JP7375481B2 - 太陽光発電パネルの汚れ評価方法及び太陽光発電パネルの汚れ評価システム - Google Patents

太陽光発電パネルの汚れ評価方法及び太陽光発電パネルの汚れ評価システム Download PDF

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Description

本発明は、太陽光発電パネルの汚れ評価方法及び太陽光発電パネルの汚れ評価システムに関する。
太陽光発電装置は野外に設置されるため、風雨による汚れが太陽光発電パネルの表面に付着し、発電効率が低下する。このため、パネル表面の清掃の要否を判断するために、パネル表面の汚れの状態を評価することが行われている。
特許文献1には、太陽光発電システムの各時間帯の発電量データ、及び、前記太陽光発電システムの設置場所における各時間帯の日射量データを収集して記憶装置に記憶し、記憶装置内の情報に基づき、太陽光発電システムの発電損失率を算出し、算出された発電損失率に基づいてパネルが汚れているか否かを判定する太陽光発電管理装置が開示される。
特開2017-204991号公報
しかしながら、特許文献1に開示される装置では、パネル表面の汚れ測定を行わないため、汚れの判定結果が実際の汚れを十分に反映していない可能性がある。また、発電量データを一定期間収集する必要があり、簡易に判定を行うことができない。
本開示は、以下の発明を含む。ただし、本発明は、特許請求の範囲によって定められるものである。
本発明の一態様に係る太陽光発電パネルの汚れ評価方法は、太陽光発電パネルを構成するモジュールの受光面に、不透明な板状部材で一部に孔が形成されている遮光板を被せた状態で、前記孔に光沢計を通して前記受光面に対向させるステップと、前記光沢計によって前記受光面の光沢度を測定するステップと、前記光沢計によって測定された前記光沢度に基づいて前記受光面に付着した汚れを定量評価するステップと、を有する。
本発明の一態様に係る太陽光発電パネルの汚れ評価システムは、不透明な板状部材であって一部に孔が形成されており、太陽光発電パネルを構成するモジュールの受光面に被せられる遮光板と、前記孔に装着され前記受光面に対向させた状態で、前記受光面の光沢度を測定する光沢計と、前記光沢計によって測定された前記光沢度に基づいて前記受光面に付着した汚れを定量評価する評価装置と、を備える。
本発明によれば、太陽光発電パネルの受光面に付着した汚れを簡易且つ正確に定量評価することができる。
実施形態に係る集光型太陽光発電装置の構成を示す斜視図である。 実施形態に係る集光型太陽光発電モジュールの構成の一例を示す斜視図である。 実施形態に係る集光型太陽光発電装置の光学系の最小の基本構成を現す断面図の一例である。 実施形態に係る測定装置の構成及び使用方法の一例を示す斜視図である。 実施形態に係る光沢計の構成の一例を模式的に示す断面図である。 水平なモジュールの長辺側(図1における上下方向)の側面図の略図である。 傾斜しているモジュールの長辺側(図1における上下方向)の側面図の略図である。 モジュールに被せる遮光板と、遮光板における孔の位置の一例を示す斜視図である(遮光板を被せる前の状態)。 モジュールに被せる遮光板と、遮光板における孔の位置の一例を示す斜視図である(遮光板を被せた状態)。 モジュールに被せる遮光板と、遮光板における孔の位置の一例を示す斜視図である(光沢計を装着した状態)。 モジュールに被せる遮光板と、遮光板における孔の位置の他の例を示す斜視図である。 実施形態に係る評価装置の構成の一例を示すブロック図である。 実施形態に係る評価装置による汚れ評価処理の手順を示すフローチャートの一例である。 設定角度20°における第1評価試験の結果を示すグラフである。 設定角度60°における第1評価試験の結果を示すグラフである。 設定角度85°における第1評価試験の結果を示すグラフである。 第2評価試験の結果を示すグラフである。
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本開示による太陽光発電パネルの汚れ評価方法は、太陽光発電パネルを構成するモジュールの受光面に、不透明な板状部材で一部に孔が形成されている遮光板を被せた状態で、前記孔に光沢計を通して前記受光面に対向させるステップと、前記光沢計によって前記受光面の光沢度を測定するステップと、前記光沢計によって測定された前記光沢度に基づいて前記受光面に付着した汚れを定量評価するステップと、を有する。
このような汚れ評価方法では、遮光板を受光面に被せた状態で、孔に光沢計を通して光沢度を測定することにより、光沢計の周囲から外乱光が光沢計に入り込むことによる測定誤差の発生を抑制することができる。これにより、光沢度を用いて受光面の汚れを簡易且つ正確に定量評価することができる。
(2)前記(1)の太陽光発電パネルの汚れ評価方法において、前記光沢計を当てる前記受光面の位置は、前記モジュールの下半分の領域内にあることが好ましい。
モジュールの受光面全体に、受光面を成す集光部の自重による僅かな撓みがあると、雨水がモジュールの表面の下半分に溜まりやすく、汚れも下半分に付着しやすい。従って、下半分を光沢度の測定対象とすることが好ましい。
(3)前記(1)の太陽光発電パネルの汚れ評価方法において、前記光沢計を当てる前記受光面の位置は、前記モジュールの中央であってもよい。
モジュールの受光面全体に、受光面を成す集光部の自重による上下左右の僅かな撓みがあると、雨水がモジュールの表面の中央に溜まりやすく、汚れも中央に付着しやすい。従って、中央を光沢度の測定対象としてもよい。
(4)また、本開示による太陽光発電パネルの汚れ評価システムは、不透明な板状部材であって一部に孔が形成されており、太陽光発電パネルを構成するモジュールの受光面に被せられる遮光板と、前記孔に装着され前記受光面に対向させた状態で、前記受光面の光沢度を測定する光沢計と、前記光沢計によって測定された前記光沢度に基づいて前記受光面に付着した汚れを定量評価する評価装置と、を備える。
このような汚れ評価システムでは、遮光板を受光面に被せた状態で、孔に通した光沢計によって光沢度を測定することにより、光沢計の周囲から外乱光が光沢計に入り込むことによる測定誤差の発生を抑制することができる。これにより、光沢度を用いて受光面の汚れを簡易且つ正確に定量評価することができる。
(5)前記(4)の太陽光発電パネルの汚れ評価システムにおいて、前記遮光板の外形は、前記モジュールの輪郭形状に合致し、前記孔は前記モジュールの下半分の領域に対応する位置に形成されていてもよい。
この場合、遮光板をモジュールに合わせて被せれば、孔がモジュールの下半分にくるようにすることができる。従って、モジュールの下半分の光沢度を測定することが容易である。
(6)前記(4)の太陽光発電パネルの汚れ評価システムにおいて、前記遮光板の外形は、前記モジュールの輪郭形状に合致し、前記孔は前記遮光板の中央に形成されていてもよい。
この場合、遮光板をモジュールに合わせて被せれば、孔は自然に、モジュールの中央にくる。従って、モジュールの中央の光沢度を測定することが容易である。
(7)前記(4)から(6)のいずれかの太陽光発電パネルの汚れ評価システムにおいて、前記孔の内形は、前記光沢計の外形と合致していることが好ましい。
この場合、孔の内壁と光沢計との隙間から外乱光が光沢計に入り込むことによる測定誤差の発生を抑制することができる
(8)前記(4)から(7)のいずれかの太陽光発電パネルの汚れ評価システムにおいて、前記遮光板は樹脂製であることが好ましい。
樹脂製とすることにより、軽量で取り扱い容易であり、受光面を傷つけることもない。軟質の樹脂を選択すれば、受光面に多少の凹凸があっても、受光面との間に隙間が生じないように押し当てることができる。
(9)前記(4)から(8)のいずれかの評価装置において、前記光沢計は前記受光面に対して所定の入射角で投光する発光素子及び所定の反射角で受光する受光素子を含み、前記入射角及び前記反射角は、60°以上90°未満であってもよい。
これにより、発光素子からの入射角度及び受光素子への反射角度を、受光面の汚れの評価に適した角度にすることができ、正確に受光面の汚れを評価することができる。
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。本実施形態では、集光型太陽光発電パネルにおける受光面の汚れを定量評価する方法について説明する。
[1.集光型太陽光発電装置の構成]
以下、本実施形態に係る集光型太陽光発電装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る集光型太陽光発電装置の構成を示す斜視図である。集光型太陽光発電装置100は、上部側で連続し、下部側で左右に分かれた形状の集光型太陽光発電パネル(以下、アレイという。)1と、その支持装置2とを備える。なお、このアレイ1の形状は一例に過ぎない。かかるアレイ1は、背面側の架台(図示せず)上にモジュール1Mを整列させて構成されている。図1の例では、左右のウイングを構成する192(96(=12×8)×2)個と、中央の渡り部分の8個との、合計200個のモジュール1Mの集合体として、アレイ1が構成されている。
支持装置2は、支柱21と、基礎22と、2軸駆動部23と、駆動軸となる水平軸24とを備えている。支柱21は、下端が基礎22に固定され、上端に2軸駆動部23を備えている。支柱21の下端近傍には、電気接続及び電気回路収納のためのボックス(図示せず)が設けられている。
基礎22は、上面のみが見える程度に地中に堅固に埋設される。基礎22を地中に埋設した状態で、支柱21は鉛直となり、水平軸24は水平となる。2軸駆動部23は、水平軸24を、方位角(支柱21を中心軸とした角度)及び仰角(水平軸24を中心軸とした角度)の2方向に回動させることができる。水平軸24は、架台に固定されている。したがって、水平軸24が方位角又は仰角の方向に回動すれば、アレイ1もその方向に回動する。
なお、図1では1本の支柱21でアレイ1を支える支持装置2を示したが、支持装置2の構成は、これに限られるものではない。要するに、アレイ1を、2軸(方位角、仰角)で可動なように支持できる支持装置であればよい。
[2.モジュールの構成例]
図2は、モジュール1Mの構成の一例を示す斜視図である。本例では、モジュール1Mを集光型の太陽光発電モジュールとしている。図において、モジュール1Mは、例えば金属製で長方形の平底容器状の筐体31と、その上に蓋のように取り付けられる集光部32と、を備えている。集光部32は、透明なガラスの裏面に、マトリックス状に並ぶ複数のフレネルレンズ32fが設けられることにより構成されている。集光部32の表面32aは、太陽光を受ける受光面32aである。例えば図示の正方形(10個×14個)の区画の1つ1つが、集光レンズとしてのフレネルレンズ32fであり、太陽光を焦点位置に収束させることができる。
筐体31の底面31b上には、フレキシブルプリント配線板33が配置されている。フレキシブルプリント配線板33上の所定位置にはセル(発電素子)を保持するセルパッケージ34が搭載されている。図中の、二点鎖線の「○」で囲んでいる部位は、受光部Rの拡大図である。受光部Rにおいて、セルパッケージ34上には2次レンズ35があり、2次レンズ35の周りには保護板36がある。2次レンズ35は例えばボールレンズである。保護板36は、例えば、円環状の金属体であり、市販のワッシャを用いることができる。保護板36は2次レンズ35から太陽光の収束光が外れた場合に、収束光がセル周辺に熱的なダメージを与えることを防止している。また、保護板36は、収束光が全て2次レンズ35に入っている場合であっても、筐体31内での散乱光を受けてこれを反射する。
受光部Rは、フレネルレンズ32fの各々に対応して同数、同一間隔で、設けられている。受光部Rと集光部32との間には、遮蔽板37が設けられている。遮蔽板37には、個々のフレネルレンズ32fに対応した位置に、1つのフレネルレンズ32fの外形状と相似な正方形の開口37aが形成されている。フレネルレンズ32fによって収束する光は、開口37aを通過する。太陽光の入射方向と受光部Rの光軸とが大きくずれた場合には、ずれた位置に集光しようとする光は遮蔽板37に当たるようになっている。
図3は、光学系の最小の基本構成を現す断面図の一例である。図3では、太陽光の入射方向が集光部32のフレネルレンズ32fに対して垂直であり、入射方向Asと光軸Axとが互いに平行である(つまり、入射方向Asと光軸Axとが合致している)。このとき、フレネルレンズ32fによって収束させられた光は、遮蔽板37の開口37aを通り抜け、2次レンズ35に入射する。2次レンズ35は、入射した光をセル38に導く。セル38は、セルパッケージ34の中に保持されている。保護板36は、セルパッケージ34の上端に乗るように取り付けられている。2次レンズ35とセル38との間には、光透過性の樹脂39が封入されている。図3に示されるように、フレネルレンズ32fとセル38とを結ぶ光軸Axが太陽光の入射方向Asに合致しているとき、フレネルレンズ32fによって集められた光の全てがセル38に導かれる。セル38は、受けた光の大部分を電気エネルギーに変換して電力を出力する。
[3.測定装置の構成例]
次に、本実施形態に係る太陽光発電パネルの汚れ評価システムの構成例を説明する。図4は、本実施形態に係る測定装置の構成及び使用方法の一例を示す斜視図である。
測定装置400は、光沢計40と、不透明な板状部材である遮光板50とを備える。遮光板50には、その一部に、光沢計40を装着するための孔51が設けられている。図4に示すように、測定装置400は、遮光板50をモジュール1Mの受光面32aに被せた状態で、孔51に光沢計40を差し込み、受光面32aに当接させることによって使用される。遮光板50をモジュール1Mの受光面32aに被せ、光沢計40を装着する作業は、現場の作業者によって行われる。なお、この作業は、例えば、アレイ1を鉛直姿勢にするか又は、水平姿勢にして受光面32aを地面に向けた状態で行われる。
図4において、光沢計40のA矢視図が、その上方に二点鎖線の丸で囲んだ図である。光沢計40は、光の投受光を行う測定窓40aと、その外側にあって測定対象面に当てる当接面40bとを有している。光沢計40は、当接面40bを受光面32aに当てて、測定窓40aを受光面32aと対向させた状態で、受光面32aの光沢度を測定する既知の測定装置である。孔51の内形(大きさ及び形状)は、光沢計40の外形と同じ(厳密には挿通できる程度に僅かに大きい。)であり、孔51に光沢計40を差し込んで当接面40bを受光面32aに当てることができる。遮光板50の四隅をモジュール1Mに合わせて被せることにより、光沢計40の位置が簡単かつ正確に決まる。
本実施形態では、光沢計40を装着する孔51の範囲を除き、受光面32aが遮光板50によって遮光される。仮に、不透明な物体の表面に光沢計を当てるのであれば、このような遮光板50は不要であるが、光を通す集光部32の表面である受光面32aの光沢度を測定する場合は、工夫が必要となる。もし、光沢計40を当てる部位の周囲を遮光板で覆っていなかったとすると、光沢計40の周囲からモジュール1M内に、太陽を含む現場でのあらゆる光源から直接光又は間接光が入る。入った光は、遮蔽板37や筐体31の内壁で散乱し、その一部は、光沢計40の測定窓40aに入り込み、測定誤差を生じさせる外乱光となる。したがって、光沢計40を当てる部位の周りの受光面32aに遮光板50を被せることにより、外乱光が光沢計40に入り込むことによる測定誤差の発生を抑制することができる。
遮光板50は、樹脂製で軽量なものが好ましい。樹脂製であることにより、モジュール1Mの受光面32aに当てても、受光面32aに傷が付かない。また、軽量であることにより取り扱いが容易である。軟質の樹脂を選択することにより、受光面32aに多少の凹凸があっても、受光面32aとの間に隙間が生じないように押し当てることができる。従って、隙間から光がモジュール1M内に入ることを抑制できる。
なお、図4の例では、遮光板50に1つの孔51が設けられているが、複数の孔を設けることもできる。但し、その場合、光沢度の測定時に光沢計40を装着しない孔は、そこから光がモジュール1M内に入らないよう覆う必要がある。
図5は、本実施形態に係る光沢計40の構成の一例を模式的に示す断面図である。光沢計40は、発光素子41と、受光素子42と、制御部43と、筐体44とを備える。
発光素子41は、例えばLED(Light Emitting Diode)、光電子増倍管、半導体レーザー素子等である。発光素子41は、特定の波長の光(例えば、赤外線、可視光線等)を照射することができる。
受光素子42は、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ等のフォトディテクタである。受光素子42は、特定の波長の光(例えば、赤外線、可視光線等)を受光し、電気信号に変換して出力することができる。
制御部43は、発光素子41から放射する光と、受光素子42により受光する対象面(受光面32a)からの反射光との比較に基づいて、対象面の光沢度を算出する。制御部43は、例えば、マイクロコンピュータを含むものであってもよい。光沢度の測定値は、光沢計40の外部に出力され、図示しない表示部にも表示される。
筐体44は、発光素子41、受光素子42、及び制御部43を収容する。
図4に示されるように、具体的な一例では、光沢計40の外部に評価装置60が設けられる。光沢計40の出力は、評価装置60に送られる。光沢計40と、遮光板50と、評価装置60とによって、汚れ評価システム700が構成される。評価装置60は、光沢計40によって測定された光沢度を用いて、受光面32aの汚れを定量評価する。
再び図5を参照する。上記のような構成の光沢計40は、発光素子41及び受光素子42の角度の設定が可能である。光沢計40は、発光素子41によって放射される光の受光面32aに対する入射角、及び受光素子42によって受光される光の受光面32aにおける反射角が同一の角度θに設定される。即ち、受光面32aの法線と発光素子41の光軸とのなす角、及び、受光面32aの法線と受光素子42の光軸とのなす角は同一角度θとされる。このθが光沢計40の設定角度である。
光沢計40の設定角度θは可変であってもよい。例えば、光沢計40は、20°、60°、及び85°の3つの角度で、設定角度θを選択的に変更可能であってもよい。また、さらに細かく設定角度θを変更可能であってもよい。
発光素子41の光軸と受光素子42の光軸は、受光面32aの一点32Mにおいて交わる。この点32Mが光沢計40の測定位置(光沢測定対象位置)である。
モジュール1Mの受光面32aの汚れを測定するには、複数箇所で光沢度を測定して、それらの平均値をとることも考えられる。しかし、アレイ1全体では多数のモジュール1Mがあり、例えばそれらを全て測定する手間を考えると、1つのモジュール1Mについては、代表的な一箇所で測定する方が効率的である。そうすると、「代表的な一箇所」として、どこが好適であるか、ということになる。
調査の結果、モジュール1Mの受光面32aは、(a)全体が均一に汚れる場合と、(b)汚れが一部に偏る場合があることがわかった。(a)の場合は、どこで測定しても測定値は概ね均一になる。(b)の場合は、比較的汚れが少ない箇所を測定してしまうと、汚れている箇所を見逃す可能性がある。つまり、汚れが付着しやすい箇所を「代表的な一箇所」とすることが好ましい。
図6は、水平なモジュール1Mの長辺側(図1における上下方向)の側面図の略図である。なお、図6は、略図であるとともに、説明上、形状を誇張して表す図である。例えば赤道直下の南中時であれば、モジュール1Mが水平で受光面32aが上向きの状態である。このとき、受光面32aは理想的には二点鎖線で示す水平な平面であるべきであるが、実際には、集光部32(図2)の自重により撓み、中央が最も凹んだ状態になっている。この状態で雨が降ると、図示のように雨水が溜まる。雨水が溜まると受光面32に汚れが付着しやすい。同様にモジュール1Mの短辺側も、中央に汚れが付着しやすい。従って、モジュール1Mの受光面32aを真上から見ると、矩形の中央部に最も汚れが付着しやすい。
図7は、傾斜しているモジュール1Mの長辺側(図1における上下方向)の側面図の略図である。なお、図7は、略図であるとともに、説明上、形状を誇張して表す図である。回帰線より高緯度の北半球又は南半球であれば、図6のように、太陽追尾中に仰角が90度(真上を向いて水平)になることはなく、図7に示すように傾斜している。このときも、受光面32aは理想的には二点鎖線で示す傾斜した平面であるべきであるが、実際には、集光部32の自重により撓み、中央が最も凹んだ状態になっている。この状態で雨が降ると、雨は流れ落ちるが、モジュール1Mの受光面32aの下半分は上半分に比べて傾斜が緩く、水の表面張力もあるので、図示のように多少雨水が溜まる。一時的にでも雨水が溜まると受光面32に汚れが付着しやすい。すなわち、モジュール1Mの受光面32aの下半分は上半分に比べて汚れが付着しやすい。
従って、光沢計40による測定位置としては、モジュール1Mの受光面32aの中央か、又は、モジュール1Mの下半分の領域が好適である。中央、又は、下半分の領域内のどちらを選ぶかは、太陽光発電パネルの設置場所における、受光面32aの実際の汚れ方を考慮して選択すればよい。
なお、「中央」とは、幾何学的な中心のみならず、その近傍も含む。また、下半分の「下」とは、例えば仰角90度(水平)未満の姿勢における上下に基づく。下半分の領域内のさらにどの位置か、といえば、例えば中央であるが、少なくとも下半分で測定すれば、測定値の信頼性は高められる。
図8,図9及び図10は、モジュール1Mに被せる遮光板50と、遮光板50における孔51の位置の一例を示す斜視図である。孔51は、遮光板50の中央に形成されている。この遮光板50を、図8の状態からモジュール1Mの受光面32aの全面を覆うように被せると、図9に示す状態となる。さらに、孔51に光沢計40を装着すると、図10の状態となる。図4を参照した図10において、光沢計40の当接面40bは、受光面32aに当接し、測定窓40aは、受光面32aの測定位置32Mに対向している。図10の状態で、モジュール1Mの受光面32aの中央の光沢度を測定することができる。遮光板50を被せていることにより、光沢度測定時に光沢計40に外乱光が入ることは抑制される。
図11は、モジュール1Mに被せる遮光板50と、遮光板50における孔51の位置の他の例を示す斜視図である。孔51は、モジュール1Mの下半分の領域に対応するように遮光板50の下半分の範囲内の位置に形成されている。この遮光板50を、モジュール1Mの受光面32aの全面を覆うように被せて、孔51に光沢計40を装着する。この場合、モジュール1Mの受光面32aの下半分の、光沢度を測定することができる。遮光板50を被せていることにより、光沢度測定時に光沢計40に外乱光が入ることは抑制される。
[4.評価装置の構成例]
光沢計40による測定値は、評価装置60に入力される。評価装置60は、測定値を処理し、モジュール1Mの受光面に付着した汚れを定量評価する。
図12は、本実施形態に係る評価装置60の構成の一例を示すブロック図である。評価装置60は、例えばパーソナルコンピュータであり、プロセッサ61と、一過性メモリ62と、非一過性メモリ63と、入力部64と、表示部65とを備える。
非一過性メモリ63は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク等である。非一過性メモリ63には、プロセッサ61によって実行される評価プログラムが記憶される。
一過性メモリ62は、RAM(Random Access Memory)であり、プロセッサ61によるプログラム実行時の作業領域として利用される。
具体的な一例では、入力部64は、例えば光沢計40に接続可能であり、光沢計40から測定値を受信する。入力部64は、キーボード及びポインティングデバイス(マウス等)でもあり、ユーザからの入力操作を受け付けることができる。ユーザは、入力部64の操作により、光沢計40の測定値を評価装置60に入力可能である。
表示部65は、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等であり、プロセッサ61から与えられた映像信号に応じて、映像を表示する。
[5.太陽光発電パネルの汚れ評価方法]
以下、太陽光発電パネルの汚れ評価方法の具体的な一例について説明する。
本実施形態に係る太陽光発電パネルの汚れ評価方法では、まず、ユーザ(作業者)が集光型太陽光発電装置100において、評価対象とするモジュール1M及び、測定対象とするモジュールの数を決定する。次に、ユーザは、評価対象のモジュール1Mの受光面32aに、遮光板50と、光沢計40とを設置する。このとき、光沢計40は、測定位置32Mに配置される。
光沢計40は受光面32aの測定位置32Mにおける光沢度を測定する。光沢計40は、光沢度の測定値を出力する。光沢計40は、評価装置60に測定値を有線又は無線により送信する。
評価装置60は、例えば、以下のような汚れ評価処理を実行する。図13は、本実施形態に係る評価装置60による汚れ評価処理の手順を示すフローチャートの一例である。
処理開始により、評価装置60は、光沢計40から送信されてくる光沢度の測定値の入力を受け付ける(ステップS1)。評価装置60は、測定値を基準値と比較して評価する(ステップS2)。基準値とは、清掃が必要か否かの閾値である。評価とは、例えば「清掃不要」又は「清掃要」である。そして、評価装置60は、測定値及び評価を記憶する(ステップS3)。これにより、1つのモジュール1Mについての測定及び評価は完了となる。
次に、評価装置60は、測定対象とする全てのモジュール1Mの測定位置での測定値を受け付けたか否かを判定する(ステップS4)。「NO」の場合は、ステップS1からS4までの処理を繰り返し、ステップS4において「YES」になると、結果を表示する(ステップS5)。これにより、測定対象とした全てのモジュール1Mについて、測定値及び清掃が必要か否かの評価が示される。これを見て、作業者は、清掃を行うか否かの判断を行う。
[6.評価試験]
発明者らは、本太陽光発電パネルの汚れ評価方法を評価する試験を実施した。
[6-1.第1評価試験]
発明者らは、光沢計の設定角度20°、60°、85°のそれぞれについて、清掃前の集光型太陽光発電モジュールの受光面の光沢度を測定した。測定位置は、受光面32aの中央、下半分に限らず、外縁部を除く6箇所とし、またフレネルレンズの同心円の位置による影響も考慮して、フレネルレンズ32fの中心位置(32Cとする。)、角部(32Tとする。)、及び外側部位(32Eとする。)のそれぞれとした。
図14は、設定角度20°における試験結果を示すグラフであり、図15は、設定角度60°における試験結果を示すグラフであり、図16は、設定角度85°における試験結果を示すグラフである。図14~図16において、縦軸は光沢度の測定値の平均値を示す。
図14に示すように、設定角度20°のときには、清掃前の光沢度は位置32Cにおいて約39GU(Gloss Unit)であり、位置32Tにおいて約37GUであり、位置32Eにおいて約38GUであった。清掃後の光沢度は位置32Cにおいて約46GUであり、位置32Tにおいて約44GUであり、位置32Eにおいて約47GUであった。
図15に示すように、設定角度60°のときには、清掃前の光沢度は位置32Cにおいて約54GUであり、位置32Tにおいて約53GUであり、位置32Eにおいて約58GUであった。清掃後の光沢度は位置32Cにおいて約78GUであり、位置32Tにおいて約73GUであり、位置32Eにおいて約80GUであった。
図16に示すように、設定角度85°のときには、清掃前の光沢度は位置32Cにおいて約65GUであり、位置32Tにおいて約62GUであり、位置32Eにおいて約66GUであった。清掃後の光沢度は位置32Cにおいて約94GUであり、位置32Tにおいて約94GUであり、位置32Eにおいて約93GUであった。
位置32C,32T,32Eのいずれでも、設定角度60°及び85°において、清掃前と清掃後とにおいて光沢度に顕著な差が見られた。また、設定角度85°の方が、設定角度60°よりも、清掃前と清掃後とでの光沢度の差が顕著であった。これに対して、設定角度20°では、清掃前と清掃後との光沢度が比較的近かった。このため、汚れの評価においては、設定角度が60°以上90°未満が好ましく、さらに好ましくは80°以上90°未満であると判断できる。
図14~図16に示すように、位置32C,32C,32T,32Eのいずれにおいても、清掃前と清掃後とでの光沢度の差を確認できた。このため、位置32C,32C,32T,32Eのいずれも測定位置とすることができる。
[6-2.第2評価試験]
発明者らは、汚れの状態、即ち透光版である集光部の透過率が様々な集光型太陽光発電モジュールに対して、受光面の光沢度を測定した。本試験では、光沢計の設定角度を85°とし、測定位置は前述の6箇所とした。
図17は、試験結果を示すグラフである。図において、縦軸は光沢度の測定値の平均値を示し、横軸は透過率を示す。
図に示すように、光沢度と透光率はよく相関していることが分かる。つまり、受光面の光沢度は透過率、即ち汚れの程度を反映しているといえる。したがって、受光面の光沢度を用いることで、汚れを適切に定量評価することができる。また、光沢度がわかれば透過率が推定できるので、汚れによる出力損失も容易に把握できる。
例えば、汚れによる発電量の低下率が2%以上の場合に、清掃が必要であるとする。この場合、発電低下率2%に対応する透過率は98%であり、透過率98%に対応する光沢度は約78~83GUである。したがって、発電低下率2%以上において清掃が必要であるとする場合には、評価値の基準値を78~83GUに設定することができる。
[7.変形例]
なお、集光型太陽光発電パネルではなく、結晶シリコン型、薄膜シリコン型、化合物型、有機型等の非集光型の太陽光発電パネルに対して上記の実施形態に係る汚れの評価方法を適用してもよい。
[8.まとめ]
以上のように、本実施形態に係る太陽光発電パネルの汚れ評価方法は、モジュール1Mの受光面32aに、不透明な板状部材で一部に孔51が形成されている遮光板50を被せた状態で、孔51に光沢計40を通して受光面32aに対向させるステップと、光沢計40によって受光面32aの光沢度を測定するステップと、光沢計40によって測定された光沢度に基づいて受光面32aに付着した汚れを定量評価するステップと、を有する。
このような汚れ評価方法では、遮光板50を受光面32aに被せた状態で、孔51に通した光沢計40によって光沢度を測定することにより、光沢計40の周囲から外乱光が光沢計40に入り込むことによる測定誤差の発生を抑制することができる。これにより、光沢度を用いて受光面32aの汚れを簡易且つ正確に定量評価することができる。
光沢計40を当てる受光面32aの位置は、汚れが付着しやすいモジュール1Mの中央や下半分の領域内であることが好ましい。
太陽光発電パネルの汚れ評価システム700としては、不透明な板状部材であって一部に孔51が形成されており、モジュール1Mの受光面32aに被せられる遮光板50と、孔51に装着され受光面32aに対向させた状態で、受光面32aの光沢度を測定する光沢計40と、光沢計40によって測定された光沢度に基づいて受光面32aに付着した汚れを定量評価する評価装置60と、を備える。
このような汚れ評価システムでは、遮光板50を受光面32aに被せた状態で、孔51に通した光沢計40によって光沢度を測定することにより、光沢計40の周囲から外乱光が光沢計40に入り込むことによる測定誤差の発生を抑制することができる。これにより、光沢度を用いて受光面の汚れを簡易且つ正確に定量評価することができる。
遮光板50の外形は、モジュール1Mの輪郭形状に合致し、孔51は、汚れの付着しやすい箇所で光沢度を測定できるよう、遮光板50の中心、又は、モジュール1Mの下半分の領域に対応する遮光板50の位置に形成されることが好ましい。
[9.補記]
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
100 集光型太陽光発電装置
1 アレイ
2 支持装置
1M 集光型太陽光発電モジュール
21 支柱
22 基礎
23 軸駆動部
24 水平軸
31 筐体
31b 底面
32 集光部
32a 受光面
32f フレネルレンズ
32M 測定位置
32C 中心位置
32T 角部
32E 外側部位
33 フレキシブルプリント配線板
34 セルパッケージ
35 2次レンズ
36 保護板
37 遮蔽板
37a 開口
38 セル
39 樹脂
400 測定装置
40 光沢計
40a 測定窓
40b 当接部
41 発光素子
42 受光素子
43 制御部
44 筐体
50 遮光板
51 取付穴
60 評価装置
61 プロセッサ
62 一過性メモリ
63 非一過性メモリ
64 入力部
65 表示部
700 評価システム
Ax 光軸
As 入射方向
R 受光部

Claims (9)

  1. 太陽光発電パネルを構成するモジュールの受光面に、不透明な板状部材で一部に孔が形成されている遮光板を被せた状態で、前記孔に光沢計を通して前記受光面に対向させるステップと、
    前記光沢計によって前記受光面の光沢度を測定するステップと、
    前記光沢計によって測定された前記光沢度に基づいて前記受光面に付着した汚れを定量評価するステップと、
    を有する、太陽光発電パネルの汚れ評価方法。
  2. 前記光沢計を対向させる前記受光面の位置は、前記モジュールが仰角90度未満の姿勢を取った場合における前記モジュールの下半分の領域内にある請求項1に記載の、太陽光発電パネルの汚れ評価方法。
  3. 前記光沢計を対向させる前記受光面の位置は、前記モジュールの中央である請求項1に記載の、太陽光発電パネルの汚れ評価方法。
  4. 不透明な板状部材であって一部に孔が形成されており、太陽光発電パネルを構成するモジュールの受光面に被せられる遮光板と、
    前記孔に装着され前記受光面に対向させた状態で、前記受光面の光沢度を測定する光沢計と、
    前記光沢計によって測定された前記光沢度に基づいて前記受光面に付着した汚れを定量評価する評価装置と、
    を備える、太陽光発電パネルの汚れ評価システム。
  5. 前記遮光板の外形は、前記モジュールの輪郭形状に合致し、前記孔は前記モジュールが仰角90度未満の姿勢を取った場合における前記モジュールの下半分の領域に対応する位置に形成されている、請求項4に記載の、太陽光発電パネルの汚れ評価システム。
  6. 前記遮光板の外形は、前記モジュールの輪郭形状に合致し、前記孔は前記遮光板の中央に形成されている、請求項4に記載の、太陽光発電パネルの汚れ評価システム。
  7. 前記孔の内形は、前記光沢計の外形と合致している、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の、太陽光発電パネルの汚れ評価システム。
  8. 前記遮光板は樹脂製である請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の、太陽光発電パネルの汚れ評価システム。
  9. 前記光沢計は前記受光面に対して所定の入射角で投光する発光素子及び所定の反射角で受光する受光素子を含み、前記入射角及び前記反射角は、60°以上90°未満である、
    請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の太陽光発電パネルの汚れ評価システム。
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