JP7363060B2 - 重合性化合物、光硬化型重合体、絶縁膜、保護膜、及び有機トランジスタデバイス - Google Patents

重合性化合物、光硬化型重合体、絶縁膜、保護膜、及び有機トランジスタデバイス Download PDF

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Description

本発明は有機トランジスタデバイスに含まれる有機半導体層の上に溶液塗工可能な絶縁膜、及び保護膜を形成するための重合体に関するものである。
全印刷法により製造するトップゲート型有機トランジスタデバイスはデバイスの下面から上面に向かって、例えばプラスチックフィルム等の基材上に、平坦化層または絶縁層(A層)、下部金属電極(ソース、及びドレイン電極)、有機半導体層(B層)、絶縁層(C層)、上部金属電極(ゲート電極)の順に形成される。有機半導体層はソース電極とドレイン電極を覆う形状で局所的に形成され、ドレイン電極は有機半導体層が形成された領域の外部まで引き出された形状を持ち、C層と接触している。このC層は絶縁層としての機能に加え、有機半導体及び有機トラジスタデバイスが外気と接触して劣化する影響を低減させる保護膜としての役割も果たす。A層、及びC層は絶縁性重合体を有機溶剤に溶解させた溶液を印刷することで形成される。C層の形成においては、C層を形成する重合体の溶液が、既に形成されている有機半導体層(B層)を溶解させてはならない。また、C層にはコンタクトホールを形成する必要がある。コンタクトホールはC層の下部にあるドレイン電極とトランジスタの駆動回路を繋ぐための穴である。
有機半導体は溶解度の差はあるものの、種々の汎用有機溶剤により少なくとも部分的に溶解する場合が多い。従って、現状ではB層の上面にC層を形成する方法として、例えば蒸着によりポリパラキシリレン(PPX)膜を形成する方法が知られている。この方法は溶剤を用いず、原料を加熱し、真空下で基材上に蒸着重合させてポリパラキシリレン薄膜を形成させるため、有機半導体層が溶剤との接触により溶解することを避けることが出来る。一方で、PPX膜は汎用の炭化水素系溶剤に室温で溶解せず、コンタクトホールの形成が困難であるという致命的な欠陥が有った。また、蒸着による方法では処理できる基材のサイズが制限される上、全印刷プロセスによる連続的な製造が難しく、バッチプロセスのため経済性にも劣るという問題を有している。
また、別の方法としてフッ素系環状エーテル重合体をフッ素系溶剤に溶解させた溶液を有機半導体層の上面に塗工する方法が知られている。現在知られている有機半導体の多くはフッ素系溶剤には溶解しないため、有機半導体層に影響を与えずに該層の上にフッ素系環状エーテル重合体の絶縁層を形成出来る。しかし、該フッ素系環状エーテル重合体、及び、該フッ素系溶剤は経済性に劣る上、該溶液は有機半導体との親和性が低いために該フッ素系環状エーテル重合体層と該有機半導体層との密着性が低いことが原因となり有機電界効果トランジスタデバイスとしての性能が低下するという問題もあった。
有機半導体層の上面に塗工しても広範な種類の有機半導体層に影響を与えず、汎用性が高い溶剤の一つに脂肪族アルコールがある。高沸点の脂肪族アルコールが絶縁層中に残存すると半導体性能を低下させるため、溶剤としては低沸点の低級脂肪族アルコールが好適である。低級脂肪族アルコールに溶解する樹脂としてブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、及び特定の構造を有するアルキルメタクリレート等が知られている。しかし、ブチラール樹脂、及びポリビニルアルコールは水酸基を有しており、この水酸基が電荷をトラップして半導体性能を低下させるため、絶縁層を形成する樹脂としては適さない。一方、該アルキルメタクリレートのうち、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、及びポリ(n-オクチルメタクリレート)は低級脂肪族アルコールに溶解し(非特許文献1)、水酸基を有さないため絶縁層材料として使用した際に電荷トラップの問題は生じにくい。しかし、これらの重合体は光架橋性を有しておらず、絶縁層として用いた場合有機溶剤に対する耐溶剤性が発現しないためコンタクトホールの形成が困難であった。
このような背景から、C層を形成するための重合体としては、低級脂肪族アルコールに溶解し、かつ、架橋(硬化)可能なものが求められている。重合体の架橋方法としては熱、または放射線による方法が一般に用いられる。しかし、有機半導体層の上部に形成された絶縁層の架橋においては、有機半導体層の熱膨張・収縮による性能劣化を極力抑制するという観点から加熱による架橋は好ましくない。このため、放射線による架橋が好ましく、特に紫外線による架橋(光架橋)が適している。紫外線によるC層の光架橋においては、光学的に透明なC層を通過した放射線による有機半導体の劣化を防ぐため、紫外線の照射量は出来る限り低くすることが好ましい。この観点から短時間で光架橋可能なC層形成用の重合体が求められている。
光架橋性の重合体は光架橋性の官能基を重合体の主鎖、または側鎖に導入することにより得られる。光架橋性の官能基としては種々のものが知られているが、ラジカルに対して化学的な安定性が高いものとしてアントラセン、テトラセン等の多環芳香族化合物、クマリン(例えば、非特許文献2)、及びキノリノン等が知られている(例えば、非特許文献3、4)。これらの官能基を有するモノマーを他のモノマーとラジカル共重合することにより光架橋性の重合体を得ることが出来る。
アントラセンを光架橋基として導入した光架橋性重合体として、例えば、アントリル基を光架橋基として導入した重合体として、6-(アントラセン-9-イル)ヘキシルメタクリレートとフルオロアルキルメタクリレートとの共重合体(非特許文献5)、ポリ(2-エチルヘキシルメタクリレート)とポリ(9-アントリルメチルメタクリレート)からなるジブロック共重合体(非特許文献6)、6-(9-アントリロキシ)ヘキシルメタクリレート単独重合体(非特許文献7)に関する技術が開示されている。しかし、分子量の大きなアントラセン基は低級アルコールへの溶解性を低下させるため、その導入量には限界があり、テトラセンに関しても同様である。従って、これらの重合体においては、その光架橋速度に上限値があり、紫外線の照射量低減に対応出来ず、また、ロールTOロール法により有機トランジスタを印刷のみで連続生産する際に求められる短時間での光架橋に対応出来なかった。
クマリン、及びキノリノンを含有する重合体としては、例えば液晶配向膜用の重合体が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、本重合体は低級脂肪族アルコールへ溶解しないという問題があった。
上述のように、低級脂肪族アルコールに溶解し、紫外線により短時間で光架橋し、コンタクトホールを形成可能な絶縁層形成用の重合体が求められていた。
米国特許6201087号公報
ウィリー・インターサイエンス社刊、ポリマーハンドブック、第3版 オーガニック・レターズ誌、2010年、12巻、20号、4435頁 フォトケミストリ・アンド・フォトバイオロジ-誌、1967年、6巻、229頁 アプライド・フィジクス誌、1972年、11巻、3号、533頁 ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス誌、2015年、53巻、1252頁 ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス誌、2016年、54巻、2302頁 ジャーナル・オブ・フォトサイエンス誌、2002年、9巻、5号、57頁
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低級脂肪族アルコールに溶解し、紫外線により短時間で光架橋し、コンタクトホールを形成可能な絶縁層形成用の重合体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合性化合物、及びそれから得られる特定の重合体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は式(1)で表される重合性化合物、該重合性化合物を用いて得られる式(2)、及び式(3)で表される反復単位を含む重合体に関するものである。
(式(1)中、Rは水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、Lは炭素数1~14の2価の連結基を、nは0または1を、A、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、XはOまたはSを、mは0~3の整数を表す。)
(式(2)中、Rは水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、ZはC1~C12のアルキル基を表す。)
(式(3)中、R~R、A、L、X、m及びnは式(1)で定義したものと同様である。)。
以下に本発明を詳細に説明する。
式(1)中、Rは水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを表す。
式(1)中のRにおけるC1~C6のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
式(1)中、Lは炭素数1~14の2価の連結基を表す。
該炭素数1~14の2価の連結基としては、放射線で容易に構造変化を起こさない2価の有機基であれば特に制限がなく、例えば、-CH-、-OCH-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)N<、-O-、―N<、>NC(O)N<、アリール基等が挙げられる。
式(1)中、nは0または1を表す。
式(1)中、A、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオ基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアリール基、フルオロチオ基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を表す。
式(1)中、A、R及びRにおけるハロゲンとしては特に制限がなく、例えば、塩素、フッ素等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるC1~C18のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアルキルチオ基としては特に制限がなく、例えば、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、n-プロピルスルファニル基、n-ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec-ブチルスルファニル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアルキルアミノ基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、メチルエチルアミノ基、
メチル-n-プロピルアミノ基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアルキルケトン基としては特に制限がなく、例えば、メチルケトン基、エチルケトン基、イソプロピルケトン基、n-プロピルケトン基、n-ブチルケトン基、イソブチルケトン基、sec-ブチルケトン基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、n-プロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアルキルアミド基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミド基、エチルアミド基、イソプロピルアミド基、n-プロピルアミド基、n-ブチルアミド基、イソブチルアミド基、sec-ブチルアミド基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアリール基としては特に制限がなく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアリールエーテル基としては特に制限がなく、例えば、フェニルエーテル基、ナフチルエーテル基、アントリルエーテル基、ビフェニルエーテル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるアリールチオ基としては特に制限がなく、例えば、フェニルスルファニル基、ナフチルスルファニル基、アントリルスルファニル基、ビフェニルスルファニル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるカルボキシアルキル基としては特に制限がなく、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシ-n-プロピル基、カルボキシ-n-ブチル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるフルオロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるフルオロアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメトキシ基、ペルフルオロプロポキシ基、ペルフルオロブトキシ基、1H,1H-ペンタフルオロプロポキシ基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブトキシ基、1H,1H-ヘプタフルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるフルオロアルキルカルボニル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルカルボニル基、ペルフルオロプロピルカルボニル基、ペルフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルカルボニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルカルボニル基、4,4,4-トリフルオロブチルカルボニル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるフルオロアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルエステル基、ペルフルオロプロピルエステル基、ペルフルオロブチルエステル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルエステル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルエステル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルエステル基、4,4,4-トリフルオロブチルエステル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるフルオロアリール基としては特に制限がなく、例えば、4-フルオロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基、1-フルオロナフチル基、オクタフルオロナフチル基、1-フルオロアントリル基、2-フルオロアントリル基、9-フルオロアントリル基、2-フルオロビフェニル基、4-フルオロビフェニル基、等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるフルオロチオ基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルスルファニル基、ペルフルオロプロピルスルファニル基、ペルフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルスルファニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルスルファニル基、4,4,4-トリフルオロブチルスルファニル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるシクロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
式(1)中、A、R及びRにおけるシクロヘテロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、2-フリル基、3-フリル基、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、1-チアシクロヘキサン-4-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-4-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-2-イル等が挙げられる。
式(1)中、XはOまたはSを表す。
式(1)中、mは0~3の整数を表す。
式(2)中、Rは水素またはC1~C6のアルキル基を表す。
式(2)中、RにおけるC1~C6のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
式(2)中、ZはC1~C12のアルキル基を表す。
式(2)中、ZにおけるC1~C12のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
式(3)中、R~R、A、L、X、m及びnは式(1)で定義したものと同様である。
本発明の式(1)で表される重合性化合物は、光架橋性の官能基であるベンゾピラン基を有している。従って、本重合性化合物を他の重合性化合物と共重合することによって得られる共重合体(重合体)は光架橋性を有しており、その光架橋性は本重合性化合物の導入量に依存して変化する。これに加えて、本発明の式(1)で表される重合性化合物は低級アルコールへの溶解性に対する影響が小さいという特徴があり、本発明に係る重合性化合物を用いるとき、光架橋性及び低級アルコールへの溶解性の両者に優れた共重合体(重合体)を得ることができるものとなる。
本発明の式(1)で表される重合性化合物は、該重合性化合物を単量体として用い、重合することにより得られる重合体として好適に用いられる。このとき、該重合体において、式(1)で表される重合性化合物は、式(3)で表される反復単位となる。
本発明において、式(3)で表される反復単位は光架橋基であり、その含有量は、光架橋時間の短縮、高い架橋密度(優れた耐溶剤性)及び低級脂肪族アルコールへの溶解性の観点から、式(2)及び(3)の反復単位の合計を100モル%とした場合に、式(3)で表される反復単位の比率が5~35モル%であることが好ましい。
式(3)中のLを構成する最長の炭素連鎖の数をMとするとき、短時間で光架橋を完結させるのにより好適なため、このMが式(2)中のZを構成する最長の炭素連鎖の数Nに対して、N+2≧M≧N-2を満たすのが好ましい。
本発明において、上式(2)、及び上式(3)の反復単位を含む重合体の分子量には何ら制限はなく、例えば、5000~1,000,000(g/モル)等が挙げられる。重合体の溶液粘度、及び力学強度の観点から、好ましくは10,000~500,000(g/モル)である。
本発明の重合体は、式(1)、及び式(4)で表される単量体を公知のラジカル重合法により重合させることで得ることができる。
(式(4)中、R、及びZは式(2)で定義したものと同様である)。
本発明において、具体的な式(1)で表される重合性化合物としては、式(5)で表される7-メタクリロイルオキシ-4-オキソベンゾピランの他、例えば、以下のものが挙げられる。
本発明の重合性化合物において、前記[化4]で表される単量体、前記[化6~化25]で表される単量体からなる群の少なくとも1種の反復単位を有することが好ましい。これにより、低級脂肪族アルコールに溶解し、紫外線により短時間で光架橋し、コンタクトホールを形成可能な絶縁層形成用の重合体となる。
本発明の重合性化合物はヒドロキシ基を有するベンゾピラン化合物と酸クロリドを溶剤中で反応させる公知の方法で製造できる。該酸クロリドとしてはアクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、2-アルキルアクリロイルクロリド、または2-アルキルメタクリロイルクロリドが用いられ、酸クロリドの該ベンゾピラン化合物に対するモル比は、未反応の酸クロリド量を低減させるため、0.5~1.0が好ましい。本反応で用いることが出来る溶剤は上記のベンゾピラン化合物、及び酸クロリドを溶解し、これらの化合物と反応せず、十分に脱水されている限り何ら制限されず、例えば、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、トルエン等を用いることが出来る。本反応においては反応速度を上げ、収量を増大させるため、反応で発生する塩化水素の受酸剤、及びエステル化触媒を、また反応中に重合性化合物が重合するのを防止するため重合禁止剤を添加することが好ましい。該受酸剤としては脱水されたトリエチルアミン、ピリジン等が、該触媒としてはN,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の強塩基が、該重合禁止剤としてはヒドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン等が例示される。反応温度は特に制限されないが、重合反応を防止するため、0~60℃が好ましい。反応時間は特に制限されないが、経済性に優れるため、2~6時間が好ましい。
式(1)及び式(4)で表される単量体をラジカル共重合するとき、該ラジカル共重合は溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合等の公知の方法を用いることが出来る。
溶液重合において用いる溶剤は上記の単量体、及び本発明の重合体が溶解する限り、何ら制限されず、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル等が挙げられ、これらの溶剤を混合して用いることも出来る。このとき、重合温度は用いる開始剤に依存して選択されるが、特に制限されない。開始剤としてはアゾイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ(t-ブチル)パーオキサイド等の過酸化物系開始剤の何れも用いることが出来る。反応時間は用いる開始剤の半減期に従い設定され、何ら制限はないが、経済性の観点から4~8時間であることが好ましい。
本発明の重合体は、溶剤に溶解させた溶液状態で種々の基材上に塗工又は印刷することが出来る。該溶剤としては、該重合体を溶解し、同時に有機トランジスタの製造に用いる有機半導体を溶解しない溶剤であれば何ら制限なく用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール等の脂肪族アルコール類;ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン、キュメン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸プロピル等のエステル類、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール類等が挙げられ、単独または2種類以上の溶剤を併用してもよい。その中でも、有機半導体層の上に溶液塗工可能であることから、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール等の脂肪族アルコール類が好ましく、炭素数4以下の低級脂肪族アルコールがさらに好ましい。
塗工又は印刷方法には何ら制限はなく、例えば、スピンコーティング、ドロップキャスト、ディップコーティング、ドクターブレードコーティング、パッド印刷、スキージコート、ロールコーティング、ロッドバーコーティング、エアナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング、フローコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版反転印刷等を用いて印刷することが出来る。
なお、本発明の重合体を絶縁層として用いるとき、該絶縁層はこれらの塗工又は印刷方法を用いて形成されるものであるため、該絶縁層は上記の溶剤に対する溶解性が必要となる。
本発明に係る重合体は光架橋性基を有し、該光架橋(光環化)には放射線が好適に用いられ、放射線としては、例えば、波長245~350nmの紫外線が挙げられる。放射線の照射量は重合体の組成により適宜変更されるが、例えば、100~500mJ/cmが挙げられ、架橋度の低下を防止し、かつ、プロセスの短時間化による経済性の向上のため、好ましくは50~300mJ/cmである。紫外線の照射は通常大気中で行うが、必要に応じて不活性ガス中、または一定量の不活性ガス気流下で行うことも出来る。必要に応じて光増感剤を添加して光架橋反応を促進させることも出来る。用いる光増感剤には何ら制限はなく、例えば、ベンゾフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ニトロフェニル化合物等が挙げられるが、本発明で用いられる重合体との相溶性が高いベンゾフェノン化合物が好ましい。また、該増感剤は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
共重合体が架橋していることは共重合体膜を良溶剤に浸漬した際の溶解性により判断可能であり、その架橋度は後述の残膜率を測定することにより定量的に評価できる。具体的には、ガラス板上に形成した共重合体の薄膜を架橋させていない状態で良溶剤に浸漬させると共重合体膜は全て溶解してしまう。一方、十分に架橋した共重合体膜は良溶剤に溶解せず、固体状態を維持し、膜の厚みに変化はない。また、架橋が不十分な場合には、重合体膜は固体状態を維持しているが、一部の共重合体が溶解するため、その膜厚は小さくなる。従い、溶剤浸漬前後の膜厚を測定することで共重合体がどの程度架橋したかを定量的に判断出来る。架橋処理後の重合体の構造は、熱重量・質量分析装置(TG-MS)、赤外線吸収スペクトル(IR)を用いた方法により同定することができる。
本発明の重合体は紫外線により光架橋出来るが、必要に応じて加熱しても良い。紫外線照射に加えて加熱する場合の温度は特に制限されないが、用いる重合体の熱変形を避けるため120℃以下の温度が好ましい。
更に、本発明の重合体には架橋密度を上げる、または架橋時間を短縮するために架橋剤としてエチレン、プロピレン等のオレフィンを1分子内に複数個含有する化合物;アセチレン、ブチン等を1分子内に複数個含有する化合物;シクロペンテン等の環状オレフィンを1分子内に複数個含有する化合物等が配合されていてもよい。これらの化合物は1種類、または2種類以上が配合されていてもよい。
また、本発明の重合体は、短時間で効率良く光架橋することができるものであり、より短時間で効率良く光架橋するため、光架橋に要する時間を2分以内とすることが好ましい。なお、架橋時間の制御に好適であることから、架橋に要する時間を1分以内とすることがさらに好ましい。
本発明の重合体は、本発明の重合体及び/又は本発明の重合体の架橋物を含有する絶縁膜として好適に用いることができる。また、本発明の重合体は、該絶縁膜を含む有機トランジスタデバイスとして好適に用いることができる。
本発明の重合体は、本発明の重合体及び/又は本発明の重合体の架橋物を含有する保護膜として好適に用いることができる。また、本発明の重合体は、該保護膜を含む有機トランジスタデバイスとして好適に用いることができる。
本発明の重合体が有機トランジスタデバイス(以下、「有機トランジスタ」という)に用いられるとき、本発明の有機トランジスタは図1に示すボトムゲート-トップコンタクト型(A)、ボトムゲート-ボトムコンタクト型(B)、トップゲート-トップコンタクト型(C)、トップゲート-ボトムコンタクト型(D)のいずれの素子構造でもよい。本発明の重合体は特に(C)及び(D)の形態の素子への適用性が高い。ここで、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示す。
本発明の重合体を有機半導体層の保護層(膜)として用いる場合、本重合体は未架橋または架橋された何れの状態でも使用出来る。
該有機トランジスタにおいて、用いることが出来る基材(基板)は素子を作製できる十分な平坦性を確保できれば特に制限されず、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;プラスチック;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属;セラミックス;コート紙;表面コート不織布等が挙げられ、これらの材料からなる複合材料又はこれらの材料を多層化した材料であっても良い。また、表面張力を調整するため、これらの材料表面をコーティングすることも出来る。
基材として用いるプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン-1、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、スチレンブロック共重合体等が例示される。また、上記のプラスチックを2種以上用いて積層して基材として用いることができる。
本発明で用いることが出来る有機半導体には何ら制限はなく、N型及びP型の有機半導体の何れも使用することができ、N型とP型を組み合わせたバイポーラトランジスタとしても使用できる。また、低分子及び高分子の有機半導体の何れも用いることができ、これらを混合して使用することも出来る。具体的な化合物としては、例えば式(F-1)~(F-11)等が例示される。
本発明において、有機半導体層を形成する方法としては、有機半導体を真空蒸着する方法、または有機半導体を有機溶剤に溶解させて塗布、印刷する方法等が例示されるが、有機半導体層の薄膜を形成出来る方法であれば何らの制限もない。有機半導体層を有機溶剤に溶解させた溶液を用いて塗布、または印刷する場合の溶液濃度は有機半導体の構造及び用いる溶剤により異なるが、より均一な半導体層の形成及び層の厚みの低減の観点から、0.5~5重量%であることが好ましい。この際の有機溶剤としては有機半導体が製膜可能な一定の濃度で溶解する限り何ら制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、デカリン、インダン、1-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、ジメチルナフタレン異性体混合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、テトラリン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、γ-ブチロラクトン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、グリセリン、シクロヘキサノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、3-メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、エチルアセテート、フェニルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-N-プロピルエーテル、テトラデカヒドロフェナントレン、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロフェナントレン、デカヒドロ-2-ナフトール、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフトール、α-テルピネオール、イソホロントリアセチンデカヒドロ-2-ナフトール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、2,6-ジメチルアニソール、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、1-ベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、リモネン等が例示されるが、好ましい性状の結晶膜を得るためには有機半導体の溶解力が高く、沸点が100℃以上の溶剤が適しており、キシレン、イソプロピルベンゼン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、1,2-ジクロロベンゼン、3,4-ジメチルアニソール、ペンチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デカヒドロ-2-ナフトールが好ましい。また、前述の溶剤2種以上を適切な割合で混合した混合溶剤も用いることが出来る。
本発明の有機トランジスタは、エッチングによりコンタクトホールを形成させた有機トランジスタとして好適に用いることができる。このとき、コンタクトホール形成時のエッチングに用いる溶剤としては、本発明の重合体及び用いる有機半導体を溶解する溶剤であれば何ら制限なく、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、テトラリン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン等の汎用の芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。上記の条件を満足すれば、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤も用いることが出来る。
有機半導体層には必要に応じて各種有機・無機の高分子若しくはオリゴマー、又は有機・無機ナノ粒子を固体若しくは、ナノ粒子を水若しくは有機溶剤に分散させた分散液として添加でき、上記高分子誘電体層上に高分子溶液を塗布して保護膜を形成出来る。更に、必要に応じて本保護膜上に各種防湿コーティング、耐光性コーティング等を行うことが出来る。
本発明で用いることが出来るゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極としては、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、ポリシリコン、シリサイド、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、白金、チタン、タンタル、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機電極、又はドープされた導電性高分子(例えば、PEDOT-PSS)等の有機電極等の導電性材料が例示され、これらの導電性材料を複数、積層して用いることもできる。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極に表面処理剤を用いて表面処理を実施することもできる。このような表面処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール等を挙げることができる。
また、前記の基材、絶縁層または有機半導体層の上に電極を形成する方法に特に制限はなく、蒸着、高周波スパッタリング、電子ビームスパッタリング等が挙げられ、前記導電性材料のナノ粒子を水又は有機溶剤に溶解させたインクを用いて、溶液スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、ドクターブレード、ダイコート、パッド印刷、ロールコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版反転印刷等の方法を採用することも出来る。
本発明の有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、移動度が0.20cm/Vs以上であることが好ましい。
本発明の有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、閾値電圧が-10.0V以上で0Vより小さいことが好ましい。
本発明の有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、漏洩電流密度が10-9A/cm以下であることが好ましい。
本発明により低級脂肪族アルコールに溶解し、紫外線により短時間で光架橋し、コンタクトホールを形成可能な絶縁層形成用の重合体を提供できる。
;有機トランジスタの断面形状を示す図である。 ;実施例1で製造した重合性化合物のH-NMRチャートを示す図である。 ;実施例1で製造した重合性化合物の13C-NMRチャートを示す図である。 ;実施例2で製造した重合性化合物のH-NMRチャートを示す図である。 ;実施例3で製造した重合体1のH-NMRチャートを示す図である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において用いた有機半導体(ジ-n-ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)は、特開2015-224238号公報の製造方法に従って合成した。7-ヒドロキシ-4-オキソ-ベンゾピラン(7HOB)はジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー誌、2015年、52巻、562頁記載の方法により合成した。ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド、炭酸水素ナトリウム、N-メチルピロリドン、脱水ピリジン、脱水テトラヒドロフラン(THF)、及びアゾイソブチロニトリル(AIBN)は和光純薬製の試薬を、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、4-ジメチルアミノピリジン、及び塩化メタクリロイル、N-ブロモスクシンイミド、トリメチルトリフェニルホスホニウムブロミド、カリウム-t-ブトキサイドは東京化成製の試薬を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにはメルク製のKiesel-Gel-60を、ポリ(n-ブチルアクリレート)、ポリビニルブチラール、及びポリ(ビニルアルコール)はシグマ・アルドリッチ製の試薬を用いた。また、ポリ(n-オクチルメタクリレート)はポリマー・サイエンス誌、シリーズB、2016年、58巻、6号、675頁記載の方法に従い合成した。フッ素系環状エーテル重合体にはAGC旭硝子(株)製の製品サイトップを、サイトップの溶剤にはパーフルオロトリブチルアミン(AGC旭硝子(株)製CYTOP CT-SOLV180)を用いた。
7-メチル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー誌、52巻、2号、562頁、2015年記載の方法により、7-ブロモメチル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリー誌、44巻、672頁、2001年記載の方法により、7-ホルミル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー誌、58巻、26号、7598頁、1993年記載の方法により、7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー誌、126巻、12号、3856頁、2004年記載に方法により製造した。
実施例において、NMR、スピンコート、膜厚測定、UV照射、真空蒸着、残膜率、有機トランジスタ素子の評価については、以下に示す条件・装置で実施した。
<NMR>
JNM-ECZ400S FT-NMR(日本電子(株)製)を用いて重合体の重水素化クロロホルム溶剤を用いて測定した。なお、ベンゾピラン基の含有量XはH-NMRを用いて下記の式により算出した。
X=a(I+I)/{a(I+I)+bI
(ここで、Iはδ8.0~8.3ppmおけるピーク強度を、Iはδ6.0~6.5ppmおけるピーク強度を、Iはδ3.3~4.1ppmおけるピーク強度を表し、aは式(2)の置換基Zにおいてエステル基に隣接した炭素に結合している水素の数を、bは式(3)においてベンゾピラン基の置換基R、及びRの水素数の総和を表す。)
<スピンコート>
ミカサ株式会社製MS―A100を用いた。
<膜厚測定>
ブルカー社製DektakXTスタイラスプロファイラーを用いて測定した。
<UV照射>
(株)ジーエス・ユアサ コーポレーション製UV-System、CSN-40A-2を用い、UV強度4.0kW/cmの条件で、搬送速度を変えてUV照射時間を調整した。
<真空蒸着>
アルバック機工社製 小型真空蒸着装置VTR-350M/ERHを用いた。
<残膜率>
洗浄、乾燥した30×30mmのガラス(コーニング社製Eagle XG)上に、スピンコータ―を用いて重合体の溶液を乾燥後の膜厚が500nmとなるようにスピンコート製膜し、十分に乾燥させた。この絶縁膜に300mJ/cmの紫外線を照射して絶縁膜を光架橋した。この膜の厚みをブルカー社製DektakXTスタイラスプロファイラーにより測定し、Tとした。次に、この光架橋した絶縁膜がコーティングされたガラス板をトルエンに1分浸漬後、取り出して常温でトルエンを揮発させ、その膜厚を測定しTとした。これらの膜厚測定値を用いて、残膜率を下記の式により算出した。
残膜率=T/T×100(%)
残膜率が低い程、光架橋が不十分で耐溶剤性に劣ることを示し、残膜率が0%の場合には膜が完全溶解したことを示す。
<有機トランジスタ素子の評価>
有機電界効果トランジスタの一形態であるトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型素子を作製し、ケースレイ社製半導体パラメータアナライザーSCS4200を用い、ソース・ドレイン間電圧をマイナス60ボルトとして、ゲート電圧を変化させることにより、移動度、閾値電圧、漏洩電流を評価した。
以下に実施例を示すが、ポリマーの合成反応、精製、乾燥は全てイエローライト下、又は遮光下で行った。なお、実施例において、イエローライト下又は遮光下で行ったのは、前述の光重合性化合物の光架橋反応、及び該光重合性化合物が導入された重合体の光架橋反応を防ぐためである。
(実施例1) 7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン(7MOB)の合成
窒素導入管を備えた100MLの2口フラスコに撹拌子を入れ、7-ヒドロキシ-4-オキソ-ベンゾピラン5g、脱水ピリジン4.9g、4-ジメチルアミノピリジン0.8gを仕込んだ。次に、脱水THF50MLを仕込んで、室温で撹拌し、均一溶液を得た。得られた溶液を氷冷した後、注射器を用いて塩化メタクリロイル6.0MLをゆっくり添加した。添加後、氷冷下で1時間、室温で2時間反応させた。反応後、溶剤、ピリジン、及び塩化メタクリロイルを減圧留去し、塩化メチレン50ML及び水50MLを加えた。この液を分液ロートに移し、塩化メチレン層を分離した。この塩化メチレン層を、濃塩酸5MLを加えた水100MLで3回洗浄し、更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100MLで3回洗浄した。更に、飽和食塩水100MLで3回洗浄した。洗浄した塩化メチレン層を濃縮・乾固させて固体4.9gを得た。得られた固体をエタノールにより再結晶して目的とする7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン(7MOB)3.8gを得た。得られた7MOBのH-NMRチャートを図2に、13C-NMRチャートを図3に示す。
H-NMR(400MHz、CDCl):δ8.23(d,-O-CH=CH-,1H),δ7.86(d,芳香族,1H),δ7.31(d,芳香族,1H),δ7.19(dd,芳香族,1H),δ6.39(d,-O-CH=CH,1H),δ6.33(s,t,CH=C<,1H),δ5.98(t,CH=C<,1H),δ2.07(s,-CH,1H)
13C-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)176.61(-C(O)-CH=CH-O-),164.70(-OC(O)-C(CH)=),156.74(芳香族),155.33(芳香族),154.65(芳香族),135.02(CH=CH<),128.21(芳香族),126.93(CH=C<),122.38(芳香族),119.38(芳香族),112.86(芳香族),110.95(芳香族),18.08(CH=C(CH)-)
(実施例2)7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン(7VOB)の合成
<7-メチル-4-オキソ-ベンゾピラン(7MeOB)の合成>
撹拌子を入れた1Lのビーカーに2’-ヒドロキシ-4’-メチルアセトフェノン(東京化成、試薬)25g、トリエチルオルトフォルメート(東京化成、試薬)142.5gを入れ、均一に混合した後、27.9gの過塩素酸(東京化成、試薬)を分割して添加し、撹拌下で2時間20分反応させた。その後、反応溶液に撹拌下で無水ジエチルエーテル(東京化成、試薬)500MLを注ぎ入れ、反応物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで3回洗浄後、得られた緑色固体を1000mLのビーカーに移し、水500MLを添加して95℃で2時間半反応させた。得られた赤紫色の反応溶液を冷却し、室温で一昼夜静置した。反応溶液に200MLのジクロロメタンを加えて、十分に撹拌した後、分液ロートに移し、ジクロロメタン層を分離した。水層にジクロロメタンを加えて抽出操作を2回行い、上述のジクロロメタン層に加えた上で、エバポレーターにより濃縮、乾固させて濃赤茶色の固体を得た。この固体をヘキサンを用いて2回再結晶精製し、13gの7MeOBを得た。
H-NMR(CDCl,400MHz)δ8.08(d,1H,-CH=CH-),δ7.81(d,1H,芳香族),δ7.24(s,1H,芳香族),δ7.21(d,1H,芳香族),δ6.30(d,1H,-CH=CH-), δ2.48(s,3H,-CH)。
<7-ブロモメチル-4-オキソ-ベンゾピラン(7BMOB)の合成>
窒素ボックス中で、500MLのシュレンク管に7MeOB11.8g、N-ブロモスクシンイミド22.8g、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)0.15g、脱水した四塩化炭素350MLを仕込んだ。窒素気流下で攪拌し、内容物を溶解させた上で加熱し、還流下で4時間反応させた。反応後、氷冷して濾過し、濾液を濃縮し、真空ポンプで残存溶剤を取り除き乾固させた。得られた固体をヘキサンで再結晶し、4.3gの7BMOBを得た。
H-NMR(CDCl,400MHz)δ8.18(d,1H,-CH=CH-),δ7.49(d,1H,芳香族),δ7.86(d,1H,芳香族),δ7.42(d,1H,芳香族),δ6.34(d,1H,-CH=CH-),δ4.54(s,2H,-CHBr)。
<7-ホルミル-4-オキソ-ベンゾピラン(7FOB)の合成>
300MLの反応器に炭酸水素ナトリウム29g、ジメチルスルホキシド230MLを仕込み、攪拌下、100℃に加熱した。この中に、7BMOB4.5gを分割添加し、添加後、1時間反応後、反応液を氷1kgを入れたビーカーに注いで生成物を沈殿させた。このスラリーに塩化メチレンを加え、分液ロートで有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、エバポレータで濃縮、乾固させた。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、1.7gの7FOBを得た。
H-NMR(CDCl,400MHz)δ10.15(s,1H,-CHO),δ8.38(d,1H,-CH=CH-),δ7.98(d,1H,芳香族),δ7.95(d,1H,芳香族),δ7.95(d,1H,芳香族),δ7.91(dd,1H,芳香族),δ6.43(d,1H,-CH=CH-)。
<7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン(7VOB)の合成>
50MLのシュレンク管に0.92gのメチルトリフェニルホスフィニウムブロミド、10gのTHFを仕込んだ後、カリウム-t-ブトキサイド0.29gを14gのTHFに溶解させた溶液を仕込んだ。窒素シールした状態で攪拌下、室温で4時間反応させた後、7FOB0.3gを10gのTHFに部分溶解させたスラリーを5分間かけて、ゆっくりと添加した。添加終了後、室温で19時間反応させた。反応溶液を希塩酸水溶液に注ぎ、更にクロロホルム100MLを添加し、十分に攪拌した後、分液ロートに移してクロロホルム層を分離した。残った水層をクロロホルムで3回抽出し、全てのクロロホルム溶液を合わせてエバポレータにより濃縮し、赤褐色のオイル状物を得た。酢酸エチルを移動相としたシリカゲルカラムクロマトグラフィにより上記オイル状物を分離して、黄色結晶として0・06gの7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン(7VOB)を得た。得られた7VOBのH-NMRチャートを図4に示す。
H-NMR(CDCl,400MHz)δ8.16(d,1H,-CH=CH-),δ7.84(d,1H,芳香族),δ7.48(d,1H,芳香族),δ7.42(s,1H,芳香族),δ6.79(q,1H,-CH=),δ6.33(d,1H,-CH=CH-),δ5.95(d,1H,=CH),δ5.49(d,1H,=CH)。
(実施例3)
イソブチルメタクリレート1.05g、7MOB0.45g、DMF7.5g、及びAIBN93mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素シール下、65℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した。濾過した重合体を塩化メチレン10MLに溶解させ、撹拌下でメタノール300MLに注いで沈殿させ、沈殿物を濾過、減圧乾燥して1.0gの粉末状重合体1を得た。得られた重合体1は29モル%の7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン単位を含有していた。得られた重合体1のH-NMRチャートを図5に示す。
H-NMR(400MHz、CDCl):δ8.21(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ7.87(br,芳香族),δ7.38~7.13(m,芳香族),δ6.34(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ2.07~1.83(m,>C(CH)-,>CH-),δ1.22~0.96(m,-CH-,-CH
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
洗浄、乾燥した30×30mmのガラス(基材)(コーニング社製Eagle XG)にジクロロジパラキシリレン(日本パリレン社製、商品名DPX-C)0.2gをラボコータ(日本パリレン社製、商品名PDS2010)を用いて真空蒸着し、ポリ(パラクロロキシリレン)の平坦化層を形成した。さらに平坦化層上にマスクを用いて銀電極を真空蒸着し、厚み30nmの電極を形成した。その後、直ちにペンタフルオロベンゼンチオール30mmol/Lの2-プロパノール溶液に浸漬し、5分間経過した時点で取り出し、2-プロパノールで洗浄後、ブロー乾燥した。電極を形成した基材上に、2,7-ジ(n-ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンの0.2wt%トルエン溶液をドロップキャストし、室温下(25℃)で自然乾燥させ有機半導体層を形成した。さらに有機半導体層上に重合体1の2-ブタノール溶液(5wt%)を500rpm×5秒、1000rpm×20秒の条件でスピンコートし、100℃で10分間乾燥した。この素子にコンタクトホール用マスクを用い、紫外線強度4kW/cmの光源を用い、室温で紫外線を5.4秒照射して紫外線照射量300mJ/cmの条件で光架橋し、膜厚590nmのゲート絶縁層を形成した。さらに、このゲート絶縁層上にマスクを用いて厚み30nmの銀電極を真空蒸着した。次に、この素子をトルエンに1分浸漬してコンタクトホールを形成し、トップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型有機トランジスタ素子を作製した。作製した有機トランジスタの評価結果等を表1に示す。
重合体1は低いUV照射量で光架橋し、耐溶剤性に優れた絶縁層を形成することが確認され、コンタクトホールの形成も容易であった。また、作製した有機トランジスタは漏洩電流が小さく、絶縁性にも優れていることを確認した。
(実施例4)
イソブチルメタクリレート0.78g、7MOB0.23g、DMF5.0g、及びAIBN109mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素シール下、68℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した。濾過した重合体を塩化メチレン10MLに溶解させ、撹拌下でメタノール300MLに注いで沈殿させ、沈殿物を濾過、減圧乾燥して0.55gの重合体2を得た。得られた重合体2は19モル%の7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン単位を含有していた。
H-NMR(400MHz、CDCl):δ8.21(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ7.87(br,芳香族),δ7.38~7.13(m,芳香族),δ6.34(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ2.07~1.83(m,>C(CH)-,>CH-),δ1.22~0.96(m,-CH-,-CH
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体2に変えた以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。評価結果等を表1に合わせて示す。
重合体2は低いUV照射量で光架橋し、耐溶剤性に優れた絶縁層を形成することが確認され、コンタクトホールの形成も容易であった。また、作製した有機トランジスタは漏洩電流が小さく、絶縁性にも優れていることを確認した。
(実施例5)
イソブチルメタクリレート0.86g、7MOB0.15g、DMF5.0g、及びAIBN108mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素シール下、68℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した。濾過した重合体を塩化メチレン10MLに溶解させ、撹拌下でメタノール300MLに注いで沈殿させ、沈殿物を濾過、減圧乾燥して0.67gの重合体3を得た。得られた重合体3は12モル%の7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン単位を含有していた。
H-NMR(400MHz、CDCl):δ8.21(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ7.87(br,芳香族),δ7.38~7.13(m,芳香族),δ6.34(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ2.07~1.83(m,>C(CH)-,>CH-),δ1.22~0.96(m,-CH-,-CH
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体3に変えたこと以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。評価結果等を表1に合わせて示す。
重合体3は低いUV照射量で光架橋し、耐溶剤性に優れた絶縁層を形成することが確認され、コンタクトホールの形成も容易であった。また、作製した有機トランジスタは漏洩電流が小さく、絶縁性にも優れていることを確認した。
(実施例6)
イソブチルメタクリレート0.86g、7MOB0.15g、DMF5.0g、及びAIBN108mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素シール下、68℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した。濾過した重合体を塩化メチレン10MLに溶解させ、撹拌下でメタノール300MLに注いで沈殿させ、沈殿物を濾過、減圧乾燥して0.68gの重合体4を得た。得られた重合体4は16モル%の7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン単位を含有していた。
H-NMR(400MHz、CDCl):δ8.21(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ7.87(br,芳香族),δ7.38~7.13(m,芳香族),δ6.34(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ2.07~1.83(m,>C(CH)-,>CH-),δ1.22~0.96(m,-CH-,-CH
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体4に変えたこと以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。評価結果等を表1に合わせて示す。
重合体4は低いUV照射量で光架橋し、耐溶剤性に優れた絶縁層を形成することが確認され、コンタクトホールの形成も容易であった。また、作製した有機トランジスタは漏洩電流が小さく、絶縁性にも優れていることを確認した。
(実施例7)
イソブチルメタクリレート0.77g、7VOB0.23g、DMF5g、及びAIBN11mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素シール下、65℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した後、減圧乾燥して0.6gの重合体5を得た。得られた重合体5は26モル%の7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン単位を含有していた。
H-NMR(400MHz、CDCl):δ7.99(brs,-C(O)-CH=CH-O-),δ7.79(brs,芳香族),δ7.07~6.94(brm,芳香族),δ6.28(br,-C(O)-CH=CH-O-),δ3.67(brs,-OCH-),δ1.89~1.80(brm,-CH<),δ1.00~0.67(brm,>C(CH)-,-CH-,-CH
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体5に変えたこと以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。評価結果等を表1に合わせて示す。
重合体5は低いUV照射量で光架橋し、耐溶剤性に優れた絶縁層を形成することが確認され、コンタクトホールの形成も容易であった。また、作製した有機トランジスタは漏洩電流が小さく、絶縁性にも優れていることを確認した。
(比較例1)
重合体1をポリ(n-ブチルメタクリレート)(PNBMA)に変えた以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。PNBMAは紫外線により光架橋せず、ソース電極、及びドレイン電極を真空蒸着する際の熱により膜表面の平坦性が失われていることが確認された。また、耐溶剤性がなく、コンタクトホール形成時にPNBMA膜が溶解して有機トランジスタ素子は作製出来なかった。評価結果等を表1に示す。
(比較例2)
重合体1をポリ(n-オクチルメタクリレート)(PNOMA)に変えた以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。PNOMAは紫外線により光架橋せず、ソース電極、及びドレイン電極を真空蒸着する際の熱により膜表面の平坦性が失われていることが確認された。また、耐溶剤性がなく、コンタクトホール形成時にPNOMA膜が溶解し、動作する有機トランジスタ素子を作製出来なかった。評価結果等を表1に示す。
(比較例3)
重合体1をポリビニルブチラール(PVB)に変えた以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。PVB樹脂は紫外線により光架橋せず、耐溶剤性は発現しなかった。また、PVB膜はトルエンに溶解せず、ブタノールを用いた場合にはPVB膜が溶解してコンタクトホールを形成出来なかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
(比較例4)
重合体1をポリビニルアルコール(PVA)に変えた以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。PVAは紫外線により光架橋せず耐溶剤性は発現しなかった。また、PVA膜はトルエンに溶解せず、ブタノールを用いた場合にはPVA膜が溶解してコンタクトホールを形成出来なかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
(比較例5)
重合体1をフッ素系環状エーテル重合体(サイトップ)に変えた以外は実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。サイトップは紫外線により光架橋せず耐溶剤性は発現しなかった。また、サイトップ膜はトルエンに溶解せず、フッ素系溶剤CYTOP CT-SOLV180を用いた場合にはサイトップ膜が溶解してコンタクトホールを形成出来なかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
(比較例6)
重合体1を用い、紫外線を照射しなかった以外は実施例3と同様の手法により溶解性、耐溶剤性を評価した。重合体1はn-ブタノールに溶解し、残膜率は0であった。
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
実施例3と同様の手法でトップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)型の有機トランジスタを作製した。重合体1は耐溶剤性がなく、膜全体が溶解し、コンタクトホールを形成出来なかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
プリンテッドエレクトロニクス技術により製造出来る高品質の有機トランジスタデバイス用の絶縁層形成に好適な樹脂を提供できる。
(A):ボトムゲート-トップコンタクト型有機トランジスタ
(B):ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機トランジスタ
(C):トップゲート-トップコンタクト型有機トランジスタ
(D):トップゲート-ボトムコンタクト型有機トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極

Claims (6)

  1. 式(1)で表される重合性化合物。
    (式(1)中、Rは水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、Lは-C(O)O-の2価の連結基を、nは0または1を、A、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロチオ基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、XはOを、mは0の整数を表す。)
  2. 式(2)、及び式(3)で表される反復単位を含む重合体。
    (式(2)中、Rは水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、ZはC1~C12のアルキル基を表す。)
    (式(3)中、Rは水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、Lは-C(O)O-の2価の連結基を、nは0または1を、A、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロチオ基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、XはOを、mは0の整数を表す。)
  3. 請求項2に記載の重合体及び/又はその架橋物を含有することを特徴とする絶縁膜。
  4. 請求項2に記載の重合体及び/又はその架橋物を含有することを特徴とする保護膜。
  5. 請求項3に記載の絶縁膜を含む有機トランジスタデバイス。
  6. 請求項4に記載の保護膜を含む有機トランジスタデバイス。
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