JP7389696B2 - 床版の接続構造及び接続方法 - Google Patents
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Description
上述した継手は、隣り合う各床版の端部側にそれぞれ埋め込まれて設置された受部材と、互いに隣り合う各床版の各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合するボルトとを備え、受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、床版のコンクリートに定着される定着部とを備え、繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入されて各受部材とボルトで結合される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備えた構成である。
即ち、床版の接続構造は、端面同士が目地となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された各床版同士を継手を用いて接続し、目地となる隙間にモルタルやコンクリート等の目地材を充填した構造である。
上述した床版の接続構造においては、目地材が充填された目地部分は、一般的な鉄筋コンクリート構造と同じく平面保持(平面を形成していた任意位置の切断面は変形後も平面を保持する)の仮定が成立し、曲げに対して中立軸からの距離に比例してひずみ(応力)が発生する。
また、床版同士が互いに近づいた場合、床版に引張応力が加わるため、床版にひび割れが生じる可能性がある。また、床版同士が互いに近づいた場合、継手に加わるひずみ(応力)が大きくなり、これにより、継手の各受部材で挟まれた目地部分のひずみ(応力)も大きくなって、目地部分にひび割れが生じる可能性が高くなる。このように、床版や目地部分にひび割れが生じた場合、ひび割れ部分から雨水や塩化物が侵入して、鉄筋腐食・コンクリートの剥離等の塩害や凍結が生じ、耐久性が劣化してしまう。
本発明は、継手を用いて床版同士を堅固に一体化できるとともに、床版、継手、目地部分に加わる応力を低減できて、床版及び目地部分のひび割れの発生を抑制できるようにした床版の接続構造等を提供する。
また、繋ぎ部材に設けられた一方の挿入部に形成された傾斜面と一方の受部材の凹部の対向壁の内壁面を形成する傾斜面とが接触したとともに、繋ぎ部材に設けられた他方の挿入部と他方の受部材の凹部の対向壁の内壁面との間に形成された楔部材嵌入空間に楔部材が嵌入されたことを特徴とする。
また、繋ぎ部材に設けられた一方の挿入部と一方の受部材の凹部の対向壁の内壁面との間に形成された楔部材嵌入空間に楔部材が嵌入されたとともに、繋ぎ部材に設けられた他方の挿入部と他方の受部材の凹部の対向壁の内壁面との間に形成された楔部材嵌入空間に楔部材が嵌入されたことを特徴とする。
また、互いに対向する受部材と受部材との間に設置されたスペーサは、スペーサの上下の中央位置が、受部材の上下の中央位置、又は、当該受部材の上下の中央位置の近傍に位置されるように設置されたか、あるいは、スペーサの上下の中央位置が、定着部の上下の中央位置、又は、当該定着部の上下の中央位置の近傍に位置されるように設置されたことを特徴とする。
また、繋ぎ部材は、一方の挿入部と、他方の挿入部と、一方の挿入部の左右間の中央部と他方の挿入部の左右間の中央部と連結する平板により形成された連結部とを備えて、かつ、上から見てH形の上面と下から見てH形の下面とが互いに平行に対向する平面に形成された構成であり、互いに対向する各受部材の各対向壁は、繋ぎ部材の連結部を上方から挿入するための溝の両側に位置された一方側対向壁と他方側対向壁とを備え、スペーサは、互いに対向する各受部材の各一方側対向壁間に設けられたとともに、互いに対向する各受部材の各他方側対向壁間に設けられたことを特徴とする。
また、スペーサは、互いに対向する各受部材のうちの一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサと、先行スペーサと他方の受部材との間に嵌入された後行スペーサとで構成されたことを特徴とする。
また、一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサは、他方の受部材と対向する面が、上方に向かうほど当該他方の受部材との間隔が大きくなるような傾斜面に形成され、後行スペーサは、先行スペーサの傾斜面と接触する傾斜面及び他方の受部材と接触する面を有するように構成されたことを特徴とする。
また、先行スペーサは、傾斜面から内部まで到達するねじ螺着孔を備えた構成とされ、後行スペーサは、上面から傾斜面まで到達するねじ貫通孔を備えた構成とされて、当該ねじ貫通孔は、傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さが、先行スペーサに形成されたねじ螺着孔の傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さよりも長い長孔に形成され、互いに対向する各受部材のうちの一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサのねじ貫通孔と先行スペーサの傾斜面と対向壁との間に設置された後行スペーサのねじ螺着孔とが連続するように先行スペーサの傾斜面と後行スペーサの傾斜面とが接触した状態で、ねじがねじ貫通孔を通過してねじ螺着孔に締結されたことにより、先行スペーサと後行スペーサとが連結されたことを特徴とする。
以上の構成によれば、継手を用いて床版同士を堅固に一体化できるとともに、床版、継手、目地部分に加わる応力を低減できて、床版及び目地部分のひび割れの発生を抑制できる。
また、スペーサは、互いに対向する各受部材のうちの一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサと、先行スペーサと他方の受部材との間に嵌入された後行スペーサとで構成されたことを特徴とするので、目地の幅寸法が、コンクリート部材の製作精度や設置誤差などにより、一定にはならない場合であっても、目地の幅寸法の増減に対応可能となる。
また、本発明に係る床版の接続方法は、端面同士が目地となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された橋梁用のコンクリートプレキャスト製の床版同士を接続する床版の接続方法であって、目地となる隙間に目地材を充填する前に、スペーサを目地となる隙間に嵌入状態に設置するステップと、互いに隣り合うように配置された各床版同士を継手により接続するステップと、目地となる隙間に目地材を充填するステップとを備え、継手は、隣り合う各床版の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合する結合手段と、を備え、受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、床版のコンクリートに定着される定着部とを備え、繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入されて各受部材と接合される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、スペーサを目地となる隙間に設置するステップでは、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが楔部材により結合される際に、各床版同士を互いに引き寄せる方向に働く力に釣り合う逆向きの力を各受部材の対向壁の外面に付与する反力装置として機能するように、互いに隣り合うように配置された各床版の端面間の目地となる隙間部分において互いに隣り合う各受部材の凹部の互いに対向する対向壁間にスペーサを設置したことを特徴とするので、継手を用いて床版同士を堅固に一体化できるとともに、床版、継手、目地部分に加わる応力を低減できて、床版及び目地部分のひび割れの発生を抑制できる。
また、スペーサを目地となる隙間に設置するステップは、互いに対向する各受部材のうちの一方の受部材の対向壁の外面と接触した状態に先行スペーサを設置するステップと、先行スペーサと他方の受部材の対向壁の外面との間に上方から後行スペーサを嵌入するステップと、を備えたことを特徴とするので、継手を用いて床版同士を堅固に一体化できるとともに、床版、継手、目地部分に加わる応力を低減できて、床版部材及び目地部分のひび割れの発生を抑制できる。
実施形態1に係るコンクリート部材としての床版の接続構造は、図1に示すように、端面11s,11s同士が目地15となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された各床版10,10と、目地15となる隙間に設置されたスペーサ5と、互いに隣り合うように配置された各床版10,10同士を接続する継手1と、目地15となる隙間に充填されたコンクリートやモルタル等の目地材16とを備え、スペーサ5として、ヤング係数が目地材16よりも大きい固形物である例えば鋼材により形成されたスペーサを用いた構造である。
他方の受部材2Bは、繋ぎ部材3に設けられた他方の挿入部31Bが挿入される凹部21Bが形成された受部22Bと、床版10のコンクリートに定着される定着筋等の定着部23とを備える。
受部材2A,2Bは、水平面に設置された場合に、当該水平面と面接触する平行な面(平坦面)に形成された下面2u(図4(a)参照)を備える。
繋ぎ部材3は、一方の受部材2Aの凹部21Aに挿入される一方の挿入部31Aと、他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入される他方の挿入部31Bと、挿入部31Aと挿入部31Bとを繋ぐ連結部32とを備える。連結部32は、一方の挿入部31Aの左右間の中央部と他方の挿入部31Bの左右間の中央部と連結する平板により形成される。当該連結部32は、後述の連結部挿入溝60の溝幅よりも若干狭い寸法の板厚の平板により形成される。
繋ぎ部材3は、水平面に設置された場合に、当該水平面と面接触する平行な面(平坦面)に形成された下面3u(図4(a)参照)を備える。
そして、一方の受部22Aの凹部21Aの対向壁28と一方の挿入部31Aの係合面(内面31a)とを係合させた状態で、他方の受部22Bの凹部21Bの対向壁28と他方の挿入部31Bの内面31bとの間に楔部材4が嵌入されて、互いに隣り合う各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とが結合されることにより、互いに隣り合う床版10,10が連結されることになる(図4(c)参照)。
底版25は、対向壁28が立ち上がる側の端縁以外の端縁が円形縁や多角形縁等に形成された形状であってもよい。即ち、凹部21A,21Bは、底版25の円形縁側や多角形縁側等から立ち上がるような左右の側壁27,27と妻壁26とが一体となった湾曲壁や多角形壁等と対向壁28とで囲まれるように形成された構成であってもよい。
尚、受部材2A,2Bは、下面2uが床版10の平坦な板面である下面10u(図4(a)参照)と平行になるように床版10の端部11側に設置され、従って、下面10uが水平面と接触するように床版10を設置した場合、受部材2A,2Bの下面2uが水平面となる。従って、以下、複数の主桁上に架け渡された床版10の下面10uと直交する方向を上下と定義するとともに、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10の端面11s,11s(図1参照)に沿った水平方向(橋軸直角方向(橋幅方向)Y)を左右と定義して説明する。
また、左右の側壁27,27の外面には、せん断抵抗を大きくするとともに床版10のコンクリートとの付着力を大きくするために、凹凸部61が形成されている。
また、例えば、凹部21Bの底板25の内底面25aは下面2uと平行な平面に形成されており、妻壁26の内壁面、側壁27,27の内壁面、及び、対向壁28の内壁面28bは、底板25の内底面25aに対して垂直面に形成されている(図4(a)参照)。
即ち、開口29及び連結部挿入溝60が外部に露出して他の部分が床版10のコンクリートに埋設されるように受部材2A又は受部材2Bを図外の型枠に取付けた後に当該型枠内にコンクリートを流し込んでコンクリートを硬化させた後、受部材2A又は受部材2Bを型枠から取り外して脱型することにより、端部11側に受部材2A又は受部材2Bが埋め込まれて固定された橋梁用コンクリートプレキャスト製の床版10が形成される。
そして、図4(a)に示すように、一方の挿入部31Aの内面31aは、上面3tから下面3uに向けて傾斜する傾斜面に形成される。この傾斜面は、下面3uに近付くほど、挿入部31Aの外面3fに近付くように傾斜する傾斜面に形成されており、この傾斜面と凹部21Aの対向壁28の内壁面28aを形成する傾斜面とが互いに面接触する係合面として機能する傾斜面に形成されている。
また、凹部21Bの対向壁28の内壁面28bと対向する対向面として機能する他方の挿入部31Bの内面31bは、上面3tから下面3uに向けて傾斜する傾斜面に形成される。この傾斜面は、下面3uに近付くほど、挿入部31Bの外面3fから離れるように傾斜する傾斜面に形成されており、この傾斜面と、この傾斜面と間隔を隔てて対向する凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとが、楔部材4と面接触する楔部材嵌入面として機能する。即ち、図4(b)に示すように、他方の挿入部31Bの内面31bと凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとの間で楔部材嵌入空間4uが形成される。当該楔部材嵌入空間4uは、凹部21Bの開口29側から底板25に近付くほど間隔が狭くなるような空間により形成される。即ち、当該楔部材嵌入空間4uは、垂直縦断面が逆台形形状(断面ほぼ逆三角形状)の空間に形成される。
また、図2,図3に示すように、楔部材4は、繋ぎ部材3の挿入部31Bにおいて連結部32を挟んで隣り合う左右一対の内面31b,31bにそれぞれ対応するように設けられる。
尚、受部材2A,2Bの対向壁28は、繋ぎ部材3の連結部32を上方から挿入するための連結部挿入溝60の両側に位置された一方側対向壁と他方側対向壁とを備える。即ち、図14に示すように、連結部挿入溝60の左側に位置される一方側対向壁としての左側対向壁28Lと、当該連結部挿入溝60の右側に位置される他方側対向壁としての右側対向壁28Rとを備える。
そして、図14に示すように、スペーサ5は、互いに対向する各受部材2A,2Bの各左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間に設置されるとともに、互いに対向する各受部材2A,2Bの各右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間に設置される。
尚、図14では、後述する先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとで構成されたスペーサ5を図示しているが、当該実施形態1では、図2に示すような、直方体形状に形成されたスペーサ5が設置される。
即ち、スペーサ5は、受部材2Aの連結部挿入溝60を挟んで隣り合う左右一対の対向壁28L,28Rと、受部材2Bの連結部挿入溝60を挟んで隣り合う左右一対の対向壁28L,28Rとの間において、互いに対向する左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間と、互いに対向する右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間とに、それぞれ配置される(図14参照)。
図4(a)に示すように、まず、一方の床版10の端部11側に埋設された受部材2Aの対向壁28と他方の床版10の端部11側に埋設された受部材2Bの対向壁28とが橋軸方向Xに沿って隣り合うように、当該一方の床版10と他方の床版10とを設置する。
次に、図4(a),図3に示すように、隣り合う各床版10,10の端部側にそれぞれ設置された互いに対向する受部材2Aと受部材2Bとの間において、各受部材2A,2Bの互いに対向する対向壁28,28間にスペーサ5を設置する。即ち、上述したように、互いに対向する左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間と、互いに対向する右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間とに、それぞれ、スペーサ5を設置する(図14参照)。
当該スペーサ5の設置は、例えば、対向壁28,28と対向するスペーサ5の板面5fに接着剤等の接着手段を付けた後に、対向壁28,28間に挿入してスペーサ5の板面5fと対向壁28,28とを接着することで対向壁28,28間にスペーサ5を設置したり、あるいは、予め一方の対向壁28にスペーサ5を接着しておいてから、端面11s,11s同士が目地15となる隙間を介して互いに隣り合うように各床版10,10を配置することで、対向壁28,28間にスペーサ5を設置するようにすればよい。
また、対向壁28の下側にスペーサ5を載せるための台となる部材を取付けておいて当該台上にスペーサ5を載せることによりスペーサ5を対向壁28,28間に設置したり、対向壁28,28間の下方に、コンクリートやモルタル,シーリング材等の充填材を充填して台を作製しておいて当該台上にスペーサ5を載せることによりスペーサ5を対向壁28,28間に設置するようにしてもよい。
そして、図4(c),図3に示すように、楔部材4を楔部材嵌入空間4uに嵌入する。即ち、楔部材4の傾斜面4aの全面が他方の挿入部31Bの内面31bに接触した状態で当該内面31bを摺動しながら当該内面31bを押圧するとともに、楔部材4の面(垂直面)4bの全面が凹部21Bの対向壁28の内壁面28bに接触した状態で当該内壁面28bを摺動しながら当該内壁面28bを押圧することによる、楔部材4の圧入動作によって、楔部材4の傾斜面4aの全面と他方の挿入部31Bの内面31bとが密着するとともに、楔部材4の面(垂直面)4bの全面と凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとが密着し、これにより、他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されるとともに、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが互いに密着して固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
また、繋ぎ部材3の挿入部31Bにおいて連結部32を挟んで左右に隣り合う一対の内面31b,31bにそれぞれ対応するように楔部材4,4が圧入されるので、各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる。
しかしながら、実施形態1では、目地部分を挟んで対向する各受部材2A,2Bの対向壁28,28間に設置されたスペーサ5が反力装置として機能することによって、床版10,10同士を引き寄せる方向に働く引き寄せ力を抑制でき、床版10,10同士が過剰に近付こうとすることが防止される。
さらに、各床版10,10同士を互いに引き寄せる方向に働く力に応じた逆向きの力(反力)がスペーサ5から受部材2A,2Bの対向壁28,28の外面(外壁面62,62、及び、外壁面63,63)に付与されることによって、繋ぎ部材3の挿入部31Bの内面31b及び受部材2Bの対向壁28の内壁面28bと楔部材4との接触面同士が密着状態に維持され、かつ、挿入部31Aの内面31aと受部材2Aの対向壁28の内壁面28aとの接触面同士が密着状態に維持されるので、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
尚、継手1、目地部分の上縁側、下縁側に生じる応力及びひずみは、以下の構造計算式により求めることができる。
実施形態1の接続構造部分に加わる所定の曲げモーメントに対して、圧縮側となる継手1に生じる応力及びひずみは、以下の数式2により求まる。
実施形態1の接続構造部分に加わる所定の曲げモーメントに対して、引張側となる継手1に生じる応力及びひずみは、以下の数式3により求まる。
実施形態1の接続構造部分に加わる所定の曲げモーメントに対して、目地部分の下縁側に生じる応力及びひずみは、以下の数式4により求まる。
目地15となる隙間にスペーサ5を設置しない従来の接続構造部分に加わる所定の曲げモーメントに対して、圧縮側となる継手1に生じる応力及びひずみは、以下の数式6により求まる。
目地15となる隙間にスペーサ5を設置しない従来の接続構造部分に加わる所定の曲げモーメントに対して、引張側となる継手1に生じる応力及びひずみは、以下の数式7により求まる。
目地15となる隙間にスペーサ5を設置しない従来の接続構造部分に加わる所定の曲げモーメントに対して、目地部分の下縁側に生じる応力及びひずみは、以下の数式8により求まる。
また、スペーサ5と接触する受部材2A,2Bは、スペーサ5と同様な挙動を示し、ひずみが抑制される。このため、受部材2A,2B間の目地材16のひずみも抑制されることになる。
以上により、継手1のひずみ、目地部分の上縁側及び下縁側のひずみが、スペーサを配置しない従来の接続構造と比べて低減する。
また、目地部分の上縁側、下縁側、及び、継手1に生じる応力が低減することから、目地部分のひび割れを抑制できる。
このように、床版10及び目地部分のひび割れを抑制できるので、ひび割れ部分から雨水や塩化物が侵入することによる鉄筋腐食・コンクリートの剥離等の塩害や凍結を防止でき、床版10及び目地部分の耐久性が向上する。
即ち、実施形態1の接続構造によれば、スペーサ5を用いたことによって、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能が効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となるため、継手1を用いて床版10,10同士を堅固に一体化できるとともに、床版10、継手1、目地部分に加わる応力を低減できて、床版10及び目地部分のひび割れの発生を抑制できるようになる。
また、互いに対向する各受部材2A,2Bの各左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間、及び、互いに対向する各受部材2A,2Bの各右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間に、それぞれスペーサ5が設けられたことにより、受部材2A,2Bの左側対向壁28Lと側壁27との境界部66(図14参照)近傍、及び、受部材2A,2Bの右側対向壁28Rと側壁27との境界部66近傍の応力が低減され、当該境界部66近傍の疲労破壊を抑制できるという効果も得られる。
接続構造部に、中立軸Cよりも上方が圧縮領域となるような曲げモーメントM1が加わって正曲げの状態となる場合、図7に示すように、中立軸Cの位置よりも上方にスペーサ5を配置する。
接続構造部に、中立軸Cよりも下方が圧縮領域となるような曲げモーメントM2が加わって負曲げの状態となる場合、図8に示すように、中立軸Cの位置よりも上方にスペーサ5を配置する。
接続構造部に、中立軸Cよりも上方が圧縮領域となるような曲げモーメントM1及び中立軸Cよりも下方が圧縮領域となるような曲げモーメントM2が加わって正曲げ、負曲げの両方の状態となる場合、図9に示すように、中立軸Cの位置の上方及び下方の両方にスペーサ5,5を配置する。
目地15の幅寸法は、床版10の製作精度や床版10の設置誤差などにより、一定にはならない場合がある。
このような場合には、図10に示すように、先行設置用の先行スペーサ5Aと後行設置用の後行スペーサ5Bとで構成された半割構成のスペーサ5を用いればよい。
即ち、実施形態3のスペーサ5は、互いに対向する各受部材2A,2Bのうちの一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサ5Aと、先行スペーサ5Aと他方の受部材との間に嵌入された楔部材として機能する後行スペーサ5Bとで構成される。
この場合、図14に示すように、一方の床版10に設けられた一方の受部材(例えば受部材2Aの受部22A)の対向壁28(左側対向壁28Lの外壁面62、及び、右側対向壁28Rの外壁面63)に先行スペーサ5Aを取付け、他方の床版10を設置した後に、他方の床版10に設けられた他方の受部材(例えば受部材2Bの受部22B)の対向壁28(左側対向壁28Lの外壁面62、及び、右側対向壁28Rの外壁面63)と先行スペーサ5Aとの間に後行スペーサ5Aを楔のように嵌め込むことで、目地15の幅寸法、即ち、互いに隣り合う各受部材2A,2Bの互いに対向する対向壁28,28間の寸法の増減に対応可能となる。
先行スペーサ5Aの傾斜面5bは、先行スペーサ5Aが目地15となる隙間に設置された状態において、下端縁から上端縁に向けて次第に面5aに近づく傾斜面に形成される。
後行スペーサ5Bの傾斜面5bは、後行スペーサ5Bが目地15となる隙間に設置された状態において、下端縁から上端縁に向けて次第に面5aから遠ざかる傾斜面に形成される。
そして、先行スペーサ5Aは、台形の下底を含む下面が下方に位置するように、目地15となる隙間に設置される。
また、先行スペーサ5Aは、台形の上底を含む上面が下方に位置するように、目地15となる隙間に設置される。
まず、図12(a)に示すように、橋軸方向Xに沿って隣り合うように設置する各床版10,10のうちの一方の床版10の例えば受部材2Aに予め先行スペーサ5Aを設置しておく。
当該先行スペーサ5Aの設置は、例えば、図14に示す、受部材2Aの左側対向壁28Lの外壁面62及び右側対向壁28Rの外壁面63、又は、当該外壁面62,63と対向する先行スペーサ5Aの面5aの少なくとも一方に接着剤等の接着手段を付けた後に、図12(a),図14に示すように、先行スペーサ5Aの面5aと対向壁28の外壁面62や外壁面63とを接着することで、当該外壁面62及び当該外壁面63にそれぞれ先行スペーサ5Aを取付けて置く。
即ち、一方の受部材2Aの左側対向壁28Lの外壁面62及び右側対向壁28Rの外壁面63と接触した状態に設置された先行スペーサ5A,5Aは、他方の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62及び右側対向壁28Rの外壁面63と対向する面が、上方に向かうほど当該他方の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62及び右側対向壁28Rの外壁面63との間隔が大きくなるような傾斜面5b,5bに形成される(12(a),図14参照)。
そして、図12(a)に示すように、先行スペーサ5Aが取り付けられた一方の床版10を桁上に設置するとともに、他方の床版10の受部材2Bの対向壁28と一方の床版10の受部材2Aの対向壁28とが目地幅を介して対向するように、他方の床版10を桁上に設置する。
そして、図12(b),図12(c),図14に示すように、他方の床版10の受部材2Bの対向壁28における左側対向壁28Lの外壁面62と先行スペーサ5Aの傾斜面5bとの間で形成された設置空間、及び、他方の床版10の受部材2Bの対向壁28における右側対向壁28Rと先行スペーサ5Aの傾斜面5bとの間で形成された設置空間に、それぞれ、後行スペーサ5Bを嵌入する。
即ち、一つの後行スペーサ5Bの面5aと他方の床版10の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62とを接触させるとともに、後行スペーサ5Bの傾斜面5bと先行スペーサ5Aの傾斜面5bとを接触させながら、当該一つの後行スペーサ5Bを下方に押し込んで、一つの後行スペーサ5Bを設置空間に嵌入させる。
同様に、もう一つの後行スペーサ5Bの面5aと他方の床版10の受部材2Bの右側対向壁28Rの外壁面63とを接触させるとともに、当該後行スペーサ5Bの傾斜面5bと先行スペーサ5Aの傾斜面5bとを接触させながら、当該後行スペーサ5Bを下方に押し込んで、当該後行スペーサ5Bを設置空間に嵌入させる。
即ち、後行スペーサ5B,5Bは、先行スペーサ5A,5Aの傾斜面5b,5bと接触する傾斜面5b,5b及び他方の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62及び右側対向壁28Rの外壁面63と接触する面5a,5aを有するように構成されている(12(c),図14参照)。
以上により、互いに対向する左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間と、互いに対向する右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間とに、それぞれ、スペーサ5が設置される(図12(c),図14参照)。
そして、図13(b),図13(c)に示すように、楔部材4を楔部材嵌入空間4uに嵌入する。即ち、楔部材4の傾斜面4aの全面が他方の挿入部31Bの内面31bに接触した状態で当該内面31bを摺動しながら当該内面31bを押圧するとともに、楔部材4の面(垂直面)4bの全面が凹部21Bの対向壁28の内壁面28bに接触した状態で当該内壁面28bを摺動しながら当該内壁面28bを押圧することによる、楔部材4の圧入動作によって、楔部材4の傾斜面4aの全面と他方の挿入部31Bの内面31bとが密着するとともに、楔部材4の面(垂直面)4bの全面と凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとが密着する。
以上により、他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されるとともに、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが互いに密着して固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
また、繋ぎ部材3の挿入部31Bにおいて連結部32を挟んで左右に隣り合う一対の内面31b,31bにそれぞれ対応するように楔部材4,4が圧入されるので、各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる(図14参照)。
即ち、実施形態3によれば、床版10の製作精度や床版10の設置誤差などにより、目地15の幅寸法が一定ない場合であっても、先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとで構成されたスペーサ5を用いたことによって、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能が効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となるため、継手1を用いて床版10,10同士を堅固に一体化できるとともに、床版10、継手1、目地部分に加わる応力を低減できて、床版10及び目地部分のひび割れの発生を抑制できるようになる。
さらに、互いに対向する各受部材2A,2Bの各左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間にスペーサ5が設けられたとともに、互いに対向する各受部材2A,2Bの各右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間にスペーサ5が設けられた構成としたので、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となるとともに、受部材2A,2Bの左側対向壁28Lと側壁27との境界部66近傍、及び、受部材2A,2Bの右側対向壁28Rと側壁27との境界部66近傍の疲労破壊抑制機能を効果的に発揮できるようになる。
実施形態1及び実施形態3において、スペーサ5の上下間の中央位置と対向壁28の上下間の中央位置とが一致、又は、ほぼ一致するように、スペーサ5を目地15に設置したり、あるいは、スペーサ5の上下間の中央位置と定着部23の上下間の中央位置とが一致、又は、ほぼ一致するように、スペーサ5を目地15に設置した。
即ち、互いに対向する受部材2Aと受部材2Bとの間に設置されたスペーサ5は、スペーサ5の上下の中央位置が、受部材2A,2Bの上下の中央位置、又は、当該受部材2A,2Bの上下の中央位置の近傍に位置されるように設置されたか、あるいは、スペーサ5の上下の中央位置が、定着部23の上下の中央位置、又は、当該定着部23の上下の中央位置の近傍に位置されるように設置された構成とした。
例えば、図12,図13に示すように、受部材2A,2Bの対向壁28,28の上下間の中央位置(即ち、対向壁28の上端28tと下端28uとの中間位置)と実施形態1のスペーサ5の上下間の中央位置とを通過する水平線が同一の水平線65となるように、スペーサ5が目地15に設置された構成とした。
また、図12,図13に示すように、受部材2A,2Bの対向壁28,28の上下間の中央位置(即ち、対向壁28の上端28tと下端28uとの中間位置)と実施形態3のスペーサ5の先行スペーサ5Aの上下間の中央位置とを通過する水平線が同一の水平線65となるように、スペーサ5が目地15に設置された構成とした。
実施形態4のように、実施形態1のスペーサ5や実施形態3のスペーサ5の先行スペーサ5Aの上下間の中央位置と対向壁28の上下間の中央位置とが一致、又は、ほぼ一致するように、実施形態1のスペーサ5や実施形態3のスペーサ5の先行スペーサ5Aが目地15に設置された構成とすれば、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
スペーサ5の上下間の中央位置と定着部23の上下間の中央位置とが一致、又は、ほぼ一致するように、スペーサ5を目地15に設置した場合には、上述したように、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となるとともに、互いに隣り合う床版10,10間の軸力伝達機能がより向上するという効果が得られる。
図15に示すように、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aを一方の受部材2Aの凹部21Aに挿入するとともに、繋ぎ部材3の他方の挿入部31Bを他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入して、一方の挿入部31Aの対向面となる内面31aと一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28の内壁面28aとの間に楔部材4を嵌入するための楔部材嵌入空間を形成するとともに、他方の挿入部31Bの対向面となる内面31bと他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28の内壁面28bとの間に楔部材4を嵌入するための楔部材嵌入空間を形成する構成として、各楔部材嵌入空間に、それぞれ楔部材4を嵌入することにより、互いに隣り合う床版10,10同士を連結した構成としてもよい。
この場合、一方の受部材2Aの対向壁28の内壁面28aは、他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28bと同様に、垂直面に形成された構成とするとともに、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aの内面31aは、他方の挿入部31Bの内面31bと同様の傾斜面、即ち、上面3tから下面3uに向けて、下面3uに近付くほど、挿入部31Aの外面3fから離れるように傾斜する傾斜面に形成された構成とする。
実施形態1乃至実施形態5では、楔部材4を用いて繋ぎ部材3と受部材2A,2Bとを結合する構成の継手1を例示したが、繋ぎ部材と各受部材とを例えば特許文献1に開示されたようなボルト等の結合手段で結合する構成の継手であってもよい。
当該継手の場合、例えば図16に示すように、各受部材2A,2Bの凹部21A,21Bに挿入される繋ぎ部材30の各挿入部30A,30Bは、当該挿入部30A,30Bを上下に貫通するボルト挿入孔36,36が形成された構成のものを用い、かつ、各受部材2A,2Bは、底版25,25の内底より突出するボス37,37が形成された構成のものを用いる。
また、各挿入部30A,30Bは、下面側にボス37,37が係合される係合凹部38,38を備えた構成のものを用いる。また、ボス37は、ボルト挿入孔36と連続して上下方向に貫通するボルト螺着孔39を備えた構成とする。
そして、一方の挿入部30Aの内面30aと一方の対向壁28の内面28aとが互いに面接触する一方傾斜面に形成されるとともに、他方の挿入部30Bの内面30bと他方の対向壁28の内面28bとが互いに面接触する他方傾斜面に形成され、一方傾斜面と他方傾斜面との間隔は、上端から下端に近付くにつれて漸次大きくなるように構成されている。
従って、繋ぎ部材30の各挿入部30A,30Bをそれぞれ対応する受部材2A,2Bの凹部21A,21Bに挿入して、一方の挿入部30Aの内面30aと一方の対向壁28の内面28aとを面接触させるとともに、係合凹部38に、他方の挿入部30Bの内面30aと他方の対向壁28の内面28bとを面接触させ、かつ、係合凹部38,38にボス37,37を係合させた状態とする。そして、各挿入部30A,30Bの各ボルト挿入孔36,36にそれぞれボルト35,35を挿入して、当該各ボルト35,35を受部材2A,2Bの各ボス37,37のボルト螺着孔39,39に締結することによって、繋ぎ部材30と各受部材2A,2Bとが結合される。当該継手の場合でも、ボルト35,35で繋ぎ部材30の各挿入部30A,30Bを各受部材2A,2Bに押込む際、繋ぎ部材30には水平方向の引張力が生じるので、互いに隣り合う各受部材2A,2Bの互いに対向する対向壁28,28間に上述したスペーサ5を設置することにより、実施形態1乃至実施形態5と同じ効果が得られるようになる。
スペーサ5として、鋳物で形成されたスペーサを用いることが好ましい。例えば、球状黒鉛鋳鉄にょり形成されたスペーサを用いた。
実施形態7によれば、鋳物で形成されたスペーサを用いたので、耐候性に優れ、腐食抵抗性に優れたスペーサとなり、耐候性に優れ、腐食抵抗性に優れた接合構造を維持できるようになる。
実施形態3のスペーサ5において、互いに接触する先行スペーサ5Aの傾斜面5b及び後行スペーサ5Bの傾斜面5bのうちの少なくとも一方の傾斜面が、目荒らしした面に形成された構成とすることで、先行スペーサ5Aの傾斜面5bと後行スペーサ5Bの傾斜面5bとの摩擦力が高くなることで、傾斜面5b,5b同士のずれを防止できるため、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されるようになり、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
上述した先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとで構成されるスペーサ5においては、後行スペーサ5Bを、先行スペーサ5Aの傾斜面5bと対向壁28との間に上方から押し込んで嵌入する構成としたが、当該構成の場合、嵌入された後行スペーサ5Bが上方に抜ける可能性がある。
そこで、図17乃至図19に示すような構成のスペーサ5とした。
即ち、先行スペーサ5Aは、傾斜面5bから内部まで到達するねじ螺着孔52を備えた構成とし、後行スペーサ5Bは、上面から傾斜面5bまで到達するねじ貫通孔51を備えた構成とした。当該ねじ貫通孔51は、傾斜面5bの傾斜方向に沿った方向の長さが、ねじ螺着孔52の傾斜面5bの傾斜方向に沿った方向の長さよりも長い長孔に形成した。
以上の構成のスペーサ5によれば、先行スペーサ5Aを設置した後に、後行スペーサ5Bが、先行スペーサ5Aの傾斜面5bと対向壁28との間に設置され、ねじ貫通孔51とねじ螺着孔52とが連続するように先行スペーサ5Aの傾斜面5bと後行スペーサ5Bの傾斜面5bとが接触した状態で、ねじ53がねじ貫通孔51を通過してねじ螺着孔52に締結されたことにより、先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとが連結される。
また、後行スペーサ5Bが、傾斜面5bの傾斜方向に沿って長い長孔に形成されたねじ貫通孔51を備えたので、例えば図19に示す先行スペーサ5Aの傾斜面5bと対向壁28の外壁面62,63との間の間隔が一定にならない場合でも、ねじ53をねじ螺着孔52に締め付けて行くことによって、後行スペーサ5Bが傾斜面5bに沿って下方に移動して、後行スペーサ5Bの傾斜面5bと先行スペーサ5Aの傾斜面5bとを密着させるとともに、後行スペーサ5Bの面5aと対向壁28の外壁面62,63とを密着させた状態にでき、その後、ねじ53を完全に締結することによって、後行スペーサ5Bを、先行スペーサ5Aの傾斜面5bと対向壁28との間に確実に嵌入できるようになり、この嵌入状態を維持できるようになる。
従って、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
また、スペーサは、ヤング係数が目地材よりも大きい固形物であることが好ましいが、ヤング係数が目地材と同じ固形物、又は、ヤング係数が目地材よりも若干小さい固形物であってもよい。
5 スペーサ、5A 先行スペーサ、5B 後行スペーサ、
10 床版(コンクリート部材)、11 床版の端部、
11s 床版の端面、15 目地、16 目地材、21A,21B 凹部、
23 定着部、31A,31B 挿入部、32 連結部。
Claims (10)
- 端面同士が目地となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された橋梁用のコンクリートプレキャスト製の床版同士を接続する床版の接続構造であって、
目地となる隙間に設置されたスペーサと、
互いに隣り合うように配置された各床版同士を接続する継手と、
目地となる隙間に充填された目地材とを備え、
継手は、隣り合う各床版の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合する楔部材と、を備え、
受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、床版のコンクリートに定着される定着部とを備え、
繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入されて各受部材と接合される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、
スペーサは、互いに隣り合うように配置された各床版の端面間の目地となる隙間部分において互いに隣り合う各受部材の凹部の互いに対向する対向壁間に挿入されて、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが楔部材により結合される際に、各床版同士を互いに引き寄せる方向に働く力に釣り合う逆向きの力を各受部材の対向壁の外面に付与する反力装置として機能することを特徴とする床版の接続構造。 - 繋ぎ部材に設けられた一方の挿入部に形成された傾斜面と一方の受部材の凹部の対向壁の内壁面を形成する傾斜面とが接触したとともに、
繋ぎ部材に設けられた他方の挿入部と他方の受部材の凹部の対向壁の内壁面との間に形成された楔部材嵌入空間に楔部材が嵌入されたことを特徴とする請求項1に記載の床版の接続構造。 - 繋ぎ部材に設けられた一方の挿入部と一方の受部材の凹部の対向壁の内壁面との間に形成された楔部材嵌入空間に楔部材が嵌入されたとともに、
繋ぎ部材に設けられた他方の挿入部と他方の受部材の凹部の対向壁の内壁面との間に形成された楔部材嵌入空間に楔部材が嵌入されたことを特徴とする請求項1に記載の床版の接続構造。 - 互いに対向する受部材と受部材との間に設置されたスペーサは、スペーサの上下の中央位置が、受部材の上下の中央位置、又は、当該受部材の上下の中央位置の近傍に位置されるように設置されたか、あるいは、スペーサの上下の中央位置が、定着部の上下の中央位置、又は、当該定着部の上下の中央位置の近傍に位置されるように設置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の床版の接続構造。
- 繋ぎ部材は、一方の挿入部と、他方の挿入部と、一方の挿入部の左右間の中央部と他方の挿入部の左右間の中央部と連結する平板により形成された連結部とを備えて、かつ、上から見てH形の上面と下から見てH形の下面とが互いに平行に対向する平面に形成された構成であり、
互いに対向する各受部材の各対向壁は、繋ぎ部材の連結部を上方から挿入するための溝の両側に位置された一方側対向壁と他方側対向壁とを備え、
スペーサは、互いに対向する各受部材の各一方側対向壁間に設けられたとともに、互いに対向する各受部材の各他方側対向壁間に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の床版の接続構造。 - スペーサは、互いに対向する各受部材のうちの一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサと、先行スペーサと他方の受部材との間に嵌入された後行スペーサとで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の床版の接続構造。
- 一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサは、他方の受部材と対向する面が、上方に向かうほど当該他方の受部材との間隔が大きくなるような傾斜面に形成され、後行スペーサは、先行スペーサの傾斜面と接触する傾斜面及び他方の受部材と接触する面を有するように構成されたことを特徴とする請求項6に記載の床版の接続構造。
- 先行スペーサは、傾斜面から内部まで到達するねじ螺着孔を備えた構成とされ、
後行スペーサは、上面から傾斜面まで到達するねじ貫通孔を備えた構成とされて、当該ねじ貫通孔は、傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さが、先行スペーサに形成されたねじ螺着孔の傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さよりも長い長孔に形成され、
互いに対向する各受部材のうちの一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサのねじ貫通孔と先行スペーサの傾斜面と対向壁との間に設置された後行スペーサのねじ螺着孔とが連続するように先行スペーサの傾斜面と後行スペーサの傾斜面とが接触した状態で、ねじがねじ貫通孔を通過してねじ螺着孔に締結されたことにより、先行スペーサと後行スペーサとが連結されたことを特徴とする請求項7に記載の床版の接続構造。 - 端面同士が目地となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された橋梁用のコンクリートプレキャスト製の床版同士を接続する床版の接続方法であって、
目地となる隙間に目地材を充填する前に、スペーサを目地となる隙間に嵌入状態に設置するステップと、
互いに隣り合うように配置された各床版同士を継手により接続するステップと、
目地となる隙間に目地材を充填するステップとを備え、
継手は、
隣り合う各床版の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合する結合手段と、を備え、
受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、床版のコンクリートに定着される定着部とを備え、
繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入されて各受部材と接合される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、
スペーサを目地となる隙間に設置するステップでは、
互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とが楔部材により結合される際に、各床版同士を互いに引き寄せる方向に働く力に釣り合う逆向きの力を各受部材の対向壁の外面に付与する反力装置として機能するように、互いに隣り合うように配置された各床版の端面間の目地となる隙間部分において互いに隣り合う各受部材の凹部の互いに対向する対向壁間にスペーサを設置したことを特徴とする床版の接続方法。 - スペーサを目地となる隙間に設置するステップは、
互いに対向する各受部材のうちの一方の受部材の対向壁の外面と接触した状態に先行スペーサを設置するステップと、
先行スペーサと他方の受部材の対向壁の外面との間に上方から後行スペーサを嵌入するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項9に記載の床版の接続方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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