JP7375638B2 - 不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法 - Google Patents

不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法に関する。詳しくは、不飽和アルデ
ヒドと酸素含有ガスとを気相で接触酸化し、不飽和カルボン酸を製造する際に用いる、不
飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法に関する。
不飽和アルデヒドと酸素含有ガスとを気相で接触酸化することにより、不飽和カルボン
酸を製造する触媒は、一般にモリブデンを必須成分とする触媒が用いられる。具体的には
アクロレイン等を原料とするアクリル酸、メタクロレイン等を原料とするメタクリル酸を
製造する際に用いる触媒やその製造法の改良は、種々の観点より精力的に取り進められて
いる。
不飽和カルボン酸の製造方法は、触媒が充填された固定床反応器にオレフィンと酸素含
有ガスとを気相で接触酸化することからなる。
固定床反応器に充填された触媒としては、一般的に触媒成分元素の粉体を所定形状に成
形した触媒や、所定形状を有する不活性担体に触媒成分元素を担持した触媒が用いられる
不飽和アルデヒドを気相で接触酸化して不飽和カルボン酸等を製造する際に用いられる
触媒として、モリブデンを必須成分とする触媒成分元素を混合、懸濁、乾燥して粉砕して
粉体を得、次いで、その粉体を担体に担持させて触媒を得る方法が特許文献1~3に提示
されている。
特許文献1には、球状担体に対して、液状バインダーと触媒活性成分を転動造粒機に供
給して特定の相対遠心加速度で造粒して担持触媒とすることにより、機械的強度と不飽和
カルボン酸製造における触媒性能が得られるとしている。特許文献2には、特定のpHを
有する液状バインダーを用いて、乾燥物を粒塊状の担体に担持してアクリル酸製造用触媒
とすることにより、触媒活性に優れ、高い機械的強度を有するとしている。特許文献3に
は、触媒活性成分を含む粉体を担体に被覆するアクリル酸を製造する工程に使用する触媒
の製造において、触媒活性成分の調製時に特定の原料を使用することにより、高活性でか
つ機械的強度の大きい触媒となるとしている。
特開2018-111720号公報 特開2004-160342号公報 特開2001-79408号公報
しかしながら、従前知られた不飽和カルボン酸合成用触媒を製造する方法を用いても、
製造された不飽和カルボン酸合成用触媒の機械的強度や、触媒性能である原料転化率や生
成物選択率は必ずしも満足すべきものではなかった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。すなわち、アクロレイン等
の不飽和アルデヒドを酸素含有ガスと気相接触酸化させて対応するアクリル酸等の不飽和
カルボン酸を合成する際に用いる触媒として、触媒にかかる負荷が高い条件下であっても
、原料の転化率に優れ、、所望とする不飽和カルボン酸の選択率が高く、高収率で製造で
き、且つ、機械的強度が高く、長期間安定的な気相接触酸化反応が可能な触媒を提供する
ことを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、造粒機に、担体、触媒成分
元素を含む粉体及びバインダーを導入し、該担体に該触媒成分元素を含む粉体を担持して
触媒前駆体とする成型工程を含む不飽和カルボン酸合成用触媒を製造する方法において、
該造粒機に、該担体を導入し、次いで該担体の量に対して特定量のバインダーを導入し、
さらに、該触媒成分元素を含む粉体と、該触媒成分元素を含む粉体の量に対して特定量の
バインダーを導入し、触媒前駆体とすることにより、製造された不飽和カルボン酸合成用
触媒は強度が高く、且つ該不飽和カルボン酸合成用触媒を使用してアクロレインを酸素含
有ガスと気相接触酸化すると、触媒にかかる負荷が高い条件下であっても、アクロレイン
の転化率に優れ、且つ、アクリル酸等の不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、結果と
してアクリル酸等の不飽和カルボン酸の収率の向上が可能となることを見いだし、本発明
に至った。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1]造粒機に、担体、触媒成分元素を含む粉体及びバインダーを水溶液として導入し、
該担体に該触媒成分元素を含む粉体を担持して触媒前駆体とする成型工程を含む不飽和カ
ルボン酸製造用触媒を製造する方法であって、
該バインダーがグリセリン及び/又は硫酸アンモニウムであり、
該造粒機に、該担体を導入し、次いで該担体の量に対して0.5質量%以上18質量%
以下のバインダーを導入し、さらに、該触媒成分元素を含む粉体と、該触媒成分元素を含
む粉体の量に対して5質量%以上45質量%以下のバインダーを導入し、触媒前駆体とす
る不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[2]前記造粒機に導入する担体の量に対する、前記造粒機に導入するバインダーの総量
が5質量%以上30質量%以下である[1]に記載の不飽和カルボン酸合成用触媒の製造
方法。
[3]前記造粒機に導入する前記触媒成分元素を含む粉体の量に対する、前記造粒機に導
入するバインダーの総量が10質量%以上40質量%以下である[1]又は[2]に記載
の不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。
[4]前記造粒機に導入する前記バインダーが有機化合物を含む[1]乃至[3]のいず
れかに記載の不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。
[5]前記不飽和カルボン酸合成用触媒の触媒成分元素が下記式(1)で表される[1]
乃至[4]のいずれかに記載の不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。
Mo12CuSbSi (1)
(式(1)中、XはNb及び/又はWを示し、YはMg、Ca、Sr、Ba及びZnから
なる群より選ばれた少なくとも一種の元素を示し、ZはFe、Co、Ni及びBiからな
る群より選ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し
、0<a≦12、0≦b≦12、0<c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦
500、0≦g≦500、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足
させる値である。)
[6][1]乃至[5]のいずれかに記載の製造方法により製造された不飽和カルボン酸
合成用触媒を用いて、アクロレインを酸素含有ガスにより気相接触酸化するアクリル酸の
製造方法。
本発明の製造方法により製造された不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が高く、
且つ該不飽和カルボン酸合成用触媒を使用してアクロレインを酸素含有ガスと気相接触酸
化すると、触媒にかかる負荷が高い条件下であっても、アクロレインの転化率に優れ、且
つ、アクリル酸等の不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、アクリル酸等の不飽和カル
ボン酸の収率を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の説明に限定され
るものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
この発明にかかる不飽和カルボン酸合成用の触媒(以下「触媒」と称する場合がある。
)の製造方法について詳細に説明する。
この発明にかかる触媒は、アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和アルデヒドを原料
とし、酸素含有ガスにより気相接触酸化して、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カル
ボン酸を製造する、不飽和カルボン酸合成用の触媒である。
[触媒の製造方法]
本発明にかかる触媒を製造する方法は、造粒機に、担体、触媒を構成する各成分として
、その成分たる元素(以下、「触媒成分元素」と称する場合がある。)を含む粉体及びバ
インダーを導入して触媒前駆体とする成型工程を含み、該成型工程において、該造粒機に
、該担体を導入し、次いで該造粒機に導入するバインダーの総量のうちの特定量のバイン
ダーを導入し、さらに、該触媒成分元素を含む粉体と、該該造粒機に導入するバインダー
の総量のうちの残りの量のバインダーを導入し、触媒前駆体とすることを特徴とする。
なお、触媒成分元素を含む粉体は、以下の工程を含み、得ることができる。触媒成分元
素を有する化合物を、触媒の供給源となる化合物(以下、「供給源化合物」と称する。)
として用い、この触媒成分元素を有する各供給源化合物を溶媒又は溶液に添加して一体化
し、加熱して調製液を得(調液工程)、次いで、該調製液を乾燥処理して粉体とする(乾
燥工程)ことができる。
又、該成型工程で得られた触媒前駆体は、該触媒前駆体を焼成すること(焼成工程)を
含み、触媒とすることができる。
[調液工程]
前記調製工程は、前記触媒成分元素を含む各供給源化合物を水性系で一体化し、加熱し
て調製液を得る工程である。
前記の水性系で一体化とは、各供給源化合物を水系の溶媒又は溶液に添加して一体化を
行うことをいう。この水系の溶媒は、各供給源化合物を溶解又は懸濁させるための水系媒
体であり、水、若しくはメタノール、エタノール等の水と相溶性を有する有機溶媒、又は
これらの混合物からなる溶媒をいう。また、前記水系の溶液とは、前記の水系の溶媒に1
種又は複数種の供給源化合物を溶解、懸濁又は一体化させた液をいう。
前記の一体化とは、前記各触媒成分元素の供給源化合物の水溶液あるいは水分散液を一
括に、あるいは段階的に混合し、必要に応じて加熱を行うことをいう。具体的には、前記
の各供給源化合物を一括して混合する方法、前記の各供給源化合物を一括して混合し、次
いで加熱する方法、前記の各供給源化合物を段階的に混合する方法、前記の各供給源化合
物を段階的に混合・加熱処理を繰り返す方法、及びこれらの方法を組み合わせる方法があ
げられ、これらのいずれもが、各触媒成分元素の供給源化合物の一体化という概念に含ま
れる。
前記の加熱とは、前記の一体化工程で得られた混合液又は混合分散液を所定温度で所定
時間、撹拌することをいう。この加熱により、混合液又は混合分散液の粘度が上昇し、混
合分散液の場合、その中の固体成分の沈降を緩和し、とりわけ次の乾燥工程での成分の不
均一化を抑制するのに有効となり、得られる最終製品である触媒の原料転化率や生成物選
択率等の触媒活性がより良好となる。
前記加熱における温度は、60℃~100℃が好ましく、60℃~90℃がより好まし
く、70℃~90℃がさらに好ましい。加熱温度が前記範囲内であることにより、製造さ
れた触媒の活性が良好となる可能性がある。
前記加熱にかける時間は、2時間~12時間が好ましく、3時間~8時間がより好まし
い。加熱時間が前記範囲内であることにより、製造された触媒の活性が良好となる可能性
がある。
前記撹拌方法としては、任意の方法を採用することができ、例えば、撹拌翼を有する撹
拌機による方法や、ポンプによる外部循環による方法等が挙げられる。
[供給源化合物]
この触媒は、触媒成分元素としてモリブデン(Mo)、バナジウム(V)を含有するこ
とが好ましく、それ以外の触媒成分元素として、銅(Cu)を含有することがより好まし
く、さらに、アンチモン(Sb)、ケイ素(Si)、ニオブ(Nb)、タングステン(W
)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(
Ba)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ビスマス(
Bi)等の成分を1種又は複数種含有してもよい。
前記モリブデン(Mo)の供給源化合物としては、パラモリブデン酸アンモニウム、三
酸化モリブデン、モリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸等が
挙げられる。
前記バナジウム(V)の供給源化合物としては、バナジン酸アンモニウム、メタバナジ
ン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム等があげら
れる。バナジウムの添加量は、触媒成分元素の原子数比として、モリブデン原子を12と
したとき、0を超えて12以下となるように添加することが好ましく、より好ましくは0
.1以上6以下、更に好ましくは0.5以上5以下、特に好ましくは1以上3以下となる
ように添加する。この範囲内であることにより原料転化率に優れ、高選択率で不飽和カル
ボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
前記ニオブ(Nb)の供給源化合物としては、水酸化ニオブ等があげられる。前記タン
グステン(W)の供給源化合物としては、タングステン酸、またはその塩等が挙げられる
。ニオブ及びタングステンから選ばれる少なくとも一種の元素の添加量は、モリブデンが
12のとき、0以上12以下となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.
1以上6以下、更に好ましくは0.5以上4以下となるように添加する。この範囲内であ
ることにより原料転化率に優れ、高選択率で不飽和カルボン酸を製造することができる触
媒とすることができる。
前記銅(Cu)の供給源化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、塩化第一銅等があげられる

銅の添加量は、触媒成分元素の原子数比として、モリブデン原子を12としたとき、0
を超えて12以下となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1以上6以
下、更に好ましくは0.5以上4以下となるように添加する。この範囲内であることによ
り原料転化率に優れ、高選択率で不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とするこ
とができる。
前記マグネシウム(Mg)の供給源化合物としては、酸化マグネシウム、炭酸マグネシ
ウム、または硫酸マグネシウム等が挙げられる。前記カルシウム(Ca)の供給源化合物
としては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または水酸化カルシウム等が挙げられる。
前記ストロンチウム(Sr)の供給源化合物としては、酸化ストロンチウム、炭酸ストロ
ンチウム、水酸化ストロンチウム、または硝酸ストロンチウム等が挙げられる。前記バリ
ウム(Ba)の供給源化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、酢
酸バリウム、または硫酸バリウム等が挙げられる。前記亜鉛(Zn)の供給源化合物とし
ては、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、または硝酸亜鉛等が挙げられる。
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及び亜鉛からなる群より選ばれ
る少なくとも一種の元素の添加量は、触媒成分元素の原子数比として、モリブデンが12
のとき、0以上8以下となるように添加することが好ましく、より好ましくは0以上6以
下、更に好ましくは0以上4以下となるように添加する。この範囲内であることにより原
料転化率に優れ、高選択率で不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることが
できる。
前記アンチモン(Sb)の供給源化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモ
ン等の酸化アンチモン等や酢酸アンチモン等の3価のアンチモン化合物、5価のアンチモ
ン化合物等があげられる。アンチモンの添加量は、触媒成分元素の原子数比として、モリ
ブデン原子を12としたとき、0以上500以下となるように添加することが好ましく、
より好ましくは0.1以上100以下、更に好ましくは0.2以上50以下となるように
添加する。この範囲内であることにより原料転化率に優れ、高選択率で不飽和カルボン酸
を製造することができる触媒とすることができる。
前記鉄(Fe)の供給源化合物としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、酢酸
第二鉄等が挙げられる。前記コバルト(Co)の供給源化合物としては、硝酸コバルト、
硫酸コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。前記ニッケ
ル(Ni)の供給源化合物としては、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸
ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。前記ビスマス(Bi)の供給源化合物としては
、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス等が挙げられる。
鉄、コバルト、ニッケル及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の
添加量は、触媒成分元素の原子数比として、モリブデンが12のとき、0以上500以下
となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1以上400以下、更に好ま
しくは1以上300以下となるように添加する。この範囲内であることにより原料転化率
に優れ、高選択率で不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
前記ケイ素(Si)の供給源化合物としては、シリカ、粒状シリカ、コロイダルシリカ
、ヒュームドシリカ等が挙げられる。ケイ素の添加量は、触媒成分元素の原子数比として
、モリブデン原子を12としたとき、0以上500以下となるように添加することが好ま
しく、より好ましくは0.1以上400以下、更に好ましくは1以上300以下となるよ
うに添加する。この範囲内であることにより原料転化率に優れ、高選択率で不飽和カルボ
ン酸を製造することができる触媒とすることができる。
前記炭素(C)の供給源化合物としては、該炭素(C)とSiとが一体化した緑色炭化
珪素、黒色炭化珪素などが挙げられ、炭化珪素は微粉末のものが好ましい。
炭素の添加量は、モリブテンが12のとき、hは0以上500以下となるように添加す
ることが好ましく、より好ましくはhが0.1以上400以下、更に好ましくはhが1以
上300以下となるように添加する。この範囲内であることにより原料転化率に優れ、高
選択率で不飽和カルボン酸を製造することができる触媒とすることができる。
[供給源化合物の添加方法]
前記の調液工程において、各供給源化合物の全てを1つの調製液としてもよく、各供給
源化合物をそれぞれ単独で又はいくつかのグループに分けて複数の調製液とし、該複数の
調製液を一度に、若しくは順番に混合して1つの調製液としてもよく、また、1つ若しく
は複数の調製液を乾燥、さらには焼成して固形物とし、該固形物を残りの供給源化合物に
よる調製液に添加し、新たな調製液としてもよい。
[乾燥工程]
得られた調製液は、乾燥工程にて乾燥処理することにより、触媒成分元素を含む粉体(
以下「粉体」と称する場合がある。)が得られる。この乾燥工程における乾燥処理方法に
ついては特に限定はなく、例えば、通常のスプレードライヤー、スラリードライヤー、ド
ラムドライヤー等を用いて粉体を得てもよい。
前記乾燥処理で得られた粉体は、必要に応じて、さらに加熱処理をしてもよい。この加
熱処理は、空気中で200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃の温度域で短時
間に行われる処理である。その方法については特に限定はなく、例えば、通常の箱型加熱
炉、トンネル型加熱炉等を用いて粉体を固定した状態で加熱してもよいし、また、ロータ
リーキルン等を用いて粉体を流動させながら加熱してもよい。
また、乾燥した乾燥物を、さらに粉砕等の処理を経たものも本発明における粉体である

尚、該乾燥工程により得られた粉体の触媒成分元素はモリブデン及びバナジウムを含有
することが好ましく、それ以外に銅を含有することがより好ましく、なかでも、下記の一
般式(1)で表されることがさらに好ましい。粉体の触媒成分元素を前記範囲内とするこ
とで、製造された不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が高く、且つ高負荷条件であ
っても、原料転化率に優れ、且つ、不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、不飽和カル
ボン酸の収率を向上させることが可能となる。
Mo12CuSbSi (1)
(式(1)中、XはNb及び/又はWを示し、YはMg、Ca、Sr、Ba及びZnから
なる群より選ばれた少なくとも一種の元素を示し、ZはFe、Co、Ni及びBiからな
る群より選ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し
、0<a≦12、0≦b≦12、0<c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦
500、0≦g≦500、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足
させる値である。)
[成型工程]
成型工程は、造粒機に、担体、前記の乾燥工程で得られた粉体及びバインダーを導入し
て触媒前駆体とする工程である。
前記造粒機は、例えば該造粒機内の底部に、平らな又は凹凸のある円盤を有しており、
該円盤を回転することにより、該造粒機内に導入した担体を自転運動と公転運動の繰り返
しにより撹拌させ、ここに触媒成分元素を含む粉体及びバインダーを導入し、場合により
その他の添加物を添加し、該粉体を担体に担持することにより触媒前駆体とする方法(以
下「転動造粒法」と称する場合がある。)である。
前記担体は、シリカ、炭化珪素、アルミナ、ムライト、アランダム等の長軸径が好まし
くは2.5mm~10mm、更に好ましくは2.5mm~6mmの球形担体等が挙げられ
る。これらのうち、担体の気孔率は、好ましくは20%~60%、より好ましくは30%
~57%、更に好ましくは40%~55%である。また、担体の吸水率は、好ましくは1
0%~60%、より好ましくは12%~50%、更に好ましくは15%~40%である。
担体の気孔率及び吸水率を前記範囲内とすることで、触媒成分元素を含む粉体を容易に担
体に担持することができる。尚、担体は不飽和アルデヒドを酸素含有ガスにより気相接触
酸化する反応には不活性であることが好ましい。
本発明の触媒の製造法では、前記造粒機に、担体を導入し、次いで該造粒機に該担体の
量に対して0.5質量%以上18質量%以下のバインダー(以下、「バインダーA」と称
する場合がある。)を導入し、さらに、該触媒成分元素を含む粉体と、該触媒成分元素を
含む粉体の量に対して5質量%以上45質量%以下のバインダー(以下「バインダーB」
と称する場合がある。)を導入する。該担体の量に対するバインダーAの量の上限は17
質量%が好ましく、16質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、14質量
%がとりわけ好ましい。該担体の量に対するバインダーAの量の下限は0.6質量%が好
ましく、0.7質量%がより好ましく、0.8質量%がさらに好ましい。該触媒成分元素
を含む粉体の量に対するバインダーBの量の上限は42質量%が好ましく、39質量%が
より好ましく、36質量%がさらに好ましい。該触媒成分元素を含む粉体の量に対するバ
インダーBの量の下限は6質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、8質量%がさら
に好ましい。バインダーAの量、バインダーBの量が前記範囲内であることにより、製造
された不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が高く、且つ高負荷条件であっても、原
料転化率に優れ、且つ、不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、不飽和カルボン酸の収
率を向上させることが可能となる。
該造粒機に、該担体を導入し、次いで該造粒機に該担体の量に対し特定量のバインダー
Aを導入することにより、担体表面を適度なバインダーで覆うこととなり、触媒成分元素
を含む粉体と担体との付着性を向上させることが可能となり、さらに、該触媒成分元素を
含む粉体と、該触媒成分元素を含む粉体の量に対し特定量のバインダーBを導入すること
により、触媒前駆体として最適な細孔構造を形成する可能性があり、結果として、製造さ
れた不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が高く、且つ高負荷条件であっても、原料
転化率に優れ、且つ、不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、不飽和カルボン酸の収率
を向上させることが可能となるのである。
前記バインダーとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピオン酸、マレイン
酸、ベンジルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、セルロース、メチル
セルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール、ステアリン酸またはフェノール等の有機
化合物、硫酸、硫酸アンモニウム、硝酸、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、水等の
無機化合物が挙げられるが、有機化合物を含むことが好ましく、水酸基を有する有機化合
物を含むことがより好ましく、グリセリン及び/又はポリビニルアルコールを含むことが
さらに好ましい。バインダーとして前記化合物を含むことにより、製造された不飽和カル
ボン酸合成用触媒は機械的強度が高く、且つ高負荷条件であっても、原料転化率に優れ、
且つ、不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、不飽和カルボン酸の収率を向上させるこ
とが可能となる。
尚、バインダーのなかでもバインダーAに前記化合物を含むことがとりわけ好ましい。
前記バインダーは、造粒機に導入するときは、水溶液であることが好ましく、濃度は、
2質量%以上50質量%以下が好ましい。下限は3質量%がより好ましい。上限は40質
量%がより好ましい。前記範囲であることにより、造粒機内でバインダーを均一に担体や
粉体に分散することが可能となる。
前記造粒機に、前記触媒成分元素を含む粉体と、バインダーBを導入する方法としては
、(1)触媒成分元素を含む粉体等とバインダーBとを混合して均一混合物を準備し、該
均一混合物を造粒機に導入する方法、(2)触媒成分元素を含む粉体及びバインダーBを
同時に造粒機に導入する方法、(3)触媒成分元素を含む粉体を造粒機内に導入した後、
該造粒機にバインダ―Bを導入する方法、(4)触媒成分元素を含む粉体にバインダーB
を添加して不均一混合物とし、該不均一混合物を造粒機に導入する方法、(5)触媒成分
元素を含む粉体等とバインダーBをそれぞれ分割して同時、交互又は順不同で造粒機に導
入する方法が挙げられる。(1)~(5)を適宜組み合わせて全量添加する等の方法が任
意に採用しうる。このうち(5)においては、例えば触媒成分元素を含む粉体等の造粒機
内壁への付着、触媒成分元素を含む粉体同士の凝集がなく担体上に所定量が担持されるよ
うにオートフィーダー等を用いて添加速度を調節して行うのが好ましい。
本発明の触媒の製造方法では、先述した(1)~(5)を適宜組み合わせる方法をとる
ことができるが、製造された不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が高く、且つ高負
荷条件であっても、原料転化率に優れ、且つ、不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、
不飽和カルボン酸の収率を向上させることが可能となりやすいことより(5)の方法が好
ましい。
尚、(5)の方法において、触媒成分元素を含む粉体より先に造粒機に導入されたバイ
ンダーがあった場合、そのバインダーはバインダーAに相当する。
前記造粒機に導入する担体の量に対する、前記造粒機に導入するバインダーの総量は5
質量%以上30質量%以下であることが好ましい。下限は10質量%がより好ましく、1
3質量%がさらに好ましい。上限は25質量%がより好ましく、22質量%がさらに好ま
しい。前記範囲内とすることで、製造された不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が
高く、且つ高負荷条件であっても、原料転化率に優れ、且つ、不飽和カルボン酸の選択率
が良好であり、不飽和カルボン酸の収率を向上させることが可能となる。
前記造粒機に導入する前記触媒成分元素を含む粉体の量に対する、前記造粒機に導入す
るバインダーの総量は10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。下限は15
質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。上限は35質量%がより好ましく
、33質量%がさらに好ましい。前記範囲内とすることで、製造された不飽和カルボン酸
合成用触媒は機械的強度が高く、且つ高負荷条件であっても、原料転化率に優れ、且つ、
不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、不飽和カルボン酸の収率を向上させることが可
能となる。
前記造粒機に導入する担体の量に対する、前記触媒成分元素を含む粉体の量は20質量
%以上100質量%以下であることが好ましい。下限は30質量%がより好ましく、40
質量%がさらに好ましい。上限は90質量%がより好ましく、80質量%がさらに好まし
い。前記範囲内とすることで、製造された不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が高
く、且つ高負荷条件であっても、原料転化率に優れ、且つ、不飽和カルボン酸の選択率が
良好であり、不飽和カルボン酸の収率を向上させることが可能となる。
成型工程において、担体、粉体及びバインダー以外に、その他の成型助剤を添加しても
よい。その他の成型助剤としては例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、炭化珪素、窒化珪
素、グラファイトなどが挙げられる。
触媒の強度が低いと、該触媒を、アクロレインを酸素含有ガスにより気相接触酸化して
アクリル酸を製造する反応管等に充填する際に、触媒に粉化が生じたり、割れる可能性が
あり、差圧(反応管入口と出口の圧力差)が大きくなる場合がある。差圧が大きくなると
、アクロレインと酸素含有ガスを含む原料混合ガスを触媒が充填された反応管に送風する
コンプレッサーなどに多大な負荷がかかる場合がある。
更に、触媒の強度が低いと、気相接触酸化の進行に比例し、触媒の粉化が加速する場合
があり、時間と共に差圧がさらに上昇する可能性がある。
よって、触媒の強度の指標となる触媒の粉化率は5.0%以下であることが好ましく、
3.0%以下がより好ましく、2.0%以下がさらに好ましい。なお粉化率とは、触媒を
1mの高さより落下した時の触媒サンプル重量に対する微粒重量の割合を示す。
[焼成工程]
前記成型工程で得られた触媒前駆体を、好ましくは300℃~500℃、より好ましく
は350℃~450℃の温度条件にて1時間~16時間程度、適度な酸素雰囲気で焼成す
る。焼成方法としては、前記乾燥工程における加熱処理で用いられる方法を採用すること
ができる。
以上のようにして、機械的強度が高く、高活性であり、目的とする不飽和カルボン酸収
率に優れる触媒を得ることができる。
得られた触媒は触媒成分元素としてモリブデン及びバナジウムを含有することが好まし
く、それ以外に銅を含有することがより好ましく、なかでも、下記の一般式(2)で表さ
れることがさらに好ましい。触媒の触媒成分元素を前記範囲内とすることで、製造された
不飽和カルボン酸合成用触媒は機械的強度が高く、且つ高負荷条件であっても、原料転化
率に優れ、且つ、不飽和カルボン酸の選択率が良好であり、不飽和カルボン酸の収率を向
上させることが可能となる。
Mo12CuSbSi (2)
(式(2)中、XはNb及び/又はWを示し、YはMg、Ca、Sr、Ba及びZnから
なる群より選ばれた少なくとも一種の元素を示し、ZはFe、Co、Ni及びBiからな
る群より選ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し
、0<a≦12、0≦b≦12、0<c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦
500、0≦g≦500、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足
させる値である。)
尚、触媒の触媒成分元素とは触媒から担体を除いたものである。
[用途]
本発明の製造方法により製造された触媒を用いることにより、機械的強度が高く、原料
転化率や生成物選択率等の触媒性能をより向上させることができ、アクロレイン、メタク
ロレイン等の不飽和アルデヒドを酸素含有ガスにより気相接触酸化して、対応するアクリ
ル酸、メタクロレイン等の不飽和アルデヒドを高収率で製造することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、アクロレイン転化率、アクリル酸選択率、アクリル酸収率は、下記の式(1)~
(3)のように定義する。
(1)アクロレイン転化率(モル%)=100×(反応したアクロレインのモル数)/(
供給したアクロレインのモル数)
(2)アクリル酸選択率(モル%)=100×(生成したアクリル酸のモル数)/(転化
したアクロレインのモル数)
(3)アクリル酸収率(モル%)=100×(生成したアクリル酸のモル数)/(供給し
たアクロレインのモル数)
<アクロレインの気相接触酸化反応>
内径7.5mmの反応管に触媒2.42mlを充填した。プロピレンを気相接触酸化し
て得られたガスに酸素と窒素を追加し、下記の組成の原料混合ガスを該反応管入口より導
入し、空間速度を2340/hrで反応評価を行った。熱媒温度は260℃であった。反
応評価結果を表1に示す。
なお、使用した原料混合ガスの組成は、次の通りである。
・アクロレイン:6容量%、スチーム:17容量%、酸素:7容量%、(窒素含有不活
性ガス+その他のガス):70容量%
<触媒の粉化率の測定>
触媒を目開き2.36mmの篩により篩別し、篩上のものを粉化率測定サンプルとした
。アクリル製の高さ1mの円筒(φ66mm)の上部に漏斗(円錐上部口径150mm、
円錐下部口径25mm)を挿入し、円筒下部に受け皿を設置した。該粉化率測定サンプル
約20gを精秤し、漏斗の円錐上部より投入し、該円筒を介して該受け皿に落下させた。
落下した該粉化率測定サンプルを該受け皿より回収し、目開き2.36mmの篩により篩
別した微粒の重量(粉化重量)を測定し、以下の式から触媒粉化率を算出した。
触媒粉化率(%)=(粉化重量/粉化率測定サンプル重量)×100
(実施例1)
容器に温水1800mlを入れ、さらにパラタングステン酸アンモニウム28gを加え
て溶解した。次いで、メタバナジン酸アンモニウム60gを加えて溶解した。次いで、モ
リブデン酸アンモニウム454gをさらに加えて、溶解し溶液を得た(以下、「溶液A」
と称する)。
次に、硫酸銅80gを温水100mlに入れ溶解した溶液を、該溶液Aに添加し、均一
になるように混合した。次いで、この混合した液に、更に水酸化ニオブ34g、三酸化ア
ンチモン13gを加えて、撹拌し、出発原料混合液を得た。
この出発原料混合液を150℃で噴霧乾燥し、次いで、大気中で、加熱温度300℃で
1時間、加熱処理して、乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで該造粒機に導入した該担体の量に対して3.1質量%のバインダーA
を導入した。尚、該バインダーAはグリセリンであり、10質量%の水溶液とした。さら
に、該担持用混合粉体と、該担持用粉体の量に対して21.9質量%のバインダーBとを
それぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することにより担持し、成
形体である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーBはグリセリンと硫酸アンモニウムの混
合物であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更に、該バイン
ダーBは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり、硫酸アン
モニア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸素3体積%
雰囲気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組成比(酸素
を除く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
(実施例2)
実施例1と同様にして乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで該造粒機に導入した該担体の量に対して1.0質量%のバインダーA
を導入した。尚、該バインダーAはグリセリンであり、10質量%の水溶液とした。さら
に、該担持用混合粉体と、該担持用粉体の量に対して30.7質量%のバインダーBとを
それぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することにより担持し、成
形体である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーBはグリセリンと硫酸アンモニウムの混
合物であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更に、該バイン
ダーBは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり、硫酸アン
モニア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸素3体積%
雰囲気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組成比(酸素
を除く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
(実施例3)
実施例1と同様にして乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで該造粒機に導入した該担体の量に対して10.1質量%のバインダー
Aを導入した。尚、該バインダーAはグリセリンであり、10質量%の水溶液とした。さ
らに、該担持用混合粉体と、該担持用粉体の量に対して11.1質量%のバインダーBと
をそれぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することにより担持し、
成形体である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーBはグリセリンと硫酸アンモニウムの
混合物であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更に、該バイ
ンダーBは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり、硫酸ア
ンモニア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸素3体積
%雰囲気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組成比(酸
素を除く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
(実施例4)
実施例1と同様にして乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで該造粒機に導入した該担体の量に対して7.5質量%のバインダーA
を導入した。尚、該バインダーAはグリセリンであり、10質量%の水溶液とした。さら
に、該担持用混合粉体と、該担持用粉体の量に対して14.0質量%のバインダーBとを
それぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することにより担持し、成
形体である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーBはグリセリンと硫酸アンモニウムの混
合物であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更に、該バイン
ダーBは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり、硫酸アン
モニア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸素3体積%
雰囲気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組成比(酸素
を除く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
(実施例5)
実施例1と同様にして乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで該造粒機に導入した該担体の量に対して5.5質量%のバインダーA
を導入した。尚、該バインダーAはグリセリンであり、10質量%の水溶液とした。さら
に、該担持用混合粉体と、該担持用混合粉体の量に対して17.0質量%のバインダーB
とをそれぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することにより担持し
、成形体である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーBはグリセリンと硫酸アンモニウム
の混合物であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更に、該バ
インダーBは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり、硫酸
アンモニア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸素3体
積%雰囲気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組成比(
酸素を除く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
(実施例6)
実施例1と同様にして乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで該造粒機に導入した該担体の量に対して15質量%のバインダーAを
導入した。尚、該バインダーAはグリセリンであり、10質量%の水溶液とした。さらに
、該担持用混合粉体と、該担持用粉体の量に対して7.6質量%のバインダーBとをそれ
ぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することにより担持し、成形体
である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーBはグリセリンと硫酸アンモニウムの混合物
であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更に、該バインダー
Bは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり、硫酸アンモニ
ア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸素3体積%雰囲
気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組成比(酸素を除
く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1と同様にして乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで、該担持用混合粉体と、該担持用粉体の量に対して27.8質量%の
バインダーとをそれぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することに
より担持し、成形体である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーはグリセリンと硫酸アン
モニウムの混合物であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更
に、該バインダーは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり
、硫酸アンモニア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸
素3体積%雰囲気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組
成比(酸素を除く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
(比較例2)
実施例1と同様にして乾燥物を得た。
この乾燥物を、攪拌翼式粉砕機を用いて、200μm以下に粉砕し、粉砕物を得た。こ
の粉砕物を担持用粉体として用いた。この担持用粉体50.6gに鱗片ガラスを該担持用
粉体に対して1.5質量%添加し、均一になるように混合し、担持用混合粉体とした。パ
ン型造粒機にアルミナ-シリカを主成分とする直径4.9mmの球状の不活性担体100
gを導入し、次いで該造粒機に導入した該担体の量に対して19.1質量%のバインダー
Aを導入した。尚、該バインダーAはグリセリンであり、10質量%の水溶液とした。さ
らに、該担持用混合粉体と、該担持用粉体の量に対して2.6質量%のバインダーBとを
それぞれ分割し、分割した担持用混合粉体から先に交互に導入することにより担持し、成
形体である触媒前駆体を得た。尚、該バインダーBはグリセリンと硫酸アンモニウムの混
合物であり、グリセリンと硫酸アンモニウムの質量比は1:3であった。更に、該バイン
ダーBは単一の水溶液であり、該水溶液のグリセリン濃度は10質量%であり、硫酸アン
モニア濃度は30質量%とした。この触媒前駆体を、空気を窒素で希釈した酸素3体積%
雰囲気中で390℃、3時間焼成し触媒を得た。この触媒の触媒成分元素の組成比(酸素
を除く)は、以下であった。
Mo122.40.5Nb1.0Cu1.5Sb0.4
製造された触媒を用いたアクロレインの気相接触酸化反応評価結果を表1に示した。
Figure 0007375638000001
以上より、本発明の製造方法によれば、機械的強度が高く、且つ、アクロレイン転化率
及びアクリル酸選択率がいずれも高く、得られるアクリル酸収率に優れる触媒を製造でき
ることが分かる。

Claims (6)

  1. 造粒機に、担体、触媒成分元素を含む粉体及びバインダーを水溶液として導入し、該担
    体に該触媒成分元素を含む粉体を担持して触媒前駆体とする成型工程を含む不飽和カルボ
    ン酸製造用触媒を製造する方法であって、
    該バインダーがグリセリン及び/又は硫酸アンモニウムであり、
    該造粒機に、該担体を導入し、次いで該担体の量に対して0.5質量%以上18質量%
    以下のバインダーを導入し、さらに、該触媒成分元素を含む粉体と、該触媒成分元素を含
    む粉体の量に対して5質量%以上45質量%以下のバインダーを導入し、触媒前駆体とす
    る不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  2. 前記造粒機に導入する担体の量に対する、前記造粒機に導入するバインダーの総量が5
    質量%以上30質量%以下である請求項1に記載の不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方
    法。
  3. 前記造粒機に導入する触媒成分元素を含む粉体の量に対する、前記造粒機に導入するバ
    インダーの総量が10質量%以上40質量%以下である請求項1又は2に記載の不飽和カ
    ルボン酸製造用触媒の製造方法。
  4. 前記造粒機に導入する前記バインダーが有機化合物を含む請求項1乃至3のいずれか1
    項に記載の不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  5. 前記不飽和カルボン酸製造用触媒の触媒成分元素が下記式(1)で表される請求項1乃
    至4のいずれか1項に記載の不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
    Mo12CuSbSi (1)
    (式(1)中、XはNb及び/又はWを示し、YはMg、Ca、Sr、Ba及びZnから
    なる群より選ばれた少なくとも一種の元素を示し、ZはFe、Co、Ni及びBiからな
    る群より選ばれた少なくとも一種の元素を示す。a~iはそれぞれの元素の原子比を示し
    、0<a≦12、0≦b≦12、0<c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦
    500、0≦g≦500、0≦h≦500の範囲にあり、iは他の元素の酸化状態を満足
    させる値である。)
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法により
    製造された触媒を用いて、アクロレインを酸素含有ガスにより気相接触酸化するアクリル
    酸の製造方法。
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