JP7384248B1 - 電子線硬化型組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたマット性を有し、かつマイグレーションを抑制できる塗膜を形成でき、経時安定性に優れる電子線硬化型組成物を提供する。【解決手段】1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)と、平均粒子径が1.5~9.0μmの樹脂微粒子(B)と、体質顔料(C)とを含み、前記(メタ)アクリレート成分(A)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として60質量%以上であり、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として25質量%未満である、電子線硬化型組成物。【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は電子線硬化型組成物に関し、より詳細には電子線硬化型オーバーコートニスとして好適に使用できる電子線硬化型組成物に関する。本発明の他の実施形態は、電子線硬化型組成物の硬化塗膜を表面層に有する包装材料に関する。
近年、瞬間乾燥による工程時間の短縮、揮発性成分を含有しないこと(Non-VOC)による環境負荷低減、及び架橋反応による強固な塗膜物性の実現が可能となる観点から、印刷産業では活性エネルギー線硬化技術の利用が拡大している。例えば、包装材料などの被塗装物の表面保護及び美粧性向上を目的とした、活性エネルギー線硬化型オーバーコートニスが実用化されている。活性エネルギー線硬化型オーバーコートニスは、包装材料の基材の表面、又は基材に絵柄及び模様などの装飾を付与する印刷層の表面に設けられる表面層を形成するために使用される。
包装材料の分野では、近年、より高い美粧性が求められており、例えば、艶消しの(マットな)外観に対する要望がある。また、具体的な用途に応じて、包装材料の表面層には、表面保護及び美粧性に加えて、様々な特性が要求されるようになってきている。例えば、食品用包装材料の場合には、安全性を確保する観点から、マイグレーションを抑制できるオーバーコートニスの開発が望まれている。
食品用包装材料におけるマイグレーションについては、食品包装の安全性を確保するために設けられた様々な規制が知られている。なかでも、スイス連邦の条例(SwissOrdinance RS817.023.21Annex10)では、食品非接触のインキ及びニスを含む包装材料のポジティブリスト(使用可能な原材料の規制)が設けられ、さらに各原材料について許容されるマイグレーション量(SML)について規制している。スイス連邦の条例における規制水準は非常に厳しいが、その規制水準は、消費者の安全志向の高まりから、近年、食品用包装材料の世界基準として重要な指標となっている。
これに対し、従来の活性エネルギー線硬化型組成物を食品用包装材料の用途で使用した場合、上記SMLの規制水準を満たすことが困難である傾向がある。活性エネルギー線硬化型組成物は、反応形態の観点から、紫外線硬化型組成物と、電子線硬化型組成物とに大別される。なかでも、紫外線硬化型組成物では光重合開始剤が必要となるため、低分子量の光重合開始剤に起因してマイグレーションの問題が生じやすい。一方、電子線硬化型組成物では高エネルギーの電子線を利用するため光重合開始剤を必要としない。そのため、マイグレーションの問題を改善する観点から、食品用包装材料等の用途に向けたオーバーコートニスとして、電子線硬化型組成物を好ましく利用できると考えられる。しかし、代表的な電子線硬化型組成物は、紫外線硬化型組成物と同様に、バインダーの主成分として(メタ)アクリレートモノマーを含み、低分子量の(メタ)アクリレートモノマーによるマイグレーションの問題が生じやすい。そのため、電子線硬化型組成物をオーバーコートニスとして使用する場合であっても、マイグレーションの改善に向けたさらなる検討が求められている。
一方、オーバーコートニスなどの塗膜形成用組成物に艶消し性(マット性)の特性を付与するために、代表的に艶消し剤が使用される。艶消し剤としては、無機及び有機の様々な材料から構成される微粒子が知られている。一般的に、組成物における艶消し剤の含有量を高めることで優れたマット性を得ることができる。しかし、艶消し剤の含有量の増加に伴って、増粘など組成物の粘度変化が起こりやすい。また、組成物においてバインダーに対する艶消し剤の分散性が不十分である場合、沈殿物が生じ保存安定性が低下しやすい傾向がある。このように、優れたマット性と、粘度安定性及び保存安定性といった経時安定性とを両立することは容易ではない。
以上のことから、優れたマット性を有し、かつマイグレーションを抑制できる塗膜を形成でき、経時安定性に優れる活性エネルギー線硬化型組成物の開発が望まれている。
特許第6919110号公報(特開2010-241954号公報)
これに対し、特許文献1は、マット性を有する光重合性アクリレートモノマー、2種の樹脂ビーズ、及び光開始剤を含有してなる活性エネルギー線硬化型コーティングワニスを開示している。しかし、開示されたワニス(組成物)は、光重合開始剤などの低分子量の成分を含んでいることから、マイグレーション抑制の観点では改善が必要である。このように、従来の活性エネルギー線硬化型組成物では、マット性、マイグレーション抑制、及び経時安定性の全ての観点で十分に満足できるレベルに至らず、さらなる開発が望まれている。
したがって、上述の状況に鑑み、本発明の一実施形態は、優れたマット性を有し、かつマイグレーションを抑制できる塗膜を形成でき、経時安定性に優れる電子線硬化型組成物を提供する。本発明の他の実施形態は、上記電子線硬化型組成物を使用して形成される表面層を有する包装材料を提供する。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載の電子線硬化型組成物を構成することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態は以下に関する。但し、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
[1]1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)と、平均粒子径が1.5~9.0μmの樹脂微粒子(B)と、体質顔料(C)とを含み、
上記(メタ)アクリレート成分(A)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として60質量%以上であり、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として25質量%未満である、電子線硬化型組成物。
[2]上記体質顔料(C)が、シリカ、クレー、タルク、ベントナイト、硫酸バリウム、アルミナホワイト、炭酸カルシム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、二酸化珪素、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]に記載の電子線硬化型組成物。
[3]上記体質顔料(C)が、シリカを含む、上記[1]又は[2]に記載の電子線硬化型組成物。
[4]上記シリカが、乾式シリカを含む、上記[3]に記載の電子線硬化型組成物。
[5]上記樹脂微粒子(B)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として、5~40質量%である、上記[1]~「4」のいずれか1つに記載の電子線硬化型組成物。
[6]上記記体質顔料(C)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として、0.1~10質量%である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の電子線硬化型組成物。
[7]上記(メタ)アクリレート成分(A)が、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートを含む、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の電子線硬化型組成物。
[8]前記(メタ)アクリレート成分(A)が、さらにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含む、上記[7]に記載の電子線硬化型組成物。
[9]光重合開始剤を実質的に含有しない、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の電子線硬化型組成物。
[10]包装材料の表面層の形成に用いられる、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の電子線硬化型組成物。
[11]基材と、基材上に設けられた表面層とを含み、上記表面層は上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の電子線硬化型組成物の硬化層である、包装材料。
[12]上記包装材料が、食品用包装材料である、上記[11]に記載の包装材料。
本発明の一実施形態によれば、優れたマット性を有し、かつマイグレーションを抑制できる塗膜を形成でき、経時安定性に優れる電子線硬化型組成物を提供できる。本実施形態の電子線硬化型組成物は、食品用包装材料のオーバーコートニスとして好適に使用できる。また、本発明の他の実施形態によれば、上記電子線硬化型組成物を使用して、優れたマット性を有し、かつマイグレーションを抑制できる表面層を有する包装材料を提供できる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に記載する構成要件、条件等は、本発明における実施形態の一例である。したがって、本発明は、以下の説明における趣旨を超えず、また発明の効果が得られる限り、これらの内容に限定されない。また、特にことわりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を表す。
<1>電子線硬化型組成物
本発明の一実施形態は、1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)と、平均粒子径が1.5~9.0μmの樹脂微粒子(B)と、体質顔料(C)とを含み、上記(メタ)アクリレート成分(A)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として60質量%以上であり、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として25質量%未満である、電子線硬化型組成物に関する。
以下、上記電子線硬化型組成物の構成成分について具体的に説明する。
<(メタ)アクリレート成分(A)>
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物は、少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物を主成分とする(以下、(メタ)アクリレート成分という)。本発明において、(メタ)アクリレート成分(A)として、(メタ)アクリレート化合物の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
一実施形態において、電子線硬化型組成物の全質量を基準とする、(メタ)アクリレート成分(A)の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。上記(メタ)アクリレート成分(A)の含有量は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
本明細書において(メタ)アクリレート化合物とは、重合性基である(メタ)アクリロイル基(官能基という場合がある)を1分子中に1つ以上有する化合物である。「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の併記を表す。一実施形態において、電子線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート化合物として、単官能又は多官能の(メタ)アクリレートモノマーを含んでよく、少なくとも多官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。本発明において、「モノマー」とは、オリゴマー又はポリマーを構成するための最小構成単位の化合物を意味する。以下、(メタ)アクリレート成分として使用できる化合物についてより具体的に説明する。
((メタ)アクリレートモノマー)
(メタ)アクリレートモノマーの一例として、分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。
多官能の(メタ)アクリレートモノマーの一例として、2官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。具体例として、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能の(メタ)アクリレートモノマーの一例として、分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
その他、多官能の(メタ)アクリレートモノマーの一例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー、及び
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー、などが挙げられる。
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート化合物として、多官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましく、なかでも3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを含むことがより好ましい。
((メタ)アクリレートオリゴマー、ポリマー)
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリレートオリゴマー、又は(メタ)アクリレートポリマーを使用することができる。(メタ)アクリレートオリゴマー又は(メタ)アクリレートポリマーは、少なくとも分子内に(メタ)アクリロイル基を有するモノマーから誘導されるオリゴマー又はポリマーを意味する。一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。本発明において、「オリゴマー」とは、比較的重合度の低い、2個~100個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリレートモノマーに比べて分子量が高く、マイグレーションのリスクを大きく低減することができる。
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。オリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
(エポキシ(メタ)アクリレート)
エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ樹脂の含有するグリシジル基と、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸などとの反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートであってよい。他の例として、カルボキシル基など酸性基を有する樹脂とグリシジル基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、いずれも不飽和二重結合基を有する。例えば、前者の場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂へ(メタ)アクリル酸を付加したエポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂へ(メタ)アクリル酸を付加したエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基含有(メタ)アクリレートと反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ポリイソシアネートとしては公知のものを使用でき、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
例えば、芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に変性したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
なかでも、芳香族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートが好ましい。上記例示化合物の中で好ましくは、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等である。
(ポリエステル(メタ)アクリレート)
本発明において、ポリエステル(メタ)アクリレートは、多塩基酸及び多価アルコールを公知の方法で重縮合したものが挙げられ、カルボキシル基量と水酸基量の配合比により分子量や水酸基又はカルボキシル基などの末端基の量が調整される。
例えば、多塩基酸に含まれるカルボキシル基量が多価アルコールに含まれる水酸基量よりも多い場合、末端官能基はカルボキシル基となり、ここへ水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基を縮合反応させることで目的とするポリエステル(メタ)アクリレートを得ることができる。
上記多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。例えば、脂肪族系多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、脂肪酸、脂肪酸由来のダイマー酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。なかでも、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、脂肪酸、変性脂肪酸、及び脂肪酸由来のダイマー酸から選ばれる少なくとも1種の多塩基酸に由来する構造単位を有するポリエステルアクリレートが好ましい。
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の2官能の脂肪族又は脂環式アルコール類や、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール及びそれらのエチレンオキシド付加物(付加モル数10以下)又はプロピレンオキシド付加物(付加モル数10以下)といった3官能の脂肪族又は脂環式アルコール類などが好ましく挙げられる。なかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
また、上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレート、
グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ジ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有トリ(メタ)アクリレート、及び
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ペンタ(メタ)アクリレート、並びに
上記水酸基含有(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリレート、及び上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリレート等の水酸基含有の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
なかでも、(メタ)アクリレート基を分子中に1~3個有する水酸基含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。
一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物として、市販品として入手できるオリゴマーを使用することもできる。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレートとして、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL820、824、837、及び450(いずれもポリエステルアクリレートである)などが挙げられる。また、ウレタン(メタ)アクリレートとして、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL8210、及び8409(いずれも脂肪族ウレタンアクリレート)、BECRYL 210、及び220(いずれも芳香族ウレタンアクリレート)が挙げられる。
本実施形態の電子線硬化型組成物では、(メタ)アクリレート成分として、上述した種々の(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。なかでも、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物は硬化性が良好なため、強固な塗膜を形成できる。しかし、分子量が低く、未反応成分のペネトレーションによるマイグレーションが発生しやすくなるため、可能な限り含有量を低減させることが好ましい。したがって、一実施形態において、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、25質量%未満であることが好ましい。分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、より好ましくは21質量%未満であり、さらに好ましくは16質量%未満であってよい。一実施形態において、上記含有量は0質量%であってもよい。
一実施形態において、マイグレーションを抑制する観点から、上記(メタ)アクリレート成分(A)として、分子量が500以上の(メタ)アクリレート化合物(A-1)を使用することが好ましい。(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、先に例示した(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、及び(メタ)アクリレートポリマーからなる群から選択される1種以上を含んでよい。(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量は、組成物の全質量を基準として35質量%以上であることが好ましい。上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量は、より好ましくは45質量%以上であってよく、さらに好ましくは55質量%以上であってよい。
一実施形態において、(メタ)アクリレート成分(A)は、官能基数3以上のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)を少なくとも含むことが好ましい。なかでも、後述するトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが好ましい。
(トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物)
一実施形態において、(メタ)アクリレート成分(A)は、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を含む。上記トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有する。
一般式(I)
Figure 0007384248000001
一般式(I)中、Rは、アルキレンオキサイド基を表す。アルキレンオキサイド基は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、及びヘキシレンオキサイドからなる群から選択される1種又は2種以上の基であってよい。
l+m+nは、それぞれ付加しているアルキレンオキサイド基の平均付加数を示す。アルキレンオキサイドの平均付加数は、1分子あたり2~20モルであることが好ましい。
上記トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として50質量%以上であることが好ましい。一実施形態において、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量は、より好ましくは60質量%以上であってよく、さらに好ましくは70質量%以上であってよい。一方、塗膜特性の観点から、上記含有量は好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であってよく、さらに好ましくは75質量%以下であってよい。
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、アルキレンオキサイドの種類及び付加数によって、塗膜特性を容易に調整することができる。例えば、付加数を上げることによって、ペネトレーションによるマイグレーションを容易に抑制することができる。また、1分子中に反応性のアクリロイル基を3つ有していることから、反応性が高く、強固な塗膜を得ることができる。トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量及び変性数を調整することによって、硬化塗膜の強度とマイグレーション抑制との良好なバランスを得ることが容易となる。式(I)で表されるトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレートのなかでも、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド(EO)変性トリアクリレート及びトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド(PO)変性トリアクリレートの少なくとも一方を使用することが好ましい。これらは市販品として入手することもできる。
市販品として入手可能なEO変性トリメチロールプロパントリアクリレートとして、EO(3モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(9モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(15モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(20モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、市販品として入手可能なPO変性トリメチロールプロパントリアクリレートとして、例えば、新中村化学工業社製の「ATM-4P」(PO(4モル)変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、「A-DPA-6PA」(PO(6モル)変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)などが挙げられる。
先に例示したトリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレートの市販品について、各メーカーでは、エチレンオキサイド付加数を明示している。しかし、実際のところ、付加数には分布があり、あくまで主要な付加数を明示しているに過ぎない。そのため、正味の付加数を把握するためには、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などによる分子量分布の測定が必要である。
このような観点から、本発明では、(メタ)アクリレート化合物としてトリメチロールアルキレンオキサイド変性トリアクリレートを使用する場合、GPCによる分子量分布を測定し、そのグラフから特定範囲の分子量を有する化合物の含有量を規定する。例えば、GPCのグラフにおいて、分子量が500未満の範囲における成分量がX%である場合、組成物中のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレートの含有量Aにおいて、分子量が500未満のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレートの含有量はA×X(%)として算出される。オリゴマー及びポリマーについても分子量分布を有するため、一般的に、分子量は重量平均分子量又は数平均分子量として規定されている。しかし、本発明では、上記のようにGPCのグラフから得られる特定範囲の分子量を有する化合物の含有率から、その化合物の含有量を算出する。
上述の観点から、一実施形態において、(メタ)アクリレート成分として使用する1種以上の(メタ)アクリレート化合物の各々において、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、電子線硬化型組成物の全質量を基準として25質量%未満であることが好ましい。上記のように分子量が500未満の化合物の含有量を調整することによって、マイグレーションを許容範囲内に容易に抑制することができる。
また、一実施形態では、上記(メタ)アクリレート化合物において、分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として35質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、25質量%未満であることがさらに好ましく、20質量%未満であることが特に好ましい。一実施形態において、上記含有量は、0質量%であってもよい。分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、未反応成分のペネトレーションによるマイグレーションを抑制する効果が高い。しかし、アクリル当量(アクリロイル基1個あたりの分子量)が低いため、塗膜強度が低下しやすい。したがって、分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量が上記範囲内である場合、硬化塗膜の強度低下とマイグレーション耐性とのバランスを良好に制御することが可能となる。
一実施形態において、(メタ)アクリレート成分(A)の全質量を基準として、官能基数3以上のEO変性又はPO変性(メタ)アクリレート(A1)の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。上記含有量は100質量%であってもよい。
一実施形態において、(メタ)アクリレート成分は、官能基数3以上のEO変性又はPO変性(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートモノマー、単官能(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、及び(メタ)アクリレートポリマーからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
(メタ)アクリレート成分が、2種以上の(メタ)アクリレート化合物を含む場合、それぞれの化合物において、上述のように分子量分布に基づき算出される分子量が500未満の成分の含有量が、組成物の25質量%未満であることが好ましい。例えば、(メタ)アクリレート成分として、官能基数3以上のEO変性又はPO変性(メタ)アクリレートと、これ以外の(メタ)アクリレートとを使用する場合、それぞれの化合物について分子量が500未満の成分の含有量が25質量%未満であることが好ましい。このように、使用する化合物のそれぞれについて分子量が500未満の成分の含有量を25質量%未満にすることで、マイグレーションの抑制がより容易となるとともに、スイス連邦の条約等のより厳しい規制水準を満たすことも容易となる。
一実施形態において、電子線硬化型組成物を構成する(メタ)アクリレート成分は、官能基数3以上のEO変性又はPO変性(メタ)アクリレート(A1)と、これら(A1)以外の多官能(メタ)アクリレートとを含んでよい。上記(A1)と併用する多官能(メタ)アクリレートは、先に例示した化合物であってよいが、官能基数3以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを好適に使用することができる。
具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。なかでも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を好適に使用することができる。このような実施形態において、電子線硬化型組成物におけるDPHAの含有量は、(メタ)アクリレート成分の全質量を基準として、1~15質量%であることが好ましく、2~12質量%であることがより好ましく、3~8質量%であることがより好ましい。
他の実施形態において、電子線硬化型組成物を構成する(メタ)アクリレート成分は、官能基数3以上のEO変性又はPO変性(メタ)アクリレート(A1)と、(メタ)アクリレートオリゴマー、又は(メタ)アクリレートポリマーとを含んでもよい。(メタ)アクリレートオリゴマー又は(メタ)アクリレートポリマーは、少なくとも分子内に(メタ)アクリロイル基を有するモノマーから誘導されるオリゴマー又はポリマーを意味する。本発明において、「オリゴマー」とは、比較的重合度の低い、2個~100個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリレートモノマーに比べて分子量が高いことから、マイグレーションのリスクを大きく低減することができる。(メタ)アクリレートオリゴマー、及び(メタ)アクリレートポリマーの具体例は、先に例示したとおりである。
一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物は、官能基数3以上のEO変性又はPO変性(メタ)アクリレート(A1)と、(メタ)アクリレートオリゴマーとを含むことが好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらオリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。一実施形態において、電子線硬化型組成物における(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、組成物の全質量を基準として、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
一実施形態において、上記(メタ)アクリレートオリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、多塩基酸及び多価アルコールを公知の方法で重縮合して得られる化合物であってよく、カルボキシル基量と水酸基量の配合比によって、分子量、水酸基又はカルボキシル基などの末端基の量を調整することができる。例えば、多塩基酸に含まれるカルボキシル基量が多価アルコールに含まれる水酸基量よりも多い場合、末端官能基はカルボキシル基となる。このカルボキシル基と水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基とを縮合反応させることで、目的とするポリエステル(メタ)アクリレートを得ることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレートを使用した場合、強固な硬化皮膜が容易に得られる。また、官能基数3以上のEO変性又はPO変性(メタ)アクリレート(A1)との相溶性が良好で、低粘度であるため、電子線硬化型組成物をインキ又はニスとして使用する際の粘度増加を容易に抑制できる。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、市販品として入手することもできる。例えば、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL820、824、837、及び450が挙げられ、これらを好適に使用することができる。
他の実施形態において、(メタ)アクリレートオリゴマーとしてウレタン(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、市販品として入手することもできる。例えば、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL210、220、8409、及び8210が挙げられ、これらを好適に使用することができる。
<樹脂微粒子(B)>
本実施形態の電子線硬化型組成物は、艶消し剤として樹脂微粒子(B)を含む。艶消し剤として無機又は有機の様々な材料から構成される微粒子が知られており、これらを使用することができる。しかし、本実施形態では、平均粒子径が1.5~9.0μmの樹脂微粒子を使用することが好ましい。平均粒子径が1.5~9.0μmの樹脂微粒子(B)を使用することによって、要求される特性を低下させることなく、塗膜のマット性を高めることが可能となる。樹脂微粒子は、各種樹脂から構成される粒子、又は表面を各種樹脂で被覆した粒子のいずれの形態であってもよい。
一実施形態において、樹脂微粒子(B)の平均粒子径は、より好ましくは1.8~8μmであってよく、より好ましくは2~6μmであってよく、さらに好ましくは2~5μmであってよい。樹脂微粒子の平均粒子径を上記範囲内に調整した場合、硬化塗膜のマット性と経時安定性とのバランスが良好となる。上記平均粒子径は、島津製作所株式会社製のレーザー回折粒度分布測定装置SALD-2200を用いて、粒度分布曲線において積算値が50%にあたる粒径(体積基準)を測定することにより得た値である。
樹脂微粒子(B)の含有量は、電子線硬化型組成物の全質量を基準として、好ましくは5質量%以上であってよく、より好ましくは8質量%以上であってよく、さらに好ましくは19質量%以上であってよい。樹脂微粒子(B)の含有量は、好ましくは40質量%以下であってよく、より好ましくは38質量%以下であってよく、さらに好ましくは30質量%以下であってよい。
樹脂微粒子(B)の含有量を5質量%以上に調整することによって、優れたマット性を容易に抑制することができる。また、樹脂微粒子(B)の含有量を40質量%以下に調整することによって、組成物の粘度上昇を抑制し、かつ保存安定性を高めることが容易となる。このような観点から、一実施形態において、樹脂微粒子(B)の含有量は、好ましくは5~40質量%であってよく、より好ましくは8~38質量%であってよく、さらに好ましくは10~30質量%であってよい。
樹脂微粒子(B)の具体例として、ウレタン樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、アクリル-スチレン共重合体樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、メラミン-ベンゾグアナミン樹脂微粒子、メラミン-ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂(縮合物)微粒子、及びベンゾグアナミン樹脂微粒子が挙げられる。これらを単独で使用しても、必要に応じて、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
樹脂微粒子(B)は、市販品として入手しても、公知の製造方法によって製造してもよい。
例えば、ウレタン樹脂微粒子の具体例として、根上工業社製のアートパールC-1000透明、アートパールC-600透明、アートパールC-400透明、アートパールC-800、アートパールMM-120Tが挙げられる。また、ウレタン樹脂微粒子は、架橋構造を有してもよい。架橋構造を有するウレタン樹脂微粒子の具体例として、根上工業社製のアートパールJB-800T、アートパールJB-600T、アートパールP-800T、アートパールP-400Tなどの架橋ウレタン樹脂微粒子等が挙げられる。
アクリル樹脂微粒子として、根上工業社製のアートパールJ4PY、アートパールJ5PY、アイカ工業社製のガンツパールGB08Sなどが挙げられる。また、株式会社日本触媒製のエポスターMA1002、エポスターMA1004、エポスターMA1006、及びエポスターMA1010、東洋紡株式会社製タフチックFH-S005、タフチックFH-S008、タフチックFH-S010、タフチックFH-S015、タフチックFH-S020、綜研化学株式会社製のケミスノーMX-80H3wT、MX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-1000、MX-1500H、MX-2000、MX-3000等が挙げられる。
アクリル-スチレン共重合体樹脂微粒子の具体例として、株式会社日本触媒社製のエポスターMA2003、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製のFS-102、FS-201、FS-301、MG-451、MG-351等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂微粒子の具体例として、特開2014-125495号公報記載の微粒子、特開2011-26471号公報記載の製造法によって得られる微粒子、特開2001-213970号公報記載の方法によって得られる微粒子等が挙げられる。
シリコーン樹脂の具体例として、シリコーン樹脂微粒子の具体例として、信越化学工業株式会社製のKMP-594、KMP-597、KMP-598、KMP-600、KMP-601、KMP-602、東レ・ダウコーニング株式会社製のトレフィルE-506S、EP-9215等が挙げられる。
ポリエチレン樹脂微粒子の具体例として、三井化学株式会社製のミペロンXM-220、XM221U、住友精化株式会社製のフロービーズLE-1080等が挙げられる。
ポリスチレン系微粒子の具体例として、綜研化学株式会社製のケミスノーSX-130H、SX-350H、SX-500H等が挙げられる。
メラミン樹脂微粒子の具体例として、株式会社日本触媒製のエポスターSS、エポスターS、エポスターFS、エポスターS6、エポスターS12等が挙げられる。
メラミン-ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例として、株式会社日本触媒製のエポスターM30が挙げられる。
ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例として、株式会社日本触媒製のエポスターMS、エポスターM05、エポスターL15等が挙げられる。
一実施形態において、上記樹脂微粒子は、ウレタン樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、又はメラミン-ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂(縮合物)微粒子であることが好ましい。上記樹脂微粒子は、ウレタン樹脂微粒子、又はアクリル樹脂微粒子であることがより好ましい。
ウレタン樹脂微粒子又はアクリル樹脂微粒子を使用した場合、粒径制御が容易であり、真球度が高く、優れた分散性を容易に得ることができる。また、これら樹脂微粒子は、耐熱性及び耐溶剤性に優れ、かつ低コストであるという利点もあるウレタン樹脂微粒子を使用した場合は、マット性に加えて、ソフトフィールな塗膜を提供することができる。
(粘度)
一実施形態において、電子線硬化型組成物の粘度は、25℃で、200~2500mPa・sであることが好ましい。上記粘度は、250~2000mPa・sであることがより好ましく、300~1500mPa・sであることがさらに好ましい。粘度が200mPa・s以上である場合、フィルム上での弾き抑制、及び樹脂微粒子の析出抑制(安定性向上)が容易となる。一方、粘度が2000mPa・s未満である場合、印刷機上での転移性が良好であり、かつレベリングも良好であるため、均一な塗膜を得ることが容易となる。但し、2000mPa・s以上の粘度であっても、加温設備を備えた印刷装置を使用することで、優れたマット性を有する硬化塗膜を得ることはできる。かかる粘度は、JISZ8803:2011による測定値をいい、25℃におけるE型粘度計による測定値である。電子線硬化型組成物を構成する(メタ)アクリレート成分として、粘度の異なる種々の(メタ)アクリレート化合物を併用した場合、粘度を容易に調整することができる。そのため、例えば、200~2500mPa・sの電子線硬化型組成物を容易に得ることができる。
<体質顔料(C)>
体質顔料(C)は、着色力を持たない顔料を意味し、着色力を有する有色顔料と区別される。体質顔料は特に限定されず、公知の体質顔料を使用することができる。具体例として、シリカ、クレー、タルク、ベントナイト、硫酸バリウム、アルミナホワイト、炭酸カルシム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、二酸化珪素、及び水酸化アルミニウムが挙げられる。これらの1種を単独で使用しても、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。一実施形態において、体質顔料は、シリカ、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
体質顔料の使用によって、電子線硬化型組成物にチキソトロピー特性を容易に付与することができ、樹脂微粒子の析出を抑制し(保存安定性を向上し)、かつ、フィルム上での塗膜の弾きを抑制することができる。また、塗膜の物理的強度が向上し、その結果、耐摩擦性、耐溶剤性、耐水性を容易に向上できる傾向がある。
一実施形態において、体質顔料は、少なくともシリカを含むことが好ましい。本実施形態の電子線硬化型組成物において、体質顔料としてシリカを使用した場合、マイグレーションの抑制がより容易となる傾向がある。理論によって拘束するものではないが、マイグレーションを引き起しやすい低分子量の成分がシリカに吸着されることに起因すると推測される。
一実施形態において、シリカは、25℃における真比重が1.60以上であり、BET法による比表面積が50m/g以上であることが好ましい。一実施形態において、シリカのBET法による比表面積は、好ましくは50~380m/gであってよく、より好ましくは70~330m/g、さらに好ましくは90~230m/gであってよい。
シリカは、合成非晶質シリカであってよい。合成非晶質シリカは、湿式シリカと乾式シリカに大別されるが、いずれであってもよい。湿式シリカは、一般的に、ケイ酸ナトリウムと鉱酸(通常は硫酸)との中和反応によって合成することができる。合成法としては、例えば、沈降(沈澱)法及びゲル法のいずれであってもよい。
一方、乾式シリカは、原料として四塩化ケイ素を使用し、酸素と水素の火炎中で加水分解することによって得られる。得られたシリカの表面には、親水性のシラノール基と疎水性のシロキサンが存在する。シラノール基は化学的に活性であり、他の物質と化学反応させることができる。例えば、シラノール基を有機処理剤と反応させることで、親水性であるシリカに疎水性を付与することができる。その他、処理剤の官能基(表面修飾基)の種類によって、様々な機能をシリカに付与することができる。主な表面修飾基としては、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、オクチルシリル基、アルキルシリル基、ジメチルポリシロキサン基、アミノアルキルシリル基、メタクリルシリル基などが挙げられる。特に限定するものではないが、相溶性及び分散安定性の観点からジメチルシリル基を含有する処理剤によって表面修飾されたシリカが好ましい。
特に限定するものではないが、乾式シリカを使用した場合、良好なチキソトロピー特性を容易に得ることができ、より優れたマイグレーション抑制効果が得られる傾向がある。乾式シリカの平均一次粒子径は、好ましくは7~40nmであってよく、より好ましくは10~35nm、さらに好ましくは12~30nmであってよい。このような乾式シリカは、市販品として入手することもできる。例えば、日本アエロジル社製のAEROSILR972(平均一次粒子径16nm、比表面積110m/g、乾式法シリカ)を好適に使用することができる。
体質顔料(C)の含有量は、電子線硬化型組成物の全質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上であってよく、より好ましくは0.5質量%以上であってよく、さらに好ましくは1質量%以上であってよい。体質顔料(C)の含有量は、好ましくは10質量%以下であってよく、より好ましくは8質量%以下であってよく、さらに好ましくは5質量%以下であってよい。
体質顔料(C)の含有量が0.1質量%以上の場合、適切なチキソトロピーを容易に付与することができる。また、体質顔料(C)の含有量が10質量%以下の場合、組成物の粘度上昇を抑制し、かつ保存安定性を高めることが容易となる。このような観点から、一実施形態において、体質顔料(C)の含有量は、好ましくは0.1~10質量%であってよく、より好ましくは0.5~8質量%であってよく、さらに好ましくは1~5質量%であってよい。
上記実施形態の電子線硬化型組成物は、光重合開始剤を実質的に含有しない。ここで、「実質的に含有しない」とは、組成物に意図的に添加することなく、かつ、非意図的添加による含有量が1%未満であることを意味する。非意図的添加には、各原料に微量に含まれている場合や、組成物の製造工程、印刷物の作製工程におけるコンタミネーションなどが該当する。電子線硬化型組成物が、光重合開始剤を実質的に含有しないことによって、光重合開始剤を使用した場合に生じる光重合開始剤又はその分解物のマイグレーションの問題を解消することができる。
上記実施形態の電子線硬化型組成物は、クリアインキ又はオーバオーコートワニスとして使用することができる。電子線硬化型組成物は、必要に応じて、着色力を有する顔料(有色顔料)を含んでもよい。一実施形態において、電子線硬化型組成物は、着色インキとして使用することもできる。有色顔料は特に限定されず、公知の顔料、染料を使用することができる。顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよい。
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、保存安定性の向上のため、重合禁止剤をさらに含んでもよい。重合禁止剤の具体例として、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。重合禁止剤を使用する場合、その含有量は、組成物の全質量を基準として、0.01~1質量%の範囲であってよい。
さらに、電子線硬化型組成物は、必要に応じて、不活性樹脂などの当技術分野で公知の成分を含んでよい。上記実施形態の電子線硬化型組成物を構成するために、カーボンニュートラルの観点などから、各種原材料として、植物などの再生可能な資源を利用したバイオマス由来の原材料を好ましく用いることができる。また、一実施形態において、電子線硬化型組成物は、必要に応じて、公知の添加剤をさらに含んでもよい。添加剤として、例えば、硬化剤、可塑剤、湿潤剤、接着補助剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、防腐剤などを使用することができる。さらに、油、難燃剤、充填剤、安定剤、補強剤、研削剤などを使用してもよい。
<電子線硬化型組成物の製造方法>
本発明の電子線硬化型組成物の製造方法としては、(メタ)アクリレート化合物(A)と、樹脂微粒子(B)と、体質顔料(C)と、必要に応じて、その他の成分とを、ミキサーなどを用いて30分~3時間程度混合攪拌することによって製造することができる。なお、予め2種以上の(メタ)アクリレート化合物(A)を混合攪拌しておき、その後、樹脂微粒子(B)、体質顔料(C)、及び必要に応じてその他の成分を添加して製造してもよい。
<印刷方法>
上記実施形態の電子線硬化型組成物を印刷する方法は、特に制限がなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤーバー、ドクターナイフ、スピンコーター、スクリーンコーター、グラビアコーター、オフセットグラビアコーター、フレキソコーターなどが挙げられる。また、インライン印刷及びオフライン印刷において、UV硬化型、電子線硬化型、熱乾燥型、蒸発乾燥型、酸化重合型、浸透乾燥型、熱重合型、2液硬化型、液体トナー型、粉体トナー型のインキといった各種インキを、必要に応じて組み合わせて使用することもできる。
一実施形態において、電子線硬化後の組成物の塗布量は、0.5~10g/mが好ましく、1.0~5.0g/mがより好ましい。上記印刷方式にて印刷層が形成された後、直ちに電子線照射機を通って電子線硬化印刷層が形成される。なお電子線の照射線量としては、加速電圧50~110kVにおいて10~150kGyであってよい。一実施形態において、電子線の照射は、好ましくは50~110kVの加速電圧において15~100kGy、より好ましくは50~110kVの加速電圧において20~45kGyの照射線量で実施できる。電子線の照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ることもできる。
<電子線硬化型オーバーコートニス>
上記実施形態の電子線硬化型組成物は、電子線硬化型オーバーコートニスとして好適に使用することができる。表面保護及びマット性の付与を目的として、様々な物品(基材)に塗布することができる。例えば、建築物、構造物、車両、看板、電気製品、OA機器、及び日用品などに対して適用することができる。電子線硬化型オーバーコートニスとは、例えば、基材上の印刷面及び非印刷面に塗布し、電子線を照射することで硬化塗膜を形成し、基材上の印刷面及び非印刷面に必要な表面物性を付与することを目的とした電子線硬化型組成物である。
オーバーコートニスの用途で使用する電子線硬化型組成物は、顔料、染料、その他着色成分を含有しない場合が多い。しかし、電子線硬化型組成物は、必要に応じて、これら着色成分を含んでもよい。オーバーコートニスの用途で必要とされる表面物性は、その印刷物の最終用途によって異なる。例えば、マットな外観を想定した包装材料の用途では、表面保護とマット性の付与とを基本としている。包装材料のなかでも、特に食品用の包装材料を想定した場合は、マイグレーション抑制、スリップ性、ノンスリップ性、ソフトフィール性、耐熱性、耐溶剤性、疑似密着性、印字適性、突き刺し性、弾き性、剥離性、バリア性などが要求されることもある。本実施形態の電子線硬化型組成物によれば、表面保護及びマット性に加えて、マイグレーション抑制、耐溶剤性などの特性を容易に得ることができる。また、樹脂微粒子として、ウレタン樹脂微粒子を使用した場合は、マット性に加えて、ソフトフィール性を容易に発現させることもできる。
電子線硬化型オーバーコートニスの塗工方式としては、先刷りの印刷面が乾燥しないうちにすぐに続けてオーバーコートニスを塗工するウェット方式と、先刷りの印刷面を乾燥させてからオーバーコートニスを塗工するドライ方式とに分けられるが、いずれの方式であってもよい。一実施形態において、上記電子線硬化型組成物は、包装材料の表面層の形成に用いられるオーバーコートニスとして好適に使用することができる。
<2>包装材料
本発明の一実施形態は、基材と、基材上に設けられた表面層とを含み、上記表面層が上記実施形態の電子線硬化型組成物の硬化層である、包装材料に関する。上記実施形態の電子線硬化型組成物は、包装材料のなかでも、食品用包装材料の表面層の形成するために好適に使用することができる。以下、一例として、食品用包装材料の構成及び材料について説明する。
(基材)
基材は、フィルム状の基材が好ましい。一実施形態において、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリカーボネート基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材、紙基材、アルミニウム基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。
また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物を、フィルム基材に蒸着した蒸着基材を用いることもできる。更に、蒸着処理面に対し、ポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていてもよい。基材は、印刷される面(印刷層と接する面)が易接着処理されていることが好ましい。易接着処理の具体例として、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート基材において、十分な密着性が得られない場合は、アクリルコート処理、ポリエステル処理、ポリ塩化ビニリデン処理などの表面処理を施してもよい。
基材として、紙基材を用いてもよい。該紙基材としては、通常の紙又は段ボールなどであり、膜厚としては特に指定はない。紙基材の厚さは、例えば、0.2mm~1.0mm、20~150g/mのものを使用でき、印刷表面が易接着処理されていてもよい。紙基材は、意匠性を付与させる目的で表面がアルミなどの金属で蒸着処理されていてもよい。また、紙基材は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂やその他の樹脂などで表面コート処理が施されていてもよく、さらに、コロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。例えば、表面処理された紙基材の具体例として、コート紙、アート紙などが挙げられる。
上述した基材(第1の基材)は、印刷する面と反対側の面に、第2の基材をさらに積層させた構造で用いることもできる。この場合、積層される第2の基材としては、上述したフィルム状基材と同様であってよい。第2の基材は、第1の基材と同一でも異なっていてもよい。なかでも、第2の基材としては、未延伸ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン、ナイロン基材、アルミニウム箔基材、アルミニウム蒸着基材などが好ましい。この場合、第2の基材は、接着剤層によって第1の基材と貼り合わされることが好ましい。
接着剤層は、アンカーコート剤、ウレタン系ラミネート接着剤、溶融樹脂等からなる層が挙げられる。アンカーコート剤(AC剤)としては、イミン系AC剤、イソシアネート系AC剤、ポリブタジエン系AC剤、チタン系AC剤が挙げられ、ウレタン系ラミネート接着剤としてはポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤、ポリエステル系ラミネート接着剤などが挙げられる。これらの接着剤は、有機溶剤を含むものと、無溶剤のものとがある。また、溶融樹脂としては、溶融ポリエチレン等が挙げられる。
(バリア性)
一実施形態において、上記第2の基材において、ガス(酸素、水蒸気、窒素、炭酸ガス等)に対するバリア性を付与することもできる。バリア性を付与する方法としては、積層体としてバリア性基材を導入する方法と、コーティングによってバリア層を形成する方法とがある。導入できるバリア性材料としては、シリカ、アルミナ、アルミ、塩化ビニリデン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-酢酸ビニル共重合体、メタキシリレンアジパミド、MXD6ナイロンなどが挙げられる。また、上記バリア性材料と基材とを組み合わせた共押し出しフィルムも使用できる。
一方、上記技法とは異なり、容器の内部に侵入してくる酸素を積極的に取り除くタイプの技法であるアクティブ・パッケージングも適用できる。アクティブ・パッケージングに適用されるアクティブバリヤー材としては、還元鉄/塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などの酸素と反応する物質を樹脂にブレンドした材料が挙げられる。また、MXD6ナイロン/コバルト塩、二重結合系ポリマー/コバルト塩、シクロヘキセン側鎖含有ポリマー/コバルト塩などのコバルト塩を酸化触媒として樹脂にブレンドし、この酸価触媒によって樹脂を酸化させて酸素を吸収する材料なども挙げられる。
(表面層)
表面層は上記実施形態の電子線硬化型組成物の硬化塗膜から構成される。基材上に電子線硬化型組成物を塗布し、電子線を照射して硬化させることによって形成することができる。硬化塗膜を得るための電子線硬化型組成物の塗布量は特に限定されず、所望とする膜厚を考慮して適宜調整することが可能である。食品用包装材料を構成する場合、表面層の膜厚は、好ましくは0.5~10μmであってよく、より好ましくは1.0~5.0μmであってよく、さらに好ましくは1.5~3.5μmであってよい。
(製造方法)
本発明の一実施形態は、包装材料の製造方法に関する。上記製造方法は、基材の上に電子線硬化型組成物を塗布して塗膜を形成すること、前記塗膜を電子線によって硬化し、硬化塗膜からなる表面層を形成することを含む。特に限定するものではないが、表面層の形成において、上記電子線硬化型組成物の塗布量は、好ましくは0.5~10g/mであってよく、より好ましくは1.0~5.0g/mであってよく、さらに好ましくは1.5~3.5g/mであってよい。
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
(使用原料)
表1及び表2に記載した各原料の詳細は以下のとおりである。
<(メタ)アクリレート成分(A)>
Miramer M3130:MIWON社製、TMP(EO)3TA(EO(3モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
Miramer M3160:MIWON社製、TMP(EO)6TA(EO(6モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
A-TMPT-6PO:新中村化学工業社製、TMP(PO)6TA(PO(6モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
Miramer M3190:MIWON社製、TMP(EO)9TA(EO(9モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
OTA-480:ダイセル・オルネクス社製、Gly(PO)3TA(PO(3モル)変性グリセリルトリアクリレート)
ATM-4P:新中村化学社製、PETTA(PO)4、(PO(4モル)変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート)
Miramer M600:MIWON社製、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
EBECRYL820:ダイセル・オルネクス社製、ポリエステルアクリレート
EBECRYL450:ダイセル・オルネクス社製、ポリエステルアクリレート
EBECRYL220:ダイセル・オルネクス社製、ウレタンアクリレート
EBECRYL8409:ダイセル・オルネクス社製、ウレタンアクリレート
TPGDA:ダイセル・オルネクス社製、TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート)
Miramer M300:MIWON社製、TMPTA(トリメチルプロパントリアクリレート)
<樹脂微粒子(B)>
アートパールC-1000T:根上工業社製、平均粒子径3.0μm、ウレタン樹脂微粒子
アートパールMM-120T:根上工業社製、平均粒子径2.0μm、ウレタン樹脂微粒子
KMP-605:信越化学工業社製、平均粒子径2.0μm、シリコーン樹脂微粒子
エポスターMS:日本触媒社製、平均粒子径2.0μm、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド縮合物(樹脂)微粒子
アートパールJ4PY:根上工業社製、平均粒子径2.2μm、アクリル樹脂微粒子
エポスターM30:日本触媒社製、平均粒子径3.0μm、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物(樹脂)微粒子
アートパールJ5PY:根上工業社製、平均粒子径3.3μm、アクリル樹脂微粒子
KMP-597:信越化学工業社製、平均粒子径5.0μm、シリコーン樹脂微粒子
アートパールC-800T:根上工業社製、平均粒子径6.0μm、ウレタン樹脂微粒子
ガンツパールGB08S:アイカ工業社製、平均粒子径8.0μm、アクリル樹脂微粒子
アートパールJ3PY:根上工業社製、平均粒子径1.2μm、アクリル樹脂微粒子
アートパールC-600T:根上工業社製、平均粒子径10.0μm、ウレタン樹脂微粒子
<体質顔料(C)>
ACEMATT HK400:エボニック社製、平均二次粒子径6.3μm、比表面積200m/g、湿式シリカ)
AEROSIL R972:日本アエロジル社製、平均一次粒子径16nm、比表面積110m/g、乾式シリカ)
ハクエンカO:白石カルシウム社製、炭酸カルシウム
炭酸マグネシウムTT:ナイカイ塩業社製、炭酸マグネシウム ベントン38:東進化成製、ベントナイト
ハイ・フィラー#5000PJ:松村産業製、タルク
(分子量分布)
以下の実施例及び比較例で(メタ)アクリレート成分(A)として使用した化合物の分子量分布は、東ソー株式会社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320)を用いて測定した。検量線は、標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgelSuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃の条件下で行った。
上述の条件下で実施したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定のグラフに基づき、分子量が500未満の範囲の各面積の割合を求めた。これらの結果を表1及び表2において分子量500未満の割合(%)として示す。
<1>電子線硬化型組成物の調製
(実施例1)
MIWON社製のMiramer M3130(TMP(EO)3TA(EO(3モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)(プロパンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート)を20.0部、MIWON社製のMiramerM3190(TMP(EO)9TA(EO(9モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)を53.0部、及びMIWON社製のMiramer M600(DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を5.0部、さらに平均粒子径3.0μmのウレタン樹脂微粒子(根上工業社製のアートパールC-1000T)を20.0部、シリカ(日本アエロジル社製のAEROSIL R972、乾式シリカ)を2.0部の配合比で混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌して、実施例1の電子線硬化型組成物を調製した。
(実施例2~36)
表1に記載した材料及び比率で使用した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2~26の電子線硬化型組成物を調製した。
(比較例1~11)
表2に記載した材料及び比率で使用した以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1~11の電子線硬化型組成物を調製した。
<2>電子線硬化型オーバーコートニスの評価
実施例1~36及び比較例1~11で調製した各々の電子線硬化型組成物を用いて、印刷物を作製し、電子線硬化型オーバーコートニスとしての評価を行った。
<2-1>印刷物の作製方法
(実施例1の印刷物の作製方法)
実施例1で得た電子線硬化型組成物を用いて、フレキソ印刷方式にて基材に印刷を行った。印刷後の塗膜に対して、直ちに電子線を照射することによって硬化塗膜を形成し、印刷物(表面に硬化塗膜を設けた基材)を作製した。より詳細には、以下のとおりである。
上記印刷では、印刷機としてRK社製のフレキシプルーフ100を使用した。印刷条件は、印刷スピード70m/min、アニロックスロール線数100~500Line/inch、アニロックスロールのセル容量8~20cm/mとした。アニロックスロールの彫刻パターンは、ヘキサゴナルとした。版材はKodak社製のFlexcel NXH デジタルフレキソプレートを使用し、版材の面積は157.5cmとした。
電子線硬化型組成物の塗布量は、硬化後の塗布量が2~3g/mとなるように印刷した。
電子線の照射は、岩崎電気社製の電子線照射機EC250/15/180Lを使用し、加速電圧110kV、電子線量30kGyの条件で実施した。
基材としては、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとのラミネート積層体を用いた。ラミネート積層体の二軸延伸ポリプロピレンフィルム側に電子線硬化型組成物を印刷した。ラミネート積層体は、以下のようにして作製した。(ラミネート積層体の作製方法)
フタムラ化学製の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(製品名:FOR-BT、厚さ25μm)に接着剤希釈液を塗布して溶剤を揮散させた。接着剤希釈液は、接着剤(東洋モートン株式会社製のTM-321A/TM-321B=2/1)を有効成分が30%となるように酢酸エチルで希釈して調製した。接着剤希釈液の塗布は、常温において、バーコーターを用いて、溶剤揮発後の固形分塗布量が2.0~2.5g/mとなるように調整して実施した。
次に、上記フィルムの接着剤希釈液の塗布面を、無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、FHK2、30μm)と貼り合せた。次いで、35℃、湿度60%RT~80%RTの環境下にて24時間放置し、ラミネート積層体を得た。
(実施例2~36の印刷物の作製方法)
実施例1の印刷物と同様の方法で、それぞれ実施例2~36で得た電子線硬化型組成物を使用して印刷物を作製した。
(比較例1~11の印刷物の作製方法)
実施例1の印刷物と同様の方法で、それぞれ比較例1~11で得た電子線硬化型組成物を使用して印刷物を作製した。
<2-2>各種評価
上記にて得た印刷物を用いて、以下に記載する各種評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
(マイグレーション耐性評価)
実施例及び比較例の電子線硬化型組成物を用いて作製した印刷物について、以下に記載する方法にしたがって、マイグレーションの評価を実施した。
先ず、印刷物を9cm×9cmに切り出したものを3枚作製し、3枚を印刷面と非印刷面が接触するように重ね合わせ、1kg/dmの荷重付加にて25℃、50%環境条件下にて10日間保持した。その後、3枚の内の中央の印刷物を取り出し、その非印刷面の面積0.5dmに対して、50mlの95%エタノールが接触するように、マイグレーションセルにセットした。
その後、攪拌を加えながら、60℃にて10日間かけて残留モノマー(未反応の(メタ)アクリレート成分)を抽出した。マイグレーションセルは、器具により完全に密閉されており、上記工程において内容物の損失や、内容物(抽出物)へのその他成分の混入は完全に抑制できる。
次に、Bruker Daltonics社製の四重極-飛行時間型質量分析計、及び島津製作所製のLC30Aシリーズ液体クロマトグラフを用いて、上記抽出物の分析を行ない、エタノール中に存在する(メタ)アクリレート成分(A)として、(メタ)アクリレート化合物の各々の濃度を求めた。さらに、下記基準にしたがってマイグレーション耐性を評価した。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:(メタ)アクリレート成分(A)のうち、最もマイグレーション量の多い(メタ)アクリレート化合物の濃度が10ppb未満である。
:(メタ)アクリレート成分(A)のうち、最もマイグレーション量の多い(メタ)アクリレート化合物の濃度が10ppb以上、15ppb未満である。
4:(メタ)アクリレート成分(A)のうち、最もマイグレーション量の多い(メタ)アクリレート化合物の濃度が15ppb以上、25ppb未満である。
3:(メタ)アクリレート成分(A)のうち、最もマイグレーション量の多い(メタ)アクリレート化合物の濃度が25ppb以上、50ppb未満である。
2:(メタ)アクリレート成分(A)のうち、最もマイグレーション量の多い(メタ)アクリレート化合物の濃度が50ppb以上、100ppb未満である。
1:(メタ)アクリレート成分(A)のうち、最もマイグレーション量の多い(メタ)アクリレート化合物の濃度が100ppb以上である。
<光沢(マット性)の評価>
実施例及び比較例の電子線硬化型組成物を用いて作製した印刷物について、村上色彩研究所製の光沢計GM-26Dを用いて、印刷物に対して60°の反射角で光沢値(JISZ 8741に準拠)を測定した。光沢値の値から以下の基準にしたがって印刷物の光沢を評価した。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:光沢値が20未満である
4:光沢値が20以上、25未満である
3:光沢値が25以上、30未満である
2:光沢値が30以上、35未満である
1:光沢値が35以上である
<経時安定性>
(1)粘度安定性(粘度変化率)
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、粘度変化率を測定した。粘度変化率は、加温前後での粘度を測定し、加温後の粘度を加温前の粘度で除した値を100分率(%)で表した値である。上述の加温については、胴径38.0mm、高さ68.5mmの円柱状のガラス製容器に、活性エネルギー線硬化性組成物を3cmの厚みとなるように注いだ後60℃環境下で24時間、静置するという工程である。かかる粘度は、JISZ8803:2011による測定値をいい、25℃におけるE型粘度計による測定値である。評価基準は次の通りである。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:粘度変化率が0%以上5%未満である
4:粘度変化率が5%以上10%未満である
3:粘度変化率が10%以上15%未満である
2:粘度変化率が15%以上20%未満である
1:粘度変化率が20%以上である
(2)分散安定性
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、樹脂微粒子の分散安定性を測定した。分散安定性は、加温前後での樹脂微粒子成分の沈降の有無で評価を行った。胴径38.0mm、高さ68.5mmの円柱状のガラス製容器に、活性エネルギー線硬化性組成物を3cmの厚みとなるように注いだ後、60℃環境下で24時間静置した。その後、活性エネルギー線硬化性組成物を取り除き、ガラス製容器の下部に析出があるか否かを目視にて確認した。評価基準は次の通りである。合格が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
合格:析出が確認できない
不合格:析出がみられる
<耐溶剤性>
実施例及び比較例で得られた電子線硬化型組成物を使用して作製した印刷物の表面を、99.5%エタノール溶液に浸漬した綿棒を使用して、1秒あたり1往復で擦り、硬化塗膜表面が削れるまでの往復回数を検討した。評価基準は以下のとおりであり、評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:200回以上
4:150回以上200回未満
3:100回以上150回未満
2:50回以上100回未満
1:50回未満
Figure 0007384248000002
Figure 0007384248000003
Figure 0007384248000004
Figure 0007384248000005
Figure 0007384248000006
以上のように、本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物(実施例)では、マット性、及びマイグレーション抑制に優れ、かつ粘度安定性及び保存安定性といった経時安定性にも優れることが分かる。なかでも、体質顔料としてシリカを使用した場合、マイグレーションの抑制効果をより向上できることが分かる。また、電子線硬化型組成物を構成する(メタ)アクリレート化合物の種類及びその配合量を調整することによって、上記特性に加えて、耐溶剤性を向上できることが分かる。これらのことから、一実施形態として、電子線硬化型組成物は、包装材料の用途で好適に使用できることが分かる。例えば、本実施形態の電子線硬化型組成物は、食品用包装材料の表面層の形成に用いられるオーバーコートニスとして好適に使用できる。

Claims (9)

  1. 1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)と、平均粒子径が1.5~9.0μmの樹脂微粒子(B)と、体質顔料(C)とを含み、
    前記(メタ)アクリレート成分(A)が、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートを含み、
    前記(メタ)アクリレート成分(A)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として60質量%以上であり、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として25質量%未満である、電子線硬化型組成物。
  2. 前記体質顔料(C)が、シリカ、クレー、タルク、ベントナイト、硫酸バリウム、アルミナホワイト、炭酸カルシム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、二酸化珪素、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電子線硬化型組成物。
  3. 前記体質顔料(C)が、シリカを含む、請求項1に記載の電子線硬化型組成物。
  4. 前記シリカが、乾式シリカを含む、請求項3に記載の電子線硬化型組成物。
  5. 前記樹脂微粒子(B)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として、5~40質量%である、請求項1に記載の電子線硬化型組成物。
  6. 前記体質顔料(C)の含有量が、電子線硬化型組成物の全質量を基準として、0.1~10質量%である、請求項1に記載の電子線硬化型組成物。
  7. 前記(メタ)アクリレート成分(A)が、さらにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含む、請求項に記載の電子線硬化型組成物。
  8. 光重合開始剤を実質的に含有しない、請求項1に記載の電子線硬化型組成物。
  9. 包装材料の表面層の形成に用いられる、請求項1に記載の電子線硬化型組成物。
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Citations (9)

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