以下に、本発明に係る情報処理装置、配信システムおよび配信方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
まず、図1A~図1Cを用いて、実施形態に係る配信システムおよび配信方法の概要について説明する。図1Aおよび図1Bは、配信システムの構成例を示す図である。図1Cは、配信方法の概要を示す図である。
図1Aに示すように、実施形態に係る配信システムSは、管理装置1と、各車両に搭載された複数の車載装置10とを含む。図1Aに示す例において、管理装置1は、情報処理装置の一例であり、各車載装置10から送信された車両情報を車両情報データベースで管理するサーバ装置である。
車載装置10は、例えば、通信機能を備えたドライブレコーダである。車載装置10は例えば、車両の前方を撮影するとともに、所定周期で車両情報を管理装置1へ送信する。例えば、車両情報には、車両の現在地を示す位置情報および各車両の走行速度に関する情報などが含まれる。
また、車載装置10は、他の車載装置10で撮像された映像(1フレームのカメラ画像を含む)を受信し、受信した映像を表示することで、他地点の映像をリアルタイムで乗員に提供することが可能である。
ここで、実施形態に係る配信システムSでは、配信車両と、受信車両との通信確立を予め行うことで、受信車両の乗員が所望する他地点の映像を速やかに提供することができる。
具体的には、図1Bに示すように、管理装置1は、所定のイベントの発生を検知すると、配信車両と、配信車両によって配信された映像を受信する受信車両とを選択し、配信車両と、受信車両との通信確立を指示する(ステップS1)。
ここで、配信車両とは、イベントの発生地点Ptをこれから通過する車両であり、発生地点Ptを所定時間経過後に撮影可能な車両である。また、受信車両とは、例えば、配信車両よりも発生地点Ptを遅く通過する予定の車両である。したがって、受信車両の乗員は、配信車両によって撮影された発生地点Ptの現在の状況を発生地点Ptの通過前に確認することができる。
図1Bに示す例では、配信車両が車両C1であり、受信車両が車両C3である場合を示すとともに、管理装置1が、車両C3の車載装置10に対して、車両C1の車載装置10との通信確立を指示する場合を示す。なお、以下では、配信車両の車載装置10を「配信車両」、受信車両の車載装置10を「受信車両」とも記載する場合がある。なお、本実施形態において、配信車両の車載装置10は受信機の一例に対応する。また、イベントは、特に限定されるものではないが、交通事故や、渋滞などといった受信車両の交通の妨げとなる事象が挙げられる。
その後、車両C3の車載装置10は、車両C1の車載装置10に対して接続要求を行うと(ステップS2)、車両C3の車載装置10に対して映像配信を開始する(ステップS3)。
実施形態に係る配信システムSでは、これらステップS1~ステップS3までの一連の処理を配信車両が発生地点Ptの通過前に行うことで、配信車両が撮影した発生地点Ptの映像を各受信車両の乗員に対して、リアルタイムで提供することができる。
このような配信システムSにおいては、複数の配信車両と、複数の受信車両とがそれぞれ通信接続を行う場合も想定される。この際、通信接続を行う車両の数に応じて通信トラフィックが増大し、通信速度の低下や遅延が発生するおそれがある。
このような問題に対して、実施形態に係る配信方法では、配信車両の絞り込みを行うことで、通信トラフィックを抑制することとした。
具体的には、図1Cに示すように、実施形態に係る配信方法では、発生地点Ptから所定の配信領域Rs内に存在する車両のうち、発生地点Ptに向かう車両を配信車両Cdとして選択する。
この際、実施形態に係る配信方法では、配信領域Rs内に存在する車両であっても、発生地点Ptから遠ざかる車両については配信車両として選択しない。言い換えれば、実施形態に係る配信方法では、発生地点Ptをこれから通過する、もしくは、発生地点Ptをこれから撮影可能な車両を配信車両Cdとして選択し、その他の車両を配信車両Cdの選択対象から除外する。なお、図1Cに示す例において、配信領域Rsは、発生地点Ptを基準とする所定範囲の領域である。
つまり、実施形態に係る配信方法では、受信車両との通信接続の確立以降に発生地点Ptを撮影可能な車両に配信車両を限定することで、不要な通信接続を抑制することが可能となる。
このように、実施形態に係る配信方法では、配信車両が発生地点Ptの通過前に、配信車両と受信車両とが予め通信確立を行うことで、受信車両に対して他地点の映像を迅速に提供することができる。
また、実施形態に係る配信方法では、配信車両の選択に際して、発生地点Ptから配信領域Rs内に存在する車両のうち、発生地点Ptへ向かう車両に絞り込むことで、通信トラフィックの増大を抑制することができる。
したがって、実施形態に係る配信方法によれば、通信トラフィックを抑えつつ、他地点の映像を迅速に提供することができる。なお、ここでは、配信車両を絞り込むことで、通信トラフィックを抑制する場合について説明したが、受信車両を絞り込むことで、通信トラフィックを抑制することも可能であるが、この点の詳細については後述する。
次に、図2を用いて、実施形態に係る管理装置1の構成例について説明する。図2は、管理装置1のブロック図である。図2に示すように、管理装置1は、通信部2と、記憶部3と、制御部4とを備える。
通信部2は、例えばNIC等によって実現される。通信部2は、所定のネットワークと無線で接続され、ネットワークを介して、各車載装置10をはじめとする各種カメラとの間で情報の送受信を行う。
記憶部3は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、図2の例では、車両情報データベース31、帯域圧迫情報データベース32、配信領域データベース33および受信領域データベース34を備える。
車両情報データベース31は、各車載装置10から所定の周期で送信される車両情報を管理するデータベースである。図3は、車両情報データベース31の一例を示す図である。図3に示す例において、車両情報データベース31は、「カメラID」、「カメラ種別」、「IPアドレス」、「現在地」、「走行向き」、「速度」などを互いに対応付けて記憶する。
「カメラID」は、配信システムSで管理するカメラを識別するための識別子である。「カメラ種別」は、対応するカメラの種別を示す。図3の例において、カメラ種別が、定点カメラまたは車載カメラのいずれかである場合を示す。なお、定点カメラとは、道路等に設置されたカメラを示し、車載カメラは、各車両に搭載されたカメラ(すなわち、車載装置10)を示す。
「IPアドレス」は、対応するカメラに割り当てられたネットワーク上のアドレスを示す。「現在地」は、対応するカメラの現在地を示し、「走行向き」および「速度」は、対応するカメラを搭載する車両の走行する向きおよび走行速度をそれぞれ示す。
図2の説明に戻り、帯域圧迫情報データベース32について説明する。帯域圧迫情報データベース32は、通信エリア毎の通信帯域の圧迫度に関する情報を記憶するデータベースである。
配信領域データベース33は、各発生地点Ptに紐付けられた配信領域に関する情報を記憶するデータベースである。かかる配信領域は、配信車両を選択する際に用いられる領域に関する。図4にて後述するように、配信領域は、閾値Th1と、外周Rspとによって構成される。
受信領域データベース34は、各発生地点Ptに紐付けられた受信領域に関する情報を記憶するデータベースである。なお、後述するように、受信領域は、各車両の走行速度に応じて設定されるため、受信領域データベース34は、各車載装置10それぞれの受信領域を記憶するデータベースであるとも言える。
制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部4の取得部41、推定部42、設定部43、選択部44、抽出部45および指示部46として機能する。
また、制御部4の取得部41、推定部42、設定部43、選択部44、抽出部45および指示部46の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
取得部41は、各車載装置10から所定の周期で車両情報を取得するとともに、取得した車両情報に基づいて、車両情報データベース31を更新する。この際、取得部41は、各車載装置10から位置情報、走行向きや速度に関する情報を車両情報として取得する。
また、取得部41は、各車両の急ブレーキや急操舵の履歴を車両情報として取得することにしてもよい。なお、走行向きや速度については、各車両の位置情報の時系列変化から推定することができるので、取得部41は、位置情報のみを車両情報として取得することにしてもよい。
また、取得部41は、例えば、ネットワークの提供事業者から通信エリアごとの通信帯域の圧迫状態に関する情報を取得し、帯域圧迫情報データベース32を更新する。なお、取得部41は、各車載装置10とのデータ通信の通信速度に基づいて、通信帯域に関する情報を取得することにしてもよい。この場合、車載装置10とのデータ通信の通信速度が遅い場合には、通信帯域が圧迫していると推定することができる。
推定部42は、各車載装置10から送信される車両情報に基づいて、イベントの発生の有無を推定する。具体的には、推定部42は、各車載装置10から送信される位置情報、急ブレーキや急舵角の履歴などに基づいて、イベントの発生の有無を推定する。
例えば、推定部42は、各車両の位置情報や走行速度に基づいて、イベントとして渋滞の発生の有無を推定する。この際、推定部42は、渋滞の先頭を発生地点Ptとして設定したり、1つの渋滞に対して複数の地点を発生地点Ptとして設定したりすることもできる。なお、1つの渋滞において、発生地点Ptを設定する場合には、河川や交差点などといった特異点を発生地点Ptとして設定することが好ましい。また、上述の例に限られず、渋滞区間全体を発生地点Ptとして設定することにしてもよい。
また、推定部42は、各車両の走行軌跡などに基づいて、走行の妨げとなるイベントの発生を推定することもできる。例えば、道路上に故障車両が存在する場合を想定する。この場合においては、各車両は、故障車両を避けるように走行することになる。したがって、推定部42は、車両の位置情報を繋いだ走行軌跡が特定の地点を避ける場合、イベントが発生していると推定し、かかる特定の地点についてイベントの発生地点Ptとして設定する。
なお、管理装置1は、イベントの発生の有無およびイベントの発生地点Ptに関する情報については、外部サーバから取得することにしてもよい。
設定部43は、イベントの発生地点Ptそれぞれに対して、配信車両を選択するための配信領域および受信車両を選択するための受信領域をそれぞれ設定する。
まず、配信領域を設定する場合における設定部43の処理について説明する。図4および図5は、配信領域の模式図である。なお、図4では、片側2車線の走行車線を2車線分示し、図5では、片側1車線の走行車線を2車線分示す。
図4に示すように、配信領域Rsは、閾値Th1と、外周Rspとを境界に持つ領域である。ここで、閾値Th1は、配信領域Rsにおける発生地点Pt側の境界であり、外周Rspは、配信領域Rsの外周である。
設定部43は、発生地点Ptからの距離に基づいて、閾値Th1を設定する。ここで、後述するように、管理装置1は、閾値Th1よりも距離が近い車両を配信車両の選択対象から除外する。
これは、車両が発生地点Ptから十分に近い場合には、発生地点Ptが車両に搭載されたカメラの画角から外れるためである。したがって、発生地点Ptと同じ走行車線では、直前まで発生地点Ptを撮影可能であるが、発生地点Ptから遠くなるほど、早い段階で発生地点Ptが画角から外れる。
このため、図4に示すように、設定部43は、発生地点Ptからの距離が遠くなるにつれて、発生地点Ptから遠ざかるように閾値Th1を設定する。このように、設定部43は、カメラの画角を考慮して閾値Th1を設定することで、発生地点Ptを撮像可能とする配信車両の選択精度を高めることができる。
また、この際、設定部43は、例えば、通信帯域の圧迫度合や、交通状況に応じて、配信領域Rsの外周Rspを設定する。言い換えれば、設定部43は、通信帯域の圧迫度合や、交通状況に応じて所定範囲を設定する。
設定部43は、通信帯域の圧迫度合に基づいて外周Rspを設定する場合、帯域圧迫情報データベース32を参照し、対応する通信エリアの通信帯域の圧迫度合に基づいて外周Rspを設定する。
具体的には、設定部43は、発生地点Pt近傍の通信帯域の圧迫度合が高いほど、外周Rspを狭くすることで、配信領域Rsを狭めるとともに、発生地点Pt近傍の通信帯域に圧迫度合が低いほど、外周Rspを広げることで、配信領域Rsを拡張する。
つまり、設定部43は、通信トラフィックが増大すると、通信状態に支障をきたすおそれがある場合においては、配信領域Rsを狭めることで、同時に映像を配信する配信車両を少なくする。
これにより、各車載装置10が正常な通信状態のもとに、映像の送受信を行うことができるので、滞りなく映像を送受信することが可能となり、迅速に映像を提供することができる。
また、設定部43は、発生地点Pt近傍における交通状況に応じて外周Rspを設定する場合、設定部43は、発生地点の交通量が多い場合や、渋滞等により低速走行である場合には、外周Rspを狭めることで、配信領域Rsを狭く設定する。
つまり、このような場合には、配信領域Rsを狭くしたとしても、配信車両が発生地点Ptを通過前に、配信車両と、受信車両との通信接続を行う時間を確保することができ、配信領域Rsを狭くした分だけ、配信車両と受信車両との余計な通信を控えることができる。
このように、交通状況に応じて、配信領域Rsを設定することで、通信トラフィックの増大による不具合を未然に防ぐことができる。なお、ここでは、設定部43が交通状況に応じて配信領域Rsを狭くする場合について説明したが、交通状況に応じて配信領域Rsを拡張することにしてもよい。
また、ここでは、交通状況に応じて配信領域Rsを設定する場合について説明したが、発生地点Ptのイベント種別に基づいて、配信領域Rsを設定することにしてもよい。具体的には、イベント種別や各車両の位置情報から、発生地点Ptにおける今後の交通状況を予測することができ、その予測結果に応じて配信領域Rsを設定する。
この場合、混雑が予測される場合には、各車両が発生地点Pt近傍において、低速走行を行うと予測されるので、配信領域Rsを狭く設定する。また、混雑が予測されるイベント種別としては、例えば、交通事故による車線減少などが挙げられる。なお、車線減少については、各車両の走行軌跡から推定することが可能である。
また、設定部43は、各走行レーンにおける車両の走行速度に基づいて、配信領域Rsを設定することにしてもよい。例えば、設定部43は、所定時間内に発生地点Ptを通過可能な範囲を配信領域Rsとして設定する。この際、例えば、設定部43は、所定時間と各走行レーンにおける車両の走行速度との乗算によって外周Rspを設定することとすればよい。
また、図5に示すように、設定部43は、発生地点Ptの対向車線についても閾値Th1を設定することにしてもよい。この場合においても、発生地点Ptから遠い走行レーンほど、発生地点Ptから遠ざかるように、閾値Th1を設定する。
これにより、不要な通信接続を予め抑制することができるので、通信トラフィックの増大を抑止することができる。なお、図5では、外周Rspを省略したが、対向車線においても外周Rspを設定するものとする。
続いて、図6および図7を用いて、設定部43による受信領域の設定手順について説明する。図6および図7は、受信領域の模式図である。なお、受信領域内に存在する車両が受信車両の選択対象となる。
図6に示す例において、設定部43は、受信領域Rrの外周Rrpを車両の走行速度に基づいて設定する。例えば、設定部43は、車両の走行速度に基づき、発生地点Ptを所定時間内に通過可能な範囲を受信領域Rrとして設定するとともに、受信領域Rrの外周Rrpを設定する。
つまり、設定部43は、走行速度が速いほど、発生地点Ptから遠くに外周Rrpを設定し、走行速度が遅いほど、発生地点Ptの近くに外周Rrpを設定することになる。これにより、受信車両にとって適切なタイミングで、配信車両との通信接続を確立することが可能となる。
また、図7に示すように、発生地点Ptの手前に存在する迂回路への分岐点の手前に受信領域Rrを設定することにしてもよい。例えば、発生地点Ptが渋滞を伴うイベントの発生地点である場合に、後続の車両が発生地点Ptを回避して走行することが好ましい場合も想定される。
したがって、分岐点の手前に受信領域Rrを設定しておくことで、後続車両に対して、発生地点Ptの現在の映像を提供することができる。これにより、後続車両の乗員に対して、発生地点Ptを通過する経路または迂回路のどちらを走行するかの判断を容易にさせることができる。
なお、例えば、この場合、設定部43は、迂回路上に配信領域Rsを設定することにしてもよい。つまり、後続車両に対して、発生地点Ptおよび迂回路の双方の映像を提供可能なように配信領域Rsを設定することにしてもよい。
図2の説明に戻り、選択部44について説明する。選択部44は、複数の車両の現在地をそれぞれ示す位置情報に基づいて、所定のイベントの発生地点Ptから配信領域Rs内に存在する車両のうち、発生地点Ptへ向かう車両を映像の配信車両として選択する。
具体的には、選択部44は、車両情報データベース31に登録された各車両の現在地と、配信領域データベース33に登録された各発生地点Ptの配信領域Rsとを照合することで、配信領域Rs内に存在する車両を予め選択する。
続いて、選択部44は、選択した車両の走行向きに基づいて、発生地点Ptへ向かう車両を配信車両として選択する。この際、選択部44は、発生地点Ptに隣接する走行レーンを走行中の車両と、かかる走行レーンの対向車線を走行中の車両とをそれぞれ配信車両として選択することになる。
ここで、発生地点Ptへ向かう車両については、発生地点Ptに隣接する走行レーンを走行中の車両のうち、発生地点Ptへ向かって走行中の車両と定義することにしてもよい。
つまり、配信領域Rs内に存在するものの、発生地点Ptを撮影できない場所に位置する走行レーンを走行中の車両を配信車両の選択対象から除外することにしてもよい。
また、選択部44は、対向車線を走行する車両については、中央分離帯などを考慮して、配信車両の選択候補とするか否かを判定することにしてもよい。具体的には、選択部44は、例えば、中央分離帯や街路樹などの障害物によって、対向車線からの発生地点Ptの撮影が見込めない場合には、対向車線を走行する車両を配信車両の選択対象から除外する。
また、選択部44は、例えば、発生地点Ptが交差点近傍に位置する場合、車両が発生地点Ptを通過しないことが確定した時点で、かかる車両を配信候補の選択対象から除外することにしてもよい。
図8は、配信車両の選択候補の一例を示す図である。例えば、図8に示すように、交差点近傍に発生地点Ptが位置し、車両がこれから交差点へ進入する場合を想定する。この場合、かかる車両は、交差点の手前においては、発生地点Ptに近づくように走行しているため、配信車両の選択候補となる。
一方、交差点を直進した場合には、発生地点Ptから遠ざかることになるので、配信車両の選択対象から除外することになる。また、この場合においては、車両が発生地点Ptを通過しないことが確定した時点で、配信車両の選択対象から除外する。これにより、通信トラフィックを抑制することができる。
この際、選択部44は、例えば、各車両の走行予定経路に基づいて、特定の車両については、配信車両の選択対象から除外することにしてもよい。具体的には、選択部44は、現在、発生地点Ptへ向かって走行中の車両の目的地が発生地点Ptの手前に存在する場合や、走行予定経路が発生地点Ptの手前で右折または左折する場合、かかる車両を配信車両の選択候補から除外する。
このように、選択部44は、発生地点Ptを高い確率で通過する予定の車両に絞って、配信車両を選択することで、映像の送受信に伴う通信トラフィックを抑制することができる。なお、走行予定経路に関する情報については、各車両のカーナビゲーション装置から車載装置10を介して取得することとすればよい。
また、選択部44は、配信領域Rs内を走行中の車両数が所定値以下である場合には、配信領域Rs内に設置された定点カメラを配信車両の代わりに選択することにしてもよい。この場合、受信車両は、定点カメラによって配信された映像を受信することになる。
図2の説明に戻り、抽出部45について説明する。抽出部45は、各車両の位置情報に基づいて、受信領域Rr内に存在する車両を受信車両として抽出する。具体的には、抽出部45は、車両情報データベース31から各車両の現在地に関する情報を取得し、受信領域データベース34を参照し、各発生地点Ptに対して設定された受信領域Rrと照合することで、受信領域Rrそれぞれに存在する車両を受信車両として抽出する。
指示部46は、選択部44によって選択された配信車両が発生地点Ptの通過前に当該配信車両と、映像を受信する受信機との通信確立を指示する。具体的には、指示部46は、選択部44によって選択された配信車両と、抽出部45によって抽出された受信車両との通信確立を指示する。
例えば、指示部46は、車両情報データベース31を参照し、配信車両のIPアドレスを取得し、取得したIPアドレスを受信車両に対して送信することで、受信車両に対して配信車用との通信確立を指示する。
この際、指示部46は、複数の配信車両が選択されていた場合には、複数の配信車両それぞれのIPアドレスを受信車両に対して送信する。また、指示部46は、配信領域Rsおよび受信領域Rrに関する情報をあわせて受信車両に対して送信することにしてもよい。
この場合、受信車両は、配信車両に対して接続要求時において、配信領域Rsに関する情報を送信し、配信車両が配信領域Rsから逸脱した場合に、受信車両との通信接続を終了する。
なお、ここでは、指示部46が、受信車両に対して通信確立を指示する場合について説明したが、配信車両に対して通信確立を指示することにしてもよいし、配信車両および受信車両の双方に対して、通信確立を指示することにしてもよい。
続いて、図9を用いて、車載装置10の構成例について説明する。図9は、車載装置10のブロック図である。図9に示すように、実施形態に係る車載装置10は、カメラ101、車載センサ102、GPS(Global Positioning System)装置103、ナビゲーション装置104が接続される。
カメラ101は、車両Cの周囲を撮像するカメラであり、所定のフレームレートで映像を生成する。車載センサ102は、車両Cの走行状態を検出する各種センサであり、例えば、速度センサ、ブレーキセンサ、舵角センサ、Gセンサ等を含む。
GPS装置103は、GPSアンテナ(不図示)により受信される測位信号に基づいて、車両の現在地を測位する。ナビゲーション装置104は、乗員によって設定された車両の目的地までの走行経路を設定する装置である。
また、図9に示すように、車載装置10は、車載装置10が出力した映像などの画像を表示する表示装置50に接続される。表示装置50は、表示部51および操作部52を備える。
表示部51は、例えば、有機ELや、液晶ディスプレイで構成されたタッチパネルディスプレイであり、車載装置10から出力される映像信号を表示する。操作部52は、表示部51に表示された画像に基づき、乗員からの所定操作を受け付ける。
操作部52は、カメラ映像の再生、停止、巻き戻し等の各種操作を受け付けることも可能である。また、ユーザは、操作部52を介して、過去に撮像されたカメラ映像の配信を要求することも可能である。
すなわち、実施形態に係る配信システムSでは、映像のリアルタイム配信に加え、過去に撮像された映像の録画配信を行うこともできる。なお、操作部52を、表示装置50とは別に設けることにしてもよい。
図9に示すように、車載装置10は、通信部5と、記憶部6と、制御部7とを備える。通信部5は、例えばNIC等によって実現される。通信部5は、所定のネットワークと無線で接続され、ネットワークを介して、他の車載装置10をはじめとする各種カメラや、管理装置1との間で情報の送受信を行う。
記憶部6は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、図9の例では、通信先情報61と、配信条件情報62とを記憶する。
通信先情報61は、他の車載装置10のIPアドレスに関する情報である。より詳しくは、通信先情報61は、車載装置10が配信車両である場合には、受信車両のIPアドレスに関する情報であり、車載装置10が受信車両である場合には、配信車両のIPアドレスに関する情報となる。
配信条件情報62は、配信車両の映像の配信条件に関する情報である。例えば、配信領域Rsに関する情報や、発生地点Ptに関する情報が配信条件情報62として記憶部6に記憶される。
制御部7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部7の送信部71、受信部72、再生部73および表示制御部74として機能する。
また、制御部7の送信部71、受信部72、再生部73および表示制御部74の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
送信部71は、自車両に関する車両情報を所定周期で管理装置1へ送信するとともに、配信車両として選択された場合には、カメラ101から取得した映像を受信車両に対して送信(配信)する。
また、送信部71は、配信条件情報62を参照し、自車両が配信条件から逸脱した場合には、映像配信を停止するとともに、受信車両との通信接続を解除する。具体的には、送信部71は、GPS装置103から入力される位置情報と、配信領域Rsとを比較し、自車両が配信領域Rsから逸脱した場合には、受信車両との通信接続を解除する。
受信部72は、配信車両との通信接続を確立し、当該配信車両によって撮像された映像を受信する。まず、受信部72は、管理装置1から送信される接続確立指示を取得すると、接続確立指示に含まれるIPアドレスの配信車両との通信接続の接続要求を送信部71に対して指示する。
その後、受信部72は、配信車両との通信接続が確立すると、配信車両から配信される映像の受信を開始する。この際、受信部72は、映像受信を開始すると、映像を再生するビュワーアプリ(後述の再生部73に対応)を起動させる。そして、再生部73にて、バックグランド再生を開始させる。
なお、バックグラウンド再生時に再生する映像は、表示装置50に基本的に表示されない。このため、受信部72は、バックグラウンド再生時のカメラ映像について、低容量画像を受信することにしてもよい。
なお、低容量画像とは、実際に表示装置50に表示されるカメラ映像に比べて、フレームレートが低いカメラ映像、解像度が低いカメラ映像、ビットレートが低いカメラ映像のいずれか一つを含むカメラ映像である。これにより、通信負荷を抑えつつ、映像を受信することが可能となる。
再生部73は、いわゆるビューワーアプリであり、受信部72によって受信された映像を再生する。ここで、車載装置10は、複数の配信車両と同時に接続する場合があるので、再生部73は、複数のカメラ映像を同時に再生する同時再生機能を備えたり、複数のビューワーアプリで構成されることが好ましい。
表示制御部74は、所定の表示条件が成立した場合に、再生部73によって再生中の映像を表示する。ここで、表示条件は、候補カメラから受信したカメラ映像の表示準備の完了後、所定のユーザ操作を受け付けたことを示す。
例えば、表示制御部74は、再生部73による映像再生の準備が完了すると、表示部51に操作ボタンを表示させる。そして、表示制御部74は、かかる操作ボタンが選択された場合に、表示部51に映像の表示を開始する。
このとき、上述のように、再生部73によってバックグラウンドでの映像再生が既に開始された状態であることから、表示制御部74は、バックグランド再生中の映像の画面階層を最前面に切り替えることで、映像を表示部51に表示することができる。
したがって、表示制御部74は、画面階層の切替えのみで映像を表示することができるので、表示条件が成立した場合に、速やかに映像を提供することが可能となる。
なお、表示条件は、上述の例に限られず、車両の位置や速度に基づいて自動的に表示が開始されるように表示条件を設定してもよい。例えば、受信車両が渋滞区間に進入した場合に、自動的に表示が開始されるようにしてもよい。また、受信車両の車速が低下して低速走行状態になったら表示条件が満たされ、自動的に表示が開始されるようにしてもよい。
また、表示制御部74は、各配信車両の位置情報に基づき、映像を順次切り替えることにしてもよい。例えば、表示制御部74は、発生地点Ptに最も近い配信車両によって撮影された映像を順次表示する。
つまり、時間経過によって発生地点Ptを撮影可能な配信車両が順次切り替わることになるので、表示制御部74は、各配信車両の位置情報に基づき、発生地点Ptを撮影するのに最も適した配信車両を選択し、選択した配信車両から配信された映像を順次表示する。
これにより、乗員に対して、発生地点Ptの現在の状況を適切に提供することができる。なお、この際、表示制御部74は、映像とともに地図を表示し、映像の撮像位置および撮像向きを地図上に表示することにしてもよい。
また、表示制御部74は、配信車両を地図上に表示しておき、乗員が選択した配信車両の映像を表示することにしてもよい。さらに、表示制御部74は、地図上に配信システムSで管理する車両および定点カメラを表示しておき、乗員が選択した車両または定点カメラと通信接続を開始し、映像を受信するようにしてもよい。
続いて、図10を用いて、実施形態に係る管理装置1が実行する処理手順について説明する。図10は、管理装置1が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、管理装置1の制御部4によって繰り返し実行される。
図10に示すように、管理装置1は、イベントが発生したか否かを判定する(ステップS101)。なお、ステップS101におけるイベントの発生の判定については、管理装置1によってイベントの発生を推定した結果を用いてもよいし、外部サーバから通知されたものを用いてもよい。
管理装置1は、ステップS101の判定において、イベントが発生していた場合(ステップS101,Yes)、イベントの発生地点に対して、配信領域Rsおよび受信領域Rrをそれぞれ設定する(ステップS102)。
続いて、管理装置1は、ステップS102にて設定した配信領域Rsに基づき、配信車両を選択するとともに(ステップS103)、ステップS102にて設定した受信領域Rrに基づき、受信車両を抽出する(ステップS104)。
続いて、管理装置1は、ステップS103にて選択した配信車両と、ステップS104にて抽出した受信車両との通信確立を指示し(ステップS105)、処理を終了する。なお、管理装置1は、ステップS101の判定において、イベントが発生していないと判定した場合(ステップS101,No)、処理を終了する。
続いて、図11および図12を用いて、実施形態に係る車載装置10が実行する処理手順について説明する。図11および図12は、車載装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、図11では、受信車両の車載装置10が実行する処理手順について説明し、図12では、配信車両の車載装置10が実行する処理手順について説明する。
図11に示すように、車載装置10は、管理装置1から通知される通信確立指示を取得したか否かを判定し(ステップS201)、通信確立指示を取得した場合(ステップS201,Yes)、配信車両に対して通信要求を行う(ステップS202)。
続いて、車載装置10は、配信車両から映像受信を開始し(ステップS203)、その後、映像の表示条件が成立したか否かを判定する(ステップS204)。車載装置10は、ステップS204の判定において、表示条件が成立した場合(ステップS204,Yes)、映像表示を開始する(ステップS205)。
その後、車載装置10は、映像表示の終了条件が成立したか否かを判定し(ステップS206)、終了条件が成立した場合(ステップS206,Yes)、配信車両との通信接続を切断して(ステップS207)、処理を終了する。
また、車載装置10は、ステップS201の判定処理において、通信確立指示を取得していない場合(ステップS201,No)、処理を終了し、ステップS204の判定において、表示条件が成立していない場合(ステップS204,No)、ステップS204の判定処理を継続して行う。
また、車載装置10は、ステップS206の判定において、終了条件が成立していない場合(ステップS206,No)、ステップS206の判定処理を継続して行うこととなる。
続いて、図12を用いて、配信車両の車載装置10が実行する処理手順について説明する。図12に示すように、車載装置10は、まず、受信車両から送信される接続要求を取得したか否かを判定する(ステップS301)。
車載装置10は、ステップS301の判定において、接続要求を取得した場合(ステップS301,Yes)、受信車両に対して映像配信を開始する(ステップS302)。その後、車載装置10は、配信条件成立継続中か否かを判定し(ステップS303)、配信条件が非成立となった場合に(ステップS303,No)、配信車両との通信接続を切断し(ステップS304)、処理を終了する。
また、車載装置10は、ステップS301の判定において、通信要求を取得していない場合(ステップS301,No)、処理を終了し、ステップS303の判定において、配信条件成立継続中である場合(ステップS303,Yes)、ステップS303の判定処理を継続して行う。
上述したように、実施形態に係る管理装置1(情報処理装置の一例)は、選択部44と、指示部46とを備える。選択部44は、複数の車両の現在地をそれぞれ示す位置情報に基づいて、所定のイベントの発生地点Ptから囲内に存在する車両のうち、発生地点Ptへ向かう車両を映像の配信車両として選択する。
指示部46は、選択部44によって選択された配信車両が発生地点Ptの通過前に当該配信車両と、映像を受信する受信機との通信確立を指示する。したがって、実施形態に係る管理装置1によれば、通信トラフィックを抑えつつ、他地点の映像を迅速に提供することができる。
ところで上述した実施形態では、配信システムSの基本的な処理手順を図1Bのようなフローとしたが、他にも種々のパターンを取りうる。図13Aおよび図13Aは、変形例に係る配信システムの処理手順を示す模式図である。図13Aに示すように、管理装置1は、受信車両C3に対し、配信車両C1に配信要求を行うように指示する(ステップS1)。管理装置1から指示を受けた受信車両C3は、配信車両C1に対して配信要求を行う(ステップS2)。配信車両C1は、配信準備が整うと配信開始通知を受信車両C3に通知する(ステップS3)。なお、配信車両C1は、例えば、実際に発生地点Ptをカメラで撮影できるようになった時に、配信開始通知を通知するとよい。
受信車両C3は配信開始通知を受け取ると、配信車両C1に接続要求を行う(ステップS4)。これにより、配信車両C1と受信車両C3との通信接続が確立され、配信車両C1から受信車両C3に対して映像配信が開始される。つまり、上記の形態では配信車両C1の配信準備が整うまでは映像配信を行わないため、通信トラフィックをさらに抑えることができる。
また他の例として、図13Bに示すように、管理装置1は、受信車両C3に代えて、配信車両C1に対して配信要求を行う(ステップS1)。この時、管理装置1は、複数の配信車両C1に対して配信要求を出してもよい。配信要求を受けた配信車両C1は、配信準備が整うと配信開始通知を管理装置1に通知する(ステップS2)。
配信開始通知を受けた管理装置1は、配信車両C1への接続指示を受信車両C3に通知する(ステップS3)。この時、管理装置1は、配信要求を行った複数の配信車両のうち、いずれの配信車両に接続すべきかを適宜判断するとよい。
具体的には、発生地点Ptとの位置関係、撮影するカメラの画角、フレームレートや画像サイズなどの映像の画質、輻輳状態などによる通信の安定性などに基づき、いずれの配信車両に接続すべきかを判断するとよい。接続指示を受けた受信車両C3は、配信車両C1に接続要求を行う(ステップS4)。これにより、配信車両C1と受信車両C2との通信接続が確立され、配信車両C1から受信車両C3への映像配信が開始される。つまり、上述の形態では、管理装置1がいずれの配信車両C1と接続すべきかを配信直前に決定することができるため、限られた通信トラフィックで有用な画像を配信することができる。
また、上述した実施形態では、受信機が受信車両の車載装置10である場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、受信機は、ネットワーク接続された種々の機器であってもよい。また、報道機関に設置された電子機器を受信機とすることにしてもよい。
この場合、配信システムSでは、発生地点Ptの現在の様子を報道機関へ提供することも可能である。また、この場合においては、例えば、映像に写る人物や車(特に、ナンバープレート)については、モザイク処理を施すことで、個人情報の保護を図ることにしてもよい。なお、人物や車については、所定の画像処理を行うことで実現することが可能である。
また、上述した実施形態では、情報処理装置が管理装置1である場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、情報処理装置を車載装置10とすることにしてもよい。この場合、例えば、受信車両の車載装置10は、発生地点Ptの位置情報を取得し、発生地点Ptの位置情報に基づき、管理装置1から各車両の位置情報を取得するとともに、配信車両の選択、通信確立指示を順次実行する。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。