JP7367933B2 - 光カチオン硬化性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は光カチオン硬化性組成物に関する。詳しくは、高温下においても長期間ゲル化せず、且つ光照射時には迅速に硬化する、光カチオン硬化性組成物を提供するものである。
近年、電気・電子部品の接着、または塗料等に光硬化型の樹脂組成物が多用されている。光硬化型の樹脂組成物は、加熱硬化型の接着剤に比べて迅速に硬化し、加熱しないため被着体に熱ダメージを与えることもなく、また、光を照射しなければ固まらないので、硬化までの作業時間の設定が任意であり、さらに、硬化時に溶媒等の揮発も無いなど、多くの利点を有する。
光硬化型の樹脂組成物には大別してラジカル重合型のものと、カチオン重合型のものがあるが、硬化性のよい(メタ)アクリル系の重合性化合物を用いたラジカル重合型のものが主に開発、使用されてきた。
光硬化性の樹脂組成物は歯科用途にも利用されている。その例として齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復に用いるコンポジットレジンと呼ばれる光硬化性の充填修復材料や、義歯床の裏装材、歯冠修復用のハイブリッドセラミックス等が挙げられ、その操作の簡便さから汎用されている。このような光硬化性の歯科用材料は通常、重合性単量体、重合開始剤からなり、更にコンポジットレジンやハイブリッドセラミックスにはフィラーが含まれる。重合性単量体としては、その光重合性の良さから(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体が用いられている。
しかしながら、(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体は、重合収縮が大きいという問題を有している。即ち、修復を要する歯牙の窩洞に対して、コンポジットレジン等の充填修復材料を充填後、重合硬化させる際には、充填された充填修復材の表面に光が照射されるが、重合にともなう収縮により、歯の界面から離脱しようとする応力が作用し、このため、歯と充填修復材の間に間隙を生じやすくなる傾向がある。そのため、できるだけ重合収縮が小さく、硬化時に間隙を生じ難い硬化性組成物が求められていた。
重合収縮の小さい重合性単量体としては、エポキシドやビニルエーテル等のカチオン重合性単量体がある。しかしながら一般に歯科用として用いられている、α-ジケトン化合物やアシルフォスフィンオキサイド系化合物等の光ラジカル重合開始剤はカチオン重合性単量体を重合させることができないため、光カチオン重合性開始剤が必要となる。
このような光カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、ピリジニウム塩類等の、光酸発生剤を用いた光酸発生剤系光重合開始剤が挙げられる。特に、ヨードニウム塩系光重合開始剤は、高いカチオン重合開始活性を持っているため、口腔内で迅速に硬化させなければならない歯科用途で有用である。実際に、ヨードニウム塩系の光重合開始剤をカチオン重合性単量体と組み合わせて歯科用途に応用した報告がある(特許文献1、2)。
カチオン重合は水素イオン等のカチオンによって重合が進行するため、カチオンを捕捉する成分によって反応が減速する。したがって、迅速に光硬化を行う必要がある場合は、カチオン捕捉能の低い光酸発生剤を用いることが好ましいとされている。オニウム塩型の酸発生剤の場合、カチオンと結合しやすい部位は対アニオンであるから、カチオン捕捉能の低い対アニオンとしてカチオンへの配位能の低い非配位性アニオンが求められてきた。例えば、パークロレートやトリフルオロメタンスルホナート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレートなどのアニオンが挙げられる(非特許文献1、2)。上記のアニオンを対アニオンとする光酸発生剤を用いると、発生する水素イオンが捕捉されにくいため、カチオン重合性単量体を迅速に硬化させることが可能となる。
しかし、そのような光カチオン硬化性組成物は、保存中に比較的早期にゲル化してしまうという問題がある。そこで、光カチオン硬化性組成物のゲル化を抑制するための添加剤が種々検討されており、例えばフェノール系酸化防止剤の添加が提案されている(特許文献3)。
フェノール類によるゲル化の抑制効果は、ヨードニウム塩などの光酸発生剤の分解過程を抑制したためと考えられる。しかし、光酸発生剤は分解して水素イオンを発生するが、フェノール類は一旦発生した水素イオンを捕捉する機能を有しない。したがって、酸発生剤の分解を完全に抑制できない場合、ゲル化を十分に抑制することはできない。そこで、フェノール系酸化防止剤に加え、水素イオン捕捉剤として、ヒンダードアミン類または光酸発生能を有しない有機酸の塩類を更に添加する方法が提案されている(特許文献4、5)。これらの添加剤は保存中に発生した水素イオンを捕捉するため、比較的高温での長期保存が達成されている。
ただし、水素イオン捕捉剤は目的とするカチオン重合を阻害するため、光照射時の硬化速度が低下する可能性がある。上記の特許文献では、水素イオン捕捉剤を添加した場合の光硬化の可否については記載があるものの、硬化の速度については検討がなされていない。
特開平10-508067号公報 特表2005-523348号公報 特開2002-69269号公報 特開2006-249040号公報 特開2007-131841号公報
"Noncoordinating Anions-Fact or Fiction? A Survey of Likely Candidates" Krossing, I.; Raabe, I. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 2066-2090. "Taming the Cationic Beast: Novel Developments in the Synthesis andApplication of Weakly Coordinating Anions"Riddlestone, Ian M.; Kraft, A.; Schaefer, J.; Krossing, I. Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 13982-14024.
本発明の目的は、高温下、或いは常温で長期間保存してもゲル化せず、且つ光照射時には迅速に硬化する光カチオン硬化性組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、カチオン重合性単量体に対して、発生する酸の解離定数の異なる光酸発生剤を併用することで、高温下長期保存することができ、且つ、光照射した場合には、迅速に硬化する知見を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(a)カチオン重合性単量体
(b)水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤、及び
(c)水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤
を含んでなる光カチオン硬化性組成物(以下、「本発明の光カチオン硬化性組成物」ともいう。)からなることを特徴とする歯科用硬化性組成物ことを特徴とする光カチオン硬化性組成物である。

ブレンステッドの定義によると、酸は水素イオンを放出する物質のことであり、水素イオンが解離した残りの部分は共役塩基と呼ばれる。水素イオンと共役塩基の結合が弱く、水素イオンが解離しやすい酸ほど強い酸と言える。水中での解離定数は酸の強度を表す指標であり、値が小さいほど酸の強度が高いと言える。本明細書においては、水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤を「強い光酸発生剤」、水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤を「弱い光酸発生剤」と表記する。
例えば、光酸発生剤が、ニトレートイオンを対アニオンとするヨードニウム塩の場合、光照射による分解によって水素イオンが生成するが、水素イオンはカチオンであるため、対アニオンであるニトレートイオンによって速やかに捕捉され、硝酸が発生する。この発生した硝酸の解離定数は-1.3であるため、ニトレートイオンを対アニオンとするヨードニウム塩は弱い酸発生剤と言える。またこの場合、水素イオンを捕捉するニトレートイオンは、光酸発生剤中の水素イオン捕捉部位である。このように、光酸発生剤から生じる水素イオンは、光酸発生剤中の水素イオン捕捉部位によって捕捉されるため、その水素捕捉能が強いほど、発生する酸は強度の弱い酸となる。水素捕捉能の強さについては、共役酸の水中での酸解離定数が指標となる。代表的な酸の水中での酸解離定数については公知のデータベースなどで確認することができ、ウィリアムズによるデータ集(pKa Data Compiled by R.Williams、インターネット(URL:https://www.chem.wisc.edu/areas/reich/pkatable/pKa_compilation-1-Williams.pdf))からいくつかを例示すると以下の通りである。
過塩素酸:-10.00
ジメチルエーテルの共役酸:-3.8
硫酸:-3.0
メタンスルホン酸:-2.6
硝酸:-1.3
クロロ酢酸:2.86
酢酸:4.76
安息香酸:4.20
フェノール:9.95。
上記の酸の共役塩基を対アニオンとするヨードニウム塩を光酸発生剤として用いた場合、その対アニオンが水素イオンを捕捉して共役酸が生成するため、発生する酸の水中での解離定数の値は上記の値になる。
光カチオン硬化性組成物の場合には、その主成分がカチオン重合性単量体であるため、カチオン重合性単量体の水素イオン捕捉能を考慮する必要がある。カチオン重合性単量体は一般的にエーテル部位を有しているため、エーテル部位に由来する水素イオン捕捉能を有する。前記の通り、単純なエーテルであるジメチルエーテルの共役酸の水中での解離定数は-3.8であり、カチオン重合性単量体も同程度の水素イオン捕捉能を有すると考えられる。したがって、水中での解離定数が-4以下の酸をカチオン重合性単量体を作用させると、酸が有する水素イオンの一部もしくは大部分がカチオン重合性単量体によって捕捉され、対応するオキソニウムカチオンが生成すると考えられる。したがって、強い光酸発生剤を含む光カチオン硬化性組成物は、光照射によって速やかにカチオン重合が進行する。
ただし、光酸発生剤は暗所でも徐々に分解して水素イオンを発生させるため、強い光酸発生剤を含む光カチオン硬化性組成物は保存中に重合が進行し、使用上の障害となる場合がある。
そこで、上記したように、水素イオン捕捉剤を別途添加する方法が提案されている(特許文献4、5)が、水素イオン捕捉剤は保存中の重合だけでなく、光照射時のカチオン重合も減速する。これに対して、本発明者らは(c)弱い酸発生剤が水素イオン捕捉部位を有することに着目し、(a)強い光酸発生剤と(b)弱い光酸発生剤とを併用した。弱い酸発生剤は、暗所ではその水素イオン捕捉部位により水素イオン捕捉剤として機能する一方、光照射時には分解によって酸が生成する。したがって、酸を発生しない水素イオン捕捉剤を安定剤として使用する場合よりも、光照射時の硬化の進行が速くなると考えられる。
本発明の光カチオン硬化性組成物においては、下記の態様が好適に採用される。
(1)前記(a)カチオン重合性単量体が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むこと。
(2)前記(b)強い光酸発生剤が、ヨードニウム塩であること。
(3)前記(c)弱い光酸発生剤の含有量が、前記(b)強い光酸発生剤1モルに対して0.001~0.9モルであること。
(4)前記(c)弱い光酸発生剤が、陰イオン部位としてカルボキシラートもしくはスルホナートを有するヨードニウム塩であること。
(5)前記(b)強い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数と、前記(c)弱い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数の差が、7以上であること。
(6)前記光カチオン硬化性組成物が光増感剤を含むこと。
(7)前記光カチオン硬化性組成物が電子供与性化合物を含むこと。
(8)前記光カチオン硬化性組成物がフェノール系酸化防止剤を含むこと。
(9)前記光カチオン硬化性組成物が充填材を含むこと。
(10)前記光カチオン硬化性組成物が歯科用硬化性組成物であること。
本発明の光カチオン硬化性組成物においては、さらに充填材を含み、歯科用コンポジットレジンとして使用されること、が好適である。
本発明によれば、(a)カチオン重合性単量体に対して、(b)水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤および(c)水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤を添加することで、長期保存安定性と迅速硬化性を兼ね備えた光カチオン硬化性組成物が提供される。
本発明の光カチオン硬化性組成物は、(a)カチオン重合性単量体、(b)強い光酸発生剤、(c)弱い光酸発生剤、および(d)光増感剤を含んでいるが、特に重要な特徴は、(b)強い光酸発生剤と(c)弱い光酸発生剤を併用することにある。(c)弱い光酸発生剤は水素イオン捕捉部位を有しているため、初期状態ではカチオン重合を抑制するため、望まない硬化を防止する働きがある。一方、光照射時には(c)弱い光酸発生剤も酸を発生させるため、カチオン重合を加速させる働きがある。したがって、(c)弱い光酸発生剤を添加するだけで、硬化速度を保ちつつ、高温での保存安定性を得ることができる。この効果は、他の添加剤を加えなくても得ることができる。
従って、電気・電子部品の接着剤、塗料等の種々の光カチオン硬化性組成物の応用用途のうち、室温以上の高温条件下に晒されるおそれや、室温以上で長期間保存されるようなおそれがある製品として、好適に使用できる。特に、コンポジットレジン等の歯科用材料は、室温での迅速硬化性と保存安定性の両立を強く望まれる用途であるため、本発明の光カチオン硬化性組成物は極めて有用である。
本発明の光カチオン硬化性組成物は、必須成分として、(a)カチオン重合性単量体、(b)強い光酸発生剤および(c)弱い光酸発生剤を含む。以下、本発明について詳細に説明する。
(a)カチオン重合性単量体:
本発明の組成物において、重合性成分である(a)カチオン重合性単量体は、光酸発生剤の分解によって生じる酸によって重合する化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
代表的なカチオン重合性単量体を例示すれば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状エーテル化合物、ビニルエーテル化合物、双環状オルトエステル化合物、環状アセタール化合物、双環状アセタール化合物、環状カーボネート化合物が挙げられるが、特に入手が容易でかつ体積収縮が小さく、重合反応が速い点において、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物が好適に使用される。
当該エポキシ化合物を具体的に例示すれば、1,2-エポキシプロパン、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、2,3-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカン、ブタジエンモノオキサイド、2-メチル-2-ビニルオキシラン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-7-オクテン、1,2-エポキシ-9-デセン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドール、2-メチルグリシドール、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、グリシジルプロピルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロオクテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、シクロドデカンエポキシド、エキソ-2,3-エポキシノルボルネン、4-ビニル-1-シクロヘキセン-1,2-エポキシド、リモネンオキサイド、スチレンオキサイド、(2,3-エポキシプロピル)ベンゼン、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジル2-メチルフェニルエーテル、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-クロロフェニルグリシジルエーテル、グリシジル4-メトキシフェニルエーテル等のエポキシ官能基を一つ有するもの; また、1,3-ブタジエンジオキサイド、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンメタノールジグリシジルエーテル、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート、ジグリシジルスベレート、ジグリシジルアゼレート、ジグリシジルセバケート、2,2-ビス[4-グリシジルオキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-グリシジルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシド、リモネンジエポキシド、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)グルタレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)スベレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ゼレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)セバケート、1,4-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシメチル)ビフェニル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)スルホン、メチルビス[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]フェニルシラン、ジメチルビス[(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)メチル]シラン、メチル[(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)メチル][2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]シラン、1,4-フェニレンビス[ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]]シラン、1,2-エチレンビス[ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]]シラン、ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]シラン、1,3-ビス[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、2,5-ビシクロ[2.2.1]ヘプチレンビス[ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]]シラン、1,6-へキシレンビス[ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]]シラン等のエポキシ官能基を二つ有する化合物;或いはグリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル、等のエポキシ官能基を三つ以上有するものが挙げられる。
あるいは下記に示す化合物等の環状シロキサンおよびシルセスキオキサン構造持つ化合物で、エポキシ官能基を有するものが挙げられる。
上記エポキシ化合物のなかでも、得られる硬化体の物性の点から、1分子中にエポキシ官能基を2つ以上有するものが、特に好適に使用される。
また、オキセタン化合物を具体的に例示すれば、トリメチレンオキサイド、3-メチル-3-オキセタニルメタノール、3-エチル-3-オキセタニルメタノール、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、3,3-ジエチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシ)オキセタン等の1つのオキセタン環を有すもの、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシ)ベンゼン、4,4′-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシ)ビフェニール、4,4′-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシメチル)ビフェニール、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等、あるいは下記に示す化合物等のオキセタン環を2つ以上有す化合物が挙げられる。
上記オキセタン化合物のなかでも、得られる硬化体の物性の点から、1分子中にオキセタン環を2つ以上有するものが、特に好適に使用される。
また、オキセタン化合物及びエポキシ化合物以外のカチオン重合性単量体を具体的に示すと、環状エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、オキセパン等が、双環状オルトエステル化合物としては、ビシクロオルトエステル、スピロオルトエステル、スピロオルトカーボネート等が、環状アセタール化合物としては、1,3,5-トリオキサン、1,3-ジオキソラン、オキセパン、1,3-ジオキセパン、4-メチル-1,3-ジオキセパン、1,3,6-トリオキサシクロオクタン等が、双環状アセタール化合物としては、2,6-ジオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7-ジオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン等が、環状カーボネート化合物としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのカチオン重合性単量体は単独、または二種類以上を組み合わせて用いることができる。とりわけ、1分子平均a個のオキセタン官能基を有するオキセタン化合物のAモルと、1分子平均b個のエポキシ官能基を有するエポキシ化合物のBモルとを混合し、(a×A):(b×B)が90:10~10:90の範囲になるように調製したものが、硬化速度が速く、水分による重合阻害を受け難い点で好適である。
(b)強い光酸発生剤:
本発明の組成物において、(b)強い酸発生剤は、水中での解離定数が-4以下の酸を発生させるものであれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。すなわち、ヨードニウム塩等のオニウム塩で、対アニオンが、水中での解離定数が-4以下の酸の共役塩基であるか、カチオンとの相互作用が極めて小さい非配位性アニオンであるものが該当する。(b)強い光酸発生剤は、発生させる酸の水中での解離定数が-5以下であるものが好ましい。発生させる酸の水中での解離定数が-5以下であれば、ジメチルエーテルの共役酸よりも10倍以上強い酸であるため、発生する水素イオンの大部分がカチオン重合性単量体に捕捉され、カチオン重合が速やかに進行する。(b)強い光酸発生剤は、発生させる酸の水中での解離定数が-9以下であるものがより好ましい。最も好ましい(b)強い酸発生剤は、ヨードニウム塩であり、非特許文献1または2に記載の非配位性アニオン(noncoordinating anion、weakly coordinating anion、WCA)を対アニオンとするものである。
例えば、過塩素酸の水中での解離定数は-10.00であるため、その共役塩基であるパークロレートは対アニオンとして採用されうる。
また、トリフルオロメタンスルホン酸は硫酸よりも1000倍以上の酸性度を持つ超強酸であることが知られており、水中での解離定数は-12や-14といった値が報告されているため、その共役塩基であるトリフルオロメタンスルホナートは対アニオンとして採用されうる。
さらに水素イオン捕捉能が低いアニオンや水中で分解するアニオンについては、水中での解離定数の値を正確に測定することは困難であるが、非特許文献1または2に記載の非配位性アニオンは、カチオンとの相互作用が極めて小さく、前述のパークロレートやトリフルオロメタンスルホナートと同程度もしくはそれ以下とされている。水素イオンはカチオンの一種であるため、前記非配位性アニオンの水素イオン捕捉能は、パークロレートやトリフルオロメタンスルホナートと同程度もしくはそれ以下である。したがって、前記非配位性アニオンを有する酸発生剤から発生する酸の水中での解離定数が-4以下になることは明らかであり、上記の非配位性アニオンは対アニオンとして好適に用いることができる。
最も好ましい(b)強い光酸発生剤である、非特許文献1または2に記載の非配位性アニオンを対イオンとするヨードニウム塩の具体例を例示すれば、ジフェニルヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、p-イソプロピルフェニル-p-メチルフェニルヨードニウム、ビス(m-ニトロフェニル)ヨードニウム、p-tert-ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(p-メトキシフェニル)ヨードニウム、p-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、p-フェノキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(p-ドデシルフェニル)ヨードニウム等のカチオンと、パークロレート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセナート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキスパーフルオロアルコキシアルミネート等のアニオンからなるジアリールヨードニウム塩系化合物が挙げられる。
上述した(b)強い光酸発生剤は、必要に応じて単独または2種以上混合して用いても何等差し支えない。(b)強い光酸発生剤の使用量は、光照射により重合を開始しうる量であれば特に制限されることはないが、適度な重合の進行速度と得られる硬化体の各種物性(例えば、耐候性や硬度)を両立させるために、一般的には上述した(a)カチオン重合性単量体100質量部に対し、0.01~20質量部を用いればよく、好ましくは0.05~10質量部を用いるとよい。
(c)弱い光酸発生剤:
本発明の組成物において、(c)弱い発生剤は、水中での解離定数が-3以上の酸を発生させるものであれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤は、分子もしくはイオン対中に水素イオンを捕捉する部位を有しており、その共役酸の酸解離定数が-3以上であるものが該当する。条件を満たす水素イオン捕捉部位としては、スルホナート、ニトレート、カルボキシラート、フェノラート等の陰イオン部位が挙げられる。これらの水素イオン捕捉部位は、組成物中に生じた水素イオンを捕捉するため、重合を抑制する安定剤として機能する。一方、(c)弱い光酸発生剤は、光酸発生能も有しているので、光照射時には分解によって新たに酸を放出するため、重合の促進に寄与する。具体例を例示すれば、ジフェニルヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、p-イソプロピルフェニル-p-メチルフェニルヨードニウム、ビス(m-ニトロフェニル)ヨードニウム、p-tert-ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(p-メトキシフェニル)ヨードニウム、p-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、p-フェノキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(p-ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、p-トリルジフェニルスルホニウム、p-tert-ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウム、1-メチルピリジニウム、1-メチル2-クロロピリジニウム等のカチオンと、メタンスルホナート、p-トルエンスルホナート、ニトレート、クロロアセテート、アセテート、ベンゾエート、フェノラート等のアニオンからなるイオン対化合物が挙げられる。
(c)弱い光酸発生剤は、発生させる酸の水中での解離定数が-3~10の範囲であるものが好ましく、-3~5の範囲であるものが特に好ましい。発生させる酸の水中での解離定数が-3以上であれば、エーテルよりも高い水素イオン捕捉能を有するため、ゲル化を抑制する効果がり、発生させる酸の水中での解離定数が10以下であれば、光照射時にカチオン重合を加速する効果があると考えられる。したがって、(c)弱い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数は前記の範囲であることが好ましい。
(b)強い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数と、前記(c)弱い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数の差((c)弱い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数-(b)強い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数)は、4以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。酸の解離定数の差が4であるとき、酸の強度は1万倍の差になるので、カチオン重合の反応速度が保存中と光照射時で著しく異なり、保存安定性と迅速硬化を両立することができる。したがって、(b)強い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数と、前記(c)弱い光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数の差は、4以上であることが好ましい。
上述した(c)弱い光酸発生剤は、必要に応じて単独または2種以上混合して用いても何等差し支えない。(c)弱い光酸発生剤の使用量は、光照射による重合が進行しうる量であれば特に制限されることはないが、適度な重合の進行速度と得られる硬化体の各種物性(例えば、耐候性や硬度)を両立させるために、一般的には上述したカチオン重合性単量体(a)100質量部に対し、0.001~16質量部を用いればよく、好ましくは0.005~8質量部を用いるとよい。また、(c)弱い光酸発生剤の含有量は、前記(b)強い光酸発生剤1モルに対し、0.001~0.9モルであることが好ましく、特に0.01~0.8モルであることがより好ましい。(c)弱い光酸発生剤の含有量が0.001~0.9モルの範囲であると、保存中に生成する微量の水素イオンを捕捉してゲル化を抑制する一方、(b)強い酸発生剤から発生する水素イオンが全て捕捉されることはないので、光照射時にはカチオン重合が速やかに進行し、組成物が迅速に硬化する。したがって、(c)弱い光酸発生剤の含有量は前記の範囲であることが好ましい。
本発明の光カチオン硬化性組成物には、目的・用途等必要に応じて、上記各成分に加えて、本発明の効果を損なわない種類及び配合量の範囲で、他の配合成分が含まれていてもよい。
例えば、本発明の組成物には、重合を促進するための増感剤を含んでよい。光増感剤は、光エネルギーを吸収して光酸発生剤の分解を促進するものであれば、特に制限なく公知の化合物を使用することできる。例えば、ケトン化合物(特にα-ジケトン化合物)、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、チアジン系色素、アジン系色素、アクリジン系色素、キサンテン系色素、スクアリウム系色素、ピリリウム塩系色素およびアントラセン、ペリレン等の縮合多環式芳香族化合物等を使用することができる。これらは単独で用いても、適宜2種又はそれ以上組み合わせて用いてもよい。
α-ジケトン化合物の具体例を例示すれば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、アセチルベンゾイル、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、4,4’-ジメトキシベンジル、4,4’-オキシベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等が挙げられる。
ジアリールケトン化合物を具体的に例示すると4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9-フルオレノン、3,4-ベンゾ-9-フルオレノン、2-ジメチルアミノ-9-フルオレノン、2-メトキシ-9-フルオレノン、2-クロロ-9-フルオレノン、2,7-ジクロロ-9-フルオレノン、2-ブロモ-9-フルオレノン、2,7-ジブロモ-9-フルオレノン、2-ニトロ-9-フルオレノン、2-アセトキ-9-フルオレノン、ベンズアントロン、アントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ジメチルアミノアントラキノン、2,3-ジメチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,5-ジクロロアントラキノン、1,2-ジメトキシアントラキノン、1,2-ジアセトキシ-アントラキノン、5,12-ナフタセンキノン、6、13-ペンタセンキノン、キサントン、チオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、9(10H)-アクリドン、9-メチル-9(10H)-アクリドン、ジベンゾスベレノン等が挙げられる。
ケトクマリン化合物としては、3-ベンゾイルクマリン、3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-(4-メトキシベンゾイル)7-メトキシ-3-クマリン、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3,3’-クマリノケトン、3,3’-ビス(7-ジエチルアミノクマリノ)ケトン等が挙げられる。
多環芳香族化合物としては、多環式芳香族化合物としては、9,10-ジメチルアントラセン、1,8-ジメチルフェナントレン、7,12-ジメチルベンズ(a)アントラセン等が挙げられる。
上述した光増感剤は、必要に応じて単独または2種以上混合して用いても何等差し支えない。光増感剤の使用量は、組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常はカチオン重合性単量体(a)100質量部に対し、0.001~10質量部を用いればよく、好ましくは0.01~5質量部を用いるとよい。
更に、上記成分以外にも光酸発生剤の分解を促進させるために、アミン類等の電子供与性化合物を含んでいてもよい。これらは単独で用いても、適宜2種又はそれ以上組み合わせて用いてもよい。アミン類としては、フェニルアラニン、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、4-ジメチルアミノトルエン等、その他の電子供与性化合物としては、p-ジメトキシベンゼン、1,2,4-トリメトキシベンゼン等、が挙げられる。
上述した電子供与性化合物は、必要に応じて単独または2種以上混合して用いても何等差し支えない。電子供与性化合物の使用量は、組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常はカチオン重合性単量体(a)100質量部に対し、0.001~10質量部を用いればよく、好ましくは0.01~5質量部を用いるとよい。
また、本発明の組成物において、酸発生剤の分解を抑制するための添加剤として、フェノール系酸化防止剤を含んでいてもよい。フェノール系酸化防止剤は従来公知のもが何ら制限無く利用できる。例えば、4-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール等が挙げられる。
上述したフェノール系酸化防止剤は、必要に応じて単独または2種以上混合して用いても何等差し支えない。光増感剤の使用量は、組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常はカチオン重合性単量体(a)100質量部に対し、0.001~10質量部を用いればよく、好ましくは0.01~5質量部を用いるとよい。
本発明の硬化性組成物を歯科用充填修復材料として用いる場合には、充填材(フィラー)が配合されていることが好ましい。
当該充填材としては、歯科用充填修復材料に配合される有機、無機あるいは有機- 無機複合充填材のいずれも配合することが可能であり、有機充填材としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレート-エチルメタクリレート共重合体、架橋型ポリメチルメタクリレート、架橋型ポリエチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等の有機高分子からなる粒子が挙げられる。
無機充填材を具体的に例示すると、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等の無機粒子が挙げられる。また、有機-無機複合充填材としては、これら無機粒子と重合性単量体を予め混合し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機-無機複合粒子が挙げられる。なお、無機充填材として、ジルコニア等の重金属を含むものを用いることによってX線造影性を付与することもできる。
これら充填材の粒径、形状は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている、球状や不定形の、平均粒子径0.01μm~100μmの粒子を目的に応じて適宜使用すればよい。また、これら充填材の屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用硬化性組成物の充填材が有する1.4~1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
本発明の光カチオン硬化性組成物に上記充填材を配合する場合の配合量も、該組成物がペースト状となる範囲であれば特に限定されないが、歯科用充填修復材料として用いる場合には、無機及び/又は有機-無機複合充填材を採用し、これを前記(a)カチオン重合性単量体100質量部に対して、50~1500質量部、好ましくは70~1000質量部とすることが好ましい。
さらに、これら無機充填材、有機-無機複合充填材等の充填材は各々単独で用いても良いし、材質、粒径、形状等の異なる複数種のものを併用しても良い。硬化後の機械的物性に優れる点で、歯科用充填修復材料として用いる場合には、無機充填材を主とすることが特に好ましい。
本発明の硬化性組成物を歯科用組成物に用いた場合、上記した成分に加えて、歯科用硬化性組成物、特に歯科用充填修復材料の配合成分として公知の他の成分が配合されていてもよい。
このような成分としては、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料、有機溶媒や増粘剤等の公知の添加剤が挙げられる。
本発明の光カチオン硬化性組成物は、歯科用途に制限されず、接着剤、塗料等使用することができるが、特に歯科用充填修復材料として好適である。
本発明の硬化性組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、公知の硬化性組成物の製造方法を適宜採用すればよい。具体的には、暗所において、本発明の硬化性組成物を構成する、カチオン重合性単量体、光酸発生剤系光重合開始剤、フェノール系酸化防止剤、有機酸の塩類、及び必要に応じて配合されるその他の配合成分を所定量秤取り、これらを混合してペースト状とすればよい。このようにして製造された本発明の光カチオン硬化性組成物は、使用時まで遮光下で保存される。
本発明の光カチオン硬化性組成物を硬化させる手段としては、用いた光酸発生剤系光重合開始剤の重合開始機構に従い適宜、公知の重合手段を採用すればよく、具体的には、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、蛍光灯、太陽光、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンレーザー等の光源による光照射、或いは加熱重合器等を用いた加熱、またはこれらを組み合わせた方法等が何等制限なく使用される。光照射により重合させる場合には、その照射時間は、光源の波長、強度、硬化体の形状や材質によって異なるため、予備的な実験によって予め決定しておけばよいが、一般には、照射時間が5~60秒程度の範囲になるように、各種成分の配合割合を調整しておくことが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこの実施例によって何等限定されるものではない。尚、本文中、並びに実施例中に使用した化合物の名称および構造を下に示す。
1.(a)カチオン重合性単量体
KR-470(信越化学工業(株)製)
OXT-121(東亞合成(株)製)
2.(b)水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤
DPIPB(東京化成工業(株)製)(対アニオンが非配位性アニオン)
DPIPC(東京化成工業(株)製)(発生する酸の水中での解離定数:-10.00)
3.(c)水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤
DPITS(東京化成工業(株)製)(発生する酸の水中での解離定数:-2.8)
DPICH(東京化成工業(株)製)(発生する酸の水中での解離定数:4.2)
4.光増感剤
CQ(東京化成工業(株)製)
5.電子供与性化合物
DMBE(東京化成工業(株)製)
6.フェノール系酸化防止剤
BHT(東京化成工業(株)製)
7.水素イオン捕捉剤
SDS(東京化成工業(株)製)
TN770(BASFジャパン(株)製)
また実施例、比較例における組成物の調製および各種物性の評価方法を以下に示す。
(1)光カチオン硬化性組成物の調製方法
重合性単量体に対し各々所定量の光重合開始剤及びその他の配合成分を加え、赤色光下にて攪拌して調製した。
(2)硬化性
各実施例、比較例で調製した光カチオン硬化性組成物を、7mmφ×1.0mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドに充填した。ついで歯科用の光照射器(TOKUSO POWER LITE、(株)トクヤマ社製)を用い、一定時間光照射を行った(照射面における光強度400mW/cm)。光照射後、直ちに充填物の状態を確認し、組成物全体が硬化しているかどうかを確認した。組成物全体が硬化している場合、硬化体をモールドから取り出し、両端を指でつまんで軽く力を加え、その強度を確認した。光照射後の確認時に未硬化部分がある、もしくは指で軽く力を加えた場合に容易に曲がったり折れたりする場合を硬化不全とし、指で力を加えても曲がったり折れたりしなければ硬化良好とした。まず、上記の試験を照射時間1秒で行い、硬化不全であれば、新たに充填作業から行った上で適宜照射時間を延長し、硬化良好になるまで繰り返し試験を行った。照射時間は1秒、2秒、3秒、5秒、10秒、20秒、40秒、60秒の順で検討を行い、60秒照射しても硬化不全であった場合は×とした。
(3)保存安定性
各実施例、比較例で調製した光カチオン硬化性組成物0.3gを6mL褐色サンプル管瓶に入れ、遮光条件下60℃恒温装置内で保存した。この光カチオン硬化性組成物を、1日、2日、3日、4日、5日、7日、10日、14日、以降7日置きに恒温装置から取り出し、暗所下において室温まで放冷した後、該硬化性組成物の性状を観察した。この際に、光カチオン硬化性組成物が、サンプル管瓶を傾けても全く流動しないゲル状になった時点の日数をゲル化時間とした。30日後でもゲル化しない場合には観察を中止した(>30日と表記)。なお、本試験において、60℃で30日変化が見られなければ、室温で保存した場合には概ね2年以上は保存可能であることが見込まれる。
実施例1
75質量部のKR-470及び25質量部のOXT-121からなるカチオン重合性単量体100質量部に対して、強い光酸発生剤として1.4質量部のDPIPB(0.138モル)、弱い酸発生剤として0.1質量部のDPITS(0.018ミリモル)、及び光増感剤として0.3質量部のCQを加え、赤色光下にて6時間撹拌した。
この組成物の硬化性とゲル化までの保存日数を評価した。結果を表1に示した。
実施例2~6、比較例1~7
配合する強い酸発生剤および弱い酸発生剤を表1に記載したように変化させた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、その硬化性とゲル化までの保存日数を評価した。結果を併せて表1に示した。
上記表1の実施例1~6に示すように、強い酸発生剤と弱い酸発生剤の双方を配合した場合は、光照射60秒以内に硬化する上、60℃での保存下におけるゲル化までの保存日数が比較的長かった。それに対し、強い酸発生剤のみを配合した場合(比較例1~3)は、硬化速度は速いものの、3日以内にゲル化した。また、弱い酸発生剤のみを配合した場合(比較例4、5)は、60秒光照射しても硬化不全となった。また、他の水素イオン捕捉剤を配合した場合(比較例6、7)は、ゲル化の抑制効果は見られたものの、60秒光照射しても硬化不全となった。
実施例7~9、比較例8~10
配合する強い酸発生剤、弱い酸発生剤、および電子供与体を表2に記載したように変化させた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、その硬化性とゲル化までの保存日数を評価した。結果を表2に示した。
上記表2に示すように、電子供与体を添加した場合は、全体的に硬化速度の上昇傾向が見られた。その場合でも、実施例7~9に示すように、強い酸発生剤と弱い酸発生剤の双方を配合した場合は、60℃での保存下におけるゲル化までの保存日数が比較的長かった。それに対し、強い酸発生剤のみを配合した場合(比較例8、9)は、硬化速度は速いものの、4日以内にゲル化した。一方、弱い酸発生剤のみを配合した場合(比較例10)は、60秒光照射しても硬化しなかった。
実施例10~15、比較例11~15
配合する強い酸発生剤、弱い酸発生剤、電子供与体、フェノール系酸化防止剤、および水素イオン捕捉剤を表3に記載したように変化させた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、その硬化性とゲル化までの保存日数を評価した。結果を表3に示した。
上記表3に示すように、フェノール系酸化防止剤を添加した場合は、全体的にゲル化時間の延長傾向が見られた。その場合でも、実施例10~15に示すように、強い酸発生剤と弱い酸発生剤の双方を配合した場合には、迅速な硬化性を保った上、60℃での保存下におけるゲル化までの保存日数が非常に長かった。また、実施例13~15に示すように、電子供与体を更に加えると、長い保存日数を保った上、より迅速な硬化性が得られた。それに対し、強い酸発生剤のみを配合した場合(比較例11、12)は、硬化速度は速いものの、比較的早くゲル化した。一方、弱い酸発生剤のみを配合した場合(比較例13)には、60秒光照射しても硬化しなかった。また、他の水素イオン捕捉剤を配合した場合(比較例14、15)には、ゲル化の抑制効果は見られたものの、硬化性が低下しており、対応する実施例13の方が硬化速度が良好であった。

Claims (10)

  1. (a)カチオン重合性単量体
    (b)水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤、及び
    (c)水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤
    を含んでなる光カチオン硬化性組成物からなる
    ことを特徴とする歯科用硬化性組成物
  2. 前記(a)カチオン重合性単量体が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む請求項1に記載の歯科用硬化性組成物
  3. 前記(b)水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤が、ヨードニウム塩である請求項1または2に記載の歯科用硬化性組成物
  4. 前記(c)水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤の含有量が、前記(b)水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤1モルに対して0.001~0.9モルである請求項1~3のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物
  5. 前記(c)水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤が、陰イオン部位としてカルボキシラートもしくはスルホナートを有するヨードニウム塩である請求項1~4のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物
  6. 前記(b)水中での解離定数が-4以下の酸を発生させる光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数と、前記(c)水中での解離定数が-3以上の酸を発生させる光酸発生剤が発生させる酸の水中での解離定数の差が、7以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物
  7. 光増感剤を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物
  8. 電子供与性化合物を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物
  9. フェノール系酸化防止剤を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物
  10. 充填材を含む請求項1~9の何れか1項に記載の歯科用硬化性組成物
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