JP6395238B1 - 地盤強化工法および注入管装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】流動性固結材の圧入に伴う地盤の隆起、沈下等を抑制しながら、固結材を圧入して地盤を締固めて強化する地盤強化工法及び注入管装置を提供する。【解決手段】先端部に削孔刃6aを有する削孔管6と削孔管6内に設置され、削孔管6と共に地中に貫入される注入管7と、注入管7を削孔管6内に固定する固定用パッカー12と、注入管7の先端部に取り付けられ、削孔管6の先端部より地中に突出した状態で周囲の土を押し広げるように拡大して周辺地盤を締固める膨縮性袋体11とから構成する。注入管7は、膨縮性袋体11によって形成された拡径空間cに固結材dを圧入する第一注入管8と固定用パッカー12と膨縮性袋体11にそれぞれ気体または流体を圧入する第二及び第三注入管9,10とから構成する。【選択図】図13

Description

本発明は、地盤強化工法および当該地盤強化工法並びに耐震補強を実施するための注入管装置に関し、
特に、地盤中における膨縮性袋体の拡大および膨縮によって周辺地盤の高密度化を図り、かつ固結材(流動性固結材、低流動性固結材、ゲル化を伴う固結材、或いは弾性材からなる固結材等)の圧入、或は圧入と吸引を行い、圧入に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位、さらには周辺地盤の割裂や固結材の逸脱を防止しながら、連続的かつ効率的に地盤の締固めと固結体の形成、並びにその複合体による地盤強化工法を実施できるようにしたものである。
主として、液状化対策を目的とした静的締固め工法は、一般に流動性のきわめて低いモルタルなどの注入材を地盤中に静的に圧入して地盤を固結強化する工法であり、液状化対策などを目的とした地盤の静的締固め工法として一般に知られている。
しかし、従来の注入工法は、注入時の周辺地盤による水平方向の拘束力が大きいと、地表面が隆起しやすいという問題があった。また薬液注入では地盤中に存在する土粒子を素材としてその土粒子を動かすことなく、土粒子間の間隙水(地下水)を注入材に置き換えることにより地盤を強化することを原理とするか、注入材の浸透しにくい細粒土地盤には適用しにくく、無理に注入すると地盤が隆起したり、注入材が脈状注入されて注入対象外へ逸脱して注入効果が得られないという課題があった。
また、注入材が脈状に注入された場合、注入材が局部的に長く伸び、所定領域を密実に固結することは困難であり、そのため浸透性の低い地盤には適用が困難であった。
この種の課題に対処する静的圧入工法としては、地盤内に注入管を介して低流動性地盤改良材を圧入して周辺地盤を締固める改良体を形成すると共に、当該改良体を突き固めるように前記注入管をアップダウンさせることで、周辺地盤を沈下させて地表面の隆起を抑制しながら地盤を締固めて強化する工法や、注入材に対する載荷(加圧)と除荷を繰り返し付与しながら地盤内に注入材を圧入することにより、地盤の密度増大と地盤隆起の抑制を図るようにした注入工法が知られている(特許文献1,2参照)。
当出願人は、地盤内に可塑状ゲル注入材を圧入すると共に、当該可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル体に加圧(圧入)と負圧(吸引)を繰り返し付与して、周辺地盤が破壊しないように可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、周辺地盤を締固めて強化する工法を発明し、すでに権利を取得している(特許文献3参照)。
さらに、当出願人は、地盤内に流動性注入材または可塑状ゲル注入材を圧入すると共に、当該注入材からなる塊状ゲル体にピストンの往復動によって圧入(加圧)と吸引(減圧)を交互に繰り返し付与して塊状ゲル体を徐々に拡大させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合を解放すると共に、間隙水圧の上昇に伴う液状化に類似した土粒子の浮遊により生じた固結体の周囲に生じたルーズな領域に可塑状ゲル注入材を圧入して塊状ゲル体を徐々に拡大させることにより周辺地盤の密度増大を図り、同時に注入材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位を圧入と吸引の圧力、圧入量およびそれぞれのサイクルをコントロールすることにより地盤変位を調整しながら、連続的に効率のよい地盤の締固めを確実に行うことができ、さらに固結体間の連続性と止水性の向上を図ることができる地盤注入工法についても特許を取得している(特許文献4参照)。
特許第5598999号公報 特許第4300367号公報 特許第4808241号公報 特許第6014812号公報
しかし、これらの工法は、圧入と吸引を繰り返しながら静的に固化液を注入することが可能で、高い締固め効果が期待できるが、地盤状況は不均質であり、また、圧入後の固結体の形状が不均等になりやすいため、地盤状況に応じた所定の径を持つ連続した柱状固結体を形成すると共に、地表面付近の地盤隆起量を低減して地盤面が変化しにくい地盤改良工法の開発が求められている。
また、一定の注入速度で注入する従来の注入工法において、上記問題を解決するため、動的注入工法として注入速度をsin波で変化させて注入速度と注入圧力を変化させて割裂・浸透・ゲル化を行なって脈状注入をできるだけ細かい密度で行う方法も開発されているが、広範囲を均等に改良することは困難である。
また、高圧噴射工法のようにセメント懸濁液を高圧で噴射して、或いは水と空気を噴射して生じた空隙をセメント懸濁液と置き換えて地盤を強化する工法も多く採用されているが、この工法は産業廃棄物となる排土が大量に発生するという問題や大きな径の所定の形状を形成することが困難であるという問題があった。
また、地盤内に塊状固結体を単に加圧と負圧を付与しながら形成する方法は、軟弱地盤の高密度化には優れているが、一様な一定の径を有する固結柱を形成することは困難であり、またその地盤改良強度は高密度化のみに依存せざるを得ないため、充分な地盤改良強度を得るには改良率(1m2当りの固結面積)を大きくする必要があり、大きな固結径を得るには自ずと限界があった。
本発明は、本出願人による先願をさらに発展させたものであり、特に締固めと固結体の形成を確実に行うことによる簡便、かつ確実に地盤強化を行うことを可能にした地盤強化工法および当該工法を実施するための注入管装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、注入管の先端部に取り付けられた膨縮性袋体を地盤内で徐々に拡大させるか、或いは膨縮させながら徐々に拡大させて周辺地盤を周囲に押し広げるように締固め、さらに膨縮性袋体を拡大させることによって形成された拡径空間に、流動性固結材または流動性の低い固結材或いはゲル化を伴う固結材、例えば、懸濁液、或は流動性の低い懸濁液や可塑性グラウト等を圧入して柱状に連続する固結体を形成することにより地盤を締固め強化することを特徴とするものである。
また、従来の掘削工事における地盤改良は強度のみならず止水を要求されるため改良地盤全体の浸透固結が要求された。しかし、地盤強化、支持力増加を目的とした場合、もともと強度の高い領域では浸透固結する必要がなく、弱い層が要求される強度になれば経済的に目的を達することができる。本発明はこれらの課題も解決したものである。
特に、地盤内で膨縮性袋体を膨縮させながら徐々に拡大させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合を解放して膨縮性袋体周囲のルーズな周辺地盤に生じたせん断強度の弱い領域が膨縮性袋体によって締固められることで地盤密度が増大し、さらに膨縮性袋体によって形成された空間に流動性固結材または流動性の低い固結材を圧入して柱状に連続する固結体を形成することにより、固結材の圧入に伴う地盤の隆起や沈下等を抑制しながら周辺地盤の密度増大を図ることができる。
本出願人は、後述する実験で示すように膨縮性のあるゴムの袋体を連続的に膨縮することによる締固め効果と圧入圧力の低減による地盤隆起の低減を目出し本発明を完成したものである。本発明は、膨縮性袋体の連続的な膨縮が地盤変位を低減するため地表面や周辺構造物への影響を低減しながら地盤強化を図ることができる。
また、複数の杭が互いに影響し合い、一体となって地盤を強化する固結柱(群杭)を形成することにより、多数の固結柱と周辺土の高密度化された地盤が一体となった地盤強化や液状化防止を図ることができる。
また、固結材を圧入する際の加圧と吸引の圧力、圧入量およびそれぞれのサイクルを適切にコントロールすることにより、固結材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位、周辺地盤の割裂や固結材の逸脱を防止しつつ、連続的かつ効率的に地盤の締固めを行うことができ、また固結体間の連続性と止水性の向上を図ることができる。
なお、固結材には、懸濁液、或は流動性の低い懸濁液、可塑性グラウトまたは流動性注入液又はゲル化を伴う注入液、弾性材、さらにはこれらを併用して使用することができる。
膨縮性袋体は、不透水性の合成ゴム等、或いはこれらを高強度繊維で補強して用いることができ、気体(主としてエア)または流体(主として水)を圧入することにより任意の全体的に均一な大きさに膨張拡大させることができ、さらに袋体に圧入された気体または流体に加圧(圧入)と負圧(吸引)を交互に付与することにより、膨縮性袋体を膨縮させながら徐々に拡大させることができ、これにより膨縮性袋体の拡大による地盤の隆起や沈下等を抑制しつつ、周辺地盤を周囲に押しやるように効率的かつ均一に締固めることができる。
また、膨縮性袋体を拡大させることにより形成された拡径空間に流動性固結材或いは可塑性グラウトや低流動性固結材を圧入することにより、多数の均一径の固結柱と周辺土の圧密された地盤が一体となった群杭を形成して地盤強化を図ることができる。
また、前記拡径空間に固結材を圧入することにより均一な一定径、或いは周辺地盤の密度に対応した所定径の固結柱が形成されるため、その改良地盤の強度は固結注入強度にも算入できるため固結柱による改良率は少なくてすみ極めて経済的でかつ施工が容易な地盤強化が可能になる。なぜならば、固結柱間の密度の増加と固結柱の強度を加算した複合地盤の強度の設定が可能になるからである。
また、地盤強度の劣る部分は圧縮量を大きくして周辺地盤の強度を均等化して改良することができ(図5(a),(b)参照)、さらに簡便に均一な所定径を有する多数の杭を形成し、かつ廃泥を生ずることなく地盤の支持力を均一にして液状化や建物の不動沈下等を防止することができる。
また、本発明は、宅地や工場建設地、あるいは道路などの地盤の安定化や斜面(法面)の強化などにも適用でき、さらには既存構造物の直下や近傍の地盤改良にも適用が可能であり、地盤改良に伴う既存の建物や構造物の損傷等を回避しながら耐震補強が可能できる。
また、工事や地震などによる液状化等で沈下した地盤の復旧工事にも適用でき、廃泥を生ずることなく、かつ一本一本が所定の杭径を有する群杭の強度と周辺地盤を強化して一体化することにより複合地盤としての改良強度を設定する地盤改良も可能である。
また、本発明の注入管装置は、ピストンポンプ、或いは流体吸引装置、さらには流体の圧入と吸引の両方の機能を備えた装置(例えば圧入ポンプまたは吸引ポンプ、あるいは圧入と吸引の両方の機能を備えたポンプ)に接続して使用することができ、これらのポンプによって地盤内の膨縮性袋体に気体または流体を圧入することにより地盤を締固めることができ、また膨縮性袋体によって形成された拡径空間内に固結材を確実に圧入して地盤を締固め強化することができる。
また、加圧と負圧を交互に付与して周辺地盤を締固めて高密度化すると共に、袋体によって形成された拡径空間内に固結材を圧入することにより、複数の固結柱からなる群杭を形成して地盤の高密度化を図ることができ、また複数の固結柱と周辺地盤とを一体化した地盤改良をきわめて効率的にかつ経済に実施することができる。
地盤内に形成された拡径空間内に圧入ポンプを用いて固結材を圧入する場合、拡径空間に固結材を圧入しつつ、固結材からなる固結体にピストンの往復動によって加圧(載荷)と吸引(減圧)を交互に繰り返し付与して固結体を膨縮させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合が解放されると共に、間隙水圧の上昇に伴う液状化に類似した土粒子の浮遊により塊状ゲル体の周囲にせん断強度の低下した領域が形成され、当該領域に固結材が圧入されて容易に塊状ゲル体が徐々に拡大することにより周辺地盤が締固められて地盤密度の増大が図られる。
同時に、ピストンのストロークを変えて固結材の圧入量と吸引量をコントロールすることにより、固結材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位を抑制することで、周辺地盤の割裂や固結材の逸脱を防止しながら地盤の締固めを確実に行うことができ、さらに固結体間の連続性と止水性の向上を図ることができる。
すなわち、本発明は、単に流動性固結材を地盤内に均等浸透させたり、或は脈状浸透させて地盤を固結強化する薬液注入工法とは異なり、地盤内で固結材そのものからなる塊状ゲル体にピストンの往復動によって加圧(載荷)と吸引(減圧)を交互に繰返し付与して塊状ゲル体を膨縮させながら徐々に拡大させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合を解放して塊状ゲル体周囲のルーズな周辺地盤の土粒子間の結合を解放することにより生じたせん断強度の弱い領域に固結材を容易に圧入し、かつ塊状ゲル体を徐々に拡大させて周辺地盤の密度増大を図り、同時にピストンのストロークを変えて固結材の圧入量と吸引量を調整することにより、固結材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位をコントロールすることにより周辺地盤の割裂や注入材の逸脱を防止しながら地盤の締固めを行って地盤の高密度化と固結柱の強度を付与し、さらに固結体間の連続性と止水性の向上を図れるようにしたものである。
本発明は、膨縮性袋体を介して周辺地盤に圧入による加圧と吸引による負圧を交互に繰り返し付与することで、周辺地盤にダイレイタンシーが生じ、かつ間隙水圧が上昇して有効応力が低下し、せん断強度が低下することにより周辺地盤が周囲に押しやられるように効率的に締固めることができて地盤の高密度が図られる。
地盤の改良効果は、圧入力を大きくすれば、密度が高くても或は有効応力が高くても、それを圧入力で破壊してかつ吸引することによって、固結材の強度と注入量を大きくすることによって地盤を強化することができる。したがって、その地盤を破壊できる強度に対応して、かつ地盤の変位の許容範囲になるように所定の強度の地盤改良を行なうことができる(図4参照)。
なお、図1は液状化しやすい地盤の粒径分布を示す。図1から判るように薬液注入を行なっても液状化しやすい地盤にすべて浸透させることができない。特に懸濁液を用いて高強度を得ようとしても浸透し得ないことが判る。
図2は本発明の改良効果の原理を示す。
図2(イ)は土粒子の配列の例を示す。このような地盤の土の粒径が浸透限界外だと注入液は図2(ロ)のように脈状注入によって対象範囲外へ逸脱する。
しかし、本発明のように膨縮性袋体の膨縮を繰り返すと(図2(ハ))、ルーズな地盤に載荷と負荷を繰り返して間隙水圧の上昇・減少を繰り返すことによって、土粒子同士の結合が失われて液状化のように土粒子が浮き上がり(図2(ニ))、有効応力が低下してせん断強度が低下し、ルーズな領域を生ずる。そのルーズな領域を膨縮性袋体が膨縮しながら徐々に拡大することにより締固め、さらに固結材を圧入することにより土粒子を外側に押しやる。この過程を繰り返すことによって固結体が徐々に拡大する(図2(ホ))。このように、圧入と吸引を繰り返している間、その作用がさらに外部まで拡大する。
勿論、圧入が充分行われ、或いは流動性固結材の固化による流動性の低下が進行するにつれ、固結材の吸引は低減するので、さらに、圧入圧と吸引圧を高くして吐出量を調整して繰り返すか、或いは次の圧入ステップに移動することになる。
図3(イ),(ロ),(ハ)は、膨縮性袋体の膨縮によって周辺地盤が効率的に締固められる原理を図示したものである。
注入管にピストンポンプを接続し、膨縮性袋体に気体または流体を圧入すると膨縮性袋体が膨張する(図3(イ))。次に、膨縮性袋体内の気体または流体を一部吸引すると膨縮性袋体は一定量縮小する(図3(ロ))。同時に膨縮性袋体周辺の地盤の土粒子間の結合が解放されると共に、間隙水圧の上昇に伴う液状化に類似した土粒子の浮遊により膨縮性袋体周囲の地盤の有効応力が低下し、地盤のせん断強度が失われる(図3(ロ))。
したがって、ピストンの往復動によって膨縮性袋体内の気体または流体に加圧(載荷)と吸引(減圧)を交互に付与して膨縮性袋体を繰り返し膨縮させながら徐々に拡大させることにより周辺地盤の高密度化を図ることができる(図3(ハ)参照)。
膨縮性袋体を膨縮させることによる空間の拡張の効果は上述した通りであるが、袋体で形成された後の空間の注入材の挙動は、注入材の特性によって異なり、注入材が低流動性の場合や可塑状固結材の場合は、固結材の空間への圧入によって固結体そのものの柱状体が大きく形成される。この場合、圧入と吸引を繰り返せばその固結体そのものは拡大して大きな固結柱が形成される。一方、注入材の流動性が大きい場合はそのまま圧入し続けたら注入材は地盤の弱い層や地表面に逸脱してしまうが、圧入と吸入を繰り返した場合図2(ニ)の状態の土粒子と混じりあって、土中で注入液と土粒子の混合固結物が形成される。
このようにすれば注入液が注入対象領域に逸脱することはなく、また注入液が土粒子間浸透しえないような細粒土も固結することができる。勿論、地盤隆起もコントロールすることができる。
以下に、膨縮性袋体による繰り返し静的締固めの原理の実験を示す。これによる固結材の適切な注入量と吸出量の関係や圧入工法の注入圧力とその圧力時における注入体積の関係を知ることができる(図6〜図9参照)。
1.球状載荷による静的締固め実験
1-1.実験概要
本実験装置は定流量型ポンプおよび測定セルで構成されており、定流量型ポンプはチューブを介して測定セルに水を注入・抽出することが可能である。水の注入・抽出速度は1.4cc/min〜75cc/minの範囲で調節することができ、吐出口に設置した水圧計により注入圧力を計測する。本実験では75cc/minで注入・抽出を行った。測定セルの先端には球状に載荷できるように球状のゴムゾンデを採用している。
模型地盤の作製は,まずステンレス製のドラム缶(D=45cm,H=85cm)に地盤高12cmまで珪砂7号を投入,冶具を用いて測定セルを上向きに設置,その後は空中落下法により砂の投入を行った。模型地盤の相対密度はDr=約60%である。
また、地盤内での挙動を把握するために土圧計と繰返し圧入が地表面へ与える影響を確認するためにレーザー変位計を土槽上部中央に設置して地表面隆起を計測した。図6に実験の概略図を示す。また、収縮したゴムゾンデが球状に膨らむまでの過程を排除するため、地盤作製前にゴムゾンデに水の初期注入を5分間行い、ゴムゾンデが直径10cm程度の球になるように調整した。
1-2.実験結果・考察
今回の実験では現行の静的締固め工法を模擬した連続注入と可塑状ゲル圧入工法を模擬した繰返し圧入で3Caseの実験を行った.各実験Caseを表-1に示す。また,注入中に発生する注入圧力にはゴム張力が含まれているため、実験結果からゴム張力を差し引いた。図7に注入量とゴム張力を除した注入圧力の関係を示す。
Case1、Case3では注入量600cm3付近で最大圧力が生じ、Case2では注入量250cm3付近で最大圧力が生じた。
また、すべてのCaseで注入量が250cm3付近までは同様の圧力上昇の傾向を示したが、Case2では注入量250cm3付近から注入圧力が低下する結果となった。これは繰返し圧入により土の剛性が低下したためと考えられる。
図8に注入量と地表面の鉛直変位の関係を示す。Case1では注入量が250cm3付近から変位の傾きが大きくなり実験終了時には地表面の隆起量は約30mmとなった。Case2、Case3では注入量600cm3付近までは隆起量と沈下量がほぼ一定で変化しているが、徐々に隆起量が大きくなり増加傾向を示した。また、同注入体積で比較して繰返し効果による隆起抑制が確認された。
図9に示した実験前後の地表面の断面図より、土槽中央部の改良体直上だけが隆起することはなく地表面全体で隆起が確認された。この現象はこの深度においてゴムゾンデ径に比して土槽径が小さく、土槽境界の影響を受けたためと考えられる。
1-3.まとめ
今回の実験から静的締固め工法における繰返し圧入は地表面の隆起抑制に効果的であることが示唆された。また、細かいサイクルで注入・抽出を行うものが地表面の隆起量が小さく,既設構造物の直下・直近での施工に適していると考えられる。
本発明における注入管の例を以下に示す(図10〜図18参照)。
注入管は先端部に膨縮性袋体を設けて袋体への流体流路と注入液の流入流路を有するものを用いる。例えば、注入管は外管と内管からなり、内管は先端に吐出口を有し、それより上部に地盤を押し広げ用袋パッカーを装着し、かつ内管が外管内を上下に移動することができる。或いは、内管が突出したまま外管が上方に移動することができる。
また特に、既設構造物の直下や橋脚の下、または地下構造物の直下または周辺に不透水性の膨縮性袋体を設置し、その中に固結材として弾性材を圧入して周辺地盤を押し広げるように徐々に拡大することにより、地震等の振動の伝達を軽減し、構造物に免震機能を付与する柱状、版状または球状の免震体を形成することができる。なお、固結材の代替材として気体または流体を圧入することもできる。
また、既設構造物周囲の地盤が支持地盤として比較的良好な場合は、膨縮性袋体内への固結材の圧入ではなく、膨縮性袋体を膨張させることにより地盤中に形成された拡径空間に固結材として弾性材を直接圧入して免震体を形成してもよい。ただし、この場合は気体や流体の使用は避けるのが望ましい。 本発明における固結材として、弾性材を用いることができる。弾性材の例としては、本発明者による先願発明特許第3934103号の例にあるようにポリビニールアルコールとグリオキザールとシリカ化合物を有効成分とし、配合時には液状であるが、配合後は弾力性ゲル化物を形成する組成物や、同じく本発明者の先願発明である特開2007-154090号公報に記載にあるようにウレタンポリマーと水を有効成分とし、配合時には液状であるが配合後は弾性体となる組成物などがあるが、上記膨縮性袋体に流動性のある状態で圧入し、不透水性膨縮性袋体の中に密封されて弾力性を保持できるものならば適用できる。
不透水性膨縮性袋体の中に密封して弾力性を示す弾性材料として上記固結材のほかに、気体や液体、懸濁液、粘土などのチキソトロピックな性質を有する非固結性材料を用いてもよい。
これらは免震材として作用し、地震などの振動の伝達を軽減し、構造物に免震機能を付与すると考えられる。また、上記弾性材にはセメント、スラグ、フライアッシュ、粘土、土砂、シリカ粒子、人口骨材、発泡粒体、タイヤ等を粉砕した人工弾性粉状体、ホワイトカーボン等を混入して用いることもでき、また、これらの弾性材を上記不透水性膨縮性袋体の中に圧入しても、或いは上記不透水性膨縮性袋体で拡径した空間に圧入してもよいことは勿論である。
(実験2)
使用材料
使用材料はウレタンボリマーと水とを有効成分として含有する地盤注入材であって、ウレタンポリマーの含有量を20重量%未満とすることにより、未硬化状態では低粘性の液状を呈し、硬化すると粘弾性で止水性に優れ、かつ耐久性にも優れ、配合時には液状で流動性のあるウレタンポリマーであることが望ましい。
試験に用いたウレタンプレポリマーは、一般式
R[OR1nOH]P
(式中、Rは多面アルコール残基を示し、[OR1]はオキシエチレン基と、炭素数3〜4のアルキレン基を有するオキシアルキレン基とからなるポリオキシアルキレン鎖を示す。ただし、[OR1]におけるオキシエチレン基の割合は、分子量20〜100重量%を占める。nはオキシアルキレン基の重合度を示す数で、水酸基当量が170〜6000となるに相当する数を示し、pは2〜8の数を示す。)で示されるポリエーテルポリオールの一種または複数種をポリイソシアネートと反応させて得られる末端NCO基含有量が1〜12%のウレタンプレポリマーである。
図22に示される振動試験槽16を用いて振動試験を行った。高さ50cm、幅50cm、奥行き50cmの大きさの振動試験槽16を用意し、この中に海砂17を相対密度60%となるように敷き、海砂17中に免震体18を設置した。
免震体18は高さ10cm、幅20cm、奥行き20cmの型枠の中央に加速度計19および変位計20を配置し、以下の配合例の注入材を充填し、その後1日静止し、脱型して作成した。
(配合)
ウレタンポリマー 100g
水 900ml
ゲルタイム 5分
体積変化 102%
この試験槽16に変位計20および加速度計19を用い、水平加速度150Gal、最大変位2cmで20秒間振動を加えて振動試験を行った。免震体18中の加速度計19の示す応答加速度、変位計20の示す応答変位を測定した。また比較のために、免震体18を埋設しない砂層における同位置の応答加速度、応答変位も測定した。
免震体18がないときの海砂17中の応答加速度のグラフを図21に示し、海砂17中に免震体18を設けたときの応答加速度のグラフを図22に示す。
免震体18がない海砂17中では、図21に示すように、水平加速度150Gal、最大変位2cmの振動を与えることにより、応答加速度が約300Galとなり、応答変位は最大3cmとなった。
一方、免震体18を設けた場合、同振動により免震体18内では図22に示されるように、応答加速度が約130Gal以下、応答変位は最大1.5cmと軽減された。このことから、既設の構造物直下や橋脚の下、または地下構造物の周辺に本発明の固結材を注入して免震体を設けることにより地震等の振動の伝達を軽減し、構造物に免震機能を付与するものと考えられる。
さらに、試験測定後の免震体18は破損することなく振動を与える前の形状を保持していたことから、繰り返し荷重を受ける環境でも利用できる。
本発明は、注入管の先端部に取り付けられた膨縮性袋体を地盤内で徐々に拡大させるか、或いは膨縮させながら徐々に拡大させて周辺地盤を周囲に押しやるように締固めることができ、また、膨縮性袋体を拡大させることによって形成された拡径空間に流動性の低い固結材、例えば流動性の低い懸濁液や可塑性グラウト等を圧入して柱状に連続する固結体を形成することにより地盤を強化することができる。また、流動性の優れた懸濁液や浸透性溶液型注入材やゲル化を伴う注入液と土との混合固結体を形成できる。
また、膨縮性袋体によって形成された拡径空間に、流動性の低い懸濁液や可塑性グラウト、或はゲル化を伴う注入材等の固結材を圧入すると共に、当該固結材からなる塊状ゲル体にピストンポンプ等によって加圧(圧入)と負圧(吸引)を交互に繰り返し付与して塊状ゲル体を膨縮させることにより、周辺地盤の土粒子間の結合を解放すると共に間隙水圧の上昇に伴う塊状ゲル体の周囲に生じたルーズな領域に固結材を圧入して塊状ゲル体を徐々に拡大させることにより周辺地盤の密度増大を図ることができる。
勿論、膨張袋体内部の空間に固結体を形成することもできる。この場合、内部に固結材が充填された袋体がそのまま地盤中に形成されることになる。
図1(a),(b)は、液状化の可能性のある土の粒径分布を示したグラフである。 図2(イ),(ハ),(ニ),(ホ)は、流動性固結材の圧入・吸引を繰り返したときの土粒子間の結合の消滅および固結体の拡大する状況を示す説明図、図2(ロ)は単なる圧入のみの場合の脈状注入による注入材の逸脱を示す説明図である。 図3(イ),(ロ),(ハ)は、本発明の原理を示す説明図である。 本発明の改良設計の一例を示した説明図である。 複数の固結柱(群杭)が互いに影響し合い、一体となって地盤を強化する固結柱を図示したものであり、図5(a)は縦断面図、図5(b)は平面図である。 膨縮性袋体(合成ゴムを使用)による繰り返し静的締固めの原理の実験を実施する装置の概略を図示したものであり、図6(a)は縦断面図、図6(b)は平面図である。 現行の静的締固め工法を模擬した連続注入と本発明の圧入・吸引工法を模擬した繰返し圧入の結果をグラフ化したものであり、注入量とゴム張力を除した注入圧力の関係を示すグラフである。 現行の静的締固め工法を模擬した連続注入と本発明の圧入・吸引工法を模擬した繰返し圧入の結果をグラフ化したものであり、注入量と地表面の鉛直変位の関係を示すグラフである。 現行の静的締固め工法を模擬した連続注入と本発明の圧入・吸引工法を模擬した繰返し圧入の結果をグラフ化したものであり、水平距離と鉛直変位との関係を示すグラフである。 図10(a),(b),(c),(d)は、本発明の地盤強化工法および注入管装置の一実施形態を図示したものであり、施工手順の説明図である。 図11(a),(b),(c),(d),(e)は、本発明の地盤強化工法および注入管装置の一実施形態を図示したものであり、図10の施工手順から続く施工手順の説明図である。 本発明の注入管装置の他の実施形態を図示したものであり、図12(a)は注入管装置の先端部分の縦断面図、図12(b),(c)は、それぞれ図12(a)におけるイ−イ線、ロ−ロ線断面図である。 図12に図示する注入管装置による地盤強化工法の一部施工手順を図示したものであり、図13(a)は気体または流体の注入により膨縮性袋体を膨張拡大させる工程、図13(b)は拡径空間に注入管を介して固結材を圧入する工程を示す注入管装置の先端部分の縦断面図である。 本発明の地盤強化工法および注入管装置の他の実施形態を図示したものであり、図14(a),(b),(c)は施工手順を示す説明図である。 本発明の地盤強化工法および注入管装置の他の実施形態を図示したものであり、図15(a),(b),(c)は図14の施工手順に続く施工手順を示す説明図である。 本発明の地盤強化工法および注入管装置の他の実施形態を図示したものであり、図16(a),(b),(c)は施工手順を示す説明図である。 本発明の地盤強化工法および注入管装置の他の実施形態を図示したものであり、図17(a),(b),(c),(d)は図14の施工手順に続く施工手順を示す説明図である。 注入管装置の他の実施形態を図示したものであり、図18(a)は注入管装置先端部の縦断面図、図18(b)は気体または流体の注入により可動管が下降する状態を示す縦断面図、図18(c)は気体または流体の注入により膨縮性袋体が膨張拡大する状態を示す縦断面図、図18(d)は注入管と注入管の先端から取り外されたロケット管の縦断面図がある。 固結材の製造および供給プラントの概要を示す説明図である。 振動試験槽の断面図である。 海砂中の応答加速度を表したグラフである。 免震体中の応答加速度を表したグラフである。
[第一実施形態]
図10、11は、本発明の地盤強化工法および注入管装置の一実施形態を図示したものであり、図において、注入管装置1は、削孔管2と当該削孔管2内に設置された注入管3とを備え、同心円状の二重管構造に構成されている。
削孔管2は、注入管3との間に一定の間隙を有し、後述するシールグラウト材および低流動性固結材の送液管を兼ねている。また、注入管2の先端部には注入管3とともに地盤内に貫入するための削孔刃2aと貫入時に削孔管2内に掘削土が入らないように底蓋(図省略)が取り付けられている。この場合の底蓋としては、上方には開かず、下方向に例えば、片開きまたは両開きに開くように取り付けてあればよい。また、貫入時の抵抗を低減するように下方に小径となる円錐形状に形成してあればよい。
注入管3の先端部部分にはゴム等からなる膨縮性袋体4が取り付けられている。当該膨縮性袋体4は、注入管3の先端部分の全周を管軸方向に一定長に渡って覆うように取り付けられ、その管軸方向の上下両端部は完全に密閉されている。また、注入管3の先端部分の周壁には膨縮性袋体4内と連通する複数の吐出口3aが形成されている。
また、膨縮性袋体4は、注入管3の先端部分と共に削孔管2の先端より地中に突出された状態で、注入管3を介して注入されるエアまたは水によって、注入管3を中心にその半径方向にほぼ球状または管軸方向に長軸を有する繭玉状に膨張しかつ膨縮するようになっている。このように構成された注入管装置1は、ボーリングマシンや建柱車やバックホー等の建設重機(図省略)に鉛直に据え付けられ、動力によって地中に挿入又は貫入する。
次に、注入管装置による本発明の地盤強化工法の施工手順について説明する。
(1)最初に、削孔管2を注入管3と共に地盤内に貫入する(図10(a),(b)参照)。その際、固結柱を深く施工する場合は、削孔管2と注入管3を必要に応じて随時継ぎ足して延長する。
(2)削孔管2と注入管3を設計深さまで貫入したら、次に、注入管3をその位置に残し、削孔管2のみを膨縮性袋体4が削孔管2の先端より、削孔管2によって形成された削孔空間a内に突出する位置まで引き上げる(図10(c)参照)。これにより削孔管2の先端部分に削孔管2の外径寸法代の削孔空間aが形成され、削孔空間aの中心に膨縮性袋体4が設置される。
(3)次に、削孔空間a内に削孔管2と注入管3間の間隙を介して地上よりシールグラウトbを注入する(図10(d)参照)。シールグラウトbにはベントナイト等の孔壁安定材やCMC等の高分子ポリマーや低強度のセメントスラリー等が適している。(図10(d),図11(a)参照)
(4)次に、膨縮性袋体4内に注入管3を介して地上よりエアまたは流体(主として水)を圧入して、膨縮性袋体4をほぼ球状または管軸方向に長軸を有する繭玉状に徐々に拡径することにより周辺地盤を周囲に押し広げるように締固めると共に、削孔空間aの内壁面の空隙をシールグラウトbによってシールすることにより安定した空間を形成したままとなる。(図11(a),(b)参照)
その際、特に膨縮性袋体4内のエアまたは流体に加圧(圧入)と負圧(吸引)を交互に付与して、膨縮性袋体4を膨縮させながら徐々に拡径することにより周辺地盤を周囲に押し広げるようにきわめて効率的に締固めることができる。なお、地盤が安定していて、削孔空間aの周壁が崩落するおそれがない場合は、シールグラウト材bは省略してもよい。
(5)次に、膨縮性袋体4を元の状態に縮小させ、かつ注入管3を先端の膨縮性袋体4が削孔管2内に収納される位置まで引き上げる(図11(b)参照)。
(6)次に、膨縮性袋体4を拡大させることにより形成された拡径空間cに削孔管2と注入管3との間の間隙を利用して低流動性固結材dを圧入して充填する(図11(c)参照)。
その際、低流動性固結材dを加圧(圧入)と負圧(吸引)を交互に付与しながら圧入することにより、空間をさらに拡径して拡径空間c内に低流動性固結材dを高密度に圧入することができる。この際、流動性固結材なら固結材と土の混合体が地盤中に形成される。セメント懸濁液を用いた場合、地盤中にソイルセメント状の強固な固結地盤が形成される。
工程(1)から(6)により、施工される固結柱Aの最下端部の一定長が形成される。以下、削孔管2と注入管3を交互に一定量ずつ引き上げながら工程(2)〜(6)を交互に繰り返し実施することによりほぼ一様な断面径の固結柱Aを設計深さまで形成することができる。
また、特に支持力の弱い地層においては、膨縮性袋体4の膨縮径を大きくして締固めることにより部分的に高密度化すると共に、径を部分的に大きくすることにより支持力を高めることができる。
さらに、図5(a),(b)に図示するように、一定領域に複数の固結柱Aを施工して周囲の地盤と一体な群杭とすることもできる。また、圧入された固結材dが固化する前に鉄筋や鋼材を建て込むことにより補強することもできる。図11(d),(e)は、あらかじめ柱状の空間cを図11(a),(b)のようにして形成したうえで空間c内に固結材dを圧入して固結柱Aを形成した例である。
[第二実施形態]
図12〜15は、本発明の第二実施形態を図示したものであり、図12,13は、本発明の注入管装置、図14〜図16は本発明の地盤強化工法の施工手順を図示したものである。
図12および図13において、注入管装置5は、削孔管6と当該削孔管6内に設置された注入管7とを備え、同心円の二重管構造に構成されている。なお、削孔管6と注入管7は、同一方向に並列に設置された並列管構造に構成されていてもよい。
削孔管6の先端部には注入管7と共に地盤内に貫入するための削孔刃6aと貫入時に削孔管6内に土が入らないように底蓋(図省略)が取り付けられている。
この場合の底蓋としては、上方には開かず、下方に例えば片開きまたは両開きに開くように構成してあればよい。さらには、貫入時の抵抗を低減するように円錐形状に形成してあればよい。
注入管7は、削孔管6の中心より外側に同心円状に設置された第一、第二および第三注入管8,9および10から同心円の三重管構造に構成され、そのうち、第一注入管8は、削孔管6によって削孔される削孔内に地上から低流動性固結材を注入するための送液管であり、削孔管6の先端に到達する長さに形成されている。
なお、第一、第二および第三注入管8,9および10は、同一方向に並列に設置された並列管構造に構成されていてもよい。
また、第二注入管9は、第一注入管8の先端部分に取り付けられた膨縮性袋体11に、地上より気体(主としてエア)または流体(主として水)を圧入するための送液管であり、先端が膨縮性袋体11に接続されている。
そして、第三注入管10は、第二注入管9の先端よりやや上方部分に取り付けられた固定用パッカー12に、地上より気体または流体を圧入するための送液管であり、先端が固定用パッカー12に接続されている。
膨縮性袋体11は、第一注入管8の先端部分の全周を管軸方向に一定長に渡って覆うように取り付けられ、その管軸方向の上下両端部は完全に密閉されている。また、膨縮性袋体11は、第一注入管8の先端部分と共に削孔管6の先端より地中に突出された状態で、第二注入管9を介して注入される気体または流体によって、第一注入管8を中心にその半径方向にほぼ球状または管軸方向に長軸を有する繭玉状に膨張しかつ膨縮するように取り付けられている。そして、当該膨縮性袋体11が、気体または流体を圧入することにより地中内で周辺地盤を押し広げるように拡径することで、固結材を圧入するための拡径空間が形成される。
固定用パッカー12は、第二注入管9の外周部に膨縮性袋体11と管軸方向に所定間隔離れ、かつ第二注入管9の管軸方向に一定長に渡って取り付けられ、その管軸方向の上下両端部は完全に密閉されている。
また、固定用パッカー12は、削孔管6内にあって第三注入管10を介して注入される気体または流体によって膨張し、かつ膨縮するように取り付けられている。当該膨縮パッカー12が膨張することにより、注入管7を削孔管6に固定すると共に、削孔管6と注入管7との間を完全に密閉して注入された固結材が削孔管6と第三注入管10の間から逆流することを防ぐことができる。
次に、図12,13に図示する注入管装置による本発明の地盤強化工法の施工手順について説明する(図14,15参照)。
(1)最初に、削孔管6を注入管7と共に地盤内に貫入する(図14(a)参照)。なお、固結柱を深く施工する場合は、削孔管6と注入管7(第一、第二および第三注入管8,9,10)を必要に応じて随時継ぎ足して延長する。
(2)削孔管6と注入管7を必要とする深さまで貫入したら、次に、注入管7をその位置に残し、削孔管6のみを膨縮性袋体11が削孔管6の先端より地中に突出する位置まで引き上げる(図14(b),(c)参照)。これにより膨縮性袋体11の周囲に削孔管2の外径寸法代の削孔空間aが形成される。
(3)次に、固定用パッカー12に第三注入管10を介して気体または流体を圧入して、固定用パッカー12を膨張拡大させることにより注入管7を削孔管6内に固定すると共に、削孔管6と注入管7との間を完全に密閉する(図15(a)参照)。
(4)次に、膨縮性袋体11内に第二注入管9を介してエアまたは流体を圧入して、膨縮性袋体11を徐々に拡大させる(図15(a)参照)。その際、膨張と収縮を繰り返しながら拡大させることにより周辺地盤を周囲に押し広げるように効率的に拡大させることができる(図13(a)参照)。
(5)次に、固定用パッカー12を元の状態に収縮させ、注入管7を先端の膨縮性袋体4が削孔管6内に収納される位置まで引き上げる(図15(b)参照)。そして、固定用パッカー12を再度拡大させた注入管7を削孔管6内に固定すると共に、削孔管6と注入管7との間を密閉する(図15(c)参照)。これにより、削孔管6より下方にほぼ球状または繭玉状の拡径空間cが形成される。
(6)次に、拡径空間c内に第一注入管8を介して流動性固結材dを圧入する(図15(c)、図13(b))。その際、低流動性固結材dを加圧(圧入)と負圧(吸引)を交互に付与しながら圧入することにより、拡径空間c内に低流動性固結材dを高密度に圧入すれば固結体はより拡大することができる。これまでの手順により施工される固結柱Aの最下端部が形成されたこととなる。
以下、削孔管6と注入管7を交互に一定量ずつ引き上げながら(2)〜(6)の工程を繰り返し実施することにより(図13(a),(b)参照)、必要とする深さの固結柱Aをほぼ一様な断面に形成することができる。また、固結材が固化する前に鉄筋や鋼材を建て込むことにより補強することもできる。
図16,17は、注入管7を突出させたまま削孔管6を引き上げながら固結柱Aを形成する例を示す。図において、削孔管6と注入管7を地盤中に貫入する工程、注入管7を地盤中に残し、削孔管6のみを引き上げて膨縮性袋体11を地盤中に突出させる工程は、図14(a)〜(c)で説明した工程と同じである(図16(a),(b),(c)参照)。
また、固定用パッカーはなくてもよい。又は注入時には固結用パッカーは収縮しておかなくてはならない。図16(c)は削孔管6を引き上げて注入管7の先端部に取り付けられた膨縮性袋体11を突出させた状態を示す。
図17(a)は膨縮性袋体11を膨縮させながら拡大させて、周辺地盤を徐々に押し広げることにより地盤中に拡径空間cを形成する工程、図17(b)は膨縮性袋体11を収縮させる工程、図17(c)は削孔管6内の管路から低流動性固結材dを圧入する工程を示す。そして、図17(d)は削孔管6を注入管7と共に引き上げる工程を示す。以下、図17(a)〜図17(d)に示す工程を繰り返す。
図18(a)〜(d)は、図10,11に図示する注入管装置の先端部分の変形例を図示したものである。図において、注入管3の先端部にスライドできるロケット(スライド管)12が取り付けられている(図18(a),(b)参照)。
ロケット12は、注入管3の先端部分に注入管3の管軸方向にスライド可能に外接している。また、ロケット12の上端部に抜け止めストッパー12aが形成され、注入管3の下端部に形成されたリブ3aと管軸方向に当接することにより注入管3の先端部から外れないようになっている。下端部は貫入抵抗を低減するために円錐形状に形成されている。
さらに、ロケット12の外周に膨縮性袋体11が取り付けられ、かつ膨縮性袋体11内と連通する複数の吐出口12bが形成されている。そして、注入管3を介して注入される気体または液体が吐出口12bを通って膨縮性袋体11内に封入されることにより膨縮性袋体11が徐々に膨張拡大するようになっている(図18(d)参照)。
符号13a,13bはゴムパッキングであり、抜け止めストッパー12aとリブ3aの対向面にそれぞれ取り付けられている。図18(c)は注入される気体または流体の圧でロケット12が下方にスライドした状態を示す図である。図18(d)は膨縮性袋体11が注入される気体または流体の圧で膨張した状態を示す図である。
本発明は地盤隆起の状況を確認しながら圧入を続けることもできる。例えば、図19の装置において、地盤隆起センサー14を地表面又は建造物変位の許容範囲内で所定の地盤強化を行うことができる。この場合、あらかじめ仕様設定に地盤隆起の範囲を2〜20mmの範囲内に設定したときに、地盤隆起センサー14からの電気信号が集中管理装置15に伝えられ、隆起が設定値を越した場合、流体の圧入又は注入液送液管路からの注入が中止となる。
しかし、隆起が2〜20mmの設定値の範囲内ならば、これは許容範囲であり、その範囲内での隆起量がおさまるように圧入、吸入を繰り返す。また、この地盤隆起センサー14を注入領域付近の構造物に設けることにより、構造物の変位が許容範囲内におさまるように地盤強化を行うことができる。
本発明は、膨縮性袋体の膨縮によって周辺地盤の高密度化を図ることができ、また固結材の圧入と吸引に伴う周辺地盤の隆起や沈下などの地盤変位、さらに周辺地盤の割裂や注入材の逸脱を防止しながら、連続的に効率のよい地盤の締固めを行うことができる。
1 注入管装置
2 削孔管
3 注入管
4 膨縮性袋体
5 注入管装置
6 削孔管
7 注入管
8 第一注入管(第一流路)
9 第二注入管(第二流路)
10 第三注入管(第三流路)
11 膨縮性袋体
12 ロケット(スライド管)
13a ゴムパッキン
13b ゴムパッキン
14 地盤隆起センサー
15 集中管理装置
16 振動試験槽
17 海砂
18 免震体
19 加速度計20 変位計
a 削孔空間
b シールグラウト材
c 拡径空間
d 流動性固結材
A 固結柱

Claims (17)

  1. 軟弱地盤の地盤強化工法であって、削孔管によって形成された削孔空間内で、前記削孔管内に設置された注入管の先端部に取り付けられた膨縮性袋体を、気体または流体の圧入によって徐々に拡大または膨縮させながら徐々に拡大させることにより、前記削孔空間の周辺土を徐々に押し広げて地盤密度を増大させると共に拡径空間を形成し、かつ前記膨縮性袋体を収縮させて後、前記膨縮性袋体によって押し広げられた前記拡径空間内に固結材を圧入することを特徴とする地盤強化工法。
  2. 請求項1記載の地盤強化工法において、前記削孔空間内にシールグラウト材を注入すると共に、前記削孔空間内で前記膨縮性袋体を徐々に拡大または膨縮させながら徐々に拡大させることにより、周辺土を徐々に押し広げて地盤密度を増大させ、かつ前記膨縮性袋体によって押し広げられた前記拡径空間の内壁面を前記シールグラウト材によってシールすることを特徴とする地盤強化工法。
  3. 請求項1または2記載の地盤強化工法において、前記膨縮性袋体は不透水性袋体であることを特徴とする地盤強化工法。
  4. 請求項1〜のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、前記膨縮性袋体内の気体または流体に加圧と負圧を交互に繰り返し付与することにより前記膨縮性袋体を膨縮させながら徐々に拡大させることを特徴とする地盤強化工法。
  5. 請求項1〜のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、前記膨縮性袋体に気体としてエア、または流体として水を圧入することを特徴とする地盤強化工法。
  6. 請求項1〜のいずれかひとつに記載の地盤強化工法は、先端部に削孔刃を備えた削孔管と、当該削孔管内に設置され、前記削孔管と共に地盤中に貫入される注入管と、当該注入管の外周部に取り付けられた固定用パッカーと、前記注入管の先端部に取り付けられ、収縮して前記削孔管内に収納および前記削孔管の先端部より地盤中に突出し、地中で膨縮しながら徐々に拡大することにより周辺土を周囲に押し広げるように締め固める膨縮性袋体とを備えた注入管装置によって実施することを特徴とする地盤強化工法。
  7. 請求項記載の地盤強化工法において、以下の工程によって地盤を強化することを特徴とする地盤強化工法。
    1)地盤中に削孔管と当該削孔管内に設置された注入管を貫入する。
    2)前記削孔管と注入管を所定の位置まで引き上げる。
    3)前記削孔管を引き上げることにより形成された削孔空間内に前記注入管の先端部に取り付けられた膨縮性袋体を突出させる。
    4)前記膨縮性袋体に前記注入管を介して気体または流体を圧入すると共に、加圧と負圧を交互に付与して前記膨縮性袋体を膨縮させながら徐々に拡大させることにより周辺土を周囲に押し広げるように締め固める。
    5)前記膨縮性袋体が所定の大きさに拡大したら、前記膨縮性袋体を元の状態に縮小させると共に前記削孔管内に収納するか、或は前記削孔管および前記注入管と共にそのまま所定の位置まで引き上げる。
    6)前記膨縮性袋体によって形成された拡径空間内に固結材を圧入する。
    7)以下、工程2)〜6)を所定区間、交互に繰り返すことにより柱状に連続する固結体を形成する。
  8. 請求項1〜のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、地盤中に複数の固結柱からなる群杭を形成して地盤の締め固め、および前記群杭と地盤との一体化を図ることにより地盤を強化または耐震効果を得ることを特徴とする地盤強化工法。
  9. 請求項1〜のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、前記膨縮性袋体に流体として水または気体としてエアを圧入して膨縮後、前記流体を固結液で置き換えることを特徴とする地盤強化工法。
  10. 請求項1〜のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、既設構造物の直下、または既設構造物近傍の地盤中に形成された拡径空間に固結材を圧入すると共に、前記固結材に加圧と負圧を交互に付与することにより前記既設構造物直下および既設構造物近傍の地盤隆起を抑制しながら締め固めることを特徴とする地盤強化工法。
  11. 請求項1〜10記載の地盤強化工法において、前記拡径空間内に固結材を圧入した後、さらに圧入、又は圧入、吸引を行うことにより改良領域を拡大することを特徴とする地盤強化工法。
  12. 請求項1〜11のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、互いに所定間隔を有する複数地点の地盤中にそれぞれ拡径空間を形成し、当該各拡径空間に固結材を同時に圧入することによって圧入地点間の地盤に拘束力を与えて地盤を強化することを特徴とする地盤強化工法。
  13. 請求項1〜12のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、前記拡径空間内に固結材を連続圧入、間欠圧入または圧入・吸引の繰り返し圧入のいずれか或いは複数を併用して地盤改良を行うことを特徴とする地盤強化工法。
  14. 請求項1〜13のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、前記固結材として流動性の低い懸濁液、可塑性グラウト、流動性注入液、ゲル化を伴う注入液のいずれか或いは複数を圧入することを特徴とする地盤強化工法。
  15. 請求項1〜14のいずれかひとつに記載の地盤強化工法において、該注入対象の地表面又は近辺の構造物に地盤変位センサーを設置して、地盤変位又は構造物の変位が許容範囲内におさまるように固結材の圧入を管理することを特徴とする地盤改良工法。
  16. 先端部に削孔刃を有する削孔管と、当該削孔管内に設置され、前記削孔管と共に地盤中に貫入される注入管と、当該注入管の外周部に取り付けられた固定用パッカーと、前記注入管の先端部に取り付けられ、収縮して前記削孔管内に収納および前記削孔管の先端部より地盤中に突出して周辺土を押し広げるように徐々に拡大して周辺地盤を締め固める膨縮性袋体とを備えてなることを特徴とする注入管装置。
  17. 請求項16記載の注入管装置において、前記注入管は、前記膨縮性袋体によって形成された拡径空間に固結材を圧入する第一流路と、前記膨縮性袋体に気体または流体を圧入する第二流路或は、さらに第三流路注入管とを備えていることを特徴とする注入管装置。
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