JP7376044B2 - 金属部材と樹脂部材との接合構造および接合方法 - Google Patents

金属部材と樹脂部材との接合構造および接合方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属部材と樹脂部材との接合構造および接合方法に関する。
従来、自動車、鉄道車両、航空機等の分野では軽量化が求められている。例えば、自動車の分野では、ハイテン材の利用により薄鋼板化が進められ、またスチール材の代替材としてアルミ合金材が用いられ、さらには樹脂材の利用も進んでいる。このような分野において金属部材と樹脂部材との接合技術の開発は、単に車体の軽量化に留まらず、接合部材の高強度化や高剛性化、生産性の向上を実現させる観点からも重要である。これまで、金属部材と樹脂部材との接合方法として、いわゆる摩擦撹拌接合(FSW:friction stir welding)方法が提案されている。摩擦撹拌接合方法とは、図10に示すように、金属部材211と樹脂部材212とを重ね合わせ、回転ツール216を回転させつつ、金属部材211に押圧して摩擦熱を発生させ、この摩擦熱で樹脂部材212を溶融させた後、固化させて金属部材211と樹脂部材212とを接合する方法である(例えば、特許文献1~3)。
金属部材と樹脂部材との接合方法として、摩擦撹拌接合方法のほか、抵抗加熱接合方法(通電加熱接合方法)、誘導加熱接合方法、超音波加熱接合方法等のような、加圧しながら加熱を行う熱圧式接合方法も知られている。
摩擦撹拌接合方法を含む熱圧式接合方法において、固化は、製造コストの観点から、自然冷却により行われることもあれば、製造工程の短縮化等の観点から、強制冷却により行われることもある。
特開2016-68465号公報 特開2016-68467号公報 特開2016-68471号公報
しかしながら、本発明の発明者等は、従来の摩擦撹拌接合方法において、溶融した樹脂の固化を常温放置による自然冷却を含む従来の冷却方法により行った場合では、接合強度が十分に得られず、それが接合界面に位置し金属部材に面する樹脂(接合中の入熱による溶融後に固化した領域)の結晶化度に起因することを見い出した。
摩擦撹拌接合方法以外の他の熱圧式接合方法においても、溶融した樹脂の固化を常温放置による自然冷却を含む従来の冷却方法により行った場合では、接合強度が十分に得られなかった。
本発明は、樹脂部材と金属部材との接合を十分な強度で達成する、金属部材と樹脂部材との接合構造および接合方法を提供することを目的とする。
本発明は、
金属部材と樹脂部材との接合構造であって、
前記樹脂部材は、金属部材側表面における溶融固化域で金属部材と接合されており、
前記溶融固化域は80%以下の結晶化度(最大結晶化度比)を有する、金属部材と樹脂部材との接合構造に関する。
本発明はまた、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による金属部材側からの押圧により熱および圧力を付与し、前記樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させる熱圧式接合方法による、上記の金属部材と樹脂部材との接合構造に関する。
本発明はさらに、上記の金属部材と樹脂部材との接合構造を実現する手法として、以下の金属部材と樹脂部材との接合方法に関する:
金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による金属部材側からの押圧により熱および圧力を付与し、前記樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させる熱圧式接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法であって、
前記固化工程において、前記樹脂部材の溶融固化域が80%以下の結晶化度(最大結晶化度比)を有するように強制冷却を行う、金属部材と樹脂部材との接合方法。
本発明の接合構造および接合方法によれば、樹脂部材と金属部材との接合を十分な強度で達成することができる。
本発明に係る金属部材と樹脂部材との接合構造の一例を示す模式図である。 本発明に係る金属部材と樹脂部材との接合構造の一例から金属部材を強制的に剥離させ、樹脂部材の金属部材側表面を観察したときの樹脂部材の表面状態を示す概略模式図である。 本発明に係る金属部材と樹脂部材との接合方法に好適な摩擦撹拌接合装置の一部の一例を示す模式図である。 本発明の接合方法に使用される押圧部材としての回転ツールの一例の先端部の拡大図である。 本発明の予熱工程の一例を説明するための概略断面図である。 本発明の押込み撹拌工程および撹拌維持工程の一例を説明するための概略断面図である。 本発明の固化工程の一例を説明するための概略断面図である。 本発明の方法により接合された金属部材と樹脂部材との接合構造の一例の概略断面図である。 実施例における接合強度の測定方法を説明するための概略図である。 従来技術における金属部材と樹脂部材との接合方法を説明するための該略見取り図である。
[接合構造]
本発明に係る接合構造は、例えば図1に示すように、金属部材11と樹脂部材12とが相互に接合された構造体50である。図1において、接合構造50は摩擦撹拌接合方法により得られた構造体であるために、押圧部材による押圧痕Wを有するが、接合方法に応じて、押圧痕Wを有さなくてもよい。図1は、本発明に係る金属部材と樹脂部材との接合構造の一例を示す模式図である。
本発明に係る接合構造50において接合は、金属部材11と樹脂部材12との接合境界面における少なくとも押圧部材直下領域(例えば回転ツール直下領域)およびその外周領域において、樹脂部材が溶融および固化した領域(すなわち、溶融固化域)により達成されている。詳しくは、接合構造50から金属部材11を強制的に剥離させると、例えば、図2に示すような、樹脂部材12の金属部材側表面120が観察できる。樹脂部材12の金属部材側表面120において、溶融固化域が回転ツール直下領域60(斜線領域)およびその外周領域61(格子領域)に形成されており、このような溶融固化域により接合が達成されている。
溶融固化域60(斜線領域),61(格子領域)は、図2に示すように、接合時において、樹脂部材12の溶融および固化により形成された領域であって、樹脂部材12の金属部材側表面120における溶融が生じていない領域122に対し、溶融固化域の外周で目視により区別可能な段差(数ミクロンの段差)が存在する領域である。溶融固化域60,61には通常、金属部材における対応領域の表面が転写される。もしくは、溶融固化域の樹脂材料の一部が金属材料表面に付着することによる凝集破壊面が露出する。
溶融固化域60,61は、接合部材の断面観察等により接合中に溶融しない元々の樹脂母材と目視により区別できるため、「樹脂溶融固化層」と称することもできる。樹脂溶融固化層の厚みは特に限定されず、樹脂部材本体の物性への影響を抑える観点から、好ましくは0.50mm以下、より好ましくは0.10mm以下である。樹脂溶融固化層の厚みの下限は特に限定されず、樹脂溶融固化層の厚みは通常、0.01mm以上である。樹脂溶融固化層の厚みは、溶融固化域の外周(主に溶融固化域60と61の間)(例えば押圧部材直下領域60(直径D1(mm))と同心の直径1.5×D1の円形線62(破線))における任意の5点での測定値の平均値を用いている。
本発明において、溶融固化域は80%以下の結晶化度(最大結晶化度比)を有する。溶融固化域の結晶化度(最大結晶化度比)が80%超であると、接合強度が低下する。結晶化度(最大結晶化度比)は「DSC(示差走査熱量測定)により分析、算出される実際の結晶化度」の「最大結晶化度」に対する割合である。樹脂の種類により最大結晶化度は異なるため、本発明では本指標を用いる。従って、本発明において溶融固化域は比較的低い結晶化度(最大結晶化度比)を有することを特徴とする。このように溶融固化域が比較的低い結晶化度(最大結晶化度比)を有することにより、接合強度が十分に向上する。そのような現象の詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。例えば、低い結晶化度(最大結晶化度比)を有することに起因する金属部材に接する溶融固化樹脂の物性低下、それに伴う密着力の向上、アンカー効果による接合力の向上、接合部材間の残留応力の低下、等である。
溶融固化域の結晶化度(最大結晶化度比)は通常、40%以上(特に40~80%)であり、接合強度のさらなる向上の観点から、好ましくは40~76%、より好ましくは40~72%である。結晶化度(最大結晶化度比)は例えば、50%以上であってもよい。
溶融固化域の結晶化度(最大結晶化度比)は、図2に示すように、押圧部材直下領域60(直径D1(mm))と同心の直径1.5×D1の円形線62(破線)上の任意の5箇所で測定された値の平均値を用いている。詳しくは、樹脂側破面の規定位置より採取した1点当たり6g(樹脂母材重量、繊維等は含まない)の樹脂部材を使用し、DSC(示差走査熱量測定)装置により以下の方法により分析、算出して行う。
使用装置:DSC(示差走査熱量測定)装置
温度サイクル:23℃→凝固点+70℃→23℃
昇温速度:10℃/min 降温速度:10℃/min
分析方法:サンプルに温度をかけた際の吸熱ピーク熱量、発熱ピーク熱量を調査
算出方法:各種ピーク熱量により以下の方法および式を用いて算出。
結晶生成に伴う発熱ピーク熱量(昇温時)をxとする。
結晶融解に伴う吸熱ピーク熱量をyとする。
100%結晶融解ピーク熱量(樹脂固有値)をzとする。
zの例;PPS:146.2J/g、PP:209.0J/g、PA6:229.7J/g。
xが観測できる樹脂種(例えばPPS等)の場合
・「実際の結晶化度」=(y-x)/z×100
・「最大結晶化度」=y/z×100
xが観測できない樹脂種(例えばPP、PA等)の場合
・「実際の結晶化度」=y(1サイクル目)/z×100
・「最大結晶化度」=y(2サイクル目)/z×100
上記式を用いて算出した「実際の結晶化度」と「最大結晶化度」を使用し、本発明で用いる結晶化度(最大結晶化度比)は以下の式により算出される。
「結晶化度(最大結晶化度比)」=「実際の結晶化度」/「最大結晶化度」×100
溶融固化域(60,61)の寸法(例えば直径)R(mm)は通常、押圧部材の寸法(例えば回転ツールの直径)をD1(mm)としたとき、以下の関係を満たしている:
1.2≦R/D1≦5;
好ましくは2≦R/D1≦5;
より好ましくは3≦R/D1≦5。
R/D1が小さすぎると、接合強度が十分ではない。
溶融固化域(60,61)の寸法(例えば直径)R(mm)は、樹脂部材12の金属部材側表面120における溶融固化域の外周の段差に基づいて、容易に測定することができる。なお、当該寸法Rは、溶融固化域(60,61)の最大寸法である。
金属部材11は、図1等において、全体形状として略平板形状を有しているが、これに限定されるものではなく、接合のために樹脂部材12と重ね合わせる部分のみが少なくとも略平板形状を有する限り、いかなる形状を有していてもよい。
金属部材11において樹脂部材12と重ね合わせる略平板形状部分の厚みT(接合処理前の厚み;図5参照)は通常、0.5~4mmであるが、これに限定されるものではない。
金属部材11を構成する金属としては、融点が、樹脂部材12を構成する熱可塑性ポリマーの融点よりも高いあらゆる金属が使用可能である。中でも、自動車の分野で使用されている以下の金属および合金が好ましく使用される:
アルミニウム;
5000系、6000系などのアルミニウム合金;
スチール;
マグネシウムおよびその合金;
チタンおよびその合金。
金属部材11を構成する金属としては、接合強度のさらなる向上の観点から、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましく使用される。
樹脂部材12は熱可塑性ポリマーを含むものであり、さらに強化繊維を含んでもよい。
樹脂部材12を構成する熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。中でも、自動車の分野で使用されている熱可塑性ポリマーが好ましく使用される。そのような熱可塑性ポリマーの具体例として、例えば、以下のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる:
ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂およびその酸変性物;
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などのポリアクリレート系樹脂;
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂;
ポリアセタール(POM);
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー系樹脂(ABS);
ポリフェニレンサルファイド(PPS);
PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA);
ポリカーボネート系樹脂(PC);
ポリウレタン系樹脂;
フッ素系ポリマー樹脂;および
液晶ポリマー(LCP)。
樹脂部材12を構成する熱可塑性ポリマーとしては、安価で機械特性に優れるポリマーの観点から、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリオレフィン系樹脂(特にポリプロピレン)からなる群から選択される1種以上のポリマーが好ましく使用される。
樹脂部材12は、図1~図2等において、全体形状として略平板形状を有しているが、これに限定されるものではなく、接合のために金属部材11と重ね合わせたときに、金属部材11直下の部分が略平板形状を有する限り、いかなる形状を有していてもよい。
樹脂部材12における金属部材11直下の部分の厚みt(接合処理前の厚み;図5参照)は通常、2~10mm、特に2~5mmであるが、これに限定されるものではない。
樹脂部材12に含有される強化繊維は、ポリマー含有複合材料の分野で、強度向上のために、ポリマー中に含有される繊維であり、一般に、連続繊維と不連続繊維とに大別されるが、本発明において強化繊維は、連続繊維であってもよいし、または不連続繊維であってもよい。
強化繊維は通常、樹脂部材中、ランダム配向形態で含有され、平均繊維長が通常、50mm以下、特に0.1~50mm、好ましくは1~50mmである。強化繊維の平均繊維径は特に制限されるものではなく、例えば、2~20μmであり、好ましくは6~15μmである。
強化繊維の種類としては、特に制限されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
強化繊維の含有量は通常、樹脂部材全量に対して1重量%以上、特に10~50重量%であり、好ましくは20~50重量%、より好ましくは30~50重量%である。
強化繊維の含有量は、樹脂部材の製造時における各材料の使用量に基づく値を使用することができるし、以下の方法により測定される値を使用することもできる。まず、樹脂部材を、電気炉等により、熱可塑性ポリマーの分解温度以上、強化繊維の分解温度以下で加熱することによって、熱可塑性ポリマーを取り除き、強化繊維のみを取り出す。加熱前後の重量測定により、強化繊維の含有量を加熱前の重量に対する割合として算出することができる。または、比重を測定することによっても、含有量の測定ができる。
樹脂部材12には、強化繊維以外の添加剤、例えば安定剤、難燃剤、着色材、発泡剤などがさらに含有されてもよい。
樹脂部材12は、熱可塑性ポリマーならびに所望により含有される強化繊維および添加剤を含む混合物を、射出成形法、プレス成形法などの成形法に供することにより、製造することができる。
樹脂部材12の凝固点Tsは樹脂部材12の種類によって異なり、通常、100~300℃である。
樹脂部材12の凝固点Tsは、JIS7121により測定された値を用いている。
[接合方法]
本発明の接合方法は、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による金属部材側または樹脂部材側(特に金属部材側)からの押圧により、熱および圧力を付与し、樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する熱圧式接合方法である。熱および圧力は好ましくは局所的に付与される。本発明の接合方法において採用される接合方式は、押圧部材により熱および圧力を付与する方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、例えば、摩擦撹拌接合方法、超音波加熱接合方法、レーザー加熱接合方法、抵抗加熱接合方法、誘導加熱接合方法等であってもよい。好ましくは押圧部材により熱および圧力を金属部材側から局所的に付与する方法であり、より好ましくは摩擦撹拌接合方法が採用される。
摩擦撹拌接合方法とは、後で詳述するように、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材としての回転ツールを回転させつつ、金属部材に押圧して摩擦熱を発生させ、この摩擦熱で樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。
超音波加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材により樹脂部材を加圧しながら、押圧部材及び樹脂部材に超音波振動を起こさせ、該振動により生じる樹脂部材/金属部材の摩擦熱で樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。
レーザー加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせて拘束した状態で、レーザーを金属部材に照射することにより熱を発生させ、この熱で樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する方法である。レーザーとしては、YAGレーザー、ファイバーレーザーまたは半導体レーザーなどが使用される。
抵抗加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせて拘束した状態で、金属部材に直接電流を流すことにより生じる熱を利用して接合する方法である。
誘導加熱接合方法とは、金属部材と樹脂部材とを重ね合わせて拘束した状態で、電磁誘導作用により金属部材に誘導電流を生じさせ、該電流により生じる熱を利用して接合する方法である。
以下、摩擦撹拌接合方法を採用した本発明の接合方法について、図面を用いて詳しく説明するが、金属部材に接する溶融固化樹脂が規定の結晶化度(最大結晶化度比)を有する限り、上記した他の接合方法を用いても本発明の効果が得られることは明らかである。これらの図において、共通する符号は同じ部材、部位、寸法または領域を示すものとする。
[摩擦撹拌接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法]
本発明の接合方法(摩擦撹拌接合方法)について図3~図8を用いて具体的に説明する。
(1)接合装置
まず図3は、本発明の接合方法を実施するのに適した摩擦撹拌接合装置の一部の一例を模式的に示す図である。図3に示される摩擦撹拌接合装置1は、金属部材11と樹脂部材12とを摩擦撹拌接合する装置として構成されており、押圧部材としての円柱状の回転ツール16を具備している。
回転ツール16は、図示したように、金属部材11が上、樹脂部材12が下になるように重ね合わされたワーク10に対し、図外の駆動源により、矢印A1のように該回転ツール16の中心軸線X(図4参照)回りに回転しつつ、矢印A2のように下方に向けて移動する。このとき、回転ツール16は金属部材11表面における押圧領域P(押圧予定領域)において圧力を付与する。この回転ツール16の押圧により摩擦熱が発生し、この摩擦熱が樹脂部材12に伝導して樹脂部材12が軟化および溶融し、その後、溶融樹脂が固化する。その結果、金属部材11と樹脂部材12とが接合される。
図4は、回転ツール16の先端部の拡大図である。図4において、右半分は回転ツール16の外観を示し、左半分は断面を示している。図4に示すように、円柱状の回転ツール16は、先端部(図4では下端部)にピン部16a及びショルダ部16bを有している。ショルダ部16bは、回転ツール16の円形の先端面を含む回転ツール16の先端の部分である。ピン部16aは、回転ツール16の中心軸線X上において、回転ツール16の円形の先端面から外方(図4では下方)に突設された、ショルダ部16bよりも小径の円柱状の部分である。すなわち、回転ツール16は、先端部に、当該回転ツールの円形の先端面を含むショルダ部、および当該回転ツールの円形の先端面から外方に突設された、ショルダ部よりも小径の円柱状のピン部を有している。ピン部16aは、回転している回転ツール16をワーク10に最初に接触させて押圧するときに回転ツール16を位置決めするためのものである。
回転ツール16の素材及び各部の寸法は、主として、回転ツール16が押圧する金属部材11の金属の種類に応じて設定される。例えば、金属部材11がアルミニウム合金よりなる場合、回転ツール16は工具鋼(例えばSKD61等)で作製され、ショルダ部16bの直径D1は10mm、ピン部16aの直径D2は2mm、ピン部16aの突出長さhは0.3~0.5mmに設定される。また、例えば、金属部材11がスチールよりなる場合、回転ツール16は窒化珪素やPCBN(立方晶窒化ホウ素焼結体)等で作製され、ショルダ部16bの直径D1は10mm、ピン部16aの直径D2は3mm、ピン部16aの突出長さhは0.3~0.5mmに設定される。もっとも、これらは例示に過ぎず、これらに限定されないことはいうまでもない。例えば、ショルダ部16bの直径D1は通常、5~30mm、好ましくは5~15mmであるがこれに限定されるものではない。
回転ツール16の下方には、回転ツール16と同径又は回転ツール16よりも大径の円柱状の受け具17が回転ツール16と同軸に配置されている。受け具17は、上記ワーク10に対し、図外の駆動源により、矢印A3のように上方に移動される。受け具17は、遅くとも回転ツール16がワーク10の押圧を開始するまでに、上端面がワーク10の下面(より詳しくは樹脂部材12の下面)に当接する。そして、受け具17は、回転ツール16との間にワーク10を挟んで、回転ツール16による押圧期間中、つまり摩擦撹拌接合中、上記押圧力に抗してワーク10を下方から支持する。なお、受け具17は必ずしも矢印A3方向へ移動させる必要はなく、受け具17にワーク10を載せた後に回転ツール16を矢印A2の方向に移動させる方法を採用することもできる。
摩擦撹拌接合装置1は、多関節ロボット等からなる図外の駆動制御装置に装着されている。そして、回転ツール16及び受け具17の座標位置、回転ツール16の回転数(rpm)、移動速度(mm/分)、加圧力(N)、加圧時間(秒)等が上記駆動制御装置により適宜制御される。なお、図3には図示を省略したが、摩擦撹拌接合装置1は、予めワーク10を固定し、また回転ツール16を押圧したときの金属部材11の浮き上がりを防止するためのスペーサやクランプ等の治具を備えている。
(2)接合方法
本発明に係る摩擦撹拌接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法は少なくとも以下のステップ:
金属部材11と樹脂部材12とを重ね合わせる第1ステップ;および
回転ツール16を回転させつつ、金属部材11に押圧して摩擦熱を発生させ、この摩擦熱により樹脂部材12を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材11と樹脂部材12とを接合する第2ステップ:
を含むものである。
第1ステップ:
第1ステップにおいては、図3に示すように、金属部材11と樹脂部材12とを所望の接合部位で重ね合わせる。
第2ステップ:
本発明においては、第2ステップにおいて、回転ツール16を回転させつつ、金属部材11表面への押圧により、樹脂部材12を軟化および溶融させた後、所定の固化工程を行う。
(固化工程)
固化工程においては、樹脂部材の溶融固化域が所定の結晶化度(最大結晶化度比)を有するように、強制冷却を行う。例えば、固化工程においては、回転ツール16を金属部材11から離間させ、回転ツール16が押圧していた金属部材11の押圧領域111または該押圧領域とその周辺領域を、樹脂部材の溶融固化域が所定の結晶化度(最大結晶化度比)を有するように、強制冷却する。強制冷却とは、回転ツール16を金属部材11から離間させた後、少なくとも押圧領域111を室温(例えば25℃)でそのまま放置して冷却するときよりも、極めて高速の冷却速度で強制的に冷却することを意味する。第2ステップにおいて、極めて高速の冷却速度で強制的に冷却することにより、溶融樹脂成分が急冷され、所定の結晶化度(最大結晶化度比)を有する溶融固化域を生成させることができる。従って、本発明において固化工程は「強制冷却工程」または「結晶化度(最大結晶化度比)制御工程」と称することができる。
強制冷却は、樹脂部材12の凝固点をTs(℃)としたとき、押圧領域(押込面)111の直下における金属部材11と樹脂部材12との界面の樹脂温度(≒樹脂部材12の溶融領域の温度)がTs+50℃の時点からTs-50℃になるまで行う。溶融固化域の結晶化度は、樹脂温度の降下時における凝固点およびその近傍での冷却速度に大きく依存するためである。樹脂温度の降下時における凝固点およびその近傍での冷却速度が大きいほど、溶融固化域の結晶化度が低減される。上記のような温度範囲内において極めて高速の冷却速度を達成するような強度冷却を行うことにより、所定の結晶化度(最大結晶化度比)を持つ溶融固化域を得ることができる。強制冷却は少なくとも上記温度範囲において行われればよい。
強制冷却時の冷却速度は通常、50℃/秒以上(特に50~500℃/秒)であり、結晶化度(最大結晶化度比)の低減に基づく接合強度のさらなる向上の観点から、好ましくは150℃/秒以上(特に150~500℃/秒)、より好ましくは300℃/秒超(特に300℃/秒超500℃/秒以下)である。冷却速度が高速であるほど、溶融固化域の結晶化度(最大結晶化度比)は低減される。
溶融固化域の結晶化度(最大結晶化度比)制御方法としては、上記冷却速度が達成される限り特に限定されるものではなく、例えば、金属部材の押圧領域または該押圧領域とその周辺領域にガス流を吹き付ける方法、金属部材11の浮き上がりを防止するための接合部周囲のクランプ等の固定治具による吸熱を活用して冷却速度を制御する方法等が挙げられる。より簡便に極めて高速の冷却速度を得る観点から、金属部材の押圧領域または該押圧領域とその周辺領域にガス流を吹き付ける方法を採用することがより好ましい。
ガス流を吹き付ける方法において、詳しくは、図7に示すように、ノズル115より、押圧領域または該押圧領域とその周辺領域にガス流を吹き付ける。これにより、押圧領域111または該押圧領域とその周辺領域からの放熱が促進され、それにより金属部材11と樹脂部材12の界面の強制冷却が達成される。ガス流としては、空気流、窒素ガス流、二酸化炭素ガス流、アルゴンガス流等、種類は問わないが、安全性、コストの観点から空気流が好ましい。
ガス流の温度は、上記冷却速度が達成される限り特に限定されるものではなく、例えば、0~60℃であってよい。冷却速度の高速化とコストとの両立の観点から、ガス流の温度は0~30℃、特に10~20℃が好ましい。
ガス流の流量は、上記冷却速度が達成される限り特に限定されるものではなく、またガス流を吹き付ける冷却範囲の大きさに依存するものであるが、例えば、冷却範囲の面積が100~2500mmのとき、通常は100~1000L/分である。
冷却速度はガス流を供給するノズルの内径および位置にも依存する。
例えば、ガス流が同じ流量および温度のとき、ノズル内径が小さいほど単位面積当たりに吹き付けられるガス流量は多くなり、ガス流の吹き付け範囲中心部の冷却速度は高くなる。ノズル内径は例えば、1~10mmであってもよく、上記冷却速度の達成の観点から、好ましくは1~5mmである。
また例えば、ガス流が同じ流量および温度のとき、ノズルの位置が冷却対象としての押圧領域(特にその中心)に近いほど、冷却速度は高くなる。ノズル先端と冷却対象としての押圧領域(特にその中心)との距離は、水平方向の距離および高さ方向の距離ともに、それぞれ独立して、例えば、0.1~100mmであってもよく、上記冷却速度の達成や接合中におけるノズルのセッティングの容易性の観点から、好ましくは10~50mmである。
ガス流の吹き付けの開始および終了のタイミングは、上記したような温度範囲内において上記した極めて高速の冷却速度が達成される限り、特に限定されない。例えば、ガス流の吹きつけは、回転ツール16を金属部材11から離間させると同時に開始してもよいし、または当該離間の後、しばらくしてから開始してもよい。所望の強制冷却を行うための吹き付け時間を短縮する観点、また、生産工程における制御の容易性の観点から、ガス流の吹き付けは、回転ツール16を金属部材11から離間させた後、接合界面の溶融樹脂が凝固点Ts+50℃に達するまでの間、例えば1~5秒経過してから開始することが好ましい。
ガス流の吹き付け時間(制御時間)は、これまで述べたガス流温度、ガス流量、ノズル径、ノズル位置等の要件と併せて、上記したような温度範囲内において上記した極めて高速の冷却速度が達成される限り、特に限定されない。ガス流の吹き付け時間は通常、0.1秒間以上(特に0.1~10秒間)である。
固化工程を行った後、通常は室温まで冷却を行う。冷却方法は特に限定されず、例えば、放置冷却法、空気流冷却法等が挙げられる。
第2ステップにおいては、前記固化工程の前に、回転ツール16を金属部材11に押し込んで、金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13に達しない深さまで進入させる押込み撹拌工程C2を少なくとも行うことが好ましい。
第2ステップにおいては、前記押込み撹拌工程の前に、回転ツール16の先端部のみを金属部材11の表面部に接触させた状態で上記回転ツール16を回転させる予熱工程C1を行うことが好ましいが、必ずしも行わなければならないというわけではない。
前記押込み撹拌工程の後であって、前記固化工程の前に、回転ツール16を接合境界面に達しない深さまで進入させた位置で、回転ツール16の回転動作を継続させる撹拌維持工程C3を行うことが好ましいが、当該工程も必ずしも行わなければならないというわけではない。
本実施態様における各工程は、回転ツールの押圧力(加圧力)及び押圧時間を制御する圧力制御方式によって成されても良いし、回転ツールの押圧方向の挿入量(金属部材に接触してからの金属部材への挿入量)と挿入速度、及びその2つによって決まる移動時間(接合時間)を制御する位置制御方式によって成されても良いし、または、それらの組み合わせによって成されても良い。
以下、これらの工程について詳しく説明する。
(予熱工程C1)
予熱工程C1は、回転ツール16と受け具17とを相互に近接させることにより、図5に示すように、回転ツール16の先端部のみを金属部材11の表面部(図例では上面部)に接触させた状態で回転ツール16を回転させる工程である。詳しくは、回転ツールの先端部におけるピン部のみ、またはピン部およびショルダ部表面のみを金属部材の表面部に接触させた状態で回転ツールを回転させる。
具体的には、予熱工程C1では、回転ツール16の押圧により金属部材11の表面部(図例では上面部)で摩擦熱が発生する。摩擦熱は金属部材11の内部に伝わり、金属部材11の押圧領域111(回転ツール16による押圧領域)の範囲及び押圧領域111の近傍の範囲が予熱される。併せて、回転ツールの軸中心の位置決めが行われる。これにより、次の押込み撹拌工程C2で、回転ツール16を金属部材11に押込み易くなる。
本工程が位置制御方式によって行われる場合において、予熱工程C1でのツール挿入量及び挿入速度、もしくは挿入時間は、回転ツール16の先端部のみを金属部材11の表面部に接触させた状態で回転ツール16を回転させ得る限り特に限定されない。
本工程が圧力制御方式によって行われる場合において、予熱工程C1の加圧力(すなわち第1の加圧力)及び加圧時間(すなわち第1の加圧時間)は、上記のような回転ツール16の押込み易さの観点、生産性の観点から設定され、その値は、例えば回転ツール16の回転数や金属部材11の厚みおよび素材の種類等に依存して変化する。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11を使用する場合、予熱工程C1における第1の加圧力は、500N以上1000N未満の値が好ましい。第1の加圧時間は、0.1秒以上3.0秒未満の値が好ましい。回転ツールの回転数は2000rpm以上4000rpm以下の値が好ましい。
(押込み撹拌工程C2)
押込み撹拌工程C2では、回転ツール16と受け具17とを相互に近接させることにより、図6に示すように、回転ツール16を金属部材11に押し込む。押込み撹拌工程C2を予熱工程C1に次いで行う場合には、回転ツール16と受け具17とをさらに相互に近接させることにより、図6に示すように、回転ツール16を金属部材11に押し込む。これにより、回転ツール16を金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13に達しない深さまで進入させる。このとき、金属部材11の回転ツール直下部110を、図6に示すように、樹脂部材12側に突出変形させることが好ましい。これにより、回転ツールの直下領域で溶融している樹脂部材表面の溶融樹脂121について、その溶融と該直下領域から外周領域への流動(図6の矢印方向)を促進させることができる。その結果、溶融樹脂と金属部材11との接触面積が拡大され、得られる接合構造において、冷却により溶融樹脂が固化してなる溶融固化域(接合領域)もまた拡大されるため、樹脂部材と金属部材との接合を十分な強度で達成することができる。
回転ツール16の挿入量は、金属部材11の厚みをT(mm)としたとき、Tの近傍であればよく、接合強度のさらなる向上の観点から、好ましくはT-0.5(mm)以上~T(mm)未満)である。本明細書中、回転ツール16の挿入量は、回転ツール16のピン部16aにおける外周部の金属部材表面から厚み方向への挿入量のことである。回転ツール16の挿入量は、回転ツールの位置(挿入量)制御装置を用いると、より精密に制御することができる。
本工程が位置制御方式によって行われる場合において、押込み撹拌工程C2でのツール挿入量及び挿入速度、もしくは挿入時間は、上記挿入量が達成されるように、制御されればよい。
本工程が圧力制御方式によって行われる場合において、押込み撹拌工程C2では、回転ツール16を、第2の加圧力で、第2の加圧時間だけ、所定回転数で回転させる。押込み撹拌工程C2の第2の加圧力及び第2の加圧時間は、本方式においても上記挿入量が達成されるように制御されればよい。第2の加圧力及び第2の加圧時間は、例えば、回転ツール16を金属部材11と樹脂部材12との界面13まで進入させる観点から設定され、押込み撹拌工程C2では、回転ツール16を、第1の加圧力より大きい第2の加圧力(例えば、1500N)で、第1の加圧時間より短い第2の加圧時間(例えば、0.25秒)だけ、所定回転数(例えば、3000rpm)で回転させる。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11を使用する場合、押込み撹拌工程C2における第2の加圧力は、1200N以上1800N未満の値が好ましい。第2の加圧時間は、0.1秒以上3秒未満の値が好ましい。回転ツールの回転数は2000rpm以上4000rpm以下の値が好ましい。
(撹拌維持工程C3)
撹拌維持工程C3は、回転ツール16と受け具17との相互近接を停止することにより、同じく図6に示すように、上記接合境界面13に達しない深さまで進入させた位置(これを「基準位置」という)で回転ツール16の回転動作を継続させる工程である。本工程では摩擦熱がさらに発生し、発生した摩擦熱の大部分が樹脂部材12に移動する。そのため、樹脂部材12における少なくとも回転ツール直下領域の溶融樹脂121が、該直下領域を超えて、その外周領域まで、より一層、流動する(図6の矢印方向)。溶融樹脂は回転ツール直下領域を中心とする略円形状で広がる。
本工程が位置制御方式によって行われる場合において、撹拌維持工程C3でのツール挿入量及び挿入速度、もしくは挿入時間は、上記位置で回転動作が継続される限り特に限定されない。
本工程が圧力制御方式によって行われる場合において、撹拌維持工程C3では、回転ツール16を、第1の加圧力より小さい第3の加圧力(例えば、500N)で、第1の加圧時間より長い第3の加圧時間(例えば、6.75秒)だけ、所定回転数(例えば、3000rpm)で回転させる。第3の加圧力及び第3の加圧時間は、樹脂部材12の広い範囲での十分な軟化・溶融および生産性の観点から設定され、その値は、例えば回転ツール16の回転数や金属部材11の厚みおよび素材の種類等に依存して変化する。例えば、1mm以上2mm以下の厚みのアルミニウム合金製金属部材11を使用する場合、撹拌維持工程C3における第3の加圧力は、100N以上700N未満の値が好ましい。第3の加圧時間は、3.0秒以上10秒以下の値が好ましい。回転ツールの回転数は2000rpm以上4000rpm以下の値が好ましい。
以上、回転ツールを金属部材の接触面上、面方向で移動させることなく、点状に金属部材と樹脂部材との接合を行う場合(点接合)について説明したが、上記面方向において回転ツールを移動させながら、線状に金属部材と樹脂部材との接合を行う場合(線接合、もしくは連続接合)においても、接合界面の溶融固化樹脂が規定の結晶化度(最大結晶化度比)を有する限り、本発明の効果が得られることは明らかである。
[実施例1]
(樹脂部材)
炭素繊維を40重量%含むポリフェニレンサルファイドペレット(PPS-CF40%;ダイセルポリマー社製)を用いて射出成形法により、縦100mm×横30mm×厚み3mm寸法の樹脂部材12を製造した。樹脂部材におけるポリフェニレンサルファイドの凝固点Tsは約250℃であった。
(金属部材)
金属部材としては、5000系のアルミニウム合金製の平板状部材(厚さ1.2mm)を用いた。
(回転ツール)
回転ツールとしては、図4の各部の寸法がD1=10mm、D2=2mm、h=0.35mmの工具鋼製のものを用いた。
(接合方法)
位置制御方式を用いた以下の方法により、金属部材11と樹脂部材12との接合構造体を製造した。
第1ステップ:
金属部材11の端部と樹脂部材12の端部とを図3に示すように重ね合わせた。
第2ステップ:
予熱工程C1を行うことなく、図6に示すように、回転ツール16を金属部材11に押し込んで、金属部材11と樹脂部材12との接合境界面13に達しない深さまで進入させた。このとき、回転ツールの直下領域で溶融している樹脂部材表面の溶融樹脂121が、押圧部材直下領域からその外側に向けて(図6の矢印方向へ)、流動した。押込み撹拌工程C2:挿入量1.0mm、挿入速度6mm/分、ツール回転数3000rpm。
次いで、図7に示すように、回転ツール16を金属部材11から離間させ、回転ツール16が押圧していた金属部材11の押圧領域111押圧領域とその周辺領域の強制冷却を行った(固化工程)。詳しくは、回転ツール16を金属部材11から離間させた時刻をゼロ(秒)としたとき、所定の冷却開始時刻から冷却終了時刻まで、ノズル115から押圧領域111に所定の流量400L/分で15℃の空気流を吹き付けて、押圧領域111の強制冷却を行い、図8に示す接合構造体を得た。ノズル(内径3mm)は、図7に示すように、接合中心(すなわち押圧領域の中心)からの水平距離xが15mmであって、接合中心からの高さyが15mmである位置にノズル先端が配置されるとともに、ノズル向きが接合中心方向に向くように、ノズルを配置させた。
(接合強度)
図9に示すように、金属部材11と樹脂部材12との接合構造体を治具100内に配置した。治具100は、該治具100を下方へ引っ張ることにより樹脂部材12の上端部に下方への力が働くように構成されたものである。治具100を固定し、かつ金属部材11を上方へ引っ張ることにより、樹脂部材12の上端部に下方への力が働き、樹脂部材12の母材強度に影響を受けることなく接合部の剪断強度Sを測定した。
◎◎;6.50≦S(最良);
◎;6.00≦S<6.50(優良);
○;5.00≦S<6.00(良好);
×;S<5.00(不良)。
(温度測定)
冷却開始時刻および冷却終了時刻において押圧領域111における金属部材11と樹脂部材12の界面温度(接合部中心より7.5mm位置)を、K式熱電対により測定した。
(冷却速度)
上記温度測定において、冷却開始時刻および冷却終了時刻だけでなく、それらの間の時刻においても、押圧領域111における金属部材11と樹脂部材12の界面温度を測定した。Ts+50℃となる時刻TTs+50およびTs-50℃となる時刻TTs-50から、平均冷却速度を求めた。
(樹脂結晶化度(最大結晶化度比))
得られた接合構造体から金属部材11を強制的に剥離した。樹脂部材12における金属部材側表面120を観察し、図2に示すように、回転ツール直下領域60(直径D1(mm))と同心の直径1.5×D1の円形線62(破線)上の任意の5箇所で試料を削り取り、DSC(示差走査熱量測定)装置により、前記した方法に従って、結晶化度(最大結晶化度比)を測定および算出した。
[比較例1]
押込み撹拌工程の後、固化工程を行うことなく、室温(20℃)下で放置冷却したこと以外、実施例1と同様の方法により、樹脂部材と金属部材との接合構造体の製造およびその評価を行った。
[実施例2~5および比較例2]
固化工程条件を表に記載のように変更したこと以外、実施例1と同様の方法により、樹脂部材と金属部材との接合構造体の製造およびその評価を行った。
Figure 0007376044000001
本発明に係る接合構造体および接合方法は、自動車、鉄道車両、航空機、家電製品等の分野における金属部材と樹脂部材との接合に有用である。
1:摩擦撹拌接合装置
10:ワーク
11:金属部材
12:樹脂部材
13:金属部材と樹脂部材との接合境界面
16:回転ツール
17:受け具
50:接合構造
100:接合強度を測定するための治具
110:金属部材の回転ツール直下部
P:押圧領域(押圧予定領域)
111:押圧領域(押圧後)
121:回転ツールの直下領域で溶融している溶融樹脂

Claims (12)

  1. 金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による前記金属部材側からの押圧により熱および圧力を付与し、前記樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させる熱圧式接合方法による、金属部材と樹脂部材との接合構造であって、
    前記樹脂部材は、金属部材側表面における溶融固化域で金属部材と接合されており、
    前記溶融固化域は40~72%の結晶化度(最大結晶化度比)を有する、金属部材と樹脂部材との接合構造。
  2. 前記樹脂部材は、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される1種以上のポリマーを含む、請求項1に記載の金属部材と樹脂部材との接合構造。
  3. 前記金属部材はアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されている、請求項1または2に記載の金属部材と樹脂部材との接合構造。
  4. 前記溶融固化域は、前記樹脂部材の前記金属部材側表面に0.50mm以下の厚みを有する、請求項1~のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合構造。
  5. 金属部材と樹脂部材とを重ね合わせ、押圧部材による金属部材側からの押圧により熱および圧力を付与し、前記樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させる熱圧式接合方法による金属部材と樹脂部材との接合方法であって、
    前記固化工程において、前記樹脂部材の溶融固化域が40~72%の結晶化度(最大結晶化度比)を有するように、前記金属部材の押圧領域の直下における前記金属部材と前記樹脂部材との界面の樹脂温度において300℃/秒超の冷却速度で強制冷却を行う、金属部材と樹脂部材との接合方法。
  6. 前記押圧部材を前記金属部材から離間させた後、前記押圧部材が押圧していた金属部材の押圧領域または該押圧領域とその周辺領域にガス流を吹き付けることにより、前記強制冷却を行う、請求項に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  7. 前記樹脂部材の凝固点をTs(℃)としたとき、前記強制冷却を、少なくとも前記押圧領域の金属部材と前記樹脂部材との界面の樹脂温度がTs+50(℃)からTs-50(℃)になるまで行う、請求項5または6に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  8. 前記熱圧式接合方法が、
    金属部材と樹脂部材とを重ね合わせる第1ステップ;および
    押圧部材として回転ツールを回転させつつ、金属部材に押圧して摩擦熱を発生させ、この摩擦熱により樹脂部材を軟化および溶融させた後、固化させて金属部材と樹脂部材とを接合する第2ステップを含む摩擦撹拌接合方法である、請求項のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  9. 前記第2ステップが、前記固化工程の前に、前記回転ツールを金属部材に押し込んで、金属部材と樹脂部材との接合境界面に達しない深さまで進入させる押込み撹拌工程を備えている、請求項に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  10. 前記第2ステップが、前記押込み撹拌工程の前に、前記回転ツールの先端部のみを金属部材の表面部に接触させた状態で回転ツールを回転させる予熱工程をさらに備えている、請求項に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  11. 前記第2ステップが、前記押込み撹拌工程の後であって、前記固化工程の前に、前記回転ツールを接合境界面に達しない深さまで進入させた位置で、回転ツールの回転動作を継続させる撹拌維持工程をさらに備えている、請求項または10に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
  12. 請求項1~のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合構造を得る、請求項11のいずれかに記載の金属部材と樹脂部材との接合方法。
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