JP7389765B2 - 反射防止基板 - Google Patents

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Description

本発明は、伸び特性並びに反射防止能に優る反射防止基板に関する。詳しくは、反射防止層が設けられたフィルムインサート成形用の、反射防止フィルムとして好適に使用される反射防止基板に関する。
従来、パソコン、携帯電話、液晶モニター、現金自動預け払い機等の各種表示装置において、自然光や人工光下での反射や映り込みを防止して視覚性を低下させないことが課題となり、各種対応策が施されている。
対応策の一つとして反射防止フィルムが開発され、当該フィルムを表示装置の表面に張り付けてその目的を達成している。一方、表面に反射防止層を有する一体成形品の開発も進められている。
反射防止層を有する一体成形品を製造する方法の一つに、フィルムインサート成形法がある。当該方法は、別途作製された反射防止機能を有するフィルム(反射防止フィルム)を使用する成形方法であって、射出成形機内に該反射防止フィルムを設置したのち、該反射防止フィルムに熱を加えながら所定形状に賦形し、次いで所定の樹脂を注入・固化させて該反射防止フィルムと樹脂とを熱融着で一体化させるものである。フィルムインサート成形法は、複雑な形状への対応度が高く、深絞り製品にも適応できると云う利点を有しており、例えば、自動車のインストルメントパネルの透明カバーの製造等に利用されている。
フィルムインサート成形法は、上記の通り複雑な成形品の製造に適応できる方法であるが、一方では、角部や曲部を有する成形品の場合、従来型の反射防止フィルムでは、熱を加えながら所定形状に賦形する際に、曲げ応力や引張り応力が集中する角部や曲部にクラックが発生し、インサート成形不良となる問題が生じる(特許文献1~3)。
我々は、先に、フィルムインサート成形に使用される伸び特性が高い反射防止フィルムとして好適な透明樹脂基板を提案した(特許文献4)。
特許第5745639号 特開2016-20049号 特開2014-208743号 WO2018-117028
我々が提案した透明樹脂基板は、優れた伸び特性を確保するために反射防止層を構成する低屈折率層にシリカ粒子を含有させないことを特徴とした。この結果、当該低屈折率層の屈折率が十分に低下せず反射防止能が犠牲となっていた。また、反射防止層を、高屈折率層を含む三層構造とした場合、伸び特性に優れた反射防止基板を製造する条件の設定が難しく、コンスタントに安定して量産することが難しかった。
本発明者らは、反射防止層を構成する各屈折率層の構成成分について鋭意検討した結果、各屈折率層に、バインダーとして機能するアルコキシシランで変性された樹脂化合物を使用することにより、低屈折率層はシリカ粒子を含有させることが可能となって低屈折率を達成でき、しかも、伸び特性に優れる反射防止層を安定して形成できることを見い出した。
この結果、フィルムインサート成形時に発生しやすい反射防止層やハードコート層におけるクラック、或いは各層界面での剥がれを防止できる、反射防止基板を安定して量産できることが可能となり、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明によれば、樹脂基材と、該基材上に下地層、ハードコート層、反射防止層、およびカバー層をこの順に有する反射防止基板であって、
前記下地層は、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A1)の硬化物からなり厚みが20~150nmであり
前記ハードコート層は、3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)を60質量%以上含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の硬化物を含み厚みが1~5μmであり
前記反射防止層は、ハードコート層側から、屈折率が1.50~1.75で厚みが50~200nmの中屈折率層 、屈折率が1.60~2.00で厚みが50~200nmの高屈折率層、および屈折率が1.25~1.40で厚みが50~200nmの低屈折率層をこの順に備え、高屈折率層の屈折率は中屈折率層の屈折率より大きく、且つ、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層は、いずれも有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含み、前記カバー層は、有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含み、
当該有機・無機複合化合物(B)がアルコキシランで変性された樹脂化合物であることを特徴とする前記反射防止基板が提供される。
上記反射防止基板の発明においては、
1)前記ハードコート層が、3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)を60質量%以上含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して 、球状シリカ粒子(C-1)30~80質量部、シランカップリング剤(D)5~15質量部および金属キレート化合物(E)0.1~1.5質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
前記中屈折率層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、金属酸化物粒子(F)50~170質量部、シランカップリング剤(D)50~100質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
前記高屈折率層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、金属酸化物粒子(F)500~1500質量部、シランカップリング剤(D)100~300質量部および金属キレート化合物(E)10~30質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
前記低屈折率層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、中空シリカ粒子(C-2)100~300質量部、シランカップリング剤(D)20~150質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
前記カバー層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、シランカップリング剤(D)10~80質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有する組成物の硬化物からなり、反射防止基板の伸び率が、120~160%であること
2)前記カバー層の厚みが10~20nmであること
3)前記有機・無機複合化合物(B)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール樹脂或いはポリアミック酸の何れかに、アルコキシシリル基が結合した構造の複合化合物であること
が好適である。
更に、本発明においては、上記反射防止基板からなるフィルムインサート成形用反射防止フィルムが提供される。
本発明の反射防止基板は、樹脂基材上に、特定組成の、下地層、ハードコート層、反射防止層およびカバー層が、この順に設けられている。特に、反射防止層が屈折率の異なる三種の屈折率層から構成され、しかもこれらの各屈折率層に加えてカバー層にも、特殊な化学構造の化合物がバインダーとして使用されている。
これらの特徴を有することにより、反射防止基板の伸び率が高く、例えば伸び率が120~160%を実現できる。この結果、フィルムインサート成形の賦形時に、樹脂基材の変形にその上の層が追従しやすくなり、ハードコート層や反射防止層のクラック発生や割れ、各層の界面での剥がれが有効に防止できるようになった。
また、反射防止層が屈折率の異なる三種の屈折率層から構成され、且つ、低屈折率層がシリカ粒子を含有することができるので、反射防止能が著しく向上した。
更に、上記の優れた特性を有する反射防止基板を、各層を形成するためのコーティング組成物の調製条件、塗布条件、硬化条件などの製造条件に左右されることなく、安定して製造することが可能となった。この結果、フィルムインサート成形時に、反射防止基板を起点としたクラック発生による成形不良品の製造が低減できるようになり、歩留まりの低下を回避して高い生産性が達成でき、その工業的価値は高い。
更にまた、耐薬品性に優れ、薬剤や洗剤による洗浄時の反射防止層の変色や剥がれ、樹脂基材の膨潤等による劣化や外観不良の発生を防ぐことができた。
当該反射防止基板は、各種ディスプレイの前面透明パネルや自動車のインストルメントパネルの透明カバーなどの反射防止機能付き透明成形体の、フィルムインサート成形法による工業的生産に有用である。
<反射防止基板>
本発明の反射防止基板は、樹脂基材をベース材料として、その表面に、順に下地層、ハードコート層、反射防止層、カバー層が積層された構造を基本構成とする。
反射防止層は、ハードコート層側から順に中屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層の、屈折率の異なる三種の層から構成されている。
当該反射防止層の上に、カバー層が設けられている。
上記反射防止基板は伸び特性に優れ、後出の測定方法で測定される伸び率が120~160%のものを、安定して得ることができる。
<樹脂基材>
樹脂基材は、その使用目的から透光性を有するものが好適であり、例えば、波長750~400nmでの全光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂の基材が好ましい。
このような透光性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
上記樹脂が二種積層された積層樹脂基材であってもよいが、下地層が形成される側の面が、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂により形成されていることが好ましい。好適には、ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂との積層樹脂基材が使用される。
また、このような樹脂基材は、透光性が損なわれない限りにおいて、油溶性染料等によって着色されたものであってよい。
かかる樹脂基材の表面は、ハードコート層との密着性を向上させる目的で、それ自体公知のプライマーで表面処理されていてもよい。
上記樹脂基材の厚みは、フィルムインサート成形により最終的に成形される成形体の形状や大きさによっても異なる。一般的には、適度に薄肉であることが好ましく、例えば、30~1000μmの厚みであることが好ましい。
この厚みが過度に厚すぎると、フィルムインサート成形に際して、成形型内に注入する樹脂量が制限されてしまい、目的とする形状の成形体を得ることが困難となるおそれがある。この厚みが薄すぎると、この反射防止基板の賦形性等が損なわれてしまい、フィルムインサート成形時に折れ等の成形不良を生じ易くなってしまう。
<下地層>
下地層は、反射防止基板が所定の伸び率を確保し、しかも、最終成形品である反射防止性透明成形体の表面を薬剤処理した場合に、表面から浸透してきた薬剤が樹脂基材に達して、当該基材を白化或いは膨潤させることを防止するために必要な層であり、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A1)の硬化物からなる。
下地層の厚みは、通常20nm~150nmとされる。20nm未満ではその機能を発現できず、150nmを超えると得られる反射防止基板の伸び率が低下してしまい成形性が乏しくなる。好ましくは50~130nmであり、特に好ましくは60~90nmである。
[6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A1)]
上記目的を達成するために、下地層は、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物〔以下6ウレタン(メタ)アクリレートともいう;A1〕の硬化物からなる必要がある。6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の硬化物は、架橋密度が高く硬度が高いものの適度の柔軟性を有する。
6官能以上であっても、分子内にウレタン結合を有しない通常の(メタ)アクリレート化合物の硬化物の場合は、堅すぎて所定の伸び率を確保できない。また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物であっても、5官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物では耐薬品性に劣り樹脂基材の保護の点で十分でない。
6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物を、水酸基を複数有している(メタ)アクリレート化合物と付加反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物であり、これら両原料を、(メタ)アクリロイル基が6倍モル以上となる量比で用いて、それ自体公知の方法で反応させて得ることができる。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに、両末端イソシアネート(例えばトリヘキサジエチレンジイソシアネート)を反応させることにより、分子鎖末端のそれぞれに3個の(メタ)アクリロイル基を有する(A1)6ウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール化合物、ポリエーテルポリオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物等が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートや1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ジイソシアネートが例示される。
一方の原料となる(メタ)アクリレート化合物としては、トリメチロールプロバン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートが例示される。
具体的な6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、グリセリンジ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、グリセリンジ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、これら6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、例えば、アートレジンシリーズ(根上工業社),U/UAオリゴシリーズ(新中村化学工業社)、紫光UVシリーズ(日本合成化学社)、ウレタンアクリレートUAシリーズ(共栄社化学社)等として市販されており、一般に入手可能である。
上記6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、塗布を容易にするための粘度調整や硬化後の表面硬度向上の観点から、複数組み合せて用いてもよい。
[下地層の形成]
下地層は、6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を含む下地層用コーティング組成物を樹脂基材表面に塗布し、次いで重合硬化させて形成する。
下地層用コーティング組成物には、通常、粘度調整や易塗布性の目的で有機溶媒が、更に、重合硬化させるために、触媒量の重合開始剤が配合される。
有機溶媒としては、メタノールやイソプロパノール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、トルエンなどの芳香族系溶媒が使用される。アルコール系溶媒が、安価であり且つ樹脂基材へのダメージが少ない点で好適である。
有機溶媒の使用量は下地層用コーティング組成物の粘度が、垂れ等を生ぜずに塗布に適した範囲となるような量であればよい。一般的には、6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)濃度が全質量の0.1~10%になる量で有機溶媒を使用すればよい。
重合開始剤としては、化学硬化型の化学重合開始剤と光硬化型の光重合開始剤があり、硬化工程の硬化方法によって使い分けられる。硬化操作が簡便でしかもそれに使用する装置が簡略であることから、光重合開始剤が好ましく採用される。
化学重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物が好適に採用される。
光重合開始剤としては、公知のものを単独でもしくは組み合わせで使用することができ、ベンジル、カンファーキノン等のジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類などが挙げられる。
重合開始剤は、重合を効果的に進行させて硬化させるために、通常6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)100質量部に対して、1~10質量部、好ましくは、1~7質量部配合される。上限を超えると下地層が黄変しやすくなる。
上記重合開始剤は、重合促進剤として機能する、従来公知の種々のアミン化合物と組み合わせて使用しても良い。
下地層用コーティング組成物の塗布方法は特に限定されず、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法などが挙げられ、コーティング組成物の粘度、塗布厚み、或いは塗布面積等に応じて適宜選択され採用される。
塗布後必要に応じて乾燥し、次いで加熱または光照射して重合・硬化させ、下地層が形成される。
<ハードコート層>
前記下地層の上にハードコート層が設けられる。当該ハードコート層は、3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)を含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の硬化物を含み、反射防止基板の硬度や機械的強度を確保するために設けられる層である。
特に、3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物〔以下3ウレタン(メタ)アクリレートともいう:A2〕を60質量%以上含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、球状シリカ粒子(C-1)、シランカップリング剤(D)、および金属キレート化合物(E)を含有させて調製したハードコート層用コーティング組成物を硬化させた硬化物からなることが好適である。
ハードコート層の厚みは、1~5μmであることが好ましい。1μm未満ではハードコート層として強度等の特性が損なわれ、5μmを超えると、所定の伸び率が達成されなくなり、フィルムインサート成形時にクラックや割れが発生して成形不良の原因となる。好ましくは1~4μmであり、特に好ましくは1~3μmである。
[3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)]
反射防止基板の伸び率を確保するため、ウレタン(メタ)アクリレート化合物として、3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を60質量%以上含有させて硬化物とすることが好ましい。
3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)が60質量%未満では、反射防止基板の伸び率を所定の範囲に制御することが難しく、当該反射防止基板をフィルムインサート成形に使用した場合に、クラック発生や割れの原因となる傾向にある。上記観点から、3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、全ウレタン(メタ)アクリレート化合物中に60~70質量%含有させた場合に伸び率が120%以上となり好ましく、特に70~85質量%含有させた場合は伸び率が150~160%となり好適である。
3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)が100質量%の場合は伸び率の観点からは好ましいが、樹脂基材への薬剤浸透が起こりやすい点で好ましくない。従って、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物〔以下4ウレタン(メタ)アクリレートともいう:A3〕と併用することが好ましい。特に好ましい併用例は、薬剤の浸透を防止する観点から、3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)と前出の6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の組み合わせである。
3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)同様、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物を、水酸基を複数有している(メタ)アクリレート化合物と付加反応させて得られる。例えば、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートに末端イソシアネート化合物を反応させ、両末端のそれぞれに1個の(メタ)アクリロイル基が導入されているウレタンアクリレートは、2官能のウレタンアクリレートとして使用される。ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートとペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートとを、末端イソシアネート化合物と反応させ、イソシアネート化合物の一方の末端に1個の(メタ)アクリロイル基を導入し、且つ他方の末端に2個の(メタ)アクリロイル基を導入したものは、3官能のウレタンアクリレートとして使用される。
原料となるポリオール化合物、ジイソシアネート化合物および(メタ)アクリレート化合物は、6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の項で示されたものがそのまま採用できるが、(メタ)アクリロイル基が3倍モル以下となる量比で用いる必要がある。
なお、これら3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、例えば、アートレジンシリーズ(根上工業社),U/UAシリーズ(新中村化学工業社)、紫光UVシリーズ(日本合成化学社)、ウレタンアクリレートAシリーズ(共栄社化学社)等として市販されており、一般に入手可能である。
[4官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A3)]
4ウレタン(メタ)アクリレート(A3)は、6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)や3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)に準じて、同様の原料を用いて同様の反応で合成される。例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートを、末端イソシアネート化合物と反応させ、イソシアネート化合物の両末端に、それぞれ2個の(メタ)アクリロイル基を導入したものは、4ウレタン(メタ)アクリレートとして使用される。前出の6ウレタン(メタ)アクリレート(A1)も、当該4ウレタン(メタ)アクリレート(A3)に含まれる化合物である。これらは、前記各社から市販されている。
[球状シリカ粒子(C-1)]
球状シリカ粒子(C-1)は、二酸化珪素を主成分とする、内部に空洞を有しない密度が1.9以上の粒子であり、平均粒子径が5~500nmであり、屈折率が1.44~1.5の範囲にあるものが使用される。ハードコート層の硬度維持に加えて、ハードコート層用コーティング組成物を平滑に塗布する働きをなす。なお、本発明において平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により測定した粒度分布において、累積体積が50%の時の粒子径をいう。
当該球状シリカ粒子(C-1)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、30~80質量部の量で使用される。かかる範囲でハードコート層に含まれることにより、ハードコート層の全体に亘って、硬度等の基本特性を維持しつつハードコート層用コーティング組成物を平滑に塗布でき、フィルムインサート成形時のクラックの発生や割れを有効に防止することができる。好ましくは30~70質量部、特に好ましくは35~60質量部である。
上記球状シリカ粒子(C-1)は、通常、溶媒に分散された状態で市販されている。この溶媒は、後出のハードコート層用コーティング組成物中における有機溶媒の一部となる。
[シランカップリング剤(D)]
シランカップリング剤(D)は、上記球状シリカ粒子(C-1)を硬化物中に安定に分散、保持させ、即ち粒子の凝集を抑制して球状シリカ粒子の添加効果を最大限に発現させる。更に、下層の樹脂基材や上層の中屈折率層との密着性を確保する働きをなす。
特に、当該シランカップリング剤(D)は、上層の中屈折率層中にも含まれるので、中屈折率層とハードコート層との間に高い密着性が発現する。また、シランカップリング剤(D)は、加水分解と同時に重縮合し、Si-O-Si結合によりネットワーク状に連なった重合物を形成して、ハードコート層を緻密なものとすることもできる。
当該シランカップリング剤(D)としては、反応性を有する加水分解性基と有機材料と化学結合する有機官能基とを持ち、有機材料と無機材料を結合させる機能を有する、公知の化合物が何ら制限なく採用される。
具体的には、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-スチリルメチル-β-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
当該シランカップリング剤(D)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、5~15質量部の量で使用される。5質量部未満では、その効果が発現しづらい。15質量部を超えるとハードコート層の平滑性が損なわれる傾向にある。好ましくは5~13質量部であり、特に好ましくは6~10質量部である。
[金属キレート化合物(E)]
金属キレート化合物(E)は、ハードコート層中に架橋構造を導入して、より緻密化する働きをなす。
前述のとおり、本発明のハードコート層は、多量の3ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を使用するため、柔軟性に富む一方緻密性が低下する。当該金属キレート化合物(E)は、柔軟性を損なわずにその緻密性の低下を補うために使用される。また、このような金属キレート化合物(E)は、反射防止層にも含まれているため、ハードコート層と反射防止層との密着性がより高められ、フィルムインサート成形時の割れ等を有効に防止することができる。
金属キレート化合物(E)は、二座配位子を代表例とするキレート剤が、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの金属に配位した化合物であり、これら公知の化合物が制限なく使用できる。
具体的には、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;
ジエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、アルミニウムトリアセチルアセトネート等のアルミニウムキレート化合物;
が挙げられる。
金属キレート化合物(E)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、0.1~1.5質量部の量で使用される。この範囲で使用することにより、ハードコート層が緻密化して硬度等の機械的特性が向上する。好ましくは0.3~1.2質量部であり、特に好ましくは0.5~1.0質量部である。
[ハードコート層の形成]
ハードコート層は、好適には、3ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)を60質量%以上含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、球状シリカ粒子(C-1)30~80質量部、シランカップリング剤(D)5~15質量部および金属キレート化合物(E)0.1~1.5質量部を含有させて調製したハードコート層用コーティング組成物を下地層の上に塗布し、次いで必要に応じて乾燥を行った後、重合、縮合硬化させて形成する。
当該コーティング組成物には、好適には、下地層用コーティング組成物同様、粘度調整や易塗布性の目的で有機溶媒が、更に重合硬化させるために触媒量の重合開始剤が配合される。更に、縮合硬化を進めるために、触媒量の加水分解触媒が配合される。加水分解触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などの酸の水溶液が使用される。
当該有機溶媒は、塗布性の観点から、通常、前記(A)、(C-1)、(D)および(E)成分の合計濃度が、15~40質量%となるように使用される。
ハードコート層用コーティング組成物の調製方法は特に制限はない。通常、あらかじめシランカップリング剤(D)と加水分解触媒を混合して加水分解を進行させたのち、溶媒中に、当該加水分解物溶液、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、球状シリカ粒子(C-1)またはその懸濁液、および金属キレート化合物(E)、更には重合開始剤を投入して調製する。溶媒中に、全ての成分を一括して投入して混合しても良い。
ハードコート層用コーティング組成物の塗布および硬化は、前出の下地層のそれに準じて実施される。
<反射防止層>
前記ハードコート層の上に、反射防止層が設けられる。当該反射防止層は、ハードコート層側から、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層がこの順に積層された三層構造となっている。
中屈折率層はその屈折率が1.50~1.75であり、高屈折率層はその屈折率が1.60~2.00であり、低屈折率層はその屈折率が1.25~1.40であって、高屈折率層の屈折率は中屈折率層の屈折率より大きい。
上記中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層は、いずれも有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含むことに特徴がある。これにより、得られる反射防止基板が高い伸び特性を発現するとともに、コンスタントに安定して反射防止基板が量産できる。各屈折率層に有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含まない場合は、各層のコーティング組成物の調製条件、コーティング条件、硬化条件等によって、一部不良品ができることがあり、高い伸び率の反射防止基板を安定して量産することが難しい。
[中屈折率層]
前記ハードコート層の上に、有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含有する屈折率が1.50~1.75に設定された中屈折率層が設けられる。
当該中屈折率層は、好適には、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、金属酸化物粒子(F)50~170質量部、シランカップリング剤(D)50~100質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有させて調製した中屈折率層用コーティング組成物を硬化して形成された硬化物からなる。
中屈折率層の厚みは、通常50~200nmであり、好ましくは50~150nmであり、特に好ましくは60~100nmである。50nm未満では中屈折率層として本来の機能を発揮できず、200nmを超えると、干渉膜として機能しなくなり、反射防止能を失う傾向にある。
[有機・無機複合化合物(B)]
本発明の中屈折率層には、有機・無機複合化合物(B)が含まれることに特徴がある。
有機・無機複合化合物(B)とは、例えば、エポキシ当量が180~5000のビスフェノールA型エポキシ樹脂に加水分解性アルコキシシラン化合物を反応させて得られる、アルコキシシリル基が結合した複合化合物である。この複合化合物は硬化させることにより、末端エポキシ基の架橋と、アルコキシシリル基のゾルゲル反応による高次のシロキサン架橋(シリカ生成)とが起こって、ガラスのようにTgが無い、有機材料と無機材料の長所を併せ持つ硬化物となる。
有機・無機複合化合物(B)は様々なタイプの化合物が存在する。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール樹脂、或いはポリアミック酸化合物などの高分子体にアルコキシシリル基が結合した構造の複合化合物がある。
本発明において、有機・無機複合化合物(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物にアルコキシシリル基が結合した複合化合物(アルコキシ基含有シラン変性エポキシ化合物)が、最も中屈折率層の硬度を損なうことなく高い伸び率特性を発現し、しかも入手が容易であるという観点から好適に使用される。
[金属酸化物粒子(F)]
中屈折率層には、屈折率を所定の値に調整するために、金属酸化物粒子(F)が配合される。
当該粒子としては、ジルコニア粒子(屈折率2.40)、チタニア粒子(屈折率2.70)、アルミナ粒子(屈折率1.78)、酸化アンチモン粒子(屈折率2.04)、酸化ジルコニウムと酸化ケイ素等の他の酸化物とを分子レベルで複合化させて屈折率を調整した複合ジルコニウム金属酸化粒子、酸化チタニウムと酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の他の酸化物とを分子レベルで複合化させて屈折率を調整した複合チタニウム金属酸化粒子などが挙げられ、これらを単独もしくは混合して屈折率を調整する。有機溶媒への分散性、コーティング組成物の安定性、密着性を勘案すると、ジルコニア粒子が好ましい。
当該粒子の平均粒子径は、過度に大きいと光の散乱が生じて層の光学特性が低下するので、通常、中屈折率層の厚みを大きく超えない、20nm~100nmであることが好ましい。
金属酸化物粒子(F)は、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、通常、50~170質量部、好ましくは55~165質量部、特に好ましくは60~155質量部配合される。配合量が少ないと所定の屈折率を維持できず、多い場合は中屈折率層が堅くなり伸び率が低下して本発明の特徴が損なわれるだけでなく、層自体がもろくなる。
上記金属酸化物粒子(F)は、通常、溶媒に分散された状態で市販されている。この溶媒は、後出の中屈折率層用コーティング組成物中における有機溶媒の一部となる。
[シランカップリング剤(D)]
シランカップリング剤(D)は、上記金属酸化物粒子(F)を始めその他の成分を硬化物中に安定に分散、保持させる働きをなすとともに、層の屈折率を調整する成分でもある。当該シランカップリング剤(D)としては、前出のハードコート層に使用された化合物が、何ら制限なく使用できる。
当該シランカップリング剤(D)は、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、通常50~100質量部の量で、好ましくは50~85質量部で、特に好ましくは50~75質量部で使用される。配合量が少ないと、金属酸化物粒子(F)の中屈折率層における分散性が低下し、多い場合は中屈折率層が堅くなり伸び率が低下して本発明の特徴が損なわれる。
[金属キレート化合物(E)]
金属キレート化合物(E)は、前出のハードコート層に使用される化合物が、同じ目的で何ら制限なく使用される。
金属キレート化合物(E)は、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、1~10質量部の量で使用される。この範囲で使用することにより、中屈折率層が緻密化して機械的特性が向上する。好ましくは2~8質量部であり、特に好ましくは3~7質量部である。
[中屈折率層の形成]
中屈折率層は、有機・無機複合化合物(B)、金属酸化物粒子(F)、シランカップリング剤(D)、および金属キレート化合物(E)を含有させて調製した中屈折率層用コーティング組成物をハードコート層表面に塗布し、次いで縮合硬化させて形成する。
当該コーティング組成物には、好適には、ハードコート層用コーティング組成物同様、粘度調整や易塗布性の目的で有機溶媒が、更に縮合硬化を進めるために触媒量の加水分解触媒が配合される。
有機溶媒としては、中屈折率層に含有させる金属酸化物粒子(F)が通常アルコール系溶媒に分散させた懸濁形態で市販されているので、アルコール系溶媒の使用が好適である。その使用量は、ハードコート層用コーティング組成物に準じる。加水分解触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などの酸の水溶液が挙げられる。
中屈折率層用コーティング組成物の調製方法は特に制限はなく、通常、有機・無機複合化合物(B)を溶媒中に溶解させて調製した溶液中に、あらかじめシランカップリング剤(D)と加水分解触媒とを混合して得た加水分解物溶液、金属酸化物粒子(F)又はその懸濁液、および金属キレート化合物(E)を投入して調製する。溶媒中に、全ての成分を一括して投入して混合しても良い。
中屈折率層用コーティング組成物の塗布は、前出の下地層のそれに準じて実施される。塗布後必要に応じて乾燥し、次いで70~90℃で20分程度加熱して縮合硬化させ、中屈折率層が形成される。
[高屈折率層]
本発明の反射防止基板は高い反射防止能を発現させるために、前記中屈折率層と後記低屈折率層との間に、有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含有する屈折率が1.60~2.00に設定された高屈折率層が設けられる。なお、該高屈折率層の屈折率は、中屈折率層の屈折率より高いことを必須とする。
当該高屈折率層は、好適には、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、金属酸化物粒子(F)500~1500質量部、シランカップリング剤(D)100~300質量部および金属キレート化合物(E)10~30質量部を含有させて調製した高屈折率層用コーティング組成物の硬化物からなる。
高屈折率層の厚みは、通常50~200nmであり、好ましくは50~150nmであり、特に好ましくは60~100nmである。
[高屈折率層の形成]
高屈折率層は、ハードコート層上に積層された前記中屈折率層の上に、有機・無機複合化合物(B)、金属酸化物粒子(F)、シランカップリング剤(D)および金属キレート化合物(E)を含有させて調製した高屈折率層用コーティング組成物を塗布し、次いで縮合硬化させて形成する。
上記有機・無機複合化合物(B)、金属酸化物粒子(F)、シランカップリング剤(D)、および金属キレート化合物(E)は、各々中屈折率層の項で説明された化合物が、同じ目的で同様に使用される。
金属酸化物粒子(F)は、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して500~1500質量部の範囲とし、屈折率が1.60~2.00になるように、前記金属酸化物粒子(F)から選択して或いはこれらを組みわせて使用される。
シランカップリング剤(D)は、金属酸化物粒子(F)を始めその他の成分を高屈折率層中に安定に分散、保持させるために、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して100~300質量部の範囲とされる。
金属キレート化合物(E)は、高屈折率層を緻密化して機械的特性を向上させるために、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して10~30質量部の範囲とされる。
また、高屈折率層用コーティング組成物中には、好適には、粘度調整や易塗布性の目的で有機溶媒が、更に縮合硬化を進めるために触媒量の加水分解触媒が配合される。
高屈折率層用コーティング組成物の調製、塗布および硬化は、中屈折率層用コーティング組成物のそれらに準じて実施される。
[低屈折率層]
前記高屈折率層の上に、有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含有する屈折率が1.25~1.40に設定された低屈折率層が設けられる。屈折率がこの範囲を外れると反射防止層として機能しない。
当該低屈折率層は、好適には、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、中空シリカ粒子(C-2)100~300質量部、シランカップリング剤(D)20~150質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有させて調製した低屈折率層用コーティング組成物の硬化物からなる。
当該低屈折率層の厚みは、通常50~200nmであり、好ましくは55~150nmであり、特に好ましくは60~100nmである。50nm未満では、反射防止能が発現しづらく、200nmを超えると干渉膜として機能しなくなり、反射防止能を失う傾向にある。
[中空シリカ粒子(C-2)]
中空シリカ粒子(C-2)は、低屈折率層の屈折率を制御するために使用される粒子であって、内部に空洞を有するという特徴を有するシリカ粒子である。通常、その屈折率は1.44以下であり、平均粒子径は10~150nmである。反射防止能およびヘイズ率(透光性)の観点から、好ましい平均粒子径は50~100nmで、特に好ましい平均粒子径は50~70nmである。
中空シリカ粒子(C-2)は、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して100~300質量部の範囲から、他の成分の屈折率も勘案して屈折率が1.25~1.40になるように使用される。
上記中空シリカ粒子(C-2)は、通常、溶媒に分散された状態で市販されている。この溶媒は、低屈折率層用コーティング組成物中における前記有機溶媒の一部となる。
[低屈折率層の形成]
低屈折率層は、前記高屈折率層の上に、有機・無機複合化合物(B)、中空シリカ粒子(C-2)、シランカップリング剤(D)および金属キレート化合物(E)を含有させて調製した低屈折率層用コーティング組成物を塗布し、次いで縮合硬化させて形成する。
上記有機・無機複合化合物(B)、シランカップリング剤(D)、および金属キレート化合物(E)は、各々中屈折率層の項で説明された化合物が、同じ目的で同様に使用される。
シランカップリング剤(D)は、前記中空シリカ粒子(C-2)を始め他の成分を低屈折率層中に安定に分散、保持させるために、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して20~150質量部の範囲とされる。
金属キレート化合物(E)は、低屈折率層を緻密化して機械的特性を向上させるために、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して1~10質量部の範囲とされる。
また、低屈折率層用コーティング組成物中には、好適には、粘度調整や易塗布性の目的で有機溶媒が、更に縮合硬化を進めるために触媒量の加水分解触媒が配合される。
低屈折率層用コーティング組成物の調製、塗布および硬化は、中屈折率層用コーティング組成物のそれらに準じて実施される。
<カバー層>
反射防止基板表面を擦傷等の物理的損傷から保護するために、カバー層が設けられる。
カバー層中にも、有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含有させる必要がある。当該硬化物が存在しないと、反射防止基板を用いてフィルムインサート成形した場合に、カバー層が反射防止層などの他の層に追従して伸びることができず、カバー層と反射防止層との界面で剥がれが生じて成形不良の原因となる。
当該カバー層は、好適には、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、シランカップリング剤(D)10~80質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有させて調製したカバー層用コーティング組成物の硬化物からなる。
カバー層の厚みは、10~20nmであれば保護層として機能する。
[カバー層の形成]
カバー層は前記低屈折率層の上に、有機・無機複合化合物(B)、シランカップリング剤(D)および金属キレート化合物(E)を含有させて調製したカバー層用コーティング組成物を塗布し、次いで縮合硬化させて形成する。
上記有機・無機複合化合物(B)、シランカップリング剤(D)、および金属キレート化合物(E)は、各々中屈折率層の項で説明された化合物が、同じ目的で同様に使用される。
シランカップリング剤(D)は、各成分をカバー層中に安定に分散、保持させるために、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して10~80質量部の範囲とされる。
金属キレート化合物(E)は、カバー層を緻密化して機械的特性を向上させるために、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して1~10質量部の範囲とされる。
また、好適には、粘度調整や易塗布性の目的で有機溶媒が、更に縮合硬化を進めるために触媒量の加水分解触媒が配合される。
カバー層用コーティング組成物の調製、塗布および硬化は、中屈折率層用コーティング組成物のそれらに準じて実施される。
<フィルムインサート成形>
このようにして形成された反射防止基板は、例えば所定の成形型内に配置され、加熱しながら型面に合わせて賦形し、次いで、所定の樹脂を注入し、硬化することにより、表面に反射防止能を備えた所定の形状の成形体を得ることができる。なお、注入する樹脂は、樹脂基材に対して良好な熱融着性を有する透明な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂が好適に採用される。
更に、この反射防止基板は、フィルムインサート成形の他に熱賦形、熱プレスによるエンボス加工や曲げ加工などの熱成形にも使用することができる。
本発明の反射防止基板は伸び特性に優れるので、フィルムインサート成形に際して、ハードコート層、反射防止層、カバー層でのクラック発生や層界面での剥がれが有効に防止される。しかもこの特性を有する反射防止基板が、その製造条件のぶれに係わらず安定して量産できる。この結果、フィルムインサート成形時の成形不良による歩留まりの低下を回避でき高い生産性が達成できる。
このフィルムインサート成形用の反射防止基板は、例えばCRT、LCD、プラズマデイスプレイなどの光表示面の前面パネルや自動車のインストルメントパネルの前面クリアーカバー等の成形に適用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
以下の実施例及び比較例で用いた各種成分と略号、並びに試験方法は、次の通りである。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)
6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A1)
A1-6:末端にアクリレート基を6個有するウレタンアクリレート
プレポリマー(6ウレタンアクリレート)
3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)
A2-2:末端にアクリレート基を2個有するウレタンアクリレート
(2ウレタンアクリレート)
A2-2.5:末端にアクリレート基を2.5個有するウレタン
アクリレート(2.5ウレタンアクリレート)
4官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A3)
A1-6:前記化合物に同じ
有機・無機複合化合物(B)
ASE:トリアルコキシメチルシリル基で修飾されたビスフェノール
A型エポキシ化合物
分散溶媒:ジエチレングリコールジメチルエーテル(DGLM)、
固形分50質量%
シリカ粒子(C)
C-1:球状シリカ粒子(平均子粒径=7nm、屈折率=1.46)
分散溶媒:イソプロピルアルコール(IPA)、
固形分20質量%
C-2:中空シリカ粒子(平均粒子径=60nm、屈折率=1.25)
分散溶媒:イソプロピルアルコール(IPA)、
固形分20質量%
シランカップリング剤(D)
γ-GPS:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
γ-APS:γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
金属キレート化合物(E)
AlAA:アルミニウムトリスアセチルアセトネート
金属酸化物粒子(F)
ZrO(60):平均粒子径=60~70nm、屈折率=2.40
分散溶媒:1-メトキシ-2-プロパノール(PGM)、
固形分53質量%
ZrO(20):平均粒子径=20~30nm、屈折率=2.20
分散溶媒:ブチルアルコール/エチルアルコール混合溶媒、
固形分20質量%
樹脂基材
PC:ポリカーボネート樹脂(厚み300μm、Tg=140℃)
全光線透過率=90%
有機溶媒
IPA:イソプロピルアルコール
MIBK:メチルイソブチルケトン
SBAC:酢酸sec-ブチルエステル
PGM:1-メトキシ-2-プロパノール
BuOH:ブチルアルコール
EtOH:エチルアルコール
エタコール:エチルアルコールとイソプロピルアルコールとの混合物
加水分解触媒
HCl:0.05N塩酸水溶液
重合開始剤
APPI:アルキルフェノン系光重合開始剤
紫外線吸収剤
UV1:ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤
(1)伸び率
樹脂基材の軟化温度(140℃)で約30秒熱を加え、各種R付き90°曲げ治具で曲げ操作を行った。クラックが生じなかった曲げ具のR値を基にして、反射防止基板外側の伸びた長さ(円周)を算出した(90°のため、1/4×πR)。反射防止基板内側は曲げただけで伸びは発生していないとし、外側の伸びた長さから反射防止基板の厚み分を差し引いて算出した値を内側の円周{1/4×π(R-反射防止基板厚み)}とした。内側の円周を100として伸びた外側の円周の比率を求め、この値を伸び率とした。
(2)全光線透過率
全光線透過率は、日本分光(株)社製V-550+積分球を使用して、走査速度1000nm/minで、波長780~380nmの範囲における最高透過率値を測定し、この値を全光線透過率とした。
(3)反射率
樹脂基材からの反射を防ぐために、反射防止基板の片面(反射防止層を積層していない面)に黒印刷を行った。全光線透過率と同じ試験機を用い、同様の条件下で、当該反射防止基板表面における視感平均反射率(SCI-Y値)を測定した。数値が小さいほど反射防止能に優れることを示す。
(4)耐摩耗性
試験用添付白布綿〔日本規格協会製 カナキン3号〕を500g/cmの圧力で試験体表面上を3000回往復したときの傷の発生の有無を目視で判定することにより、耐摩耗性を評価した。判定基準は、次の通りである。尚、本試験において、透過光は反射防止基板を透過した光を意味し、反射光は、反射防止基板表面で反射した光を意味する。
◎:透過・反射光、どちらを観察してもキズは確認されなかった
○:透過光を観察するとキズが数本確認されたが、反射光では確認されなかった
△:透過・反射光、どちらを観察しても数本のキズが確認された
×:透過・反射光、どちらを観察しても十本以上のキズが確認された
(5)製造安定性
1.コーティング安定性
実施例或いは比較例によって得られた反射防止基板を目視で評価し、液ハジキや白化等外観に変化が見られないものを合格品とした。10枚製造し、合格品の数でコーティング安定性の指標とした。
2.伸び安定性
実施例或いは比較例によって得られた反射防止基板に軟化温度(140℃)で30秒間熱を加えて、R付90°曲げ治具(R値:2)で曲げクラックの有無を観察した。
外観を観察し、反射防止層にクラックが生じているものを不合格品とした。10枚製造し、合格品の数で伸び安定性の指標とした。
実施例1
樹脂基材として、ポリカーボネート樹脂基材(80mm×50mm×0.3mm)を用い、この表面に、下記処方の下地層用コーティング組成物をディップコート法により塗布し、その後、60℃で5分加熱した後高圧水銀ランプでもって紫外線を1分照射した。この結果、樹脂基材表面に80nmの下地層が形成された。
[下地層用コーティング組成物]:
(A1):A1-6 5.2g
光重合開始剤:APPI 0.1g
有機溶媒:IPA 203.8g/SBAC 50.9g
次いで、上記下地層表面に、下記処方のハードコート層用コーティング組成物をディップコート法により塗布し、その後、60℃で5分加熱した後高圧水銀ランプでもって紫外線を1分間照射した。この結果、下地層表面に1.5μmのハードコート層が形成された。
[ハードコート層用コーティング組成物]:括弧内に、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A3+A2)100質量部当りの組成比を示した。
(A3):A1-6 5.5g
(A2):A2-2 31.0g
(C):球状シリカ粒子(C-1) 16.8g(46)
分散溶媒:IPA 67.2g
(D):γ-GPS 3.4g(9.3)
(E):AlAA 0.3g(0.8)
光重合開始剤:APPI 2.8g
加水分解触媒:HCl 0.8g
紫外線吸収剤:UV1 2.7g
有機溶媒:IPA62.8g/MIBK 86.7g
次いで、上記ハードコート層表面に、下記処方の中屈折率層用コーティング組成物をディップコート法で塗布し、その後、80℃で20分加熱した。この結果、ハードコート層表面に、屈折率が1.69で、厚みが75nmの中屈折率層が形成された。
[中屈折率層用コーティング組成物]:括弧内に、有機・無機複合化合物(B)100質量部当りの組成比を示した。
(B):ASE 3.1g(100)
分散溶媒:DGLM 3.0g
(F):ZrO(60) 4.8g(154.8)
分散溶媒:PGM 4.3g
(D):γ-GPS 1.9g(61.3)
(E):AlAA 0.1g(3.2)
加水分解触媒:HCl 1.2g
有機溶媒:IPA100.3g/SBAC 151.3g
次いで、上記中屈折率層表面に、下記処方の高屈折率層用コーティング組成物をディップコート法で塗布し、その後、80℃で20分加熱した。この結果、中屈折率層表面に、屈折率が1.80で、厚みが70nmの高屈折率層が形成された。
[高屈折率層用コーティング組成物]:括弧内に、有機・無機複合化合物(B)100質量部当りの組成比を示した。
(B):ASE 0.5g(100)
分散溶媒:DGLM 0.5g
(F):ZrO(20) 6.5g(1300)
分散溶媒:BuOH/EtOH 36.5g
(D):γ-GPS 1.4g(280)
(E):AlAA 0.1g(20)
加水分解触媒:HCl 0.3g
有機溶媒:エタコール112.1g/SBAC 112.1g
次いで、上記高屈折率層表面に、下記処方の低屈折率層用コーティング組成物をディップコート法で塗布し、その後、80℃で20分加熱した。この結果、高屈折率層表面に、屈折率が1.28で、厚みが85nmの低屈折率層が形成された。
[低屈折率層用コーティング組成物]:括弧内に、有機・無機複合化合物(B)100質量部当りの組成比を示した。
(B):ASE 1.3g(100)
分散溶媒:DGLM 1.2g
(C):中空シリカ粒子(C-2) 2.6g(200)
分散溶媒:IPA 10.4g
(D):γ-GPS 1.6g(123.1)
(E):AlAA 0.1g(7.7)
加水分解触媒:HCl 0.4g
有機溶媒:IPA121.2g/MIBK 121.2g
次いで、上記低屈折率層表面に、下記処方のカバー層用コーティング組成物をディップコート法で塗布し、その後、80℃で20分加熱した。この結果、低屈折率層表面に屈折率が1.48で、厚みが15nmのカバー層が形成され、本発明の反射防止基板が作製された。
[カバー層用コーティング組成物]:括弧内に、有機・無機複合化合物(B)100質量部当りの組成比を示した。
(B):ASE 1.4g(100)
分散溶媒:DGLM 1.3g
(D):γ-GPS 0.7g(52.1)
(E):AlAA 0.1g(8.6)
加水分解触媒:HCl 0.5g
有機溶媒:IPA128.0g/SBAC 128.0g
得られた反射防止基板について、前記試験方法に従って、全光線透過率、反射率、伸び率、耐摩耗性、および製造安定性(コーティング安定性、伸び安定性)を測定し評価した。結果を表9に示した。なお、表1、2に各層の形成に使用したコーティング組成物の成分と配合量、膜厚、屈折率をまとめて示した。
実施例2~14
表1~表6に示す組成の各コーティング組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止基板を作製した。また、前記試験方法に従って、全光線透過率、反射率、伸び率、耐摩耗性、および製造安定性を測定・評価し、結果を表9に示した。
Figure 0007389765000001
Figure 0007389765000002
Figure 0007389765000003
Figure 0007389765000004
Figure 0007389765000005
Figure 0007389765000006
比較例1~5
表7、表8に示す配合組成の各コーティング組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止基板を作製した。また、前記試験方法に従って、全光線透過率、反射率、伸び率、耐摩耗性、および製造安定性を測定・評価し、結果を表9に示した。
Figure 0007389765000007
Figure 0007389765000008
Figure 0007389765000009
比較例1は、反射防止層の全層並びにカバー層に、本発明の特徴である有機・無機複合化合物(B)を含まない例であり、全光線透過率、反射率、伸び率及び耐摩耗性は、本発明の反射防止基板と同等であったが、コーティング安定性及び伸び安定性が共に極めて悪かった。耐摩耗性は優れていた。
比較例2は、カバー層に、本発明の特徴である有機・無機複合化合物(B)を含まない例であり、全光線透過率、反射率、伸び率及び耐摩耗性は、本発明の反射防止基板と同等であったが、コーティング安定性及び伸び安定性が共に十分でなかった。耐摩耗性は優れていた。
比較例3は、低屈折率層に、本発明の特徴である有機・無機複合化合物(B)を含まない例であり、全光線透過率、反射率、伸び率及び耐摩耗性は、本発明の反射防止基板と同等であったが、コーティング安定性が十分でなく、特に伸び安定性が悪かった。耐摩耗性は優れていた。
比較例4は、高屈折率層に、本発明の特徴である有機・無機複合化合物(B)を含まない例であり、全光線透過率、反射率、伸び率及び耐摩耗性は、本発明の反射防止基板と同等であったが、コーティング安定性が十分でなく、特に伸び安定性が悪かった。耐摩耗性は優れていた。
比較例5は、中屈折率層に、本発明の特徴である有機・無機複合化合物(B)を含まない例であり、全光線透過率、反射率、伸び率及び耐摩耗性は、本発明の反射防止基板と同等であったが、コーティング安定性が十分でなく、特に伸び安定性が悪かった。耐摩耗性は優れていた。
各比較例から、本発明の特徴である有機・無機複合化合物(B)を、反射防止層の全層並びにカバー層に使用しない場合は、コーティング安定性及び伸び安定性が共に十分でなく、安定して高機能の反射防止基板を製造できないことが分かる。

Claims (5)

  1. 樹脂基材と、該基材上に下地層、ハードコート層、反射防止層、およびカバー層をこの順に有する反射防止基板であって、
    前記下地層は、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A1)の硬化物からなり厚みが20~150nmであり
    前記ハードコート層は、3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)を60質量%以上含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の硬化物を含み厚みが1~5μmであり
    前記反射防止層は、ハードコート層側から、屈折率が1.50~1.75で厚みが50~200nmの中屈折率層 、屈折率が1.60~2.00で厚みが50~200nmの高屈折率層、および屈折率が1.25~1.40で厚みが50~200nmの低屈折率層をこの順に備え、高屈折率層の屈折率は中屈折率層の屈折率より大きく、且つ、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層は、いずれも有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含み、前記カバー層は、有機・無機複合化合物(B)の硬化物を含み、
    当該有機・無機複合化合物(B)がアルコキシランで変性された樹脂化合物であることを特徴とする前記反射防止基板。
  2. 前記ハードコート層が、3官能以下のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)を60質量%以上含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、球状シリカ粒子(C-1)30~80質量部、シランカップリング剤(D)5~15質量部および金属キレート化合物(E)0.1~1.5質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
    前記中屈折率層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、金属酸化物粒子(F)50~170質量部、シランカップリング剤(D)50~100質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
    前記高屈折率層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、金属酸化物粒子(F)500~1500質量部、シランカップリング剤(D)100~300質量部および金属キレート化合物(E)10~30質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
    前記低屈折率層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、中空シリカ粒子(C-2)100~300質量部、シランカップリング剤(D)20~150質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
    前記カバー層が、有機・無機複合化合物(B)100質量部に対して、シランカップリング剤(D)10~80質量部および金属キレート化合物(E)1~10質量部を含有する組成物の硬化物からなり、
    反射防止基板の伸び率が、120~160%であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止基板。
  3. 前記カバー層の厚みが10~20nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止基板。
  4. 前記有機・無機複合化合物(B)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール樹脂或いはポリアミック酸の何れかに、アルコキシシリル基が結合した構造の複合化合物であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の反射防止基板。
  5. 請求項1~4の何れか一項に記載の反射防止基板からなるフィルムインサート成形用反射防止フィルム。
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