JP7393816B2 - 構造基材、構造部材、構造物及び構造部材の構築方法 - Google Patents

構造基材、構造部材、構造物及び構造部材の構築方法 Download PDF

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Description

本発明は、構造基材、構造部材、構造物及び構造部材の構築方法に関するものである。
鉄筋コンクリート構造物あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造物(以下「鉄筋コンクリート系構造物」という。)は、引張力を鉄筋や鉄骨で負担し、圧縮力をコンクリートと、コンクリートにより拘束された鉄筋や鉄骨で負担する。鉄筋コンクリート系構造物は、実用化されて以来、数度の基準改訂を経て、近年の想定を超える地震を受けても、基本的には倒壊しないという安全性、信頼性の高いものとなっている。
改訂前の旧基準で建設された既存の鉄筋コンクリート系構造物に対しては、アスペクト比ho/D、軸力比η等に応じて終局変形角に制限を設けて構造部材の耐力、靭性を計算し、地震時における構造物全体の耐震性を評価し、基準値を下回る場合は耐震補強を行うことで倒壊防止が図られている(下記の非特許文献1)。
鉄筋コンクリート系構造物の耐力をさらに強化する技術として、合成繊維を生コンクリートに練り混ぜることでコンクリートを強靭化するものがある。また、鉄筋コンクリートにおいて、鉄筋の替わりに連続繊維を用いる技術や、高強度かつ高伸度の炭素繊維を合成樹脂で被覆することで、鉄筋のような応力―ひずみ関係を有する材料を生成する技術などがある。
例えば下記の特許文献1では、構造用材料の補強材であって、引張り強度の低い構造用材料(例えばコンクリート)内に埋設して引張り強度を強化するため、引張り強度の大きな材料(例えば芳香族ポリアミド繊維)で形成される細線が組紐状に編成されたものが開示されている。また、下記の特許文献2では、コンクリート補強材であって、軽量非鉄素材からなる芯材(例えば合成樹脂、アルミニウム)を有し、芯材の外周部に不錆性高性能繊維(例えばアラミッド繊維)からなる繊維層が形成されたものが開示されている。
特開昭60-119853号公報 特開昭59-199954号公報
一般財団法人日本建築防災協会 国土交通大臣指定耐震改修支援センター、「2017年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説」、一般財団法人日本建築防災協会、2017年7月 国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究法人建築研究所監修、「2020年版 建築物の構造関係技術基準解説書」、全国官報販売協同組合、2020年10月
一方、鉄筋コンクリート系構造物に内包される鉄筋には、座屈という物性上の弱点がある。そこで、現行の技術基準(上記の非特許文献2)では、鉄筋コンクリートの梁や柱などの構造部材における軸方向(長さ方向)鉄筋(以下「軸方向筋」という。)の座屈防止とせん断強度向上のため、せん断補強筋を100mm~150mmという間隔で配置することが規定されている。この間隔は、鉄筋の太さに対して非常に密である。また、同技術基準では、柱の軸力比を0.35未満とすること、アスペクト比を2.5より大きくすることなどが規定され、構造部材の脆性的な崩壊が防止されている。
一般に、鉄筋コンクリートの梁や柱において、せん断補強筋が不足すると、軸方向筋が繰り返し変形により引張降伏し、降伏して伸びた軸方向筋は引張から圧縮に移行する段階で座屈する。その結果、軸方向筋がコンクリートの内側からコンクリートを破壊し、鉄筋コンクリートの構造部材の軸耐力、せん断耐力を低下させ、最終的には構造部材の脆性的な崩壊を招く危険性がある。
柱や梁などの構造部材のせん断強度については、コンクリートの圧縮強度を高くすることで対処できるが、軸方向筋の座屈防止についてはコンクリートの強化だけでは限界がある。したがって、コンクリートの物性を補うため、せん断補強筋は、現在の鉄筋コンクリート系構造物には必須の要素となっている。
コンクリートに内包される鉄筋の替わりに連続繊維をコンクリートに内包する技術がある。しかし、連続繊維が負担する応力をコンクリートに伝達する方法として、連続繊維に張力をかけること以外の具体的な方法は提示されていない。
また、連続繊維自体は鉄筋のように一定以上の応力で降伏するという性質を有しない。そのため、梁や柱などの構造部材が曲げ降伏せず外力に抵抗し続け、最終的にコンクリートの破壊、あるいは、連続繊維の破断で構造部材が崩壊(終局)となる、いわゆる脆性的な崩壊に至る危険性がある。また、連続繊維が内包されたコンクリートの終局強度の計算方法が提示されておらず、現行基準における保有水平耐力計算や診断基準における構造耐震指標の計算のような、構造部材の終局状態における強度計算を適用できないという課題もある。
そのほかに、鉄筋の替わりに鉄筋のような応力-ひずみ関係を有する連続繊維の複合材をコンクリートに内包する提案があるが、具体的な方法は提示されていない。
以上のように、従来技術では鉄筋の替わりに鉄筋のように降伏することを特徴とする単一の補強材を得ることや、鉄筋以外の材料をコンクリートに内包して、構造部材の脆性的な崩壊を防止する簡素な構成を得ることは難しい。そして、鉄筋コンクリート系構造物において鉄筋を用いる場合は、座屈防止のための大量のせん断補強筋を必要とするという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮材の内部においてせん断補強筋を必要としない簡素な構成を有する構造部材を構築することが可能な構造基材、構造部材、構造物及び構造部材の構築方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の構造基材、構造部材、構造物及び構造部材の構築方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る構造基材は、構造部材に作用する圧縮力を負担する圧縮材の内部に配設される構造基材であって、前記圧縮材が硬化したとき前記圧縮材と一体化され、圧縮力を負担可能な材料からなる本体部と、前記本体部の内部において前記本体部の一端から他端にわたって配置され、引張力を負担可能な連続繊維を有する引張材と、前記引張材が外周面に巻回され、前記本体部の内部において前記引張材に沿って互いに間隔を空けて設けられる複数の支持部とを備え、前記引張材及び前記支持部は、前記引張材及び前記支持部に生じる応力を前記本体部に伝達するように前記本体部の内部において定着されている。
この構成によれば、構造部材において圧縮材が構造部材に作用する圧縮力を負担し、圧縮材の内部に構造基材が配置される。構造基材は、本体部と、引張材と、複数の支持部を備え、圧縮力を負担可能な材料からなる本体部は、構造部材の圧縮材が硬化したとき圧縮材と一体化され、引張力を負担可能な連続繊維を有する引張材は、本体部の内部において本体部の一端から他端にわたって配置され、複数の支持部は、本体部の内部において引張材に沿って互いに間隔を空けて設けられる。支持部には引張材が外周面に巻回される。引張材及び支持部は、引張材及び支持部に生じる応力を本体部に伝達するように本体部の内部において定着されている。
これにより、本体部にひび割れが生じたとき、引張材及び支持部がひび割れ空間近傍の本体内部で定着しつつ、ひび割れ空間内の引張材が伸長したり、引張材の伸長方向が自在に変化したりする。そして、本体部にひび割れが生じたとき、ひび割れ空間内の引張材に引張力が作用するため、引張材及び支持部がひび割れの拡大を防止したり、拡大を遅延させることができる。引張材及び支持部は、ひび割れの発生場所に応じて、従来の鉄筋コンクリート系構造物における軸方向(長さ方向)鉄筋又はせん断補強筋が負担する力に相当する引張力を負担する。そのため、構造部材は、せん断補強筋に相当する部材を設けることなく、要求されるせん断強度を備えることが可能である。
上記発明において、前記本体部は、前記圧縮材と一体化可能な外部形状を有してもよい。
この構成によれば、本体部の外部形状によって本体部が圧縮材と一体化され、圧縮材を伝達する力が構造基材に確実に伝達される。
上記発明において、前記本体部は、外周面において凹凸が形成されてもよい。
この構成によれば、本体部の外周に形成された凹凸によって本体部が圧縮材と一体化されやすくなっている。
上記発明において、前記本体部は、複数の棒状部材が組み合わされて立体形状を有してもよい。
この構成によれば、本体部は複数の棒状部材が組み合わされて立体形状を有するため、本体部の立体形状によって本体部が圧縮材と一体化されやすくなっている。
上記発明において、前記引張材は、前記構造部材に生じるひび割れ面に対して斜め方向となるように前記構造部材の内部に配置されてもよい。
この構成によれば、引張材と、構造部材に生じるひび割れ面とのなす角が斜め方向であるため、引張材は、従来の鉄筋コンクリート系構造物における軸方向(長さ方向)鉄筋が負担する引張力を負担するだけでなく、引張材は、せん断補強筋が負担する力に相当する引張力を、構造部材の一般部だけでなくヒンジ部においても負担しやすくなる。
上記発明において、前記支持部は、貫通孔が形成されており、前記貫通孔内に前記引張材が挿通されつつ前記引張材が外周面に巻回されてもよい。
この構成によれば、支持部に貫通孔が形成され、支持部の貫通孔内に引張材が挿通されつつ引張材が外周面に巻回されるため、引張材と支持部が互いにずれにくくなり、引張材において支持部が確実に設置される。
上記発明において、前記引張材の端部に設けられる前記支持部の外周面において、前記引張材が複数回巻回されてもよい。
この構成によれば、引張材の端部では引張材が支持部の外周面に複数回巻回されているため、引張材の端部において引張材が支持部から外れにくい。
上記発明において、前記支持部は、前記引張材に所定以上の引張力が作用したとき降伏する材料でもよい。
この構成によれば、引張材に所定以上の引張力が作用したとき、支持部が降伏することから、引張材の破断で終局とならずに支持部の降伏で終局となる、安定した構造部材とすることができる。
本発明に係る構造部材は、上述した構造基材が前記圧縮材の内部に配設されている。
本発明に係る構造物は、上述した構造部材を備える。
本発明に係る構造部材の構築方法は、上述した構造基材を型枠内に硬化前の前記圧縮材と共に投入して攪拌し、前記圧縮材と一体化させるステップを備える。
この構成によれば、構造基材が型枠内に硬化前の圧縮材と共に投入されて攪拌され、圧縮材と一体化されることで構造部材が構築される。
本発明に係る構造部材の構築方法は、上述した構造基材からなり格子状の面を有する立体部材を形成するステップと、前記立体部材を硬化前の前記圧縮材の内部に配置して前記圧縮材と一体化させるステップとを備える。
この構成によれば、構造基材からなり格子状の面を有する立体部材が形成され、立体部材が硬化前の圧縮材の内部に配置されて圧縮材と一体化されることで構造部材が構築される。
本発明によれば、圧縮材の内部においてせん断補強筋を必要としない簡素な構成を有する構造部材を構築することができる。
本発明の一実施形態に係る構造部材の第1実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第2実施例を示す縦断面図図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の第1実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の第2実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の第3実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の第4実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の第5実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の引張材及び支持部を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の引張材及び支持部を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る構造基材の引張材及び支持部を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材のひび割れを示す拡大図であり、構造部材にひび割れが生じた場合の抵抗機構の模式図を示す。 本発明の一実施形態に係る構造部材のひび割れを示す拡大図であり、構造部材にひび割れが生じた場合の抵抗機構の模式図を示す。 試験体No.6における有効な引張材断面積あたり荷重と層間変形角の関係を示すグラフである。 試験体No.6の断面を示す模式図であり、実験後における引張材の破断及び支持部の圧壊の状況を示している。 試験体No.4、No.5及びNo.6における有効な引張材断面積あたり荷重と層間変形角の関係を示すグラフである。
本発明の一実施形態に係る構造部材10は、例えば、建築物や土木構造物、電柱などの構造物に適用される。構造部材10は、例えば、建築物を構成する梁、柱、壁、床、基礎、杭などである。図1及び図2では、構造部材10が主に柱からなる場合について図示しており、以下では構造部材10が柱である場合について説明する。
構造部材10は、例えば図1又は図2に示すように、圧縮材11と、圧縮材11の内部に配設される構造基材1を備える。圧縮材11は、構造部材10に作用する圧縮力を負担する構造材であり、例えば、コンクリート、セメントなどである。圧縮材11は、引張剛性が構造設計において無視できるほど小さい。
構造基材1は、例えば図3に示すように、本体部2と、引張材3と、支持部4を備える。構造基材1は、構造部材10の圧縮材11の内部に配設される。図1に示すように、構造基材1は、数cm~10数cmを一つの単位とする部材であって圧縮材11の内部にランダムに配置される。
また、構造基材1は、図1及び図3に示す例に限定されず、図2に示すように、構造部材10と同等のサイズを有する連続した部材であって、2次元方向又は3次元方向に設けられて例えば格子形状を有してもよい。構造部材10が断面四角形の柱の場合、格子形状を有する構造基材1は、柱の4面それぞれに設置される。格子形状によって形成される本体部2の間の中空空間には、圧縮材11が充填される。また、格子形状の1単位は、図2に示す四角形に限定されず、円形や五角形以上の多角形でもよい。
図1から図3に示すように、構造部材10の脆性的な破壊を防止するためには、構造基材1が構造部材10の内部、特に表層で一様に分布していればよい。構造基材1の配置は、図1及び図2の例に限定されず、構造基材1の形状についても、以下に示す例に限定されない。
構造部材10では、圧縮材11の内部において、従来の鉄筋コンクリート系構造物で用いられていたせん断補強筋が設置されない。ここで、せん断補強筋は、長さ方向が構造部材10の軸方向に対して垂直方向若しくは斜め方向に配置されている鉄筋又はそれに代わる材質の構造材である。
構造基材1の本体部2は、構造部材10の圧縮材11が硬化したとき圧縮材11と一体化され、圧縮力を負担可能な材料からなる。本体部2は、引張材3及び支持部4が内部に設置され、構造部材10において圧縮材11とほぼ同等に主に圧縮力とせん断力を負担する。本体部2は、硬化することで、引張材3及び支持部4と一体化される材料である。本体部2は、例えば、コンクリート、セメントなどである。
本体部2は、圧縮材11と一体化可能な外部形状を有する。これにより、本体部2の外部形状によって本体部2が圧縮材11と一体化され、圧縮材11を伝達する力が構造基材1に確実に伝達される。例えば、本体部2は、図3に示すように、外周面に凹凸が形成される。図3には、本体部2が1本の棒状部材であって、外周面に凹部と凸部が交互に長手方向に沿って形成されている例を示す。また、外周面の凹凸は、型枠等によって形成されてもよいし、粗面が生じるように硬化後の本体部2の表面を削って形成されてもよい。これにより、本体部2は、圧縮材11と一体化されやすい形状となっている。また、図4に示すように、本体部2は、直線状の棒状部材に限られず、曲線状を有するものでもよい。これらの形状により、本体部2は圧縮材11と一体化されやすい。
さらに、構造基材1の本体部2は、図5Aから図5Cに示すように、複数の棒状部材が組み合わされて立体形状を有してもよい。図5Aには、棒状部材がテトラポッド型を有するように組み合わされた例を示し、図5Bには、棒状部材が立方体型を有するように組み合わされた例を示し、図5Cには、棒状部材が格子型を有するように組み合わされた例を示す。立方体型や格子型の本体部2は、内部に圧縮材11が充填される中空空間を有する。図5Aから図5Cに示す形状によれば、本体部2の表面に凹凸がなくても本体部2と圧縮材11が一体化されやすい。また、引張材3が構造部材10に生じるひび割れ面に対して斜め方向となるように、構造基材1が圧縮材11の内部で配置されやすい。
引張材3は、連続繊維による線状部材、例えば、糸状又は紐状である。引張材3は、例えば、合成樹脂(例えばポリエステル)繊維、又は、炭素繊維などの連続繊維によって構成される。引張材3は、本体部2の内部において、本体部2の一端から他端にわたって配置される。引張材3は、一の本体部2に対して複数本が設けられてもよい。引張材3は、構造部材10において引張力を負担可能であり、構造部材10に作用する力のうち引張力を主に負担する。
引張材3は、曲げ剛性、せん断剛性、圧縮剛性とも構造設計において無視できるほど小さく、本体部2に配置された状態で圧縮力を受けても座屈しない材料である。これにより、ひび割れが発生したとき、ひび割れ空間内で引張材3が自由に変形する。すなわち、ひび割れ空間内で引張材3が伸長したり、引張材3の伸長方向が自在に変化したりすることができる。そして、本体部2にひび割れが生じたとき、引張材3及び支持部4がひび割れ空間近傍(ひび割れ面から50mmから100mm程度)の本体部2の内部で定着している。したがって、本体部2にひび割れが生じたとき、引張材3の引張力は、構造部材10のひび割れの拡大に対する抵抗力として発揮される。
引張材3は、図6に示すように、構造部材10に生じるひび割れ面に対して斜め方向となるように構造部材10の内部に配置されている。引張材3と、構造部材10に生じるひび割れ面とのなす角が斜め方向であるため、引張材3は、従来の鉄筋コンクリート系構造物における軸方向(長さ方向)鉄筋が負担する引張力を負担する。また、引張材3は、せん断補強筋が負担する力に相当する引張力を、構造部材10の一般部だけでなくヒンジ部10-1においても負担しやすくなる。引張材3の配置位置は、構造部材10に作用する引張力が考慮されて決定される。
引張材3及び支持部4は、ひび割れの発生場所に応じて、従来の鉄筋コンクリート系構造物における軸方向(長さ方向)鉄筋又はせん断補強筋が負担する力に相当する引張力を負担する。そのため、構造部材10は、せん断補強筋に相当する部材を設けることなく、要求されるせん断強度を備えることが可能である。構造部材10が柱の場合、引張材3は、軸方向(長さ方向)に垂直な方向のひび割れが生じる構造部材10の端部付近(いわゆるヒンジ部10-1)においては本体部2が受ける引張力に抵抗する。引張材3は、軸方向(長さ方向)に対して斜めにひび割れが生じる構造部材10の中央付近(いわゆる一般部)においては本体部2が受けるせん断力に抵抗する。
図7に示すように、引張材3には、複数の支持部4が引張材3に沿って互いに間隔を空けて設けられる。支持部4は、本体部2の内部に設置され、引張材3に生じる応力、すなわち、引張力を本体部2に伝達する。支持部4は、例えば、円柱状部材などである。
支持部4は、引張材3よりもヤング率が大きい、比較的剛な材料である。支持部4は、例えば、金属などであり、金属の場合、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどである。支持部4は、引張材3から引張力を受けて変形を生じる材料でもよい。なお、引張材3の破断よりも先に支持部4を降伏する材料とすることで、構造部材10を降伏させることが可能である。引張材3に所定以上の引張力が作用したとき、引張材3の破断よりも先に支持部4が降伏することによって、引張材3の破断で終局とならずに支持部4の降伏で終局となるため、構造部材10が安定化する。
各支持部4には、図7に示すように、引張材3が外周面に巻回される。このとき、図8に示すように、引張材3で支持部4を結ぶように周回させてもよい。また、支持部4は、図9に示すように、貫通孔4Aが形成されてもよい。この場合、支持部4の貫通孔4A内に引張材3が挿通されつつ引張材3が外周面に巻回される。これにより、引張材3と支持部4が互いにずれにくくなり、引張材3において支持部4が確実に設置される。引張材3を支持部4の周方向に巻回させるのではなく、引張材3に支持部4を設置するためのリング部を予め形成しておき、リング部に支持部4を挿入して、支持部4が引張材3に設置されるようにしてもよい。
さらに、図7に示すように、引張材3の端部に設けられる支持部4の外周面には、引張材3が複数回(例えば5回以上)巻回されてもよい。これにより、引張材3の端部では、引張材3が支持部4の外周面に複数回巻回されているため、引張材3の端部において引張材3が支持部4から外れにくい。
引張材3及び支持部4は、引張材3及び支持部4に生じる応力を本体部2に伝達するように本体部2の内部において定着されている。引張材3及び支持部4が本体部2の内部で定着されることによって、構造部材10の端部付近(ヒンジ部10-1)においては従来の鉄筋コンクリート系構造物における軸方向(長さ方向)鉄筋(以下「軸方向筋」という。)が負担する力に相当する引張力を、引張材3及び支持部4が確実に負担できる。また、構造部材10の中央付近(一般部)においては、従来の鉄筋コンクリート系構造物におけるせん断補強筋が負担する力に相当する引張力を、引張材3及び支持部4が確実に負担できる。
支持部4の大きさや、複数の支持部4の間の間隔Lを調整することによって、ヒンジ部10-1で構造部材10が崩壊するよう設定される。これにより、構造部材10の一般部での圧縮材11の破壊が防止され、又は、遅延される。
支持部4の大きさが調整されることで、支持部4を囲む周長Φが、鉄筋の場合のdπよりも大きく設定されることから、定着長lで、径dの軸方向筋が負担する引張力が担保されることになる。
本体部2は、引張剛性が構造設計において無視できるほど小さい。本体部2が圧縮材11と一体化されて圧縮材11の内部に配置されていることにより、構造部材10に生じたひび割れは、構造基材1の本体部2にも生じる。これにより、本体部2にひび割れが生じたとき、ひび割れ空間が形成されて、ひび割れ空間内の引張材3に引張力が作用する。したがって、ひび割れ空間内の引張材3に引張力が作用してひび割れの拡大を防止したり、拡大を遅延させることができる。
これに対して、本体部2において、引張材3を定着させるため、コンクリートやセメントなどと異なり、合成樹脂等の引張剛性を有する材料を用いた場合、引張力によって本体部2にひび割れが生じにくく、ひび割れ空間内で引張材3に所要の引張力を作用させることができない。すなわち、連続繊維を合成樹脂に含浸させた材料(FRTP)は、鉄筋コンクリート系構造物における圧縮材内部の鉄筋と同様に作用する。その結果、連続繊維は、ひび割れ空間内で連続繊維が伸長したり、連続繊維の伸長方向が自在に変化したりしない。したがって、FRTPは、合成樹脂内で配置された連続繊維の長さ方向のみに引張力を負担できる。そのため、FRTP単独では座屈を防止できないことから、鉄筋コンクリート系構造物と同様にせん断補強筋を配置する必要がある。
構造基材1において、引張材3は、隣り合う支持部4間でたるみがなく最短距離で支持部4同士を連結する。これにより、ひび割れ発生時において引張材3及び支持部4に力が作用したとき、瞬時に引張材3が引張力を負担でき引張材3自体が伸長する。引張力を負担する材料が、本実施形態のような連続繊維による線状部材ではなく、複数のリングを連結した部材や、合成繊維による網状部材である場合は、本体部2の硬化時にたるみが生じる。そのため、リングの連結部材や網状部材である場合は、ひび割れ発生時、部材のたるみがゼロになるまで引張力を負担できないため、ひび割れが拡大しやすい。
また、本体部2が硬化した後、引張材3の定着を図るための部材として、本実施形態のような支持部4ではなく、引張材3を結んだ結び目を本体部2内部に設けることが考えられる。しかし、引張材3に引張力が作用したときに更に絞られないような結び目を形成することは困難である。したがって、ひび割れ発生時、引張材3に引張力が作用して引張材3自体が伸長する前に、結び目が絞られて収縮し、隣り合う結び目間の引張材3の長さが長くなる。その結果、ひび割れ発生時、引張材3が所要の引張力を負担できないため、ひび割れが拡大しやすい。
以下、本実施形態に係る構造基材1の作製方法及び構造部材10の構築方法について説明する。
本実施形態に係る構造基材1を作製する際、まず、引張材3に対して複数の支持部4を互いに間隔を空けて設置する。支持部4が円柱部材である場合、図7に示すように、引張材3を単に周回させるだけでなく、図8に示すように、引張材3で支持部4を結ぶように周回させてもよい。また、図9に示すように、支持部4に貫通孔4Aが形成されている場合、引張材3を貫通孔4Aに3回挿通させて支持部4の周りに引張材3を8の字に周回させてもよい。
次に、隣り合う支持部4間で引張材3にたるみがなく最短距離で引張材3が支持部4同士を連結するように、引張材3及び支持部4が配置される。そして、硬化前の本体部2の材料が引張材3と支持部4の周囲に隙間なく密着するように打設されて配置される。その後、本体部2の材料が硬化すると、引張材3は、隣り合う支持部4間でたるみがなく最短距離で支持部4同士を連結するように本体部2の内部に設けられる。構造基材1は工場で作製することで品質の確保が容易になり、構造基材1の品質を向上させることができる。構造基材1の作成の際には、引張材3を支持部4に確実に固定すること、及び、隣り合う支持部4間の引張材3のたるみをゼロにすることを保ちつつ、硬化前の本体部2の材料を打設する点が管理される必要がある。
本実施形態に係る構造部材10を構築する場合、図1及び図3から図6に示すように、構造基材1が数cm~10数cmを一つの単位とする部材である場合と、図2に示すように、構造基材1が構造部材10と同等のサイズを有する連続した部材である場合とで構築方法が異なる。
図1及び図3から図6に示すように、構造基材1が、数cm~10数cmを一つの単位とする小ユニット部材である場合、まず、小ユニット部材の構造基材1が作製される。また、柱、梁、壁等の構造部材10を構築するための型枠が構築される。
次に、作製された複数の構造基材1が型枠内に硬化前の圧縮材11と共に投入されて、構造基材1と圧縮材11が型枠内で攪拌される。これにより、構造基材1が構造部材10の圧縮材11の内部において均一に配置される。圧縮材11が硬化すると、構造基材1が圧縮材11と一体化されて、構造部材10の構築が完了する。
図2に示すように、構造基材1が、構造部材10と同等のサイズを有する連続した形状を有する立体部材である場合、まず、立体部材の構造基材1が作製される。構造基材1は、例えば、格子状の面を有する立体部材である。立体部材の構造基材1は、柱、梁、壁等の構造部材10に対応した形状を有する。そして、構造基材1が構造部材10を構築する現場へ運搬されて設置される。また、柱、梁、壁等の構造部材10を構築するための型枠が設置される。このとき、作製された構造基材1が型枠内に設置される。
次に、硬化前の圧縮材11が型枠内に投入されて、圧縮材11が型枠内で攪拌される。圧縮材11が硬化すると、立体形状の構造基材1が圧縮材11と一体化されて、構造部材10の構築が完了する。
次に、図7を参照して、引張材3と支持部4の関係について説明する。
図7に示すように、引張材3は、本体部2の内部において、構造部材10の軸方向(長さ方向)に沿って連続して配置されている。支持部4は、例えば、円筒状の棒状部材であり、引張材3は、支持部4の周方向に例えば1周分が巻回される。引張材3が構造部材10の軸方向に連続していることで、支持部4が引張材3の引張力を担保すると共に、支持部4に作用する応力を本体部2に伝達する。なお、引張材3が支持部4に接着剤等によって接着されることが望ましい。これにより、引張材3のゆるみが発生しにくく、引張材3と支持部4の間の摩擦力を考慮することが可能になる。
引張力Tによって本体部2に生じる応力τは、下記の(1.1)式で計算される。
ここで
τ:本体部2に生じる応力(N/mm
Φ:支持部4の軸方向(長さ方向)を囲む周長(=2(R+l))(mm)
:定着長(mm)
なお、Φの算出式は一例であり、ここでは、引張材3の長さ方向に対して垂直な面で切断したときに最も長くなる部分での周長Φを算出することとしている。
従来の鉄筋コンクリート造においては、(1.1)式に相当する算出式で、軸方向筋の周長ΦがΦ=dπ(ここでd:軸方向筋径)とされて、応力τが計算されるとき、応力τがコンクリートの付着破壊強度を下回るように、周長や定着長などが設計される。したがって、本実施形態では、支持部4の長さ方向(軸方向)を囲む周長Φが、鉄筋の場合のdπよりも大きく設定されることによって、定着長lで、径dの軸方向筋が負担する引張力が担保されることになる。
以下、本実施形態に係る構造部材10のひび割れ幅と引張材3のひずみの関係に注目して、構造部材10の各部のひび割れに対する引張材3の抵抗力(引張力)の計算方法を説明する。
図10及び図11は、本実施形態に係る構造部材10にひび割れが生じた場合の抵抗機構の模式図を示す。構造部材10におけるひび割れは大きく二つに分類される。一つは、図6に示すヒンジ部10-1のひび割れのような、いわゆる、曲げひび割れ、もう一つは、図6に示す中間部10-2のひび割れのような、いわゆる、せん断ひび割れである。曲げひび割れとせん断ひび割れでは、ひび割れの最終的な拡大方向が異なる。曲げひび割れは、図10に示すように、軸方向(長さ方向)に拡大する。せん断ひび割れは、初期段階では曲げひび割れ同様に、軸方向(長さ方向)に拡大し、終局段階では図11に示すように軸方向(長さ方向)に垂直な方向に拡大する。
図10及び図11において、θはひび割れ空間における引張材3とひび割れの内面2aのなす角、αは引張材3の材軸方向とひび割れ拡大方向のなす角、Lは支持部4間の距離である。また、ΔCはひび割れ幅、ΔCは距離Lにおける引張材3の伸びである。
引張材3のヤング率をE、破断ひずみをεfuとすると、引張材3の引張力qは、(1.2)式で計算できる。
ここで、
:引張材3のヤング率(N/mm
ε:引張材3のひずみ(無次元)
εfu:引張材3の破断ひずみ(無次元)
α:ひび割れ空間における引張材3の長さ方向とひび割れ拡大方向のなす角
このとき、ひび割れを跨ぐ引張材3のひずみεは、ΔC/L=(ΔC/sinθ)/Lとなり、ε<<εfuとすれば、ひび割れ幅ΔCにおける引張材3の引張力は(1.3)式で計算できる。
ここで、
ΔC:ひび割れ幅(mm)
θ:ひび割れ空間における引張材3とひび割れの内面2aとのなす角
L:本体部2内部にあってひび割れ面に最も近い支持部4間の距離(mm)
その他の記号は上式までと同じ
図6に示すヒンジ部10-1のひび割れのような、いわゆる、曲げひび割れの場合は図10においてθ≒90°、α≒0°として、ひび割れ幅ΔCに対する抵抗力(引張材3の引張力)を計算することができる。
また、図6に示す中間部10-2のひび割れのような、いわゆる、せん断ひび割れの場合は図11においてθ≒30°~45°、α≒30°~45°として、ひび割れ幅ΔCに対する抵抗力(引張材3の引張力)を計算することができる。
ここで、ひび割れ幅ΔCは、要求される強度を満たすために許容される最大ひび割れ幅であると捉え、個別に指定してもよい。
本実施形態では、鉄筋コンクリート系構造物におけるせん断補強筋が設置されないが、本実施形態に係る構造部材10の引張材3は、軸方向(長さ方向)に垂直な方向の面における部材周長が不変である段階(図10)でも、ひび割れが軸方向(長さ方向)に拡大する段階(図11)でも、引張材3がひび割れ幅ΔCに比例した抵抗力を発揮する。したがって、本実施形態では、曲げひび割れだけでなくせん断ひび割れに対しても抵抗力を発揮する。
本実施形態に係る構造部材10の終局強度は、ヒンジ部10-1周辺に配置された構造基材1がちょうど降伏強度又は破断時引張強度に達するときのせん断力(=Qmu)と、中間部10-2における圧縮材11及び構造基材1が負担し得るせん断力(=Qsu)のうち、小さいほうとなる。
なお、ヒンジ部10-1周辺の構造基材1がちょうど降伏強度又は破断時引張強度に達するときのせん断力Qmu(=2M/h)は、例えば非特許文献2で説明されている曲げ終局強度Mu((1.3-11)式)の第1項における鉄筋の項(aσ)を、ヒンジ部10-1周辺の構造基材1が負担し得る引張力(=a)に置き換えることで計算することもできる。
ここで、
N:柱軸方向力(kN)
:引張軸方向筋断面積(mm
σ:軸方向筋降伏強度(N/mm
b:柱断面幅(mm)
D:柱断面せい(mm)
:コンクリートの圧縮強度(N/mm
また、中間部10-2における圧縮材11及び構造基材1が負担し得るせん断力(=Qsu)は、例えば圧縮材11のせん断強度QC3と中間部10-2における構造基材1の引張力の和として、(1.4)式で計算することもできる。
ここで、
C3:圧縮材11のせん断強度(N)
fc:中間部10-2における構造基材1内部の引張材3の単位断面積当たりの引張力(N/mm
:中間部10-2における構造基材1内部の引張材3の1本当たり断面積(mm
:せん断変形に有効な中間部10-2における構造基材1内部の引張材の本数(無次元)
構造基材1の配置の仕方、引張材3及び支持部4の構成や物性などを適切に選択、設定することで、曲げ終局時せん断力(=Qmu)より、せん断終局強度(=Qsu)のほうが大きくなるように設定できる。これにより、設計用せん断力を受けても構造部材10がせん断で終局となること(脆性的な破壊)を防止することできる。
また、本実施形態に係る構造部材10の終局強度が、想定される水平力より大きくなるように設定することで、構造部材10は脆性的な崩壊に至らない部材となる。
例えば、構造基材1における引張材3を炭素繊維(東レ株式会社トレカ(登録商標)糸T300、ヤング率Ef:230,300N/mm、破断ひずみεfu:1.5%)とすると、想定ひび割れ幅ΔC:0.2mm、支持部4間距離L:30mmとすることで、降伏強度σ=345N/mmの異形鉄筋D22と同等の引張力を負担できる。このとき、引張材3の断面積は、異形鉄筋の4分の1である。炭素繊維は、鉄筋に比べてヤング率は大きいが、破断ひずみは小さいという課題があるが、構造基材1における支持部4を降伏する材料とし、引張材3が破断する前に支持部4が降伏するように設定することで、引張材3の破断で終局とならず、支持部4の降伏で終局となる、安定した構造部材10とすることができる。
さらに、構造基材1における引張材3をポリエステル繊維のようにヤング率が小さく、破断ひずみが大きい材料とすることで、より靭性が高く、フェイルセーフな構造とすることも可能である。
このように、本実施形態に係る構造部材10が適用された構造物においては、鉄筋コンクリート系構造物においてせん断補強筋が設置される場合と異なり、軸方向(長さ方向)に垂直な方向に別途材料を配置することなく、鉄筋コンクリート系構造物と同等の終局強度を有するように設定できる。これにより、構造物を構成する材料が大幅に削減され、工期短縮、工事費削減、環境負荷低減だけでなく、構造体の重量が低減されることによる地震力の低減、耐震性向上にも寄与する。
なお、構造部材10が梁、壁、床、基礎、杭、電柱などの構造部材についても同様に計算できる。
また、ヒンジ部10-1と中間部10-2で引張材3を異なる材料とすることも可能である。さらに、上述した実施例では、想定ひび割れ幅を0.2mmとしたが、構造物の用途や要求性能に応じて想定ひび割れ幅を設定することが可能である。例えば、1階が駐車場のピロティ柱のように、ある程度の変形が許容される場合、想定ひび割れ幅を1~2mmとすることも考えられる。
以上、本実施形態によれば、引張材3は、曲げ剛性、せん断剛性、圧縮剛性とも構造設計において無視できるほど小さく、本体部2に配置された状態で圧縮力を受けても座屈しない材料である。これにより、ひび割れが発生したとき、ひび割れ空間内で引張材3が自由に変形する。すなわち、ひび割れ空間内で引張材3が伸長したり、引張材3の伸長方向が自在に変化したりすることができる。そして、本体部2にひび割れが生じたとき、引張材3及び支持部4がひび割れ空間近傍(ひび割れ面から50mmから100mm程度)の本体部2の内部で定着している。したがって、本体部2にひび割れが生じたとき、引張材3の引張力は、構造部材10のひび割れの拡大に対する抵抗力として発揮される。
したがって、高強度連続繊維のように高い引張強度を有する引張材3と支持部4が組み合わされた構造基材1が圧縮材11の内部に配置され、コンクリートのように圧縮力を負担する本体部2とで引張材3及び支持部4が一体化されることで、せん断補強筋を必要としない構造物を提供することができる。構造部材10は、鉄筋コンクリート系構造物においてせん断補強筋を配置する場合と異なり、軸方向筋の座屈防止やせん断ひび割れに対する抵抗のための軸方向(長さ方向)に対して垂直方向の材料を必要としない。したがって、構造物を構成する材料を大幅に削減でき、構造物の重量を軽減できる。
構造部材10の構築には、構造基材1の作製する工程と、構造基材1を圧縮材11と一体化させる工程の大きく二つに分かれる。これにより、構造基材1は、工場で作製することができ、構造基材1の品質向上の確保が容易になる。そして、構造部材10を構築する現場では、工場で作製された構造基材1が搬入、設置されるだけでよく、構造基材1を現場で作製する作業が不要となる。現場では、構造部材10を構築するための型枠が形成されて、圧縮材11を型枠に打設されることで、構造基材1と圧縮材11が一体化されて、構造部材10の構築が完了する。
構造部材10は、鉄筋工事の大部分を省略できるので、工期、工費の削減が可能となる。また、引張材3の配置は鉄筋工のような専門工を要しないので職人の確保も容易になり、構造物としての品質も向上させることができる。
また、構造部材10では、せん断補強筋が不要になることで、コンクリートの中性化や塩化物イオン等による腐食、体積膨張などの、鉄筋特有の症状の大半を解消できる。さらには、せん断補強筋が不要になることで、高温期における鉄筋によるヒートブリッジ現象が大幅に改善され、空調設備の負荷を軽減でき、温室効果ガスの発生を抑制し、環境負荷低減にも寄与する。
<実験例>
本発明の一実施形態に係る構造部材10を模した模型(試験体)を作成して水平加力実験を行い試験体の耐力を検証した。
本実験に係る試験体では、本実施形態に係る圧縮材11及び本体部2が一体化された状態の部位を石膏(圧縮強度2.6N/mm)、引張材3をポリエステル繊維とし、試験体は四角柱形状に形成された。水平加力実験では、試験体の柱上端及び柱下端を固定して柱上端の水平方向変位のみ拘束なしとして、柱上端に水平荷重を負荷した。
表1には試験体(試験体No.6)諸元と理論値計算用鉄筋諸元が示され、表2には試験体の引張材諸元が示されている。
付着破壊を考慮する場合、軸方向筋(主筋)として異形鉄筋を用いた構造部材のせん断終局強度の理論値は、靭性保証型耐震設計指針の方法で、せん断補強筋(フープ筋)なしとして求めた。付着破壊を考慮しない場合、構造部材のせん断終局強度は、非特許文献1の方法で計算でき、その値は0.38kNとなった。
軸方向筋として異形鉄筋を用いた構造部材の曲げ終局時せん断力の理論値は、非特許文献1の方法で求めた。
付着破壊を考慮する場合と、付着破壊を考慮しない場合のいずれにおいても、せん断終局強度Qsuが曲げ終局時せん断力Qmuを下回るため、せん断補強筋なしで異形鉄筋を用いた構造部材は、理論上せん断破壊となる。なお、簡単のため鉄筋の最外径は公称径と同じとした。
試験体No.6の引張材3の断面積は、軸方向筋として1mmの異形鉄筋を用いた場合の2分の1に設定されている。そして、試験体No.6の引張材3は、1mmの異形鉄筋と同等の引張強度が、異形鉄筋の2分の1の断面積で発揮するよう、隣り合う支持部4間の距離LTが設定されている。また、引張材3のひずみが破断ひずみを超えるように設定され、引張材3の破断で終局となるように設定された。
試験体No.6において、引張材3は、各側面それぞれに3本の引張材3が面するように配置された。したがって、水平荷重が負荷されたとき、引張力に有効な引張材3の本数は3本である。試験体No.6において、支持部4は、アクリル樹脂製のビーズ(貫通孔4Aあり)が選定された。上述した実施形態の図9で記載したように、貫通孔4A内に引張材3が挿通されて引張材3が支持部4の外周面に巻回され、引張材3の端部に設けられる支持部4では引張材3が外周面に2回巻回された。
図12に、実験結果のグラフが示されている。なお、実験では引張材3の断面積が比較対象とした鉄筋の断面積の2分の1とされているため、図12の縦軸は、水平荷重の絶対値ではなく、水平荷重を引張材断面積で除して、引張材断面積あたりの水平荷重(単位kN/mm)とされている。
実験の結果、本実験における試験体は、せん断補強筋なしで異形鉄筋を用いたときの理論上の破壊形式である付着割裂破壊ではなく、ヒンジ部に曲げひび割れを伴う曲げ変形を呈した。水平荷重0.28kN付近(0.47kN/mm付近)で、引張材3が破断し終局となった。
以上から、せん断補強筋を設置することなく、長さ方向の引張材3と支持部4のみで、曲げ破壊先行型の柱とすることが可能であることが示された。本実験では軸力を作用させていないが、本発明においては、従来の軸方向筋のような、圧縮材11及び本体部2を内部から破壊する要素がないため、軸力が作用する場合でも、本実験と同様に引張材3の降伏あるいは破断で構造部材10が終局となるよう設定できる。
なお、本実験では、水平荷重の増加に伴い、図13に示すとおり、引張側の支持部4が圧壊していたため、中央部の引張材3の2本が水平荷重に抵抗し最終的に破断していた。これにより、本実験の試験体No.6の耐力は、せん断破壊が生じない場合の曲げ終局時せん断力の理論値0.4kNに届かなかったが、支持部4が圧壊しないように支持部4が設定されることで、引張側の引張材3の3本で構造部材10が水平荷重に抵抗可能となる。したがって、せん断破壊しなければ、支持部4が圧壊しない試験体は、今回の実験値として得られた終局水平荷重の1.5倍である0.42kNまで抵抗できるといえる。これは、せん断補強筋なしで異形鉄筋を用いたときの曲げ終局時せん断力の理論値0.4kNを上回る。
また、本実験の試験体No.6とは別に、支持部4の代わりに引張材に結び目を設けた試験体(試験体No.4)と、支持部4を設けずに引張材を三つ編み状にした試験体(試験体No.5)で水平加力実験を行った。図14には、これらの結果が試験体No.6の結果と比較して示されている。なお、いずれの試験体も圧縮材は石膏で、引張材は試験体の長さ方向に配置された。また、試験体No.5のみ15mm角の試験体のため、水平荷重を引張材断面積で除し、さらに試験体断面積で除しており、図14の縦軸の単位はkN/mmである。
図14から、今回の試験体No.6が剛性、終局耐力ともに大幅に上回っていることが分かる。また、試験体No.4は、結び目が絞られ、引張材にひずみがほとんど生じていないので剛性が低い。さらに、試験体No.5は、三つ編み状であって、結び目、支持部4ともに存在しないので引張材にひずみが生じず、剛性が低い。そして、試験体No.5は、圧縮材のせん断破壊で終局となっている。このことから、引張材3に支持部4を設けることで、構造部材10の長さ方向に配置した引張材3がせん断変形にも有効に抵抗し、せん断強度が向上していることが分かる。
試験体No.4は、異形鉄筋と同じ断面積の引張材に設定されており、最終的には曲げ変形を呈して水平荷重0.6kNでも破壊しなかった。よって、支持部4がアクリル樹脂製である試験体No.6や、支持部4の代わりに結び目を設けた試験体No.4ではなく、支持部4が圧壊しないように設定され、異形鉄筋と同じ面積を有する引張材3による試験体を対象とした場合、試験体No.4及び試験体No.6を上回る結果が得られると考えられる。
1 :構造基材
2 :本体部
2a :内面
3 :引張材
4 :支持部
4A :貫通孔
10 :構造部材
10-1 :ヒンジ部
10-2 :中間部
11 :圧縮材

Claims (12)

  1. 構造部材に作用する圧縮力を負担する圧縮材の内部に配設される構造基材であって、
    前記圧縮材が硬化したとき前記圧縮材と一体化され、圧縮力を負担可能な材料からなる本体部と、
    前記本体部の内部において前記本体部の一端から他端にわたって配置され、引張力を負担可能な連続繊維を有する引張材と、
    前記引張材が外周面に巻回され、前記本体部の内部において前記引張材に沿って互いに間隔を空けて設けられる複数の支持部と、
    を備え、
    前記引張材及び前記支持部は、前記引張材及び前記支持部に生じる応力を前記本体部に伝達するように前記本体部の内部において定着されている構造基材。
  2. 前記本体部は、前記圧縮材と一体化可能な外部形状を有する請求項1に記載の構造基材。
  3. 前記本体部は、外周面において凹凸が形成されている請求項2に記載の構造基材。
  4. 前記本体部は、複数の棒状部材が組み合わされて立体形状を有する請求項2又は3に記載の構造基材。
  5. 前記引張材は、前記構造部材に生じるひび割れ面に対して斜め方向となるように前記構造部材の内部に配置されている請求項1に記載の構造基材。
  6. 前記支持部は、貫通孔が形成されており、前記貫通孔内に前記引張材が挿通されつつ前記引張材が外周面に巻回されている請求項1に記載の構造基材。
  7. 前記引張材の端部に設けられる前記支持部の外周面において、前記引張材が複数回巻回されている請求項1に記載の構造基材。
  8. 前記支持部は、前記引張材に所定以上の引張力が作用したとき降伏する材料である請求項1に記載の構造基材。
  9. 請求項1に記載の構造基材が前記圧縮材の内部に配設されている構造部材。
  10. 請求項9に記載の構造部材を備える構造物。
  11. 請求項1に記載の構造基材を型枠内に硬化前の前記圧縮材と共に投入して攪拌し、前記圧縮材と一体化させるステップを備える構造部材の構築方法。
  12. 請求項1に記載の構造基材からなり格子状の面を有する立体部材を形成するステップと、
    前記立体部材を硬化前の前記圧縮材の内部に配置して前記圧縮材と一体化させるステップと、
    を備える構造部材の構築方法。
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