JP7360287B2 - ごみクレーンの運転システムおよびこれを適用したごみ処理施設 - Google Patents

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Description

本発明は、ごみを焼却処理するごみ処理施設において、ごみを移送するごみクレーンの運転を管理するシステム、およびこれを適用したごみ処理施設に関する。
ごみを焼却処理するごみ処理施設においては、収集車から搬入されるごみをごみピット内に貯留し、貯留したごみをごみクレーンにより掴み上げてホッパに移送し、該ホッパから焼却炉に投入するようになっている。
ここで、焼却処理されるごみには様々な種類があり、燃えやすさや発熱量は種類に応じて異なる。例えば、燃えやすさはごみ中の可燃成分の量や水分量に依存するし、また、ごみ袋に覆われた状態のごみ(未破袋のごみ)の場合、内側のごみへの熱の伝達が外側のごみによって妨げられるために燃えにくい。また、水分が多く含まれるごみは、水分の蒸発に熱が奪われるため、焼却により最終的に発生する熱量は少なくなる。
ごみの性質は、ごみピット内における貯留時間や、貯留位置によっても変化する。水分を含むごみが積み上げられると、ごみ中の水分は下方に移動するので、時間の経過と共に上方に位置するごみは軽く、下方に位置するごみは重くなっていく。この傾向は、水分を多く含むごみが搬入されやすい雨季に特に顕著である。逆に、気温の高い時季にはごみの発酵が進行して水分が蒸発し、比重が軽くなったり、焼却時の発熱量が大きくなることもある。上方から吊り下げられたごみクレーンによりごみの操作を行う場合、上方に位置するごみほど移送等の操作が加えられやすいので、運転員が意図して下方のごみを掘り出す等の操作を行わない限り、ごみの質の偏りは時間の経過に従いいっそう大きくなっていく。
一方、焼却炉の運転にとっては、供給されるごみの発熱量や燃えやすさがなるべく均等であることが好ましい。時間によってごみの発熱量にむらがあると焼却炉の温度が上下し、焼却の効率が下がったり、汚染物質が生成される場合があるからである。また、燃え残りも可能な限り少なくする必要がある。
このため、ごみ処理施設においては、ごみクレーンを操作する運転員がごみピット内を目視し、ごみの種類や性質が均等になるようにごみピット内でごみを移し替えたり、あるいは未破袋のごみを破袋する(ごみを掴みあげて落とし、ごみ袋を破る)といった作業が行われている。
しかしながら、ごみの種類を見分けたり、均等になるように移し替えるといった作業は複雑で熟練を要し、こういった作業を行うことができる人員の確保には手間と費用がかかる。また、次々とごみピットに搬入されるごみを監視し、ごみクレーンを操作するのは、運転員にとっても負担が大きい。そこで近年では、例えば下記特許文献1のように、ごみクレーンの運転に係る作業の少なくとも一部を機械的に代行する技術が提案されている。下記特許文献1には、教師データを用いた機械学習により、ごみピット内の廃棄物の質を推定する技術が記載されている。
また、貯留時間によるごみの質の偏りに関しては、例えばごみピット内のごみのうち、運転員が長く操作を加えていない領域のごみを、記憶を頼りに掘り出すといった操作で対応することができるが、このように人の記憶に頼った方法は信頼性に欠ける。そこで、例えば下記特許文献2のように、ごみピットにおけるごみの搬入や撹拌の履歴を記録し、クレーンの制御に反映させる技術が提案されている。
特開2019-27696号公報 特開2010-275064号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載の如き技術では、ごみの撹拌の履歴を運転操作に反映させるにあたり、計算が複雑で計算資源に係るコストの増大を招く。また、上記特許文献1に記載の技術では、廃棄物の質を推定するにとどまり、貯留時間によるごみの質の偏りには対応できない。
本発明は、斯かる実情に鑑み、貯留時間によるごみの質の偏りを簡便に是正し得るごみクレーンの運転システムおよびごみ処理施設を提供しようとするものである。
本発明は、ごみピット内に貯留されたごみをホッパに移送するごみクレーンを備え、掘り出しを含む複数の運転操作からいずれかを実行するよう構成され、掘り出しの操作は、ごみの搬入履歴と、前記ごみクレーンの運転操作履歴から、搬入された時刻、または最後に操作の行われた時刻のうち、新しい方の時刻が最も古いブロックを特定し、該当するブロックにあたる区画のごみを掘り出すことによって行われることを特徴とするごみクレーンの運転システムにかかるものである。
本発明のごみクレーンの運転システムは、以下の運転操作から選択される複数の運転操作からいずれかを実行するよう構成することができる。
・移送
・破袋
・撹拌
・作り置き
・移し替え
・接近回避
・掴み直し
・掘り出し
本発明のごみクレーンの運転システムは、前記ごみピットに設けられた搬入口へのごみの搬入の可不可を表示する信号機を備え、前記各運転操作、および搬入抑制の操作から選択される複数の運転操作からいずれかを実行するよう構成することができる。
本発明のごみクレーンの運転システムにおいて、運転操作の決定は、以下のパラメータから選択される複数のパラメータを入力変数として運転操作を決定するモデルを用いて行うことができる。
・前記ごみピット内の各区画に貯留されたごみの種類
・前記ごみピット内の各区画に貯留されたごみの高さ
・前記ごみピット内の各区画に割り当てられた機能
・前記ホッパ内におけるごみの高さ
・前記ごみクレーンのバケットの荷重
・前記ごみピットの搬入口の開閉状態
・月または季節
・曜日
・時刻
・搬入口からのごみの搬入履歴
・ごみクレーンの運転操作履歴
本発明のごみクレーンの運転システムにおいては、掘り出しの操作を定期的に行うよう構成することができる。
また、本発明は、上述のごみクレーンの運転システムを備えたことを特徴とするごみ処理施設にかかるものである。
本発明のごみクレーンの運転システムおよびごみ処理施設によれば、貯留時間によるごみの質の偏りを簡便に是正し得るという優れた効果を奏し得る。
本発明を適用したごみ処理施設の全体構成の一例を説明する概要構成図である。 本発明の実施によるごみクレーンの運転システムの機器構成の一例を示す概要図である。 本実施例のごみクレーンの運転システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。 本実施例のごみクレーンの運転システムにおいて、入力部に表示される画像の一例を示す模式図である。 ごみピット内の区画分けの一例を示す模式図である。 区画に対する機能の割り当ての一例を示す図である。 撮像部または高さ計測部によって取得されるごみピット内の画像の一例を示す図である。 各区画に対しラベルされたごみの種類の一例を示す図である。 各区画のごみの高さの算出結果の一例を示す図である。 本発明の実施によるごみクレーンの運転システムにおける運転パターンの一例を説明するフローチャートの一部である。 図10のフローチャートの続きである。 図10、図11のフローチャートの続きである。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1~図3は本発明の実施によるごみクレーンの運転システムの形態の一例を示している。図1はごみ処理施設の全体的な構成を示しており、ごみピット1内に貯留されたごみDは、ごみクレーン2により掴み上げられてホッパ3に移送され、該ホッパ3から焼却炉4に供給されるようになっている。ごみクレーン2は、ごみピット1の天井付近からワイヤロープを介して吊り下げられたバケット2aを備えている。バケット2aは、ごみピット1内を上下および水平方向における縦横に移動できると共に、開閉してごみDを掴み、また放すことができるようになっている。
ホッパ3内のごみDは、自重によって下方へ移動し、ホッパ3の下部に設けられた給塵機5により焼却炉4内へ押しやられる。焼却炉4内にはストーカ6が設けられており、焼却炉4に供給されたごみDは、ストーカ6で焼却炉4内を運搬されつつ空気と混和され、燃焼されるようになっている。
ごみピット1には収集車Cの進入するプラットフォーム7が隣接しており、ごみピット1の側面には、プラットフォーム7に面する位置に搬入口1aが設けられている。そして、プラットフォーム7に停止した収集車Cから、搬入口1aを通じてごみピット1内にごみDが搬入されるようになっている。尚、図1ではプラットフォーム7を1つだけ図示しているが、実際には、プラットフォーム7および搬入口1aをごみピット1に対し複数設けてもよい。各搬入口1aに対応するプラットフォーム7の外側にはそれぞれ信号機8が備えられており、各搬入口1aへのごみDの搬入の可不可が表示されるようになっている。尚、この信号機8は、ごみDの搬入の可不可が判別できるものであれば何でもよく、例えばランプの点灯・消灯によって可不可を表示するものであってもよいし、文字情報や図形を表示するものであってもよい。
また、ごみピット1の側面におけるプラットフォーム7より上方の位置にはごみクレーン2の操作室9が隣接している。操作室9からは、ピット窓9aを通してごみピット1内が視認できるようになっている。また、操作室9内にはごみクレーン2の動作を制御し、またごみ処理施設の各部の運転状況を監視制御する制御装置10(図2参照)と、ごみクレーン2に対する操作を入力する操作装置11が設けられている。こうして、操作室9内の運転員は、ごみピット1内をピット窓9aから目視しつつ、操作装置11によりごみクレーン2を操作できるようになっている。
また、図1、図2に示す如く、ピット窓9aの高さには、ごみピット1の下部に貯留されたごみDを撮像する撮像部12と、貯留されたごみDの高さを計測する高さ計測部13が設けられている。撮像部12は、ごみピット1の下部の画像を取得するカメラであり、高さ計測部13は、例えばごみピット1の下部の画像を2視点から取得するステレオカメラである。
撮像部12と高さ計測部13は、ごみピット1に対し、ここに図示した位置とは異なる位置、例えばごみピット1の天井付近に設置することも可能である。ただし、撮像部12や高さ計測部13をごみピット1の天井付近のような高所に設置すると、これらの装置の位置にアクセスすることが難しく、メンテナンスに余分な手間が生じてしまう。ごみDが貯留されるごみピット1では、常に多量の塵が発生するので、撮像部12や高さ計測部13には頻繁なメンテナンスの必要が生じることが想定される。よって、メンテナンスの手間の点から、撮像部12や高さ計測部13は操作室9の高さに設けるのが簡便である。
撮像部12および高さ計測部13は、図3に示す如く、解析装置14に情報的に接続されている。解析装置14は、例えばパーソナルコンピュータやタブレットといった情報処理装置である。撮像部12と高さ計測部13によって取得された画像データは、解析装置14のごみ種判定部14aに入力される。ごみ種判定部14aには、画像内に写り込んだごみの種類を判定するモデルが格納されており、撮像部12により取得された画像に基づき、後述するようにごみピット1の各箇所に貯留されたごみDの種類を自動で判定するようになっている。また、解析装置14の高さ算出部14bでは、高さ計測部13により取得された画像の視差に基づき、ごみDの表面の各部箇所の高さを算出するようになっている。
尚、ここでは説明の便宜のために、撮像部12と高さ計測部13を別々の装置として図示したが、撮像部12と高さ計測部13の機能を同一の装置により担うことも可能である。すなわち、例えばステレオカメラである高さ計測部13によって取得された画像によりごみDの高さを算出すると共に、取得された画像のうち一方に基づいてごみDの種類を判定するようにしてもよい。
また、解析装置14は、自動運転のためのモデル(ごみDの種類を判定する上述のモデル、および運転操作を決定するモデル)を生成するモデル生成部14cと、運転操作を決定する運転操作決定部14dを備えている。モデル生成部14cによるモデルの生成、運転操作決定部14dによる運転操作の決定については、後に詳しく説明する。
ごみ処理施設の各所には、ホッパレベルセンサ15、クレーン重量センサ16、搬入口開閉センサ17(図1参照)が設置されており、これらの各機器により取得された情報は、制御装置10や解析装置14へ入力されるようになっている。
ホッパレベルセンサ15は、ホッパ3におけるごみDの高さに関する情報を取得するセンサであり、例えばごみDの高さが所定以上あるか否かを検出し、解析装置14に入力する。ホッパ3内では、上述の如く自重によりごみDが搬送されるようになっているので、ごみDに十分な高さがないと給塵機5が空転し、焼却炉4へのごみDの供給がうまく行われない。また、焼却炉4内の高温のガスがホッパ3へ逆流してしまう可能性もある。したがって、焼却炉4の運転中、ホッパ3内には常に所定以上の高さのごみDが充填されている必要がある。そのため、ホッパレベルセンサ15によりごみDの高さを監視し、後述する自動運転の際の操作に反映するようにしている。尚、ホッパレベルセンサ15のほかに、例えば図示しない監視カメラ等をホッパ3に設け、ホッパ3内におけるごみDの高さを運転員等が視覚的に把握できるようにしてもよい。
クレーン重量センサ16は、例えばごみクレーン2のバケット2aを吊り下げるワイヤロープの張力を検出する張力センサやロードセルであり、バケット2aに把持されたごみDの重量を測定できるようになっている。
搬入口開閉センサ17は、各搬入口1aの開閉状態を検出するセンサである。収集車CによりごみDの搬入が行われている間は搬入口1aが開かれているので、搬入口1aの開閉状態を介してごみDが搬入中であるか否かを解析装置14で把握することができる。
解析装置14は、上記各機器(撮像部12、高さ計測部13、ホッパレベルセンサ15、クレーン重量センサ16、搬入口開閉センサ17)により得た情報や、その他の情報(例えば、時刻や曜日など)に基づき、制御装置10に対してごみクレーン2への操作指令を自動的に入力するようになっている。また、ごみクレーン2への操作指令は、操作装置11からも入力できるようになっており、ごみクレーン2の運転は、操作装置11を介した手動運転と、解析装置14による自動運転とを適宜切り替えられるようになっている。
また、解析装置14には、信号機8も情報的に接続されており、解析装置14からの指令により、各搬入口1aの信号機8にごみDの搬入の可不可が表示されるようになっている。信号機8の表示に関する指令は、操作装置11からも入力することができる。
ごみ処理施設の各部の情報、例えば撮像部12により取得されたごみピット1内の画像や、ホッパ3内の画像あるいはホッパ3内におけるごみDの高さ、各搬入口1aの開閉状態、その他の情報は、操作室9に設けた表示部18に表示されるようになっている。尚、この表示部18の機能は、例えば解析装置14のディスプレイが兼ねるようにしてもよい。
尚、ごみ処理施設にはここに図示した以外にも、焼却の熱を利用して蒸気を発生させるボイラや、焼却炉4内で生じた灰を回収する灰コンベヤ等、種々の設備が設けられるが、本発明の主旨と直接関連しない構成については適宜図示を省略している。
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
上述の如きごみ処理施設において、ごみクレーン2やその他の機器を手動で運転する場合、ごみピット1内の状況等に応じ、例えば下記のような各操作が選択的に実行される。
・移送:ごみピット1内のごみDをホッパ3に移送する操作である。操作室9の運転員は、例えば図示しないカメラ等により取得されるホッパ3内のリアルタイムの画像を表示部18に映してホッパ3内の状況を監視し、ホッパ3内におけるごみDの高さが適当な高さを下回った場合にごみピット1内のごみDをごみクレーン2のバケット2aで掴み上げ、ホッパ3へ移送する。尚、ホッパ3内におけるごみDの高さは、映像のほかに、例えばホッパレベルセンサ15から制御装置10に入力され、あるいは表示部18に表示される数値情報により把握してもよい。
移送は、続いて説明する破袋や撹拌といった処理が済んだごみDについて優先的に行う。未破袋のごみDが焼却炉4に供給されて燃え残りが生じたり、燃えやすさや発熱量にばらつきのあるごみDが焼却炉4に供給されて焼却炉4の運転状況が不安定になるのを防ぐためである。
・破袋:ごみピット1内に未破袋のごみDが多数含まれる箇所があった場合、その箇所のごみDをバケット2aで掴み上げ、ごみピット1内に再び落下させる。衝撃によりごみ袋が破れ、破袋済となる。
・撹拌:ごみピット1内に、例えば厨芥や草木類など、比較的燃えにくい種類のごみDが多く含まれる箇所があった場合、その箇所のごみDをバケット2aで掴み上げ、燃えにくい種類のごみDが少ない場所へ移す。あるいは、広い範囲に少しずつばら撒く。これにより、ごみDの燃えやすさや発熱量が均等になる。また、草木類のように長さがあり、互いに絡み合っているようなごみDは、ホッパ3へ一度に大量に移送すると、ホッパ3内で詰まりが生じ、焼却炉4への円滑な供給の妨げになる可能性がある。このため、堆積したごみDの中に草木類を多く含む部分があった場合、撹拌の操作により少しずつ他の領域に移す必要がある。
・作り置き:ホッパ3に対するごみDの移送が必要となった時に、破袋や撹拌の済んだ適当な質のごみDを迅速にホッパ3へ移送できるよう、ごみピット1内の特定の箇所に破袋・撹拌済のごみDを積み上げておく。移送は、この作り置きスペースに積まれたごみDから優先的に行われる。
・移し替え:ごみピット1には、搬入口1aからごみDが搬入されるので、ごみピット1内では、搬入口1aの直下の位置にごみDが積み上がっていくことになる。仮にこれを放置すれば、いずれ搬入口1aの直下に積み上がったごみDが搬入口1aの高さに達し、それ以上のごみDの搬入ができなくなり、搬入が滞ってしまう。これを防止するために、搬入口1aの直下のごみDがある程度以上高く積み上がっている場合、その箇所のごみDを、ごみピット1内の他の箇所に移す。また、ごみDが搬入される可能性のある曜日や時間帯には、搬入口1aの直下のごみDを予め他の箇所に移しておく。
・搬入抑制:搬入口1aの直下において、搬入による増加速度が移し替えや移送によるごみDの高さの減少速度を上回り、ごみDの高さがある閾値(それ以上ごみDが積み上がると搬入口1aからのごみDの搬入が困難になる閾値)に達した場合、その搬入口1aにあたるプラットフォーム7の信号機8に、搬入不可の表示を行う。また、併せて搬入口1aをロックし、開放を禁止してもよい。信号機8に搬入不可が表示されている間は、その搬入口1aからごみDは搬入されない。
・接近回避:搬入口1aが開いている場合、その近傍に収集車Cや作業員が存在する可能性が高いので、その周囲にごみクレーン2のバケット2aを接近させないようにする。仮にその搬入口1aの近傍のごみDに対し何らかの操作を行う必要がある場合であっても、搬入口1aが開いている場合は、その周囲にごみクレーン2のバケット2aを接近させることは避ける。
・掴み直し:ごみDの重量は種類によって異なり、例えば水分量の多いごみDは乾燥したごみDに比べて比重が大きい。このため、ごみクレーン2のバケット2aによりごみDを掴み上げたときに、バケット2aにかかる荷重が、ごみクレーン2の許容値より高い場合が想定される。このような場合には、バケット2aをやや開いた状態にしてしばらく静止させ、ごみDが落下するのを待つ。ごみDがバケット2aから少しずつこぼれ落ち、荷重が許容値以内となった段階でバケット2aを閉じ、移送や破袋、撹拌といった操作を行う。また、逆にバケット2aにより掴み上げられたごみDの量が少ない場合は、いったんバケット2aを開いてごみDを落とし、再びバケット2aを降下させてごみDを掴み直す。
・掘り出し:上述の通り、ごみDの性質は時間と共に変化し、時間の経過に従って偏りが増大する。この偏りを是正するため、搬入されてから時間の経ったごみDや、撹拌・破袋といった操作が長時間行われていない箇所のごみDを掘り出し、他の箇所に移す操作を行ってもよい。
尚、バケット2aにかかる荷重は、クレーン重量センサ16により把握することができ、運転者は表示部18に表示される荷重に関する情報(荷重値や、該荷重値がある閾値または範囲を上回り、あるいは下回っているといった情報)を参照し、適宜掴み直しを行う。あるいは、バケット2aに把持されたごみDの量を運転者が目測してもよい。
移送、破袋、撹拌、作り置き、移し替え、搬入抑制、接近回避、掴み直し、掘り出しといった上述の各操作は、操作室の運転員がごみピット1内の各箇所に貯留されたごみDの種類や量、ホッパ3内におけるごみDの高さ、バケット2aにおけるごみDの把持量、搬入や各操作からの時間経過等を監視し、その他の諸条件をも必要に応じて勘案した結果として随時選択され、実行される。そして、本実施例のごみクレーンの運転システムおよびごみ処理施設においては、このような各操作を自動運転により代替できるようにしている。
運転システムの構築について説明する。運転にあたっては、まず「状況の把握」が行われ、その次に、把握した状況に基づいて「運転操作の選択」が行われる。そこで、運転員によるこのような一連の流れを自動的に実行するよう、運転システムを構成する。「ある条件を満たした場合には、上述の各操作のうちいずれかを選択して実行する」というパターンを、運転システムに組み込んでおくのである。このようなパターンを組み込むにあたっては、例えば機械学習によりパターンを学習させた人工知能を用いることもできるし、手動操作における運転パターンに準じてパターン分けを設定したプログラムを用いてもよい。また、オントロジーにより判断ルールを整理する方法を用いることもできる。
機械学習を利用する場合、手法としては回帰式を用いる方法、ニューラルネットワークにより構築されたモデルを用いる方法など、種々の方法を採用することができる。
機械学習は、入力変数にあたるパラメータと、該パラメータの関数である推論値のデータセットである教師データに基づいて行われる。本実施例の運転システムの場合、求める推論値は「上述の如き各操作のうち、いずれをどのように実行するか」であり、推論値を求めるための入力変数は、その時のごみピット1ないしごみ処理施設の各部の状況、すなわち、例えば以下に列挙する各パラメータである。
・ごみピット1内の各箇所に貯留されたごみDの種類
・ごみピット1内の各箇所に貯留されたごみDの高さ
・ごみピット1内の各区画に割り当てられた機能
・ホッパ3内におけるごみDの高さ
・バケット2aの荷重
・各搬入口1aの開閉状態
・月または季節
・曜日
・時刻
・各搬入口1aからのごみDの搬入履歴
・ごみクレーン2の運転操作履歴
ごみピット1内の各箇所におけるごみDの種類や高さ、ホッパ3内におけるごみDの高さ、バケット2aの荷重、各搬入口1aの開閉状態は、手動運転を行う場合、運転者にとって操作を選択する判断の根拠となるパラメータである。また、搬入されるごみDの質は、季節と共に変動する。例えば、梅雨や秋は雨が多く、水分量の多いごみDの割合が高い。また、冬季は乾燥するため、ごみD中の水分量が比較的少なくなる。このため、月や季節も運転操作に影響する。また、収集車CによるごみDの搬入量や、搬入されるごみDの種類は曜日や時刻によって変わるため、曜日や時刻も運転操作に影響する。各搬入口1aからのごみDの搬入履歴は、いずれの搬入口1aからどの時刻にごみDが搬入されたかの履歴である。ごみクレーン2の運転操作履歴は、ごみDを掴み上げる操作を、ごみピット1内のどの位置のごみに対し、どの時刻に行ったかの履歴である。上記した掘り出しの操作を行う場合は、これらも運転操作に影響する。尚、ごみピット1内の各区画に対して割り当てられる機能については、後に詳しく説明する。
ここで、上記各パラメータのうち、「ごみDの種類」については、機械的に判定することが難しい。ごみDの種類は多岐に亘っており、且つそれらの外見は一概に評価することが難しいからである。
本実施例では、従来、熟練の運転員の目視で行われていたごみDの種類の判定を、解析装置14のごみ種判定部14aで自動的に行うことができるようになっている。ごみ種判定部14aにおける種類の判定は、機械学習を用いて生成されたモデルによって行われるようになっている。このモデルの生成にも教師データが必要であるが、この教師データにおいて、入力変数は「撮像部12によって撮像されたごみピット1内の画像、あるいは該画像から抽出された物体の色や形状、寸法といった特徴量」であり、推論値は「ごみピット1内の各所におけるごみDの種類」である。
これらの機械学習に用いる教師データは、例えばある程度の期間、運転員による手動運転を行い、その間の各時点におけるごみ処理施設の各部やごみDの状態と、運転員により選択された運転操作のパターンを蓄積することによって作成することができる。
教師データを作成する際には、例えば図2中に示すように、タブレット等の情報端末装置である入力部19を操作室9(図1参照)に設置する。この入力部19には、例えば図4に示す如き画像が表示される。この画像は、撮像部12により取得されたごみピット1内の画像に、ごみピット1内の仮想的な区画を重ね合わせた図と、ごみDの種類(ここでは、「燃えやすい」「燃えにくい」「草木類」「未破袋」の4種類)を選択肢として表示した図を含む。そして、運転員が上述の各操作を行うにあたり、操作対象の区画と、該区画に露出したごみDの種類を入力できるようになっている。
区画について説明する。本実施例の運転システムは、運転員による判断や運転操作をシミュレートし、機械的に代行するシステムであると言うことができる。前記区画は、運転員によるごみDの種類の判定や、ごみクレーン2の手動操作を自動操作で代行するにあたり、仮想的に設定されるものである。ごみクレーン2の運転は、例えば「ごみピット1内の各位置にあるごみDの種類を目視によりそれぞれ判定し、これに基づき、ある箇所のごみDをバケット2aにより掴み上げ、ごみピット1内の別の箇所に移し、または同じ箇所に落とし、あるいはホッパ3に移送する」といった形で行われる。ここで、運転システムにとっては、例えば図5に示す如くごみピット1内を適当な数の区画に仮想的に区分し、「1Cの区画のごみDには、比較的燃えにくい種類のごみDが多く含まれている」「1Cの区画のごみDを、2Aの区画に移す」といった形で整理すれば、判定や操作の内容を機械的に把握しやすい。運転員が手動でごみクレーン2を運転する場合には、必ずしも区画を意識する必要はないが、ごみピット1内における位置を区画として把握すれば、教師データの作成やモデルの生成にあたって入力変数を単純化し、計算負荷を軽減できるのである。尚、区画分けにあたっては、一辺あたりの区画数が、ごみピット1の一辺の長さを、バケット2aの幅(前記辺の向きに沿ったバケット2aの水平方向の寸法)で割った値の前後であることを目安とするとよい。このようにすると、なるべく少ない区画数でごみピット1の全域をカバーすることができ、少ない教師データ量や計算負荷で十分な精度の自動運転を行うことができる。また、区画の絶対数は、2×2以上、20×20以下程度とすると好適である。区画の数が少なすぎると自動運転に際して満足な精度が得られない可能性があるし、多すぎれば必要な教師データの量の増大や、計算負荷の増大を招いてしまうからである。
また、教師データの作成にあたっては、予め図6に示す如く、ごみピット1の各区画にそれぞれ機能を割り当てておくとよい。モデルを生成したり、自動運転を行う場合には、各区画に割り当てられた機能が運転操作に影響するので、これを入力変数として利用することができる。
ここに示した例では、ごみピット1を4×3の合計12の区画に分割している。右側の4区画(1C,2C,3C,4C)は搬入口1aに面している。ごみDはこれらの区画に搬入されるので、搬入が行われる時間帯は、これらの区画から他の区画への移し替えを優先する必要がある。また、ごみ処理施設においては、各搬入口1a毎に、搬入されるごみDの種類や搬入形式が設定されている場合がある。ここに示した例では、1Cの区画に面する搬入口1aからはダンピングボックスに収集されたごみDが、2Cおよび3Cの区画に面する搬入口1aからは一般ごみに分類されるごみDが、4Cの区画に面する搬入口1aからは草木類に分類されるごみDが、それぞれ搬入される。搬入されるごみDの種類は、運転操作の選択に影響する。
1B,2B,3B,4Bの区画は、破袋用のスペースとして利用される。すなわち、1C,2C,3C,4Cの区画に未破袋のごみDが搬入された場合、該ごみDは1B,2B,3B,4Bの区画に優先的に落下させられ、破袋される。
1A,2Aの区画は、撹拌用のスペースとして利用される。すなわち、1C,2C,3C,4Cあるいは1B,2B,3B,4Bの区画から1A,2Aの区画へ、燃えにくいごみDや草木類のごみDの割合がおおむね均等になるよう、上記した撹拌の操作によってごみDが移動される。
3A,4Aの区画は、作り置き用のスペースとして利用される。すなわち、破袋や撹拌の済んだごみDがこの区画に移動され、ここからホッパ3に優先的に移送される。
尚、このように各区画に機能を割り当てていたとしても、実際の運転においては、各区画が必ず割り当てられた機能の通りに活用されるとは限らず、各区画に対して加えられる操作は、時間帯や実際のごみピット1内の状況によって変動し得る。しかしながら、機能の割当は部分的にではあれ、上述のように運転操作を決定する際の入力変数として利用し得るので、実際上、有用である。
運転員は、ごみクレーン2の操作を行うにあたり、入力部19に図4に示す如く表示された画像に対し、操作対象の区画と、その区画に多く露出しているごみDの種類を入力する。入力されたごみDの種類とその区画は、撮像部12により取得されたその時のごみピット1内の画像に紐付けられ、解析装置14に格納される。これを繰り返すことにより、ごみピット1内の画像あるいは該画像から抽出した特徴量を変数とし、各区画の表面に露出したごみDの種類を正解値とする組み合わせがデータセットとして蓄積される。このデータセットを教師データとして、ごみピット1内の画像に基づきごみDの種類を判定するモデルが、モデル生成部14cにより生成される。
入力に続き、運転員はごみクレーン2等の操作を行う。操作の内容と時刻(どの時刻に、どの区画に対してどのような操作を行ったか)、およびごみDの種類と区画が入力された時刻は、あわせて解析装置14に格納される。また、解析装置14の高さ算出部14bでは、高さ計測部13の取得した画像から、各区画に貯留されたごみDの高さが算出される。さらに、解析装置14には、ホッパレベルセンサ15、クレーン重量センサ16、搬入口開閉センサ17といった各機器により取得された情報も格納される。これらは、曜日や時刻とあわせ、運転操作を決定するモデルの入力変数(ごみピット1内の各区画に貯留されたごみDの種類と高さ、各区画に割り当てられた機能、ホッパ3内におけるごみDの高さ、バケット2aの荷重、各搬入口1aの開閉状態、月または季節、曜日、時刻)と、正解値(選択される運転操作)がデータセットとして蓄積される。このデータセットを教師データとして、種々の条件に基づき運転操作を決定するモデルが、モデル生成部14cにより生成される。
尚、ここでは教師データの作成にあたり、入力部19を一個の装置として設ける場合を例に説明したが、入力部19の機能は、例えば解析装置14が兼ねるようにしてもよい。
また、判定するごみの種類数は適宜増減してよい。例えば、可燃破砕物(家具など、大型の可燃物を破砕したごみ)などのカテゴリを追加してもよい。また、区画に割り当てる機能の数についても、適宜増減してよい。例えば、「可燃破砕物を積むスペース」等の機能を設定してもよい。
ごみDの種類を判定するモデル、および運転操作を決定するモデルが生成されたら、自動運転を実行することができる。
自動運転にあたっては、まず撮像部12により、図7に示す如きごみピット1内の画像が取得される。解析装置14のごみ種判定部14aでは、取得された画像から、ごみDの種類を判定するモデルを用い、各区画の表面に露出したごみDの種類が区画ごとに判定される。ごみ種判定部14aは、この判定結果に基づき、さらに各区画に対してラベリングを行う。図8は各区画に対するラベリングの結果の一例を示している。図中、「良」は比較的燃えやすいごみDが多くある区画、「難」は比較的燃えにくいごみDが多くある区画、「未」は未破袋のごみDが多くある区画、「草」は草木類のごみDが多くある区画を示している。「済」は、撹拌や破袋といった操作が済み、ホッパ3に移送して支障のない程度に均質な状態となったごみDが見えている区画を示している。尚、ここに図示したラベリングは一例であって、実際のごみ種のカテゴリ分けや運転操作の便宜に応じ、ラベリングの数や内容は適宜変更してよい。
また、解析装置14の高さ算出部14bでは、高さ計測部13により取得された画像に基づき、ごみピット1内の各区画に貯留されたごみDの高さを算出する。各区画について、例えば図9に示す如く、ごみDの高さが算出される。
解析装置14の運転操作決定部14dでは、運転操作を決定するモデルを用い、例えば以下に列挙するパラメータから選択される複数のパラメータを入力変数として、次に行う運転操作を決定する。
・ごみピット1内の各区画に貯留されたごみDの種類
・各区画に貯留されたごみDの高さ
・各区画に割り当てられた機能
・ホッパ3内におけるごみDの高さ
・バケット2aの荷重
・各搬入口1aの開閉状態
・月または季節
・曜日
・時刻
・各搬入口1aからのごみDの搬入履歴
・ごみクレーン2の運転操作履歴
各区画のごみDの種類および高さは、上述の方法によりごみ種判定部14aおよび高さ算出部14bにて取得できる。各区画に割り当てられた機能は、予め設定されている。ホッパ3内におけるごみDの高さは、ホッパレベルセンサ15から取得できる。バケット2aの荷重は、クレーン重量センサ16から取得できる。各搬入口1aの開閉状態は、搬入口開閉センサ17から取得できる。月または季節、曜日、時刻は、解析装置14に備えられた時計機能等により取得できる。各搬入口1aからのごみDの搬入履歴は、搬入口開閉センサ17から取得された搬入口1aの開閉記録として間接的に取得できる。ごみクレーン2の運転操作履歴は、ごみDに対して各運転操作を行った際の記録である。
このようなパラメータに基づき、以下に示す如き各運転操作から、その時の状況に応じていずれかの操作が随時選択され、実行される。
・移送:ごみピット1内のごみDをホッパ3に移送する。例えば、ホッパレベルセンサ15により、ホッパ3内におけるごみDの高さが閾値を下回ったことが検出された場合に、制御装置10や解析装置14に対し、ごみDの移送要求が入力される。これを条件の一つとして、移送の操作が決定される。
・破袋:未破袋のごみDを多く含むと判断される区画のごみDをバケット2aで掴み上げ、再び落下させる。
・撹拌:比較的燃えにくい種類のごみDを多く含むと判断される区画のごみDをバケット2aで掴み上げ、燃えにくい種類のごみDが少ない区画へ移す。あるいは、複数の区画に少しずつばら撒く。
・作り置き:ごみピット1内の特定の区画に、破袋・撹拌済のごみDを積み上げておく。この操作は、例えば作り置きの機能が割り当てられた区画におけるごみDの高さがある閾値を下回ったことを条件の一つとして行う。
・移し替え:搬入口1aの直下にあたる区画のごみDを、ごみピット1内の他の箇所に移す。この操作は、例えば搬入口1aの直下の区画におけるごみDの高さがある閾値を上回った場合に行う。あるいは、ごみDの搬入が行われる時間帯に行う。
・搬入抑制:搬入口1aの直下におけるごみDの高さが閾値に達した場合、その搬入口1aにあたるプラットフォーム7の信号機8に、搬入不可の表示を行う。併せて、搬入口1aをロックし、開放を禁止する。
・接近回避:開いている搬入口1aの周囲に、ごみクレーン2のバケット2aを接近させないようにする。各搬入口1aの開閉状況は、搬入口開閉センサ17により把握できる。
・掴み直し:バケット2aの荷重が許容値を上回ったり、あるいは大幅に下回ったりした場合、ごみDの掴み直しを行う。バケット2aにかかる荷重は、クレーン重量センサ16により把握することができる。
・掘り出し:ごみピット1内に貯留されたごみDのうち、搬入された時刻、または最後に操作の行われた時刻(のうち、新しい方の時刻)が最も古い箇所のごみDを掘り起こし、他の領域に移す。これにより、時間経過に伴うごみの質の偏りを是正する。このように自動運転にあたり、履歴に従って掘り出しを行うようにすれば、運転員の記憶に頼らず、履歴の古い箇所のごみに対して確実に掘り出し操作を実行することができる。
この掘り出しの操作について、特に説明する。解析装置14では、各搬入口1aからのごみDの搬入履歴を、搬入口1aの開閉履歴として記録する。また、各区画に対し、ごみクレーン2によりごみDの掴み上げが行われた時刻を、ごみクレーン2の運転操作履歴として記録する。ごみDの搬入履歴や、ごみクレーン2の運転操作履歴と、その時点の各区画におけるごみDの高さ、またはごみクレーン2のバケット2aがごみDを把持する動作を行った位置とを照合すれば、ごみピット1内の各部における各ごみDの搬入履歴と、各ごみDに対して加えられた操作の履歴(運転操作履歴)を、三次元状に区分されたブロック毎に把握することができる。尚、ここでいう「ブロック」とは、平面視において区画毎に仮想的に区分され、上下方向において搬入された時刻、または操作の加えられた時刻別に層状に区分された各領域を指す。
そこで、解析装置14の運転操作決定部14dでは、各搬入口1aの開閉履歴として把握されるごみDの搬入履歴と、ごみクレーン2の運転操作履歴から、搬入された時刻、または最後に操作の行われた時刻のうち、新しい方の時刻が最も古いブロックを特定する。このようにすれば、履歴の最も古いブロックを簡便に特定することができる。そして、該当するブロックにあたる区画のごみDを掘り出し、他の区画へ移す。これを該当の区画における最下部まで行うと、時間経過による質の変化が最も大きいと推定されるブロックに存在するごみDを他の区画に移し、質の偏りを是正することができる。
この操作は、上述の各種パラメータに基づく選択により適時に実行してもよいし、あるいは、それに代えてあるいは加えて、定期的に(例えば指定の時刻毎に、あるいは適当な周期毎に)必ず行うようにしてもよい。掘り出しを行う時刻や周期を設定すると、その時々における履歴の古いごみDに対し定期的に掘り出しを実行することができる。
以上の如き各種パラメータによる選択の結果、例えば、「ごみDの搬入が多く行われる時間帯(昼間)で、搬入口1aの直下の区画におけるごみDの高さが『高』である場合には、移し替えの操作を行う」とか、「搬入口1aの直下の区画におけるごみDの高さが『低』であり、ホッパ3におけるごみDの高さが『低』である場合には、ごみDをホッパ3へ移送する」とか、「搬入口1aの直下の区画に未破袋のごみDが多い場合には、別の区画へ移しつつ破袋を行う」といった運転操作の決定が行われる。決定後、操作指令が生成され、制御装置10に入力され、これに基づいてごみクレーン2や、その他の機器類が操作される。
ごみクレーン2を実際に操作するにあたっては、高さ算出部14bにて取得された各区画のごみDの高さの情報が使用される。すなわち、例えばある区画のごみDをバケット2aにより掴み上げる場合、高さ算出部14bにて算出されたごみDの高さまでバケット2aを降ろし、そこでバケット2aの開閉を行う。ごみDの高さ情報を使用したこのような操作は必須ではなく、例えばバケット2aに接触センサ等を備え、ごみDを掴み上げる際にはバケット2aがごみと接触するまでバケット2aを下ろし、バケット2aのごみDへの接触が検出された段階で降下を停止し、開閉を行う、といった方法でも運転は可能である。ただし、それではごみDと接触しても故障等の支障が生じない程度の速さでしかバケット2aを下ろすことができず、操作が緩慢になる。これに対し、上述のように高さ情報を利用すれば、例えばある区画のごみDをバケット2aにより掴み上げる場合には、ごみDの表面付近の高さまではバケット2aを速く降ろし、バケット2aがごみDに近づいた段階で減速し、ごみDの高さで停止させて開閉を行うといった運転が可能であり、このようにすると、ごみクレーン2の操作を円滑かつ迅速に行うことができる。
尚、実際に手動運転あるいは自動運転を行う場合、上に例示した各操作の全てを必ずしも選択肢に含む必要はなく、上に挙げた運転操作から選択される一部の操作のみを実行するようにしてもよいし、あるいは上に挙げた操作以外の操作を適宜組み込むようにしてもよい。
また、機械学習により生成したモデルを用いて自動運転を行うにあたり、入力変数としては上に挙げたパラメータの全部を使用してもよいし、一部のみを選択して使用してもよい。また、運転操作の決定に関係し得る別のパラメータを適宜採用することもできる。
ごみDの種類の判定についても、上ではごみピット1内の画像のみに基づいて判定する場合を例に説明したが、この他に、必要に応じてごみの種類に関連する他のパラメータを入力変数として利用することもできる。例えば、搬入されるごみの種類は季節や曜日、時刻により変動するので、月または季節、曜日、時刻等を、ごみDの種類を判定するにあたって入力変数に加えてもよい。
また、運転操作の決定については、上述の如き機械学習により生成されたモデルを利用する方法ではなく、手動操作における運転パターンに準じて設定されたパターンに基づいて行うようにしても良い。図10~図12のフローチャートに、そのような運転操作の決定パターンの一例を示す。
まず、時刻に応じ、運転操作残数を設定する(図10、ステップS0)。この「運転操作残数」とは、撹拌を行う頻度を調整するために、撹拌以外の運転操作の回数を設定する値である。すなわち、運転操作残数をある数nに設定した場合、撹拌が一度行われた後、別の操作がn回行われなければ、次の撹拌は実行されないようになっている。
ステップS0で設定される運転操作残数は1~20程度の整数であり(無論、ごみ処理施設の規模や実際の運転状況によっては、20より多く設定しても構わない)、本実施例では、運転モード(昼間運転モードか、夜間運転モードか)によって異なる値が設定される。例えば、昼間運転モードではn=20を初期値として設定され、夜間運転モードではm=10を初期値として設定される。
続いて、改めて時刻の判定を行う(ステップS1)。時刻が昼間の場合は、昼間運転モードに移行する(図11参照)。夜間の場合は、夜間運転モードに移行する(図12参照)。
昼間運転モード(図11参照)では、ごみDの搬入が多く行われるので、上述の各操作のうち移し替えを優先的に行い、移し替えの必要がないと判断された場合にその他の操作を行う。また、掘り出しの操作は行わず、他の操作を行う。より具体的には、移し替え、破袋、移送、撹拌の順に優先度を設定し、この優先度に合わせて各操作が行われるよう、以下に説明するように運転操作の決定パターンを設定する。昼間の時間帯という条件下では、各操作を実行頻度順に並べた場合、ここに示したような順序となることが実際、経験的に多いからである。
昼間運転モードに移行する場合、それに先立って掘り出しフラグをオフにする。この「掘り出しフラグ」とは、直近の指定時刻において、掘り出しの操作が行われたか否かを判断するためのフラグである。ステップS2で掘り出しフラグがオンになっているか否かを確認し、オンであった場合はオフにし(ステップS3)、オフであった場合はそのまま昼間運転モード(図11参照)を開始する。
昼間運転モードでは、まずステップS4で、各搬入口1aに面した区画のうち、ごみDの高さが「高」(すなわち、その後ごみDの搬入を続けた場合、近く搬入が不可能になり得る状態)でない区画が1つ以上あり、且つ運転操作残数がゼロであるかを判定する。この「運転操作残数」とは、撹拌を行う頻度を調整するために、撹拌以外の運転操作の回数を設定する値であり、後に説明する別のステップにて設定される。
ステップS4の判定がNOの場合、すなわち、ごみDの高さが「高」でない区画がないか、運転操作残数が1以上であった場合、ステップS5に進み、ごみDの高さが「高」と判定された区画のごみDに対し、移し替えの操作を行う。続いてステップS6に進み、ホッパ3へのごみDの移送が必要か否かの判定を行う。不要であれば、ステップS5に戻って移し替えの操作を行う。
ステップS6において、移送が必要と判定された場合は、ステップS7に進み、作り置きのごみDがごみピット1内にあるか否かを判定する。作り置きのごみDがあれば、ホッパ3に移送する(ステップS8)。作り置きのごみDがなければ、ごみピット1内にある未破袋のごみDに対して破袋の操作を行い(ステップS9)、破袋されたごみDをホッパ3へ移送する(ステップS8)。
移送後、さらに運転操作残数に関する判定を行う(ステップS10)。運転操作残数が1以上であった場合は、残数を1減じ(ステップS11)、ステップS1(図10参照)に戻る。ステップS10において運転操作残数がゼロであった場合は、そのままステップS1に戻る。
ステップS4の判定がYESの場合は、ステップS12に進む。ステップS12では、比較的燃えにくいごみDが多い区画があるか否かを判定する。ステップS12の判定がYESの場合は、その区画のごみDを他の区画に少しずつ移動する撹拌の操作を行う(ステップS13)。ステップS12の判定がNOの場合はステップS14に進み、草木類のごみDが多い区画があるか否かを判定する。ステップS14の判定がYESの場合はステップS13に進み、該当の区画に対し撹拌の操作を行う。ステップS13が済んだら、運転操作残数を予め設定された数nに設定する(ステップS15)。ステップS15が済んだら、再びステップS1(図10参照)に戻る。
ステップS14における判定がNOの場合はステップS16に進み、必要に応じて破袋の操作を行う。ステップS16が済んだら、ステップS1に戻る。
ステップS1において、現在が夜間(ごみDの搬入が少ない、あるいは行われない時間帯)であると判定された場合は、夜間運転モードに移行する(図12参照)。夜間運転モードでは、ごみDの搬入が少ないので、移し替えは行わず、その他の操作を行う。また、後に昼間運転モードに切り替わった場合に備え、処理済みのごみDの貯留量を増やすよう、作り置きの操作を行う。さらに、掘り出しの操作も夜間運転モードの間に行う。より具体的には、破袋、移送、撹拌、作り置きの順に優先度を設定し、この優先度に合わせて各操作が行われるよう、以下に説明するように運転操作の決定パターンを設定する(夜間においては、各操作を実行頻度順に並べた場合、ここに示したような順序となることが実際、経験的に多い)。さらに、指定された時刻に掘り出しの操作を行う。
まずステップS17で、運転操作残数がゼロであるかを判定する。運転操作残数が1以上である場合、ステップS18に進み、ごみピット1内にある未破袋のごみDに対して破袋の操作を行う。
続いて、ホッパ3へのごみDの移送が必要か否かの判定を行う(ステップS19)。不要であれば、ステップS18に戻って破袋の操作を行う。ステップS19において移送が必要と判断されたら、破袋されたごみDをホッパ3へ移送する(ステップS20)。
移送後、さらに運転操作残数に関する判定を行う(ステップS21)。運転操作残数が1以上であった場合は、残数を1減じ(ステップS22)、ステップS23に移る。ステップS21において運転操作残数がゼロであった場合は、そのままステップS23に移る。
ステップS23では、掘り出しを行う指定時刻として予め設定された時刻を経過したか否かを判断する。指定時刻を経過していなければ、ステップS1(図10参照)に戻る。指定時刻を経過していた場合、さらに掘り出しフラグがオフになっているか否かを判断する(ステップS24)。掘り出しフラグがオンであった場合は、直近の指定時刻が経過した後に掘り出しが行われているので、掘り出しはせずにステップS1に戻る。ステップS24にて掘り出しフラグがオフであった場合は、掘り出しの操作を行い(ステップS25)、掘り出しフラグをオンにしたうえで(ステップS26)、ステップS1に戻る。
尚、上述の「指定時刻」としては、例えば0時から24時までのいずれかの時刻を1以上設定しても良いし、あるいは「n時間おき」といった周期の形で設定してもよい。いずれにしても、指定時刻の設定と掘り出しフラグのオンオフを併用することで、定期毎に、且つ昼間運転モードの場合を避けて、掘り出しの操作が行われることになる。
ステップS17において、運転操作残数がゼロであった場合は、ステップS27に進む。ステップS27では、比較的燃えにくいごみDが多い区画があるか否かを判定する。ステップS27の判定がYESの場合は、その区画のごみDを他の区画に少しずつ移動する撹拌の操作を行う(ステップS28)。ステップS27の判定がNOであった場合はステップS29に進み、草木類のごみDが多い区画があるか否かを判定する。ステップS29の判定がYESの場合はステップS28に進み、該当の区画に対し撹拌の操作を行う。ステップS28が済んだら、運転操作残数を予め設定された任意の数mに設定する(ステップS30)。ステップS30が済んだら、撹拌済のごみDを特定の区画に積む作り置きの操作を行い(ステップS31)、ステップS23に進む。
ステップS29における判定がNOの場合はステップS18に進み、必要に応じて破袋の操作を行い、ステップS19以降へ進む。
このように、運転操作の選択にあたり、機械学習に基づいたモデルを使用せず、手動操作における運転パターンに準じて設定したパターンに基づいて運転操作の選択を自動的に実行することもできる。尚、図10~図12のフローチャートはあくまで簡易的に示した一例であって、必要に応じて他の操作を組み込んだり、操作の要否や優先順位等を適宜変更することも可能である。
以上のように、上記本実施例は、ごみピット1内に貯留されたごみDをホッパ3に移送するごみクレーンを備え、掘り出しを含む複数の操作からいずれかを実行するよう構成されていることを特徴とするごみクレーンの運転システムにかかるものである。このようにすれば、掘り出しを含むごみクレーン2の運転を自動で実行することができる。
また、本実施例のごみクレーンの運転システムは、以下の運転操作から選択される複数の操作からいずれかを実行するよう構成されている。
・移送
・破袋
・撹拌
・作り置き
・移し替え
・接近回避
・掴み直し
・掘り出し
また、本実施例のごみクレーンの運転システムは、ごみピット1に設けられた搬入口1aへのごみDの搬入の可不可を表示する信号機8を備え、前記各運転操作、および搬入抑制の操作から選択される複数の操作からいずれかを実行するよう構成されている。このようにすれば、搬入抑制を含むごみクレーン2の運転を自動で実行することができる。
また、本実施例のごみクレーンの運転システムにおいて、運転操作の決定は、以下のパラメータから選択される複数のパラメータを入力変数として運転操作を決定するモデルを用いて行うようになっている。このようにすれば、運転員の記憶に頼らず、履歴の古い箇所のごみに対して確実に掘り出し操作を実行することができる。
・ごみピット1内の各区画に貯留されたごみDの種類
・ごみピット1内の各区画に貯留されたごみDの高さ
・ごみピット1内の各区画に割り当てられた機能
・ホッパ3内におけるごみの高さ
・ごみクレーン2のバケット2aの荷重
・ごみピット1の搬入口1aの開閉状態
・月または季節
・曜日
・時刻
・搬入口1aからのごみの搬入履歴
・ごみクレーン2の運転操作履歴
また、本実施例のごみクレーンの運転システムにおいて、掘り出しの操作は、ごみDの搬入履歴と、ごみクレーン2の運転操作履歴から、搬入された時刻、または最後に操作の行われた時刻のうち、新しい方の時刻が最も古いブロックを特定し、該当するブロックにあたる区画のごみDを掘り出すことによって行うことができる。このようにすれば、履歴に基づいて掘り出しの操作を実行するにあたり、履歴の最も古いブロックを簡便に特定することができる。
また、本実施例のごみクレーンの運転システムは、掘り出しの操作を定期的に行うよう構成することができる。このようにすれば、その時々における履歴の古いごみDに対し定期的に掘り出しを実行することができる。
また、本実施例のごみ処理施設は、上述のごみクレーンの運転システムを備えている。
したがって、上記本実施例によれば、貯留時間によるごみの質の偏りを簡便に是正し得る。
尚、本発明のごみクレーンの運転システムおよびごみ処理施設は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
1 ごみピット
1a 搬入口
2 ごみクレーン
2a バケット
3 ホッパ
8 信号機
D ごみ

Claims (6)

  1. ごみピット内に貯留されたごみをホッパに移送するごみクレーンを備え、
    掘り出しを含む複数の運転操作からいずれかを実行するよう構成され
    掘り出しの操作は、ごみの搬入履歴と、前記ごみクレーンの運転操作履歴から、搬入された時刻、または最後に操作の行われた時刻のうち、新しい方の時刻が最も古いブロックを特定し、該当するブロックにあたる区画のごみを掘り出すことによって行われることを特徴とするごみクレーンの運転システム。
  2. 以下の運転操作から選択される複数の運転操作からいずれかを実行するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のごみクレーンの運転システム。
    ・移送
    ・破袋
    ・撹拌
    ・作り置き
    ・移し替え
    ・接近回避
    ・掴み直し
    ・掘り出し
  3. 前記ごみピットに設けられた搬入口へのごみの搬入の可不可を表示する信号機を備え、前記各運転操作、および搬入抑制の操作から選択される複数の運転操作からいずれかを実行するよう構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のごみクレーンの運転システム。
  4. 運転操作の決定は、以下のパラメータから選択される複数のパラメータを入力変数として運転操作を決定するモデルを用いて行われることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のごみクレーンの運転システム。
    ・前記ごみピット内の各区画に貯留されたごみの種類
    ・前記ごみピット内の各区画に貯留されたごみの高さ
    ・前記ごみピット内の各区画に割り当てられた機能
    ・前記ホッパ内におけるごみの高さ
    ・前記ごみクレーンのバケットの荷重
    ・前記ごみピットの搬入口の開閉状態
    ・月または季節
    ・曜日
    ・時刻
    ・搬入口からのごみの搬入履歴
    ・ごみクレーンの運転操作履歴
  5. 掘り出しの操作を定期的に行うよう構成された、請求項1~のいずれか一項に記載のごみクレーンの運転システム。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載のごみクレーンの運転システムを備えたことを特徴とするごみ処理施設。
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