工程と、
を含む地盤取り込み式の締固め工法によって達成される。
上記の地盤取り込み式の締固め工法では、注入管を進退動させる工程において、後退させた注入管の先端と圧入済み改良材との間に間隔が生じるように、注入管を進退動させることが好ましい。
又、注入管を進退動させる工程では、注入管の後退させた後に、インターバル時間を設け、その経過後に注入管を前進させることが好ましい。
又、上記の地盤取り込み式の締固め工法では、低流動性の改良材を用いることが好ましい。
又、上記の地盤取り込み式の締固め工法で用いる注入管は、外径が73mmよりも大きいことが好ましい。
又、上記の地盤取り込み式の締固め工法で用いる注入管は、その注入管の断面積比(外径の断面積/内径の断面積)が2.2よりも大きいことが好ましい。
又、前述した目的は、周辺地盤を締め固める地盤改良体であって、地盤内で固結した改良材と、固結した状態の前記改良材の内部に取り込まれた地盤と、を含んで構成される地盤改良体によって達成される。
(1) 本発明では、注入管を介して改良材を地盤内に圧入して、圧入済み改良材(造成途中の改良体)の内部に地盤が取り込まれるように注入管を進退動させる。進退動とは、例えば改良体を鉛直方向に沿って造成する場合には、注入管を貫入させ、引き上げる動作を指す。このような注入管の進退動(貫入及び引き上げ)により、圧入済み改良材の内部に地盤を取り込むことができ、又、これによって次の優れた効果が達成される。
圧入済み改良材の内部に地盤を取り込むため、圧入した改良材の体積以上に、地盤改良体の体積が大きくなる。
圧入した改良材の体積以上に地盤改良体の体積が大きくなることで、改良材の圧入量を減らすことが可能になる。
圧入量が減ることで、工期短縮につながり経済性が増す。つまり、従来よりも短工期・低コストでの施工が可能になる。
改良材の注入長(改良長)が従来技術と同じであると仮定した場合、造成する地盤改良体の体積が大きくなれば、地盤改良体の径が大きくなる。
地盤改良体の径が大きくなることで、地震によって改良体が動きづらくなる。
地盤改良体が動きづらくなることで、仮に液状化が発生したとしても、側方流動の抑止になる。
更に大きな径の地盤改良体は断面積が大きいため、想定以上の地震により液状化現象が発生した場合に、地盤沈下の抑制になる。
大きな径の地盤改良体を造成することによって、地盤改良体と地盤改良体の間隔(配置間隔)が狭くなる。
地盤改良体の配置間隔が狭くなることで、地盤改良体と地盤改良体の間の地盤をこれまで以上に圧縮することができる。
地盤をこれまで以上に圧縮することができるため、側方の締固め効果が増大する。
地盤の締固めが向上し、地盤の密度、静止土圧係数(K0値)が増大する。
地盤のN値、液状化強度等の改良効果がそれぞれ向上する。
地盤改良体の径が大きくなり且つ、杭間(地盤改良体と地盤改良体の間)のN値が増加するため、本発明では改良体間の地盤の強度増加が見込めるので,複合地盤としての平均強度は以下のようになる。
C=Cp×ap+κ×C1×(1-ap)
ここに、C: 深層混合処理工法の複合地盤の平均強度、Cp:改良体のせん断強さ、ap:改良率、C1:改良後の地盤のせん断強さ、κ:係数、である。このように,従来の深層混合処理工法で改良した複合地盤よりもより大きな複合地盤としての強度(平均強度)を見込むことができる。
締固め効果が増大するため、施工に伴い発生する隆起等の地盤変位をこれまで以上に低減できる。
隆起等の地盤変位量が少ないため、現場の許容変位量を超えることによる施工中止又は中断がなくなり、改良材の圧入が計画どおり最後までできる。
許容変位量を超えることがなくなり、隆起等の地盤変位による既設構造物の損傷がなくなる。
既設構造物を損傷しないため、隆起等の許容変位量がシビアな重要構造物等に、施工の適用できる。
所定の改良効果が得られるため、改良材の追加圧入が不要になる。
改良材の追加圧入が不要になり、工期が無駄に伸びることがなくなるので、施工の経済性がよくなる。
改良材の追加圧入が無くなるので、従来技術で生じていたような追加圧入に起因する隆起等の地盤変位がなくなる。
アップダウン施工(従来技術2)と同数の施工本数の改良を行う場合には、アップダウン施工よりも高い改良効果(N値、液状化強度等)を得ることができる。
改良効果としてアップダウン施工と同等のN値、液状化強度等を要求される場合は、アップダウン施工よりも施工本数を減らすことができる。
施工本数が減ることで、工期短縮が図れ、経済性が増す。つまり、短工期・低コストでの施工が可能になる。
地盤が取り込まれるように注入管を進退動させることで、隆起等の地盤変位の体積分相当の地盤(従来技術では隆起等していた分の地盤)を圧入済み改良材の内部に取り込むができる。つまり、地盤中に圧入した改良材に加え、圧入済み改良材の内部に取り込んだ地盤を含んでなる改良体を対象地盤中に造成することができる。
圧入量と地盤の圧縮量が等しい比例限界点を超え、以後の圧入によって隆起等の地盤変位が発生し得る状況に至っても、その変位量(体積)分の地盤が圧入済み改良材に取り込まれるので隆起等の地盤変位量が大幅に低減される(図4参照)。
隆起等の地盤変位量が少ないため、現場の許容変位量を超えることによる施工中止又は中断がなくなり、改良材の圧入が計画どおり最後までできる。
許容変位量を超えることがなくなり、隆起等の地盤変位による既設構造物の損傷がなくなる。
既設構造物を損傷しないため、隆起等の許容変位量がシビアな重要構造物等の施工の適用できる。
従って本発明によれば、従来技術1、2や深層混合処理工法の単独利用では達成できない効果として、上記の優れた効果を達成することができる。
(2) 本発明では、使用する注入管の外径を従来技術のものよりも大きく設定している。具体的には、注入管の外径は、従来技術で採用されている73 mmよりも大きい。このように注入管の外径を大きくすることによって、次の優れた効果が達成される。
圧入した改良材は(注入管の外径が大きいために)注入管の上部に向かって逃げることができず、当該改良材は地中で側方へ広がる(図5(b)参照)。
側方に広がることによって、地盤の側方への締固め効果が向上する。
改良材が注入管の上部に逃げることができないので、改良材によって地盤を押し上げる力が低減され、隆起等の地盤変位量が減る。
改良材が地中で側方に広がることにより、造成される改良体が扁平になる。
改良体が扁平のため、このような扁平形状の改良体(扁平体)を積み重ねてできた地盤改良体は、球体を積み上げて造成した従来の地盤改良体よりも、くびれが小さくなる。
くびれが小さい地盤改良体が造成されるため、従来技術よりも有効径が大きな地盤改良体を造成できる(図5(b)参照)。ここで言う有効径とは、上面から改良体を投影した時の最小の径としたものである。
有効径が大きくて略円柱状の地盤改良体を造成できるため、地中に造成する地盤改良体を「杭体」として機能させることができる。
改良体が扁平のため、注入管を引き上げたときに該注入管と改良体の縁が切れやすくなる(図6(b)参照)。
更に、注入管の外径が大きいことで、造成途中の改良体から注入管を引き離したときに大きな窪み(凹部)が改良体にできる。
注入管と改良体の縁が切れやすく、又、注入管を引き離したときに大きな窪みが改良体にできることから、積極的に改良体の内部に地盤を取り込めるようになる。
又、本発明に係る締固め工法の実施にあたって、その施工仕様の決定に際しては、「繰返し体積率(asc)」を「従来改良率(asg)」と同等の改良効果があるものとみなして、等価改良率(ase)を設計改良率(asd)として使用してもよい。これにより、繰返し体積(CV)を圧入量として見込めるようになる。そして、繰返し体積(CV)を圧入量として見込める結果、繰返し体積分の圧入量が削減できるようになるので、材料費を低減させることができるようになる。なお、等価改良率や繰返し体積等の用語の意味・内容については、次の表1を参照のこと。
Figure 0007402461000001
そして、注入管の外径の断面積 (A) が大きくなると、一回の注入管の進退動(例えば鉛直方向の施工の場合には貫入及び引き上げ)の距離 (L) によって算出される繰返し体積 (CV) が大きくなる。ここでいう「注入管の外径の断面積 (A)」とは、注入管の進退動の軸方向に直交する、当注入管の外径から算出される断面積を意味する。すなわち、注入管の外径の断面積 (A) = π(注入管の外径 × 1/2) である。
上記の関係は次式によって表すことができる。
CV=A×L×1(繰返し回数)
繰返し1回分の繰返し体積が大きくなることで、任意の繰返し体積に達する繰返し回数を減らすことができる。
繰返し回数が減ることで、施工時間の短縮を図ることができる。
例えば空港等の施工時間に制限がある施工場においても、注入管の進退動は施工時間を圧迫することなく、適用できるようになる。
このように施工時間が短縮できるため、工期が短縮でき、経済性が向上する。
繰返し1回分の繰返し体積が大きいため、任意の繰返し体積に達する繰返し回数を減らすことができる。
繰返し回数が減ることによって、注入管の進退動による、注入管の閉塞のリスクが減少する。
繰返し回数が減り、作業時間が短縮できるため、改良材がホースや注入管の途中で固化することがなくなり、施工不能を招くことなく設計どおりに地盤改良体を造成できるようになる。
(3) 本発明では、使用する注入管の断面積比(外径の断面積/内径の断面積)を従来技術のものよりも大きくすることが好ましい。ここでいう「外径の断面積」とは、注入管の進退動の軸方向に直交する、当注入管の外径から算出される断面積を意味する。すなわち、注入管の外径の断面積 = π(注入管の外径 × 1/2) である。また、「内径の断面積」とは、注入管の進退動の軸方向に直交する、当注入管の内径から算出される断面積を意味する。すなわち、注入管の内径の断面積 = π(注入管の内径 × 1/2) である。そして、注入管の断面積比 = 外径の断面積 / 内径の断面積 である。
具体的には、注入管の断面積比は、従来技術で採用されている2.2(外径φ73 mmの断面積、内径φ50 mmの断面積)よりも大きく設定する。なお、「外径φ73 mmの断面積、内径φ50 mmの断面積」の場合、従来技術で採用されている断面積比は、厳密に言えば、2.1316となる。
このように、使用する注入管の断面積比を従来のものよりも大きくすることによって、注入管の肉厚が大きくなる(図6(b)参照)。
注入管の肉厚が大きくなることで、その進退動の繰返しの際に、注入管の流路(内空部)への地盤の逆流を低減できる(図7参照)。
注入管の肉厚が大きくなることで、地盤を押し込む面積が大きくなるので、改良体の内部に入った地盤を、注入管の貫入時に等方に突固めしながら地盤を取り込むことができる(図7参照)。
(4) 本発明では、注入管を進退動させる工程において、後退させた注入管の先端と圧入済み改良材(造成途中の改良体)との間に間隔が生じるように、注入管を進退動させる。例えば鉛直方向の施工の場合には、注入管の進退動の引き上げの際に、注入管の下端を圧入済み改良材(造成途中の改良体の天端)よりも高い位置とする。
このように注入管を進退動させることで、造成している改良体の内部に地盤が流入しやすくなる。
圧入済み改良材(造成途中の改良体の天端)の上部に存在する地盤を押し込みながら圧入済み改良材の内部を貫入していくので、造成途中の改良体の内部に効率的に地盤を取り込むことができる。
(5) 本発明では、注入管を進退動させる工程において、注入管の後退させた後に、インターバル時間を設け、その経過後に注入管を前進させる。例えば鉛直施工の場合には、注入管の進退動の引き上げ完了後に、インターバル時間を設け、その後に注入管の貫入を開始する。ここで言うインターバル時間とは、注入管の進退動を数秒から30秒程度静止する時間のことである。
このようなインターバル時間を設けることで、造成している改良体の上部にある地盤が該改良体の内部に落ち込む時間ができるため、効率よく地盤を取り込むことができる。
例えば、注入管の貫入までのインターバル時間を長くとることによって、造成途中の改良体にできた窪みの中に多くの地盤を取り込むことができる。
地盤の取り込み量が増加するため、注入管の進退動の繰返し回数を減らすことができる。
繰返し回数が低減できるので、施工時間が短縮でき経済性が増す。
(6) 本発明では、改良材として、例えば低流動性の改良材を使用する。
このように低流動性の改良材を使用することによって、一度圧入済み改良材に取り込んだ地盤が、逸走することがなくなる。
つまり、圧入済み改良材の内部に地盤を一度取り込んでしまえば、該改良材の内部に密封することができるため、地盤を取り逃すことがない。
(7) 本発明は、上述した特徴を具備する締固め工法によって造成された地盤改良体にも及ぶ。すなわち、本発明の地盤改良体は、周辺地盤を締め固める地盤改良体であって、地盤内で固結した改良材と、固結した状態の前記改良材の内部に取り込まれた地盤と、を含んで構成される。
締固め工法で造成する地盤改良体に、上記のような特徴を採用することで、その造成時における隆起等の地盤変位を抑制することができる。
静的圧入締固め工法で用いる施工機材と、静的圧入締固め工法の施工態様の一例を示す図である。 静的圧入締固め工法の施工手順の一例を示す図である。 注入管の進退動による地盤取り込みの様子を示す模式図である。 改良材の圧入量と地盤圧縮量・地盤隆起量の関係を示すグラフである。 注入管の径の違いによる地盤改良体の有効径の差を比較する図である。 注入管の径の違いによる改良体外径・地盤取り込み量の差を比較する図である。 注入管の肉厚の違いによる、地盤の押し込みおよび逆流を比較する図である。 地盤取り込みの式の締固め工法を示す模式図である。 実験で用いた模型地盤のモデル図である。 地盤改良体の地盤の取り込み率を示すグラフである。 地盤改良体の直径の最大値を示すグラフである。 改良体の地盤の取り込み後の地点隆起量を示すグラフである。 地盤取り込みにより拡径した地盤改良体を含む地盤の模式図である。 地盤改良体の地盤の取り込み後の相対密度の増分を示すグラフである。 断面積比に対する繰返し回数の割合を示すグラフである。
はじめに、締固め工法に関連する主な用語について以下のとおり定義する。
「改良材」とは、圧入後に地盤内での浸透や脈状注入されることなく、周辺地盤を圧縮する塊(下記の改良体及び地盤改良体)を形成できる材料をいう。なお、前記定義のとおりの作用を発揮できる限り、本発明で用いる改良材の組成や流動特性等は特に限定されない。すなわち、地盤を押し広げて、地盤内でその状態を維持できる材料であれば、いかなるものでも用いることができる。
「圧入済み改良材」とは、注入管先端の吐出部を介して地盤内に圧入した改良材である。
「改良体」とは、圧入した改良材が地盤内でまとまって形成する塊であって、周辺地盤を圧縮し締固めるものをいう。
「地盤改良体」とは、上記の改良体を複数体含んで構成され、周辺地盤を圧縮し締固めるものをいう。経時的な固結の有無にかかわらず、又固化材の有無にかかわらず、周辺地盤を圧縮し締固めるものはすべて「地盤改良体」に含まれる。なお、地盤内で浸透する材料や脈状固結する材料を用いた場合には、改良体及び地盤改良体の造成が完全に阻害され、締固め工法として成立しなくなるので、この点に留意する必要がある。
以下、添付図面に基づいて本発明の具体的実施形態について説明する。
(締固め工法の第1実施形態)
締固め工法の第1実施形態では、図2に示すように下から上へ向かう施工方式に従って改良体を造成する。
施工に用いる注入管としては、例えば、1ロッドの長さが1~3m、直径が5~20cmのものを複数本(削孔長分)用いる。注入管の引上げは、例えば1mにつき3~5ステップ行う。1ステップ分の圧入によって、改良体1体分の改良材を地盤内に圧入し、1mで3~5段の改良体を造成する。
施工にあたっては、はじめに施工現場にボーリングマシンを用意し、改良対象地盤の所定削孔ポイントに注入管(削孔注入ロッド)をセットする。続いて図2(a)に示すように、目標深度へ向けて、注入管を複数本継ぎ足しながら削孔する。
削孔を続け、注入管の先端開口部が、改良対象地盤の目標深度に到達したら、削孔を止め、注入管からボーリングマシンを切り離す。次に、注入管に注入管リフト装置をセットするとともに、改良対象地盤に貫入させた注入管の一端を、流量圧力監視装置及び圧送ホースを介して特殊注入ポンプに接続する(図1参照)。
続いて、特殊注入ポンプによる圧送を開始すると、特殊注入プラントで用意された改良材が、圧送ホース・流量圧力監視装置・注入管を介して、図2(b)に示すように改良対象地盤内に静的圧入される。「圧入」とは、地盤を押し広げる圧力でポンプにより改良材を地盤内に注入することをいう。
改良材の圧入工程では、流量・圧力を適宜コントロールしながら改良材をポンプ圧送し、計画量の改良材(改良体1個分の改良材)を地盤内に強制的に圧入する。特殊注入ポンプにより与えられた注入圧力は、圧送途中の改良材中を伝搬してゆき、注入管の先端付近の周辺地盤に伝達される。
注入管の先端開口部を介して地盤内に圧入された改良材は、土中で迷走や浸透することなく、注入管先端の吐出点付近で改良体(改良材の塊)を形成する。この改良体は、図3に示すように改良材圧入の進行に伴って体積が増加するように成長し、又、その体積増加に伴って周辺地盤を押し広げる。
なお、図3では改良体を簡略化して図示しているが、地盤中における改良体の形状は、土層状況に応じていびつな形状となる(図5参照)。
そして、改良体1体分の改良材の圧入が完了したら圧入を停止し、次いで、注入管を圧送ホースに接続したままで注入管リフト装置を作動させて、図3(a)(b)(c)(d)に示すように注入管を地中で進退動(貫入及び引き上げ/ダウンストローク及びアップストローク)させる。この注入管の進退動によって、図3(d)に示すように圧入済み改良材の内部に地盤が取り込まれる。具体的には、注入管の進退動を実施することによって、以下のプロセスを経て、圧入済み改良材の内部に地盤が取り込まれる。
なお、本実施形態で言及する「圧入済み改良材(造成途中の改良体)の内部に取り込まれる“地盤”」とは、造成する改良体周りに存在する地盤である。具体例としては、粘土、シルト、砂、礫またはこれらが混りあったものなどがあるが、改良対象となる地盤であれば、これらに限ったものではない。
改良体1体分の改良材の圧入が完了した時点で、造成途中の改良体は、図3(a)に示すように注入管先端部を包み込む大きさに成長している。なお図3において、造成している改良体内部に描かれた破線は、改良体の成長過程を模式的に図示したものである。
図3(a)に示す状態から注入管を後退させて、造成途中の改良体から注入管先端を引き離すと、その痕跡として図3(b)に示すように、造成途中の改良体の天端に大きな窪み(凹部)が形成される。
造成途中の改良体から注入管先端を引き離すことで、図3(c)に示すように、造成途中の改良体の窪みに地盤が流れ込む。
そして、改良体天端の窪みに地盤が流れ込んだ状態から、注入管を前進させて、図3(d)に示すように造成途中の改良体に対し貫入させる。このように注入管を貫入させることで、窪みに流れ込んでいた地盤が注入管先端部によって押し込まれて、改良体の内部に取り込まれる。
なお、図3(b)に示す工程では、後退させた注入管の先端と圧入済み改良材(造成途中の改良体)との間に間隔が生じるように、注入管を進退動させることが好ましい。例えば鉛直方向の施工の場合には、注入管の進退動の引き上げの際に、注入管の下端を圧入済み改良材(造成途中の改良体の天端)よりも高い位置とする。このように注入管を後退させることで、注入管先端と改良体との間に地盤が流動可能なスペースが空き、造成している改良体の窪み(凹部)に地盤が流入しやすくなる。
又、図3(b)(c)(d)に示す工程では、図3(b)に示すように注入管を後退させた後に、インターバル時間(改良体の窪みに地盤を流入させるための待ち時間)を設け、その経過後に、図3(d)に示すように注入管を前進させることが好ましい。例えば鉛直施工の場合には、注入管の進退動の引き上げ完了後に、インターバル時間を設け、その後に注入管の貫入を開始する。このようなインターバル時間を設けることで、造成している改良体の上部にある地盤が該改良体に向かって落ち込むのに必要な時間が確保できるため、改良体の内部に効率よく地盤を取り込むことができる。
なお、図3に示す実施形態では、注入管の後退と前進(引き抜きと貫入)の組み合わせからなる進退動を1回実施する場合について図示しているが、注入管の進退動の回数は1回に限定されず、後述する第2実施形態(図8)の如く複数回繰り返してもよい。
上述した注入管の進退動の工程が完了したら、注入管リフト装置を作動させて、図2(c)に示すように注入管を1ステップ分引上げ、次段の圧入開始深度に固定する。そして、再び図2(b)と同様の圧入手順で次段の改良体造成のための必要量の改良材を圧入し、続いて図3と同様の手順で次段の改良体の内部に地盤が取り込まれるように注入管の進退動工程を実行する。
以後同様に、1ステップ分の引上げ工程及び圧入工程と、注入管の進退動の工程を、必要回数繰り返す。1ロッド分の引上げが完了したら、地表側で抜き出た1ロッド分の注入管を切り離し、再び圧送ホースを接続し、同様の工程を繰り返す。なお、深度や土層によって注入管の進退動の程を省略したり、注入管の進退動の工程の仕様を変更してもよい。
上述した工程を所定深度領域に亘って繰り返すことで、図2(e)に示すように、複数体の改良体が連なって構成される1本の地盤改良体(略柱状の改良体群/コンパクション体)が造成される。本実施形態で造成する地盤改良体を構成する各改良体は、上下の改良体と相互に結合している。又、モルタル等の固結材を含む材料を改良材として用いる場合、造成される地盤改良体は、地盤内で固結した改良材と、固結した状態の前記改良材の内部に取り込まれた地盤と、を含んで構成される。
このような周辺地盤を締め固める地盤改良体を施工エリア内の複数ポイントで造成することで、各改良体の圧縮作用により改良対象地盤の密度が増大し、その結果、液状化地盤を非液状化地盤へと改良することができる。
なお、複数体の改良体を含んで構成される地盤改良体を造成する場合、すべての改良体(個々の改良体のすべて)に対し注入管の進退動を実施して、すべての改良体の内部に地盤を取り込んでもよく、あるいは、一部の改良体だけに地盤を取り込むようにしてもよい。つまり、造成する地盤改良体は、すべての改良体に地盤を取り込んで構成されてものでもよく、あるいは、一部の改良体に地盤を取り込んで構成されてものでもよい。
(地盤取り込みの効果)
造成している改良体の内部に地盤を取りこむことによって達成される効果は、図4に示すとおりである。
図4の原点0を通る1:1の直線[4]は、圧入量と地盤圧縮量が等しいことを示している。
図4の点線[1]は、従来技術1のCPG工法における改良材の圧入量と地盤圧縮量の関係を示している。
CPG工法では改良材の圧入量が比例限界点に達すると、それ以降は、地盤に隆起が発生する。
図4の実線[2]は、従来技術2のアップダウン施工における改良材の圧入量と地盤圧縮量の関係を示している。
アップダウン施工ではCPG工法以上に比例限界点に達する圧入量が増加するが、比例限界点以降は、地盤に隆起が発生する。
図4において、1:1の直線上にある実線[3]は、本発明に係る地盤取り込み式の締固め工法を示している。
アップダウン施工で発生する隆起体積分(図4において略三角形のハッチングで示す)の地盤は、本発明では造成する改良体の内部に取り込まれるので、隆起が大幅に低減される。
(注入管の外径)
本発明で使用する注入管の外径は特に限定されないが、従来技術で使用している注入管の外径よりも大きいことが好ましく、具体的には、従来技術で採用している注入管の外径 73 mmよりも大きいことが好ましい。
図5は、外径の小さい注入管と外径の大きな注入管を使用し、同体積の改良材を圧入したときの改良材の径の大きさを比較した図である。
図5(a)に示すように外径の小さな注入管を使用して、改良材を圧入した場合、注入管先端から排出された改良材は、地中で該注入管の外側を回り込み、上載圧の小さな上方へ向かって成長する。したがって、このような外径の小さな注入管を使用して、改良体を連続して造成すると、造成途中の地盤改良体の外観は図5(a)に示す様になる。
一方、図5(b)に示すように外径の大きな注入管を使用して、改良材を圧入した場合は、圧入済み改良材の上部に注入管が位置するため、該改良材は上方に行くことができずに地中で側方に広がる。この場合に造成される個々の改良体は図5(b)に示すように扁平となる。したがって、このような外径の大きな注入管を使用して、改良体を連続して造成すると、造成途中の地盤改良体の外観は図5(b)に示す様になる。
このため、図5(a)(b)を比較することで分かるとおり、図5(b)に示す大きな注入管の方が、造成する地盤改良体のくびれが小さくなり有効径が大きくなる。
図6は、外径の小さい注入管と外径の大きな注入管を使用して同体積の改良材を圧入し、その後に注入管を同じ高さまで引き上げたときの地盤の取り込み量の違いを示している。
又図6において、破線で区切られたそれぞれの圧入済み改良材は、それぞれ同体積である。
図6(b)に示す外径の大きな注入管を使用して造成した改良体は、扁平となるため、注入管の引き上げ時に改良体と注入管の縁が切れやすく、間から地盤が流入しやすい。又、外径の大きな注入管を引き上げた場合に大きな窪みが改良体にでき、そこに地盤がたまりやすい。
したがって、図6(b)に示すように外径の大きな注入管を用いることで、圧入済み改良材(造成途中の改良体)の内部により多くの地盤を取り込むことができる。
本発明では、使用する注入管の断面積比(外径の断面積/内径の断面積)を従来技術のものよりも大きくすることが好ましい。具体的には、注入管の断面積比は、従来技術で採用されている2.2(外径φ73 mmの断面積、内径φ50 mmの断面積)よりも大きく設定する。
このように、使用する注入管の断面積比を従来のものよりも大きくすることによって、注入管の肉厚が大きくなる(図6(b)参照)。
又、図7が示すように、注入管の肉厚が大きくなることで、その進退動の繰返しの際に、注入管の流路(内空部)への地盤の逆流を低減できる。
注入管の肉厚が大きくなることで、地盤を押し込む面積が大きくなるので、改良体の内部に入った地盤を、注入管の貫入時に等方に突固めしながら地盤を取り込むことができる。
(利用可能な改良材)
本発明で利用可能な改良材は特に限定されないが、例えば低流動性の材料を用いることができる。「低流動性」の材料は、地盤に圧入する段階で既に流動性が低いものであってもよく、又、圧送ホースや注入管の中を圧送している段階では流動性が低いとはいえないが、地盤内に圧入された後に脱水によって(又は経時的に)流動性が低くなるものであってもよい。
利用可能な改良材の具体例としては、例えば次のような材料が挙げられる。
(1)固化材・特殊骨材・水を所定の割合で混合したモルタル。
出願人の経験によれば、改良材のスランプ値が 7 cm以下、好ましくは 5 cm以下であれば、軟弱地盤や砂れき層であっても改良材で割裂脈を形成したり地盤を破壊することなく、地盤を押し広げて密度を増加させることができることが確認されている。この場合の「スランプ値が 7 cm以下」の材料には、圧入する段階で既にスランプ値 7 cm以下の材料が含まれ、又、地盤内に圧入された後に流動性を失ってスランプ値 7 cm以下に至る材料も含まれる。
(2)可塑性及び流動性を有し、力を加えなければ流動しないが、力を加えると流動するグラウト材。
このようなグラウト材は、懸濁液と可塑剤を混合することにより生成され、例えば、硬化発現材としてセメント懸濁液やセメントベントナイト懸濁液、或はスラグやフライアッシュに消石灰を加えた懸濁液に可塑剤として水ガラスやアルミニウム塩、粘土鉱物、高分子材等を合流したものを使用することができ、必要に応じて、骨材、添加剤(エア発生剤、分散剤、遅延剤、強度促進剤、増粘剤等)を配合してもよい。
(3)地盤改良に用いる砂杭材料を流動化させたもの。
このような改良材として、例えば砂杭材料に流動化剤を加えたものを用いることができる。又、流動化剤を加えた砂杭材料を地盤中に圧入する過程で塑性化剤を加え、塑性化した砂杭材料で改良体を造成するようにしてもよい。砂杭材料としては、従来の砂杭造成工法で使用されてきた公知の材料を用いることができ、例えば、砂、シルトや礫を含む砂、砕石、スラグ、リサイクル材などを用いることができる。
(締固め工法の第2実施形態)
締固め工法の第2実施形態の概要を図8に示す。
第2実施形態では、前述した第1実施形態と同様に図2に示すような下から上へ向かう施工方式に従って地盤改良体を造成する。
前述した第1実施形態では、1ステップ分の圧入によって改良体1体分の改良材を地盤内に圧入しいるが、第2実施形態では、複数のステップ分の圧入によって改良体複数体分の改良材を地盤内に圧入してもよい。例えば図8では、3ステップ分の圧入によって、改良体3体分の改良材を地盤内に圧入する。
又、前述した第1実施形態では、地盤取り込みのための注入管の進退動を1回のみ実施しているが、第2実施形態では、注入管の進退動を複数回繰り返す。
以下、図8に基づいて本実施形態の特徴的部分を説明する。
工程(a)
改良体3体分の改良材の圧入が完了し、注入管を1ステップアップした状態である。
この時、最も上に位置する改良体3体目の天端には、注入管の引き抜き跡である窪み(凹部)が形成され、その中に地盤が落ち込んでいる。
工程(b)
改良体3体目から1体目にかけて、注入管が貫入している状況である。
この工程では、注入管が、改良体の天端にたまっていた地盤を改良体の内部に押し込んでいる。これにより、造成している改良体の内部に地盤が取り込まれる。
工程(c)
改良体1体目から3体目にかけて、注入管を引き上げた状況である。
改良体の内部は、注入管が引き上げられた後、収縮して内側で密着する。従って、工程(b)で押し込められた地盤は、改良体の内部に閉じ込められる。
そして、注入管を引き上げることで、改良体の天端には再び窪み(凹部)が形成され、その中に再び地盤が落ち込んでいる。
工程(d)
上記工程cで改良体の天端に落ち込んだ地盤を、注入管の貫入によって、改良体の内部に押し込んでいる。これにより、造成している改良体の内部に再び地盤が取り込まれる。
以降、工程(e)、(f)、(g)、(h)、(i)と注入管の貫入及び引き上げを繰返しながら、改良体の中に地盤を取り込みながら、改良体の体積を大きくしていく。
なお、図8に例示する実施形態では、改良体3体のうち、一部の改良体(改良体1体目)だけに地盤が取り込まれるように注入管を進退動させているが、すべての改良体(改良体1体目,2体目,3体目)に地盤が取り込まれるように、進退動時の注入管のストロークをコントロールしてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(模型実験の概要)
実験で用いた模型地盤のモデル図を図9に示す。
模型地盤の注入条件を表2に示す。
Figure 0007402461000002
本実験では、図9に示すような円筒形の半透明の塩ビ土槽 (φ155 mm×450 mm) に模型地盤を作製した。
模型地盤は、下層に厚さ300 mmの砂層(改良対象層)および上層に厚さ100 mmの砕石層(非改良対象層)を敷設した2層で構成され、水位は砕石層の天端とした。
砂は東北7号硅砂 (ρs=2.631 g/cm3,emax=1.120,emin=0.609) を使用し、初期相対密度40 %を目標とし、水中落下法により作製した。
改良材としてモルタルを使用し、総量680 cm3のモルタルを改良体1体当たり30 mmずつ引き上げながら、10体に分けて圧入した。これにより、改良体10体が鉛直方向で連なって構成される略柱状の地盤改良体を1体造成した。
注入管は、外径がそれぞれφ15.0 mm, φ19.0 mm, およびφ24.0 mmを使用し、モルタルの圧入および注入管の進退動(貫入及び引き上げ)を行った。なお、注入管の内径は全てφ6.0 mmで統一した。
(地盤取り込み式の締固め工法における地盤の取り込み率)
図10に地盤改良体の地盤の取り込み率を示す。
地盤の取り込み率とは、改良体に取り込まれた砂の乾燥重量を初期地盤の乾燥重量で除した値である。
今回の模型実験で、本発明に従って造成した地盤改良体は、繰返し体積が大きなものほど地盤(砂)の取り込み率が高くなっていることが分かった。「繰返し体積」については表1を参照。
本実験において、繰返し体積が12,000 cm3以上の実験ケースで、地盤改良体の中に取り込まれた地盤(砂)の割合が15 %以上に達している。この繰返し体積は、細い注入管 (φ15.0 mm, φ19.0 mm) では繰返しの途中で、セメントが固化するため、到達できなかった。太い注入管 (φ24 mm) を使用することで、繰返し体積を減らせるため、到達できるようになる。
(地盤取り込み式の締固め工法で造成される地盤改良体の径)
図11に繰返し体積と地盤改良体の直径の最大値の関係を示す。
本実験のモルタル圧入量から想定される地盤改良体の換算改良径(改良体を均一な円柱と仮定した場合の直径)は、54 mmである。
図11が示す通り繰返し体積が大きなものほど、造成する各改良体中により多くの地盤を取り込んで、地盤改良体の直径の最大値が大きくなり、拡径することが明らかになった。
(地盤取り込み式の締固め工法による隆起抑制効果)
図12に繰返し体積と地点隆起量の関係を示す。
繰返し体積が大きいものほど、造成中の改良体に地盤を取り込んで拡径するため、地盤を圧縮する。このため地点隆起量が小さくなり、繰返し体積が12,000 cm3以上の実験ケースでは、隆起が発生しなくなった。
(地盤取り込み式の締固め工法による地盤の相対密度の増加)
地盤取り込みにより拡径した地盤改良体を含む地盤の模式図を図13に示す。
Figure 0007402461000003
Figure 0007402461000004
(断面積比に対する繰返し回数の割合)
図15に注入管の断面積比に対する繰返し体積率の変化を示す。
本発明に関する小型の模型実験に使用した注入管は以下の4種類である。
(1) 外径φ10.5 mm、内径φ6 mm
(2) 外径φ15 mm、内径φ6 mm
(3) 外径φ19 mm、内径φ6 mm
(4) 外径φ24 mm、内径φ6 mm
実大規模の現場実証実験で使用した注入管は以下の2種類である。
(1) 外径φ73 mm、内径φ50 mm
(2) 外径φ165 mm、内径φ50 mm
従来技術で使用している外径φ73 mm、内径φ50 mmの注入管の断面積比が2.2である。
外径φ73 mm、内径φ50 mmの注入管(断面積比:2.2)よりも断面積比を大きく設定することで、繰返し回数の割合が減ることが分かった。
特に、注入管の断面積比が5以上の場合には、繰返し回数を約5割低減できるため、工期短縮につながる。
1 改良体
11 注入管(削孔注入ロッド)
13 注入管リフト装置
15 流量圧力監視装置
19 圧送ホース
21 特殊注入ポンプ
23 特殊注入プラント

Claims (6)

  1. 無振動で地盤を締固める静的圧入締固め工法であって、
    周辺地盤を締め固めるための改良材を注入管を介して地盤内に圧入する工程と、
    前記注入管が圧入済み改良材の内部に貫入するように、かつ、圧入済み改良材の内部に地盤が取り込まれるように、前記注入管を進退動させる工程と、
    を含むことを特徴とする締固め工法。
  2. 注入管を進退動させる工程において、
    後退させた注入管の先端と圧入済み改良材との間に間隔が生じるように、注入管を進退動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の締固め工法。
  3. 注入管を進退動させる工程において、
    注入管の後退させた後に、インターバル時間を設け、その経過後に注入管を前進させる、ことを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載の締固め工法。
  4. 前記改良材が、低流動性の改良材からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の締固め工法。
  5. 前記注入管の外径が73mmよりも大きい、
    ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の締固め工法。
  6. 前記注入管の断面積比(外径の断面積/内径の断面積)が2.2よりも大きい、
    ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の締固め工法。
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