以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
本発明細書において、説明の便宜上、「上」、「上方」、または「上部」もしくは「下」、「下方」、または「下部」という語句を用いて説明するが、各構成の上下関係を説明しているに過ぎない。例えば、構造物(例えば、台車など)の構成の位置関係を説明する場合、構造物の通常使用する態様を基準とし、構造物が設置される面側(例えば、床面側)を「下」、「下方」、または「下部」とすることがある。
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
本明細書および図面において、同一又は類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字又は小文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、一つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフンと自然数を用いる場合がある。
本明細書において、「自動搬送車(AGV)」とは、指示に基づいて所定の場所まで自動走行することができる車両をいう。指示は、統括システムからの指示であってもよく、作業者からの指示であってもよい。なお、「自動搬送車」は、牽引用ロボットを含む。
本明細書において、「牽引用ロボット」とは、指示された所定の場所まで台車を牽引しながら自動走行することができるロボットをいう。なお、ロボットは車両を含む。
本明細書において、「台車」とは、資材などを積載してキャスターを利用して移動することができるものをいう。
本明細書において、「牽引」とは、物体を引いて移動させる場合だけでなく、物体を押して移動させる場合も含む。
本明細書において、「自動走行」とは、自動搬送車が統括システムと通信接続し、統括システムからの指示に基づく走行と、自動搬送車が具備する制御装置による自律走行とを含む。自律走行には、自動搬送車が所定の経路に沿って目的地に向かう走行だけでなく、目標物を追従した走行も含まれる。
本明細書において、「統括システム」とは、自動搬送車を制御するとともに、自動搬送車が走行する建造物を制御し、自動搬送車および建造物と通信接続して自動搬送車および建造物を管理するシステムをいう。「統括システム」は、制御部、受信部、送信部、または記憶部などを含み、例えば、コンピュータである。
本明細書において、「レーザーセンサー」とは、赤外線または可視光のレーザーを照射し、構造物からの反射光を検出することができるセンサーをいう。「レーザーセンサー」のレーザーは、走査することができるものであってもよく、「レーザーセンサー」はレーザーレンジファインダーを含む。
以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
<第1実施形態>
ここでは、自動搬送システムで利用する台車用アタッチメント10、台車20、台車用アタッチメントを装着した台車30、および牽引用ロボット40について説明する。なお、以下の説明において、便宜上、台車用アタッチメント10が装着されていない台車を台車20として記載し、台車用アタッチメント10が装着されている台車を台車30として記載する。
[台車用アタッチメント、台車、台車用アタッチメントを装着した台車]
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る台車用アタッチメント10、台車20、台車用アタッチメントを装着した台車30について説明する。
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る台車用アタッチメント10の模式図である。具体的には、図1(A)は、台車用アタッチメント10の上面から眺めた斜視図である。図1(A)に示すように、台車用アタッチメント10は、平面部11、第1側面部12、および第2側面部13を含む。第1側面部12および第2側面部13は、平面部11から屈曲して延伸している。なお、ここでの延伸には、第1側面部12および第2側面部13が平面部11と一体化して連続的に設けられているだけでなく、第1側面部12および第2側面部13が平面部11に接合されて設けられている場合も含む。すなわち、第1側面部12および第2側面部13は、平面部11を構成する部材を折り曲げて一体的に形成することもでき、平面部11に別の部材を接合して形成することもできる。
平面部11の形状は矩形であり、2つの長辺および2つの短辺を含む。平面部11の一方の長辺に第1側面部12が設けられているが、平面部11の他方の長辺には側面部は設けられていない。同様に、一方の短辺に第2側面部13が設けられているが、平面部11の他方の短辺には側面部は設けられていない。詳細な説明は後述するが、台車用アタッチメント10が装着された台車30は、荷台21の下に牽引用ロボット40が入り込んで牽引されるため、牽引用ロボット40が入り込むための空間が必要である。平面部11の4辺全てに側面部を設けてしまうと、荷台21の下に牽引用ロボット40が入り込むことができなくなる。そのため、平面部11の2つの長辺のうちの一方および2つの短辺のうちの一方には側面部を設けない。但し、牽引用ロボット40が常に平面部11の他方の長辺側から入りこむ場合、平面部11の他方の短辺には側面部を設けてもよい。
第1側面部12は、平面部11の長辺の少なくとも一部に設けられていればよい。同様に、第2側面部13は、平面部11の短辺の少なくとも一部に設けられていればよい。また、第1側面部12は、平面部11の長辺の中点を含む中央部に設けられている。同様に、第2側面部13は、平面部11の短辺の中点を含む中央部に設けられている。
第1側面部12と第2側面部13とは直交していることが好ましい。すなわち、第1側面部12と第2側面部13とを、平面部11に対して水平方向に延伸したと仮定した場合、第1側面部12と第2側面部13との延伸部分が90度で交差することが好ましい。牽引用ロボット40は、荷台21の下で回転(旋回)することができるが、特定の角度である90度の回転で台車の移動方向を変えることができるようになるため、自動搬送における牽引用ロボット40の制御が簡易なものとなる。
第1側面部12には第1開口部14が設けられ、第2側面部13には第2開口部15が設けられている。第1開口部14は、第1側面部12の中央よりも下方側に設けられている。第1開口部14の形状は矩形であり、矩形の長辺は、平面部11に平行方向に設けられている。第2開口部15も第1開口部14と同様の構成である。
平面部11、第1側面部12、および第2側面部13はある程度の剛性を必要とする。そのため、平面部11、第1側面部12、および第2側面部13の各々の材料は、剛性材料が好ましい。剛性材料としては、例えば、スチール、ステンレス、またはプラスチック等である。
図1(B)は、本発明の一実施形態に係る台車20の模式図である。具体的には、図1(B)は、台車20の上面側から眺めた斜視図である。図1(B)に示すように、台車20は、荷台21およびキャスター22を含む。キャスター22は、荷台21の下面側に設けられている。
荷台21の上面は、台車用アタッチメント10を装着することができるように平坦であることが好ましい。但し、荷台21の上面は、台車用アタッチメント10と重畳する部分が平坦であればよく、荷台21の上面の一部に窪みや開口が設けられていてもよい。荷台21の材料としては、スチール、ステンレス、またはプラスチックなどを用いることができる。また、荷台21の表面には防錆塗装が施されていてもよい。例えば、防錆塗装として、荷台21の表面に亜鉛メッキ処理を行うことができる。さらに、荷台21の上面には、図1(B)には図示しないが、積載した資材53(図6参照。)が崩れることを防止するためのストッパー、例えば、パイプなどを設けることもできる。
キャスター22は、台車20を移動させることができる。キャスター22は、取付部と、本体と、車輪とを含む。車輪は、本体の車軸を中心軸として回動する。また、本体は、取付部によって荷台21に取り付けられ、車輪の向きを変えるように可動する。そのため、台車20は、キャスター22により、あらゆる方向に移動することができる。さらに、キャスター22は、台車20を所定の位置に固定しておくことができるように、ストッパーが設けられていてもよい。
車輪は、例えば、スチールまたはステンレスなどの金属部材で構成されていてもよく、例えば、ゴム、ナイロン、またはウレタンなどの樹脂部材で構成されていてもよい。
自動搬送では、台車20の下部、すなわち、荷台21の下面側には、台車20を牽引する牽引用ロボット40が入り込むため、台車20の下部は、牽引用ロボット40が入り込むための間隙を設ける必要がある。そのため、キャスター22の高さは、牽引用ロボット40の高さよりも大きい。台車20の下部の間隙(床面から荷台21の下面までの高さ)は、キャスター22の取付部の長さによって調整することができ、また、車輪の直径によっても調整することができる。
図1(C)は、本発明の一実施形態に係る台車用アタッチメント10を装着した台車30の模式図である。具体的には、図1(C)に示す台車30は、図1(B)に示した台車20の上に図1(A)に示した台車用アタッチメント10が装着されている。
台車30は、平面部11の長辺および短辺が、それぞれ、荷台21の長辺および短辺と一致するように、台車用アタッチメント10が装着されている。すなわち、図1(C)に示す台車30は、荷台21の形状に合わせた台車用アタッチメント10が形成されている。台車用アタッチメント10の平面部11が荷台21の上面に接するように設置すると、第1側面部12は、荷台21の第1側面(荷台21の長辺側の側面)の少なくとも一部を覆い、第1側面部12の端部は、荷台21よりも下方に突出する。同様に、第2側面部13は、荷台21の第2側面(荷台21の短辺側の側面)の一部を覆い、第2側面部13の端部は、荷台21よりも下方に突出する。
また、第1開口部14は、荷台21によって隠されないように、荷台21の下方の突出した部分に設けられている。同様に、第2開口部15も、荷台21によって隠されないように、荷台21の下方の突出した部分に設けられている。なお、台車30において、第1側面部12の端部および第2側面部13の端部は、キャスター22の接地面(床面)よりも上方に位置しており、第1側面部12および第2側面部13が床面に接して台車30の移動を妨げることはない。
また、第1開口部14は、キャスター22が回転したときであってもキャスター22によって隠れないようにするため、隣接する2つのキャスター22の間に位置している。同様に、第2開口部も、隣接する2つのキャスター22の間に位置している。さらに、第1開口部14および第2開口部15の各々は、2つのキャスター22の中央部に位置していることが好ましい。
台車30自体は自動搬送機構を持たないが、荷台21の下に牽引用ロボット40が入り込み、牽引用ロボット40が荷台21の下方に突出した第1側面部12または第2側面部13を押すことによって台車30を移動させることができる。そのため、第1側面部12および第2側面部13の各々の荷台21の下方の突出した部分には、牽引用ロボット40が押すための(より具体的には、後述する牽引用ロボット40の押当部43が押すための)開口されていない部分が設けられていることが好ましい。
[牽引用ロボット]
図2を用いて、本発明の一実施形態に係る牽引用ロボット40について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る牽引用ロボット40の模式図である。具体的には、図2(A)は、牽引用ロボット40の上面から眺めた斜視図であり、図2(B)は、牽引用ロボット40の正面図である。
図2(A)および図2(B)に示すように、牽引用ロボット40は、本体制御部41、クローラー部42、および押当部43を含む。本体制御部41は、2つのクローラー部42の間に位置している。押当部43は、牽引用ロボット40の正面側に設けられている。また、牽引用ロボット40の正面にはレーザーセンサー44が設けられている。牽引用ロボット40の正面において、押当部43は、レーザーセンサー44の上方に設けられている。なお、この場合、台車用アタッチメント10の第1側面部12および第2側面部13に、それぞれ、第1開口部14および第2開口部15を設けない構成とすることもできる。第1開口部14および第2開口部15は、レーザーセンサー44のレーザー光の照射窓であるところ、台車用アタッチメント10を装着した台車30において、第1側面部12および第2側面部13の下端がレーザーセンサー44の上方に位置する場合には、第1開口部14および第2開口部15を必ずしも必要としない。
また、牽引用ロボット40の正面において、牽引用ロボット40の正面において、押当部43を、レーザーセンサー44の下方に設けることもできる。この場合、台車用アタッチメント10の第1側面部12および第2側面部13がレーザーセンサー44のレーザー光を遮光しないように、それぞれに第1開口部14および第2開口部15を設ける。
本体制御部41は、統括システムからの指示を受信し、クローラー部42を制御することができる。そのため、本体制御部41には、コントローラ、無線モジュール、バッテリー、またはクローラー部42を駆動するためのモータ、ギヤヘッド、もしくはブレーキなどが設けられている。
クローラー部42は、牽引用ロボット40を移動させることができる。2つのクローラー部42を同じ方向に回転させることで、牽引用ロボット40は、前進または後退することができる。また、2つのクローラー部42を異なる方向に回転させることで、牽引用ロボット40は、その位置で回転(旋回)することができる。
なお、牽引用ロボット40の移動手段はクローラーに限られない。牽引用ロボット40の移動手段は、車輪を用いたものでもよく、例えば、キャスターであってもよい。
レーザーセンサー44は、牽引用ロボット40の前方にレーザーを走査しながら照射し、出射光と反射光とに基づいて牽引用ロボット40の周囲の構造物などを検出することができる。具体的には、レーザーセンサー44は、牽引用ロボット40と構造物との距離を算出することによって構造物を検出する。牽引用ロボット40と構造物との距離の算出は、演算装置を用いて行われるが、演算装置は、レーザーセンサー44に設けられていてもよく、本体制御部41に設けられていてもよい。なお、牽引用ロボット40と構造物との距離の算出は、TOF(Time of Flight)方式またはAM(Amplitude Modulation)方式によって行うことができる。
TOF方式は、測定領域に向けて出射したパルス状の出射光と、構造物からの反射光との検出時間差に基づいて距離を算出する。一方、AM方式は、測定領域に向けて出射した拡幅変調された出射光と、構造物からの反射光との位相差に基づいて距離を算出する。
本体制御部41は、さらに、ジャイロセンサーやGPS(Global Positioning System)信号受信器を含むIMU(Inertial Measurement Unit)を有することができる。ジャイロセンサーやGPSを利用して構造物を検知し、ジャイロセンサーやGPSで得られたデータを基に牽引用ロボット40と構造物との距離を算出してもよい。
押当部43は、牽引用ロボット40が台車30の荷台の下に入り込み、第1側面部12または第2側面部13と接し、第1側面部12または第2側面部13を押し、牽引用ロボット40が台車30を牽引することができる。本体制御部41およびクローラー部42が第1側面部12または第2側面部13に当たらないようにするため、押当部43は牽引用ロボット40の最前面の位置に設けられる。押当部43は、例えば、本体制御部41から突出した部分に設けることができる。
押当部43は、第1側面部12または第2側面部13と面で接するようにするため、平坦面を有することが好ましい。押当部43が第1側面部12または第2側面部13と面で接することにより、台車30の移動を安定させることができる。
押当部43の形状は、例えば、直方体であるが、これに限られない。押当部43の形状は、平坦面を有する多角形体または円柱などであってもよい。
図2(B)に示すように、押当部43の幅方向の位置は、押当部43の中心が牽引用ロボット40の正面の中心線上にあるようにすることが好ましい。押当部43が牽引用ロボット40の中心線上にあることで、台車30のキャスター間の中央に位置する第1側面部12または第2側面部13との位置合わせが容易となる。また、側面部の中央部と牽引用ロボット40の中央部が合致することで、台車30の移動の制御性が高くなる。なお、押当部43の高さ方向の位置は、本体制御部41またはクローラー部42よりも上方にあってもよく、下方にあってもよい。押当部43が本体制御部41またはクローラー部42よりも上方にある場合は、台車30の荷台21の下面と接触しない高さとする。また、押当部43が本体制御部41またはクローラー部42よりも下方にある場合は、レーザーセンサー44のレーザーを遮らないような高さとする。
図2(A)および図2(B)に示す押当部43は板状であるが、押当部43の構成は板状でなくてもよい。上述したように、押当部43は、台車30の第1側面部12または第2側面部13を押すことができる構成であればよい。板状以外の押当部43の構成として、例えば、本体制御部41から突出した平坦面を有するブロック体とすることができる。
[牽引用ロボットを用いた台車の移動]
図3を用いて、牽引用ロボット40を用いた台車30の移動について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る台車30および牽引用ロボット40において、牽引用ロボット40による台車30の移動を説明する図である。
図3(A)は、牽引用ロボット40が台車30の荷台21の下に入り込む構成を示す。図3(A)に示すように、牽引用ロボット40は、荷台21の第1側面部12が設けられていない長辺側から荷台21の下に入り込む。荷台21の長辺側は、荷台21の短辺側よりも2つの隣接するキャスター22の間隔が大きい。そのため、牽引用ロボット40は、荷台21の短辺側からよりも荷台21の長辺側からの方が荷台21の下に入りやすい。
牽引用ロボット40は、レーザーセンサー44を用いて、荷台21の第1側面部12が設けられていない長辺側の2つのキャスター22の位置を検出し、その2つキャスターの中心位置に向かって荷台21の下に入り込む。荷台21の下に入り込んだ牽引用ロボット40は、荷台の第1側面部12が設けられている長辺側の2つのキャスター22の位置を検出し、その2つのキャスターの中心位置、すなわち、第1側面部12に向かって進む。
図3(B)は、牽引用ロボット40の押当部43が、台車30の第1側面部12と接触している状態を示す。この状態において、牽引用ロボット40は、押当部43が第1側面部12を押すことによって、台車30を移動させることができる。また、レーザーセンサー44のレーザー光は第1開口部14を通して照射することができるため、牽引用ロボット40は、台車30の進行方向の障害物を認識することができる。
図3(C)は、牽引用ロボット40が90度回転し、牽引用ロボット40の押当部43が、台車30の第2側面部13と接触している状態を示す。この状態において、牽引用ロボット40は、押当部43が第2側面部13を押すことによって、台車30を移動させることができる。また、レーザーセンサー44のレーザー光は第2開口部15を通して照射することができるため、牽引用ロボット40は、台車30の進行方向の障害物を認識することができる。
本実施形態においては、牽引用ロボット40は、荷台21の下で回転し、台車30の進行方向を変更することができる。すなわち、台車30を回転させる必要はないため、建設現場のような走行経路が狭い場所においても容易に進行方向を変更することできる。
本実施形態に係る台車用アタッチメント10、台車20、および台車用アタッチメント10を装着した台車30によれば、牽引用ロボット40が荷台21の下に入り込み、牽引用ロボット40が第1側面部12または第2側面部13を押すことによって台車30を移動させることができる。台車30の移動は、キャスター22を利用するため、牽引用ロボット40は、台車30を持ち上げる必要はない。そのため、牽引用ロボット40は、パワーを必要とせず、小型化することが可能である。したがって、小回りが利く台車30および牽引用ロボット40は、搬送経路に様々な資材などが置かれた建設現場においても自動搬送で利用することができる。
さらに、台車用アタッチメント10を装着した台車30においては、牽引用ロボット40の前面(より具体的には押当部43)が台車用アタッチメント10の第1側面部12または第2側面部13に接する位置で自動搬送を行う。牽引用ロボット40のレーザーセンサー44からのレーザー光の照射が妨げられることがないため、台車30の前方の広い範囲で構造物を認識することができる。
<第2実施形態>
図4を用いて、本発明の別の一実施形態に係る台車用アタッチメント10Aおよび10Bについて説明する。但し、以下では、第1実施形態の台車用アタッチメント10と同様の構成については説明を省略し、主に、台車用アタッチメント10と異なる構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る台車用アタッチメント10Aおよび10Bの模式図である。具体的には、図4(A)は、第1側面部12が設けられた側から眺めた台車用アタッチメント10Aの斜視図であり、図4(B)は、第1側面部12が設けられていない側から眺めた台車用アタッチメント10Aの斜視図である。また、図4(B)は、第1側面部12が設けられた側から眺めた台車用アタッチメント10Bの斜視図である。
図4(A)および図4(B)に示す台車用アタッチメント10Aは、平面部11、第1側面部12、第2側面部13、および位置合わせ部16を含む。位置合わせ部16は、平面部11の角部に設けられている。
位置合わせ部16は、台車20と台車用アタッチメント10Aとの位置を合わせ、また、その位置を固定することができる。そのため、位置合わせ部16は、台車用アタッチメント10Aを台車20に装着した際に、台車20の荷台21の角部に嵌合する形状であることが好ましい。位置合わせ部16として、例えば、L字金具を用いることができる。
位置合わせ部16は、平面部11の4つの角部に対して4つ設けることができるが、少なくとも1つ設けられていればよい。位置合わせ部16を1つ設ける場合は、位置合わせ部16を、第1側面部12および第2側面部が設けられていない辺の交点の角部に設ける(図4(B)参照)。このような構成とすることで、第1側面部12、第2側面部13、および位置合わせ部16によって、台車用アタッチメント10Aを荷台21に固定することができる。また、位置合わせ部16を2つ設ける場合は、位置合わせ部16を平面部11の対角線上にある角部に設ける。このような構成とすることで、対角線上に設けられた位置合わせ部16によって台車用アタッチメント10Aを荷台21に固定することができる。
図4(B)に示す台車用アタッチメント10Bは、平面部11、第1側面部12、第2側面部13および第3開口部17を含む。第3開口部17は、平面部11の角部近傍に設けられている。
台車20の荷台21に凸部が設けられている場合、第3開口部17を荷台21の凸部に嵌合または挿通することにより、台車20と台車用アタッチメント10Bとの位置を合わせ、また、その位置を固定することができる。なお、荷台21の凸部は、積載した資材53が崩れることを防止するために設置されたパイプも含まれる。パイプを第3開口部17に挿通することで、台車20と台車用アタッチメント10Bとを固定することができる。
第3開口部17は、平面部11の4つの角部に対して4つ設けることができるが、少なくとも1つ設けられていればよい。第3開口部17を1つ設ける場合は、第3開口部17を、第1側面部12および第2側面部が設けられていない辺の交点の角部に設ける。このような構成とすることで、第1側面部12、第2側面部13、および第3開口部17によって、台車用アタッチメント10Bを荷台21に固定することができる。また、第3開口部17を2つ設ける場合は、第3開口部17を平面部11の対角線上にある角部に設ける。このような構成とすることで、対角線上に設けられた第3開口部17によって台車用アタッチメント10Bを荷台21に固定することができる。
なお、資材53の積載に邪魔にならないようであれば、第3開口部17を角部以外に設けることもできる。
本実施形態に係る台車用アタッチメント10Aまたは10Bによれば、台車20の荷台21との位置合わせのための位置合わせ部16または第3開口部17が設けられているとともに、位置合わせ部16または第3開口部17を用いて位置を固定することができる。そのため、台車用アタッチメント10Aまたは10Bを装着した台車30は、台車用アタッチメント10Aまたは10Bのずれを生ずることなく、安定した移動が可能となる。
<第3実施形態>
図5を用いて、本発明の別の一実施形態に係る台車用アタッチメント10を装着した台車30Aについて説明する。但し、以下では、第1実施形態の台車20または台車30と同様の構成については説明を省略し、主に、台車20または台車30と異なる構成について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る台車用アタッチメント10を装着した台車30Aの模式図である。具体的には、図5は、台車30Aの下面から眺めた斜視図である。
図5に示す台車30Aは、荷台21の下面に一対のガイド23が設けられている。一対のガイド23は、荷台21の内側から外側の第1側面部12に向かって幅が狭くなるように設けられている。一対のガイド23は、荷台21の下に入り込んだ牽引用ロボット40を誘導し、牽引用ロボット40の押当部43と第1側面部12との位置合わせができるようになっている。
一対のガイド23の幅および高さは、牽引用ロボット40のクローラー部42を誘導することができる幅および高さでもよく、押当部43を誘導することができる幅および高さでもよい。また、一対のガイド23は、直線状に設けられていてもよく、一対のガイド23内に凸状または凹状の曲線状に設けられていてもよい。
一対のガイド23は、第2側面部13側に設けられていてもよい。
本実施形態に係る台車用アタッチメント10を装着した台車30によれば、牽引用ロボット40が荷台21の下に入り込んでも、荷台21の下面に設けられた一対のガイド23が牽引用ロボット40を第1側面部12または第2側面部13の方に誘導することができるため、牽引用ロボット40と第1側面部12または第2側面部13との位置合わせが安定する。また、牽引用ロボット40の自動搬送においても、一対のガイド23が牽引用ロボット40の位置を固定させるため、台車30は、安定した移動が可能となる。
<第4実施形態>
図6を用いて、第1実施形態で説明した台車30および牽引用ロボット40を用いた本発明の一実施形態に係る自動搬送用システムについて説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る自動搬送システムを利用した建築現場の模式図である。図6に示す建築現場の建造物50は、複数のフロアを有している。建造物50の隣には、フロア間、すなわち、建造物50の高さ方向への資材53の搬送を可能にする工事用エレベータ60が設置されている。工事用エレベータ60は、建造物50の高さ方向に沿って延伸する脚柱61に昇降機62が取り付けられている。昇降機62は、脚柱61に沿って移動し、建造物50の各フロアで停止することができるように設定されている。なお、自動搬送システムには、統括システムが含まれていてもよく、牽引用ロボット40および工事用エレベータ60は、統括システムによって工事用エレベータ60の移動を制御することができる。
作業フロア(資材の荷取り場または荷置き場)では、フロアの壁面の開口部を塞ぐようにシャッター51が設置されている。シャッター51は、工事用エレベータ60側に設置され、工事用エレベータ60を利用する場合にはシャッター51を開く。すなわち、シャッター51は、工事用エレベータ60の出入口ということもできる。また、シャッター51の前には、フロアの床面と昇降機62の床面との段差を小さくするためのスロープ52が設置されている。なお、シャッター51の開閉も統括システムによって制御することができる。
自動搬送システムにおいては、資材53が積載された台車30の下に牽引用ロボット40が入り込み、牽引用ロボット40が、台車30を牽引しながら、荷取り場から荷置き場まで自動走行する。建築現場においては、資材53などがフロアの床面上に置いてあることも多く、牽引用ロボット40の搬送経路が限定される。そのため、牽引用ロボット40の自動走行を可能とするためには、牽引用ロボット40の走行可能な搬送経路を特定しておく必要がある。したがって、自動搬送システムの利用を開始する前において、フロアの状況を示した地図(自動搬送用フロア地図)を生成しておく必要がある。
図7は、建築現場において、自動搬送用フロア地図の生成について説明する模式図である。具体的には、図7(A)は、建築現場のフロアの状況を示す模式図であり、図7(B)は、生成された自動搬送用フロア地図の模式図である。
図7(A)に示すように、建築現場における建造物50のフロアの床面上には、第1資材53-1および第2資材53-2が置かれている。牽引用ロボット40が自動走行する上で、第1資材53-1および第2資材53-2は障害物となり得る。また、建造物50のフロアには、建造物50を支えるための柱54が設置されている。柱54もまた、牽引用ロボット40の自動走行における障害物となり得る。そのため、牽引用ロボット40の自動走行の障害物となり得る、第1資材53-1、第2資材53-2、または柱54などを全て障害物55としてマーキングした自動搬送用フロア地図を生成する。
自動搬送用フロア地図を生成するため、作業者は、手動で操作し、牽引用ロボット40が自動走行するフロア(例えば、荷取り場または荷置き場など)内において、作業者は、牽引用ロボット40を手動で操作し、走行させる。牽引用ロボット40には、レーザーセンサーが搭載されており、牽引用ロボット40は、レーザーセンサーを用いて、第1資材53-1、第2資材53-2、または柱54などを検知することができる。牽引用ロボット40は、検知された情報を基にして、図7(B)に示すような、第1資材53-1、第2資材53-2、または柱54などが障害物55としてマーキングされた自動搬送用フロア地図を生成することができる。なお、自動搬送用フロア地図の生成における処理は、牽引用ロボット40でなくてもよい。牽引用ロボット40と通信接続し、牽引用ロボット40から情報を受信した統括システムで処理を行い、自動搬送用フロア地図を生成してもよい。
また、自動搬送用フロア地図は、リアルタイムでディスプレイに表示できるようにしてもよい。作業者は、実際の牽引用ロボット40の走行と、ディスプレイに表示された自動搬送用フロア地図とを比較して確認することができるため、自動搬送用フロア地図の精度が向上する。
牽引用ロボット40が、ジャイロセンサーを搭載している場合、フロアの床面上の段差を検出することができる。この場合、自動搬送用フロア地図には、障害物55だけでなく、段差も示すことが可能となる。
自動搬送用フロア地図の生成においては、牽引用ロボット40と異なるロボットを使用することもできる。例えば、牽引用ロボット40よりも小さいロボットを使用すれば、牽引用ロボット40が走行することができない場所に入り込むことができるため、より詳細な自動搬送用フロア地図を生成することができる。
再び、図6に戻り、自動搬送システムについて説明する。
自動搬送用フロア地図の情報、ならびに台車30および牽引用ロボット40の位置の情報など、自動搬送システムで必要な情報は統括システムによって制御され、管理される。例えば、台車30の初期位置(スタート位置)および搬送位置(ゴール位置)、または自動搬送システムの実行開始時間などは、統括システムを通じて制御し、管理することができる。
統括システムによって自動搬送システムが実行されると、牽引用ロボット40は、自動走行を開始し、荷取り場フロアの初期位置の資材53が積載された台車30の荷台21の下に入り込む。牽引用ロボット40は、自動搬送用フロア地図を基にして障害物55を避け、台車30を牽引しながら自動走行する。牽引用ロボット40は、荷取り場フロアのシャッター51の前、より具体的にはスロープ52の前で停止する。
統括システムは、牽引用ロボット40がシャッター51の前で停止している信号を受信すると、工事用エレベータ60の昇降機62を牽引用ロボット40のいる荷取り場フロアまで移動させ、昇降機62の扉(図示しない。)を開ける。また、統括システムが、昇降機62が荷取り場フロアで停止した信号を受信すると、荷取り場フロアのシャッター51を開く。牽引用ロボット40は、昇降機62の扉およびシャッター51が開いた信号を受信すると、スロープ52を昇り、工事用エレベータ60の昇降機62に乗り込む。統括システムは、牽引用ロボット40が昇降機62の中で停止している信号を受信すると、昇降機62の扉およびシャッター51を閉じ、昇降機62を荷置き場フロアに移動させる。また、統括システムが、昇降機62が荷置き場フロアで停止し昇降機62の扉が開く信号を受信すると、荷取り場フロアのシャッター51を開く。
牽引用ロボット40は、シャッター51が開いた信号を受信すると、自動走行を開始し、スロープ52を通って、昇降機62から荷置き場フロアに降りる。統括システムは、牽引用ロボット40がスロープ52を降りた信号を受信すると、昇降機62の扉およびシャッター51を閉める。牽引用ロボット40は、自動生成用フロア地図を基にして、障害物55を避けながら、自動走行し、搬送位置で停止する。
統括システムは、牽引用ロボット40が搬送位置で停止している信号を受信すると、牽引用ロボット40を後退させる指示を送信する。後退して台車30の荷台21の下から出た牽引用ロボット40は、シャッター51の前まで進み、上述した走行経路を逆に走行して、荷取り場フロアまで戻る。牽引用ロボット40は、別の資材53が積載された台車30の下に入り込み、台車30を牽引しながら自動走行する。
自動搬送システムは、1つの牽引用ロボット40に限られない。自動搬送システムは、複数の牽引用ロボット40を含むこともできる。すなわち、自動搬送システムでは、複数の台車30および複数の牽引用ロボット40を同時に利用して自動搬送することができる。また、統括システムは、複数の牽引用ロボット40が同時または連続的に、荷取り場フロアと荷置き場フロアを行き来できるように制御することができる。
また、上記では、牽引用ロボット40を含む自動搬送システムを説明したが、自動搬送システムは、牽引用ロボット40に限られず、あらゆる自動搬送車に適用することができる。
本実施形態に係る自動搬送システムは、牽引用ロボット40が、資材53が積載された台車30の荷台21の下に入り込み、台車30を荷取り場から荷置き場に自動で搬送することができる。例えば、夜間に自動搬送システムによる自動搬送を実行しておけば、作業者は、翌日の朝から自動搬送システムによって搬送された資材53を用いて作業を開始することができる。自動搬送システムを利用しない場合では、作業者は、翌日の朝に資材53の搬送作業から開始する必要があるが、自動搬送システムを利用すれば、資材53の搬送作業を省略することができる。そのため、自動搬送システムを利用することで、作業者の負担が軽減し、建築現場における作業効率が大幅に向上する。
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。