JP7400157B2 - 角層のターンオーバー遅延を評価する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚角層中の不溶性タンパク質を指標として、皮膚角層のターンオーバー遅延を評価する方法に関する。
皮膚の基底層におけるケラチノサイトの増殖と、角化の過程、そして角層剥離は、絶え間なく行われている。その生まれ変わりをターンオーバーという。ターンオーバーによって皮膚は常に新しく亢進されている。角層のターンオーバーとは、表皮角化細胞が基底層から分裂して角化し角層となって脱落するまでを言い、この時間をターンオーバー時間と言う。角層のターンオーバー時間は、老化によって遅くなることが報告されている(非特許文献1参照)。角層のターンオーバーの時間の遅れを、角層ターンオーバー遅延という。
角層のターンオーバー遅延により、角層細胞面積の拡大(非特許文献2)、角層の肥厚(非特許文献3)が生じ、その結果肌は、角層の乾燥や弾力性が低下する(非特許文献4)。その結果、肌の乾燥や弾力性が低下する。そこで、角層のターンオーバーの遅延を測定評価することで、肌の乾燥や弾力性の低下を緩和する化粧方法などの対策を、化粧品の利用者に提案することが可能となる。
従来の角層のターンオーバーを評価する方法としては、ダンシルクロライドを肌に塗布してターンオーバーによる除去率を評価する方法(非特許文献1)、角層細胞の面積を測定して評価する方法(非特許文献2)、角層中のメラニンを指標として評価する方法(特許文献1)、UV照射により発生させたメラニンの角層中の量を指標として評価する方法(特許文献2)、テープストリッピング採取した角層のデスモグレインを免疫染色し評価する方法(特許文献3)、テープストリッピング採取した角層の厚みと面積を評価する方法(特許文献4)などがある。
これらの方法は、いずれも処理が煩雑、測定に長時間を要する、あるいは専用の装置が必要など様々な問題があった。
一方、角層中の不溶性タンパク質が、角層のターンオーバーの指標となりうるとして注目されている。
角層の不溶性成分は、主にコーニファイドエンベロープタンパクとケラチン線維束から成ることが知られている(非特許文献5)。
コーニファイドエンベロープタンパクやケラチンタンパクは、角化の異常が生じた疾患の肌において、発現に異常がみとめられる場合がある。また、角層バリア機能の低下に関与することが知られている(非特許文献6)。
この角層の不溶性タンパクの分析は、角層試料を、還元剤を含んだ抽出溶媒で、不溶性タンパクのS=S結合を切断し、溶解した上で、不溶性成分総量としてタンパク定量を行う方法(特許文献5)である。あるいは、抗ケラチン抗体を用いてウエスタンブロッティング等により評価する方法 (特許文献6)、角層を分離しコーニファイドエンベロープを親油性蛍光染色して評価する方法(特許文献7)などがある。
また角層の不溶性成分の構造的解析を行う方法もある。例えば、示差走査熱量測定によりケラチンタンパクの性状を評価する方法(特許文献8)、赤外線測定によりケラチン線維の分散性を評価する方法(特許文献9)が利用されている。これらの評価方法は、操作方法が煩雑で、しかも結果を得るためには長時間が必要である。
加齢により角層ターンオーバーが遅延することは既に知られている(非特許文献1)。ヒト前腕部の角層のターンオーバーに要する時間は、20~30歳代が8~16日程度であるが、70~80歳代では16~25日と長くなる。
また、加齢により角層細胞の面積が大きくなることも既に知られている(非特許文献2)。20~30歳代の角層細胞面積は1100μm2程度であるのに対し、70~80歳代では1300μm2と約1.2倍大きくなる。すなわち、角層ターンオーバー時間の遅延と角層細胞面積は、加齢(老化)を反映する。そして、ターンオーバー時間と角層細胞面積は、極めて高い正の相関関係にあることが明らかとなっており、この関係が生じる理由として、加齢とともに表皮基底細胞の増殖能が低下し、さらに若年に比べ角層細胞の剥離速度も低下する結果、角層細胞は長く皮膚表面にとどまっていることになり扁平化が進み面積が大きくなっていくと考えられている(非特許文献7)。すなわち角層細胞面積の増加は、皮膚角層ターンオーバーの遅延を表していることであるとして、広く認識されており、角層細胞面積値はターンオーバーの程度を表していると認識されている。
特許第6118082号公報 特開2005-230314号公報 特許第4805794号公報 特開2016-176930号公報 特許第4954908公報 特許第4805794号公報 特許第3878787号公報 特開2010-237098公報 特開2016-224025号公報
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本発明者らは、皮膚角層抽出液を用いたターンオーバーの研究を行う過程で、皮膚角層の不溶解性画分に注目し研究を進めたところ、角層のターンオーバー遅延の新たな評価方法を見出した。
すなわち本発明は、皮膚角層のターンオーバー遅延の評価方法を提供することを課題とする。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)角層抽出液の濁度(A)と可溶性タンパク質量(B)の(A)/(B)比を指標として、角層のターンオーバー遅延を評価する、ターンオーバー遅延の評価方法。
(2)角層抽出液中の可溶性タンパク質量(B)が、角層抽出液中の不溶性成分を遠心分離し除去した上清のタンパク質量を測定することにより得られた値である(1)に記載の評価方法。
(3)角層抽出液の濁度測定方法および可溶性タンパク質量測定方法が、吸光光度法又は、比色法によるものである(1)または(2)に記載の評価方法。
(4)角層抽出液の濁度(A)と可溶性タンパク質量(B)の(A)/(B)比を指標とする皮膚老化の評価方法。
本発明により、皮膚角層のターンオーバー遅延の評価方法が提供される。
本発明の評価方法は、従来の評価方法に比して簡便な操作であり、画像解析装置等専用の装置を必要としないため、汎用性が高い。
また皮膚角層のターンオーバー遅延を知ることで、皮膚の肥厚やシワ発生などの兆候を事前に知ることが可能となり、皮膚老化を予測することができる。
角層抽出溶媒ごとの抽出溶媒中(懸濁液中)の総タンパク質量、上清中の可溶性タンパク質量、及び可溶性タンパク質量(上清タンパク量)/懸濁液総タンパク質量(懸濁液タンパク量)比を示すグラフである。 ホルマジン水分散液(ホルマジン標準液400)を標準液として希釈系列を調製し、96ウエルアッセイプレートを用いて測定したときの光学密度と比濁度の検量線を示す。 採取した角層試料中の角層細胞の代表的な観察画像である。ターンオーバーが遅延すると角層の最外層の細胞面積が増大する。 ターンオーバーの程度(角層細胞面積値)と本発明のターンオーバー指標値の散布図である。図中に相関係数及び回帰直線を記載している。
本願明細書において、「角層のターンオーバー」とは、表皮角化細胞が基底層から分裂して角化し角層となって脱落するまでをいう。「角層のターンオーバー遅延」とは、この角層細胞が基底層から始まって、脱落するまでの時間が延長する状態を言う。ターンオーバーの遅延は、角層細胞の表面積の増加現象として把握することができる。そして角層ターンオーバー遅延は、皮膚の老化を反映している(非特許文献1)。また本願明細書において、「角層細胞面積値」を「ターンオーバーの程度」とする。
本願発明は、皮膚より採取した角層試料を、界面活性剤を含む水溶液で抽出した抽出物中に含まれる、不溶性成分によって生じる角層抽出液の濁度(A)と、角層抽出液中の可溶性タンパク質量(B)の比率を指標として、角層のターンオーバーの遅延を評価する方法である。以下に、更に詳細に説明を加える。
本発明において、濁度とは、JIS K0101に定める方法に従って精製水1Lに対し、標準物質であるホルマジン1mgを含ませ、均一に分散させた懸濁液の濁りを濁度1度と定義する。この標準液と試料とを比較することで、試料の濁度を決定する。
前記皮膚角層試料の採取、角層試料の処理及び角層試料の調製、分析は、以下のように行うことが好ましい。
(工程1)角層剥離手段を用いて、皮膚より角層試料を採取する。
(工程2)工程1で採取した角層試料を、界面活性剤を含む溶液で抽出し、抽出溶液を回収する。
(工程3)工程2で得られた角層抽出液の濁度を測定する。
(工程4)工程2で得られた角層抽出液を遠心分離して上清を取得する。
(工程5)工程4で得られた上清のタンパク質量を測定する。
(工程6)工程3で得た濁度を(A)、工程5で得た上清のタンパク質量を(B)とし、(A)/(B)を角層のターンオーバーの指標とする。
(工程7)予め多数の被験者から得られた、(A)/(B)と角層ターンオーバーのデータにもとづき、角層ターンオーバー遅延を評価する。
<工程1>
工程1の角層剥離手段は、バイオプシーや粘着テープを用いる方法のいずれであっても良い。被験者の負担を考慮すると粘着テープを用いる方法が好ましい。粘着テープを用いる方法は、テープストリッピング法と呼ばれる。
テープストリッピング法は、粘着性テープを皮膚に貼り付けた後、剥がして皮膚の表層を回収する方法である。
粘着剤としては、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、シリコーンゴム、ポリイソプレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等の合成ゴム、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂等が用いられている。テープストリッピング法に用いる粘着テープは市販されており、これを使用しても良い。
<工程2>
工程2において、剥離した角層試料を、抽出溶媒を用いて抽出する。抽出溶媒は、タンパク質抽出に適した界面活性剤を含む水性溶媒を用いて抽出操作を行う。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(以下「SDS」)を用いることが一般的であるが、これに限定されない。SDSを用いる場合、溶媒全量あたり0.1~10質量%、好ましくは0.2~5質量%、特に好ましくは0.2質量%とする。また溶媒は水又はPBS等の緩衝液を用いることができる。さらに必要により抽出を促進するための助剤としてポリエチレングリコール等を添加しても良い。市販の界面活性剤を含有した抽出溶媒を用いても良い。例えば、T-PER tissue protein extraction buffer(Thermo Fisher Scientific製)、Pierce RIPA buffer(Thermo Fisher Scientific製)を用いることができる。Pierce RIPA bufferは、1質量%ノニデットP40、1質量%デオキシコール酸ナトリウム、0.1質量%SDS、150mM NaClを含有する25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)である。T-PER Tissue Protein Extraction Reagentは、心臓、肝臓、腎臓、脳といった哺乳動物組織サンプルから総タンパク質抽出が行えるデザインとなっており、150mM NaCl、非変性界面活性剤を含む25mMビシン緩衝液(pH7.6)である。
抽出操作は、通常角層などの生体試料からタンパク質を抽出する適切な抽出操作であればどのような操作であっても良い。例えばビーズとボルテックスミキサーを用いて振盪させて抽出することができる。通常は1~3分間振盪することで角層中のタンパク質を溶媒中に分散または溶解させることができる。
またテープストリッピング法により採取した試料の場合は、抽出操作の際に、剥離テープの基材である樹脂フィルム及び粘着剤は、早期に除去する。
抽出液は、採取した試料量に応じて適宜その量を増減するが、10~1000μLが好ましい。
<工程3>
工程3においては、抽出溶媒中に抽出された不溶性角層タンパク質を濁度(A)として測定する。濁度の測定は、光学的な測定であっても、限界希釈法や、段階希釈した標準液やカラーチャートを用いた比色法による測定であっても良い。光学的な測定は、比濁計を用いた比濁度測定や、吸光光度計を用いた光学密度(波長600~700nmにおける光学密度)測定であっても良い。
なお濁度は、上記したように、ホルマジン1mg/Lの水分散液の濁り度を濁度1度として測定する(JIS K0101に定める方法)。
あるいは、予め上記のホルマジン水分散液を標準液とした希釈系列の溶液の、一定の光路長で測定した光学密度と希釈率から検量線を作製し、光学密度から比濁度(希釈率)を得て、これを濁度として用いても良い。
限界希釈法は、標準とする濁度溶液に到達するまでの希釈倍率(限界希釈倍率)を求めて、逆算する方法を利用することも可能である。比色法は、目視による手段のほか、抽出液の画像解析によっても評価が可能である。
<工程4>
工程4においては、抽出溶媒中に溶解した角層タンパク質と、不溶解性成分を分離するために行う操作である。生化学分野で通常行なわれる遠心分離操作によって容易に実施できる。抽出液を遠心管に採取し、2,000~20,000Gで遠心分離することで、沈殿と上清に分離することができる。
<工程5>
工程5において、工程4で得た上清中のタンパク質量(B)を測定する。上清のタンパク質量の測定は、生化学分野で汎用されているあらゆる方法が利用でき、特に制限されるものではない。例えばローリー法、改良ローリー法、ブラッドフォード法、改良ブラッドフォード法、紫外線吸収法、ケルダール法などあらゆる方法が挙げられる。また、タンパク質の定量は市販のキットを使用して簡便に行うことが可能である。例えば、テルモフィッシャーサイエンティフィック社製BCA protein assay、バイオラッド社製のDCプロテインアッセイや、RC DCプロテインアッセイなどが利用できる。
なお、工程5は、吸光光度計を用いる手段のほか、タンパク染色試薬による着色液の画像解析や、段階希釈した標準液やカラーチャートを用いた目視による比色判定によっても評価が可能である。
<工程6>
工程6は、角層のターンオーバー遅延の指標値を得るための演算である。
工程3、5で得た数値から(A)/(B)比を得る。この値を本願明細書においては、「ターンオーバー指標」と呼ぶ。
<工程7>
工程7は、ターンオーバー遅延が起こっていないか評価する工程であり、予め測定した多数の被験者の年齢とターンオーバーの程度の関係性データおよびターンオーバーの程度とターンオーバー指標の関係性データに基づき、測定対象者のターンオーバー指標に該当するターンオーバーの程度が、同年齢のターンオーバーの程度の平均値と比較して、「一致」または、「小さい」すなわち「ターンオーバーが早い」、或いは「大きい」すなわち「ターンオーバーが遅い」の判定を行なう。
上記の各工程は、いずれも簡単な生化学操作であり、当業者であればきわめて容易に一連の工程を実行可能である。
以下に試験例を示し、 本発明を具体的に説明する。
<試験1>
試験1においては、角層試料よりタンパク質を抽出するための最適な溶媒の条件を設定した試験例を示す。
1.方法
角層試料は、成人の前腕内側部より、粘着テープ(角層チェッカー、アサヒバイオメッド製)を被験部位の皮膚表面に密着させ、このテープをはがして、付着してくる角層を採取した。角層試料は、近傍部位から複数採取した。採取の際に用いた粘着テープの角層付着量を確認するため、角層チェッカー用スキャナー Squam Scan 850(Clinical & Derm LLC.)を用いて、角層の付着した粘着テープの光透過率を測定したところ、一枚の粘着テープにより採取できた角層量は、ほぼ同じであった。
(1)抽出溶媒
抽出溶媒は、pH7.4のリン酸緩衝液(PBS、富士フィルム和光純薬株式会社製)中に、SDS(富士フィルム和光純薬株式会社製)を0.1質量%、0.2質量%、1質量%、5質量%溶解させた溶液を用意した。
さらに、PBS中に0.2質量%SDSおよび0.5質量%プロピレングリコール(PG:富士フィルム和光純薬株式会社製)を溶解させた溶液、T-PER tissue protein extraction reagent(Thermo Fisher Scientific製)、Pierce RIPA buffer(Thermo Fisher Scientific製)を、抽出溶媒として準備した。
(2)抽出操作
角層を採取したテープをプラスチックチューブに入れ、上述の抽出溶媒を500μl加え、ガラスビーズ(φ2~3mm)を数粒入れ、ボルテックスミキサーを用いて1分間撹拌し、角層を粘着テープから剥離しつつ、可溶性タンパク質を抽出した。
(3)タンパク質量の測定
この抽出液は、角層中の不溶性タンパク質等の不溶性物質を含む懸濁液である。この懸濁液の総タンパク量をBCA protein assay(Thermo Fisher Scientific製)を用いて定量した。
更に、懸濁液を遠沈して不溶物を分離し、上清中の可溶性タンパク量を同様にBCA protein assayを用いて定量した。
2.結果
図1に、溶媒ごとの抽出溶媒中(懸濁液中)の総タンパク質量、上清中の可溶性タンパク質量、及び可溶性タンパク質量(上清タンパク質量)/懸濁液総タンパク質量(懸濁液タンパク量)比を示す。
0.1質量%SDS単独含有溶媒以外の全溶媒において、懸濁液総タンパク質量は100μg/mLを超え、十分な角層の不溶性タンパク質及び可溶性タンパク質が溶媒中に抽出され、かつ可溶性タンパク質量/懸濁液総タンパク質量比が10%未満であり、目的とする不溶成分が多いことがわかった。この結果から、抽出溶媒は、SDSを単独で使用する場合はSDS濃度を0.2~5質量%含有する溶液、または市販のT-PER tissue protein extraction buffer、Pierce RIPA bufferが好ましいことがわかった。
<試験2>
試験2においては、角層試料より抽出した不溶性タンパク質が、角層のターンオーバー遅延の指標となりうることを示す。
(3)角層ターンオーバー指標値の測定
・試験試料の採取
角層採取部位は、皮膚のターンオーバー日数または角化の程度が異なると予測される部位(20歳~70歳の成人の頬、前腕内側)を選択した。角層試料は上記の通り、粘着テープ(角層チェッカー)を被験部位の皮膚表面に密着させ、採取した。
・角層試料の溶媒抽出操作
角層の付着したテープをプラスチックチューブに入れ、PBS中にSDS0.2質量%およびポリエチレングリコール(以下「PG」)0.5質量%を含む抽出液500μLを加えた。さらにガラスビーズを数粒入れ、ボルテックスミキサーを用いて1分間撹拌し、角層を粘着テープから剥離しつつ、タンパク質を抽出した。
・96Wellマイクロプレートを用いた比濁検量線の作成(光路長3mm)
(1)方法
ホルマジン標準液(ホルマジン度400、富士フイルム和光純薬社製)を、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、富士フイルム和光純薬社製)および0.5%プロピレングリコール(PG、富士フイルム和光純薬社製)含有リン酸緩衝液(PBS、富士フイルム和光純薬社製)を希釈溶媒として、公比2倍の段階希釈を行い、IWAKI 96wellアッセイプレート(AGCテクノグラス株式会社製)に100μl/wellずつ分注し、吸光プレートリーダーを用いて660nmの波長における光学密度(OD)を測定した。
なお、ODの測定条件が異なる場合には、その都度ホルマジンを用いて検量線を作成した。
(2)比濁度(希釈倍度)と濁度の直線性
比濁度とODを2次元プロットして、96ウエルマイクロプレートを使用した場合の検量線を作成した。検量線を図2に示す。
標準液の比濁度(X)とOD(Y)は、Y=0.139Xであらわされる直線回帰をする。したがってIWAKI 96wellアッセイプレート(AGCテクノグラス株式会社製)に100μl/wellずつ分注して測定したOD値は、0.139で除することで、比濁度に換算して測定結果を標準化する。
・抽出液の濁度測定
不溶成分量の指標として、角層抽出液の濁度を測定した。抽出液をよく撹拌し、IWAKI 96wellアッセイプレート(AGCテクノグラス株式会社製)に100μl/wellずつ分注し、吸光プレートリーダーを用いて660nmの波長でODを測定し、検量線から比濁度を得た。
・可溶性タンパク質量の測定
抽出液を7,000Gで1分遠沈して不溶物を沈殿させて分離し、上清を別のチューブに移し、上清中のタンパク質量をBCA protein assayを用いて定量した。
・角層ターンオーバー指標値(A/B)の計算
次の演算で、角層ターンオーバー指標値(A/B)を得た。
角層ターンオーバー指標値=角層抽出液の比濁度/可溶性タンパク質量
(2)角層細胞面積の測定
被験者のターンオーバーの程度を確認するため、試料中の角層細胞面積を測定した。
1)角層の採取
角層採取部位は、皮膚のターンオーバー日数または角化の程度が異なると予測される部位(20歳~70歳の成人の頬、前腕内側)を選択した。角層試料の採取は、試験1と同様に実施した。全44試料を採取した。
2)角層細胞面積の計測
粘着テープに付着した角層細胞の面積を計測した。計測方法は、デジタルマイクロスコープを用いて角層細胞の画像を撮影した(図3)。画像中の角層細胞1個あたりの面積は、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて計測した。それぞれの角層試料について、1画面につき5個、3画面の角層細胞の面積を取得し、平均値を算出した。得られた角層細胞の面積の平均値を試料の角層細胞面積、すなわちターンオーバーの程度とした。
2.結果
表1に全44例の、ターンオーバーの程度(角層細胞面積値)及び、ターンオーバー指標値を示す。
またこのデータの散布図及び、散布図から計算した、角層細胞面積値とターンオーバー指標値の相関係数を図4に示す。なお相関係数は、スピアマンの順位相関分析法によって計算した。
図4から、角層ターンオーバー指標値と角層細胞面積は、高い正の相関を示すことがわかった。すなわち、前記の測定で得られるターンオーバー指標は、ターンオーバーの程度(角層細胞面積)の増大を反映しており、角層ターンオーバーの指標として有用であることがわかった。
この角層ターンオーバー指標が増加することは、被験者は、角層のターンオーバー遅延が発生している、と評価できる。或いは実年齢の平均値と比較してターンオーバー指標値が高い場合、ターンオーバーが遅延していると判断する。

Claims (4)

  1. 角層抽出液の濁度(A)、と可溶性タンパク質量(B)の(A)/(B)比が指標として用いられる、ターンオーバー遅延の評価のための方法。
  2. 角層抽出液中の可溶性タンパク質量(B)が、角層抽出液中の不溶性成分を遠心分離し除去した上清のタンパク質量を測定することにより得られた値である請求項1に記載の方法。
  3. 角層抽出液の濁度測定方法および可溶性タンパク質量測定方法が、吸光光度法又は、比色法によるものである請求項1または2に記載の方法
  4. 角層抽出液の濁度(A)、と可溶性タンパク質量(B)の(A)/(B)比が指標として用いられる、皮膚老化の評価のための方法。
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