[01] 本発明は、脂質分子の塩形態である新規化学的実体及びそれらの使用に関する。
[02] 動物組織における炎症反応は、2つの相:開始及び収束を有する。細胞レベルでは、開始は、浮腫、並びに好中球、単球、及びマクロファージなどの免疫細胞の蓄積を特徴とする。炎症反応の開始相は、昔から、好酸球、好中球、及び単球の走化性因子であるプロスタグランジンPGE2及びPGD2などのアラキドン酸の代謝産物や、白血球の接着、走化性、及び集合を誘発するロイコトリエン類、特にLTB4により駆動される活性なプロセスとして認識されてきた。炎症を起こした組織を健康な状態に戻すには、過剰な炎症細胞、細胞の残骸、及び宿主防御の他の残遺物、並びにあらゆる侵入微生物が排除されなければならない。炎症反応のこの「収束」相は、長年、開始相の走化性因子の希釈の結果である受動的プロセスであると信じられていた。今日では、炎症の収束は、様々な分子により駆動される能動的なプロセスとして認識されている。例えば、プロテクチン類やレゾルビン類は、炎症の部位において局所的に産生されるオータコイドである。それらは、過剰な好中球や細胞の残骸を除去することができるマクロファージへと分化する非炎症性単球を集めることにより炎症を収束させるのを助ける。これらの分子は、炎症の「特異的炎症収束性メディエーター(specialized pro-resolving mediators)」(「SPM」)のクラスの一部である。他のSPMには、リポキシン類、アスピリン誘発レゾルビン類、及びアスピリン誘発プロテクチン類が含まれる。Serhan et al., “Lipid Mediators of Inflammation”, Cold Spring Harb Perspect Biol 2015; 7:a016311を参照。
[03] 過剰な炎症は、血管疾患、代謝疾患、及び神経疾患を含めた多くの慢性疾患において統合的構成要素として広く認識されている。例えばSerhan, C.N., Nature 2014 510:92-101を参照。従って、過剰な炎症を収束させる能力はヒトや動物の健康に重要である。
[04] 研究者は、アルツハイマー病、熱傷創、慢性膵炎、糖尿病性創傷、皮膚炎、肺炎症、末梢神経損傷、肥満、アレルギー性気道応答、筋萎縮性側索硬化症、急性肺損傷、線維症、細菌感染、腹膜炎、ドライアイ、組織再生、痛み、脂肪組織炎症、限局型侵襲性歯周炎、大腸炎、顎関節炎症、関節炎、術後痛、手術後認知低下、内毒素ショック、HSV-角膜炎、同種移植片拒絶、心臓虚血、細菌性肺炎、タバコの煙に誘発される肺炎症、血管炎症、線維筋痛症、及び迷走神経切除術に関連する疾患モデルを含めた数多くの疾患モデルにおいて様々なSPMの役割を確立してきた。例えば、Serhan et al., “Lipid Mediators of Inflammation”, Cold Spring Harb Perspect Biol 2015; 7:a016311参照。米国特許第8,008,282号及び第6,627,658号は、リポキシン類似体及び血管新生の阻害剤としてのそれらの使用について記載している。米国特許第5,441,951号、第5,648,512号、第6,048,897号、第6,316,648号、第6,569,075号、第6,887,901号、第7,288,569号、及び第7,294,728号、第7,741,369号、並びに第7,741,369号は、リポキシン化合物及び細胞増殖性障害の処置におけるそれらの使用について記載している。米国特許第8,119,691号は、喘息及び炎症性気道疾患の処置におけるリポキシン類及びアスピリン誘発リポキシン類並びにそれらの類似体について記載している。
[05] 米国特許出願公開第20060293288号は、胃腸炎症、並びに潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎、抗生物質関連下痢、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎、微視的又はリンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、大腸ポリープ、家族性ポリープ、家族性ポリポーシス症候群、ガードナー症候群、ヘリコバクターピロリ、過敏性腸症候群、非特異性下痢性疾患、及び腸癌のような疾患を処置するためのレゾルビン類の使用について記載している。
[06] 米国特許第6,670,396号、第7,053,230号、第7,709,669号、第7,737,178号、及び第8,349,896号は、アスピリン誘発脂質メディエーター、並びに炎症(例えば、炎症は、クローン病、潰瘍性大腸炎、遠位(distal)直腸炎、リウマチ様脊椎炎、関節炎、リウマチ様関節炎、骨関節炎、痛風性関節炎、乾癬、皮膚炎、湿疹性皮膚炎、アトピー性若しくは脂漏性皮膚炎、アレルギー性若しくは刺激性接触性皮膚炎、亀裂性湿疹(eczema craquelee)、光アレルギー性皮膚炎、光毒性皮膚炎、植物性光皮膚炎、放射線皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、動脈炎症、冠動脈梗塞損傷(coronary infarct damage)、再狭窄、ブドウ膜炎、虹彩炎、結膜炎、成人呼吸促迫症候群、気管支炎、嚢胞性繊維症、収縮刺激性の病態、喘息、特発性気管支喘息、動脈平滑筋収縮、冠血管攣縮、心筋梗塞、虚血に誘発される心筋損傷、脳攣縮、卒中、炎症性腸障害、痙攣性結腸、粘液性大腸炎、アレルギー性の病態、湿疹、アレルギー性腸疾患、セリアック病、アレルギー性の眼病、枯草熱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、血小板凝集に関わる病態、冠動脈血栓、静脈炎、又は静脈血栓症として現れる)を処置する方法及び心血管疾患を処置する方法におけるそれらの使用について記載している。
[07] 米国特許出願公開第20120245229号は、レゾルビン類を投与することにより、糖尿病性神経障害又はHIV感染に関連した痛みを含めた神経障害性の痛みを処置する方法、術後痛、炎症性の痛み、癌に関連した痛み、及び線維筋痛症に関連した痛みを処置する方法について記載している。
[08] Limらは、多数の炎症痛モデルにおけるSPMの鎮痛効力について記載し、レゾルビン類及び関連する物質を、炎症及び病的な痛みの悪化を予防するための療法的候補として特性付けている。Lim et al. “Biological Roles of Resolvins and Related Substances in the Resolution of Pain” BioMed Research International 2015, pp. 1-14, Article ID 830930参照。Linは、これら分子の「強力な効力」や「無視できる有害な作用」が、それらを臨床使用のための魅力的な候補薬剤にすることも特筆している。
[09] 米国特許出願公開第20150126602号は、天然の特異的炎症収束性メディエーター及びそれらの前駆体、例えば18HEPE及び17HDHAを含有する抗炎症活性を有する油、並びに心血管疾患(アテローム性動脈硬化、高血圧、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、内皮反応低下、心筋梗塞、及び脳卒中を含む)、メタボリックシンドローム(例えばインスリン感受性の喪失、肥満、脂肪肝、及び/又は胆汁うっ滞を特徴とする)、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症及び失行症)、アトピー性/アレルギー性反応、骨関節炎、リウマチ様関節炎、炎症性の痛み、ざ瘡、乾癬、酒さ、喘息、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、敗血症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、歯周炎、炎症性腸疾患、クローン病、黄斑変性、ドライアイ症候群、胃潰瘍形成、癌、及び自己炎症性障害などの炎症性の病態を処置するためのそれらの使用方法について記載している。
[10] 米国特許第7,378,444号及び米国特許第7,595,341号は、ω-3脂肪酸由来の脂質メディエーターの類似体、並びに炎症性、血管増殖性、心血管、血栓静脈炎性(thrombophlebotic)、血管、眼、皮膚科学的、神経変性、肺、内分泌、生殖、リウマチ性、及び胃腸性の疾患を処置するための使用方法について記載している。
[11] SPM及び炎症の他の脂質メディエーター(それらの類似体及び誘導体を含む)を療法上有効量で標的組織に送達することができる組成物を開発して、これら化合物の療法的有望性を実現し、多くの有望なインビトロ及び細胞薬理学の観察結果を臨床的利益に変換する必要性が存在している。本発明はこれらの必要性に取り組むものである。
米国特許第8,008,282号
米国特許第6,627,658号
米国特許第5,441,951号
米国特許第5,648,512号
米国特許第6,048,897号
米国特許第6,316,648号
米国特許第6,569,075号
米国特許第6,887,901号
米国特許第7,288,569号
米国特許第7,294,728号
米国特許第7,741,369号
米国特許第8,119,691号
米国特許出願公開第20060293288号
米国特許第6,670,396号
米国特許第7,053,230号
米国特許第7,709,669号
米国特許第7,737,178号
米国特許第8,349,896号
米国特許出願公開第20120245229号
米国特許出願公開第20150126602号
米国特許第7,378,444号
米国特許第7,595,341号
[12] 本発明は、リポキシン類、レゾルビン類、プロテクチン類、及びそれらのアスピリン誘発対応物を含めた特異的炎症収束性メディエーター(本願明細書において「SPM」と称する)の新規の塩形態を提供する。本願明細書に記載のSPM塩は、式I~IVに記載される骨格により提供される少なくとも1個の塩基性官能基にイオン結合した少なくとも1個又は2個のSPM分子を含有する。例えば、式I及びIIIの化合物では、骨格は、ペプチドベースであり;式IVの化合物では、骨格は、2価金属-アミノ酸キレート又は2価金属-ペプチドキレートであり;そして式IIの化合物では、骨格は、ジペプチド又は1価金属若しくは非金属ジペプチドのどちらかである。
[13] 本願明細書に記載の塩の陰イオン性対イオン構成要素を形成する少なくとも1個又は2個のSPM分子は、本願明細書に記載の化合物及び組成物の「SPM構成要素」と称され得る。ある態様では、SPM構成要素は、E系列のレゾルビンを含むか又はE系列のレゾルビンから成る。ある態様では、E系列レゾルビンは、レゾルビンE1(RvE1)、レゾルビンE2(RvE2)、レゾルビンE3(RvE3)、並びにこれらのレゾルビンのアスピリン誘発(AT)対応物であるAT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、SPM構成要素は、レゾルビンD1(RvD1)、レゾルビンD2(RvD2)、レゾルビンE1(RvE1)、プロテクチンDX(PDX)、及びリポキシンA4(LXA4)から成る群より選択されるSPMを含むか又はそれから成る。ある態様では、SPM構成要素は、アスピリン誘発(AT)レゾルビン、リポキシン、又はプロテクチンから選択されるSPMを含むか又はそれから成る。ある態様では、ATレゾルビン、リポキシン、又はプロテクチンは、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1又はLXA4から成る。これらSPM化合物の化学名及び式を、参照のために下記表1~4に提供する。
[14] 式I、III、及びIVの一部の化合物の構造の特定の非限定的な例を、表5に示す。
[15] ある態様では、本願明細書に記載のSPM塩は、SPMの遊離酸形態と比較して化学分解に対して安定化されている。ある態様では、本願明細書に記載のSPM塩は、SPMの遊離酸形態と比較して向上した生物学的利用能を有する。
[16] 本願明細書に記載の化合物は、固体剤形を生成するために、例えば物理的混合により容易に互いとそして他の生物学的に有効な薬剤と組み合わせられ、又は液体剤形を生成するために、水性媒体中で溶解させることができる。従って、本願明細書に記載の化合物は、固体剤形、例えば経口又は直腸剤形としての配合に関するそれらの適合性に加えて、例えば静脈内及び筋内注射経由を含む非経口投与形態のための水性液体としての配合に適している。これらの利点及び他の利点は、下記でより詳細に記載する。
[17] ある態様では、本願明細書に記載の化合物及び組成物は、過剰な炎症を特徴とする疾患又は障害を処置するために有用である。
[18] ある態様では、疾患又は障害は、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学性大腸炎、及び虚血性大腸炎から選択される炎症性腸疾患(IBD)関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[19] ある態様では、疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、憩室炎、及び短腸症候群から選択される胃腸疾患又は障害である。ある態様では、胃腸疾患又は障害は腸粘膜炎である。
[20] ある態様では、疾患又は障害は、皮膚炎、糖尿病性創傷、湿疹、掻痒、治癒しつつある創傷、ざ瘡及びステロイド誘発性酒さから選択される皮膚科学的疾患又は障害である。ある態様では、皮膚科学的疾患又は障害は、皮膚炎、湿疹、掻痒、ざ瘡及びステロイド誘発性酒さから選択される。
[21] ある態様では、疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、シェーグレン症候群、及び全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患又は障害である。ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、乾癬、強皮症、及び口腔粘膜炎から選択される。
[22] ある態様では、疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関連した痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格損傷又は外傷から選択される神経疾患又は障害である。
[23] ある態様では、本開示は、ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネート(単にRvE1-Mg-ジ-リジネートとも称される)を含む医薬組成物、並びに胃腸管、特に下部消化管の炎症性疾患及び障害、特に炎症性腸疾患(IBD)の処置におけるそれらの使用方法を提供する。用語「下部消化管」は、空腸、回腸、結腸、及び直腸を表す。ある態様では、IBDは、潰瘍性大腸炎及びクローン病から選択される。本開示は、さらに経口送達に適合したビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを含む医薬組成物、特に下部胃腸管、好ましくは回腸、結腸、又は直腸、最も好ましくは結腸へ標的化された送達に適合した経口剤形を提供し、それは、炎症性腸疾患(IBD)の処置において特に有用であり、より詳細には潰瘍性大腸炎又はクローン病の処置において有用である。ある態様では、経口剤形は、下部胃腸管、好ましくは回腸及び/又は結腸への標的放出に適合した1以上の特徴を含み、それは、例えば腸溶コーティング、侵食性(erodible)及び/又は分解性マトリックス材料、ゲル化又は膨潤が可能なポリマー、ポラゲン(poragen)、並びに浸透圧ポンプ機構のうちの1以上を含む。ある態様では、ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを含む医薬組成物は、例えば浣腸剤又は坐薬の形態での直腸送達に適合している。
[24] 空腸、回腸、結腸、及び/又は直腸を含めた下部胃腸管を標的とした剤形は、ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートの形態で送達されるRvE1の独特の薬物動態のために、本願明細書に記載の下部胃腸管の炎症性疾患及び障害の処置に特に有利である。以下で詳細に記載されるように、本開示は、ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートの形態で経口投与されたRvE1が、腸及び/又は結腸の内腔を介して療法的に関連する量で小腸及び結腸の標的組織に直接吸収されることを提供する。ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートの下部胃腸管へ標的化された送達に適合した経口剤形と組み合わせられたこの特徴は、標的組織におけるRvE1の局所濃度及びRvE1の濃度が療法的閾値以上である時間の長さの両方を最大にするであろう。この標的化された送達と局所的吸収との組合せは、RvE1の非標的組織への損失を回避し、全身吸収及びオフターゲット効果を最小限にする。
[25] 加えて、そして以下でさらに詳細に論じられるように、本開示は、第2のIBD療法剤、場合により5-アミノサリチル酸(5-ASA)との併用療法においてビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを使用してIBDを処置する方法及び関連する組成物も提供する。ある態様では、第2のIBD療法剤は、コルチコステロイド、5-ASA、及びアザチオプリンから選択され得る。ある態様では、本開示は、5-ASA、アザチオプリン、及びコルチコステロイドのいずれか1つ以上と組み合わせてIBDを処置する方法に使用するためのビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを提供する。
式Iの化合物
[26] ある態様では、本開示は、式I:
の化合物、又はその鏡像異性体、多形体、溶媒和物、若しくは水和物を提供するものであり、
式中、
A及びBは、それぞれ独立してSPM分子であり;
A及びBは、同じでも異なっていてもよく;
A又はBのどちらかが存在しないことができるが、両方が存在しないことはできず、
R1及びR2は、それぞれ独立して少なくとも1個の塩基性官能基を含むC1~C10アルキルであり、かつ場合により分枝状であり;
Xは、H又はCO-Zであり、Zは、単一のアミノ酸残基又は2~18個のアミノ酸残基を含むペプチドであり;
A又はBのどちらかが存在しない場合:
R1、R2、及びCO-Zのうちの1つはプロトン化されており;又は
XはHであり、かつ正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及びCO-Zのうちの1つ又は正に荷電したHは、A又はBのどちらかとイオン結合を形成しており;そして
A及びBが両方存在する場合:
R1、R2、及びCO-Zのうちの2つはプロトン化されており;又は
R1、R2、及びCO-Zのうちの1つはプロトン化されており、かつXはHであり、かつ正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及びCO-Zのうちの2つ又はプロトン化されているR1、R2、及びCO-Zのうちの1つ、並びに正に荷電したHは、それぞれA及びBとイオン結合を形成している。
[27] 式Iの化合物は、少なくとも2個のアミノ酸部分及びSPM構成要素としての1又は2個のSPM分子(A、B)から成るペプチド構成要素を含む。ある態様では、A及びBは同じであるか又は異なっており、それぞれ独立してE系列レゾルビンから選択される。ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、A及びBは同じであり、それぞれ独立してLXA4、AT-LXA4、PDX、RvE1、AT-RvE1、RvD1、AT-RvD1、RvD2、及びAT-RvD2から成る群より選択される。SPM構成要素を、以下でより詳細に記載する。
[28] ペプチド構成要素は、長さ2~10又は2~20アミノ酸、好ましくは2、3、4、又は5アミノ酸であることができる。ペプチド構成要素は、XがHである場合、2アミノ酸残基から成り、又はXがCO-Zである場合、3~5、3~10、若しくは3~20アミノ酸残基のペプチドである。
[29] ある態様では、XはHであり、ペプチド構成要素は、リジン、アルギニン、及びグルタミン、又は前記の1以上の誘導体から独立して選択されるアミノ酸のジペプチドから成る。ある態様では、XはHであり、ペプチド構成要素はリジンのジペプチドから成る。
[30] ある態様では、XはHであり、R1及びR2は、それぞれ独立して-(CH2)3-NHC(NH2
+)-NH2、-(CH2)4-NH3
+、及び(CH2)2-C(O)NH3
+から選択される。ある態様では、R1及びR2は同じである。ある態様では、R1及びR2は異なる。
[31] ある態様では、A及びBは、同じであり、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から成る群より選択され;R1及びR2は両方とも-(CH2)4-Y2であり、Y2はNH3
+であり、XはHである。このR1、R2、及びY2の選択されたものは、本願明細書において「リジルリジン」(本願明細書において「lys-lys」と略され得る)ジペプチドと称され得る。この態様では、ペプチド構成要素はリジンジペプチドである。
[32] ある態様では、A及びBは、同じであり、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択され;R1及びR2は両方とも-(CH2)4-Y2であり、Y2はNH3
+であり、XはHである。上記で特筆されたように、このR1、R2、及びY2の選択されたものは、本願明細書において「リジルリジン」ジペプチド又は「lys-lys」ジペプチドと称され得る。この態様では、ペプチド構成要素はリジンジペプチドである。
[33] ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvE1 lys-lysから選択される。1つの態様では、式Iの化合物は、ビスRvE1 lys-lysである。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスAT-RvE1 lys-lysから選択される。1つの態様では、式Iの化合物は、ビスAT-RvE1 lys-lysである。
[34] ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvE2 lys-lysから選択される。ある態様では、式Iの化合物は、ビスRvE2 lys-lysである。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスAT-RvE2 lys-lysから選択される。ある態様では、式Iの化合物は、ビスAT-RvE2 lys-lysである。
[35] ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvE3 lys-lysから選択される。ある態様では、式Iの化合物は、ビスRvE3 lys-lysである。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスAT-RvE3 lys-lysから選択される。ある態様では、式Iの化合物は、ビスAT-RvE3 lys-lysである。
[36] ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスLXA4 lys-lysから選択される。1つの態様では、式Iの化合物は、ビスLXA4 lys-lysである。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスAT-LXA4 lys-lysから選択される。1つの態様では、式Iの化合物は、ビスAT-LXA4 lys-lysである。
[37] ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvD1 lys-lysから選択される。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスAT-RvD1 lys-lysから選択される。
[38] ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvD2 lys-lysから選択される。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスAT-RvD2 lys-lysから選択される。
[39] ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスPDX lys-lysから選択される。
[40] 式Iのリジルリジン態様の典型的な化合物を表5に提供する。ある態様では、式Iの化合物は、表5の化合物4、9、44、49、54、及び59(E系列)から成る群より選択される。ある態様では、式Iの化合物は、表5の化合物4、9、14、19、24、29、34、及び39から成る群より選択される。ある態様では、式Iの化合物は、表5の化合物4、9、24、29、34、及び39から成る群より選択される。ある態様では、式Iの化合物は、表5の化合物4及び9から成る群より選択される。
[41] ある態様では、式Iの化合物又はそれを含む組成物は、過剰な炎症を特徴とする疾患又は障害を処置する方法に使用される。ある態様では、疾患又は障害は、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学性大腸炎、及び虚血性大腸炎から選択されるIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[42] ある態様では、本開示は、上記のようなIBD関連疾患又は障害を処置するための方法を提供し、そのような処置を必要とする対象に式Iの化合物を投与することを含む。その方法の態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvE1 lys-lys、モノ又はビスAT-RvE1 lys-lys、モノ又はビスRvE2 lys-lys、モノ又はビスAT-RvE2 lys-lys、モノ又はビスRvE3 lys-lys、及びモノ又はビスAT-RvE3 lys-lysから選択される。その方法の態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvE1 lys-lys、モノ又はビスAT-RvE1 lys-lys、モノ又はビスLXA4 lys-lys、及びモノ又はビスAT-LXA4 lys-lysから選択される。
式IIの化合物
[43] ある態様では、本開示は、式II:
の化合物、又はその鏡像異性体、多形体、溶媒和物、若しくは水和物を提供するものであり、
式中、R1はHであるか又は存在しない。X1及びX2は、それぞれ独立してアミノ酸残基の側鎖である。Mは正に荷電した任意の分子である。BはSPM分子である。
[44] 式IIの化合物は、少なくとも正に荷電した任意の分子(M)を有する(i)ジペプチド構成要素及び(ii)SPM構成要素(B)から成る。ジペプチド構成要素は、X1及びX2から成り、それは同じでも異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基の側鎖である。ある態様では、X1及びX2の少なくとも一方は、セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基の側鎖である。X1及びX2の一方がセリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基の側鎖である態様では、X1又はX2の残りは、独立してリジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンから選択されるアミノ酸の側鎖である。ある態様では、残りはリジンの側鎖である。ある態様では、X1及びX2の少なくとも一方は、グリシン、バリン、セリン、ロイシン、又はヒスチジンの側鎖であり、残りはリジンの側鎖である。
[45] 正に荷電した任意の分子(M)は、プロトン化された形態の少なくとも1個の塩基性官能基を有し、それは、アミノ酸構成要素の末端カルボニルとイオン結合を形成している。ある態様では、Mは、1価金属陽イオン、例えばNa+、K+であるか、又は少なくとも1個の塩基性官能基を有する分子、例えば1価アミンベースの陽イオン、例えばトリエタノールアミン若しくはトリエチルアミン、又は塩基性医薬化合物、例えばメトホルミン若しくはガバペンチンである。
[46] 下記でより詳細に記載されるように、式IIの化合物は、ジペプチド及びSPMの単塩(式IIa)、ジペプチド及びSPMと1価金属との単純な金属塩(式IIb)、並びにジペプチド及びSPMと少なくとも1個の塩基官能基を有する非金属分子との単純な非金属塩(式IIc)を包含する。
[47] 式IIの化合物の態様では、BはE系列レゾルビンである。式IIの化合物の態様では、Bは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から成る群より選択される。
[48] 式IIの化合物のある態様では、Bは、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される。
[49] ある態様では、式IIの化合物はグリシンジペプチドであり、ここで、R1はHであり、X1及びX2はそれぞれHであり、Mは存在せず、Bは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から成る群より選択される。
[50] ある態様では、式IIの化合物はグリシンジペプチドであり、ここで、R1はHであり、X1及びX2はそれぞれHであり、Mは存在せず、Bは、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される。
[51] ある態様では、本開示は、上記のIBD関連疾患又は障害から選択される疾患又は障害を処置するための方法を提供し、そのような処置を必要とする対象に式IIの化合物を投与することを含む。
式IIIの化合物
[52] ある態様では、本開示は、式III:
の化合物、又はその鏡像異性体、多形体、溶媒和物、若しくは水和物を提供するものであり、
式中、
R2は、少なくとも1個の塩基性官能基を含むC1~C10アルキルであり;
A及びBは、それぞれ独立してSPM分子であり;
A及びBは、同じでも異なっていてもよく;そして
A又はBのどちらかが存在しないことができるが、両方が存在しないことはできない。
[53] ある態様では、R2は、リジン、アルギニン、及びグルタミンから選択されるアミノ酸残基の側鎖である。ある態様では、R2は、-(CH2)3-NHC(NH2
+)NH2、-(CH2)4-NH3
+、及び(CH2)2-C(O)NH3
+から成る群より選択される。ある態様では、R2は-(CH2)4-NH3
+である。
[54] 式IIIの化合物の1つの態様では、A及びBは、同じであるか又は異なっており、それぞれが独立してE系列レゾルビンから選択され、R2は-(CH2)4-NH3
+である。ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。このR2の選択されたものは、本願明細書において「線状リジルリジン」(線状lys-lys)ジペプチドと称され得る。この態様では、ペプチド構成要素はリジンジペプチドである。ある態様では、A及びBは同じである。
[55] 式IIIの化合物の1つの態様では、A及びBは同じであり、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択され、R2は-(CH2)4-NH3
+である。このR2の選択されたものは、本願明細書において「線状リジルリジン」(線状「lys-lys」)ジペプチドと称される。この態様では、ペプチド構成要素はリジンジペプチドである。
[56] ある態様では、式IIIの化合物はモノ又はビスRvE1線状lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスRvE1線状lys-lysである。ある態様では、式IIIの化合物はモノ又はビスAT-RvE1線状lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスAT-RvE1線状lys-lysである。
[57] ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスRvE2線状lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスRvE2線状lys-lysである。ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスAT-RvE2線状lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスAT-RvE2線状lys-lysである。
[58] ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスRvE3線状lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスRvE3線状lys-lysである。ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスAT-RvE3線状lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスAT-RvE3線状lys-lysである。
[59] ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスLXA4線状lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスLXA4線状lys-lysである。ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスAT-LXA4 lys-lysから選択される。1つの態様では、式IIIの化合物はビスAT-LXA4線状lys-lysである。
[60] ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスRvD1線状lys-lysから選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスAT-RvD1線状lys-lysから選択される。
[61] ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスRvD2線状lys-lysから選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスAT-RvD2線状lys-lysから選択される。
[62] ある態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスPDX線状lys-lysから選択される。
[63] 典型的な式IIIの化合物を表5に提供する。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物5、10、45、50、55、及び60(E系列)から成る群より選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物5、10、15、20、25、30、35、及び40から成る群より選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物5及び10(RvE1及びAT-RvE1態様)から成る群より選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物15及び20(LXA4及びAT-LXA4態様)から成る群より選択される。
[64] ある態様では、式IIIの化合物又はそれを含む組成物は、過剰な炎症を特徴とする疾患又は障害を処置する方法に用いられる。ある態様では、疾患又は障害は、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学性大腸炎、及び虚血性大腸炎から選択されるIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[65] ある態様では、本開示は、上記のIBD関連疾患又は障害を処置する方法を提供し、そのような処置を必要とする対象に式IIIの化合物を投与することを含む。その方法の態様では、式IIIの化合物は、モノ又はビスRvE1線状lys-lys、モノ又はビスAT-RvE1線状lys-lys、モノ又はビスRvE2線状lys-lys、モノ又はビスAT-RvE2線状lys-lys、モノ又はビスRvE3線状lys-lys、及びモノ又はビスAT-RvE3線状lys-lysから選択される。ある態様では、その方法に使用するための式IIIの化合物は、モノ又はビスRvE1線状lys-lys、モノ又はビスAT-RvE1線状lys-lys、モノ又はビスLXA4線状lys-lys、及びモノ又はビスAT-LXA4線状lys-lysから選択される。
式IVの化合物
[66] ある態様では、本開示は、式IV:
の化合物、又はその鏡像異性体、多形体、溶媒和物、若しくは水和物を提供するものであり、
式中、
Mは2価金属であり;
A及びBは、それぞれ独立してSPM陰イオンであり;
A及びBは、同じでも異なっていてもよく;
A又はBのどちらかが存在しないことができるが、両方が存在しないことはできず;
R1及びR2は、それぞれ独立して少なくとも1個の塩基性官能基を含むC1~C10アルキルであり;
X1及びX2は、それぞれ独立してH又はCO-Zであり、かつZは、1~5個のアミノ酸を含むペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であり;
A又はBのどちらかが存在しない場合:
R1、R2、及び2つのCO-Zのうちの1つはプロトン化されており;又は
2つのHの一方は正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及び2つのCO-Zのうちの1つ又は正に荷電したHの一方は、A又はBのどちらかとイオン結合を形成しており;そして
A及びBが両方存在する場合:
R1、R2、及び2つのCO-Zのうちの2つはプロトン化されており;又は
R1、R2、及び2つのCO-Zのうちの1つはプロトン化されており、かつ2つのHの一方は正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及び2つのCO-Zのうちの2つ又はプロトン化されているR1、R、2及び2つのCO-Zのうちの1つ、並びに正に荷電したHは、それぞれA及びBとイオン結合を形成している。
[67] 式IVの化合物は、2価金属陽イオンの周囲に配位したアミノ酸構成要素としての2個のアミノ酸部分及びSPM構成要素としての1個又は2個のSPM分子を有する。ある態様では、2価金属は、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Fe2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Mo2+、又はZn2+である。ある態様では、2価金属はMg2+である。ある態様では、2価金属はCa2+である。ある態様では、2価金属はZn2+である。ある態様では、アミノ酸構成要素は、リジン又はアルギニンを含むか又はリジン又はアルギニンから成る。ある態様では、アミノ酸構成要素はリジン又はアルギニンを含む。ある態様では、R1及びR2の塩基性官能基は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及びグアニジンから選択される。ある態様では、塩基性官能基は、-NH3、-NHC(NH2
+)-NH2、-NHR6R7、又はNR6R7R8を表し、ここで、R6、R7、R8は、それぞれ独立して水素、-CN、-COOH、-CONH2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、又は非置換ヘテロアリールであり;同じ窒素原子に結合したR6及びR7置換基は、場合により連結されて非置換ヘテロシクロアルキル又は非置換ヘテロアリールを形成していることができる。ある態様では、塩基性官能基は水素結合受容体である。ある態様では、塩基性官能基は水素結合供与体である。ある態様では、塩基性官能基は正に荷電したアミンである。
[68] ある態様では、R1及びR2は、それぞれ塩基性官能基を有するアミノ酸残基の側鎖である。ある態様では、R1及びR2は同じであり、アミノ酸残基はリジン又はアルギニンである。
[69] ある態様では、R1及びR2は、独立して-(CH2)3-Y1及び(CH2)4-Y2から選択され、ここで、Y1及びY2はそれぞれ塩基性官能基であり、同じでも異なっていてもよい。ある態様では、R1は-CH2CH2NH3である。ある態様では、R2は-CH2CH2NH3である。ある態様では、R1は-CH2CH2CH2CH2NH3である。ある態様では、R2は-CH2CH2CH2CH2NH3である。
[70] ある態様では、R1及びR2は両方とも-(CH2)4-Y2であり、Y2は-NH3
+である。
[71] ある態様では、R1及びR2は両方とも-(CH2)3-Y1であり、Y1は-NHC(NH2
+)NH2である。
[72] ある態様では、R1は-(CH2)3-Y1であり、Y1は-NHC(NH2
+)NH2であり、R2は-(CH2)4-Y2であり、Y2はNH3
+である。ある態様では、R1は-(CH2)4-Y2であり、Y2はNH3
+であり、R2は-(CH2)3-Y1であり、Y1はNHC(NH2
+)NH2である。
[73] ある態様では、X1及びX2は同じであり、水素(H)である。
[74] ある態様では、A及びBのSPM分子は下記の通りである。
[75] 式IVの化合物の1つの態様では、A及びBは同じであるか又は異なっており、それぞれ独立してE系列レゾルビンから選択される。ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、Mは、Mg2+、Ca2+、又はZn2+であり、R1及びR2は両方とも-(CH2)4-Y2であり、Y2はNH3
+であり;X1及びX2はHである。このR1、R2、及びY2の選択されたものは、本願明細書において金属「ジ-リジネート」、例えば「マグネシウム ジ-リジネート」又は「Mg-ジ-リジネート」と称され得る。表5において、金属ジ-リジネートの名称は「SPM-Mlys」と略され、ここで、「M」は金属、例えばMg、Ca、又はZnである。この態様では、ペプチド構成要素はリジンジペプチドから成る。ある態様では、A及びBは同じである。
[76] 式IVの化合物の1つの態様では、A及びBは同じであり、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択され;Mは、Mg2+、Ca2+、又はZn2+であり、R1及びR2は両方とも-(CH2)4-Y2であり、Y2はNH3
+であり;X1及びX2はHである。このR1、R2及びY2の選択されたものは、本願明細書において金属「ジ-リジネート」、例えば「マグネシウム ジ-リジネート」又は「Mg-ジ-リジネート」と称され得る。この態様では、ペプチド構成要素は、リジンジペプチドから成る。
[77] ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスRvE1 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスRvE1 Mg-ジ-リジネートである。ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスAT-RvE1 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスAT-RvE1 Mg-ジ-リジネートである。
[78] ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスRvE2 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスRvE2 Mg-ジ-リジネートである。ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスAT-RvE2 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスAT-RvE2 Mg-ジ-リジネートである。
[79] ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスRvE3 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスRvE3 Mg-ジ-リジネートである。ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスAT-RvE3 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスAT-RvE3 Mg-ジ-リジネートである。
[80] ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスLXA4 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスLXA4 Mg-ジ-リジネートである。ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスAT-LXA4 Mg-ジ-リジネートから選択される。1つの態様では、式IVの化合物はビスAT-LXA4 Mg-ジ-リジネートである。
[81] ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスRvD1 Mg-ジ-リジネートから選択される。ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスAT-RvD1 Mg-ジ-リジネートから選択される。
[82] ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスRvD2 Mg-ジ-リジネートから選択される。ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスAT-RvD2 Mg-ジ-リジネートから選択される。
[83] ある態様では、式IVの化合物はモノ又はビスPDX Mg-ジ-リジネートから選択される。
[84] 典型的な式IVの化合物を表5に提供する。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物1~3、6~8、41~43、46~48、51~53、及び56~58(E系列)から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物1~3、6~8、11~13、16~18、21~23、26~28、31~33、及び36~38から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物1~3及び6~8(RvE1及びAT-RvE1態様)から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物11~13及び16~18(LXA4及びAT-LXA4態様)から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物21~23及び26~28(RvD1及びAT-RvD1態様)から成る群より選択される。
[85] ある態様では、式IVの化合物又はそれを含む組成物は、過剰な炎症を特徴とする疾患又は障害を処置する方法において用いられる。ある態様では、疾患又は障害は、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学性大腸炎、及び虚血性大腸炎から選択されるIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[86] ある態様では、本開示は、上記のIBD関連疾患又は障害から選択される疾患又は障害を処置する方法を提供し、そのような処置を必要とする対象に式IVの化合物を投与することを含む。その方法の態様では、式IVの化合物は、モノ又はビスRvE1 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvE1 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、モノ又はビスRvE2 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvE2 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、モノ又はビスRvE3 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、及びモノ又はビスAT-RvE3 Mg、Ca又はZnジ-リジネートから選択される。ある態様では、式IVの化合物は、モノ又はビスRvE1 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvE1 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、モノ又はビスLXA4 Mg、Ca又はZnジ-リジネート、及びモノ又はビスAT-LXA4 Mg、Ca又はZnジ-リジネートから選択される。ある態様では、ジ-リジネートはマグネシウム ジ-リジネートである。
SPM構成要素
[87] 上記で論じられたように、式I~IVにより表される化合物はそれぞれ、本願明細書において化合物の「SPM構成要素」と称され得る少なくとも1個又は2個のSPM分子及びSPM構成要素がイオン結合している骨格部分を含有する。用語「モノ」及び「ビス」は、塩化合物中の1個(モノ)又は2個(ビス)のSPM分子を表す。
[88] 用語「SPM」は、下記でより詳細に記載されるようなプロテクチン類及びレゾルビン類などののSPM並びにリポキシン類及びアスピリン誘発脂質メディエーター(例えばアスピリン誘発リポキシン類及びプロテクチン類)を表す。本願明細書に記載される化合物のSPM構成要素を形成することができる特定のSPM分子並びにそれらの前駆体分子の例が、下記表1~4に与えられている。これらの表に記載されている中性化合物は、適切なpHにて溶媒和した場合、荷電した(すなわち脱プロトン化された)状態になり得ることは理解されている。
[89] ある態様では、本願明細書に記載の化合物のSPM構成要素は、アラキドン酸(AA)由来のメディエーター(表1);エイコサペンタエン酸(EPA)由来のメディエーター(表2);ドコサヘキサエン酸(DHA)由来のメディエーター(表3);及びアスピリン誘発メディエーター(表4)から選択される1個又は2個のSPM分子を含むか又はそれらから成る。ある態様では、本願明細書に記載の化合物のSPM構成要素は、表1~4から選択される2個のSPM分子を含むか又はそれらから成る。ある態様では、2個のSPM分子は同じであるか又は異なっている。ある態様では、2個のSPM分子は同じであり、E系列レゾルビンから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、2個のSPM分子は同じであり、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される。ある態様では、本願明細書に記載の化合物のSPM構成要素は、E系列レゾルビンから選択される1個又は2個のSPM分子から成り;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、本願明細書に記載の化合物のSPM構成要素は、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される1個又は2個のSPM分子から成る。ある態様では、SPM構成要素は、E系列レゾルビンから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、AT-RvE1、LXA4、及びAT-LXA4から選択される。
[90] 本開示はまた、本願明細書に記載の単一の化合物を含む組成物、又は本願明細書に記載の2種類以上の異なる化合物の混合物を含む組成物を提供する。ある態様では、組成物は医薬組成物又は獣医学用組成物であり、担体はヒト又は動物への投与に許容可能である。
[91] ある態様では、組成物は、固体経口剤形、直腸投与に適した剤形、又は非経口剤形の形態の医薬組成物である。ある態様では、直腸投与に適した剤形は、軟膏、坐剤、又は浣腸剤である。ある態様では、非経口剤形は、例えば水性液体の注射による静脈内、動脈内、又は筋内投与に適している。
[92] 本開示は、本願明細書に記載の化合物及びそれを含む組成物の使用方法も提供する。ある態様では、本願明細書に記載の化合物又はそれを含む組成物は、慢性炎症又は過剰な炎症を特徴とする炎症のような、炎症の収束が有益な作用を提供する疾患又は障害を処置するために有用である。例えば、本願明細書に記載の化合物及び組成物は、胃腸疾患及び障害、肺疾患及び障害、関節炎性疾患及び障害、心血管疾患及び障害、代謝疾患及び障害、感染性疾患及び障害、並びに神経疾患及び障害の処置において有用である。
[93] ある態様では、本開示は、そのような処置を必要とする対象に式I、II、III、又はIVの化合物を投与することにより胃腸疾患又は障害を処置する方法を提供し、ここで、胃腸疾患又は障害は、下記で「薬学的使用」と題された節において記載されている疾患又は障害から選択される。その方法の態様では、化合物は、リジル-リジンジペプチド構成要素及びE系列レゾルビンから選択されるSPM構成要素を有する式Iの化合物であり;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。その方法の態様では、化合物は、リジル-リジンジペプチド構成要素並びにRvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択されるSPM構成要素を有する式Iの化合物である。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、AT-RvE1、LXA4、及びAT-LXA4から選択される。その方法の態様では、化合物は、マグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートペプチド構成要素及びE系列レゾルビンから選択されるSPM構成要素を有する式IVの化合物であり;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。方法の態様では、化合物は、マグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートペプチド構成要素並びにRvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択されるSPM構成要素を有する式IVの化合物である。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、AT-RvE1、LXA4、及びAT-LXA4から選択される。SPM構成要素は、モノ又はビスであることができるが、好ましくはビスである。
[94] 本開示は、本願明細書に記載の化合物又はそれを含む組成物の単位剤形、その単位剤形を保持するための少なくとも1個の容器、及び使用説明書を含む包装又はキットも提供する。
[95] 図1A:RvE1の化学的安定性。時間ゼロにおけるRvE1遊離酸のHPLCトレース。
[95] 図1B:RvE1の化学的安定性。8週間の時点でのRvE1のHPLCトレース。
[96] 図2A:RvE1 Mg-ジ-リジネートの化学的安定性。時間ゼロにおけるRvE1 Mg-ジ-リジネートのHPLCトレース。
[96] 図2B:RvE1 Mg-ジ-リジネートの化学的安定性。8週間の時点でのRvE1 Mg-ジ-リジネートのHPLCトレース。
[97] 図3A:RvE1 Ca-ジ-リジネートの化学的安定性。時間ゼロにおけるRvE1 Ca-ジ-リジネートのHPLCトレース。
[97] 図3B:RvE1 Ca-ジ-リジネートの化学的安定性。6週間の時点でのRvE1 Ca-ジ-リジネートのHPLCトレース。
[98] 図4A:RvE1リジルリジンの化学的安定性。時間ゼロにおけるRvE1リジルリジンのHPLCトレース。
[98] 図4B:RvE1リジルリジンの化学的安定性。8週間の時点でのRvE1リジルリジンのHPLCトレース。
発明の詳細な説明
[99] 本発明は、下記でより詳細に記載されるリポキシン類、レゾルビン類、プロテクチン類、及びそれらのアスピリン誘発対応物を含む特異的炎症収束性メディエーター(本願明細書において「SPM」と称される)の新規の塩形態を提供する。本願明細書に記載の化合物は、好都合には、少なくとも部分的にそれらの増大した物理的及び/又は化学的安定性のために薬理学的に有用な形態のSPM分子を提供する。
[100] 本願明細書に記載の化合物は、下記で式I~IVに記載される骨格により提供される少なくとも1個の塩基性官能基にイオン結合した少なくとも1個又は2個のSPM分子を含有する。一般に、本願明細書に記載の化合物のSPM分子又はSPM構成要素を形成する分子のカルボン酸部分は、脱プロトン化されて化合物の骨格部分の塩基性官能基(単数又は複数)とイオン結合を形成している。
[101] 本願明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態、及び水和形態を含めた溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と均等であり、本発明の範囲に包含されることが意図されている。一般に、全ての物理形態は、本発明により意図される使用に関して均等であり、本発明の範囲内であることが意図されている。
[102] 本願明細書で用いられる略語は、化学及び生物学の技術分野内のそれらの従来の意味を有する。本願明細書で示される化学構造及び化学式は、化学の技術分野において公知の化学結合価の標準的な規則に従って構成されている。例えば、-NH3のような置換基が電荷なしで示されている場合、それは、形式電荷、すなわちNH3
+を有することは理解されている。
[103] 「アルキル」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、別途記載されない限り、直鎖(すなわち非分枝状)若しくは分枝状炭素鎖(又は炭素)又はそれらの組合せを意味し、完全飽和、一不飽和、又は多価不飽和であり得、示された炭素原子数(すなわち、C1~C10は1~10個の炭素を意味する)を有する1価、2価、及び多価の基を含むことができる。
[104] 用語「塩基性官能基」は、正に荷電した若しくはプロトン化された第1級アミン、正に荷電した第2級アミン、正に荷電した第3級アミン、又は正に荷電したグアニジンを表す。ある態様では、塩基性官能基は、-NH3
+、-NHC(NH2
+)NH2、-NHR6R7、-NR6R7R8を表し、ここで、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立して水素、-CN、-COOH、-CONH2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、又は非置換ヘテロアリールであり;同じ窒素原子に結合したR6及びR7置換基は、場合により連結されて非置換ヘテロシクロアルキル又は非置換ヘテロアリールを形成することができる。ある態様では、塩基性官能基は水素結合受容体である。ある態様では、塩基性官能基は正に荷電したアミンである。
[105] 共鳴のため、電荷は分子にわたって分布し得ることは理解されている。本願明細書で示される化学構造及び化学式は、化学の技術分野において公知の化学結合価の標準的な規則に従って構成されており、従って、当業者は、共鳴構造を有する分子の均等性を認識するであろう。例えば、-NHC(NH2
+)NH2は、
を表す。
[106] ある態様では、「アミノ酸の側鎖」又は「側鎖」は、本願明細書で用いられる際、その通常の意味に従って用いられており、天然アミノ酸上に含有される官能性置換基を表す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によりコードされているアミノ酸(例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、又はバリン)並びに後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。ある態様では、アミノ酸の側鎖はイオン化されている(例えば、それは形式電荷を有する)。
[107] ある態様では、側鎖は、H、
から成る群より選択される。
[108] ある態様では、側鎖はHである。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。
[109] ある態様では、側鎖は、場合により、隣接する窒素に連結されて非置換ヘテロシクロアルキル(例えばピロリジニル(pyyrolidinyl))を形成することができる。
[110] ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。ある態様では、側鎖は、
である。
[111] グリシンの側鎖はHである。アルギニンの側鎖は、
である。アルギニンの側鎖は、
である。ヒスチジンの側鎖は、
である。リジンの側鎖は、
である。アスパラギン酸の側鎖は、
である。グルタミン酸の側鎖は、
である。セリンの側鎖は、
である。スレオニンの側鎖は、
である。アスパラギンの側鎖は、
である。グルタミンの側鎖は、
である。システインの側鎖は、
である。プロリンの側鎖は、
である。アラニンの側鎖は、
である。バリンの側鎖は、
である。イソロイシンの側鎖は、
である。ロイシンの側鎖は、
である。メチオニンの側鎖は、
である。フェニルアラニンの側鎖は、
である。チロシンの側鎖は、
である。トリプトファンの側鎖は、
である。
[112] 用語「非天然アミノ酸側鎖」は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、アリルアラニン、2-アミノイソ酪酸の官能性置換基を表す。非天然アミノ酸は、天然に存在するか又は化学合成された非タンパク質構成アミノ酸である。そのような類似体は、改変されたR基(例えばノルロイシン)又は改変されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。非h限定的な例には、エキソ-シス-3-アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボン酸塩酸塩、シス-2-アミノシクロヘプタンカルボン酸塩酸塩、シス-6-アミノ-3-シクロヘキセン-1-カルボン酸塩酸塩、シス-2-アミノ-2-メチルシクロヘキサンカルボン酸塩酸塩、シス-2-アミノ-2-メチルシクロペンタンカルボン酸塩酸塩、2-(Boc-アミノメチル)安息香酸、2-(Boc-アミノ)オクタン2酸、Boc-4,5-デヒドロ-Leu-OH(ジシクロヘキシルアンモニウム)、Boc-4-(Fmoc-アミノ)-L-フェニルアラニン、Boc-β-ホモpyr-OH、Boc-(2-インダニル)-Gly-OH、4-Boc-3-モルホリン酢酸、4-Boc-3-モルホリン酢酸、Boc-ペンタフルオロ-D-フェニルアラニン、Boc-ペンタフルオロ-L-フェニルアラニン、Boc-Phe(2-Br)-OH、Boc-Phe(4-Br)-OH、Boc-D-Phe(4-Br)-OH、Boc-D-Phe(3-Cl)-OH、Boc-Phe(4-NH2)-OH、Boc-Phe(3-NO2)-OH、Boc-Phe(3,5-F2)-OH、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)酢酸purum、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(2-フルオロフェニル)酢酸purum、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(3-フルオロフェニル)酢酸purum、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(4-フルオロフェニル)酢酸purum、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(4-メトキシフェニル)酢酸purum、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-フェニル酢酸purum、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(3-ピリジル)酢酸purum、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]酢酸purum、Boc-β-(2-キノリル)-Ala-OH、N-Boc-1,2,3,6-テトラヒドロ-2-ピリジンカルボン酸、Boc-β-(4-チアゾリル)-Ala-OH、Boc-β-(2-チエニル)-D-Ala-OH、Fmoc-N-(4-Boc-アミノブチル)-Gly-OH、Fmoc-N-(2-Boc-アミノエチル)-Gly-OH、Fmoc-N-(2,4-ジメトキシベンジル)-Gly-OH、Fmoc-(2-インダニル)-Gly-OH、Fmoc-ペンタフルオロ-L-フェニルアラニン、Fmoc-Pen(Trt)-OH、Fmoc-Phe(2-Br)-OH、Fmoc-Phe(4-Br)-OH、Fmoc-Phe(3,5-F2)-OH、Fmoc-β-(4-チアゾリル)-Ala-OH、Fmoc-β-(2-チエニル)-Ala-OH、4-(ヒドロキシメチル)-D-フェニルアラニンが含まれる。
式Iの化合物
[113] ある態様では、本開示は、式I:
の化合物(その鏡像異性体、多形体、溶媒和物、及び水和物を含む)を提供するものであり、
式中、
A及びBは、それぞれ独立してSPM分子であり;
A及びBは、同じでも異なっていてもよく;
A又はBのどちらかが存在しないことができるが、両方が存在しないことはできず、
R1及びR2は、それぞれ独立して少なくとも1個の塩基性官能基を含むC1~C10アルキルであり;
XはH又はCO-Zであり、Zは単一のアミノ酸残基又は2~18個のアミノ酸残基を含むペプチドであり;
A又はBのどちらかが存在しない場合:
R1、R2、及びCO-Zのうちの1つはプロトン化されており;又は
Hは正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及びCO-Zのうちの1つ又は正に荷電したHは、A又はBのどちらかとイオン結合を形成しており;そして
A及びBが両方存在する場合:
R1、R2、及びCO-Zのうちの2つはプロトン化されており;又は
R1、R2、及びCO-Zのうちの1つはプロトン化されており、かつHは正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及びCO-Zのうちの2つ又はプロトン化されているR1、R2、及びCO-Zのうちの1つ並びに正に荷電したHは、それぞれA及びBとイオン結合を形成している。
[114] 式Iの化合物は、少なくとも2つのアミノ酸部分から成るペプチド構成要素及びSPM構成要素としての1個又は2個のSPM分子(A、B)を含む。SPM構成要素は、下記でより詳細に記載されている。ある態様では、SPM構成要素は、E系列レゾルビンから選択されるSPMを含むか又はそれらから成り;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、SPM構成要素は、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、及びLXA4から成る群より選択されるSPMを含むか又はそれらから成る。ある態様では、SPM構成要素は、アスピリン誘発(AT)レゾルビン、リポキシン、又はプロテクチンから選択されるSPMを含むか又はそれらから成る。ある態様では、ATレゾルビン、リポキシン、又はプロテクチンは、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から成る群より選択される。ある態様では、ATレゾルビン、リポキシン、又はプロテクチンは、AT-RvE1、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、及びAT-LXA4から成る群より選択される。ある態様では、SPM構成要素は、E系列レゾルビンから成り;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、AT-RvE1、LXA4、又はAT-LXA4から成る。ある態様では、SPM構成要素はRvE1又はLXA4から成る。
[115] ペプチド構成要素は、長さ2~10又は2~20アミノ酸、好ましくは2、3、4、又は5アミノ酸であることができる。ペプチド構成要素は、XがHである場合、2アミノ酸残基から成り、又はXがCO-Zである場合、3~5、3~10、若しくは3~20アミノ酸残基のペプチドである。
[116] ペプチド構成要素のそれぞれのアミノ酸部分は、独立して単一の天然若しくは非天然アミノ酸残基を含むか又はそれらから成ることができる。ある態様では、アミノ酸残基は、独立してグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、システイン、スレオニン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、及びグルタミンの残基から選択される。
[117] R1及びR2は、それぞれ独立して少なくとも1個の塩基性官能基を含む非置換C1~C10アルキルである。ある態様では、塩基性官能基はアミノ酸部分の側鎖である。ある態様では、アミノ酸部分は、リジン、アルギニン、及びグルタミンから選択される。ある態様では、塩基性官能基は、正に荷電した第1級アミン、正に荷電した第2級アミン、正に荷電した第3級アミン、及び正に荷電したグアニジンから成る群より選択される。
[118] ある態様では、塩基性官能基は、-NH3、-NHC(NH2
+)NH2、-NHR6R7、又はNR6R7R8を表し、ここで、R6、R7、R8は、それぞれ独立して水素、-CN、-COOH、-CONH2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、又は非置換ヘテロアリールであり;同じ窒素原子に結合したR6及びR7置換基は、場合により、連結されて非置換ヘテロシクロアルキル又は非置換ヘテロアリールを形成することができる。ある態様では、塩基性官能基は正に荷電したアミンである。ある態様では、塩基性官能基は第1級アミンである。ある態様では、塩基性官能基は-NH3
+である。
[119] ある態様では、XはHであり、ペプチド構成要素は、独立してリジン、アルギニン、及びグルタミン、又は前記の1以上の誘導体から選択されるアミノ酸のジペプチドから成る。
[120] ある態様では、XはCO-Zであり、Zは、単一のアミノ酸残基又は2~10若しくは2~5アミノ酸残基のペプチドであり、ペプチド構成要素は、独立してリジン、アルギニン、及びグルタミンから選択される少なくとも1個又は2個のアミノ酸を含む。
[121] ある態様では、XはHであり、R1及びR2は、それぞれ独立して-(CH2)3-NHC(NH2
+)NH2、-(CH2)4-NH3
+、及び(CH2)2-C(O)NH3
+から選択される。ある態様では、R1及びR2は同じである。ある態様では、R1及びR2は異なる。
[122] ある態様では、XはCO-Zであり、Zは、単一のアミノ酸残基又は2~10若しくは2~5アミノ酸残基のペプチドであり、R1及びR2は、それぞれ独立して-(CH2)3-NHC(NH2
+)NH2、-(CH2)4-NH3
+、及び(CH2)2-C(O)NH3
+から選択される。ある態様では、R1及びR2は同じである。ある態様では、R1及びR2は異なる。
[123] ある態様では、-NHC(NH2
+)NH2は、
である。
[124] ある態様では、A又はBのどちらかは存在しない。A又はBのどちらかが存在しない場合、化合物は「モノ」塩と称され得る。ある態様では、A及びBは両方とも存在する。A及びBが両方とも存在する場合、化合物は「ビス」塩と称され得る。1つの態様では、A及びBはそれぞれSPMであり、A及びBは同じであるか又は異なる。
[125] ある態様では、A及びBは同じであるか又は異なっており、それぞれが独立してE系列レゾルビンから選択される。ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、A及びBは同じであり、リポキシンA4、プロテクチンDX、レゾルビンE1、レゾルビンD2、及びアスピリン誘発レゾルビンD1から成る群より選択される。
[126] ある態様では、式Iの化合物は、RvE1 lys-lys、RvE2 lys-lys、RvE3 lys-lys、AT-RvE1 lys-lys、AT-RvE2 lys-lys、及びAT-RvE3 lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPMリジル-リジン(lys-lys)化合物である。ある態様では、式Iの化合物は、LXA4 lys-lys、AT-LXA4 lys-lys、RvD1 lys-lys、AT-RvD1 lys-lys、RvE1 lys-lys、AT-RvE1 lys-lys、PDX lys-lys、RvD2 lys-lys、及びAT-RvD2 lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPMリジル-リジン(lys-lys)化合物である。ある態様では、式Iの化合物は、AT-RvD1 lys-lys、AT-RvD2 lys-lys、及びAT-LXA4 lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM lys-lys化合物である。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスRvE1 lys-lys及びモノ又はビスAT-RvE1 lys-lysから選択される。ある態様では、式Iの化合物は、モノ又はビスLXA4 lys-lys及びモノ又はビスAT-LXA4 lys-lysから選択される。
[127] 式Iのリジル-リジン態様の典型的な化合物を表5に提供する。ある態様では、式Iの化合物は、表5の化合物4、9、44、49、54、及び59(E系列)から成る群より選択される。ある態様では、式Iの化合物は、表5の化合物4、9、14、19、24、29、34、及び39から成る群より選択される。ある態様では、式Iの化合物は、表5の化合物4、9、24、29、34、及び39から成る群より選択される。ある態様では、式Iの化合物は、化合物4及び9(RvE1及びAT-RvE1態様)から成る群より選択される。ある態様では、式Iの化合物は、化合物14及び19(LXA4及びAT-LXA4態様)から成る群より選択される。
[128] ある態様では、式Iの化合物は、リジル-グルタミン モノ又はビスRvE1、リジル-グルタミン モノ又はビスRvE2、リジル-グルタミン モノ又はビスRvE3、リジル-グルタミン モノ又はビスAT-RvE1、リジル-グルタミン モノ又はビスAT-RvE2、及びリジル-グルタミン モノ又はビスAT-RvE3から成る群より選択されるリジル-グルタミン化合物である。ある態様では、式Iの化合物は、リジル-グルタミン モノ又はビスリポキシンA4(LXA4)、リジル-グルタミン モノ又はビスアスピリン誘発レゾルビンD1(AT-RvD1)、リジル-グルタミン モノ又はビスレゾルビンE1(RvE1)、リジル-グルタミン モノ又はビスプロテクチンDX(PDX)、及びリジル-グルタミン モノ又はビスレゾルビンD2(RvD2)から成る群より選択されるリジル-グルタミン化合物である。
式IIの化合物
[129] ある態様では、本開示は、式II:
の化合物、又はその鏡像異性体、多形体、溶媒和物、若しくは水和物を提供するものであり、
式中、R1はHであるか又は存在せず、X1及びX2はそれぞれ独立してアミノ酸残基の側鎖であり、Mは正に荷電した任意の分子であり、BはSPM分子である。
[130] ある態様では、R1はHであり、X1及びX2はグリシンの側鎖である。
[131] ある態様では、R1はHであり、X1はリジンの側鎖であり、X2は、バリンの側鎖、セリンの側鎖、ロイシンの側鎖、ヒスチジンの側鎖から選択される。
[132] 式IIの化合物は、少なくとも、正に荷電した任意の分子(M)を有する、(i)ジペプチド構成要素及び(ii)SPM構成要素(B)から成る。ジペプチド構成要素はX1及びX2を含有し、同じでも異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基の側鎖である。ある態様では、X1及びX2の少なくとも一方は、セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基の側鎖である。X1及びX2の一方がセリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基の側鎖である態様では、X1又はX2の残りは、独立してリジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンから選択されるアミノ酸の側鎖である。ある態様では、残りはリジンの側鎖である。ある態様では、X1及びX2の少なくとも一方は、グリシン、バリン、セリン、ロイシン、又はヒスチジンの側鎖であり、残りはリジンの側鎖である。
[133] ある態様では、SPM構成要素(B)は、E系列レゾルビンを含むか又はそれらから成る。式IIの化合物の態様では、Bは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から成る群より選択される。ある態様では、SPM構成要素(B)は、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、及びLXA4から成る群より選択されるSPMを含むか又はそれらから成る。ある態様では、SPM構成要素は、アスピリン誘発(AT)レゾルビン、リポキシン、又はプロテクチンから選択されるSPMを含むか又はそれらから成る。ある態様では、ATレゾルビン、リポキシン、又はプロテクチンは、AT-RvE1、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、及びAT-LXA4から成る群より選択される。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、AT-RvE1、LXA4、又はAT-LXA4から成る。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1又はLXA4から成る。
[134] 正に荷電した任意の分子(M)は、アミノ酸構成要素の末端カルボキシルとイオン結合を形成する少なくとも1個の塩基性官能基を有する。ある態様では、Mは、1価金属陽イオン、例えばNa+、K+、又は1価アミンベースの陽イオンのような少なくとも1個の塩基性官能基を有する分子、例えばトリエタノールアミン若しくはトリエチルアミン、又はメトホルミン若しくはガバペンチンのような塩基性医薬化合物である。
[135] 以下でより詳細に記載されるように、式IIの化合物は、ジペプチド及びSPMの単塩(式IIa)、ジペプチド及びSPMの1価金属との単純な金属塩(式IIb)、並びにジペプチド及びSPMの少なくとも1個の塩基性官能基を有する非金属分子との単純な非金属塩(式IIc)を包含する。
[136] 以下の式IIa、IIb、及びIIcの化合物の非限定的な例は、記載の化合物の性質を説明するために提供されており、本開示を下記の特定の化合物に限定することは意図されていない。以下の態様のいずれに関しても、A及びBは上記及び下記の通りである。
式IIaの例
式IIの化合物であるGly-Gly-SPM:
式中、
R1はHであり、
X1及びX2はそれぞれHであり、
Mは存在しない。
式IIの化合物であるLys-Lys-SPM:
式中、
R1はHであり、
X1及びX2はそれぞれリジンの側鎖(ブチルアミン)であり、
Mは存在しない。
式IIの化合物であるLys-Val-SPM:
式中、
R1はそれぞれHであり、
X1は、ジンの側鎖(ブチルアミン)であり、
X2はバリンの側鎖(イソプロピル)であり、
Mは存在しない。
式IIの化合物であるLys-Ser-SPM:
式中、
R1はHであり、
X1はリジンの側鎖(ブチルアミン)であり、
X2はセリンの側鎖であり、
Mは存在しない。
式IIの化合物であるLys-Gly-SPM:
式中、
R1はHであり、
X1はリジンの側鎖(ブチルアミン)であり、
X2はグリシンの側鎖であり、
Mは存在しない。
式IIの化合物であるLys-Leu-SPM:
式中、
R1はHであり、
X1はリジンの側鎖(ブチルアミン)であり、
X2はロイシンの側鎖(イソブチル)であり、
Mは存在しない。
式IIの化合物であるLys-His-SPM:
式中、
R1はHであり、
X1はリジンの側鎖(ブチルアミン)であり、
X2はヒスチジンの側鎖(イミダゾール)であり、
Mは存在しない。
[137] ジペプチドがGly-Glyであり、SPMがLXA4、PDX、又はAT-RvD1である式IIaの3つの態様に関する説明的な構造を以下に示す。
[140]
式IIbの例
[141] ある態様では、MはNa+又はK+のような1価金属陽イオンである(式IIb)。式IIbの化合物の非限定的な例には以下の化合物が含まれる。
式IIbの化合物であるNa+-Gly-Gly-SPM:
式中、
R1は存在せず、
X1及びX2はそれぞれHであり、
MはNaである。
[142] SPMがAT-RvD1、LXA4、又はPDXであり、Mがナトリウム陽イオンである式IIbの3つの態様に関する説明的な構造を以下に示す。
式IIcの例
[146] ある態様では、Mは、少なくとも1個の1価アミンベースの陽イオンのような塩基性官能基を有する非金属分子、例えばトリエタノールアミン若しくはトリエチルアミン、又はメトホルミン若しくはガバペンチンのような塩基性医薬化合物である。式IIc化合物の非限定的な例には以下の化合物が含まれる。
式IIの化合物であるトリエタノールアミン-Gly-Gly-SPM:
式中、
R1は存在せず、
X1及びX2はそれぞれHであり、
Mはトリエタノールアミンである。
式IIの化合物であるメトホルミン-Gly-Gly-SPM:
式中、
R1は存在せず、
X1及びX2はそれぞれHであり、
Mはメトホルミンである。
式IIIの化合物
[147] ある態様では、本開示は、式III:
の化合物、又はその鏡像異性体、多形体、溶媒和物、若しくは水和物を提供するものであり、
式中、
R2は少なくとも1個の塩基性官能基を含むC1~C10アルキルであり;
A及びBはそれぞれ独立してSPM分子であり;
A及びBは同じでも異なっていてもよく;かつ
A又はBのどちらかが存在しないことができるが、両方が存在しないことはできない。
[148] ある態様では、R2は、リジン、アルギニン、及びグルタミンから選択されるアミノ酸残基の側鎖である。ある態様では、R2はリジンの側鎖である。ある態様では、R2は、-(CH2)3-NHC(NH2
+)NH2、-(CH2)4-NH3
+、及び(CH2)2-C(O)NH3
+から成る群より選択される。ある態様では、R2は-(CH2)4-NH3
+である。
[149] ある態様では、R2の塩基性官能基は、正に荷電した第1級アミン、正に荷電した第2級アミン、正に荷電した第3級アミン、及び正に荷電したグアニジンから成る群より選択される。
[150] ある態様では、R2の塩基性官能基は、-NH3、-NHC(NH2
+)NH2、-NHR6R7、又はNR6R7R8を表し、ここで、R6、R7、R8は、それぞれ独立して水素、-CN、-COOH、-CONH2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、又は非置換ヘテロアリールであり;同じ窒素原子に結合したR6及びR7置換基は、場合により、連結されて非置換ヘテロシクロアルキル又は非置換ヘテロアリールを形成することができる。ある態様では、塩基性官能基は正に荷電したアミンである。ある態様では、塩基性官能基は第1級アミンである。ある態様では、塩基性官能基は-NH3
+である。
[151] ある態様では、R2はリジンの側鎖であり、A及びBは同じ分子であり、E系列レゾルビンから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から成る群より選択される。ある態様では、R2はリジンの側鎖であり、A及びBは同じ分子であり、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-PD1、AT-RvE1、及びAT-LXA4から成る群より選択される。
[152] ある態様では、SPM構成要素(A、B)は、E系列レゾルビンから選択されるSPMを含むか又はそれらから成り;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から成る群より選択される。ある態様では、SPM構成要素(A、B)は、RvD1、AT-RvD1、RvD2、AT-RvD2、RvE1、AT-RvE1、PDX、AT-PD1、LXA4、及びAT-LXA4から成る群より選択されるSPMを含むか又はそれらから成る。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、AT-RvE1、LXA4、又はAT-LXA4から成る。ある態様では、SPM構成要素はRvE1又はLXA4から成る。
[153] ある態様では、式IIIの化合物は、RvE1線状lys-lys、RvE2線状lys-lys、RvE3線状lys-lys、AT-RvE1線状lys-lys、AT-RvE2線状lys-lys、及びAT-RvE3線状lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM線状リジル-リジン(線状lys-lys)化合物である。
[154] ある態様では、式IIIの化合物は、RvE1線状lys-lys、AT-RvE1線状lys-lys、LXA4線状lys-lys、AT-LXA4線状lys-lys、RvD1線状lys-lys、AT-RvD1線状lys-lys、PDX線状lys-lys、及びRvD2線状lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM線状リジル-リジン化合物である。ある態様では、式IIIの化合物は、AT-RvD1線状lys-lys、AT-RvD2線状lys-lys、及びAT-LXA4線状lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPMリジル-リジン化合物である。ある態様では、式IIIの化合物は、RvE1線状lys-lys、AT-RvE1線状lys-lys、LXA4線状lys-lys、及びAT-LXA4線状lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPMリジル-リジン化合物である。
[155] 典型的な式IIIの化合物を表5に提供する。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物5、10、45、50、55、及び60(E系列)から成る群より選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物5、10、15、20、25、30、35、及び40から成る群より選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物5及び10(RvE1及びAT-RvE1態様)から成る群より選択される。ある態様では、式IIIの化合物は、表5の化合物15及び20(LXA4及びAT-LXA4態様)から成る群より選択される。
式IVの化合物
[156] ある態様では、本開示は、式IV:
の化合物、又はその鏡像異性体、多形体、溶媒和物、若しくは水和物を提供するものであり、
式中、
Mは2価金属であり;
A及びBはそれぞれ独立してSPM分子であり;
A及びBは同じでも異なっていてもよく;
A又はBのどちらかが存在しないことができるが、両方が存在しないことはできず;
R1及びR2は、それぞれ独立して少なくとも1個の塩基性官能基を含むC1~C10アルキルであり;
X1及びX2はそれぞれ独立してH又はCO-Zであり、Zは1~5個のアミノ酸を含むペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であり;
A又はBのどちらかが存在しない場合:
R1、R2、及び2つのCO-Zのうちの1つはプロトン化されており;又は
2つのHの一方は正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及び2つのCO-Zのうちの1つ又は正に荷電したHの一方は、A又はBのどちらかとイオン結合を形成しており;そして
A及びBが両方存在する場合:
R1、R2、及び2つのCO-Zのうちの2つはプロトン化されており;又は
R1、R2、及び2つのCO-Zのうちの1つはプロトン化されており、かつ2つのHの一方は正に荷電しており;かつ
プロトン化されているR1、R2、及び2つのCO-Zのうちの2つ又はプロトン化されているR1、R2、及び2つのCO-Zのうちの1つ並びに正に荷電したHは、それぞれA及びBとイオン結合を形成している。
[157] 式IVの化合物は、2価金属陽イオンの周囲に配位したアミノ酸構成要素としての2個のアミノ酸部分及びSPM構成要素としての1個又は2個のSPM分子を有する。ある態様では、2価金属陽イオンは、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Fe2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Mo2+、又はZn2+である。ある態様では、2価金属陽イオンはMg2+である。ある態様では、2価金属陽イオンはCa2+である。ある態様では、2価金属陽イオンはZn2+である。
[158] ある態様では、アミノ酸構成要素は、リジン若しくはアルギニンを含むか又はそれらから成る。ある態様では、アミノ酸構成要素は、リジン又はアルギニンを含む。ある態様では、R1及びR2の塩基性官能基は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及びグアニジンから選択される。ある態様では、塩基性官能基は、-NH3、-NHC(NH2
+)NH2、-NHR6R7、又はNR6R7R8を表し、ここで、R6、R7、R8は、それぞれ独立して水素、-CN、-COOH、-CONH2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、又は非置換ヘテロアリールであり;同じ窒素原子に結合したR6及びR7置換基は、場合により、連結されて非置換ヘテロシクロアルキル又は非置換ヘテロアリールを形成することができる。ある態様では、塩基性官能基は水素結合受容体である。ある態様では、塩基性官能基は水素結合供与体である。ある態様では、塩基性官能基は正に荷電したアミンである。
[159] ある態様では、R1及びR2はそれぞれ塩基性官能基を有するアミノ酸残基の側鎖である。ある態様では、R1及びR2は同じであり、アミノ酸残基はリジン又はアルギニンである。
[160] ある態様では、R1及びR2は、独立して-(CH2)3-Y1及び(CH2)4-Y2から選択され、ここで、Y1及びY2はそれぞれ塩基性官能基であり、同じでも異なっていてもよい。
[161] ある態様では、R1及びR2は両方とも-(CH2)4-Y2であり、Y2は-NH3
+である。
[162] ある態様では、R1及びR2は両方とも-(CH2)3-Y1であり、Y1は-NHC(NH2
+)NH2である。
[163] ある態様では、R1は-(CH2)3-Y1であり、Y1は-NHC(NH2
+)NH2であり、R2は-(CH2)4-Y2であり、Y2は-NH3
+である。ある態様では、R1は-(CH2)4-Y2であり、Y2は-NH3
+であり、R2は-(CH2)3-Y1であり、Y1はNHC(NH2
+)NH2である。
[164] ある態様では、X1及びX2は同じであり、水素(H)である。ある態様では、X1は水素である。ある態様では、X2は水素である。
[165] ある態様では、SPM構成要素(A、B)は、E系列レゾルビンを含むか又はそれらから成り;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。
[166] ある態様では、SPM構成要素(A、B)は、RvD1、AT-RvD1、RvD2、AT-RvD2、RvE1、AT-RvE1、PDX、AT-PD1、LXA4、及びAT-LXA4から成る群より選択されるSPMを含むか又はそれらから成る。ある態様では、SPM構成要素は、RvE1、AT-RvE1、LXA4、又はAT-LXA4から成る。ある態様では、SPM構成要素はRvE1又はLXA4から成る。
[167] ある態様では、式IVの化合物は、RvE1 M-lys-lys、RvE2 M-lys-lys、RvE3 M-lys-lys、AT-RvE1 M-lys-lys、AT-RvE2 M-lys-lys、及びAT-RvE3 M-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPMマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネート(M-lys-lys又はM-ジ-リジネート)化合物である。
[168] ある態様では、式IVの化合物は、RvD1 M-lys-lys、AT-RvD1 M-lys-lys、RvD2 M-lys-lys、AT-RvD2 M-lys-lys、RvE1 M-lys-lys、AT-RvE1 M-lys-lys、PDX M-lys-lys、LXA4 M-lys-lys、及びAT-LXA4 M-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPMマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネート(M-lys-lys又はM-ジ-リジネート)化合物である。
[169] ある態様では、式IVの化合物は、RvE1 Mg-lys-lys、RvE2 Mg-lys-lys、RvE3 Mg-lys-lys、AT-RvE1 Mg-lys-lys、AT-RvE2 Mg-lys-lys、及びAT-RvE3 Mg-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM Mg-ジ-リジネート化合物である。
[170] ある態様では、式IVの化合物は、RvE1 Ca-lys-lys、RvE2 Ca-lys-lys、RvE3 Ca-lys-lys、AT-RvE1 Ca-lys-lys、AT-RvE2 Ca-lys-lys、及びAT-RvE3 Ca-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM Ca-ジ-リジネート化合物である。
[171] ある態様では、式IVの化合物は、RvE1 Zn-lys-lys、RvE2 Zn-lys-lys、RvE3 Zn-lys-lys、AT-RvE1 Zn-lys-lys、AT-RvE2 Zn-lys-lys、及びAT-RvE3 Zn-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM Zn-ジ-リジネート化合物である。
[172] ある態様では、式IVの化合物は、RvE1 Mg-lys-lys、AT-RvD1 Mg-lys-lys、RvD2 Mg-lys-lys、PDX Mg-lys-lys、及びLXA4 Mg-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM Mg-ジ-リジネート化合物である。
[173] ある態様では、式IVの化合物は、モノ若しくはビスRvE1 Mg-lys-lys又はモノ若しくはビスAT-RvE1 Mg-lys-lysである。
[174] ある態様では、式IVの化合物は、モノ若しくはビスLXA4 Mg-lys-lys又はモノ若しくはビスAT-LXA4 Mg-lys-lysである。
[175] ある態様では、式IVの化合物は、RvE1 Ca-lys-lys、AT-RvE1 Ca-lys-lys、LXA4 Ca-lys-lys、及びAT-LXA4 Ca-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM Ca-ジ-リジネート化合物である。
[176] ある態様では、式IVの化合物は、モノ若しくはビスRvE1 Ca lys-lys又はモノ若しくはビスAT-RvE1 Ca lys-lysである。
[177] ある態様では、式IVの化合物は、モノ若しくはビスLXA4 Ca-lys-lys又はモノ若しくはビスAT-LXA4 Ca-lys-lysである。
[178] ある態様では、式IVの化合物は、RvE1 Zn-lys-lys、AT-RvE1 Zn-lys-lys、LXA4 Zn-lys-lys、及びAT-LXA4 Zn-lys-lysから成る群より選択されるモノ又はビスSPM Zn-ジ-リジネート化合物である。
[179] ある態様では、式IVの化合物は、モノ若しくはビスRvE1 Zn lys-lys又はモノ若しくはビスAT-RvE1 Zn lys-lysである。
[180] ある態様では、式IVの化合物は、モノ若しくはビスLXA4 Zn-lys-lys又はモノ若しくはビスAT-LXA4 Zn-lys-lysである。
[181] 典型的な式IVの化合物を表5に提供する。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物1~3、6~8、41~43、46~48、51~53、及び56~58(E系列)から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物1~3、6~8、11~13、16~18、21~23、26~28、31~33、及び36~38から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物1~3及び6~8(RvE1及びAT-RvE1態様)から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物11~13及び16~18(LXA4及びAT-LXA4態様)から成る群より選択される。ある態様では、式IVの化合物は、表5の化合物21~23及び26~28(RvD1及びAT-RvD1態様)から成る群より選択される。
SPM構成要素
[182] 本願明細書で用いられる用語「SPM」は、プロテクチン類及びレゾルビン類、並びにリポキシン類及びアスピリン誘発脂質メディエーター(例えばアスピリン誘発リポキシン類及びプロテクチン類)のようなSPMを表すために用いられる。これらの分子は、例えば米国特許第5,441,951号及び米国特許第8,119,691号(リポキシン類及びアスピリン誘発リポキシン類)、米国特許第6,670,396号(アスピリン誘発脂質メディエーター)、米国特許出願公開第2006-0293288号(レゾルビン類)、米国特許第7,378,444号及び米国特許第7,595,341号(ω-3脂肪酸由来の脂質メディエーターの類似体)に記載されている。
[183] 本願明細書に記載の化合物及び組成物のSPM構成要素を形成するために用いることができるSPM分子の一部の特定の例には、アラキドン酸(AA)由来のメディエーター(表1);エイコサペンタエン酸(EPA)由来のメディエーター(表2);ドコサヘキサエン酸(DHA)由来のメディエーター(表3);及びアスピリン誘発メディエーター(表4)が含まれる。
[184] ある態様では、本願明細書に記載の化合物又は組成物のSPM構成要素は、アラキドン酸(AA)由来の脂質メディエーターから選択される。ある態様では、AA由来の脂質メディエーターは、リポキシンA4又はリポキシンB4から選択される。
[185] ある態様では、本願明細書に記載の化合物又は組成物のSPM構成要素は、エイコサペンタエン酸(EPA)由来の脂質メディエーターから選択される。ある態様では、EPA由来の脂質メディエーターは、リポキシンA5、リポキシンB5、レゾルビンE1、レゾルビンE2、及びレゾルビンE3から選択される。
[186] ある態様では、本願明細書に記載の化合物又は組成物のSPM構成要素は、ドコサヘキサエン酸(DHA)由来の脂質メディエーターから選択される。ある態様では、DHA由来の脂質メディエーターは、レゾルビンD1、レゾルビンD2、レゾルビンD3、レゾルビンD4、レゾルビンD5、レゾルビンD6、プロテクチンD1、及びプロテクチンDXから選択される。
[187] ある態様では、本願明細書に記載の化合物又は組成物のSPM構成要素は、アスピリン誘発脂質メディエーターから選択される。ある態様では、アスピリン誘発脂質メディエーターは、15-エピ-リポキシンA4、15-エピ-リポキシンB4、アスピリン誘発レゾルビンD1、アスピリン誘発レゾルビンD2、アスピリン誘発レゾルビンD3、アスピリン誘発レゾルビンD4、アスピリン誘発レゾルビンD5、アスピリン誘発レゾルビンD6、及びアスピリン誘発プロテクチンD1から選択される。ある態様では、アスピリン誘発脂質メディエーターは、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。
[188] ある態様では、本願明細書に記載の化合物又は組成物のSPM構成要素は、表1、表2、表3、又は表4に示す化合物から選択される。
[189] 特定の態様では、本発明は、本願明細書に記載の化合物の溶媒和物を提供する。「溶媒和物」は、別の分子(例えば極性溶媒)に非共有結合により結合した塩の形態を表す。そのような溶媒和物は、典型的には溶質及び溶媒の実質的に固定されたモル比を有する結晶質固体である。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。水和物の例には、半水和物、1水和物、2水和物等が含まれる。
[190] ある態様では、本発明は、本願明細書に記載の化合物の結晶形態を提供する。1つの態様では、本発明は、本願明細書に記載のイオン性塩の多形体を提供する。
物理特性
[191] 本願明細書に記載の化合物及びそれを含む組成物は、遊離のSPMと比較して有利な化学特性及び物理特性を有する。例えば、ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、対応する遊離のSPMと比較して化学分解に対して安定化され得る。ある態様では、化合物は、酸化的分解を含む化学分解に対して安定である。ある態様では、化合物は、流動的特徴のような物理特性、又は例えば核磁気共鳴(NMR)若しくは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)のような分光学的技法により測定されるような化学特性における変化の欠如によって証明されるように、空気、酸素、及び湿気への曝露により誘導される分解に対して安定である。ある態様では、増大した安定性は、2、4、又は8週間後の化学分解の欠如により証明される。ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、遊離のSPMと比較して、2又は8週間の時点での分解産物の欠如により証明されるように、化学分解に対して安定化されている。
[192] ある態様では、化合物は、固体剤形、例えば粉末、錠剤、カプセル、又はカプレット中への配合に適した、物理的に固体で自由流動する物質である。加えて、本発明の化合物及び組成物は、例えば物理的混合によって固体剤形において他の生物学的に有効な薬剤と容易に組み合わせることができる。
薬物動態特性
[193] ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、非常に好都合な薬物動態特性を示す。例えば、ある態様では、下記の実施例においてより詳細に論じられるように、化合物は、経口又は(静脈内、動脈内、又は筋内注射による投与を含めた)非経口投与後に血液若しくは血清中に検出可能なレベルの遊離のSPMを提供する。ある態様では、経口剤形として配合された本発明の化合物は、例えば遊離のSPM自体の経口投与により達成可能な量よりも高い遊離SPM構成要素を血液/血清に送達する。
組成物
[194] 本開示は、本願明細書に記載の2種類以上の異なる化合物の混合物を含有する組成物を含めた、本願明細書に記載の化合物の1種類以上を含む組成物を提供する。ある態様では、本願明細書に記載の化合物又は化合物の混合物は、医薬組成物として、又は食品添加剤若しくは補助剤として配合することができ、これは、配合物中の化合物自体及び添加剤又は賦形剤が、ヒト又は動物への投与に適していることを意味する。ある態様では、組成物は医薬組成物である。ある態様では、組成物は非医薬組成物である。
[195] 本発明の1種類以上の化合物を含む組成物は、経口送達に適合した固体又は液体剤形として配合することができる。経口剤形は、錠剤などの固体、微粒子、液体、若しくは粉末を含有するカプセル、トローチ剤(液体を充填されたものを含む)、ガム、又はゲルの形態であることができる。1つの態様では、剤形は固体経口剤形である。ある態様では、組成物は水性液体中での再構成に適した粉末である。そのような粉末を用いて、例えば静脈内、筋内、又は腹腔内注射による非経口投与に適した液体を調製することができる。
[196] ある態様では、本願明細書に記載の1種類以上の化合物を含む組成物は、直腸送達に適合した剤形として配合することができる。ある態様では、直腸送達に適合した剤形は、軟膏、坐剤、又は浣腸剤である。ある態様では、剤形は1日1回の送達に適合している。ある態様では、剤形は1日2回の送達に適合している。
[197] ある態様では、式I~IVのいずれか1つの化合物を含む組成物は、化合物の単位用量の形態であることができる。ある態様では、単位用量は、錠剤、カプセル、坐剤、又は浣腸剤の形態である。ある態様では、単位用量は、式I、II、III、又はIVの化合物のSPM構成要素を形成する1μg~50mgのSPMを含有する。ある態様では、化合物は式I又はIVの化合物である。ある態様では、単位用量は、1、5、10、25、50、100、250、又は500μgのSPMを含有する。ある態様では、単位用量は、1、5、10、又は20mgのSPMを含有する。
[198] 式Iの態様では、化合物のSPM構成要素は50重量%~75重量%のSPMから成る。式Iの1つの態様では、化合物はリジルリジンのモノSPM塩であり、SPMはE系列レゾルビンであり、SPMは化合物の50~60重量%を構成する。式Iの1つの態様では、化合物はビス塩であり、SPMは化合物の60~75重量%を構成する。前記の態様のいずれかによれば、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択することができる。
[199] 式Iの態様では、化合物のSPM構成要素は50重量%~75重量%のSPMから成る。式Iの1つの態様では、化合物はリジルリジンのモノSPM塩であり、SPMは、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-PD1、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から選択され、SPMは化合物の50~60重量%を構成する。式Iの1つの態様では、化合物はビス塩であり、SPMは化合物の60~75重量%を構成する。
[200] 式IVの態様では、化合物のSPM構成要素は50重量%~75重量%のSPMから成る。式IVの1つの態様では、化合物はE系列SPMのビスSPMマグネシウム ジ-リジネート(Mg-lys-lys)塩であり、SPMは化合物の60~75重量%を構成する。SPMがモノ塩である態様では、SPMは化合物の約50~60重量%を構成する。ある態様では、SPMは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、SPMは化合物の約65重量%を構成する。ある態様では、SPMは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、SPMは化合物の約70重量%を構成する。
[201] 式IVの態様では、化合物のSPM構成要素は50重量%~75重量%のSPMから成る。式IVの1つの態様では、化合物は、RvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-PD1、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から選択されるSPMのビスSPMマグネシウム ジ-リジネート(Mg-lys-lys)塩であり、SPMは化合物の60~75重量%を構成する。SPMがモノ塩である態様では、SPMは化合物の約50~60重量%を構成する。ある態様では、SPMはRvE1又はAT-RvE1であり、SPM、化合物の約65重量%を構成する。ある態様では、SPMは、RvD1、RvD2、AT-RvD1、又はAT-RVD2であり、SPMは化合物の約70重量%を構成する。
[202] 本願明細書に記載の化合物は、単独で、又は1種類以上の追加の有効医薬成分(API)若しくは生物学的に活性な薬剤と組み合わせて配合することができる。また、1種類以上の本願明細書に記載の化合物又はそれらの混合物を、第2の有効薬剤と共に含む組成物も提供される。ある態様では、第2の有効薬剤は、生物学的に活性な薬剤又は有効医薬成分(API)である。ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、1種類以上の追加のAPI又は生物学的に活性な薬剤と共に、単一の剤形に配合される。ある態様では、剤形は固体又は液体剤形である。ある態様では、固体剤形は、水性媒体中での再構成に適した粉末である。ある態様では、固体剤形は、軟膏、坐剤、又は浣腸剤である。
[203] 本願明細書に記載の組成物を構成する化合物及び賦形剤の性質に応じて、組成物は、薬学的若しくは獣医学的使用に、又は食事用添加剤若しくは補助剤としての使用に、又はこれらの使用のあらゆる組合せに適している可能性がある。以下の節において「医薬組成物」又は「添加剤及び補助剤」として様々な組成物が論じられている限りにおいて、これらの用語は、限定的であることを意味するものではなく、単に記述的である。
[204] 本願明細書に記載の組成物は、1種類以上の適切な賦形剤又は担体を用いて配合することができる。適切な賦形剤又は担体は、ヒト又は動物での使用に適した賦形剤又は担体である。用語「賦形剤」は、例えば安定化剤、矯味剤(例えば甘味料)、可溶化剤、又は懸濁剤として、担体以外で組成物においてある目的を果たす添加剤を表す。担体は、単純な担体又は希釈剤及び賦形剤として2重の目的を果たすことも多いであろう。従って、薬学的に許容可能な賦形剤の例は担体を含み得る。本発明の組成物に使用するための賦形剤の非限定的な例には、無菌の液体、水、緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール類(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、油、界面活性剤、懸濁剤、炭水化物(例えばグルコース、ラクトース、スクロース、又はデキストラン等)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸又はグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、及びそれらの適切な混合物が含まれる。
[205] 適切な賦形剤又は担体は、典型的には動物又はヒト(又は両方)に使用するための薬学的に許容可能な担体又は賦形剤である。用語「薬学的に許容可能な」は、連邦若しくは州政府の規制当局による認可又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方、例えば欧州薬局方において動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して列挙されていることを示す。本発明の医薬組成物の文脈において、「担体」は、例えば本発明のイオン性塩が送達のために共に配合される溶媒、希釈剤、又はビヒクルを表す。本発明の組成物に使用するための薬学的に許容可能な担体の例には、限定されるものではないが、液体剤形に関して滅菌水性及び非水性液体、水、緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール類(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)並びに油;又は固体剤形に関して炭水化物(例えばグルコース、ラクトース、スクロース、又はデキストラン)が含まれる。
[206] 本願明細書に記載の化合物は、あらゆる適切な形態で、そしてあらゆる適切な意図される投与経路のために配合することができる。典型的には、剤形は、少なくとも部分的に、意図される投与経路によって決定される。ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、経口、直腸、又は非経口経路による投与のための配合である。
[207] 1つの態様では、剤形は、眼への投与に適した液体である。配合物は、眼科用配合物とも称される点眼に適した、例えば眼への局所投与に適した溶液、懸濁液、又はゲルであることができる。
[208] 1つの態様では、眼科用配合物は水性配合物である。1つの態様では、眼科用配合物は、グリセリン、ヒプロメロース、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールの1以上を含む。1つの態様では、眼科用配合物は、さらにポリソルベート80、カルボマーコポリマータイプA、精製水、水酸化ナトリウム、アスコルビン酸、塩化ベンザルコニウム、ホウ酸、デキストロース、リン酸二ナトリウム、グリシン、塩化マグネシウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、アミノメチルプロパノール(aminornethylpropanol)、ヒドロキシプロピルグアー、ポリクォータニウム-I、又はソルビトールの1以上を含む。
[209] 1つの態様では、眼科用配合物は、界面活性剤、等張化剤、緩衝剤、保存剤、共溶媒、及び粘性構築剤(viscosity building agents)の1以上を含む。眼科用組成物に関し、様々な等張化剤を利用して、組成物の張性を好ましくは天然の涙の張性まで調節することができる。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロース、及び/又はマンニトールを、おおよその生理的張性まで組成物に添加することができる。好ましくは、等張化剤は、最終組成物が眼科的に許容可能な浸透圧(一般に約150~450mOsm、好ましくは250~350mOsm)を有するようにするために十分な量で存在する。適切な緩衝系(例えばリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、又はホウ酸)を組成物に添加して、貯蔵条件下でのpHドリフト(pH drift)を防ぐことができる。利用される薬剤に応じて具体的な濃度は異なるであろう。しかしながら、緩衝剤は、標的pHをpH6~7.5の範囲内で維持するように選択することが好ましい。
[210] これらの配合物又は組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、担体及び場合により1種類以上の副成分と混合する工程を含む。一般に、配合物は、本発明の化合物を液体担体と均一によく混合することにより調製される。
[211] ある態様では、組成物は、本願明細書に記載の化合物又はそれらの混合物並びに場合により薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物である。ある態様では、組成物は、さらに下記のような追加の有効薬剤、例えばAPIを含む。
[212] 1つの態様では、1種類以上の追加の有効医薬成分(API)との物理的混合状態で、本発明の化合物を含む固体剤形が提供される。ある態様では、1種類以上の追加のAPIは、抗高脂血症剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、又は抗炎症剤である。1つの態様では、APIは抗高脂血症剤又は抗糖尿病剤である。1つの態様では、抗高脂血症剤は、HMG CoA酵素阻害剤(例えばスタチン)、コレステロール吸収阻害剤、及びコレステロールエステラーゼ輸送タンパク質(CETP)阻害剤から成る群より選択される。1つの態様では、抗高脂血症剤はスタチンである。1つの態様では、スタチンは、アトルバスタチン、ロスバスタチン(risuvostatin)、シンバスタチン、プラバスタチン、及びそれらの薬学的に許容可能な塩類又はプロドラッグから成る群より選択される。1つの態様では、スタチンは、5mg~100mgの範囲の量で存在する。1つの態様では、スタチンはプラバスタチンである。1つの態様では、抗高脂血症剤はコレステロール吸収阻害剤である。1つの態様では、コレステロール吸収阻害剤は、Zetiaとしても知られているエゼチミブである。1つの態様では、抗高脂血症剤はCETP阻害剤である。1つの態様では、CETP阻害剤は、アナセトラピブ又はその水和物若しくは溶媒和物である。
[213] 本願明細書に記載の化合物を含む医薬組成物及びその混合物は、SPM、それらの誘導体及び類似体を用いる処置に反応性である様々な疾患及び障害を処置する方法において有用である。これらの使用を下記でより詳細に記載する。
経腸配合物
[214] ある態様では、本願明細書に記載の化合物を含む医薬組成物及びその混合物は、経腸剤形として配合される。ある態様では、経腸剤形は、経口又は直腸配合物から選択される。経口配合物は、例えば錠剤、溶液、懸濁液、又はエマルジョンの形態であることができる。直腸配合物は、例えば軟膏、坐剤、又は浣腸剤の形態であることができる。
非経口配合物
[215] ある態様では、本願明細書に記載の化合物を含む医薬組成物及びその混合物は、非経口剤形として配合される。ある態様では、非経口剤形は、静脈内剤形、動脈内剤形、又は筋内剤形から選択される。これらの態様のいずれかによれば、剤形は、透明な水溶液の形態、又は例えばバイアル若しくはアンプルのような容器に収容された、非経口経路、例えば静脈内、動脈内、若しくは筋内経路による投与のための特定量の滅菌水若しくは水性緩衝液による再構成に適した凍結乾燥された固体の形態であることができる。
眼科用配合物
[216] ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、下記でより詳細に記載されるような眼の疾患又は障害の1以上の症状を処置又は改善するために有用である。従って、本発明は、眼科用配合物とも称される眼への局所投与に適した医薬組成物中の式I~IVのいずれか1種類の化合物を提供する。配合物は、点眼に適した溶液、懸濁液、又はゲルであることができる。
[217] 1つの態様では、眼科用配合物は水性配合物である。1つの態様では、眼科用配合物は、グリセリン、ヒプロメロース、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールの1以上を含む。1つの態様では、眼科用配合物は、さらにポリソルベート80、カルボマーコポリマータイプA、精製水、水酸化ナトリウム、アスコルビン酸、塩化ベンザルコニウム、ホウ酸、デキストロース、リン酸二ナトリウム、グリシン、塩化マグネシウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、アミノメチルプロパノール(aminornethylpropanol)、ヒドロキシプロピルグアー、ポリクォータニウム-I、又はソルビトールの1以上を含む。
[218] 1つの態様では、眼科用配合物は、界面活性剤、等張化剤、緩衝剤、保存剤、共溶媒、及び粘性構築剤の1以上を含む。眼科用組成物に関し、様々な等張化剤を利用して、組成物の張性を好ましくは天然の涙の張性まで調節することができる。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロース、及び/又はマンニトールを、おおよその生理的張性まで組成物に添加することができる。好ましくは、等張化剤は、最終組成物が眼科的に許容可能な浸透圧(一般に約150~450mOsm、好ましくは250~350mOsm)を有するようにするために十分な量で存在する。適切な緩衝系(例えばリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、又はホウ酸)を組成物に添加して、貯蔵条件下でのpHドリフトを防ぐことができる。利用される薬剤に応じて具体的な濃度は異なるであろう。しかしながら、緩衝剤は、標的pHをpH6~7.5の範囲内で維持するように選択することが好ましい。
[219] ドライアイ型の疾患及び障害を処置するために配合される組成物は、ドライアイ型の疾患の即時の短期軽減を提供するように設計された水性担体を含むこともできる。そのような担体は、リン脂質担体若しくは人工涙液担体又は両方の混合物として配合することができる。本願明細書で用いられる際、「リン脂質担体」及び「人工涙液担体」は、(i)1種類以上のリン脂質(リン脂質担体の場合)、あるいは潤し、「湿らせ」、内在性の涙の粘稠度に近づけて、自然な涙の構築を助け、又は点眼の際にドライアイの症状及び病態の一時的な軽減を提供する他の化合物を含み;(ii)安全であり;そして(iii)1種類以上の本発明の脂肪酸塩の有効量を局所投与するための適切な送達ビヒクルを提供する水性組成物を表す。
[220] 人工涙液担体として有用な人工涙液組成物の例には、Tears Naturale(商標)、Tears Naturale n(商標)、Tears Naturale Free(商標)、及びBion Tears(商標)(Alcon Laboratories,Inc.、テキサス州フォートワース)などの商業製品が含まれるがそれらに限定されない。リン脂質担体配合物の例には、米国特許第4,804,539号(Guo et al.)、第4,883,658号(Holly)、第4,914,088号(Glonek)、第5,075,104号(Gressel et al.)、第5,278,151号(Korb et al.)、第5,294,607号(Glonek et al.)、第5,371,108号(Korb et al.)、第5,578,586号(Gionek et al.)に開示されている配合物が含まれ;前記の特許は、本発明のリン脂質担体として有用なリン脂質組成物を開示する限りにおいて本願明細書に援用される。
[221] 潤し、「湿らせ」、内在性の涙の粘稠度に近づけて、自然な涙の構築を助け、又は点眼の際にドライアイの症状及び病態の一時的な軽減を提供するように設計された他の化合物は、当該技術分野において公知である。そのような化合物は組成物の粘性を高めることができ、以下の化合物が含まれるがそれらに限定されない:グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどの単量体性ポリオール類;ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)などのポリマー性ポリオール類;デキストラン70などのデキストラン類、;ゼラチンなどの水溶性タンパク質;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドンなどのビニルポリマー類;及びカルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974Pなどのカルボマー類。
[222] 粘度増進剤の例には、ヒアルロン酸及びその塩類、コンドロイチン硫酸及びその塩類、デキストラン類などの多糖類、セルロースファミリーの様々なポリマー類;ビニルポリマー類;並びにアクリル酸ポリマー類が含まれるがそれらに限定されない。一般に、リン脂質担体又は人工涙液は、1~400センチポアズ(「cps」)の粘度を示すであろう。局所用眼科用製品は、典型的には多用量形態中に包装される。使用の間の微生物汚染を防ぐには保存剤が必要とされるであろう。適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、ベンゾドデシニウムブロミド、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクォータニウム-1、又は当業者に公知の他の薬剤が含まれる。そのような保存剤は、典型的には0.001~1.0w/v%のレベルで用いられる。本発明の単位用量組成物は滅菌されるが、典型的には保存されないであろう。従って、そのような組成物は、一般に保存剤を含有しないであろう。
[223] 他の湿潤剤、乳化剤、及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、放出剤(release agents)、コーティング剤、並びに芳香剤、保存剤及び抗酸化剤が組成物中に存在することもできる。
[224] 薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には以下が含まれる:アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール等のような油溶性抗酸化剤;並びにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤。
[225] 場合により、コンタクトレンズを用いて、より長い期間にわたり血管作動性物質を血管外遊出させることができる。トロンビン及びトロンボキサンAなどの血管作動性物質は、細静脈の血管収縮、並びに涙腺、副涙腺、及び表面微小血管を通る増大した潅流によって涙の量の増大をさらに誘導することができ;ここで、毛細血管透過性を増大させる傍細胞の内皮開口部の増大が、この利益をさらに高めることができる。
[226] これらの配合物又は組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、担体及び場合により1種類以上の副成分と混合する工程を含む。一般に、配合物は、本発明の化合物を液体担体と均一によく混合することにより調製される。
薬学的使用
[227] 本願明細書に記載の化合物及び組成物は、過剰な炎症を特徴とする疾患及び障害を処置する方法に有用である。例えば、本願明細書に記載の化合物及び組成物は、胃腸疾患及び障害、感染性疾患、肺及び血管の疾患及び障害、代謝疾患及び障害、並びに神経疾患及び障害を含めた過剰な炎症を特徴とする慢性疾患の処置において有用である。従って、本開示は、過剰な炎症を特徴とする疾患又は障害を処置する方法を提供し、それを必要とする対象、好ましくはヒトの対象にその疾患又は障害を処置するために有効な量の式I、II、III、IVの化合物を投与することを含む。本願明細書に記載の方法の態様のいずれかによれば、化合物は、医薬組成物若しくは獣医学用組成物又は栄養添加剤若しくは補助剤の形態で投与されることができる。
[228] ある態様では、本開示は、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学性大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、偽膜性大腸炎、及び不確定大腸炎(indeterminate colitis)から成る群より選択される胃腸疾患又は障害を処置する方法を提供し、その疾患又は障害を処置するために有効な量の式I~IVの化合物を投与することを含む。ある態様では、疾患又は障害は、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学性大腸炎、及び虚血性大腸炎から選択されるIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[229] ある態様では、本開示は、腸閉塞、慢性膵炎、大腸炎、結腸癌、先天性胃腸異常、腹壁破裂、高出力瘻孔(high-output fistula)、非経口栄養関連肝疾患、術後イレウス(POI)、術後腸炎症、短腸症候群、及び散発性ポリポーシスから成る群より選択される胃腸疾患又は障害を処置する方法を提供する。
[230] ある態様では、胃腸疾患又は障害は、上記のIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、本開示は、それを必要とするヒトの患者に式I~IVの化合物を投与することによりIBD関連疾患又は障害を処置する方法を提供する。ある態様では、化合物は式I又はIVの化合物である。
[231] 本願明細書に記載の方法の態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE1リジルリジン、モノ又はビスRvE2リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE2リジルリジン、モノ又はビスRvE3リジルリジン、及びモノ又はビスAT-RvE3リジルリジンから成る群より選択される。
[232] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、上記のようなIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[233] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、憩室炎、及び短腸症候群から選択される胃腸疾患又は障害である。ある態様では、胃腸疾患又は障害は腸粘膜炎である。
[234] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、皮膚炎、糖尿病性創傷、湿疹、掻痒、治癒しつつある創傷、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される皮膚科学的疾患又は障害である。ある態様では、皮膚科学的疾患又は障害は、皮膚炎、湿疹、掻痒、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される。
[235] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、シェーグレン症候群、及び全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患又は障害である。ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、乾癬、強皮症、及び口腔粘膜炎から選択される。
[236] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関わる痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格系の損傷又は外傷から選択される神経疾患又は障害である。
[237] 本願明細書に記載の方法の態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1線状リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE1線状リジルリジン、モノ又はビスRvE2線状リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE2線状リジルリジン、モノ又はビスRvE3線状リジルリジン、及びモノ又はビスAT-RvE3線状リジルリジンから成る群より選択される。
[238] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、上記のようなIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[239] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、憩室炎、及び短腸症候群から選択される胃腸疾患又は障害である。ある態様では、胃腸疾患又は障害は腸粘膜炎である。
[240] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、皮膚炎、糖尿病性創傷、湿疹、掻痒、治癒しつつある創傷、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される皮膚科学的疾患又は障害である。ある態様では、皮膚科学的疾患又は障害は、皮膚炎、湿疹、掻痒、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される。
[241] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、シェーグレン症候群、及び全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患又は障害である。ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、乾癬、強皮症、及び口腔粘膜炎から選択される。
[242] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関わる痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格系の損傷又は外傷から選択される神経疾患又は障害である。
[243] 本願明細書に記載の方法の態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvE1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスRvE2 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvE2 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスRvE3 Mg-ジ-リジネート、及びモノ又はビスAT-RvE3 Mg-ジ-リジネートから成る群より選択される。
[244] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、上記のようなIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[245] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、憩室炎、及び短腸症候群から選択される胃腸疾患又は障害である。ある態様では、胃腸疾患又は障害は腸粘膜炎である。
[246] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、皮膚炎、糖尿病性創傷、湿疹、掻痒、治癒しつつある創傷、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される皮膚科学的疾患又は障害である。ある態様では、皮膚科学的疾患又は障害は、皮膚炎、湿疹、掻痒、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される。
[247] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、シェーグレン症候群、及び全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患又は障害である。ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、乾癬、強皮症、及び口腔粘膜炎から選択される。
[248] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありE系列レゾルビンから選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され;ある態様では、E系列レゾルビンは、RvE1、RvE2、RvE3、AT-RvE1、AT-RvE2、及びAT-RvE3から選択され、疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関わる痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格系の損傷又は外傷から選択される神経疾患又は障害である。
[249] 本願明細書に記載の方法の態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE1リジルリジン、モノ又はビスLXA4リジルリジン、モノ又はビスAT-LXA4リジルリジン、モノ又はビスRvD1リジルリジン、モノ又はビスAT-RvD1リジルリジン、モノ又はビスRvD2リジルリジン、モノ又はビスAT-RvD2リジルリジン、モノ又はビスPDXリジルリジンから成る群より選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE1リジルリジン、モノ又はビスLXA4リジルリジン、及びモノ又はビスAT-LXA4リジルリジンから成る群より選択される。
[250] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、上記のIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[251] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、憩室炎、及び短腸症候群から選択される胃腸疾患又は障害である。ある態様では、胃腸疾患又は障害は腸粘膜炎である。
[252] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、皮膚炎、糖尿病性創傷、湿疹、掻痒、治癒しつつある創傷、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される皮膚科学的疾患又は障害である。ある態様では、皮膚科学的疾患又は障害は、皮膚炎、湿疹、掻痒、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される。
[253] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、シェーグレン症候群、及び全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患又は障害である。ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、乾癬、強皮症、及び口腔粘膜炎から選択される。
[254] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式Iのリジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関わる痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格損傷又は外傷から選択される神経疾患又は障害である。
[255] 本願明細書に記載の方法の態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1線状リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE1線状リジルリジン、モノ又はビスLXA4線状リジルリジン、モノ又はビスAT-LXA4線状リジルリジン、モノ又はビスRvD1線状リジルリジン、モノ又はビスAT-RvD1線状リジルリジン、モノ又はビスRvD2線状リジルリジン、モノ又はビスAT-RvD2線状リジルリジン、モノ又はビスPDX線状リジルリジンから成る群より選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1線状リジルリジン、モノ又はビスAT-RvE1線状リジルリジン、モノ又はビスLXA4線状リジルリジン、及びモノ又はビスAT-LXA4線状リジルリジンから成る群より選択される。
[256] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、上記のIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[257] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、憩室炎、及び短腸症候群から選択される胃腸疾患又は障害である。ある態様では、胃腸疾患又は障害は腸粘膜炎である。
[258] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、皮膚炎、糖尿病性創傷、湿疹、掻痒、治癒しつつある創傷、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される皮膚科学的疾患又は障害である。ある態様では、皮膚科学的疾患又は障害は、皮膚炎、湿疹、掻痒、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される。
[259] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、シェーグレン症候群、及び全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患又は障害である。ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、乾癬、強皮症、及び口腔粘膜炎から選択される。
[260] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IIIの線状リジル-リジンジペプチドから選択され、疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関わる痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格損傷又は外傷から選択される神経疾患又は障害である。
[261] 本願明細書に記載の方法の態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvD1、RvD2、RvE1、PDX、LXA4、AT-RvD1、AT-RvD2、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvE1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスLXA4 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスAT-LXA4 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスRvD1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvD1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスRvD2 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvD2 Mg-ジ-リジネート、及びモノ又はビスPDX Mg-ジ-リジネートから成る群より選択される。ある態様では、化合物は、モノ又はビスRvE1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスAT-RvE1 Mg-ジ-リジネート、モノ又はビスLXA4 Mg-ジ-リジネート、及びモノ又はビスAT-LXA4 Mg-ジ-リジネートから成る群より選択される。
[262] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され、疾患又は障害は、上記のIBD関連疾患又は障害である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。ある態様では、IBD関連疾患又は障害は嚢炎である。
[263] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され、疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、憩室炎、及び短腸症候群から選択される胃腸疾患又は障害である。ある態様では、胃腸疾患又は障害は腸粘膜炎である。
[264] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され、疾患又は障害は、皮膚炎、糖尿病性創傷、湿疹、掻痒、治癒しつつある創傷、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される皮膚科学的疾患又は障害である。ある態様では、皮膚科学的疾患又は障害は、皮膚炎、湿疹、掻痒、ざ瘡、及びステロイド誘発性酒さから選択される。
[265] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され、疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、シェーグレン症候群、及び全身性炎症反応症候群から選択される炎症性疾患又は障害である。ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、乾癬、強皮症、及び口腔粘膜炎から選択される。
[266] ある態様では、投与される化合物は、A及びBが同じでありRvE1、LXA4、AT-LXA4、及びAT-RvE1から成る群より選択される式IVのマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛ジ-リジネートから選択され、疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関わる痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格損傷又は外傷から選択される神経疾患又は障害である。
[267] 追加の使用を以下に記載する。
[268] 本願明細書に記載の方法の文脈において、用語「処置すること」又は「処置するために有効な」は、処置されている疾患又は障害に関連した1以上の症状の改善又は安定化を表すことができる。用語「処置すること」は、疾患又は障害の管理を包含することもでき、これは、潜在する疾患又は障害の治癒を生じない対象が、療法から得る有益な作用を表す。本発明の組成物は、特定の疾患、障害、及び病態の予防に用いることもできる。この文脈において、用語「予防」は、疾患、障害、又は病態の1以上の症状の再発、発現、進行、又は発症を予防することを表す。
[269] 本願明細書に記載の方法によれば、本願明細書に記載の化合物の療法上有効量が対象に投与され、療法上有効量は、疾患若しくは障害を処置するために十分な、又は所望の療法的結果、例えば処置される疾患若しくは障害の1以上の症状の改善若しくは安定化を達成するために十分な化合物(又は2種類以上の化合物の混合物)の量、あるいは予防の文脈において疾患、障害、若しくは病態の1以上の症状の再発、発現、進行、若しくは発症の予防を達成するために十分な量である。
[270] 本発明の方法のいずれかの文脈において、対象は、ヒト又は非ヒト哺乳類であることができる。非ヒト哺乳類は、例えば非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えばマウス、ラット、ウサギ)、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、トリ、ニワトリ、又はあらゆる他の非ヒト哺乳類であることができる。好ましくは、対象はヒトである。
[271] ある態様では、対象はヒトの対象である。1つの態様では、ヒトは、それらの用語が医師により理解されているように、例えば米国食品医薬品局により定義されているように、成人のヒト、小児のヒト、又は老齢期のヒトである。
[272] 本願明細書に記載の化合物又は組成物は、単独療法又は補助的療法として用いることができる。本発明の組成物は、単独で、又は1種類以上の追加の療法剤(すなわち追加のAPI)若しくは療法との組合せで、例えば食事及び運動の側面を含む療法計画の一部として投与することができる。特定の態様では、本発明の方法は、1次療法としての本発明の組成物の投与を含む。他の態様では、本発明の組成物の投与は補助的療法である。どちらの場合でも、本発明の方法は、疾患又は障害を処置又は予防するために、1種類以上の追加の療法剤及び/又は療法と組み合わせて本発明の組成物を投与することを意図している。用語「療法(単数及び複数)」は、疾患若しくは障害又はその1以上の症状の予防、処置、管理、又は改善に用いることができるあらゆる方法、プロトコル、及び/又は薬剤を表す。
[273] 本願明細書に記載の化合物又は組成物は、併用療法に用いることもできる。本願明細書で用いられる際、「併用療法」又は「共同療法」には、1以上の化合物及び追加の有効薬剤、例えば追加のAPI又は上記の有効な生物学的薬剤の共同作用から有益な作用を提供することが意図される特定の処置計画の一部として、療法上有効量の本願明細書に記載の化合物の1以上を投与することが含まれる。組合せの有益な作用には、その組合せから生ずる薬物動態学的又は薬力学的共同作用が含まれるがそれらに限定されない。組合せの有益な作用は、組合せの別の薬剤に関連した毒性、副作用、又は有害事象の緩和にも関連し得る。「併用療法」は、意図も予測もされていなかった有益な作用を偶発的及び無作為に(arbitrarily)生ずる別々の単剤療法計画の一部として、2種類以上の化合物を投与することを包含することは意図されていない。
皮膚科学的病態及び障害
[274] ある態様では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の式I~VIのいずれか1つの化合物若しくはそれらの混合物又はそれを含む組成物を投与することにより、皮膚科学的病態又は障害を処置するための方法を提供する。
[275] ある態様では、皮膚科学的障害は皮膚炎である。
[276] ある態様では、皮膚科学的障害は糖尿病性創傷である。
[277] ある態様では、皮膚科学的障害は湿疹である。
[278] ある態様では、皮膚科学的障害は掻痒である。
[279] ある態様では、皮膚科学的障害は治癒しつつある創傷である。
[280] ある態様では、皮膚科学的障害はざ瘡である。
[281] ある態様では、皮膚科学的障害はステロイド誘発性酒さである。
胃腸疾患及び障害
[282] ある態様では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の式I~VIのいずれか1つの化合物若しくはその混合物又はそれを含む組成物を投与することにより、胃腸疾患又は障害を処置するための方法を提供する。
[283] ある態様では、胃腸疾患又は障害は、IBD、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸炎、嚢炎、嚢のクローン病、好酸球性大腸炎、リンパ球性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、空置性大腸炎、化学性大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、偽膜性大腸炎、及び不確定大腸炎から選択される。ある態様では、胃腸疾患又は障害は、IBD、潰瘍性大腸炎、及びクローン病から選択される。
[284] ある態様では、胃腸疾患又は障害は、腸閉塞、慢性膵炎、大腸炎、結腸癌、先天性胃腸異常、腹壁破裂、高出力瘻孔、非経口栄養関連肝疾患、術後イレウス、術後腸炎症、短腸症候群、及び散発性ポリポーシスから選択される。ある態様では、胃腸疾患又は障害は、好酸球性食道炎、ベーチェット病、過敏性腸症候群、セリアック病、腸粘膜炎、NSAID腸症、腸管感染症、憩室症、憩室炎、胃炎、膵炎、ウイルス性胃腸炎、及びウィップル病から選択される。
[285] ある態様では、胃腸疾患又は障害は、術後腸炎症、術後イレウス、又はそれらの組合せである。ある態様では、胃腸炎症性疾患又は障害は術後イレウス(POI)である。
[286] 好ましい態様では、胃腸疾患又は障害はIBDであり、これは、クローン病及び潰瘍性大腸炎という2つの病態に与えられた用語であり、両方とも胃腸管の慢性炎症を特徴とする。クローン病は、口腔及び肛門を含めた胃腸管のあらゆる部分を冒し得るが、ほとんどの場合は下部胃腸管、特に回腸を冒す。潰瘍性大腸炎は、大腸/結腸、及び直腸を冒す。用語「大腸」及び「結腸」は、本開示において互換的に用いられる。
[287] IBDの標準治療処置は、胃腸管の標的組織における炎症を制御することによって寛解を達成し、維持することを目的としている。成人では、単独で又はコルチコステロイド類との組合せで5-アミノサリチル酸類(5-ASA)を用いて寛解を誘導し得る。一般に、コルチコステロイド処置は、症状の短期制御のために、例えば急性の再発を処置するために、そして疾患症状の寛解を誘導するために施される。長期又は維持療法には、一般に5-ASAを含む非ステロイド剤及びアザチオプリンのような免疫調節剤の使用が含まれる。
[288] ある態様では、本開示は、単剤療法として又は第2のIBD療法剤との併用療法で、ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートの形態で、IBDの追加の処置を提供する。ある態様では、第2のIBD療法剤は、コルチコステロイド、5-ASA、及びアザチオプリンから選択される。ある態様では、本開示は、IBD維持療法、場合により5-ASA又はアザチオプリンと組み合わせて、IBDを処置する方法に使用するためのビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを提供する。ある態様では、本開示は、5-ASA、アザチオプリン、及びコルチコステロイドのいずれか1以上と組み合わせて、IBDを処置する方法に使用するためのビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを提供する。ある態様では、本開示は、コルチコステロイドと組み合わせて、IBDを処置する方法に使用するためのビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを提供する。ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートとコルチコステロイドとの併用療法の前記の態様によれば、コルチコステロイドは、剤形が経口剤形である場合、プレドニゾン、プレドニゾロン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、及びジプロピオン酸ベクロメタゾンから成る群より選択することができ、又は剤形が直腸送達に適合した、例えば浣腸剤又は坐剤の形態である場合、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、及びブデソニドから選択することができる。
感染性因子により引き起こされる感染性疾患及び障害
[289] ある態様では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の式I~Vのいずれか1つの化合物若しくはその混合物又はそれを含む組成物を投与することにより、細菌、真菌、又はウイルスなどの感染性因子により引き起こされる疾患又は障害を処置するための方法を提供する。
[290] ある態様では、疾患又は障害は細菌感染症である。ある態様では、細菌感染症は細菌性肺炎である。ある態様では、細菌感染症は大腸菌感染症である。ある態様では、細菌感染症は結核菌感染症である。
[291] ある態様では、疾患又は障害は酵母感染症である。ある態様では、酵母感染症は、カンジダ属酵母の感染症である。
[292] ある態様では、疾患又は障害は敗血症である。ある態様では、敗血症は熱傷創敗血症である。
炎症性障害
[293] 本願明細書に記載の化合物は、炎症の収束を媒介するSPMの能力、及び療法上有効量のSPMを炎症の処置を必要とする対象の組織に送達する本願明細書に記載の化合物の能力により、重大な炎症性構成要素を有する疾患及び障害の処置において特に有用であり得る。加えて、本願明細書に記載の化合物及び組成物は、炎症の急速な収束から利益を得るであろう病態の処置において有用である。従って、本願明細書に記載の化合物及び組成物は、熱傷創及び糖尿病性創傷の治癒を含む創傷治癒の促進において有用である。本願明細書に記載の方法に従って処置することができる他の病態には、慢性膵炎、皮膚炎、腹膜炎、ドライアイ、細菌感染、脂肪組織炎症、限局型侵襲性歯周炎、顎関節炎症、関節炎、術後痛、術後認知低下、内毒素ショック、HSV-角膜炎、同種移植片拒絶、及び心虚血が含まれる。
[294] ある態様では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の式I~VIのいずれか1つの化合物若しくはその混合物又はそれを含む組成物を投与することにより、炎症性疾患又は障害を処置するための方法を提供する。ある態様では、その有効量は、炎症性疾患又は障害の1以上の症状を処置するために有効である。
[295] ある態様では、炎症性疾患又は障害は、喘息、虚血再灌流障害、ライム関節炎、歯周炎、腹膜炎、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症、及び全身性炎症反応症候群から成る群より選択される。
[296] ある態様では、炎症性疾患又は障害は、口腔粘膜炎、口内炎、口唇炎(chelitis)、舌炎、及びシェーグレン症候群から成る群より選択される。
[297] ある態様では、炎症性疾患又は障害は骨関節炎又はリウマチ様関節炎である。
[298] ある態様では、炎症性疾患又は障害は脂肪組織炎症である。
[299] ある態様では、炎症性疾患又は障害は血管炎症である。
[300] ある態様では、炎症性疾患又は障害は心虚血である。
[301] ある態様では、炎症性疾患又は障害は子宮内膜症である。
[302] ある態様では、炎症性疾患又は障害は口腔粘膜炎である。
[303] ある態様では、炎症性疾患又は障害は、眼の系の疾患又は障害である。ある態様では、眼の系の疾患又は障害は、眼の炎症性疾患、ドライアイ症候群、黄斑浮腫、及び網膜症から成る群より選択される。ある態様では、方法は、角膜の創傷の治癒を促進するための方法である。
[304] ある態様では、方法は、ドライアイを処置するための方法である。ドライアイ疾患又は症候群は、乾燥及び刺激の症状を特徴とする涙及び眼の表面の多因子性障害である。炎症は、ドライアイの発現及び進行において重要な構成要素である(Stevenson et al., Arch. Ophthalmol., 2012, 130(1),90-100; Rashid et al., Arch. Ophthalmol, 2008, 126(2),219-225)。
[305] 用語「ドライアイ」は、不十分な涙の産生及び/又は異常な涙の組成を表す。本願明細書で定義されるドライアイ疾患の原因には、以下の原因が含まれるがそれらに限定されない:特発性先天性無涙症、眼球乾燥症、涙腺切除及び感覚神経支配除去;リウマチ様関節炎、ウェゲナー肉芽腫症及び全身性紅斑性狼瘡を含む膠原血管病;シェーグレン症候群及びシェーグレン症候群に関連した自己免疫疾患;眼瞼炎又は酒さにより引き起こされる脂質涙液層の異常;ビタミンA欠乏症により引き起こされるムチン涙液層の異常;トラコーマ、ジフテリア性角結膜炎;粘膜皮膚障害;加齢;更年期;並びに糖尿病。さらに、用語「ドライアイ」には、白内障手術及び屈折矯正手術などの前部眼科手術後のドライアイ並びにアレルギー性結膜炎に付随するドライアイが含まれる。本願明細書で定義されるドライアイの症状は、以下の状況を含むがそれらに限定されない他の状況により引き起こされる可能性もある:長時間の視覚的仕事;コンピューターでの作業;乾燥した環境にいること;眼の刺激;コンタクトレンズ、LASIK及び他の屈折手術;疲労;並びに薬物療法、例えばイソトレチノイン、鎮静剤、利尿剤、3環系抗うつ薬、血圧降下剤、経口避妊剤、抗ヒスタミン剤、鼻充血抑制剤、ベータブロッカー、フェノチアジン類、アトロピン、及びモルヒネなどの疼痛緩和オピエート類。
[306] ある態様では、方法は、本願明細書に記載の化合物を抗炎症剤と共に投与することをさらに含む。ある態様では、化合物及び抗炎症剤は同じ剤形中に含有される。
代謝疾患及び障害
[307] ある態様では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の式I~Vのいずれか1つの化合物若しくはその混合物又はそれを含む組成物を投与することにより、代謝疾患又は障害を処置するための方法を提供する。ある態様では、対象はヒトであり、化合物は式I又はIVの化合物である。
[308] ある態様では、代謝疾患又は障害は、2型糖尿病若しくは前糖尿病、インスリン耐性を含めた糖尿病において顕在化するグルコース代謝異常;高トリグリセリド血症、すなわちトリグリセリドの上昇、混合型脂質異常症、高コレステロール血症、脂肪肝として顕在化する脂質代謝異常;並びに肥満において顕在化するグルコース及び脂質代謝異常の組合せ;又は高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、及び混合型脂質異常症から選択される脂質異常症性障害である。
[309] ある態様では、代謝疾患又は障害は、インスリン耐性、混合型脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、2型糖尿病、原発性胆汁性症候群、及び原発性硬化性胆管炎である。
[310] ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、少なくとも1種の追加のAPIと共に単一の固体剤形中に配合される。ある態様では、少なくとも1種の追加のAPIは、抗高脂血症剤又は抗糖尿病剤である。用いることができる抗高脂血症剤には、HMG CoA酵素阻害剤(例えばスタチン類)、コレステロール吸収阻害剤、及びコレステロールエステラーゼ輸送タンパク質(CETP)阻害剤が含まれる。ある態様では、抗高脂血症剤は、スタチン、コレステロール吸収阻害剤、CETP阻害剤、並びに前記いずれかの薬学的に許容可能な塩及びプロドラッグから選択される。薬学的に許容可能な塩は、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、p-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩、ヒプル酸塩、グルコン酸塩、及びラクトビオン酸塩から成る群より選択することができる。
[311] ある態様では、抗高脂血症剤はスタチンである。ある態様では、スタチンは、アトルバスタチン、ロスバスタチン(risuvostatin)、シンバスタチン、プラバスタチン、並びに前記いずれかの薬学的に許容可能な塩及びプロドラッグから成る群より選択される。1つの態様では、スタチンは、5mg~100mgの範囲の量で存在する。1つの態様では、スタチンはプラバスタチンである。
[312] 1つの態様では、抗高脂血症剤はコレステロール吸収阻害剤である。1つの態様では、コレステロール吸収阻害剤は、Zetiaとしても知られるエゼチミブである。
[313] 1つの態様では、抗高脂血症剤はCETP阻害剤である。1つの態様では、CETP阻害剤は、アナセトラピブ又はその水和物若しくは溶媒和物である。
神経障害
[314] ある態様では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の式I~VIのいずれか1つの化合物若しくはその混合物又はそれを含む組成物を投与することにより、神経障害を処置するための方法を提供する。ある態様では、化合物は式I又はIVの化合物である。ある態様では、処置され得る神経疾患及び障害には、限定されるものではないが、アルツハイマー病、末梢神経損傷、筋萎縮性側索硬化症、痛み、及び線維筋痛症が含まれる。ある態様では、神経疾患又は障害は、術後せん妄、急性術後痛、線維筋痛症、子宮内膜症、外陰部痛、慢性腰痛、骨関節炎に関連した痛みの処置又は管理、糖尿病性末梢神経障害、及び筋骨格損傷又は外傷から選択される。
[315] ある態様では、その量は、神経障害の1以上の症状を処置するために有効である。
[316] ある態様では、神経障害は精神障害である。ある態様では、精神障害は、注意欠陥多動性障害(ADHD)及び鬱病から選択される。ある態様では、神経疾患又は障害は、術後認知機能障害(POCD)又は術後せん妄である。
[317] 本開示は、痛みを処置又は管理するための方法も提供する。ある態様では、痛みは侵害受容性疼痛であり、方法は、侵害受容性疼痛に関する処置を必要とする対象に有効量の本願明細書に記載の化合物又はその混合物を含む医薬組成物を投与することを含む。ある態様では、方法は、少なくとも1種類の追加のAPIをさらに投与することを含む。ある態様では、追加のAPIは、ガバペンチン又はその薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグである。
[318] ある態様では、本開示は、炎症に関連した痛みを処置又は管理するための方法も提供する。
[319] ある態様では、本開示は、線維筋痛症に関連した痛みを処置又は管理するための方法も提供する。
[320] ある態様では、本開示は、子宮内膜症に関連した痛みを処置又は管理するための方法も提供する。
[321] ある態様では、本開示は、外陰部痛に関連した痛みを処置又は管理するための方法も提供する。
[322] ある態様では、本開示は、急性術後痛を処置又は管理するための方法も提供する。
[323] ある態様では、本開示は、慢性腰痛を処置又は管理するための方法も提供する。
[324] ある態様では、本開示は、骨関節炎に関連した痛みを処置又は管理するための方法も提供する。
[325] ある態様では、本開示は、糖尿病性末梢神経障害に関連した痛みを処置又は管理するための方法も提供する。
[326] ある態様では、本開示は、筋骨格損傷又は外傷に関連した痛みを処置又は管理するための方法も提供する。
肺及び血管の疾患及び障害
[327] ある態様では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の式I~VIのいずれか1つの化合物若しくはその混合物又はそれを含む組成物を投与することにより、肺障害を処置するための方法を提供する。ある態様では、対象はヒトであり、化合物は式I又はIVの化合物である。
[328] ある態様では、処置され得る肺及び血管の疾患及び障害には、限定されるものではないが、肺炎症、新生児慢性肺疾患とも呼ばれる気管支肺異形成症、嚢胞性繊維症、アレルギー性気道応答、急性肺損傷、肺損傷、特発性肺線維症、細菌性肺炎、タバコの煙に誘発される肺炎症、及び血管炎症が含まれる。
[329] ある態様では、肺障害は、急性肺損傷、新生児慢性肺疾患とも称される気管支肺異形成症、嚢胞性繊維症、特発性肺線維症、肺損傷、及び肺炎症から選択される。
[330] ある態様では、肺障害は、新生児慢性肺疾患とも称される気管支肺異形成症である。
[331] ある態様では、肺障害は嚢胞性繊維症である。
[332] ある態様では、肺障害は特発性肺線維症である。
非医薬的使用
[333] 1つの態様では、本発明は、非医薬的使用、例えば栄養補助食品として使用するための、本願明細書に記載の化合物及びそれらの混合物を含む組成物を提供する。
[334] ある態様では、非医薬的使用は、本願明細書に記載の化合物又は本願明細書に記載の化合物の2種類以上の混合物を含む有効量の組成物を対象に投与することを含むことができる。ある態様では、有効量は、対象の健康全般を維持、促進、又は向上させるために有効な量である。
[335] 1つの態様では、組成物は、対象において食事不足又は栄養障害に対抗するための方法に用いることができる。1つの態様では、組成物は、対象の健康全般を維持、促進、又は向上させる方法に用いることができる。
[336] 1つの態様では、方法は、心臓の健康を向上させるための方法である。
[337] 1つの態様では、方法は、関節の健康を向上させるための方法である。
[338] 1つの態様では、方法は、眼の健康を向上させるための方法である。
[339] 1つの態様では、方法は、認知の健康を向上させるための方法である。
併用療法
[340] 上記の方法の文脈において、方法は、本願明細書に記載の化合物を、疾患若しくは障害の1以上の症状を処置若しくは改善すること又は上記の追加の非医薬的利益を提供することが意図された1種類以上の追加のAPI又は非医薬的薬剤と共に併用療法として投与することをさらに含むことができる。ある態様では、本願明細書に記載の化合物は、少なくとも1種類の追加のAPI若しくは非医薬的薬剤と一緒に、又は追加のAPI若しくは非医薬的薬剤とは別々に投与することができる。送達が一緒である場合、本発明の組成物は、追加のAPI若しくは非医薬的薬剤と同じ剤形中で、又は異なる剤形中で送達することができる。上で論じられた本発明の利点の1つは、本願明細書に記載の組成物を追加のAPI又は非医薬的薬剤及び賦形剤と共に単一の固体剤形に配合することの容易さであり、これは(遊離のSPM及びそれらのエステルの比較的不安定な油性液体形態とは対照的に)化学的及び物理的に安定であるそれらの自由流動性の粉末としての形態によるものである。
[341] ある態様では、本開示は、上で論じられたようなIBDを処置する方法において使用するためのビスRvE1マグネシウム ジ-リジネート及び追加のIBD療法剤、場合により、コルチコステロイド、5-ASA、又はアザチオプリンを含む組成物を提供する。ある態様では、その方法は、ビスRvE1マグネシウム ジ-リジネートを含む組成物を、場合により、コルチコステロイド、5-ASA、又はアザチオプリンである追加のIBD療法剤とは別々に投与することを含む。追加のIBD療法剤がコルチコステロイドである態様では、コルチコステロイドは、剤形が経口剤形である場合、プレドニゾン、プレドニゾロン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、及びジプロピオン酸ベクロメタゾンから成る群より選択することができ、又は剤形が直腸送達に適合した例えば浣腸剤又は坐剤の形態である場合、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、及びブデソニドから選択することができる。
[342] 本発明を以下の実施例においてさらに記載するが、それらは特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
[343] 式I及びIVの典型的な化合物の構造を下記表5に示す。
[344] 以下で例示される2価金属陽イオン以外の2価金属陽イオンを用いる本願明細書に記載の化合物のペプチド-金属塩構成要素の化学合成は、当該技術分野で公知の技法を用いて本願明細書に記載の方法を適合させることにより達成することができる。例えば、本願明細書にその全体が援用される米国特許第5,061,815号に記載されている通りである。加えて、当業者は、以下で例示されるSPM分子とは異なるSPM分子を、下記の金属-ジペプチド及びジペプチド骨格と同じ様式で組み合わせることができることを理解するであろう。
[345] 代表的なSPM分子、例えばRvE1、AT-RvD1、RvD2、PDX、及びLXA4を合成する典型的な方法を本願明細書に提供する。当業者は本願明細書に記載の化合物のSPM構成要素を得るために代替方法を用いることができるため、これらは限定的でないことが意図される。例えば、合成の方法は、Li et al., Beilstein J. Org. Chem. 2013, 9, 2762-2766及びVik et al., Bioorganic and Med. Chem. Let 2017に記載されている。加えて、1種類以上のSPMが、Caymen Chemical Co.(ミシガン州アナーバー)のような供給業者から購入可能である。
実施例1: RvE1の合成
(5S,6Z,8E,10E,12R,14Z,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-6,8,10,14,16-ペンタエン酸)
工程1: イソプロピル (5S,8E,10E,12R,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-8,10,16-トリエン-6,14-ジイノエート
[346] イソプロピル (5S,8E,10E,12R)-5,12-ジヒドロキシペンタデカ-8,10-ジエン-6,14-ジイノエート(3.972g、13.05mmol)のベンゼン(50mL)中における脱気された溶液を、(R,E)-1-ヨードペンタ-1-エン-3-オール(3.62g、17.07mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.464g、0.661mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.482g、0.417mmol)、及びヨウ化銅(I)(0.255g、1.34mmol)のベンゼン(25mL)中における脱気された溶液に添加した。混合物を脱気し、窒素でパージし(2回)、ピペリジン(6.5mL、65.8mmol)を添加し、溶液を脱気し、窒素でパージし、混合物を室温にて窒素雰囲気下で撹拌した。2時間後、TLC(50%EtOAc/ヘキサン、過マンガン酸塩染色)は限定試薬の消費を示した。反応混合物をEtOAc(240mL)で希釈し、飽和水性塩化アンモニウム(2×100mL)及びブライン(100mL)で洗浄した。有機性溶液を乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮させた。粗製の粘性の暗い琥珀色の油/赤色の固体をフラッシュクロマトグラフィー(0.75Lシリカゲル、40%EtOAc/ヘキサンの後、1度生成物が溶離し始めたら50%)により精製すると、4.22g(83%)のイソプロピル (5S,8E,10E,12R,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-8,10,16-トリエン-6,14-ジイノエートが粘性の琥珀色の油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.56 (dd, J=15.5, 10.9 Hz, 1H), 6.33 (dd, J=14.9, 11.1 Hz, 1H), 6.08 (dd, J=15.9, 6.1 Hz, 1H), 5.85 (dd, J=15.2, 5.9 Hz, 1H), 5.73-5.59 (m, 2H), 5.00 (7重線, J=6.2 Hz, 1H), 4.51 (q, J=4.8, 3.7 Hz, 1H), 4.35 (q, J=6.1 Hz, 1H), 4.13-4.01 (m, 1H), 2.68-2.50 (m, 2H), 2.39-2.28 (m, 2H), 1.86-1.68 (m, 4H), 1.56 (p, J=7.4 Hz, 2H), 1.22 (d, J=6.3 Hz, 6H), 0.92 (t, J=7.4 Hz, 3H)。
工程2: イソプロピル (5S,6Z,8E,10E,12R,14Z,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-6,8,10,14,16-ペンタエノエート
[347] 亜鉛粉末(208g、3.2mol)及び水(1.2L)をフラスコに入れ、窒素流を溶液に15分間通過させることにより脱気した。酢酸銅(II)1水和物(20.9g、105mmol)を添加し、脱気を15分間継続した。硝酸銀(21g、123mmol)を添加し、混合物を継続する窒素脱気下で30分間撹拌した。混合物を濾過し(#2濾紙、18.5cmブフナー漏斗)、残っている固体を水(2×200mL)、メタノール(2×200mL)、アセトン(2×200mL)、及びジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄した。活性化された亜鉛を、1:1 メタノール/水(1.2L)を含有するフラスコに迅速に移し、イソプロピル (5S,8E,10E,12R,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-8,10,16-トリエン-6,14-ジイノエート(2.1g、5.4mmol)のメタノール(56mL)中における溶液及びトリメチルシリルクロリド(9.3mL、73mmol)で処理し、40℃に温め、窒素下で一晩撹拌した。反応をGC-MSによりモニターしたところ、22時間後に99%の変換を示した。混合物を濾過し(ブフナー漏斗中の2枚の185mm #2濾紙の間に250mLセライト)、フィルターケーキを生成物がケーキ上に残らなくなるまでメタノールですすいだ。濾液を、初期体積の約99%が除去されるまで真空中で濃縮した(水浴温度<40℃)。残っている溶液にブライン(50mL)、少量の塩化ナトリウム、及びEtOAc(50mL)を添加した。有機相を収集し、水相をEtOAc(2×20mL)で抽出した。有機性溶液を合わせて乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した(水浴温度<30℃)。粗製の黄色い油を、Biotage Isolera(120gシリカゲル、10~60%EtOAc/ヘキサン、60%EtOAc/ヘキサンで生成物が溶離する)を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、1.27g(60%)のイソプロピル (5S,6Z,8E,10E,12R,14Z,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-6,8,10,14,16-ペンタエノエートが透明な黄色い油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.49 (ddd, J=15.8, 11.2, 4.5 Hz, 2H), 6.35-6.04 (m, 4H), 5.78 (dd, J=15.2, 6.9 Hz, 1H), 5.72 (dd, J=15.2, 6.9 Hz, 1H), 5.44 (ddd, J=16.0, 10.5, 8.1 Hz, 2H), 5.00 (7重線, J=6.1 Hz, 1H), 4.58 (q, J=6.8, 6.3 Hz, 1H), 4.26 (q, J=6.4 Hz, 1H), 4.15-4.05 (m, 1H), 2.48 (7重線, J=7.6 Hz, 2H), 2.30 (t, J=7.0 Hz, 2H), 1.87-1.45 (m, 9H), 1.23 (s, 3H), 1.21 (s, 3H), 0.92 (t, J=7.4 Hz, 3H)。
工程3: (5S,6Z,8E,10E,12R,14Z,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-6,8,10,14,16-ペンタエン酸(RvE1)
[348] イソプロピル (5S,6Z,8E,10E,12R,14Z,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-6,8,10,14,16-ペンタエノエート(2.51g、6.08mmol)のTHF(37mL)中における溶液を、1M LiOH溶液(26mL、26mmol)で処理した。室温にて2時間の撹拌後、TLC(EtOAc)は完了を示した。反応混合物をEtOAc(250mL)で希釈し、pH7の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(28mL)でpH7~8に酸性化した。相を分離し、塩化ナトリウムをそれが飽和するまで水相に添加した。水相を、生成物が残らなくなるまでEtOAcで洗浄した。有機性溶液を合わせてブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、トコフェロール(1滴)を添加し、真空中で濃縮した。粗製の粘性の琥珀色の油を15%MeOH/DCMに溶解させ、フラッシュクロマトグラフィー(125mLシリカゲル、0~20%MeOH/DCM)により精製すると、1.38g(65%)の(5S,6Z,8E,10E,12R,14Z,16E,18R)-5,12,18-トリヒドロキシイコサ-6,8,10,14,16-ペンタエン酸が琥珀色の油として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 6.52 (ddd, J=19.6, 14.7, 11.3 Hz, 2H), 6.36-6.18 (m, 2H), 6.07 (t, J=11.0 Hz, 2H), 5.75 (dd, J=14.6, 6.5 Hz, 1H), 5.65 (dd, J=15.2, 6.7 Hz, 1H), 5.44 (dt, J=10.3, 7.5 Hz, 1H), 5.41-5.31 (m, 1H), 4.56 (q, J=7.0 Hz, 1H), 4.16 (q, J=6.5 Hz, 1H), 4.00 (q, J=6.5 Hz, 1H), 2.44 (7重線, J=7.3 Hz, 2H), 2.30 (t, J=6.9 Hz, 2H), 1.73-1.40 (m, 6H), 0.90 (t, J=7.4 Hz, 3H)。
実施例2: RvE1(L,L)-リジルリジン塩の合成
[349] RvE1(38.1mg、0.109mmol)のメタノール(0.75mL)中における溶液及びトコフェロール(1.7mgを0.2mLの酢酸エチルに予め溶解させたもの)を、L-リジル-L-リジン(30mg、0.109mmol)で処理し、混合物を50℃で20分間撹拌した。溶液を少し冷却し、真空中で濃縮し、次いで室温で真空オーブン中に3時間置くと、63mg(93%)のRvE1(L,L)-リジルリジン塩が非常に淡い橙色のパリパリした(crisp)泡状物質として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 6.62-6.44 (m, 2H), 6.37-6.16 (m, 2H), 6.07 (q, J=10.7 Hz, 2H), 5.74 (dd, J=14.8, 6.6 Hz, 1H), 5.65 (dd, J=15.2, 6.7 Hz, 1H), 5.45 (dt, J=10.8, 7.7 Hz, 1H), 5.42-5.30 (m, 1H), 4.57 (q, J=7.1 Hz, 1H), 4.26 (dd, J=7.9, 5.2 Hz, 1H), 4.16 (q, J=6.5 Hz, 1H), 4.01 (q, J=6.6 Hz, 1H), 2.90 (t, J=7.2 Hz, 4H), 2.43 (tt, J=14.5, 7.8 Hz, 2H), 2.18 (t, J=6.8 Hz, 2H), 1.87 (td, J=13.4, 7.9 Hz, 2H), 1.75-1.40 (m, 16H), 0.91 (t, J=7.4 Hz, 3H)。
実施例3: ビスRvE1 Mg ジ-(L)-リジネート塩の合成
RvE1(60.3mg、0.172mmol)のメタノール(1mL)中における溶液及びトコフェロール(2.1mgを0.2mLの酢酸エチルに予め溶解させたもの)を、マグネシウム リジネート(27.1mg、0.086mmol)で処理し、混合物を50℃で20分間撹拌した。溶液を少し冷却し、真空中で濃縮し、次いで室温で真空オーブン中に3時間置くと、85mg(97%)のビス(RvE1) マグネシウム L-リジネート塩が非常に淡い橙色のパリパリした泡状物質として得られた。1H NMR (400 MHz, 酢酸-d4) δ 6.61-6.46 (m, 4H), 6.33 (dd, J=14.8, 10.6 Hz, 2H), 6.24 (dd, J=14.6, 10.5 Hz, 2H), 6.10 (td, J=11.1, 4.1 Hz, 4H), 5.79 (dd, J=14.9, 6.7 Hz, 2H), 5.69 (dd, J=15.2, 6.8 Hz, 2H), 5.45 (dt, J=14.6, 8.9 Hz, 4H), 4.71 (q, J=7.5, 6.9 Hz, 2H), 4.30 (q, J=6.5 Hz, 2H), 4.15 (q, J=6.6 Hz, 2H), 4.04 (t, J=6.2 Hz, 2H), 3.07 (t, J=7.4 Hz, 4H), 2.50 (ddq, J=28.8, 14.7, 7.0 Hz, 4H), 2.39 (t, J=7.1 Hz, 4H), 2.02-1.90 (m, 4H), 1.81-1.46 (m, 20H), 0.89 (t, J=7.4 Hz, 6H)。
実施例4: ビスRvE1 Ca ジ-(L)-リジネート塩の合成
[350] RvE1(74.2mg、0.212mmol)のメタノール(0.7mL)中における溶液及びトコフェロール(2.6mgを0.2mLの酢酸エチルに予め溶解させたもの)を、カルシウムリジネート(35mg、0.106mmol)のMeOH(0.6mL)中における溶液で処理し、混合物を50℃で20分間撹拌した。溶液を少し冷却し、真空中で濃縮し、次いで室温で真空オーブン中に3時間置くと、104mg(96%)のビス(RvE1) カルシウム L-リジネート塩が淡橙色固体として得られた。1H NMR (400 MHz、酸化重水素) δ 6.64 (td, J=11.5, 2.9 Hz, 2H), 6.54 (dd, J=15.3, 11.1 Hz, 2H), 6.42-6.29 (m, 4H), 6.20 (t, J=11.0 Hz, 4H), 5.89-5.79 (m, 2H), 5.76 (dd, J=15.3, 7.0 Hz, 2H), 5.57-5.46 (m, 2H), 5.44 (t, J=10.0 Hz, 2H), 4.67 (q, J=6.8 Hz, 2H), 4.32 (q, J=6.5 Hz, 2H), 4.13 (q, J=6.7 Hz, 2H), 3.59 (t, J=6.1 Hz, 2H), 3.06-2.95 (m, 4H), 2.51 (t, J=7.2 Hz, 4H), 2.20 (t, J=7.0 Hz, 4H), 1.81 (dtd, J=9.1, 6.4, 2.7 Hz, 4H), 1.75-1.37 (m, 24H), 0.88 (t, J=7.4 Hz, 6H)。
実施例5: AT-RvD1の合成
(4Z,7S,8R,9E,11E,13Z,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,13,15,19-ヘキサエン酸(17-エピ-RvD1)
工程1: メチル(Z)-6-((4S,5R)-5-((R,1E,3E,7E,11Z)-9-ヒドロキシテトラデカ-1,3,7,11-テトラエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ヘキサ-4-エノエート
[351] (R,1E,5Z)-1-ヨードオクタ-1,5-ジエン-3-オール(1.18g、4.03mmol)及びメチル(Z)-6-((4S,5R)-5-((1E,3E)-ヘキサ-1,3-ジエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ヘキサ-4-エノエート(1.13g、3.71mmol)の混合物を、無水アセトニトリル(25mL)を用いて共沸的に乾燥させた。混合物を無水アセトニトリル(43mL)に溶解し、脱気し、窒素でパージし(2回)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(388.3mg、0.553mmol)及びヨウ化銅(516.9mg、2.71mol)で処理し、脱気し、0℃に冷却し、トリエチルアミン(2.7mL、19.4mmol)で処理し、0℃で2時間撹拌し、室温まで温め、一晩撹拌した。18.5時間後、TLC(30%EtOAc/ヘキサン)は限定試薬が消費されたことを示し、pH7の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(20mL)及びEtOAc(80mL)をフラスコに添加した。相を分離し、有機性溶液を合わせて水(Cuがなくなるまで)、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した。粗製の油をフラッシュクロマトグラフィー(140mLシリカゲル、20~30%EtOAc/ヘキサン)により精製すると、0.46g(29%)のメチル(Z)-6-((4S,5R)-5-((R,1E,3E,7E,11Z)-9-ヒドロキシテトラデカ-1,3,7,11-テトラエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ヘキサ-4-エノエートが得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.59 (dd, J=15.4, 11.0 Hz, 1H), 6.42 (dd, J=14.6, 14.1 Hz, 1H), 6.33 (m, 1H), 6.16 (dd, J=15.9, 5.6 Hz, 1H), 5.88 (m, 1H), 5.75 (m, 1H), 5.67-5.54 (m, 1H), 5.44 (p, J=6.5, 5.9 Hz, 2H), 5.41-5.28 (m, 1H), 4.59 (t, J=7.0 Hz, 1H), 4.34-4.14 (m, 2H), 3.67 (s, 3H), 2.40-2.30 (m, 6H), 2.30-2.21 (m, 1H), 2.21-2.12 (m, 1H), 2.12-2.01 (m, 2H), 1.70 (d, J=4.0 Hz, 1H), 1.49 (s, 3H), 1.36 (s, 3H), 0.97 (t, J=7.6 Hz, 3H)。
工程2: メチル(4Z,7S,8R,9E,11E,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,15,19-ペンタエン-13-イノエート
[352] メチル(Z)-6-((4S,5R)-5-((R,1E,3E,7E,11Z)-9-ヒドロキシテトラデカ-1,3,7,11-テトラエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ヘキサ-4-エノエート(0.38g、0.883mmol)のメタノール(31mL)中における溶液を、1M HCl(8mL、8mmol)で処理し、室温で撹拌した。4時間後、TLC(50%EtOAc/ヘキサン、過マンガン酸塩染色)は完了を示した。飽和水性重炭酸ナトリウム(40mL)で反応を停止させ、次いでEtOAc(100mL)で抽出した。有機性溶液を合わせて水(60mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した。粗生成物を、Biotage Isolera(25gシリカ、45~90%EtOAc/ヘキサン)を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、0.34g(99%)のメチル(4Z,7S,8R,9E,11E,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,15,19-ペンタエン-13-イノエートが黄色の油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.60 (dd, J=15.4, 10.9 Hz, 1H), 6.38 (dd, J=15.4, 10.8 Hz, 1H), 6.16 (dd, J=15.8, 5.6 Hz, 1H), 5.93-5.82 (m, 2H), 5.75 (dd, J=15.4, 2.0 Hz, 1H), 5.66-5.54 (m, 1H), 5.48 (td, J=4.8, 2.3 Hz, 2H), 5.40-5.28 (m, 1H), 4.23 (m, 2H), 3.72 (dq, J=8.2, 4.0 Hz, 1H), 3.67 (s, 3H), 2.53 (d, J=4.0 Hz, 1H), 2.48-2.15 (m, 9H), 2.05 (d, J=10.0 Hz, 2H), 1.71 (d, J=4.3 Hz, 1H), 0.97 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
工程3: メチル(4Z,7S,8R,9E,11E,13Z,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,13,15,19-ヘキサエノエート
[353] 亜鉛粉末(22.3g、341mmol)及び水(250mL)をフラスコに入れ、窒素流を溶液に15分間通過させることにより脱気した。酢酸銅(II)1水和物(2.24g、11.2mmol)を添加し、脱気を15分間継続した。硝酸銀(2.24g、13.2mmol)を添加し、混合物を継続する窒素脱気下で30分間撹拌した。混合物を中型フリット付きブフナー漏斗で濾過し、残っている固体を水(2×50mL)、メタノール(2×50mL)、アセトン(2×50mL)、及びジエチルエーテル(2×50mL)で洗浄した。亜鉛混合物を、1:1 メタノール/水(220mL)を含有するフラスコに迅速に移し、メチル(4Z,7S,8R,9E,11E,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,15,19-ペンタエン-13-イノエート(350mg、0.901mmol)のメタノール(325mL)中における溶液、トリメチルシリルクロリド(1.56mL、12.2mmol)で処理し、一晩撹拌した。反応をGC-MSによりモニターしたところ、22時間後に100%の変換を示した。混合物をセライトのパッドを通して濾過し(100mL、フィルターケーキを全ての生成物がセライトを通過するまでメタノールですすいだ)、濾液を、初期体積の約80%が除去されるまで真空中で濃縮した(水浴温度<30℃)。残っている溶液にブライン(50mL)及びEtOAc(80mL)を添加した。有機相を収集し、水相をEtOAc(30mL)で抽出した。有機性溶液を合わせてブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した(水浴温度<30℃)。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(40mLシリカゲル、50%EtOAc/ヘキサン)により精製すると、288mg(82%)のメチル(4Z,7S,8R,9E,11E,13Z,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,13,15,19-ヘキサエノエートがガラス状の淡黄色固体として得られた。注釈: 溶媒を除去する前に、1滴の(+)-α-トコフェロールを精製された生成物に添加した。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.79-6.65 (m, 2H), 6.40 (dd, J=15.1, 10.8 Hz, 1H), 6.27 (dd, J=14.6, 10.8 Hz, 1H), 6.08-5.96 (m, 2H), 5.80 (ddd, J=15.1, 12.6, 6.5 Hz, 2H), 5.64-5.54 (m, 1H), 5.49 (t, J=5.0 Hz, 2H), 5.41-5.31 (m, 1H), 4.30-4.19 (m, 2H), 3.71 (dt, J=7.9, 4.0 Hz, 1H), 3.66 (s, 3H), 2.51-2.15 (m, 10H), 2.14-2.01 (m, 2H), 1.75 (s, 1H), 0.97 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
工程4: (4Z,7S,8R,9E,11E,13Z,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,13,15,19-ヘキサエン酸(17-エピ-RvD1)
[354] メチル (4Z,7S,8R,9E,11E,13Z,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,13,15,19-ヘキサエノエート(246mg、0.630mmol)のTHF(13mL)中における冷却(3℃)溶液を、1M LiOH水溶液(3.8mL、3.8mmol)で処理した。3℃にて22時間の撹拌後、TLC(EtOAc、CAM染色)は完了を示した。反応混合物をEtOAc(60mL)で希釈し、pH7の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(約17mL)でpH7~8まで酸性化した。相を分離し、生成物がもはや水相中になくなるまで水相をEtOAcで洗浄した(6×10mL)。有機性溶液を合わせて水(25mL)、ブライン(15mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、トコフェロール(4.2mg)を添加し、真空中で濃縮すると、207mg(87%)の(4Z,7S,8R,9E,11E,13Z,15E,17R,19Z)-7,8,17-トリヒドロキシドコサ-4,9,11,13,15,19-ヘキサエン酸(17-エピ-RvD1)が半透明の黄色の油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.69 (m, 1H), 6.42-6.27 (m, 1H), 6.29-6.16 (m, 1H), 6.04-5.92 (m, 2H), 5.77 (m, 2H), 5.59-5.40 (m, 3H), 5.38-5.27 (m, 1H), 4.28-4.07 (m, 2H), 3.74-3.61 (m, 1H), 2.47-2.12 (m, 8H), 2.05 (m, 2H), 1.44-1.36 (m, 1H), 1.34-1.15 (m, 2H), 1.01-0.88 (m, 3H), 0.88-0.76 (m, 1H)。
実施例6: AT-RvD1(L,L)-リジルリジン塩の合成
[355] 17-エピ-RvD1(27.4mg、72.8μmol)のメタノール(0.5mL)中における溶液及びトコフェロール(0.9mgを0.2mLの酢酸エチルに予め溶解させたもの)を、L-リジル-L-リジン(19.9mg、72.5μmol)で処理し、混合物を50℃で20分間撹拌した。溶液を少し冷却し、真空中で濃縮し、次いで室温で真空オーブン中に3時間置くと、47mg(100%)の17-エピ-RvD1(L,L)-リジルリジン塩が淡い橙色のパリパリした泡状物質として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 6.80-6.68 (m, 2H), 6.40 (dd, J=14.8, 11.0 Hz, 1H), 6.29 (dd, J=14.5, 10.8 Hz, 1H), 6.00 (p, J=10.8 Hz, 2H), 5.87 (dd, J=15.0, 6.8 Hz, 1H), 5.73 (dd, J=15.1, 6.5 Hz, 1H), 5.57-5.42 (m, 3H), 5.43-5.32 (m, 1H), 4.26 (dd, J=7.8, 5.3 Hz, 1H), 4.17 (q, J=6.8 Hz, 1H), 4.02 (t, J=6.1 Hz, 1H), 3.58-3.49 (m, 1H), 3.43-3.35 (m, 1H), 2.91 (t, J=7.4 Hz, 4H), 2.40-2.15 (m, 8H), 2.06 (p, J=8.1, 7.7 Hz, 2H), 1.86 (dt, J=13.2, 6.5 Hz, 2H), 1.75-1.58 (m, 6H), 1.45 (dq, J=16.5, 9.0, 8.0 Hz, 4H), 0.96 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
実施例7: ビスAT-RvD1 Mg ジ-(L)-リジネート塩の合成
17-エピ-RvD1(35.9mg、95.4μmol)のメタノール(0.5mL)中における溶液及びトコフェロール(1.3mgを0.2mLの酢酸エチルに予め溶解させたもの)を、マグネシウム L-リジネート(15mg、47.7μmol)で処理し、混合物を50℃で20分間撹拌した。溶液を少し冷却し、真空中で濃縮し、次いで室温で真空オーブン中に3時間置くと、51mg(100%)のビス(17-エピ-RvD1) マグネシウム L-リジネート塩がガラス状の橙色固体として得られた。1H NMR (400 MHz, 酢酸-d4) δ 6.81-6.69 (m, 4H), 6.41 (dd, J=15.2, 10.8 Hz, 2H), 6.28 (dd, J=14.6, 10.7 Hz, 2H), 6.09-5.94 (m, 4H), 5.86 (dd, J=15.1, 7.2 Hz, 2H), 5.77 (dd, J=15.1, 6.6 Hz, 2H), 5.49 (m, 6H), 5.36 (dt, J=11.7, 7.5 Hz, 2H), 4.35-4.23 (m, 4H), 4.08-4.00 (m, 2H), 3.86-3.77 (m, 2H), 3.13-3.02 (m, 4H), 2.45-2.25 (m, 16H), 2.09-1.91 (m, 8H), 1.75 (dt, J=14.4, 7.4 Hz, 4H), 1.58 (m, 4H), 0.94 (t, J=7.5 Hz, 6H)。
実施例8: RvD2の合成
(4Z,7S,8E,10Z,12E,14E,16R,17S,19Z)-7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,10,12,14,19-ヘキサエン酸)
工程1: (S,4Z,8E,12E,14E)-メチル 15-((4R,5S,)-2,2-ジメチル-5-((Z)-ペンタ-2-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-7-ヒドロキシペンタデカ-4,8,12,14-テトラエン-10-イノエート
[356] (4R,5S)-4-((1E,3E)-4-ヨードブタ-1,3-ジエン-1-イル)-2,2-ジメチル-5-((Z)-ペンタ-2-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン(1.68g、4.83mmol)及びメチル-(S,4Z,8E)-7-ヒドロキシウンデカ-4,8-ジエン-10-イノエート(0.919g、4.41mmol)の混合物を、無水アセトニトリル(3×5mL)を用いて共沸的に乾燥させた。混合物を無水アセトニトリル(50mL)に溶解し、真空下で脱気し、窒素でパージし(2回)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.318g、0.453mmol)及びヨウ化銅(0.315g、1.65mmol)で処理し、脱気し、0℃に冷却し、トリエチルアミン(3.05mL、21.9mmol)で処理し、0℃で2時間撹拌し、一晩で室温まで温めた。18時間後、TLC(20%EtOAc/ヘキサン)は反応が完了したことを示し、pH7の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(75mL)をフラスコに添加した。相を分離し、水相をEtOAc(150mL)で洗浄した。有機性溶液を合わせて水(2×75mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した。粗製の油をフラッシュクロマトグラフィー(30%EtOAc/ヘキサン)により精製すると、1.48g(79%)の(S,4Z,8E,12E,14E)-メチル 15-((4R,5S)-2,2-ジメチル-5-((Z)-ペンタ-2-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-7-ヒドロキシペンタデカ-4,8,12,14-テトラエン-10-イノエートが褐色の油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.59 (dd, J=15.4, 10.9 Hz, 1H), 6.32 (dd, J=15.0, 10.9 Hz, 1H), 6.17 (dd, J=15.8, 5.5 Hz, 1H), 5.90 (d, J=15.8 Hz, 1H), 5.81-5.70 (m, 2H), 5.48 (m, 3H), 5.31 (m, 1H), 4.63-4.54 (m, 1H), 4.26 (m, 1H), 4.23-4.13 (m, 1H), 3.67 (s, 3H), 2.43-2.33 (m, 6H), 2.27 (dt, J=14.1, 7.2 Hz, 1H), 2.20-2.09 (m, 1H), 2.03 (m, 2H), 1.50 (s, 3H), 1.37 (s, 3H), 0.96 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
工程2: (4Z,7S,8E,12E,14E,16R,17S,19Z)-メチル 7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,12,14,19-ペンタエン-10-イノエート
[357] (S,4Z,8E,12E,14E)-メチル 15-((4R,5S)-2,2-ジメチル-5-((Z)-ペンタ-2-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-7-ヒドロキシペンタデカ-4,8,12,14-テトラエン-10-イノエート(1.48g、3.45mmol)のメタノール(75mL)中における溶液を、1M HCl(19mL、18.9mmol)で処理した。2時間撹拌した後、TLC(50%EtOAc/ヘキサン、過マンガン酸塩染色)は反応が完了していることを示した。飽和水性NaHCO3(60mL)で反応を停止させ、EtOAc(2×150mL)で抽出した。有機性溶液を水(100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、1滴の(+)-α-トコフェロールで処理し、真空中で濃縮した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン)により精製すると、1.03g(77%)の(4Z,7S,8E,12E,14E,16R,17S,19Z)-メチル 7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,12,14,19-ペンタエン-10-イノエートが得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.60 (dd, J=15.4, 10.9 Hz, 1H), 6.37 (dd, J= 5.2, 11.0 Hz, 1H), 6.17 (dd, J=15.8, 5.5 Hz, 1H), 5.95-5.81 (m, 2H), 5.75 (d, J=14.1 Hz, 1H), 5.64-5.48 (m, 2H), 5.51-5.40 (m, 1H), 5.37 (m, 1H), 4.31-4.20 (m, 2H), 3.73 (dt, J=8.6, 4.3 Hz, 1H), 3.67 (s, 3H), 2.44-2.34 (m, 6H), 2.29 (dt, J=16.1, 8.2 Hz, 1H), 2.21-2.12 (m, 1H), 2.10-1.98 (m, 2H), 0.97 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
工程3: (4Z,7S,8E,10Z,12E,14E,16R,17S,19Z)-メチル 7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,10,12,14,19-ヘキサエノエート
[358] 亜鉛粉末(63.68g、973.6mmol)及び水(750mL)をフラスコに入れ、窒素流を溶液に15分間通過させることにより脱気した。酢酸銅(II)1水和物(6.35g、31.81mmol)を添加し、脱気をさらに15分間継続した。硝酸銀(6.35g、37.38mmol)を添加し、混合物を継続する窒素脱気下で30分間撹拌した。混合物を中型フリット付きブフナー漏斗で濾過し、残っている固体を水(2×160mL)、メタノール(2×160mL)、アセトン(2×160mL)、及びエーテル(2×160mL)で洗浄した。活性化された亜鉛を、1:1 メタノール/水(320mL)を含有するフラスコに迅速に移し、(4Z,7S,8E,12E,14E,16R,17S,19Z)-メチル 7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,12,14,19-ペンタエン-10-イノエート(1.03g、2.65mmol)のメタノール(1L)中における溶液、トリメチルシリルクロリド(4.4mL、34.4mmol)で処理し、一晩撹拌した。反応をGC-MSによりモニターしたところ、22時間後に100%の変換を示した。混合物をセライトのパッドを通して濾過し(フィルターケーキをメタノールですすいだ)、濾液を初期体積の約70%が除去されるまで真空中で濃縮した(水浴温度を27℃未満で維持した)。残っている溶液に、2相が形成されるまで水及びEtOAcを添加した。有機相を収集し、水相をEtOAc(2×100mL)で抽出した。有機性溶液を合わせて乾燥させ(Na2SO4)、1滴の(+)-α-トコフェロールで処理し、真空中で濃縮(水浴温度を27℃未満で維持した)すると、1.27g(82%)の粗生成物が淡黄色の油として得られた。1H NMR (600 MHz, クロロホルム-d) δ 6.78-6.67 (m, 1H), 6.37 (m, 1H), 6.32-6.22 (m, 1H), 6.03 (m, 1H), 5.84-5.73 (m, 1H), 5.60-5.42 (m, 3H), 5.40-5.32 (m, 1H), 4.25 (d, J=26.6 Hz, 2H), 3.73 (dq, J=9.1, 4.6 Hz, 1H), 3.67 (s, 3H), 2.45-2.32 (m, 6H), 2.32-2.23 (m, 1H), 2.22-2.13 (m, 1H), 2.05 (m, 2H), 0.96 (t, J=7.6 Hz, 3H)。
工程4: (4Z,7S,8E,10Z,12E,14E,16R,17S,19Z)-7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,10,12,14,19-ヘキサエン酸(RvD2)
[359] 窒素下で(4Z,7S,8E,10Z,12E,14E,16R,17S,19Z)-メチル 7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,10,12,14,19-ヘキサエノエート(1.03g、2.64mmol)のTHF(54mL)中における冷却(0℃)溶液を、1M LiOH溶液(16.5mL、16.5mmol)で処理し、4℃で1日撹拌した。反応混合物をEtOAc(150mL)で希釈し、pH7の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(175mL)で酸性化した(pH7~8)。相を分離し、水溶液をEtOAc(6×75mL)で十分に抽出した。有機性溶液を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮すると、0.94g(75%)の(4Z,7S,8E,10Z,12E,14E,16R,17S、19Z)-7,16,17-トリヒドロキシドコサ-4,8,10,12,14,19-ヘキサエン酸(RvD2)が不透明な黄色の油として得られた。1H NMR (600 MHz, クロロホルム-d) δ 6.76-6.67 (m, 2H), 6.40 (dd, J=15.2, 10.8 Hz, 1H), 6.26 (dd, J=14.7, 10.8 Hz, 1H), 6.06-5.97 (m, 2H), 5.79 (m, 2H), 5.59-5.44 (m, 3H), 5.40-5.33 (m, 1H), 4.28 (q, J=5.9 Hz, 1H), 4.24 (dd, J=6.9, 3.6 Hz, 1H), 3.73 (dt, J=8.2, 4.2 Hz, 1H), 2.50-2.32 (m, 6H), 2.31-2.23 (m, 1H), 2.18 (dt, J=14.8, 5.8 Hz, 1H), 2.05 (m, J=7.1 Hz, 2H), 0.96 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
実施例9: RvD2(L,L)-リジルリジン塩の合成
[360] L,L-リジルリジン(58.9mg、0.215mmol)のメタノール(0.5mL)中における50℃の溶液を、トコフェロールの溶液(0.2mLのEtOAc中、2.8mg)及びRvD2(84.5mg、0.224mmol)のメタノール(0.5mL)中における溶液で処理した。その溶液を20分間撹拌し、少し冷却し、真空中で濃縮した。その油をHPLCグレードのアセトニトリル(約3mL)に再懸濁させ、0℃に冷却し、3時間撹拌して固体を摩砕した。ごく少量の濾過可能な固体が形成され、懸濁液を-20℃で一晩保管した。その物質を濾過し、真空オーブン(周囲温度)中で一晩乾燥させると、46mg(33%)のRvD2 L,L-リジルリジン塩が淡橙色固体として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 6.81-6.70 (m, 2H), 6.39 (dd, J=14.7, 10.9 Hz, 1H), 6.29 (dd, J=14.4, 10.9 Hz, 1H), 6.08-5.95 (m, 2H), 5.85 (dd, J=15.0, 7.1 Hz, 1H), 5.76 (dd, J=15.1, 6.3 Hz, 1H), 5.58-5.36 (m, 4H), 4.27 (dd, J=7.8, 5.3 Hz, 1H), 4.18 (q, J=6.3 Hz, 1H), 4.05-3.97 (m, 1H), 3.54 (dt, J=8.2, 4.8 Hz, 1H), 3.41 (t, J=6.6 Hz, 1H), 2.92 (t, J=7.4 Hz, 4H), 2.34 (m, 5H), 2.26-2.14 (m, 3H), 2.10-2.05 (m, 2H), 1.87 (m, 2H), 1.68 (m, 6H), 1.47 (m, 4H), 0.97 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
実施例10: ビスRvD2 Mg ジ-(L)-リジネート塩の合成
[361] マグネシウム L-リジネート(40mg、0.127mmol)のメタノール(0.5mL)中における50℃の溶液を、トコフェロールの溶液(0.2mLのEtOAc中、3.1mg)及びRvD2(104.6mg、0.278mmol)のメタノール(0.5mL)中における溶液で処理した。その混合物を20分間撹拌し、少し冷却し、真空中で濃縮した。その泡状物質をHPLCグレードのアセトニトリル(約3mL)に再懸濁させ、1.5時間撹拌して固体を摩砕し、濾過し、真空オーブン(周囲温度)中で一晩乾燥させると、107mg(79%)のビス(RvD2) マグネシウム L-リジネート塩が淡橙色固体として得られた。1H NMR (400 MHz, 酢酸-d4) δ 6.83-6.69 (m, 4H), 6.41 (dd, J=15.1, 10.8 Hz, 2H), 6.29 (dd, J=14.5, 10.8 Hz, 2H), 6.10-5.96 (m, 4H), 5.87 (dd, J=15.1, 7.3 Hz, 2H), 5.79 (dd, J=15.1, 6.6 Hz, 2H), 5.54-5.34 (m, 8H), 4.33 (q, J=6.3 Hz, 2H), 4.27 (dd, J=7.1, 3.6 Hz, 2H), 4.05 (t, J=6.1 Hz, 2H), 3.82 (m, 2H), 3.08 (t, J=7.3 Hz, 4H), 2.39-2.27 (m, 16H), 2.10-1.93 (m, 8H), 1.76 (m, 4H), 1.60 (m, 4H), 0.94 (t, J=7.5 Hz, 6H)。
実施例11: PDX(L,L)-リジルリジン塩の合成
[362] L,L-リジルリジン(55.7mg、0.203mmol)のメタノール(0.5mL)中における50℃の溶液を、トコフェロールの溶液(0.2mLのEtOAc中、1.8mg)及びPDX(80.0mg、0.222mmol)のメタノール(0.5mL)中における溶液で処理した。その溶液を20分間撹拌し、少し冷却し、真空中で濃縮した。その泡状物質をHPLCグレードのアセトニトリル(約3mL)に再懸濁させ、3時間撹拌して固体を摩砕し、濾過し、真空オーブン(周囲温度)中で一晩乾燥させると、52mg(39%)のPDX L,L-リジルリジン塩が非常に粘着性の橙色固体として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 6.70 (dd, J=14.6, 9.3 Hz, 2H), 6.01-5.89 (m, 2H), 5.71 (ddd, J=14.8, 8.0, 6.4 Hz, 2H), 5.51-5.25 (m, 6H), 4.24 (dd, J=7.7, 5.3 Hz, 1H), 4.14 (m, 2H), 3.38 (t, J=6.5 Hz, 1H), 2.89 (t, J=7.3 Hz, 4H), 2.82 (t, J=6.4 Hz, 2H), 2.40-2.21 (m, 6H), 2.21-2.13 (m, 2H), 2.04 (m, 2H), 1.91-1.78 (m, 2H), 1.66 (m, 6H), 1.45 (m, 4H), 0.94 (t, J=7.5 Hz, 3H)。
実施例12: ビスPDX Mg ジ-(L)-リジネート塩の合成
[363] マグネシウム L-リジネート(40.1mg、0.127mmol)のメタノール(0.5mL)中における50℃の溶液を、トコフェロールの溶液(0.2mLのEtOAc中、2.2mg)及びPDX(103.0mg、0.286mmol)のメタノール(0.5mL)中における溶液で処理した。その溶液を20分間撹拌し、少し冷却し、真空中で濃縮した。その油をHPLCグレードのアセトニトリル(約3mL)に再懸濁させ、1.5時間撹拌して固体を摩砕し、濾過し、真空オーブン(周囲温度)中で一晩乾燥させると、68mg(50%)のビス(PDX) マグネシウム L-リジネート塩がわずかにべたつく(tacky)橙色固体として得られた。1H NMR (400 MHz, 酢酸-d4) δ 6.74 (dd, J=15.2, 7.8 Hz, 4H), 6.04-5.92 (m, 4H), 5.76 (ddd, J=15.0, 6.4, 3.6 Hz, 4H), 5.53-5.29 (m, 12H), 4.30 (dq, J=13.0, 6.4 Hz, 4H), 4.04 (t, J=5.3 Hz, 2H), 3.07 (t, J=7.3 Hz, 4H), 2.83 (t, J=5.4 Hz, 4H), 2.53-2.24 (m, 16H), 2.10-1.92 (m, 8H), 1.75 (m, 4H), 1.59 (dt, J=15.1, 6.4 Hz, 4H), 0.93 (t, J=7.5 Hz, 6H)。
実施例13: LXA4の合成
(5S,6R,7E,9E,11Z,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,11,13-テトラエン酸)
工程1: エチル 4-((4S,5R)-5-((S,1E,3E,7E)-9-ヒドロキシテトラデカ-1,3,7-トリエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ブタノエート
[364] エチル 4-((4S,5R)-5-((1E,3E)-ヘキサ-1,3-ジエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ブタノエート(2.28g、7.80mmol)のベンゼン(10mL)中における脱気された溶液を、(S,E)-1-ヨードオクタ-1-エン-3-オール(2.64g、10.39mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(363mg、0.517mmol)、及びヨウ化銅(I)(181mg、0.950mmol)のベンゼン(34mL)中における脱気された溶液にアルゴン下で添加した。ピペリジン(3.8mL、38.5mmol)を添加し、混合物を脱気し、アルゴンでパージし、室温にてアルゴン雰囲気下で撹拌した。2時間後、TLC(20%EtOAc/ヘキサン、過マンガン酸塩染色)は限定試薬の消費を示した。反応混合物をEtOAc(125mL)で希釈し、飽和水性塩化アンモニウム(2×40mL)及びブライン(40mL)で洗浄した。有機性溶液を乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した。粗製の油を50%EtOAc/ヘキサンに溶解させ、フラッシュクロマトグラフィー(700mLシリカゲル、40~50%EtOAc/ヘキサン)により精製すると、2.84g(86%)のエチル 4-((4S,5R)-5-((S,1E,3E,7E)-9-ヒドロキシテトラデカ-1,3,7-トリエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ブタノエートが淡い琥珀色の油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.58 (dd, J=15.5, 10.9 Hz, 1H), 6.29 (dd, J=15.2, 10.9 Hz, 1H), 6.14 (dd, J=15.9, 6.2 Hz, 1H), 5.84 (dt, J=15.9, 1.8 Hz, 1H), 5.78-5.65 (m, 2H), 4.55 (t, J=7.0 Hz, 1H), 4.22-4.06 (m, 4H), 2.32 (td, J=7.4, 2.4 Hz, 2H), 1.79 (ddtd, J=12.6, 10.1, 7.4, 5.4 Hz, 1H), 1.72-1.48 (m, 5H), 1.48 (s, 3H), 1.47-1.36 (m, 2H), 1.35 (s, 3H), 1.30 (q, J=3.7, 2.8 Hz, 4H), 1.25 (t, J=7.1 Hz, 3H), 0.94-0.79 (m, 3H)。
工程2: エチル (5S,6R,7E,9E,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,13-トリエン-11-イノエート
[365] エチル 4-((4S,5R)-5-((S,1E,3E,7E)-9-ヒドロキシテトラデカ-1,3,7-トリエン-5-イン-1-イル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)ブタノエート(2.84g、6.79mmol)のEtOH(110mL)中における溶液を、1M HCl(34mL、34mmol)で処理し、室温で撹拌した。16時間後、TLC(EtOAc、過マンガン酸塩染色)は完了を示した。飽和水性重炭酸ナトリウム(50mL)で反応を停止させ、EtOAcで抽出した(3×40mL)。有機性溶液を合わせて水(100mL)、ブライン(150mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した。琥珀色の油をフラッシュクロマトグラフィー(400mLシリカゲル、50%、次いで80%EtOAc/ヘキサン)により精製すると、1.57g(61%)のエチル (5S,6R,7E,9E,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,13-トリエン-11-イノエートが黄色の油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.58 (dd, J=15.4, 10.9 Hz, 1H), 6.35 (dd, J=15.3, 10.9 Hz, 1H), 6.15 (dd, J=15.8, 6.1 Hz, 1H), 5.83 (dd, J=15.3, 6.9 Hz, 2H), 5.75 (dd, J=15.4, 2.2 Hz, 1H), 4.14 (dtd, J=17.6, 6.9, 3.3 Hz, 4H), 3.70 (dq, J=8.3, 3.7 Hz, 1H), 2.34 (td, J=7.3, 2.2 Hz, 2H), 1.83 (ddq, J=13.2, 9.2, 7.0, 6.5 Hz, 1H), 1.75-1.61 (m, 1H), 1.59-1.28 (m, 10H), 1.25 (td, J=7.1, 2.3 Hz, 3H), 0.89 (t, J=6.7 Hz, 3H)。
工程3: エチル (5S,6R,7E,9E,11Z,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,11,13-テトラエノエート
[366] 亜鉛粉末(104.6g、1.6mol)及び水(1.2L)をフラスコに入れ、窒素流を溶液に15分間通過させることにより脱気した。酢酸銅(II)1水和物(10.4g、52mmol)を添加し、脱気を15分間継続した。硝酸銀(10.3g、61mmol)を添加し、混合物を継続する窒素脱気下で30分間撹拌した。混合物を濾過し(#2濾紙、ブフナー漏斗)、残っている固体を水(2×100mL)、メタノール(2×100mL)、アセトン(2×100mL)、及びジエチルエーテル(2×100mL)で洗浄した。亜鉛を、1:1 メタノール/水(840mL)を含有するフラスコに迅速に移し、エチル (5S,6R,7E,9E,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,13-トリエン-11-イノエート(1.57g、4.15mmol)のメタノール(400mL)中における溶液及びトリメチルシリルクロリド(7mL、55mmol)で処理した。その懸濁液を、室温にて窒素下で一晩撹拌した。反応をGC-MSによりモニターしたところ、23時間後に99%より多い変換を示した。混合物を濾過し(ブフナー漏斗中の2枚の185mm #2濾紙の間に100mLセライト)、フィルターケーキを生成物がケーキ上に残らなくなるまでメタノールですすいだ。濾液を、初期体積の約99%が除去されるまで真空中で濃縮した(水浴温度<35℃)。残っている溶液をEtOAc(50mL)及びブライン(30mL)で希釈し、少量の塩化ナトリウムを添加した。有機相を収集し、水相をEtOAc(2×20mL)で抽出した。有機性溶液を合わせて乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮した(水浴温度<30℃)。粗製の黄色い蝋状物質を1:1 DCM/ヘキサン中で溶解させ、フラッシュクロマトグラフィー(300mLシリカゲル、50%EtOAc/ヘキサン、次いで1度生成物が溶離し始めたら75%)により精製すると、1.26g(80%)のエチル (5S,6R,7E,9E,11Z,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,11,13-テトラエノエートが粘着性の半透明の黄色い蝋状物質として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.76-6.63 (m, 1H), 6.44-6.19 (m, 4H), 6.10-5.96 (m, 1H), 5.77 (ddd, J=15.6, 9.1, 6.9 Hz, 2H), 4.24-4.17 (m, 1H), 4.12 (qd, J=7.2, 2.7 Hz, 3H), 3.70 (s, 1H), 2.40-2.31 (m, 2H), 1.89-1.77 (m, 2H), 1.75-1.64 (m, 2H), 1.53-1.19 (m, 14H), 0.94-0.82 (m, 3H)。
工程4: (5S,6R,7E,9E,11Z,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,11,13-テトラエン酸(LxA4)
[367] エチル (5S,6R,7E,9E,11Z,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,11,13-テトラエノエート(1.26g、3.31mmol)のTHF(70mL)中における冷却(4℃)溶液を、1M LiOH溶液(20mL、20mmol)で処理した。4℃で15時間撹拌した後、TLC(EtOAc、過マンガン酸塩染色)は完了を示した。反応混合物をEtOAc(250mL)で希釈し、pH7の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(約30mL)でpH7~8に酸性化した。相を分離し、水相を、生成物がもはや水相中になくなるまでEtOAcで洗浄した。有機性溶液を合わせて水(30mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、トコフェロール(5mg)を添加し、真空中で濃縮すると、0.77g(66%)の(5S,6R,7E,9E,11Z,13E,15S)-5,6,15-トリヒドロキシイコサ-7,9,11,13-テトラエン酸が不透明な淡黄色粉末として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 6.82-6.64 (m, 2H), 6.38 (dd, J=14.7, 10.6 Hz, 1H), 6.27 (dd, J=14.5, 10.8 Hz, 1H), 6.07-5.93 (m, 2H), 5.83 (dd, J=15.0, 6.9 Hz, 1H), 5.71 (dd, J=15.0, 6.6 Hz, 1H), 4.12 (q, J=5.9 Hz, 1H), 3.98 (ddd, J=6.6, 5.1, 1.1 Hz, 1H), 3.50 (ddd, J=9.3, 5.0, 3.0 Hz, 1H), 2.31 (t, J=7.3 Hz, 2H), 1.90-1.76 (m, 1H), 1.70-1.26 (m, 11H), 0.97-0.84 (m, 3H)。
実施例14: ビス LXA4 Mg ジ-(L)-リジネート塩の合成
[368] LxA4(84.4.3mg、0.240mmol)のメタノール(1.6mL)中における溶液及びトコフェロール(3.3mgを0.2mLの酢酸エチルに予め溶解させたもの)を、マグネシウム L-リジネート(37.7mg、0.120mmol)で処理し、混合物を50℃で20分間撹拌した。溶液を少し冷却し、真空中で濃縮し、次いで室温で真空オーブン中に一晩置くと、122mg(100%)のビス(LxA4) マグネシウム L-リジネート塩が非常に淡い橙色の固体として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 6.80-6.64 (m, 4H), 6.37 (ddd, J=15.1, 10.8, 1.1 Hz, 2H), 6.27 (dd, J=14.5, 10.8 Hz, 2H), 6.06-5.92 (m, 4H), 5.83 (dd, J=15.0, 6.9 Hz, 2H), 5.70 (dd, J=15.0, 6.7 Hz, 2H), 4.12 (q, J=5.9 Hz, 2H), 3.99 (ddd, J=6.5, 5.0, 1.1 Hz, 2H), 3.57-3.47 (m, 4H), 2.91 (dd, J=8.2, 6.8 Hz, 4H), 2.19 (ddd, J=9.0, 7.0, 2.3 Hz, 4H), 1.91-1.41 (m, 24H), 1.37-1.26 (m, 12H), 0.94-0.86 (m, 6H)。
実施例15: 式I及びIVの化合物は、分解に対する増大した安定性を示す
[369] 式I及びIVに基づく選択されたSPM及びそれらのイオン性誘導体の安定性を評価した。親SPM及びその固体イオン性誘導体を開いた試験管中に置き、68F~72Fの室温及び20~40%の相対湿度で6又は8週間維持した。安定性の定性的実証は、標準的な高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法を用いて決定した。簡潔には、HPLC分析は、ELS検出器を備えたGilson HPLCシステムに取り付けられたPFPカラム(Poroshell 120、PFP、4.6×150mm、2.7m、Agilent)で実施した。移動相は、共に0.1%トリフルオロ酢酸を含有する溶液A(水)及び溶液B(アセトニトリル)の間の勾配で構成された。勾配プログラムは、溶液Bに関して30~80%であった。流速は0.5mL/分であった。最初の時点でのベースラインのHPLC追跡と比較した新しいHPLCピークの出現は、分解産物及び安定性の欠如を示している。その後の時点におけるそのような新しいHPLCピークの非存在は、安定性を示している。
[370] 最初の時点では、RvE1は、保持時間(室温)7分における単一の主なピークとして溶離し、わずかな分解産物が、15及び17.5分において溶離する(図1A)。上記の試験条件への8週間の曝露後、RvE1は、室温15~25分における分解産物に対応する多数のピークの出現(図1B)により示されるように、大規模に分解していた。
[371] 対照的に、同じ条件下で、RvE1 マグネシウム(Mg) ジ-リジネートは、分解産物を一切示さなかった。最初の時点では、RvE1 Mg ジ-リジネートは、そのRvE1 Mg ジ-リジネート塩から(室温7分における)RvE1及び(室温3分における)リジンへの解離を表す2個のピークとして溶離する(図2A及び2Bを比較)。
[372] 同様に、RvE1のカルシウム(Ca) ジ-リジネート塩形態は、Mg ジ-リジネート塩形態に関して観察されたものと同じ安定性の高いプロファイルを示した(図3A及び3Bを比較)。この実施例では、Mg ジ-リジネート塩に関して観察されたように、最初の時点及び試験条件への6週間の曝露後の両方において、化合物は、2個のピーク:RvE1(室温7分)及びリジン(室温3分)として溶離し、これは、RvE1 Ca ジ-リジネート塩の解離を反映している。分解産物に対応するさらなるピークは観察されなかった。
[373] 式Iの代表的な化合物であるRvE1のリジルリジン(lys lys)塩形態は、同じ安定性の高さを示した。式IVの化合物と同様に、最初の時点では、RvE1 lys lysは、2個のピーク:RvE1(室温7分)及びリジン(室温3分)として溶離する(図4A)。上記の試験条件下で8週間後、これら同じ2個のピークが分解産物を伴わずに存在している(図4B)。
[374] 要約すると、これらの結果は、RvE1の遊離酸形態は試験条件への8週間の曝露の間に有意な分解を経たが(図1Aを1Bに対して比較)、RvE1をSPM構成要素として有する式I及びIVの代表的な化合物は同じ条件下で同じ又は同様の期間でSPMの分解を示さなかったことを示している。これらの結果は、式I及びIVの化合物が、そうしなければここで用いた条件下で不安定であるSPMの遊離酸形態の安定性を有意に向上させることができることを示している。
実施例16: RvE1-Mg-ジ-リジネートは、大腸炎の前臨床マウスモデルにおいて有効性を示す
[375] 炎症性腸疾患(IBD)、例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病は、特発性の、慢性的に再発及び寛解する非特異的炎症性疾患であり、主に小腸、結腸、及び直腸を冒す。IBDの急性エピソードは衰弱性であり、下痢、直腸出血、及び腹痛を特徴とし得る。
[376] 式IVの代表的な化合物であるRvE1-Mg-ジ-リジネートを、大腸炎のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)マウスモデルにおいて有効性について試験した。このモデル系では、DSS曝露は、腸のバリア機能を破壊し、局所炎症を刺激し、IBDの臨床的及び組織病理学的特徴を模倣する大腸炎の表現型を誘導する。例えば、Laroui H et al. Dextran sodium sulfate (DSS) induces colitis in mice by forming nano-lipocomplexes with medium-chain-length fatty acids in the colon. PLoS ONE. 2012; 7(3): e32084を参照。
[377] 本研究では、8週齢の雄のC57Bl/6Jマウスを、体重により無作為に3つの実験群に分け、飲料水中の2%DSS(w/v)を7日間投与した。試験0日目に開始し、RvE1-Mg-ジ-リジネート(RvE1-Mg-Lys)、等モル用量のRvE1、又はビヒクルのいずれかを1日1回の経口経管栄養により動物に投与した。疾患活動性を、確立された疾患活動性指標(DAI)を用いて毎日評価した。例えば、Morin C, Blier PU, Fortin S. MAG-EPA reduces severity of DSS-induced colitis in rats. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2016; 310(10): G808-21を参照。全ての動物を7日間のDSS曝露後に屠殺し、結腸及び脾臓を採取した。結腸の長さ及び標準化された脾臓重量(mg/g体重)を含めた疾患活動性の肉眼的形態マーカー(Gross morphological marker)を評価した。
[378] 表6に示すように、RvE1-Mg-Lys処置は、試験7日目においてビヒクル対照と比較したDAIの統計的に有意な低減に関連しており、これは、大腸炎の臨床徴候の低減を示している。加えて、RvE1-Mg-Lysは、結腸の長さの統計的に有意な増大及び標準化された脾臓重量の低減傾向に関連しており、これは、腸及び全身の炎症の低減を示唆している。
[379] これらのデータは、RvE1-Mg-Lysが経口的に活性であり、十分に確立されたIBD動物モデルにおいて療法的有効性を有することを実証している。興味深いことに、RvE1-Mg-Lysに関連したDAI、結腸の長さ、及び標準化された脾臓重量における改善は、等モル用量のRvE1自体に関連した改善より大きかった。これらの差は統計的有意性を達成しなかったが、RvE1-Mg-LysはRvE1自体と比較して生物学的活性が増大し得ることを示唆している。
実施例17: RvE1-Mg-ジ-リジネートは、亜慢性大腸炎の前臨床マウスモデルにおいて有効性を示す
[380] 実施例16に記載のモデル系はヒトIBDの急性モデルを表しており、15μg/日の用量で1日1回のRvE1-Mg-ジ-リジネート処置を予防的方式で用いて、DSSの投与によって誘導される腸及び全身の炎症の発症を軽減させた。これは、活動性疾患の再発を予防するための維持療法を必要とする患者に関連している。
[381] 実施例17に記載の研究では、亜慢性モデルを用いて、10日間の回復期間によって隔てられた2サイクルのDSSにより8週齢のC57Bl6/Jマウスに大腸炎を誘導した。DSSで誘導した大腸炎が確立した後20日目に、1日1回のRvE1-Mg-ジ-リジネート処置(15μg/日)を開始し、経口経管栄養により7日間継続し、27日目の終了時にマウスを屠殺した。この亜慢性の2サイクルDSSプロトコルは、単回サイクルのDSSよりもよいヒトIBDのモデルである免疫学的プロファイルを有する炎症を誘導するために用いた。Oh SY et al. Comparison of experimental mouse models of inflammatory bowel disease. Int J Mol Med. 2014; 33(2): 333-40。この実験系は、療法目的が寛解の誘導である活動性疾患を有する患者を処置するための代表的なモデルも提供する。これは、ほとんどの患者が再発性疾患フレアを有するため、ヒトIBDにおいて重要である。加えて、この研究は、RvE1-Mg-ジ-リジネートを、潰瘍性大腸炎及びクローン病の特定の表現型の緩解を誘導及び維持するための標準治療の1次治療として用いられる5-アミノサリチル酸(5-ASA)と比較した。
[382] 疾患活動性は、実施例16で用いたものと同じ疾患活動性指標(DAI)を用いて毎日評価した。屠殺後大腸を切除し、氷冷PBSを流して洗浄し、それらの長さを測定した。続いて、各動物からのH&E染色された結腸組織切片を、病理組織学的疾患活動性の確立された採点システムを用いて採点も行った。Dieleman LA, Palmen MJ, Akol H, et al. Chronic experimental colitis induced by dextran sulphate sodium (DSS) is characterized by Th1 and Th2 cytokines. Clin Exp Immunol. 1998; 114(3): 385-91参照。
[383] 表7に示すように、RvE1-Mg-ジ-リジネート処置は、試験27日目におけるビヒクル対照と比較したDAIの統計的に有意な低減と関連しており、これは、大腸炎の臨床徴候の低減を示している。
[384] 特筆すべきことに、21日目及び23日目において、RvE1-Mg-ジ-リジネートは、疾患対照と比較したDAIの有意な低減と関連していた(21日目、24%の低減、P<0.01;23日目、18%の低減、P<0.05)。これは、疾患対照マウスがDAIのピークに達した時間枠であるため、この観察は、炎症の発症を抑えるRvE1-Mg-ジ-リジネートの能力を示唆している。さらに、これらの時点はRvE1-Mg-ジ-リジネート処置の開始後わずか1~2日に相当するため、この観察は、RvE1-Mg-ジ-リジネートが、活動性疾患の処置に関係する作用を急速に発現させる可能性を有することを示唆している。
[385] 加えて、RvE1-Mg-ジ-リジネートは、屠殺の時点で測定された、結腸の長さの疾患対照に対する統計的に有意な増大(P<0.05)、標準化された脾臓重量の統計的に有意な低減(P<0.05)、及び組織病理学的疾患活動性の疾患対照に対する有意ではない低減と関連していた。合わせて、これらの観察は、RvE1-Mg-ジ-リジネート処置が、進行中の炎症の状況において組織の修復及び治癒を促進させることができることを示唆している。
[386] 重要なことに、RvE1-Mg-ジ-リジネートに関連したDAI、結腸の長さ、及び組織病理学的疾患活動性の改善は、5-ASAに関連した改善よりも大きかった。これらの差は統計的有意性を達成しなかったが、それらは、RvE1-Mg-ジ-リジネートが、ヒトIBDの処置に広く使用されている臨床的に確証された療法剤に匹敵する作用を有することを示唆している。合わせて、これらのデータは、IBDを処置するために経口投与されるRvE1-Mg-ジ-リジネートの療法的有効性を支持するさらなる証拠を提供している。
実施例18: RvE1-Mg-ジ-リジネート及び5-ASAの併用投与
[387] この研究では、我々は、上記の2サイクルDSS大腸炎モデルを再度使用したが、RvE1-Mg-ジ-リジネート(1.5μg/日)及び5-ASA(625μg/日)の1日1回の併用療法で使用した。この併用療法モデルは、RvE1-Mg-ジ-リジネート処置の候補者である多くの患者が、5-ASA単剤療法で十分に制御されていない場合でさえも、おそらく一般的な臨床診療である5-ASAを摂取し続けると考えられるため、用いられた。
[388] 表8に示すように、RvE1-Mg-ジ-リジネート(1.5μg/日)の作用は5-ASAに匹敵するものであり、2つの薬物は、投与された用量において最終的なDAIスコアが同様に低減していることと関連している。併用療法は、どちらかの薬物単独よりも大きい作用と関連しており、21日目(44%、P<0.01)、22日目(47%、P<0.01)、23日目(47%、P<0.01)、及び27日目(47%、P<0.05、表8)において1日のDAI(single-day DAI)が有意に低減した。併用療法は、単独で投与されたいずれかの薬剤よりも大きい結腸の長さ又は脾臓重量の変化とも関連していたが、これらの変化は統計的有意性を達成しなかった。最後に、併用療法は、いずれかの薬物単独よりも大きい組織病理学的疾患活動性の有意な低減(P<0.05)と関連していた。これらの発見は、RvE1-Mg-ジ-リジネートが5-ASAの療法的有効性を高めることができ、患者の転帰の改善につながる可能性があることを示唆している。
[389] RvE1は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を含めた腹腔内(IP)注射によって投与された場合の複数の大腸炎の動物モデル、及びUCのT細胞養子移植マウスモデルにおいて療法的作用を有することが示されているが、我々の知る限りでは、上記で論じられた研究は、RvE1ベースの療法が大腸炎モデルにおいて経口投与された場合に療法的作用を有することが示された最初の研究である。Ishida T et al. Resolvin E1, an endogenous lipid mediator derived from eicosapentaenoic acid, prevents dextran sulfate sodium-induced colitis. Inflamm Bowel Dis. 2010: 16(1): 87-95; Arita M et al. Resolvin E1, an endogenous lipid mediator derived from omega-3 eicosapentaenoic acid, protects against 2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid-induced colitis. Proc Natl Acad Sci USA. 2005: 102(21): 7671-6; Campbell EL et al. Resolvin E1-induced intestinal alkaline phosphatase promotes resolution of inflammation through LPS detoxification. Proc Natl Acad Sci USA. 2010: 107(32): 14298-303; Savinainen A et al. Resolvin E1 (RX-10001) inhibits inflammation in acute and chronic murine models of colitis. Inflam Res Assoc Annual Meeting. 2008参照。
実施例19: 単回経口薬物動態試験
[390] RvE1-Mg-ジ-リジネートの経口薬物動態(PK)を確立するために、8週齢の雄性C57BL6/JマウスにRvE1-Mg-ジ-リジネート(10mg/kg)を単回経口投与後、投与後8時間までの様々な時点での血漿、小腸組織、及び結腸組織におけるRvE1曝露を調べるための試験を行った。HPLC-MS/MSにより全組織試料においてRvE1レベルを定量した。全組織区画の薬物動態曲線を表9に示し、薬物動態測定基準の概要を表10に示す。
[391] 合わせて、RvE1-Mg-ジ-リジネートを単回経口投与後の血漿、小腸、及び結腸におけるRvE1曝露のパターンは、以前に報告された腹腔内投与されたRvE1のデータに基づけば予想外であるRvE1-Mg-ジ-リジネートの薬物動態プロファイルのいくつかの特徴を明らかにした。第1に、経口投与後の小腸(2時間)及び結腸(4時間)におけるRvE1のCmaxのタイミングは、マウスにおける正常な胃腸管通過時間と相関している。これらのデータは、RvE1-Mg-ジ-リジネートにより送達されたRvE1のかなりの割合は全身循環に吸収されず、代わりに胃腸管に残り、胃腸管を通過することを示している。小腸及び結腸の組織試料は、腸内容物を除去するために徹底的に洗浄されたため、これらの試料において検出されたRvE1は、おそらく組織内に存在しており、これは、腸及び結腸の内腔からこれらの組織への局所的吸収を示している。第2に、血漿RvE1レベルの非常に小さい増大が小腸及び結腸のCmaxに対応する時点で観察され、これは、これらの組織に吸収されたRvE1が全身循環に有意な量で輸送されていないことを示している。小腸及び結腸でのRvE1の小さな増大が血漿Cmaxの時点(15分)にて観察されたが、これらの濃度は、腸及び結腸のCmaxよりもはるかに低く、結腸組織において検出された総RvE1の2%未満に寄与していた。
[392] 合わせて、これらのデータは、RvE1-Mg-ジ-リジネートの経口投与が、腸及び結腸の内腔からの直接吸収によりRvE1のかなりの部分を小腸及び結腸の組織へ送達させることを示している。経口投与されたRvE1の残りの割合は全身循環に吸収され、そこでは、初回通過肝代謝の影響を受けやすく、他の組織に的外れの作用を引き起こす可能性もある。我々のデータは、RvE1-Mg-ジ-リジネートを下部胃腸管で放出するように適合させた標的化経口剤形が非常に効率的な送達ビヒクルであることを示している。例えば、そのような標的化剤形は、標的組織におけるRvE1の局所濃度、及び濃度が標的組織において療法的閾値以上にある時間の長さの両方を増大させることにより、療法的有効性に寄与するであろう。重要なことに、我々のPK研究において観察された結腸組織のCmaxは、内因性RvE1が抗炎症作用及び炎症収束作用を有することが報告されているピコモル濃度~低ナノモル濃度の範囲(Serhan C.N. Discovery of specialized pro-resolving mediators marks the dawn of resolution physiology and pharmacology. Mol Aspects Med. 2017; 58: 1-11参照)よりも有意に高く、これは、内腔から吸収されたRvE1が薬理作用を発揮するのに十分な濃度で存在することを示唆している。
実施例20: DSS大腸炎モデルにおける結腸内送達
[393] RvE1-Mg-ジ-リジネートの形態で経口投与されたRvE1の管腔内吸収の疾患活動性に対する生物学的作用をさらに試験するために、我々は、直接的な結腸内投与(浣腸に類似)を経口投与と比較した。我々は、RvE1-Mg-ジ-リジネートの経口投与がRvE1への全身曝露及び局所的な結腸曝露をもたらすことは以前に立証していたが、結腸内投与は主に局所的な曝露をもたらす。
[394] 我々は、上記の2サイクルDSS大腸炎モデルを再度使用し、20日目に処置を開始して7日間継続し、27日目の終了時にマウスを屠殺した。結腸内薬物送達を容易にするため、2~4%イソフルランガスへの曝露によりマウスを麻酔した。RvE1-Mg-ジ-リジネート又はビヒクルの結腸内投与を実施し、全ての動物を用量の投与後5分間逆さにした。RvE1-Mg-ジ-リジネートの結腸内投与は、DAI(P<0.01)、結腸の長さ(P<0.05)、脾臓重量(P<0.05)、及び組織病理学的疾患活動性(P<0.05)における有意な低減と関連していた。特筆すべきことに、結腸内RvE1-Mg-ジ-リジネートのこれらエンドポイントに対する作用は、同じ2サイクルのDSS大腸炎モデルにおいて経口投与された同等の用量のRvE1-Mg-ジ-リジネートに匹敵するものであった(下記表11を参照)。
[395] 血液及び結腸組織試料の薬物動態分析を結腸内有効性試験の過程で収集して、RvE1-Mg-ジ-リジネートの結腸内投与が、主な局所的RvE1曝露及び循環への最小限の取り込みと関連していることを確証した。血液及び結腸の両方において、RvE1のTmaxは、投与の15分後に生じた。結腸のCmaxは2.8ng/mg組織であり、これは、先に記載した単回経口用量PK試験で観察された結腸レベルに匹敵し、一方で血液のCmaxは0.48ng/mlであり、結腸内投与後の結腸RvE1レベルが血中よりも6倍高いことを示している。
[396] 要約すると、本願明細書に示したデータは、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含めた炎症性腸疾患(IBD)の処置における経口投与されるRvE1-Mg-ジ-リジネートの単独療法として及び5-アミノサリチル酸(5-ASA)との併用療法としての使用を支持するものである。上記モデル系における結果に基づいたクローン病及び潰瘍性大腸炎の処置は、いずれも、これらの系においてモデル化された病態である胃腸管の炎症、特に下部胃腸管の慢性炎症を特徴とするため、妥当である。クローン病は、口腔及び肛門を含めた胃腸管のいずれかの部分を冒す可能性があるが、最も多くの場合、結腸の直前の小腸の部分を冒し、一方で潰瘍性大腸炎は結腸及び直腸を冒す。我々の結果は、経口投与されたRvE1-Mg-ジ-リジネートにより送達されるRvE1のある割合が、クローン病及び潰瘍性大腸炎の処置のために腸及び結腸の内腔からこれらの標的組織に直接吸収されることを実証している。上記で論じられたように、例えば、標的組織におけるRvE1の局所的濃度、及びその濃度がそれらの組織において療法的閾値以上である時間の長さの両方が非標的化療法と比較して向上していると考えられるため、この特徴は、高い療法的有効性を有することが予想され得る標的化経口剤形の基礎を提供する。また、この標的化送達と局所的吸収との組合せは、非標的組織への喪失を回避し、全身吸収及び的外れの効果を最小限にする。加えて、実施例18は、RvE1-Mg-ジ-リジネートが、潰瘍性大腸炎及び特定のタイプのクローン病において寛解を誘導及び維持するための1次療法である5-アミノサリチル酸(5-ASA)との併用療法として有利に投与され得ることを実証している。
[397] RvE1の抗炎症及び収束促進特性は、十分に制御された実験系において徹底的に確立されてきた。しかしながら、この活性を医学療法の成功へと変換するには、適正な組織がRvE1に十分に高いレベルで十分な時間曝露されてRvE1がその療法的作用を発揮することが必要である。本開示は、経口送達されるRvE1-Mg-ジ-リジネートを用いてこれらの目的を達成するための最初の基礎を提供する。
均等物
[398] 当業者は、単なる日常的な実験法を用いて本願明細書に記載の本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識し又は確かめることができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
[399] 本願明細書で引用された全ての参考文献は、それぞれ個々の刊行物又は特許又は特許出願が具体的かつ個々にその全体が全ての目的に関して援用されることが示された場合と同程度まで、その全体が全ての目的に関して本願明細書に援用される。
[400] 本発明は、本願明細書に記載の特定の態様により範囲を限定されるべきではない。実際、本願明細書に記載の発明に加えて、本発明の様々な修正が、当業者には上記記載及び添付の図面から明らかになるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲に入ることが意図されている。