JP7372537B2 - オーステナイト系耐熱鋼 - Google Patents

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本発明は、オーステナイト系耐熱鋼に関する。
従来、高温環境下で使用される火力発電用ボイラおよび化学プラント等においては、装置用材料としてSUS304H、SUS316H、SUS321H、SUS347H等の18-8系オーステナイトステンレス鋼が使用されてきた。
しかし、近年、高効率化のために蒸気の温度と圧力とを高めた超々臨界圧ボイラの新設が世界中で進められている。このような高温環境下における装置の使用条件が著しく過酷化し、それに伴って使用材料に対する要求性能が厳しくなってきた。そして、従来用いられてきた18-8系オーステナイトステンレス鋼では耐食性に加え、高温強度、特にクリープ破断強度と、耐水蒸気酸化性および耐高温腐食性とが著しく不足する状況となっている。
そこで、Crを20%程度以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼において、各種元素の最適量添加により、クリープ破断強度を改善したオーステナイト系ステンレス鋼が開発されてきた。しかしながら、最近、例えば火力発電用ボイラの分野では、蒸気温度を700℃以上に高める計画が推進されるようになってきた。この場合、使用される部材の温度は700℃を遙かに超えることとなる。そのため、新たに改良されたオーステナイト系ステンレス鋼でもクリープ破断強度および耐食性が不十分となってきた。
上記の問題を解決するため、これまで様々な研究がなされてきた。例えば、特許文献1には、20%を超え28%未満のCrを含有するオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。同文献には、Cu、NbおよびNを複合添加するとともに、Cu含有量に応じてPおよびOを制御することで、クリープ破断強度、クリープ破断延性、および熱間加工性を改善したことが記載されている。
特許文献2には、15~30%のCrを含有するオーステナイト系ステンレス鋼において、P、S、Sn、Sb、Pb、ZnおよびAsの含有量を制限することで、溶接熱影響部の耐脆化割れ性を改善したことが開示されている。特許文献3には、22%を超え30%未満のCrを含有するオーステナイト系ステンレス鋼において、P、S、Sn、Sb、Pb、ZnおよびAsの含有量を制限することで、経年材の加工性を改善したことが開示されている。
特許文献4には、20~27%のCrを含有し、クリープ破断強度、耐水蒸気酸化性等に優れるオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献5には、18.0~26.0%のCrを含有するオーステナイト系ステンレス鋼において、Mo、WおよびNを複合添加することで、高いクリープ破断強度を得られることが開示されている。
特許文献6には、18~23%のCrを含有するオーステナイト系耐熱鋼において、オーステナイトバランスを規定することで、優れた高温強度と時効後靱性とを得られることが開示されている。特許文献7には、18~23%のCrを含有するオーステナイト系耐熱鋼において、Mo、W、およびNbの添加量を最適化することで、優れたクリープ破断強度を得られることが開示されている。特許文献8には、21.50~28.00%のCrを含有するオーステナイト系耐熱鋼において、W含有量を最適化し、Ta、Nd、およびZrの3元素を複合添加することで、優れた高温強度を得られることが開示されている。
特開2004-323937号公報 特許第4258678号公報 特開2009-084606号公報 特表2002-537486号公報 特開2012-001749号公報 特開2013-044013号公報 特開2013-067843号公報 国際公開第2016/204005号
しかしながら、クリープ破断強度の向上を重視した鋼では、高温長時間側におけるクリープ破断延性が低めになる場合があることが明らかとなってきた。そのため、従来技術においては、高いクリープ破断強度およびクリープ破断延性を両立する観点からは、十分ではない場合があることが分かった。また、構造物として使用する際に必須となる耐溶接割れ性についても改善の余地が残されている。
本発明は上記の問題を解決し、長時間の組織安定性に優れ、高いクリープ破断強度とクリープ破断延性とを有し、さらに耐溶接割れ性が良好であるオーステナイト系耐熱鋼を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のオーステナイト系耐熱鋼を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.02~0.12%、
Si:0.01~0.40%、
Mn:0.10~1.50%、
P:0.040%以下、
S:0.020%以下、
Cr:20.0~24.0%、
Ni:22.0~28.0%、
W:2.00~6.00%、
Cu:2.50~3.50%、
Nb:0.10~0.80%、
V:0.02~0.80%、
REM:0~0.004×Cu%、
B:0.0005~0.0050%、
Al:0.10%以下、
N:0.180~0.300%、
Mo:0.30%以下、
Ti:0.100%以下、
Co:0~10.0%、
Mg:0~0.050%、
Ca:0~0.050%、
Zr:0~0.10%、
Hf:0~1.0%、
Ta:0~1.0%、
Re:0~5.0%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式および(ii)式を満足する、
オーステナイト系耐熱鋼。
8.50≦4V+2Nb+W+Cu+15N-6Si≦11.50 ・・・(i)
0.005+7×10-5×d≦15B+REM≦0.075 ・・・(ii)
但し、上記式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。また、dは平均結晶粒径(μm)を表す。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Mg:0.0005~0.050%、
Ca:0.0005~0.050%、
Zr:0.005~0.10%、
Hf:0.005~1.0%、
Ta:0.01~1.0%、および、
Re:0.01~5.0%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載のオーステナイト系耐熱鋼。
本発明によれば、長時間の組織安定性に優れ、高いクリープ破断強度とクリープ破断延性とを有し、さらに耐溶接割れ性が良好であるオーステナイト系耐熱鋼が得られる。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、高温環境下における組織安定性、および耐溶接割れ性を詳細に調査した結果、以下の知見を得るに至った。
クリープ破断強度を向上させるためには、使用環境中において、Nb炭窒化物等を微細に析出させることが有効である。そのためには、製品の段階で、Nb等を均一に固溶させておくことが重要であり、一般的には固溶化熱処理を施す。
しかし、Nbは製造中に固溶温度の高いNb炭窒化物を形成する。このNb炭窒化物を固溶させるため、高温で固溶化熱処理を行う必要がある。一方、高温で熱処理を行うと、オーステナイト粒が粗大化し、クリープ破断延性および耐溶接割れ性が劣化するおそれがある。
そこで、Nb炭窒化物の固溶について研究を重ねた結果、鋼中にNbとVとを複合的に含有させることにより、製造中に形成する炭窒化物を、NbおよびVを含む複合炭窒化物とすることができる。この複合炭窒化物は、Nb炭窒化物よりも固溶温度が低い。そのため、低温でも固溶しやすく、高温で固溶化熱処理を行う必要がないため、オーステナイト粒の粗大化を抑制することができる。
なお、NbおよびVを含む複合炭窒化物の一部は、不可避的に溶け残る。しかし、このような未固溶の炭窒化物は、ピン留め効果により、固溶化熱処理中におけるオーステナイト粒粗大化の抑制に寄与する。
また、炭窒化物を形成するNbおよびVに加えて、W、Cu、およびSiの含有量を適切な範囲に調整することにより、使用環境中において、優れたクリープ破断強度およびクリープ破断延性を発現する。
さらに、クリープ破断延性に加えて、耐溶接割れ性に優れた鋼を得るためには、BおよびREMの含有量と、オーステナイト粒径とを適切な範囲に制御することが重要であることが分かった。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.02~0.12%
Cは炭化物を形成してオーステナイト系耐熱合金として必要な高温引張強さ、クリープ破断強度を保持する上で必須の元素である。しかし、その含有量が過剰であると、未固溶炭化物が生じるだけでなく、Crの炭化物が増えて延性、靭性などの機械的性質および耐溶接割れ性を劣化させる。したがって、C含有量は0.02~0.12%とする。C含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.10%以下であるのが好ましい。
Si:0.01~0.40%
Siは脱酸元素として含有される。また、Siは耐酸化性・耐水蒸気酸化性等を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が過剰であると、Laves相または炭窒化物などの析出量、析出形態に影響を及ぼし、クリープ破断強度の低下を招く。したがって、Si含有量は0.01~0.40%とする。Si含有量は0.35%以下であるのが好ましく、0.30%以下であるのがより好ましい。
Mn:0.10~1.50%
MnはSiと同様に溶鋼の脱酸作用を有するとともに、鋼中に不可避的に含有されるSを硫化物として固着し高温での延性を改善する。しかし、その含有量が過剰であると、σ相等の金属間化合物相の析出を助長し、組織安定性、高温強度、機械的性質が劣化する。したがってMn含有量は0.10~1.50%とする。Mn含有量は0.20%以上であるのが好ましい。また、Mn含有量は1.20%以下であるのが好ましく、1.00%以下であるのがより好ましい。
P:0.040%以下
Pは不可避的不純物として鋼中に含まれ、耐溶接割れ性および高温での延性を著しく低下させる。したがって、P含有量は0.040%以下とする。P含有量は極力低くすることが好ましく、0.030%以下であるのが好ましく、0.020%以下であるのがより好ましい。
S:0.020%以下
SはPと同様に鋼中に不可避的不純物として含有され、耐溶接割れ性および高温での延性を著しく低下させる。したがって、S含有量は0.020%以下とする。熱間加工性を重視する場合は、S含有量は0.010%以下であるのが好ましく、0.003%以下であるのがより好ましい。
Cr:20.0~24.0%
Crは耐酸化性、耐水蒸気酸化性、耐高温腐食性などの耐食性改善に優れた作用を発揮するとともに、Cr炭窒化物を形成しクリープ破断強度にも寄与する重要な元素である。しかし、その含有量が過剰であると、σ相の析出などによる組織の不安定化を招き、耐溶接割れ性も劣化する。したがって、Cr含有量は20.0~24.0%とする。Cr含有量は21.0%以上であるのが好ましく、23.5%以下であるのが好ましい。
Ni:22.0%~28.0%
Niはオーステナイト組織を安定にする元素であり、耐食性の確保にも有効な元素である。上記のCr含有量とのバランスから、Ni含有量が不足すると、σ相が高温長時間側で析出し、クリープ破断強度、クリープ破断延性および靭性が著しく低下する。しかし、その含有量が過剰であると、耐溶接割れ性および経済性を損なう。したがって、Ni含有量は22.0~28.0%以下とする。Ni含有量は23.5%以上であるのが好ましく、26.5%以下であるのが好ましい。また、Ni含有量はオーステナイト安定化元素であるNの含有量、およびW等のフェライト安定化元素の含有量も考慮して調整するのが好ましい。
W:2.00~6.00%
Wは母相に固溶し、固溶強化元素としてクリープ強度向上に寄与するとともに、FeW型のLaves相などの金属間化合物相、さらには炭窒化物を析出させ析出強化によりクリープ強度を大幅に向上させる元素である。しかし、その含有量が過剰であると、析出物が過剰となりクリープ破断延性および靭性の劣化が生じる。したがって、W含有量は2.00~6.00%とする。W含有量は3.00%以上であるのが好ましい。また、W含有量は5.00%以下であるのが好ましく、4.00%以下であるのがより好ましい。
Cu:2.50~3.50%
Cuは高温での使用中に微細なCu相として析出しクリープ破断強度を向上させる。特に700℃以下の温度域のクリープ破断強度向上に有効である。その効果を発揮させるためには2.50%以上含有させることが必要である。しかし、3.50%を超えて含有させてもクリープ強度向上効果が飽和するばかりでなく、クリープ破断延性および熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は2.50~3.50%とする。Cu含有量は2.70%以上であるのが好ましく、3.40%以下であるのが好ましい。
Nb:0.10~0.80%
NbはVとともに微細な炭窒化物を形成し、クリープ破断強度の向上に大きく寄与する元素である。さらに、結晶粒界におけるCr炭窒化物の析出を抑制し、耐応力腐食割れ性の向上にも寄与する。しかし、その含有量が過剰であると、クリープ破断延性および靭性が低下し、耐溶接割れ性、熱間加工性も劣化する。したがって、Nb含有量は0.10~0.80%とする。Nb含有量は0.20%以上であるのが好ましく、0.40%以上であるのがより好ましい。また、Nb含有量は0.70%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。
V:0.02~0.80%
VはNbとともに微細な炭窒化物を形成し、クリープ破断強度の向上に大きく寄与する元素である。しかし、その含有量が過剰であると、クリープ破断延性および靭性が低下し、さらに耐高温腐食性も劣化する。したがって、V含有量は0.02~0.80%とする。V含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.08%以上であるのがより好ましい。また、V含有量は0.70%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。
REM:0~0.004×Cu%
REMは粒界のSを硫化物として固定し、特に高温長時間側のクリープ破断延性を向上させる元素である。さらにREMは鋼表面のCr保護皮膜の密着性を改善し、特に、繰り返し酸化時の耐酸化性を改善する作用も有するため必要に応じて含有させてもよい。しかし、Cuを含有させる本発明鋼においてはREM含有量が過剰であるとクリープ破断延性が低下し、さらに耐溶接割れ性も損なわれるため、Cu含有量に応じて適切に含有させることが必要である。したがって、含有させる場合のREM含有量は0.004×Cu%以下とする。上記効果を得たい場合は、REM含有量は0.003%以上であるのが好ましい。
なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
B:0.0005~0.0050%
Bは炭化物中または母相に存在し、析出する炭窒化物およびLaves相などの微細化を促進するだけでなく、粒界を強化することでクリープ破断強度および破断延性を向上させる元素である。しかし、その含有量が過剰であると、高温での延性が低下し融点も低下する。したがって、B含有量は0.0005~0.0050%とする。B含有量は0.0010%以上であるのが好ましく、0.0015%以上であるのがより好ましい。また、B含有量は0.0045%以下であるのが好ましい。
Al:0.10%以下
Alは溶鋼の脱酸剤として含有させる元素である。また、REMを含有させる場合には、REMの効果を最大限に発揮させる効果を有する。しかし、その含有量が過剰であると、非金属介在物が多量析出し、延性、靭性および加工性などが劣化する。したがって、Al含有量は0.10%以下とする。Al含有量は0.070%以下であるのが好ましく、0.050%以下であるのがより好ましい。
N:0.180~0.300%
NはVまたはNbとともに炭窒化物を形成し、クリープ破断強度を向上させる元素である。また、固溶強化で引張強度も向上させる効果もある。さらにオーステナイト組織を安定化する作用を有する元素でもある。しかし、その含有量が過剰であると、過剰の炭窒化物析出による延性および靭性の低下が生じるだけでなく、鋼中にブローホール欠陥を形成する。したがって、N含有量は0.180~0.300%とする。N含有量は0.190%以上であるのが好ましく、0.270%以下であるのが好ましい。
Mo:0.30%以下
Moは従来、母相に固溶し、固溶強化元素としてクリープ強度向上に寄与する元素であり、Wと同等の作用を有すると考えられてきた。しかし、本発明においてはMoを含有させると長時間側でσ相が析出しクリープ破断強度、延性および靭性が低下することが判明した。特に、本発明においてはCr含有量が20.0%以上であるため、Mo含有量は極力低くする必要がある。したがって、Mo含有量は0.30%以下とする。Mo含有量は0.20%以下であるのが好ましい。
Ti:0.100%以下
0.180%以上のNを含有する本発明鋼において、Tiはクリープ破断強度に寄与しない粗大なTi炭窒化物を形成しNを消費するため、N含有によるクリープ破断強度向上効果を低減させる。そのため、本発明においてTi含有量は0.100%以下に制限する。
Co:0~10.0%
CoはNiと同様オーステナイト組織を安定にし、クリープ強度向上にも寄与するため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰であると、上記の効果も飽和し経済性が低下するだけである。したがって、含有させる場合のCo含有量は10.0%以下とする。Co含有量は8.0%以下であるのが好ましく、7.0%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合は、Co含有量は0.5%以上であるのが好ましく、1.0%超であるのがより好ましい。
Mg:0~0.050%
Mgは高温での延性を阻害するSを硫化物として固定して高温延性を改善する作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰であると、清浄性が低下し、かえって高温延性が損なわれる。したがって、含有させる場合のMg含有量は0.050%以下とする。Mg含有量は0.020%以下であるのが好ましく、0.010%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合は、Mg含有量は0.0005%以上であるのが好ましく、0.0010%以上であるのがより好ましい。
Ca:0~0.050%
Caは高温での延性を阻害するSを硫化物として固定して高温延性を改善する作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰であると、清浄性が低下し、かえって高温延性が損なわれる。したがって、含有させる場合のCa含有量は0.050%以下とする。Ca含有量は0.020%以下であるのが好ましく、0.010%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合は、Ca含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0010%以上とするのがより好ましい。
Zr:0~0.10%
Zrは炭窒化物の微細化を促進するとともに、粒界強化元素としてクリープ破断強度を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰であると、高温での延性が低下する。したがって、含有させる場合のZr含有量は0.10%以下とする。Zr含有量は0.06%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合は、Zr含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましい。
Hf:0~1.0%
Hfは炭窒化物として析出強化に寄与し、クリープ破断強度を向上させる作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰であると、加工性および耐溶接割れ性が損なわれる。したがって、含有させる場合のHf含有量は1.0%以下とする。Hf含有量は0.80%以下であるのが好ましく、0.50%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合は、Hf含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましく、0.020%以上であるのがさらに好ましい。
Ta:0~1.0%
Taは炭窒化物を形成するとともに固溶強化元素として高温強度およびクリープ破断強度を向上させる作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰であると、加工性および機械的性質が損なわれる。したがって、含有させる場合のTa含有量は1.0%以下とする。Ta含有量は0.70%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合は、Ta含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましく、0.10%以上であるのがさらに好ましい。
Re:0~5.0%
Reは主に固溶強化元素として高温強度およびクリープ破断強度を向上させる作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰であると、加工性および機械的性質が損なわれる。したがって、含有させる場合のRe含有量は5.0%以下とする。Re含有量は4.0%以下であるのが好ましく、3.0%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合は、Re含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましく、0.50%以上であるのがさらに好ましい。
本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼の化学組成は、各元素の含有量が上述した範囲であるとともに、下記(i)式および(ii)式を満足する。それぞれについて説明する。
本発明においては、高温長時間における十分なクリープ破断強度および破断延性と、靭性との確保のために、主として炭窒化物を形成するV、NbおよびN、主として金属間化合物相を形成するW、Cu相として析出するCu、ならびに、これらの析出量および析出形態に影響を及ぼすSiの含有量を、下記(i)式を満足するよう調整する必要がある。
(i)式中辺値を8.50以上とすることにより、粒内の析出強化効果により、良好なクリープ破断強度が得られる。一方、(i)式中辺値を11.50以下とすることにより、粒内が過度に強化されることによるクリープ破断延性および靭性の低下を抑制することが可能となる。
8.50≦4V+2Nb+W+Cu+15N-6Si≦11.50 ・・・(i)
但し、上記式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。
Bは上記のとおり粒界強化効果を有するため、高温長時間側において十分なクリープ破断延性を確保するには、Bを含有させる必要がある。さらに、REMを含有させることで、粒界に偏析するフリーSをREMの硫化物として固定し、Bの粒界強化効果を有効に作用させることができる。
また、BおよびREMの含有量と、オーステナイト結晶粒径とを、下記(ii)式を満足するように制御することにより、クリープ破断延性に加え、耐溶接割れ性に優れた鋼を得ることができる。(ii)式中辺値を0.005+7×10-5×d以上とすることにより、十分なクリープ破断延性の向上効果が得られる。一方、BおよびREMは耐溶接割れ性に悪影響を及ぼす場合があるため、(ii)式中辺値を0.075以下とすることにより、十分な耐溶接割れ性を確保する。
0.005+7×10-5×d≦15B+REM≦0.075 ・・・(ii)
但し、上記式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。また、dは平均結晶粒径(μm)を表す。平均結晶粒径は、(ii)式を満たす範囲であれば、制限はないが、50~200μmであることが好ましい。
オーステナイト粒の平均結晶粒径は、以下の方法により求める。肉厚中央部から組織観察用の試験片を採取し、長手方向の断面をエメリーペーパーおよびバフで研磨後、混酸で腐食して光学顕微鏡観察を行う。観察面の結晶粒径はJIS G 0551(2013)に規定される交差線分による測定方法に従って求める。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。また、ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
2.製造方法
本発明のオーステナイト系耐熱鋼の製造方法については特に制限はないが、例えば、上述の化学組成を有する鋼塊または鋳片に、熱間加工を施すことによって製造することができる。また、当該熱間加工の後に、必要に応じて熱間押出等の異なる方法の熱間加工をさらに施してもよい。さらに、必要に応じて焼鈍を行った後、冷間加工を施してもよい。
上記の工程の後、部位ごとの金属組織および機械的性質のばらつきを抑制し、高いクリープ破断強度を保持するために、固溶化熱処理を施す。熱処理温度は、化学組成および目標とする粒径に応じて、1050~1230℃の温度範囲とし、保持温度は、肉厚に応じて2~60分とする。加熱保持後は水冷することが望ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼(鋼1~4、A~G)を高周波真空溶解炉で溶製し、30kgのインゴットを得た。
Figure 0007372537000001
得られたインゴットを、1200℃に加熱した後、仕上げ温度が1000℃となるように熱間鍛造して、厚さ15mmの板材とした。この厚さ15mmの板材を用いて、1100℃で軟化熱処理を施した後、10mmまで冷間圧延した。さらに、鋼1~4、A~Fについては、1100℃で30分間、鋼Gについては、1250℃で30分間の固溶化熱処理を施した。その後、全ての鋼について水冷し、試験材を得た。
オーステナイト粒の平均結晶粒径は、以下の方法により求めた。肉厚中央部から組織観察用の試験片を採取し、長手方向の断面をエメリーペーパーおよびバフで研磨後、混酸で腐食して光学顕微鏡観察を行った。観察面の結晶粒径はJIS G 0551(2013)に規定される交差線分による測定方法に従って求めた。
上記の各試験材の一部を用いて、厚さ方向中心部から、長手方向に平行に、JIS Z 2241(2011)に記載される直径が6mmで標点距離が30mmの丸棒引張試験片を機械加工により作製し、クリープ破断試験を実施した。クリープ破断試験は700℃、210MPaで実施し、破断時間および破断延性を測定した。そして、破断時間が1500時間以上の場合にクリープ破断強度が優れると判断して「合格」とし、それ以外を「不合格」とした。クリープ破断延性については30%以上の場合にクリープ破断延性が優れると判断して「合格」とし、それ以外を「不合格」とした。
次に、上記の各試験材の一部から、機械加工によって厚さ10mm、幅50mm、長さ100mmの板状の試験片を得た。その試験片の長手方向に沿って開先加工を施し、開先加工を施した試験片同士を突き合わせ、以下の手順でそれぞれ2継手ずつ突合せ溶接を行って溶接継手を作製した。
まず、ガスタングステンアーク溶接法によって、溶加材料を用いず、5kJ/cmの入熱量で初層のみ溶接した後、市販の炭素鋼板の上に置き、四隅を拘束溶接した。その後、JIS Z 3334に規定のSNi6625相当のTIGワイヤを用いて、入熱10~15kJ/cmでTIG溶接により開先内に積層溶接を行って溶接継手を作製した。
作製した溶接継手の各5か所から、観察面が継手の横断面(溶接ビードと垂直な断面)になるように試料を採取した。採取した試料を研磨、腐食した後、光学顕微鏡観察により溶接熱影響部における割れの有無を調査した。そして、5個の試料の全て、または4個で割れが観察されなかった場合に、耐溶接割れ性が優れると判断して「良好」とし、それ以外を「不良」とした。
それらの結果を表2にまとめて示す。
Figure 0007372537000002
表2に示すように、本発明の規定を満足する鋼1~4では、クリープ破断強度およびクリープ破断延性が合格、耐溶接割れ性が良好であった。それに対して、比較例である鋼A~Gでは、クリープ破断強度、クリープ破断延性、および耐溶接割れ性のいずれかが「不合格」または「不良」となった。
本発明によれば、長時間の組織安定性に優れ、高いクリープ破断強度とクリープ破断延性とを有し、さらに耐溶接割れ性が良好であるオーステナイト系耐熱鋼が得られる。そのため、本発明のオーステナイト系耐熱鋼は、高温環境下で使用される火力発電用ボイラおよび化学プラント等の構造部材として好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.02~0.12%、
    Si:0.01~0.40%、
    Mn:0.10~1.50%、
    P:0.040%以下、
    S:0.020%以下、
    Cr:20.0~24.0%、
    Ni:22.0~28.0%、
    W:2.00~6.00%、
    Cu:2.50~3.50%、
    Nb:0.10~0.80%、
    V:0.02~0.80%、
    REM:0~0.004×Cu%、
    B:0.0005~0.0050%、
    Al:0.10%以下、
    N:0.180~0.300%、
    Mo:0.30%以下、
    Ti:0.100%以下、
    Co:0~10.0%、
    Mg:0~0.050%、
    Ca:0~0.050%、
    Zr:0~0.10%、
    Hf:0~1.0%、
    Ta:0~1.0%、
    Re:0~5.0%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式および(ii)式を満足する、
    オーステナイト系耐熱鋼。
    8.50≦4V+2Nb+W+Cu+15N-6Si≦11.50 ・・・(i)
    0.005+7×10-5×d≦15B+REM≦0.075 ・・・(ii)
    但し、上記式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。また、dは平均結晶粒径(μm)を表す。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Mg:0.0005~0.050%、
    Ca:0.0005~0.050%、
    Zr:0.005~0.10%、
    Hf:0.005~1.0%、
    Ta:0.01~1.0%、および、
    Re:0.01~5.0%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼。

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