JP7384450B2 - 体内時計活性化システム及びその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、体内時計活性化システム及びその制御方法に関する。
本願は、2019年2月20日に、日本に出願された特願2019-028425号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ヒトを始めとする多くの哺乳動物の生理機能には、約24時間を周期とする概日リズムが認められ、これらのリズムは時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子群が形成する転写及び翻訳のフィードバックループ機構によって制御されている。この機構は、睡眠及び覚醒のリズムのみでなく、様々な生体機能を調節しており、様々な疾患の発症や病態に関連することが指摘されている。特に高齢者において、概日リズム制御機構の破綻が、生活習慣病や認知症、がん等の各種疾患の発症や病態に関連することが指摘されている(例えば、非特許文献1等参照)。これらのことから、体内時計の活性化は高齢者の健康増進及びQOL(quality of life)の向上に大きく貢献すると考えらえている。体内時計を調整する方法として臨床応用されているものに、高照度光療法と食事制限による治療の2つが挙げられる。高照度光療法は、網膜を介した概日リズム同調機構を応用した治療法である。食事制限による治療は、カロリー制限や絶食等、食事によって体内時計を調整する治療法である。
体内時計に影響を与える因子は複数存在するが、生体の電磁場曝露による微弱な電流刺激はメラトニンの分泌異常等の体内時計に悪影響を及ぼすことが近年明らかになっている(例えば、非特許文献2等参照)。その一方で、微弱電流刺激(microcurrent stimulation;MCS)はメタボリックシンドロームの治療や疼痛緩和、創傷回復促進を目的として、治療としても応用されており(例えば、非特許文献3及び4等参照)、人体に対する安全性も確立されている。
従来の体内時計を調整する方法である、高照度光療法では、毎日決まった時間に長時間強い光を見続けなければならず簡便さに欠け、さらに高齢者では光受容能が低下しており、より長時間強い光を見続けなければならない。また、食事制限による治療では、加齢による食事機能低下や口腔環境悪化、胃ろう等により高齢者では食事制限を行うことが困難となる場合が多く、十分な効果が得られない。
以上のことから、特に高齢者において、体内時計を調整する方法は乏しく、有効な治療法の開発が強く望まれている。
Kondratova AA and Kondratov RV, "Circadian clock and pathology of the ageing brain.", Nat Rev Neurosci., Vol. 13, Issue 5, p325-335, 2012. Zhu L at al., "Circadian rhythm sleep disorders.", Neurol Clin., Vol. 30, Issue 4, p1167-1191, 2012. Kondo T at al., "Mild Electrical Stimulation with Heat Shock Reduces Visceral Adiposity and Improves Metabolic Abnormalities in Subjects with Metabolic Syndrome or Type 2 Diabetes: Randomized Crossover Trials.", EBioMedicine, Vol. 1, Issue 1, p80-89, 2014. 馬玉宝ら、「膝前十字靱帯損傷者および再建者の膝関節運動覚」、第46回日本理学療法学術大会抄録集、Vol. 38、理学療法学Supplement、No. 2、セッションID: PI1-319、2011.
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新規の体内時計活性化システム及びその制御方法を提供する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、被験体の体表面の特定位置から微弱電流刺激(MCS)を与えることで時計遺伝子の一つであるPeriod1(Per1)遺伝子の発現を亢進し、体内時計のリズム障害を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る体内時計活性化システムは、被験体の体表面の特定位置に接して交流微弱電流刺激を与えるように構成された電極と、前記電極に接続され、前記交流微弱電流を発生させる電流発生部と、前記電流発生部に接続され、前記交流微弱電流の電流値を1μA以上750μA以下、電流処理時間を10分間以上60分間以下に制御するように構成された制御部と、を備える。
前記制御部が、前記交流微弱電流の電流値を300μA以上400μA以下、電流処理時間を10分間以上30分間以下に制御するように構成されていてもよい。
前記制御部が、前記交流微弱電流の周波数を300Hz以上500Hz以下に制御するように構成されていてもよい。
前記電流発生部が、RFIDタグ、リーダライタ及び電源を含んで構成されてもよい。
上記第1態様に係る体内時計活性化システムは、温度センサ又は血圧センサを更に備えてもよい。
上記第1態様に係る体内時計活性化システムは、前記電極が被験体の体表面の特定位置に接するように装着するための装着具を更に備えてもよい。
前記被験体の体表面の特定位置が、首、手首、腕、胴部、脚又は足首であってもよい。
上記第1態様に係る体内時計活性化システムは、Per1遺伝子の発現亢進作用を有してもよい。
本発明の第2態様に係る制御方法は、上記第1態様に係る体内時計活性化システムの制御方法であって、前記制御部が、任意の時刻に交流微弱電流刺激を開始するように、前記交流微弱電流の電流処理開始時刻、電流値及び電流処理時間を設定する設定工程と、前記電流発生部が設定された電流処理開始時刻に、設定された電流値及び電流処理時間の交流微弱電流を発生する発生工程と、をこの順に行う制御方法である。
前記設定工程において、前記制御部が、外部環境における明期開始時刻からその6時間後までの間の任意の時刻に電流処理開始時刻を設定してもよい。
上記態様の体内時計活性化システム及びその制御方法によれば、体内時計のリズム障害を改善することができる。
本発明の第1実施形態に係る体内時計活性化システムを示す斜視図である。 RFIDタグの一例を示す平面図及び断面図である。 リーダライタの一例を示す斜視図である。 RFIDシステムの一例を示すブロック構成図である。 本発明の第1実施形態に係る体内時計活性化システムの制御方法の一例を示すフローである。 本発明の第2実施形態に係る体内時計活性化システムを示す斜視図である。 装着具を備えるRFIDタグの一例を示す斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る体内時計活性化システムの制御方法の一例を示すフローである。 実施例1におけるマウスアストロサイトでのPer1遺伝子の発現に起因するルシフェラーゼ活性を示すグラフである。 実施例1におけるマウスアストロサイトでのPer2遺伝子の発現に起因するルシフェラーゼ活性を示すグラフである。 実施例2における交流微弱電流の電流処理時間(0~120分)を変更したマウスアストロサイトでのPer1遺伝子のmRNA発現量を示すグラフである。 実施例2における交流微弱電流の電流値(1~750μA)を変更したマウスアストロサイトでのPer1遺伝子のmRNA発現量を示すグラフである。 実施例3におけるマウスアストロサイトでの時計遺伝子のmRNA発現量を示すグラフである。 実施例4の実験フローを示す図である。 実施例4におけるトランスフェクション用ベクターに含まれるCREB応答配列あり又はなしのPer1遺伝子を示す概略図である。 実施例4におけるマウスアストロサイトでのPer1遺伝子の発現に起因するルシフェラーゼ活性を示すグラフである。 実施例5におけるマウスへの微弱電流刺激(MCS)の処理開始スケジュールを示す図である。 実施例5におけるMCSの処理開始時刻(ZT2~22)を変更したマウス肝臓細胞でのPer1遺伝子のmRNA発現量を示すグラフである。 実施例5におけるMCS未処理のマウス肝臓細胞(コントロール)に対するMCSの処理開始時刻(ZT2~22)を変更したマウス肝臓細胞でのPer1遺伝子のmRNA発現量の比率を示すグラフである。 実施例6におけるマウスへのMCSの処理開始時刻とサンプリングスケジュールを示す図である。 実施例6における試験開始時のMCS未処理のマウス肝臓細胞(コントロール)に対するMCS処理したマウス肝臓細胞でのPer1遺伝子のmRNA発現量の比率の経時変化を示すグラフである。 実施例6におけるマウスへのMCSの処理開始時刻とサンプリングスケジュールを示す図である。 実施例6におけるMCS未処理のマウス肝臓細胞(コントロール)に対するMCS処理したマウス肝臓細胞でのPer1遺伝子のmRNA発現量の比率の経時変化を示すグラフである。 実施例7におけるマウスへのMCSの処理開始時刻とサンプリングスケジュールを示す図である。 実施例7における各群のマウスの肝臓細胞でのPer1遺伝子のmRNA発現量の経時変化を示すグラフである。 実施例8における野生型マウスに対するMCSの処理開始時刻と行動リズム解析を示す図である。 実施例8における麻酔、除毛、及びMCS未処理の野生型マウス(未処理群)、麻酔及び除毛処理を行ったが、MCS未処理の野生型マウス群(Control群)、並びに麻酔、除毛及びMCS処理を行った野生型マウス群(MCS群)での行動リズムを示すグラフである。 実施例8における処理前後の未処理群、Control群、及びMCS群での行動サイクル周期(時間)を示すグラフである。 実施例8における処理前後の未処理群、Control群、及びMCS群での行動サイクルのシフト時間(分)を示すグラフである。 実施例8におけるClock改変マウスに対するMCSの処理開始時刻と行動リズム解析を示す図である。 実施例8における麻酔、除毛、及びMCS未処理のClock改変マウス(未処理群)、麻酔及び除毛処理を行ったが、MCS未処理のClock改変マウス群(Control群)、並びに麻酔、除毛及びMCS処理を行ったClock改変マウス群(MCS群)での行動リズムを示すグラフである。 実施例8における処理前後の未処理群、Control群、及びMCS群での行動サイクル周期(時間)を示すグラフである。 実施例8における処理前後の未処理群、Control群、及びMCS群での行動サイクルのシフト時間(分)を示すグラフである。 実施例9におけるMCS処理又は未処理の野生型マウスの肝臓細胞の核抽出液を用いた抗リン酸化CREB抗体、抗CREB抗体、及び抗RNAポリメラーゼ2抗体によるウエスタンブロッティングの結果を示す図である。 実施例9におけるMCS処理又は未処理の野生型マウスの肝臓細胞の核内でのCREB全量に対するリン酸化CREBの発現量の比率の経時変化を示すグラフである。 実施例10における試験開始時のMCS未処理の野生型マウス肝臓細胞(コントロール)に対するMCS処理した野生型マウス肝臓細胞での肝臓の糖代謝を促進する遺伝子のmRNA発現量の比率の経時変化を示すグラフである。 実施例10における試験開始時のMCS未処理のClock改変マウス肝臓細胞(コントロール)に対するMCS処理したClock改変マウス肝臓細胞での肝臓の糖代謝を促進する遺伝子のmRNA発現量の比率の経時変化を示すグラフである。 実施例11におけるMCS処理した又はMCS未処理の野生型加齢マウスの行動リズムを示すグラフである。 実施例11におけるMCS処理した又はMCS未処理の野生型加齢マウスの自発運動活性(Locomotor activity)を示すグラフである。 実施例12におけるMCS処理した又はMCS未処理の野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスのパッシブアボイダンステストの結果を示すグラフである。 実施例13におけるMCS未処理の野生型加齢マウスに対するMCS処理した野生型加齢マウスでのSirt1遺伝子のmRNA発現量の比率を示すグラフである。 実施例13におけるMCS未処理のClock改変加齢マウスに対するMCS処理したClock改変加齢マウスでのSirt1遺伝子のmRNA発現量の比率を示すグラフである。 実施例14におけるMCS未処理の野生型加齢マウスに対するMCS処理した野生型加齢マウスの皮膚でのアクアポリン3遺伝子のnRNA発現量の比率を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る(以下、「本実施形態」ともいう)体内時計活性化システム及びその制御方法について、図面を参酌しながら詳細に説明する。
≪体内時計活性化システム≫
本実施形態の体内時計活性化システムは、電極と、電流発生部と、制御部と、を備える。
電極は、被験体の体表面の特定位置に接して交流微弱電流刺激を与えるように構成されている。電流発生部は、電極に接続されており、交流微弱電流を発生させる。制御部は、電流発生部に接続されており、交流微弱電流の電流値及び電流処理時間を一定の範囲に制御するように構成されている。
具体的には、交流微弱電流の電流値は、1μA以上750μA以下であり、100μA以上500μA以下が好ましく、300μA以上400μA以下がより好ましい。電流値が上記範囲内であることで、後述する実施例に示すように時計遺伝子の一つであるPer1遺伝子の発現をより効果的に亢進することができる。なお、ここでいう電流値は、絶対値であり、電流の向きに応じてプラスであってもよく、マイナスであってもよい。
また、交流微弱電流の電流処理時間は、10分間以上60分間以下であり、15分間以上30分間以下が好ましい。電流処理時間が上記範囲内であることで、後述する実施例に示すように時計遺伝子の一つであるPer1遺伝子の発現をより効果的に亢進することができる。
また、本実施形態の体内時計活性化システムが発生する微弱電流は、交流であるため、上記に示す電流処理時間であっても、被験体の体表面に火傷等が生じることなく微弱電流を継続的に与えることができる。
具体的には、交流微弱電流の周波数は、300Hz以上500Hz以下が好ましく、350Hz以上450Hz以下がより好ましく、400Hzがさらに好ましい。
本明細書において、「体内時計」とは、生物の体内において約24時間周期の概日リズム(サーカディアンリズム)を刻む機構であり、生物時計や生理時計とも呼ばれる。体内時計は、光、食事、及びメラトニン等の分泌により調節されることが知られている。また、視交叉上核や松果体等の脳に存在する中枢の体内時計は、ホルモンや交感神経等を介して末梢諸器官の体内時計を同期している。「体内時計活性化」とは、外界のリズムに合わせて体内時計の周期、位相又は振幅を調節することを意味する。本実施形態の体内時計活性化システムは、後述する実施例に示すとおり、被験体の体表面にMCSを非侵襲的に与えることで、Per1遺伝子の発現を亢進させて、概日リズムをリセットすることができ、乱れた概日リズムを改善することができる。すなわち、本実施形態の体内時計活性化システムは、Per1遺伝子の発現亢進用システムということもできる。
また、本実施形態の体内時計活性化システムは、Per1遺伝子の発現亢進に加えて、肝臓の糖代謝の促進に関連する遺伝子の発現を変容させることができる。すなわち、本実施形態の体内時計活性化システムは、肝臓の糖代謝の促進用システムということもできる。肝臓の糖代謝の促進に関連する遺伝子としては、例えば、Glucokinase (Gck)遺伝子、Phosphoenolpyruvate carboxykinase 1 (Pck1)遺伝子、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor α (Pparα)遺伝子、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ (Pparγ)遺伝子等が挙げられる。
また、本実施形態の体内時計活性化システムは、Per1遺伝子の発現亢進に加えて、体内時計のリズム障害である被験体における認知記憶機能を改善することができる。すなわち、本実施形態の体内時計活性化システムは、体内時計のリズム障害である被験体における認知記憶機能改善用システムということもできる。
また、本実施形態の体内時計活性化システムは、Per1遺伝子の発現亢進に加えて、抗老化遺伝子の発現を亢進させることができる。すなわち、本実施形態の体内時計活性化システムは、抗老化遺伝子の発現亢進用システムということもできる。抗老化遺伝子としては、例えば、Sirt1遺伝子等が挙げられる。
また、本実施形態の体内時計活性化システムは、Per1遺伝子の発現亢進に加えて、皮膚の水分量を制御しているアクアポリン3(Aqp3)遺伝子の発現を亢進させることができる。すなわち、本実施形態の体内時計活性化システムは、アクアポリン3遺伝子の発現亢進用システムということもできる。
また、本実施形態の体内時計活性化システムを適用する被験体としては、特別な限定はなく、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、マウス、ラット、マーモセット等の哺乳動物が好ましく例示される。
<第1実施形態>
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る体内時計活性化システムを示す斜視図である。
図1Aに示す体内時計活性化システム1Aは、電極と、電流発生部100と、制御部200とを備える。体内時計活性化システム1Aは、マウスX等の被験体を飼育するための飼育容器300を備えていてもよい。
電流発生部100は、RFID(Radio Frequency Identification;電波方式認識)システムに用いられるRFIDタグ10、リーダライタ20及び電源30を含んで構成されている。
図1Aに示すように、RFIDタグ10は、電極が被験体であるマウスXの体表面の胴部に接するように貼付されている。電極が接する被験体の体表面の特定位置としては、胴部に限定されず、全身のうちいずれの位置(例えば、頭、顔、首、手首、腕、胴部(背部、腹部等)、脚、足首等)であってもよいが、RFIDタグ10を装着しやすい観点から、首、手首、腕、胴部、脚又は足首が好ましい。電極は、これらの位置の1か所のみに接していてもよく、2か所以上に接していてもよい。
RFIDタグ10は、電池を使用せずにリーダライタからの通信により作動するパッシブRFIDタグであってもよく、電池内蔵型であり、能動的に通信を行うアクティブRFIDタグであってもよく、電池内蔵型であり、特定の信号を検知した際にアクティブRFIDタグとして機能するセミアクティブRFIDタグであってもよい。被験体がヒト以外の哺乳動物である場合には、小型且つ安価であることから、パッシブRFIDタグを用いることが好ましく、一方で、被験体がヒトである場合には、長距離通信が可能であることから、アクティブRFIDタグ又はセミアクティブRFIDタグを用いることが好ましい。
以下に示すRFIDタグ10の詳細な説明では、主に、パッシブRFIDタグを用いた場合について説明する。
RFIDタグ10とリーダライタ20との間において、非接触による通信を行うことができ、リーダライタ20では、RFIDタグ10から送信されたデータの読み取り及びRFIDタグ10へのデータの書き込みを行う。また、リーダライタ20を介して、電源30から供給された電力をRFIDタグ10に供給することができる。すなわち、図1Aに示すように、RFIDタグ10が貼付されたマウスXはリーダライタ20上に配置されていることで、RFIDタグ10とリーダライタ20との間で非接触での通信及び電力の供給が行われ、制御部200による制御下でMCS処理を行うことができる。
RFIDタグ10とリーダライタ20との間のデータの伝送方式は特別な限定はなく、例えば、電磁結合方式、電磁誘導方式、電波(UHF)方式等が挙げられ、RFIDタグの通信周波数(共振周波数又は動作周波数ともいう)の範囲に応じて、伝送方式は適宜選択することができる。例えば、RFIDタグの通信周波数が50KHz以上300KHz以下の範囲である場合、電磁誘導方式によりデータの伝送及び電力の供給を行うことができる。このときの通信距離は例えば、0m超70cm以下程度である。
電流発生部を構成する電源は、図1Aに示すように、配線用差込接続器(コンセント)31、電気配線32及び家庭用電源33を含んで構成される外部より電気を供給する電気供給装置であってもよく、或いは、電池であってもよい。電源が電気供給装置である場合、例えば、ACアダプター(AC/ACアダプター)等を使用してもよい。また、電源が電池である場合、電池は、水銀電池又はリチウム電池等の使い捨ての電池であってもよく、ニッケル-カドミニウム電池、電気二重層コンデンサー、リチウム蓄電池等の再充電可能な蓄電池であってもよい。
図1Bは、RFIDタグの一例を示す平面図及び断面図である。図1B以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
電極1はRFIDタグ10の被験体の体表面に接する方の面に埋め込まれており、RFIDタグ10のアンテナ2に電気的に接続されている。図1Bに示すRFIDタグ10では、プラス及びマイナスの電極をそれぞれ1つずつ、合計2つ備える場合を例示しているが、電極の数はこれに限定されず、2つ以上であればいくつであってもよい。電極の形状及び大きさは、RFIDタグの形状及び大きさに応じて適宜選択することができるが、例えば、円柱状の電極である場合に、直径は0.1cm以上1cm以下とすることができ、高さは0.1cm以上1.5cm以下とすることができる。
電極の材質としては、表面電極に一般に用いられる材質であればよく、例えば、銀-塩化銀、白金、チタン、窒化チタン、カーボン、金、ガラス等が挙げられる。
RFIDタグ10は、アンテナ2と、ICチップ3と、保護膜4と、基材5と、粘着剤層6と、から主に構成されている。図1Bの断面図に示すように、RFIDタグ10において、アンテナ2及びICチップ3は、保護膜4及び基材5の間に封入されている。RFIDタグの形状及び大きさは、本実施形態の体内時計活性化システムの適用対象となる被験体の体長及び装着部位に応じて適宜選択することができるが、例えば、カード形状のRFIDタグである場合に、縦及び横の長さはそれぞれ0.5cm以上5cm以下とすることができ、厚みは0.1mm以上5mm以下とすることができる。
アンテナ2は、リーダライタ20を介して受け取った電力を電極1及びICチップ3に供給し、ICチップ3を動作させ、且つ、電極1から微弱電流を出力させるものである。図1Bに示すように、アンテナ2はICチップ3の外周に配置されており、電極1及びICチップ3の端子に電気的に接続されている。アンテナ2がコイル状である場合(コイルアンテナである場合)、ICチップ3の外周に配置することで、コイルの直径が大きくなり、インダクタンスが増加して、通信距離の確保及びRFIDタグの小型化が可能となる。ICチップ3の構成については後述する。
保護膜4は、アンテナ2及びICチップ3を保護するものである。保護膜4の材質としては、絶縁性のものであって、被験体の体表面に接触して使用した際に毒性等を示さないものであればよく、例えば、樹脂やシリコンゴム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂等が挙げられる。
基材5は、その上にアンテナ2及びICチップ3を配置させ、さらに保護膜4を積層することでアンテナ2及びICチップ3を封入するためのものである。基材5の材質としては、上記保護膜において例示されたものと同様のものが挙げられる。
粘着剤層6は、被験体の体表面にRFIDタグを貼付するためのものである。図1Bでは、粘着剤層が保護膜の上面4aの全面に亘って積層された形態を例示したが、被験体の体表面に貼付するために必要な粘着性を発揮する範囲で、保護膜の上面4aの一部に積層されていてもよい。粘着剤層に含まれる粘着剤としては、被験体の体表面に接触して使用した際に毒性等を示さないものであればよく、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、A-B-A型ブロック共重合体エラストマー等の固体ゴム;液体イソプレン、液体イソプレン-スチレン、液状ポリブタジエン等の液体ゴム;テルペン系、ロジン系等の天然樹脂系の粘着付与樹脂;脂肪族系、芳香族系、石油樹脂系、アルキルフェノール系、キシレン系、クマロンインデン系等の合成樹脂系の粘着付与樹脂等が挙げられる。
図1Cは、リーダライタの一例を示す斜視図である。リーダライタ20は、制御部200と、電源30と、電気的に接続されている。リーダライタ20の形状及び大きさは、被験体の体表面のうち、RFIDタグが装着された部位をリーダライタの上部に配置することができる形状及び大きさであればよく、例えば、リーダライタが板状である場合に、縦及び横の長さはそれぞれ10cm以上100cm以下とすることができ、厚みは0.1cm以上5cm以下とすることができる。
図1Dは、RFIDタグ10及びリーダライタ20を用いたRFIDシステムの一例を示すブロック構成図である。
ICチップ3は、アンテナ2を介してリーダライタ20と通信を行うための通信回路3aと、データを記憶するための記憶回路3bと、これら回路を制御する制御回路3cとを備える。また、ICチップ3はアンテナ2の端部2a及び2bと接続している。
リーダライタ20は、アンテナ21と、アンテナ21を介してRFIDタグ10と通信を行うための通信回路22と、アンテナ21への印加電圧を一時的に上昇させるための昇圧回路23と、これら回路を制御する制御回路24と、を備える。リーダライタ20のアンテナ21から出力された電磁波又は電波をRFIDタグ10のアンテナ2が受信すると、アンテナ2に誘導電流が発生して、ICチップ3が作動し、電極1に電流が供給される。
リーダライタ20には、制御部200が有線又は無線の通信手段を介して接続されている。リーダライタ20は、制御部200の指示に応じて、RFIDタグ10との間でデータの送受信及び電力の供給を行うための電磁波を出力するように構成されている。
リーダライタ20は、電磁波を出力して、RFIDタグ10の記録回路3bに記憶されているデータを読み出し、当該データを制御部200へ送信し、また、制御部200から受け取ったデータをRFIDタグ10に書き込む。制御部200は、RFIDタグ10から読み出したデータに基づいて、交流微弱電流の電流値、電流処理時間及び電流開始時刻の調節及び設定を行う。
また、制御部200は、ON/OFFスイッチ201と、交流微弱電流の電流値、電流処理時間及び電流開始時刻の調節及び設定を行う調節スイッチ202と、設定した電流値、電流処理時間及び電流開始時刻を出力する出力画面203と、から主に構成されている。
制御部200の形状及び大きさは特別な限定はなく、例えば、制御部200の形状が角柱である場合、縦(短手方向又は奥行)の長さは1cm以上10cm以下とすることができ、横(長手方向)の長さは10cm以上50cm以下とすることができ、高さは1cm以上5cm以下とすることができる。
次に、体内時計活性化システム1Aの制御方法について図1Eに示すフローを用いて説明する。
図1Eに示すように、制御部200からデータ読み出し指示を受けると(S1及びS2)、リーダライタ20は、電磁波に読み出しコマンドを含ませてRFIDタグ10へ送信する(S3)。当該読み出しコマンドを含む電磁波を受けると、RFIDタグ10のアンテナ2には該電磁波に起因して誘導電流が発生し(S4)、RFIDタグ10のICチップ3が作動され、さらに、電極1を介して被験体の体表面にMCS処理を行う(S5)。ICチップ3は、読み出しコマンドに応じて記憶回路3bに記録しているデータを読み出し、当該データと共に、さらに、MCS処理後の被験体から取得されたデータをリーダライタ20へ送信する(S6)。リーダライタ20は、受信したデータを制御部200へ送信する(S7及びS8)。制御部200は、受信したデータに基づいて交流微弱電流の電流値、電流処理時間及び電流開始時刻の調節及び設定を行う(S9及びS10)。RFIDタグ10にデータを書き込む場合には、リーダライタ20の電磁波に、書き込みコマンドと書き込み用のデータとを含ませればよく、RFIDタグ10はコマンドに応じて記憶回路3bにデータを書き込む。また、リーダライタ20からRFIDタグ10に向けて読み出しコマンドを含む電磁波を送信したときに、RFIDタグ10から返答がない場合には、RFIDタグ10は通信不能状態にあると判断することができる。
また、一実施形態において、本発明は、設定工程と、発生工程と、をこの順に行う上記体内時計活性化システムの制御方法を提供する。
設定工程では、制御部200が、任意の時刻に交流微弱電流刺激を開始するように、交流微弱電流の電流処理開始時刻、電流値及び電流処理時間を設定する。電流処理開始時刻としては、外部環境における明期開始時刻からその6時間後までの間の任意の時刻であることが好ましく、明期開始時刻からその4時間後までの間の任意の時刻であることがより好ましく、明期開始時刻の1時間半後から明期開始時刻の2時間半後までの間の任意の時刻であることがさらに好ましく、明期開始時刻の2時間後の時刻が特に好ましい。ここでいう「外部環境における明期開始時刻」とは、適当な長さの明期と暗期とが繰り返される完全光周期条件下である外部環境での明期の開始時刻を意味し、明期開始時刻は、日の出時刻であってもよい。例えば、午前6時から午後6時までの12時間の明期と、午後6時から午前6時までの12時間の暗期が繰り返される環境下では、午前6時が明期開始時刻にあたる。電流処理開始時刻の具体的な時刻としては、例えば、午前7時から午後7時までの12時間の明期と、午後7時から午前7時までの12時間の暗期とが繰り返される環境下では、午前7時から午前13時までの間の任意の時刻が好ましく、午前7時から午前11時までの間の任意の時刻がより好ましく、午前8時30分から午前9時30分までの間の任意の時刻がさらに好ましく、午前9時が特に好ましい。電流処理開始時刻が上記時刻の範囲内であることで、後述する実施例に示すように、Per1遺伝子の発現をより効果的に亢進することができる。また、電流値及び電流処理時間は、上記において説明した範囲内とすることができる。
発生工程では、電流発生部100が、上記設定工程において設定された電流処理開始時刻に、設定された電流値及び電流処理時間の交流微弱電流を発生する。
設定工程及び発生工程における各構成での詳細な処理フローは、図1Eに示すフローを用いて上記において説明したとおりである。
<第2実施形態>
図2Aは、本発明の第2実施形態に係る体内時計活性化システムを示す斜視図である。図2Aに示す体内時計活性化システム2Aは、飼育容器300の代わりにイヌ用ベッド301を備え、装着具40を更に備える。装着具40の内周面40a(被験体の体表面に接する方の面)には、電極1が埋め込まれたRFIDタグ10(以下、「第1のRFIDタグ」と称する場合がある)、及び、更に温度センサ51が埋め込まれた第2のRFIDタグ50が配置されている。これらの点以外は、体内時計活性化システム2Aは、図1Aに示す体内時計活性化システム1Aと同じである。
装着具40は、RFIDタグ10に埋め込まれている電極1が被験体の体表面の特定位置に接するように装着するためのものである。体内時計活性化システム2Aにおいて、装着具40は、首輪の形状であるものを例示しているが、これに限定されず、上記に例示された被験体の体表面の特定位置、好ましくは、首、手首、腕、胴部、脚又は足首に装着可能なベルト等の形状とすることができる。また、被験体の種類に応じて、装着具40の形状は適宜選択することができ、イヌやネコ等の愛玩動物である場合には、容易に外れにくいことから、首輪であることが好ましい。
図2Bは、装着具を備えるRFIDタグの一例を示す斜視図である。電極1が埋め込まれたRFIDタグ10は装着具40の内周面40aに配置されている。RFIDタグ10は、装着具40の内周面40a上に固定化されていてもよく、或いは、装着具40の内部に埋め込まれており、電極1のみが内周面40a上に露出するように固定化されていてもよい。RFIDタグ10の装着具40への固定化の様式は、着脱可能な様式であってもよい。
第2のRFIDタグ50は、温度センサ51が埋め込まれている点以外は、第1のRFIDタグ10と同じである。温度センサ51は第2のRFIDタグ50のアンテナに電気的に接続している。
温度センサ51は、被験体の体温を測定するためのものである。温度センサを備えることで、被験体の体温を経時的に測定し、体温の概日リズムを把握することができる。これにより、被験体の体内時計が整っている、又は乱れているかを判定することができる。温度センサとしては、体表面から体温を測定できる公知のものを適宜選択して用いることができる。市販の温度センサとしては、例えば、Omron Electronics Inc-EMC Div社製のD6T8L06等が挙げられる。
次に、体内時計活性化システム2Aの制御方法について、図2Cに示すフローを用いて説明する。なお、第1のRFIDタグ10については、上記図1Eに示したフローと同様の方法で制御されるため、図示及び説明を省略する。また、第2のRFIDタグ50は、第1のRFIDタグ10と共に、或いは第1のRFIDタグと独立に制御される。
図2Cに示すように、制御部200からデータ読み出し指示を受けると(S11及びS12)、リーダライタ20は、電磁波に読み出しコマンドを含ませて第2のRFIDタグ50へ送信する(S13)。当該読み出しコマンドを含む電磁波を受けると、第2のRFIDタグ50のアンテナには該電磁波に起因して誘導電流が発生し(S14)、第2のRFIDタグ50のICチップが作動され、さらに、温度センサを介して被験体の体表面の温度測定処理を行う(S15)。ICチップは、読み出しコマンドに応じて記憶回路に記録しているデータを読み出し、当該データと共に、さらに、温度測定処理後の被験体から取得されたデータをリーダライタ20へ送信する(S16)。リーダライタ20は、受信したデータを制御部200へ送信する(S17及びS18)。制御部200は、受信したデータに基づいて被験体の体温の概日リズムが整っているか、或いは乱れているかの判定を行う(S19及びS20)。第2のRFIDタグ50にデータを書き込む場合には、リーダライタ20の電磁波に、書き込みコマンドと書き込み用のデータとを含ませればよく、第2のRFIDタグ50はコマンドに応じて記憶回路にデータを書き込む。また、リーダライタ20から第2のRFIDタグ50に向けて読み出しコマンドを含む電磁波を送信したときに、第2のRFIDタグ50から返答がない場合には、第2のRFIDタグ50は通信不能状態にあると判断することができる。
本実施形態の体内時計活性化システムは、図1A~図1D及び図2A~図2Bに示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1A~図1D及び図2A~図2Bに示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図2A~図2Bに示す体内時計活性化システム2Aにおいては、血圧センサが埋め込まれた第3のRFIDタグを更に備えてもよい。血圧センサは第3のRFIDタグのアンテナに電気的に接続している。
血圧センサは、被験体の血圧を測定するためのものである。血圧センサを備えることで、被験体の血圧を経時的に測定し、血圧の概日リズムを把握することができる。これにより、被験体の体内時計が整っている、又は乱れているかを判定することができる。血圧センサとしては、体表面から血圧を測定できる公知のものを適宜選択して用いることができる。市販の血圧センサとしては、例えば、Renesas Electronics社製のSmart Analog IC300、Smart Analog IC500等が挙げられる。
なお、体内時計活性化システム2Aは、体温センサ及び血圧センサのうちいずれか一方のみを備えていてもよく、両方備えていてもよい。
また、例えば、図2A~図2Bに示す体内時計活性化システム2Aにおいては、表示部を更に備えてもよい。表示部としては、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の各種携帯情報端末、コンピュータ等が挙げられる。表示部は、体温センサ又は血圧センサ等で得られたデータ(体温や血圧の経時的なデータ等)を制御部200から受信し、表示することができる。また、表示部は、専用のアプリケーション又は回路が搭載されていることが好ましい。専用のアプリケーション又は回路が搭載されていることで、制御部200から送信されたデータを解析し、グラフに変換して表示することや、変換されたグラフを元に、被験体の概日リズムをモニタリングすることができる。さらに、制御部200との間での通信が可能であり、制御情報(MCSの処理開始時刻、電流値及び電流処理時間等)を設定し、制御部200に当該制御情報を送信することができる。このような制御を可能とするため、この表示部は、各種プログラムを実行するための制御回路と、各種プログラム及び各種データが記憶される記憶回路と、各種情報を表示する表示回路と、タッチ入力を検出する入力部と、送受信部等を主体として構成されている。なお、前記入力部は、前記表示部に重ねて配置された透明のタッチスクリーン等からなり、これら表示部と入力部とによってタッチパネルを構成していてもよい。
<別の実施形態>
本実施形態の体内時計活性化システムによれば、後述する実施例に示すように、体内時計のリズム障害を改善することができる。すなわち、一実施形態において、本発明は、上記体内時計活性化システムを用いた、体内時計のリズム障害の予防又は治療方法を提供する。
また、一実施形態において、本発明は、体内時計のリズム障害の予防又は治療のための、上記体内時計活性化システムを提供する。
本実施形態の体内時計活性化システムによれば、後述する実施例に示すように、肝臓での糖代謝を促進する遺伝子の発現を変容させることができる。すなわち、一実施形態において、本発明は、上記体内時計活性化システムを用いた、肝臓での糖代謝を促進する遺伝子の発現を制御する方法を提供する。肝臓での糖代謝を促進する遺伝子としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
本実施形態の体内時計活性化システムによれば、後述する実施例に示すように、体内時計のリズム障害である被験体の認知記憶機能を改善することができる。すなわち、一実施形態において、本発明は、上記体内時計活性化システムを用いた、体内時計のリズム障害である被験体の認知記憶機能を改善する方法を提供する。被験体の年齢は、特に限定されないが、例えば、認知記憶機能が低下する年齢が挙げられる。例えば、被験体がヒトである場合には、通常、50歳以上であり、好ましくは60歳以上、より好ましくは65歳以上、さらに好ましくは70歳以上である。
本実施形態の体内時計活性化システムによれば、後述する実施例に示すように、抗老化遺伝子の発現を亢進させることができる。すなわち、一実施形態において、本発明は、上記体内時計活性化システムを用いた、抗老化遺伝子の発現を亢進させる方法を提供する。抗老化遺伝子としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
本実施形態の体内時計活性化システムによれば、後述する実施例に示すように、皮膚のアクアポリン3遺伝子の発現を亢進させることができる。すなわち、一実施形態において、本発明は、上記体内時計活性化システムを用いた、皮膚のアクアポリン3遺伝子の発現を亢進させる方法を提供する。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<方法>
[細胞培養]
C57BL/6J雄性野生型マウスの脳由来アストロサイトを用いた。細胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)(Thermo Fisher Scientific, Walthan, MA, USA)、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma Aldrich, St. Luis, MO, USA)を用いて、37℃、5%二酸化炭素/95%大気条件下で継代培養し、各試験に用いた。
[実験動物]
ICR雄性野生型マウス(以下、「野生型マウス」又は「WTマウス」と略記する場合がある)(Charles River japan Inc., Kanagawa, Japan)及びICRをバックグラウンドとするClock遺伝子改変(Clk/Clk)雄性マウス(以下、「Clock改変マウス」又は「Clk/Clkマウス」と略記する場合がある)を温度24℃±1℃、湿度60±10%、明暗周期(明期:7:00~19:00)、自由摂食摂水の条件下で1週間飼育した後、各試験に用いた。行動解析は、行動解析装置(ニューロサイエンス社製)を用い、明暗周期(明期:7:00~19:00)又は恒暗条件下(暗記:24時間)で測定した。各試験における実験動物の取り扱いについては九州大学動物実験規則に従った。
[培養アストロサイトに対するMCS]
37℃、5%二酸化炭素/95%大気条件下で培養したC57BL/6J雄性野生型マウスの脳由来アストロサイトに対して、微弱電流刺激装置(ES530,ITO社製)の金電極を用いて一定時間電気刺激を行った。
[マウス腹部に対するMCS]
ICR雄性野生型マウス及び時計遺伝子Clock改変(Clk/Clk)雄性マウスに対し、吸入麻酔下で腹部及び背部のそれぞれに電極を貼付し、微弱電流刺激装置(ES530,ITO社製)を用いて、一定時間電気刺激を行った。
[Total RNA検出]
マウス肝臓からRNAiso(Takara bil Inc., Osaka, Japan)を用いて、Total RNAを抽出した。次いで、Rever Tra Ace quantitative realtime PCR kit(Toyobo, Osaka, Japan)を用いて、RNAを鋳型としてcDNAを合成した。得られたcDNAをTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(Toyobo)と、LightCycler(登録商標) 96 System(Roche, Basel, Switzerland)を用いて増幅し、検量線法により各遺伝子のmRNA発現量を測定した。また、各遺伝子の発現量は、β-actin mRNA発現量を測定して補正した。各遺伝子の定量に用いたプライマー配列を以下の表1に示す。
Figure 0007384450000001
[ルシフェラーゼアッセイ]
C57BL/6J雄性野生型マウスの脳由来アストロサイトに、Period1(Per1)遺伝子及びPeriod2(Per2)遺伝子のプロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだベクターをトランスフェクションして、Per1::lucアストロサイト及びPer2::lucアストロサイトを作製した。得られたPer1::lucアストロサイト及びPer2::lucアストロサイトをそれぞれ35mm細胞培養用ディッシュに1ディッシュ当たり1×10細胞となるように播種し、一晩37℃のインキュベーターで培養した。培地を回収した後、2%のFBS、0.5%のペニシリン-ストレプトマイシン及び10nMのルシフェリン(Wako, Osaka, Japan)を含む、フェノールレッドフリーのDMEMに置換した。MCSを行った後、Per1遺伝子及びPer2遺伝子のプロモーター活性由来のルシフェラーゼ活性をリアルタイムモニタリングシステムLumiCycle(Actimetrics, Wilmette, IL, USA)を用いて経時的に測定した。
[タンパク質測定]
細胞から細胞質又は核を抽出し、ウエスタンブロッティング法を用いて、各タンパク質を測定した。一次抗体として抗CREB抗体(サンタクルーズ社製)、抗リン酸化CREB抗体(サンタクルーズ社製)及び抗Pol2抗体(Abcam)を使用した。二次抗体は、抗ウサギ抗体(Abcam)を使用した。
[統計解析]
統計解析ソフトとして、JMP(登録商標) Pro 13.0.0(SAS Institute Japan, Tokyo, Japan)を使用した。独立多群の比較には、一元配置分散析(One-way ANOVA)、二元配置分散析(Two-way ANOVA)、及びTukey-Kramer post-hoc testを用いた。有意水準5%以下を有意な差とした。
[実施例1]
(時計遺伝子の発現量に及ぼすMCSの影響)
時計遺伝子の発現リズムは、光等の刺激によるPERIODの発現上昇が起点となって同調されることが報告されている。そこで、この同調機構を担うPer1遺伝子及びPer2遺伝子の転写活性に及ぼすMCSの影響を検討した。
Per1::luc及びPer2::lucをそれぞれ発現させたC57BL/6J雄性野生型マウスの脳由来アストロサイトに、電流値300μA、周波数400Hzの微弱電流を15分間与えた後、ルシフェラーゼ活性を検出した。結果を図3A(Per1::lucアストロサイト)及び図3B(Per2::lucアストロサイト)に示す。図3A及び図3Bでは、MCS前(Before MC)の細胞におけるルシフェラーゼ活性を100としたときのMCS後(After MC)のルシフェラーゼ活性を相対値で表している。
図3A及び図3Bから、Per1::lucアストロサイトにおいてのみルシフェラーゼ活性の有意な上昇が認められた(P<0.01)。
[実施例2]
(Per1遺伝子の発現に対するMCSの至適条件の検討)
次いで、MCSの条件は症状に応じて適宜決められているものの、条件の決定には施術者の経験に依拠することが多い。そこで、Per1遺伝子のmRNA発現量に対する影響の大きいMCSの条件(電流処理時間及び電流値)を検討した。結果を図4A(電流処理時間)及び図4B(電流値)に示す。図4A及び図4Bにおいて、MCS未処理におけるPer1遺伝子のmRNA発現量を100としたときの各条件でのPer1遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。また、「Control」はMCS未処理の細胞である。
図4A及び図4Bから、15分間以上30分間以上の電流処理時間、300μA以上400μA以下の電流値が、Per1遺伝子のmRNA発現量を特に増加させることが明らかとなった。この結果から、以降では、15分間の電流処理時間、300μAの電流値を至適条件として試験を行った。
[実施例3]
(時計遺伝子群のmRNA発現量に及ぼすMCSの影響)
次いで、実施例2で特定した至適条件でのPer1遺伝子以外の時計遺伝子のmRNA発現量に及ぼす影響を検討した。具体的には、C57BL/6J雄性野生型マウスの脳由来アストロサイトにMCS(300μA、400Hz、15分間)を行い、MCS終了直後の各時計遺伝子群のmRNA発現量を、リアルタイムPCR法を用いて測定した。結果を図5に示す。図5において、MCS未処理の各時計遺伝子のmRNA発現量を100としたときのMCS処理した各時計遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。また、「Control」はMCS未処理の細胞である。
図5から、MCSはPer1遺伝子のみ発現を誘導し、その他の時計遺伝子には影響を及ぼさないことが明らかとなった(P<0.01)。
[実施例4]
(Per1遺伝子のプロモーターに存在するCREB結合領域を介した転写活性に及ぼすMCSの影響)
MCSによるPer1遺伝子の転写活性化の機構を解明するために、プロモーター領域の配列を探索した結果、カルシウムイオンやcAMP等の刺激により活性化するCREB応答配列(配列番号15:TGACGTCA)が存在することが確認された。そこで、Per1遺伝子のCREB応答配列を介した転写活性に及ぼすMCSの影響を検討した。具体的には、C57BL/6J雄性野生型マウスの脳由来アストロサイトに、Period1(Per1)遺伝子のプロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだベクターをトランスフェクションして、Per1::lucアストロサイトを作製した後、MCSを行い、ルシフェラーゼ活性を測定した(図6A参照)。このとき、CREB応答配列(配列番号15)を含むPer1遺伝子(Per1 CRE(-1800))と、CREB応答配列を含まないPer1遺伝子(Per1(-1400))とを使用して、Per1::lucアストロサイトを作製した(図6B参照)。結果を図6Cに示す。
図6Cから、MCSはPer1遺伝子のプロモーター領域に存在するCREB応答配列を介して、Per1遺伝子を発現誘導することが明らかとなった(P<0.001)。
[実施例5]
(マウス肝臓に対するMCSの処理開始時刻の影響)
上記のインビトロ系の試験で明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)を用いて、マウス肝臓を対象としたインビボ系でのPer1遺伝子の発現の変化を検討した。マウス肝臓において、Per1遺伝子は明期前半にトラフ、暗期前半にピークとなる概日リズムを示し、時刻によってPer1遺伝子のmRNA発現量は大きく異なることが知られている。Per1遺伝子のmRNAの発現リズムは時計遺伝子のフィードバックループを始め、いくつかの転写因子の活性化リズムによって制御されており、また、光刺激等に反応する時刻が限定されていることも報告されている。これらのことから、本発明者らは、MCSに対するPer1遺伝子のmRNA発現の応答に時刻差が生じる可能性があると考えた。Per1遺伝子のmRNA発現に最も影響の大きいMCSの処理開始時刻を明らかにすることを目的として、異なる時刻(ZT2[9:00]、ZT6[13:00]、ZT10[17:00]、ZT14[21:00]、ZT18[1:00]及びZT22[5:00])にて野生型マウス腹部にMCSを行い(図7A参照)、MCS直後の肝臓中のPer1遺伝子のmRNA発現量を測定した。結果を図7B及び図7Cに示す。図7Bにおいて、各条件でのPer1遺伝子のmRNA発現量は、β-アクチン遺伝子のmRNA発現量で標準化された値である。図7Cでは、各処理開始時刻におけるControl(MCS未処理の場合)でのPer1遺伝子のmRNA発現量を100としたときの各処理開始時刻におけるMCS処理した場合でのPer1遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。図7B及び図7Cにおいて、「Control」はMCS未処理のマウス群である。以下、Control群と称する場合がある。
図7B及び図7Cから、ZT2[9:00]におけるMCSにより、Per1遺伝子のmRNA発現量が有意に上昇することが明らかとなり(P<0.01)、Control群と比較した上昇率もZT2[9:00]においてMCS処理したマウス群が最も高かった。
以上の結果から、以降のインビボ系の試験では、ZT2[9:00]にMCSを行うこととした。
[実施例6]
(マウス肝臓中のPer1遺伝子の発現リズムに対する腹部MCSの影響)
インビトロ系において明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)がマウス肝臓中のPer1遺伝子の発現リズムに及ぼす影響を検討した。具体的には、WTマウスの腹部に対して、ZT2[9:00]にMCSを行い、刺激直後(0分後)から120分後までのPer1遺伝子のmRNA発現量の経時的変化(図8A参照)を測定した。結果を図8Bに示す。図8Bでは、MCS直後(0分後)でのMCS未処理のマウス肝臓細胞(コントロール)のPer1遺伝子のmRNA発現量を100としたときの各時間経過後でのMCS処理した又は未処理のマウス肝臓細胞のPer1遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。
図8Bから、MCSから30分後付近でPer1遺伝子のmRNA発現量が上昇しており(P<0.01)、その発現上昇は30分以降も継続する傾向が認められた。
次いで、MCSから120分以降(図9A参照;ZT2~ZT22は上記図7Aと同様)についても肝臓中Per1遺伝子のmRNA発現量を測定し、その発現の概日リズムをMCS未処理のマウス群(Control群)と比較した。結果を図9Bに示す。
図9Bから、MCS処理したマウス群(MCS群)では、Control群と比較して、有意な発現リズムの位相前進と振幅増大が認められた。
[実施例7]
(Clock改変マウスの肝臓中Per1遺伝子の発現リズムに対するMCSの影響)
Clock改変マウス(Clk/Clkマウス)は、CLOCK/BMAL1複合体の応答配列であるE-boxを介した転写活性が消失しており、概日リズム障害モデルとして一般的に用いられている。また、Per1遺伝子の上流には複数のE-boxが存在するため、Clk/ClkマウスにおけるPer1遺伝子の発現リズムの振幅は著しく低下していることが報告されている。そこで、Clk/Clkマウスに対して腹部MCSを行い(図10A参照)、肝臓中Per1遺伝子のmRNA発現量の概日リズムを測定した。結果を図10Bに示す。図10Bでは、各群のZT2時点でのPer1遺伝子のmRNA発現量を1としたときの各群の各時刻でのPer1遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。また、「MCS(Clk/Clk)」はMCS処理を行ったClk/Clkマウス群(MCS群)、「Control(Clk/Clk)」はMCS未処理のClk/Clkマウス群(Control群)、「Intact(WT)」はMCS未処理の野生型マウス群(Intact群)である。
図10Bから、MCS群では、Control群と比較して有意な概日リズムの変化及び振幅増大が認められた。さらに、MCS群の肝臓中Per1遺伝子の発現リズムとIntact群の肝臓中Per1遺伝子の発現リズムとを比較したところ、有意差は認められなかった。
これらのことから、MCSは概日リズム障害を有するマウスのPer1遺伝子の発現リズムを正常時と同程度まで回復させる、すなわち、Per1遺伝子の発現を活性化させることが示唆された。また、当該結果は、従来の光や食事による治療法と比較して、より正常時のPer1遺伝子の発現リズムの振幅に近い結果であり(図10B参照)、より高い治療効果が得られていると推察された。
[実施例8]
(野生型マウス及びClock改変マウスの行動リズムに及ぼすMCSの影響)
インビトロ系において明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)が野生型マウス及びClock改変マウスの行動リズムに及ぼす影響を検討した。1週間明暗条件下(明期:7:00~19:00)で飼育後、恒暗(DD)条件下で1週間飼育したマウスを対象に麻酔下でMCSを行った(図11A及び図12A参照、ZT0[7:00]にMCS行った)。行動リズムを図11B(野生型マウス)及び図12B(Clock改変マウス)に示す。また、図11B~図11D及び図12B~図12Dにおいて、「Non treatment」は麻酔、除毛及びMCS未処理のマウス群(未処理群)、「Control」は麻酔及び除毛処理を行ったが、MCS未処理のマウス群(Control群)、「MCS」は麻酔、除毛及びMCS処理を行ったマウス群(MCS群)である。
図11B~図11D及び図12B~図12Dから、野生型マウス及びClock改変マウス共に麻酔により行動リズムが変化したが(Control群)、MCS群では未処理群と同じ行動リズムを示した。なお、麻酔により体内時計が乱れることが知られており、臨床上でも問題となっている。
以上の結果から、MCSにより行動リズムが操作でき、また麻酔による概日リズム障害が改善されることが明らかになった。また、MCSにより、ジェットラグや夜間のシフト勤務等で生じる概日リズム障害への改善効果も期待できる。
[実施例9]
(マウス肝臓中のリン酸化CREBの発現リズムに対する腹部MCSの影響)
インビトロ系での検討により、MCSによるPer1遺伝子の発現誘導は、Per1遺伝子のプロモーター領域に存在するCREB応答配列を介したものであることが明らかとなった。インビボ系においても同様に、Per1遺伝子の発現誘導がCREB応答配列を介したものであるかについて確認することを目的として、MCS条件(300μA、400Hz、15分間)を野生型マウスの腹部に行い、マウス肝臓中のリン酸化CREB(pCREB)タンパク質の発現量を測定した。結果を図13A及び図13Bに示す。図13Aにおいて、「pCREB」はリン酸化CREB、「CREB」はリン酸化及び未リン酸化CREB、「pol2」はRNAポリメラーゼIIである。また、図13A及び図13Bにおいて、「Control」はMCS未処理の野生型マウス群(Control群)、「MCS」はMCS処理の野生型マウス群(MCS群)である。
図13A及び図13Bから、MCS処理により、核内のリン酸化CREBの発現リズムが変容し、その傾向はPer1遺伝子の発現リズムと対応していた。
以上の結果から、MCSによるPer1遺伝子の発現誘導は、CREBのリン酸化を介した経路が活性化することで生じる可能性が示唆された。
時計遺伝子のフィードバックループの起点は、Per1遺伝子の発現上昇であることが知られており、光照射療法等の光による応答もPer1遺伝子の発現上昇が起点となることが報告されている。MCS直後にPer1遺伝子の発現上昇が認められ(図8B参照)、更にその発現がPer1遺伝子選択的であることから(図5参照)、MCSは生体が元来持つ概日リズム制御機構と同じ経路を活性化していると推察された。
また、MCSが時計遺伝子群に対してPer1遺伝子選択的に作用していた理由の一つとして、Per1遺伝子上流に選択的に作用する因子である、CREB(cAMP応答配列結合タンパク質)が挙げられる。Per1遺伝子の上流にはCREB応答配列が存在し、光同調によるPer1遺伝子の発現上昇は主にCREB応答配列に対するリン酸化CREBの結合によって引き起こされることが報告されている。さらに、CREBのリン酸化やその上流に位置するERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)及びMAPK(分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ)は、細胞内cAMPやカルシウムイオン濃度の増加によって活性化されることが知られている。また、MCSにより、細胞内cAMPやカルシウムイオン濃度が上昇することが報告されている。これらのことから、MCSは、細胞内cAMPやカルシウムイオン濃度等のセカンドメッセンジャーを介したCREBの活性化(リン酸化)により、Per1遺伝子の発現を誘導し、体内時計の同調に影響を及ぼしていると推察された。
時計遺伝子は、時計遺伝子同士のみでなく、他の遺伝子の発現にも影響を及ぼすことで、肝臓、腎臓等の各末梢組織固有の様々な生理現象に概日リズムを生じさせることが報告されている。よって、MCSによるPer1遺伝子の発現リズムの活性化によって、肝臓に限らず様々な臓器における生理現象の概日リズムも活性化できるものと考えられる。
よって、MCSを用いた体内時計活性化療法は、麻酔を伴う手術、老年医療、様々な疾患の予防及び治療、健康増進等の幅広い分野への応用が期待される。
[実施例10]
(マウス肝臓の糖代謝を促進する遺伝子の発現リズムに対するMCSの影響)
インビトロ系において明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)がマウス肝臓の糖代謝を促進する遺伝子の発現リズムに及ぼす影響を検討した。具体的には、7週齢の野生型マウス及びClock改変マウスに、1回(ZT2[9:00])、MCSを行い、その後、肝臓の糖代謝の促進に関連する遺伝子(Glucokinase (Gck)遺伝子、Phosphoenolpyruvate carboxykinase 1 (Pck1)遺伝子、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor α (Pparα)遺伝子、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ (Pparγ)遺伝子)のmRNAの発現量の経時的変化を測定した。結果を図14A(野生型マウス)及び図14B(Clock改変マウス)に示す。図14Aでは、MCS直後(0分後)でのMCS未処理の野生型マウス肝臓細胞(コントロール群)の各遺伝子のmRNA発現量を100としたときの各時間経過後でのMCS処理した野生型マウス肝臓細胞(MCS群)又は未処理の野生型マウス肝臓細胞(コントロール群)の各遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。図14Bでは、MCS直後(0分後)でのMCS未処理のClock改変マウス肝臓細胞(コントロール)の各遺伝子のmRNA発現量を100としたときの各時間経過後でのMCS処理したClock改変マウス肝臓細胞(MCS群)又は未処理のClock改変マウス肝臓細胞(コントロール群)の各遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。mRNA発現量の測定のためのサンプリングを、MCSから2、4、8、12、16、20時間後(ZT4、ZT6、ZT10、ZT14、ZT18、ZT22)に行った。
図14A及び図14Bから、野生型マウス及びClock改変マウス共に肝臓の糖代謝の促進に関連する遺伝子の発現量リズムが、MCSにより変容することが明らかとなった。
[実施例11]
(野生型加齢マウスの行動リズムに及ぼすMCSの影響)
インビトロ系において明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)が野生型加齢マウスの行動に及ぼす影響を検討した。具体的には、38週齢の野生型加齢マウスに8週間、週に1回(ZT2[9:00])にMCSを行い、その後、行動解析を赤外線センサにより測定した。結果を図15A(行動リズム)及び図15B(自発運動活性)に示す。図15A及び図15Bにおいて、「Control」はMCS未処理の野生型加齢マウス群を示し、「MCS」は、MCS処理した野生型加齢マウス群を示す。
図15A及び図15Bから、MCS未処理の野生型加齢マウスの行動リズムは、乱れており、周期性を失っていた。一方で、MCS処理した野生型加齢マウスでは、周期性(約12時間周期の活動休息リズム)が保持されていた。
[実施例12]
(野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスの認知記憶機能に及ぼすMCSの影響)
インビトロ系において明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)が野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスの認知記憶機能に及ぼす影響を検討した。具体的には、38週齢の野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスに8週間、週に1回(ZT2[9:00])にMCSを行い、その後、パッシブアボイダンステストを行い、認知記憶機能を測定した。結果を図16に示す。図16において、「Control」はMCS未処理の野生型加齢マウス群又はClock改変加齢マウス群を示し、「MCS」は、MCS処理した野生型加齢マウス群又はClock改変加齢マウス群を示す。
図16から、MCS未処理の野生型加齢マウスの認知記憶機能は、MCSにより若干改善された。一方で、MCS未処理のClock改変加齢マウスの認知記憶機能は、野生型と比較し顕著に低下し、MCSにより劇的に改善した。
[実施例13]
(野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスの抗老化遺伝子Sirt1遺伝子の発現量に及ぼすMCSの影響)
インビトロ系において明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)が野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスの抗老化遺伝子Sirt1遺伝子の発現量に及ぼす影響を検討した。具体的には、38週齢の野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスに8週間、週に1回(ZT2[9:00])にMCSを行い、その後、各マウスの肝臓細胞での若返りの遺伝子と呼ばれる抗老化遺伝子Sirt1遺伝子のmRNAの発現量を測定した。結果を図17A(野生型加齢マウス)及び図17B(Clock改変加齢マウス)に示す。図17Aにおいて、「Intact」とは、MCS未処理の野生型マウス群を示し、「Control」はMCS未処理の野生型加齢マウス群を示し、「MCS」は、MCS処理した野生型加齢マウス群を示す。図17Aでは、Control群(MCS未処理の野生型加齢マウス)の肝臓細胞でのSirt1遺伝子のmRNA発現量を100としたときのMCS群(MCS処理した野生型加齢マウス)の肝臓細胞でのSirt1遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。図17Bにおいて、「Intact」とは、MCS未処理の野生型マウス群を示し、「Control」はMCS未処理のClock改変加齢マウス群を示し、「MCS」は、MCS処理したClock改変加齢マウス群を示す。図17Bでは、Control群(MCS未処理のClock改変加齢マウス)の肝臓細胞でのSirt1遺伝子のmRNA発現量を100としたときのMCS群(MCS処理したClock改変加齢マウス)の肝臓細胞でのSirt1遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。
図17A及び図17Bから、野生型加齢マウス及びClock改変加齢マウスともにControl群と比較し、MCS群ではSirt1遺伝子のmRNAの発現量が顕著に増加した。
[実施例14]
(野生型加齢マウスの皮膚でのアクアポリン3遺伝子の発現量に及ぼすMCSの影響)
インビトロ系において明らかとなったMCS条件(300μA、400Hz、15分間)が野生型加齢マウスの皮膚でのアクアポリン3(Aqp3)遺伝子の発現量に及ぼす影響を検討した。具体的には、38週齢の野生型加齢マウスに8週間、週に1回(ZT2[9:00])にMCSを行い、その後、皮膚でのAqp3遺伝子のmRNAの発現量を測定した。結果を図18に示す。図18では、Control群(MCS未処理の野生型マウス)の皮膚でのAqp3遺伝子のmRNA発現量を1としたときのMCS群(MCS処理した野生型マウス)の皮膚でのAqp3遺伝子のmRNA発現量を相対値で表している。
図18から、Control群と比較して、MCS群では、Aqp3遺伝子のmRNAの発現量が顕著に増加した。
本実施形態の体内時計活性化システム及びその制御方法によれば、体内時計のリズム障害を改善することができる。
1A,2A…体内時計活性化システム
1…電極
2…アンテナ
2a,2b…アンテナの端部
3…ICチップ
3a…通信回路
3b…記憶回路
3c…制御回路
4…保護膜
4a…保護膜の上面
5…基材
6…粘着剤層
10…(第1の)RFIDタグ
20…リーダライタ
21…アンテナ
22…通信回路
23…昇圧回路
24…制御回路
30…電源
31…配線用差込接続器(コンセント)
32…電気配線
33…家庭用電源
40…装着具
40a…装着具の内周面
50…第2のRFIDタグ
51…温度センサ
60…アクティブRFIDタグ
100…電流発生部
200…制御部
201…ON/OFFスイッチ
202…調節スイッチ
203…出力画面
300…飼育容器
301…イヌ用ベッド
X…マウス
Y…イヌ

Claims (9)

  1. 被験体の体表面の特定位置に接して交流微弱電流刺激を与えるように構成された電極と、
    前記電極に接続され、交流微弱電流を発生させる電流発生部と、
    前記電流発生部に接続され、前記交流微弱電流の電流値を1μA以上750μA以下、電流処理時間を10分間以上60分間以下に制御するように構成された制御部と、
    を備え、
    Period1遺伝子の発現亢進作用を有する、体内時計活性化システム。
  2. 前記制御部が、前記交流微弱電流の電流値を300μA以上400μA以下、電流処理時間を10分間以上30分間以下に制御するように構成されている、請求項1に記載の体内時計活性化システム。
  3. 前記制御部が、前記交流微弱電流の周波数を300Hz以上500Hz以下に制御するように構成されている、請求項1又は2に記載の体内時計活性化システム。
  4. 前記電流発生部が、RFIDタグ、リーダライタ及び電源を含んで構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の体内時計活性化システム。
  5. 温度センサ又は血圧センサを更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の体内時計活性化システム。
  6. 前記電極が被験体の体表面の特定位置に接するように装着するための装着具を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の体内時計活性化システム。
  7. 前記被験体の体表面の特定位置が、首、手首、腕、胴部、脚又は足首である、請求項1~6のいずれか一項に記載の体内時計活性化システム。
  8. 請求項1~のいずれか一項に記載の体内時計活性化システムの制御方法であって、
    前記制御部が、任意の時刻に交流微弱電流刺激を開始するように、前記交流微弱電流の電流処理開始時刻、電流値及び電流処理時間を設定する設定工程と、
    前記電流発生部が設定された電流処理開始時刻に、設定された電流値及び電流処理時間の交流微弱電流を発生する発生工程と、
    をこの順に行う制御方法。
  9. 前記設定工程において、前記制御部が、外部環境における明期開始時刻からその6時間後までの間の任意の時刻に交流微弱電流刺激を開始するように、電流処理開始時刻を設定する、請求項に記載の制御方法。
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