JP7384344B2 - 人工芝、人工芝用充填材及び人工芝生産方法 - Google Patents

人工芝、人工芝用充填材及び人工芝生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、人工芝、人工芝用充填材及び人工芝生産方法に関し、特に、複数のパイルの間に充填剤を充填した充填材層を備える人工芝等に関するものである。
現在、人工芝は様々なスポーツ施設において使用されている。また、多様な人工芝が開発されている。以下、サッカー場で一般的に使用されている人工芝について説明する。
従来、使用されてきた天然芝は、施肥や水やり、補修など毎日の維持管理の仕事が多かった。それに比べて人工芝は、維持管理が容易である。加えて、有機高分子化合物でできているため耐久性にも優れ、雨天の後でも競技が可能ということなどから、近年施工する施設が増えている。
しかし、初期の人工芝は硬く衝撃吸収性に劣っていたため、膝への負担が大きかった。また、スライディングの際、火傷や擦り傷が生じやすい問題があった。
人工芝の開発の経緯を図2を参照して説明する。図2は、従来の人工芝の断面図であり、(a)第1世代、(b)第2世代、(c)第3世代の人工芝の断面図を示す図である。
人工芝の導入(第1世代)は、1966年のアメリカ・ヒューストンのアストロドーム(野球場)が世界で最初であった。日本では、1976年に後楽園球場に導入された。図1(a)に示すように、第1世代人工芝11は、パイル層13と、スポーツに必要なクッション性を確保するためのアンダーパッドと呼ばれるクッション層15(合成高分子の発泡体)を備え、二層構造をしている。パイル層13を形成する多数のパイル17は、カーペット状にクッション層15から起立している。
第1世代人工芝11は、スライディングの際、火傷や擦り傷が生じやすいという安全性の問題が指摘されていた。さらに、アンダーパッドはその柔軟性により局部的にへこむため、ダッシュやジャンプの際に足の踏ん張りが利きにくく、プレーヤーの足腰に負担が生じやすい問題があった。
第1世代人工芝11の安全性と設置費用の高さなどの理由から、1980年代に入ると砂入り人工芝が第2世代人工芝21として登場した。第2世代人工芝21は、パイル層23と、クッション層25とに加え、パイル27の間に砂29をさらに備える。また、第2世代人工芝21は、編み込むパイル27の数を第1世代人工芝11よりも少なくし、人工芝の間に砂29を入れた結果、第1世代の人工芝に比べてコストが約50%安いと言われている。そのため、市民レベルの野球場やテニスコートに広く普及した。また、第2世代人工芝21は、砂29を入れたことにより、プレーヤーの足で受けた衝撃が面的に広く下に伝わって緩和されるため、アンダーパッドの局部的なへこみが抑えられた。そのため、プレーヤーの足腰に疲れが生じやすい問題は改善された。
しかし、長年使用して砂層が固く締まった第2世代人工芝21は、運動時に足や膝に直接衝撃が伝わりやすいという別の問題点も生じた。
1990年代後半に入ると、通称ハイテク人工芝と言われている第3世代人工芝31が登場した。第3世代人工芝31は、パイル層33と、ゴムチップ層35と、砂37と、基盤層39とを備える。パイル層33を形成するパイルは、第1世代人工芝11及び第2世代人工芝21の人工芝よりも長いロングパイル41である。第3世代人工芝31は、アンダーパッドを取り除き、基盤層39と、ゴムチップ層35と、砂37の3層構造である。ゴムチップ層35にクッション性を持たせ、かつ、砂37を入れることで柔らか過ぎないように調節されている。これにより、運動時の変形性を天然芝に近づけ、怪我を抑える工夫をしている。
例えば、特許文献1には、人工芝を構成する基材上に起立する芝葉を模した多数のパイル間に、廃タイヤや工業廃材等を破砕したゴムチップを充填材として充填し、人工芝の衝撃吸収性を向上させる技術が記載されている。
特開2018-178499号公報
しかしながら、本願発明者が自然光下において天然芝と人工芝の表面温度を測定し比較したところ、従来の人工芝の表面温度は60℃超と天然芝よりも20度以上も高くなる場合があった。
図3は、第3世代人工芝を用いたグラウンドと天然芝を用いたグラウンドの表面温度の等温度分布を示す図である。図3には、9月の晴れた日の正午近くの表面温度の分布が示されている。なお、東(図の右側)からの風が入っていたため、表面温度は風の影響で図の右側が下がっている。また、全体として第3世代人工芝の表面温度が天然芝よりも約20℃高く、60℃を超える箇所も見られた。
このように、人工芝を天然芝の代替品として用いるためには改善の余地が残されていた。そこで、本発明は、人工芝表面の温度を低温に保つ機能を有する人工芝等を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、基材と、前記基材に起立する芝葉を模した複数のパイルと、複数の前記パイルの間に充填される充填材が形成する充填材層とを備える人工芝であって、前記充填材層は、保水層と、炭酸カルシウムを主成分とする鉱物とを有する、人工芝である。
本発明の第2の観点は、第1の観点の人工芝であって、前記保水層は、多孔性物質を有する。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の人工芝であって、前記充填材は、植物由来物質を有する。
本発明の第4の観点は、第3の観点の人工芝であって、前記充填材層と前記基材との間に、前記鉱物を主材とする鉱物層をさらに備える。
本発明の第5の観点は、第3又は第4の観点の人工芝であって、前記鉱物は、石灰岩である。
本発明の第6の観点は、第5の観点の人工芝であって、前記植物由来物質は、樹皮由来の木くず及びおがくずである。
本発明の第7の観点は、第5の観点の人工芝であって、前記植物由来物質は、ココヤシピートである。
本発明の第8の観点は、人工芝に含まれる芝葉を模した複数のパイルの間に充填される人工芝用充填材であって、植物由来物質と、炭酸カルシウムを主成分とする鉱物とを備える。
本発明の第9の観点は、基材と、前記基材上に起立する芝葉を模した複数のパイルとを備える人工芝を生産する人工芝生産方法であって、前記充填材は、植物由来物質と、炭酸カルシウムを主成分とする鉱物とを備え、前記基材の上であり複数の前記パイルの間に前記充填材を充填する充填ステップを含む、人工芝生産方法である。
本発明の各観点によれば、保水層に含まれる水分が気化することにより多くの気化熱を奪い、かつ、鉱物に湿気が与えられて温度上昇を遅らせることが可能となる。そのため、人工芝表面の温度を低温に保つ機能を有する人工芝等を提供することが可能になる。結果として、利用者の火傷や熱中症を抑制して安全性の高い人工芝を提供可能となる。
また、第3世代人工芝に用いられているゴムチップ層を形成するゴムチップは、車のタイヤの細かな破砕物のリサイクル品である。タイヤには酸化亜鉛、硫黄、カーボンブラック等の様々な化学物質が含まれており、中には発がん性が高いとされるベンゾピレンがゴムチップから検出されたとする報告もある。本発明の第3、第8又は第9の観点によれば、充填材に環境汚染や使用者の健康被害が生じる危険性があるゴムチップを用いることなく、天然資源のみを使用しており、利用者の健康への悪影響を抑制することが可能となる。
また、本発明の第4の観点によれば、比較的クッション性の高い充填材層と比較的硬い鉱物層とで利用者への身体的負担を軽減すると共に、適度な反発力を保つことが可能となる。
さらに、本発明の第5から第7の観点によれば、より効果的な人工芝を提供することが可能となる。
本発明に係る人工芝の断面図である。 従来の人工芝の断面図であり、(a)第1世代、(b)第2世代、(c)第3世代の人工芝の断面図を示す図である。 第3世代人工芝を用いたグラウンドと天然芝を用いたグラウンドの表面温度の等温度分布を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施例は、以下に記載する内容に限定されるものではない。
図1は、本発明の人工芝1の断面図である。人工芝1(本願請求項における「人工芝」の一例)は、基材3(本願請求項における「基材」の一例)と、基材3上に起立する芝葉を模した多数のパイル5(本願請求項における「パイル」の一例)と、多数のパイル5の間に充填材(本願請求項における「充填材」の一例)が充填されて形成される充填材層7(本願請求項における「保水層」及び「充填材層」の一例)と、基材3と充填材層7の間に鉱物(本願請求項における「鉱物」の一例)を主材とする鉱物層9(本願請求項における「鉱物層」の一例)を備える。
充填材層7を形成する充填材は、植物由来物質(本願請求項における「多孔性物質」及び「植物由来物質」の一例)と、炭酸カルシウムを主成分とする鉱物とを含む。植物由来物質には、乾燥させて粉末状にしたココヤシピートを用いた。鉱物には、福岡県飯塚市の香春岳で採石された寒水石を用いた。寒水石は、白色の結晶質石灰岩である。
人工芝1を生産する本発明に係る人工芝生産方法(本願請求項における「人工芝生産方法」の一例)は、以下の通りである。基材3に多数のパイル5を植え付けるパイル植付ステップと、多数のパイル5の間に鉱物を主材とする鉱物層9を形成する鉱物層形成ステップと、鉱物層9の上であって多数のパイル5の間に充填材を充填して充填材層7を形成する充填材層形成ステップとを経て、人工芝1が生産される。
例えば、基材3を5-15mmのショックパッドとし、鉱物層9を10-15mmとし、充填材層7を15-30mmとし、パイル5が充填材層7より上に出ている長さを10-15mmとし、全体として40-60mm程度の厚さとしてもよい。また、これらの各層や全体の厚みは、必要に応じて上記以外としてもよい。
なお、必要であれば後から充填材や鉱物を追加することも可能である。
また、基材3として、例えば、柔軟性を有するショックパッドを用いる。ショックパッドは、糸状の構造体を有しており、一定の水分を保持することが可能である。そのため、充填材層の代わりに保水層として基材3を用いてもよい。あるいは、充填材層と共に保水層として機能させてもよい。基材3が保持する水分の気化熱によっても、少なくとも気化熱で人工芝を冷やすことが期待できる。
本発明の人工芝1は、従来の人工芝と同様に、衝撃吸収性、耐久性、維持管理の容易さを有しつつ、さらに人工芝表面の温度上昇を抑制することができるため、涼しくより快適な環境をプレーヤーに提供することが可能になる。
実際に、本発明に係る人工芝と第3世代人工芝とで表面温度を比較した計測結果例を表1に示す。表1に示すように、本実施例の人工芝の表面温度の方が同環境に置かれている第3世代人工芝よりも安定して10℃以上も温度上昇を抑制できている。
Figure 0007384344000001
ここで、上記の表面温度測定は、非接触型の温度計を用いており、放射温度を測定したものである。直に人工芝に接触する競技者にとっての体感温度は本実施例の人工芝の方がさらに冷えて感じられると考えられる。
また、衝撃吸収性を高めるために、ゴムチップではなくココヤシピートを用いているため、環境汚染や健康被害が生じる危険性がない。
なお、植物由来物質としては粉末状のココヤシピートを用いたが、檜や杉等の樹皮チップを用いても良い。充填材をゴムチップから樹皮チップに替えることにより、表面温度の高温化を抑制することができる。また、樹皮を粉砕した木くず及び/又はおがくずを植物由来物質として用いてもよいし、ココヤシピートとの混合物を用いてもよい。
タイヤの再生利用物である黒ゴムチップは、黒い炭素微粒子が出やすく、温度が上昇すると不快な匂いを発生する。一方、檜や杉の樹皮チップからは、木の香りがして、森林浴のような快い気分になる。さらに、樹皮チップは、資源の循環利用の観点からもゴムチップに比べて優れている。
また、植物由来物質として、コーヒー豆を粉砕した粉末を用いてもよい。
1;人工芝、3;基材、5;パイル、7;充填材層、9;鉱物層、11;第1世代人工芝、13;パイル層、15;クッション層、17;パイル、21;第2世代人工芝、23;パイル層、25;クッション層、27;パイル、29;砂、31;第3世代人工芝、33;パイル層、35;ゴムチップ層、37;砂、39;基盤層、41;ロングパイル

Claims (9)

  1. 基材と、
    前記基材に起立する芝葉を模した複数のパイルと、
    複数の前記パイルの間に充填される充填材が形成する充填材層とを備える人工芝であって、
    前記充填材層は、
    保水層と、
    炭酸カルシウムを主成分とする鉱物とを有する、人工芝。
  2. 前記保水層は、多孔性物質を有する、請求項1記載の人工芝。
  3. 前記充填材は、植物由来物質を有する、請求項1又は2記載の人工芝。
  4. 前記充填材層と前記基材との間に、前記鉱物を主材とする鉱物層をさらに備える、請求項3記載の人工芝。
  5. 前記鉱物は、石灰石である、請求項3又は4記載の人工芝。
  6. 前記植物由来物質は、樹皮由来の木くず及びおがくずである、請求項5記載の人工芝。
  7. 前記植物由来物質は、ココヤシピートである、請求項5記載の人工芝。
  8. 人工芝に含まれる芝葉を模した複数のパイルの間に充填される人工芝用充填材であって、
    保水層を形成する物質と、
    炭酸カルシウムを主成分とする鉱物とを備える、人工芝用充填材。
  9. 基材と、前記基材上に起立する芝葉を模した複数のパイルと、複数の前記パイルの間に充填される充填材が形成する充填材層とを備える人工芝を生産する人工芝生産方法であって、
    前記充填材は、
    保水層を形成する物質と、
    炭酸カルシウムを主成分とする鉱物とを備え、
    前記基材の上であり、複数の前記パイルの間に前記充填材を充填する充填ステップを含む、人工芝生産方法。
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