以下に、本発明の実施の形態に係るモータ制御回路及びモータ制御装置の構成を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るモータ制御装置の構成を示す図である。モータ制御装置100-1は、モータ4に交流電力を供給するインバータ回路1と、インバータ回路1に設けられるスイッチング素子を動作させる駆動信号を生成する駆動信号生成回路2とを備える。またモータ制御装置100-1は、インバータ回路1のスイッチング素子の動作を制御するためのPWM信号を生成するモータ制御回路3-1を備える。図1では、インバータ回路1に直流電力を供給するための整流回路、コンバータ回路、交流電源などの図示が省略されている。モータ4は交流電力によって回転する回転電機である。駆動信号は、駆動信号生成回路2に入力されるPWM信号が、スイッチング素子を駆動可能な電圧に変換されたものである。PWM信号は、スイッチング動作を制御するためのハイレベル又はローレベルの2値をとる矩形波信号である。
次にモータ制御回路3-1の構成を説明する。図2は実施の形態1に係るモータ制御回路の構成を示す図である。モータ制御回路3-1は、PWM信号を生成する制御回路11と、モータ4の故障又は劣化を判定するための判定情報を生成する判定情報生成回路12とを備える。またモータ制御回路3-1は、判定情報生成回路12で生成される判定情報に基づき、モータ4が故障又は劣化しているか否かを判定し、モータ4が故障又は劣化していることを示す信号を、割り込み信号として演算処理機能を含む制御回路11へ出力する判定回路10を備える。判定回路10は、従来では制御回路11で実施されていた演算処理を代替することによって、制御回路11の処理負担を軽減するための回路である。なおモータ4の劣化は、判定情報を長期間計測した際、判定情報の微小変化を検出することによって判定される。
判定情報生成回路12で生成される判定情報は、電流検出部5で検出された電流の値を示す電流検出情報と、温度検出部6で検出された温度の値を示す温度検出情報と、電源電圧検出部7で検出された電源電圧の値を示す電圧検出情報との少なくとも一つを、AD変換器8によってディジタル値に変換された情報である。なお、判定情報生成回路12に入力される検出情報は、モータ4が故障又は劣化しているか否かを判定するために必要な情報であればよく、電流検出情報、温度検出情報及び電圧検出情報に限定されるものではない。このように判定情報生成回路12で生成される判定情報は、電流検出部5などで検出された検出情報がAD変換器8でディジタル値に変換された結果の情報であるため、以下では「変換結果」と称する場合がある。
判定情報生成回路12は、AD変換器8及びADシーケンサ9を備える。AD変換器8は、電流検出情報と温度検出情報と電圧検出情報との少なくとも一つを、ディジタル値に変換して、変換結果をADシーケンサ9に出力する。ADシーケンサ9には、変換結果が保持され、ADシーケンサ9に保持された変換結果は、判定回路10に読み出される。
判定回路10には、電流検出情報、温度検出情報及び電圧検出情報のそれぞれに対して比較される判定値40が設定されている。判定値40は、例えばモータ4が故障又は劣化しているときに検出される電流、温度、電源電圧を基準に設定される。
次にモータ制御回路3-1の動作を説明する。図3は実施の形態1に係るモータ制御回路の動作を説明するためのシーケンスチャートである。図4は実施の形態1に係るモータ制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。制御回路11では速度指令信号に基づきモータ制御が行われている(ステップS1)。速度指令信号は、モータ4の回転速度の目標値を指定する信号である。
電流検出情報と温度検出情報と電圧検出情報との少なくとも一つを受信したAD変換器8では、これらの検出情報の値が、ADシーケンサ9の取り扱い可能なディジタル値に変換される。ADシーケンサ9では、一定周期毎にAD変換器8の変換結果が保持され、ADシーケンサ9は、当該周期が経過する度に変換終了信号を出力する。変換終了信号は、当該周期における変換結果の保持が終了したことを示す信号である。
判定回路10は、変換終了信号を受信したか否かを判定する(ステップS2)。変換終了信号を受信していない場合(ステップS2,No)、ステップS1及びステップS2の処理が繰り返される。変換終了信号を受信した場合(ステップS2,Yes)、判定回路10は、ADシーケンサ9に保持された変換結果を読み込む(ステップS3)。
判定回路10は、読み込んだ変換結果の値と予め設定された判定値40とを比較し、変換結果の値が判定値40以上であるか否かを判定する(ステップS4)。変換結果の値が判定値40未満である場合(ステップS4,No)、ステップS1からステップS4までの処理が繰り返される。変換結果の値が判定値40以上である場合(ステップS4,Yes)、判定回路10は、変換結果の値が判定値40以上となったことを通知する信号である割り込み信号を出力する(ステップS5)。割り込み信号を受信した制御回路11は、例えばモータ4が故障又は劣化したことを外部機器に通知する信号を出力する動作である外部通知を行う(ステップS6)。なお、外部通知は、割り込み信号を出力したタイミングで、判定回路10が出力してもよい。
図5は実施の形態1に係るモータ制御回路の動作を説明するためのタイムチャートである。図5には、制御回路11の動作状態と、変換終了信号が変化するタイミングと、変換結果と、判定回路10の判定処理が行われるタイミングと、割り込み信号が変化するタイミングとが示される。制御回路11でモータ制御が行われているときに、1つ目の変換終了信号がLowからHighに変化した場合、当該変換終了信号がLowからHighに変化した時点から一定期間T1が経過するまで、判定回路10では判定処理が行われる。判定処理は、変換結果の値が判定値40以上であるか否かを判定するステップS4の処理に相当する。判定処理は、判定回路10で行われるため、制御回路11のモータ制御が中断することはない。この判定処理では、例えば電流検出情報の値が判定値40未満のため、割り込み信号はLowである。なお、変換終了信号は、LowからHighに変化した直後に再びLowに変化する。
モータ制御が行われているときに、2つ目の変換終了信号がLowからHighした場合、当該変換終了信号がLowからHighに変化した時点から一定期間T2が経過するまで、判定回路10では、モータ4が故障又は劣化しているか否かを判定する判定処理が行われる。この判定処理では、例えば電流検出情報の値が判定値40以上のため、割り込み信号がLowからHighに変化する。これにより、制御回路11のモータ制御が中断され、外部通知が行われる。
図6は実施の形態1の比較例に係るモータ制御回路の構成を示す図である。図6に示されるモータ制御回路300は、図2に示す判定回路10及び制御回路11の代わりに、制御回路11Aを備える。制御回路11Aでは、前述したモータ制御及び判定処理が行われる。
次にモータ制御回路300の動作を説明する。図7は実施の形態1の比較例に係るモータ制御回路の動作を説明するためのシーケンスチャートである。図8は実施の形態1の比較例に係るモータ制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。制御回路11Aでは、速度指令信号に基づきモータ制御が行われている(ステップS11)。電流検出情報と温度検出情報と電圧検出情報との少なくとも一つを受信したAD変換器8では、これらの検出情報の値が、ADシーケンサ9の取り扱い可能なディジタル値に変換される。ADシーケンサ9では、一定周期毎にAD変換器8の変換結果が保持され、ADシーケンサ9は、当該周期が経過したときに、変換終了信号を出力する。
制御回路11Aは、変換終了信号を受信したか否かを判定する(ステップS12)。変換終了信号を受信していない場合(ステップS12,No)、ステップS11及びステップS12の処理が繰り返される。変換終了信号を受信した場合(ステップS12,Yes)、制御回路11Aは、ADシーケンサ9に保持された変換結果を読み込む(ステップS13)。
制御回路11Aは、読み込んだ変換結果の値と予め設定された判定値40とを比較し、変換結果の値が判定値40以上であるか否かを判定する(ステップS14)。変換結果の値が判定値40未満である場合(ステップS14,No)、ステップS11からステップS14までの処理が繰り返される。変換結果の値が判定値40以上である場合(ステップS14,Yes)、制御回路11Aは、外部通知を行う(ステップS15)。
図9は実施の形態1の比較例に係るモータ制御回路の動作を説明するためのタイムチャートである。図9には、制御回路11Aの動作状態と、変換終了信号が変化するタイミングと、変換結果とが示される。制御回路11Aでモータ制御が行われているときに、1つ目の変換終了信号がLowからHighに変化した場合、当該変換終了信号がLowからHighに変化した時点から一定期間T1が経過するまで、制御回路11Aでは、モータ制御に代えて判定処理が行われる。判定処理は、変換結果の値が判定値40以上であるか否かを判定するステップS14の処理に相当する。判定処理は、制御回路11Aで行われるため、一定期間T1が経過するまでモータ制御は中断される。この判定処理では、例えば電流検出情報の値が判定値40未満のため、外部通知は行われない。なお、変換終了信号は、LowからHighに変化した直後に再びLowに変化する。
制御回路11Aでは、一定期間T1が経過した後、モータ制御が再開される。このモータ制御が行われているときに、2つ目の変換終了信号がLowからHighした場合、当該変換終了信号がLowからHighに変化した時点から一定期間T2が経過するまで、制御回路11Aでは判定処理が行われる。この判定処理では、例えば電流検出情報の値が判定値40以上のため、一定期間T2が経過したときに外部通知が行われる。
このように、比較例に係るモータ制御回路300では、変換終了信号がLowからHighに変化した時点から一定期間T1,T2が経過するまで、制御回路11Aによる判定処理、すなわちモータ4が故障又は劣化しているか否かの判定が行われる。そのため、この判定処理中にモータ制御が中断される。
これに対して、実施の形態1に係るモータ制御回路3-1では、図5に示すように、変換終了信号がLowからHighに変化した時点から一定期間T1,T2が経過するまで、判定回路10による判定処理が行われる。すなわち、従来では制御回路11で実施されていた演算処理(異常判定処理)が判定回路10に代替される。従ってモータ制御回路3-1では、モータ4が故障又は劣化しているか否かの判定処理と並行して、モータ制御が継続される。そのため、当該判定処理によってモータ制御が中断されることがない。このように、モータ制御が中断されないため、例えば図5に示される一定期間T1,T2の間に速度指令信号の値が変化した場合でも、速度指令信号の変化に対してモータ制御を即座に変更できる。具体的には、例えば、速度指令信号のオンデューティが長くなった場合にはPWM信号の通電率が大きくなり、速度指令信号のオンデューティが短くなった場合にはPWM信号の通電率が小さくなる。その結果、速度指令信号の変化に伴うモータ制御の応答性が向上する。また、制御回路11で実施されていた演算処理(異常判定処理)が判定回路10に代替されることによって、制御回路11の処理負担が軽減される。
また、速度指令信号の値が短期間に頻繁に変化する場合でも、PWM信号の通電率を遅延なく変更することができるため、モータ制御回路3-1を利用することにより、モータ故障判定、モータ劣化判定などを行いながら、複雑なモータ制御にも対応可能なモータ制御装置100-1を得ることができる。また制御回路11の演算負荷が軽減される分、より一層複雑なモータ制御が可能になる。また、モータ故障判定、モータ劣化判定などの結果、故障又は劣化が発生していると判断された場合には即座に外部通知を行うことも可能である。
図10は実施の形態1に係るモータ制御回路の変形例を示す図である。図10に示されるモータ制御回路3-1Aは、通知端子13を備える。通知端子13は例えば判定回路10と電気的に接続される。通知端子13は、モータ4が故障していること、及びモータ4が劣化していることの少なくとも一つを、モータ制御回路3-1Aの外部に設けられる回路へ通知するための端子である。なお、通知端子13には、例えば判定情報生成回路12と判定回路10と制御回路11とが設けられるプリント基板上に設置される金属端子、判定回路10を構成するプロセッサの端子などを利用できる。
判定回路10は、変換結果の値が判定値40以上のときには、通知端子13に印加される電圧の値を、変換結果の値が判定値40未満のときに通知端子13に印加される電圧の値よりも高くし、又は低くする。すなわち、通知端子13に印加される電圧が異なる値に変更される。モータ制御回路3-1Aの外部に設けられる回路は、通知端子13に印加される電圧の変化量が、例えばモータ4が故障又は劣化したことなどを検出するための規定値よりも増加したことを検出することによって、モータ4が故障又は劣化したことを検出できる。
このように通知端子13を設けることによって、制御回路11による外部通知動作が行われなくとも、通知端子13に印加される電圧が変化するだけで、モータ4の故障、劣化などが外部回路に伝達される。従って、制御回路11の外部通知動作が不要になり、制御回路11の演算負荷がより一層軽減される。
実施の形態2.
図11は実施の形態2に係るモータ制御装置の構成を示す図である。以下では、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分について述べる。実施の形態2に係るモータ制御装置100-2は、実施の形態1のモータ制御回路3-1の代わりにモータ制御回路3-2を備える。
図12は実施の形態2に係るモータ制御回路の構成を示す図である。実施の形態2に係るモータ制御回路3-2は、PWM信号を生成する制御回路31と速度変化検出回路20とを備える。速度変化検出回路20は、第1キャプチャ21、第2キャプチャ22、カウンタクロック23及び比較回路24を備える。図13は従来のモータ制御回路の構成を示す図である。従来のモータ制御回路3-2'は、PWM信号を生成する制御回路31'と速度変化検出回路20'とを備える。速度変化検出回路20'は、第1キャプチャ21、第2キャプチャ22及びカウンタクロック23を備える。カウンタクロック23は、一定周期のクロック信号を発生する。第1キャプチャ21は、速度指令信号がHighの時間を計測するために、例えば速度指令信号がLowからHighに変化した時点から、速度指令信号がHighからLowに変化するまでの期間に発生するクロック信号を計数し、計数結果を第1カウンタ値として保持する。第1キャプチャ21は第1カウンタ値を保持するレジスタである。第1キャプチャ21の第1カウンタ値は、例えば、速度指令信号がHighからLowに変化したときに更新される。第2キャプチャ22は、例えば、更新される前に第1キャプチャ21で保持されていた第1カウンタ値をコピーして、第2カウンタ値として保持する。第2カウンタ値が保持されるタイミングは、例えば速度指令信号がHighからLowに変化したときである。第2キャプチャ22は第2カウンタ値を保持するレジスタである。従来の制御回路31'には、第1キャプチャ21に保持される最新の第1カウンタ値と、第2キャプチャ22に保持される最新の第2カウンタ値とが入力される。制御回路31'は、第1カウンタ値と第2カウンタ値との差分、すなわち速度指令信号の速度差を検出し、速度差がある閾値以上であるか否かを判定する演算を実施する。このように従来のモータ制御回路3-2'では、速度指令信号の変化判定処理が制御回路31'で実施され、制御回路31'では、速度指令信号の速度差が殆ど無い場合でも、一定周期で速度差が閾値以上であるか否かを判定する演算が行われる。これに対して実施の形態2に係るモータ制御回路3-2は、速度変化検出回路20が備える比較回路24によって速度差が閾値以上であるか否かの判定が行われ、速度差が閾値を超えた場合にのみ、速度変化検出回路20からの信号により、制御回路31がモータ制御を変更するように構成されているため、制御回路31の処理負担が軽減される。
速度変化検出回路20には、速度指令信号を入力するための入力端子50が接続される。速度変化検出回路20は、入力端子50を介して入力される速度指令信号の変化を検出し、速度指令信号が変化したことを示す信号を、割り込み信号として制御回路31へ出力することにより、PWM信号の通電率を変更させる。
比較回路24は、第1キャプチャ21に保持される最新の第1カウンタ値と、第2キャプチャ22に保持される最新の第2カウンタ値とを比較することによって、速度指令信号の変化を検出して、速度指令信号が変化したことを示す信号を出力する。
次にモータ制御回路3-2の動作を説明する。図14は実施の形態2に係るモータ制御回路の動作を説明するためのシーケンスチャートである。図15は実施の形態2に係るモータ制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。制御回路31では、速度指令信号に基づきモータ制御が行われている(ステップS21)。速度指令信号がLowからHighに変化していないとき(ステップS22,No)、ステップS21及びステップS22の処理が繰り返される。速度指令信号がLowからHighに変化したとき(ステップS22,Yes)、第1キャプチャ21は、クロック信号を計数して第1カウンタ値を求める(ステップS23)。
その後、速度指令信号がHighからLowに変化するまでステップS23及びステップS24の処理が繰り返され(ステップS24,No)、速度指令信号がHighからLowに変化したとき(ステップS24,Yes)、第1キャプチャ21の第1カウンタ値が更新される。このとき第2キャプチャ22は、更新される直前の第1カウンタ値を第2カウンタ値として保持する(ステップS25)。
その後、速度指令信号がLowからHighに変化するまでステップS25及びステップS26の処理が繰り返され(ステップS26,No)、速度指令信号がLowからHighに変化したとき(ステップS26,Yes)、比較回路24は、第1カウンタ値と第2カウンタ値とを比較し、第2カウンタ値が第1カウンタ値と異なるか否かを判定する(ステップS27)。第2カウンタ値が第1カウンタ値と同じである場合(ステップS27,No)、ステップS21からステップS27までの処理が繰り返される。第2カウンタ値が第1カウンタ値と異なる場合(ステップS27,Yes)、比較回路24は割り込み信号を出力する(ステップS28)。割り込み信号を受信した制御回路31は、モータ制御を変更する(ステップS29)。
図16は実施の形態2に係るモータ制御回路の動作を説明するためのタイムチャートである。図16には、速度指令信号と、第1カウンタ値と、第2カウンタ値と、割り込み信号と、制御回路31の動作状態とが示される。Tで示される期間は、速度指令信号の変化周期である。Ton1、Ton2、Ton3で示される期間は、速度指令信号がHighの時間、すなわち速度指令信号がオンとなっている時間である。Ton1及びTon2は、互いに等しく、Ton3は、Ton1及びTon2のそれぞれよりも短い。第1キャプチャ21に保持される第1カウンタ値71は、Ton1に対応しており、例えば「10」である。第1カウンタ値72は、Ton2に対応しており、例えば「10」である。第1カウンタ値73は、Ton3に対応しており、例えば「3」である。第2キャプチャ22に保持される第2カウンタ値81は、第1カウンタ値71に対応しており、例えば「10」である。同様に、第2カウンタ値82は、第1カウンタ値72に対応しており、「10」であり、第2カウンタ値83は、第1カウンタ値73に対応しており、「3」である。
第1カウンタ値72と第2カウンタ値81とが比較された場合、第1カウンタ値72と第2カウンタ値81は互いに同じ値のため、割り込み信号はLowのままである。すなわち、割り込み信号は出力されない。第1カウンタ値73と第2カウンタ値82とが比較された場合、第1カウンタ値73と第2カウンタ値82は互いに異なる値のため、割り込み信号がLowからHighに変化する。すなわち、割り込み信号が出力される。割り込み信号が出力されたとき、制御回路31は、速度指令信号が変化したと判断して、モータ4の回転速度が、変化後の速度指令信号の値に追従するようにPWM信号を生成、すなわちモータ制御を変更する。図16の例では、第2カウンタ値82が第1カウンタ値73よりも大きいため、PWM信号の通電率が増加するようにモータ制御が行われる。
実施の形態2に係るモータ制御回路3-2では、速度変化判定が速度変化検出回路20で行われるため、制御回路31のモータ制御に係る演算負荷は、速度変化判定によって増加することがない。
図17は実施の形態2の比較例に係るモータ制御回路の構成を示す図である。図17に示されるモータ制御回路400は、図12に示す速度変化検出回路20及び制御回路31の代わりに、キャプチャタイマ20A及び制御回路31Aを備える。制御回路31Aではモータ制御及び速度変化判定が行われる。キャプチャタイマ20Aは、カウンタクロック23及びキャプチャ25を備える。キャプチャ25は、速度指令信号がHighの時間を計測するために、例えば速度指令信号がLowからHighに変化した時点から、速度指令信号がHighからLowに変化するまでの期間に発生するクロック信号を計数し、計数結果をカウンタ値として保持する。クロック信号はカウンタクロック23から出力される信号である。
次にモータ制御回路400の動作を説明する。図18は実施の形態2の比較例に係るモータ制御回路の動作を説明するためのシーケンスチャートである。図19は実施の形態2の比較例に係るモータ制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。制御回路31Aでは速度指令信号に基づきモータ制御が行われている(ステップS31)。速度指令信号がLowからHighに変化していないとき(ステップS32,No)、ステップS31及びステップS32の処理が繰り返される。速度指令信号がLowからHighに変化したとき(ステップS32,Yes)、キャプチャ25はクロック信号を計数してカウンタ値を求める(ステップS33)。
その後、速度指令信号がHighからLowに変化するまでステップS33及びステップS34の処理が繰り返され(ステップS34,No)、速度指令信号がHighからLowに変化したとき(ステップS34,Yes)、カウンタ値が更新され、キャプチャ25は、カウンタ値が更新されたことを示すカウンタ更新信号を出力する(ステップS35)。
カウンタ更新信号を受信した制御回路31Aは、キャプチャ25に保持されるカウンタ値を読み込み(ステップS36)、更新前のカウンタ値と更新後のカウンタ値とを比較する(ステップS37)。比較の結果、カウンタ値が同じである場合(ステップS37,Yes)、ステップS36及びステップS37の処理が繰り返される。カウンタ値が異なる場合(ステップS37,Yes)、制御回路31Aは、モータ制御を変更する(ステップS38)。このように、制御回路31Aは、モータ制御を行いながら、更新前のカウンタ値を保持すると共に、更新前のカウンタ値と更新後のカウンタ値とを比較する。
図20は実施の形態2の比較例に係るモータ制御回路の動作を説明するためのタイムチャートである。図20には、速度指令信号と、カウンタ値と、カウンタ更新信号と、速度変化が検出されるタイミングと、制御回路の動作状態とが示される。Ton1、Ton2、Ton3で示される期間は、速度指令信号がHighの時間、すなわち速度指令信号がオンとなっている時間である。Ton1及びTon2は、互いに等しく、Ton3は、Ton1及びTon2のそれぞれよりも短い。カウンタ値91は、Ton1に対応しており、例えば「10」である。カウンタ値92は、Ton2に対応しており、例えば「10」である。カウンタ値93は、Ton3に対応しており、例えば「3」である。
カウンタ値91とカウンタ値92とが比較された場合、カウンタ値91とカウンタ値92は互いに同じ値のため、速度変化は検出されない。カウンタ値92とカウンタ値93とが比較された場合、カウンタ値92とカウンタ値93は互いに異なる値のため、速度変化が検出される。速度変化が検出されたとき、制御回路31Aは、速度指令信号が変化したと判断して、モータ4の回転速度が、変化後の速度指令信号の値に追従するように、PWM信号の通電率を変更する。比較例に係るモータ制御回路400では、速度変化判定が制御回路31Aで行われるため、制御回路31Aの演算負荷は、モータ制御に係る演算のみが行われる場合に比べて増加する。
これに対して、実施の形態2に係るモータ制御回路3-2では、速度変化判定が速度変化検出回路20で行われる。そのため、制御回路31はモータ制御のみを行うことができる。従って、制御回路31の演算負荷が軽減され、速度指令信号が変化した場合でも、速度指令信号の変化に対してモータ制御を即座に変更できる。その結果、速度指令信号の変化に伴うモータ制御の応答性が向上する。また、速度指令信号の値が短期間に頻繁に変化する場合でも、PWM信号の通電率を遅延なく変更することができるため、複雑なモータ制御にも対応可能なモータ制御装置100-2を得ることができる。また制御回路31の演算負荷が軽減される分、より一層複雑なモータ制御が可能になる。
図21は実施の形態2に係るモータ制御回路の変形例を示す図である。図21に示されるモータ制御回路3-2Aの速度変化検出回路20は、比較回路24の代わりに比較回路24Aを備える。比較回路24Aでは、変化前の速度指令信号と変化後の速度指令信号との差分が演算され、この差分が、比較回路24Aに設定される判定値60に対して比較される。また比較回路24Aは、差分と判定値60とを比較した結果、差分が判定値60未満のときには割り込み信号を出力せず、差分が判定値60以上のときには割り込み信号を出力する。なお、比較回路24Aの判定処理は、これに限定されず、比較回路24Aは、差分が判定値60以下のときには割り込み信号を出力せず、差分が判定値60を超えるときには割り込み信号を出力するように構成してもよい。
次にモータ制御回路3-2Aの動作を説明する。図22は図21に示すモータ制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。図22に示されるステップS21からステップ27までの処理は、図15に示されるステップS21からステップ27までの処理と同様のため、説明を割愛する。
ステップS27の処理の後、比較回路24Aは、変化前の速度指令信号と変化後の速度指令信号との差分を演算する。すなわち、第1キャプチャ21に保持される第1カウンタ値と、第2キャプチャ22に保持される第2カウンタ値との差分を演算する。比較回路24Aは、演算された差分が判定値60以上か否かを判断する(ステップS30,Yes)。差分が判定値60未満の場合(ステップS30,No)、ステップS21からステップS30までの処理が繰り返される。演算された差分が判定値60以上の場合(ステップS30,Yes)、ステップS28及びステップS29の処理が行われる。ステップS28及びステップS29の処理は、図15に示されるステップS28及びステップS29の処理と同様のため、説明を割愛する。
例えば第1カウンタ値が「3」であり、第2カウンタ値が「10」である場合、差分は「7」となる。そして判定値60の値が例えば「2」の場合には、差分「7」は判定値60以上のため、モータ制御が変更される。一方、第1カウンタ値が「9」であり、第2カウンタ値が「10」である場合、差分は「1」となるため、判定値60の値が例えば「2」の場合には、差分「1」は判定値60未満となり、モータ制御は変更されない。
モータ制御回路3-2Aでは、例えばモータ制御回路3-2Aの周囲に設けられるプロセッサなどから発生するノイズによって、速度指令信号の波形が歪んだ場合でも、速度指令信号の小さな変化に対してはモータ制御を変化させずに済むため、ロバスト性の高いモータ制御装置100-2を得ることができる。また、モータ制御回路3-2Aでは、速度指令信号が特定の値だけ変化したときのみ、モータ制御を変化させることができるため、制御回路31における演算動作に伴う処理負担が軽減される共に電力消費量を軽減できる。
なお、本発明の実施の形態2に係るモータ制御回路3-2,3-2Aは、モータの回転速度を判別するモータ回転速度判別回路(制御回路31)を備え、モータの回転速度に応じてモータ駆動波形生成処理の切り替えを行うように構成されている。また本発明の実施の形態2に係るモータ制御回路3-2,3-2Aは、速度変化検出回路20を備え、速度指令信号の変化を検出するように構成されている。また本発明の実施の形態2に係るモータ制御回路3-2,3-2Aは、ハードウェアのみで速度指令信号の変化を検出してモータ制御に反映させるものである。
実施の形態3.
図23は実施の形態3に係るモータ制御装置の構成を示す図である。以下では、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分について述べる。実施の形態3に係るモータ制御装置100-3は、実施の形態1のモータ制御回路3-1の代わりにモータ制御回路3-3を備える。モータ制御回路3-3には、IC温度検出部6A、及びベアリングライナー温度検出部6Bが接続される。
次に、図24及び図25を参照して、モータ4の構成例と、IC温度検出部6A及びベアリングライナー温度検出部6Bのそれぞれで検出された検出情報を利用して外部通知などを行うモータ制御回路3-3の構成について説明する。
図24はモータ4の構成例を示す図である。図24に示すように、モータ4は、ケーシング4-1、ベアリングライナー4-2、ベアリング4-3、インシュレータ4-4、スタック4-5、コイル4-6、プリント基板4-7、IC(Integrated Circuit)410、IC温度検出部6A、及びベアリングライナー温度検出部6Bを備える。2つのベアリング4-3の筒形状のベアリングライナー4-2が設けられている。図24では、説明の便宜上、IC温度検出部6AがIC410の外部に配置されているが、IC温度検出部6Aは、IC410に内蔵される。プリント基板4-7に設けられる回路部品の一例であるIC410の内部温度(以下、IC内部温度)を検出する回路部品温度検出部である。IC410がIC温度検出部6Aを内蔵することにより、IC410の温度を検出するための外付部品が不要となり、プリント基板4-7の製造コストを低減でき、さらにプリント基板4-7の構造が簡素化されて信頼性が向上する。なお、IC温度検出部6Aは、IC410の外部に設けて、IC410の外部温度を検出してもよい。
図25は実施の形態3に係るモータ制御回路の構成を示す図である。モータ制御回路3-3は、判定回路10の代わりに、判定回路10Aを備える。IC温度検出部6Aは、検出したIC内部温度の値を示す検出情報をモータ制御回路3-3に入力する。
ベアリング4-3の潤滑不良などが生じてベアリング4-3の内輪、転動体、及び外輪の相互の摺動摩擦が大きくなると、ベアリング4-3が発熱して、その熱がベアリングライナー4-2に伝達される。ベアリングライナー温度検出部6Bは、ベアリングライナー4-2の温度(以下、ベアリングライナー温度)を検出し、検出した温度の値を示す検出情報をモータ制御回路3-3に入力する。
IC温度検出部6A、及びベアリングライナー温度検出部6Bは、それぞれが、例えば、サーミスタ、熱電対、シリコンバンドギャップ温度センサ、ディジタル温度センサ、これらの任意の組合せからなるセンサなどである。
モータ制御回路3-3の判定情報生成回路12において、これらの検出情報が判定情報に変換されて、判定回路10Aに入力される。判定回路10Aは、前述した判定回路10と同様に、判定情報生成回路12で生成される判定情報に基づき、モータ4が故障又は劣化しているか否かを判定し、モータ4が故障又は劣化していることを示す信号を、割り込み信号として演算処理機能を含む制御回路11へ出力する。
次に、図26及び図27を参照して、モータ制御回路3-3の動作を説明する。図26は実施の形態3に係るモータ制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。図26において、図4との相違点は、ステップS4の処理の代わりに、ステップS40及びステップS41の処理が行われることである。ステップS1、ステップS2、ステップS3、ステップS5及びステップS6のそれぞれの処理は、実施の形態1と同様のため説明を省略する。図27は実施の形態3におけるIC内部温度、ベアリングライナー温度の一例を示す図である。図27の縦軸は温度、横軸は時間である。
図26のステップS3においてADシーケンサ9に保持された変換結果を読み込んだ判定回路10Aは、ステップS40において、例えばIC内部温度からベアリングライナー温度を減算することで、IC内部温度とベアリングライナー温度との差分を求める。さらに判定回路10Aは、IC内部温度とベアリングライナー温度との差分の絶対値を演算することで、IC内部温度とベアリングライナー温度との第1温度差を算出する。
第1温度差を算出した判定回路10Aは、ステップS41において、予め設定された温度判定用の第1温度閾値と第1温度差とを比較する。第1温度閾値は判定値40の一例である。
例えば、図27において、モータ4への通電が開始されてから一定時間経過後の時刻t1でのIC内部温度が50℃であり、ベアリングライナー温度が75℃の場合、第1温度差は25℃である。第1温度閾値が例えば、50℃の場合、第1温度差が第1温度閾値未満と判断されるため(ステップS41,No)、この場合、判定回路10Aは、ステップS1以降の処理を繰り返す。
一方、ベアリング4-3の潤滑不良などに起因して、ベアリングライナー4-2が高温になると、第1温度差が第1温度閾値を超える場合がある。具体的には、モータ4への通電が継続され、時刻t1から一定時間経過後の時刻t2でのIC内部温度が50℃であり、ベアリングライナー温度が100℃を超える場合、第1温度差は50℃を超える。第1温度閾値が50℃の場合、第1温度差が第1温度閾値を超えたと判断され(ステップS41,Yes)、この場合、判定回路10Aは、ステップS5及びステップS6の処理を行うことで、モータ4に異常が生じている可能性があることを外部に報知する。
なお、実施の形態3では、ベアリングライナー温度とIC内部温度を比較する構成例について説明したが、モータ4内部の異なる箇所の温度を比較することができればよく、例えば、コイル4-6の温度を検出する温度検出手段を設けて、この温度検出手段で検出されたコイル温度とIC内部温度とを比較してもよい。また、スタック4-5の温度を検出する温度検出手段を設けて、この温度検出手段で検出されたスタック温度とIC内部温度とを比較してもよい。
実施の形態3に係るモータ制御装置100-3によれば、複数の温度検出手段を利用して、比較的検出が容易なモータ4内部の異なる箇所の温度を比較することで、モータ4の故障又は劣化を容易に判定して外部通知を行うことができる。
また、ベアリングライナー温度とIC内部温度を比較するように構成することで、モータ4で最も劣化の進行が早いベアリング4-3の潤滑不良などに起因する温度上昇を検出することができるため、モータ4の他の箇所の温度を利用する場合に比べて、劣化などの診断の精度を向上させてことができる。
実施の形態4.
図28は実施の形態4に係るモータ制御装置の構成を示す図である。以下では、実施の形態3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分について述べる。実施の形態4に係るモータ制御装置100-4は、実施の形態3のモータ制御回路3-3の代わりにモータ制御回路3-4を備える。モータ制御回路3-4には、IC温度検出部6A、ベアリングライナー温度検出部6B、及びモータ外部温度検出部6Cが接続される。
次に、図29を参照して、IC温度検出部6A、ベアリングライナー温度検出部6B、及びモータ外部温度検出部6Cのそれぞれで検出された検出情報を利用して外部通知などを行うモータ制御回路3-4の構成について説明する。
図29は実施の形態4に係るモータ制御回路の構成を示す図である。モータ外部温度検出部6Cは、例えば、モータ4のケーシング4-1などに設けられる。なお、モータ外部温度検出部6Cは、モータ4が駆動することで発生する熱の影響を受けないように、断熱部材などを介してケーシング4-1に固定されてもよいし、モータ4の近傍の外気温度を検出できるように、ケーシング4-1の周囲に設けられてもよい。
モータ外部温度検出部6Cは、ケーシング4-1の周囲の外気温度、ケーシング4-1の表面温度などを検出し、検出した温度の値を示す検出情報を、モータ外部温度として、モータ制御回路3-4に入力する。モータ外部温度検出部6Cは、例えば、サーミスタ、熱電対、シリコンバンドギャップ温度センサ、ディジタル温度センサ、これらの任意の組合せからなるセンサなどである。
モータ制御回路3-4の判定情報生成回路12において、これらの検出情報が判定情報に変換されて、判定回路10Bに入力される。判定回路10Bは、前述した判定回路10と同様に、判定情報生成回路12で生成される判定情報に基づき、モータ4が故障又は劣化しているか否かを判定し、モータ4が故障又は劣化していることを示す信号を、割り込み信号として演算処理機能を含む制御回路11へ出力する。
次に、図30、図31及び図32を参照して、モータ制御回路3-4の動作を説明する。
図30は実施の形態4に係るモータ制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。図30において、図26との相違点は、ステップS41とステップS5の処理の間に、ステップS42などの処理が行われることである。
図31は実施の形態4におけるIC内部温度、ベアリングライナー温度、モータ外部温度などの一例を示す第1図である。図32は実施の形態4におけるIC内部温度、ベアリングライナー温度、モータ外部温度などの一例を示す第2図である。図31及び図32の縦軸は温度、横軸は時間である。
図31には、時間経過に対してモータ外部温度が変化しない場合の、ベアリングライナー温度とIC内部温度の推移が示される。図31では、時刻t2でのベアリングライナー温度とIC内部温度との第1温度差が、時刻t1での第1温度差よりも大きくなっている。
一方、図32に示すように、例えば、モータ4の周囲に設けられる熱源から発生する熱の影響によってモータ外部温度が上昇すると、その熱がモータ4のケーシング4-1を介して、IC410に伝わることで、ベアリングライナー温度だけでなく、IC410も徐々に大きくなる。従って、ベアリングライナー温度とIC内部温度との第1温度差は、時間経過に対して、略同じ値で推移する。このようにモータ外部温度が上昇するとIC内部温度が上昇することを踏まえた上で、図30に示すフローチャートを説明する。
図30のステップS41において、IC内部温度とベアリングライナー温度との第1温度差が第1温度閾値を超えたと判断された場合、(ステップS41,Yes)、モータ制御回路3-4は、ステップS42の処理を実行する。
ステップS42において、モータ制御回路3-4は、ベアリングライナー温度とモータ外部温度との差分の絶対値を演算することで、IC内部温度とモータ外部温度との第2温度差を算出する。
そして、第2温度差を算出したモータ制御回路3-4は、ステップS43において、予め設定された温度判定用の第2温度閾値と第2温度差とを比較する。第2温度閾値は判定値40の一例である。
第2温度差が第2温度閾値未満の場合(ステップS43,No)、モータ制御回路3-4は、ステップS1以降の処理を繰り返す。
第2温度差が第2温度閾値を超える場合(ステップS43,No)、モータ制御回路3-4は、ステップS5及びステップS6の処理を行うことで、モータ4に異常が生じている可能性があることを外部に報知する。
ステップS42及びステップS43の処理を具体的に説明する。
図31において、モータ4への通電が開始された直後の時刻t1でのIC内部温度が例えば30℃であり、モータ外部温度が25℃であり、ベアリングライナー温度が50℃の場合、第1温度差は20℃(=ベアリングライナー温度50℃-IC内部温度30℃)、第2温度差は5℃(=IC内部温度30℃-モータ外部温度25℃)である。第1温度閾値が例えば30℃である場合、第1温度差は第1温度閾値以下であるため、時刻t1では、外部への報知が行われない。
その後、モータ外部温度が変化せずに、時刻t2において、モータ4の異常によってベアリングライナー温度が例えば100℃を超える場合、第1温度差は、70℃(=ベアリングライナー温度100℃-IC内部温度30℃)を超えて、第1温度閾値を超えるため、外部への報知が行われる。なお、ベアリングライナー温度の上昇に伴い、IC内部温度は僅かに上昇し得るが、図31では説明の便宜上、IC内部温度がベアリングライナー温度の影響を受けないものと仮定している。
これに対して、図32に示すように、モータ4の周囲に設けられる熱源から発生する熱の影響によって、モータ外部温度が上昇するとIC内部温度も上昇する。この場合、時刻t2におけるベアリングライナー温度が100℃を超え、IC内部温度が70℃、モータ外部温度が65℃、第1温度閾値を30℃と仮定した場合、第1温度差は、30℃を超えるため、第1温度閾値を超過する。
ところが、第1温度差が第1温度閾値を超過している場合でも、例えば第2温度閾値を10℃と仮定すると、第2温度差は、5℃(=IC内部温度70℃-モータ外部温度65℃)のため、第2温度閾値以下になる。すなわち、第2温度閾値と第2温度差とを比較することで、ベアリングライナー温度の上昇が、モータ外部温度に起因するものであるか、モータ4の故障に起因するものであるかを切り分けることができる。
実施の形態4によれば、モータ外部温度の上昇に起因するベアリングライナー温度の上昇であるのか、モータ4の故障に起因するベアリングライナー温度の上昇であるのかを判別できるため、モータ4が故障又は劣化しているか否かの判定精度を高めることができる。従って、モータ4が故障又は劣化していない場合に、外部通知が不必要に出力されることを抑制でき、外部通知を監視する作業者の作業効率を向上させることができる。
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。