以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明において、用語「所定」は、「あらかじめ規定された」という意味で使用される。
なお、以下では、図1から図5Bを主に参照して、本実施例による巻線形成方法及び巻線形成装置を用いて製造されるステータコイルを利用して好適に製造可能なモータ等の構成を概説してから、図7A以降を主に参照して、本実施例による巻線形成方法及び巻線形成装置について詳説する。
図1は、一実施例によるステータ12の斜視図である。図1には、ロータの図示が省略されている。以下では、円環状のステータコア14を基準として軸方向、径方向及び周方向を定義する。また、ステータコア14の軸方向中心から離れる側を軸方向外側と定義する。
ステータ12は、複数の同芯巻きコイル10と、ステータコア14と、を備えている。複数の同芯巻きコイル10は、後述するように、接合されてステータコイルを形成する。ステータ12は、例えば三相交流モータなどの回転電機に用いられる固定子である。ステータ12は、回転子であるロータ(図示せず)に対して径方向外側に所定のエアギャップを介して配置された、通電によってロータを回転させる磁界を発生する部材である。
ステータコア14は、中空円筒状に形成された部材である。ステータコア14の内径側には、ロータを収容するための空間(内径側空間)18が形成されている。なお、ステータコア14は、絶縁コーティングされた複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成されていてもよい。また、ステータコア14の径方向外側端面には、絶縁コーティングされた軟磁性体粉末を圧縮成型した材料で形成された円筒状のヨークが取り付けられていてもよい。
ステータコア14は、円環状に形成されるバックヨーク20と、バックヨーク20の径方向内側端面から径方向内側(軸中心側)へ向けて延びるティース22と、を有している。ティース22は、バックヨーク20に対して周方向に複数(例えば、48個)設けられており、周方向に沿って等間隔で設けられている。周方向に隣接する2つのティース22の間には、同芯巻きコイル10が保持されるスロット24が形成されている。各スロット24は、径方向内側に開口しており、径方向外側に向けて延びている。各スロット24は、周方向幅が径方向外側ほど大きくなるように形成されている。ステータコア14は、複数のスロット24が軸中心から放射状に延びるように構成されている。
同芯巻きコイル10は、断面が矩形状(具体的には、長方形)に形成された平角線により形成される。この平角線は、導電性の高い例えば銅やアルミニウム等の金属により構成されている。なお、この平角線の断面角部は、R加工されていてもよい。同芯巻きコイル10は、ステータコア14に対して周方向に複数(例えば、48個)配設される。なお、以下で、「エッジワイズ曲げ」とは、平角線の断面短辺側の面を曲げることを指し、「フラットワイズ曲げ」とは、平角線の断面長辺側の面を曲げることを指す。
各同芯巻きコイル10は、平角線の断面短辺方向に複数本の平角線が積層されるように構成されていると共に、平角線が積層される積層方向に隣り合う平角線間に所定の隙間が形成されるように構成されている。例えば、各同芯巻きコイル10の組み付け状態では、ある任意の一のスロット24では、ある一の同芯巻きコイル10のスロット収容部30の各平角線間に、他の一の同芯巻きコイル10のスロット収容部32の各平角線が1本ずつ径方向に挟まれる状態となる。
図2A及び図2Bは、組み付け状態の複数の同芯巻きコイル10の一部を取り出した斜視図であり、図2Aは、径方向内側且つ軸方向外側から視た図であり、図2Bは、径方向外側且つ軸方向内側から視た図である。図3は、組み付け状態の4つの同芯巻きコイル10だけを取り出した斜視図である。図4は、同芯巻きコイル10の単品状態を示す斜視図である。図5A及び図5Bは、同芯巻きコイル10の単品状態を示す図であり、図5Aは、軸方向に視た上面図であり、図5Bは正面図である。
各同芯巻きコイル10はそれぞれ、所定巻回数(例えば4周)で巻回された平角線が曲げ加工されることにより成形されるカセットコイルである。
各同芯巻きコイル10はそれぞれ、図4に示すように、スロット収容部30、32と、コイルエンド部34、36と、径方向内側端部40と、径方向外側端部50とを有している。なお、スロット収容部30、32及びコイルエンド部34、36は、同芯巻きコイル10の本体部(略六角形状の閉ループ部101(図6A参照))を形成する。
スロット収容部30、32はそれぞれ、ステータコア14のスロット24内に挿入(収容)される、そのスロット24を軸方向に貫くように略直線状に延びる部位である。同一の同芯巻きコイル10において、スロット収容部30とスロット収容部32とは、ステータコア14の周方向に所定距離離れた互いに異なるスロット24に収容される。
コイルエンド部34、36はそれぞれ、スロット収容部30、32に接続すると共に、ステータコア14の軸方向端面から軸方向外側に向けて突出した、周方向に離れた2つのスロット収容部30、32同士を繋ぐ部位である。
コイルエンド部36(径方向内側端部40及び径方向外側端部50が形成される側のコイルエンド部)は、図5Bに示すように、頂部361と、斜行部362、363とを含む。斜行部362、363は、頂部361の周方向両側からそれぞれ形成され、スロット収容部30及び32に向かって軸方向内側に傾斜する態様でそれぞれ延在する。
径方向内側端部40及び径方向外側端部50は、周方向に離れた2つの同芯巻きコイル10のスロット収容部30、32同士を繋ぐ。図3に示す例では、周方向に90度ずつ離れた4つの同芯巻きコイル10が、一の同芯巻きコイル10の径方向内側端部40が、当該一の同芯巻きコイル10に隣接する他の一の同芯巻きコイル10の径方向外側端部50に接合する関係で、互いに接続される。なお、このような径方向内側端部40と径方向外側端部50との間の接合は、径方向内側端部40の第4直線部418と、径方向外側端部50の第6直線部510とを重ね合わせた状態で、当該重ね合わせた第4直線部418及び第6直線部510の所定範囲(接合部となる部分)に対して溶接を行うことで実現されてよい。なお、この場合、径方向内側端部40及び径方向外側端部50における接合部は、後述の被覆剥離装置60により絶縁用の被覆(被膜)が溶接時までに除去される。
径方向内側端部40は、図4に示すように、複数の曲げ加工を介して成形される。具体的には、径方向内側端部40は、第1斜行部402と、第1エッジワイズ曲げ部404と、第1直線部406と、第1フラットワイズ曲げ部408と、第2直線部410と、第2エッジワイズ曲げ部412と、第3直線部414と、第3エッジワイズ曲げ部416と、第4直線部418とを含む。
径方向外側端部50は、図4に示すように、複数の曲げ加工を介して成形される。具体的には、径方向外側端部50は、第2斜行部502と、第4エッジワイズ曲げ部504と、第5直線部506と、第2フラットワイズ曲げ部508と、第6直線部510とを含む。
このようにして、径方向内側端部40及び径方向外側端部50は、各種の曲げ部(第1エッジワイズ曲げ部404等)を有する。なお、ここでは、同芯巻きコイル10の特定の構成について説明したが、同芯巻きコイル10の詳細な構成については、任意である。例えば、径方向内側端部40及び径方向外側端部50の形状等は任意である。
次に、図6A以降を参照して、一実施例による被覆剥離方法及び被覆剥離装置60について詳説する。
図6Aは、本実施例による被覆剥離装置60により被覆が剥離される前の同芯巻きコイル10の単品状態を示す斜視図である。図6Bは、同芯巻きコイル10の概略的な断面図である。
なお、上述した各同芯巻きコイル10はそれぞれ、一本の直線状の平角線から形成される。なお、平角線は、図6Bに示すように、断面が矩形状の導体部1200(図6B参照)が絶縁用の被覆(被膜)1300(図6B参照)で覆われ、平角線自体の断面も矩形状である。具体的には、一本の直線状の平角線は、巻線形成装置(図示せず)により略六角形状等に成形されつつ複数回(複数周)巻回され、その後、同芯巻きコイル10のコイルエンド部34、36が、成形装置(図示せず)により最終的な形状(図4参照)へと成形される。そして、その後、同芯巻きコイル10の径方向内側端部40及び径方向外側端部50は、それぞれの接合部の被覆1300が以下で詳説する被覆剥離装置60により剥離された後、平角線成形装置(図示せず)により最終的な形状(図4参照)へと曲げ成形される。このようにして成形された各同芯巻きコイル10はステータコア14に組み付けられ、被覆1300が剥離された接合部同士が接合される。
このように、以下で詳説する被覆剥離装置60により処理される各同芯巻きコイル10は、径方向内側端部40及び径方向外側端部50が真っ直ぐの成形前の状態である。従って、以下の被覆剥離方法及び被覆剥離装置60に関する説明において、同芯巻きコイル10は、特に言及しない限り、図6Aに示すように、径方向内側端部40及び径方向外側端部50が真っ直ぐの成形前の状態であるものとする。すなわち、本実施例による被覆剥離装置60により被覆が剥離される前の同芯巻きコイル10は、閉ループ部101と、閉ループ部から外側へと延在する2つの直線状部位102、103とを有する。なお、上述のように、被覆剥離装置60による処理後に、直線状部位102は、平角線成形装置(図示せず)により、径方向内側端部40の形状へと成形され、直線状部位103は、平角線成形装置(図示せず)により、径方向外側端部50の形状へと成形される。
図7A及び図7Bは、本実施例による被覆剥離装置60を概略的に示す斜視図である。図7A及び図7Bには、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10(径方向内側端部40及び径方向外側端部50については、成形前の真っ直ぐの状態、以下、同様)が、併せて示されている。図7Aには、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10が被覆剥離装置60に対してセットされる直前の状態で模式的に示され、図7Bには、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10の先端部501が被覆剥離装置60に対してセットされた状態で模式的に示されている。
本実施例では、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10の全体のうちの、被覆剥離装置60による被覆が剥離される部位(以下、「剥離対象部位」とも称する)は、直線状部位102、103(図6A参照)のそれぞれの先端部(図7Aの直線状部位103の先端部501参照)に、設定される。すなわち、剥離対象部位は、径方向内側端部40及び径方向外側端部50のそれぞれの接合部に係る被覆が剥離されるように、直線状部位102、103のそれぞれの先端部に、設定される。なお、剥離対象部位は、接合部(上述のように溶接により接合される部位)を包含する限り、接合部よりも若干広い範囲の部位であってよい。
また、図7A及び図7Bには、上下方向がZ方向で定義され、Z方向でZ1側が上側である。また、図7A及び図7Bには、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。また、図7A及び図7Bには、X方向とZ方向の双方に直交するY方向が定義されている。以下では、Y方向内側とは、Y方向における第1支持部材62の位置を中心として、当該中心に向かう側を指し、Y方向外側とは、当該中心から離れる側を指す。
以下では、主に、径方向外側端部50を形成する直線状部位103における先端部501の剥離対象部位に対して処理を行う場合について説明するが、径方向内側端部40を形成する直線状部位102における先端部の剥離対象部位に対して処理を行う場合についても同様である。直線状部位102における先端部に係る被覆を剥離するための被覆剥離装置は、以下で説明する被覆剥離装置60と共通であってもよいが、別に用意されてもよい。
また、同様に、以下では、主に、直線状部位103の先端部501における断面短辺側の面(平角線における対向する2つの面の一例)上の被覆を剥離する場合について説明するが、先端部501における断面長辺側の面上の被覆を剥離する場合についても同様である。断面長辺側の面上の被覆を剥離するための被覆剥離装置は、以下で説明する被覆剥離装置60と共通であってもよいが、別に用意されてもよい。
剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10(以下、単に「同芯巻きコイル10」とも称する)は、図7A及び図7Bに示すように、直線状の先端部501がX方向に延在する態様で、被覆剥離装置60に対してセットされる。なお、被覆剥離装置60への同芯巻きコイル10のセットは、ロボットのような機械により実現されてもよいし、人手により実現されてもよい。
図7Cは、本実施例による被覆剥離装置60を概略的に示す正面図であり、図7Dは、本実施例による被覆剥離装置60を概略的に示す側面図である。図8は、第1可動部材64の一部を示す2面図であり、図9は、第1可動部材64の一部を示す斜視図である。図10Aは、駆動機構68の一例を前方側(同芯巻きコイル10の先端部501の挿入方向で手前側)から示す斜視図である。図10Bは、駆動機構68の一例を後方側から示す斜視図である。図11は、駆動機構68の一部の一例を示す斜視図である。
被覆剥離装置60は、図7Aから図11に示すように、第1支持部材62と、第1可動部材64と、第2可動部材66と、駆動機構68とを含む。
第1支持部材62は、X方向に延在し、XY平面内に延在する支持面を形成する。第1支持部材62には、同芯巻きコイル10の先端部501(剥離対象部位を含む)がX方向(第1方向の一例)に沿って直線状に延在する状態で載せられる。第1支持部材62の支持面(Z方向Z1側の表面)には、同芯巻きコイル10の先端部501における断面長辺側の面が面沿いに載置される。
第1可動部材64は、Y方向(第2方向の一例)で第1支持部材62の両側に配置される。第1可動部材64は、第1支持部材62の両側の部分が一体化された一体構成であってよい。第1可動部材64は、同芯巻きコイル10の先端部501における断面短辺側の面(以下、単に「同芯巻きコイル10のY方向側面」とも称する)に向けて移動可能である。すなわち、第1可動部材64は、第1支持部材62の両側からY方向内側へと移動可能(並進移動可能)である。本実施例では、一例として、第1可動部材64は、同芯巻きコイル10の剥離対象面に当接するプレカット位置と、当該面からY方向外側に離れた退避位置との間に移動可能である。なお、図7A、図7B、図7C等では、退避位置にある第1可動部材64が図示されている。
第1可動部材64は、第1支持部材62の両側の構成の基本部分が、Y方向に関して対称である。以下では、第1可動部材64は、第1支持部材62の両側の一方側の部分についてのみ説明する場合があるが、他方側の部分については対称である。
第1可動部材64は、プレカット刃641を有する。プレカット刃641の刃先(直線状の縁部)は、図8に示すように、X方向の所定位置P1に配置される。プレカット刃641の刃先は、Y方向内側に向く向きで、Z方向(第3方向の一例)に延在する。プレカット刃641は、Z方向に平行となる態様で、Z方向に延在する。ただし、変形例では、プレカット刃641の刃先は、Z方向に対してわずかに傾斜する態様で、Z方向に延在してもよい。この場合、プレカット刃641の刃先のX方向の位置は、Z方向の位置に応じて異なる。なお、プレカット刃641の刃先のY方向の位置は、Z方向の各位置で同じである。プレカット刃641は、第1可動部材64に一体的に形成されてもよいし、第1可動部材64の本体部に取り付け可能な刃形成部材663により形成されてもよい。
プレカット刃641は、同芯巻きコイル10のY方向側面に対して、Z方向の切れ目を入れる機能を有する。以下、このようにしてプレカット刃641により、同芯巻きコイル10のY方向側面に対して、Z方向の切れ目を入れることを、「プレカット(事前カット)」とも称する。
プレカットの際、第1可動部材64は、プレカット刃641が、同芯巻きコイル10のY方向側面上の被覆に切れ目を入れることができるプレカット位置まで、Y方向内側に移動される。プレカット刃641のZ方向の位置及びプレカット刃641の刃長(Z方向の長さ)は、同芯巻きコイル10のY方向側面上の被覆に対してZ方向の全長にわたる切れ目が入るように、適合される。従って、プレカット刃641の刃長(Z方向の長さ)は、同芯巻きコイル10の先端部501における断面短辺の長さよりもわずかに大きくてよい。
本実施例では、一例として、第1可動部材64は、図8及び図9に示すように、第1部位644と、第2部位646と、接続部位648とを含む。
第1部位644は、図8に示すように、接続部位648よりもX方向X1側に延在する。第1部位644は、第1可動部材64がプレカット位置にあるときに同芯巻きコイル10のY方向側面に当接する当接面6441を有する。当接面6441は、図8に示すように、X方向でX2側からX1側に向かう方向で位置P11から位置P12の範囲(第1範囲)にわたり延在する。なお、本実施例では、一例として、当接面6441は、X方向で位置P11から位置P12の範囲の全体にわたり、同芯巻きコイル10のY方向側面に当接する。
第1部位644は、Y方向内側におけるX方向X2側縁部にプレカット刃641を有する。プレカット刃641は、第1部位644の当接面6441に対してY方向内側に突出する。プレカット刃641の突出する高さ(すなわち当接面6441からの刃の高さ)は、被覆の厚みに対応してよい。
本実施例では、図8に示すように、プレカット刃641の刃先は、第1部位644の端面6411と第1部位644の傾斜面6412との角により、形成される。端面6411は、X方向に垂直である(すなわちYZ平面内に延在する)。従って、プレカット刃641は、第1部位644の端面6411上に延在する。なお、本実施例では、一例として、端面6411は、凹部70のX方向X1側の側面に一体化する態様で延在する。傾斜面6412は、Z方向に視てX方向で所定位置P1からX1側へ向かうにつれてY方向外側に向かう向きで傾斜する。なお、傾斜面6412の斜度を大きくするほど、プレカット刃641の刃先の鋭利さが増す。傾斜面6412の斜度は、必要なプレカット刃641の刃先の鋭利さに応じて適合されてよい。傾斜面6412は、X方向X1側で当接面6441に連続する。
第2部位646は、図8に示すように、接続部位648よりもX方向X2側に延在する。第2部位646は、第1可動部材64がプレカット位置にあるときに同芯巻きコイル10のY方向側面に当接する当接面6461を有する。従って、当接面6461は、上述した第1部位644の当接面6441と面一である。当接面6461は、図8に示すように、X方向でX2側からX1側に向かう方向で位置P21から位置P22の範囲(第2範囲)にわたり延在する。なお、本実施例では、一例として、当接面6461は、X方向で位置P21から位置P22の範囲の全体にわたり、同芯巻きコイル10のY方向側面に当接する。
接続部位648は、X方向で第1部位644と第2部位646との間に位置する。接続部位648は、X方向で第1部位644と第2部位646との間をつなぐ。接続部位648は、Y方向内側を向く表面が第1部位644の当接面6441(及び第2部位646の当接面6461)よりもY方向外側に位置する。従って、第1部位644、第2部位646、及び接続部位648は、Z方向に視て、Y方向外側(第1支持部材62から離れる側)に凹む凹部70を形成する。
凹部70は、後述する第2可動部材66の一部(刃形成部材663)がZ方向に通過するためのスペースを形成する機能を有する。凹部70は、Y方向内側の開口部が、図8に示すように、X方向で所定位置P1から位置P22まで延在する。X方向に沿った所定位置P1から位置P22までの長さは、同芯巻きコイル10の先端部501における剥離対象部位のX方向の寸法に対応する。ただし、X方向に沿った所定位置P1から位置P22までの長さは、同芯巻きコイル10の先端部501における剥離対象部位のX方向の寸法よりもわずかに長くてもよい(例えば、第2部位646のY方向内側かつX方向X1側の角部が角Rを有する場合、当該角RのRに相当する寸法だけ長くてもよい)。
このような第1可動部材64によれば、プレカット位置にあるときに、同芯巻きコイル10の先端部501を、第1部位644と第2部位646とによりY方向両側からかつX方向で離れた2つの範囲(第1範囲と第2範囲)で挟持できる。同芯巻きコイル10の先端部501は、剥離対象部位のX方向両側で、第1可動部材64の第1部位644と第2部位646とによりY方向両側から当接される。これにより、同芯巻きコイル10の剥離対象部位は、そのY方向の中心が第1支持部材62のY方向の中心と一致するように位置付けされた状態で、XY面内で実質的に変位不能となる。また、同芯巻きコイル10の先端部501における剥離対象部位に、湾曲等の撓みがある場合、当該撓みは、Y方向両側から第1部位644及び第2部位646が当接されることで、矯正される。以下では、このような、第1可動部材64がプレカット位置にあるときに実現される機能であって、同芯巻きコイル10の先端部501における剥離対象部位を第1支持部材62のY方向の中心に対して中心合わせしかつXY面内の変位や湾曲等の撓みを第1部位644と第2部位646とにより防止及び矯正する機能を、「第1可動部材64による剥離対象部位に対するセンタリング機能」又は単に「センタリング機能」とも称する。
第2可動部材66は、Z方向に視て、第1支持部材62に重なる位置に設けられる。第2可動部材66は、第1支持部材62に対してZ方向Z1側から近づく又は離れる態様で、Z方向に移動可能である。すなわち、第2可動部材66は、同芯巻きコイル10の先端部501における断面長辺側の面(以下、単に「同芯巻きコイル10のZ方向Z1側の表面」とも称する)に向けて移動可能(並進移動可能)である。本実施例では、一例として、第2可動部材66は、同芯巻きコイル10のZ方向Z1側の表面からZ方向Z1側に離れた退避位置(初期位置)から、当該Z方向Z1側の表面に当接する押さえ位置へと移動可能である。なお、図7A、図7C、図7D等では、退避位置にある第2可動部材66が図示されている。
第2可動部材66は、剥離刃661を有する。剥離刃661は、同芯巻きコイル10の剥離対象部位のY方向側面上の被覆を剥離する機能を有する。剥離刃661は、同芯巻きコイル10の剥離対象部位のY方向両側でY方向側面上の被覆を剥離できるように、Z方向に視て、Y方向で第1支持部材62の両側に位置する。剥離刃661は、XZ面に平行な刃面を有し、当該刃面の下端に、下向きの鋭利な刃先を有する。剥離刃661は、Z方向に視て、同芯巻きコイル10のY方向側面上の被覆と導体部との境界面(図6Bの被覆1300と導体部1200との境界面1400参照)に刃面が略一致するように配置される。この場合、当該導体部のY方向側面(図6Bの境界面1400と同じY方向側面1201参照)に沿って剥離刃661がZ方向に移動することで、Y方向側面上の被覆を剥離できる。
剥離刃661は、第1支持部材62の両側の構成がY方向に関して対称である。剥離刃661の刃先は、同芯巻きコイル10の剥離対象部位のX方向の長さに対応する長さで、X方向に延在する。すなわち、剥離刃661の刃長(X方向の長さ)は、同芯巻きコイル10の先端部501における剥離対象部位のX方向の長さに対応する。本実施例では、一例として、剥離刃661の刃先は、X方向に平行に延在するが、X方向に対して傾斜する態様(ただし、XZ面内の刃面は維持)で、X方向に延在してもよい。例えば、剥離刃661の刃先は、X方向に対して5度程度傾斜してもよい。
なお、剥離刃661は、第2可動部材66に一体的に形成されてもよいし、後述するように、第2可動部材66の押さえ部材662に対してZ方向に移動可能な刃形成部材663により形成されてもよい。
本実施例では、一例として、第2可動部材66は、押さえ部材(ストリッパ)662と、押さえ部材662の両側に、刃形成部材663とを有する。
押さえ部材662の下端面6624は、同芯巻きコイル10のZ方向Z1側の表面に当接可能である。第2可動部材66が押さえ位置にあるとき、押さえ部材662の下端面6624(図7C参照)は、同芯巻きコイル10のZ方向Z1側の表面に当接する。従って、第2可動部材66が押さえ位置にあるとき、同芯巻きコイル10は、押さえ部材662と第1支持部材62とによりZ方向で挟持される。なお、この際、同芯巻きコイル10には、Z方向の押圧荷重(同芯巻きコイル10に変形が生じることがない比較的小さい荷重)が付与されてもよい。
刃形成部材663は、Y方向で押さえ部材662の両側に、Y方向に関して対称に構成される。刃形成部材663は、押さえ部材662のY方向外側に設けられる。刃形成部材663は、押さえ部材662に対してZ方向に移動可能である。刃形成部材663は、第2可動部材66(押さえ部材662)が押さえ位置に至った後、押さえ部材662に対して更にZ方向Z2側に移動可能(並進移動可能)である。刃形成部材663は、上述した第1可動部材64の凹部70を通って第1可動部材64のZ方向Z1側の表面(例えば接続部位648のZ方向Z1側の表面)よりもZ方向Z2側へと移動可能である。
刃形成部材663は、剥離刃661の刃先が剥離終了位置(同芯巻きコイル10の剥離対象部位のZ方向Z2側の表面に一致する位置又はそれよりもZ方向Z2側の位置)に至るまで、押さえ部材662に対してZ方向Z2側に移動可能である。なお、剥離刃661の刃先がX方向に対して傾斜する場合、刃形成部材663は、剥離刃661の刃先における最もZ方向Z1側の位置が同芯巻きコイル10の剥離対象部位のZ方向Z2側の表面に一致する位置又はそれよりもZ方向Z2側の位置に至るまで、押さえ部材662に対してZ方向Z2側に移動可能である。
具体的には、刃形成部材663は、図7C及び図7Dに示すように、X方向X1側の端面6631と、X方向X2側の端面6632と、傾斜面6633と、を有する。端面6631及び端面6632は、X方向に垂直である(すなわちYZ面内に延在する)。剥離刃661は、X方向で端面6631及び端面6632との間に、その全長にわたり延在する。ただし、剥離刃661は、端面6631及び端面6632のそれぞれの角部で鋭利である必要はなく、曲げR形状を有してもよい。傾斜面6633は、Z方向Z2側の縁部に剥離刃661の刃先を形成する。傾斜面6633は、Y方向に視て、Z方向でZ2側に向かうにつれて押さえ部材662に向かう向きに傾斜する。
このため、本実施例では、一例として、剥離刃661の刃先は、押さえ部材662のY方向側面6626上に位置する。この場合、刃形成部材663が押さえ部材662に対してZ方向に移動する際に、剥離刃661は、押さえ部材662のY方向側面6626上をZ方向に摺動する。これにより、刃形成部材663がZ方向に移動する際に剥離刃661のY方向の位置が変動等することがなく、安定したY方向の位置で剥離を実現できる。なお、本実施例では、押さえ部材662のY方向側面6626間の距離(Y方向の幅)は、剥離刃661の刃先間の距離(Y方向の距離)と実質的に同じである。ただし、押さえ部材662のZ方向Z2側の端部は、同芯巻きコイル10の先端部501における剥離対象部位のY方向の幅に対応する幅(下端面6624の幅)を有するように、Z方向Z2側に向けてY方向の幅が徐々に小さくなる形態であってもよい。
駆動機構68は、上述した第1可動部材64のY方向の移動や第2可動部材66のZ方向の移動(押さえ部材662に対する刃形成部材663の移動を含む)を実現する。駆動機構68の構成は、任意であり、例えばカム機構(後述のカム機構681参照)を含んでよい。また、駆動機構68は、第1可動部材64のY方向の移動を実現する機構と、第2可動部材66のZ方向の移動を実現する機構とを独立して有してもよいし、連動する態様で有してもよい。また、駆動機構68は、動力源としてアクチュエータ(図示せず)を有する。アクチュエータは、液圧式のピストンや電動式のモータ等により実現されてもよい。本実施例では、一例として、駆動機構68は、図10Aから図11に示すような構成を有する。
図10Aから図11に示す例では、駆動機構68は、第2可動部材66のZ方向の移動を実現する並進機構680(第1機構の一例)を含む。並進機構680は、固定のベースBSに対して支持される。なお、上述した第1支持部材62は、固定のベースBSに対して固定される。並進機構680は、第2支持部材6800を固定のベースBSに対してZ方向に移動可能とする。第2支持部材6800は、固定のベースBSに対してスプリング6801によりZ方向Z1側に付勢される。なお、スプリング6801は、第2支持部材6800に対してY方向両側に配置され、Z方向に伸縮可能である。第2支持部材6800には、第2可動部材66の刃形成部材663が固定される。すなわち、第2可動部材66の刃形成部材663は、第2支持部材6800とともにZ方向に移動可能である。他方、第2可動部材66の押さえ部材662は、第2支持部材6800に対してZ方向のみが移動可能となるように、支持される。押さえ部材662は、第2支持部材6800に対してスプリング6802(バネ要素の一例)によりZ方向Z2側に付勢される。また、押さえ部材662は、第2支持部材6800に対するZ方向Z2側への移動が刃形成部材663により規制される。例えば、押さえ部材662は、Z方向Z2側の斜面662Aが、刃形成部材663のZ方向Z1側の斜面663Aに当接することで、第2支持部材6800に対するZ方向Z2側への移動(及びそれに伴い刃形成部材663に対するZ方向Z2側への移動)が規制される。
また、図10Aから図11に示す例では、駆動機構68は、第1可動部材64のY方向の移動を実現するカム機構681(第2機構の一例)を更に含む。この場合、第1カム部材6811がZ方向Z2側に移動すると(図11の矢印R1参照)、第1カム部材6811に設けられるカムローラ68111と、第1可動部材64と一体に可動する第2カム部材6812のカム面68120との関係に基づいて、第1支持部材62の両側の第2カム部材6812が互いにY方向に近接する(図11の矢印R2参照)。これにより、第1可動部材64がプレカット位置へと移動する。また、第1カム部材6811がZ方向Z1側に移動すると(矢印R1の逆)、カムローラ68111と第2カム部材6812のカム面68120との関係に基づいて、第2カム部材6812がスプリング6813による付勢力により互いにY方向に離れる(矢印R2の逆)。これにより、第1可動部材64が退避位置へと移動する。
ここで、図10Aから図11に示す例では、カム機構681は、並進機構680と連動するように構成される。具体的には、カム機構681の第1カム部材6811は、第2支持部材6800に固定され、第2支持部材6800とともにZ方向に移動する。このような連動の詳細は、次の被覆剥離方法に関連して更に説明する。なお、駆動機構68の動力源(図示せず)の作動は、制御装置(図示せず)により制御される。
次に、図12Aから図17Bを参照して、被覆剥離装置60を用いた被覆剥離方法について詳説する。
図12Aから図13Cは、被覆剥離装置60を用いた被覆剥離方法の流れに沿った説明図であり、S140からS145は、それぞれ、図7Cに対応するビューで、被覆剥離装置60の状態を模式的に示す。図14及び図15は、被覆剥離方法の流れに沿った駆動機構68(図10Aから図11参照)のカム機構681の動きの説明図である。図16は、同芯巻きコイル10の先端部501の剥離対象部位を模式的に示す2面図である。図16では、剥離対象部位がハッチング領域で示されている。図17Aは、剥離刃661が作用するときの剥離刃661とプレカット刃641との間の位置関係を説明する平面図(Z方向に視た平面図)である。なお、図17Aには、プレカット位置のプレカット刃641(第1部位644)についても、一点鎖線で示され、また、同芯巻きコイル10がハッチング領域で模式的に示されている。図17Bは、第2支持部材6800のZ方向Z2側への移動に伴う、スプリング6802の縮み量の変化特性1701と、第1可動部材64のY方向の位置の変化特性1702とを模式的に示す図である。図17Bでは、横軸に、第2支持部材6800のZ方向Z2側への移動量を、被覆剥離工程中の各状態(S140からS145)に対応付けて示し、縦軸に、スプリング6802の縮み量と、第1可動部材64のY方向の位置とを左右に分けて示す。
被覆剥離方法が実現される被覆剥離工程は、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10(図6A参照)を準備する準備工程後に、実行される。
被覆剥離工程は、まず、S140の状態(図12A及び図14参照)を形成することを含む。S140の状態は、第1可動部材64及び第2可動部材66がともに退避位置(初期位置)にある被覆剥離装置60に、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10が、その先端部501(剥離対象部位を含む)が第1支持部材62上に載置される態様で、セットされた状態に対応する。
次いで、被覆剥離工程は、S140の状態からS145の状態の一連の状態を形成することで実現される。本実施例では、S140の状態からS145の状態の一連の状態の変化は、駆動機構68により第2支持部材6800(図10B参照)及びそれに伴いカムローラ68111等を、Z方向Z2側に移動させることで順次実現される。この場合、第1可動部材64は、S140の状態からS145の状態の一連の状態の変化に伴って、図17Bに示す変化特性1702のような変化態様で、Y方向の位置が変化する。なお、変化特性1702は、カム面68120のプロフィールに応じて決まる。また、スプリング6802は、S140の状態からS145の状態の一連の状態の変化に伴って、図17Bに示す変化特性1701のような変化態様で、縮み量が変化する。なお、図17Bにおいて、ST1からST5は、S140の状態からS145の各状態遷移の際の第2支持部材6800のストローク量(=刃形成部材663のストローク量)に対応する。なお、S140の状態からS145の状態へと順次変化する過程において、刃形成部材663の下端部が第1可動部材64のZ方向Z1側の表面よりもZ方向Z2側に至る際に、刃形成部材663の下端部(剥離刃661の刃先を含む)は、上述した第1可動部材64の凹部70を通り始める。
S141の状態(図12B及び図14参照)は、第2可動部材66が押さえ位置に至った状態である。第2可動部材66が押さえ位置に至った状態は、第2可動部材66の押さえ部材662がコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面に当接した状態に対応する。すなわち、第2支持部材6800がZ方向Z2側に移動すると、第2可動部材66の押さえ部材662がコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面に当接する。ただし、この状態では、第2可動部材66の刃形成部材663(及びそれに伴い剥離刃661)は、同芯巻きコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面からZ方向Z1側に離れている。
なお、図14に示すように、S140の状態からS141の状態に移行する際に、カムローラ68111がカム面68120のプロフィールに沿ってZ方向Z2側にZ方向に沿って移動することで、第2カム部材6812及びそれに伴い第1可動部材64は、Y方向内側へと移動する。ただし、S141の状態では、第1可動部材64は、同芯巻きコイル10に対してY方向外側に離れており、従って、プレカット刃641は、同芯巻きコイル10のY方向側面に対してY方向外側に離れている。
S141の状態に至ると、第2可動部材66の押さえ部材662が同芯巻きコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面に当接した状態となるので、押さえ部材662はZ方向Z2側へは更に移動することはできない。このため、S141の状態からS142の状態へと第2支持部材6800(図10B参照)がZ方向Z2側に移動すると、第2可動部材66は、押さえ部材662及び刃形成部材663のうちの、刃形成部材663だけが第2支持部材6800とともにZ方向Z2側に移動することになる。従って、S141の状態からS145の状態に進むにつれて、押さえ部材662を第2支持部材6800に対してZ方向Z2側に付勢するスプリング6802(図10B参照)は、徐々に縮みが増加していく。なお、S141の状態でのスプリング6802の縮み量は、次のS142の状態に至るまでの第1支持部材62に対する同芯巻きコイル10の先端部501のY方向の変位(第1可動部材64のプレカット刃641や第1部位644等が当接することで生じうる変位)が適切に許容されるように適合されてよい。
S142の状態(図12C及び図14参照)は、第1可動部材64がプレカットを開始する位置に至った状態である。この状態では、第1可動部材64のプレカット刃641は、同芯巻きコイル10のY方向側面に当接する。また、S142の状態では、第2可動部材66の刃形成部材663(及びそれに伴い剥離刃661)は、同芯巻きコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面からZ方向Z1側に離れている。
なお、図14に示すように、S141の状態からS142の状態に移行する際に、カムローラ68111がカム面68120のプロフィールに沿ってZ方向Z2側にZ方向に沿って移動することで、第2カム部材6812及びそれに伴い第1可動部材64は、Y方向内側へと更に移動する。従って、プレカット刃641は、同芯巻きコイル10のY方向側面に対してY方向外側に離れた状態から、Y方向側面に向かってY方向内側へと移動することになる。上述したように、プレカット刃641は、同芯巻きコイル10の先端部501に対してY方向両側から当接するので、同芯巻きコイル10の先端部501に当接した状態では、同芯巻きコイル10の先端部501は、第1支持部材62のY方向中心に対して適切に中心合わせされる。
S143の状態(図13A及び図15参照)は、第1可動部材64がプレカット位置に至った状態である。なお、S143の状態では、第2可動部材66の刃形成部材663(及びそれに伴い剥離刃661)は、依然として、同芯巻きコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面からZ方向Z1側に離れている。すなわち、第1可動部材64がプレカット位置に至るまで、剥離刃661が同芯巻きコイル10に当接することはない。
なお、図14及び図15に示すように、S142の状態からS143の状態に移行する際に、カムローラ68111がカム面68120のプロフィールに沿ってZ方向Z2側にZ方向に沿って移動することで、第2カム部材6812及びそれに伴い第1可動部材64は、Y方向内側へと更に移動する。従って、プレカット刃641は、同芯巻きコイル10のY方向側面に対して当接した状態から、更にY方向内側へと移動することになる。この移動量(図17Bのストローク量ST3参照)によってプレカットが実現されることになる。なお、ストローク量ST3は、被覆表面からのプレカットの深さ(Y方向の寸法)に対応し、被覆の厚み等に応じて適合される。
このようにして第1可動部材64がプレカット位置に移動すると、上述のように、プレカットが実現されることで、図16に示すように、同芯巻きコイル10のY方向側面上の被覆1300に、切れ目C1が入る。なお、切れ目C1の深さD1は、プレカット刃641の突出する高さ(すなわち上述した当接面6441からの刃の高さ)に対応する。また、第1可動部材64がプレカット位置に移動すると、上述のように、第1可動部材64の第1部位644と第2部位646とが同芯巻きコイル10のY方向側面に当接する。すなわち、同芯巻きコイル10の先端部501は、Y方向両側から第1部位644により挟持されるとともに、Y方向両側から第2部位646により挟持される。これにより、同芯巻きコイル10の先端部501は、第1支持部材62のY方向中心に対して適切に中心合わせされる。
特に本実施例では、S143の状態では、同芯巻きコイル10の先端部501は、上述のように、第1可動部材64の第1部位644と第2部位646とによりY方向両側からかつX方向で離れた2つの範囲(第1範囲と第2範囲)で挟持される。すなわち、上述した第1可動部材64による剥離対象部位に対するセンタリング機能が適切に実現された状態である。これにより、コイル10の先端部501のY方向の中心を、第1支持部材62のY方向中心に、より確実に合わせることができる。
このS143の状態では、押さえ部材662は、好ましくは、スプリング6802からの付勢力に応じた比較的大きい力を、同芯巻きコイル10の先端部501にZ方向Z2側に作用させてよい。すなわち、スプリング6802は、好ましくは、S143の状態で比較的大きい挟持力で同芯巻きコイル10の先端部501が押さえ部材662と第1支持部材62との間に挟持されるように、ばね定数が適合されてよい。これにより、S143の状態からS145の状態に至る間、コイル10の先端部501が第1支持部材62のY方向中心に対して中心合わせされた状態を維持できる。このようにして、本実施例によれば、スプリング6802のバネ特性を適切に適合することで、S143の状態及びそれ以降の状態(第2支持部材6800がS143の位置からZ方向Z2側に移動する間)において、同芯巻きコイル10の先端部501を、Z方向で第2可動部材66の押さえ部材662と第1支持部材62との間に、変位が実質的に不能な態様で拘束できる。従って、本実施例では、第1支持部材62に対して同芯巻きコイル10の先端部501の変位が実質的に生じない状態で、S142の状態(又はS143の状態)からS145の状態に至るまでの各処理(以下で説明)を実行できる。
S144の状態(図13B及び図15参照)は、第1可動部材64がプレカット位置からY方向外側に移動し、かつ、第2可動部材66の刃形成部材663(及びそれに伴い剥離刃661)が同芯巻きコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面に当接した状態である。すなわち、剥離刃661が剥離開始位置に至った状態である。
なお、図15に示すように、S143の状態からS144の状態に移行する際に、カムローラ68111がカム面68120のプロフィールに沿ってZ方向Z2側にZ方向に沿って移動することで、第2カム部材6812及びそれに伴い第1可動部材64は、Y方向外側へと移動する。従って、プレカット刃641は、プレカット位置でY方向内側への移動からY方向外側への移動に、移動方向が変化することになる。
第2可動部材66の刃形成部材663(及びそれに伴い剥離刃661)が同芯巻きコイル10の先端部501のZ方向Z1側の表面に当接した位置は、第2可動部材66の剥離刃661による同芯巻きコイル10の先端部501の被覆の剥離が開始される位置に対応する。このようにして、本実施例では、剥離刃661による剥離は、第1可動部材64が同芯巻きコイル10の先端部501からY方向外側に離れた状態で実行される。なお、S144の状態における第1可動部材64は、同芯巻きコイル10の先端部501からY方向外側に、所定距離d1(図17A及び図17B参照)以上、離れる。所定距離d1は、0以上の値に設定され、例えば、次のような観点から設定されてもよい。すなわち、S144の状態における第1可動部材64の位置は、S142の状態での位置(すなわちプレカットを開始する位置)と同じであってもよいし、当該位置よりもY方向外側の位置(例えば退避位置)であってもよい。本実施例では、第1可動部材64の第1部位644の端面6411と刃形成部材663の端面6631との間(X方向の隙間)での、後述のように剥離屑の挟まりを防止する観点から、好ましくは、所定距離d1は、第1可動部材64が同芯巻きコイル10の先端部501からY方向外側に所定距離d1だけ離れたときに、第1可動部材64の端面6411が刃形成部材663の端面6631にX方向で対向しなくなるように、適合される。
S145の状態(図13C及び図15参照)は、刃形成部材663が剥離終了位置に至った状態である。これにより、第2可動部材66の剥離刃661による同芯巻きコイル10の先端部501の被覆の剥離が完了する。なお、図15に示すように、S144の状態からS145の状態に移行する際に、カムローラ68111がカム面68120のプロフィールに沿ってZ方向Z2側にZ方向に沿って移動することで、第2カム部材6812及びそれに伴い第1可動部材64は、Y方向外側へと更に移動する。
このようにして刃形成部材663が剥離終了位置に移動すると、上述したように、刃形成部材663により、同芯巻きコイル10の先端部501における剥離対象部位のY方向側面(Y方向両側の側面)上の被覆部分1302(図16参照)が、導体部1200から完全に剥離される。図16には、被覆1300全体のうちの、剥離される被覆部分1302が示される。図16において、ラインC10は、Z方向に視たときの刃形成部材663(剥離刃661の刃先)を表すとともに、先端部501における被覆と導体部との境界面(図6Bの被覆1300と導体部1200との境界面1400参照)を表す。なお、刃形成部材663(剥離刃661の刃先)は、当該境界面よりもわずかにY方向内側にオフセットされてもよい。
次いで、被覆剥離工程は、S140の状態に復帰することを含む。なお、S145の状態からS140の状態への変化の際の第1可動部材64及び第2可動部材66の動きは、上述した一連の動きの逆であり、詳細な説明は省略する。
次いで、被覆剥離工程は、図示しないが、このようにして被覆が剥離された同芯巻きコイル10を、被覆剥離装置60から取り出し、次の剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10を被覆剥離装置60上にセットすることを含む。そして、再びS140の状態から繰り返される。
以上のように、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程は、同芯巻きコイル10を第1支持部材62に支持させる工程(S140参照)と、第1支持部材62に支持された同芯巻きコイル10の剥離対象部位がX方向に延在する状態で、Z方向で押さえ部材662と第1支持部材62との間に同芯巻きコイル10の剥離対象部位を挟持させる挟持工程(S141参照)と、挟持工程の後に、第1支持部材62と押さえ部材662との間に同芯巻きコイル10の剥離対象部位が挟持された状態で、Y方向の両側から同芯巻きコイル10に第1可動部材64(把持部材の一例)を当接させる当接工程(S142、S143参照)と、当接工程の後に、第1支持部材62と押さえ部材662との間に同芯巻きコイル10の剥離対象部位が挟持された状態で、同芯巻きコイル10から第1可動部材64を離間させる退避工程(S143~S145参照)と、第1支持部材62と押さえ部材662との間に同芯巻きコイル10の剥離対象部位が挟持された状態で、同芯巻きコイル10のY方向側面上の被覆を剥離刃661により剥離する剥離工程(S144~S145参照)と、を含む。
特に、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、剥離工程(S144~S145参照)は、退避工程(S143~S145参照)の開始後に実行される。すなわち、剥離工程(S144~S145参照)は、退避工程(S143~S145参照)で同芯巻きコイル10(第1支持部材62)から所定距離d1(d1>0)以上、第1可動部材64がY方向に離間されてから、開始される。
従って、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、剥離工程(S144~S145参照)に伴う刃形成部材663のZ方向の移動に伴って、刃形成部材663と第1可動部材64との間の隙間に入り込みうる異物(例えば剥離屑)が噛み込んでしまうことを、適切に防止できる。なお、この効果(剥離屑の噛み込み抑制効果)については、図17Aと、図18Aから図18Cとを参照して、後で詳説する。
また、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程では、当接工程(S142、S143参照)は、第1可動部材64のプレカット刃641により同芯巻きコイル10のY方向側面上の被覆にZ方向の切れ目を入れることを含む。
従って、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、剥離対象部位に係る被覆を境界付ける切れ目C1がプレカット刃641により形成されてから、当該切れ目C1の延在方向であるZ方向に沿って、Z方向に垂直なX方向に延在する剥離刃661が移動するので、剥離対象部位に係る被覆を、切れ目C1を起点として剥離できる。従って、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、このような切れ目C1を形成せずに剥離刃661により剥離を行う構成(すなわち、プレカット刃641を有さない構成)に比べて、剥離範囲のX方向X1側の境界(エッジ)が明確となりかつ剥離範囲のX方向X1側の境界位置に関する同芯巻きコイル10ごとのバラつきを低減できる。また、バリ等の発生のような望ましくない品質の発生を防止できる。
なお、本実施例による被覆剥離装置60においては、プレカット刃641は、剥離対象部位に係る被覆に対してX方向X1側にのみ設けられ、X方向X2側には設けられない。このため、X方向X2側では、剥離刃661のX方向X2側端部が作用する位置(図16のラインC2参照)に、バリ等が発生しうる。ただし、同芯巻きコイル10の先端部501におけるX方向X2側の末端部位5011は、不要部位として切除されるので、かかるバリ等の発生は問題とならない。なお、図16には、不要部位を切除するためのカットラインC30の一例が示される。この場合、カットラインC30は、剥離刃661のX方向X2側端部が作用する位置(図16のラインC2参照)よりもX方向X1側に設定される。このようにカットラインC30で同芯巻きコイル10の先端部501におけるX方向X2側の末端部位5011を切除すると、剥離対象部位に係る被覆(Y方向側面上の被覆)がすべて除去されることになる。
換言すると、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程では、同芯巻きコイル10の先端部501におけるX方向X2側の末端部位5011は、第1可動部材64の第2部位646により支持される部位として機能できる。従って、このような末端部位5011を設定することで、上述した第1可動部材64による剥離対象部位に対するセンタリング機能を実現できる。
また、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、第2可動部材66の押さえ部材662と第1支持部材62との間に同芯巻きコイル10の先端部501が挟持された状態で、第1可動部材64のプレカット刃641によりプレカットを実現できる。これにより、第1可動部材64が同芯巻きコイル10の先端部501に当接する際に同芯巻きコイル10がZ方向に変位することが防止されるので、プレカットを所望の態様で実現できる。
また、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程は、挟持工程(S141参照)の後に、押さえ部材662により第1支持部材62に向けて同芯巻きコイル10の剥離対象部位を押圧する力(挟持力)を、増加させる押圧工程(S141~S145参照)を更に含む。この際、押圧工程は、退避工程(S143~S145参照)の前までに、押さえ部材662により第1支持部材62に向けて同芯巻きコイル10の剥離対象部位を押圧する力を、所定値Fnまで増加させる。なお、この所定値Fnは、スプリング6802の縮み量(図17Bのγ2参照)に応じて決まる。
従って、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、第2可動部材66の押さえ部材662と第1支持部材62との間に同芯巻きコイル10の先端部501を所定値Fn以上の力で押圧した状態で、第1可動部材64を同芯巻きコイル10からY方向に離間させることができる。これにより、第1可動部材64が同芯巻きコイル10からY方向に離間するのに伴って同芯巻きコイル10の先端部501がY方向に変位しまうことを、防止できる。その結果、同芯巻きコイル10の先端部501が第1支持部材62に対してY方向で中心合わせされた状態で、剥離工程を開始できる。なお、所定値Fnは、かかる効果が得られるように、同芯巻きコイル10にダメージを与えない範囲で、適合されてよい。なお、このような適切な所定値Fn(図17Bのγ2参照)を実現するために、スプリング6802の初期状態の縮み量(図17Bのγ1参照)や、スプリング6802のバネ定数、S141の状態からS143の状態までの第2支持部材6800の移動量(図17BのST1~ST3の合計)等が適合されてよい。なお、スプリング6802は、S140の状態での縮み量(図17Bのγ1参照)が、0であってもよい。この場合、スプリング6802は、S141の状態の縮み量(図17Bのγ1参照)が、0であり、S141の状態から第2支持部材6800のZ方向Z2側への移動に伴って縮み始めるように構成されてもよい。
従って、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、プレカットが実現された際の同芯巻きコイル10の位置(被覆剥離装置60に対する位置)を維持したまま、被覆剥離装置60の第2可動部材66の剥離刃661を、同芯巻きコイル10の先端部501に対して作用させることができる。
また、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程では、押圧工程(S141~S145参照)は、剥離工程(S144~S145参照)が開始されてから終了するまで継続される。
従って、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程によれば、第1可動部材64による剥離対象部位に対するセンタリング機能により実現された状態(中心合わせされた状態)を、押さえ部材662と第1支持部材62との間で生じる挟持力(スプリング6802に起因した挟持力)により維持しつつ、剥離刃661による剥離処理を実現できる。この結果、上述したプレカット刃641により形成される切れ目C1の作用とも相まって、剥離対象部位上の被覆(図16のハッチング領域参照)だけを、処理される複数の同芯巻きコイル10の先端部(先端部501等)のそれぞれに対して安定して剥離することが可能となる。すなわち、同芯巻きコイル10の剥離対象部位の位置ズレ(Y方向の位置ズレ)や湾曲等の撓みに起因して導体部(図6Bの導体部1200参照)が余分に剥離刃661により切除されてしまう可能性を、低減できる。
ところで、図12Aから図13Cに示す被覆剥離工程では、押圧工程(S141~S145参照)は、剥離工程(S144~S145参照)が開始されてから終了するまで継続されるので、剥離工程の終了状態(S145の状態)において、スプリング6802の縮み量(図17Bのγ3参照)が最大となる。すなわち、剥離工程(S144~S145参照)が開始されてから終了するまでの間も、押さえ部材662と第1支持部材62との間で生じる挟持力(スプリング6802に起因した挟持力)が増加する。かかる挟持力の増加が過大となると(すなわち同芯巻きコイル10のZ方向の表面が過度に強く押圧されると)、圧痕が発生する等の不都合が生じうる。このため、このような観点から、剥離工程(S144~S145参照)での第2支持部材6800の移動量(図17Bのストローク量ST5参照)が比較的大きい場合(例えば先端部501における断面長辺側の面上の被覆を剥離する場合)、挟持力の増加が過大とならないように、上述した所定値Fn及び/又は所定距離d1は、比較的小さい値に設定されてもよい。
次に、図17Aと、図18Aから図18Cとを参照して、上述した剥離屑に関連した本実施例の効果(以下、「剥離屑の噛み込み抑制効果」とも称する)について更に説明する。
図18Aは、剥離屑1700が第1可動部材64に乗っている状態を模式的に示す図である。図18B及び図18Cは、比較例における剥離屑1700に起因した不都合の説明図である。図18Bは、Z方向に視たときの剥離刃661とプレカット刃641との間の位置関係を、同芯巻きコイル10とともに模式的に示す。図18Cは、図18Bの矢印Q17の方向に視たときの、第1可動部材64と刃形成部材663との関係を示す図である。なお、図18Cに示す関係は、比較例の場合の関係を示すが、同ビューでは、本実施例の場合も同様の関係となる。図18Bは、前出の本実施例に係る図17Aと対比となる図であり、Z方向に視たときの剥離刃661とプレカット刃641との間の位置関係を、同芯巻きコイル10とともに模式的に示す。
比較例では、第1可動部材64がプレカット位置にある状態(すなわちプレカット刃641が被覆1300に侵入した状態)のまま、第2可動部材66の剥離刃661による剥離が実現される。これに対して、本実施例では、上述したように、第1可動部材64がプレカット位置からY方向外側に移動してから、第2可動部材66の剥離刃661による剥離が実現される。
ところで、上述したような被覆剥離装置60の動作によれば、同芯巻きコイル10の被覆がプレカットや剥離されるので、細かい被覆屑(被覆の切子)が生じる。被覆屑は、その重力等によりZ方向Z2側に落下するので、図示しない回収システムにより回収可能であるものの、一部が回収されずに一時的に残る場合がある。このような剥離屑は、上述した被覆剥離装置60の動作の際に、被覆剥離装置60における小さい隙間(後述)に噛み込まれることで、被覆剥離装置60の損傷等の原因となるおそれがある。
図18Aでは、剥離屑1700は、一例として、第1可動部材64のZ方向Z1側の表面におけるプレカット刃641付近に位置している。
比較例の場合、このような剥離屑1700は、X方向での第1可動部材64の第1部位644の端面6411と刃形成部材663の端面6631との間に、挟まりやすくなる。具体的には、図18Cに模式的に示すように、図18Aに示すような剥離屑1700は、刃形成部材663がZ方向Z2側に移動する際に(矢印R1800参照)、第1可動部材64の第1部位644の端面6411と刃形成部材663の端面6631との間の隙間(図18Bの隙間Δ1参照)に、挟まりやすい。このような隙間に剥離屑1700が挟まったまま、刃形成部材663がZ方向Z2側に移動すると、噛み込みが生じ、刃形成部材663の剥離刃661の破損等が生じるおそれがある。
これに対して、本実施例によれば、前出の図17Aに実線で模式的に示すように、第1可動部材64(及びそれに伴い第1部位644)は、所定距離d1以上、Y方向外側に退避できる。なお、上述のように、所定距離d1は、図17Aに示すように、第1可動部材64(及びそれに伴い第1部位644)がX方向で刃形成部材663の端面6631に対向しないように設定されてもよい。これにより、本実施例によれば、比較例の場合とは異なり、X方向での第1可動部材64の第1部位644の端面6411と刃形成部材663の端面6631との間に剥離屑1700が挟まり難くなる。
このようにして、本実施例によれば、剥離屑が第1可動部材64と第2可動部材66との間等に挟まり難い態様で、剥離刃661による剥離処理を実現できる。
ところで、刃形成部材663の端面6631と第1部位644の端面6411との間のX方向の隙間Δ1の距離(平面視での距離)は、バリを低減する観点からは、小さい方が望ましい。すなわち、例えば、刃形成部材663の端面6631と第1部位644の端面6411との間のX方向の隙間Δ1の距離は、剥離刃661とプレカット刃641との間のX方向の離間距離に対応するので、バリが残らないようにする観点からは、0mmに近いほうが望ましい。
この点、上述した比較例では、X方向の隙間Δ1の距離が比較的に小さい場合に、上述したように、剥離屑1700が挟まった際の噛み込みが生じやすい。このため、隙間Δ1の距離の最小化が難しくなる。
これに対して、本実施例によれば、隙間Δ1の距離が比較的に小さい場合でも、刃形成部材663の端面6631と第1部位644の端面6411との間に剥離屑が挟まり難いので、隙間Δ1の距離の最小化が可能となる。例えば、かかる隙間Δ1の距離を0.075mm以下、より好ましくは0.05mm以下とすることで、バリが残る可能性を低減しつつ、公差等の観点から必要なクリアランスを確保できる。
また、本実施例では、上述したように、剥離刃661は、X方向X1側では刃形成部材663の端面6631まで延在し、プレカット刃641は、第1部位644の端面6411上に延在する。この際、端面6631と端面6411とは、ともにX方向に垂直な平面であるので、X方向に隣接させることが可能である。これにより、刃形成部材663の端面6631と第1部位644の端面6411との間のX方向の隙間Δ1の距離を比較的小さくすることが可能となり、剥離刃661のX方向X1側の縁部とプレカット刃641との間でバリが残る可能性を効果的に低減できる。
以上説明したように、本実施例の被覆剥離方法及び被覆剥離装置60によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
本実施例によれば、上述したように、第1可動部材64がプレカット位置に移動することで、プレカット刃641が、同芯巻きコイル10の先端部501における切れ目C1を形成する対象となる面(上記の説明では、Y方向側面)に対して、当該面に垂直な方向に押し当てられる。これにより、切れ目C1を形成する対象となる面に対して面沿いにプレカット刃を移動させる場合に比べて、バリ等の発生を低減できる。
また、本実施例によれば、上述したように、第1可動部材64がプレカット位置からY方向外側に移動されてから、第2可動部材66の剥離刃661による剥離処理が実現される。すなわち、かかるプレカット刃641を被覆1300から抜いた後に、第2可動部材66の剥離刃661による剥離処理を実現する。これにより、上述したように、プレカット刃641の周辺で発生しうる剥離屑の噛み込み(第2可動部材66のZ方向Z2側への移動に伴う噛み込み)を効果的に低減できる。この結果、被覆剥離装置60の耐久性を高めることができる。
なお、プレカット刃641を被覆1300から抜く場合(すなわち第1可動部材64をプレカット位置からY方向外側に移動させる場合)は、その後、当該プレカット刃641による剥離対象部位に対するX方向及びY方向の位置規制がなくなりうるので、同芯巻きコイル10の剥離対象部位がXY平面内で変位しうる。このような変位が僅かであっても生じると、剥離刃661が作用する位置が所望の位置からわずかにずれうる。かかるずれが生じると、剥離が所望の態様で実現されないおそれがある。
これに対して、本実施例によれば、上述したようにスプリング6802の作用により第2可動部材66の押さえ部材662が第1支持部材62との間に同芯巻きコイル10の剥離対象部位を比較的大きい力(ただし、同芯巻きコイル10に損傷等を与えない程度の力)で挟持する。これにより、プレカット後においても同芯巻きコイル10の剥離対象部位のXY平面内の変位を規制しつつ、剥離刃661による剥離処理を実現できる。従って、本実施例によれば、剥離対象部位上の被覆を、処理される複数の平角線のそれぞれに対して安定して剥離することが可能となる。
また、本実施例によれば、上述したように、第1可動部材64が第1部位644と第2部位646を備えるので、第1可動部材64による剥離対象部位に対するセンタリング機能を実現できる。これにより、第1可動部材64がプレカット位置に至ることに伴って(すなわちプレカットと同時に)、同芯巻きコイル10の剥離対象部位を第1支持部材62の中心に対して、より確実に中心合わせすることができる。
また、本実施例によれば、上述したように、第1可動部材64は、第2可動部材66の刃形成部材663の移動(剥離終了位置に向かうZ方向の移動)を可能とする凹部70を形成するので、第1可動部材64の第1部位644及び第2部位646によるセンタリング機能が実現されている状態で、刃形成部材663をZ方向Z2側へと移動させることができる(ただし、上述したように、本実施例では、第1可動部材64の第1部位644及び第2部位646によるセンタリング機能が実現されている状態で、剥離刃661による剥離処理が実行されることはない)。
また、本実施例によれば、上述したように、プレカット刃641は、剥離対象部位のX方向X1側の境界を規定する位置のみに設けられるので、剥離対象部位のX方向X2側の境界を規定する位置にも設けられる場合に比べて、プレカット刃の数が少なくて済む効率的な構成を実現できる。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10が固定された状態で、第1可動部材64及び第2可動部材66が移動することで、プレカット刃641及び剥離刃661の、同芯巻きコイル10に対する相対的な移動が実現されているが、これに限られない。例えば、剥離処理対象の一の同芯巻きコイル10が移動されることで、プレカット刃641及び剥離刃661の、同芯巻きコイル10に対する相対的な移動が実現されてもよい。
また、上述した実施例では、第1可動部材64が第1部位644と第2部位646を備えているが、第2部位646が省略されてもよいし、及び/又は、第1部位644の当接面6441が無くされてもよい。また、第1部位644及び/又は第2部位646は、第1可動部材64がプレカット位置にあるときに、同芯巻きコイル10のY方向側面に当接せずに近接(図17AのΔ2参照)するだけの構成であってもよい。この場合、近接に係る離間距離は、同芯巻きコイル10のY方向の幅(Y方向両側のY方向側面間の距離)が取りうる最大幅(許容範囲内の最大誤差を含む場合の最大幅)に応じて決定されてよい。例えば、第1部位644及び第2部位646は、同芯巻きコイル10のY方向の幅が誤差に起因して最大幅である場合や同芯巻きコイル10に湾曲等の撓みがある場合に、第1可動部材64がプレカット位置にあるときに、同芯巻きコイル10のY方向側面に当接してもよい。この場合、上述したセンタリング機能を確保しつつ、同芯巻きコイル10のY方向の幅が誤差に起因して最大幅となった場合でも、第1部位644及び第2部位646により同芯巻きコイル10のY方向側面が比較的強く押圧されることを防止できる。
また、上述した実施例では、プレカット刃641は、剥離対象部位のX方向X1側の境界を規定する位置(すなわちX方向の一の所定位置P1)にのみ設けられるが、これに限られない。すなわち、プレカット刃641は、剥離対象部位のX方向X1側の境界を規定する位置と、剥離対象部位のX方向X2側の境界を規定する位置(すなわち図8に示す位置P22又はその近傍)とに、それぞれ設けられてもよい。この場合、図16に示すラインC2に沿って切れ目を入れることができるので、剥離対象部位のX方向X2側においてもバリ等の発生を低減できる。
また、上述した実施例では、プレカット刃641は、それにより形成される切れ目C1が被覆の厚み分の深さになるように形成されるが、これに限られない。プレカット刃641は、それにより形成される切れ目C1が被覆の厚みに満たない深さになるように形成されてもよい。
また、上述した実施例では、複数回巻回された状態の同芯巻きコイル10が剥離処理対象とされているが、これに限られない。例えば、ボビン(図示せず)から巻き出された直線状の平角線の状態のまま、被覆剥離装置60により被覆が剥離されてもよい。この場合、剥離対象部位は、2つの同芯巻きコイル10分の接合部に対応した長さを有してよい。この場合、剥離対象部位の長さ方向の中心位置で切断することで、各同芯巻きコイル10の接合部を形成できる。
また、上述した実施例では、図12Aから図13Cの被覆剥離工程で示すように、S143の状態からS144の状態まで、第2支持部材6800はZ方向Z2側に移動するが(図17Bのストローク量ST4参照)、S143の状態とS144の状態とは同時に実現されてもよい。すなわち、第1可動部材64がプレカット位置に至ったときに剥離刃661が剥離開始位置に至るように構成されてもよい。この場合、剥離工程の開始時の上述した所定距離d1がマイナス(プレカットの深さ分だけマイナス)となるものの、剥離工程の進行に伴って、第1可動部材64が同芯巻きコイル10の先端部501からY方向外側に離れていく。従って、この場合も、剥離工程中に第1可動部材64がプレカット位置に留まる場合とは異なり、上述した剥離屑の噛み込み抑制効果を依然として享受できる。
また、上述した実施例では、好ましい実施例として、プレカット刃641によりプレカットが実現されるが、プレカット刃641によるプレカットは省略されてもよい。すなわち、プレカット刃641が省略され、第1可動部材64の当接面6441は所定位置P1から位置P12までの間、略平らであってもよい。
また、上述した実施例では、押さえ部材662は、第2支持部材6800に支持されているが、第2支持部材6800とは独立して動作してもよい。この場合、機構が複雑化するものの、押さえ部材662による挟持力(第1支持部材62の間に同芯巻きコイル10を挟持するための押圧力)の最適化が可能となる。例えば、押さえ部材662による挟持力は、剥離工程の間、一定値(例えば所定値Fn)に維持されてもよい。あるいは、押さえ部材662による挟持力は、剥離工程の初段階だけ一定値(例えば所定値Fn)に維持され、その後、0まで低減されてもよい。
また、上述した実施例では、図12Aから図13Cの被覆剥離工程で示すように、S141の状態からS142の状態まで、第2支持部材6800はZ方向Z2側に移動するが(図17Bのストローク量ST2参照)、S141の状態からS142の状態とは同時に実現されてもよい。すなわち、第2可動部材66(押さえ部材662)が押さえ位置に至ったときに第1可動部材64がプレカットを開始する位置に至るように構成されてもよい。
また、上述した実施例では、第2可動部材66(押さえ部材662)が押さえ位置に至った後でプレカット刃641によるプレカットが実行されているが、これに限らない。例えば、第2可動部材66(押さえ部材662)が押さえ位置に至ったときに剥離刃661が剥離開始位置に至るように構成されてもよい。あるいは、第2可動部材66(押さえ部材662)が押さえ位置に至る前に剥離刃661が剥離開始位置に至るように構成されてもよい。
また、上述した実施例では、第1可動部材64が設けられるが、第1可動部材64は省略されてもよい。この場合も、第1可動部材64のセンタリング機能やプレカットによる効果が得られないものの、第1可動部材64が存在しないことに起因して、刃形成部材663と第1可動部材64との間の隙間に入り込みうる異物が噛み込んでしまうことを、防止できる。
<付記>
以上の実施例に関し、更に以下を開示する。なお、以下で記載する効果のうちの、一の形態に対する追加的な各形態に係る効果は、当該追加的な各形態に起因した付加的な効果である。
(1)一の形態は、絶縁用の被覆(1300)を有しかつ断面が矩形状であるステータコイル用の平角線(10)を準備する準備工程と、
前記平角線を第1支持部材(62)に支持させる工程(S140参照)と、
前記第1支持部材に支持された前記平角線の剥離対象部位が第1方向(X)に延在する状態で、前記第1方向に垂直な第3方向(Z)で押さえ部材(662)と前記第1支持部材との間に、前記剥離対象部位を挟持させる挟持工程(S141参照)と、
前記挟持工程の後に、前記第1支持部材と前記押さえ部材との間に前記剥離対象部位が挟持された状態で、前記第1方向及び前記第3方向の双方に対して垂直な第2方向(Y)の両側で、前記剥離対象部位における前記第2方向で対向する2つの面に係る前記被覆を、前記第1方向に延在する剥離刃(661)により剥離させる剥離工程(S144~S145参照)とを含み、
前記剥離工程の前に、前記第1支持部材と前記押さえ部材との間に前記剥離対象部位が挟持された状態で、前記第2方向の両側から、前記平角線における前記第2方向で対向する2つの面に対して、把持部材(64)を当接させる当接工程(S142、S143参照)を更に含む、被覆剥離方法である。
本形態によれば、剥離工程の前に、把持部材を利用して、第2方向での剥離対象部位の位置合わせや撓み等の矯正を行うことができる。これにより、平角線の第2方向の位置ずれが生じ難い状態で平角線の被覆を剥離刃により剥離することが可能となる。また、本形態によれば、第3方向で押さえ部材と第1支持部材との間に剥離対象部位を挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行うので、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行う必要性を、低減できる。なお、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行う場合は、把持部材と剥離刃との間で異物の噛み込みが発生しやすくなる。従って、本形態によれば、剥離屑等の異物の噛み込みが発生する可能性を低減することが可能となる。
(2)また、本形態においては、好ましくは、前記当接工程は、前記第1支持部材と前記押さえ部材との間に前記剥離対象部位が挟持された状態で実行される。
この場合、第1支持部材と押さえ部材との間に剥離対象部位が挟持された状態で、把持部材を、剥離対象部位における第2方向で対向する2つの面に作用させることができる。
(3)また、本形態においては、好ましくは、前記当接工程の後に、前記第1支持部材と前記押さえ部材との間に前記剥離対象部位が挟持された状態で、前記平角線の前記2つの面から前記把持部材を離間させる退避工程(S143~S145参照)を更に含み、
前記退避工程は、前記剥離工程に先立って又は前記剥離工程の実行中に、実行される。
この場合、剥離工程に先立って又は剥離工程の実行中に退避工程が実行されることで、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離が実行されてしまうことを、防止できる。これにより、剥離屑等の異物の噛み込みが発生する可能性を効果的に低減できる。
(4)また、本形態においては、好ましくは、前記剥離工程は、前記退避工程において前記平角線の前記2つの面から前記把持部材が前記第2方向に離間されてから、開始される。
この場合、剥離対象部位が把持部材により当接された状態が解除されてから剥離工程が開始されるので、剥離工程の初段階での異物の噛み込みの可能性を低減できる。
(5)また、本形態においては、好ましくは、前記当接工程は、前記平角線における前記2つの面に対して離間する退避位置から、前記2つの面に当接する当接位置まで、前記把持部材を前記第2方向に移動させることで実現され、
前記退避工程は、前記剥離工程が終了するまで、前記当接位置から前記退避位置に向けて前記把持部材を前記第2方向に移動させ続けることで実現される。
この場合、剥離工程が退避工程と並列的に実行されるので、退避工程に係る把持部材の動きを過度に急激なものとすることなく、効率的な動きを実現できる。
(6)本形態においては、好ましくは、前記挟持工程の後に、前記第1支持部材と前記押さえ部材との間に前記剥離対象部位が挟持された状態で、前記押さえ部材から前記剥離対象部位に作用する前記第3方向の力を、発生又は増加させる押圧工程(S141~S145参照)を更に含む。
この場合、押さえ部材を利用して第3方向の力を高めることで、第1支持部材に対する剥離対象部位の変位が更に生じ難い状態を形成できる。これにより、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行う必要性を更に低減できる。
(7)また、本形態においては、好ましくは、前記押圧工程は、前記剥離工程が開始されてから終了するまで継続される。
この場合、第1支持部材に対する剥離対象部位の変位が生じ難い状態で、剥離工程の全体を実行できる。
(7-1)また、本形態においては、好ましくは、前記押圧工程は、前記退避工程の前までに、前記力を所定値(Fn)まで増加させる。
この場合、退避工程での把持部材の動きに伴って第2方向での剥離対象部位の位置合わせ状態が損なわれてしまう可能性を、効果的に低減できる。
(8)また、本形態においては、好ましくは、前記剥離刃は、前記第1支持部材に対して前記第3方向に相対的に移動可能な第2支持部材(6800)に、前記第3方向に相対的に変位不能に支持され、
前記押さえ部材は、バネ要素(6802)により前記第1支持部材に向けて前記第3方向に付勢される態様で、前記バネ要素を介して前記第2支持部材に支持され、
前記挟持工程、前記押圧工程、及び前記剥離工程は、前記第2支持部材を前記第1支持部材に向けて相対的に移動させることで実現される。
この場合、第2支持部材を第1支持部材に向けて相対的に移動させるだけで、挟持工程及び押圧工程が実行されるという効率的な構成を実現できる。
(9)また、本形態においては、好ましくは、前記剥離刃は、前記第1支持部材に対して前記第3方向に相対的に移動可能な第2支持部材(6800)に、前記第3方向に相対的に変位不能に支持され、
前記押さえ部材は、バネ要素(6802)により前記第1支持部材に向けて前記第3方向に付勢される態様で、前記バネ要素を介して前記第2支持部材に支持され、
前記把持部材は、カム機構(681)を介して、前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の相対的な移動に連動し、
前記挟持工程、前記押圧工程、前記剥離工程、前記当接工程、及び前記退避工程は、前記第2支持部材を前記第1支持部材に向けて相対的に移動させることで実現される。
この場合、第2支持部材を第1支持部材に向けて相対的に移動させるだけで、挟持工程や押圧工程等が実行されるという効率的な構成を実現できる。
(10)また、本形態においては、好ましくは、前記剥離工程は、前記剥離刃を前記平角線に対して前記第3方向に相対的に移動させることで、前記剥離対象部位における前記2つの面上の前記被覆を剥離し、
前記剥離刃は、前記第2方向で前記押さえ部材の両側に配置され、前記押さえ部材における前記第2方向の側面(6626)に沿って前記第3方向に摺動可能である。
この場合、剥離刃を押さえ部材の側面に沿って移動させることができるので、剥離刃の移動の際に生じうる僅かな第2方向の変位等を防止できる。
(11)また、本形態においては、好ましくは、前記把持部材は、前記第3方向に延在しかつ前記第2方向に突出するプレカット刃(641)を有し、
前記当接工程は、更に、前記剥離対象部位における前記第1方向の端部位置で前記プレカット刃により前記2つの面上の前記被覆に前記第3方向の切れ目(C1)を入れることを含む。
この場合、切れ目を利用して、剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を実現できるので、バリ等の発生を低減できる。また、把持部材を利用して、第2方向での剥離対象部位の位置合わせや撓み等の矯正を行う際に、プレカットを行うことができるので、効率的な動きを実現できる。
(12)他の一の形態は、絶縁用の被覆(1300)を有しかつ断面が矩形状であるステータコイル用の平角線(10)から前記被覆を剥離する被覆剥離装置(60)であって、
前記平角線の剥離対象部位が第1方向(X)に延在する状態で載せられる第1支持部材(62)と、
前記第1支持部材に支持された前記剥離対象部位を、前記第1方向に垂直な第3方向で前記第1支持部材との間に挟持する押さえ部材(662)と、
前記第1方向及び前記第3方向の双方に対して垂直な第2方向で前記第1支持部材の両側に、前記第1方向に延在する剥離刃(661)であって、前記平角線における前記第2方向で対向する2つの面に係る前記被覆を剥離する剥離刃と、
前記第2方向の両側から、前記2つの面に当接する当接位置と、前記2つの面から離間する退避位置との間で、前記第2方向に移動可能な把持部材(64)とを含む、被覆剥離装置である。
本形態によれば、把持部材を利用して、第2方向での剥離対象部位の位置合わせや撓み等の矯正を行うことができる。これにより、平角線の第2方向の位置ずれが生じ難い状態で平角線の被覆を剥離刃により剥離することが可能となる。また、本形態によれば、第3方向で押さえ部材と第1支持部材との間に剥離対象部位を挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行うことが可能であり、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態(把持部材が当接位置にある状態)で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行う必要性を、低減できる。なお、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行う場合は、把持部材と剥離刃との間で異物の噛み込みが発生しやすくなる。従って、本形態によれば、剥離屑等の異物の噛み込みが発生する可能性を低減することが可能となる。
(12-1)本形態においては、好ましくは、把持部材は、剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離の前に当接位置に移動する。
この場合、把持部材により剥離対象部位の位置合わせや撓み等の矯正が実現された後に、剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行うことができる。
(13)また、本形態においては、好ましくは、複数の動作を実現する駆動機構(68)を更に含み、
前記複数の動作は、
前記第1支持部材に対して前記押さえ部材を相対的に移動させることで、前記第1支持部材と前記押さえ部材との間に前記剥離対象部位を挟持させる動作(S141参照)と、
前記第1支持部材と前記押さえ部材との間に前記剥離対象部位が挟持された状態で、前記当接位置へと前記把持部材を移動させる動作(S142、S143参照)と、
前記退避位置に向けて前記把持部材を移動させながら又は前記当接位置から前記退避位置に向けて所定距離以上前記把持部材を移動させてから、剥離開始位置から剥離終了位置に向けて前記剥離刃を前記第1支持部材に対して相対的に移動させる動作(S144~S145参照)とを含む。
この場合、剥離工程の初段階での異物の噛み込みの可能性を低減できる。具体的には、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行う場合は、把持部材と剥離刃との間で異物の噛み込みが発生しやすくなる。これに対して、本形態によれば、剥離対象部位から把持部材が所定距離以上離れてから剥離工程が開始されるので、剥離屑等の異物の噛み込みが発生する可能性を低減できる。
(14)また、本形態においては、好ましくは、前記第1支持部材に対して前記第3方向に相対的に移動可能であり、前記押さえ部材を前記第3方向に相対的に変位可能に支持するとともに前記剥離刃を前記第3方向に相対的に変位不能に支持する第2支持部材(6800)と、
前記押さえ部材を前記第1支持部材に向けて前記第3方向に付勢するバネ要素(6802)とを更に含み、
前記駆動機構は、前記第2支持部材を前記第1支持部材に対して前記第3方向に相対的に移動させる第1機構(680)と、該第1機構により実現される移動に連動して前記第1支持部材に対する前記把持部材の移動を実現する第2機構(681)とを含み、
前記駆動機構は、前記第2支持部材を前記第1支持部材に対して前記第3方向に相対的に移動させることで、前記複数の動作を実現する。
この場合、第1機構と第2機構とを連動させることで、複数の動作を効率的に実現できる。
(15)また、本形態においては、好ましくは、前記複数の動作は、前記押さえ部材から前記剥離対象部位に作用する前記第3方向の力を、発生又は増加させる動作(S141~S145参照)を更に含む。
この場合、押さえ部材を利用して、第1支持部材に対する剥離対象部位の変位が生じ難い状態を形成できる。これにより、第2方向の両側から剥離対象部位を把持部材により挟持した状態で剥離刃による剥離対象部位の被覆の剥離を行う必要性を更に低減できる。