JP7367244B2 - 耐指紋性の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐指紋性の評価方法、積層体、その製造方法および表示装置に関する。
近年、各種電子機器において、タッチパネルディスプレイなどの表示装置に、実際に指を接触させて操作を行う機会を多くなっている。このような表示装置では、指紋による表示画像性能の低下を防ぐために、耐指紋性を付与することが求められる。
また、車載用表示装置の表面には、太陽光等による映り込みの影響を抑制するために、通常、防眩処理、低反射処理、防指紋処理等の各種処理が施されているが、このような処理により、指紋が目立ちやすくなり、耐指紋性が低下する場合があった。
耐指紋性を評価する方法として、特許文献1では、被評価物の表面に、オレイン酸希釈液を塗布する前と後のCIE1976L表示系により規定される同時測光分光式色度計にて測定される明度Lを指標として用いる技術を開示している。
特開2020-34416号公報
車載用表示装置のように、車両内で表示装置が使用される場合には、特許文献1に記載の評価方法による評価結果が、車両内でのヒトによる官能評価の結果と乖離する場合があり、評価方法自体が実際の車両内環境を再現できていない場合があった。
したがって、本発明の目的は、車載用表示装置にも適用可能な耐指紋性の評価方法、前記評価方法による評価基準を満たす耐指紋性に優れた積層体、その製造方法および前記積層体を有する表示装置を提供することにある。
本発明は、下記[1]~[14]の構成を有する耐指紋性の評価方法、積層体、その製造方法および表示装置を提供する。
[1]対象物表面の耐指紋性を評価する方法であって、前記対象物表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との変角測色計による下記式(1)より求められる測定値差ΔL(θ)を用いることを特徴とする耐指紋性の評価方法:
式(1)
ΔL(θ)=人工指紋液転写部のL-人工指紋液非転写部のL
但し、光入射角度は、前記対象物表面の法線に対して-70°とし、測定角度は、前記対象物表面の法線に対して-5°とする。
[2]前記対象物表面の耐指紋性を評価する際に、さらに、前記対象物表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との輝度計による下記式(2)により求められる測定値差Δ輝度を用いる、[1]に記載の評価方法:
式(2)
Δ輝度=人工指紋液転写部の輝度-人工指紋液非転写部の輝度
[3]前記人工指紋液の転写方法が、転写用基材に前記人工指紋液をスピンコーティング法により付着させ、ヘイズ値が7±2%である転写箔を作製し、前記転写箔に疑似指を荷重60Nで押し当てた後、前記疑似指を前記対象物表面に荷重60Nで2秒間押し当てる方法である、[1]または[2]に記載の評価方法。
[4]前記対象物表面の耐指紋性を評価する際に、さらに、前記対象物表面のスクアレン付着量を用いる、[1]~[3]のいずれかに記載の評価方法。
[5]人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との変角測色計による下記式(1)より求められる測定値差ΔL(θ)が0.5以下である表面を有することを特徴とする積層体:
式(1)
ΔL(θ)=人工指紋液転写部のL-人工指紋液非転写部のL
但し、光入射角度は、測定対象物表面の法線に対して-70°とし、測定角度は、前記測定対象物表面の法線に対して-5°とする。
[6]基材と、前記基材上に配される所定層と、前記所定層上に配される最表層とを有し、
前記所定層は、前記基材側の第1所定層と、前記最表層側の第2所定層とを含み、
前記第1所定層の屈折率は、2.00以下である、[5]に記載の積層体。
[7]基材と、前記基材上に配される所定層と、前記所定層上に配される最表層とを有し、
前記所定層は、前記基材側の第1所定層と、前記最表層側の第2所定層とを含み、
前記第2所定層の屈折率は、1.43以上1.49以下である、[5]または[6]に記載の積層体。
[8]前記積層体の表面において、前記光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域において負のピークを持ち、前記正反射領域以外の角度において正のピークを持ち、
前記積層体の表面におけるスクアレン付着量が、40μg未満である、[5]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]前記積層体の表面において、前記光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域以外の角度において正のピークを持たない、[5]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[10]最表層は、第2所定層上に配され、前記最表層の表面から前記第2所定層までの距離が、60nm以下である、[9]に記載の積層体。
[11]前記表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との輝度計による下記式(2)により求められる測定値差Δ輝度が、0.5[cd/m]以下である、[5]~[10]のいずれかに記載の積層体:
式(2)
Δ輝度=人工指紋液転写部の輝度-人工指紋液非転写部の輝度
[12]前記人工指紋液の転写方法が、転写用基材に前記人工指紋液をスピンコーティング法により付着させ、ヘイズ値が7±2%である転写箔を作製し、前記転写箔に疑似指を荷重60Nで押し当てた後、前記疑似指を前記積層体の表面に荷重60Nで2秒間押し当てる方法である、[5]~[11]のいずれかに記載の積層体。
[13][5]~[12]のいずれかに記載の積層体を有することを特徴とする表示装置。
[14]積層体の表面において、人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との変角測色計による下記式(1)より求められる測定値差ΔL(θ)が0.5以下となるように、前記積層体を製造することを特徴とする積層体の製造方法:
式(1)
ΔL(θ)=人工指紋液転写部のL-人工指紋液非転写部のL
但し、光入射角度は、測定対象物表面の法線に対して-70°とし、測定角度は、前記測定対象物表面の法線に対して-5°とする。
本発明により、車載用表示装置にも適用可能な耐指紋性の評価方法、前記評価方法による評価基準を満たす耐指紋性に優れた積層体、その製造方法および前記積層体を有する表示装置を提供することができる。
(a)は、太陽光が車両外部から直接またはガラス等を介して表示装置に照射される様子を示す概略平面図であり、(b)は、表示装置に対する太陽光の入射角度および測定角度を示す概略図である。 ΔL(θ)値と、ユーザによる官能評価結果との相関関係の一例を示すグラフである。 ΔL(SCI)値と、ユーザによる官能評価結果との相関関係の一例を示すグラフである。 ΔL(θ)値と、Δ輝度との相関関係の一例を示すグラフである。 本実施形態に係る積層体における、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性の一例を示すグラフである。 本実施形態に係る積層体における、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性の別の例を示すグラフである。
特許文献1に記載の評価方法では、オレイン酸希釈液を塗布する前と後の被評価物表面におけるCIE1976L表示系により規定される明度Lを指標として、被評価物の耐指紋性を評価している。また、特許文献1では、明度Lの測定に、同時測光分光式色度計を用いており、さらに、当該評価方法の正確性を評価するために、3波長蛍光灯下における官能評価を使用している。しかしながら、これらの条件では、入射角と測定角を定めていないため、車両内環境下における表示装置の耐指紋性を評価することはできず、特許文献1の方法により得られた評価結果と、実際の車両内での官能評価結果とが乖離することがあった。
また、特許文献1に記載の評価方法では、耐指紋性の評価にオレイン酸をエタノールに溶解させたオレイン酸希釈液を用いているが、当該希釈液では表示装置への付着状態が実際の指紋と異なる場合があった。特に撥油性コーティングを備えた表示装置については、オレイン酸希釈液の液滴ハジキの影響で、耐指紋性を正確に評価することが困難な場合があった。
さらに、特許文献1に記載の評価方法では、指サックを使用してオレイン酸希釈液を付着させて、耐指紋性の評価を行っているが、当該方法では、再現性良く疑似指紋を付着させることができない場合があった。
一方、本発明の耐指紋性の評価方法では、特許文献1に記載の方法と同様に、CIE1976L表示系により規定される明度Lを用いているが、測定装置として、同時測光分光式色度計ではなく、特定の光入射角度及び測定角度を適用した変角測色計を用いている。このように、本発明では、車内環境を想定して、太陽の位置、表示装置(ディスプレイ)の位置やドライバーなどのユーザの視点を考慮して、変角測色計の測定条件を入射角度:-70°、測定角度:-5°に設定した際の、人工指紋液付着前後の変角明度L(θ)の変化量を耐指紋性の指標としている。このため、本発明では、実際の車両内での官能評価結果と同等の評価結果を得ることができる正確性の高い耐指紋性(指紋目立ち性)の評価方法を提供することができる。
また、本発明では、オレイン酸希釈液ではなく、例えば、従来公知の人工指紋液を評価に用いることができる。人工指紋液では、ゴミや皮脂等の固形成分を考慮したものもあり、こういった人工指紋液を用いることで、オレイン酸希釈液よりも実際の指紋付着を考慮した評価を正確に行うことができる。また、こういった固形成分を含む人工指紋液を用いることで、撥油性コーティングを備えた表示装置にも容易に本発明の耐指紋性の評価方法を適用できる。
さらに、本発明では、特定の転写方法を用いて、人工指紋液を付着させた状態で耐指紋性を評価できるため、より実際の車両環境を反映させた条件で評価を行うことができる。
以下、本発明について詳しく説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。また、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸およびアクリル酸のいずれか一方または両方を意味する。
<耐指紋性の評価方法>
本発明の耐指紋性の評価方法(以降、本評価方法と称することがある)は、対象物(測定対象物)表面の耐指紋性を評価する方法であり、対象物表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との変角測色計による下記式(1)より求められる測定値差ΔL(θ)を用いるものである。
式(1)
ΔL(θ)=人工指紋液転写部のL-人工指紋液非転写部のL
但し、光入射角度は、前記対象物表面の法線に対して-70°とし、測定角度は、前記対象物表面の法線に対して-5°とする。
本評価方法は、図1(a)に示すように、太陽等の光源1からの光が、車両外部から直接、または車両が有するガラス等の光透過性のある物体2を介して、車両内に搭載された表示装置3の表面に照射された際に、車両環境内において、ユーザが当該表示装置を目視した際の指紋の目立ち具合(耐指紋性)を評価するものである。また、このような状況下の耐指紋性は、フロントガラスやサイドガラス越しに照射される、表示装置表面の法線に対して45°以上の角度からの光の影響が大きいことが予想される。本評価方法では、図1(b)に示すように、特に、太陽等の光源1からの光が表示装置3表面の法線Nに対して入射角度-70°で照射され、前記法線に対して-5°の角度(測定角度)でユーザが目視した際の耐指紋性を評価するものであり、より車両環境下での表示装置の耐指紋性を反映させた評価結果が得られる。
本評価方法では、優れた耐指紋性を得る観点から、上記ΔL(θ)が0.5以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。また、ΔL(θ)は小さければ小さいほど好ましい。なお、ΔL(θ)が0であるということは、対象物表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との変角測色計による測定値が同じである(差がない)ことを意味する。したがって、ΔL(θ)は0に近ければ近いほど好ましいと言える。ΔL(θ)の詳細な測定方法に関しては、後述する。
本評価方法に用いる人工指紋液は従来公知のものを適宜使用できるが、上述したように、ゴミや皮脂等の固形成分を考慮したものがより好ましい。なお、指紋は、主に水と皮脂成分とで構成され、水の蒸発に伴い皮脂成分の割合が増加する。したがって、多くの場合、指紋=皮脂と考えて差し支えない。皮脂を構成する成分としては、例えば、脂肪酸、グリセロ脂質、脂肪酸エステル、ワックスエステル、コレステロール誘導体、スクアレン等がある。
前記脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、リノレン酸、パルミチン酸、ノナン酸、アジピン酸、トリデカン酸、ミリストレイン酸、テトラデカン酸、パルミトレイン酸が挙げられる。
また、前記グリセロ脂質としては、例えば、モノオレイン、トリミリスチン、モノカプリリン、トリオレイン、モノラウリン、モノパルミチン、モノステアリン、トリステアリン、トリパルミチン、トリカプロインが挙げられる。
前記脂肪酸エステルとしては、例えば、n-オクタン酸ブチル、オクタン酸ベンジル、デカン酸イソブチル、ウンデカン酸エチル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸エチル、ペンタデカン酸エチル、ラウリン酸ベンジル、n-オクタン酸アミル、ミリスチン酸ブチルが挙げられる。
前記ワックスエステルとしては、例えば、ステアリン酸ドデシル、デカン酸デシル、パルミチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸3-イソアミル-6-メチル-2-ヘプチル、パルミチン酸ミリシル、パルミチン酸セシル、セロチン酸ミリシルが挙げられる。
前記コレステロール誘導体としては、例えば、コレステロール、7-デヒドロコレステロール、ビタミンD、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、プロゲステロン、アルドステロン、コルチゾールが挙げられる。
さらに、人工指紋液には、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化鉄微粒子などの無機微粒子、ならびに、ケラチン微粒子、キチン微粒子、キトサン微粒子、アクリル系微粒子、スチレン系微粒子、ジビニルベンゼン系微粒子、ポリアミド系微粒子、ポリイミド系微粒子、ポリウレタン系微粒子、メラミン系微粒子などの有機微粒子から選ばれる1種または2種以上の微粒子状物質を含むことができる。また、人工指紋液は、微粒子状物質として、関東ローム(JIS試験用粉体1)を含むこともできる。微粒子状物質の平均粒子径は適宜設定でき、特に限定されないが、例えば、平均粒子径を0.05μm以上、100μm以下とすることができる。また、人工指紋液には、この他にも、カラギナン、アラビアガムなどの増粘剤や、四級アンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などの界面活性剤を添加することもできる。人工指紋液を構成する各成分の配合割合は、本発明の効果が得られる範囲で適宜設定でき、特に限定されない。
なお、本評価方法に用いる人工指紋液は、薄膜(転写膜)作製にあたり適宜有機溶媒で希釈して使用することができる。有機溶媒としては、従来公知のものを適宜使用でき、例えば、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メトキシプロパノール、エタノールなどを使用できる。
なお、人工指紋液としては、例えば、以下の配合のものを使用できる。
・希釈剤としてのメトキシプロパノール10gに、トリオレイン1.0gを添加し、さらにJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ローム400mgを加えて攪拌して得られる人工指紋液。
・希釈剤としてのメトキシプロパノール5gに、トリオレイン200mgを添加し、さらにケラチン(ヒト上皮由来、和光純薬工業(株)製)200mgを加えて攪拌して、激しく振盪した後、10秒間静置し、次いで、粒径の大きなケラチンの存在しない上澄み部分を静かに採取することにより得られる人工指紋液。
ここで、人工指紋液としては、上述した指紋成分を再現できるものを適宜用いることが好ましい。具体的には、本発明では、温度20℃では固体であり、温度40℃では分散系となる人工指紋液を用いることが好ましい。例えば、上述した人工指紋液に、(例えば、上述した皮脂を構成する成分のうち)融点が室温より高い物質を添加することで、温度20℃で固体、温度40℃で分散系となる人工指紋液を作製することができる。当該性質を有する人工指紋液は、オレイン酸単体を使用した従来のオレイン酸希釈液などよりもコーティング面に付着し易く、より実際の指紋付着を考慮した評価に活用でき、付着性および評価再現性に優れる。
なお、スクアレン付着量評価を行う際には、当該評価を適切に行う観点から、人工指紋液中のスクアレン含有量は、10~15質量%とすることが好ましい。
ここで、皮脂を構成する成分及びその比率は、個人差や年齢差があることが知られている。しかしながら、皮脂の屈折率は、皮脂に含まれる成分の屈折率の最小値と最大値との間にあるはずである。そして、上記皮脂成分の中で、最小の屈折率を持つ物質は、n-オクタン酸ブチルであり、その屈折率は1.42である。また、これらの皮脂成分の中で、最大の屈折率を持つ物質は、オクタン酸ベンジルであり、その屈折率は1.49である。したがって、指紋の屈折率は、1.42~1.49の範囲にあると考えられる。
人工指紋液の転写方法は、従来公知の方法を適用できるが、以下の方法を用いることが好ましい。すなわち、転写用基材に前記人工指紋液をスピンコーティング法により付着させ、ヘイズ値が7±2%である転写箔を作製し、前記転写箔に疑似指を荷重60Nで押し当てた後、前記疑似指を前記対象物表面に荷重60Nで2秒間押し当てる方法を用いることが好ましい。当該方法では、スピンコート法により、回転している転写用基材に人工指紋液を滴下し、遠心力により均一な薄膜を形成できるため、再現性の良い人工指紋液の転写を実現することができる。ここで、前記転写用基材としては、従来公知のものを適宜使用できるが、例えば、ポリカーボネート板を使用できる。また、前記疑似指としては、従来公知のものを適宜使用できるが、例えば、天然ゴム(JIS K 6253規格による、ゴム硬度:ショアE60、ショアE70)を使用できる。また、上述したように、人工指紋液は、温度20℃では固体であり、温度40℃では分散系となるものを使用することが好ましい。
また、本評価方法では、さらに、表示装置表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との輝度計による下記式(2)により求められる測定値差Δ輝度を用いることが好ましい。
式(2)
Δ輝度=人工指紋液転写部の輝度-人工指紋液非転写部の輝度
本評価方法では、優れた耐指紋性を得る観点から、上記Δ輝度が0.5[cd/m]以下であることが好ましい。Δ輝度とΔL(θ)には一定の相関関係が見受けられ、Δ輝度とΔL(θ)とを両者とも良好な値とすることで、より優れた耐指紋性を付与することができる。なお、Δ輝度の詳細な測定方法に関しては、後述する。
前記対象物表面の耐指紋性を評価する際に、さらに、前記対象物表面の(例えば、指紋が付着したと想定したときの)スクアレン付着量(指紋成分付着量)を用いることが好ましい。特に対象物表面が撥油性の場合には、スクアレン付着量が40μg未満であれば、より指紋が目立ちにくく、耐指紋性に優れる。なお、スクアレン付着量の詳細な測定方法に関しては、後述する。
<積層体>
本発明の積層体(以降、本積層体と称することがある)は、上述した本評価方法における測定値差ΔL(θ)が0.5以下である表面を有するため、耐指紋性に優れ、表面に付着した指紋を目立たなくすることができる。なお、評価に用いる人工指紋液の転写方法は上述したスピンコート法による転写方法を用いることが好ましい。
また、本積層体は、基材と、前記基材上に配される所定層と、前記所定層上に配される最表層とを有することができる。また、前記所定層は、基材側の第1所定層と、最表層側の第2所定層とを含むことができる。さらに、基材と第1所定層との間、第1所定層と第2所定層との間、最表層と第2所定層との間などに、本発明の効果が得られる範囲で他の層(中間層)を有していてもよい。中間層としては、例えば、所望の機能層、粘着剤層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、反射防止層、軟質(耐衝撃)層、ハードコート層、導電層、帯電防止層、断熱層、反射層、プライマー層などの各層を用いることができる。なお、最表層は、使用時にヒトの手に触れる状況下に置かれる。最表層としては、例えば、後述する撥油性コーティング層や親油性コーティング層を有することができる。本積層体は、タッチパネルの操作面に用いられてもよいし、ディスプレイパネルの表示面またはそれを覆うカバーパネル等の保護部材に用いられてもよい。但し、本積層体の用途はこれらに限定されない。
ここで、前記第1所定層の屈折率は、優れた耐指紋性を付与する観点から、1.49超であることが好ましく、1.60以上であることがより好ましく、2.00以下であることが好ましく、1.80以下であることがより好ましい。
さらに、前記第2所定層の屈折率は、優れた耐指紋性を付与する観点から、1.43以上であることが好ましく、1.45以上であることがより好まく、1.49以下であることが好ましく、1.47以下であることがより好ましい。なお、指紋の屈折率は上述したように1.42~1.49であると考えられるため、第2所定層の屈折率はその平均値である1.46に近い値であることがより好ましい。第2所定層の屈折率が1.43~1.49であれば、指紋と積層体表面との間の界面反射率が小さくなり、指紋付着部とそれ以外の部分との差異が少なくなり、指紋がより目立ちにくくなる。
ここで、基材の屈折率は適宜設定できるが、例えば、屈折率が1.50の基材を用いることができる。なお、各層の屈折率は、エリプソメータ等を用いて測定することできる。
基材を構成する材質は特に限定されず、従来公知のものを適宜用いることができる。例えば、基材は、TAC(トリアセチルセルロース)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる透明樹脂フィルムやそれらの積層フィルム(積層板)、すなわち樹脂製基材であってよい。また、基材として、従来公知のガラス製の基材(ガラス基材)を用いてもよい。
また、第1所定層、第2所定層および最表層を構成する材質はいずれも特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる層や、金属酸化物(例えば、ZrO、Al、SiO)などを、例えば、真空蒸着、スパッタリング又はウェットコーティングさせることにより得られる薄膜からそれぞれ構成されてもよい。これらの層は、含有する添加物や樹脂の種類等によって、互いに異なる特性を付与することができる。
また、本積層体では、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域において負のピークを持ち、正反射領域以外の角度において正のピークを持つ、撥油性コーティングを(最表層の)表面に有する場合、前記表面におけるスクアレン付着量が40μg未満であることが好ましい。このような条件を満たすことにより、指紋付着によるΔL*(θ)を低減させることができ、指紋をより目立ちにくくすることができる。最表層が撥油性を有する場合、その屈折率は、例えば、1.30~1.50とすることができる。なお、光入射角度-70°における、正反射領域は、+70±10°とする。ここで、図5に、本実施形態に係る撥油性コーティングを表面に有する積層体における、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性の一例を示すグラフを示す。図5に示すグラフでは、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域(+70±10°)において負(マイナス)のピークを有している。また、当該グラフでは、正反射領域以外の角度において正(プラス)のピークを有している。なお、正反射領域において負のピークを持つとは、当該負のピークの頂点となる位置の角度(°)が、正反射領域の範囲内(図5では70°)となることを意味するとも解釈できる。また、正反射領域以外の角度において正のピークを持つとは、当該正のピークの頂点となる位置の角度(°)が、正反射領域以外の範囲内(図5では55°)となることを意味するとも解釈できる。
また、本積層体では、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域以外の角度において正のピークを持たない親油性コーティングを(最表層の)表面に有することも好ましい。なお、当該親油性コーティングは、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性において正反射領域のみに正のピークを有することができる。このような親油性コーティング表面を有することにより、指紋付着によるΔL(θ)を低減することができ、指紋をより目立ちにくくすることができる。なお、親油性コーティングでは、正反射は増加するが、第2所定層の屈折率を指紋成分の屈折率に近づけることで、指紋目立ちを容易に抑制することができる。最表層が親油性を有する場合、その屈折率は、例えば、1.30~1.50とすることができる。ここで、図6に、本実施形態に係る親油性コーティングを表面に有する積層体における、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性の一例を示すグラフを示す。図6に示すグラフでは、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域(+70±10°)以外の角度において正のピークを持たず、正反射領域のみに正のピークを有している。そして、当該正のピークの頂点となる位置の角度(°)が、正反射領域の範囲内(図6では70°)となっている。
なお、上述した変角ΔL(θ)の角度依存性は、光入射角度-70°に限られるものではなく、例えば、光入射角度-30°の場合でも同様の挙動がみられる。
上記親油性コーティングを有する本積層体において、第2所定層上に配される前記最表層の表面から前記第2所定層までの距離は、60nm以下であることが好ましい。当該距離が60nm以下であれば、親油性の最表層の屈折率と、その表面に付着した指紋(皮脂)の屈折率との差異による光学干渉を抑制でき、指紋をより目立ちにくくすることができる。なお、第2所定層上に直接親油性の最表層が積層されている場合には、前記最表層の厚みを60nm以下とすることが好ましい。また、最表層と第2所定層との間に他の層が配されている場合には、最表層と当該他の層との合計の厚みを60nm以下とすることが好ましい。このようにすることで、最表層表面の親油性を維持しつつ、その屈折率による光学的影響を低減することができる。言い換えると、これにより、指紋が実質的に第2所定層に直接付着しているとみなすことができる。
本積層体では、優れた耐指紋性を付与する観点から、上述した式(2)より算出される表面におけるΔ輝度が0.5[cd/m]以下であることが好ましい。
なお、上述した各数値は、発明者らによるシミュレーション結果に基づくものである。シミュレーションは、積層体の各部材の屈折率(空気の屈折率も含む)および厚みを適宜変化させた各種条件により行い、その結果に基づき、所望の数値範囲を決定している。例えば、親油性コーティングを有する本積層体において、第2所定層上に配される前記最表層の表面から前記第2所定層までの距離を60nm以下と判断したシミュレーションにおいては、積層体の親油性である最表層の厚みのみを変化させた。また、指紋の厚みは、実測値で通常10~数百nmであるところ、当該シミュレーションでは、代表値として50nmを用いた。なお、シミュレーションにおける光学干渉ΔYは、ΔY=∫明所比視感度関数×D65光源関数×(R-R)dλ、で表される。ここで、R:積層体の表面における強度反射率,R:積層体の表面に付着した指紋における強度反射率、である。Yは、明度Lと比例関係にあるため、ΔYが小さい値となる場合、ΔL(θ)も同様に小さい値となる。
シミュレーションにおいて、強度反射率Rmは下記数式Iで与えられる。
Figure 0007367244000001
数式Iにおいて、ηa:空気の屈折率、ηs:基材の屈折率、m:特性行列[M]の成分、である。特性行列[M]は、下記数式IIで表される。
Figure 0007367244000002
数式IIにおいて、n:基材上に積層された層の数、j:基材上に積層された各層の最表層(最上層)からの順番、η:光学アドミッタンス、φ:光路長、である。なお、積層体の表面に指紋が付着している場合、指紋を積層体の最表層であると仮定する。また、ηは、下記数式IIIで表され、φは、下記数式IVで表される。
Figure 0007367244000003
Figure 0007367244000004
数式III及び数式IVにおいて、N:各層の屈折率、φ:各層への入射角、である。また、数式IVにおいて、d:各層の厚み、λ:光の波長、である。
なお、本実施形態において、積層体の表面から第2所定層までの距離や、各層の屈折率などは、エリプソメータを用いて非破壊で測定することができる。また、積層体を切断し、その切断面をイオンミリングやFIB(Focused Ion Beam)加工した後に観察または分析してもよい。例えば、XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)等を用いて定性分析を行い元素や構造の同定を行ってよい。また、電子顕微鏡により層数や膜厚の確認を行ってもよい。エリプソメータによる測定結果と、その他の観察または分析結果とを比較することにより、より精度の高い構造確認を行うことも可能である。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法(以降、本製造方法と称することがある)では、積層体の表面において、上述したΔL(θ)が0.5以下となるように積層体を製造する。本製造方法により得られる積層体は、優れた耐指紋性を有することができる。本製造方法では、ΔL(θ)が0.5以下となるように、積層体の表面を表面処理することもできる。なお、当該表面処理方法は、本発明の効果を得られる範囲で特に限定されず、従来公知の手法を用いることができる。例えば、基材表面に、AG(Anti-Glare)コーティングを施すことができる。AGコーティングは、基材表面にごく細かい凹凸をつけることにより、反射光を拡散させ、反射や映り込みを抑えることができる。
本発明の積層体は、例えば、以下の手順により製造することができる。
まず、樹脂基材またはガラス基材などの基材上に、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工液を、バーコーターなどを用いて塗布し、必要に応じて加熱して(例えば、80℃で90秒間)、乾燥する。その後、不活性ガス(例えば、窒素ガス)雰囲気下にて、活性エネルギー線硬化を行い、所定膜厚(例えば、5μm)のハードコート塗膜を形成する。
活性エネルギー線硬化型樹脂は、活性エネルギー線の照射により硬化反応を生じて硬化物を形成できる重合性化合物を含むものである。重合性化合物としては、単官能単量体、多官能単量体、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーや重合体を用いることができる。
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ペンタメチルピペリジル、(メタ)アクリル酸ヘキサヒドロフタル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルフタル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、フマル酸ジt-ブチル、フマル酸ジn-ブチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸モノ(ジ)メチル、イタコン酸モノ(ジ)エチル、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドンなどを用いることができる。
多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2’-チオジエタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
ウレタン変性アクリレートは、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体とのウレタン化反応によって得ることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。
ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、ポリエステルオリゴマー、エポキシオリゴマー、ウレタンオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、アルキッドオリゴマー、ポリブタジエンオリゴマー、ポリチオールポリエンオリゴマー及びスピロアセタールオリゴマーの各オリゴマー、多価アルコールの多官能(メタ)アクリル酸エステルからなるオリゴマーにビニル基や(メタ)アクリロイル基を付加させたオリゴマーが挙げられる。ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する重合体としては、上記ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーの重合体タイプが挙げられる。
また、塗工液には、必要に応じて、希釈溶剤、ビーズ、フィラー、光分解型又は熱分解型の重合開始剤、金属酸化物、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光増感剤、光安定剤、シランカプリング剤などの添加剤を配合できる。
希釈溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシブタノール等が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α-アミロキシムエステル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類が挙げられ、具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフェリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンゾイン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、α-アミロキシムエステル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、テトラメチルチュウラムモノサルファイド等が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、シリカ、中空シリカ、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
界面活性剤としては、各種原料を配合したときの相溶化の目的や、被膜の平滑性を向上させる目的に用いられ、特に限定はされないが、アクリル系共重合物(イオン系、非イオン系)、メタクリル系共重合物、溶剤型塗料用レベリング剤、ポリシロキサン系化合物等が挙げられる。
光増感剤としては、上記重合開始剤用の公知である化合物が用いられ、例えばトリブチルアミン、トリエチルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-n-ブチルホソフィン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の三級アミン等が挙げられる。
これらの各種成分の配合割合は、本発明の効果が得られる範囲で適宜設定でき、特に限定されない。これの各種成分を適宜配合することにより、製造する積層体の光学特性、塗膜特性および耐久性などの様々な特性を調節できる。また、活性エネルギー線およびその照射量も、従来公知の条件を適宜使用でき、例えば、メタルハライドランプを使用できる。
次に、得られたハードコート塗膜に、プラズマ処理を行い、真空蒸着法にて、第1所定層(高屈折率層)および第2所定層(低屈折率層)となるAR(Anti-Reflection)コーティング膜をそれぞれ形成する。
ここで、各層の構成材料は、目的とする屈折率および反射率に応じて適宜選択でき、層数および厚みなども適宜設定できる。例えば、第1所定層および第2所定層は、1層ずつそれぞれ形成されてもよいし、交互に複数層積層された積層体であってもよい。また、第1所定層および第2所定層の厚みは、例えば、それぞれ1nm以上200nm以下とすることができる。
さらに、スパッタリング法やウェットコーティング法などで各層を形成してもよい。
第1所定層は、五酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)、五酸化タンタル(Ta)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化アンチモン(Sb)、酸化ネオジム(Nd)、硫化亜鉛(ZnS)などを用いることができる。さらに、第1所定層に導電特性を付与したい場合、例えば、ITO、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO)を使用できる。さらに、第1所定層に、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。その際、第1所定層は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの無機材料や、アクリル樹脂などの有機材料を含むこともできる。
第2所定層は、入手の容易さとコストの観点から、Siの酸化物を含むことが好ましく、SiO(Siの酸化物)等を主成分とした層であることが好ましい。ここで、主成分とは、対象(ここでは第2所定層)に含まれる成分のうち最も含有量が多い成分のことを意味する。第2所定層は、SiOの他に、例えば、耐久性向上の目的でNa、硬度向上の目的でZr、Al、またN、耐アルカリ性向上の目的で、Zr、Alなどの元素を含有できる。第2所定層には、例えば、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化ナトリウム(NaF)、クリオライト(NaAlF)、チオライト(NaAl14)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化スチロンチウム(SrF)、フッ化ジルコニウム(ZrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化イットリウム(YF)なども含有できる。
より具体的には、例えば、第1所定層として、原料:ZrO/Alを用いて、真空蒸着法により、屈折率1.70となるARコーティング膜(例えば、膜厚:150nm)を形成できる。さらに、例えば、第2所定層として、原料:SiOを用いて、真空蒸着法により、屈折率1.46となるARコーティング膜(例えば、膜厚:90nm)を、上記第1所定層上に形成できる。
続いて、第2所定層上に、スプレー法にて、シランカップリング剤(例えば、パーフルオロポリエーテル系シランカップリング剤)を塗布し、高温高湿(例えば、温度50℃、相対湿度90%)環境下で所定時間(例えば、12時間)硬化させ、最表層として、所定厚み(例えば、10nm)のAF(Anti-Fingerprint)コーティング膜を形成する。
以上より、本発明の積層体を得ることができる。
なお、最表層としては、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基およびフルオロオキシアルカンジイル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有するフッ素化合物を用いて形成される撥油性コーティング層を用いることができる。これらの官能基は、一部、-H基が残っていても良いし、全てのH基がフッ素(-F)基に置き換わっていてもよい。また、構造中に分岐があってもよく、これらが複数連結したダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー構造を形成していてもよい。また、当該フッ素化合物は、シリルエーテル基、アルコキシシリル基、アルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの反応性基を有していてもよい。
上記フッ素化合物として、例えば、次の一般式(A)で表される化合物を用いることができる。
f1-R-D ・・・一般式(A)
(Rf1はフルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基を含む部位を、Rはアルカンジイル基、アルカントリイル基、およびそれらから導出されるエステル構造、ウレタン構造、エーテル構造、トリアジン構造を、Dは反応性部位を示す)。
一般式(A)で表される化合物としては、例えば、以下のものを挙げることができる。2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフロオロプロピルアクリレート、2-パーフルオロブチルエチルアクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロデシルエチルアクリレート、2-パーフルオロ-3-メチルブチルエチルアクリレート、3-パーフルオロ-3-メトキシブチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロ-5-メチルヘキシルエチルアクリレート、3-パーフルオロ-5-メチルヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロ-7-メチルオクチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2-パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2-パーフルオロ-3-メチルブチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-3-メチルブチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロ-5-メチルヘキシルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-5-メチルヘキシル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロ-7-メチルオクチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-7-メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1-トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリアクリロイル-ヘプタデカフルオロノネニル-ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
これらの他にも、最表層として、従来公知の撥油性コーティング層を用いることができる。
また、最表層としては、例えば、加水分解性のオルガノシラン化合物(例えば、ヒンダートエステル基を含有するもの)や、その加水分解縮合物を用いた親油性コーティング層を用いることができる。当該オルガノシラン化合物は、親油性および耐熱性に優れるヒンダートエステル基と、加水分解性シリル基(例えば、アルコキシシリル基)または水酸基含有シリル基とを含むことができる。親油性コーティング層としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、特開2020-203838号公報に記載されるオルガノシラン化合物を用いることができる。
<表示装置>
本発明の表示装置(以降、本表示装置と称することがある)は、本積層体を備えるものであれば、特に制限なく、従来公知のものを適宜適用することができる。本積層体を有する本表示装置は、耐指紋性に優れるため、タッチパネルやディスプレイパネル等を備える表示装置等の各種電子機器に好適に用いることができる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、後述する例1~例15、例31~例33は、本発明の耐指紋性の評価方法を評価するための例であり、例16~例30は従来の評価方法を評価するための例である。
(ΔL(θ)値と官能評価結果との相関関係の確認)
(1)測定サンプルの作製
まず、外形115mm×90mm、厚み2.0mmの無色透明のポリカーボネート板に、人工指紋液2.0gを滴下し、スピンコーティングすることで、HAZE値=7±2%となるように人工指紋液の転写箔を作製した。なお、HAZE値は、ヘーズメータ(商品名:NDH-5000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定を行い、HAZE値(%)=拡散透過率÷全光線透過率により求めた。なお、使用した人工指紋液は、温度20℃では固体であり、温度40℃では分散系となる性質を有していた。
次に、直径20mm、厚み2mmの天然ゴムパッド(天然ゴム、ゴム硬度:ショアE70)を人工指紋液の前記転写箔に荷重60Nの力で2秒間押し付けた後、人工指紋液が転写された天然ゴムパッドをサンプルに荷重60Nの力で2秒間押し付けて人工指紋液をサンプルに転写させることで、測定用サンプルを作製した。なお、本実施例では、ΔL(θ)と官能評価結果との相関関係を検証することを目的としていることから、各サンプルの詳細に関しての説明は省略するが、例えば、下記例のサンプルは以下のものを使用している。例1:表面をAGコーティングしたガラス基材上に、屈折率2.33の第1層と屈折率1.46の第2層を形成し、表面に撥油性コーティングしたもの(反射率:0.3%)。例4:表面をAGコーティングする基材に樹脂板を使用し、積層体表面に親油性コーティングしたもの(反射率:4.5%)。例5:表面をAGコーティングした樹脂板上に、屈折率2.33の第1層と屈折率1.46の第2層を形成したもの(反射率:0.4%)。
(2)拡散反射耐指紋性ΔL(θ)の測定
得られた上記測定サンプルにおいて、人工指紋液が転写されている部位と、転写されていない部位、すなわち、人工指紋液が付着している部位と付着していない部位に対して、変角測色計(商品名:VC-2、スガ試験機株式会社製)を用いて、CIE1976L表示系により規定される変角明度Lをそれぞれ測定した。そして、以下の式(1)に従い、両者の測定値差ΔL(θ)を算出した。
式(1)
ΔL(θ)=人工指紋液転写部のL-人工指紋液非転写部のL
但し、光入射角度は、測定サンプル表面の法線に対して-70°とし、測定角度は、測定サンプル表面の法線に対して-5°とした。
(3)官能評価の実施
得られた測定サンプルに対して、実際の車両環境における太陽光の入射角度、表示装置とユーザとの位置関係を再現した評価環境を構築し、下記官能評価基準に基づき、ヒトによる官能評価を行った。具体的には、太陽光として、人工太陽光照明を用い、照度は30000~60000lux、人工太陽光照明の入射角度は-70°とし、ユーザによる観察角度は-5°とした。
・官能評価基準
5:指紋痕が見えない。
4:指紋痕がほとんど見えない。
3:指紋痕が少し見える。
2:指紋痕が見える。
1:指紋痕がよく見える。
上記手順に従い、18個の測定サンプル1~15、31~33に対して、ΔL(θ)値の測定と、ユーザによる官能評価を行い、ΔL(θ)値と官能評価結果との相関関係を確認した。以下の表1に、各測定サンプルの結果を示し、図2に各測定サンプルの相関関係を示すグラフを記載した。
Figure 0007367244000005
図2に示すように、ΔL(θ)値と官能評価結果とは一定の相関関係があることが確認できた。また、ΔL(θ)が0.5以下の場合に官能評価結果が4以上となり、優れた耐指紋性を有することが分かった。
(従来の耐指紋性評価方法と官能評価結果との相関関係の確認)
(1)測定サンプルの作製
ガーゼ8枚を敷き、オレイン酸を一滴たらして10秒間放置した。次いで、オレイン酸を滴下した部分にシリコンゴムを置き、500gの荷重をかけ、2秒間静止した。そして、前記シリコンゴムを新しい8枚のガーゼ上に載せ、500gの荷重をかけ、2秒間静止した。続いて、前記シリコンゴムをサンプル上に移し、500gの荷重をかけ2秒間静止して、オレイン酸をサンプルに転写させ、測定用サンプルを作製した。
(2)ΔL(SCI)の測定
得られた上記測定サンプルにおいて、オレイン酸が転写されている部位と、転写されていない部位、すなわち、オレイン酸が付着している部位と付着していない部位に対して、色差計(商品名:CM-5、コニカミノルタ製)を用いて、CIE1976L表示系により規定される明度Lをそれぞれ測定した。そして、以下の式(3)に従い、両者の測定値差ΔL(SCI)を算出した。
式(3)
ΔL(SCI)=オレイン酸転写部のL-オレイン酸非転写部のL
(3)官能評価の実施
上述した官能評価方法を用いて、得られた測定サンプルに対して、ヒトによる官能評価を行った。上記手順に従い、15個の測定サンプル16~30に対して、ΔL(SCI)値の測定と、ユーザによる官能評価を行い、ΔL(SCI)値と官能評価結果との相関関係を確認した。以下の表2に、各測定サンプルの結果を示し、図3に各測定サンプルの相関関係を示すグラフを記載した。
Figure 0007367244000006
図3に示すように、従来、耐指紋性の評価指標として用いられていた積分球による角度積分された全角度の反射強度を示す光学指標ΔL(SCI)では、耐指紋性を適正に評価することが困難であることが分かった。また、上述した従来の転写方法では、ガーゼにオレイン酸が残存する場合や液滴ハジキが生じる場合等があり、再現性良くサンプルにオレイン酸を転写することができない場合があった。
(Δ輝度測定)
上述した手順で作製した測定サンプルに対して、人工指紋液が転写された部位と、転写されていない部位の輝度を輝度計(商品名:SR-UL1R、トプコンテクノハウス社製)を用いてそれぞれ測定し、下記式(2)に基づきΔ輝度[cd/m]を算出した。
式(2)
Δ輝度=人工指紋液転写部の輝度-人工指紋液非転写部の輝度
但し、光入射角度は測定サンプル表面の法線に対し上に85°、測定角度は測定サンプル表面の法線に対し上に25°、右に30°とし、測定距離は650mm、測定範囲は0.2°(立体角)とした。測定サンプルを用いて測定したΔ輝度[cd/m]とΔL(θ)の関係を以下の表3および図4に示す。
これらの結果より、Δ輝度とΔL(θ)とは一定の相関関係があることが分かった。ただし、輝度の測定は、設置角度や外光の問題から定められた環境でおこなうことが難しく、再現性が高くない評価のため、変角測色計を用いた本発明の評価方法を用いる、または、輝度による評価と本発明の評価とを併用することが望ましい。
Figure 0007367244000007
(スクアレン付着量の測定)
指紋が付着した積層体を想定して、人工指紋液(スクアレン含有量:13質量%)を転写した測定サンプル表面に付着している人工指紋液に対して、溶媒洗浄により付着油分を除いた石英ウールにノルマルヘキサンをしみ込ませ、表面をこすり洗う操作とノルマルヘキサンで洗い流す操作をして、洗液を40mL容器に集めた。そして、容器内に使用した石英ウールを入れた後、密栓をし、5分間の超音波抽出を行った溶液を50mL量りとり、測定装置に供し、スクアレン量を測定した。スクアレン量の測定に用いた検量線は、ノルマルヘキサンで段階的に希釈調整した標準溶液を測定装置に供し、調整濃度と測定結果より得られた面積値より作成した。
・測定装置
ガスクロマトグラフィー(GC):Agilent Technologies 7890B(商品名)
質量分析計(MS):JEOL JMS-Q1500GC(商品名)
・GC条件
導入口温度:280℃
導入方法:splitless法
導入量:2μL(オートサンプラー使用)
分析カラム:Agilent Technologies(商品名) 5%フェニル-95%メチルシロキサン
キャリアーガス:ヘリウム
ヘッド圧力:64.50kPa(コンスタントプレッシャー)
オーブン条件:60℃(3min)-20℃/min-300℃
・MS条件
イオン化法:EI
測定方法:電子イオン化法によるScan測定
測定質量範囲:m/Z=40~425
イオン化電圧:70eV
イオン源温度:200℃
インターフェイス温度:250℃
上記測定サンプルとして、撥油性コーティングを備えた表示装置、具体的には、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域(70±10°)において負のピークを持ち、正反射領域以外の角度において正のピークを持つものを使用した。なお、ΔL(θ)の角度依存性は、上述した拡散反射耐指紋性ΔL(θ)の測定方法と同様の方法において、測定角度を-60°~+85°とし、角度毎のΔL(θ)を算出することで求めた。以下に、当該測定サンプルにおける、人工指紋液転写後(指紋が付着したと想定したとき)のスクアレン付着量とΔL(θ)との関係を以下の表4に示す。
Figure 0007367244000008
上記表4に示すように、撥油性コーティングを備えた表示装置では、人工指紋液転写後(指紋が付着したと想定したとき)の表面のスクアレン付着量が40μg未満の場合、ΔL(θ)が0.5以下となり、優れた耐指紋性を有することが分かる。なお、光入射角度-70°におけるΔL(θ)の角度依存性が、正反射領域以外の角度において正のピークを持たない親油性コーティングを備えた表示装置では、指紋成分が親油性の表面に付着した場合でもなじむため、ΔL(θ)はスクアレン付着量に左右されない。
以上より、本発明の耐指紋性の評価方法は、車載用表示装置にも適用可能な優れた評価方法であることが分かる。なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
1 光源
2 光透過性のある物体
3 表示装置
N 法線

Claims (4)

  1. 対象物表面の耐指紋性を評価する方法であって、
    前記対象物表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との変角測色計による下記式(1)より求められる測定値差ΔL(θ)を用いることを特徴とする耐指紋性の評価方法:
    式(1)
    ΔL(θ)=人工指紋液転写部のL-人工指紋液非転写部のL
    但し、光入射角度は、前記対象物表面の法線に対して-70°とし、測定角度は、前記対象物表面の法線に対して-5°とする。
  2. 前記対象物表面の耐指紋性を評価する際に、さらに、前記対象物表面における人工指紋液が転写された部位と転写されていない部位との輝度計による下記式(2)により求められる測定値差Δ輝度を用いる、請求項1に記載の評価方法。
    式(2)
    Δ輝度=人工指紋液転写部の輝度-人工指紋液非転写部の輝度
  3. 前記人工指紋液の転写方法が、転写用基材に前記人工指紋液をスピンコーティング法により付着させ、ヘイズ値が7±2%である転写箔を作製し、前記転写箔に疑似指を荷重60Nで押し当てた後、前記疑似指を前記対象物表面に荷重60Nで2秒間押し当てる方法である、請求項1に記載の評価方法。
  4. 前記対象物表面の耐指紋性を評価する際に、さらに、前記対象物表面のスクアレン付着量を用いる、請求項1に記載の評価方法。
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