本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、駆動効率がよく、軌跡の歪みや不要振動の発生を抑えることができ、大きな振り角を実現することができる駆動装置及び駆動方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための駆動装置は、第1回動体と、第1回動体の外側に配置されて第1回動体を第1回転軸の周りに回転可能に支持する第2回動体と、第2回動体を第2回転軸の周りに回転可能に支持する支持体と、第2回動体上において、第1及び第2回転軸の交点の周りに第1及び第2回転軸により4分割された同一平面上の各領域に配置され、交点を挟み対向する第1及び第2コイルと、交点を挟み対向する第3及び第4コイルとを含む回路と、各コイルに対してコイル面に平行な方向の磁界を与える磁界付与手段とを備え、第1駆動信号は各コイルに正相で印加され、第2駆動信号は第1及び第2コイルに正相、第3及び第4コイルに逆相で印加される。
上記駆動装置では、各コイルに正相で印可される第1駆動信号によって第2回転軸の周りに回転力を発生させることができ、第1及び第2コイルに正相で第3及び第4コイルに逆相で印加される第2駆動信号によって第1回転軸の周りに回転力を発生させることができる。この際、第1駆動信号によって各コイルに与えられる力を第2回転軸の周りの回転力として無駄なく利用することができ、第2駆動信号によって各コイルに与えられる力を第1回転軸の周りの回転力として無駄なく利用することができ、結果的に両回転軸に対して傾いた斜め軸の周りに回転力が与えられることを回避でき、駆動効率が良いだけでなく、歪みの少ない走査軌跡を実現することができる。しかも、各コイルが同一平面上に配置されていることから、コイルに与えられる駆動力は、第1又は第2回転軸を中心とする回転の周方向又は接線方向に沿ったものになるので、駆動力のすべてが無駄なく回転に寄与し、回転に寄与しない並進力又は不要力によって不要振動が発生することを確実に抑制することができる(後述する図4(E)参照)。また、磁界付与手段によってコイル面に平行な方向の磁界を与えることで、コイル面に垂直な方向に大きな力を発生させることができ、大きな振り角を実現することができる。
本発明の具体的な側面では、第1駆動信号及び第2駆動信号を出力する駆動部を備える。この場合、駆動装置は、本体のスキャナに駆動部を付加した統合的な装置又はモジュールとなる。
本発明の別の側面では、磁界付与手段は、第1~第4コイルに共通して内外の一方に向かう磁界を与え、第1及び第2コイルは、第1コイルに反時計方向の電流が流れる場合に第2コイルに時計方向の電流が流れるように連結され、第3及び第4コイルは、第3コイルに反時計方向の電流が流れる場合に第4コイルに時計方向の電流が流れるように連結される。この場合、磁界がコイルの内外に関して共通する方向に形成される。結果的に、第1駆動信号によって第2回転軸の周りに偶力を発生させることが容易になり、第2駆動信号によって第1回転軸の周りに偶力を発生させることが容易になる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2コイルは、第1回動体の周囲に配置される第2回動体の中央環状部上に形成された第1配線によって連結され、第3及び第4コイルは、中央環状部上に形成された第2配線によって連結される。この場合、中央環状部が第1及び第2配線の支持体となる。中央環状部の周囲外側には、第1~第4コイルが配置される。
本発明のさらに別の側面では、第2回動体は、第1~第4コイルが表面上に形成された4つの周辺環状部を有する。この場合、第2回動体に周辺環状部を設け、この周辺環状部に第1~第4コイルを支持させることができるとともに、周辺環状部の内外に磁極を配置すれば、第2回動体の回転動作に対して磁界付与手段が干渉することを回避することができる。
本発明のさらに別の側面では、支持体は、第2回動体を、第2トーションバーを介して第2回転軸の周りにねじり回転可能に支持し、第2回動体は、第1回動体を、第1トーションバーを介して第1回転軸の周りにねじり回転可能に支持する。この場合、外側の第2回動体は、支持体に支持されて第2トーションバーに沿って延びる第2回転軸の周りに往復回転し、内側の第1回動体は、第2回動体に支持されて第1トーションバーに沿って延びる第1回転軸の周りに往復回転する。
本発明のさらに別の側面では、第1回動体は、第1回転軸の周りに共振周期で回転し、第2回動体は、第1~第4コイルに与えられる力に追従して第2回転軸の周りに往復回転する。つまり、第1回動体は、共振周期で回転し、第2回動体は、第1回転軸の周りに与えられる時計方向及び反時計方向の回転力に追従して往復回転する。なお、第2回動体については、第1~第4コイルに与えられる力を用いて第2回転軸の周りに回転させる際に、強制的に非共振的に回転させることができるだけでなく、共振周期で回転させることもできる。第2回動体を非共振的に回転させる動作には、周期的に回転させる動作と、非周期的に繰り返し回転させる動作とが含まれる。第2回動体を周期的に限らず非周期的に回転させることにより、第2回動体22の動作パターンの自由度が増し、駆動装置の用途を広げることができる。
上記目的を達成するための駆動方法は、第1回動体の外側に配置されて第1回動体を第1回転軸の周りに回転可能に支持する第2回動体と、第2回動体を第2回転軸の周りに回転可能に支持する支持体と、第2回動体上において、第1及び第2回転軸の交点の周りに第1及び第2回転軸により4分割された同一平面上の各領域に配置され、交点を挟み対向する第1及び第2コイルと、交点を挟み対向する第3及び第4コイルとを含む回路とを備える駆動装置について、各コイルに対してコイル面に平行な方向の磁界を与え、第1駆動信号は各コイルに正相で印加され、第2駆動信号は第1及び第2コイルに正相、第3及び第4コイルに逆相で印加される。
上記駆動方法では、第1駆動信号によって第2回転軸の周りに回転力を発生させることができ、第2駆動信号によって第1回転軸の周りに回転力を発生させることができる。この際、第1駆動信号によって各コイルに与えられる力を第2回転軸の周りの回転力として無駄なく利用することができ、第2駆動信号によって各コイルに与えられる力を第1回転軸の周りの回転力として無駄なく利用することができ、結果的に両回転軸に対して傾いた斜め軸の周りに回転力が与えられることを回避でき、駆動効率が良いだけでなく、歪みの少ない走査軌跡を実現することができる。しかも、各コイルが同一平面上に配置されていることから、コイルに与えられる駆動力は、第1又は第2回転軸を中心とする回転の周方向又は接線方向に沿ったものになるので、駆動力のすべてが無駄なく回転に寄与し、回転に寄与しない並進力又は不要力によって不要振動が発生することを確実に抑制することができる。また、磁界付与手段によってコイル面に平行な方向の磁界を与えることで、各コイルに対してコイル面に垂直な方向に大きな力を発生させることができ、各コイルを支持する回動体について大きな振り角を実現することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態である光走査用の駆動装置及び駆動方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態の駆動装置100は、可動機構を含むスキャナ10と、電子回路からなる駆動部80とを備える。駆動装置100は、本体のスキャナ10に回路的な駆動部80を付加した統合的な装置又はモジュールである。
スキャナ10は、2軸に回転又は傾斜可能な板バネ構造を有する電磁駆動型のアクチュエータである。スキャナ10は、駆動回路である駆動部80から電気信号の供給を受けて動作する。スキャナ10は、シリコン基板その他の半導体基板を加工することによって作製されたスキャナ本体11と、スキャナ本体11の所定箇所に所定方向の磁界を付与する磁界付与手段であり磁界形成器MG1~MG4を含む磁界形成部12と、スキャナ本体11の周囲を下方から支持する支持基板13とを備える。なお、スキャナ本体11は、半導体基板に限らず、ベリリウム銅、ステンレスその他の金属のウエットエッチング加工、板金打ち抜き加工等によっても作製することができる。
図1及び図2(A)及び2(B)に示すように、スキャナ本体11は、内側から順に、第1回動体23と、第2回動体22と、支持体21とを備える。第1回動体23は、内側可動部とも呼ばれ、第2回動体22は、外側可動部とも呼ばれ、支持体21は、基部とも呼ばれる。
スキャナ本体11において、最も外側の支持体21は、矩形枠状の外形を有し、支持基板13上に固定されている。外側可動部である第2回動体22は、支持体21の開口21a内に収まるように配置され、矩形の外形を有し、支持体21に対して回転可能に支持されている。より詳細には、第2回動体22は、矩形枠状の中央環状部22bを有し、中央環状部22bの外側に4つの周辺環状部22dを有する。支持体21と第2回動体22との間には、X方向に延びる1対の第2トーションバー32a,32bが設けられており、第2回動体22の第2回転軸AX2の周りでの回転又は傾斜を許容する。つまり、支持体21は、第2回動体22を、第2トーションバー32a,32bを介して第2回転軸AX2の周りにねじり回転可能に支持している。第2トーションバー32a,32bは、第2回転軸AX2に沿って延びる。内側可動部である第1回動体23は、第2回動体22の中央環状部22bに形成された開口22aに収まるように配置され、長円形の外形を有し、第2回動体22に対して回転可能に支持されている。第2回動体22と第1回動体23との間には、Y方向内に延びる1対の第1トーションバー31a,31bが設けられており、第1回動体23の第1回転軸AX1の周りでの回転又は傾斜を許容する。つまり、第2回動体22は、第1回動体23を、第1トーションバー31a,31bを介して第1回転軸AX1の周りにねじり回転可能に支持している。第1トーションバー31a,31bは、第1回転軸AX1に沿って延びる。以上において、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2とは、互いに直交し90°の角度をなす。ただし、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2とは、90°以外の角度で交差させることもできる。第1回動体23上に形成されたミラー24は、駆動部80に駆動されて第1回動体23とともに姿勢を変化させ、入射したレーザ光等をその姿勢に応じた方向に反射する。
支持体21が第2回転軸AX2の周りに可動な状態で第2回動体22を支持し、第2回動体22が第1回転軸AX1の周りに可動な状態で第1回動体23を支持する結果として、第1回動体23又はこの表面に形成されたミラー24は、第1回転軸AX1と第2回転軸AX2との周りで回転可能すなわち傾斜可能となり、ミラー24による反射光の2次元的な走査が可能になる。
第1回動体23や第2回動体22は、第1及び第2回転軸AX1,AX2に関して対称な形状を有する。つまり、第2回動体22を構成する中央環状部22bは、第1及び第2回転軸AX1,AX2に関して対称的な形状を有し、4つの周辺環状部22dは、互いに等しい大きさを有し、かつ、第1及び第2回転軸AX1,AX2に関して対称的に配置されている。第1回動体23や第2回動体22の形状が第1及び第2回転軸AX1,AX2に関して対称的であることは必須の事項ではない。つまり、第1回動体23や第2回動体22の形状は、第1及び第2回転軸AX1,AX2に関して非対称であってもよく、この場合も回動体23,22に所期の回転動作を行わせることができる。
外側可動部である第2回動体22は、その矩形輪郭の四隅に設けられている周辺環状部22dの片側の表面上に、第1~第4コイルCO1~CO4を支持している。つまり、第1~第4コイルCO1~CO4は、中央環状部22bの周囲外側に配置されており、中央環状部22bの外側に設けられた周辺環状部22dに支持されている。第1~第4コイルCO1~CO4は、第2回動体22の上側面上において、第1及び第2回転軸AX1,AX2の交点CPの周りにおいて第1及び第2回転軸AX1,AX2により4分割された同一平面上の4つの領域R1~R4に分かれて配置されている。ここで、第1及び第2コイルCO1,CO2は、交点CPを挟み対向し、第3及び第4コイルCO3,CO4は、交点CPを挟み対向する。具体的には、第1コイルCO1は、図1の右上の第1象限の領域R1に配置され、第2コイルCO2は、左下の第3象限の領域R2に配置され、第3コイルCO3は、左上の第2象限の領域R3に配置され、第4コイルCO4は、右下の第4象限の領域R4に配置されている。第2回動体22の4隅において、周辺環状部22dには、第1~第4周辺開口OP1~OP4が形成され、第1~第4コイルCO1~CO4は、第1~第4周辺開口OP1~OP4を囲むように第1~第4周辺開口OP1~OP4の周囲に配置されている。第1~第4コイルCO1~CO4の中心C1~C4は、第1~第4周辺開口OP1~OP4の中心と略一致している。
第1コイルCO1と第2コイルCO2とは、互いに連結されて第1コイル系CS1を形成する。第3コイルCO3と第4コイルCO4とは、互いに連結されて第2コイル系CS2を形成する。スキャナ本体11において、第1コイル系CS1と第2コイル系CS2とを合わせたものを回路CKと呼ぶ。回路CKは、第1~第4コイルCO1~CO4を含むものとなっている。
第1コイル系CS1は、正極側から、第1給電線41aと、第1コイルCO1と、第1配線42aと、第2コイルCO2と、第2給電線43aとを含む。第1給電線41aは、第1端子TA1と第1コイルCO1の一端とを電気的に接続し、第1配線42aは、第1配線42aの支持体として機能する中央環状部22b上に形成されて、第1コイルCO1の他端と第2コイルCO2の一端を連結し、第2給電線43aは、第2コイルCO2の他端と第2端子TA2とを電気的に接続する。ここで、図3(A)を参照して、第1コイルCO1は反時計方向に巻かれ、第2コイルCO2は時計方向に巻かれており、第1端子TA1を第2端子TA2に対して相対的に正電位とした場合、第1コイルCO1に反時計方向の電流I11が流れ、第2コイルCO2に時計方向の電流I12が流れ、ローレンツ力に相当する駆動力F11,F12が各コイルCO1,CO2に与えられる。つまり、詳細は後述するが、第1及び第2コイルCO1,CO2おいて、所定の磁界H1,H2下で、+X方向に向かって第2回転軸AX2の周りに時計方向に揃った駆動力が発生する。
図1等に戻って、第2コイル系CS2は、正極側から、第3給電線41bと、第4コイルCO4と、第2配線42bと、第3コイルCO3と、第4給電線43bとを含む。第3給電線41bは、第3端子TA3と第4コイルCO4の一端とを電気的に接続し、第2配線42bは、第2配線42bの支持体として機能する中央環状部22b上に形成されて、第4コイルCO4の他端と第3コイルCO3の一端とを電気的に接続し、第4給電線43bは、第3コイルCO3の他端と第4端子TA4とを電気的に接続する。ここで、図3(A)を参照して、第4コイルCO4は時計方向に巻かれ、第3コイルCO3は反時計方向に巻かれており、第3端子TA3を第4端子TA4に対して相対的に正電位とした場合、第4コイルCO4に時計方向の電流I14が流れ、第3コイルCO3に反時計方向の電流I13が流れ、ローレンツ力に相当する駆動力F13,F14が各コイルCO3,CO4に与えられる。つまり、詳細は後述するが、第3及び第4コイルCO3,CO4おいて、所定の磁界H3,H4下で、+X方向に向かって第2回転軸AX2の周りに時計方向に揃った駆動力が発生する。以上のように、第1及び第2コイル系CS1,CS2コイルにおいて、コイルCO1~CO4は、斜めに交差するようにたすき掛けに連結されている。また、各コイルCO1~CO4は、立体的な結線を可能にするため、絶縁層中にトンネル式配線材(薄膜導体)を埋め込んだ構造を有する。
図3(B)の状態は、図3(A)の状態に対して電流の方向を反転させたものである。つまり、第1端子TA1を相対的に負電位とした場合、第1コイルCO1に時計方向の電流I21が流れ、第2コイルCO2に反時計方向の電流I22が流れ、各コイルCO1,CO2に駆動力F21,F22が与えられる。さらに、第3端子TA3を相対的に負電位とした場合、第4コイルCO4に反時計方向の電流I24が流れ、第3コイルCO3に時計方向の電流I23が流れ、各コイルCO3,CO4に駆動力F23,F24が与えられる。
駆動力F11,F13や駆動力F12,F14は、矩形状の各コイルCO1~CO4の2辺に与えられる等しい力を含んでいる。第2回動体22等に与えられる回転力を考える場合、厳密には、駆動力F11~F14の作用位置の第2回転軸AX2からの距離を加味したねじりモーメント又はトルクを考察する必要がある。ただし、図示の例では、各コイルCO1~CO4が第2回転軸AX2を挟んで対称的に配置されているので、ねじりモーメントでなく単なる力として扱っても回転動作に関して同様の結果が導かれる。以下でも、軸周りの対称的な配置が前提となっている場合、説明の簡便のため、回転動作についてねじりモーメントでなく単なる力として説明を行う場合がある。
以上において、各コイルCO1~CO4は、XY面に平行な同一平面上に配置され、しかも、第1及び第2回転軸AX1,AX2によって規定される平面上にある。よって、駆動力F11~F14の絶対値や駆動力F21~F24の絶対値が等しければ、第2回動体22に対して第2回転軸AX2の周りに無駄のない回転力を生じさせることができるだけでなく、回転に寄与しない並進力によって不要振動が発生することを確実に抑制することができる。
図1に戻って、磁界形成部(磁界付与手段)12は、第1~第4コイルCO1~CO4に対応して第1~第4磁界形成器MG1~MG4を備える。第1~第4磁界形成器MG1~MG4は、第1~第4コイルCO1~CO4の位置において第1~第4コイルCO1~CO4のコイル面に略平行な磁界を与える。
図2(A)及び2(B)に示すように、第1磁界形成器MG1は、第1コイルCO1の外側であって第2回動体22と支持体21との間に形成された湾曲する隙間部分G1に配置される第1磁極51を有する。また、第1磁界形成器MG1は、第1コイルCO1の内側であって第1周辺開口OP1内に配置される第2磁極52を有する。第1磁極51は、外側用の第1磁石53のN極部分53aに対応し、第2磁極52は、内側用の第2磁石54のS極部分54aに対応する。第1磁石53と第2磁石54とは、ヨーク55によって支持基板13上に支持され磁気回路を形成している。第1磁界形成器MG1は、第1コイルCO1において、第1コイルCO1のコイル面に平行で、第1コイルCO1を貫通するように横切って内側に向かう磁界H1を形成する。この場合、磁極51,52を第1コイルCO1の近傍に可動範囲を制限することなく配置でき、第1コイルCO1に与える駆動力を高く安定したものとすることができる。つまり、第1磁界形成器MG1によってコイルCO1に対してコイル面に垂直な方向に大きな力を発生させることができ、小さな電流で大きな振り角を実現することができる。
図2(C)は、図2(B)等に示す第1磁界形成器MG1の変形例を説明する部分断面図である。この場合、支持基板13を兼ねるセンターヨーク113の外周に沿ってその上面に磁石153が接合され、磁石153上に外周ヨーク213が接合されている。外周ヨーク213のうち、第1コイルCO1に外側から対向して第1コイルCO1を囲む内向突起213aにおいて、第1磁極51が形成されている。また、第1コイルCO1の内側であって、センターヨーク113の矩形突起113aの頂部に、第2磁極52が形成されている。なお、スキャナ本体11の支持体21は、外周ヨーク213上に固定されている。
図1に戻って、第2磁界形成器MG2は、第1磁界形成器MG1と同様の構造を有する。すなわち、第2磁界形成器MG2は、第2コイルCO2の外側であって第2回動体22と支持体21との隙間部分G2に配置される第1磁極51と、第2コイルCO2の内側であって第2周辺開口OP2内に配置される第2磁極52とを有する。図3(A)に示すように、第2磁界形成器MG2は、第2コイルCO2において、第2コイルCO2のコイル面に平行で第2コイルCO2を貫通するように横切って内側に向かう磁界H2を形成する。
第3磁界形成器MG3は、第1磁界形成器MG1と同様の構造を有する。すなわち、第3磁界形成器MG3は、第3コイルCO3の外側であって第2回動体22と支持体21との隙間部分G3に配置される第1磁極51と、第3コイルCO3の内側であって第3周辺開口OP3内に配置される第2磁極52とを有する。第3磁界形成器MG3は、図3(A)に示すように、第3コイルCO3において、第3コイルCO3のコイル面に平行で第3コイルCO3を貫通するように横切って内側に向かう磁界H3を形成する。
第4磁界形成器MG4は、第1磁界形成器MG1と同様の構造を有する。すなわち、第4磁界形成器MG4は、第4コイルCO4の外側であって第2回動体22と支持体21との隙間部分G4に配置される第1磁極51と、第4コイルCO4の内側であって第4周辺開口OP4内に配置される第2磁極52とを有する。第4磁界形成器MG4は、図3(A)に示すように、第4コイルCO4において、第4コイルCO4のコイル面に平行で第4コイルCO4を貫通するように横切って内側に向かう磁界H4を形成する。
以上で説明した磁界形成部(磁界付与手段)12の場合、第1~第4コイルCO1~CO4に形成される磁界H1~H4が、内外に関して共通する方向に形成される。この結果、図3(A)に示す電流I11~I14等によって第2回転軸AX2の周りに偶力を発生させることが容易になり、図示を省略するが、第1回転軸AX1の周りに偶力を発生させることも容易になる。また、以上で説明した磁界形成部12や第2回動体22の場合、第2回動体22の周辺環状部22dに第1~第4コイルCO1~CO4を支持させ、周辺環状部22dの内外に磁極51,52を配置する構造となっており、第2回動体22の回転動作に対して磁界形成器MG1~MG4又は磁界形成部12が干渉することを回避することができる。つまり、各コイルCO1~CO4を支持する回動体22,23について大きな振り角を実現することができる。
支持基板13は、外枠において、スキャナ本体11を支持し、外枠の内側に第1~第4界形成器MG1~MG4を収納する凹部を有する。支持基板13は、鉄、アルミ、真鍮等の金属で形成することができ、または、ガラスエポキシ、ベークライト、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂系材料で形成することができる。
図4(A)は、図3(A)に示す電流の方向に対応する駆動力を説明する概念図であり、第2回転軸AX2に対して紙面に沿った上側(+Y側)で、第1及び第3コイルCO1,CO3において紙面に垂直な上向き(+Z側)にローレンツ力による駆動力F1,F3が生じ、第2回転軸AX2に対して紙面に沿った下側(-Y側)で、第2及び第4コイルCO2,CO4において紙面に垂直な下向き(-Z側)にローレンツ力による駆動力F2,F4が生じる。ここで、第2回転軸AX2を基準とした場合、第1コイルCO1の駆動力F1と、第2コイルCO2の駆動力F2とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっており、第3コイルCO3の駆動力F3と、第4コイルCO4の駆動力F4とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっている。また、第2回転軸AX2を基準とした場合、コイルCO1,CO3に与えられる駆動力F1,F3の合成力と、コイルCO2,CO4に与えられる駆動力F2,F4の合成力とは、偶力をなす。結果的に、コイルCO1~CO4を支持する第2回動体22は、第2回転軸AX2に沿って+X側に向かった場合、時計回りの回転力すなわち駆動力を受ける。この場合、駆動力F1~F4は、大きさが等しく、第2回転軸AX2の周りで偶力を構成するように第1回転軸AX1を中心とする回転の周方向(つまり紙面に垂直でZ軸に平行な方向)に与えられるので、駆動力のロスが少なく、第2回動体22に意図しない力が与えられることを抑制できる。
図4(E)は、図4(A)に対応し、第2回動体22に与えられる力が第2回転軸AX2の周りで対称的な偶力となって無駄がないことを説明する概念図である。第2回動体22において、コイルCO1~CO4は、第2回転軸AX2に平行な同一平面(コイル面CSに沿った面)内に配置されており、コイルCO1~CO4に与えられる駆動力F(図4(A)の駆動力F1~F4に相当)は、第2回転軸AX2を中心とする回転の周方向又は接線方向に沿ったものになるので、駆動力Fのすべてが偶力として無駄なく回転に寄与する。
図4(B)は、図3(B)に示す電流の方向に対応する駆動力を説明する概念図であり、第2回転軸AX2に対して紙面に沿った上側(+Y側)で、第1及び第3コイルCO1,CO3において紙面に垂直な下向き(-Z側)にローレンツ力による駆動力F1,F3が生じ、第2回転軸AX2に対して紙面に沿った下側(-Y側)で、第2及び第4コイルCO2,CO4において紙面に垂直な上向き(+Z側)にローレンツ力による駆動力F2,F4が生じる。詳細な説明は省略するが、第2回転軸AX2を基準とした場合、第1コイルCO1の駆動力F1と、第2コイルCO2の駆動力F2とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっており、第3コイルCO3の駆動力F3と、第4コイルCO4の駆動力F4とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっている。結果的に、コイルCO1~CO4を支持する第2回動体22は、第2回転軸AX2に沿って+X側に向かった場合、反時計回りの回転力すなわち駆動力を受ける。この場合も、駆動力F1~F4は、大きさが等しく、第2回転軸AX2の周りで偶力を構成するように周方向に与えられる。
図4(A)及び4(B)に示す状態を正逆として交互に繰り返すならば、第2回動体22を、第1~第4コイルCO1~CO4に与えられる力に追従させて、第2回転軸AX2の周りで往復回転又は往復傾斜させることができる。つまり、第2回動体22は、第2回転軸AX2の周りに与えられる時計方向及び反時計方向の回転力に追従して往復回転する。この際、図1に示す第1及び第2端子TA1,T2に与える信号波形や第3及び第4端子TA3,T4に与える信号波形は、鋸歯状波に限らず、三角波、正弦波、その他任意の波形とすることができ、第2回動体22を第2回転軸AX2の周りで非共振的に往復回転させることができ、様々な振れ角の増減パターンで往復回転又は往復傾斜(つまり揺動)させることができる。図4(A)及び4(B)に示す状態の切り換えは、つまり図4(A)及び4(B)に示す正状態とその波形を反転させた逆状態との繰り返しに関しては、正逆が対称的である必要はなく、正逆で振幅が異なってもよく、駆動力がない状態と、図4(A)又は4(B)に示す状態と切り換えてもよい。
図4(C)及び4(D)は、第1コイル系CS1への給電の極性と、第2コイル系CS2への給電の極性とを互に反転させた場合を示す。
図4(C)の場合、図1に示す第1端子TA1を第2端子TA2に対して相対的に正電位としつつ、第3端子TA3を第4端子TA4に対して相対的に負電位としている。結果的に、第1回転軸AX1に対して紙面に沿った右側(+X側)で、第1及び第4コイルCO1,CO4において紙面に垂直な上向き(+Z側)にローレンツ力による駆動力F1,F4が生じ、第1回転軸AX1に対して紙面に沿った左側(-X側)で、第2及び第3コイルCO2,CO3において紙面に垂直な下向き(-Z側)にローレンツ力による駆動力F2,F3が生じる。第1回転軸AX1に関して、第1コイルCO1の駆動力F1と、第2コイルCO2の駆動力F2とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっており、第3コイルCO3の駆動力F3と、第4コイルCO4の駆動力F4とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっている。結果的に、コイルCO1~CO4を支持する第2回動体22は、第1回転軸AX1に沿って+Y側に向かった場合、反時計回りの回転力すなわち駆動力を受ける。駆動力F1~F4は、大きさが等しく、第1回転軸AX1の周りで偶力を構成するように第1回転軸AX1を中心とする回転の周方向(つまり紙面に垂直でZ軸に平行な方向)に与えられる。
図4(D)の場合、図1に示す第1端子TA1を相対的に負電位としつつ第3端子TA3を相対的に正電位としている。結果的に、第1回転軸AX1に対して紙面に沿った右側(+X側)で、第1及び第4コイルCO1,CO4において紙面に垂直な下向き(-Z側)にローレンツ力による駆動力F1,F4が生じ、第1回転軸AX1に対して紙面に沿った左側(-X側)で、第2及び第3コイルCO2,CO3において紙面に垂直な上向き(+Z側)にローレンツ力による駆動力F2,F3が生じる。第1回転軸AX1に関して、第1コイルCO1の駆動力F1と、第2コイルCO2の駆動力F2とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっており、第3コイルCO3の駆動力F3と、第4コイルCO4の駆動力F4とは、互いに大きさが等しく回転方向が一致する力となっている。結果的に、コイルCO1~CO4を支持する第2回動体22は、第1回転軸AX1に沿って+Y側に向かった場合、時計回りの回転力すなわち駆動力を受ける。駆動力F1~F4は、大きさが等しく、第1回転軸AX1の周りで偶力を構成するように周方向に与えられる。
図4(C)及び4(D)に示す状態を交互に繰り返すならば、第2回動体22を第1回転軸AX1の周りに往復回転させる駆動力を与えることができる。ただし、第2回動体22は、第1回転軸AX1の周りで僅かなねじり回転を許容されるが大きく回転できない構造となっている。よって、第2回動体22自体は実質的に回転しないが、これに支持された第1回動体23を間接的に第1回転軸AX1の周りで往復回転させることができる。この場合、第1回動体23は、共振周期で往復回転又は往復傾斜(つまり揺動)することになる。
図5(A)は、図1に示す駆動部80の回路構成の具体例を説明するブロック図である。駆動部80は、相対的に低周波の波形形成装置81と、相対的に高周波の波形形成装置82と、第1アンプ84と、第2アンプ85とを備える。低周波の波形形成装置81は、一対の出力端子から、第2回動体22を回転動作させるための低速側駆動信号S1を第1駆動信号として出力する。低速側駆動信号S1は、第2回動体22を非共振的に動作させるものであり、任意の周波数を利用できる。第2回動体22の非共振的動作を可能にする低速側駆動信号S1としては、ラスター走査等に用いる鋸歯状波に限らず、三角波、正弦波とすることが出来るが、非周期的なパルス波、矩形波であってもよい。さらに、低速側駆動信号S1は直流成分をバイアスとして付加したものとすることができる。つまり、低速側駆動信号S1として、非共振で周期的な動作や非周期的な動作を可能にする様々なものを用いることができる。また、言うまでもないが、低速側駆動信号S1は、第2回動体22の共振周波数に対応した周波数とし、第2回動体22を共振的に動作させても構わない。波形形成装置81からの一方の低速側駆動信号S1は、第1アンプ84を経て、正相で端子TA1,TA2間つまり第1コイル系CS1に出力され、波形形成装置81からの他方の低速側駆動信号S1は、第2アンプ85を経て、正相で端子TA3,TA4間つまり第2コイル系CS2に出力される。高周波の波形形成装置82は、一対の出力端子から、第1回動体23を回転動作させるための高速側駆動信号S2を第2駆動信号として出力する。高速側駆動信号S2は、第1回動体23を共振的に動作させる。高速側駆動信号S2としては、正弦波状のものとすることができ第1回動体23の共振周波数に対応した周波数とすることができる。波形形成装置82からの一方の高速側駆動信号S2は、第1アンプ84を経て、正相で端子TA1,TA2間つまり第1コイル系CS1に出力され、波形形成装置82からの他方の高速側駆動信号S2は、第2アンプ85を経て、位相が反転された状態つまり逆相で端子TA3,TA4間つまり第2コイル系CS2に出力される。
図5(B)に示すように、低速側駆動信号(第1駆動信号)S1は、両コイル系CS1,CS2に正相で(つまり符号を一致させた状態で)供給される。この低速側駆動信号(第1駆動信号)S1は、基本の駆動信号であり、後に詳述するようにコイル系CS1,CS2を介して第2回転軸AX2の周りに回転力を発生させることができ、例えばスキャナ10による光線の副走査に用いられる。図5(C)に示すように、高速側駆動信号(第2駆動信号)S2は、第1コイル系CS1に正相で供給され第2コイル系CS2に逆相で供給され、結果として相互に符号を反転させた状態で供給される。この高速側駆動信号(第2駆動信号)S2は、追加の駆動信号であり、後に詳述するようにコイル系CS1,CS2を介して第1回転軸AX1の周りに回転力を発生させることができ、例えばスキャナ10による光線の主走査に用いられる。この場合、両コイル系CS1,CS2に正相で(結果的に各コイルCO1~CO4に正相で)出力される低速側駆動信号S1によって、図4(A)及び4(B)に示す駆動力を交互に付与する動作を繰り返させ、これと並行して、第1コイル系CS1に正相で、かつ、第2コイル系CS2に逆相で(結果的に第1及び第2コイルCO1,CO2に正相で、かつ、第3及び第4コイルCO3,CO4に逆相で)出力される高速側駆動信号S2によって、図4(C)及び4(D)に示す駆動力を交互に付与する動作を繰り返させることができる。なお、図5(A)に示すアンプ84,85は、オペレーショナルアンプに限らず、様々な回路素子で構成することができる。
図6(A)及び6(B)は、第1コイルCO1について、磁界、電流及び駆動力の状態を説明する概念的な拡大断面図であり、図3(A)及び3(B)又は図4(A)及び4(B)に示す状態に対応する。第2回動体22のうち1つの周辺環状部22d上には、XY面に平行に延びる第1コイルCO1が形成され、第1磁界形成器MG1を構成する磁極51,52は、第1コイルCO1をX方向又はY方向に相当する横方向から挟むように配置されている。第1磁界形成器MG1により、第1コイルCO1のコイル面CSつまりXY面に平行で第1コイルCO1を横切って内側に向かう磁界H1が形成されている。この結果、第1コイルCO1に供給される電流I11,I21の方向に応じてZ方向に正負のローレンツ力が発生し、第1コイルCO1を回転させる駆動力F1となる。ここで、駆動力F1の方向は、磁界H1の方向に対しても電流I11,I21の方向に対しても垂直になる。つまり、駆動力F1の方向は、図面外の第2回転軸AX2(図1参照)の周りでの第1コイルCO1又は第2回動体22の回転の軌跡TRの接線方向に平行になっており、駆動力F1によって第2回動体22に対して無駄のない回転力を与えることができる。以上の動作は、図3(A)及び3(B)等を前提とする観点で、直接的には電流I11,I21が低周波である場合について説明していることになるが、電流I11,I21が高周波であっても同様のことが成り立つ。
図6(C)は、比較例の装置のコイルについて、磁界、電流及び駆動力の状態を説明する概念的な拡大断面図である。第2回動体22’のうち1つの周辺環状部22d’上には、第1コイルCO1が形成され、第1磁界形成器MG1’を構成する51’,52’は、第1コイルCO1をZ方向に相当する縦方向から挟むように配置されている。図6(C)に示す比較例の装置の場合、第1コイルCO1によってアンペールの法則に従って形成される磁界と、第1磁界形成器MG1’によって形成される磁界HVとの相互作用によって、第1コイルCO1に対してコイル面CSに垂直な方向に力を生じさせることができるが、これによって大きな駆動力を得ることは容易でない。第1コイルCO1を構成する隣接する電線間(つまり平行に流れる電流間)でコイル面CSに垂直な方向の磁束が相殺されるため第1コイルCO1内外の磁束のみが有効なものとして残り、コイル面CSに垂直な方向の駆動力が第1コイルCO1の内側と外側とに残るが全体的に相殺された状態となるので、第1コイルCO1を支持する第2回動体22’に与えられる駆動力は不足する。また、比較例の装置の場合、フレミングの左手の法則による駆動力については、コイル面CSに垂直な方向に向かうものとならない。この点について具体的に説明すると、第1磁界形成器MG1’により、第1コイルCO1のコイル面CSつまりXY面に垂直な磁界HVが形成されている。フレミングの左手の法則に従って第1コイルCO1に供給される電流の方向に応じて生じるローレンツ力FVの方向は、コイル面CSつまりXY面に沿ったものとなり、コイル面CSに垂直な方向に向かうものとならず、第2回動体22’に与えられる駆動力は不足する。さらに、第1コイルCO1全体に磁界HVが形成される場合、ローレンツ力FVが全体として釣り合って合力が略ゼロとなる。結果的に、第2回動体22’に与えられるローレンツ力FVは、第2回動体22’を振動させる可能性はあるが、駆動効率が極めて低いものとなる。さらに、第2回動体22’又は第1コイルCO1を許容される軌跡TRに沿って変位させることができたとしても、第1磁界形成器MG1’の磁極51’,52’に妨げられて第2回動体22’の可動範囲が狭くなってしまう。
以下、図1、3(A)、3(B)、4(A)~4(D)、図5(A)~5(C)等を参照して、駆動装置100の具体的動作について説明する。
まず、図1、図5(A)、図4(A)等を参照して、第2回転軸AX2の周りの非共振の回転動作について説明する。この場合、駆動部80から供給される電流、つまり第1駆動信号S1は、低周波(1kHz以下、ラスター走査に適した例えば30、50,60Hz)で、例えば鋸歯タイプとなっている。駆動部80より、第1及び第2コイルCO1,CO2を含む第1コイル系CS1と、第3及び第4コイルCO3,CO4を含む第2コイル系CS2とに対して、端子TA1~TA4を介して極性を一致させた正相の信号に対応する電流I1~I4が供給される(図5(A)の第1アンプ84の動作に相当)。つまり、駆動部80を構成する相対的に低周波の波形形成装置81から2つの信号が出力され、1つの信号は、アンプ84により正相のまま第1コイル系CS1に印可され、もう1つの信号も、アンプ85を経て正相のまま第2コイル系CS2に印可される。結果的に、反時計回りの電流を順方向電流とした場合、第1及び第3コイルCO1,CO3には、正相で反時計回りの順方向電流I1,I3が流れ、第2及び第4コイルCO2,CO4には、正相で時計回りの逆方向電流I2,I4が流れる。この電流と固定的に設定された磁界との電磁作用(つまりフレミング左手の法則)により、第1及び第3コイルCO1,CO3には、+Z向きすなわち上向きの力が発生し、第2及び第4コイルCO2,CO4には、-Z向きすなわち下向きの力が発生する(具体的には図4(A)参照)。両コイル系CS1,CS2において電流I1~I4の向きが逆転すると、第1及び第3コイルCO1,CO3には、-Z向きすなわち下向きの力が発生し、第2及び第4コイルCO2,CO4には、+Z向きすなわち上向きの力が発生する(具体的には図4(B)参照)。第2回動体22は第2回転軸AX2の周りに正逆の回転を周期的に繰り返す。結果として、第2回動体22に支持される第1回動体23又はこの表面に形成されたミラー24は第2回転軸AX2の周りに第2回動体22と一体となって正逆の回転を周期的に繰り返す。この際、第2回転軸AX2に対して傾いた斜め軸の周りに回転力が与えられることが回避され、第1駆動信号S1によって各コイルCO1~CO4に与えられる力を第2回転軸AX2の周りの回転力として無駄なく利用することができる。また、第1駆動信号S1に直流成分がバイアス信号として含まれる場合には、回転の中心角度または基準の角度にオフセット(中心角度をシフトさせる)を加えることができる。
次に、図1、図5(A)図4(C)等を参照して、第1回転軸AX1の周りの共振の回転動作について説明する。この場合、駆動部80から供給される電流、つまり第2駆動信号S2は、高周波(例えば1kHz~20kHz)で、正弦波タイプとなっている。駆動部80より、第1及び第2コイルCO1,CO2を含む第1コイル系CS1に対して、端子TA1,TA2を介して、正相の信号に対応する電流I1,I2が供給されるとともに、第3及び第4コイルCO3,CO4を含む第2コイル系CS2に対して、端子TA3,TA4を介して、逆相の信号に対応する電流I3’,I4’が供給される(図5の第2アンプ85の動作に相当)。つまり、駆動部80を構成する相対的に高周波の波形形成装置82から2つの信号が出力され、1つの信号は、アンプ84により正相のまま第1コイル系CS1に印可され、もう1つの信号は、アンプ85を経て位相が反転され逆相信号となり第2コイル系CS2に印可される。結果的に、反時計回りの電流を順方向電流とした場合、第1コイルCO1には、正相で反時計回りの順方向電流I1が流れるとともに、第2コイルCO2には、正相で時計回りの逆方向電流I2が流れ、かつ、第4コイルCO4には、逆相で反時計回りの順方向電流I4’が流れるとともに、第3コイルCO3には、逆相で時計回りの逆方向電流I3’が流れる。この電流と固定的に設定された磁界との電磁作用(つまりフレミング左手の法則)により、反時計回りの順方向電流I1,I4’を与えた第1及び第4コイルCO1,CO4には、+Z向きすなわち上向きの力が発生し、時計回りの逆方向電流I2,I3’を与えた第2及び第3コイルCO2,CO3には、-Z向きすなわち下向きの力が発生する(具体的には図4(C)参照)。両コイル系CS1,CS2において電流I1,I2,I3’,I4’の向きが逆転すると、第1及び第4コイルCO1,CO4には、-Z向きすなわち下向きの力が発生し、第2及び第3コイルCO2,CO3には、+Z向きすなわち上向きの力が発生する(具体的には図4(D)参照)。以上のように第1回転軸AX1を挟んだ一方の第1及び第4コイルCO1,CO4に対して共通する一方向の力を発生させ、第1回転軸AX1を挟んだ他方の第2及び第3コイルCO2,CO3に対して共通する逆方向の力を発生させる場合、第2回動体22は、第2トーションバー32a,32bの存在により大きく回動しないが、第1回転軸AX1の周りで僅かな周期的なねじり回転(つまり変位角の周期的な変動)を与えられる。この僅かな周期的なねじり回転は、第2回動体22から第1トーションバー31a,31bを介して第1回動体23に伝わり、第1回動体23を第1トーションバー31a,31bの周りに回転させる。このような回転が共振条件を満たす場合、第1回動体23又はミラー24は、第1回転軸AX1又は第1トーションバー31a,31bの周りに比較的大きな振幅で共振しつつ往復回転する。結果的に、ミラー24は、第1回転軸AX1の周りに共振回転する。以上から明らかなように、第1コイル系CS1及び第2コイル系CS2にともに正相の信号を印可する状態(図4(A)及び4(B)参照)では、第2回動体22又はミラー24が第2回転軸AX2の周りに往復回転するのに対し、第1コイル系CS1に正相の信号を印可しつつ第2コイル系CS2に逆相の信号を印可する状態(図4(C)及び4(D)参照)では、第1回動体23又はミラー24が第1回転軸AX1の周りに往復回転する。このことは、信号の切り替えによって、第2回動体22の第2回転軸AX2の周りの回転動作と、第1回動体23の第1回転軸AX1の周りの回転動作との切り替えが可能になること、つまり回転軸の切り替えが可能になることを意味する。第2駆動信号S2を図4(C)及び4(D)に示すように第1コイル系CS1に対して正相で印可しつつ第2コイル系CS2に対して逆相で印可する駆動方法では、第1回転軸AX1に対して傾いた斜め軸の周りに回転力が与えられることが回避され、第2駆動信号S2によって各コイルCO1~CO4に与えられる力を第1回転軸AX1の周りの回転力として無駄なく利用することができる。なお、第1回転軸AX1の周りの効率的な共振を達成するため、駆動部80から供給される高周波は、第1回動体23の共振周波数に対応する。以上の説明では、第2駆動信号S2が正弦波タイプであるとしたが、第2駆動信号S2は、厳密に正弦波である必要は無く、疑似正弦波、矩形波、三角波、その他の周期信号であってもよい。
以上をまとめると、図5(A)に示す駆動部80によって、低周波の第1駆動信号S1を図4(A)及び4(B)に示すコイルCO1~CO4に対して正相の信号として供給することにより(具体的には、例えばコイルCO1に反時計回りの順方向電流I1が供給されるときに、コイルCO2に時計回りの逆方向電流I2が供給され、コイルCO3に反時計回りの順方向電流I3が供給され、コイルCO4に時計回りの逆方向電流I4が供給され)、ミラー24の第2回転軸AX2の周りの比較的低周期の往復回転が可能になる。さらに、第1駆動信号S1、具体的には低周波の信号の供給と並行して、図5(A)に示す駆動部80によって、高周波の第2駆動信号S2を図4(A)及び4(B)に示すコイルCO1,CO2に対して正相の信号として供給するとともに、コイルCO3,CO4に対して逆相の信号として供給すること、つまりコイルCO3,CO4に対する駆動信号の極性のみを変更することにより(具体的には、例えばコイルCO1に反時計回りの順方向電流I1が供給されるときに、コイルCO2に時計回りの逆方向電流I2が供給され、コイルCO3に時計回りの逆方向電流I3’が供給され、コイルCO4に反時計回りの順方向電流I4’が供給され)、第1回転軸AX1の周りの比較的高周期の往復回転が可能になる。結果的に、第2回転軸AX2の周りの比較的低周期の往復回転と第1回転軸AX1の周りの比較的高周期の往復回転とを独立性を保ちつつ複合させた2軸往復回転動作が可能になる。
以上で説明した実施形態の駆動装置100によれば、各コイルCO1~CO4に正相で印可される第1駆動信号(低速側駆動信号)S1によって第2回転軸AX2の周りに回転力を発生させることができ、第1及び第2コイルCO1,CO2に正相で印加され第3及び第4コイルCO3,CO4に逆相で印加される第2駆動信号(高速側駆動信号)S2によって第1回転軸AX1の周りに回転力を発生させることができる。つまり、第1及び第2コイルCO1,CO2に正相の信号を印加しつつ第3及び第4コイルCO3,CO4に印加する信号を正相及び逆相いずれにするかの組み合わせ(すなわち駆動信号の極性の部分的変更)によって、第2回転軸AX2の周りの回転力と第1回転軸AX1の周りの回転力とを任意に切り替え、或いはこれら2つの回転軸AX1,AX2の周りの回転力を独立した制御で並行させて発生させることができる。この際、第1駆動信号S1によって各コイルCO1~CO4に与えられる力を第2回転軸AX2の周りの回転力として無駄なく利用することができ、第2駆動信号S2によって各コイルCO1~CO4に与えられる力を第1回転軸AX1の周りの回転力として無駄なく利用することができ、結果的に両回転軸AX1,AX2に対して傾いた斜め軸の周りに回転力が与えられることを回避でき、駆動効率が良いだけでなく、歪みの少ない走査軌跡を実現することができる。しかも、各コイルCO1~CO4が同一平面上に配置されていることから、コイルCO1~CO4に与えられる駆動力は、第1又は第2回転軸AX1,AX2を中心とする回転の周方向又は接線方向に沿ったものになるので、駆動力のすべてが無駄なく回転に寄与し、回転に寄与しない並進力又は不要力によって不要振動が発生することを確実に抑制することができる。また、磁界形成部(磁界付与手段)12によってコイル面CSに平行な方向の磁界を与えることで、各コイルCO1~CO4に対してコイル面CSに垂直な方向に大きな力を発生させることができ、各コイルCO1~CO4を支持する回動体22,23について大きな振り角を実現することができる。駆動装置100を動作させる第1駆動信号S1については、任意の周波数を用いることができ、さらに周期的なものに限らず非周期的なものとすることができる。このような第1駆動信号S1により、第2回動体22を任意の周波数で非共振的に、さらには周期的に限らず非周期的に回転させることができるので、第2回動体22の傾斜タイミング等の動作パターンについての自由度が増し、駆動装置100の用途を広げることができる。
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施形態において、第1~第4コイルCO1~CO4を2巻きにしたものが例示されているがコイルの巻き数は駆動装置100の仕様に応じて様々に設定でき、第1~第4コイルCO1~CO4へ供給する電流も駆動装置100の仕様に応じて様々に設定できる。
第1~第4磁界形成器MG1~G4によって発生する磁束又は磁界の向きは、第1~第4コイルCO1~CO4を基準として内向きに限らず、第1~第4コイルCO1~CO4を基準として外向きとすることもできる。ただし、その場合も、第1~第4コイルCO1~CO4に流す電流の向きを設定することで、図4(A)及び4(B)に示す駆動力や図4(C)及び4(D)に示すに示す駆動力が発生するように調整する。
外側の支持体21は、矩形枠状の外形を有するものに限らず、コの字形状、Cの字形状等を有するものであってもよい。第1回動体23は、長円形の外形を有するものに限らず、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形等の各種形状を有するものであってもよい。第2回動体22は矩形枠状の外形を有するものに限らず、コの字形状、Cの字形状、長円形の外形を有するものであってもよい。