JP7361027B2 - 反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法 - Google Patents

反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
半導体装置製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきている。より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィーが開発されている。EUVリソグラフィーでは、EUV光に対して透明な材料が少ないことから、反射型のマスクが用いられる。この反射型マスクでは、低熱膨張基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、当該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、所望の転写用パターンが形成されたマスク構造を基本構造としている。また、転写用パターンの構成から、代表的なものとして、バイナリー型反射マスク及び位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)がある。バイナリー型反射マスクは、EUV光を十分吸収する比較的厚い吸収体パターンを有する。位相シフト型反射マスクは、EUV光を光吸収により減光させ、且つ多層反射膜からの反射光に対してほぼ位相が反転(約180度の位相反転)した反射光を発生させる比較的薄い吸収体パターン(位相シフトパターン)を有する。位相シフト型反射マスクは、透過型光位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果によって高い転写光学像コントラストが得られるので解像度向上効果がある。また、位相シフト型反射マスクの吸収体パターン(位相シフトパターン)の膜厚が薄いことから、精度良く微細な位相シフトパターンを形成できる。
EUVリソグラフィーでは、光透過率の関係から多数の反射鏡からなる投影光学系が用いられている。そして、反射型マスクに対してEUV光を斜めから入射させて、これらの複数の反射鏡が投影光(露光光)を遮らないようにしている。入射角度は、現在、反射マスク基板垂直面に対して6度とすることが主流である。投影光学系の開口数(NA)の向上と共に8度程度のより斜入射となる角度にする方向で検討が進められている。
EUVリソグラフィーでは、露光光が斜めから入射されるため、シャドーイング効果と呼ばれる固有の問題がある。シャドーイング効果とは、立体構造を持つ吸収体パターンへ露光光が斜めから入射されることにより影ができ、転写形成されるパターンの寸法や位置が変わる現象のことである。吸収体パターンの立体構造が壁となって日陰側に影ができ、転写形成されるパターンの寸法や位置が変わる。例えば、配置される吸収体パターンの向きが斜入射光の方向と平行となる場合と垂直となる場合とで、両者の転写パターンの寸法と位置に差が生じ、転写精度を低下させる。
このようなEUVリソグラフィー用の反射型マスク及びこれを作製するためのマスクブランクに関連する技術が特許文献1から特許文献3に開示されている。また、特許文献1には、シャドーイング効果についても、開示されている。EUVリソグラフィー用の反射型マスクとして位相シフト型反射マスクを用いることで、バイナリー型反射マスクの吸収体パターンの膜厚よりも位相シフトパターンの膜厚を比較的薄くすることにより、シャドーイング効果による転写精度の低下の抑制を図っている。
特開2010-080659号公報 特開2004-207593号公報 特開2009-206287号公報
パターンを微細にするほど、及びパターン寸法やパターン位置の精度を高めるほど半導体装置の電気的特性及び性能が上がり、また、集積度向上及びチップサイズを低減できる。そのため、EUVリソグラフィーには従来よりも一段高い高精度微細寸法パターン転写性能が求められている。現在では、hp16nm(half pitch 16nm)世代対応の超微細高精度パターン形成が要求されている。このような要求に対し、シャドーイング効果を小さくするために、更に吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚を薄くすることが求められている。特に、EUV露光の場合において、吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚を60nm未満、好ましくは50nm以下とすることが要求されている。
特許文献1乃至3に開示されているように、従来から反射型マスクブランクの吸収体膜(位相シフト膜)を形成する材料としてTaが用いられてきた。しかし、EUV光(例えば、波長13.5nm)におけるTaの屈折率nが約0.943である。そのため、Taの位相シフト効果を利用しても、Taのみで形成される吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚の下限は60nmが限界である。より膜厚を薄くするためには、例えば、屈折率nの小さい(位相シフト効果の大きい)金属材料を用いることができる。波長13.5nmにおける屈折率nが小さい金属材料としては、特許文献1の、例えば図7にも記載されているように、Mo(n=0.921)及びRu(n=0.887)がある。しかし、Moは非常に酸化されやすく洗浄耐性が懸念され、Ruはエッチングレートが低く、加工や修正が困難である。
本発明は、上記の点に鑑み、反射型マスクのシャドーイング効果をより低減するとともに、微細で高精度な位相シフトパターンを形成できる反射型マスクブランク及びこれによって作製される反射型マスクの提供、並びに半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
本発明の構成1は、基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、前記位相シフト膜は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなる薄膜を有することを特徴とする反射型マスクブランクである。
本発明の構成1によれば、反射型マスクパターンの開口部からの反射光と比べて、位相シフトパターンからの反射光が所定の位相差を得るために必要な膜厚が薄い位相シフト膜を得ることができる。そのため、反射型マスクにおいて、位相シフトパターンによって生じるシャドーイング効果をより低減することができる。また、本発明の構成1によれば、高い相対反射率(位相シフトパターンのない部分で反射されるEUV光を反射率100%としたときの相対的な反射率)の位相シフト膜を得ることができる。この結果、本発明の構成1の反射型マスクブランクから製造された反射型マスクを用いることにより、半導体装置製造の際のスループットを向上することができる。
(構成2)
本発明の構成2は、前記位相シフト膜の結晶構造は、アモルファスであることを特徴とする構成1の反射型マスクブランクである。
本発明の構成2によれば、位相シフト膜を構成する材料の結晶構造がアモルファスであることにより、金属などの結晶粒子による、位相シフトパターンを形成する際の悪影響を低減することができる。
(構成3)
本発明の構成3は、前記位相シフト膜は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなる薄膜であることを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランクである。
本発明の構成3によれば、前記位相シフト膜をパターニングする際のドライエッチングガスによるエッチングレートを速くすることができるので、レジスト膜の膜厚を薄くすることが可能となり、位相シフト膜の微細パターン形成に有利である。
(構成4)
本発明の構成4は、前記Ruと前記Crの組成比(Ru:Cr)は、15:1~1:20であることを特徴とする構成3の反射型マスクブランクである。
本発明の構成4によれば、Ruと共に用いられる金属がRuと同じエッチングガスによりエッチングが可能なCrであり、RuとCrの組成比が所定の範囲であることにより、加工特性が良好で、かつ薄い膜厚において、所定の位相差を得ることができる位相シフト膜を得ることができる。
(構成5)
本発明の構成5は、前記Ruと前記Niの組成比(Ru:Ni)は、20:1~1:4であることを特徴とする構成3の反射型マスクブランクである。
本発明の構成5によれば、Ruと共に用いられる金属が消衰係数の大きいNiであり、RuとNiの組成比が所定の範囲であることにより、薄い膜厚において、高い反射率で所定の位相差を得ることができる位相シフト膜を得ることができる。
(構成6)
本発明の構成6は、前記Ruと前記Coの組成比(Ru:Co)は、20:1~1:5であることを特徴とする構成3の反射型マスクブランクである。
本発明の構成6によれば、Ruと共に用いられる金属が消衰係数の大きいCoであり、RuとCoの組成比が所定の範囲であることにより、薄い膜厚において、高い反射率で所定の位相差を得ることができる位相シフト膜を得ることができる。
(構成7)
本発明の構成7は、前記多層反射膜と前記位相シフト膜との間に保護膜を更に有し、前記保護膜は、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料からなることを特徴とする構成1乃至6の何れか一つの反射型マスクブランクである。
本発明の構成7によれば、多層反射膜上に保護膜が形成されていることにより、多層反射膜付き基板を用いて反射型マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が良好となる。保護膜が、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料からなることにより、位相シフト膜をパターニングするためのドライエッチングガスに対して耐性を有するため、保護膜がエッチングされずに、保護膜へのダメージを抑制することができる。
(構成8)
本発明の構成8は、構成1乃至7の何れか一つの反射型マスクブランクにおける前記位相シフト膜がパターニングされた位相シフトパターンを有することを特徴とする反射型マスクである。
本発明の構成8によれば、反射型マスクの位相シフトパターンがEUV光を吸収し、また一部のEUV光を開口部(位相シフトパターンが形成されていない部分)とは所定の位相差で反射することができるため、反射型マスクブランクの位相シフト膜をパターニングすることによって、本発明の反射型マスク(EUVマスク)を製造することができる。
(構成9)
本発明の構成9は、構成1乃至7の何れか一つの反射型マスクブランクの前記位相シフト膜を塩素系ガスと酸素ガスとを含むドライエッチングガスによってパターニングして位相シフトパターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
本発明の構成9によれば、位相シフト膜の膜厚を薄くすることができて、シャドーイング効果を低減でき、且つ微細で高精度な位相シフトパターンを、側壁ラフネスの少ない安定した断面形状で形成することができる反射型マスクを製造することができる。
(構成10)
本発明の構成10は、EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、構成8の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
本発明の構成10の半導体装置の製造方法によれば、位相シフト膜の膜厚を薄くすることができて、シャドーイング効果を低減でき、且つ微細で高精度な位相シフトパターンを、側壁ラフネスの少ない安定した断面形状で形成することができる反射型マスクを、半導体装置の製造のために用いることができる。そのため、微細で且つ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
本発明の反射型マスクブランク(これによって作製される反射型マスク)によれば、位相シフト膜の膜厚を薄くすることができて、シャドーイング効果を低減でき、且つ微細で高精度な位相シフトパターンを、側壁ラフネスの少ない安定した断面形状で形成できる。したがって、この構造の反射型マスクブランクを用いて製造された反射型マスクは、マスク上に形成される位相シフトパターン自体を微細で高精度に形成できるとともに、シャドーイングによる転写時の精度低下を防止できる。また、この反射型マスクを用いてEUVリソグラフィーを行うことにより、微細で高精度な半導体装置の製造方法を提供することが可能になる。
本発明の反射型マスクブランクの概略構成を説明するための要部断面模式図である。 反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を要部断面模式図にて示した工程図である。 位相シフト膜の膜厚と波長13.5nmの光に対する相対反射率及び位相差の関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
<反射型マスクブランク100の構成及びその製造方法>
図1は、本実施形態の反射型マスクブランク100の構成を説明するための要部断面模式図である。図1に示されるように、反射型マスクブランク100は、マスクブランク用基板1(単に、「基板1」ともいう。)と、多層反射膜2と、保護膜3と、位相シフト膜4とを有し、これらがこの順で積層されるものである。多層反射膜2は、第1主面(表面)側に形成された露光光であるEUV光を反射する。保護膜3は、多層反射膜2を保護するために設けられ、後述する位相シフト膜4をパターニングする際に使用するエッチャント及び洗浄液に対して耐性を有する材料で形成される。位相シフト膜4は、EUV光を吸収する。また、基板1の第2主面(裏面)側には、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。
本明細書において、「マスクブランク用基板1の主表面の上に、多層反射膜2を有する」とは、多層反射膜2が、マスクブランク用基板1の表面に接して配置されることを意味する場合の他、マスクブランク用基板1と、多層反射膜2との間に他の膜を有することを意味する場合も含む。他の膜についても同様である。例えば「膜Aの上に膜Bを有する」とは、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する他、膜Aと膜Bとの間に他の膜を有する場合も含む。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの表面に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
本明細書において、位相シフト膜4が、例えば、「ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)とを含む金属を含む材料からなる薄膜」であるとは、位相シフト膜4が、少なくとも、実質的に、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)とを含む材料で構成された薄膜であることを意味する。一方、位相シフト膜4が、「ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)とからなる薄膜」とは、位相シフト膜4が、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)のみからなることを意味する場合がある。また、いずれの場合も、不可避的に混入する不純物が、位相シフト膜4に含まれることを含む。
以下、各層ごとに説明をする。
<<基板1>>
基板1は、EUV光による露光時の熱による位相シフトパターン4aの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO-TiO系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
基板1の転写パターン(後述の位相シフト膜4がこれを構成する)が形成される側の第1主面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板1の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の第2主面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面であって、132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、反射型マスクブランク100における第2主面側の平坦度は、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。
また、基板1の表面平滑度の高さも極めて重要な項目である。転写用位相シフトパターン4aが形成される基板1の第1主面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお、表面平滑度は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
更に、基板1は、その上に形成される膜(多層反射膜2など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
<<多層反射膜2>>
多層反射膜2は、反射型マスク200において、EUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜である。
一般的には、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期程度積層された多層膜が、多層反射膜2として用いられる。多層膜は、基板1側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。また、多層膜は、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、多層反射膜2の最表面の層、即ち多層反射膜2の基板1と反対側の表面層は、高屈折率層とすることが好ましい。上述の多層膜において、基板1から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が低屈折率層となる。この場合、低屈折率層が多層反射膜2の最表面を構成すると容易に酸化されてしまい反射型マスク200の反射率が減少する。そのため、最上層の低屈折率層上に高屈折率層を更に形成して多層反射膜2とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となるので、そのままでよい。
本実施形態において、高屈折率層としては、ケイ素(Si)を含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、及び酸素(O)を含むSi化合物を用いることができる。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィー用反射型マスク200が得られる。また、本実施形態において基板1としてはガラス基板が好ましく用いられる。Siはガラス基板との密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選ばれる金属単体、又はこれらの合金が用いられる。例えば波長13nmから14nmのEUV光に対する多層反射膜2としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜2の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成してもよい。
このような多層反射膜2の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜2の各構成層の膜厚、周期は、露光波長により適宜選択すればよく、ブラッグ反射の法則を満たすように選択される。多層反射膜2において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在するが、高屈折率層同士、そして低屈折率層同士の膜厚が同じでなくてもよい。また、多層反射膜2の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3nmから10nmとすることができる。
多層反射膜2の形成方法は当該技術分野において公知である。例えばイオンビームスパッタリング法により、多層反射膜2の各層を成膜することで形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、先ずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板1上に成膜する。その後Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜する。このSi膜/Mo膜を1周期として、40から60周期積層して、多層反射膜2を形成する(最表面の層はSi層とする)。また、多層反射膜2の成膜の際に、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給して、イオンビームスパッタリングを行うことにより多層反射膜2を形成することが好ましい。
<<保護膜3>>
後述する反射型マスク200の製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から多層反射膜2を保護するために、多層反射膜2の上に、又は多層反射膜2の表面に接して保護膜3を形成することができる。また、電子線(EB)を用いた位相シフトパターン4aの黒欠陥修正の際の多層反射膜2の保護も兼ね備える。ここで、図1では保護膜3が1層の場合を示しているが、3層以上の積層構造とすることもできる。保護膜3は、位相シフト膜4をパターニングする際に使用するエッチャント、及び洗浄液に対して耐性を有する材料で形成される。多層反射膜2上に保護膜3が形成されていることにより、多層反射膜付き基板を用いて反射型マスク200(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜2の表面へのダメージを抑制することができる。そのため、多層反射膜2のEUV光に対する反射率特性が良好となる。
以下では、保護膜3及び位相シフト膜4が、各1層の場合を例に説明する。なお、保護膜3が複数層含む場合には、位相シフト膜4との関係において、保護膜3の最上層(位相シフト膜4に接する層)の材料の性質が重要になる。また、位相シフト膜4が複数層含む場合には、保護膜3(の最上層)との関係において、位相シフト膜4の最下層(保護膜3に接する層)の材料の性質が重要になる。
本実施形態の反射型マスクブランク100では、保護膜3の材料として、保護膜3の上に形成される位相シフト膜4をパターニングするためのドライエッチングに用いられるエッチングガスに対して、耐性のある材料を選択することができる。
例えば、保護膜3の表面に接する位相シフト膜4の層が、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)からなる薄膜である場合には、保護膜3の材料として、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、ケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料などのケイ素系材料、並びに、クロム(Cr)、又はクロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)のうち少なくとも1以上の元素とを含むクロム系材料から選択した材料を使用することができる。
例えば、保護層3の表面に接する位相シフト膜4の層が、ルテニウム(Ru)と、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)からなる薄膜である場合には、位相シフト膜4をパターニングする際のドライエッチングガスとして、フッ素系ガスを使用することができ、保護膜3の材料としては、前記クロム系材料を選択することができる。
例えば、保護層3の表面に接する位相シフト膜4の層が、ルテニウム(Ru)と、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及びハフニウム(Hf)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)からなる薄膜である場合には、位相シフト膜4をパターニングする際のドライエッチングガスとして、フッ素系ガスや酸素を含まない塩素系ガスを使用することができる。その場合、保護層3の材料としては、前記ケイ素系材料と前記クロム系材料を選択することができる。
例えば、保護膜3の表面に接する位相シフト膜4の層が、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)、又は、ルテニウム(Ru)と、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)からなる薄膜である場合には、位相シフト膜4をパターニングする際のドライエッチングガスとして、酸素を含む塩素系ガスを使用することができる。その場合、保護膜3の材料として、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、又はケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料などのケイ素系材料を選択することができる。また、位相シフト膜4が複数の層からなる場合、保護膜3の表面に接する位相シフト膜4の層が、所定のRu系材料以外の薄膜である場合には、その材料のエッチング特性に応じて、保護膜3の材料を選択することができる。
本実施形態の反射型マスクブランク100の保護膜3は、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料(ケイ素系材料)からなることが好ましい。ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)、並びに、ルテニウム(Ru)と、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のルテニウム(Ru)系材料)の位相シフト膜4は、酸素を含む塩素系ガス、又は酸素ガスによるドライエッチングによりエッチングが可能である。ケイ素(Si)、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、又はケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料などのケイ素系材料は、これらのドライエッチングガスに対して耐性を有し、酸素の含有量が多いほど、耐性は大きい。そのため、保護膜3の材料は、酸化ケイ素(SiO、1≦x≦2)であることがより好ましく、xが大きい方が更に好ましく、SiOであることが特に好ましい。
EUVリソグラフィーでは、露光光に対して透明な物質が少ないので、マスクパターン面への異物付着を防止するEUVペリクルが技術的に簡単ではない。このことから、ペリクルを用いないペリクルレス運用が主流となっている。また、EUVリソグラフィーでは、EUV露光によってマスクにカーボン膜が堆積したり、酸化膜が成長するといった露光コンタミネーションが起こる。そのため、EUV反射型マスクを半導体装置の製造に使用している段階で、度々洗浄を行ってマスク上の異物やコンタミネーションを除去する必要がある。このため、EUV反射型マスクでは、光リソグラフィー用の透過型マスクに比べて桁違いのマスク洗浄耐性が要求されている。反射型マスク200が保護膜3を有することにより、洗浄液に対する洗浄耐性を高くすることができる。
保護膜3の膜厚は、多層反射膜2を保護するという機能を果たすことができる限り特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜3の膜厚は、好ましくは、1.0nmから8.0nm、より好ましくは、1.5nmから6.0nmである。
保護膜3の形成方法としては、公知の膜形成方法と同様のものを特に制限なく採用することができる。具体例としては、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
<<位相シフト膜4>>
保護膜3の上に、EUV光の位相をシフトする位相シフト膜4が形成される。位相シフト膜4(位相シフトパターン4a)が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させる。一方、開口部(位相シフト膜4がない部分)では、EUV光が、保護膜3を介して多層反射膜2から反射する。位相シフト膜4が形成されている部分からの反射光は、開口部からの反射光と所望の位相差を形成する。位相シフト膜4は、位相シフト膜4からの反射光と、多層反射膜2からの反射光との位相差が、160度から200度となるように形成される。180度近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上にともなって解像度が上がり、露光量裕度、及び焦点裕度等の露光に関する各種裕度が拡がる。パターンや露光条件にもよるが、一般的には、この位相シフト効果を得るための位相シフト膜4の反射率の目安は、相対反射率で2%以上である。十分な位相シフト効果を得るためには、位相シフト膜4の反射率は、相対反射率で6%以上であることが好ましい。また、相対反射率が10%以上、より好ましくは15%以上と高い場合には、コントラストをより向上させるために、位相差を130度から160度、又は200度から230度とすることもできる。ここで、位相シフト膜4(位相シフトパターン4a)の相対反射率とは、位相シフトパターン4aのない部分での多層反射膜2(保護膜3付きの多層反射膜2を含む)から反射されるEUV光を反射率100%としたときの、位相シフトパターン4aから反射されるEUV光の反射率である。なお、本明細書では、相対反射率のことを、単に「反射率」という場合がある。
また、十分な位相シフト効果を得るために、位相シフト膜4の絶対反射率は9%以上であることが好ましい。ここで、位相シフト膜4(位相シフトパターン4a)の絶対反射率とは、位相シフト膜4(又は位相シフトパターン4a)から反射されるEUV光の反射率(入射光強度と反射光強度の比)をいう。
解像性の更なる向上及び半導体装置を製造する際のスループットを向上させるために、位相シフトパターン4aの相対反射率は、6%~40%が好ましい。より好ましくは6~35%、更に好ましくは15%~35%、更に好ましくは15%~25%であることが求められている。
解像性の更なる向上及び半導体装置を製造する際のスループットを向上させるために、位相シフト膜4(又は位相シフトパターン4a)の絶対反射率は、4%~27%、より好ましくは10%~17%であることが望ましい。
本実施形態の位相シフト膜4は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなる薄膜を有する。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4は、所定の材料を用いることにより、相対反射率が6%~40%の位相シフトパターン4aを得ることができる。本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4は、所定の材料を用いることにより、絶対反射率が4%~27%とすることができる。また、本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4は、所定の位相差(開口部からの反射光と位相シフトパターン4aからの反射光との位相差)を得るために必要な膜厚が薄い。そのため、反射型マスク200において、位相シフトパターン4aによって生じるシャドーイング効果をより低減することができる。また、本実施形態の反射型マスクブランク100から製造された反射型マスク200を用いることにより、半導体装置製造の際のスループットを向上することができる。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料(以下、単に「所定のRu系材料」という場合がある。)について更に説明する。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の結晶構造は、アモルファスであることが好ましい。
Ruの屈折率nは、n=0.886(消衰係数k=0.017)であり、高反射率の位相シフト膜4の材料として好ましい。しかしながら、RuO等のRu系化合物は、結晶化した構造になりやすく、また加工特性も悪い。すなわち、結晶化した金属の結晶粒子は、位相シフトパターン4aを形成する際に側壁ラフネスが大きくなりやすい。そのため、所定の位相シフトパターン4aを形成する際に悪影響を及ぼす場合がある。一方、位相シフト膜4の結晶構造がアモルファスである場合には、位相シフトパターン4aを形成する際の悪影響を低減することができる。Ruに所定の元素(X)を添加することにより、位相シフト膜4の結晶構造をアモルファス化するとともに、エッチング速度を速めたり、パターン形状を良好にしたり、加工特性を向上させることができる。所定の元素(X)として、Cr、Ni、Co、Al、Si、Ti、V、Ge、Nb、Mo、Sn、Te、Hf、W及びReのうち少なくとも1以上を選択することができる。
なお、Niの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.948及びk=0.073である。また、Coは、n=0.933及びk=0.066であり、Crは、n=0.932及びk=0.039である。Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、従来材料であるRuTaよりも位相シフト膜4の膜厚を薄くすることが可能である。また、Ni及びCoの方が、Crよりも消衰係数kが大きいため、元素(X)としてNi及び/又はCoを選択した方が、Crを選択するよりも位相シフト膜4の膜厚を薄くすることが可能である。
また、Alの屈折率n及び消衰係数kは、n=1.003及びk=0.03、Siの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.999及びk=0.002、Tiの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.952及びk=0.014、Vの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.944及びk=0.025、Geの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.995及びk=0.032、Nbの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.933及びk=0.005、Moの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.923及びk=0.007、Snの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.941及びk=0.074、Teの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.973及びk=0.075、Hfの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.961及びk=0.035、Wの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.933及びk=0.033、Reの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.914及びk=0.04である。
また、Sn、Te及びReの方が、Crよりも消衰係数kが大きい。そのため、元素(X)としてSn、Te及びReを選択した方が、Crを選択するよりも位相シフト膜4の膜厚を薄くすることが可能である。
また、位相シフト膜4の位相差が160度~200度の場合の屈折率n及び消衰係数kの範囲は、次の通りである。位相シフト膜4の相対反射率が6%~40%又は絶対反射率が4%~27%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.860~0.950であり、消衰係数kは0.008~0.095であることが好ましい。相対反射率が6%~35%又は絶対反射率4%~23%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.880~0.950であり、消衰係数kは、0.012~0.095であることが好ましい。相対反射率が15%~35%又は絶対反射率が10%~23%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.880~0.950であり、消衰係数kは、0.012~0.050であることが好ましい。相対反射率が15%~25%又は絶対反射率10%~17%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.890~0.950であり、消衰係数kは、0.020~0.050であることが好ましい。
また、位相シフト膜4の位相差が130度~160度の場合の屈折率n及び消衰係数kの範囲は、次の通りである。位相シフト膜4の相対反射率が10%~40%又は絶対反射率が6.7%~27%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.860~0.950であり、消衰係数kは0.009~0.095であることが好ましい。相対反射率が15%~35%又は絶対反射率10%~23%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.860~0.950であり、消衰係数kは、0.01~0.073であることが好ましい。
また、位相シフト膜4の位相差が200度~230度の場合の屈折率n及び消衰係数kの範囲は、次の通りである。位相シフト膜4の相対反射率が10%~40%又は絶対反射率が6.7%~27%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.860~0.940であり、消衰係数kは0.008~0.057であることが好ましい。相対反射率が15%~35%又は絶対反射率10%~23%の場合、Ruに所定の元素(X)を添加した材料のEUV光に対する屈折率nは、0.860~0.939であり、消衰係数kは、0.009~0.045であることが好ましい。
位相シフト膜4の位相差及び反射率は、屈折率n、消衰係数k及び膜厚を変えることによって調整することが可能である。位相シフト膜4の膜厚は、60nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。位相シフト膜4の膜厚は、25nm以上が好ましい。なお、保護膜3を有する場合には、位相シフト膜4の位相差及び反射率は、保護膜3の屈折率n、消衰係数k及び膜厚を考慮して調整することもできる。
Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、従来材料であるRuTaと比べて、加工特性がよい。Taは酸化されると塩素系ガス及び酸素ガスでエッチングが困難である。特に、RuCrは加工特性に優れている。
Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、アモルファス構造であり、また塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスにより、容易にエッチングをすることが可能である。また、これらの材料は、酸素ガスによるエッチングが可能である。三元系の材料(RuCrNi、RuCrCo及びRuNiCo)及び四元系の材料(RuCrNiCo)についても同様であると考えられる。
また、上記の二元系の材料の他、RuにV、Nb、Mo、W又はReを添加した二元系の材料(RuV、RuNb、RuMo、RuW及びRuRe)は、従来材料であるRuTaと比べて加工性がよい。RuCrと同様、RuW、RuMoは特に加工特性に優れている。
また、Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuV、RuNb、RuMo、RuW及びRuRe)は、アモルファス構造であり、また、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスにより、容易にエッチングをすることが可能である。また、これらの材料は、酸素ガスによるエッチングが可能である。三元系の材料及び四元系の材料についても同様であると考えられる。
次に、本実施形態の位相シフト膜4の材料である所定のRu系材料について、Ruと、所定の元素(X)との配合割合について説明する。
所定のRu系材料の相対反射率及び絶対反射率は、Ruの含有量が多いほど高くなる。また、位相シフト膜4の反射光は、位相シフト膜4表面からの表面反射光と、位相シフト膜4を透過して位相シフト膜4の裏面(位相シフト膜4と、保護膜3又は多層反射膜2との界面)での裏面反射光との重ね合わせの光となる。そのため、位相シフト膜4の反射光の強度は、位相シフト膜4の膜厚に依存した周期構造を有する。その結果、図3に一例を示すように、位相シフト膜4の反射率及び位相差も、膜厚に依存した周期構造を示すことになる。なお、図3は、位相シフト膜4がRuCr膜であり、RuとCrの原子比率がRu:Cr=56:44の場合の、位相シフト膜4の膜厚と、EUV光の相対反射率及び位相差との関係を示す図である。この周期構造には、位相シフト膜4の材料の屈折率n及び消衰係数kが影響を与える。一方、位相シフトパターン4aからの反射光は、開口部からの反射光に対して所定の位相差(例えば180度の位相差)を有する必要がある。以上を総合的に考慮して、位相シフト膜4の相対反射率、所定のRu系材料の組成及び膜厚の関係を検討した結果、以下に述べるように、所定のRu系材料の組成及び膜厚について、位相シフト膜4の相対反射率に応じて、好ましい範囲を示すことができる。図3に示すように、位相シフト膜4をRuCr膜(Ru:Cr=56:44)で形成した場合、膜厚が32.6nmで、多層反射膜(保護膜付き)に対する相対反射率が20%、位相差が約180度となる。なお、上述の説明において、位相シフト膜4の相対反射率は絶対反射率に読み替えることができ、図3においては、位相シフト膜4をRuCr膜(Ru:Cr=56:44)で形成した場合、膜厚が32.6nmで絶対反射率が13.3%、位相差が約180度となる。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びCrを含む場合、RuとCrの組成比(Ru:Cr)は、15:1~1:20であることが好ましい。
具体的には、位相シフト膜4の材料が、Ru及びCrを含む場合、位相シフト膜4の相対反射率、位相シフト膜4の絶対反射率、所定のRu系材料の組成(原子比率)及び膜厚の関係は、次の通りである。すなわち、位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときCrが20以下であり、膜厚は50nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときCrが4以下であり、膜厚は45nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Crの原子比率を1としたときRuが5以下であり、膜厚は30nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Crの原子比率を1としたときRuが15以下であり、膜厚は25nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びNiを含む場合、RuとNiの組成比(Ru:Ni)は、20:1~1:4であることが好ましい。
具体的には、位相シフト膜4の材料が、Ru及びNiを含む場合、位相シフト膜4の相対反射率、位相シフト膜4の絶対反射率、所定のRu系材料の組成(原子比率)及び膜厚の関係は、次の通りである。すなわち、位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときNiが4以下であり、膜厚は45nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときNiが1以下であり、膜厚は45nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Niの原子比率を1としたときRuが10以下であり、膜厚は30nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Niの原子比率を1としたときRuが20以下であり、膜厚は25nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びCoを含む場合、RuとCoの組成比(Ru:Co)は、20:1~1:5であることが好ましい。
具体的には、位相シフト膜4の材料が、Ru及びCoを含む場合、位相シフト膜4の相対反射率、位相シフト膜4の絶対反射率、所定のRu系材料の組成(原子比率)及び膜厚の関係は、次の通りである。すなわち、位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときCoが5以下であり、膜厚は40nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときCoが1.5以下であり、膜厚は40nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Coの原子比率を1としたときRuが10以下であり、膜厚は30nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Coの原子比率を1としたときRuが20以下であり、膜厚は25nm以上である。
上述のように、Ruと、Cr、Ni及びCoの組成(原子比率)が所定の範囲であることにより、薄い膜厚において、高い反射率及び所定の位相差の位相シフト膜4を得ることができる。
また、位相シフト膜4が、RuとAlを含む場合、RuとSiを含む場合、RuとTiを含む場合、RuとVを含む場合、RuとGeを含む場合、RuとNbを含む場合、RuとMoを含む場合、RuとSnを含む場合、RuとTeを含む場合、RuとHfを含む場合、RuとWを含む場合、及びRuとReを含む場合において、位相シフト膜4の相対反射率、位相シフト膜4の絶対反射率、所定のRu系材料の組成(原子比率)及び膜厚の関係は、以下の通りである。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びAlを含む場合、RuとAlの組成比(Ru:Al)は、20:1~4:5であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を4としたときAlが5以下であり、膜厚は67nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を13としたときAlが7以下であり、膜厚は50nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Alの原子比率を1としたときRuが4以下であり、膜厚は36nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Alの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びSiを含む場合、RuとSiの組成比(Ru:Si)は、20:1~1:1であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときSiが1以下であり、膜厚は70nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Siの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びTiを含む場合、RuとTiの組成比(Ru:Ti)は、20:1~1:20であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%)の場合、Ruの原子比率を1としたときTiが20以下であり、膜厚は66nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Tiの原子比率を6としたときRuが4以下であり、膜厚は45nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Tiの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びVを含む場合、RuとVの組成比(Ru:V)は、20:1~1:20あることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上の場合、Ruの原子比率を1としたときVが20以下であり、膜厚は55nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上の場合、Ruの原子比率を2としたときVが7以下であり、膜厚は47nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下の場合、Vの原子比率を9としたときRuが11以下であり、膜厚は37nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下の場合、Vの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、RuとGeを含む場合、RuとGeの組成比(Ru:Ge)は、20:1~1:1であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときGeが1以下であり、膜厚は66nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を7としたときGeが3以下であり、膜厚は46nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Geの原子比率を1としたときRuが5以下であり、膜厚は38nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Geの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は31nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びNbを含む場合、RuとNbの組成比(Ru:Nb)は、20:1~5:1であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率が10%以上)の場合、Ruの原子比率を20としたときNbが1以上であり、膜厚は30nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Nbの原子比を1としたときのRuが5以上であり、膜厚は32nm以下である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びMoを含む場合、RuとMoの組成比(Ru:Mo)は、20:1~4:1であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を20としたときMoが1以上であり、膜厚は30nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Moの原子比を1としたときのRuが4以上であり、膜厚は33nm以下である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びSnを含む場合、RuとSnの組成比(Ru:Sn)は、20:1~3:2であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を3としたときSnが2以下であり、膜厚は39nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を4としたときSnが1以下であり、膜厚は33nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Snの原子比率を2としたときRuが23以下であり、膜厚は31nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Snの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びTeを含む場合、RuとTeの組成比(Ru:Te)は、20:1~3:1であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を3としたときTeが1以下であり、膜厚は40nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を8としたときTeが1以下であり、膜厚は33nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Teの原子比率を1としたときRuが15以下であり、膜厚は31nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Teの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びHfを含む場合、RuとHfの組成比(Ru:Hf)は、20:1~1:2であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときHfが2以下であり、膜厚は58nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を16としたときHfが9以下であり、膜厚は40nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Hfの原子比率を9としたときRuが41以下であり、膜厚は32nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Hfの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びWを含む場合、RuとWの組成比(Ru:W)は、20:1~1:20であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率が4%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときWが20以下であり、膜厚は46nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率が10%以上)の場合、Ruの原子比率を17としたときWが33以下であり、膜厚は39nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Wの原子比率を7としたときRuが13以下であり、膜厚は32nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Wの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は30nm以上である。
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の材料が、Ru及びReを含む場合、RuとReの組成比(Ru:Re)は、20:1~1:20であることが好ましい。
位相シフト膜4の相対反射率が6%以上(絶対反射率は4%以上)の場合、Ruの原子比率を1としたときReが20以下であり、膜厚は38nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が15%以上(絶対反射率は10%以上)の場合、Ruの原子比率を9としたときReが16以下であり、膜厚は33nm以下である。位相シフト膜4の相対反射率が25%以下(絶対反射率は17%以下)の場合、Reの原子比率を9としたときRuが16以下であり、膜厚は32nm以上である。位相シフト膜4の相対反射率が40%以下(絶対反射率は27%以下)の場合、Reの原子比を1としたときのRuが20以下であり、膜厚は29nm以上である。
上述のように、Ruと、Al、Si、Ti、V、Ge、Nb、Mo、Sn、Te、Hf、W又はReとの組成(原子比率)が所定の範囲であることにより、薄い膜厚において、高い反射率及び所定の位相差の位相シフト膜4を得ることができる。
上記の説明では、主に、二元系の所定のRu系材料について説明したが、三元系の材料(例えば、RuCrNi、RuCrCo、RuNiCo、及びRuCrW)及び四元系の材料(例えば、RuCrNiCo、及びRuCrCoW)についても、二元系の所定のRu系材料を同様の性質を有する。そのため、所定のRu系材料として、三元系又は四元系の材料を用いることができる。
位相シフト膜4の材料である所定のRu系材料は、屈折率及び消衰係数に大きく影響を与えない範囲で、Ruと、Cr、Ni、Co、Al、Si、Ti、V、Ge、Nb、Mo、Sn、Te、Hf、W及びReのうち少なくとも1以上の元素と、更にそれ以外の元素を含むことができる。所定のRu系材料は、例えば、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)又はホウ素(B)等の元素を含むことができる。例えば、所定のRu系材料に、窒素(N)を添加すると、位相シフト膜4の酸化を抑制することができるので、位相シフト膜4の性質を安定化することができる。また、所定のRu系材料に、窒素(N)を添加した場合、スパッタリングの成膜条件によらず、容易に結晶状態をアモルファスにすることが可能である。この場合には、窒素の含有量は、1原子%以上が好ましく、3原子%以上がより好ましい。また、窒素の含有量は、10原子%以下が好ましい。酸素(O)、炭素(C)及びホウ素(B)等についても、位相シフト膜4の安定化等のために、屈折率及び消衰係数に大きく影響を与えない範囲で、位相シフト膜4の材料に添加することができる。位相シフト膜4の材料が、Ruと、Cr、Ni、Co、Al、Si、Ti、V、Ge、Nb、Mo、Sn、Te、Hf、W及びReのうち少なくとも1以上の元素と、それ以外の元素を含む場合において、上記それ以外の元素の含有量は、10原子%以下が好ましく、5原子%以下であることがより好ましい。
上述の所定のRu系材料の位相シフト膜4は、DCスパッタリング法及びRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法といった公知の方法で形成することができる。また、ターゲットは、Ruと、Cr、Ni、Co、Al、Si、Ti、V、Ge、Nb、Mo、Sn、Te、Hf、W及びReのうち少なくとも1以上の元素との合金ターゲットを用いることができる。
また、ターゲットとして、Ruターゲットと、Crターゲット、Niターゲット、Coターゲット、Alターゲット、Siターゲット、Tiターゲット、Vターゲット、Geターゲット、Nbターゲット、Moターゲット、Snターゲット、Teターゲット、Hfターゲット、Wターゲット及び/又はReターゲットとを用いることにより、コースパッタリングとして成膜することができる。コースパッタリングは、金属元素の組成比を調整しやすい利点があるが、合金ターゲットと比較して、膜の結晶状態が柱状構造となりやすい場合がある。スパッタリングの際に、膜中に窒素(N)を含むように成膜することにより、結晶状態をアモルファスにすることができる。
位相シフト膜4は、所定のRu系材料の膜のみを含む単層の膜であっても良いし、2層以上の複数の膜からなる多層膜であっても良い。単層膜の場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率が上がるという特徴がある。なお、位相シフト膜4が例えば所定のRu系材料膜等の酸素を実質的に含まない単層膜の場合、成膜後の位相シフト膜4が大気中に曝されることによって表層に自然酸化膜が形成される。この場合には、フッ素系ガスで自然酸化膜を除去し、その後、塩素系ガスでエッチングを行うことが好ましい。
また、EUV光は波長が短いため、位相差及び反射率の膜厚依存性が大きい傾向にある。したがって、位相シフト膜4の膜厚変動に対する位相差及び反射率の安定性が求められる。しかしながら、図3に示すように、位相シフト膜4の膜厚に対して、位相差及び反射率は各々振動構造を示している。位相差及び反射率の振動構造が異なるため、位相差及び反射率を同時に安定させる膜厚とすることは困難である。
そこで、位相シフト膜4の膜厚が設計値に対して多少変動(例えば設計膜厚に対して±0.5%の範囲)した場合でも、位相差については、面間の位相差ばらつきが所定の位相差±2度の範囲(例えば位相差が180度の場合には、180度±2度の範囲)、反射率については、面間の反射率ばらつきが所定の反射率±0.2%の範囲(例えば相対反射率が6%の場合には、6%±0.2%の範囲)であることが望まれる。位相シフト膜4を多層膜にした場合には、面間の位相差ばらつき及び反射率ばらつきを所定の範囲にするための制御が容易になる。このように、位相シフト膜4を多層膜にすることによって、各層に様々な機能を付加させることが可能となる。
位相シフト膜4を最上層と最上層以外の下層とで形成した場合に、最上層の表面からのEUV光の反射光を抑制することにより、振動構造をなだらかにして膜厚変動に対して安定な位相差及び反射率を得ることが可能となる。このような最上層の材料としては、位相シフト膜4の下層よりも大きい屈折率を有するケイ素化合物又はタンタル化合物が好ましい。ケイ素化合物としては、Siと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられ、好ましくはSiO、SiON及びSiが挙げられる。タンタル化合物としては、Taと、N、O、C、H及びBから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられ、好ましくはTa及びOを含有する材料が挙げられる。最上層の膜厚は、10nm以下が好ましく、1~6nmがより好ましく、3~5nmが更に好ましい。下層がRuCr膜の場合、例えば、最上層はSiO膜、又はTa膜とすることができる。
Ruと、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReのうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料である所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4は、酸素を含む塩素系ガス、又は酸素ガスによるドライエッチングによりエッチングが可能である。また、Ruと、Al、Si、Ti、Ge、Sn及びHfのうち少なくとも1以上の元素とを含む材料である所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4は、酸素を含まない塩素系ガスによるドライエッチングによりエッチングが可能である。塩素系ガスとしては、Cl、SiCl、CHCl、CCl、及びBCl等を用いることができる。これらのエッチングガスは、必要に応じて、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
更に、Ruと、Al、Si、Ti、Nb、Mo、Sn、Te、Hf、W及びReのうち少なくとも1以上の元素とを含む金属である所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4は、フッ素系ガスによるドライエッチングが可能である。フッ素系ガスとしては、CF、CHF、C、C、C、C、CH、C、及び/又はSF等を用いることができる。これらのエッチングガスは、単独で用いても良いが、上記フッ素系ガスより選択される2種以上の混合ガスであっても良い。また、必要に応じて、He及び/又はArなどの不活性ガスや、Oガスを含むことができる。
<<エッチングマスク膜>>
位相シフト膜4の上に、又は位相シフト膜4の表面に接して、エッチングマスク膜を形成することができる。エッチングマスク膜の材料としては、エッチングマスク膜に対する位相シフト膜4のエッチング選択比が高くなるような材料を用いる。ここで、「Aに対するBのエッチング選択比」とは、エッチングを行いたくない層(マスクとなる層)であるAとエッチングを行いたい層であるBとのエッチングレートの比をいう。具体的には「Aに対するBのエッチング選択比=Bのエッチング速度/Aのエッチング速度」の式によって特定される。また、「選択比が高い」とは、比較対象に対して、上記定義の選択比の値が大きいことをいう。エッチングマスク膜に対する位相シフト膜4のエッチング選択比は、1.5以上が好ましく、3以上が更に好ましい。
Ruと、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReのうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料である所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4は、酸素を含む塩素系ガス、又は酸素ガスによるドライエッチングによりエッチングが可能である。エッチングマスク膜に対する所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4のエッチング選択比が高い材料としては、ケイ素若しくはケイ素化合物の材料、又はタンタル(Ta)系材料を用いることができる。
エッチングマスク膜に用いることのできるケイ素化合物としては、SiとN、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料、並びに、ケイ素又はケイ素化合物に金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)又は金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などの材料が挙げられる。金属ケイ素化合物としては、金属及びSiと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。
エッチングマスク膜として用いることのできるタンタル(Ta)系材料として、タンタル(Ta)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選らばれる1以上の元素を含有する材料を挙げることができる。これらの中でも、エッチングマスク膜の材料として、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含有する材料を用いることが特に好ましい。このような材料の具体例としては、酸化タンタル(TaO)、酸化窒化タンタル(TaON)、ホウ化酸化タンタル(TaBO)、及びホウ化酸化窒化タンタル(TaBON)等が挙げられる。
また、Ruと、Al、Si、Ti、Ge、Sn及びHfのうち少なくとも1以上の元素とを含む材料である所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4は、酸素を含まない塩素系ガスによるドライエッチングによりエッチングが可能である。エッチングマスク膜に対する所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4のエッチング選択比が高い材料としては、ケイ素若しくはケイ素化合物の材料を用いることができる。ケイ素系化合物としては、SiとN、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料、並びに、ケイ素又はケイ素化合物に金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)又は金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などの材料が挙げられる。金属ケイ素化合物としては、金属及びSiと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。
更に、Ruと、Al、Si、Ti、Nb、Mo、Sn、Te、Hf、W及びReのうち少なくとも1以上の元素とを含む金属である所定のルテニウム(Ru)系材料の位相シフト膜4は、フッ素系ガスによるドライエッチングが可能である。
また、位相シフト膜4が複数層からなる場合であって、位相シフト膜4の最上層をフッ素系ガスによりエッチングする場合には、エッチングマスク膜の材料として、クロム又はクロム化合物の材料を使用することができる。クロム化合物としては、Crと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。
エッチングマスク膜の膜厚は、転写パターンを精度よく位相シフト膜4に形成するエッチングマスクとしての機能を得る観点から、3nm以上であることが望ましい。また、エッチングマスク膜の膜厚は、レジスト膜11の膜厚を薄くする観点から、15nm以下であることが望ましい。
<<裏面導電膜5>>
基板1の第2主面(裏面)側(多層反射膜2形成面の反対側)には、一般的に、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。静電チャック用の裏面導電膜5に求められる電気的特性(シート抵抗)は通常100Ω/□(Ω/Square)以下である。裏面導電膜5の形成方法は、例えばマグネトロンスパッタリング法又はイオンビームスパッタリング法により、クロム及びタンタル等の金属及び合金のターゲットを使用して形成することができる。
裏面導電膜5のクロム(Cr)を含む材料は、Crを含有し、更にホウ素、窒素、酸素、及び炭素から選択した少なくとも一つを含有したCr化合物であることが好ましい。Cr化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCO、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCNなどを挙げることができる。
裏面導電膜5のタンタル(Ta)を含む材料としては、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらのいずれかにホウ素、窒素、酸素及び炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物を用いることが好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、及びTaSiCONなどを挙げることができる。
タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料としては、その表層に存在する窒素(N)が少ないことが好ましい。具体的には、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5の表層の窒素の含有量は、5原子%未満であることが好ましく、実質的に表層に窒素を含有しないことがより好ましい。タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5において、表層の窒素の含有量が少ない方が、耐摩耗性が高くなるためである。
裏面導電膜5は、タンタル及びホウ素を含む材料からなることが好ましい。裏面導電膜5が、タンタル及びホウ素を含む材料からなることにより、耐摩耗性及び薬液耐性を有する裏面導電膜5を得ることができる。裏面導電膜5が、タンタル(Ta)及びホウ素(B)を含む場合、B含有量は5~30原子%であることが好ましい。裏面導電膜5の成膜に用いるスパッタリングターゲット中のTa及びBの比率(Ta:B)は95:5~70:30であることが好ましい。
裏面導電膜5の厚さは、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されない。裏面導電膜5の厚さは、通常10nmから200nmである。また、この裏面導電膜5はマスクブランク100の第2主面側の応力調整も兼ね備えていて、第1主面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、平坦な反射型マスクブランク100が得られるように調整されている。
<反射型マスク200及びその製造方法>
本実施形態は、上述の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4がパターニングされた位相シフトパターン4aを有する反射型マスク200である。位相シフトパターン4aは、上述の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4を、所定のドライエッチングガス(例えば、塩素系ガスと酸素ガスとを含むドライエッチングガス)によって、位相シフト膜4をパターニングすることにより、形成することができる。反射型マスク200の位相シフトパターン4aは、EUV光を吸収し、また一部のEUV光を開口部(位相シフトパターンが形成されていない部分)とは所定の位相差(例えば180度)で反射することができる。前記所定のドライエッチングガスは、塩素系ガス及び酸素ガス、塩素系ガス、並びにフッ素系ガス及び酸素ガスなどを使用することができる。位相シフト膜4をパターニングするために、必要に応じて位相シフト膜4の上にエッチングマスク膜を設け、エッチングマスク膜パターンをマスクにして、位相シフト膜4をドライエッチングして位相シフトパターン4aを形成しても構わない。
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、反射型マスク200を製造する方法について説明する。ここでは概要説明のみを行い、後に実施例において図面を参照しながら詳細に説明する。
反射型マスクブランク100を準備して、その第1主面の位相シフト膜4に、レジスト膜11を形成する(反射型マスクブランク100としてレジスト膜11を備えている場合は不要)。このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成する。
反射型マスクブランク100の場合は、このレジストパターン11aをマスクとして位相シフト膜4をエッチングして位相シフトパターン4aを形成し、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去することにより、位相シフトパターン4aが形成される。最後に、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行う。
位相シフト膜4のエッチングガスは、所定のRu系材料に応じて適宜選定される。例えば、位相シフト膜4の材料が、Ruと、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReのうち少なくとも1以上の元素とを含む材料の場合、位相シフト膜4のエッチングガスとしては、酸素を含む塩素系ガス、又は酸素ガスが用いられる。保護膜3がケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料からなることにより、位相シフト膜4のエッチングの際に、保護膜3の表面に荒れが生じることがない。
また、位相シフト膜4の材料が、Ruと、Al、Si、Ti、Ge、Sn及びHfのうち少なくとも1以上の元素とを含む材料の場合、位相シフト膜4のエッチングガスとしては、フッ素系ガスや、酸素ガスを含まない塩素系ガスが用いられる。この場合、保護膜3の材料を、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、又はケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料のケイ素系材料、並びにクロム(Cr)、又はCr(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうち少なくとも1以上の元素を含むクロム系材料から適宜選択することにより、位相シフト膜4のエッチングの際に、保護膜3の表面に荒れが生じることがない。
以上の工程により、シャドーイング効果が少なく、且つ側壁ラフネスの少ない高精度微細パターンを有する反射型マスク200が得られる。
<半導体装置の製造方法>
本実施形態は、半導体装置の製造方法である。本実施形態の反射型マスク200を、EUV光の露光光源を有する露光装置にセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写することにより、半導体装置を製造することができる。
具体的には、上記本実施形態の反射型マスク200を使用してEUV露光を行うことにより、半導体基板上に反射型マスク200上の位相シフトパターン4aに基づく所望の転写パターンを、シャドーイング効果による転写寸法精度の低下を抑えて形成することができる。また、位相シフトパターン4aが、側壁ラフネスの少ない微細で高精度なパターンであるため、高い寸法精度で所望のパターンを半導体基板上に形成できる。このリソグラフィー工程に加え、被加工膜のエッチング、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の電子回路が形成された半導体装置を製造することができる。
より詳しく説明すると、EUV露光装置は、EUV光を発生するレーザプラズマ光源、照明光学系、マスクステージ系、縮小投影光学系、ウエハステージ系、及び真空設備等から構成される。光源にはデブリトラップ機能と露光光以外の長波長の光をカットするカットフィルタ及び真空差動排気用の設備等が備えられている。照明光学系と縮小投影光学系は反射型ミラーから構成される。EUV露光用反射型マスク200は、その第2主面に形成された裏面導電膜5により静電吸着されてマスクステージに載置される。
EUV光源の光は、照明光学系を介して反射型マスク200垂直面に対して6度から8度傾けた角度で反射型マスク200に照射される。この入射光に対する反射型マスク200からの反射光は、入射とは逆方向にかつ入射角度と同じ角度で反射(正反射)し、通常1/4の縮小比を持つ反射型投影光学系に導かれ、ウエハステージ上に載置されたウエハ(半導体基板)上のレジストへの露光が行われる。この間、少なくともEUV光が通る場所は真空排気される。また、この露光にあたっては、マスクステージとウエハステージを縮小投影光学系の縮小比に応じた速度で同期させてスキャンし、スリットを介して露光を行うスキャン露光が主流となっている。この露光済レジスト膜を現像することによって、半導体基板上にレジストパターンを形成することができる。本実施形態では、シャドーイング効果の小さな薄膜で、しかも側壁ラフネスの少ない高精度な位相シフトパターンを持つマスクが用いられている。このため、半導体基板上に形成されたレジストパターンは高い寸法精度を持つ所望のものとなる。このレジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。このような露光工程や被加工膜加工工程、絶縁膜や導電膜の形成工程、ドーパント導入工程、あるいはアニール工程等その他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、位相シフト膜4の膜厚を薄くすることができて、シャドーイング効果を低減でき、且つ微細で高精度な位相シフトパターン4aを、側壁ラフネスの少ない安定した断面形状で形成することができる反射型マスク200を、半導体装置の製造のために用いることができる。そのため、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
以下、実施例について図面を参照しつつ説明する。本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において同様の構成要素については同一の符号を使用し、説明を簡略化若しくは省略する。
[実施例1]
図2は、反射型マスクブランク100から反射型マスク200を作製する工程を示す要部断面模式図である。
反射型マスクブランク100は、裏面導電膜5と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、位相シフト膜4とを有する。実施例1の位相シフト膜4はRuCrを含む材料からなる。そして、図2(a)に示されるように、位相シフト膜4上にレジスト膜11を形成する。
先ず、実施例1の反射型マスクブランク100について説明する。
第1主面及び第2主面の両主表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO-TiO系ガラス基板を準備し基板1とした。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
SiO-TiO系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、CrN膜からなる裏面導電膜5をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成した。
裏面導電膜5の形成条件:Crターゲット、ArとN2の混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)、膜厚20nm。
次に、裏面導電膜5が形成された側と反対側の基板1の主表面(第1主面)上に、多層反射膜2を形成した。基板1上に形成される多層反射膜2は、波長13.5nmのEUV光に適した多層反射膜2とするために、MoとSiからなる周期多層反射膜とした。多層反射膜2は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、Arガス雰囲気中でイオンビームスパッタリング法により基板1上にMo層及びSi層を交互に積層して形成した。先ず、Si膜を4.2nmの膜厚で成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの膜厚で成膜した。これを1周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの膜厚で成膜し、多層反射膜2を形成した。ここでは40周期としたが、これに限るものではなく、例えば60周期でも良い。60周期とした場合、40周期よりも工程数は増えるが、EUV光に対する反射率を高めることができる。
引き続き、Arガス雰囲気中で、SiOターゲットを使用したRFスパッタリング法により、多層反射膜2の表面にSiO膜からなる保護膜3を2.5nmの膜厚で成膜した。
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCr膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCr膜は、RuCrターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、45.0nmの膜厚になるように成膜した。RuCr膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr=7:93であった。RuCr膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCr膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例1のRuCr膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.929、k=0.037
上記のRuCr膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は6%(絶対反射率は4%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は45.0nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約31%薄くすることができた。
次に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
前述のように、反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(図2(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図2(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、RuCr膜(位相シフト膜4)のドライエッチングを、ClガスとOガスの混合ガス(ガス流量比Cl:O=4:1)を用いて行うことで、位相シフトパターン4aを形成した(図2(c))。
その後、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、反射型マスク200を製造した(図2(d))。なお、必要に応じてウェット洗浄後マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行うことができる。
実施例1の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuCr材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は45.0nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例1で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率(保護膜付き多層反射膜面の反射率に対する反射率)は6%(絶対反射率は4%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1で作製した反射型マスク200をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例2]
実施例2は、位相シフト膜4の材料をRuNi膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
即ち、実施例2では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuNi膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuNi膜は、RuNiターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、38.2nmの膜厚になるように成膜した。RuNi膜の含有比率(原子比)は、Ru:Ni=45:55であった。RuNi膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuNi膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例2のRuNi膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuNi膜:n=0.917、k=0.045
上記のRuNi膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は6%(絶対反射率は4%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は38.2nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約41%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例2の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuNi材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は38.2nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例2で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は6%(絶対反射率が4%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例2で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例3]
実施例3は、位相シフト膜4の材料をRuCo膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
即ち、実施例3では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCo膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCo膜は、RuCoターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、37.9nmの膜厚になるように成膜した。RuCo膜の含有比率(原子比)は、Ru:Co=36:64であった。RuCo膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCo膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例3のRuCo膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCo膜:n=0.914、k=0.046
上記のRuCo膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は6%(絶対反射率は4%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は37.9nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約42%薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例3の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuCo材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は37.9nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例3で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は6%(絶対反射率が4%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例3で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例4]
実施例4は、位相シフト膜4の相対反射率を15%(絶対反射率を10%)になるようにし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は、材料(RuCr膜)も含め、実施例1と同様である。
即ち、実施例4では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCr膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCr膜は、RuCrターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、37.9nmの膜厚になるように成膜した。RuCr膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr=39:61であった。RuCr膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCr膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例4のRuCr膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.913、k=0.030
上記のRuCr膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は15%(絶対反射率は10%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は37.9nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約42%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例4の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuCr材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は37.9nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、実施例1よりもシャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例4で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は15%(絶対反射率が10%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例4で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。その際、位相シフト面の反射率が15%であるため、実施例1よりもスループットを上げることができた。
[実施例5]
実施例5は、位相シフト膜4の材料をRuNi膜とし、位相シフト膜4の相対反射率を15%(絶対反射率は10%)になるようにし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
即ち、実施例5では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuNi膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuNi膜は、RuNiターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、32.2nmの膜厚になるように成膜した。RuNi膜の含有比率(原子比)は、Ru:Ni=67:33であった。RuNi膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuNi膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例5のRuNi膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuNi膜:n=0.904、k=0.033
上記のRuNi膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は15%(絶対反射率は10%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は32.2nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約50%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例5の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuNi材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は32.2nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、実施例2よりもシャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例5で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は15%(絶対反射率が10%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例5で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。その際、位相シフト面の相対反射率が15%(絶対反射率が10%)であるため、実施例2よりもスループットを上げることができた。
[実施例6]
実施例6は、位相シフト膜4の材料をRuCo膜とし、位相シフト膜4の相対反射率を15%(絶対反射率は10%)になるようにし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
即ち、実施例6では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCo膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCo膜は、RuCoターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、31.9nmの膜厚になるように成膜した。RuCo膜の含有比率(原子比)は、Ru:Co=61:39であった。RuCo膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCo膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例6のRuCo膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCo膜:n=0.902、k=0.034
上記のRuCo膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は15%(絶対反射率は10%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は31.9nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約51%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例6の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuCo材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は31.9nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、実施例3よりもシャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例6で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は15%(絶対反射率が10%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例6で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。その際、位相シフト面の相対反射率が15%(絶対反射率は10%)であるため、実施例3よりもスループットを上げることができた。
[実施例7]
実施例7は、位相シフト膜4の相対反射率を20%(絶対反射率は13.3%)になるようにし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は、材料(RuCr膜)も含め、実施例1と同様である。
即ち、実施例7では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCr膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCr膜は、RuCrターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、32.6nmの膜厚になるように成膜した。RuCr膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr=56:44であった。RuCr膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCr膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例7のRuCr膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.905、k=0.026
上記のRuCr膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は20%(絶対反射率は13.3%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は32.6nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約50%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例7の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuCr材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は32.6nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、実施例4よりもシャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例7で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は20%(絶対反射率が13.3%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例7で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。その際、位相シフト面の相対反射率が20%(絶対反射率は13.3%)であるため、実施例4よりもスループットを上げることができた。
[実施例8]
実施例8は、位相シフト膜4の材料をRuNi膜とし、位相シフト膜4の相対反射率を20%(絶対反射率は13.3%)になるようにし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
即ち、実施例8では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuNi膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuNi膜は、RuNiターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、31.8nmの膜厚になるように成膜した。RuNi膜の含有比率(原子比)は、Ru:Ni=73:27であった。RuNi膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuNi膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例8のRuNi膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(複素屈折率の虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuNi膜:n=0.900、k=0.030
上記のRuNi膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は20%(絶対反射率は13.3%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は31.8nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約51%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例8の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuNi材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は31.8nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、実施例5と同程度にシャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例8で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は20%(絶対反射率は13.3%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例8で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。その際、位相シフト面の相対反射率が20%(絶対反射率は13.3%)であるため、実施例5よりもスループットを上げることができた。
[実施例9]
実施例9は、位相シフト膜4の材料をRuCo膜とし、位相シフト膜4の相対反射率を20%(絶対反射率は13.3%)になるようにし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
即ち、実施例9では、SiO膜からなる保護膜3の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCo膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCo膜は、RuCoターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、31.6nmの膜厚になるように成膜した。RuCo膜の含有比率(原子比)は、Ru:Co=69:31であった。RuCo膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCo膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例9のRuCo膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCo膜:n=0.899、k=0.030
上記のRuCo膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は20%(絶対反射率は13.3%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は31.6nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約51%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
実施例9の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuCo材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は31.6nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、実施例6と同程度にシャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例9で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は20%(絶対反射率は13.3%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例9で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。その際、位相シフト面の相対反射率が20%(絶対反射率は13.3%)であるため、実施例6よりもスループットを上げることができた。
[実施例10]
実施例10は、位相シフト膜4の材料をRuNb膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。即ち、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuNb膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuNb膜は、RuNbターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、30.3nmの膜厚になるように成膜した。RuNb膜の含有比率(原子比)は、Ru:Nb=20:1であった。RuNb膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuNb膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例10のRuNb膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuNb膜:n=0.888、k=0.017
上記のRuNb膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は39.7%(絶対反射率は26.5%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は30.3nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約53%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。実施例10の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuNb材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は30.3nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例10で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は39.7%(絶対反射率は26.5%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例10で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例11]
実施例11は、位相シフト膜4の材料をRuV膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。即ち、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuV膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuV膜は、RuVターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、39.7nmの膜厚になるように成膜した。RuV膜の含有比率(原子比)は、Ru:V=40:60であった。RuV膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuV膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例10のRuV膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuV膜:n=0.921、k=0.022
上記のRuV膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は18.8%(絶対反射率は12.5%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は39.7nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約39%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。実施例11の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuV材料であるため、ClガスとOガスの混合ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は39.7nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例11で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は18.8%(絶対反射率は12.5%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例11で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例12]
実施例12は、位相シフト膜4の材料をRuHf膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。即ち、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuHf膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuHf膜は、RuHfターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、45.2nmの膜厚になるように成膜した。RuHf膜の含有比率(原子比)は、Ru:Hf=56:44であった。RuHf膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuHf膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例12のRuHf膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuHf膜:n=0.928、k=0.027
上記のRuHf膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は12.3%(絶対反射率は8.2%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は45.2nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約30%薄くすることができた。
次に、実施例1とドライエッチングガスをClガスに変えた以外は実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。実施例11の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuHf材料であるため、Cl2ガスを使用したが、実施例1と比べてドライエッチング時間が多少長くなったが加工性は良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は45.2nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例12で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は12.3%(絶対反射率が8.2%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例12で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例13]
実施例13は、位相シフト膜4の材料をRuSn膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。即ち、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuSn膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuSn膜は、RuSnターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、32.2nmの膜厚になるように成膜した。RuSn膜の含有比率(原子比)は、Ru:Sn=80:20であった。RuSn膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuSn膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例13のRuSn膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuSn膜:n=0.904、k=0.036
上記のRuSn膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は12.8%(絶対反射率は8.5%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は32.2nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約50%薄くすることができた。
次に、実施例1とドライエッチングガスをClガスに変えた以外は実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。実施例13の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuSn材料であるため、Cl2ガスを使用したが、実施例1と比べてドライエッチング時間が多少長くなったが加工性は良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は32.2nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例13で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は12.8%(絶対反射率が8.5%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例13で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例14]
実施例14は、位相シフト膜4の材料をRuSi膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。即ち、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuSi膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuSi膜は、RuSiターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、34.1nmの膜厚になるように成膜した。RuSi膜の含有比率(原子比)は、Ru:Si=86:14であった。RuSi膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuSi膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例14のRuSi膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuSi膜:n=0.907、k=0.014
上記のRuSi膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は34.1%(絶対反射率は22.7%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は34.1nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約48%薄くすることができた。
次に、実施例1とドライエッチングガスをClガスに変えた以外は実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。実施例14の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuSi材料であるため、Cl2ガスを使用したが、実施例1と比べてドライエッチング時間が多少長くなったが加工性は良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は34.1nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例14で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は34.1%(絶対反射率は22.7%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例14で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例15]
実施例15は、位相シフト膜4の材料をRuTi膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。即ち、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuTi膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuTi膜は、RuTiターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、45.7nmの膜厚になるように成膜した。RuTi膜の含有比率(原子比)は、Ru:Ti=40:60であった。RuTi膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuTi膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例15のRuTi膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuTi膜:n=0.930、k=0.015
上記のRuTi膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は29.0%(絶対反射率は19.3%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は45.7nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約30%薄くすることができた。
次に、実施例1とドライエッチングガスをClガスに変えた以外は実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。実施例15の反射型マスク200では、位相シフト膜4がRuTi材料であるため、Cl2ガスを使用したが、実施例1と比べてドライエッチング時間が多少長くなったが加工性は良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの膜厚は45.7nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
また、実施例15で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は29.0%(絶対反射率は19.3%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例1の場合と同様に、実施例15で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例16]
実施例16は、位相シフト膜4の材料をRuV膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例である。実施例16の反射型マスクブランク100は、実施例1の反射型マスクブランク100において、保護膜3をCrOC膜とし、RuV膜からなる位相シフト膜4を形成した以外は、実施例1と同じである。
即ち、実施例16では、実施例1と同様に、SiO-TiO系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、CrN膜からなる裏面導電膜5を形成し、反対側の基板1の主表面(第1主面)上に、多層反射膜2を形成し、DCマグネトロンスパッタリング法により、CrOC膜からなる保護膜3を形成した。CrOC膜は、Crターゲットを用いて、ArガスとCOガスとHeガスの混合ガス雰囲気での反応性スパッタリングにより、2.5nmの膜厚になるように成膜した。CrOC膜の含有比率(原子比)は、Cr:O:C=71:15:14であった。
次に、保護膜3上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuV膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuV膜は、RuVターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、33.0nmの膜厚になるように成膜した。RuV膜の含有医率(原子比)は、Ru:V=60:40であった。RuV膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuV膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例16のRuV膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuV膜:n=0.906、k=0.024
上記のRuV膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は21.1%(絶対反射率は14.1%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は33.0nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約49%薄くすることができた。
次に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
先ず、反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した。次に、レジストパターン11aをマスクにして、RuV膜(位相シフト膜4)のドライエッチングを、CFガスとOガスの混合ガス(ガス流量比CF:O=1:1)を用いて行うことで、位相シフトパターン4aを形成した。
その後、レジストパターンをアッシングやレジスト剥離液などで除去した。最後に、純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、反射型マスク200を製造した。なお、必要に応じてウェット洗浄後マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行うことができる。
実施例16の反射型マスク200では、位相シフト膜がRuV材料であるため、フッ素系ガスでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターンを形成することができた。また、位相シフトパターンの膜厚は33.0nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができた。
また、実施例16で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率(保護膜付き多層反射膜面の反射率に対する反射率)は21.1%(絶対反射率は14.1%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
実施例16で作製した反射型マスク200をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例17]
実施例17は、位相シフト膜4の相対反射率を27%(絶対反射率は18%)になるようにし、220度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は、材料(RuCr膜)も含め、実施例1と同様である。
即ち、実施例17では、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCr膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCr膜は、RuCrターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、38.6nmの膜厚になるように成膜した。RuCr膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr=85:15であった。RuCr膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCr膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例17のRuCr膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.895、k=0.020
上記のRuCr膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は27%(絶対反射率は18%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は38.6nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が220度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約41%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を作製した。また、位相シフトパターン4aの膜厚は38.6nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。また、実施例17と同じ材料で、相対反射率が27%(絶対反射率は18%)、位相差が180度となるように調整して作製した反射型マスクと比較して、コントラストが1.3倍向上した。
実施例1の場合と同様に、実施例17で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例18]
実施例18は、位相シフト膜4の相対反射率を20%(絶対反射率は13.3%)になるようにし、140度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は、材料(RuCr膜)も含め、実施例1と同様である。
即ち、実施例18では、SiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCr膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCr膜は、RuCrターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、30.4nmの膜厚になるように成膜した。RuCr膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr=66:34であった。RuCr膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCr膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例18のRuCr膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.916、k=0.031
上記のRuCr膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は20%(絶対反射率は13.3%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は30.4nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が140度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約53%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を作製した。また、位相シフトパターン4aの膜厚は30.4nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。また、実施例18と同じ材料で、相対反射率が20%(絶対反射率は13.3%)、位相差が180度となるように調整して作製した反射型マスクと比較して、コントラストが1.5倍向上した。
実施例1の場合と同様に、実施例18で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[実施例19]
実施例19は、保護膜の膜厚を変更し、位相シフト膜4の材料をRuCrN膜とし、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は、実施例1と同様である。
即ち、実施例18では、膜厚が3.2nmのSiO膜からなる保護膜3が形成された多層反射膜付き基板の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCrN膜からなる位相シフト膜4を形成した。RuCrN膜は、Ruターゲット及びCrターゲットを用いて、Arガス及びNガス雰囲気で、34.6nmの膜厚になるように成膜した。RuCrN膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr:N=55:38:7であった。RuCrN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCrN膜はアモルファス構造であった。
上記のように形成した実施例19のRuCrN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.905、k=0.025
上記のRuCrN膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は16%(絶対反射率は10.7%)であった。また、位相シフト膜4の膜厚は34.6nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約47%薄くすることができた。
次に、実施例1と同様の条件にて、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を作製した。また、位相シフトパターン4aの膜厚は34.6nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
実施例1の場合と同様に、実施例19で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
[比較例1]
比較例1では、保護膜3としてRu膜と用い、位相シフト膜4として単層のTaN膜を用いた以外、実施例1と同様の構造と方法で、反射型マスクブランク100、反射型マスク200を製造し、又、実施例1と同様の方法で半導体装置を製造した。
Ru膜(保護膜3)は、実施例1のマスクブランク構造の多層反射膜2の上に形成した。このRu膜は、Ruをターゲットに用い、Arガス雰囲気にてイオンビームスパッタリング法によって2.5nmの膜厚で成膜した。単層のTaN膜は、Ru膜の上に形成した。このTaN膜の形成方法は、Taをターゲットに用い、XeガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングを行ってTaN膜を成膜した。TaN膜の膜厚は65nmであり、この膜の元素比率は、Taが88原子%、Nが12原子%である。
上記のように形成したTaN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaN膜:n=0.949、k=0.032
上記の単層のTaN膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける位相差は180度である。多層反射膜2面に対する相対反射率は1.7%であった。また、位相シフト膜4の絶対反射率は1.1%であった。
その後、実施例1と同様の方法で、レジスト膜11を単層のTaN膜からなる位相シフト膜4上に形成し、所望のパターン描画(露光)及び現像、リンスを行ってレジストパターン11aを形成した。そして、このレジストパターン11aをマスクにして、TaN単層膜からなる位相シフト膜4を、塩素ガスを用いたドライエッチングして、位相シフトパターン4aを形成した。レジストパターン11aの除去やマスク洗浄なども実施例1と同じ方法で行い、反射型マスク200を製造した。
位相シフトパターン4aの膜厚は65nmであり、シャドーイング効果を低減することができなかった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は1.7%(絶対反射率が1.1%)であったため、十分な位相シフト効果が得られず、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができなかった。
以上述べたように、実施例1~19の位相シフト膜4の合計膜厚は、比較例1の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約30%以上薄くできた。したがって、実施例1~19の反射型マスク200では、シャドーイング効果を低減できることが明らかとなった。
1 基板
2 多層反射膜
3 保護膜
4 位相シフト膜
4a 位相シフトパターン
5 裏面導電膜
11 レジスト膜
11a レジストパターン
100 反射型マスクブランク
200 反射型マスク

Claims (9)

  1. 基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
    前記位相シフト膜は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、バナジウム(V)、スズ(Sn)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、及びタングステン(W)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなる薄膜を有することを特徴とする反射型マスクブランク。
  2. 前記位相シフト膜の結晶構造は、アモルファスであることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  3. 前記位相シフト膜は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなる薄膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
  4. 前記Ruと前記Crの組成比(Ru:Cr)は、15:1~1:20であることを特徴とする請求項3記載の反射型マスクブランク。
  5. 前記Ruと前記Niの組成比(Ru:Ni)は、20:1~1:4であることを特徴とする請求項3記載の反射型マスクブランク。
  6. 前記多層反射膜と前記位相シフト膜との間に保護膜を更に有し、
    前記保護膜は、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料からなることを特徴とする請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
  7. 請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランクにおける前記位相シフト膜がパターニングされた位相シフトパターンを有することを特徴とする反射型マスク。
  8. 請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記位相シフト膜を塩素系ガスと酸素ガスとを含むドライエッチングガスによってパターニングして位相シフトパターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
  9. EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、請求項に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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