JP7374184B2 - 焼結体の製造方法、および圧粉成形体 - Google Patents

焼結体の製造方法、および圧粉成形体 Download PDF

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Description

本開示は、焼結体の製造方法、および圧粉成形体に関する。
本出願は、2019年4月24日出願の日本出願第2019-082632号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
圧粉成形体を用いた焼結体の製造方法として、特許文献1に記載の方法がある。この方法は、まず鉄系の金属粉末を含む原料粉末を一軸加圧して平均相対密度が93%以上の圧粉成形を作製する。次に、圧粉成形体を機械加工して加工成形体を作製する。そして、加工成形体を焼結して焼結体を得る。
日本国特開2017-186625号公報
本開示の焼結体の製造方法は、無機材料からなる粉末を含む原料粉末を用意する工程と、前記原料粉末を金型内に充填して加圧し、相対密度が93%以上の高密度領域と、相対密度が93%未満の低密度領域とを有する圧粉成形体を作製する工程と、前記圧粉成形体の少なくとも前記高密度領域を機械加工して加工成形体を作製する工程と、前記加工成形体を焼結して焼結体を得る工程とを備え、前記金型の軸方向に対して直交する横断面における前記金型で構成されるキャビティの周縁の形状は、前記金型を用いた成形の際に前記金型の内周面にかかる最大応力が、周縁の形状が円形であって前記キャビティと同一の面積を有する仮想キャビティを備えた仮想金型を用いた成形の際に前記仮想金型の内周面にかかる仮想最大応力の2.6倍以下となる形状である。
本開示の圧粉成形体は、無機材料の粉末を含む圧粉成形体であって、円柱、円筒、楕円柱、又は楕円筒の形状を有し、前記圧粉成形体の内周側及び外周側の一方に位置する高密度領域と、前記圧粉成形体の内周側及び外周側の他方に位置する低密度領域とを備え、前記高密度領域の相対密度が93%以上であり、前記低密度領域の相対密度が93%未満である。
図1は実施形態に係る製造方法に用いる金型の平面図である。 図2Aは実施形態に係る製造方法の圧縮前の金型の状態を示す説明図である。 図2Bは実施形態に係る製造方法の圧縮後の金型の状態を示す説明図である。 図3Aは実施形態に係る製造方法の前半の説明図である。 図3Bは実施形態に係る製造方法の後半の説明図である。 図4Aは実施形態に係る製造方法の途中で得られる圧粉成形体の平面図である。 図4Bは実施形態に係る製造方法の途中で得られる加工成形体の平面図である。 図5は実施形態に係る製造方法で得られた焼結体の斜視図である。 図6は試料No.1からNo.5の金型の内周面の形状を示す説明図である。 図7は試料No.1とNo.6の金型の内周面の形状を示す説明図である。 図8は試料No.1の金型における応力分布図である。 図9は試料No.2の金型における応力分布図である。 図10は試料No.3の金型における応力分布図である。 図11は試料No.4の金型における応力分布図である。 図12は試料No.5の金型における応力分布図である。 図13Aは試料No.6の金型における応力分布図である。 図13Bは図13Aの部分拡大図である。 図14は試料No.1からNo.5の金型の周方向の応力の分布を示すグラフである。 図15は金型の長/短比と最大応力の比率との関係を示すグラフである。
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に係る焼結体の製造方法によれば、焼結体よりも加工負荷の小さな圧粉成形体に対して切削加工などの機械加工を施すことで、複雑な形状の焼結体を効率的に得ることができる。一方で、さらなる焼結体の軽量化やコスト低減に対するニーズが高い。
そこで、本開示の目的の一つは、部分的に密度の異なる領域を有する圧粉成形体を提供することにある。また、本開示の他の目的は、上記圧粉成形体を用いた焼結体の製造方法を提供することにある。
[本開示の効果]
本開示の焼結体の製造方法によれば、密度の異なる領域を有する焼結体を成形時の金型を損傷させることなく効率的に製造することができる。
本開示の圧粉成形体によれば、密度の異なる領域を有する焼結体の前駆体として利用でき、焼結体に求められる種々の複雑な形状の加工が容易に行える。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)実施形態に係る焼結体の製造方法は、
無機材料からなる粉末を含む原料粉末を用意する工程と、
前記原料粉末を金型内に充填して加圧し、相対密度が93%以上の高密度領域と、相対密度が93%未満の低密度領域とを有する圧粉成形体を作製する工程と、
前記圧粉成形体の少なくとも前記高密度領域を機械加工して加工成形体を作製する工程と、
前記加工成形体を焼結して焼結体を得る工程とを備え、
前記金型の軸方向に対して直交する横断面における前記金型で構成されるキャビティの周縁の形状は、前記金型を用いた成形の際に前記金型の内周面にかかる最大応力が、周縁の形状が円形であって前記キャビティと同一の面積を有する仮想キャビティを備えた仮想金型を用いた成形の際に前記仮想金型の内周面にかかる仮想最大応力の2.6倍以下となる形状である焼結体の製造方法。
前記金型を用いた成形の際に前記金型の内周面にかかる最大応力の、前記仮想金型を用いた成形の際に前記仮想金型の内周面にかかる仮想最大応力に対する比率を「最大応力の比率」ということがある。上記焼結体の製造方法によれば、効率的に焼結体を製造することができる。焼結体よりも遥かに加工負荷の小さい圧粉成形体に対して機械加工を行うからである。圧粉成形体に対する機械加工により、複雑な形状が求められる焼結体であっても効率的な加工が可能である。また、上記焼結体の製造方法によれば、圧粉成形体の成形時に、金型の損傷を大幅に低減又は防止することができる。金型の軸方向に対して直交する横断面における金型で構成されるキャビティの周縁の形状を、最大応力の比率が2.6以下となる形状にすることで、原料粉末を加圧する際、金型に局所的な応力の集中が生じ難く、金型が割れるなどの損傷を生じることが実質的にないからである。そして、上記焼結体の製造方法によれば、圧粉成形体の全体を高密度にする場合に比べて、原料粉末の使用量を削減でき、それに伴って焼結体も軽量化できる。圧粉成形体が高密度領域だけでなく、低密度領域も備えているため、全体としての質量を軽減できるからである。この高密度領域は、焼結体とした際に、高強度・高剛性・耐摩耗性が求められる摺動箇所に形成することで、焼結体の機械的特性を向上させることができる。
(2)実施形態に係る焼結体の製造方法の一形態として、前記無機材料が、鉄系金属及び非鉄金属の少なくとも一方を含む形態を挙げることができる。
上記形態によれば、ギアやスプロケットなど、鉄系金属や非鉄金属などの金属部材を焼結体で製造することに好適である。
(3)実施形態に係る焼結体の製造方法の一形態として、前記圧粉成形体は、内周及び外周を備えた環状の形状を有し、前記高密度領域が前記圧粉成形体の前記内周側及び前記外周側の一方に位置し、前記低密度領域が前記圧粉成形体の前記内周側及び前記外周側の他方に位置する形態を挙げることができる。
上記形態によれば、ギアなどのように、周方向に摺動箇所が連続する焼結部材を効率的に製造することができる。例えば、外歯歯車であれば、単純形状の圧粉成形体の外周側を高密度領域とし、内周側を低密度領域とすれば、歯を高剛性で耐摩耗性に優れるものとできる。内歯歯車であれば、単純形状の圧粉成形体の内周側を高密度領域とし、外周側を低密度領域とすれば、歯を高剛性で耐摩耗性に優れるものとできる。
(4)実施形態に係る焼結体の製造方法の一形態として、前記高密度領域と前記低密度領域の相対密度差が3%以上である形態を挙げることができる。
上記形態によれば、圧粉成形体、延いては最終的に得られる焼結体の十分な軽量化を図ることができる。高密度領域と低密度領域との相対密度差がある程度大きければ、焼結体全体を軽量化する効果が大きいからである。
(5)実施形態に係る焼結体の製造方法の一形態として、前記圧粉成形体の形状が、円柱、円筒、楕円柱、又は楕円筒である形態を挙げることができる。
上記形態によれば、原料粉末の加圧時に金型に局所的な応力が作用することを十分に抑制でき、金型の損傷を効果的に低減できる。圧粉成形体の形状が円柱や円筒などの単純形状であるため、原料粉末を加圧する際、金型に局所的な応力の集中が生じ難く、金型が割れるなどの損傷を生じることが実質的にないからである。
(6)実施形態に係る焼結体の製造方法の一形態として、前記金型は、前記原料粉末の外周に配置されるダイを備え、
前記ダイの内周縁は円弧状の曲線を有し、
前記曲線の最小半径Rが10mm以上である形態を挙げることができる。
上記形態によれば、ダイの内周縁が半径10mm未満の曲線を有しないため、原料粉末の加圧時に金型に局所的な応力が作用することを十分に抑制でき、金型の損傷を効果的に低減できる。
(7)実施形態に係る焼結体の製造方法の一形態として、前記焼結体が外歯歯車又は内歯歯車である形態を挙げることができる。
上記形態によれば、高剛性や耐摩耗性が求められる歯車の歯を高密度領域で形成することで、優れた機械特性の歯車を焼結体で得ることができる。
(8)実施形態に係る焼結体の製造方法の一形態として、前記高密度領域の相対密度が97%以上である形態を挙げることができる。
上記形態によれば、高密度領域を特に高密度にすることで、焼結体にほぼ空孔のない領域を形成でき、高い剛性や耐摩耗性を持った焼結体とすることができる。
(9)実施形態に係る圧粉成形体は、無機材料の粉末を含む圧粉成形体であって、
円柱、円筒、楕円柱、又は楕円筒の形状を有し、
前記圧粉成形体の内周側及び外周側の一方に位置する高密度領域と、前記圧粉成形体の内周側及び外周側の他方に位置する低密度領域とを備え、
前記高密度領域の相対密度が93%以上であり、前記低密度領域の相対密度が93%未満である。
上記圧粉成形体によれば、原料粉末を圧縮する際に金型が損傷することを抑制できる。圧粉成形体の形状が、円柱、円筒などの単純形状であるため、金型の局所に応力が集中し難いからである。複雑な形状が求められる焼結体の素材として好適に利用できる。圧粉成形体は、当該成形体を構成する個々の粒子同士が結合しているわけではない。この圧粉成形体の特性により、焼結体に比べて切削加工などの加工負荷が遥かに小さく、効率的に加工が行えるからである。特に、上記圧粉成形体は、摺動箇所が高剛性で耐摩耗性に優れる焼結体の素材として好適に利用できる。高密度領域と低密度領域を備えるため、圧粉成形体の高密度領域を焼結体の摺動箇所とすれば、摺動箇所が高剛性で耐摩耗性に優れる焼結体とできるからである。さらに、圧粉成形体の原料粉末の削減や軽量化を実現できる。圧粉成形体の全体が高密度領域ではなく、低密度領域をも備えるからである。
(10)実施形態に係る圧粉成形体の一形態として、前記無機材料が、鉄系金属及び非鉄金属の少なくとも一方を含む形態を挙げることができる。
上記形態によれば、ギアやスプロケットなど、鉄系金属や非鉄金属などの金属からなる焼結体の素材として圧粉成形体を好適に利用できる。
(11)実施形態に係る圧粉成形体の一形態として、前記高密度領域と前記低密度領域の相対密度差が3%以上である形態を挙げることができる。
上記形態によれば、上記圧粉成形体を素材とする焼結体の十分な軽量化を図ることができる。高密度領域と低密度領域との相対密度差がある程度大きければ、焼結体全体を軽量化する効果が大きいからである。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の具体例を説明する。図において同一符号は同一名称物を意味する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
[実施形態1]
≪焼結体の製造方法の概要≫
実施形態に係る焼結体の製造方法は、下記工程を備える。
S1.準備工程:無機材料からなる粉末を含む原料粉末を用意する。
S2.成形工程:原料粉末を金型内に充填して加圧し、相対密度が93%以上の高密度領域と、相対密度が93%未満の低密度領域とを有する所定形状の圧粉成形体を作製する。
S3.加工工程:圧粉成形体の少なくとも高密度領域を機械加工して加工成形体を作製する。
S4.焼結工程:加工成形体を焼結して焼結体を得る。
S5.仕上げ工程:焼結体の実寸法を設計寸法に近づける仕上げ加工を行なう。
以下、各工程を詳細に説明する。
≪S1.準備工程≫
[無機材料の粉末]
無機材料の粉末は、焼結体を構成する主たる材料である。無機材料からなる粉末には、金属粉末やセラミックス粉末が含まれる。金属粉末には、鉄系粉末や、非鉄金属粉末が含まれる。鉄系粉末には、純鉄粉や鉄を主成分とする鉄合金粉を用いることが挙げられる。ここで、「鉄を主成分とする鉄合金」とは、原料粉末の構成成分として、鉄元素を50質量%超、好ましくは80質量%以上、更に90質量%以上含有することを意味する。鉄合金としては、Cu(銅),Ni(ニッケル),Sn(スズ),Cr(クロム),Mo(モリブデン),Mn(マンガン),Co(コバルト),Si(ケイ素),Al(アルミニウム),P(リン),Nb(ニオブ),V(バナジウム)及びC(炭素)からなる群より選択される少なくとも1種の合金化元素を含有するものが挙げられる。上記合金化元素は、鉄系焼結体の機械的特性の向上に寄与する。上記合金化元素のうち、Cu,Ni,Sn,Cr,Mo,Mn,Co,Si,Al,P,Nb,及びVの含有量は、合計で0.5質量%以上5.0質量%以下、更に1.0質量%以上3.0質量%以下とすることが挙げられる。Cの含有量は、0.2質量%以上2.0質量%以下、更に0.4質量%以上1.0質量以下とすることが挙げられる。また、金属粉末に鉄粉を用い、この鉄粉に上記合金化元素の粉末(合金化粉末)を添加してもよい。この場合、原料粉末の段階では金属粉末の構成成分が鉄や合金化元素であるが、後の焼結工程で焼結することによって鉄が合金化元素と反応して合金化される。
非鉄金属の粉末としては、上記Cu,Ni,Sn,Cr,Mo,Mn,Co,Si,Al,P,Nb,及びVの他、Ti、Zn、Zr、Ta、及びWからなる群より選択される少なくとも一種等が挙げられる。非鉄金属を主成分とする原料粉末としても良い。「非鉄金属を主成分とする原料粉末」とは、原料粉末の構成成分として、非鉄金属粉末を50質量%超、好ましくは80質量%以上、更に90質量%以上含有することを意味する。非鉄金属粉末も、各構成元素単体の粉末を原料粉末として用いても良いし、予め各構成元素を合金化した合金粉末を原料粉末として用いても良い。非鉄金属の合金の具体例としては、銅合金、アルミニウム合金、チタン合金などが挙げられる。
原料粉末における金属粉末(合金化粉末を含む)の含有量は、例えば、90質量%以上、更に95質量%以上とすることが挙げられる。金属粉末には、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、カルボニル法、還元法などにより作製したものを利用できる。
さらに必要に応じて、原料粉末にはセラミックス粉末が含有されていても良い。セラミックスの具体例としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素などが挙げられる。セラミックス粉末の含有量は、20質量%以下、特に10質量%以下である。セラミックス粉末は原料粉末に含まれていなくても良い。
原料粉末の平均粒径、特に金属粉末の平均粒径は、例えば、20μm以上200μm以下、更に50μm以上150μm以下とすることが挙げられる。原料粉末(金属粉末)の平均粒径を上記範囲内とすることで、取り扱い易く、後の成形工程(S2)において加圧成形し易い。更に、金属粉末の平均粒径を20μm以上とすることで、原料粉末の流動性を確保し易い。金属粉末の平均粒径を200μm以下とすることで、緻密な組織の焼結体を得易い。金属粉末の平均粒径は、金属粉末を構成する粒子の平均粒径のことであり、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した体積粒度分布における累積体積が50%となる粒径(D50)とする。微粒の金属粉末を利用することで、焼結部材の表面粗さを小さくしたり、コーナーエッジをシャープにすることができる。
[その他]
金型を用いたプレス成形では、無機材料からなる粉末と潤滑剤とを混合した原料粉末を用いることが一般的である。金型への無機材料からなる粉末の焼き付きを防止するためである。しかし、本例では、原料粉末に潤滑剤を含ませないか、含ませても原料粉末全体の0.3質量%以下とする。これは、原料粉末における金属粉末の割合が低下することを抑制し、後述する成形工程で相対密度が93%以上の高密度領域を有する圧粉成形体を得るためである。但し、後の成形工程で相対密度が93%以上の高密度領域を有する圧粉成形体を作製できる範囲で、微量の潤滑剤を原料粉末に含ませることは許容される。潤滑剤として、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸を利用することができる。なお、この明細書において、原料粉末に混合して用いられる潤滑剤を内部潤滑剤と呼ぶことがあり、後述するように、原料粉末に混合することなく、金型に塗布する潤滑剤を外部潤滑剤と呼ぶことがある。
後述する加工工程において圧粉成形体に割れや欠けが生じることを抑制するために、原料粉末に有機バインダーを添加しても構わない。有機バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、パラフィン、各種ワックスなどが挙げられる。有機バインダーは、必要に応じて添加すればよく、添加しなくてもよい。有機バインダーを添加する場合、後の成形工程で相対密度が93%以上の高密度領域を有する圧粉成形体を作製できる程度の添加量とする必要がある。有機バインダーの添加量は、例えば原料粉末全体に対して0.9質量%以下とすることが挙げられる。
≪S2.成形工程≫
成形工程では、金型を用いて原料粉末を加圧することで、圧粉成形体を作製する。金型は、例えば、ダイと、その上下の開口部に嵌め込まれる複数のパンチとを備え、ダイのキャビティに充填された原料粉末を上パンチと下パンチとの間で圧縮する構成が挙げられる。圧粉成形体は、所定の高密度領域と低密度領域とを有するように加圧する必要があり、互いに独立して進退する複数のパンチを用いることが好適である。具体的には、上パンチと下パンチの少なくとも一方のパンチを内側パンチと外側パンチで構成することが挙げられる。上パンチと下パンチの双方を内側パンチと外側パンチとで構成することが好適である。上パンチと下パンチの少なくとも一方のパンチは、必要に応じて、内側パンチ、中間パンチ、外側パンチなど、三段以上のパンチとしてもよい。
上記金型内の横断面の輪郭形状は、最大応力の比率が2.6以下となる形状とする。この横断面とは、金型の軸方向に対して直交する断面のことである。金型内の輪郭形状とは、上記横断面において、金型で構成されるキャビティの周縁の形状のことである。上記のように、最大応力の比率とは、上記金型を用いた成形の際に上記金型の内周面にかかる最大応力の、周縁の形状が円形であって上記キャビティと同一の面積を有する仮想キャビティを備えた仮想金型を用いた成形の際に上記仮想金型の内周面にかかる仮想最大応力に対する比率をいう。この最大応力の比率は小さいほど金型に応力の集中が生じ難いことを示す。金型の最大応力の比率が2.6以下であれば、圧粉成形体の成形時、金型に対する応力の集中を抑制できる。この応力の集中の抑制に伴い、金型の損傷を抑制することができる。最大応力の比率は、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.0以下であり、特に好ましくは1.5以下である。
このような金型を用いて、中心に貫通孔を有する扁平な円筒部材で、内周及び外周を備えた環状の形状を有し、外周側が高密度領域、内周側が低密度領域の圧粉成形体を成形する場合を例に、成形時の金型の動作を説明する。以下、成形工程について、成形工程A~成形工程Cの3つの異なる態様を説明する。
(成形工程A)
成形工程Aに用いる金型1Aは、例えば、図1に示すように、円筒状のダイ10と、そのダイ10の中心部に配置される丸棒状のコアロッド20とを備え、ダイ10の内周面とコアロッド20の外周面との間にダイ孔12が形成されている。ダイ孔12には、円筒状の下パンチ32と上パンチ34とが配置される(図2A)。ここで、パンチ30は、図2Aに示すように、内周側に配置される内側下パンチ32iと、その外側に配置される外側下パンチ32oとの一対の筒状のパンチとし、上パンチ34は単一の筒状のパンチとする。
まず、コアロッド20の上端面をダイ10の上端面から突出させた状態で、上パンチ34を上昇させ、下パンチ32を下降させた状態とする。その際、下パンチ32は、内側下パンチ32iよりも外側下パンチ32oをより深い位置まで下降させた状態とする。つまり、ダイ10の内周面、コアロッド20の外周面、及び両下パンチ32i,32oの上端面で囲まれる空間がキャビティとなり、キャビティの底面を構成する内側下パンチ32iと外側下パンチ32oの各上端面の間には、段差が形成される。
このキャビティに原料粉末100を充填する。キャビティの底面には段差があり、外周側の方が内周側よりも深くなっているため、外周側の原料粉末100の充填量が内周側の原料粉末100の充填量よりも多いことになる。
続いて、両下パンチ32i,32oを上昇させると共に、上パンチ34を下降させる。この際、内側下パンチ32iよりも外側下パンチ32oを高速に上昇させ、図2Bに示すように、両下パンチ32i,32oが同時に同じ位置で上死点に達するようにする。それにより、両下パンチ32i,32oの上端面が最終到達位置で面一となる。但し、両下パンチ32i,32oの上端面が最終到達位置で面一とならなくてもよい。この原料粉末100の圧縮により、原料粉末100の充填量が多い外周側は、その充填量が少ない内周側に比べて高圧縮され、厚みが均一な圧粉成形体40が成形される。よって、この圧粉成形体40は、外周側に高密度領域40Hが、内周側に低密度領域40Lが形成され、中心部に軸孔となる貫通孔が形成される。
この状態から、上パンチ34を上方に後退させる。両下パンチ32i,32oは、その上端面がダイ10の上端面と面一になる位置まで上昇させる。コアロッド20は、その上端面がダイ10の上端面と面一以下になる位置まで下降させる。以上の各パンチ32i,32o,34とコアロッド20の動作により、圧粉成形体40は両下パンチ32i,32oの上端面に載置されて、ダイ10の端面上に露出されることになるため、容易に取り出せる。
(成形工程B)
成形工程Aでは、下パンチ32が内側下パンチ32iと外側下パンチ32oの一対のパンチで構成された金型1Aを用いたが、成形工程Bでは、上パンチ34も内周側に配置される内側上パンチ34iと、その外側に配置される外側上パンチ34oの一対のパンチで構成された金型(図3A、図3B)を用いて成形を行う。他の金型の構成や成形する圧粉成形体は成形工程Aと共通である。
まず、内周側に位置する低密度領域の成形を行う。図3Aの左側に示すように、コアロッド20の上端面をダイ10の上端面よりも上方に位置させる。両上パンチ34i,34oを上方に後退させた状態で、外側下パンチ32oの上端面をダイ10の上端面と面一にし、内側下パンチ32iの上端面をダイ10の上端面よりも下方に位置させる。この状態において、外側下パンチ32oの内周面、コアロッド20の外周面、及び内側下パンチ32iの上端面で囲まれる空間が低密度領域を成形するためのキャビティLとなる。
次に、キャビティL内に原料粉末100を充填する。図3Aの右側に示すように、内側下パンチ32iを上昇させると共に内側上パンチ34iを下降させ、原料粉末100を圧縮する。この圧縮により低密度領域40Lが成形される。
図3Bの左側に示すように、内側下パンチ32iを上昇させ、その上端面に載置された低密度領域の上端面がダイ10の上端面と面一となるようにする。外側下パンチ32oを、その上端面が上記圧縮前の内側下パンチ32iよりも下方となる位置まで下降させる。この状態で、ダイ10の内周面、低密度領域の外周面、及び外側下パンチ32oの上端面で囲まれる空間が高密度領域を成形するためのキャビティHとなる。このキャビティHは、外側下パンチ32oの上端面が圧縮前の内側下パンチ32iの上端面よりも下方に位置するため、低密度領域を成形するためのキャビティLよりも軸方向の高さが大きい。
キャビティHに原料粉末100を充填する。続いて、図3Bの右側に示すように、外側上パンチ34oを下降させると共に、外側下パンチ32oを上昇させ、低密度領域40Lと同じ厚さ(高さ)に原料粉末100を圧縮する。この圧縮により高密度領域40Hが成形される。その際、内側上パンチ34iと内側下パンチ32iは、低密度領域40Lの厚さに相当する間隔を保持しつつ、外側下パンチ32o,外側上パンチ34oの駆動に合わせて昇降させる。以上の各パンチ32,34の動作により、キャビティH内の原料粉末100は低密度領域40Lと同じ厚さの高密度領域40Hとして成形される。この高密度領域40Hは低密度領域40Lに一体化される。得られた圧粉成形体40は、成形工程Aと同様に、ダイ10の端面上に圧粉成形体40が露出されるように各パンチを動作して、取り出せばよい。
低密度領域を先に、高密度領域を後に成形する成形工程Bの方が、高密度領域を先に、低密度領域を後に成形する成形工程Cに比べて、高密度領域の密度が上がり易い。特に、低密度領域を先に成形して、相対密度を60%以上、さらには65%以上にしておいてから高密度領域を成形することが好ましい。
(成形工程C)
成形工程Bでは、低密度領域を先に、高密度領域を後に成形したが、成形工程Cでは、高密度領域を先に、低密度領域を後に成形する(図示略)。この成形に用いる金型は、成形工程Bで用いた図3A,図3Bの金型と同じである。
まず、外周側に位置する高密度領域の成形を行う。コアロッドの上端面をダイの上端面よりも上方に位置させる。両上パンチを上方に後退させた状態で、内側下パンチの上端面をダイの上端面と面一にし、外側下パンチの上端面をダイの上端面よりも下方に位置させる。この状態において、ダイの内周面、内側下パンチの外周面、及び外側下パンチの上端面で囲まれる空間が高密度領域を成形するためのキャビティHとなる。
次に、キャビティH内に原料粉末を充填する。外側下パンチを上昇させると共に外側上パンチを下降させ、原料粉末を圧縮する。この圧縮により高密度領域が成形される。
外側下パンチを上昇させ、その上端面に載置された高密度領域の上端面がダイの上端面と面一となるようにする。内側下パンチを、その上端面が上記圧縮前の外側下パンチよりも上方となる位置まで下降させる。この状態で、高密度領域の内周面、コアロッドの外周面、及び内側下パンチの上端面で囲まれる空間が低密度領域を成形するためのキャビティLとなる。このキャビティLは、内側下パンチの上端面が圧縮前の外側下パンチの上端面よりも上方に位置するため、高密度領域を成形するためのキャビティHよりも軸方向の高さが小さい。
キャビティLに原料粉末を充填し、内側上パンチを下降させると共に、内側下パンチを上昇させ、高密度領域と同じ厚さに原料粉末を圧縮する。この圧縮により低密度領域が成形される。その際、外側上パンチと外側下パンチは、高密度領域の厚さに相当する間隔を保持しつつ、両内側パンチの駆動に合わせて昇降させる。以上の各パンチの動作により、キャビティL内の原料粉末は高密度領域と同じ厚さの低密度領域として成形される。この低密度領域は高密度領域に一体化される。得られた圧粉成形体は、成形工程Aと同様に、ダイの端面上に圧粉成形体が露出されるように各パンチを動作して、取り出せばよい。
(圧粉成形体)
上記のような金型で成形できる圧粉成形体40は単純な形状とする。単純な形状としては、例えば、円柱、円筒、楕円柱、楕円筒などを挙げることができる。図4Aに円筒状の圧粉成形体40を示す。ここで、原料粉末を押圧するパンチ面に凸部や凹部を備えるパンチを利用しても良く、その場合、上記単純形状の圧粉成形体40の端面に、上記凸部や凹部に対応した凹みや出っ張りが形成される。このような凹みや出っ張りを有する圧粉成形体も単純形状の圧粉成形体に含まれる。
この単純形状は、圧粉成形体40を軸方向から見た外周縁が円弧状の曲線を有し、その曲線の半径Rが10mm以上であると好ましい。換言すれば、原料粉末100の外周に配置されるダイ10の内周縁は円弧状の曲線を有し、その曲線の半径Rが10mm以上であると好ましいといえる。この半径Rは、15mm以上、20mm以上、さらには30mm以上がより好ましい。このような構成の圧粉成形体及び金型は、高密度領域40Hを成形する際に、過度の応力が金型1Aに集中して金型1A(図1など)が破損することを抑制できる。
(高密度領域と低密度領域)
圧粉成形体40は高密度領域40Hと低密度領域40Lとを備える。高密度領域40Hを設ける箇所は、圧粉成形体40の外周側及び内周側の一方であり、低密度領域40Lを設ける箇所は圧粉成形体40の外周側及び内周側の他方であることが好ましい。例えば、外歯歯車を作製するための圧粉成形体40であれば、図4Aに示すように、円筒の外周側を高密度領域40Hとし、内周側を低密度領域40Lとする。必要に応じて、圧粉成形体40の中心部に軸孔となる貫通孔40hを設ければよい。この圧粉成形体40では、高密度領域40Hと低密度領域40Lとの境界40bが円形に形成される。内歯歯車であれば、円筒の内周側を高密度領域40Hとし、外周側を低密度領域40Lとすればよい。高密度領域40Hは、圧粉成形体40に対して複数箇所に設けられても良い。例えば、外歯歯車の場合、歯が形成される外周側だけでなく、貫通孔40hの周囲も高密度領域とすることが挙げられる。それにより、焼結体44とした際に軸孔44h(図5)の耐摩耗性を高めることができる。
圧粉成形体40の高密度領域40Hの相対密度は93%以上である。より好ましい高密度領域40Hの相対密度は、95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上である。高密度であるほど、焼結体44(図5)とした際に、高密度領域40H(44H)の剛性や強度、或いは耐摩耗性を高めることができる。よって、歯車の歯など、焼結部材のうち摺動箇所を高密度領域40Hとすることが好適である。一方、圧粉成形体40の低密度領域40Lの相対密度は、93%未満である。より好ましい低密度領域40Lの相対密度は90%以下、さらに好ましくは88%以下である。但し、焼結体44としての十分な強度を備える必要上、75%以上、より好ましく85%以上程度であることが好ましい。低密度であるほど、焼結体44とした際に、空孔が多く、低密度領域40Lを軽量化でき、振動減衰性や油の含浸性に優れる。高密度領域40Hと低密度領域40Lとの相対密度差が大きいと、摺動箇所の強度や耐摩耗性を確保しつつ、圧粉成形体40、延いては焼結体44全体の軽量化に資する。例えば、この相対密度差は3%以上、さらには5%以上、特に10%以上であることが好ましい。
圧粉成形体40の相対密度は、圧粉成形体40の表面及び裏面において、周方向を4等分する線上の観察視野の画像を取得し、この画像を解析することで求めることができる。より具体的には、周方向を4等分する各線上の中心側と外周縁側において、500μm×600μm=300000μmの面積を有する観察視野の画像を取得する。つまり、圧粉成形体40の表面の中心側と外周縁側で8箇所、裏面の中心側と外周縁側で8箇所の合計16箇所の観察視野の画像を取得する。取得した各観察視野の画像を二値化処理して、観察視野に占める無機材料の粉末粒子、本例では金属粒子の面積割合を求める。その面積割合を観察視野の相対密度と見做す。そして、表面及び裏面の中心側の観察視野の相対密度を平均して内周側の相対密度とし、表面及び裏面の外周縁側の観察視野の相対密度を平均して外周側の相対密度とする。通常、圧粉成形体40の内周側及び外周側のいずれか一方が高密度領域40Hであり、他方が低密度領域40Lである。そのため、内周側の相対密度と外周側の相対密度の一方が高密度領域40Hの相対密度、他方が低密度領域40Lの相対密度となる。例えば、上記成形工程Aで得られる圧粉成形体40は、外周側が高密度領域40H、内周側が低密度領域40Lとなる。よって、外周側の相対密度が高密度領域40Hの相対密度、内周側の相対密度が低密度領域40Lの相対密度となる。なお、高密度領域40Hと低密度領域40Lとは、観察視野における空孔の多少で比較的容易に判別できる。
高密度領域40Hの厚み、つまり高密度領域40Hの径方向の寸法は、焼結体44とした場合に摺動箇所となる領域を形成できる程度の大きさとすることが好ましい。例えば、焼結体44として歯車を得る場合、高密度領域40Hは歯丈以上の厚みを有することが必要である。特に、外歯歯車(内歯歯車)の場合、歯底面からギアの中心側(外周側)に所定の厚みで高密度領域40Hを形成するには、「歯丈+0.5mm」以上、より好ましくは「歯丈+1.0mm」以上程度の高密度領域40Hの厚みが必要である。
(成形圧力)
成形時の圧力(面圧)は、600MPa以上とすることが挙げられる。面圧を大きくすることで、圧粉成形体の相対密度を高くすることができる。好ましい面圧は、1000MPa以上、より好ましい面圧は1500MPa以上、さらに好ましい面圧は2000MPa以上である。面圧の上限は、金型の損傷を招かない限り、特にない。
[外部潤滑剤]
成形において、金型への無機材料からなる粉末、特に金属粉末の焼き付きを防止するために、金型の内周面(ダイの内周面やパンチの押圧面)に外部潤滑剤を塗布することが好ましい。外部潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸などを利用することができる。その他、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドを外部潤滑剤として利用することもできる。
≪S3.加工工程≫
加工工程では、圧粉成形体40を作製した後、焼結を行なうことなく、圧粉成形体40に機械加工を行なう。この機械加工により、焼結体44とニアネットシェイプの加工成形体42を作製する。図4Bに外歯歯車の加工成形体42の一例を示す。この加工成形体42では、外周の高密度領域42Hに歯42tが形成され、歯底面よりも中心側の所定位置にまで高密度領域42Hが及んでいる。高密度領域42Hの内側には環状の低密度領域42L域が設けられている。さらに低密度領域42Lの内側には貫通孔42hが設けられている。つまり、低密度領域42Lと高密度領域42Hは同心状に設けられ、両領域42L,42Hの境界42bは円となっている。
圧粉成形体40は、原料粉末100を構成する個々の粒子が焼結体44(図5)のように強固に結合しているわけではない。よって、圧粉成形体40の加工は、焼結体44の加工に比べて加工負荷が大幅に低く、高速で効率的に加工することができる。特に、ヘリカルギアの歯のように、ねじれの大きな曲面で構成される形状であっても、圧粉成形体40に対する機械加工であれば、比較的容易に行うことができる。機械加工は、高密度領域40Hに対して行うことが好適である。高密度領域40Hは、通常、焼結後に摺動箇所となる領域である。ギアの歯など、摺動箇所に求められる所定の形状に高密度領域40Hを機械加工すれば、最終的に摺動箇所を高密度の焼結体44とすることができる。勿論、低密度領域40Lに対して機械加工を行っても良い。
個々の機械加工は、代表的には切削加工であり、切削工具を用いて所定の形状に圧粉成形体40を加工する。切削加工としては、例えば、転削加工、旋削加工などが挙げられる。転削加工には、穴あけ加工が含まれる。切削工具には、穴あけ加工の場合、ドリルやリーマ、転削加工の場合、フライスやエンドミル、旋削加工の場合、バイトや刃先交換型切削チップなどを用いることが挙げられる。その他、ホブ、ブローチ、ピニオンカッタなどを用いて切削加工を行なっても構わない。複数種の加工を自動で行なえるマシニングセンタを用いて機械加工を行っても構わない。その他、機械加工として研削加工を行っても良い。
無機材料からなる粉末が押し固められた圧粉成形体40では、切削などによって圧粉成形体40の表面から無機材料の粒子が引き剥がされるように機械加工が施される。そのため、機械加工によって生じる加工屑は、圧粉成形体40を構成する個々の無機材料の粒子が分離された粉末として構成される。粉末状の加工屑は、溶解することなく再利用することができる。加工屑に金属粒子など、無機材料の粒子が固まった粒塊がある場合、必要に応じて粒塊を解砕しても構わない。一方、焼結体44などの金属粒子が結合された固化体では、切削工具などによって固化体の表面を削り取るように機械加工が施される。そのため、機械加工によって生じる加工屑は、所定の長さに連なった帯状片で構成されるため、加工屑を溶解しなければ再利用することができない。
機械加工に供する前に、圧粉成形体40の表面に有機バインダーを溶かした揮発性溶液や可塑性溶液を表面に塗布又は浸漬させて、機械加工時の圧粉成形体40の表層の割れや欠けを抑制しても構わない。
また、圧粉成形体40に圧縮応力を付与しながら機械加工を行い、圧粉成形体40に割れや欠けが生じることを抑制しても良い。この圧縮応力は、圧粉成形体40に作用する引張応力を打ち消す方向に付与する。この引張応力は、圧粉成形体40において、加工工具が抜ける方向に作用する。例えば、ブローチ加工で圧粉成形体40に加工孔を形成する場合、ブローチが圧粉成形体40を突き通すときに加工孔の出口近傍に強い引張応力が作用する。この引張応力を打ち消す圧縮応力を圧粉成形体40に作用させる方法として、複数の圧粉成形体40を多段に重ねることが挙げられる。最下段の圧粉成形体40の下にはダミーの圧粉成形体40や板材などを配置すると良い。複数の圧粉成形体40を多段に重ねれば、上段側にある圧粉成形体40の下面が、下段側の圧粉成形体40の上面に押さえ付けられ、当該下面に圧縮応力が作用する。この多段に重ねられた圧粉成形体40の上方からブローチ加工を行なえば、圧粉成形体40の下面に形成される加工孔の出口付近の割れや欠けを効果的に防止できる。また、フライス加工で圧粉成形体40に加工溝を形成する場合、加工溝の出口近傍に強い引張応力が作用する。その対策として、フライスの進行方向に複数の圧粉成形体40を並べて、加工溝の出口となる部分に圧縮応力を作用させる構成が挙げることができる。
≪S4.焼結工程≫
焼結工程では、圧粉成形体40を機械加工して得られた加工成形体42を焼結する。加工成形体42を焼結することによって、無機材料の粉末、特に金属粉末の粒子同士が接触して結合された焼結体44(図5)が得られる。加工成形体42の焼結は、無機材料の粉末の組成に応じた公知の条件を適用できる。例えば、金属粉末が鉄粉や鉄合金粉の場合、焼結温度は、例えば、1100℃以上1400℃以下、更に1200℃以上1300℃以下とすることが挙げられる。焼結時間は、例えば、15分以上150分以下、更に20分以上60分以下とすることが挙げられる。
ここで、焼結体44の実寸法と設計寸法との差に基づいて、加工工程における加工度合いを調整しても良い。加工成形体42は、焼結時にほぼ均等に収縮する。そのため、焼結後の実寸法と設計寸法との差に基づいて、加工工程の加工度合いを調整することで、焼結体44の実寸法を設計寸法にかなり近づけることができる。その結果、次の仕上げ加工の手間と時間を少なくすることができる。機械加工をマシニングセンタで行なう場合、加工度合いの調整は容易に行なえる。
≪S5.仕上げ工程≫
仕上げ工程では、サイジングしたり、焼結体44の表面を研磨するなどして、焼結体44の表面粗さを小さくすると共に、焼結体44の寸法を設計寸法に合わせる。この仕上げ加工により、仕上げ加工された面の空孔を押し潰し、焼結体44の耐摩耗性を上げることも期待できる。仕上げ工程を経た外歯歯車の一例を図5に示す。内周側に低密度領域44Lを備え、外周側に高密度領域44Hを備える外歯歯車が得られる。図5において、低密度領域44Lと高密度領域44Hの境界を二点鎖線で示す。
≪焼結体の概要≫
以上説明した焼結体の製造方法によれば、高密度領域44Hと低密度領域44Lとを有する焼結体44を得ることができる。焼結体44の各領域44H,44Lの相対密度は、焼結前の圧粉成形体40の各領域40H,40Lの相対密度にほぼ等しい。つまり、焼結体44の高密度領域44Hの相対密度は、93%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上とすることが挙げられる。この高密度領域44Hの相対密度は、高くなるほど焼結体44の強度が高くなる。一方、焼結体44の低密度領域44Lの相対密度は、93%未満、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは88%以下である。但し、焼結体44としての十分な強度を備える必要上、低密度領域44Lの相対密度は、75%以上、さらには85%以上程度であることが好ましい。
焼結体44の相対密度は、圧粉成形体40の相対密度と同様に求めることができる。焼結体44の表面及び裏面において、周方向を4等分する線上の観察視野の画像を取得し、この画像を解析することで求めることができる。より具体的には、周方向を4等分する各線上の中心側と外周縁側において、500μm×600μm=300000μmの面積を有する観察視野の画像を取得する。つまり、焼結体44の表面の中心側と外周縁側で8箇所、裏面の中心側と外周縁側で8箇所の合計16箇所の観察視野の画像を取得する。取得した各観察視野の画像を二値化処理して、観察視野に占める無機材料の粒子の面積割合を求め、その面積割合を観察視野の相対密度と見做す。そして、表面及び裏面の中心側の観察視野の相対密度を平均して内周側の相対密度とし、表面及び裏面の外周縁側の観察視野の相対密度を平均して外周側の相対密度とする。通常、焼結体44の内周側及び外周側のいずれか一方が高密度領域であり、他方が低密度領域である。よって、焼結体44の内周側の相対密度と外周側の相対密度の一方が高密度領域の相対密度、他方が低密度領域の相対密度となる。
≪作用効果≫
上記焼結体の製造方法によれば、圧粉成形体の成形時の金型を損傷させることなく密度の異なる領域を有する焼結体を効率的に製造することができる。例えば、焼結体とニアネットシェイプで圧粉成形体を成形するには金型が損傷し易く、一方で既存のプレス機で圧粉成形体の全体を高密度領域にするには、大幅な加圧能力の増大が必要となる。これに対し、金型の横断面において、キャビティの周縁で囲まれる形状の最大応力の比率を2.6以下とすることで、金型に対する応力の集中を抑制することができる。それに伴い、金型の損傷を抑制することができる。特に、圧粉成形体の形状を円柱や円筒などの単純形状とすることで金型の損傷を抑制できる。加えて、高密度領域とする箇所を圧粉成形体の一部、即ち加圧方向と直交する断面の一部とすることで、高密度領域となる箇所に対して、単位面積当たりに作用する圧力を高くすることができる。つまり、既存のプレス機の加圧能力を利用して高密度領域を成形することができる。よって、圧粉成形体の段階で高密度領域を形成し、焼結体に対して加圧を行って高密度領域を形成するわけではないため、加圧圧力が過度に高くなることも避けやすい。
特に、焼結体とした際に複雑な形状の摺動箇所として機能する箇所を高密度領域とすることで、機械特性に優れる焼結体を得ることができる。その際、圧粉成形体の高密度領域に機械加工を施せばよい。高密度領域であっても、圧粉成形体であれば焼結体に比べて加工負荷が大幅に低いため、効率的に複雑形状を圧粉成形体に付与することができる。
そして、上記焼結体の製造方法により得られた焼結体は、高密度領域に加えて低密度領域をも有するため、全体が高密度領域である場合に比べて軽量化することができる。
<作製例>
作製例では、実施形態の焼結体の製造方法、又は従来の焼結体の製造方法によって図5に示す外歯歯車を作製した。外歯歯車は平歯車である。
まず、Fe-2質量%Ni-0.5質量%Moの合金粉末に、0.3質量%C(グラファイト)粉末を混合した原料粉末を用意した。合金粉末の平均粒径は100μmである。原料粉末の真密度は、約7.8g/cmである。この原料粉末に潤滑剤は含有していない。
次に、上記原料粉末を加圧成形して、以下の寸法の扁平な円筒状の圧粉成形体を作製した。この原料粉末の成形に用いる金型(ダイ)の内周縁における最大応力の比率は1.0で、内周縁を構成する円弧の直径は98mm、半径は49mmである。
外径:98mmφ
内径:30mmφ
厚み:15mm
試料Aに係る圧粉成形体は、80mmφの円周を境界として、上述した成形工程Aに基づいて、境界の内側を低密度に、境界の外側を高密度に成形した。
試料Bに係る圧粉成形体は、上パンチ、下パンチ共に単一のパンチとした金型を用いて成形を行い、全体を均一な密度に成形した。
いずれの試料においても圧粉成形体を作製するために用いた原料の使用量(g)を求めておく。
次いで、市販のマシニングセンタを用いて、作製した各圧粉成形体に機械加工を施し、設計寸法とニアネットシェイプの加工成形体を作製した。加工成形体は外歯歯車状であり、そのモジュールは1.4、歯丈は3.1mm、歯数は67である。いずれの圧粉成形体の機械加工においても、圧粉成形体に割れや欠けなどは生じなかった。機械加工によって生じた加工屑は、圧粉成形体を構成する個々の粒子が分離してなる金属粉末であった。
試料Aと試料Bの加工成形体について、加工成形体の体積、密度、質量、並びに試料Bの原料粉末の使用量を100%とした場合の原料粉末の使用量の比率を求めた。密度は、圧粉成形体の80mmφの円周を境界として、境界の内側と外側について嵩密度と相対密度とを求め、その値を加工成形体の嵩密度及び相対密度とした。相対密度は、上述したように、300000μm以上の面積を有する16箇所の観察視野を画像解析することで求めた。試料Bの場合、全体がほぼ均一な密度であるため、嵩密度、相対密度共に内側と外側とで同じ値である。これらの測定結果を表1に示す。表1において、加工成形体の80mmφの円周を境界として、その内側の領域については「内側」、外側の領域については「外側」と示している。なお、圧粉成形体の体積よりも加工成形体の体積が小さく、原料粉末の使用量に対して、各試料の合計質量が少ないのは、圧粉成形体から加工成形体にする際、機械加工により圧粉成形体の一部が除去されているからである。
Figure 0007374184000001
次に、加工成形体を焼結し、焼結体で構成される外歯歯車を作製した。この焼結は、窒素雰囲気にて1100℃で行った。その焼結時に、焼結体に割れや欠けは生じなかった。最後に、研磨加工などによって外歯歯車の寸法を設計寸法に近づけると共に、表面粗さを小さくした。
表1の結果から明らかなように、試料Aでは内側が低密度で、外側が高密度の圧粉成形体が形成できていることがわかる。そのため、焼結体とした際、歯となる外側の領域が高密度に形成され、高剛性で耐摩耗性に優れると考えられる。試料Aにおける内側と外側の相対密度差は20%以上である。また、試料Aの原料粉末の使用量は、試料Bのそれに比べて約15%削減できていることがわかる。その結果、加工成形体の質量と実質的に同じである焼結体の質量も10%以上、特に約15%削減できていることがわかる。
<試算例>
次に、金型のキャビティの形状を変え、キャビティ内の原料粉末を圧縮した際に金型の内周面に作用する応力を試算した。この解析には、応力解析ソフトとしてNX Nastranを用いた。金型の横断面におけるキャビティの周縁の形状は、試料No.1が円形、試料No.2からNo.4が楕円形、試料No.5が歪んだ長円状の異形、試料No.6がギア形状(歯数20)である。試料No.1から試料No.5のキャビティの周縁形状を図6に重ねて示す。試料No.6のキャビティの周縁形状を試料No.1のキャビティの周縁形状と重ねて図7に示す。このような周縁形状の金型を用いて、上下のパンチで1961MPa(20t/cm)の圧縮力で原料粉末を圧縮し、キャビティの周縁側には、上記圧縮力の0.8倍の圧力が負荷されると想定して上記の解析を行う。
いずれもキャビティの周縁で囲まれる面積は同一である。試算条件を表2に、試算結果を表3に示す。表2において、「面積」は、金型の横断面におけるキャビティの面積である。「短径」と「長径」は、金型の横断面においてキャビティの周縁で囲まれる領域の最小寸法の半分と最大寸法の半分である。つまり、キャビティの横断面形状が円形の試料No.1の短径と長径はいずれも円の半径である。キャビティの横断面形状が楕円形の試料No.2からNo.4の短径と長径は、楕円の短半径と長半径である。但し、ギア形状の試料No.6は、圧粉成形体の歯底円半径を短径、歯先円半径を長径として示している。「長/短比」は、長径/短径で示される比率である。表3において、「σmax」は金型の内周面に発生する最大応力である。「最大応力の比率」は、各キャビティの周縁で囲まれる形状の、仮想金型を用いたときの仮想最大応力を基準とした最大応力の比率である。「σmax部の角R」は、金型の内周面で最大応力が発生した箇所を構成する円弧の半径である。「成形可否」は、相対密度93%以上の成形の可否を示し、Gが成形可、Bが成形不可である。
試料No.1から試料No.6の試算結果を図8から図13Bに示す。図8から図13B中の数値の単位はMPaである。併せて、キャビティの周縁のX方向を0°とし、左回りに同周縁に作用する応力の分布を図14のグラフに示す。さらに、試料No.1から試料No.5における長/短比と最大応力の比率との関係を図15のグラフに示す。
Figure 0007374184000002
Figure 0007374184000003
表2、表3に示すように、最大応力の比率が2.6以下、さらには2.5以下、特に2.0以下の場合に金型の内周面に作用する最大応力σmaxが小さく、圧粉成形体の高密度成形が可能であることがわかる。また、σmax部の角Rが大きいほど、最大応力σmaxが小さいこともわかる。特に、σmax部の角Rが10mm以上、特に20mm以上であると、最大応力σmaxが小さい。さらに、キャビティの周縁の形状が楕円の場合、長/短比が2.0以下であれば、圧粉成形体の高密度成形が可能であることがわかる。
図8に示すように、キャビティの周縁が円形である試料No.1は、内周縁に最も応力が作用するが、応力の分布は周方向に均一的であることがわかる。図9から図11に示すように、キャビティの周縁が楕円である試料No.2から試料No.4は、楕円の長軸に対応する箇所に最大応力が作用していることがわかる。また、楕円の長/短比が大きいほど、最大応力が大きいこともわかる。図12に示すように、キャビティの周縁が異形である試料No.5は、キャビティの周縁沿いの応力の分布が不均一であることがわかる。図13A及び図13Bに示すように、キャビティの周縁がギア形状である試料No.6は、圧粉成形体の歯先に対応する箇所、即ち金型の内周面の谷の箇所に応力が集中することがわかる。
キャビティの周縁に沿った応力の分布は、図14に示すように、円形であれば均一であるが、楕円であれば長軸と短軸に対応する箇所で周期的に変化し、異形であればその形状に応じた不均一な分布であることがわかる。
一方、キャビティの周縁の長/短比と最大応力の比率との関係は、図15に示すように、円及び楕円であれば、概ね正比例の関係にあることがわかる。また、最大応力の比率が2.6以下であれば、長/短比が約2.0以下に対応することもわかる。
1A 金型
10 ダイ
12 ダイ孔
20 コアロッド
30 パンチ
32 下パンチ
32o 外側下パンチ
32i 内側下パンチ
34 上パンチ
34o 外側上パンチ
34i 内側上パンチ
40 圧粉成形体
40H 高密度領域
40L 低密度領域
40h 貫通孔
40b 境界
42 加工成形体
42H 高密度領域
42L 低密度領域
42h 貫通孔
42b 境界
42t 歯
44 焼結体
44H 高密度領域
44L 低密度領域
44h 軸孔
100 原料粉末

Claims (9)

  1. 無機材料からなる粉末を含む原料粉末を用意する工程と、
    前記原料粉末を金型内に充填して加圧し、前記金型の軸方向に対して直交する横断面において、相対密度が95%以上の高密度領域と、相対密度が93%未満の低密度領域とを有し、かつ前記高密度領域と前記低密度領域の相対密度差が3%以上である圧粉成形体を作製する工程と、
    前記圧粉成形体の少なくとも前記高密度領域を機械加工して加工成形体を作製する工程と、
    前記加工成形体を焼結して焼結体を得る工程とを備え、
    前記金型の軸方向に対して直交する横断面における前記金型で構成されるキャビティの周縁の形状は、前記金型を用いた成形の際に前記金型の内周面にかかる最大応力が、周縁の形状が円形であって前記キャビティと同一の面積を有する仮想キャビティを備えた仮想金型を用いた成形の際に前記仮想金型の内周面にかかる仮想最大応力の2.6倍以下となる形状である、
    焼結体の製造方法。
  2. 前記無機材料が、鉄系金属および非鉄金属の少なくとも一方を含む請求項1に記載の焼結体の製造方法。
  3. 前記圧粉成形体は、内周および外周を備えた環状の形状を有し、
    前記高密度領域が前記圧粉成形体の前記内周側および前記外周側の一方に位置し、前記低密度領域が前記圧粉成形体の前記内周側および前記外周側の他方に位置する請求項1または請求項2に記載の焼結体の製造方法。
  4. 前記圧粉成形体の形状が、円柱、円筒、楕円柱、または楕円筒である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
  5. 前記金型は、前記原料粉末の外周に配置されるダイを備え、
    前記ダイの内周縁は円弧状の曲線を有し、
    前記曲線の最小半径Rが10mm以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
  6. 前記焼結体が外歯歯車または内歯歯車である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
  7. 前記高密度領域の相対密度が97%以上である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法。
  8. 無機材料の粉末を含む圧粉成形体であって、
    円柱、円筒、楕円柱、または楕円筒の形状を有し、
    前記圧粉成形体の前記形状の軸に直交する断面において、外周縁を含む外周側および前記外周側よりも中心側である内周側のいずれか一方に位置する高密度領域と、前記圧粉成形体の前記内周側および前記外周側の他方に位置する低密度領域とを備え、
    前記高密度領域の相対密度が95%以上であり、前記低密度領域の相対密度が93%未満であり、
    前記高密度領域と前記低密度領域の相対密度差が3%以上である、
    圧粉成形体。
  9. 前記無機材料が、鉄系金属および非鉄金属の少なくとも一方を含む請求項8に記載の圧粉成形体。
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