JP7379802B2 - 移動経路決定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、移動経路決定装置に関する。
従来、鋼材から切り出す部材の現図の際に鋼材のマーキン面にマーキン線を描画するマーカの移動経路の最適化方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の最適化方法では、マーキン工程での空送り工程におけるマーカの移動距離を最短にする経路を、アントコロニー法を用いて探索している。
また、がん治療等に用いられる走査型の粒子線治療装置や、当該粒子線治療装置用の治療計画装置に関して、ビームの走査経路の決定方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載の方法では、実際のスキャニング照射を行うに際し、各ビームスポットをどの順番で照射していくか、すなわち走査経路をどのように決めるかに関して、ラスタースキャニング型の粒子線治療装置においてその走査時間を短縮し、かつ、正常組織や重要臓器への照射回避も考慮した走査経路を求めている。
特許第5520763号公報 特許第5879446号公報
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、複数の作業位置へマーキン線を描画するためのマーカを移動させる場合の移動コストには、各作業位置間の距離のみを考慮に入れればよい。また上記特許文献2に記載の技術は、複数のビームスポット位置へビーム走査する場合のビーム走査コストには、各ビームスポット位置間の距離とビーム走査速度のみを考慮に入れればよい。一方、独立2輪駆動型の台車ロボットのように旋回と走行を個別に行う移動体や、旋回と走行を同時に行う移動体を、複数の作業位置へ移動させる場合の移動コストには、旋回に要するコストを考慮に入れる必要がある。
本発明は上記事実を考慮して、旋回と走行とを個別に行う移動体、又は旋回と走行とを同時に可能な移動体を、複数の目標位置へ移動させる際の最適な移動経路を、簡易な計算で決定することができることを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の発明の移動経路決定装置は、旋回と直進又は後退である走行とを個別に行う移動体を、複数の目標位置の各々へ移動させる際の移動経路を決定する移動経路決定装置であって、前記目標位置のペアの各々に対し、前記ペアの一方を移動開始点とし、他方を到着点とした際の、前記移動開始点での旋回角度、直進又は後退の移動距離、及び前記到着点での旋回角度を用いて表されるコスト関数の値を計算するコスト関数計算部と、前記計算された前記コスト関数の値の総和が小さくなるような前記移動経路を決定する移動経路決定部と、を含んで構成されている。これにより、旋回と走行とを個別に行う移動体を、複数の目標位置へ移動させる際の最適な移動経路を、簡易な計算で決定することができる。
第2の発明の移動経路決定装置は、旋回と直進又は後退である走行とが同時に可能な移動体を、複数の目標位置の各々へ移動させる際の移動経路を決定する移動経路決定装置であって、前記目標位置のペアの各々に対し、前記ペアの一方を移動開始点とし、他方を到着点とした際の、旋回を前記走行と同時に行って前記移動開始点から前記到着点まで移動する地点間経路であって、予め定められた規則で生成される地点間経路を用いて表されるコスト関数の値を計算するコスト関数計算部と、前記計算された前記コスト関数の値の総和が小さくなるような前記移動経路を決定する移動経路決定部と、を含んで構成されている。これにより、旋回と走行とを同時に可能な移動体を、複数の目標位置へ移動させる際の最適な移動経路を、簡易な計算で決定することができる。
上記の発明の移動経路決定装置において、前記コスト関数計算部は、前記目標位置のペアの各々に対し、前記ペアの一方を移動開始点とし、他方を到着点とし、前記移動開始点及び前記到着点の各々において、前記移動体の基準方向が、予め定められた方向と一致するように移動する際の前記コスト関数の値を計算するようにすることができる。これにより、目標位置での移動体の方向が定められている場合であっても、最適な移動経路を決定することができる。
上記の発明の移動経路決定装置において、前記コスト関数計算部は、予め定められた一定速度又は時間的に変動する速度を更に用いて表される前記コスト関数の値を計算するようにすることができる。これにより、適切な速度で移動させる場合の最適な移動経路を決定することができる。
上記の発明の移動経路決定装置において、前記移動体は、床面に対する作業を行うための床面作業部を含んで構成され、かつ移動可能な作業機構と、前記決定された移動経路に沿って、前記作業機構を移動させる制御部と、を備え、前記移動経路決定部は、前記作業機構の動作について予め定められた制約を満たすように前記移動経路を決定することができる。これにより、床面に対する作業を行う移動体の最適な移動経路を決定することができる。
本発明によれば、旋回と走行とを個別に行う移動体、又は旋回と走行とを同時に可能な移動体を、複数の目標位置へ移動させる際の最適な移動経路を、簡易な計算で決定することができる、という効果が得られる。
本発明の第1実施形態に係る作業システムの構成の一例を示す図である。 本発明の第1実施形態の作業システムの制御系の機能的な構成例を示す図である。 レーザ装置の構成の一例を示す図である。 床面作業ロボットの構成の一例を示す図である。 各作業点の一例を示す図である。 本発明の第1実施形態における床面作業ロボットによる次の作業点への移動手順を説明するための説明図である。 本発明の第1実施形態における床面作業ロボットによる墨出しの手順を説明するための説明図である。 床面作業ロボットの速度制御の一例を示す図である。 作業点間を結ぶ経路上に移動不可領域がある場合の一例を示す図である。 床面作業ロボットのロボット制御機器による移動経路決定処理を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態における床面作業ロボットによる次の作業点への移動経路の一例を示す図である。 床面作業ロボットによる次の作業点への移動経路を生成する方法を説明するための説明図である。 床面作業ロボットの運動モデルを説明するための説明図である。 シミュレーション例における各シナリオを示す図である。 シミュレーション例における各経路探索手法を示す図である。 シナリオ1での各経路探索手法のシミュレーション結果として得られた作業コストを示す図である。 シナリオ1での各経路探索手法のシミュレーション結果として得られた経路を示す図である。 シナリオ2での各経路探索手法のシミュレーション結果として得られた作業コストを示す図である。 シナリオ2での各経路探索手法のシミュレーション結果として得られた経路を示す図である。 シナリオ3での各経路探索手法のシミュレーション結果として得られた作業コストを示す図である。 シナリオ3での各経路探索手法のシミュレーション結果として得られた経路を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
<作業システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る作業システム10の構成の一例を示す図である。図1に示されるように、作業システム10は、測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射するレーザ装置12と、位置決めされた位置において床面に対する作業を行う床面作業ロボット14とを含む。本実施形態では、床面作業ロボット14が旋回と直進又は後退である走行とを個別に行いながら、建設現場の床面に対して墨出しを行う場合を例に説明する。
また、図2に、作業システム10の制御系の構成の一例を示す。図2に示されるように、作業システム10のレーザ装置12の制御系は、機能的には、レーザ制御部12Aと、レーザ通信部12Bとを備えている。また、図2に示されるように、作業システム10の床面作業ロボット14の制御系は、ロボット制御機器14Aと、カメラ14Bと、移動駆動モータ14Cと、位置決め駆動モータ14Dとを備えている。
(レーザ装置)
レーザ装置12のレーザ制御部12Aは、測距用レーザ光を目標位置へ向けて照射する。レーザ通信部12Bは、床面作業ロボット14との間で情報のやり取りをする。
レーザ装置12は、例えば、図3に示されるように、3次元レーザ測定器によって実現される。3次元レーザ測定器であるレーザ装置12は、レーザ制御部12Aから出力された制御信号に応じて、出力口12Xから測距用レーザを出力する。測距用レーザは、制御信号によって指定された方位に対して照射され、床面と略平行に照射される。また、レーザ装置12は、測距用レーザが照射された対象物までの水平距離を測定する。
レーザ装置12は、図3に示されるように、Z軸まわり(方位方向)に回転する。レーザ装置12は、床面に対して水平な軸と垂直な軸を中心軸として回転する2組のモータ(図示省略)を備えており、指定した任意の方向へ向けて測距用レーザを照射することができる。
(床面作業ロボット)
図4は、床面作業ロボット14の構成の一例を示す図である。床面作業ロボット14は、図4に示されるように、移動経路決定装置の一例としてのロボット制御機器14A、カメラ14B、移動機構16、移動機構16を駆動させるための移動駆動モータ14C、ペン描画装置18、ペン描画装置18を移動させるための位置決め駆動モータ14D、支持フレーム20、及び光拡散板22を備える。なお、図4の下段の図は、図4の上段の図におけるX-X’面の断面図である。移動機構16、移動駆動モータ14C、ペン描画装置18、及び位置決め駆動モータ14Dは、作業機構の一例である。また、床面作業ロボット14は移動体の一例である。
本実施形態の移動機構16は、図4に示されるように、独立2輪駆動機構である。
移動駆動モータ14Cは、ロボット制御機器14Aの制御に応じて動力を出力する。移動駆動モータ14Cから出力された動力に応じて移動機構16が駆動する。
ペン描画装置18は、支持フレーム20に設置されている。また、ペン描画装置18は、x‐yリニアステージ18Aと、ペンホルダー18Bと、ペン18Cとを備えている。ペンホルダー18B及びペン18Cは、本発明の床面に対する作業を行うための床面作業部の一例である。
x‐yリニアステージ18Aは、床面作業ロボット14の座標系を表すロボット座標系のX軸及びY軸方向に移動可能なように構成されている。
ペンホルダー18Bには、ペン18Cを鉛直方向に上下させるペン上げ下げ機構(図示省略)が備えられている。ペンホルダー18Bは、任意の位置でペン先を床面に押し付けることができ、建設現場の床面に墨出しをすることができる。したがって、x‐yリニアステージ18Aとペンホルダー18Bのペン上げ下げ機構(図示省略)とを制御することにより、床面に任意の文字や図形を描くことができる。
位置決め駆動モータ14Dは、ロボット制御機器14Aの制御に応じて動力を出力する。位置決め駆動モータ14Dから出力された動力に応じて、x‐yリニアステージ18Aが移動し、ペンホルダー18B及びペン18Cが所定の位置となる。
光拡散板22は、図4に示されるように、ペンホルダー18Bの上部に配置される。また、光拡散板22は、床面に対して略垂直であって、かつ光拡散板22の平面がロボット座標系のX軸に一致又は平行であるように配置される。また、図4に示されるように、光拡散板22の中心軸はペン18Cの中心軸と略一致するように配置されている。
なお、ペン描画装置18と光拡散板22とカメラ14Bとは一体となっており、一体として移動可能な構成となっている。具体的には、位置決め駆動モータ14Dから出力された動力に応じて、ペン描画装置18と光拡散板22とカメラ14Bとが移動する。
カメラ14Bは、ペンホルダー18Bの上部に配置される。また、カメラ14Bは、光拡散板22に対向するように配置される。そして、カメラ14Bは、図4に示されるD方向から、光拡散板22の画像を撮像する。ペン描画装置18及び光拡散板22は、本発明の作業機構の一例である。
ロボット制御機器14Aは、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、及びネットワークインタフェース等を含んで構成されている。ロボット制御機器14Aは、例えば半導体集積回路、より詳しくはApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)等によって構成されてもよい。ロボット制御機器14Aは、図2に示されるように、機能的には、ロボット制御部140と、目標位置記憶部141と、ロボット通信部142と、コスト関数計算部143と、移動経路決定部144とを備えている。
本実施形態では、複数の目標位置が存在する場合に、複数の目標位置の各々へ床面作業ロボット14を移動させる際に、移動に要する時間と旋回するのに要する時間とを考慮して、複数の目標位置の各々の間の移動経路を決定する。
本実施形態においては、墨出しを行う際に、床面作業ロボット14の光拡散板22をレーザ装置12からのレーザ照射方向に対して略垂直になるように姿勢を制御する必要がある。このため、複数の目標位置が存在する場合には、墨出しを順次行う経路によっては姿勢制御のために多くの時間を費やす。しかし、墨出しを順次行う経路を適切に選択すれば、複数の目標位置への墨出しを効率化することができる。また、複数の目標位置への墨出しを効率化することは、床面作業ロボット14のバッテリー消費の観点からも合理的である。
そこで、本実施形態においては、複数の目標位置が存在する場合に、複数の目標位置の各々へ床面作業ロボット14を移動させる際に、移動に要する時間と光拡散板22をレーザ装置22からのレーザ照射方向に対して略垂直にするための姿勢制御に要する時間とを考慮して、床面作業ロボット14の移動経路を決定する。
この場合、床面作業ロボット14の現在位置から次の目標位置に移動して墨出しを行うためには、旋回、直進又は後退、及び再度の旋回の3つの動作をする必要がある。本実施形態では、これら一連の動作に要する時間をコストとして計算する。このコストは、現在位置を表す座標と、次の目標位置を表す座標と、床面作業ロボット14の移動速度V、床面作業ロボット14の旋回角速度ω、レーザ装置12の座標P(x,y)を用いて計算する。
具体的には、コスト関数計算部143は、目標位置記憶部141に格納された複数の目標位置の各々を読み出すと共に、予め求められたレーザ装置12の位置を取得する。また、コスト関数計算部143は、目標位置のペアの各々に対し、当該ペアの一方を移動開始点とし、他方を到着点とした際の、移動開始点での旋回角度、直進又は後退の移動距離、及び到着点での旋回角度を用いて表されるコスト関数の値を計算する。このコスト関数は、直進移動に関するコストと、旋回に関するコストとの和で表される。直進移動に関するコストは、移動開始点から到着点までの距離と、移動速度とから計算され、旋回に関するコストは、移動開始点での旋回角度と、到着点での旋回角度と、旋回角速度とから計算される。
移動開始点での旋回角度は、床面作業ロボット14の基準方向(光拡散板22に対する法線方向)が、レーザ装置12へ向いた方向から、到着点へ向いた方向となるように旋回する旋回角度であり、床面作業ロボット14の現在位置を表す座標と、レーザ装置12の座標と、到着点(次の目標位置)を表す座標とから求められる。また、到着点での旋回角度は、床面作業ロボット14の基準方向(光拡散板22の法線方向)が、移動開始点から到着点(次の目標位置)へ向かう方向から、レーザ装置12へ向いた方向となるように旋回する旋回角度であり、床面作業ロボット14の現在位置を表す座標と、レーザ装置12の座標と、到着点(次の目標位置)を表す座標とから求められる。
移動経路決定部144は、目標位置のペア毎に計算された、コスト関数の値を要素とするコスト行列を用いて、床面作業ロボットが初期位置から全ての作業点へ1回ずつ移動した際の、コスト関数の値の総和が小さくなるような移動経路を決定する。なお、コスト関数の値の総和が最小となる移動経路を決定してもよいし、最小とならなくても、コスト関数の値の総和がある程度小さくなる移動経路を決定してもよい。
ロボット制御部140は、カメラ14B、移動駆動モータ14C、及び位置決め駆動モータ14Dを制御する。また、目標位置記憶部141には、建設現場の床面に対する墨出しの目標位置に関する位置情報が格納されている。また、ロボット通信部142は、レーザ装置12との間で情報のやり取りをする。
ロボット制御部140は、目標位置に関する位置情報を、目標位置記憶部141から読み出し、移動経路決定部144によって決定された移動経路に沿って、床面作業ロボット14を複数の目標位置へ移動させるように移動駆動モータ14Cを制御する。なお、目標位置は複数存在するため、ロボット制御部140は、1つの目標位置に対する墨出しが完了すると、決定された移動経路に沿って、次の目標位置を目標位置記憶部141から読み出し、床面作業ロボット14を次の目標位置へ移動させるように、移動駆動モータ14Cを制御する。
また、ロボット制御部140は、カメラ14Bを制御し、光拡散板22に写ったレーザ光を撮像するとともに、レーザ光の位置を検出する。また、ロボット制御部140は、移動駆動モータ14Cを制御し、床面作業ロボット14の移動機構16を駆動させる。
また、ロボット制御部140は、カメラ14Bによって撮像された光拡散板22の画像に応じて、位置決め駆動モータ14Dを制御し、ロボット座標系のX軸及びY軸において、x‐yリニアステージ18Aを所定の方向へ移動させることにより、ペン18Cを目標位置へ移動させる。なお、ペン18Cを目標位置へ移動させる際には、ロボット制御部140は、光拡散板22とカメラ14Bとの間の位置関係を保ちながら、x‐yリニアステージ18A及びペンホルダー18Bの位置を制御する。
(作業システム10の作用)
次に、本実施形態における作業システム10による移動経路の決定方法の概要について説明する。
本実施形態では、床面作業ロボット14に、予め設定した全ての目標位置において床面作業をさせる状況を考える。床面作業において、床面作業ロボット14は目標位置として設定された全作業点へ順番に移動し、各作業点において作業を行う必要があるが、どのような順番で各作業点を巡回するかは、重要な問題である。例えば、床面に対する墨出し作業の場合、上記特許文献1と同様に、設計図が与えられると、床面に描く墨出しの量は一定となるため、各作業点(墨出し点)間の移動に要する時間を短くすることが出来れば、作業時間の短縮に大きく貢献する。これは全ての作業点へ1回ずつ移動した際の、総移動距離もしくは総移動時間を最小にする経路を求める巡回セールスマン問題に類似した問題とみなすことができる。
図5に示すように、床面作業ロボット14が現作業点から次の作業点へ移動する状況を考える。次の作業点の候補である作業点1から作業点4のいずれかを選択する必要がある。図5の例では、最も距離が短い点は作業点4であるが、上述した床面作業ロボット14のように全方向移動機能の無い独立2輪駆動機構である場合、車輪軸に平行な方向(自動車の場合の真横方向)へ移動することはできないため、図6に示すように現在位置から作業点4の方向へ向けて旋回した後、直進走行する必要がある。その結果、距離は大きいものの旋回の必要のない作業点1の方が移動に要する時間が短くなるケースもある。従って経路探索の際には、現作業点における床面作業ロボット14の姿勢まで考慮に入れた経路決定が必要となる。
以下では、現作業点における床面作業ロボット14の姿勢まで考慮に入れた経路決定方法を3つのSTEPに分けて説明する。
(STEP1)
経路探索に必要なパラメータを設定する。このパラメータには、少なくとも、床面作業ロボット14の初期座標、全作業点の座標、床面作業ロボット14の移動速度、床面作業ロボット14の位置を計測するレーザ装置12の設置座標、床面作業ロボット14の旋回角速度が含まれる。
(STEP2)
ある点から別の点へ移動する際のコスト(移動時間)を全て算出する。本実施形態においては、ある作業点から次の作業点へ移動する際には、図7に示すように、次の作業点の方向へ超信地旋回した後、直進走行し、再度、レーザ装置12のある方向へ向けて超信地旋回をする手順となる。
ここで、作業点iの座標を(x,y)(i=1,2,3,…,N:Nは作業点の総数)、床面作業ロボット14の前進・後退速度を等速度V、旋回角速度を等角速度ωとする。作業点iにおいて床面作業ロボット14のロボット座標系のy軸は測量機と作業点iを結ぶ直線と平行に姿勢制御する必要がある。幾何的関係から、次の作業点j(j=1,2,3,…,N:Nは作業点の総数)の方向へ超信地旋回する角度βijは容易に算出できる。また作業点iおよびjの座標値から、作業点iからjへ直線走行する際の距離Lijも容易に算出できる。また作業点iからjへ直進走行した後に、床面作業ロボットは作業点jにおいて、ロボット座標系のy軸をレーザ装置12と作業点jを結ぶ直線と平行になるように姿勢制御(超信地旋回)する必要があるが、その旋回量γijも容易に算出できる。これらを用いて作業点iからjへ移動する際の移動コストCijは、距離Lij及び等速度Vから計算される直進移動に関するコストと、角度βij、旋回量γij、及び等角速度ωから計算される旋回に関するコストとの和を用いて算出される。すなわち、Cijは作業点iからjへの姿勢制御を含めた移動に要する時間に相当する。
なお、上述した計算方法では、等速度Vを用いる場合を例に説明したが、時間的に速度を変化させてもよい。例えば、図8に示すように、直進・後退時には、最大巡航速度Vへ向かって、加速度Aで加速していき、最大巡航速度Vへ到達した後、目的地の手前から加速度Aで減速させる台形速度制御を行ってもよい。同様に旋回時には、最大旋回角速度ωへ向かって、所定の角加速度で加速していき、最大旋回角速度ωへ到達した後、目標旋回角度の手前から所定の角加速度で減速させる角速度制御を行ってもよい。
また、図9に示すように、作業点iとjを結ぶ経路上に障害物や開口等により床面作業ロボット14が走行できない領域(移動不可領域)があることが予め分かっている場合、当該作業点を結ぶ経路の移動コストを極めて大きい値に設定する(Cij=∞)。
(STEP3)
上記STEP2で算出したコストを要素としたコスト行列を用いて、床面作業ロボット14が初期位置から全ての作業点へ1回ずつ移動した際の総コストを最小にする経路を求める。これは巡回セールスマン問題に類似した問題となる。考えられる全ての経路に対してコストを算出し、総コストが最小となる最適経路を探索する(総当たり法)こともできるが、作業点数をNとすると、組み合わせ総数は(N-1)!/2で表される。N=10の場合でも経路の組み合わせは181440通りあり、N=20の場合で組み合わせ総数は1.21645×1018通りにもなる。作業点数Nの増加に伴い、膨大な計算時間が必要となるため、この方法は現実的でない。
上記したように巡回セールスマン問題においては、現実的な時間内において、総コストが最小となる最適経路を見つけることは極めて難しいものの、総コストが極小となる準最適経路を見つける幾つかの方法が知られている。例として、欲張り法、クラスカル法、分割統治法、最近挿入法、最遠挿入法、ランダム挿入法、N-opt法、焼きなまし法、アントコロニー法等が挙げられる。作業点の配置等によって得られる準最適経路が変わってしまうため、どの方法が最も良い経路を得られる方法であるかを結論付けることはできない。そこで本実施の形態においては、既存の準最適経路を見つける幾つかの方法により経路探索し、各手法で得られた準最適経路の内、最もコストが小さな経路を採用する。
また、本実施形態における作業システム10による床面作業ロボット14の動作の概要は、特願2018-237686に記載の床面作業ロボットの動作と同様であるため、説明を省略する。
次に、図10を参照して、作業システム10の作用の詳細を説明する。作業システム10が起動すると、床面作業ロボット14のロボット制御機器14Aは、図10に示す移動経路決定処理を実行する。
ステップS100において、コスト関数計算部143は、全ての目標位置に関する位置情報を、目標位置記憶部141から読み出す。また、コスト関数計算部143は、予め求められたレーザ装置12の位置を取得する。
ステップS102において、コスト関数計算部143は、目標位置のペア毎に、直進移動に関するコストと、旋回に関するコストとを用いて、コスト関数の値を計算する。
ステップS104では、移動経路決定部144は、目標位置のペア毎に計算された、コスト関数の値を要素とするコスト行列を用いて、床面作業ロボットが初期位置から全ての作業点へ1回ずつ移動した際の総コストを小さくする経路を求め、移動経路として決定する。
また、レーザ装置12と床面作業ロボット14との動作の流れ及び信号のやりとりに関しては、特願2018-237686に記載の動作の流れ及び信号のやりとりと同様であるため、説明を省略する。
以上説明したように、第1の実施形態では、旋回と直進後進走行とを個別に行う床面作業ロボットを、複数の作業点へ移動させる際の最適な移動経路を、簡易な計算で決定することができる。また、各作業点まで順次移動して作業を行う床面作業ロボットにおいて、移動経路を最適化することにより、全体の作業時間を短くすることができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る作業システム10について説明する。なお、第2実施形態に係る作業システム10の構成は、第1実施形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、床面作業ロボット14が、旋回と直進又は後退である走行とが同時に可能である点が、第1実施形態と異なる。具体的には、床面作業ロボット14は、図11に示すように現作業点から次の作業点へ向けて直線軌道ではない任意の軌道上を走行することが可能である。
本実施形態では、作業点A、Bの地点間経路として、図12に示すような作業点Aから作業点Bへ2つの円弧軌道上を走行する場合を例に説明する。この軌道上を走行することで超信地旋回(その場旋回)することなく作業点AからBまで移動できる。
ここで、器械点(既知)と作業点A(既知)を結ぶ直線を直線lとし、器械点(既知)と作業点B(既知)を結ぶ直線を直線lとする。作業点Aを通り直線lと接する円Aと作業点Bを通り直線lと接する円Bが接点Cで内接もしくは外接する場合、作業点A→接点C→作業点Bの順で、円Aおよび円Bの円弧軌道上を走行すれば超信地旋回することなく作業点Aから作業点Bまで移動できるとともに光拡散板22をレーザ装置12からのレーザ照射方向に対して略垂直にすることができる。
このような円A,円Bの式の算出方法を以下に示す。
まず、円Aを表す式の導出方法について説明する。直線lの式は既知である。円Aの半径rには任意性があり、自由な値を設定できる。例えば作業点AとBの距離Labとしてr=Lab/2のようにしても良い。
円Aは作業点Aを通るとともに、中心Oが作業点Aを通る直線lの法線上にあることを考慮して、円Aの式を導出できる。
続いて円Bを表す式の導出方法について説明する。直線lの式は既知である。円Bは作業点Bを通るとともに、中心Oが作業点Bを通る直線lの法線上にあることと、O間の距離がr+rに等しいこと(円Aと円Bが外接の場合)を考慮して、円Bの式を導出できる。
次に、導出した円Aと円Bの式から接点Cを求めることで作業点A→接点C→作業点Bの順で進む円弧軌道を生成できる。
このとき、弧ACの長さと、弧CBの長さと、走行速度Vとを用いて、作業点A,BのペアについてのコストCABを算出することができる。
従って、コスト関数計算部143は、目標位置記憶部141に格納された複数の目標位置の各々を読み出すと共に、予め求められたレーザ装置12の位置を取得する。また、コスト関数計算部143は、目標位置のペア毎に、当該ペアの一方を移動開始点とし、他方を到着点とし、
移動開始点及び到着点の各々において、床面作業ロボット14の基準方向(光拡散板22の法線方向)が、レーザ装置12へ向いた方向と一致するように移動する地点間経路であって、上述したように生成される円弧軌道である地点間経路と、移動速度を用いて表されるコスト関数の値を計算する。
移動経路決定部144は、目標位置のペア毎に計算された、コスト関数の値を要素とするコスト行列を用いて、床面作業ロボット14が初期位置から全ての作業点へ1回ずつ移動した際の総コストを小さくする移動経路を求める。
ロボット制御部140は、目標位置に関する位置情報を、目標位置記憶部141から読み出し、移動経路決定部144によって決定された移動経路に沿って、床面作業ロボット14を複数の目標位置へ移動させるように移動駆動モータ14Cを制御する。
ここで、円弧軌道上を走行する二輪台車の運動モデルについて説明する。図13に示すように、右、左車輪の速度をそれぞれv、vとするとロボット中心の速度vは次のように表せる。
v=(v+v)/2
また回転半径ρはトラッド幅Tを用いて次のように表せる。
ρ=T(v+v)/(v-v
すなわちロボットの中心速度vと回転半径ρを決めれば、左右の車輪の回転速度を一意に決定できる。
しがって、ロボット制御部140は、床面作業ロボット14を次の目標位置へ移動させる際には、円弧軌道上を走行させるように、上記の運動モデルに従って、移動駆動モータ14Cを制御する。
第2実施形態に係る作業システムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
以上説明したように、第2実施形態の作業システムは、旋回と走行とを同時に可能な床面作業ロボットを、複数の作業点へ移動させる際の最適な移動経路を、簡易な計算で決定することができる。また、各作業点まで順次移動して作業を行う床面作業ロボットにおいて、移動経路を最適化することにより、全体の作業時間を短くすることができる。
<シミュレーション例>
本発明の第1実施形態の効果を示すために行ったシミュレーション結果について説明する。一例として、上記第1実施形態の床面作業ロボットがそれぞれ図14(A)~(C)に示す3つのシナリオ上で作業をすることを想定して、各作業点を1回ずつ移動する際のコスト関数の値の総和を計算する。各図中の小さい黒丸が作業点を表している。床面作業ロボットの前進後退直進速度Vを100mm/sec、旋回角速度ωを10deg/secに固定し、図15に示す5つの経路探索手法を用いて、各シナリオにおける準最適経路および総コストを計算した。また各作業点間の移動及び旋回に要するコストのみを考慮し、各作業点における実際の作業時間は0としている。更に従来手法との比較のために、STEP2において、床面作業ロボットの姿勢を考慮せず、ある作業点から別の作業点へ移動する際の距離のみをコストとして算出したコスト行列を用いて探索した準最適経路に対して、総移動時間を算出した。各シナリオの説明を以下に示す。
(シナリオ1)
作業点:全60点(1000mm間隔のグリッド状に配置)
レーザ装置設置座標:(0,0)
床面作業ロボットの初期座標:(5000,10000)
(シナリオ2)
作業点:全196点(図面上の間仕切り壁位置を示す位置に墨出しを行う作業を想定)
レーザ装置設置位置:(0,0)
床面作業ロボットの初期座標:(1800,5200)
(シナリオ3)
作業点:全350点(図面上の間仕切り壁位置を示す位置に墨出しを行う作業を想定)
レーザ装置設置位置:(0,0)
床面作業ロボットの初期座標:(0,9667.5)
シナリオ1において、第1実施形態で説明した手法(以下、発明手法と称する。)と従来手法によって得られた総作業時間と算出に要した時間を図16に示し、移動経路を図17に示す。
シナリオ2において、第1実施形態で説明した発明手法と従来手法によって得られた総作業時間と算出に要した時間を図18に示し、移動経路を図19に示す。
シナリオ3において、第1実施形態で説明した発明手法と従来手法によって得られた総作業時間と算出に要した時間を図20に示し、移動経路を図21に示す。
経路探索手法によって異なるが、シナリオ1では、従来手法に比べて5.0%~17.8%の移動時間を削減できており、シナリオ2では、従来手法に比べて2.7%~7.3%の移動時間を削減できており、シナリオ3では、従来手法に比べて4.0%~7.3%の移動時間を削減できている。このように、床面作業ロボットに、第1実施形態の手法を適用した場合の幾つかのシミュレーションを実施した結果、各作業点における姿勢を考慮せず、作業点間の距離のみを考慮に入れた従来手法に比べて、2.7%~17.8%の作業時間を削減できることを確認した。
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、上記各実施形態では、作業システムの構成が、図1及び図2に示されるような場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ロボット制御機器14Aは、床面作業ロボット14に搭載せずに、外部装置として構成するようにしてもよい。また、目標位置記憶部141及びレーザ制御部12Aに関しても、レーザ装置12に搭載せずに、外部装置として構成するようにしてもよい。この場合には、レーザ装置12及び床面作業ロボット14は、外部装置との間の通信処理によって制御が行われる。
また、上記各実施形態においては、床面作業部がペンホルダー18B及びペン18Cである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ペンホルダー18B及びペン18Cを、床面への削孔装置又は床面へのピン打ち装置に変更するようにしてもよい。これにより、床面の穴あけ又はピン打ちを行うことができる。
また、移動体が、図1及び図2に示されるような床面作業ロボット14である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。作業機構の動作について予め定められた制約がある床面作業ロボットであれば、床面作業ロボット14とは異なる構成であってもよい。例えば、カメラ14Bの代わりに、プリズム等のレーザマーカを用いても良い。また、可動範囲が狭い構成であったり、目標位置における床面作業ロボットの方向に制約が生じるものであれば、本発明の適用が可能である。また、床面作業以外を目的とした移動体に、本発明を適用してもよい。
また、上記ではプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体の何れかに記録されている形態で提供することも可能である。
10 作業システム
12 レーザ装置
14 床面作業ロボット
14A ロボット制御機器
140 ロボット制御部
141 目標位置記憶部
142 ロボット通信部
143 コスト関数計算部
144 移動経路決定部

Claims (2)

  1. 旋回と直進又は後退である走行とを個別に行う移動体を、複数の目標位置の各々へ移動させる際の移動経路を決定する移動経路決定装置であって、
    前記目標位置のペアの各々に対し、前記ペアの一方を移動開始点とし、他方を到着点とした際の、前記移動開始点での旋回角度、直進又は後退の移動距離、及び前記到着点での旋回角度を用いて表されるコスト関数の値を計算するコスト関数計算部と、
    前記計算された前記コスト関数の値の総和が小さくなるような前記移動経路を決定する移動経路決定部と、
    を含み、
    前記移動体は、
    光拡散板と床面に対する作業を行うための床面作業部を含んで構成され、かつ移動可能な作業機構と、
    前記光拡散板の画像を撮像する撮像部と、
    前記決定された移動経路に沿って、前記作業機構を移動させると共に、前記撮像部によって撮像された前記光拡散板の画像に基づいて、前記床面作業部の位置を制御する制御部と、
    を備え、
    前記コスト関数計算部は、前記目標位置のペアの各々に対し、前記ペアの一方を移動開始点とし、他方を到着点とし、前記移動開始点及び前記到着点の各々において、前記移動体の基準方向である前記光拡散板の法線方向が、予め定められた方向と一致するように移動する際の前記コスト関数の値を計算し、
    前記移動経路決定部は、前記作業機構の動作について予め定められた制約を満たすように前記移動経路を決定する移動経路決定装置。
  2. 前記コスト関数計算部は、予め定められた一定速度又は時間的に変動する速度を更に用いて表される前記コスト関数の値を計算する請求項記載の移動経路決定装置。
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