JP7361677B2 - 傾斜地の防草工法 - Google Patents
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Description
マルチング材としては、木質チップで地表をマルチングする方法が知られている(特許文献1)。木質チップは、建設現場や地域で発生する伐採材、間伐材、除伐材、伐根材、剪定枝、建築廃材などを有効利用できることから、公園緑地や中央分離帯をはじめとする施設で広く活用されている。
1)草刈機による定期的な除草管理は、立地条件的に自走式草刈機が導入できないため、作業は人力に頼らざるを得なく、肩掛式の草刈機による作業は、施工性、経済性、安全性の面から、施工対象地の面積が大きくなるほど適用は難しい。
2)防草シートは、施工後に景観的な違和感が生じるほか、防草シートの破損や太陽光による劣化により防草効果が持続しないことに加え、多くの防草シートは耐久性を持たせるために合成樹脂繊維や不織布が使用されているため、破損や経年劣化により細分化された合成樹脂が雨水や流下水などとともに河川を通じて海に流入し、マイクロプラスチックによる生態系への悪影響を及ぼすことにつながる。
3)マルチング材による被覆は、傾斜地ではマルチング材が物理的に上方から下方へ移動しやすく、移動防止のためにネットで被覆する場合も、急勾配になるとマルチング材を自立させることが困難になることから適用可能な勾配には限界がある。また、ネットが破損した場合にはマルチング材が傾斜地から落下して、その下部にある施設や利用者に悪影響を与える問題がある。さらに、前述した防草シートと同様な景観的問題や、合成樹脂の破損や劣化による環境保全上の問題も有する。
4)特許文献1、特許文献2、及び特許文献3記載の方法は、転圧工程を含むため、自走式転圧機械の導入が難しい傾斜地での適用は困難である。
5)特許文献4に記載の無機質繊維を吹付ける方法は、無機質繊維が材料攪拌時や吹付施工時に風で飛散しやすく、周辺住民の生活環境や吹付作業員に悪影響を与えるなどの問題を有する。
6)特許文献5の方法は、乾燥させた木質チップを用いる必要があるが、一般に法面や斜面等の傾斜地で使用されるマルチング材は、伐採材、伐竹材、伐根材などに代表される生木を現場で粉砕したものが用いられるため、施工に先立ってチップ材を乾燥させるための乾燥機の導入や、雨に当たらないようにするための屋根付きの資材置き場の設置などが必要となることから、実用的な方法にはなり得ない問題を有する。
本発明の態様は、傾斜地に防草基盤層を造成して植物の発芽生育を防止する防草工法であって、
主材料である40mmアンダーのサイズの木質チップに、前記木質チップ1m 3 当たりセメントを150~350kg、粉末状粘土鉱物を10~50kg、及び水を混合して防草基材を調製し、
前記防草基材を積層散布することによって、5~10cm厚の前記防草基盤層を造成することを特徴とする。
本発明の別の態様は、傾斜地に防草基盤層を造成して植物の発芽生育を防止する防草工法であって、
主材料である40mmアンダーのサイズの木質チップに、前記木質チップ1m 3 当たりセメントを150~350kg、粉末状粘土鉱物を10~50kg混合して水を配合しない無水状態の防草基材を調製し、
前記無水状態の防草基材に対し、積層散布する直前に水を混合して防草基材を調製した後、前記防草基材を積層散布することによって、5~10cm厚の前記防草基盤層を造成することを特徴とする。
上記態様において、前記防草基材又は前記無水状態の防草基材の調製において、粒径1mm以上の顆粒状鉱物資材及び/又は繊維長10~30mmの短繊維材をさらに混合することが、好適である。
1)傾斜地に対し、木質チップを主材料としかつ少なくともセメント及び粉末状粘土鉱物を含む防草基材を、水を含む状態で積層散布することで、転圧作業やネットによる固定作業を伴うことなく防草基盤層を造成することができるので、傾斜地における施工性の向上と、安全性の確保が期待できる。
2)乾燥した木質チップから湿った木質チップまで、使用資材の状態を問わずに使用することができることから、施工の効率性と、経済性の向上が期待できる。
3)天然資材及び鉱物資材からなる防草基材を積層撒布して造成された防草基盤層は、太陽光(紫外線)による劣化が生じないため、防草効果が長期間持続するとともに、化学物質が流亡して環境に悪影響を与える心配がない。
4)木質チップの資材である木質廃材の多くは産業廃棄物として処分されているが、防草基盤層の造成のために有効活用することにより、地域環境や地球環境の保全に寄与する。
本発明では、防草基盤層が、防草基材を積層散布することにより造成される。防草基材は、主材料が木質チップであり、これに加え、少なくともセメント及び粉末状粘土鉱物と、水とを含む。防草基材は、機械又は人力で積層撒布する。
機械による積層撒布方法としては、圧縮空気で圧送するモルタル・コンクリート吹付機(湿式吹付機)、ロータリー式吹付機(耐圧容器を有しない乾式吹付機)、負圧を利用した空気搬送機、高速コンベアなどを用いることができる。本発明の防草基材は、いずれの方法を採用しても施工することができるが、使用機械により積層撒布する上で得失がある。
本発明で用いる防草基材は、木質チップを主材料とする。その理由は、建設現場では伐採材や伐根材の処理を要する場合が多く、さらに地域において間伐材や除伐材などの有効利用や、施設管理で発生する剪定材や質廃材の有効活用が求められているからである。また、こうした天然資源を有効活用することは、地域環境や地球環境保全という観点からも求められている。これら木質廃材を粉砕した木質チップは天然資材であり、防草基盤層として道路法面や畦畔などに活用した場合でも最終的には微生物により分解されるため、化学物質が残留する心配がない。また、本発明では、木質チップが乾燥していても、雨曝状態で湿っていても、問題なく使用することができる。
セメントは、防草基材の主材料である木質チップ同士を接合し、所定の位置に十分な空隙が確保された状態(おこしのような状態)の防草基盤層を傾斜地に造成するために配合される。積層撒布してセメントが固化した後の防草基盤層は、空隙が大きく乾燥しやすいことから雑草が発芽し難い。加えて、土壌硬度(山中式土壌硬度計)も30mm以上に達する硬さを有することから、傾斜地における自立安定性も有している。防草基盤層の造成厚さは、少なくとも5cm、好適には8~10cmである。セメントで接合され、かつ乾燥しやすい防草基盤層は、物理的に植物の出芽や発芽を抑制し、さらに地山へ太陽光が届かなくなることによる出芽抑制効果により、高い防草効果が得られる。
木質チップを主材料とする防草基材を積層撒布する際、もともと木質チップは相互に絡み合う力が弱いので、傾斜地に施工すると、木質チップの多くは比重が軽いためにリバウンドしてしまう問題が生じる。リバウンドはセメント量が多くなるほど粘性が増加するので減少するが、350kg/m3以下という貧配合では粘性が不十分なことから、リバウンドを防止する対策を講じる必要がある。この点について鋭意検討した結果、粉末状粘土鉱物を防草基材に配合することにより、積層撒布した防草基盤層の空隙を維持した状態のまま木質チップの粘性を増加させ、リバウンド発生を防止できることが確かめられた。
顆粒状鉱物資材は、本発明では粒径1mm以上のものをいう。ここでの粒径は、篩目のサイズである。顆粒状鉱物資材は、所定の位置に十分な空隙が確保された状態(おこしのような状態)に造成される防草基盤層内の木質チップ間の空隙を密閉させることなく通気性を保った状態で充填する。それによって、防草基盤層の接合力と防草効果をさらに高めるために配合される。顆粒状鉱物資によって空隙が通気性を有する状態で適度に充填されることにより、地山から出芽する雑草を物理的に抑える効果が向上する。また、防草基盤層の硬さや強度も高まるので、施工地が急勾配である場合に有効である。
短繊維材は、繊維を長さ10~30mmに切断したもので、椰子繊維に代表される天然繊維、再生セルロース繊維に代表される再生繊維、ポリ乳酸繊維に代表される生分解性樹脂繊維などが使用できる。椰子繊維は、短繊維の長さを調整することが難しいため、再生繊維又は生分解性樹脂繊維が好適である。さらに、繊維の貯蔵性を考慮すると再生繊維が望ましい。再生セルロース繊維を使用した場合は、木質材料1m3に対して5~20kgが好適である。
Claims (4)
- 傾斜地に防草基盤層を造成して植物の発芽生育を防止する防草工法であって、
主材料である40mmアンダーのサイズの木質チップに、前記木質チップ1m3当たりセメントを150~350kg、粉末状粘土鉱物を10~50kg、及び水を混合して防草基材を調製し、
前記防草基材を積層散布することによって、5~10cm厚の前記防草基盤層を造成することを特徴とする防草工法。 - 傾斜地に防草基盤層を造成して植物の発芽生育を防止する防草工法であって、
主材料である40mmアンダーのサイズの木質チップに、前記木質チップ1m3当たりセメントを150~350kg、粉末状粘土鉱物を10~50kg混合して水を配合しない無水状態の防草基材を調製し、
前記無水状態の防草基材に対し、積層散布する直前に水を混合して防草基材を調製した後、前記防草基材を積層散布することによって、5~10cm厚の前記防草基盤層を造成することを特徴とする防草工法。 - 前記防草基材の調製において、粒径1mm以上の顆粒状鉱物資材及び/又は繊維長10~30mmの短繊維材をさらに混合することを特徴とする請求項1に記載の防草工法。
- 前記無水状態の防草基材の調製において、粒径1mm以上の顆粒状鉱物資材及び/又は繊維長10~30mmの短繊維材をさらに混合することを特徴とする請求項2に記載の防草工法。
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