JP7388679B2 - 熱中症マーカー及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、熱中症の発症に対して応答性を示す熱中症マーカー及びその利用に関する。
熱中症は、高温環境下における身体の適用障害であり、ヒトのみならず、牛、豚、馬など家畜を含む動物全般に発症しうる疾患である。一般に、暑熱曝露又は身体運動による体熱産生の増加を契機として高体温を伴った全身の諸症状を熱中症として定義することができる。これら障害には、従来、主に症状から分類され熱失神(heat syncope)、熱痙攣(heat cramps)、熱疲労(heat exhaustion)、熱射病(heat stroke)等が含まれ、これらをまとめて熱中症と定義することができる。
熱中症を早期に診断し、治療につなげることが熱中症の重症化を防ぎ、生命を守ることにつながる。そこで「日本救急医学会熱中症分類」では、熱中症を症状分類にとらわれることなく、症候群としてとらえたうえで3段階の重症度に応じて分類している(非特許文献1参照)。これによれば、熱中症の診断基準としては「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗等の症状を呈するI度、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感等の症状を呈するII度、中枢神経症、肝・腎機能障害、血液凝固異常などの臓器障害を呈するIII型に分類される。
このように、従来、熱中症或いはその重症度の診断は、上述した各種の所見と、上述した臓器障害の程度を点数化するなどで行っていた。また、クレアチンキナーゼやプロカルシトニンをはじめとして、各種血液検査結果を用いて熱中症重症度を評価することが検討されてきたが、十分なエビデンスは得られていなかった。これは、クレアチンキナーゼやプロカルシトニンの血中濃度に対しては、熱中症以外にも幾つかの変動要因があること、また測定誤差が大きいことが要因として考えられる。
熱中症診療ガイドライン2015、2015年3月31日、一般社団法人日本救急医学会 熱中症に関する委員会
上述のように、熱中症に対しては、重症化を防ぐために迅速且つ高精度な診断が求められていた。しかしながら、熱中症を特異的に診断できる分子マーカーは知られておらず、熱中症の迅速な診断ができないといった問題があった。
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、熱中症の発症に対して応答性を示す新規な熱中症マーカー、当該熱中症マーカーに基づいて熱中症を診断する際に利用できる熱中症検査キット、当該熱中症マーカーを利用した熱中症の診断方法、及び熱中症診断のためのデータ取得方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、本発明者が鋭意検討した結果、骨格筋から血中に分泌されるタンパク質(マイオカイン)の中に暑熱処理に応答して存在量が変化する一群のタンパク質があることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
[1]以下の(1)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1つである熱中症マーカー。
(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)
(2)CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)
(3)M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)
(4)CCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)
(5)IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist)
[2]被検動物由来の生体試料における、上記[1]記載の熱中症マーカーを検出する熱中症検査キット。
[3]上記[1]記載の熱中症マーカーと特異的に結合する分子を含む[2]記載の熱中症検査キット。
[4]上記分子は抗体又はアプタマーであることを特徴とする[3]記載の熱中症検査キット。
[5]上記[1]記載の熱中症マーカーと特異的に結合する分子を固定した担体を有するマイクロアレイを含む[2]記載の熱中症検査キット。
[6]上記分子は抗体又はアプタマーであることを特徴とする[5]記載の熱中症検査キット。
[7]被検動物由来の生体試料における、上記[1]記載の熱中症マーカーを測定することを含む、熱中症の診断方法又は熱中症診断のためのデータ取得方法。
[8]上記生体試料に含まれる上記熱中症マーカーの量を測定し、上記(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)についてはCCL5基準値を下回るか、上記(2)CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)についてはCXCL10基準値を下回るか、上記(3)M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)についてはM-CSF基準値を下回るか、上記(4)CCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)についてはCCL2/JE基準値を下回るか、上記(5)IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist)についてはIL-1ra基準値を上回る場合に、上記被検動物について熱中症又はその疑いと評価することを特徴とする[7]記載の熱中症の診断方法又は熱中症診断のためのデータ取得方法。
[9]上記熱中症マーカーとして上記(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)及び上記(2)CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)を測定することを特徴とする[7]記載の熱中症の診断方法又は熱中症診断のためのデータ取得方法。
[10]上記生体試料が、血液又は血液由来試料であることを特徴とする[7]記載の熱中症の診断方法又は熱中症診断のためのデータ取得方法。
[11]上記被検動物はヒトであることを特徴とする[7]記載の熱中症の診断方法又は熱中症診断のためのデータ取得方法。
本発明に係る熱中症マーカーは、骨格筋から血中に分泌されるタンパク質(マイオカイン)のなかから、暑熱処理に応答性示すものとして同定された具体的な5種類のタンパク質である。したがって、本発明に係る熱中症マーカーは、被検動物由来の生体試料から簡便且つ迅速に検出することができる。
また、本発明に係る熱中症検査キットは、上記熱中症マーカーを被検動物由来の生体試料から検出するため、熱中症の迅速な診断に寄与することができる。
さらに、本発明に係る熱中症の診断方法又は熱中症診断のためのデータ取得方法は、被検動物由来の生体試料における、上記熱中症マーカーを測定した結果に基づくため、簡便且つ迅速に診断する或いは診断のためのデータを取得することができる。
Aは熱処理温度とHSP70の発現量との関係を示す特性図であり、Bは熱処理時間とHSP70の発現量との関係を示す特性図である。 サイトカインアレイを用いて暑熱処理を行った細胞におけるサイトカインの発現量変動を示す特性図である。 Aは暑熱処理後24時間の培養上清に含まれるCCL5分泌量を示す特性図であり、Bは暑熱処理後24時間の培養上清に含まれるCXCL10分泌量を示す特性図であり、Cは暑熱処理後、経時的に細胞培養上清を回収してCCL5分泌量を測定した結果を示す特性図である。 各温度で熱処理したときのCcl5遺伝子の発現変動を示す特性図である。 骨格筋組織(TA、EDL、quad及びsoleus)における急性暑熱処理によるHspa1a遺伝子の経時的な発現上昇を示す特性図である。 急性暑熱処理による血清サンプル中のCCL5量を測定した結果を示す特性図である。 慢性暑熱処理による血清サンプル中のCCL5量を測定した結果を示す特性図である。 骨格筋組織(TA、EDL、quad及びsoleus)における、慢性暑熱処理によるCcl5遺伝子の発現変動を示す特性図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る熱中症マーカーは、以下の(1)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質である。
(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)
(2)CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)
(3)M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)
(4)CCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)
(5)IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist)
ここで、これら5種類のタンパク質は、熱中症の発症に伴って血液中への分泌量が有意に変動することが新規に見いだされた一群のタンパク質である。これらタンパク質は、骨格筋から分泌される生理活性因子群であるマイオカインに分類される。より具体的に、これらのうち、CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)、CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)、M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)及びCCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)は、熱中症の発症により血中への分泌量が低下する。一方、IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist) は、熱中症の発症により血中への分泌量が上昇する。
よって、これら(1)~(5)のタンパク質を被検動物における熱中症発症の指標にすることができる。より具体的に、これらのうち、CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)、CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)、M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)及びCCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)の血中濃度が、基準値等と比較して有意に低い場合には熱中症と診断できる。一方、IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist) の血中濃度が、基準値等と比較して有意に高い場合には熱中症と診断できる。なお、各基準値については、詳細を後述するが、例えば熱中症に罹患していない健常動物における血中濃度の平均値とすることができる。
ここで、被検動物として特に限定されず、ヒトを含む哺乳動物を挙げることができる。哺乳動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等が挙げられ、好ましくはヒトである。
熱中症マーカーは、上記(1)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質であるが、特に2以上のタンパク質とすることが好ましい。すなわち、熱中症マーカーとしてはく、上記(1)~(5)からなる群より選ばれる任意の2つのタンパク質とすることができ、任意の3つのタンパク質とすることが好ましく、任意の4つのタンパク質とすることがより好ましく、5つ全てのタンパク質とすることが最も好ましい。
また、上記(1)~(5)のなかでも特にCCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)及びCXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)のいずれか一方又は両方を熱中症マーカーとすることが好ましい。これらCCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)及びCXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)は、熱中症の発症に伴って血中濃度が他のタンパク質(すなわち(3)~(5))と比べてより大きく変動する(低下する)。よって、これらCCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)及び/又はCXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)を熱中症マーカーとして使用することで、より高精度に熱中症の診断が可能となる。
より詳細に、熱中症マーカーとしては、CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)を単独で使用してもよいし、CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)と上記(2)~(5)の中から選ばれる少なくとも1つのタンパク質との組み合わせを使用してもよい。また、熱中症マーカーとしてCXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)を単独で使用してもよいし、CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)と上記(1)、(3)~(5)の中から選ばれる少なくとも1つのタンパク質との組み合わせを使用してもよい。
さらにまた、上記(1)~(5)のなかでも特にCCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)を熱中症マーカーとして使用する場合、熱中症の中でも、筋肉運動を伴って急激に発症する労作性熱中症と、筋肉運動を伴わず徐々に症状が悪化する非労作性熱中症とを区別できる。詳細には、労作性熱中症を発症した場合にはCCL5の血中濃度が上昇し、非労作性熱中症を発症した場合にはCCL5の血中濃度が低下する。したがって、被検動物におけるCCL5の血中濃度が有意に高い場合には労作性熱中症と診断でき、同血中濃度が有意に低い場合には非労作性熱中症と診断することができる。
ところで、上記(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)は、ヒト、マウス、ラット等の各種動物(哺乳動物)が有している。タンパク質に関する情報や遺伝子に関する情報等を格納した公知のデータベースを利用することで、各種動物由来のCCL5について、そのアミノ酸配列や当該アミノ酸配列をコードする塩基配列、アイソフォームに関する情報、多型に関する情報を得ることができる。一例として、ヒト由来CCL5については、UniProtKBにP13501 (CCL5_HUMAN)として登録されている。CCL5は、RANTESとしても呼称されており、C-Cケモカインファミリーに属する因子である。ヒト由来CCL5は配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質である。なお、ヒト由来CCL5には、配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、N末端から24番目のセリン残基がフェニルアラニン残基となるバリアントが公知であり、当該バリアントも含む意味である。
また、上記(2)CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)は、ヒト、マウス、ラット等の各種動物(哺乳動物)が有している。タンパク質に関する情報や遺伝子に関する情報等を格納した公知のデータベースを利用することで、各種動物由来のCXCL10について、そのアミノ酸配列や当該アミノ酸配列をコードする塩基配列、アイソフォームに関する情報、多型に関する情報を得ることができる。一例として、ヒト由来CXCL10については、UniProtKBにP02778 (CXL10_HUMAN)として登録されている。CXCL10は、ケモカインIP-10とも呼称されている。ヒト由来CXCL10は配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質である。
さらに、上記(3)M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)は、ヒト、マウス、ラット等の各種動物(哺乳動物)が有している。タンパク質に関する情報や遺伝子に関する情報等を格納した公知のデータベースを利用することで、各種動物由来のM-CSFについて、そのアミノ酸配列や当該アミノ酸配列をコードする塩基配列、アイソフォームに関する情報、多型に関する情報を得ることができる。一例として、ヒト由来M-CSFは、UniProtKBにP09603 (CSF1_HUMAN) として登録されている。M-CSFは、単にCSF-1とも呼称され、造血前駆細胞、特にマクロファージや単球などの単核食細胞の生存、増殖、分化の調節に重要な役割を果たすサイトカインとして知られている。ヒト由来M-CSFは配列番号3に示すアミノ酸配列からなるタンパク質である。
なお、ヒト由来M-CSFは、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるタンパク質に限定されず、選択的スプライシングによる、配列番号3におけるN末端から365-480が欠損したアイソフォーム、配列番号3におけるN末端から182-479が欠損したアイソフォームも含む意味である。さらに、ヒト由来M-CSFには、配列番号3に示すアミノ酸配列のうち、N末端から341番目のセリン残基がアスパラギン残基となるバリアント、N末端から408番目のロイシン残基がプロリン残基となるバリアント、N末端から438番目のグリシン残基がアルギニン残基となるバリアント、N末端から489番目のフェニルアラニン残基がセリン残基となるバリアント、N末端から496番目のセリン残基がフェニルアラニン残基となるバリアント及びN末端から531番目のアラニン残基がバリン残基となるバリアントが公知であり、これらバリアントも含む意味である。
さらにまた、上記(4)CCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)は、ヒト、マウス、ラット等の各種動物(哺乳動物)が有している。タンパク質に関する情報や遺伝子に関する情報等を格納した公知のデータベースを利用することで、各種動物由来のCCL2/JEについて、そのアミノ酸配列や当該アミノ酸配列をコードする塩基配列、アイソフォームに関する情報、多型に関する情報を得ることができる。一例として、ヒト由来CCL2/JEは、UniProtKBにP13500 (CCL2_HUMAN)として登録されている。CCL2/JEは、単にCCL2或いはMCP1とも呼称されている。ヒト由来CCL2/JEは配列番号4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質である。
さらにまた、上記(5)IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist)は、ヒト、マウス、ラット等の各種動物(哺乳動物)が有している。タンパク質に関する情報や遺伝子に関する情報等を格納した公知のデータベースを利用することで、各種動物由来のIL-1raについて、そのアミノ酸配列や当該アミノ酸配列をコードする塩基配列、アイソフォームに関する情報、多型に関する情報を得ることができる。一例として、ヒト由来IL-1raは、UniProtKBにP18510 (IL1RA_HUMAN) として登録されている。IL-1raは、IL-1RN、IRAP、IL1F3及びIL1RAとも呼称されている。ヒト由来IL-1raは、配列番号5に示すアミノ酸配列からなるタンパク質である。
なお、ヒト由来IL-1raは、配列番号5に示すアミノ酸配列からなるタンパク質に限定されず、選択的スプライシングによる、N末端から1-21番目までがMALとなったアイソフォーム、N末端から1-21番目までがMALADLYEEGGGGGGEGEDNADSK(配列番号6)となったアイソフォーム、N末端から1-34番目が欠損したアイソフォームも含む意味である。さらに、ヒト由来IL-1raには、配列番号5に示すアミノ酸配列のうち、N末端から124番目のアラニン残基がトレオニン残基となるバリアントが公知であり、当該バリアントも含む意味である。
なお、上記(1)~(5)のタンパク質に関するアミノ酸配列等の情報がUniProtKB等のデータベースに格納されてない動物については、従来公知の手法によって上記(1)~(5)のタンパク質に関するアミノ酸配列等の情報を獲得することができる。すなわち、対象の動物からゲノムDNAを調製し、全ゲノムシーケンスの結果から上記(1)~(5)のタンパク質を特定することができる。
以上のように、タンパク質に関するアミノ酸配列等の情報が格納されたUniProtKB等のデータベースや、従来公知の手法を用いることで、ヒトを含む各種動物について上記(1)~(5)のタンパク質を同定することができる。すなわち、タンパク質に関するアミノ酸配列等の情報が格納されたUniProtKB等のデータベースや、従来公知の手法を用いることで、ヒトの熱中症マーカー、ヒト以外の動物の熱中症マーカーを同定することができる。
以下、上述した熱中症マーカーを測定することで熱中症を検査することができる、熱中症検査キットについて説明する。本発明に係る熱中症検査キットは、上述した熱中症マーカーと特異的に結合する分子を含んでいる。熱中症マーカーと特異的に結合する分子とは、特に限定されないが、上述した熱中症マーカーとの親和性(例えば、平衡解離定数(KD)で評価できる)が、当該熱中症マーカー以外の物質との親和性と比較して有意に高い(すなわち、平衡解離定数(KD)が有意に低い)ことを意味する。
このような、熱中症マーカーと特異的に結合する分子としては、抗体、アプタマー等を挙げることができる。また、熱中症マーカーをリガンドとするレセプター分子を、当該熱中症マーカーと特異的に結合する分子として使用することもできる。
抗体を作製する方法は、特に限定されず、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えばハイブリドーマ法やファージ抗体ライブラリー法を適用して、上記熱中症マーカーに対する抗体を作製することができる。上記(1)~(5)のタンパク質やその部分ペプチドを免疫原として用いれば、これらの方法により熱中症マーカーに特異的に結合する抗体を多数取得することができる。上記(1)~(5)のタンパク質やその部分ペプチドは従来公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。具体的には、所望のタンパク質をコードする遺伝子を発現ベクターに挿入して、それを適当な宿主細胞に導入した後、その宿主細胞中あるいはその宿主細胞の培養上清中に発現した目的のタンパク質を精製することにより調製することができる。
また、アプタマーとは、特定の物質と特異的に結合する核酸分子を意味する。上記(1)~(5)のタンパク質に対するアプタマー、すなわち熱中症マーカーに特異的に結合するアプタマーは従来公知の方法で作製することができる。例えば、アプタマーの塩基配列はSELEX (Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法という操作によって決定することができる。すなわち、まず、ランダムな塩基配列を持つ核酸群の中から標的となるタンパク質に結合する核酸群を選択し増幅する。その後、再び選択と増幅を繰り返し行い、標的となるタンパク質に特異性の高い配列を同定することができる。
さらに、抗体やアプタマー等の熱中症マーカーと特異的に結合する分子は、担体に固定した状態で使用することもできる。例えば、担体として、平板状の基板の一主面に熱中症マーカーと特異的に結合する分子を配列したマイクロアレイを熱中症検査キットとすることもできる。ここで、担体は、抗体やアプタマーを固定化可能であればよく、特に限定されないが、材料としては例えば、ガラス、シリコンなどの無機材料、ニトロセルロースなどの有機材料が挙げられる。担体の形状としては、例えば、膜、ビーズ、チップ、ロッド、プレートが挙げられる。
被検動物由来の生体試料における熱中症マーカーを、上述した熱中症マーカーに特異的な抗体を使用して測定する際、免疫学的手法により測定を行うことが好ましい。免疫学的手法としては、特に限定されないが、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光(ECL)法、ウエスタンブロッティング法、表面プラズモン共鳴法、抗体アレイを用いた方法、免疫組織染色法、蛍光活性化細胞選別(FACS)法、イムノクロマトグラフィー法、免疫沈降法、免疫比濁法、ラテックス凝集法などを挙げることができる。
また、被検動物由来の生体試料における熱中症マーカーを質量分析法により測定することもできる。質量分析法においては、各種の質量分析装置を利用することができる。例えば、質量分析装置としては、特に限定されないが、LC-MS、LC-MS/MS、GC-MS、FAB-MS、EI-MS、CI-MS、FD-MS、MALDI-MS、ESI-MS、HPLC-MS、FT-ICR-MS、CE-MS、ICP-MS、Py-MS、TOF-MS等が挙げられる。
ここで、生体試料とは、生体内に含まれる器官、組織、細胞、体液又はそれらの混合物を意味する。具体的に、生体試料としては、例えば、皮膚、気道、腸管、尿生殖路、神経、腫瘍、骨髄、血球、血液(全血、血漿、血清)、リンパ液、脳脊髄液、腹腔内液、滑液、肺内液、唾液、喀痰、尿などを挙げることができる。特に、生体試料としては、迅速且つ簡便な測定を行うため、血液(全血、血漿、血清)とすることが好ましい。なお、生体試料は、被検動物から得られた試料を、熱中症マーカーの測定に供される前に、濃縮、精製、抽出、単離又は物理的/化学的処理などの方法により加工したものであってもよい。例えば、血液試料から血球又は血漿成分を分離してもよい。
そして、生体試料に含まれる熱中症マーカー濃度を健常な動物と比較することで、熱中症の発症及び/又はその重症度を判断することができる。より具体的に、熱中症マーカーのうち(1)CCL5、(2)CXCL10、(3)M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)及び(4)CCL2/JEについては、健常な動物よりも低濃度である場合に熱中症、特に非労作性熱中症を発症している及び/又はより重症であると判断することができる。また、(5)IL-1raについては、健常な動物よりも高濃度である場合に熱中症、特に非労作性熱中症を発症している及び/又はより重症であると判断することができる。
よって、これら(1)~(5)のタンパク質を熱中症、特に非労作性熱中症発症の指標にすることができる。より具体的に、これらのうち、CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)、CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)、M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)及びCCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)の血中濃度が、基準値と比較して有意に低い場合には熱中症と診断できる。一方、IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist) の血中濃度が、基準値と比較して有意に高い場合には熱中症と診断できる。なお、各基準値については、詳細を後述するが、(1)~(5)の各タンパク質についてそれぞれ設定される値であり、例えば熱中症に罹患していない健常者における血中濃度の平均値とすることができる。
上記(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)に関する基準値をCCL5基準値と称し、上記(2)CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10) に関する基準値をCXCL10基準値と称し、上記(3)M-CSF (Macrophage colony stimulating factor) に関する基準値をM-CSF基準値と称し、上記(4)CCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE) に関する基準値をCCL2/JE基準値と称し、上記(5)IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist) に関する基準値をIL-1ra基準値と称する。
すなわち、上記(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)についてはCCL5基準値を下回るか、上記(2)CXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)についてはCXCL10基準値を下回るか、上記(3)M-CSF (Macrophage colony stimulating factor)についてはM-CSF基準値を下回るか、上記(4)CCL2/JE (Chemokine (C-C motif) ligand 2/JE)についてはCCL2/JE基準値を下回るか、上記(5)IL-1ra (Interleukin-1 receptor antagonist)についてはIL-1ra基準値を上回る場合に、被検動物について熱中症又はその疑いと評価することができる。
ここで、これら基準値は、熱中症を発症した動物と、熱中症を発症していない動物と区別できる値であれば特に限定されないが、例えば、健康な動物から得られた試料(対照試料)におけるマーカーの測定値から設定することができる。具体的には、複数の健康な動物から得られた試料におけるマーカーの測定値(例えば血中濃度)の平均値を基準値として決定してもよい。また、CCL5基準値、CXCL10基準値、M-CSF基準値及びCCL2/JE基準値としては、健康な動物から得られた試料におけるマーカー測定値の平均値に標準偏差の1.0倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の値を引いた値としてもよい。IL-1ra基準値については、健康な動物から得られた試料におけるマーカー測定値の平均値に標準偏差の1.0倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の値を加えた値としてもよい。
また、基準値は、実際に熱中症に罹患した動物群から得られた試料におけるマーカーの測定値から設定することができる。具体的には、熱中症に罹患した複数の動物から得られた試料におけるマーカーの測定値(例えば血中濃度)の平均値を基準値として決定してもよい。また、CCL5基準値、CXCL10基準値、M-CSF基準値及びCCL2/JE基準値としては、熱中症に罹患した複数の動物の試料におけるマーカー測定値の平均値に標準偏差の1.0倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の値を加えた値としてもよい。IL-1ra基準値については、熱中症に罹患した複数の動物の試料におけるマーカー測定値の平均値に標準偏差の1.0倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の値を引いた値としてもよい。
さらに、基準値としては、上記(1)~(5)のタンパク質のそれぞれについて複数設定してもよい。例えば、熱中症を発症した動物を、熱中症の重症度に応じてグループ分けし、各グループについて基準値を設定することができる。例えば、ヒトの熱中症については、めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗等の症状を呈するI度、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感等の症状を呈するII度、中枢神経症、肝・腎機能障害、血液凝固異常などの臓器障害を呈するIII型に分類する場合がある。よって、複数の基準値を設定しておくことで、被検者が熱中症のうちI度~III度のどの重症度になっているかを区別することができる。具体的に、CCL5、CXCL10、M-CSF及びCCL2/JEについては、徐々に低値となる第1基準値~第3基準値を設定する。被検者の測定値が、第1基準値と第2基準値との間にある場合に熱中症I度と評価し、第2基準値と第3基準値との間にある場合に熱中症II度と評価し、第3基準値を下回る場合に熱中症III度と評価することができる。また、IL-1raについては、徐々に高値となる第1基準値~第3基準値を設定する。被検者の測定値が、第1基準値と第2基準値との間にある場合に熱中症I度と評価し、第2基準値と第3基準値との間にある場合に熱中症II度と評価し、第3基準値を上回る場合に熱中症III度と評価することができる。
ところで、上記(1)CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)については、健常な動物よりも高濃度である場合に熱中症、特に労作性熱中症を発症していると判断することができる。言い換えると、労作性熱中症が疑われる動物については、CCL5の血中濃度が健常な動物よりも高濃度であるかを判断材料とすることができる。この場合も労作性熱中症を発症した動物と、熱中症を発症していない動物と区別できる基準値を設け、基準値に基づいて労作性熱中症の発症を診断することが好ましい。例えば、健康な動物から得られた試料(対照試料)におけるマーカーの測定値から設定することができる。具体的には、複数の健康な動物から得られた試料におけるマーカーの測定値(例えば血中濃度)の平均値を基準値として決定してもよい。また、CCL5に関する労作性熱中症の基準値としては、健康な動物から得られた試料におけるマーカー測定値の平均値に標準偏差の1.0倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の値を加えた値としてもよい。或いは、CCL5に関する労作性熱中症の基準値としては、実際に労作性熱中症に罹患した動物群から得られた試料におけるマーカーの測定値から設定することができる。具体的には、労作性熱中症に罹患した複数の動物から得られた試料におけるマーカーの測定値(例えば血中濃度)の平均値を基準値として決定してもよい。また、CCL5に関する労作性熱中症の基準値としては、労作性熱中症に罹患した複数の動物の試料におけるマーカー測定値の平均値に標準偏差の1.0倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の値を引いた値としてもよい。
なお、(1)~(5)のタンパク質の測定値や、当該測定値に対する基準値の値は、マーカーの発現レベルの測定結果を何らかの方法で数値化したものを意味するが、数値としては測定の結果得られる値(例えば発色強度など)をそのまま用いてもよいし、また、含まれるマーカーの量が既知の陽性対照試料を別途用意して、それとの比較で測定結果を換算した値(例えば濃度など)を用いてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔作製例1〕
マウス骨格筋由来C2C12筋芽細胞を5×104/ウェル(6ウェルプレート)となるように播種した。その後、C2C12筋芽細胞がコンフルエントとなるまで3日間、2ml/ウェルのダルベッコ改変イーグル培地(1 g/lグルコース)+10%牛血清を用いて培養した。その後、ダルベッコ改変イーグル培地+1%牛血清に培地を置換して6日間培養を行い、筋管細胞へと分化誘導させた。また、栄養源の供給ならびに老廃物の除去を目的に培地交換は分化誘導後、24時間おきに行った。C2C12細胞の分化が確認されたのち、ダルベッコ改変イーグル培地+1%牛血清での培地交換を終了したC2C12筋管細胞を37℃~43℃インキュベータ内で24時間保持し、その後、培養上清および細胞由来タンパク質および細胞由来RNAを回収した。
〔測定例1〕
まず、作製例1で示した細胞由来タンパク質の解析を行った。細胞抽出液は、10%SDS-PAGEに供し、ホースラディッシュパーオキシダーゼを結合した抗マウスIgG抗体を用いたウエスタンブロット解析を行った。なお、検出はECL prime (GE Healthcare社)を用いて行った。はじめに、熱マーカーとして広く用いられている熱ショックタンパク質70 (HSP70)の発現量を調べた。その結果、HSP70の発現量は42℃で培養した細胞において最も上昇していた(図1A)。次に37℃と42℃で24時間まで種々の時間培養し、経時的に細胞の回収を行い、HSP70タンパク発現量を調べた。その結果、24時間の熱処理において最もHSP70の発現量が見られた(図1B)。以下、42℃で24時間の熱処理を暑熱処理と称す。
次に、得られた培養上清について、サイトカインアレイ(Proteome ProfilerTMMouse Cytokine Array Panel A (R&D Systems))を用い、添付のプロトコールに従って、分泌タンパク質の網羅的同定を行った。解析後のメンブレンの撮影はChemi Doc XRS+ (Bio-Rad)で行い、画像解析はImage Jを用いた。その結果、42℃の暑熱処理を行った細胞から得られた培養上清では、暑熱処理を行っていないものと比較してIL-1raが約1.35倍上昇、CXCL10が約0.31倍、M-CSFが約0.77倍、JEが約0.77倍、CCL5が約0.26倍に減少しており、いずれも有意な差が観察された(図2)。なお、図2においてIP-10と記載されたサイトカインはCXCL10を意味し、RANTESと記載されたサイトカインはCCL5を意味している。
サイトカインアレイの結果の中で、特に大きく変動が見られたCXCL10及びCCL5についてELISA法を用いた確認を行なった。ELISA法での解析は、Duo Set Mouse CCL5/RANTESあるいはCXCL10/IP-10 (両者ともにR&D Systemsより購入)を用い、添付のプロトコールに従って測定を行なった。その結果、暑熱処理後24時間の培養上清に含まれるCCL5およびCXCL10分泌量は、暑熱処理を行わなかった群に比べて、それぞれ、約0.33倍、約0.60倍に減少することが明らかとなった(図3A及びB)。次に暑熱処理後、経時的に細胞培養上清を回収してCCL5分泌量を測定した結果、暑熱処理6時間後にはその差が明確になることも分かった(図3C)。
また、CCL5については遺伝子発現についても解析を行った。細胞からのRNA精製は、NucleoSpin RNAキット(タカラバイオ株式会社)を用いて添付のプロトコールに従った。精製したRNA 500ngについて、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mix(東洋紡)を用いた逆転写反応を行ないcDNAを作製したのち、定量PCR解析を行なった。先述のcDNAサンプルをEasy Dilution(タカラバイオ株式会社)で希釈したのち、各プライマー(Forward: 5’-CATATGGCTCGGACACCA-3’(配列番号7)、Reverse: 5’-ACACACTTGGCGGTTCCT-3’(配列番号8))とKAPA SYBRR FAST qPCR Kit Master Mix (2X) ABI PrismTM (KAPA biosystems)を添加し、StepOneTMReal-Time PCR Systems (Applied Biosystems)にて解析を行った。その結果、42℃での暑熱処理12時間後からCcl5遺伝子発現が有意に減少することも明らかとなった(図4)。
以上のin vitroの実験から、マウスC2C12細胞を42℃で適宜な時間培養し、その培養上清を解析することで、CCL5を主体とする複数のマイオカイン群を暑熱マーカーとして使用可能な分子候補として同定した。
〔作製例2〕
(1) 急性暑熱負荷試験(労作性熱中症モデル):C57BL/6Nマウス(雄)を使用し、以下の条件で暑熱刺激を行なった。25℃の条件で個別に飼育したマウスを、45℃の環境下に移動し、0分、60分、120分後、あるいは、その後25℃の条件で3時間静置したマウスより血液サンプルおよび骨格筋サンプル(前脛骨筋(Tibialis anterior muscle; TA)、長趾伸筋(Extensor digitorum longus muscle; EDL)、大腿筋(quadriceps; quad)、ヒラメ筋(soleus))を採取した。血液サンプルは、4℃、1,200xg、15分の条件で遠心分離を行い、血清サンプルを調製した。
(2) 慢性暑熱負荷試験(非労作性熱中症モデル):C57BL/6Nマウス(雄)を使用し、以下の条件で暑熱刺激を行なった。25℃の条件で個別に飼育したマウスを、12時間おきに45℃、30分の刺激を与えた。この条件下で2週間あるいは4週間飼育を継続し、慢性暑熱を負荷した。最終暑熱処理の6時間後に、(1)と同様の方法で骨格筋を採取さらに血清サンプルを調製した。
〔測定例2〕
次に慢性暑熱を負荷した動物(マウス)の血中成分にこれらの暑熱マーカー候補タンパク質が表出するかを明らかにした。
先ず、作製例2(1)(急性暑熱負荷試験)の通りに作製した骨格筋サンプルより、RNAを抽出し、先述の暑熱マーカータンパク質HSP70をコードするHspa1a遺伝子の発現量を測定した(Forward: 5’-TGGTGCAGTCCGACATGAAG-3’(配列番号9)、Reverse: 5’-GCTGAGAGTCGTTGAAGTAGGC-3’(配列番号10))。なお、RNAの抽出から定量PCRに至る一連の手順は、測定例1に記載した通りである。その結果、TA、EDL、quad、soleus全ての骨格筋組織において、暑熱負荷による時間依存的なHspa1a遺伝子の発現上昇が観察されたことから、C57BL/6Nを45℃の環境下で飼育した場合、極めて短時間のうちに全ての骨格筋組織で暑熱ストレスが発生していることが分かった(図5A-D)。
次に調製した血清サンプル中のCCL5量をELISA法により測定した。なお、ELISA法の手順は、作製例1に示した通りである。暑熱処理を行ったマウスより得られた血清に含まれるCCL5量は、コントロールと比較して約10倍以上に増大することが明らかとなった(図6)。本結果から、血中CCL5量を測定することで急性暑熱の状況を把握できる、すなわちCCL5が急性暑熱マーカーとして使用可能なことが分かる。
次に、作製例2(2)(慢性暑熱負荷試験)の通りに作製した血清サンプルに含まれるCCL5量を測定した。なお、ELISA法の手順は、作製例1に示した通りである。その結果、慢性暑熱を2週間加えることで、血中CCL5量が約0.5倍に減少することが明らかとなった(図7)。本結果から、血中CCL5量を測定することで急性暑熱だけでなく、慢性暑熱の状況を把握できる、すなわちCCL5が慢性暑熱マーカーとしても使用可能なことが分かる。
次に、骨格筋サンプルより、RNAを抽出し、CCL5をコードするCcl5遺伝子の発現量を測定した。なお、RNAの抽出から定量PCRに至る一連の手順は、測定例1に記載した通りである。その結果、速筋繊維が豊富に含まれるTA、EDL、quadにおいて、暑熱負荷によるCcl5遺伝子の発現低下が観察された(図8A-D)。すなわち、慢性暑熱処理によって減少する血中CCL5減少の少なくとも一部は、骨格筋Ccl5遺伝子発現量の減少によるものであることが推察される。すなわち、生体あるいは死後検体から採取した骨格筋サンプル(特に速筋)中のCcl5遺伝子発現量を測定することも慢性暑熱ストレスの測定に有用であることが分かる。

Claims (11)

  1. CCL5 (Chemokine (C-C motif) ligand 5)からなる非労作性熱中症マーカー。
  2. 被検動物由来の生体試料における、請求項1記載の非労作性熱中症マーカーを検出する非労作性熱中症検査キット。
  3. 請求項1記載の非労作性熱中症マーカーと特異的に結合する分子を含む請求項2記載の非労作性熱中症検査キット。
  4. 上記分子は抗体又はアプタマーであることを特徴とする請求項3記載の非労作性熱中症検査キット。
  5. 請求項1記載の非労作性熱中症マーカーと特異的に結合する分子を固定した担体を有するマイクロアレイを含む請求項2記載の非労作性熱中症検査キット。
  6. 上記分子は抗体又はアプタマーであることを特徴とする請求項5記載の非労作性熱中症検査キット。
  7. 被検動物由来の生体試料における、請求項1記載の非労作性熱中症マーカーを測定することを含む、非労作性熱中症診断のためのデータ取得方法。
  8. 上記生体試料に含まれる上記非労作性熱中症マーカーの量を測定し、CCL5基準値と比較することを特徴とする請求項7記載の非労作性熱中症診断のためのデータ取得方法。
  9. 非労作性熱中症マーカーとして、更にCXCL10 (C-X-C motif chemokine 10)を測定することを特徴とする請求項7記載の非労作性熱中症診断のためのデータ取得方法。
  10. 上記生体試料が、血液又は血液由来試料であることを特徴とする請求項7記載の非労作性熱中症診断のためのデータ取得方法。
  11. 上記被検動物はヒトであることを特徴とする請求項7記載の非労作性熱中症診断のためのデータ取得方法。
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