(本開示の一形態を得るに至った経緯)
一般的に膜電極接合体の形状変化は、接合材料同士の線膨張係数が異なることにより生じる。ここで、線膨張係数とは、JISR1618ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法にて定められている線膨張率(K-1)にあたる。例えば、固体電解質材料で使用される部分安定ジルコニア(YSZ)、ランタンガレート系酸化物、バリウムジルコネート系酸化物、バリウムセリウム系酸化物のセラミックス材料は、線膨張係数8~11×10-6/Kと小さく、電極(燃料極)で一般的に用いられるニッケル、鉄、コバルト、パラジウムなどの金属は、線膨張係数11~20×10-6/Kと大きい。また、これらの金属の酸化物も、上記に挙げたセラミックス材料より線膨張係数が大きく、10~20×10-6/K程度である。例えば、NiOは、14×10-6/K程度である。
また、電極(空気極)で一般的に用いられるニッケル、鉄、コバルト、ランタンなどの金属も、線膨張係数11~20×10-6/Kと大きい。また、これらの金属酸化物も、上記に挙げたセラミックス材料より線膨張係数が大きく、10~20×10-6/K程度である。例えば、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物は、15~18×10-6/K程度である。
したがって、金属または金属酸化物とセラミックスとの複合材料から構成される電極材料の線膨張係数は、固体電解質材料の線膨張係数よりも大きくなる。
ところで、平板型セルの形状は、昇温過程では溶媒、バインダー、可塑剤などを飛ばしているため形状は変化せず、焼結温度においてフラットである。そこから降温することで、より線膨張係数が大きくなる燃料極の方が、固体電解質膜よりも体積変化が大きくなり、例えば、燃料極の上に固体電解質膜が積層された構成では、燃料極は上に凸に反る。このため、特許文献1では、接合材料間の線膨張係数差を小さくするため、支持体となる電極(特許文献1では燃料極)と固体電解質膜との間において線膨張係数が中間になる層を設けることで反りの低減を行っている。
しかしならが、特許文献1では、セルの焼結時における反りの緩和および異種材料間の境界面での熱応力緩和についてのみ検討しており、実際のセルの動作環境での反り、および熱応力等については十分な検討がなされていないことを本発明者らは見出した。なお、動作環境とは、動作温度までの昇温過程、還元処理過程、集電部材による締結状態を指す。実際に、還元処理過程で反り形状は変化するため、上記の動作環境下における割れ制御を考える必要がある。ここで、還元処理とは、例えば、特許文献1における燃料極の酸化ニッケルを金属ニッケルにすることである。
つまり、特許文献1のように線膨張係数を制御することで焼結時の反りの低減を行っても、酸化ニッケルの還元処理など動作環境下における体積収縮により、反り量は増大し、割れまたはクラックの原因となることが想定される。
また、固体電解質層と燃料極とを備えた上記した膜電極接合体と同様に、固体電解質膜と空気極とを備えた膜電極接合体においても、接合材料同士の線膨張係数が異なることに起因して膜電極接合体の形状変化が生じる。
空気極材料には、酸素還元活性と電気伝導性を両立する材料が使用されており、一般的な空気極材料としては、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(LSCF)、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物(LSC)、ランタンストロンチウム鉄複合酸化物(LSF)、ランタンストロンチウムマンガン複合酸化物(LSM)、バリウムストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(BSCF)といった酸化物が挙げられる。これらの酸化物は、線膨張係数が11~23×10-6/K程度と、固体電解質材料の線膨張係数よりも大きくなる。
したがって、固体電解質膜と空気極とを備えた膜電極接合体では、空気極は、固体電解質膜よりも昇降温度時における体積変化が大きくなり、それにより膜電極接合体の反りが生じて割れやクラックの原因となる。さらには固体電解質膜と空気極との間での剥離の原因となる。
この固体電解質膜と空気極とを備える膜電極接合体で生じる形状変化に対する対策として、例えば、空気極における特に電解質層との隣接部分(すなわち、界面近傍)において、酸素還元活性と電気伝導性とを両立する材料と、電解質材料と、の混合物を用いることで、固体電解質膜と空気極との線膨張係数差を低減することが考えらえる。しかしながら、空気極としての酸素還元活性および電気伝導性を維持する観点から、電解質材料の混合による線膨張係数差の低減には限界があることを本発明者等は見出した。
また、上記の線膨張係数の差によるセルの形状変化を抑制するためには固体電解質膜自身によって膜電極接合体の構造を支持する構成が望ましいが、このように構成すると、固体電解質膜の膜厚を増加させることとなる。固体電解質材料のイオン伝導率は電極材料と比して乏しい。このため、固体電解質膜の膜厚の増加は、結果として電池性能の低下を招くこととなる。
ところで、電極支持型の膜電極接合体の電極は、例えば、ニッケルと固体電解質材料との混合物で構成することができ、電気伝導、イオン伝導、ガス拡散能、および膜電極接合体の構造支持という4つの機能を担保する。
そこで、本発明者らは、線膨張係数差による反りを抑制するために、これら4つの電極の機能のうち、少なくとも構造支持を担保する機能を他の機能から独立させた構造とすることで膜電極接合体の形状変化を抑制することができることを見出した。つまり、電極において、構造支持を担保する部位(以下、構造支持部と称する。)を、固体電解質膜と同等の線膨張係数とすることで、動作環境においてもセルの反りを抑制することができることを見出した。
具体的には、電極を、上記した構造支持部と、電気伝導、イオン伝導、およびガス拡散能を担う部材とから構成する。この電気伝導、イオン伝導、およびガス拡散能のうちガス拡散能を担う部材として、構造支持部材において、反応ガスの流通経路と固体電解質膜との間を連通させて、反応ガスを流入させる複数の孔部を設ける。また、電気伝導およびイオン伝導を担う部材として、孔部内に電気伝導性およびイオン伝導性を有する充填材を設ける構成とする。例えば、電極が燃料極である場合、孔部内に流入した水素含有ガス中の水素を酸化させるために、孔部内には水素酸化活性および電気伝導性を有する充填材を充填させ、電極が空気極である場合、孔部内に流入した酸化剤ガス中の酸素を還元させるために、孔部内には酸素還元活性および電気伝導性を有する充填材を充填させた構成とすることを見出した。この構成により、動作環境において膜電極接合体の形状変化を抑制することができる。また、水素酸化活性および電気伝導性、または酸素還元活性および電気伝導性を促進することができる。
さらにこの構成について鋭意検討した結果、本発明者らは、膜電極接合体の性能を向上させるためには、複数の孔部により担う、ガス拡散性を検討する必要があることを見出した。特に、反応ガス流通方向の下流側において、ガス拡散性を高めることで濃度過電圧を低減でき、膜電極接合体の性能を向上させることができるという知見を得た。
上記本発明者らの知見は、これまで明らかにされていなかったものであり、膜電極接合体の反りの課題を解決するものである。さらには、反応ガス流通方向の下流側における濃度過電圧に起因した性能低下の課題を解決するものでもある。本開示では、具体的には以下に示す態様を提供する。
本開示の第1の態様に係る膜電極接合体は、電解質材料を含む固体電解質膜と、反応ガスと接触する電極とを備えた膜電極接合体であって、前記電極は、セラミックス部材で構成された構造支持部と、前記構造支持部において前記反応ガスと接触する境界面から前記固体電解質膜側に向かって延伸し、少なくとも水素酸化活性、酸素還元活性、プロトン還元活性、水蒸気分解活性、および酸化物イオン酸化活性のいずれか1つを有する充填材が充填されている孔部と、を備える。
上記構成によると、電極がセラミックス部材で構成された構造支持部を備えるため、膜電極接合体の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、動作環境において、膜電極接合体における反りの発生を抑制することができる。
また、電極は充填材が充填された孔部を備えるため、充填材が水素酸化活性を有する場合は水素の酸化を、酸素還元活性を有する場合は酸素の還元を、プロトン還元活性を有する場合はプロトンの還元を、水蒸気分解活性を有する場合は水蒸気の分解を、酸化物イオン酸化活性を有する場合は酸化物イオンの酸化を促進させることができる。
よって、本開示の第1の態様に係る膜電極接合体は、動作環境においても、形状変化が生じることを抑制することができるという効果を奏する。
なお、「境界面」と本明細書中の「第一境界面」とは、同義である。
本開示の第2の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1の態様において、前記反応ガスは、水素含有ガスであり、前記充填材は、水素酸化活性および電気伝導性を有してもよい。
上記構成によると、充填材が水素酸化活性および電気伝導性を有しているため、電極は水素の酸化を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。
なお、本開示の第2の態様に係る膜電極接合体では、前記孔部は、前記境界面に設けられ、前記反応ガスとして前記水素含有ガスが流入する第一開口部と、前記第一開口部とは反対側となる前記固体電解質膜側の端部に設けられた第二開口部とを有する構成であってもよい。
この構成により第一開口部および第二開口部を有するため、第一開口部を介して水素が孔部内に流入することができる。また、孔部内には充填材が充填されている。このため、充填材の表面で水素が酸化し、プロトンと電子とに分かれる。そして、プロトンを第二開口部を介して電極から固体電解質膜に向かって移動させるとともに、電子を電極の外部に取り出すことができる。
このため、本開示の第2の態様に係る膜電極接合体を、例えば、燃料電池の電極(すなわち、アノード)として用いた場合、発電性能を担保することができる。
さらにまた、本開示の第2の態様に係る膜電極接合体では、前記孔部は、第一孔部と、第二孔部と、前記第一孔部と前記第二孔部とを連通させる連通路と、を備える構成であってもよい。
上記構成によると連通路を備えるため、水素含有ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い水素酸化活性、電気伝導性を有することができる。また、第一孔部または第二孔部の経路中において、なんらかの不具合が生じて水素含有ガスの流通が阻害されたとしても連通路を介して別ルートで流通させることができる。このため、電極は水素酸化活性、および電気伝導性を維持することができる。
本開示の第3の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1または第2の態様において、前記充填材は、Niを含む化合物であってもよい。
上記構成によると、充填材がNiを含む化合物であるため、より高い水素酸化活性と電気伝導性を有することができる。
本開示の第4の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1から第3のいずれか1つの態様において、前記充填材は、サーメットであってもよい。
上記構成によると、充填材がサーメットであるため、水素酸化の反応場を増やすことができる。このため、より高い水素酸化活性を有することができる。
なお、本開示の第3または第4の態様に係る膜電極接合体では、前記充填材は、多孔体であってもよい。
上記構成によると、充填材が多孔体であるため、反応に寄与する水素含有ガスが孔部を流通しやすくなる。このため、より高い発電性能を有することができる。
さらにまた、本開示の第2から第4の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記構造支持部は、前記電解質材料を含む前記セラミックス部材から構成されてもよい。
上記構成によると、構造支持部は、セラミックス部材が電解質材料を含むため、構造支持部の線膨張係数と固体電解質膜の線膨張係数とが近くなる。このため、動作環境において反りの発生を抑制することができる。
本開示の第5の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1の態様において、前記反応ガスは、酸化剤ガスであり、前記充填材は、酸素還元活性および電気伝導性を有してもよい。
上記構成によると、充填材が酸素還元活性および電気伝導性を有しているため、電極は酸素の還元を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。
なお、本開示の第5の態様に係る膜電極接合体では、前記孔部は、前記境界面に設けられ、前記反応ガスとして前記酸化剤ガスが流入する第一開口部と、前記第一開口部とは反対側となる前記固体電解質膜側の端部に設けられた第二開口部とを有する構成であってもよい。
上記構成によると第一開口部および第二開口部を有するため、第一開口部を介して酸化剤ガス(酸素)が孔部内に流入し孔部内を移動することができる。また、孔部内には充填材が充填されている。このため、充填材表面で還元され、第二開口部近傍に伝導してきた酸素と、固体電解質膜を通過して移動してきたプロトンと、外部回路を経て電極に到達した電子とによって水が生成される。
このため、本開示の第5の態様に係る膜電極接合体を、例えば、燃料電池の電極(すなわち、カソード)として用いた場合、発電性能を担保することができる。
また、本開示の第5の態様に係る膜電極接合体では、前記孔部は、第一孔部と、第二孔部と、前記第一孔部と前記第二孔部とを連通させる連通路と、を備える構成であってもよい。
上記構成によると連通路を備えるため、酸化剤ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い酸素還元活性、電気伝導性を有することができる。また、第一孔部または第二孔部の経路中において、なんらかの不具合が生じて酸化剤ガスの流通が阻害されたとしても連通路を介して別ルートで流通させることができる。このため、電極は酸素還元活性、および電気伝導性を維持することができる。
さらにまた、本開示の第5の態様に係る膜電極接合体は、前記充填材は、多孔体であってもよい。
上記構成によると、充填材が多孔体であるため、反応に寄与する酸化剤ガスが孔部を流通しやすくなる。このため、より高い発電性能を有することができる。
本開示の第6の態様に係る膜電極接合体は、上記した第5の態様において、前記充填材は、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含んでもよい。
上記構成によると、孔部に充填される充填材は、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物であるため、高い酸素還元活性と電気伝導性とを有することができる。
本開示の第7の態様に係る膜電極接合体は、上記した第5の態様において、前記充填材は、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物、ランタンストロンチウム鉄複合酸化物、およびランタンニッケル鉄複合酸化物から選ばれる1種類以上の化合物であってもよい。
上記構成によると、孔部に充填される充填材は、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物、ランタンストロンチウム鉄複合酸化物、およびランタンニッケル鉄複合酸化物から選ばれる1種類以上の化合物であるため、燃料電池などの動作温度となる600度付近において、高い酸素還元活性ならびに電気伝導性を有することができる。
なお、本開示の第5から第7の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記構造支持部は、前記電解質材料を含むセラミックス部材から構成されてもよい。
上記構成によると、構造支持部は、セラミックス部材が電解質材料を含むため、構造支持部の線膨張係数と固体電解質膜の線膨張係数とが近くなる。このため、動作環境において反りの発生を抑制することができる。
本開示の第8の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1の態様において、前記構造支持部は、前記境界面において、単位面積あたりの前記孔部の開口面積が異なる領域を有しており、前記反応ガスの流通方向において上流側となる領域の単位面積あたりの前記孔部の開口面積を第一面積比とし、下流側となる領域の単位面積あたりの前記孔部の開口面積を第二面積比としたとき、第一面積比<第二面積比の関係を満たしてもよい。
上記構成によると、電極が構造支持部を備えるため、膜電極接合体の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、動作環境において、膜電極接合体における反りの発生を抑制することができる。
また、電極は、構造支持部において充填材が充填された孔部を有し、構造支持部における反応ガスとの境界面において、単位面積あたりの孔部の開口面積が、第一面積比<第二面積比の関係を満たすため、反応ガス流通方向の下流側の領域における濃度過電圧を低減させることができる。このため、下流側の領域の性能低下を抑制し、性能の向上を図ることができる。
よって、動作環境においても、形状変化が生じることを抑制するとともに性能を向上させることができるという効果を奏する。
なお、上記した単位面積当たりの孔部の開口面積とは、孔部を含む所定の領域における、単位面積当たりに含まれる孔部すべての開口面積の割合を意味する。したがって、第一面積比は、境界面における上流側の領域に存在する孔部の開口面積の合計を上流側の領域の面積(すなわち、「上流側の領域に存在する孔部の開口面積の合計+上流側の領域における構造支持部の面積」)で除することで求めることができる。一方、第二面積比は、境界面における下流側の領域に存在する孔部の開口面積の合計を下流側の領域の面積(すなわち、「下流側の領域に存在する孔部の開口面積の合計+下流側の領域における構造支持部の面積」)で除することで求めることができる。
本開示の第9の態様に係る膜電極接合体は、上記した第8の態様において、前記上流側となる領域と前記下流側となる領域との間の領域における単位面積あたりの前記孔部の開口面積を第三面積比としたとき、第一面積比<第三面積比<第二面積比の関係を満たす構成であってもよい。
上記構成によると、単位面積あたりの孔部の開口面積が、第一面積比<第三面積比<第二面積比の関係を満たすため、反応ガス流通方向の下流側の領域に加えて、上流側と下流側との間の領域においてもガス拡散効果を促進することができる。このため、下流側の領域ならびに上流側と下流側との間の領域において濃度過電圧を低減させることができ、性能低下を抑制することができる。
本開示の第10の態様に係る膜電極接合体は、上記した第8の態様において、前記上流側となる領域と前記下流側となる領域との間の領域における単位面積あたりの前記孔部の開口面積を第三面積比としたとき、第三面積比<第一面積比<第二面積比の関係を満たす構成であってもよい。
上記構成によると、単位面積あたりの孔部の開口面積が、第三面積比<第一面積比<第二面積比の関係を満たすため、反応ガス流通方向の下流側の領域においてガス拡散効果を促進することができる。このため、下流側の領域において濃度過電圧を低減させることができ、性能低下を抑制することができる。
ここで、本開示の膜電極接合体が例えば燃料電池に用いられた場合、反応ガス流通方向の上流側と下流側との間の領域の温度が、他の領域に比べて高くなる。第三面積比が第一面積比および第二面積比よりも小さくなる関係にあるため、上流側と下流側との間の領域ではガス拡散性が抑制される。このため、上流側と下流側との間の領域は、他の領域よりも電流が流れにくくなり温度上昇を抑えることができる。
なお、本開示の第8から第10の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記孔部は、第一孔部と、第二孔部と、前記第一孔部と前記第二孔部とを連通させる連通路と、を備える構成であってもよい。
上記構成によると連通路を備えるため、反応ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、反応ガスが水素でかつ、充填材が水素酸化活性および電気伝導性を有している場合、より高い水素酸化活性、電気伝導性を有することができる。一方、反応ガスが酸素でかつ、充填材が酸素還元活性および電気伝導性を有している場合、より高い酸素還元性、電気伝導性を有することができる。
また、第一孔部または第二孔部の経路中において、なんらかの不具合が生じて反応ガスの流通が阻害されたとしても連通路を介して別ルートで流通させることができる。このため、電極は水素酸化活性と電気伝導性、あるいは酸化還元性と電気伝導性を維持することができる。
また、本開示の第8から第10の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記充填材は、多孔体であってもよい。
上記構成によると、充填材が多孔体であるため、反応に寄与する反応ガスが孔部を流通しやすくなる。このため、より高い発電性能を有することができる。
また、本開示の第8から第10の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記充填材が、酸素還元活性と電気伝導性とを有する場合、前記充填材は、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物であってもよい。
上記構成によると、孔部に充填される充填材は、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物である。このため、高い酸素還元活性と電気伝導性を有することができる。
また、本開示の第8から第10の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記充填材が、水素酸化活性と電気伝導性とを有する場合、前記充填材は、Niを含む化合物である。
上記構成によると、孔部に充填される充填材は、Niを含む化合物であるため、より高い水素酸化活性と電気伝導性を有することができる。
さらにまた、本開示の第8から第10の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記充填材は、サーメットであってもよい。
上記構成によると、充填材がサーメットであるため、水素酸化の反応場を増やすことができ、より高い水素酸化活性を有することができる。
さらにまた、本開示の第8から第10の態様のいずれか1つの態様に係る膜電極接合体では、前記構造支持部は、前記電解質材料を含むセラミックス部材から構成されてもよい。
上記構成によると、構造支持部は、セラミックス部材が電解質材料を含むため、構造支持部の線膨張係数と固体電解質膜の線膨張係数とが近くなる。このため、動作環境において反りの発生を抑制することができる。
本開示の第11の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1から第10の態様のいずれか1つの態様において、前記孔部は、前記境界面に設けられ、前記反応ガスが流入する第一開口部と、前記第一開口部とは反対側となる固体電解質膜側の端部に設けられた第二開口部とを有する構成であってもよい。
上記構成によると第一開口部を介して反応ガスが孔部内に流入することができる。また、孔部内には充填材が充填されている。
このため、本開示の第11の態様に係る膜電極接合体を、例えば、燃料電池の電極として用いた場合、発電性能を担保することができる。
本開示の第12の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1から第11の態様のいずれか1つの態様において、前記孔部は、第一孔部と、第二孔部と、前記第一孔部と前記第二孔部とを連通させる連通路と、を備える構成であってもよい。
上記構成によると連通路を備えるため、反応ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、少なくともより高い水素酸化活性、より高い酸素還元活性、より高いプロトン還元活性、より高い水蒸気分解活性、およびより高い酸化物イオン酸化活性のいずれか1つを有することができる。
また、第一孔部または第二孔部の経路中において、なんらかの不具合が生じて反応ガスの流通が阻害されたとしても連通路を介して別ルートで流通させることができる。このため、電極は、少なくとも水素酸化活性、酸素還元活性、プロトン還元活性、水蒸気分解活性、および酸化物イオン酸化活性のいずれか1つを維持することができる。
本開示の第13の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1から第12の態様のいずれか1つの態様において、前記充填材は、多孔体であってもよい。
上記構成によると、充填材が多孔体であるため、反応に寄与する反応ガスが孔部を流通しやすくなる。このため、より高い発電性能を有することができる。
本開示の第14の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1の態様において、前記反応ガスは、水素含有ガスおよび酸化剤ガスであり、前記電極は、水素含有ガスと接触する燃料極と、酸化剤ガスと接触する空気極とであって、前記空気極、前記固体電解質膜および前記燃料極がこの順に積層されており、前記燃料極は、前記構造支持部として、燃料極側構造支持部と、前記孔部として、前記燃料極側構造支持部において前記水素含有ガスと接触する燃料極側境界面から前記固体電解質膜側に向かって延伸し、水素酸化活性および電気伝導性を有する燃料極側充填材が充填されている燃料極側孔部と、を有し、前記空気極は、前記構造支持部として、空気極側構造支持部と、前記孔部として、前記空気極側構造支持部において前記酸化剤ガスと接触する空気極側境界面から前記固体電解質膜側に向かって延伸し、酸素還元活性および電気伝導性を有する空気極側充填材が充填されている空気極側孔部と、を有する構成であってもよい。
上記構成によると、燃料極が燃料極側構造支持部を、空気極が空気極側構造支持部をそれぞれ備えるため、燃料極側および空気極側の両方で膜電極接合体の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、動作環境において、膜電極接合体における反りの発生を抑制することができる。
また、燃料極は、燃料極側充填材が充填された燃料極側孔部を、空気極は、空気極側充填材が充填された空気極側孔部をそれぞれ備える。このため、燃料極において水素の酸化を促進させるとともに、電気伝導性を担保し、空気極において酸素の還元を促進させるとともに、電気伝導性を担保することができる。
よって、本開示の第1の態様に係る膜電極接合体は、動作環境においても、形状変化が生じることを抑制することができるという効果を奏する。
なお、「燃料極側境界面」と本明細書中の「第一燃料極側境界面」とは、同義である。
また、「空気極側境界面」と本明細書中の「第一空気極側境界面」とは、同義である。
本開示の第15の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14の態様において、前記燃料極側孔部は、前記燃料極側境界面に設けられ、前記水素含有ガスが流入する第一燃料極側開口部と、前記第一燃料極側開口部とは反対側となる固体電解質膜側の端部に設けられた第二燃料極側開口部とを有し、前記空気極側孔部は、前記空気極側境界面に設けられ、前記酸化剤ガスが流入する第一空気極側開口部と、前記第一空気極側開口部とは反対側となる固体電解質膜側の端部に設けられた第二空気極側開口部とを有する構成であってもよい。
上記構成によると、燃料極側孔部が第一燃料極側開口部および第二燃料極側開口部を有するため、第一燃料極側開口部を介して水素が燃料極側孔部内に流入することができる。また、燃料極側孔部内には燃料極側充填材が充填されている。このため、燃料極側充填材の表面で水素が酸化し、プロトンと電子とに分かれる。そして、プロトンを第二燃料極側開口部を介して燃料極から固体電解質膜に向かって移動させるとともに、電子を燃料極の外部に取り出すことができる。
また、空気極側孔部が第一空気極側開口部および第二空気極側開口部を有するため、第一空気極側開口部を介して酸化剤ガス(酸素)が空気極側孔部内に流入し空気極側孔部内を移動することができる。また、空気極側孔部内には空気極側充填材が充填されている。このため、空気極側充填材の表面で還元され、第二空気極側開口部近傍に伝導してきた酸素と、固体電解質膜を通過して移動してきたプロトンと、外部回路を経て電極に到達した電子とによって水が生成される。
このため、本開示の膜電極接合体を、例えば、燃料電池に用いた場合、発電性能を担保することができる。
本開示の第16の態様に係る膜電極接合体は、上記した第15の態様において、前記燃料極側孔部が有する前記第二燃料極側開口部の周縁と、前記空気極側孔部が有する前記第二空気極側開口部の周縁とは、前記膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、互いに重ならないように配置される構成であってもよい。
ここで動作環境において、第二空気極側開口部および第二燃料極側開口部それぞれの周縁に応力が生じる。
上記構成によると、第二空気極側開口部の周縁と第二燃料極側開口部の周縁とが膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、互いに重ならないように配置されているため、固体電解質膜における特定の領域に応力が集中して作用することを抑制することができる。
よって、膜電極接合体は、反りを抑制し、かつ割れまたはクラックが生じることを防ぐことができる。
本開示の第17の態様に係る膜電極接合体は、上記した第15または第16の態様において、前記膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、前記第二燃料極側開口部の周縁により形成される面内に前記第二空気極側開口部の周縁により形成される面が含まれるように配置される構成であってもよい。
ここで動作環境において、第二開口部および第四開口部それぞれの周縁に応力が生じる。
上記構成によると、膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部の周縁により形成される面内に第二空気極側開口部の周縁により形成される面が含まれるように配置されている。つまり、膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部の周縁と第二空気極側開口部の周縁とが重ならないため、動作環境において、固体電解質膜における特定の領域に応力が集中して作用することを抑制することができる。
さらにまた、平面視したときに第二燃料極側開口部の周縁により形成される面と第二空気極側開口部の周縁により形成される面とが重ならないように両者が離れた位置関係となる構成と比較して、電気化学反応時において、固体電解質膜におけるイオンの拡散長さを短くできる。それゆえ、電気化学反応時の内部抵抗を抑制することができる。
また、第二燃料極側開口部の周縁により形成される面を大きくすることで、水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料の充填領域を広げることができ、水素酸化の反応場や電気伝導パスを増大させることができる。これにより、より高い水素酸化活性、電気伝導性を有することができる。
本開示の第18の態様に係る膜電極接合体は、上記した第15または第16の態様において、前記膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、前記第二空気極側開口部の周縁により形成される面内に前記第二燃料極側開口部の周縁により形成される面が含まれるように配置される構成であってもよい。
ここで動作環境において、第二空気極側開口部および第二燃料極側開口部それぞれの周縁に応力が生じる。
上記構成によると、膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、第二空気極側開口部の周縁により形成される面内に第二燃料極側開口部の周縁により形成される面が含まれるように配置されている。つまり、膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、第二空気極側開口部の周縁と第二燃料極側開口部の周縁とが重ならないため、動作環境において、固体電解質膜における特定の領域に応力が集中して作用することを抑制することができる。
さらにまた、平面視したときに第二空気極側開口部の周縁により形成される面と第二燃料極側開口部の周縁により形成される面とが重ならないように両者が離れた位置関係となる構成と比較して、電気化学反応時において、固体電解質膜におけるイオンの拡散長さを短くできる。それゆえ、電気化学反応時の内部抵抗を抑制することができる。
また、第二空気極側開口部の周縁により形成される面を大きくすることで、酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料の充填領域を広げることができ、酸素還元の反応場や電気伝導パスを増大することができる。これにより、より高い酸素還元活性、電気伝導性を有することができる。
本開示の第19の態様に係る膜電極接合体は、上記した第15の態様において、前記燃料極側孔部が有する前記第二燃料極側開口部の周縁と、前記空気極側孔部が有する前記第二空気極側開口部の周縁とは、前記膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、少なくとも一部が互いに重なるように配置される構成であってもよい。
上記構成によると、燃料極側孔部および空気極側孔部を配置する際、膜電極接合体の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部の周縁と第二空気極側開口部の周縁とが少なくとも一部が互いに重なってもよいため、燃料極側孔部および空気極側孔部それぞれの配置の自由度が大きくなり、それぞれ多数形成することができる。それ故、燃料極における燃料極側孔部、ならびに空気極における空気極側孔部それぞれの占有面積を広くとることができる。
したがって、酸素還元の反応場および電気伝導パスを広げたり、水素酸化の反応場および電気伝導パスを広げたりすることができ、より高い酸素還元活性、水素酸化活性、および電気伝導性を有することができる。
本開示の第20の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14から第19の態様のいずれか1つの態様において、前記燃料極側孔部は、第一燃料極側孔部と、第二燃料極側孔部と、前記第一燃料極側孔部と前記第二燃料極側孔部とを連通させる燃料極側連通路と、を備える構成であってもよい。
上記構成によると燃料極側連通路を備えるため、水素含有ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い水素酸化活性、電気伝導性を有することができる。また、第一燃料極側孔部または第二燃料極側孔部の経路中において、なんらかの不具合が生じて水素含有ガスの流通が阻害されたとしても燃料極側連通路を介して別ルートで流通させることができる。このため、燃料極は水素酸化活性、および電気伝導性を維持することができる。
本開示の第21の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14から第20の態様のいずれか1つの態様において、前記空気極側孔部は、第一空気極側孔部と、第二空気極側孔部と、前記第一空気極側孔部と前記第二空気極側孔部とを連通させる空気極側連通路と、を備える構成であってもよい。
上記構成によると空気極側連通路を備えるため、酸化剤ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い酸素還元活性、電気伝導性を有することができる。また、第一空気極側孔部または第二空気極側孔部の経路中において、なんらかの不具合が生じて酸化剤ガスの流通が阻害されたとしても空気極側連通路を介して別ルートで流通させることができる。このため、空気極は酸素還元活性、および電気伝導性を維持することができる。
本開示の第22の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14から第21の態様のいずれか1つの態様において、前記燃料極側充填材は、Niを含んでもよい。
上記構成によると、燃料極側充填材がNiを含むため、より高い水素酸化活性と電気伝導性を有することができる。
本開示の第23の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14から第22の態様のいずれか1つの態様において、前記燃料極側充填材は、サーメットであってもよい。
上記構成によると、空気極側充填材がサーメットであるため、水素酸化の反応場を増やすことができる。このため、より高い水素酸化活性を有することができる。
本開示の第24の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14から第23の態様のいずれか1つの態様において、前記空気極側充填材は、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物であってもよい。
上記構成によると、孔部に充填される充填材は、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物であるため、高い酸素還元活性と電気伝導性を有することができる。
本開示の第25の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14から第24の態様のいずれか1つの態様において、前記燃料極側充填材および前記空気極側充填材のうち少なくとも一方は、多孔体であってもよい。
上記構成によると、燃料極側充填材および空気極側充填材の少なくとも一方が多孔体である。このため、燃料極側充填材が多孔体である場合、反応に寄与する水素含有ガスが燃料極側孔部を流通しやすくなる。また、空気極側充填材が多孔体である場合、反応に寄与する酸化剤ガスが空気極側孔部を流通しやすくなる。このため、より高い発電性能を有することができる。
本開示の第26の態様に係る膜電極接合体は、上記した第14から第25の態様のいずれか1つの態様において、前記燃料極側構造支持部および空気極側構造支持部のうち少なくとも一方は、前記電解質材料を含む前記セラミックス部材から構成されてもよい。
上記構成によると、燃料極側構造支持部および空気極側構造支持部のうち少なくとも一方は、セラミックス部材が電解質材料を含むため、線膨張係数を固体電解質膜の線膨張係数に近づけることができる。このため、動作環境において反りの発生を抑制することができる。
本開示の第27の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1から第26の態様のいずれか1つの態様において、前記孔部の空隙の屈曲度が1.5以下であってもよい。
上記構成によると、孔部の空隙の屈曲度が1.5以下であるため、ガス拡散性を向上させることができる。
本開示の第28の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1から第27の態様のいずれか1つの態様において、前記構造支持部の屈曲度が、1以上1.2以下であってもよい。
上記構成によると、構造支持部の屈曲度が、1以上1.2以下であるため、構造支持部の強度を向上させることができる。
本開示の第29の態様に係る膜電極接合体は、上記した第1から第28の態様のいずれか1つの態様において、前記電解質材料は、プロトン伝導性を有していてもよい。
本開示の第30の態様に係る燃料電池は、電解質材料を含む固体電解質膜と、反応ガスと接触する電極とを備えた膜電極接合体であって、前記電極は、セラミックス部材で構成された構造支持部と、前記構造支持部において前記反応ガスと接触する境界面から前記固体電解質膜側に向かって延伸し、少なくとも水素酸化活性、酸素還元活性、プロトン還元活性、水蒸気分解活性、および酸化物イオン酸化活性のいずれか1つを有する充填材が充填されている孔部と、を有する膜電極接合体を備える。
上記構成によると、膜電極接合体が有する電極がセラミックス部材で構成された構造支持部を備えるため、膜電極接合体の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、燃料電池の動作環境において、膜電極接合体における反りの発生を抑制することができる。
また、膜電極接合体が有する電極は充填材が充填された孔部を備えるため、充填材が水素酸化活性を有する場合は水素の酸化を、酸素還元活性を有する場合は酸素の還元を、プロトン還元活性を有する場合はプロトンの還元を、水蒸気分解活性を有する場合は水蒸気の分解を、酸化物イオン酸化活性を有する場合は酸化物イオンの酸化を促進させることができる。
よって、本開示の第30の態様に係る燃料電池は、動作環境においても、形状変化が生じることを抑制することができるという効果を奏する。
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも上記の各態様の一例を示すものである。よって、以下で示される形状、材料、構成要素、および、構成要素の配置位置および接続形態などは、あくまで一例であり、請求項に記載されていない限り、上記の各態様を限定するものではない。また、以下の構成要素のうち、上記の各態様の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。
(第1実施形態)
図1、2を参照して第1実施形態に係る膜電極接合体10の構成を説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る膜電極接合体10を、水素含有ガスと接する面(すなわち、図2における第一燃料極側境界面17)側から見た平面図である。また、図2は、図1に示す膜電極接合体10におけるA-A断面の一例を示す模式図である。
図1、2に示すように、膜電極接合体10は、電解質材料を含む固体電解質膜11と、水素含有ガスと接触する燃料極12とを備える。膜電極接合体10は、例えば、電気化学デバイスを構成するために用いられる部材であり、図1に示すように固体電解質膜11と燃料極12とを積層して構成される。
燃料極12は、セラミックス部材で構成された燃料極側構造支持部14と、燃料極側構造支持部14において水素含有ガスと接触する第一燃料極側境界面17(以下、境界面と称することがある。)から固体電解質膜11側に向かって延伸し、水素酸化活性および電気伝導性を有する燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13と、を備える。そして、燃料極側構造支持部14によって膜電極接合体10の構造を支持する。なお、図2に示すように燃料極側孔部13は、第一燃料極側境界面17から固体電解質膜11側に向かって直線状に延伸している。
固体電解質膜11が含む電解質材料としては、例えば、バリウムジルコニウム酸化物若しくはバリウムセリウム酸化物などのプロトン伝導体、または安定化ジルコニア、ランタンガレート系酸化物、セリア系酸化物などの酸化物イオン伝導体が挙げられる。なお、プロトン伝導体は、イッテルビウムなどのドーパントを含んでいてもよい。いいかえると、バリウムジルコニウム系酸化物、バリウムセリウム系酸化物などであってもよい。
燃料極側構造支持部14は、電解質材料を含むセラミックス部材から構成されている。燃料極側構造支持部14を構成するセラミックス部材には、固体電解質膜11との線膨張係数差が小さいような材料が使用される。なお、ここでいう「線膨張係数差が小さい」とは、例えば、固体電解質膜11との線膨張係数差を2×10-6K-1以下にすることが望ましい。線膨張係数差を小さくすることで、セルの形状変化を抑制することが可能となる。
また、セラミックス部材は緻密体であってもよい。緻密体とは、例えば、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される相対密度が85%以上のことである。緻密体であればセル強度を向上させることができる。
このように、燃料極12は、燃料極側構造支持部14を備えるため、膜電極接合体10の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜11との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、動作環境において膜電極接合体10における反りの発生を抑制することができる。
なお、水素含有ガスは、水素であってもよいし、例えば、メタンガスなどの改質反応により発生する改質ガス、水の電気分解により発生する水蒸気を含む水素ガスなどであってもよい。
燃料極側孔部13は、図2に示すように燃料極側構造支持部14において水素含有ガスと接触する第一燃料極側境界面17に設けられ、水素含有ガスが流入する第一燃料極側開口部16aと、第一燃料極側開口部16aとは反対側となる固体電解質膜11側の端部に設けられた第二燃料極側開口部16bとを有する。図2の例では、第二燃料極側開口部16bは、燃料極側構造支持部14において固体電解質膜11と接する第二燃料極側境界面18に設けられる。
すなわち、燃料極側孔部13の第一燃料極側開口部16aが設けられている第一燃料極側境界面17側には水素含有ガスが流通するガス流路(不図示)が備えられており、このガス流路を流通する水素含有ガスが第一燃料極側開口部16aを介して燃料極側孔部13内に流入する。また、燃料極側孔部13内には後述する燃料極側充填材15が充填されており、燃料極側充填材15の表面で、水素が酸化し、プロトンと電子とに分かれる。そして、プロトンは第二燃料極側開口部16bを介して燃料極12から固体電解質膜11に向かって移動する。また電子は燃料極側孔部13内を移動して燃料極12の外部に取り出される。
また図1に示すように、燃料極側孔部13の開口形状は丸孔であってもよいし、図3に示すように角孔であってもよい。なお、燃料極側孔部13の開口形状は特に限定されない。燃料極側構造支持部14における強度面の観点から丸孔が好適である。図3は、図1に示す膜電極接合体10の変形例を示す図である。
燃料極側孔部13の配列パターンは、図1または図3に示すように、各燃料極側孔部13が並列に配置された並列パターンであってもよいし、千鳥状に配置された千鳥状パターンであってもよい。あるいは、燃料極側孔部13はランダムに配列されてもよい。燃料極側孔部13の形状および配列パターンは、燃料極側構造支持部14が充分な強度を保つとともに、燃料極側孔部13内に充填された燃料極側充填材15によって必要な水素酸化活性と電気伝導性とを得ることができる限り任意である。
燃料極側孔部13の開口寸法は、例えば、丸孔の場合、径寸法が、0.01mmから1mmとし、角孔の場合、一辺の寸法が0.01mmから1mmとしてもよい。また、燃料極側孔部13が燃料極12の主面(すなわち、第一燃料極側境界面17または第二燃料極側境界面18)において占める面積の割合は、燃料極12の主面全体の50%以下、望ましくは30%以下であってもよい。燃料極12の主面における燃料極側孔部13の占有面積が大きいと発電性能は向上する。しかしながら、燃料極12において生じる反りが大きくなる。
また燃料極側孔部13は、燃料極側充填材15によって、水素の酸化を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。なお、燃料極側充填材15は、水素酸化活性および電気伝導性を有した1種類以上の材料から構成されてもよい。例えば、燃料極側充填材15は水素酸化活性および電気伝導性を有した1種類の材料から構成されてもよい。または、燃料極側充填材15は、水素酸化活性を有する材料と、電気伝導性を有する材料とを組み合わせて構成されてもよい。または、燃料極側充填材15は、水素酸化活性と電気伝導性とを有するように、複数の材料からなる化合物によって構成されてもよい。
なお、水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料として、例えば、Ni、Pt、Pd、Irがあげられ、燃料極側充填材15は、望ましくはNiを含む化合物であってもよい。Niは、例えば固体酸化物形燃料電池等の電気化学デバイスの燃料極に使用される、優れた水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料である。
また、燃料極側充填材15は、サーメットであってもよい。サーメットとは、金属とセラミックス材料との混合物であり、たとえば、金属にNi、セラミックス材料に、バリウムジルコニウム酸化物、バリウムセリウム酸化物などのプロトン伝導体、または安定化ジルコニア、ランタンガレート系酸化物、セリア系酸化物などの酸化物イオン伝導体からなるサーメットがあげられる。なお、プロトン伝導体は、イッテルビウムなどのドーパントを含んでいてもよい。いいかえると、バリウムジルコニウム系酸化物、バリウムセリウム系酸化物などであってもよい。サーメットが、例えば、Niと、電解質材料との混合物である場合、水素酸化の反応場の増加により水素酸化活性を向上させることができる。
なお、燃料極側充填材15は、Niを含む多孔体であってもよい。なお、ここでいう多孔体とは、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される空隙率が20%以上のことである。燃料極側充填材15を多孔体にすることで、水素酸化に寄与する水素含有ガスの供給が増加し、水素酸化活性を向上させることが可能となる。
(変形例1)
次に図4を参照して本開示の第1実施形態の変形例1に係る膜電極接合体10の構成について説明する。図4は、本開示の第1実施形態の変形例1に係る膜電極接合体10の断面の一例を示す模式図である。なお、図4に示す膜電極接合体10の断面も、図1に示す膜電極接合体10におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第1実施形態の変形例1に係る膜電極接合体10は、固体電解質膜11および燃料極12を備え、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第1実施形態に係る膜電極接合体10と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図4に示すように第1実施形態の変形例1に係る膜電極接合体10では、燃料極12が、複数の燃料極側孔部13(例えば、第一燃料極側孔部13aおよび第二燃料極側孔部13b)を連通させる燃料極側連通路19をさらに備える点で第1実施形態に係る膜電極接合体10と相違する。
すなわち、膜電極接合体10は、一方の第一燃料極側孔部13aと、他方の第二燃料極側孔部13bとを連通させる燃料極側連通路19を1つ以上有している。この構造によって、第1実施形態の変形例1に係る膜電極接合体10は、水素含有ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い水素酸化活性および電気伝導性を有することができる。また、第一燃料極側孔部13aまたは第二燃料極側孔部13bの経路中において、なんらかの不具合が生じて水素含有ガスの流通が阻害されたとしても燃料極側連通路19を介して別ルートで水素含有ガスを流通させることができる。このため、燃料極12は水素酸化活性および電気伝導性を維持することができる。
なお、図4では燃料極側連通路19内においても燃料極側充填材15が充填された構成となっているが、水素含有ガスの流通経路を確保できればよい場合は必ずしも燃料極側連通路19内に燃料極側充填材15が充填されていなくてもよい。図4に示すように燃料極側連通路19内に燃料極側充填材15が充填された場合、水素酸化活性および電気伝導性を向上させる点で好適である。
(変形例2)
次に図5を参照して本開示の第1実施形態の変形例2に係る膜電極接合体10の構成について説明する。図5は、本開示の第1実施形態の変形例2に係る膜電極接合体10の断面の一例を示す模式図である。なお、図5に示す膜電極接合体10の断面も、図1に示す膜電極接合体10におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第1実施形態の変形例2に係る膜電極接合体10は、固体電解質膜11および燃料極12を備え、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第1実施形態に係る膜電極接合体10と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図5に示すように第1実施形態の変形例2に係る膜電極接合体10が備える燃料極側孔部13は、第1実施形態に係る膜電極接合体10が備える燃料極側孔部13とは、延伸する方向が異なっている。つまり、第1実施形態に係る膜電極接合体10では、燃料極側構造支持部14において、燃料極側孔部13が水素含有ガスと接触する側(すなわち、第一燃料極側境界面17)から固体電解質膜11側(すなわち、第二燃料極側境界面18)に向かって、燃料極12の主面(すなわち、第一燃料極側境界面17または第二燃料極側境界面18)に対して垂直となるように延伸する構成であった。これに対して、第1実施形態の変形例2に係る膜電極接合体10では、燃料極側構造支持部14において、複数の燃料極側孔部13が第一燃料極側境界面17側から第二燃料極側境界面18側に向かって、燃料極12の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成となっている。換言すると複数の燃料極側孔部13が燃料極12の主面に対して垂直な状態から水素含有ガスの流れ方向の下流側に向かって、同様に傾くように延伸した構成となっている。
この構成により、燃料極側孔部13に流入し、燃料極側孔部13内を流れる水素含有ガスの流れの分配を良化させることができる。このため、第1実施形態の変形例2に係る膜電極接合体10は、水素含有ガスの供給の増加により水素酸化活性を向上させることができる。
(変形例3)
次に図6、7を参照して本開示の第1実施形態の変形例3に係る膜電極接合体10の構成について説明する。図6は、本開示の第1実施形態の変形例3に係る膜電極接合体10の断面の一例を示す模式図である。なお、図6に示す膜電極接合体10の断面も、図1に示す膜電極接合体10におけるA-Aで切り出した断面構造とする。また、図7は、図6に示す膜電極接合体10の燃料極12が備える第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとの配置関係を模式的に示す斜視図である。
第1実施形態の変形例3に係る膜電極接合体10は、固体電解質膜11および燃料極12を備え、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第1実施形態に係る膜電極接合体10と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図6、7に示すように第1実施形態の変形例3に係る膜電極接合体10が備える燃料極側孔部13は、第1実施形態に係る膜電極接合体10が備える燃料極側孔部13とは、延伸する方向が異なる。つまり、第1実施形態に係る膜電極接合体10では、燃料極側構造支持部14において、水素含有ガスと接触する側(すなわち、第一燃料極側境界面17)から固体電解質膜11側(すなわち、第二燃料極側境界面18)に向かって、燃料極12の主面(すなわち、第一燃料極側境界面17または第二燃料極側境界面18)に対して垂直となるように燃料極側孔部13が延伸する構成であった。これに対して、第1実施形態の変形例3に係る膜電極接合体10では、図6、7に示すように、燃料極側構造支持部14において、第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとを交差させて互いに連通するように配置する。そして、この配置を複数組み合わせて3次元網目構造を形成しながら、第一燃料極側境界面17側から第二燃料極側境界面18側に向かって燃料極側孔部13が延伸する構成となっている。
なお、図6、7では第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとが互いに交差する構成である。また、さらに別の燃料極側孔部13が第一燃料極側孔部13aおよび第二燃料極側孔部13bそれぞれと交差するように配置されていてもよい。
この構成により、第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとが互いに連通した網目状の構造とすることができる。したがって、水素含有ガスの流通を促進させて水素酸化活性を向上させることができる。また、燃料極側充填材15を密に充填することができるため電気伝導性を向上させることができる。
(変形例4)
次に図8を参照して本開示の第1実施形態の変形例4に係る膜電極接合体10の構成について説明する。図8は、本開示の第1実施形態の変形例4に係る膜電極接合体10の断面の一例を示す模式図である。なお、図8に示す膜電極接合体10の断面も、図1に示す膜電極接合体10におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第1実施形態の変形例4に係る膜電極接合体10は、固体電解質膜11および燃料極12を備え、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第1実施形態に係る膜電極接合体10と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図8に示すように第1実施形態の変形例4に係る膜電極接合体10は、固体電解質膜11と燃料極12との間に燃料極側機能層30がさらに設けられている点で第1実施形態に係る膜電極接合体10と異なる。
燃料極側機能層30は、燃料極側充填材15と同様な水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料から構成された層である。そして燃料極側機能層30は、第二燃料極側境界面18で燃料極12と接し、第三燃料極側境界面31で固体電解質膜11と接するように配置されている。なお、燃料極側機能層30は燃料極側充填材15と同じ材料であってもよいし、異なっている材料であってもよい。
この構成により、水素酸化反応の起きる固体電解質膜11の近傍において、反応場を増加させることができる。このため、水素酸化活性を向上させることができる。
なお、図8では、膜電極接合体10は、複数の燃料極側孔部13が燃料極12の主面に対して垂直となるように延伸した構成となっているがこれに限定されるものではない。例えば、第1実施形態の変形例2に係る膜電極接合体10と同様に、複数の燃料極側孔部13が燃料極12の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成であってもよい。また、第1実施形態の変形例3に係る膜電極接合体10と同様に複数の燃料極側孔部13が交差して形成した3次元網目構造を有する構成であってもよい。
(変形例5)
次に図9を参照して本開示の第1実施形態の変形例5に係る膜電極接合体10の構成について説明する。図9は、本開示の第1実施形態の変形例5に係る膜電極接合体10の断面の一例を示す模式図である。なお、図9に示す膜電極接合体10の断面も、図1に示す膜電極接合体10におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第1実施形態の変形例5に係る膜電極接合体10は、固体電解質膜11および燃料極12を備え、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第1実施形態に係る膜電極接合体10と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図9に示すように第1実施形態の変形例5に係る膜電極接合体10は、燃料極側連通路19を備え、この燃料極側連通路19が第二燃料極側境界面18に沿って配置されている点で第1実施形態に係る膜電極接合体10と異なる。なお、この燃料極側連通路19は、第1実施形態の変形例1に係る膜電極接合体10が備える燃料極側連通路19と同様であるため詳細な説明は省略する。
図9に示すように燃料極側連通路19は、固体電解質膜11と燃料極12との界面をなす第二燃料極側境界面18に沿って配置され、内部には燃料極側充填材15が充填されている。また、燃料極側連通路19の第二燃料極側境界面18の側の壁面は開口し、第二燃料極側開口部16bを形成している。このため、第二燃料極側境界面18に沿って燃料極側連通路19が設けられていない構成と比較して固体電解質膜11と燃料極側充填材15との接触面積を大きくすることができる。それゆえ、水素酸化反応の起きる固体電解質膜11の近傍において反応場を増加させることができ、水素酸化活性を向上させることができる。
(変形例6)
次に図10を参照して本開示の第1実施形態の変形例5に係る膜電極接合体10の構成について説明する。図10は、本開示の第1実施形態の変形例6に係る膜電極接合体10の断面の一例を示す模式図である。なお、図10に示す膜電極接合体10の断面も、図1に示す膜電極接合体10におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第1実施形態の変形例6に係る膜電極接合体10は、固体電解質膜11および燃料極12を備え、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第1実施形態に係る膜電極接合体10と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図10に示すように第1実施形態の変形例6に係る膜電極接合体10では、燃料極12が、複数の燃料極側孔部13を連通させる燃料極側連通路19を有する点と、固体電解質膜11と燃料極12との間に燃料極側機能層30をさらに備える点で第1実施形態に係る膜電極接合体10と相違する。換言すると、第1実施形態の変形例6に係る膜電極接合体10は、第1実施形態の変形例1に係る膜電極接合体10と第1実施形態の変形例4に係る膜電極接合体10とを組み合わせた構成である。なお、燃料極側連通路19については第1実施形態の変形例1において、燃料極側機能層30については第1実施形態の変形例4においてそれぞれ説明したため詳細な説明は省略する。
図10に示すように、第1実施形態の変形例6に係る膜電極接合体10は、燃料極側機能層30を備えるため、水素酸化反応の起きる固体電解質膜11の近傍において、反応場を増加させることができる。このため、水素酸化活性を向上させることができる。また、燃料極側連通路19を備えるため、水素含有ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い水素酸化活性および電気伝導性を有することができる。また、燃料極側孔部13の経路中において、なんらかの不具合が生じて水素含有ガスの流通が阻害されたとしても燃料極側連通路19を介して別ルートで水素含有ガスを流通させることができる。このため、燃料極12は水素酸化活性および電気伝導性を維持することができる。
(第2実施形態)
図11、12を参照して第2実施形態に係る膜電極接合体110の構成を説明する。図11は、本開示の第2実施形態に係る膜電極接合体110を、酸化剤ガスと接する面(すなわち、図12における第一空気極側境界面7)側から見た平面図である。また、図12は、図11に示す膜電極接合体110におけるA-A断面の一例を示す模式図である。
図11、12に示すように、膜電極接合体110は、電解質材料を含む固体電解質膜11と、酸化剤ガスと接触する空気極2とを備える。膜電極接合体110は、例えば、電気化学デバイスを構成するために用いられる部材であり、図11に示すように固体電解質膜11と空気極2とを積層して構成される。
空気極2は、セラミックス部材で構成された空気極側構造支持部4と、空気極側構造支持部4において酸化剤ガスと接触する第一空気極側境界面7(以下、境界面と称することがある。)から固体電解質膜11側に向かって延伸し、酸素還元活性および電気伝導性を有する空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3と、を備える。そして、空気極側構造支持部4によって膜電極接合体10の構造を支持する。なお、図12に示すように空気極側孔部3は、第一空気極側境界面7から固体電解質膜11側に向かって直線状に延伸している。
固体電解質膜11が含む電解質材料としては、例えば、バリウムジルコニウム酸化物若しくはバリウムセリウム酸化物などのプロトン伝導体、または安定化ジルコニア、ランタンガレート系酸化物、セリア系酸化物などの酸化物イオン伝導体が挙げられる。なお、プロトン伝導体は、イッテルビウムなどのドーパントを含んでいてもよい。いいかえると、バリウムジルコニウム系酸化物、バリウムセリウム系酸化物などであってもよい。
空気極側構造支持部4は、電解質材料を含むセラミックス部材から構成されている。空気極側構造支持部4を構成するセラミックス部材には、固体電解質膜11との線膨張係数差が小さいような材料が使用される。なお、ここでいう「線膨張係数差が小さい」とは、例えば、固体電解質膜11との線膨張係数差を2×10-6K-1以下にすることが望ましい。線膨張係数差を小さくすることで、セルの形状変化を抑制することが可能となる。
また、セラミックス部材は緻密体であってもよい。緻密体とは、例えば、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される相対密度が85%以上のことである。緻密体であればセル強度を向上させることができる。
このように、空気極2は、空気極側構造支持部4を備えるため、膜電極接合体110の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜11との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、動作環境において膜電極接合体110における反りの発生を抑制することができる。
なお、酸化剤ガスは、酸素であってもよいし、酸素を含有する例えば空気などのガスであってもよい。
空気極側孔部3は、図12に示すように空気極側構造支持部4において酸化剤ガスと接触する第一空気極側境界面7に設けられ、酸化剤ガスが流入する第一空気極側開口部6aと、第一空気極側開口部6aとは反対側となる固体電解質膜11側の端部に設けられた第二空気極側開口部6bとを有する。図12の例では、第二空気極側開口部6bは、空気極側構造支持部4において固体電解質膜11と接する第二空気極側境界面8に設けられる。
すなわち、空気極側孔部3の第一空気極側開口部6aが設けられている第一空気極側境界面7側には酸素含有ガスが流通するガス流路(不図示)が備えられており、このガス流路を流通する酸化剤ガス(例えば、酸素)が第一空気極側開口部6aを介して空気極側孔部3内に流入する。また、空気極側孔部3内には空気極側充填材5が充填されている。このため、空気極側充填材5の表面で還元され、第二空気極側開口部6b近傍に伝導してきた酸素と、固体電解質膜11を通過して移動してきたプロトンと、外部回路(不図示)を経て空気極2に到達した電子とによって水が生成される。
また図11に示すように、空気極側孔部3の開口形状は丸孔であってもよいし、図13に示すように角孔であってもよい。なお、空気極側孔部3の開口形状は特に限定されない。空気極側構造支持部4における強度面の観点から丸孔が好適である。図13は、図11に示す膜電極接合体10の変形例を示す図である。
空気極側孔部3の配列パターンは、図11または図13に示すように、各空気極側孔部3が並列に配置された並列パターンであってもよいし、千鳥状に配置された千鳥状パターンであってもよい。あるいは、各空気極側孔部3はランダムに配列されてもよい。空気極側孔部3の形状および配列パターンは、空気極側構造支持部4が充分な強度を保つとともに、空気極側孔部3内に充填された空気極側充填材5によって必要な酸素還元活性と電気伝導性とを得ることができる限り任意である。
空気極側孔部3の開口寸法は、例えば、丸孔の場合、径寸法が、0.01mmから1mmとし、角孔の場合、一辺の寸法が0.01mmから1mmとしてもよい。また、空気極側孔部3が空気極2の主面(すなわち、第一空気極側境界面7または第二空気極側境界面8)において占める面積の割合は、空気極2の主面全体の50%以下、望ましくは30%以下であってもよい。空気極2の主面における空気極側孔部3の占有面積が大きいと発電性能は向上する。しかしながら、空気極2において生じる反りが大きくなる。
また空気極側孔部3は、空気極側充填材5によって、酸素の還元を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。なお、空気極側充填材5は、酸素還元活性および電気伝導性を有した1種類以上の材料から構成されてもよい。例えば、空気極側充填材5は酸素還元活性および電気伝導性を有した1種類の材料から構成されてもよい。または、空気極側充填材5は、酸素還元活性を有する材料と、電気伝導性を有する材料とを組み合わせて構成されてもよい。または、空気極側充填材5は、酸素還元活性と電気伝導性とを有するように、複数の材料からなる化合物によって構成されてもよい。
なお、空気極側充填材5を構成する酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料としては、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(LSCF)、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物(LSC)、ランタンストロンチウム鉄複合酸化物(LSF)、ランタンストロンチウムマンガン複合酸化物(LSM)、バリウムストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(BSCF)、サマリウムストロンチウムコバルト複合酸化物(SSC)、ランタンニッケル鉄複合酸化物、ランタンニッケル複合酸化物、バリウムガドリニウムランタンコバルト複合酸化物などが挙げられる。
酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料は、望ましくはランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物がよい。ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物は、例えば固体酸化物形燃料電池等の電気化学デバイスの空気極に使用される、優れた酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料である。
また、空気極側充填材5は、酸素還元または電気伝導性どちらかを有する材料の混合物で構成されてもよい。このような構成の場合、例えば、酸素還元材料としてランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物、電気伝導性材料にランタンストロンチウムマンガン複合酸化物を用いても良い。
さらにまた、空気極側充填材5は、Mn、Fe、Co、Niのいずれか1つの元素を少なくとも含む酸化物の多孔体であってもよい。なお、ここでいう多孔体とは、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される空隙率が20%以上のことである。空気極側充填材5を多孔体にすることで、酸素還元に寄与する酸化剤ガスの供給が増加し、酸素還元活性を向上させることが可能となる。
(変形例1)
次に図14を参照して本開示の第2実施形態の変形例1に係る膜電極接合体110の構成について説明する。図14は、本開示の第2実施形態の変形例1に係る膜電極接合体110の断面の一例を示す模式図である。なお、図14に示す膜電極接合体110の断面も、図11に示す膜電極接合体110におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第2実施形態の変形例1に係る膜電極接合体110は、固体電解質膜11および空気極2を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有している点で、第2実施形態に係る膜電極接合体110と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図14に示すように第2実施形態の変形例1に係る膜電極接合体110では、空気極2が、複数の空気極側孔部3(すなわち、第一空気極側孔部3aおよび第二空気極側孔部3b)を連通させる空気極側連通路9をさらに備える点で第2実施形態に係る膜電極接合体110と相違する。
すなわち、膜電極接合体110は、一方の第一空気極側孔部3aと、他方の第二空気極側孔部3bとを連通させる空気極側連通路9を1つ以上有している。この構造によって、第2実施形態の変形例1に係る膜電極接合体110は、酸化剤ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い酸素還元活性および電気伝導性を有することができる。また、第一空気極側孔部3aまたは第二空気極側孔部3bの経路中において、なんらかの不具合が生じて酸化剤ガスの流通が阻害されたとしても空気極側連通路9を介して別ルートで酸化剤ガスを流通させることができる。このため、空気極2は酸素還元活性および電気伝導性を維持することができる。
なお、図14では空気極側連通路9内においても空気極側充填材5が充填された構成となっているが、酸化剤ガスの流通経路を確保できればよい場合は必ずしも空気極側連通路9内に空気極側充填材5が充填されていなくてもよい。図14に示すように空気極側連通路9内に空気極側充填材5が充填された場合、酸素還元活性および電気伝導性を向上させる点で好適である。
(変形例2)
次に図15を参照して本開示の第2実施形態の変形例2に係る膜電極接合体110の構成について説明する。図15は、本開示の第2実施形態の変形例2に係る膜電極接合体110の断面の一例を示す模式図である。なお、図15に示す膜電極接合体110の断面も、図11に示す膜電極接合体110におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第2実施形態の変形例2に係る膜電極接合体110は、固体電解質膜11および空気極2を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有している点で、第2実施形態に係る膜電極接合体110と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図15に示すように第2実施形態の変形例2に係る膜電極接合体110が備える空気極側孔部3は、第2実施形態に係る膜電極接合体110が備える空気極側孔部3とは、延伸する方向が異なっている。つまり、第2実施形態に係る膜電極接合体110では、空気極側構造支持部4において、空気極側孔部3が酸化剤ガスと接触する側(すなわち、第一空気極側境界面7)から固体電解質膜11側(すなわち、第二空気極側境界面8)に向かって、空気極2の主面(すなわち、第一空気極側境界面7または第二空気極側境界面8)に対して垂直となるように延伸する構成であった。これに対して、第2実施形態の変形例2に係る膜電極接合体110では、空気極側構造支持部4において、複数の空気極側孔部3が第一空気極側境界面7側から第二空気極側境界面8側に向かって、空気極2の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成となっている。換言すると複数の空気極側孔部3が空気極2の主面に対して垂直な状態から酸化剤ガスの流れ方向の下流側に向かって、同様に傾くように延伸した構成となっている。
この構成により、空気極側孔部3に流入し、空気極側孔部3内を流れる酸化剤ガスの流れの分配を良化させることができる。このため、第2実施形態の変形例2に係る膜電極接合体110は、酸化剤ガスの供給の増加により酸素還元活性を向上させることができる。
(変形例3)
次に図16、17を参照して本開示の第2実施形態の変形例3に係る膜電極接合体110の構成について説明する。図16は、本開示の第2実施形態の変形例3に係る膜電極接合体110の断面の一例を示す模式図である。なお、図16に示す膜電極接合体110の断面も、図11に示す膜電極接合体110におけるA-Aで切り出した断面構造とする。また、図17は、図16に示す膜電極接合体110の空気極2が備える第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとの配置関係を模式的に示す斜視図である。
第2実施形態の変形例3に係る膜電極接合体110は、固体電解質膜11および空気極2を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有している点で、第2実施形態に係る膜電極接合体110と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図16、17に示すように第2実施形態の変形例3に係る膜電極接合体110が備える空気極側孔部3は、第2実施形態に係る膜電極接合体110が備える空気極側孔部3とは、延伸する方向が異なる。つまり、第2実施形態に係る膜電極接合体110では、空気極側構造支持部4において、酸化剤ガスと接触する側(すなわち、第一空気極側境界面7)から固体電解質膜11側(すなわち、第二空気極側境界面8)に向かって、空気極2の主面(すなわち、第一空気極側境界面7または第二空気極側境界面8)に対して垂直となるように空気極側孔部3が延伸する構成であった。これに対して、第2実施形態の変形例3に係る膜電極接合体110では、図16、17に示すように、空気極側構造支持部4において、第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとを交差させて互いに連通するように配置する。そしてこの配置を複数組み合わせて3次元網目構造を形成しながら、第一空気極側境界面7から第二空気極側境界面8に向かって空気極側孔部3が延伸する構成となっている。
なお、図16、17では第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとが互いに交差する構成である。また、さらに別の空気極側孔部3が第一空気極側孔部3aおよび第二空気極側孔部3bそれぞれと交差するように配置されていてもよい。
この構成により、第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとが互いに連通した網目状の構造とすることができる。したがって、酸化剤ガスの流通を促進させて酸素還元活性を向上させることができる。また、空気極側充填材5を密に充填することができるため電気伝導性を向上させることができる。
(変形例4)
次に図18を参照して本開示の第2実施形態の変形例4に係る膜電極接合体110の構成について説明する。図18は、本開示の第2実施形態の変形例4に係る膜電極接合体110の断面の一例を示す模式図である。なお、図18に示す膜電極接合体110の断面も、図11に示す膜電極接合体110におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第2実施形態の変形例4に係る膜電極接合体110は、固体電解質膜11および空気極2を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有している点で、第2実施形態に係る膜電極接合体110と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図18に示すように第2実施形態の変形例4に係る膜電極接合体110は、固体電解質膜11と空気極2との間に空気極側機能層20がさらに設けられている点で第2実施形態に係る膜電極接合体110と異なる。
空気極側機能層20は、空気極側充填材5と同様な酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料から構成された層である。そして空気極側機能層20は、第二空気極側境界面8で空気極2と接し、第三空気極側境界面21で固体電解質膜11と接するように配置されている。なお、空気極側機能層20は空気極側充填材5と同じ材料であってもよいし、異なっている材料であってもよい。
この構成により、酸素還元反応の起きる固体電解質膜11の近傍において、反応場を増加させることができる。このため、酸素還元活性を向上させることができる。
なお、図18では、膜電極接合体110は、複数の空気極側孔部3が空気極2の主面に対して垂直となるように延伸した構成となっているがこれに限定されるものではない。例えば、第2実施形態の変形例2に係る膜電極接合体110と同様に、複数の空気極側孔部3が空気極2の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成であってもよい。また、第2実施形態の変形例3に係る膜電極接合体110と同様に複数の空気極側孔部3が交差して形成した3次元網目構造を有する構成であってもよい。
(変形例5)
次に図19を参照して本開示の第2実施形態の変形例5に係る膜電極接合体110の構成について説明する。図19は、本開示の第2実施形態の変形例5に係る膜電極接合体110の断面の一例を示す模式図である。なお、図19に示す膜電極接合体110の断面も、図11に示す膜電極接合体110におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第2実施形態の変形例5に係る膜電極接合体110は、固体電解質膜11および空気極2を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有している点で、第2実施形態に係る膜電極接合体110と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図19に示すように第2実施形態の変形例5に係る膜電極接合体110は、空気極側連通路9を備え、この空気極側連通路9が第二空気極側境界面8に沿って配置されている点で第2実施形態に係る膜電極接合体110と異なる。なお、この空気極側連通路9は、第2実施形態の変形例1に係る膜電極接合体110が備える空気極側連通路9と同様であるため詳細な説明は省略する。
図19に示すように空気極側連通路9は、固体電解質膜11と空気極2との界面をなす第二空気極側境界面8に沿って配置され、内部には空気極側充填材5が充填されている。また、空気極側連通路9の第二空気極側境界面8の側の壁面は開口し、第二空気極側開口部6bを形成している。このため、第二空気極側境界面8に沿って空気極側連通路9が設けられていない構成と比較して固体電解質膜11と空気極側充填材5との接触面積を大きくすることができる。それゆえ、酸素還元反応の起きる固体電解質膜11の近傍において反応場を増加させることができ、酸素還元活性を向上させることができる。
(変形例6)
次に図20を参照して本開示の第2実施形態の変形例6に係る膜電極接合体110の構成について説明する。図20は、本開示の第2実施形態の変形例6に係る膜電極接合体110の断面の一例を示す模式図である。なお、図20に示す膜電極接合体110の断面も、図11に示す膜電極接合体110におけるA-Aで切り出した断面構造とする。
第2実施形態の変形例6に係る膜電極接合体110は、固体電解質膜11および空気極2を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有している点で、第2実施形態に係る膜電極接合体110と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図20に示すように第2実施形態の変形例6に係る膜電極接合体110では、空気極2が、複数の空気極側孔部3を連通させる空気極側連通路9を有する点と、固体電解質膜11と空気極2との間に空気極側機能層20をさらに備える点で第2実施形態に係る膜電極接合体110と相違する。換言すると、第2実施形態の変形例6に係る膜電極接合体110は、第2実施形態の変形例1に係る膜電極接合体110と第2実施形態の変形例4に係る膜電極接合体110とを組み合わせた構成である。なお、空気極側連通路9については第2実施形態の変形例1において、空気極側機能層20については第2実施形態の変形例4においてそれぞれ説明したため詳細な説明は省略する。
図20に示すように、第2実施形態の変形例6に係る膜電極接合体110は、空気極側機能層20を備えるため、酸素還元反応の起きる固体電解質膜11の近傍において、反応場を増加させることができる。このため、酸素還元活性を向上させることができる。また、空気極側連通路9を備えるため、酸化剤ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い酸素還元活性および電気伝導性を有することができる。また、空気極側孔部3の経路中において、なんらかの不具合が生じて酸化剤ガスの流通が阻害されたとしても空気極側連通路9を介して別ルートで酸化剤ガスを流通させることができる。このため、空気極2は酸素還元活性および電気伝導性を維持することができる。
(第3実施形態)
図21、22を参照して第3実施形態に係る膜電極接合体210の構成を説明する。図21は、本開示の第3実施形態に係る膜電極接合体210を、反応ガスと接する面(すなわち、図22における第一境界面217)側から見た平面図である。図22は、図21に示す膜電極接合体210の構造を模式的に示すA-A断面の断面図である。
図21、22に示すように、膜電極接合体210は、電解質材料を含む固体電解質膜11と、反応ガスと接触する電極212とを備える。膜電極接合体210は、例えば、電気化学デバイスを構成するために用いられる部材であり、図22に示すように、固体電解質膜11と電極212とが積層されて構成されている。
電極212は、セラミックス部材で構成された構造支持部214と、構造支持部214において反応ガスと接触する第一境界面217(以下、境界面と称することがある。)から固体電解質膜11側に向かって延伸し、酸素還元活性および電気伝導性を有する充填材215、あるいは水素酸化活性および電気伝導性を有する充填材215が充填されている孔部213と、を備える。
電極212は、例えば、燃料電池等の電気化学デバイスの燃料極であってもよいし、空気極であってもよい。電極212が燃料極である場合、第一境界面217で接触する反応ガスは水素含有ガスであり、充填材215は、水素酸化活性および電気伝導性を有する。なお、水素含有ガスは、水素であってもよいし、例えば、メタンガスなどの改質反応により発生する改質ガス、水の電気分解により発生する水蒸気を含む水素ガスなどであってもよい。
一方、電極212が電気化学デバイスの空気極である場合、第一境界面217で接触する反応ガスは酸化剤ガスであり、充填材215は、酸素還元活性および電気伝導性を有する。なお、酸化剤ガスは、酸素であってもよいし、酸素を含有する例えば空気などのガスであってもよい。
構造支持部214は、第一境界面217において、単位面積あたりの孔部213の開口面積が異なる領域を有しており、反応ガス流通方向において上流側となる領域(上流領域)の単位面積あたりの孔部213の開口面積を第一面積比とし、下流側となる領域(下流領域)の単位面積あたりの孔部213の開口面積を第二面積比としたとき、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすようになっている。なお、第一面積比は、第一境界面217における上流領域に存在する孔部213の開口面積の合計を上流領域の面積(すなわち、「上流領域に存在する孔部213の開口面積の合計+上流領域における構造支持部214の面積」)で除することで求めることができる。また、第二面積比は、第一境界面217における下流領域に存在する孔部213の開口面積の合計を下流領域の面積(すなわち、「下流領域に存在する孔部213の開口面積の合計+下流領域における構造支持部214の面積」)で除することで求めることができる。図21では、破線により便宜的に上流領域の範囲と下流領域の範囲とを区別して示している。以下においても同様に図面において破線により各領域の範囲を示すものとする。
第3実施形態に係る膜電極接合体210では、第一境界面217において、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすように、複数の孔部213が配置されている。第3実施形態に係る膜電極接合体210では、図21に示すように、第一境界面217における上流領域に配置された各孔部213の開口面積よりも、下流領域に配置された各孔部213の開口面積の方が大きくなっている。しかしながら、上流領域に配置された各孔部213の開口面積と下流領域に配置された各孔部213の開口面積とを同じとし、上流領域における単位面積当たりの孔部213の数よりも下流領域における単位面積当たりの孔部213の数の方が多くなるように構成してもよい。あるいは、上流領域よりも下流領域の方が、各孔部213の開口面積も、単位面積当たりの孔部213の個数も多くなるように構成されていてもよい。
ここで、反応ガスは、孔部213内を介して電極212内を移動して拡散するが、この反応ガスの移動速度の違いにより、電極212における固体電解質膜11近傍に形成される反応場では反応ガス流通方向における上流領域と下流領域とでは濃度差が生じる。このように反応場において濃度差が生じると電気化学デバイスの起電力が低下する。この反応ガスの拡散に起因する起電力の減少分は、濃度過電圧、または拡散過電圧と呼ばれる。特に、膜電極接合体210において反応ガス流通方向における下流領域では上流領域よりも起電力が引き下がることとなり、膜電極接合体210を用いた電気化学デバイスの性能を低下させることとなる。
そこで、下流領域における第二面積比の方が上流領域における第一面積比よりも大きくなるようにすることで、電極212における下流領域でのガスの拡散性を高めることができる。その結果、反応ガス流通方向の下流側の領域における濃度過電圧を低減させることができる。このため、下流領域の性能低下を抑制し、電気化学デバイスの性能の向上を図ることができる。
また、第3実施形態に係る膜電極接合体210では、構造支持部214において備える孔部213の個数または開口面積を調整するだけで、第一面積比<第二面積比の関係を満たすように構成し、上流領域よりも下流領域の反応ガスの拡散性を高めることができる。
ここで、気孔率が異なる組成物を組み合わせて電極を製作し、膜電極接合体の下流領域における反応ガスの拡散性を高めた構成とすることも考えられるが、この場合、第3実施形態に係る膜電極接合体210と比較して膜電極接合体の製作が困難となる。さらに、第3実施形態に係る膜電極接合体210のように、構造支持を担保する機能を他の機能から独立させた構造とすることが困難となる。
なお、図21では、反応ガス流通方向に対して垂直となるB-B線によって上流領域と下流領域とに分割された構成を示しているが上流領域および下流領域それぞれの範囲はこれに限定されるものではない。反応ガス流通方向において、第一境界面217を上流領域と下流領域とに任意に区分けすることができる。また、図21では、B-B線により上流領域と下流領域とが分割された構成となっているが、必ずしも上流領域と下流領域とが接した領域となる必要はない。例えば、反応ガス流通方向において上流側に位置する第一境界面217の端部から、反応ガス流通方向における下流側に向かう所定の範囲を上流領域としてもよい。また、反応ガス流通方向において下流側に位置する第一境界面217の端部から、反応ガス流通方向における上流側にさかのぼった所定の範囲を下流領域としてもよい。つまり、上流領域は、第一境界面217における、反応ガス流通方向の上流側にある所定の範囲であり、下流領域は第一境界面217における、反応ガス流通方向の下流側にある所定の範囲である。そして、上流領域の範囲と下流領域の範囲とは重畳しない関係にある。
また図21に示すように、孔部213の開口形状は丸孔であってもよいし、図23に示すように角孔であってもよい。なお、孔部213の開口形状は特に限定されないが、構造支持部214における強度面の観点から丸孔が好適である。図23は、図21に示す膜電極接合体210の変形例を示す図である。
孔部213の配列パターンは、図21または図23に示すように、各孔部213が並列に配置された並列パターンであってもよいし、千鳥状に配置された千鳥状パターンであってもよい。あるいは、各孔部213はランダムに配列されてもよい。孔部213の形状および配列パターンは、構造支持部214が充分な強度を保つとともに、孔部213内に充填された充填材215によって必要な酸素還元活性と電気伝導性、または必要な水素酸化活性と電気伝導性を得ることができる限り任意である。
孔部213の開口寸法は、例えば、丸孔の場合、径寸法が、0.01mmから1mmとし、角孔の場合、一辺の寸法が0.01mmから1mmとしてもよい。また、孔部213が電極212の主面(すなわち、第一境界面217)において占める面積の割合は、電極212の主面全体の50%以下、望ましくは30%以下であってもよい。電極212の主面における孔部213の占有面積が大きいと発電性能は向上するが、電極212において生じる反りが大きくなる。
ここで、電極212が、例えば、燃料電池等の電気化学デバイスの空気極の場合、孔部213に充填される充填材215によって、酸素の還元を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。この場合、充填材215は、酸素還元活性および電気伝導性を有した1種類以上の材料から構成されてもよい。例えば、充填材215は、酸素還元活性および電気伝導性を有した1種類の材料から構成されてもよい。または、充填材215は、酸素還元活性を有する材料と、電気伝導性を有する材料とを組み合わせて構成されてもよい。または、充填材215は、酸素還元活性と電気伝導性とを有するように、複数の材料からなる化合物によって構成されてもよい。
なお、充填材215を構成する酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料として、少なくとも、Mn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(LSCF)、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物(LSC)、ランタンストロンチウム鉄複合酸化物(LSF)、ランタンストロンチウムマンガン複合酸化物(LSM)、バリウムストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(BSCF)、サマリウムストロンチウムコバルト複合酸化物(SSC)、ランタンニッケル鉄複合酸化物、ランタンニッケル複合酸化物、バリウムガドリニウムランタンコバルト複合酸化物などが挙げられる。
また、充填材215は、Mn、Fe、Co、およびNiの少なくともいずれかを含む酸化物と、他の酸化物、あるいは金属との複合体であってもよい。さらにまた、充填材215は、酸素還元または電気伝導性どちらかを有する材料の混合物で構成されてもよい。このような構成の場合、例えば、酸素還元材料としてランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物、電気伝導性材料にランタンストロンチウムマンガン複合酸化物を用いても良い。また、充填材215は、Mn、Fe、Co、Niのいずれか1つの元素を少なくとも含む酸化物の多孔体であってもよい。なお、ここでいう多孔体とは、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される空隙率が20%以上のことである。充填材215を多孔体にすることで、酸素還元に寄与する酸化剤ガスの供給が増加し、酸素還元活性を向上させることが可能となる。
一方、電極212が、例えば、燃料電池等の電気化学デバイスの燃料極の場合、孔部213に充填される充填材215によって、水素の酸化を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。この場合、充填材215は、水素酸化活性および電気伝導性を有した1種類以上の材料から構成されてもよい。例えば、充填材215は水素酸化活性および電気伝導性を有した1種類の材料から構成されてもよい。または、充填材215は、水素酸化活性を有する材料と、電気伝導性を有する材料とを組み合わせて構成されてもよい。または、充填材215は、水素酸化活性と電気伝導性とを有するように、複数の材料からなる化合物によって構成されてもよい。
なお、充填材215を構成する水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料として、例えば、Ni、Pt、Pd、Irがあげられ、充填材215は、望ましくはNiを含む化合物であってもよい。Niは、例えば固体酸化物形燃料電池等の電気化学デバイスの燃料極に使用される、優れた水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料である。
また、充填材215は、サーメットであってもよい。サーメットとは、金属とセラミックス材料との混合物であり、たとえば、金属にNi、セラミックス材料に、バリウムジルコニウム酸化物、バリウムセリウム酸化物などのプロトン伝導体、または安定化ジルコニア、ランタンガレート系酸化物、セリア系酸化物などの酸化物イオン伝導体からなるサーメットがあげられる。なお、プロトン伝導体は、イッテルビウムなどのドーパントを含んでいてもよい。いいかえると、バリウムジルコニウム系酸化物、バリウムセリウム系酸化物などであってもよい。サーメットが、例えば、Niと、電解質材料との混合物である場合、水素酸化の反応場の増加により水素酸化活性を向上させることができる。
なお、充填材215は、Niを含む多孔体であってもよい。なお、ここでいう多孔体とは、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される空隙率が20%以上のことである。充填材215を多孔体にすることで、水素酸化に寄与する水素含有ガスの供給が増加し、水素酸化活性を向上させることが可能となる。
固体電解質膜11は電解質材料を含んで構成される。この電解質材料としては、例えば、バリウムジルコニウム酸化物若しくはバリウムセリウム酸化物などのプロトン伝導体、または安定化ジルコニア、ランタンガレート系酸化物、セリア系酸化物などの酸化物イオン伝導体が挙げられる。なお、プロトン伝導体は、イッテルビウムなどのドーパントを含んでいてもよい。いいかえると、バリウムジルコニウム系酸化物、バリウムセリウム系酸化物などであってもよい。
構造支持部214は、上記した電解質材料を含むセラミックス部材から構成されている。構造支持部214を構成するセラミックス部材には、固体電解質膜11との線膨張係数差が小さいような材料が使用される。なお、ここでいう「線膨張係数差が小さい」とは、例えば、固体電解質膜11との線膨張係数差を2×10-6K-1以下にすることが望ましい。線膨張係数差を小さくすることで、セルの形状変化を抑制することが可能となる。
また、セラミックス部材は緻密体であってもよい。緻密体とは、例えば、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される相対密度が85%以上のことである。緻密体であればセル強度を向上させることができる。
このように、電極212は、構造支持部214を備えるため、膜電極接合体210の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜11との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、動作環境において膜電極接合体210における反りの発生を抑制することができる。
(変形例1)
次に図24を参照して本開示の第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210の構成について説明する。図24は、本開示の第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210の断面の一例を示す模式図である。なお、図24に示す膜電極接合体210の断面も、図21に示す膜電極接合体210におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。
第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210は、固体電解質膜11および電極212を備え、電極212が、構造支持部214と、充填材215が充填されている孔部213とを有している点で、第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図24に示すように、電極212の第一境界面217を反応ガス流通方向において、上流領域と中流領域と下流領域との3つの領域に分割して、それぞれの領域で単位面積あたりの孔部213の開口面積を異ならせている点で第3実施形態に係る膜電極接合体210と相違する。
具体的には、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210は、上記した上流領域と下流領域との間の領域として中流領域を設け、中流領域における単位面積あたりの孔部213の開口面積を第三面積比としたとき、「第一面積比<第三面積比<第二面積比」の関係を満たすように構成する。すなわち、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210では、電極212の第一境界面217において、単位面積当たりの孔部213の開口面積が、上流領域、中流領域、下流領域の順に大きくなるように構成する。
なお、上流領域、下流領域、中流領域それぞれの境界は、図24に示すように第一境界面217を反応ガス流通方向に3等分する線分により画定されてもよいが、各領域の範囲はこれに限定されるものではない。電極212における反応ガスの拡散性を考慮して、各領域の範囲を任意に決めることができる。
この構成によって、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210は、下流領域に加えて、上流領域と下流領域との間の領域である中流領域においても、濃度過電圧を低減させることができる。
(変形例2)
次に図25を参照して本開示の第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210の構成について説明する。図25は、本開示の第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210の断面の一例を示す模式図である。なお、図25に示す膜電極接合体210の断面も、図21に示す膜電極接合体210におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。
第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210は、固体電解質膜11および電極212を備え、電極212が、構造支持部214と、充填材215が充填されている孔部213とを有している点で、第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図25に示すように、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210と同様に、電極212の第一境界面217を反応ガス流通方向において、上流領域と中流領域と下流領域との3つの領域に分割して、それぞれの領域で孔部213の開口面積を異ならせている点で第3実施形態に係る膜電極接合体210と相違する。
具体的には、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210は、上記した上流領域と下流領域との間の領域として中流領域を設け、中流領域における単位面積あたりの孔部213の開口面積を第三面積比としたとき、「第三面積比<第一面積比<第二面積比」の関係を満たすように構成する。すなわち、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210では、電極212の第一境界面217において、単位面積当たりの孔部213の開口面積が、中流領域、上流領域、下流領域の順に大きくなるように構成する。
なお、上流領域、中流領域、下流領域それぞれの境界は、図25に示すように第一境界面217を反応ガス流通方向に3等分する線分により画定されてもよいが、各領域の範囲はこれに限定されるものではない。電極212における反応ガスの拡散性を考慮して、各領域の範囲を任意に決めることができる。
この構成により、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210は、反応ガス流通方向の下流側の領域(下流領域)においてガス拡散効果を促進することができる。このため、下流領域において濃度過電圧を低減させることができ、性能低下を抑制することができる。
またここで、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210が例えば燃料電池に用いられた場合、中流領域の温度は、他の領域の温度に比べて高くなる。そこで、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210は、第三面積比が第一面積比および第二面積比よりも小さくなるように孔部213を配置して、中流領域におけるガス拡散性を抑制する構成となっている。このようにガス拡散性を抑制させることによって、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210は、中流領域において他の領域よりも電流を流れにくくさせて、温度上昇を抑えることができる。
(変形例3)
次に図26を参照して本開示の第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210の構成について説明する。図26は、本開示の第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210の断面の一例を示す模式図である。なお、図26に示す膜電極接合体210の断面も、図21に示す膜電極接合体210におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。
第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210は、固体電解質膜11および電極212を備え、電極212が、構造支持部214と、充填材215が充填されている孔部213とを有している点で、第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。また、第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210は、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすように、上流領域および下流領域において、構造支持部214に備える孔部213の個数または開口面積を調整した構成となっている点でも第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210は、孔部213が、第一孔部213aと第二孔部213bとを連通させる連通路219と、備える点で、第3実施形態に係る膜電極接合体210と相違する。
具体的には、第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210は、上流領域または下流領域において複数設けられた孔部213のうち、一方を第一孔部213aとし、他方を第二孔部213bとしたとき、一方の第一孔部213aと、他方の第二孔部213bとを連通させる連通路219を1つ以上有している。この構成によって、第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210は、反応ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い酸素還元活性および電気伝導性、またはより高い水素酸化活性および電気伝導性を有することができる。
また、第一孔部213aまたは第二孔部213bの経路中において、なんらかの不具合が生じて反応ガスの流通が阻害されたとしても連通路219を介して別ルートで反応ガスを流通させることができる。このため、電極212は、水素酸化活性と電気伝導性、あるいは酸化還元性と電気伝導性を維持することができる。
なお、図26では連通路219内においても充填材215が充填された構成となっているが、反応ガスの流通経路を確保できればよい場合は、必ずしも連通路219内に充填材215が充填されていなくてもよい。ただし、図26に示すように連通路219内に充填材215が充填された構成の方が、水素酸化活性と電気伝導性、あるいは酸素還元活性および電気伝導性を向上させる点で好適である。
また、図26に示すように上流領域よりも下流領域の方が、孔部213同士を連通させる連通路219の数が多くなっている。このように上流領域よりも下流領域の方が多くの連通路219を備える構成とすることで、第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210は、下流領域における反応ガスの拡散性を高めることができる。
なお、第3実施形態の変形例3に係る膜電極接合体210では、第一境界面217を上流領域と下流領域とに分割し、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第一面積比<第三面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。あるいは、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第三面積比<第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。
(変形例4)
次に図27を参照して本開示の第3実施形態の変形例4に係る膜電極接合体210の構成について説明する。図27は、本開示の第3実施形態の変形例4に係る膜電極接合体210の断面の一例を示す模式図である。なお、図27に示す膜電極接合体210の断面も、図21に示す膜電極接合体210におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。
第3実施形態の変形例4に係る膜電極接合体210は、固体電解質膜11および電極212を備え、電極212が、構造支持部214と、充填材215が充填されている孔部213を有している点で、第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。また、第3実施形態の変形例4に係る膜電極接合体210は、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすように、上流領域および下流領域において、構造支持部214に備える孔部213の個数または開口面積を調整した構成となっている点でも第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図27に示すように第3実施形態の変形例4に係る膜電極接合体210が備える孔部213は、第3実施形態に係る膜電極接合体210が備える孔部213とは、延伸する方向が異なっている。つまり、第3実施形態に係る膜電極接合体210では、構造支持部214において、孔部213が反応ガスと接触する側(すなわち、第一境界面217)から固体電解質膜11側(すなわち、第二境界面218)に向かって、電極212の主面(すなわち、第一境界面217または第二境界面218)に対して垂直となるように延伸する構成であった。これに対して、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210では、構造支持部214において、複数の孔部213が第一境界面217側から第二境界面218側に向かって、電極212の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成となっている。換言すると複数の孔部213が電極212の主面に対して垂直な状態から酸化剤ガスの流通方向の下流側に向かって、同様に傾くように延伸した構成となっている。
この構成により、孔部213に流入し、孔部213内を流れる反応ガスの流れの分配を良化させることができる。このため、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210は、反応ガスの供給の増加により、水素酸化活性または酸素還元活性を向上させることができる。
なお、第3実施形態の変形例4に係る膜電極接合体210では、第一境界面217を上流領域と下流領域とに分割し、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第一面積比<第三面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。あるいは、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第三面積比<第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。
(変形例5)
次に図28、29を参照して本開示の第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210の構成について説明する。図28は、本開示の第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210の断面の一例を示す模式図である。なお、図28に示す膜電極接合体210の断面も、図21に示す膜電極接合体210におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。図29は、図28に示す膜電極接合体210の電極212が備える第一孔部213aと第二孔部213bとの配置関係を模式的に示す斜視図である。
第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210は、固体電解質膜11および電極212を備え、電極212が、構造支持部214と、充填材215が充填されている孔部213を有している点で、第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。また、第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210は、第一境界面217において「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすように孔部213が形成されている点で共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図28に示すように第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210が備える孔部213は、第3実施形態に係る膜電極接合体210が備える孔部213とは、延伸する方向および、第一境界面217における全ての孔部213の開口面積が同じ大きさとなっている点で相違する。さらに、第一境界面217において「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすようにするため、第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210では、単位面積当たりに配置される孔部213の個数が上流領域より下流領域の方が多くなっている点で第3実施形態に係る膜電極接合体210と相違する。
具体的には、第3実施形態に係る膜電極接合体210では、構造支持部214において、反応ガスと接触する側(すなわち、第一境界面217)から固体電解質膜11側(すなわち、第二境界面218)に向かって、電極212の主面(すなわち、第一境界面217または第二境界面218)に対して垂直となるように孔部213が延伸する構成であった。これに対して、第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210では、図28、29に示すように、構造支持部214において、複数の孔部213(例えば、第一孔部213aおよび第二孔部213b)を交差させて互いに連通するように配置する。そしてこの配置を複数組み合わせて3次元網目構造を形成しながら、第一境界面217から第二境界面218に向かって孔部213が延伸する構成となっている。
なお、図28、29では第一孔部213aと第二孔部213bとが互いに交差する構成であるが、さらに別の孔部213が第一孔部213aおよび第二孔部213bそれぞれと交差するように配置されていてもよい。
また、第一境界面217において「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすようにするため、第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210では、図28に示すように1つの孔部213に対して交差する孔部213の数が上流領域よりも下流領域の方が多くなっている。
この構成により、複数の孔部213が互いに連通した網目状の構造とすることができるため反応ガスの流通を促進させて、水素酸化活性または酸素還元活性を向上させることができる。また、充填材215を密に充填することができるため電気伝導性を向上させることができる。
なお、第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210では、第一境界面217を上流領域と下流領域とに分割し、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、第3実施形態の変形例1に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第一面積比<第三面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。あるいは、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第三面積比<第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。
(変形例6)
次に図30を参照して本開示の第3実施形態の変形例6に係る膜電極接合体210の構成について説明する。図30は、本開示の第3実施形態の変形例6に係る膜電極接合体210の断面の一例を示す模式図である。なお、図30に示す膜電極接合体210の断面も、図21に示す膜電極接合体210におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。
第3実施形態の変形例6に係る膜電極接合体210は、固体電解質膜11および電極212を備え、電極212が、構造支持部214と、充填材215が充填されている孔部213を有している点で、第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。また、第3実施形態の変形例6に係る膜電極接合体210は、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たすように、上流領域および下流領域において、構造支持部214に備える孔部213の個数または開口面積を調整した構成となっている点でも第3実施形態に係る膜電極接合体210と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図30に示すように第3実施形態の変形例6に係る膜電極接合体210は、固体電解質膜11と電極212との間に機能層220がさらに設けられている点で第3実施形態に係る膜電極接合体210と異なる。
機能層220は、充填材215と同様な材料から構成された層である。すなわち、機能層220は、電極212が、例えば、燃料電池等の電気化学デバイスの燃料極である場合、水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料から構成される。一方、電極212が、例えば、燃料電池等の電気化学デバイスの空気極である場合、酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料から構成される。そして、機能層220は、第二境界面218で電極212と接し、第三境界面221で固体電解質膜11と接するように配置されている。なお、機能層220は充填材215と同じ材料であってもよいし、異なっている材料であってもよい。
この構成により、電極212が電気化学デバイスの燃料極である場合、水素酸化反応の起きる固体電解質膜11の近傍、つまり第三境界面221の近傍において、反応場を増加させることができる。また、電極212が電気化学デバイスの空気極である場合、酸素還元反応の起きる固体電解質膜11の近傍、つまり第三境界面221の近傍において、反応場を増加させることができる。このため、第3実施形態の変形例6に係る膜電極接合体210は、水素酸化活性または酸素還元活性を向上させることができる。
なお、図30では、膜電極接合体210は、複数の孔部213が電極212の主面(すなわち、第一境界面217または第二境界面218)に対して垂直となるように延伸した構成となっているがこれに限定されるものではない。例えば、第3実施の形態の変形例4に係る膜電極接合体210と同様に、複数の孔部213が電極212の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成であってもよい。また、第3実施形態の変形例5に係る膜電極接合体210と同様に複数の孔部213が交差して形成した3次元網目構造を有する構成であってもよい。
また、第3実施形態の変形例6に係る膜電極接合体210では、第一境界面217を上流領域と下流領域とに分割し、「第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、第3実施の形態の変形例1に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第一面積比<第三面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。あるいは、第3実施形態の変形例2に係る膜電極接合体210と同様に、第一境界面217を上流領域、中流領域、下流領域の3つに分割し、「第三面積比<第一面積比<第二面積比」の関係を満たす構成としてもよい。
なお、上記した第3実施形態、ならびに第3実施形態の変形例1~6に係る膜電極接合体210は、一層の電極212を備えた構成であったがこれに限定されるものではない。例えば、膜電極接合体210は、固体電解質膜11において電極212が備えられている主面とは反対側となる主面に他の電極をさらに備え、他の電極、固体電解質膜11、電極212の順に積層した構成としてもよい。そして、他の電極についても、電極212と同様の構成を有していてもよい。
(第4実施形態)
図31~33を参照して第4実施形態に係る膜電極接合体310の構成を説明する。図31は、本開示の第4実施形態に係る膜電極接合体310を、酸化剤ガスと接する面(すなわち、図33における第一空気極側境界面7)側から見た平面図である。図32は、本開示の第4実施形態に係る膜電極接合体310を、水素含有ガスと接する面(すなわち、図33における第一燃料極側境界面17)側から見た平面図である。また、図33は、図31に示す膜電極接合体310の構造を模式的に示すA-A断面図である。なお、図33に示す膜電極接合体310では、酸化剤ガスと水素含有ガスとが対向する方向に流れるように構成されているが両者の流れる方向はこれに限定されるものではない。例えば、酸化剤ガスと水素含有ガスとが同じ方向に流れるように構成されていてもよい。あるいは膜電極接合体310を上面側から積層方向で平面視したとき両者が交差して流れるように構成されていてもよい。
図31~33に示すように、膜電極接合体310は、電解質材料を含む固体電解質膜11と水素含有ガスと接触する燃料極12と、酸化剤ガスと接触する空気極2とを備える。膜電極接合体310は、例えば、電気化学デバイスを構成するために用いられる部材であり、図33に示すように、空気極2、固体電解質膜11、および燃料極12が、この順に積層されている。すなわち固体電解質膜11の一方の主面に空気極2が、他方の主面に燃料極12が配置され、空気極2と燃料極12とによって固体電解質膜11を挟持する構成となっている。
燃料極12は、セラミックス部材で構成された燃料極側構造支持部14と、燃料極側構造支持部14において水素含有ガスと接触する第一燃料極側境界面17(すなわち、燃料極側境界面)から固体電解質膜11側に向かって延伸し、水素酸化活性および電気伝導性を有する燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを備える。そして、燃料極側構造支持部14によって膜電極接合体310の構造を支持する。なお、燃料極側孔部13は、図33に示すように第一燃料極側境界面17から固体電解質膜11側に向かって直線状に延伸している。
空気極2は、セラミックス部材で構成された空気極側構造支持部4と、空気極側構造支持部4において酸化剤ガスと接触する第一空気極側境界面7(すなわち、空気極側境界面)から固体電解質膜11側に向かって延伸し、酸素還元活性および電気伝導性を有する空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3と、を備える。そして、空気極側構造支持部4によっても膜電極接合体310の構造を支持することができるように構成されている。なお、空気極側孔部3は、図33に示すように第一空気極側境界面7から固体電解質膜11側に向かって直線状に延伸している。
固体電解質膜11が含む電解質材料としては、例えば、バリウムジルコニウム酸化物若しくはバリウムセリウム酸化物などのプロトン伝導体、または安定化ジルコニア、ランタンガレート系酸化物、セリア系酸化物などの酸化物イオン伝導体が挙げられる。なお、プロトン伝導体は、イッテルビウムなどのドーパントを含んでいてもよい。いいかえると、バリウムジルコニウム系酸化物、バリウムセリウム系酸化物などであってもよい。
空気極側構造支持部4および燃料極側構造支持部14は、電解質材料を含むセラミックス部材から構成されている。空気極側構造支持部4および燃料極側構造支持部14を構成するセラミックス部材には、固体電解質膜11との線膨張係数差が小さいような材料が使用される。なお、ここでいう「線膨張係数差が小さい」とは、例えば、固体電解質膜11との線膨張係数差を2×10-6K-1以下にすることが望ましい。線膨張係数差を小さくすることで、セルの形状変化を抑制することが可能となる。
また、空気極側構造支持部4または燃料極側構造支持部14を構成するセラミックス部材は緻密体であってもよい。緻密体とは、例えば、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される相対密度が85%以上のことである。緻密体であればセル強度を向上させることができる。
このように、空気極2が空気極側構造支持部4を備え、燃料極12が燃料極側構造支持部14を備える構成であるため、空気極2および燃料極12によって膜電極接合体310の構造を支持することができるとともに、固体電解質膜11との熱膨張係数差を小さくすることができる。このため、動作環境において膜電極接合体310における反りの発生を抑制することができる。
なお、酸化剤ガスは、酸素であってもよいし、酸素を含有する例えば空気などのガスであってもよい。また、水素含有ガスは、水素であってもよいし、例えば、メタンガスなどの改質反応により発生する改質ガス、水の電気分解により発生する水蒸気を含む水素ガスなどであってもよい。
空気極側孔部3は、図33に示すように空気極側構造支持部4において酸化剤ガスと接触する第一空気極側境界面7に設けられ、酸化剤ガスが流入する第一空気極側開口部6aと、第一空気極側開口部6aとは反対側となる固体電解質膜11側の端部に設けられた第二空気極側開口部6bとを有する。図33の例では、第二空気極側開口部6bは、空気極側構造支持部4において固体電解質膜11と接する第二空気極側境界面8に設けられる。
すなわち、第一空気極側開口部6aが設けられている第一空気極側境界面7側には酸素含有ガスが流通するガス流路(不図示)が備えられており、このガス流路を流通する酸化剤ガス(酸素)が第一空気極側開口部6aを介して空気極側孔部3内に流入する。また、空気極側孔部3内には後述する空気極側充填材5が充填されている。このため、この空気極側充填材5の表面で還元され、第二空気極側開口部6b近傍に伝導してきた酸素と固体電解質膜11を通過して移動してきたプロトンと、外部回路(不図示)を経て空気極2に到達した電子とによって水が生成される。
一方、燃料極側孔部13は、図33に示すように燃料極側構造支持部14において水素含有ガスと接触する第一燃料極側境界面17に設けられ、水素含有ガスが流入する第一燃料極側開口部16aと、第一燃料極側開口部16aとは反対側となる固体電解質膜11側の端部に設けられた第二燃料極側開口部16bとを有する。図32の例では、第二燃料極側開口部16bは、燃料極側構造支持部14において固体電解質膜11と接する第二燃料極側境界面18に設けられる。
すなわち、第一燃料極側開口部16aが設けられている第一燃料極側境界面17側には水素含有ガスが流通するガス流路(不図示)が備えられており、このガス流路を流通する水素含有ガスが第一燃料極側開口部16aを介して燃料極側孔部13内に流入する。また、燃料極側孔部13内には後述する燃料極側充填材15が充填されている。このため、燃料極側充填材15の表面で水素が酸化してプロトンと電子とに分かれる。そして、プロトンは、第二燃料極側開口部16bを介して燃料極12から固体電解質膜11に向かって移動する。また電子は燃料極側孔部13内を移動して燃料極12の外部に取り出される。
また図31に示すように、空気極側孔部3の開口形状は丸孔であってもよい。同様に、図32に示すように燃料極側孔部13の開口形状も丸孔であってもよい。あるいは、図34に示すように空気極側孔部3の開口形状は角孔であってもよい。同様に、図35に示すように燃料極側孔部13の開口形状は角孔であってもよい。図34は、図31に示す膜電極接合体310が備える空気極2の変形例を示す図である。図35は、図32に示す膜電極接合体310が備える燃料極12の変形例を示す図である。
なお、空気極側孔部3および燃料極側孔部13の開口形状は特に限定されない。空気極側構造支持部4および燃料極側構造支持部14における強度面の観点から、丸孔が好適である。
空気極側孔部3および燃料極側孔部13の配列パターンは、図31、32または図34、35に示すように、各空気極側孔部3および各燃料極側孔部13が並列に配置された並列パターンであってもよいし、千鳥状に配置された千鳥状パターンであってもよい。あるいは、各空気極側孔部3および各燃料極側孔部13はランダムに配列されてもよい。
空気極側孔部3の形状および配列パターンは、空気極側構造支持部4が充分な強度を保つとともに、空気極側孔部3内に充填された空気極側充填材5によって必要な酸素還元活性と電気伝導性とを得ることができる限り任意である。同様に、燃料極側孔部13の形状および配列パターンは、燃料極側構造支持部14が充分な強度を保つとともに、燃料極側孔部13内に充填された燃料極側充填材15によって必要な水素酸化活性と電気伝導性とを得ることができる限り任意である。
空気極側孔部3および燃料極側孔部13それぞれの開口寸法は、例えば、丸孔の場合、径寸法が、0.01mmから1mmとし、角孔の場合、一辺の寸法が0.01mmから1mmとしてもよい。また、空気極側孔部3が空気極2の主面(すなわち、第一空気極側境界面7または第二空気極側境界面8)において占める面積の割合は、空気極2の主面全体の50%以下、望ましくは30%以下であってもよい。空気極2の主面における空気極側孔部3の占有面積が大きいと発電性能は向上するが、空気極2において生じる反りが大きくなる。同様に、燃料極側孔部13が燃料極12の主面(すなわち、第一燃料極側境界面17または第二燃料極側境界面18)において占める面積の割合は、燃料極12の主面全体の50%以下、望ましくは30%以下であってもよい。燃料極12の主面における燃料極側孔部13の占有面積が大きいと発電性能は向上する。しかしながら、燃料極12において生じる反りが大きくなる。
また、膜電極接合体310では、空気極側孔部3と燃料極側孔部13との位置関係は、以下のようになっている。すなわち、燃料極側孔部13が有する第二燃料極側開口部16bの周縁と、空気極側孔部3が有する第二空気極側開口部6bの周縁とは、図33に示すように膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、互いに重ならないように配置される。なお、第二燃料極側開口部16bの周縁と第二空気極側開口部6bの周縁とが重ならないような配置とは、図33に示すように、膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面と、第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面とが重ならない場合が挙げられる。その他、詳細は後述するが膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面と、第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面とは重畳する部分があるが両者の周縁が重ならない場合も挙げられる。
ここで、例えば燃料電池等の電気化学デバイスの動作環境において、例えば、昇降温時に第二空気極側開口部6bおよび第二燃料極側開口部16bそれぞれの周縁に応力が生じる。
上記構成によると、第二空気極側開口部6bの周縁と第二燃料極側開口部16bの周縁とが膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、互いに重ならないように配置されているため、固体電解質膜11における特定の領域に応力が集中して作用することを抑制することができる。
よって、膜電極接合体310は、反りを抑制し、かつ割れまたはクラックが生じることを防ぐことができる。
また空気極側孔部3は、空気極側充填材5によって、酸素の還元を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。なお、空気極側充填材5は、酸素還元活性および電気伝導性を有した1種類以上の材料から構成されてもよい。例えば、空気極側充填材5は酸素還元活性および電気伝導性を有した1種類の材料から構成されてもよい。または、空気極側充填材5は、酸素還元活性を有する材料と、電気伝導性を有する材料とを組み合わせて構成されてもよい。または、空気極側充填材5は、酸素還元活性と電気伝導性とを有するように、複数の材料からなる化合物によって構成されてもよい。
なお、空気極側充填材5を構成する酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料として、少なくとも、Mn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(LSCF)、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物(LSC)、ランタンストロンチウム鉄複合酸化物(LSF)、ランタンストロンチウムマンガン複合酸化物(LSM)、バリウムストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(BSCF)、サマリウムストロンチウムコバルト複合酸化物(SSC)、ランタンニッケル鉄複合酸化物、ランタンニッケル複合酸化物、バリウムガドリニウムランタンコバルト複合酸化物などが挙げられる。
また、空気極側充填材5は、Mn、Fe、Co、およびNiの少なくともいずれかを含む酸化物と、他の酸化物、あるいは金属との複合体であってもよい。さらにまた、空気極側充填材5は、酸素還元または電気伝導性どちらかを有する材料の混合物で構成されてもよい。このような構成の場合、例えば、酸素還元材料としてランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物、電気伝導性材料にランタンストロンチウムマンガン複合酸化物を用いても良い。
また、空気極側充填材5は、多孔体であってもよい。なお、ここでいう多孔体とは、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される空隙率が20%以上のことである。空気極側充填材5を多孔体にすることで、酸素還元に寄与する酸化剤ガスの供給が増加し、酸素還元活性を向上させることが可能となる。
一方、燃料極側孔部13は、燃料極側充填材15によって、水素の酸化を促進させるとともに電気伝導性を担保することができる。なお、燃料極側充填材15は、水素酸化活性および電気伝導性を有した1種類以上の材料から構成されてもよい。例えば、燃料極側充填材15は水素酸化活性および電気伝導性を有した1種類の材料から構成されてもよい。または、燃料極側充填材15は、水素酸化活性を有する材料と、電気伝導性を有する材料とを組み合わせて構成されてもよい。または、燃料極側充填材15は、水素酸化活性と電気伝導性とを有するように、複数の材料からなる化合物によって構成されてもよい。
なお、燃料極側充填材15を構成する水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料として、例えば、Ni、Pt、Pd、Irがあげられ、燃料極側充填材15は、望ましくはNiを含む化合物であってもよい。Niは、例えば固体酸化物形燃料電池等の電気化学デバイスの燃料極に使用される、優れた水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料である。
また、燃料極側充填材15は、サーメットであってもよい。サーメットとは、金属とセラミックス材料との混合物であり、たとえば、金属にNi、セラミックス材料に、バリウムジルコニウム酸化物、バリウムセリウム酸化物などのプロトン伝導体、または安定化ジルコニア、ランタンガレート系酸化物、セリア系酸化物などの酸化物イオン伝導体からなるサーメットがあげられる。なお、プロトン伝導体は、イッテルビウムなどのドーパントを含んでいてもよい。いいかえると、バリウムジルコニウム系酸化物、バリウムセリウム系酸化物などであってもよい。サーメットが、例えば、Niと、電解質材料との混合物である場合、水素酸化の反応場の増加により水素酸化活性を向上させることができる。
なお、燃料極側充填材15は、Niを含む多孔体であってもよい。なお、ここでいう多孔体とは、アルキメデス法や水銀圧入法によって測定される空隙率が20%以上のことである。燃料極側充填材15を多孔体にすることで、水素酸化に寄与する水素含有ガスの供給が増加し、水素酸化活性を向上させることが可能となる。
(変形例1)
次に図36、37を参照して本開示の第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図36は、本開示の第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図36に示す第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310の断面は、図31に示す膜電極接合体310におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。図37は、本開示の第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310を、第一空気極側境界面7から平面視したときの空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係を示す模式図である。
第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態に係る膜電極接合体310と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図36、37に示すように第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310では、空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係が異なっている。具体的には、膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面内に前記第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面が含まれるように配置されている。
この構成により、第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310では、積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部16bの周縁と第二空気極側開口部6bの周縁とが重ならないため、動作環境において、固体電解質膜11における特定の領域に応力が集中して作用することを抑制することができる。
さらにまた、第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310は、膜電極接合体310を積層方向で平面視したときに第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面と第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面とが重ならないように両者が離れた位置関係となる図33に示す第4実施形態に係る膜電極接合体310の構成と比較して、電気化学反応時において、固体電解質膜11におけるイオンの拡散長さを短くできる。それゆえ、電気化学反応時の内部抵抗を抑制することができる。
また、第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面を大きくすることで、水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料の充填領域を広げることができ、水素酸化の反応場や電気伝導パスを増大させることができる。これにより、より高い水素酸化活性、電気伝導性を有することができる。
(変形例2)
次に図38、39を参照して本開示の第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図38は、本開示の第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図38に示す第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310の断面は、図31に示す膜電極接合体310におけるA-Aの位置で切り出した断面構造である。図39は、本開示の第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310を、第一空気極側境界面7から平面視したときの空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係を示す模式図である。
第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態に係る膜電極接合体310と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図38、39に示すように、第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310では、空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係が第4実施形態に係る膜電極接合体310とは異なっている。具体的には、第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310は、積層方向で平面視したとき、第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面内に第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面が含まれるように配置されている。
この構成により、第4実施形態の変形例2に係る膜電極接合体310では、積層方向で平面視したとき、第二空気極側開口部6bの周縁と第二燃料極側開口部16bの周縁とが重ならないため、動作環境において、固体電解質膜11における特定の領域に応力が集中して作用することを抑制することができる。
さらに図33では、膜電極接合体310を、積層方向で平面視したときに第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面と第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面とが重ならないように両者が離れた位置関係となる構成例が示されている。このような図33の構成と比較して、図38で示す膜電極接合体310では、電気化学反応時において、固体電解質膜11におけるイオンの拡散長さを短くできる。それゆえ、電気化学反応時の内部抵抗を抑制することができる。
また、第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面を大きくすることで、酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料の充填領域を広げることができ、酸素還元の反応場や電気伝導パスを増大することができる。これにより、より高い酸素還元活性、電気伝導性を有することができる。
(変形例3)
次に図40~42を参照して本開示の第4実施形態の変形例3に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図40は、本開示の第4実施形態の変形例3に係る膜電極接合体310を、酸化剤ガスと接する第一空気極側境界面7側から見た平面図である。図41は、図40に示す膜電極接合体310の構造を模式的に示すB-B断面図である。図42は、本開示の第4実施形態の変形例3に係る膜電極接合体310を、第一空気極側境界面7から平面視したときの空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係を示す模式図である。
第4実施形態の変形例3に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態に係る膜電極接合体310と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図41、42に示すように第4実施形態の変形例1に係る膜電極接合体310では、空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係および空気極側孔部3および燃料極側孔部13それぞれの開口径が異なっている。具体的には、空気極側孔部3および燃料極側孔部13それぞれは、開口径が異なる2種類の孔から構成されている。つまり、図42に示すように、空気極側孔部3は、開口径が大きい第二空気極側開口部6b1と、開口径が小さい第二空気極側開口部6b2とを備える。そして、図40に示すように第二空気極側開口部6b1と第二空気極側開口部6b2とが交互に配置されている。また、図42に示すように、燃料極側孔部13は、開口径が大きい第二燃料極側開口部16b1と、開口径が小さい第二燃料極側開口部16b2とを備える。そして、空気極側孔部3と同様に、第二空気極側開口部6b1と第二空気極側開口部6b2とが交互に配置されている。さらに、図42に示すように、膜電極接合体10の積層方向で平面視したとき、第二空気極側開口部6b1の周縁により形成される面内に、第二燃料極側開口部16b2の周縁により形成される面が含まれるように配置されている。また、第二燃料極側開口部16b1の周縁により形成される面内に、第二空気極側開口部6b2の周縁により形成される面が含まれるように配置されている。
この構成により、第4実施形態の変形例3に係る膜電極接合体310では、積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部16b1の周縁と第二空気極側開口部6b2の周縁とが重ならず、かつ第二燃料極側開口部16b2の周縁と第二空気極側開口部6b1の周縁とが重ならない。これにより、動作環境において、固体電解質膜11における特定の領域に応力が集中して作用することを抑制することができる。
さらにまた、電気化学反応時において、固体電解質膜11におけるイオンの拡散長さを短くできる。それゆえ、電気化学反応時の内部抵抗を抑制することができる。
また、第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面の総面積と第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面の総面積は任意に制御できる。例えば、第二燃料極側開口部16bの周縁により形成される面の総面積と第二空気極側開口部6bの周縁により形成される面の総面積とをそれぞれ均等とすることができる。これにより、水素酸化活性、酸素還元活性、および電気伝導性をバランスよく有することができる。
(変形例4)
次に図43、44を参照して本開示の第4実施形態の変形例4に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図43は、本開示の第4実施形態の変形例4に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図43に示す変形例4に係る膜電極接合体310の断面は、図40に示す膜電極接合体310におけるB-Bの位置で切り出した断面構造である。図44は、本開示の第4実施形態の変形例4に係る膜電極接合体310を、第一空気極側境界面7から平面視したときの空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係を示す模式図である。
第4実施形態の変形例4に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態に係る膜電極接合体310と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図43、44に示すように第4実施形態の変形例4に係る膜電極接合体310では、空気極側孔部3と燃料極側孔部13との配置関係が異なっている。具体的には、燃料極側孔部13が有する第二燃料極側開口部16bの周縁と、空気極側孔部3が有する第二空気極側開口部6bの周縁とは、膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、少なくとも一部が互いに重なるように配置される。なお、少なくとも一部が互いに重なるとは、図44に示すように、膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部16bの周縁と第二空気極側開口部6bの周縁とが交差する状態であってもよい。また、第二燃料極側開口部16bの周縁と第二空気極側開口部6bの周縁とが完全に重なり合う状態であってもよい。
上記構成によると、燃料極側孔部13および空気極側孔部3を配置する際、膜電極接合体310の積層方向で平面視したとき、第二燃料極側開口部16bの周縁と第二空気極側開口部6bの周縁とが互いに重なってもよいため、燃料極側孔部13および空気極側孔部3それぞれの配置の自由度が大きくなり、それぞれ多数形成することができる。それ故、燃料極12における燃料極側孔部13、ならびに空気極2における空気極側孔部3それぞれの占有面積を広くとることができる。
したがって、酸素還元の反応場および電気伝導パスを広げたり、水素酸化の反応場および電気伝導パスを広げたりすることができ、より高い酸素還元活性あるいは水素酸化活性、および電気伝導性を有することができる。
(変形例5)
次に図45を参照して本開示の第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図45は、本開示の第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図45に示す第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310の断面は、図40に示す膜電極接合体310におけるB-Bの位置で切り出した断面構造である。
第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態に係る膜電極接合体310と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図45に示すように第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310では、第4実施形態に係る膜電極接合体310の構成において、燃料極側孔部13は、第一燃料極側孔部13aと、第二燃料極側孔部13bと、第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとを連通させる燃料極側連通路19と、を備える点で異なっている。さらにまた、空気極側孔部3は、第一空気極側孔部3aと、第二空気極側孔部3bと、第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとを連通させる空気極側連通路9と、を備える点でも異なっている。
図45に示すように、第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310は、燃料極側連通路19を備えるため、水素含有ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い水素酸化活性、電気伝導性を有することができる。また、第一燃料極側孔部13aまたは第二燃料極側孔部13bの経路中において、なんらかの不具合が生じて水素含有ガスの流通が阻害されたとしても燃料極側連通路19を介して別ルートで流通させることができる。このため、燃料極12は水素酸化活性、および電気伝導性を維持することができる。
また、図45に示すように第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310は、空気極側連通路9を備えるため、酸化剤ガスが流通可能な経路を増やすことができる。このため、より高い酸素還元活性、電気伝導性を有することができる。また、第一空気極側孔部3aまたは第二空気極側孔部3bの経路中において、なんらかの不具合が生じて酸化剤ガスの流通が阻害されたとしても空気極側連通路9を介して別ルートで流通させることができる。このため、空気極2は酸素還元活性、および電気伝導性を維持することができる。
なお、図45では燃料極側連通路19内にも燃料極側充填材15が、空気極側連通路9内にも空気極側充填材5がそれぞれ充填された構成となっている。しかしながら、燃料極側連通路19において水素含有ガスの流通経路が、空気極側連通路9において酸化剤ガスの流通経路が確保さえできればよい場合は、必ずしも燃料極側連通路19内において燃料極側充填材15を、空気極側連通路9内において空気極側充填材5をそれぞれ充填されていなくてもよい。
ただし、図45に示すように燃料極側連通路19内に燃料極側充填材15、空気極側連通路9内に空気極側充填材5がそれぞれ充填された構成の方が、水素酸化活性、酸素還元活性、および電気伝導性を向上させる点で好適である。
なお、図45では、燃料極12および空気極2それぞれにおいて連通路(燃料極側連通路19、空気極側連通路9)を備える構成であったが、連通路は燃料極12または空気極2のいずれか一方にだけ設けられる構成であってもよい。
(変形例6)
次に図46を参照して本開示の第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図46は、本開示の第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図46に示す変形例6に係る膜電極接合体310の断面は、図40に示す膜電極接合体310におけるB-Bの位置で切り出した断面構造である。
第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態に係る膜電極接合体310と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図46に示すように第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310が備える燃料極側孔部13および空気極側孔部3は、第4実施形態に係る膜電極接合体310が備える燃料極側孔部13および空気極側孔部3とは、延伸する方向が異なっている。つまり、第4実施形態に係る膜電極接合体310では、燃料極側構造支持部14において、複数の燃料極側孔部13が水素含有ガスと接触する側(すなわち、第一燃料極側境界面17)から固体電解質膜11側(すなわち、第二燃料極側境界面18)に向かって、燃料極12の主面(すなわち、第一燃料極側境界面17または第二燃料極側境界面18)に対して垂直となるように延伸する構成であった。これに対して、第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310では、燃料極側構造支持部14において、複数の燃料極側孔部13が第一燃料極側境界面17から第二燃料極側境界面18に向かって、燃料極12の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成となっている。換言すると複数の燃料極側孔部13が燃料極12の主面に対して垂直な状態から水素含有ガスの流れ方向の下流側に向かって、同様な角度で傾くように延伸した構成となっている。
この構成により、燃料極側孔部13に流入し、燃料極側孔部13内を流れる水素含有ガスの流れの分配を良化させることができる。このため、第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310は、水素含有ガスの供給の増加により水素酸化活性を向上させることができる。
また、第4実施形態に係る膜電極接合体310では、空気極側構造支持部4において、複数の空気極側孔部3が酸化剤ガスと接触する側(すなわち、第一空気極側境界面7)から固体電解質膜11側(すなわち、第二空気極側境界面8)に向かって、空気極2の主面(すなわち、第一空気極側境界面7または第二空気極側境界面8)に対して垂直となるように延伸する構成であった。これに対して、第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310では、空気極側構造支持部4において、複数の空気極側孔部3が第一空気極側境界面7側から第二空気極側境界面8側に向かって、空気極2の主面に対して鋭角をなし、斜めに延伸する構成となっている。換言すると複数の空気極側孔部3が空気極2の主面に対して垂直な状態から酸化剤ガスの流れ方向の下流側に向かって、同様な角度で傾くように延伸した構成となっている。
この構成により、空気極側孔部3に流入し、空気極側孔部3内を流れる酸化剤ガスの流れの分配を良化させることができる。このため、第4実施形態の変形例6に係る膜電極接合体310は、酸化剤ガスの供給の増加により酸素還元活性を向上させることができる。
なお、図46では、燃料極側孔部13および空気極側孔部3それぞれが、燃料極12および空気極2の主面に対して傾いて延伸する構成であったが、燃料極側孔部13または空気極側孔部3のいずれか一方だけが、主面に対して傾いて延伸する構成としてもよい。
(変形例7)
次に図47、48を参照して本開示の第4実施形態の変形例7に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図47は、本開示の第4実施形態の変形例7に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図47に示す変形例7に係る膜電極接合体310の断面は、図40に示す膜電極接合体310におけるB-Bの位置で切り出した断面構造である。また、図48は、図47に示す膜電極接合体310の燃料極12が備える第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとの配置関係、ならびに空気極2が備える第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとの配置関係を模式的に示す斜視図である。
第4実施形態の変形例7に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態に係る膜電極接合体310と共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図47、48に示すように第4実施形態の変形例7に係る膜電極接合体310が備える燃料極側孔部13および空気極側孔部3は、第4実施形態に係る膜電極接合体310が備える燃料極側孔部13および空気極側孔部3とは、延伸する方向が異なっている。
つまり、第4実施形態に係る膜電極接合体310では、例えば図33で示すように、燃料極側構造支持部14において、複数の燃料極側孔部13が水素含有ガスと接触する側(すなわち、第一燃料極側境界面17)から固体電解質膜11側(すなわち、第二燃料極側境界面18)に向かって、燃料極12の主面(すなわち、第一燃料極側境界面17または第二燃料極側境界面18)に対して垂直となるように延伸する構成であった。
これに対して、第4実施形態の変形例7に係る膜電極接合体310では、図47、48に示すように、燃料極側構造支持部14において、第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとを交差させて互いに連通するように配置する。そしてこの配置を複数組み合わせて3次元網目構造を形成しながら、第一燃料極側境界面17から第二燃料極側境界面18に向かって燃料極側孔部13が延伸する構成となっている。
なお、図47、48では第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとが互いに交差する構成であるが、さらに別の燃料極側孔部13が第一燃料極側孔部13aおよび第二燃料極側孔部13bそれぞれと交差するように配置されていてもよい。
この構成により、第一燃料極側孔部13aと第二燃料極側孔部13bとが互いに連通した網目状の構造とすることができるため水素含有ガスの流通を促進させて水素酸化活性を向上させることができる。また、燃料極側充填材15を密に充填することができるため電気伝導性を向上させることができる。
さらにまた、第4実施形態に係る膜電極接合体310では、例えば図33で示すように、空気極側構造支持部4において、複数の空気極側孔部3が酸化剤ガスと接触する側(すなわち、第一空気極側境界面7)から固体電解質膜11側(すなわち、第二燃料極側境界面18)に向かって、燃料極12の主面(すなわち、第一燃料極側境界面17または第二燃料極側境界面18)に対して垂直となるように延伸する構成であった。
これに対して、第4実施形態の変形例7に係る膜電極接合体310では、図47、48に示すように、空気極側構造支持部4において、第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとを交差させて互いに連通するように配置する。そしてこの配置を複数組み合わせて3次元網目構造を形成しながら、第一空気極側境界面7から第二空気極側境界面8に向かって空気極側孔部3が延伸する構成となっている。
なお、図47、48では第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとが互いに交差する構成であるが、さらに別の空気極側孔部3が第一空気極側孔部3aおよび第二空気極側孔部3bそれぞれと交差するように配置されていてもよい。
この構成により、第一空気極側孔部3aと第二空気極側孔部3bとが互いに連通した網目状の構造とすることができるため酸化剤ガスの流通を促進させて酸素還元活性を向上させることができる。また、空気極側充填材5を密に充填することができるため電気伝導性を向上させることができる。
(変形例8)
次に図49を参照して本開示の第4実施形態の変形例8に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図49は、本開示の第4実施形態の変形例8に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図49に示す変形例8に係る膜電極接合体310の断面は、図40に示す膜電極接合体310におけるB-Bの位置で切り出した断面構造である。
第4実施形態の変形例8に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310と共通する。また、燃料極12において燃料極側連通路19および空気極2において空気極側連通路9をそれぞれ備えている点でも共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図49に示すように第4実施形態の変形例8に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11と燃料極12との間に燃料極側機能層30がさらに設けられている点、ならびに固体電解質膜11と空気極2との間に空気極側機能層20がさらに設けられている点で、第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310と異なる。
燃料極側機能層30は、燃料極側充填材15と同様な水素酸化活性と電気伝導性とを有する材料から構成された層である。そして燃料極側機能層30は、第二燃料極側境界面18で燃料極12と接し、第三燃料極側境界面31で固体電解質膜11と接するように配置されている。なお、燃料極側機能層30は燃料極側充填材15と同じ材料であってもよいし、異なっている材料であってもよい。
この構成により、水素酸化反応の起きる固体電解質膜11の近傍において、反応場を増加させることができる。このため、水素酸化活性を向上させることができる。
また、空気極側機能層20は、空気極側充填材5と同様な酸素還元活性と電気伝導性とを有する材料から構成された層である。そして、空気極側機能層20は、第二空気極側境界面8で空気極2と接し、第三空気極側境界面21で固体電解質膜11と接するように配置されている。なお、空気極側機能層20は空気極側充填材5と同じ材料であってもよいし、異なっている材料であってもよい。
この構成により、酸素還元反応の起きる固体電解質膜11の近傍において、反応場を増加させることができる。このため、酸素還元活性を向上させることができる。
なお、図49に示す変形例8に係る膜電極接合体310では、燃料極側機能層30および空気極側機能層20をそれぞれ備える構成であるが、いずれか一方のみを備える構成であってもよい。
(変形例9)
次に図50を参照して本開示の第4実施形態の変形例9に係る膜電極接合体310の構成について説明する。図50は、本開示の第4実施形態の変形例9に係る膜電極接合体310の構造を模式的に示す断面図である。なお、図50に示す変形例9に係る膜電極接合体310の断面は、図50に示す膜電極接合体310におけるB-Bの位置で切り出した断面構造である。
第4実施形態の変形例9に係る膜電極接合体310は、固体電解質膜11、空気極2、燃料極12を備え、空気極2が、空気極側構造支持部4と、空気極側充填材5が充填されている空気極側孔部3とを有し、燃料極12が、燃料極側構造支持部14と、燃料極側充填材15が充填されている燃料極側孔部13とを有している点で、第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310と共通する。また、燃料極12において燃料極側連通路19および空気極2において空気極側連通路9をそれぞれ備えている点でも共通する。したがって、これら共通する部材についての詳細な説明は省略する。
しかしながら、図50に示すように第4実施形態の変形例9に係る膜電極接合体310は、燃料極側連通路19が第二燃料極側境界面18に沿って配置されている点で第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310と異なる。また、変形例9に係る膜電極接合体310は、空気極側連通路9が第二空気極側境界面8に沿って配置されている点でも第4実施形態の変形例5に係る膜電極接合体310と異なる。
図50に示すように燃料極側連通路19は、固体電解質膜11と燃料極12との界面をなす第二燃料極側境界面18に沿って配置され、内部には燃料極側充填材15が充填されている。また、燃料極側連通路19における第二燃料極側境界面18の側の壁面は開口し、第二燃料極側開口部16bを形成している。このため、第二燃料極側境界面18に沿って燃料極側連通路19が設けられていない構成と比較して固体電解質膜11と燃料極側充填材15との接触面積を大きくすることができる。それゆえ、水素酸化反応の起きる固体電解質膜11の近傍において反応場を増加させることができ、水素酸化活性を向上させることができる。
また、図50に示すように空気極側連通路9は、固体電解質膜11と空気極2との界面をなす第二空気極側境界面8に沿って配置され、内部には空気極側充填材5が充填されている。また、空気極側連通路9における第二空気極側境界面8の側の壁面は開口し、第二空気極側開口部6bを形成している。このため、第二空気極側境界面8に沿って空気極側連通路9が設けられていない構成と比較して固体電解質膜11と空気極側充填材5との接触面積を大きくすることができる。それゆえ、酸素還元反応の起きる固体電解質膜11の近傍において反応場を増加させることができ、酸素還元活性を向上させることができる。
なお、図50に示す変形例9に係る膜電極接合体310では、燃料極側連通路19および空気極側連通路9がともに固体電解質膜11の界面に沿って配置される構成であったが、この構成に限定されるものではない。燃料極側連通路19または空気極側連通路9のいずれか一方が固体電解質膜11の界面に沿って配置される構成であってもよい。
上記では、孔部に充填される充填材として、水素酸化活性を有する燃料極側充填材15および酸素還元活性を有する空気極側充填材5を例に挙げて説明したが、充填材の有する性質は、水素酸化活性および酸素還元活性に限定されるものではない。充填材は、水素酸化活性、酸素還元活性、プロトン還元活性、水蒸気分解活性、および酸化物イオン酸化活性の少なくともいずれか1つを有するものであってもよい。充填材が有する性質は、充填される電極の機能に応じて、適宜選択される。なお、プロトン還元活性を有する材料として、Ni、Pt、Pd、Irなどの金属や、これらとプロトン伝導性酸化物とのサーメットがあげられる。また、水蒸気分解活性を有する材料として、Ni、Pt、Pd、Irなどの金属や、これらと酸化物イオン伝導性酸化物とのサーメットがあげられる。さらに、酸化物イオン酸化活性を有する材料として、少なくともMn、Fe、Co、およびNiのいずれか1つの元素を含む化合物、より具体的には、例えば、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(LSCF)、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物(LSC)、ランタンストロンチウム鉄複合酸化物(LSF)、ランタンストロンチウムマンガン複合酸化物(LSM)、バリウムストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(BSCF)、サマリウムストロンチウムコバルト複合酸化物(SSC)、ランタンニッケル鉄複合酸化物、ランタンニッケル複合酸化物、バリウムガドリニウムランタンコバルト複合酸化物などがあげられる。
また、電極が備える構造支持部を、サーメットによって構成してもよく、この場合、構造支持部が有する孔部は、その空隙の屈曲度が1.5以下と定義することができる。逆に、孔部を形成する構造支持部の屈曲度を1以上1.2以下と定義することができる。なお、屈曲度は、走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いて、測定される。