JP7382520B1 - 茶葉由来乳酸菌を有効成分とする渋味のマスキング剤 - Google Patents

茶葉由来乳酸菌を有効成分とする渋味のマスキング剤 Download PDF

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Abstract

【課題】渋味をマスキングする新規手段の提供。【解決手段】本発明は、茶葉由来乳酸菌を有効成分とする、カテキン含有飲食品における渋味のマスキング剤、を提供する。【選択図】なし

Description

NPMD NITE P-03527
本発明は、茶葉由来乳酸菌を有効成分とする渋味のマスキング剤等に関する。
乳酸菌が産生する乳酸や酢酸といった有機酸は、渋味のような不快な風味を生じさせることが知られている。これに対し、特許第5010651号公報では、特定の乳酸菌で発酵した乳エキスが発酵乳飲料等の保存に伴い生じる酸味や渋味に対する優れたマスキング作用を有することが開示されている。
特許第5010651号公報
本発明は、渋味のマスキング剤を提供することを目的とする。
緑茶に含まれるカテキンには様々な生理活性があることが知られていることから、カテキン摂取により健康効果が期待できる。カテキンは茶葉を濃く煮出すことで多く摂取できるようになるが、一方で渋味が強くなるため摂取しにくいというデメリットがある。
植物素材に由来する乳酸菌の一つとしてラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)がある。近年茶葉から単離されたLOC1株は、ラクチプランチバチルス・プランタラムの基準株であるATCC14917株等との比較で高い免疫賦活活性を有することが知られているが(特開2022-073998号公報)、LOC1株が風味に及ぼす影響は明らかにされていない。
本発明者らは、カテキン含有飲食品における渋味が茶葉由来の乳酸菌によってマスキングされることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]
茶葉由来乳酸菌を有効成分とする、カテキン含有飲食品における渋味のマスキング剤。
[2]
前記茶葉由来乳酸菌がラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)である、[1]に記載のマスキング剤。
[3]
前記ラクチプランチバチルス・プランタラムが、受託番号NITE P-03527のLOC1株である、[2]に記載のマスキング剤。
[4]
渋味がカテキンに由来し、クロロゲン酸に由来しない、[1]又は[2]に記載のマスキング剤。
[5]
[1]又は[2]に記載のマスキング剤を含有する、カテキン含有飲食品。
[6]
有効成分としての茶葉由来乳酸菌を1×10個/mL~5×10個/mL含有することを特徴とする、[5]に記載のカテキン含有飲食品。
[7]
カテキン類の含有量が300ppm~2000ppmである、[5]に記載のカテキン含有飲食品。
[8]
前記カテキン類の含有量に占めるガレート型カテキンの含有量の比が0.4~1.0である、[7]に記載のカテキン含有飲食品。
[9]
緑茶飲料である、[5]に記載のカテキン含有飲食品。
[10]
アミノ酸類の総含有量が20ppm~100ppmである、[5]に記載のカテキン含有飲食品。
[11]
テアニン、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が5ppm~100ppmである、[10]に記載のカテキン含有飲食品。
[12]
無糖飲料である、[5]に記載のカテキン含有飲食品。
[13]
乳成分を含有しないことを特徴とする、[5]に記載のカテキン含有飲食品。
[14]
[1]又は[2]に記載のマスキング剤と、渋味成分とを接触させる工程を含む、渋味のマスキング方法。
茶葉由来の乳酸菌、特にLOC1株は、茶葉以外に由来する乳酸菌との比較で、カテキン含有飲食品における渋味のマスキング効果が高い。一方、LOC1株は、カテキン含有飲食品以外の飲食品の渋味、例えば、コーヒーの渋味をマスキングする効果はないことから、クロロゲン酸のマスキングには適さないと考えられる。そのため、LOC1株はカテキンに起因する渋味のマスキングに特に適している。
以下、本発明の実施形態又は実施態様について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
(渋味のマスキング剤)
第一の実施形態において、茶葉由来乳酸菌を有効成分とする、カテキン含有飲食品における渋味のマスキング剤、が提供される。
乳酸菌の由来となる茶葉は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹であるチャノキ(茶の木、学名:Camellia sinensis)の生葉や生茎が好ましいが、品種及び焙煎等によっては限定されず、発酵茶、半発酵茶及び不発酵茶の任意の茶葉であってよい。チャノキには中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)やそれらの雑種が含まれる。
茶葉由来乳酸菌の例として、限定しないが、ラクチプランチバチルス属(Lactiplantibacillus)乳酸菌、例えばラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)、ラクチプランチバチルス・ペントーサス(Lactiplantibacillus pentosus)、ラクトバチルス・パンセリス(Lactobacillus pantheris)等;レビラクトバチルス属(Levilactobacillus)乳酸菌、例えばレビラクトバチルス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)等;ラクチカゼイバチルス属(Lacticaseibacillus)乳酸菌、例えばラクチカゼイバチルス・パンセリス(Lacticaseibacillus pantheris)等;ペディオコッカス属(Pediococcus)乳酸菌、例えばペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)等が挙げられる。中でも、ラクチプランチバチルス属乳酸菌、特にラクチプランチバチルス・プランタラムが好ましい。
従来ラクトバチルス属に分類されていたラクチプランチバチルス属の乳酸菌は、ラクトバチルス属の再分類に伴い学名が現在のものに変更された。ラクチプランチバチルス属乳酸菌は、漬物等の植物由来の発酵物に多く見られる。近年茶葉より単離されたラクチプランチバチルス・プランタラムLOC1株は、グラム陽性桿菌であり、室温前後、例えば10℃~40℃で生育し得る。乳酸菌は菌の種類により発酵型式が異なるが(ホモ乳酸発酵又はヘテロ乳酸発酵)、保有する遺伝子や発酵の臭気等からLOC1株の発酵はホモ型と考えられる。LOC1株は嫌気性条件以外でも生育するが、生育は嫌気性条件下で行うことが好ましい。一態様において、培養は初発pHを弱酸性から弱塩基性、例えばpH5.7~9.3の範囲内に調整して行われる。
ラクチプランチバチルス・プランタラムLOC1株は、2021年8月31日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託され、同年9月1日に受託番号NITE P-03527が付与されている。
茶葉由来乳酸菌は、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。マスキングに供される際の菌体は生菌であっても死菌であってもよい。両者を併用することもできる。品質管理の容易さから、茶葉由来乳酸菌は死菌であることが好ましい。また、茶葉由来乳酸菌は、渋味のマスキング効果を有する限り、親株から作成した変異株を包含し得る。
死菌は、培養後の死菌化、例えば菌体に対する加熱処理、紫外線照射、酸処理、破砕処理等の公知の殺菌方法により実施できる。殺菌方法の具体例としては、スプレードライ法、レトルト殺菌法、凍結乾燥法、加圧殺菌法、高圧蒸気滅菌法、乾熱滅菌法、電磁波殺菌法、電子線滅菌法、放射線滅菌法、紫外線殺菌法等が挙げられる。
死菌を更なる処理に供してもよく、例えば、加熱による殺菌後に特定の形態に加工することができる。例えば、スプレードライにより粉末化した菌体をマスキングに使用してもよい。
茶葉由来乳酸菌は生菌の状態で使用することもできるし、加熱等により殺菌した死菌を使用してもよい。
茶葉由来乳酸菌は、その量にもよるが、通常呈味成分とはなりえない。少なくとも、マスキング効果を期待してカテキン含有飲食品に配合される通常の量、例えば1mL当たり1×10個~1×10個程度の量の茶葉由来乳酸菌は、カテキン含有飲食品の味を変化させるような呈味性はないものの、カテキン含有飲食品に含まれるアミノ酸類の量によっては乳酸菌の培地由来の香味が強く感じられたり、アミノ酸類自体の呈味が強くなる場合がある。そのような香味やアミノ酸類の呈味はマスキング効果に影響を及ぼさないが、このような香味や呈味を排除する観点からは、アミノ酸類濃度は20~100ppmであることが好ましい。
本明細書で使用する場合、「アミノ酸類」は、アラニン、セリン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、アスパラギン酸及びテアニンから成る群から選択されるアミノ酸のいずれかの成分、あるいはこれらのうちの二種類以上の成分の組み合わせを含む混合物を意味する。つまり、本明細書に記載のアミノ酸類の濃度は、上記アミノ酸を構成する成分の含有量の合計の濃度である。
また、培養後の菌体の洗浄が十分でない場合には培地由来の成分に起因する風味が生じる虞があり、このような風味の影響を小さくする観点からは、培養後の乳酸菌は洗浄工程にかけることが好ましい。洗浄工程を経由することで乳酸菌又はその培養物に付随する培地由来成分、特に風味に影響を及ぼす成分の量を低減することができる。そのような洗浄方法は多数のものが知られているが、当業者であれば、使用する培地に応じて適宜決定することができる。
茶葉由来乳酸菌の添加量は所望とするマスキング効果に応じて適宜調節されるが、茶葉由来乳酸菌の添加は、白濁や沈殿をもたらすことがあり、これによりカテキン含有飲食品の外観が損なわれる場合もある。カテキン含有飲食品として一般的な茶飲料を例に説明すると、茶飲料に配合される茶葉由来乳酸菌は1mL当たり約1×10個~5×10個、より好ましくは約1×10個~2×10個となるように配合されることが好ましい。茶葉由来乳酸菌の濃度が上記範囲にあることで、本実施形態において、白濁や沈殿がなく外観の観点から好ましい茶飲料となる。
茶葉由来乳酸菌によるカテキン含有飲食品の渋味マスキング効果には影響を与えないが、カテキン含有飲食品、特に茶飲料のアミノ酸類の含有量が20ppm未満であると乳酸菌の培地由来の異味を感じ、100ppmを超えるとアミノ酸類由来の呈味により茶の風味が損なわれる。したがって、茶飲料に配合されるアミノ酸類濃度は20ppm~100ppmであることが好ましく、30~50ppmであることがより好ましい。アミノ酸類濃度が上記範囲にあることで、本実施形態において、香味の観点から好ましい茶飲料となる。
渋味のマスキング剤は、茶葉由来乳酸菌以外の公知の渋味マスキング剤と併用することができる。例えば、そのようなマスキング剤として、香料、甘味料、果汁、乳成分を挙げることができる。乳成分としては、例えば、乳固形分、無脂乳固形分(SFN)、乳脂肪分、乳タンパク、乳糖等が挙げられる。乳成分の含有量としては1.0質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。本発明の渋味マスキング剤は、緑茶飲料のような、香料、甘味料、果汁、乳成分の添加が好ましくない飲食品においても、十分な渋味マスキング効果を得ることができる。そういった飲食品本来の風味を損なわないという観点から、本発明のマスキング剤は単独で添加されることが好ましい。
本明細書で使用する場合、「カテキン含有飲食品」とは、カテキンを含有する飲食品であって、その呈味の中に、カテキン、特にガレート型カテキンに由来する渋味が含まれている飲食品を意味する。カテキン含有飲食品の例として、緑茶、紅茶、ウーロン茶、番茶、ほうじ茶等の各種茶飲料や、大豆、小豆等の豆類が挙げられる。一実施態様において、そのようなカテキン含有飲食品における渋味は、消費者が不快と知覚する程度のものが意図される。茶葉由来乳酸菌がマスキングする渋味は、カテキンに由来する渋味であって、その他の成分に由来する渋味、例えばプロアントシアニジン、プロシアニジン、クロロゲン酸由来の渋味を含まないことが好ましい。
一般的な緑茶飲料におけるカテキンの濃度は、300~400ppm程であり、市販の渋味の強い緑茶飲料の中にはカテキンの濃度が約2000ppm程度の飲料もある。一実施態様において、カテキン含有飲食品は、100ppm以上、好ましくは300ppm以上であって、2000ppm未満である茶飲料、特に緑茶飲料であることが好ましい。茶飲料におけるカテキンの濃度の調節は当業者にとって技術常識であり、抽出温度や抽出時間を調整することで実施可能である。カテキンの濃度は、カテキン製剤を所望の量添加することで調節することもできる。
本明細書で使用する場合、「カテキン」は、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECG)、エピカテキン(EC)、ガロカテキンガレート(GCg)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)及びカテキン(C)から成る群から選択されるカテキン類のいずれかの成分、あるいはこれらのうちの二種類以上の成分の組み合わせを含む混合物を意味する。つまり、本明細書に記載のカテキンの濃度は、上記カテキン類を構成する成分の含有量の合計の濃度である。
上記カテキンの中でも、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、並びにこれらの没食子酸エステルであるエピカテキンガレート(ECG)及びエピガロカテキンガレート(EGCG)の4種類のエピ型のカテキンが茶葉中で主要な茶カテキンである。乾燥茶葉中にはこれら4種類の茶カテキン類が10~15wt%含まれており、茶(茶浸出液としての茶)の渋味の主体となっている。また、加熱殺菌等の高温条件下で、上記4種類の茶カテキン類の一部は、非エピ型のカテキンである、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(CG)及びガロカテキンガレート(GCG)に異性化するため、容器詰飲料製品等に加工されたカテキン含有飲食品には非エピ型のカテキン類が多くみられる。非エピ型カテキンにおいても、エピ型カテキンと同様の渋味を呈することが知られている。
「ガレート型カテキン類」は、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)、ガロカテキンガレート(GCg)及びカテキンガレート(Cg)のいずれかの成分、あるいはこれらのうちの二種類以上の成分の組み合わせを含む混合物を意味する。
一実施態様において、カテキン類の含有量に占めるガレート型カテキンの含有量の比は0.4~1.0であり、上記範囲に調整することが好ましい。一般に非ガレート型カテキンと比べてガレート型カテキンは渋味が強いため、上記範囲に調整することで、本発明における渋味のマスキング効果がより顕著なものとなる。
一実施態様において、特定の濃度のカテキンを含有する飲食品における含まれるガレート型カテキンの濃度は、150ppm以上であって、1000ppm未満である。そのような特定の濃度のカテキンを含有する飲食品としては、300ppm以上であって、2000ppm未満のカテキンを含む飲食品が好ましい。
本明細書で使用する場合、「マスキング」とは、茶葉由来乳酸菌の配合によりカテキン含有飲食品における渋味の強度が、コントロールとの比較で実質的に軽減することを意味する。渋味の強度の決定は官能評価など当業者に公知の方法を用いて実施できる。マスキングの対象となるカテキンは、ガレート型カテキンであることが好ましい。
(カテキン含有飲食品)
第二の実施形態において、茶葉由来乳酸菌を有効成分とするマスキング剤を含むカテキン含有飲食品、が提供される。
本明細書で使用する場合、「飲食品」とは、加工食品、飲料、青果など飲食に供されるものを意味する。飲料の例として、緑茶、紅茶、麦茶、ほうじ茶、玄米茶、ブレンド茶等の茶飲料、清涼飲料、栄養飲料、スポーツ飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料、炭酸飲料等の嗜好性飲料やドリンク剤がある。
食品の例として、クッキー、ビスケット、チョコ、ケーキ、プリン、アイスクリーム、シャーベット、ワッフル、ウエハース、ホットケーキ、ドーナッツ、ポップコーン、カステラ、キャラメル、キャンディー、チューイングガム、和菓子等の菓子類;食パン、菓子パン、その他のパン等のパン類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ等の麺類;ハンバーグ、ハム、ベーコン、ソーセージ等の食肉加工食品;カレー、ラーメン、スープ等のインスタント食品が挙げられるが、これらに限定されない。
飲食品は、カテキン緑茶(株式会社伊藤園製)のように、一般的な飲食品をカテキンで強化したものを包含する。
カテキンの含有量は、カテキン含有飲食品を構成するカテキン以外の成分によっても変動し得る。一実施態様において、カテキン含有飲食品は、100ppm以上、好ましくは300ppm以上であって、2000ppm未満である茶飲料、特に緑茶飲料であることが好ましい。茶飲料におけるカテキンの濃度の調節は当業者にとって技術常識であり、抽出温度や抽出時間を調整することで実施可能である。
カテキン含有飲食品に含まれる茶葉由来乳酸菌は、渋味マスキング効果を奏する限り、親株から作成した変異株を包含し得る。また、有効成分は菌体のみならず、菌体に由来する成分、菌体の培養物又は処理物であってもよい。
限定することを意図するものではないが、茶葉由来乳酸菌の処理物の例として、茶葉由来乳酸菌の生菌又は死菌に対して磨砕や破砕等の公知の物理的な処理や、その他の処理、例えば酵素処理を行ったものが挙げられる。具体的には、磨砕物、破砕物、液状物(抽出液等)、濃縮物、ペースト化物、乾燥物(噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等)、希釈物、酵素分解物等を挙げることができる。マスキングに供される際の菌体は生菌であっても死菌であってもよい。両者を併用することもできる。品質管理の容易さから、茶葉由来乳酸菌は死菌であることが好ましい。
茶葉由来乳酸菌の培養物は、菌体を培養した後の菌体の懸濁液、菌体の混合物(発酵物を含む)、培養後の残渣等を含み得る。培養物は菌体培養物を処理して得られる細胞質又は細胞壁画分を含んでもよい。
菌体を培養するための培地も特に限定されず、乳酸菌の培養に使用されるものであれば好適に使用することができる。例えば、培地は天然培地、合成培地、半合成培地等であってもよい。
培養条件(培養温度、培養時のpH、培養期間等)も茶葉由来乳酸菌を培養するための通常の培養条件を用いることができる。限定することを意図するものではないが、培養温度は、例えば、通常約10~40℃、好ましくは約20~40℃であってもよく、また、培養時間は、例えば約15~50時間、好ましくは約16~24時間であってもよい。
茶葉由来乳酸菌は、飲食品中に添加したり、飲食品の表面に振りかけたり、乗せたりすることにより飲食品に配合される。
カテキン含有飲食品は、配合された茶葉由来乳酸菌が渋味マスキング効果を奏する限り、カテキン以外の任意の成分を含んでいてもよい。例えば、カテキン含有飲食品が茶飲料の場合、茶飲料には、テアニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン等のアミノ酸や、その他の有機酸、ポリフェノール等が含まれる。中でもテアニンは、緑茶に含まれる主要なアミノ酸であり、尚且つ茶の旨味成分であることが知られている。テアニン、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計は5ppm~100ppmであることが好ましい。
一実施態様において、カテキン含有飲食品が飲料である場合、そのような飲料は糖類が添加されていない無糖飲料であることが好ましい。
一実施態様において、カテキン含有飲食品が飲料である場合、そのような飲料は乳成分が添加されていないことが好ましい。
一実施態様において、カテキン含有飲食品が飲料である場合、そのような飲料は香料が添加されていないことが好ましい。
一実施態様において、カテキン含有飲食品が飲料である場合、そのような飲料は果汁が添加されていないことが好ましい。
一実施態様において、カテキン含有飲食品が飲料である場合、pHは5.0~7.0に調整することが好ましい。pHが上記範囲にあることで、カテキンの渋味マスキング効果を効果的に得ることが出来る。特に、緑茶飲料である場合は、pHが上記範囲にあることで、緑茶の風味を良好にすることが出来る。飲料のpHは、pHメーターを用いて常法により測定することができる。
カテキン含有飲食品は容器詰めの形態で提供されてもよい。カテキン含有飲食品を充填する容器の例には、ペットボトル、缶、紙、瓶等の通常用いられる容器があるが、これらに限定されない。充填された後密封できる容器を使用することが好ましい。
(マスキング方法)
第三の実施形態において、茶葉由来乳酸菌を有効成分とする、カテキン含有飲食品における渋味のマスキング剤と、渋味成分とを接触させる工程を含む、渋味のマスキング方法、が提供される。
渋味成分は、カテキン、好ましくはガレート型カテキンに由来する渋味のみであって、カテキン含有飲食品に含まれるその他の成分に由来する渋味、例えば、プロアントシアニジン、プロシアニジン、クロロゲン酸由来の渋味を含まないことが好ましい。
渋味のマスキング方法は、接触工程前後に任意の工程を含んでいてもよい。一実施態様において、渋味のマスキング方法は、マスキング剤の有効成分に含まれる乳酸菌を調製する工程及び/又はその後の加工処理の工程、例えば殺菌工程や、培地由来成分を除去するための洗浄工程を含んでいてもよい。乳酸菌又はその培養物に付随する培地由来成分の香味を低減させる観点から、乳酸菌は事前に洗浄工程にかけられることが好ましい。
マスキング方法を実施することにより、渋味が減少したカテキン含有飲食品の提供が可能になる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.茶葉由来乳酸菌の調製
特開2022-073998号公報に記載の培養条件に準拠してLOC1株を培養した。具体的には、培地量の1%に当たるLOC1株の菌液を添加し、24時間程度37℃で培養した。培養後、可能な限り培養液から培地由来の成分を公知の手法により除去した。その後、得られた菌体を遠心分離を用いて洗浄し、加熱により殺菌し、スプレードライにより粉末化した死菌体を以降の実験に使用した。
2.官能評価
上記1で得られた茶葉由来乳酸菌としてのLOC1株を添加した市販の緑茶飲料の渋味について、無添加のものをネガティブコントロールとしてそれぞれのサンプルの渋味を評価した。渋味の官能評価は、株式会社伊藤園において、官能試験を通常業務の一つとする社員から選抜された、渋味の強度を識別する能力を有するパネル5名により、以下の基準に従い実施した。
3:コントロールと比較して渋味がマスキングされている。
2:コントロールと比較して渋味がマスキングされているが、わずかに口に渋味が残る。
1:コントロールと同等。
マスキング以外の評価基準は後述する。
茶葉由来以外の乳酸菌であるエンテロコッカス・フェカリス菌株(以下、単に「フェカリス」とも言う。)と、特許第5010651号公報に記載のラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ ブルガリカスと同じ菌種であるラクトバチルス デルブリッキィ亜種 ブルガリクス菌株(以下、単に「ブルガリクス」とも言う。)を市販の緑茶飲料に添加したものを比較例とした。調製方法はLOC1株と同様であり、いずれも死菌体が飲料に配合された。
結果を以下に示す。なお、表1に記載のスコアは官能評価で得られた評点の平均値を四捨五入したものである(以下同様)。
上記表に含まれるカテキン濃度のうち、主に渋味に影響を与えるガレート型カテキンの濃度は各濃度のおよそ半分の値であった。
LOC1株は、カテキン濃度に関係なく渋味をマスキングすることが明らかとなった。
続いて、緑茶飲料における乳酸菌及びアミノ酸類の濃度の変化がマスキング効果等に及ぼす影響を評価した。
2種類の茶葉を用い、アミノ酸類含有量の異なる2種類の緑茶抽出液を得た。具体的には、茶葉(やぶきた種、一番茶)20gを700mLの熱水(60℃)で8分間抽出後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)で処理し、得られた濾過液を純水で700mlにメスアップすることにより緑茶葉抽出液Aを得た。次に、茶葉(やぶきた種、秋冬番茶)20gを700mLの熱水(85℃)で6分間抽出後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)で処理し、得られた濾過液を純水で700mlにメスアップすることにより緑茶葉抽出液Bを得た。
カテキン及びアミノ酸類の終濃度が表2に記載の各実施例の濃度となるように緑茶抽出液A、B及びカテキン製剤(テアフラン30A、伊藤園社製)を混合し、純水で2000mLにメスアップし、混合液を得た。得られた混合液をUHT殺菌(135℃、30秒)し、プレート内で85℃に冷却してから透明プラスチック容器(PETボトル)に充填し、直ちに20℃まで冷却することにより容器詰緑茶飲料を得た。得られた容器詰緑茶飲料に表2の濃度になるように乳酸菌(死菌)を添加し、実施例1~9とした。
実施例1~9について官能評価を行い、「渋味」、「外観」、「香味」について以下の基準に従い評価し、合計得点を算出した。
表2における外観については以下のとおり評価した。
3:沈殿および白濁を生じていない。
2:白濁してはいないが沈殿を生じている。
1:白濁しており、飲料として不適である。
表2における香味については以下のとおり評価した。
3:乳酸菌の培地由来の香味は感じられず、茶の風味も良好。
2:感じるが許容範囲である/乳酸菌の培地由来の香味は感じられないが(アミノ酸類由来の呈味が強く)茶の風味がやや損なわれている。
1:乳酸菌由来の香味を強く感じ、不快である/乳酸菌の培地由来の香味は感じられないが(アミノ酸類由来の呈味が強く)茶の風味が完全に損なわれている。
結果を表2に示す。
実施例1~9についてはいずれもカテキン類由来の渋味のマスキング効果を確認することができたが、乳酸菌の添加量の多い実施例5は「外観」が他よりも劣るものであった。白濁や沈殿を発生させず、外観を好適にする観点から、カテキン含有飲食品中の乳酸菌は約1×10~5×10個の範囲で添加するのが好ましい。また、アミノ酸類含有量が少ない実施例6及びアミノ酸類含有量が多い実施例9については「香味」が他よりも劣るものであった。乳酸菌の培地由来の香味を軽減し、茶の風味を良好に保つ観点から、カテキン含有飲食品のアミノ酸類濃度は約20~100ppmであることが好ましい。

Claims (13)

  1. 茶葉由来乳酸菌であるラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)を有効成分とする、カテキン含有飲食品における渋味のマスキング剤。
  2. 前記ラクチプランチバチルス・プランタラムが、受託番号NITE P-03527のLOC1株である、請求項に記載のマスキング剤。
  3. 渋味がカテキンに由来し、クロロゲン酸に由来しない、請求項1又は2に記載のマスキング剤。
  4. 請求項1又は2に記載のマスキング剤を含有する、カテキン含有飲食品。
  5. 有効成分としての茶葉由来乳酸菌を1×107個/mL~5×107個/mL含有することを特徴とする、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  6. カテキン類の含有量が300ppm~2000ppmである、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  7. 前記カテキン類の含有量に占めるガレート型カテキンの含有量の比が0.4~1.0である、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  8. 緑茶飲料である、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  9. アミノ酸類の総含有量が20ppm~100ppmである、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  10. テアニン、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が5ppm~100ppmである、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  11. 無糖飲料である、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  12. 乳成分を含有しないことを特徴とする、請求項に記載のカテキン含有飲食品。
  13. 請求項1又は2に記載のマスキング剤と、渋味成分とを接触させる工程を含む、渋味のマスキング方法。
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