JP7386581B1 - プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置 - Google Patents

プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】マイクロ波のモードを単一化しつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行することを可能とする、プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置を提供する。【解決手段】導電性の外部導体29と、その内部において外部導体29の主軸に沿って延在し、マイクロ波を供給するマイクロ波供給ケーブル5と接続されており、供給されたマイクロ波を先端側へ伝送させてプラズマを発生させる誘電性部材31と、を備え、誘電性部材31の直径Dは、誘電性部材31の形状に対応する基本モードのマイクロ波の遮断係数Lb、誘電性部材31の形状に対応する第1高次モードのマイクロ波の遮断係数L1、誘電性部材31の比誘電率ε、誘電性部材31を伝送するマイクロ波の周波数F、および光速cを用いてTIFF0007386581000039.tif20170(1)式の条件を満たすように誘電性部材31が構成される。【選択図】図2

Description

本発明は、プラズマを発生させるプラズマ発生装置、および当該プラズマ発生装置を備えておりワークに対してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に関する。
半導体製品、液晶パネルなどの製造プロセスでは、表面洗浄、エッチング、CVD処理等においてプラズマが利用されている。また、これら以外にも幅広い分野において、被処理対象物(以下、「ワーク」と総称する)に対してプラズマを利用した表面改質処理や撥水処理などが行われている。
ワークに対してプラズマ処理を行う装置は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、マイクロ波エネルギーを用いてプラズマを発生させるプラズマ発生装置と、プラズマ発生装置と接続されておりワークを収容するプラズマ処理部とを備えている。プラズマ処理部は一例として金属製の真空チャンバであり、プラズマ処理部には1または2以上のプラズマ発生装置が接続されている。
プラズマ処理装置に用いられるプラズマ発生装置としては、導波管構造を備えており先端部においてプラズマを発生させる装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に係るプラズマ発生装置は、先端側が開口部となっている円筒導波管の内部に誘電部材が配設されている。誘電部材は円筒導波管の主軸に沿って延在しており、円筒導波管の基端側においてマイクロ波供給ケーブルと接続されている。プラズマ発生装置に供給されたマイクロ波は誘電部材によって基端側から先端側へと伝送される。そして誘電部材の先端側表面(プラズマ処理面)に接触するガスが励起されることでプラズマが発生する。
特許第7174466号
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
従来の構成では、プラズマを発生させる誘電部材のサイズを大型化させることが困難である。すなわち誘電部材の直径が小さい場合、基本モードのマイクロ波のみが誘電部材の内部を伝送する。しかし誘電部材の直径を大きくすると基本モードのマイクロ波のみならず、高次モードのマイクロ波も誘電部材の内部を伝送するようになる。複数のモードのマイクロ波が混在すると、異なるモードのマイクロ波同士が干渉して位相歪または伝送損失などが発生する。その結果、発生するプラズマの形状が歪む事態またはプラズマ出力が低下する事態などが起こるので、ワークに対するプラズマ処理効率が低下することとなる。
そのため、従来では位相歪または伝送損失などの悪影響を回避すべく単一モードのマイクロ波を伝送させるためには、プラズマ発生装置の径を小さくする必要がある。径を小さくすることにより、プラズマ発生装置がプラズマ処理を実行できる範囲(プラズマ処理面の面積)が狭くなるので、大面積のワークに対してプラズマ処理を行うには多数のプラズマ発生装置を用いる必要がある。その結果、プラズマ処理装置におけるプラズマ処理効率を向上させることが困難であり、またコストが高くなるという問題も懸念される。このように、従来のプラズマ発生装置では伝送されるマイクロ波のモードを単一化しつつ、広範囲に対してプラズマ処理を実行することが困難である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、マイクロ波のモードを単一化しつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行することを可能とする、プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るプラズマ発生装置は、一端側に開口部を有する導電性の導波管と、前記導波管の内部において前記導波管の主軸に沿って延在し、マイクロ波を供給するマイクロ波供給ケーブルと接続されており、供給された前記マイクロ波を前記一端側へ伝送させてプラズマを発生させる誘電性部材と、を備え、前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の形状に対応する基本モードのマイクロ波の遮断係数Lb、前記誘電性部材の形状に対応する第1高次モードのマイクロ波の遮断係数L1、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000002

の条件を満たすように前記誘電性部材が構成されることを特徴とするものである。
(作用・効果)この構成によれば、一端側に開口部を有する導電性の導波管が用いられており、当該導波管の内部には誘電性部材が導波管の主軸に沿って延在している。誘電性部材はマイクロ波供給ケーブルから供給されたマイクロ波を一端側へ伝送させ、当該マイクロ波を用いてプラズマを発生させる。
そして誘電性部材の直径は、(1)式で示された条件を満たすように構成される。当該条件を満たす場合、基本モードのマイクロ波はカットオフされることなく誘電性部材によって伝送される一方、第1高次モードのマイクロ波はカットオフされ、誘電性部材による伝送が阻害される。また高次モードの中で最も遮断波長が長い第1高次モードがカットオフされるような直径であるので、第2高次モードおよび第3高次モードなどを含む全ての高次モードのマイクロ波が誘電性部材においてカットオフされることとなる。よって、(1)式で示された条件を満たす場合、誘電性部材が伝送するマイクロ波は基本モードに単一化されることとなる。従って、当該範囲内で誘電性部材の直径を最大化させることにより、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できる。
また、(1)式で示される範囲の上限および下限の各々は、誘電性部材の比誘電率の平方根に反比例する。すなわち誘電性部材の比誘電率を低くすることにより、(1)式の条件を満たすような誘電性部材の直径の範囲をさらに大きくすることができる。言い換えると、誘電性部材を構成する材料として、より比誘電率が低い材料を用いることで、基本モードのマイクロ波のみが伝送される状態を維持しつつ誘電性部材の直径をより大型化できる。その結果、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、プラズマ処理範囲をさらに広くすることが可能となる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が円形となるように構成されており、前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000003

の条件を満たすことが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、誘電性部材は前記主軸に直交する断面が円形となるように構成されているので、誘電性部材を伝送するマイクロ波はTE11モードが基本モードに相当し、TM01モードが第1高次モードに相当する。マイクロ波の遮断係数はモード毎に特定の値となるので、断面が円形である誘電性部材が伝送するマイクロ波を基本モードに単一化させるために誘電性部材の直径の値が満たすべき条件は、誘電性部材の比誘電率ε、誘電性部材を伝送するマイクロ波の周波数F、および光速cを用いた(2)式によって定めることができる。よって、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できるような誘電性部材の直径の値を、より確実かつ容易に特定できる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正六角形となるように構成されており、前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000004

の条件を満たすことが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正六角形となるように構成されているので、誘電性部材を伝送するマイクロ波はTE11モードに類似するモードである類似TE11モードが基本モードに相当し、TM01モードに類似するモードである類似TM01モードが第1高次モードに相当する。マイクロ波の遮断係数はモード毎に特定の値となるので、断面が正六角形である誘電性部材が伝送するマイクロ波を基本モードに単一化させるために誘電性部材の直径の値が満たすべき条件は、誘電性部材の比誘電率ε、誘電性部材を伝送するマイクロ波の周波数F、および光速cを用いた(3)式によって定めることができる。よって、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できるような誘電性部材の直径の値を、より確実かつ容易に特定できる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正方形となるように構成されており、前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000005

の条件を満たすことが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正方形となるように構成されているので、誘電性部材を伝送するマイクロ波はTE10モードが基本モードに相当し、TM11モードが第1高次モードに相当する。マイクロ波の遮断係数はモード毎に特定の値となるので、断面が正方形である誘電性部材が伝送するマイクロ波を基本モードに単一化させるために誘電性部材の直径の値が満たすべき条件は、誘電性部材の比誘電率ε、誘電性部材を伝送するマイクロ波の周波数F、および光速cを用いた(4)式によって定めることができる。よって、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できるような誘電性部材の直径の値を、より確実かつ容易に特定できる。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係るプラズマ発生装置は、一端側に開口部を有する導電性の導波管と、前記導波管の内部において前記導波管の主軸に沿って延在し、マイクロ波を供給するマイクロ波供給ケーブルと接続されており、供給された前記マイクロ波を前記一端側へ伝送させてプラズマを発生させる誘電性部材と、
前記誘電性部材の形状に対応する基本モードのマイクロ波が前記誘電性部材を伝送することを抑制させる基本モード抑制部と、を備え、前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の形状に対応する第1高次モードのマイクロ波の遮断係数L1、前記導波管の形状に対応する第2高次モードのマイクロ波の遮断係数L2、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000006

の条件を満たすように前記誘電性部材が構成されることを特徴とするものである。
(作用・効果)この構成によれば、一端側に開口部を有する導電性の導波管が用いられており、当該導波管の内部には誘電性部材が導波管の主軸に沿って延在している。誘電性部材はマイクロ波供給ケーブルから供給されたマイクロ波を一端側へ伝送させ、当該マイクロ波を用いてプラズマを発生させる。また、基本モード抑制部を備えることにより、基本モードのマイクロ波が誘電性部材を伝送することが抑制される。
そして誘電性部材の直径は、(5)式で示された条件を満たすように構成される。当該条件を満たす場合、第2高次モードの遮断波長より伝送させる波長が短いマイクロ波はカットオフされ、誘電性部材による伝送が阻害される。そのため、カットオフの対象外となるマイクロ波のモードは基本モードと第1高次モードに限定される。そして基本モードのマイクロ波は基本モード抑制部によって誘電性部材を伝送することが抑制されるので、誘電性部材を伝送可能なマイクロ波のモードは第1高次モードに限定されることとなる。
よって、直径が(5)式で示された条件を満たす誘電性部材と基本モード抑制部とを備えることにより、誘電性部材が伝送するマイクロ波は第1高次モードに単一化されることとなる。従って、当該範囲内で誘電性部材の直径を最大化させることにより、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できる。また基本モードと比べて第1高次モードはマイクロ波の波長が長く、遮断係数が低い。そのため(1)式の条件を満たす直径の値と比べて(5)式の条件を満たす直径の値は確実に大きくなる。従って、第1高次モードのマイクロ波のみが誘電性部材を伝送する構成とすることにより、誘電性部材をさらに大型化できる。
また、(5)式で示される範囲の上限および下限の各々は、誘電性部材の比誘電率の平方根に反比例する。すなわち誘電性部材の比誘電率を低くすることにより、(5)式の条件を満たすような誘電性部材の直径の範囲をさらに大きくすることができる。言い換えると、誘電性部材を構成する材料として、より比誘電率が低い材料を用いることで、第1高次モードのマイクロ波のみが伝送される状態を維持しつつ誘電性部材の直径をより大型化できる。その結果、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、プラズマ処理範囲をさらに広くすることが可能となる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が円形となるように構成されており、
前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000007

の条件を満たすことが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、誘電性部材は前記主軸に直交する断面が円形となるように構成されているので、誘電性部材を伝送するマイクロ波はTM01モードが第1高次モードに相当し、TE21モードが第2高次モードに相当する。マイクロ波の遮断係数はモード毎に特定の値となるので、直径が(6)式で示された条件を満たす誘電性部材と基本モード抑制部とを備えることにより、誘電性部材が伝送するマイクロ波は第1高次モードに単一化されることとなる。よって、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できるような誘電性部材の直径の値を、より確実かつ容易に特定できる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正六角形となるように構成されており、
前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000008

の条件を満たすことが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正六角形となるように構成されているので、誘電性部材を伝送するマイクロ波はTM01モードに類似するモードである類似TM01モードが第1高次モードに相当し、TE21モードに類似するモードである類似TE21モードが第2高次モードに相当する。マイクロ波の遮断係数はモード毎に特定の値となるので、直径が(7)式で示された条件を満たす誘電性部材と基本モード抑制部とを備えることにより、誘電性部材が伝送するマイクロ波は第1高次モードに単一化されることとなる。よって、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できるような誘電性部材の直径の値を、より確実かつ容易に特定できる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正方形となるように構成されており、
前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
Figure 0007386581000009

の条件を満たすことが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、この構成によれば、誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正方形となるように構成されているので、誘電性部材を伝送するマイクロ波はTM11モードが第1高次モードに相当し、TE20モードが第2高次モードに相当する。マイクロ波の遮断係数はモード毎に特定の値となるので、直径が(8)式で示された条件を満たす誘電性部材と基本モード抑制部とを備えることにより、誘電性部材が伝送するマイクロ波は第1高次モードに単一化されることとなる。よって、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できるような誘電性部材の直径の値を、より確実かつ容易に特定できる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は前記導波管の内部を充填するように前記導波管の主軸に沿って延在していることが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、誘電性部材は導波管の内部を充填している。すなわち誘電性部材の表面が導波管と接している。すなわち導波管の内部を誘電性部材で充填させることにより、マイクロ波を伝送させる誘電性部材は広い範囲において、外部導体である導波管と接触している。従って、誘電性部材において発生する熱を効率良く導波管へと伝導させてプラズマ発生装置の外部へと逃がすことができる。その結果、高出力のマイクロ波を供給させる場合であっても誘電性部材に熱が蓄積することを回避できるので、プラズマ発生装置の高温化を防止しつつ、プラズマ発生装置におけるプラズマの出力を向上させることが可能となる。
また、上述した発明において、前記誘電性部材は、前記マイクロ波供給ケーブルとの接続部において、比誘電率の変化を緩和させる比誘電率緩衝部を備えていることが好ましい。
(作用・効果)この構成によれば、誘電性部材は比誘電率緩衝部を備えている。比誘電率緩衝部は、マイクロ波供給ケーブルと誘電性部材との接続部において、比誘電率の変化を緩和させる。比誘電率緩衝部を介してマイクロ波供給ケーブルと誘電性部材とを接続させることにより、マイクロ波供給ケーブルから誘電性部材までの部分における比誘電率の変化が小さくなる。そのため比誘電率緩衝部を備えることにより、比誘電率の急激な変化に起因するインピーダンス整合性の低下を回避できる。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係るプラズマ処理装置は、マイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記マイクロ波供給部から供給されるマイクロ波を用いてプラズマを発生させるプラズマ発生部と、前記プラズマ発生部が発生させたプラズマを用いてワークを処理するプラズマ処理部と、を備え、前記プラズマ発生部は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラズマ発生装置であることを特徴とするものである。
(作用・効果)この構成によれば、本発明に係るプラズマ発生装置にマイクロ波を供給してプラズマを発生させ、当該プラズマを用いてワークに対するプラズマ処理を行う。そのため、ワークに対してプラズマ処理を行う装置において本発明の効果を奏することができる。すなわち、本発明に係るプラズマ発生装置は単一のモードのマイクロ波が伝送される状態を維持しつつ誘電性部材を大型化できる。従って、伝送損失または位相歪などに起因してプラズマ処理効率が低下することを回避しつつ、プラズマ処理ができる範囲をより広くさせることが可能となる。
本発明に係るプラズマ発生装置およびプラズマ処理装置によれば、一端側に開口部を有する導電性の導波管が用いられており、当該導波管の内部には誘電性部材が導波管の主軸に沿って延在している。誘電性部材はマイクロ波供給ケーブルから供給されたマイクロ波を一端側へ伝送させ、当該マイクロ波を用いてプラズマを発生させる。
そして誘電性部材の直径は、数1または数5で示された条件を満たす範囲内となるように構成される。数1で示される条件を満たす場合、誘電性部材を伝送するマイクロ波のモードを基本モードに単一化できる。数5で示される条件を満たす場合、基本モード抑制部を備えることで、誘電性部材を伝送するマイクロ波のモードを第1高次モードに単一化できる。従って、当該範囲内で誘電性部材の直径を最大化させることにより、マイクロ波のモードを確実に単一化させつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行できる。
また、数1または数5で示される範囲の上限および下限の各々は、誘電性部材の比誘電率の平方根に反比例する。すなわち誘電性部材の比誘電率を低くすることにより、条件を満たすような誘電性部材の直径の範囲をさらに大きくすることができる。言い換えると、誘電性部材を構成する材料として、より比誘電率が低い材料を用いることで、基本モードのマイクロ波のみが伝送される状態または第1高次モードのマイクロ波のみが伝送される状態を維持しつつ、誘電性部材の直径をより大型化できる。その結果、マイクロ波のモードを単一化しつつ、より広い範囲に対してプラズマ処理を実行することを可能とする、プラズマ発生装置およびプラズマ処理装置を実現できる。
実施例1に係るプラズマ処理装置の全体構成を説明する概略図である。 実施例1に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。 実施例1に係るプラズマ発生部の構成を説明する斜視図である。 実施例1に係るプラズマ処理装置について、プラズマ発生部とプラズマ処理部とを組み合わせる状態を示す図である。 実施例1に係るプラズマ発生部について、誘電性部材と外部導体とを組み合わせる状態を示す図である。 実施例1に係るプラズマ発生部における比誘電率の変化を示す図である。(a)はプラズマ発生部の基端側を示す縦断面図であり、(b)はプラズマ発生部の基端側について、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化を示すグラフ図である。 実施例1において、誘電性部材を伝送可能なマイクロ波のモードと誘電性部材の直径との関係を示す図である。 実施例1におけるマイクロ波のモードを説明する図である。(a)は基本モードに相当するTE11モードについて、誘電性部材の断面における電界の向きと遮断係数とを示す図であり、(b)は第1高次モードに相当するTM01モードについて、誘電性部材の断面における電界の向きと遮断係数とを示す図であり、(c)は第2高次モードに相当するTE21モードについて、誘電性部材の断面における電界の向きと遮断係数とを示す図である。 実施例2に係るプラズマ発生部の構成を説明する図である。(a)は実施例2に係るプラズマ発生部の側面図であり、(b)は(a)におけるA-A断面図である。 実施例2に係るプラズマ発生部の効果を説明する図である。(a)は実施例2においてプラズマが効率良く発生しやすい領域を示す図であり、(b)は実施例1においてプラズマが効率良く発生しやすい領域を示す図である。 実施例3に係るプラズマ発生部の構成を説明する図である。(a)は実施例3に係るプラズマ発生部の構成を説明する斜視図であり、(b)は実施例3に係る誘電性部材の直径を説明する断面図である。 実施例1ないし実施例6の各々における誘電性部材の断面形状、マイクロ波の基本モード、第1高次モード、第2高次モード、および単一化されるマイクロ波のモードを説明する一覧図である。 実施例4に係るプラズマ発生部の構成を説明する図である。(a)は実施例4に係るプラズマ発生部の構成を説明する斜視図であり、(b)は実施例4に係る誘電性部材の断面図である。 実施例5に係るプラズマ発生部の構成を説明する図である。(a)は実施例5に係るプラズマ発生部の構成を説明する斜視図であり、(b)は実施例5に係る誘電性部材の直径を説明する断面図である。 実施例6に係るプラズマ発生部の構成を説明する図である。(a)は実施例6に係るプラズマ発生部の構成を説明する斜視図であり、(b)は実施例6に係る誘電性部材の断面図である。 変形例に係るプラズマ発生部の構成を説明する縦断面図である。(a)は誘電性部材の先端側部材が一様な径を有する変形例を示す図であり、(b)は誘電性部材の先端側部材が先端側に向かって径が大きくなる変形例を示す図である。 変形例に係るプラズマ発生装置の構成を説明する縦断面図である。 変形例に係るプラズマ発生装置の構成を説明する縦断面図である。 変形例に係るプラズマ発生部について、第1誘電体と第2誘電体と外部導体とを組み合わせる状態を示す図である。 実施例3におけるマイクロ波のモードを説明する図である。(a)は基本モードに相当する類似TE11モードについて、誘電性部材の断面における電界の向きと遮断係数とを示す図であり、(b)は第1高次モードに相当する類似TM01モードについて、誘電性部材の断面における電界の向きと遮断係数とを示す図であり、(c)は第2高次モードに相当する類似TE21モードについて、誘電性部材の断面における電界の向きと遮断係数とを示す図である。
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1は実施例1に係るプラズマ処理装置1の概略図である。
<全体構成の説明>
実施例1に係るプラズマ処理装置1は、マイクロ波発生部3と、マイクロ波供給ケーブル5と、プラズマ発生部7と、プラズマ処理部9と、を備えている。なお図1および図4において、プラズマ処理部9は縦断面図を示している。
マイクロ波発生部3は、周波数を可変にして特定の周波数のマイクロ波を発振する。本実施例において、マイクロ波発生部3は2.45GHzのマイクロ波を発振するものとする。マイクロ波供給ケーブル5は、マイクロ波発生部3およびプラズマ発生部7の各々に接続されており、マイクロ波発生部3から発振したマイクロ波を伝送してプラズマ発生部7へと供給する。
プラズマ発生部7は、マイクロ波発生部3から供給されたマイクロ波のエネルギーを用いて、先端部においてプラズマを発生させる。プラズマ発生部7はプラズマ処理部9と接続されており、プラズマを発生させる先端部はプラズマ処理部9の内部空間Lに接触するように構成されている。
本実施例において、プラズマ処理装置1は3つのプラズマ発生部7を備える構成を例示しているが、プラズマ発生部7の数は適宜変更してよい。プラズマ処理装置1はプラズマ発生部7の数に応じた本数のマイクロ波供給ケーブル5を備えている。マイクロ波供給ケーブル5は、各々のプラズマ発生部7に接続されている。プラズマ発生部7の構成については後述する。プラズマ発生部7は、本発明におけるプラズマ発生装置に相当する。
プラズマ処理部9は、ワークWに対してプラズマ処理を行う。すなわちプラズマ処理部9は、プラズマ発生部7によって発生したプラズマを用いて、ワークWに対する所定の処理を行う。ワークWの例として、半導体製品、液晶パネル、太陽電池アレイなどが挙げられる。
プラズマ処理部9は、チャンバ11と、ワーク保持部13とを備えている。チャンバ11は接続プレート15を備えており、図1に示すように、電磁バルブ16を備えた排気用流路17を介して排気装置19と連通接続されている。排気装置19が作動することにより、チャンバ11の内部空間Lは脱気されて減圧する。
またチャンバ11は、電磁バルブ20を備えた供給用流路21を介して気体供給装置23と連通接続されている。気体供給装置23は、チャンバ11の内部空間Lへ所定のガスGを供給する。気体供給装置23が供給するガスGの例として、アルゴンガスを例とする稀ガス、または酸素などが挙げられる。
またチャンバ11は開閉扉25を備えている。開閉扉25は一例としてチャンバ11の側面に形成されており、開閉可能に構成されている。開閉扉25が開状態となることにより、図示しないワーク搬送機構によってワークWをチャンバ11へ搬入または搬出することが可能となる。電磁バルブ16および電磁バルブ20の開閉、排気装置19および気体供給装置23の動作、並びに開閉扉25の開閉は、コンピュータなどを備える図示しない制御機構によって統括制御される。当該制御機構は、プラズマ処理装置1におけるその他の各種動作についても統括制御を行う。
ワーク保持部13は、チャンバ11の内部空間Lに収納されており、ワークWを保持する。ワーク保持部13の例として、チャックテーブルなどが挙げられる。開閉扉25を介してチャンバ11の内部へ搬入されたワークWは、ワーク保持部13によって安定保持される。
接続プレート15は、チャンバ11の外壁部(筐体)のうち一方の面を構成している。本実施例ではチャンバ11の上面に接続プレート15が配置されている。チャンバ11の筐体と同様に、接続プレート15は金属を例とする導電性材料で構成されている。プラズマ発生部7は、接続プレート15を介してプラズマ処理部9と接続されている。すなわち図4に示すように、接続プレート15にはプラズマ発生部7の先端部の形状に応じた貫通孔27が形成されており、各々のプラズマ発生部7の先端部が貫通孔27に嵌合可能に構成されている。各々のプラズマ発生部7の先端部が貫通孔27に嵌合することで、図1に示すように接続プレート15の表面側の空間と接続プレート15の裏面側の空間(チャンバ11の内部空間L)とは遮断され、内部空間Lは密閉状態となる。
<プラズマ発生部の構成>
ここでプラズマ発生部7の構成について説明する。図2はプラズマ発生部7の縦断面図である。プラズマ発生部7は図2に示すように、外部導体29と、誘電性部材31と、マイクロ波供給口33とを備えている。
外部導体29は、金属を例とする導電性材料で構成されている筒状部材である。外部導体29はマイクロ波の伝送モードに応じた形状の導波管であり、先端側に開口部35が形成されている。外部導体29の基端側(図2の右側)は、隔壁36によって閉鎖されている。実施例1では外部導体29として、円形導波管を例として説明する。
外部導体29の先端部における外周面にはリング状のストッパ39が設けられている。図1および図4に示すように、接続プレート15に設けられている貫通孔27にプラズマ発生部7を嵌合させることによって、外部導体29の外周部に設けられているストッパ39が接続プレート15の外表面に当接する。ストッパ39が接続プレート15に当接することで、プラズマ処理部9に接続されたプラズマ発生部7の姿勢を安定に維持できる。
誘電性部材31は、外部導体29の主軸方向(図2などではx方向)に延びる棒状部材であり、外部導体29の内部に配設される。誘電性部材31はマイクロ波を伝送する誘電性材料で構成されている。誘電性部材31は基端側においてマイクロ波供給ケーブル5と接続されており、マイクロ波供給ケーブル5が供給するマイクロ波を基端側から先端側へと伝送する。
また実施例1において誘電性部材31の基端側は、外部導体29の内部を充填するように構成されている。本実施例において、誘電性部材31は全体として円柱状の部材であるものとする。すなわち実施例1において、誘電性部材31の断面は円形となるように構成されている。なお誘電性部材31の断面とは、外部導体29の主軸であるx方向に直交する面(ここではyz平面)における、誘電性部材31断面を意味するものとする。また本実施例において、誘電性部材31は石英で構成されているものとする。
誘電性部材31の基端側には凹部37が形成されている。実施例1において凹部37はx方向に延在しており、マイクロ波供給ケーブル5をx方向へ挿入可能に構成されている。
誘電性部材31のうち先端側の部分は、外部導体29の先端側に設けられている開口部35を閉塞するように配設されている。誘電性部材31の先端側部分は、外部導体29の開口部35からプラズマ発生部7の先端側方向に突出している。
誘電性部材31の先端側における表面を外表面41とする。誘電性部材31の基端部から先端部へと伝送されるマイクロ波エネルギーはさらに外表面41へと伝送され、外表面41の周囲においてプラズマを発生させることができる。なお本実施例において、第2誘電体33の外表面41(先端側の表面)は、外部導体29の基端側から先端側に向かって先細りとなるテーパ状となっている。テーパ状とすることにより、プラズマ発生部7においてインピーダンスをより好適に整合できる。
図2において、誘電性部材31の直径を符号Dで示している。実施例1において、マイクロ波は誘電性部材31の内部全体を伝送するので、直径Dは誘電性部材31のうち最も径が大きい部分を示すものとする。実施例1では誘電性部材31の先端側の部分が基端側の部分より僅かに大きくなるように構成されている。そのため、実施例1において誘電性部材31の直径Dは、誘電性部材31の先端側部分のうち径が最も大きい部分に相当する。また他の例として、誘電性部材31のうち外部導体29から突出している先端側の部分が、外部導体29の内部を充填している基端側の部分より径が小さい構成である場合、外部導体29の内径Pの値が誘電性部材31の直径Dの値に相当する。なお、マイクロ波を伝送させる部分が誘電性部材31の断面全体ではなく誘電性部材31の一部に限定される場合、当該限定される部分のうち径が最大である部分を直径Dとして、当該直径Dの値が範囲M1または範囲M2となるように定めてよい。
図1および図4に示すように、プラズマ発生部7の先端部すなわち誘電性部材31の先端部が貫通孔27に嵌合することにより、誘電性部材31の外表面41は接続プレート15を通り抜けてチャンバ11の内部空間Lに延出する。すなわちプラズマ発生部7は誘電性部材31を介してチャンバ11の内部空間Lと接続される。
マイクロ波供給口33は外部導体29の基端部に配設されており、マイクロ波供給ケーブル5を誘電性部材31へと案内させる。実施例1ではTEモードのマイクロ波を伝送させるので、マイクロ波供給口33は導波管である外部導体29の基端側(底面)において軸方向に延出するように構成されている。すなわちマイクロ波供給口33は、外部導体29の隔壁36をx方向へ貫通するように配置されている。マイクロ波ケーブル5はマイクロ波供給口33の内部を経由して誘電性部材31の凹部37へ案内され、凹部37の延出方向(実施例1ではx方向)へ挿入されて誘電性部材31に接続される。
実施例1ではマイクロ波供給ケーブル5と誘電性部材31との接続部において、凹部37はインピーダンスを整合させる空隙部として作用する。すなわち凹部37は、マイクロ波が入力(供給)される方向について比誘電率の変化を緩和させることで、より好適にインピーダンスを整合させる。
すなわち図6(a)に示すように、プラズマ発生部7はマイクロ波が入力される方向(実施例1ではx方向)について、マイクロ波供給ケーブル5が延びる第1領域R1と、誘電性部材31のうち凹部37が延在していない第2領域R2と、誘電性部材31のうち凹部37が延在している第3領域R3とに分けられる。第3領域R3は、第1領域R1と第2領域R2との間に存在する領域となる。
実施例1において、第1領域R1ではマイクロ波供給ケーブル5の周囲に存在する媒体は空気である。そのため図6(b)に示すように、領域R1における比誘電率ε1は1.0と比較的低い。また第2領域R2において、誘電性部材31が外部導体29の内部を充填している。そのため、第2領域R2における比誘電率ε2は誘電性部材31を構成する材料(ここでは石英)の比誘電率に相当する。すなわち第2領域R2における比誘電率ε2は3.78であり、ε1より高い値となる。
ここで、凹部37が形成されている第3領域R3における比誘電率ε3は、第1領域R1における比誘電率ε1より高く、かつ第2領域R2における比誘電率ε2より低い。すなわち第3領域R3では、外部導体29の径方向(y方向)において、凹部37を充填する媒体(空気)と、誘電性部材31を構成する材料(石英)とが混在している。その結果、領域R3における比誘電率ε3は、空気の比誘電率1.0と石英の比誘電率3.78との間の値となる。
その結果、マイクロ波供給ケーブル5が凹部37に挿入される部分(第1領域R1と第3領域R3との境界部分)において、比誘電率が1.0からε3へと変化する。そして凹部37に挿入されたマイクロ波供給ケーブル5と誘電性部材31との接続部(第3領域R3と第2領域R2との境界部分)において、比誘電率がε3から3.78へと変化する。すなわち凹部37を有しない場合は比誘電率が1.0から3.78へと急激に変化する一方、凹部37を備える構成では、凹部37が設けられている第3領域R3が比誘電率の変化を緩衝する領域として作用し、マイクロ波入力方向について比誘電率は緩やかに変化する。マイクロ波が入力される方向について比誘電率の変化を緩和することにより、入力側と出力側とのインピーダンスを整合させることがより容易となる。実施例1において、凹部37は本発明における比誘電率緩衝部に相当する。
また、実施例1に係るプラズマ発生部7において外部導体29は導波管構造を備えている。すなわち外部導体29の内部に導電体を配設する必要がないので、プラズマ発生部7の絶縁距離Pは外部導体29の内径に相当する。一方、同軸管構造を備える外部導体を用いる場合、外部導体の中央に中心導体(中央コア)を有するため、絶縁距離は外部導体の内径の半分以下になる。よって同軸管構造を有する従来のプラズマ発生装置と比べて、実施例1に係るプラズマ発生部7は外部導体29の内径が同じであっても絶縁距離を2倍以上の長さに確保できるので、絶縁破壊をより確実に回避できる。
<誘電性部材の説明>
ここで、実施例1に係る誘電性部材31における適切な直径Dの範囲について説明する。発明者は、図2および図5に示される誘電性部材31の直径Dを大型化していくと、誘電性部材31によって伝送されるマイクロ波のモードが多様化するという知見を得た。図7に示すように、誘電性部材31の直径Dが基本カットオフ径Db以上になると、基本モードのマイクロ波が誘電性部材31の内部を伝送可能となる。基本モードは誘電性部材31の内部を伝送可能であるマイクロ波のうち、最も遮断波長が長いマイクロ波のモードである。誘電性部材31の断面は円形であるので、誘電性部材31を伝送するマイクロ波の基本モードはTE11モードである。すなわち基本カットオフ径Dbは、基本モードのマイクロ波がカットオフされる直径Dの最大値に相当する。
そして直径Dをさらに大きくさせて直径Dの値が第1カットオフ径D1以上になると、基本モードに加えて第1高次モードのマイクロ波が誘電性部材31の内部を伝送可能となる。第1高次モードは外部導体29の内部を伝送可能であるマイクロ波のうち、基本モードの次に遮断波長が長いマイクロ波のモードである。誘電性部材31の断面は円形である場合、第1高次モードはTM01モードである。第1カットオフ径D1の値は、第1高次モードのマイクロ波がカットオフされる直径Dの最大値に相当する。
そして直径Dをさらに大きくさせて直径Dの値が第2カットオフ径D2以上になると、基本モードおよび第1高次モードに加えて、さらに第2高次モードのマイクロ波が誘電性部材31の内部を伝送可能となる。誘電性部材31の断面が円形である場合、第2高次モードはTE21モードである。第2カットオフ径D2は、第2高次モードのマイクロ波がカットオフされる直径Dの最大値に相当する。つまり、誘電性部材31の直径Dが範囲M1(Db<D<D1)にある場合、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31を伝送する。言い換えると、誘電性部材31の直径Dが範囲M1の範囲内である場合、誘電性部材31を伝送されるマイクロ波のモードが単一である状態となる。
その一方で、誘電性部材31の直径Dが範囲M2(D1<D<D2)である場合、基本モードのマイクロ波と第1高次モードのマイクロ波とが誘電性部材31の内部を伝送する。複数種類のモードのマイクロ波が伝送されると、異なるモードのマイクロ波が干渉することに起因して、位相歪または伝送損失が発生しうる。また誘電性部材31の直径Dが範囲M3(D2<D)である場合、さらに第2高次モードのマイクロ波が誘電性部材31の内部を伝送可能となるので、少なくとも3種類のモードのマイクロ波が混在することとなる。そして直径Dをさらに大型化させると、第3高次モード、第4高次モード…と、さらに多種のマイクロ波が混在することとなる。マイクロ波のモードの種類が多くなることにより、誘電性部材31において位相歪または伝送損失が発生する頻度がさらに高くなる。
そのため、複数のモードのマイクロ波が干渉することを防止する方法として、誘電性部材31の直径Dを範囲M1に収めることが考えられる。直径Dが範囲M1である場合、伝送されるマイクロ波は基本モードのみとなりモードが単一化されるので、マイクロ波の干渉に起因する位相歪などの問題は回避できる。しかしながら誘電性部材31の直径Dは第1カットオフ径D1未満に限定されるので、プラズマが発生される誘電性部材31の外表面41を大型化させることが困難となる。一例として、一般的に誘電性材料として用いられる酸化アルミニウム(ε=9.8)を用いて周波数2.45GHzのマイクロ波を伝送させる場合、第1カットオフ径D1は約30mmである。すなわちマイクロ波のモードを基本モードに単一化させる場合、誘電性部材31の直径Dは約30mmが上限であるので、大面積のワークWに対してプラズマ処理を行う場合、多数のプラズマ発生部が必要となる。
ここで発明者が鋭意検討を行った結果、誘電性部材31の比誘電率εを低くすることにより、マイクロ波のモードを単一に維持しつつ誘電性部材31の直径Dを大型化できるという知見を得るに至った。すなわち、所定モードのマイクロ波がカットオフされる直径Dの最大値をカットオフ径Dxとすると、マイクロ波の遮断係数L、マイクロ波の周波数F、誘電性部材31の比誘電率ε、および光速cを用いて、カットオフ径Dxは以下の(9)式によって求めることができる。
Figure 0007386581000010
本実施例において、遮断係数Lとは伝送されるマイクロ波の遮断波長λと誘電性部材31の半径aとの比に相当する値である。すなわちマイクロ波の遮断波長λと遮断係数Lと誘電性部材31の半径aとは以下の(10)式が成立する。すなわち遮断波長λの値は、遮断係数Lと誘電性部材31の半径aとの積によって求めることができる。
Figure 0007386581000011
遮断係数Lは、マイクロ波のモードに応じて異なる定数となる。すなわちマイクロ波のモードが基本モードである場合の遮断係数をLbとすると、基本モードの遮断係数Lbは、基本モードのマイクロ波の遮断波長λcbを用いて以下の(11)式によって算出される。
Figure 0007386581000012
また、マイクロ波のモードが第1高次モードである場合の遮断係数をL1とすると、第1高次モードの遮断係数L1は、第1高次モードのマイクロ波の遮断波長λc1を用いて以下の(12)式によって算出される。
Figure 0007386581000013
さらにマイクロ波のモードが第2高次モードである場合の遮断係数をL2とすると、第2高次モードの遮断係数L2は、第2高次モードのマイクロ波の遮断波長λc2を用いて以下の(13)式によって算出される。
Figure 0007386581000014
一例として図8(a)に示すように、誘電性部材31を伝送するマイクロ波がTE11モードである場合、マイクロ波の遮断波長λと誘電性部材31の半径aとの間にはλ=(3.412)・aの数式が成立する。また図8(b)に示すように、誘電性部材31を伝送するマイクロ波がTM01モードである場合、遮断波長λと誘電性部材31の半径aとの間にはλ=(2.613)・aの数式が成立する。さらに図8(c)に示すように、誘電性部材31を伝送するマイクロ波がTE21モードである場合、遮断波長λと誘電性部材31の半径aとの間にはλ=(2.057)・aの数式が成立する。なお図8の各図において、符号Arは電界の向きを示している。
以上の数式で示されるように、マイクロ波のモードがTE11モードである場合、当該マイクロ波における遮断係数Lの値は3.412である。また、マイクロ波のモードがTM01モードである場合、遮断係数Lの値は2.613である。マイクロ波のモードがTE21モードである場合、遮断係数Lの値は2.057である。
上述した通り、誘電性部材31において基本モードのマイクロ波のみを伝送させるには、誘電性部材31の直径Dの値は範囲M1に含まれる必要がある。すなわち、直径Dの値はDb<D<D1の条件を満たす必要がある。一般的なカットオフ径Dxを算出する(9)の式を基本カットオフ径Dbに当てはめると、基本モードのマイクロ波における遮断係数Lbを用いることで、基本カットオフ径Dbの値は以下の(14)式によって算出できる。
Figure 0007386581000015
また、(9)の式を第1カットオフ径D1に当てはめると、第1高次モードのマイクロ波における遮断係数L1を用いることで、第1カットオフ径D1の値は以下の(15)式によって算出できる。
Figure 0007386581000016
既に述べたように、誘電性部材31の内部を基本モードのマイクロ波のみが伝送される状態とするには、誘電性部材31の直径Dが基本カットオフ径Dbより大きく第1カットオフ径D1未満である必要がある。すなわち直径Dの値が、Db<D<D1の条件を満たす必要がある。当該条件に(14)の数式および(15)の数式を適用することにより、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31の内部を伝送する状態にするために直径Dが満たすべき具体的な条件は、誘電性部材31の比誘電率ε、マイクロ波の周波数F、光速c、基本モードの遮断係数Lb、および第1高次モードの遮断係数L1を用いることにより、以下の(1)で示される式となる。
Figure 0007386581000017
実施例1のように誘電性部材31の断面が円形である場合、マイクロ波の基本モードはTE11モードであり、第1高次モードはTM01モードである。よって実施例1において、基本カットオフ径DbはTE11モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。そして第1カットオフ径D1はTM01モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。
図8(a)で示すように、TE11モードの遮断係数Lは3.412である。すなわち断面が円形である誘電性部材31を用いる実施例1において、基本モードの遮断係数Lbは3.412である。そのため(14)式における基本モードの遮断係数Lbの項にTE11モードの遮断係数Lの値である3.412を代入することで、実施例1における基本カットオフ径Dbは比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる。
また図8(b)で示すように、TM01モードの遮断係数Lは2.613である。すなわち断面が円形である誘電性部材31を用いる実施例1において、第1高次モードの遮断係数L1は2.613である。そのため(15)式における第1高次モードの遮断係数L1の項にTM01モードの遮断係数Lの値である2.613を代入することで、実施例1における第1カットオフ径D1は比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる。言い換えると、断面が円形である誘電性部材31を用いる実施例1において直径Dが満たす条件は、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いた(2)の式で表すことができる。
Figure 0007386581000018
実施例1において、マイクロ波発生部3が発振するマイクロ波の周波数Fは2.45GHzである。そのため(2)式における周波数Fの項に2.45GHzの値(2.45×10)を代入することで、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31の内部を伝送する状態にするために直径Dが満たすべき具体的な条件は、誘電性部材31を構成する材料の比誘電率εを用いた数式となる。すなわち実施例1においてマイクロ波の周波数Fが2.45GHzである場合、誘電性部材31の直径Dが以下の(16)式の条件を満たすことによって、誘電性部材31を伝送するマイクロ波のモードは、基本モードであるTE11モードに単一化される。
Figure 0007386581000019
このように発明者の鋭意検討により、誘電性部材31を伝送するマイクロ波を基本モードに単一化させるために直径Dが満たす範囲M1の上限および下限は、誘電性部材31の比誘電率εの平方根に反比例するという知見が得られた。よって、誘電性部材31の比誘電率εを低くすることにより、誘電性部材31を伝送するマイクロ波を基本モードに単一化させつつ、誘電性部材31の直径Dを大型化させることができる。直径Dが大型化することにより、プラズマが発生される外表面41のサイズを大型化させることが可能となるので、プラズマ発生部7の各々におけるプラズマ処理範囲を広くすることができる。
具体的な例として、実施例1の構成において誘電性部材31の材料として酸化アルミニウムを用いた場合、酸化アルミニウムの比誘電率は9.8であるので、(16)式を満たす直径Dの条件は、22.9mm<D<29.9mm程度となる。一方、酸化アルミニウムよりも比誘電率が低い石英を誘電性部材31の構成材料として用いた場合、石英の比誘電率は3.78であるので、(16)式を満たす直径Dの条件は、36.9mm<D<48.2mm程度となる。すなわち誘電性部材31の比誘電率を低くすることにより、誘電性部材31を伝送するマイクロ波のモードが基本モードに単一化された状態を維持しつつ、誘電性部材31の直径Dをさらに大型化させることが可能となる。なお比誘電率が2.1であるテフロン(登録商標)を材料とする誘電性部材31を用いる場合、(16)式を満たす直径Dの条件は49.5mm<D<64.6mm程度となり、誘電性部材31の比誘電率を下げることによって誘電性部材31の直径Dをさらに大型化できる。
<動作の説明>
ここで、プラズマ処理装置1の動作について説明する。まずは図示しないワーク搬送機構を用いて開閉扉25からワークWをチャンバ11の内部へと搬入させ、ワーク保持部13に載置させる。ワーク保持部13は、吸着保持などの方法によってワークWを安定に保持する。そしてワーク保持部13を適宜移動させ、ワークWにおいてプラズマ処理を行う領域をプラズマ発生部7の外表面41へと近接させる。
ワークWを外表面41に近接させることによってワークWの配置が完了すると、チャンバ11の内部空間Lを調整する。すなわち、制御機構は開閉扉25を閉じてチャンバ11を密閉状態にした後、電磁バルブ16を開いて排気装置19を作動させる。排気装置19が作動することにより、チャンバ11の内部空間Lに滞留していた空気が排気される。
チャンバ11の内部空間Lを排気させた後、制御機構は電磁バルブ16を閉じるとともに電磁バルブ20を開いて気体供給装置23を作動させる。気体供給装置23が作動することにより、チャンバ11の内部空間Lへ励起用のガスGが供給される。
チャンバ11の内部空間LへガスGが供給されると、マイクロ波発生部5を作動させてマイクロ波を発振させる。発振されたマイクロ波はマイクロ波供給ケーブル5によってプラズマ発生部7へと供給される。供給されたマイクロ波は、接続機構35において誘電性部材31へ伝送される。すなわち凹部37に挿入されているマイクロ波供給ケーブル5から誘電性部材31の基端部へとマイクロ波が伝送される。
このとき、誘電性部材31に形成された凹部37にマイクロ波供給ケーブル5を挿入させることにより、マイクロ波の入力方向における比誘電率の変化が緩和されている。そのため、マイクロ波のインピーダンスはより好適に調整されるので、不要な反射電力が発生することをより確実に防止できる。
誘電性部材31の基端部に供給されたマイクロ波は誘電性部材31の内部を伝送する。すなわちマイクロ波は誘電性部材31が延びるx方向へ伝送し、誘電性部材31の先端部へと伝送される。誘電性部材31の先端部にマイクロ波が伝送されることにより、チャンバ11の内部空間Lのうち外表面41の周囲においてガスGが励起されてプラズマが発生する。プラズマ発生部7によって発生したプラズマにより、外表面41に近接配置されていたワークWが所定の処理を受ける。ワークWに対するプラズマ処理が完了した後、制御機構は開閉扉25を開状態にしてワークWをチャンバ11から搬出させ、ワークWのプラズマ処理に関する一連の工程が終了する。
<実施例1の構成による効果>
このように、実施例1に係るプラズマ発生部7では、モードが異なるマイクロ波同士の干渉を回避しつつ、より大面積のワークWに対してプラズマ処理を行うことができる。従来のプラズマ発生装置の問題点として、プラズマ発生装置の直径が29.9mmを超えると複数のモードのマイクロ波が伝送されて互いに干渉し、位相歪または伝送損失を例とする問題が発生することが知られていた。すなわち従来のプラズマ発生装置では直径を29.9mm以上とすることが困難であり、広範囲のワークにプラズマ処理を行うには多数のプラズマ発生装置が必要となるという問題点が懸念されていた。
ここで発明者が鋭意検討を行った結果、プラズマ発生装置に用いられる誘電体の材料について、比誘電率が低い材料とすることでプラズマ発生装置の大型化が可能となるという知見を得るに至った。すなわち従来のプラズマ発生装置では、比誘電率が高いという理由により、誘電体として酸化アルミニウム(ε=9.8)を用いることが一般的である。発明者は、酸化アルミニウムを誘電性部材31として用いた場合、直径Dは29.9mm未満に限定される一方、誘電性部材31として比誘電率がやや低い石英(ε=3.78)を用いることで、異なるモードのマイクロ波の干渉を回避しつつ直径Dを従来の最大値である29.9mmより大型化できることを見出した。
そして発明者はさらに鋭意検討を進めた結果、誘電性部材31が基本モードのマイクロ波のみを伝送させるような直径Dの範囲M1を示す条件、すなわち(1)の条件を特定するに至った。(1)の条件に係る基本カットオフ径Dbおよび第1カットオフ径D1はいずれも比誘電率εの平方根に反比例する値である。よって、誘電性部材31の比誘電率εを低くすることにより、範囲M1の最大値をより大きくすることができることが判明した。また、(1)の条件に係る基本カットオフ径Dbおよび第1カットオフ径D1は、いずれもマイクロ波の周波数Fに反比例する値である。よって、マイクロ波発生装部3が発振するマイクロ波の周波数Fを小さくすることによって、範囲M1の最大値をより大きくすることができることも判明した。つまり、マイクロ波の周波数Fを低くすることで、異なるモードのマイクロ波の干渉を回避しつつ直径Dを従来の最大値である29.9mmより大型化できることをも見出した。
また(1)式で示された条件(範囲M1)の最大値である第1カットオフ径D1は、誘電性部材31の比誘電率ε、誘電性部材31を伝送するマイクロ波の周波数F、第1高次モードの遮断係数L1、光速cによって算出できる値である。遮断係数L1は、誘電性部材31の形状によって、誘電性部材31を伝送する第1高次モードは特定され、遮断係数L1は第1高次モードに応じて定まる値である。従って、誘電性部材31の形状に応じて遮断係数L1は定まる値である。よって、誘電性部材31の構成材料、誘電性部材31の形状、周波数Fの条件が決定することにより、基本モードのみを伝送させる状態となるような誘電性部材31の直径Dの最大値を容易に特定できる。その結果、実施例1の構成によって、基本モードのみを伝送させる状態を確実に維持しつつ、誘電性部材31によってプラズマが発生する範囲を最大化させることが可能となる。すなわち、異なるモードの干渉に起因する位相歪などの問題が発生することを回避しつつプラズマ処理効率を最大化させるプラズマ発生部7の実現が可能となる。
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1で説明したプラズマ処理装置1と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。実施例2に係るプラズマ発生部7Aは、第1高次モードのマイクロ波のみを伝送させてプラズマを発生させる構成であるという点で、基本モードのマイクロ波のみを伝送させる構成を有する実施例1のプラズマ発生部7と相違する。なお実施例2のプラズマ処理装置1における動作は実施例1と同様であるので説明を省略する。
図9(a)は実施例2に係るプラズマ発生部7Aの側面を示す図であり、図9(b)はプラズマ発生部7AのA-A断面図である。実施例2では実施例1と同様に、外部導体29Aは円形導波管であり誘電性部材31は全体として円柱状の部材である。すなわち断面が円形である誘電性部材31Aを用いる実施例2のプラズマ発生部7Aにおいて、実施例1と同様にマイクロ波の基本モードはTE11モードであり第1高次モードはTM01モードであり、第2高次モードはTE21モードである。
実施例2に係るプラズマ発生部7Aにおいて、外部導体29Aは複数のスリット部43を備えている。スリット部43は外部導体29Aの外周に沿って並ぶように設けられている。スリット部43の各々は、外部導体29Aの主軸(ここではx方向)に延びるように形成されている。スリット部43は、TM01モードのマイクロ波とTE11モードのマイクロ波とのうち、TE11モードのマイクロ波の伝送を抑制する。すなわちスリット部43は、基本モードのマイクロ波と第1高次モードのマイクロ波とのうち、基本モードのマイクロ波の伝送を抑制する。本実施例において、スリット部43は基本モード抑制部に相当する。スリット部43の内部または外部には電磁波吸収体が配設されていてもよい。
スリット部43は外部導体29Aの主軸に延びるように形成されており、外部導体29AにおけるTE11モードの表面電流分布は基本的に外部導体29Aの主軸に交差する方向となっている。すなわちTE11モードの表面電流分布がスリット部43と交差するので、TE11モードのマイクロ波はスリット部43を介してプラズマ発生部7の外部へ放射される。その結果、TE11モードのマイクロ波が誘電性部材31の先端側へと伝送されることが抑制される。特に電磁波吸収体がスリット部43に配設されている場合、スリット部43と交差するTE11モードのマイクロ波は当該電磁波吸収体によって吸収されるので、TE11モードのマイクロ波をより効率良く減衰させることができる。
一方、TM01モードの表面電流分布は外部導体29Aの主軸に平行であるのでスリット部43と交差しない。そのため、TM01モードのマイクロ波はスリット部43と交差することなく誘電性部材31Aの基端側から先端側へと伝送される。その結果、TM01モードのマイクロ波はスリット部43によって減衰されることなく、誘電性部材31の先端側へと伝送される。このように、実施例2に係るプラズマ発生部7Aでは外部導体29Aおよび誘電性部材31Aの延在方向に沿ってスリット部43を配設することにより、基本モードに相当するTE11モードのマイクロ波と第1高次モードに相当するTM01モードのマイクロ波とのうち、第1高次モードに相当するTM01モードのみを選択的に誘電性部材31Aの先端側へと伝送させることができる。
<誘電性部材の説明>
ここで、実施例2に係る誘電性部材31Aにおける適切な直径Dの範囲について説明する。実施例1に係る誘電性部材31は直径Dの値が図7に示される範囲M1に含まれるように構成されるのに対し、実施例2に係る誘電性部材31Aは直径Dの値が範囲M2に含まれるように構成される。すなわち誘電性部材31Aの直径DはD1<D<D2の条件を満たしている。言い換えると、誘電性部材31Aの直径Dの下限は第1カットオフ径D1であり、上限は第2カットオフD2である。直径Dが範囲M2に含まれる場合、第2高次モード以上の波長を有するマイクロ波はカットオフされて誘電性部材31Aを伝送できなくなる。一方、第1高次モード以下の波長を有するマイクロ波、すなわち基本モードのマイクロ波と第1高次モードのマイクロ波とはカットオフされない。
そして、プラズマ発生部7Aは基本モードの伝送を抑制させるスリット部43を備えている。よって、第1高次モードのマイクロ波は誘電性部材31Aを伝送できる一方、基本モードのマイクロ波は誘電性部材31Aを伝送できなくなる。このように、実施例2では誘電性部材31Aは直径Dの値が範囲M2に含まれるように設定され、かつ基本モードの伝送を抑制するスリット部43を備えることにより、第1高次モードのマイクロ波のみが誘電性部材31Aを伝送する状態となる。
上述した通り、誘電性部材31Aにおいて第1高次モードのマイクロ波のみを伝送させるには、誘電性部材31Aの直径Dの値は範囲M2に含まれる必要がある。すなわち、直径Dの値はD1<D<D2の条件を満たす必要がある。言い換えると、実施例2において誘電性部材31Aの直径Dが含まれる範囲M2は、第1カットオフ径D1を下限とし、第2カットオフ径D2を上限とする範囲に相当する。一般的なカットオフ径Dxを算出する(9)の式を第1カットオフ径D1に当てはめると、第1高次モードのマイクロ波における遮断係数L1を用いることで、第1カットオフ径D1の値は以下の(15)式によって算出できる
Figure 0007386581000020
また、(9)の式を第2カットオフ径D2に当てはめると、第2高次モードのマイクロ波における遮断係数L2を用いることで、第2カットオフ径D2の値は以下の(17)式によって算出できる。
Figure 0007386581000021
ここで、実施例2に係る誘電性部材31Aの直径Dが満たすべきD1<D<D2の条件式に(15)の数式および(17)の数式を適用することにより、実施例2に係る誘電性部材31Aの直径Dが満たすべき具体的な条件を特定できる。すなわち誘電性部材31Aの直径Dが満たすべき具体的な条件は、誘電性部材31Aの比誘電率ε、マイクロ波の周波数F、光速c、第1高次モードの遮断係数L1、および第2高次モードの遮断係数L2を用いることにより、以下の(5)で示される式となる。
Figure 0007386581000022
実施例2では実施例1と同様に誘電性部材31Aの断面が円形であるので、マイクロ波の第1高次モードはTM01モードであり、マイクロ波の第2高次モードはTE21モードである。よって実施例2において、第1カットオフ径D1はTM01モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。そして第2カットオフ径D2は、TE21モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。
図8(b)で示すように、TM01モードの遮断係数Lは2.613である。すなわち断面が円形である誘電性部材31Aを用いる実施例2において、第1高次モードの遮断係数L1は2.613である。そのため(15)式における第1高次モードの遮断係数L1の項にTM01モードの遮断係数Lの値である2.613を代入することで、実施例2における第1カットオフ径D1は比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる
また図8(c)で示すように、TE21モードの遮断係数Lは2.057である。すなわち断面が円形である誘電性部材31Aを用いる実施例2において、第2高次モードの遮断係数L2は2.613である。そのため(17)式における第2高次モードの遮断係数L2の項にTE21モードの遮断係数Lの値である2.057を代入することで、実施例2における第2カットオフ径D2は比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる。言い換えると、断面が円形である誘電性部材31Aを用いる実施例2において直径Dが満たす条件は、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いた(6)の式で表すことができる。
Figure 0007386581000023
すなわち実施例2において誘電性部材31Aの直径Dが(6)式の条件を満たす場合、誘電性部材31Aを伝送できるマイクロ波のモードは、基本モードであるTE11モードまたは第1高次モードであるTM01モードに限定される。なお実施例2では実施例1と同様に、マイクロ波発生部3が発振するマイクロ波の周波数Fは2.45GHzである。そのため(6)式における周波数Fの項に2.45GHzの値(2.45×10)を代入することで、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31の内部を伝送する状態にするために直径Dが満たすべき具体的な条件は、誘電性部材31を構成する材料の比誘電率εを用いた数式となる。
すなわち実施例2においてマイクロ波の周波数Fが2.45GHzである場合、誘電性部材31Aの直径Dが以下の(18)式の条件を満たすことによって、誘電性部材31Aを伝送可能なマイクロ波のモードは、基本モードであるTE11モードまたは第1高次モードであるTM01モードに限定される。
Figure 0007386581000024
そして実施例2に係るプラズマ発生部7Aはスリット部43を備えている。基本モード(TE11モード)のマイクロ波が誘電性部材31Aを伝送することは、スリット部43によって抑制される。そのため、スリット部43を備えるプラズマ発生部7Aにおいて、誘電性部材31Aの直径Dが(18)式の条件を満たすように構成されることにより、誘電性部材31Aを伝送するマイクロ波のモードは、第1高次モードであるTM01モードに単一化される。図7に示すように、範囲M2の最大値は範囲M1の最大値より大きい値である。従って、伝送されるマイクロ波のモードを第1高次モードに単一化させる実施例2の構成では、伝送されるマイクロ波のモードを基本モードに単一化させる実施例1の構成と比べて、誘電性部材31Aの直径Dをさらに大型化させることができる。よって、実施例2の構成では、伝送されるマイクロ波のモードを単一化させるという効果を得つつ、誘電性部材31Aによってプラズマが発生される範囲をさらに広域化できる。
さらに実施例2の構成では誘電性部材31Aの外表面41において、実施例1と比べてさらに均一なプラズマ処理を行うことができる。すなわち実施例2の構成では、TM01モードに単一化されたマイクロ波が誘電性部材31Aの基端部から先端部の外表面41へと伝送される。TM01モードは図8(b)の中央図に示すように、誘電性部材31の主軸に直交する面(yz平面)において、電界Arは誘電性部材31の主軸(中心軸)について点対称である。また、図示しない磁界についても誘電性部材31の主軸について点対称である。そのため実施例2の構成では、誘電性部材31Aの外表面41においてマイクロ波はyz平面について均等に伝送される。従って実施例2に係る誘電性部材31Aの外表面41においてプラズマが効率良く発生する領域Pmは、図10(a)に示すように誘電性部材31Aの断面形状と同じ形(ここでは円形)となる。すなわちy方向およびz方向の各々について、プラズマは誘電性部材31Aの中心から外周部にわたって均等かつ効率良く発生する。
一方、実施例1ではTE11モードに単一化されたマイクロ波が誘電性部材31の基端部から先端部の外表面41へと伝送される。TE11モードは図8(a)に示すように、誘電性部材31の主軸に直交する面(yz平面)について、z方向の中央部では電界Arの流れが比較的強い一方、z方向の両端部では電界Arの流れが比較的弱い。そのため、実施例1に係る誘電性部材31の外表面41においてプラズマが効率良く発生する領域Pmは、図10(b)に示すように、y方向を長軸としてz方向を短軸とする楕円形となる。その結果、誘電性部材31の外表面41のうち、z方向における外周部ではプラズマの発生効率がz方向における中央部と比べて低くなる。このように、実施例2の構成では伝送されるマイクロ波のモードがTM01モードに単一化されるので、想定されているプラズマ処理領域(ワークWのうち、外表面41に近接している領域)において、より均一かつ高効率なプラズマ処理を行うことができる。
次に、本発明の実施例3を説明する。なお、実施例1で説明したプラズマ処理装置1と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。実施例3に係るプラズマ発生部7Bは、yz平面における形状(断面形状)が実施例1に係るプラズマ発生部7と相違する。図11(a)は、実施例3に係るプラズマ発生部7Bの斜視図である。
実施例1に係るプラズマ発生部7Bにおいて、外部導体29は円形導波管であり誘電性部材31は全体として円柱状の部材である。すなわち実施例1に係る外部導体29および誘電性部材31は、いずれもyz平面における断面が円形である。一方、実施例3に係るプラズマ発生部7Bにおいて、外部導体29Bとして正六角形の導波管が用いられる。そのため、外部導体29Bの内部を充填するように配設される誘電性部材31Bは、全体として正六角柱状の部材である。すなわち実施例3に係る外部導体29Bおよび誘電性部材31Bは、いずれもyz平面における断面が正六角形となるように構成されている。
なお実施例3において、断面が正六角形である誘電性部材31Bの直径Dは以下のものを意味する。誘電性部材31Bの直径Dは、誘電性部材31Bの最大径に相当する。すなわち図11(b)に示すように、誘電性部材31Bの断面を構成する正六角形の外接円Hcの直径が、実施例3に係る誘電性部材31Bの直径Dに相当するものとする。言い換えると、誘電性部材31Bの断面を構成する正六角形の対角線のうち最も長い対角線が誘電性部材31Bの直径Dに相当する。
実施例3に係るプラズマ発生部7Bは、yz平面における形状が実施例1と異なるので、誘電性部材31Bを伝送されるマイクロ波のモードが実施例1と実施例3とは異なる。図12に示すように、実施例1または実施例2では誘電性部材31の断面が円形であるので、伝送されるマイクロ波は基本モードがTE11モードであり、第1高次モードがTM01モードであり、第2高次モードがTE21モードである。一方、実施例3では誘電性部材31Bの断面が正六角形である。正六角形は円形に近いが異なる形状である。そのため、断面が正六角形である誘電性部材31Bを伝送するマイクロ波のモードは、断面が円形である誘電性部材31を伝送するマイクロ波のモードと似ているが異なるモードとなる。
実施例3において、断面が正六角形である誘電性部材31Bを伝送するマイクロ波は、基本モードが類似TE11モードであり、第1高次モードが類似TM01モードであり、第2高次モードが類似TE21モードである。
なお本実施例において、類似TE11モードとは、断面が円形である誘電性部材31を伝送するマイクロ波におけるTE11モードに、電磁界分布が似ている一方で遮断係数が異なっているモードを意味するものとする。類似TM01モードとは、断面が円形である誘電性部材31を伝送するマイクロ波におけるTM01モードに、電磁界分布が似ている一方で遮断係数が異なっているモードを意味するものとする。類似TE21モードとは、断面が円形である誘電性部材31を伝送するマイクロ波におけるTE21モードに電磁界分布が似ている一方で遮断係数が異なっているモードを意味するものとする。
断面が正六角形である誘電性部材31Bにおける電界および遮断係数について、図20の各図に示している。図20(a)は、類似TE11モードの電界および遮断係数を示している。類似TE11モードの電界Afは、図8(a)に示すTE11モードの電界Arと同様に、誘電性部材31Bの下側から上側へ向かう形状となっている。但し、TE11モードの電界Arと比べて、類似TE11モードの電界Afは若干崩れた形状となっている。すなわち類似TE11モードの電界AfとTE11モードの電界Arとは形状の概要は同一であるが、形状の細部に相違がある。そのため、類似TE11モードの遮断係数はTE11モードの遮断係数と比べてわずかに低い値である。すなわち、TE11モードの遮断係数Lは3.412である一方、類似TE11モードの遮断係数Lは3.130である。
図20(b)は、類似TM01モードの電界および遮断係数を示している。類似TM01モードの電界Afは、図8(b)に示すTM01モードの電界Arと同様に、誘電性部材31Bの中心から外周に向かう形状となっている。誘電性部材の断面が正六角形である場合に伝送される類似TM01モードの電界Afと、誘電性部材の断面が円形である場合に伝送されるTM01モードの電界Arとは、形状の概要は同一であるが形状の細部に相違がある。TM01モードの遮断係数Lは2.613である一方、類似TM01モードの遮断係数Lは2.351である。
る。
図20(c)は、類似TE21モードの電界および遮断係数を示している。類似TE21モードの電界Afは、図8(c)に示すTE21モードの電界Arと形状の概要が同一であるが、形状の細部に相違がある。TE21モードの遮断係数Lは2.057である一方、類似TM01モードの遮断係数Lは1.907である。
なお、類似TE11モードを例とする、断面が正六角形である誘電性部材31Bを伝送するマイクロ波のモードにおける遮断係数を算出する方法の一例として、頂点の数nを用いた以下の(19)式を乗算することによって、遮断係数の近似値を算出する方法が挙げられる。実施例3では誘電性部材31B断面が正六角形であるので、n=6を代入して遮断係数を算出する。なお誘電性部材の断面が正八角形である場合、n=8を代入する。
Figure 0007386581000025
具体的な一例として、(19)式を用いて類似TE11モードの遮断係数を算出する場合、TE11モードの遮断係数Lの数値に(19)式の数値を乗算することにより、類似TE11モードの遮断係数Lを算出できる。すなわち3.412に(19)式の数値を乗算することにより、類似TE11モードの遮断係数Lを算出できる。また、TM01モードの遮断係数Lの数値に、n=6における(19)式の数値を乗算することにより、類似TM01モードの遮断係数Lを算出できる。類似TE21モードの遮断係数Lは、TE21モードの遮断係数Lの値に、n=6における(19)式の数値を乗算することによって算出できる。
また、誘電性部材31Bを伝送するマイクロ波のモードにおける遮断係数を算出する方法の他の例として、電磁界シミュレーションを用いた演算が挙げられる。なお電磁界シミュレーション用の演算ソフトとして、HFSS(High-Frequency Structure Simulator、Ansys社製)を使用している。電磁界シミュレーション演算を用いることにより、類似TE11モードなどの遮断係数をより正確に算出することができる。
実施例3の構成では実施例1と同様に、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31Bを基端側から先端側へと伝送されるように直径Dの値が定められている。すなわち誘電性部材31Bの直径DがDb<D<D1の条件を満たすように、直径Dの値が定められる。すなわち実施例3において直径Dは図7に示す範囲M1に含まれるので、実施例3に係る誘電性部材31Bの直径Dが満たすべき具体的な条件は、実施例1と同様に(1)で示される式となる。
Figure 0007386581000026
実施例3のように誘電性部材31Bの断面が正六角形である場合、マイクロ波の基本モードは類似TE11モードであるので、実施例3における基本カットオフ径Dbは類似TE11モードのカットオフ径に相当する。すなわち、実施例3において基本モードの遮断係数Lbは、類似TE11モードの遮断係数Lに相当する。発明者の鋭意検討により、図12に示すように、正六角形の誘電性部材31Bを伝送する類似TE11モードの遮断係数Lは3.130であるという知見が得られた。そのため(1)式または(14)式における基本モードの遮断係数Lbの項に類似TE11モードの遮断係数Lの値である3.130を代入することで、実施例3における基本カットオフ径Dbは比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる。
また誘電性部材31Bの断面が正六角形である場合、マイクロ波の第1高次モードは類似TM01モードであるので、実施例3における第1カットオフ径D1は類似TM01モードのカットオフ径に相当する。発明者の鋭意検討により、図12に示すように、正六角形の誘電性部材31Bを伝送する類似TM01モードの遮断係数Lは2.351であるという知見が得られた。そのため(1)式または(15)式における第1高次モードの遮断係数L1の項に類似TM01モードの遮断係数Lの値である2.351を代入することで、実施例3における第1カットオフ径D1は比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる。
言い換えると、断面が正六角形である誘電性部材31Bを用いる実施例3において直径Dが満たす条件は、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いた(3)の式で表すことができる。すなわち実施例3において誘電性部材31Bの直径Dが以下の(3)式の条件を満たす場合、誘電性部材31を伝送するマイクロ波のモードは、基本モードである類似TE11モードに単一化される。
Figure 0007386581000027
一例として実施例3において、マイクロ波発生部3が発振するマイクロ波の周波数Fが2.45GHzである場合、(3)式における周波数Fの項に2.45GHzの値(2.45×10)を代入することで、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31Bの内部を伝送する状態にするために直径Dが満たすべき具体的な条件は、誘電性部材31Bを構成する材料の比誘電率εを用いた数式となる。当該数式の上限および下限はいずれも比誘電率εの平方根に反比例する値である。よって、比誘電率εが低い材料を誘電性材料31Bとして用いることで、伝送するマイクロ波を基本モードに単一化させつつ誘電性材料31Bの直径Dをより大型化できる。
また実施例3では誘電性部材31Bの断面が正六角形である。すなわち誘電性部材31Bの外表面41を介してプラズマ処理が行われる範囲は正六角形の領域となる。正六角形は繰り返し並列させることで平面を充填できる形状であるので、断面が正六角形である実施例3のプラズマ発生部7をyz平面に沿って複数並列させることにより、大面積のワークWにおいて確実にムラなくプラズマ処理を行うことができる。
次に、本発明の実施例4を説明する。実施例4は、断面が正六角形である実施例3と、伝送するマイクロ波を第1高次モードに単一化させる実施例2とを組み合わせた構成である。図13(a)は、実施例4に係るプラズマ発生部7Cの斜視図である。
実施例4に係るプラズマ発生部7Cにおいて、外部導体29Cおよび誘電性部材31Cはいずれも実施例3と同様に断面が正六角形となるように構成されている。そのため図12に示すように、実施例4においてマイクロ波の基本モードは類似TE11モードであり、第1高次モードは類似TM01モードであり、第2高次モードは類似TE21モードである。
そして実施例4に係るプラズマ発生部7Cにおいて、外部導体29Cは実施例2と同様に複数のスリット部43を備えている。スリット部43は図13(a)および図13(b)に示すように、外部導体29Cの外周に沿って並ぶように設けられている。スリット部43の数は適宜変更してよいが、4~8個程度であることが好ましい。スリット部43の各々は、外部導体29Aの主軸(ここではx方向)に延びるように形成されている。スリット部43は、類似TM01モードのマイクロ波と類似TE11モードのマイクロ波とのうち、類似TE11モードのマイクロ波の伝送を抑制する。すなわちスリット部43は、基本モードのマイクロ波と第1高次モードのマイクロ波とのうち、基本モードのマイクロ波の伝送を抑制する。スリット部43の内部または外部には電磁波吸収体が配設されていてもよい。
スリット部43は外部導体29Cの主軸に延びるように形成されており、外部導体29Cにおける類似TE11モードの表面電流分布はTE11モードと同様に外部導体29Cの主軸に交差する方向となっている。すなわち類似TE11モードのマイクロ波はスリット部43を介してプラズマ発生部7Cの外部へ放射される。その結果、類似TE11モードのマイクロ波が誘電性部材31Cの先端側へと伝送されることが抑制される。
一方、類似TM01モードの表面電流分布はTM01モードと同様に外部導体29Cの主軸に平行であるのでスリット部43と交差しない。そのため、類似TM01モードのマイクロ波はスリット部43と交差することなく誘電性部材31Cの基端側から先端側へと伝送される。その結果、類似TM01モードのマイクロ波はスリット部43によって減衰されることなく、誘電性部材31Cの先端側へと伝送される。このように、実施例4に係るプラズマ発生部7Cでは外部導体29Cおよび誘電性部材31Cの延在方向に沿ってスリット部43を配設することにより、基本モードに相当する類似TE11モードのマイクロ波と第1高次モードに相当する類似TM01モードのマイクロ波とのうち、第1高次モードに相当する類似TM01モードのみを選択的に誘電性部材31Cの先端側へと伝送させることができる。
ここで、実施例4に係る誘電性部材31Cにおける適切な直径Dの範囲について説明する。実施例2と同様に、実施例4に係る誘電性部材31Cは、伝送するマイクロ波を第1高次モードに単一化させる。すなわち誘電性部材31Cの直径Dの値は範囲M2に含まれるので、実施例4に係る誘電性部材31Cの直径Dが満たすべき具体的な条件は、実施例2と同様に以下の(5)で示される式となる
Figure 0007386581000028
実施例4では実施例3と同様に誘電性部材31Cの断面が正六角形であるので、マイクロ波の第1高次モードは類似TM01モードであり、マイクロ波の第2高次モードは類似TE21モードである。よって実施例4において、第1カットオフ径D1は類似TM01モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。そして第2カットオフ径D2は、類似TE21モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。
図12で示すように、類似TM01モードの遮断係数Lは2.351である。すなわち断面が正六角形である誘電性部材31Cを用いる実施例4において、第1高次モードの遮断係数L1は2.351である。そのため(5)式または(15)式における第1高次モードの遮断係数L1の項に類似TM01モードの遮断係数Lの値である2.351を代入することで、実施例4における第1カットオフ径D1は比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる
また図12で示すように、類似TE21モードの遮断係数Lは1.907である。すなわち断面が正六角形である誘電性部材31Cを用いる実施例4において、第2高次モードの遮断係数L2は1.907である。そのため(5)式または(17)式における第2高次モードの遮断係数L2の項に類似TE21モードの遮断係数Lの値である1.907を代入することで、実施例4における第2カットオフ径D2は比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて算出できる数式となる。言い換えると、断面が正六角形である誘電性部材31Cを用いる実施例4において直径Dが満たす条件は、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いた(7)の式で表すことができる。
Figure 0007386581000029
すなわち実施例4において誘電性部材31Cの直径Dが(7)式の条件を満たす場合、誘電性部材31Cを伝送できるマイクロ波のモードは、基本モードである類似TE11モードまたは第1高次モードである類似TM01モードに限定される。
具体例として、実施例4においてマイクロ波の周波数Fが2.70GHzである場合、(7)式における周波数Fの項に2.70GHzの値(2.70×10)を代入することで、直径Dが満たすべき具体的な条件は、誘電性部材31を構成する材料の比誘電率εを用いた数式である、以下の(20)で示される式となる。すなわち、誘電性部材31Cの直径Dが以下の(20)式の条件を満たすことによって、誘電性部材31Cを伝送可能なマイクロ波のモードは、第1高次モードである類似TM01モードまたは第2高次モードである類似TE21モードに限定される。
Figure 0007386581000030
そして実施例4に係るプラズマ発生部7Cはスリット部43を備えている。基本モード(類似TE11モード)のマイクロ波が誘電性部材31Cを伝送することは、スリット部43によって抑制される。そのため、スリット部43を備えるプラズマ発生部7Cにおいて、誘電性部材31Cの直径Dが(7)式の条件を満たすように構成されることにより、誘電性部材31Cを伝送するマイクロ波のモードは、第1高次モードである類似TM01モードに単一化される。
図7に示すように、範囲M2の最大値は範囲M1の最大値より大きい値である。従って、伝送されるマイクロ波のモードを第1高次モードに単一化させる実施例4の構成では、伝送されるマイクロ波のモードを基本モードに単一化させる実施例3の構成と比べて、誘電性部材31Cの直径Dをさらに大型化させることができる。よって、実施例4の構成では、伝送されるマイクロ波のモードを単一化させるという効果を得つつ、誘電性部材31Cによってプラズマが発生される範囲をさらに広域化できる。
次に、本発明の実施例5を説明する。図14(a)は、実施例5に係るプラズマ発生部7Dの斜視図である。実施例5に係るプラズマ発生部7Dにおいて、外部導体29Dとして正方形の導波管が用いられる。そのため、外部導体29Dの内部を充填するように配設される誘電性部材31Dは、全体として四角柱状の部材である。すなわち実施例5に係る外部導体29Dおよび誘電性部材31Dは、いずれもyz平面における断面が正方形となるように構成されている。
なお実施例5において、断面が正方形である誘電性部材31Dの直径Dは以下のものを意味する。すなわち図11(b)に示すように、誘電性部材31Dの断面を構成する正方形の外接円Hcの直径が、実施例3に係る誘電性部材31Dの直径Dに相当するものとする。言い換えると、誘電性部材31Dの断面を構成する正方形の対角線が誘電性部材31Dの直径Dに相当する。
実施例5に係るプラズマ発生部7Dは、yz平面における形状が実施例1と異なるので、誘電性部材31Dを伝送されるマイクロ波のモードが実施例1と実施例5とは異なる。図12に示すように、実施例5では誘電性部材31Dの断面が正方形であるので、伝送されるマイクロ波は基本モードがTE10モードであり、第1高次モードがTM11モードであり、第2高次モードがTE20モードである。
実施例5の構成では実施例1と同様に、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31Dを基端側から先端側へと伝送されるように直径Dの値が定められている。すなわち誘電性部材31Dの直径DがDb<D<D1の条件を満たすように、直径Dの値が定められる。すなわち実施例5において直径Dは図7に示す範囲M1に含まれるので、実施例5に係る誘電性部材31Dの直径Dが満たすべき具体的な条件は、実施例1と同様に(1)で示される式となる。
Figure 0007386581000031
実施例5のように誘電性部材31Dの断面が正方形である場合、マイクロ波の基本モードはTE10モードであるので、実施例5における基本カットオフ径DbはTE10モードのカットオフ径に相当する。すなわち、実施例5において基本モードの遮断係数Lbは、TE10モードの遮断係数Lに相当する。図12に示すように、TE10モードの遮断係数Lは2.828であるので、(1)式または(14)式における基本モードの遮断係数Lbの項にTE10モードの遮断係数Lの値である2.828を代入することで、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて実施例3における基本カットオフ径Dbを算出できる数式が得られる。
また誘電性部材31Dの断面が正方形である場合、マイクロ波の第1高次モードはTM11モードであるので、実施例5における第1カットオフ径D1はTM11モードのカットオフ径に相当する。図12に示すように、TM11モードの遮断係数Lは2.000であるので、(1)式または(15)式における第1高次モードの遮断係数L1の項にTM11モードの遮断係数Lの値である2.000を代入することで、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて実施例5における第1カットオフ径D1を算出できる数式が得られる。
言い換えると、断面が正方形である誘電性部材31Dを用いる実施例5において直径Dが満たす条件は、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いた(4)の式で表すことができる。すなわち実施例5において誘電性部材31Dの直径Dが以下の(4)式の条件を満たす場合、誘電性部材31Dを伝送するマイクロ波のモードは、基本モードであるTE10モードに単一化される。
Figure 0007386581000032
一例として実施例5において、マイクロ波発生部3が発振するマイクロ波の周波数Fが2.45GHzである場合、(3)式における周波数Fの項に2.45GHzの値(2.45×10)を代入することで、基本モードのマイクロ波のみが誘電性部材31Dの内部を伝送する状態にするために直径Dが満たすべき具体的な条件は、誘電性部材31Dを構成する材料の比誘電率εを用いた数式となる。当該数式の上限および下限はいずれも比誘電率εの平方根に反比例する値である。よって、比誘電率εが低い材料を誘電性材料31Dとして用いることで、伝送するマイクロ波を基本モードに単一化させつつ誘電性材料31Dの直径Dをより大型化できる。
また実施例5では誘電性部材31Dの断面が正方形である。すなわち誘電性部材31Bの外表面41を介してプラズマ処理が行われる範囲は正方形の領域となる。正方形は正六角形と同様に、繰り返し並列させることで平面を充填できる形状である。そのため断面が正方形である実施例5のプラズマ発生部7Dをyz平面に多数並列させることにより、ワークWにおいて確実にムラなくプラズマ処理を行うことができる。
次に、本発明の実施例6を説明する。実施例6は、断面が正方形である実施例5と、伝送するマイクロ波を第1高次モードに単一化させる実施例2とを組み合わせた構成である。図15(a)は、実施例6に係るプラズマ発生部7Eの斜視図である。
実施例6に係るプラズマ発生部7Eにおいて、外部導体29Eおよび誘電性部材31Eはいずれも実施例5と同様に断面が正方形となるように構成されている。そのため図12に示すように、実施例6において基本モードはTE10モードであり、第1高次モードはTM11モードであり、第2高次モードはTE20モードである。
そして実施例6に係るプラズマ発生部7Eにおいて、外部導体29Eは実施例2と同様にスリット部43を備えている。スリット部43は図15(a)および図15(b)に示すように、外部導体29Eの外周に沿って並ぶように設けられている。スリット部43の数は適宜変更してよいが、4~8個程度であることが好ましい。スリット部43の各々は、外部導体29Aの主軸(ここではx方向)に延びるように形成されている。スリット部43は、TM11モードのマイクロ波とTE10モードのマイクロ波とのうち、TE10モードのマイクロ波の伝送を抑制する。すなわちスリット部43は、基本モードのマイクロ波と第1高次モードのマイクロ波とのうち、基本モードのマイクロ波の伝送を抑制する。スリット部43の内部または外部には電磁波吸収体が配設されていてもよい。
スリット部43を備えることにより、TE10モードのマイクロ波が誘電性部材31の先端側へと伝送されることが抑制される。一方、TM11モードのマイクロ波はスリット部43によって減衰されることなく、誘電性部材31Eの先端側へと伝送される。このように、実施例6に係るプラズマ発生部7Eでは外部導体29Eおよび誘電性部材31Eの延在方向に沿ってスリット部43を配設することにより、基本モードに相当するTE10モードのマイクロ波と第1高次モードに相当するTM11モードのマイクロ波とのうち、第1高次モードに相当するTM11モードのみを選択的に誘電性部材31Eの先端側へと伝送させることができる。
ここで、実施例6に係る誘電性部材31Eにおける適切な直径Dの範囲について説明する。実施例2と同様に、実施例6に係る誘電性部材31Eは、伝送するマイクロ波を第1高次モードに単一化させる。すなわち誘電性部材31Eの直径Dの値は範囲M2に含まれるので、実施例6に係る誘電性部材31Eの直径Dが満たすべき具体的な条件は、実施例2と同様に以下の(5)で示される式となる
Figure 0007386581000033
実施例6では実施例5と同様に誘電性部材31Eの断面が正六角形であるので、マイクロ波の第1高次モードはTM11モードであり、マイクロ波の第2高次モードはTE20モードである。よって実施例6において、第1カットオフ径D1はTM11モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。そして第2カットオフ径D2は、TE20モードであるマイクロ波のカットオフ径に相当する。
図12で示すように、TM11モードの遮断係数Lは2.000である。すなわち断面が正方形である誘電性部材31Eを用いる実施例6において、第1高次モードの遮断係数L1の値は2.000である。そのため(5)式または(15)式における第1高次モードの遮断係数L1の項にTM11モードの遮断係数Lの値である2.000を代入することで、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて実施例6における第1カットオフ径D1を算出できる数式が得られる。
また図12で示すように、TE20モードの遮断係数Lは1.414(正確には2の平方根)である。すなわち断面が正方形である誘電性部材31Eを用いる実施例6において、第2高次モードの遮断係数L2の値は1.414である。そのため(5)式または(17)式における第2高次モードの遮断係数L2の項にTE20モードの遮断係数Lの値である1.414を代入することで、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いて実施例6における第2カットオフ径D2を算出できる数式が得られる。言い換えると、断面が正方形である誘電性部材31Eを用いる実施例5において直径Dが満たす条件は、比誘電率εとマイクロ波の周波数Fと光速cの値とを用いた(8)の式で表すことができる。
Figure 0007386581000034
すなわち実施例6において誘電性部材31Eの直径Dが(8)式の条件を満たす場合、誘電性部材31Eを伝送できるマイクロ波のモードは、基本モードであるTE10モードまたは第1高次モードであるTM11モードに限定される。
そして実施例6に係るプラズマ発生部7Eはスリット部43を備えている。基本モード(TE10モード)のマイクロ波が誘電性部材31Eを伝送することは、スリット部43によって抑制される。一方、第1高次モード(TM11モード)のマイクロ波はスリット部43に阻害されることなく誘電性部材31Eの基端部から先端部へと伝送される。そのため、スリット部43を備えるプラズマ発生部7Eにおいて、誘電性部材31Eの直径Dが(8)式の条件を満たすように構成されることにより、誘電性部材31Eを伝送するマイクロ波のモードは、第1高次モードであるTM11モードに単一化される。
図7に示すように、範囲M2の最大値は範囲M1の最大値より大きい値である。従って、伝送されるマイクロ波のモードを第1高次モードに単一化させる実施例6の構成では、伝送されるマイクロ波のモードを基本モードに単一化させる実施例5の構成と比べて、誘電性部材31Eの直径Dをさらに大型化させることができる。よって、実施例6の構成では、伝送されるマイクロ波のモードを単一化させるという効果を得つつ、誘電性部材31Eによってプラズマが発生される範囲をさらに広域化できる。
<他の実施形態>
なお、今回開示された実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲、並びに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例において、外部導体29および誘電性部材31の形状は円形、正六角形、または正方形に限ることはなく、別の形状に変更してもよい。誘電性部材31の形状に応じて、誘電性部材31を伝送するマイクロ波は基本モード、第1高次モード、および第2高次モードが異なる。そのため誘電性部材31の形状に応じて、基本カットオフ径Dbと第1カットオフ径D1と第2カットオフ径D2との値がそれぞれ定まる。そして実施例1などのように誘電性部材31を伝送されるマイクロ波のモードを基本モードに単一化させる場合、誘電性部材31の形状に応じて定まる基本カットオフ径Dbより大きく、かつ第1カットオフ径D1より小さくなるように誘電性部材31の直径Dの大きさを調節すればよい。すなわち第1カットオフ径D1に近い値となるように直径Dを設定することで、誘電性部材31を伝送されるマイクロ波のモードを基本モードに単一化させつつ、誘電性部材31の直径Dを最大化できる。
また実施例2などのように誘電性部材31を伝送されるマイクロ波のモードを第1高次モードに単一化させる場合、スリット部43のように基本モードのマイクロ波が伝送されることを抑止する構成を設けるとともに、誘電性部材31の形状に応じて定まる第1カットオフ径D1より大きく、かつ第2カットオフ径D2より小さくなるように誘電性部材31の直径Dの大きさを調節すればよい。すなわち第2カットオフ径D2に近い値となるように直径Dを設定するとともにスリット部43などを備えることで、誘電性部材31を伝送されるマイクロ波のモードを第1高次モードに単一化させつつ、誘電性部材31の直径Dを最大化できる。
(2)上述した各実施例において、誘電性部材31の先端側は先細りとなるテーパ状となっている構成に限ることはない。すなわち図16(a)に示すように、誘電性部材31の先端部は主軸に沿って径が一様な構成であってもよい。また図16(b)に示すように、誘電性部材31の先端部は基端側から先端側に向かって径が大きくなる構成であってもよい。このような変形例において、誘電性部材31においてマイクロ波の伝送またはプラズマの発生が行われる領域のうち最も径が大きい部分を直径Dとして、当該直径Dの値が範囲M1または範囲M2となるように定めることが好ましい。この場合、誘電性部材31の全体について伝送されるマイクロ波を単一化させつつ、直径Dをより大型化できる。なおマイクロ波を伝送させる部分が、yz平面について誘電性部材31の全体ではなく誘電性部材31の一部に限定される場合、当該限定される部分のうち径が最大である部分を直径Dとして、当該直径Dの値が範囲M1または範囲M2となるように定めてよい。
(3)上述した各実施例において、図17に示すように凹部37の代わりに接続部材45を備えていてもよい。接続部材45は、第1誘電体31とマイクロ波供給ケーブル5が接続する部分に配設されている。一例として、接続部材45は誘電性部材31の基端側に配設される。接続部材45は、誘電性部材31よりも比誘電率が低い誘電性材料で構成される。一例として誘電性部材31が石英(ε=3.78)で構成されている場合、接続部材45の構成材料としてテフロン(登録商標、ε=2.1)が挙げられる。また接続部材45は、マイクロ波供給ケーブル5の周囲に存在する媒体よりも比誘電率が高い誘電性材料で構成される。
当該変形例ではマイクロ波供給ケーブル5と誘電性部材31との接続部において、接続部材45が比誘電率の変化が緩和する領域となる。すなわち接続部材45は、マイクロ波が入力される方向について比誘電率の変化を緩和させることで、より好適にインピーダンスを整合させる。なお、プラズマ発生部7は凹部37または接続部材45を備える構成に限ることはなく、凹部37および接続部材45をいずれも省略した構成であってもよい。
(4)上述した各実施例において、誘電性部材31は外部導体29の内部を充填する構成に限ることはない。すなわち図18に示すように、誘電性部材31の外径が外部導体29の内径より小さく、誘電性部材31と外部導体29との間に内部媒体47が配設される構成も本発明に係る構成に含まれる。なお内部媒体47の一例としては空気などが挙げられる。空気は比誘電率が1.0であるので、空気を含むことにより等価な比誘電率εの値をさらに下げることができる。その結果、直径Dをさらに大型化させることができる。
(5)上述した各実施例において、誘電性部材31は基端側から先端側にわたって全体的に単一の部材で構成されているが、複数の部材を組み合わせた構成であってもよい。当該変形例の一例として、図19に示すように、誘電性部材31は基端側を構成する第1誘電体51と先端側を構成する第2誘電体52との2つの部材を組み合わせた構成を挙げて説明する。
第1誘電体51は誘電性部材31の基端側部分を構成する。第1誘電体51は、誘電性部材31のうち外部導体29の内部を充填する部分を構成する。第1誘電体51の基端側に凹部37が形成されている。第2誘電体52は誘電性部材31の先端側部分を構成する。第2誘電体52は、外部導体29の開口部35を閉塞するように配設されており、誘電性部材31のうち外部導体29から先端側へと突出している部分を構成する。
第1誘電体51と第2誘電体52とは、接続部53を介して接続されている。接続部53は、第1誘電体51の先端部に形成されている第1接続部53Aと、第2誘電体52の基端部に形成されている第2接続部53Bによって構成されている。接続部53が第1誘電体51と第2誘電体52とを接続させる構成は、螺合、嵌合、または係合する構成などを適宜用いてよい。
誘電性部材31が複数の部材を組み合わせる構成とすることにより、外表面41の形状が異なる複数種類の第2誘電体52を第1誘電体51に対して適宜換装させることで、誘電性部材31の先端部の形状を適宜変更することができる。一例として、先端側に向かって先細りとなっている形状の外表面41を有する第2誘電体52を第1誘電体51から取り外し、基端側から先端側に向かって径が大きくなる形状を有する第2誘電体52(図16(b)を参照)を第1誘電体31と接続させることにより、誘電性部材31の外表面の形状を、先端に向かって径が小さくなる形状から先端に向かって径が大きくなる形状へと変更させることができる。
このような変形例に係るプラズマ発生部7では、プラズマを発生させる範囲やプラズマ処理の用途に応じて、外表面41の形状がそれぞれ異なる第2誘電体52を適宜換装できる。そのため、プラズマ発生部7の汎用性をより高めることができる。
(6)上述した実施例2、実施例4、実施例6において、スリット部43を備える構成を例示したが、スリット部43を備える構成に限られない。すなわち基本モードと第1高次モードのうち基本モードのマイクロ波が伝送されることを抑制する構成であれば、他の構成を当該実施例の構成に適用することができる。一例として、特開2008-288874に開示されている、磁気壁板をモードフィルタとして用いる構成を適用することができる。
1 …プラズマ処理装置
3 …マイクロ波発生部
5 …マイクロ波供給ケーブル
7 …プラズマ発生部(プラズマ発生装置)
9 …プラズマ処理部
11 …チャンバ
13 …ワーク保持部
15 …接続プレート
29 …外部導体
31 …誘電性部材
33 …マイクロ波供給口
35 …開口部
36 …隔壁
37 …凹部
41 …外表面
43 …スリット部(基本モード抑制部)

Claims (7)

  1. 一端側に開口部を有する導電性の導波管と、
    前記導波管の内部において前記導波管の主軸に沿って延在し、マイクロ波を供給するマイクロ波供給ケーブルと接続されており、供給された前記マイクロ波を前記一端側へ伝送させてプラズマを発生させる誘電性部材と、
    前記誘電性部材の形状に対応する基本モードのマイクロ波が前記誘電性部材を伝送することを抑制させる基本モード抑制部と、
    を備え、
    前記誘電性部材の直径Dは、
    前記誘電性部材の形状に対応する第1高次モードのマイクロ波の遮断係数L1、前記誘電性部材の形状に対応する第2高次モードのマイクロ波の遮断係数L2、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
    Figure 0007386581000035

    の条件を満たすように前記誘電性部材が構成されることを特徴とするプラズマ発生装置。
  2. 請求項1に記載のプラズマ発生装置において、
    前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が円形となるように構成されており、
    前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
    Figure 0007386581000036

    の条件を満たすことを特徴とするプラズマ発生装置。
  3. 請求項1に記載のプラズマ発生装置において、
    前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正六角形となるように構成されており、
    前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
    Figure 0007386581000037

    の条件を満たすことを特徴とするプラズマ発生装置。
  4. 請求項1に記載のプラズマ発生装置において、
    前記誘電性部材は前記主軸に直交する断面が正方形となるように構成されており、
    前記誘電性部材の直径Dは、前記誘電性部材の比誘電率ε、前記誘電性部材を伝送する前記マイクロ波の周波数F、および光速cを用いて、
    Figure 0007386581000038

    の条件を満たすことを特徴とするプラズマ発生装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラズマ発生装置において、
    前記誘電性部材は前記導波管の内部を充填するように前記導波管の主軸に沿って延在している
    ことを特徴とするプラズマ発生装置。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラズマ発生装置において、
    前記誘電性部材は、前記マイクロ波供給ケーブルとの接続部において、比誘電率の変化を緩和させる比誘電率緩衝部を備えている
    ことを特徴とするプラズマ発生装置。
  7. マイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、
    前記マイクロ波供給部から供給されるマイクロ波を用いてプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
    前記プラズマ発生部が発生させたプラズマを用いてワークを処理するプラズマ処理部と、
    を備え、
    前記プラズマ発生部は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラズマ発生装置である
    ことを特徴とするプラズマ処理装置。
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