JP7359506B1 - 木構造耐力壁、木構造耐力壁の施工方法、木構造耐力壁の壁倍率増大方法、及び、石膏系耐力面材 - Google Patents

木構造耐力壁、木構造耐力壁の施工方法、木構造耐力壁の壁倍率増大方法、及び、石膏系耐力面材 Download PDF

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Abstract

補強材又は補剛材を付加的に取付けることなく、石膏系面材の比重及び/又は板厚を増大することもなく、木構造耐力壁の壁倍率を増大する。木構造耐力壁用の石膏系耐力面材10は、500N以上のくぎ側面抵抗を発揮するように無機質繊維及び有機系強度向上材を配合した板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから構成される。この耐力面材は、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度および6.5N/mm2以上の圧縮強度を有し、耐力壁の面内せん断試験において、20×10-3radよりも大きい終局変位(δu)および2.0kN/10-3rad以上の初期剛性(K)を発揮し、終局変位の増大だけでなく、降伏点変位(δv)の低減によっても塑性率(μ)を増大し、これにより、木構造耐力壁の壁倍率及び短期基準せん断耐力(P0)を効果的又は効率的に増大する。

Description

本開示は、木構造耐力壁、木構造耐力壁の施工方法、木構造耐力壁の壁倍率増大方法、及び、石膏系耐力面材に関する。より詳細には、釘(くぎ)側面抵抗を増大し、且つ面密度を低下した比較的低密度の石膏系耐力面材を用いるとともに、金属板等の補強材又は補剛材を付加的に取付けることなく、釘打ち部分の破壊又は破断等の作用を効果的に軽減し得る、木構造耐力壁、木構造耐力壁の施工方法、木構造耐力壁の壁倍率増大方法、及び、木構造耐力壁用の石膏系耐力面材に関する。
一般に、木構造建築物の工法は、木造軸組工法及び木造枠組壁工法に大別される。近年の大規模地震等の影響により、木構造建築物の耐震性等に関する研究が、我が国(日本国)において近年殊に注目されている。特許文献1(国際公開公報WO2019/203148A1)に記載される如く、我が国(日本国)における建築設計の実務においては、短期水平荷重(地震力、風圧等)に抗する木構造建築物の強度を示す指標として、構造耐力上有効な耐力壁の軸組長さ(建築平面図における壁の長さ)が一般に使用される。軸組長さの算定には、耐力壁の構造に相応した壁倍率が用いられる。壁倍率は、耐力壁の耐震性能又は耐力性能の指標であり、その数値が大きいほど、耐震強度が大きい。壁倍率の数値が大きい壁構造は、建築物全体の設計自由度及び耐震性を向上する上で有利である。
長年に亘って我が国(日本国)で使用されてきた汎用の木構造耐力壁の壁倍率は、建築基準法施行令第46条、建設省告示第1100号(昭和56年6月1日)および国土交通省告示第1541号(平成13年10月15日)に規定されている。他方、このような汎用の壁構造に属しない近年の多くの耐力壁については、建築基準法施行令第46条第4項表1(八)に規定された国土交通大臣の認定に基づいて壁倍率を定める必要がある。このため、近年施工される比較的多くの木構造耐力壁の壁倍率は、指定性能評価機関が実施する性能試験に基づいて壁倍率を設定する必要があり、この性能試験の試験方法等は、各試験・検査機関が公表している「木造の耐力壁及びその倍率 性能試験・評価業務方法書」等に詳細に記載されている。
特許文献1には、耐力壁の終局変位等を増大して壁倍率を向上する対策として、金属板等の補強材又は補剛材を釘打ち部分に配設し、釘打ち部分の破壊又は破断等を防止する面材補強方法が記載されている。このような補強材又は補剛材を使用した木構造耐力壁によれば、面材が耐え得る最大荷重の増大等に依存することなく、耐力面材の靱性及び変形追随性の向上によって終局変位等が増大し、比較的高い壁倍率を発揮する木構造耐力壁を構築することが可能になると考えられる。しかしながら、このような補強材又は補剛材を用いて終局変位等を増大させる構成の耐力壁構造によれば、補強材又は補剛材を耐力面材の表面に付加的に取付ける工程を面材製造プロセスに追加し、或いは、このような工程を木構造耐力壁の施工時に付加的に実施しなければならない。この種の工程は、石膏系面材の製造プロセスを煩雑化させ、或いは、建設工事の作業性を悪化させる要因となり得る。
他方、木構造耐力壁の耐力面材として好適に使用可能な石膏系面材として、「構造用石膏ボード」が知られている。「構造用石膏ボード」は、特許第5642948号掲載公報(特許文献2)に記載された本出願人の技術に基づき、「強化石膏ボード」の釘側面抵抗を強化した石膏系面材である。釘側面抵抗は、JIS A 6901に定められた釘側面抵抗試験によって測定された面材の釘打部分のせん断耐力又はせん断強度である。釘側面抵抗については、本出願人の出願に係る特許第7012405号掲載公報(特許文献3)に比較的詳細に記載されているので、更なる詳細な説明については省略するが、釘側面抵抗は、本出願人が特許文献2において石膏系耐力面材の耐力判定要素として提唱した物性であり、本出願人が近年殊に注目している耐力因子の一つである。
構造用石膏ボード(GB-St)は、(普通)石膏ボード(GB-R)に比べて耐力面材としての耐力が全体的に向上するとともに、強化石膏ボード(GB-F)に比べて釘側面抵抗が向上した石膏系面材である。構造用石膏ボードは、現状では、750N以上(A種)又は500N以上(B種)の釘側面抵抗を有する石膏系面材として、JIS A 6901に規定されている。構造用石膏ボードを耐力面材として使用した木構造耐力壁は、(普通)石膏ボード又は強化石膏ボードを耐力面材として使用した木構造耐力壁に比べ、比較的高い壁倍率を発揮する。他方、構造用石膏ボードは、強化石膏ボードと同様、12.5mm以上の厚さと、0.75以上の比重とを必要とする。このため、構造用石膏ボードを固定した木構造耐力壁は、少なくとも約9.4kg/m2の面密度又は面重量(壁面の単位面積当りの耐力面材の質量(以下、「面密度」という。))を要する。
特許文献3(特許第7012405号掲載公報)には、構造用石膏ボードと同等の短期基準せん断耐力(P0)を耐力壁に与えるが、構造用石膏ボードに比べて面密度が低下した石膏系耐力面材が記載されている。特許文献3に記載された石膏系面材は、500N以上の釘側面抵抗を発揮するように無機質繊維及び有機系強度向上材を配合した板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから構成され、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度を有する。特許文献3の石膏系面材は、板厚12mm未満であっても、比較的高い壁倍率を耐力壁に与えることができる。この石膏系面材は、構造用石膏ボード等の従来の石膏系耐力面材に比べ、面密度を低下して面材を軽量化する一方、降伏耐力の低下を比較的高い釘側面抵抗によって抑制することを意図して開発された耐力面材(以下、「低密度石膏系耐力面材」という。)である。この低密度石膏系耐力面材によれば、耐力壁の終局変位を増大させて耐力壁の塑性率を増大させ、これにより、耐力壁の壁倍率を増大させることができるので、木構造耐力壁としての所望の耐力とその軽量性及び施工性等とを両立させるといった観点から、実用的に極めて有利な石膏系耐力面材を提供することが可能になる。
尚、本明細書において、「石膏系耐力面材」の用語は、JIS A 6901(「せっこうボード製品」)に規定された(普通)石膏ボード、強化石膏ボード及び構造用石膏ボードだけでなく、上記低密度石膏系耐力面材(特許文献3)や、特許第6412431号掲載公報(特許文献4)に記載された石膏系耐力面材等の如く、石膏を主材とした石膏コア部分(芯材部分)の外面又は外層を石膏ボード用原紙等の紙部材で被覆してなる石膏系面材を包含する用語として記載したものである。
国際公開公報WO2019/203148A1 特許第5642948号掲載公報 特許第7012405号掲載公報 特許第6412431号掲載公報
木造軸組工法住宅の許容応力度設計[1](2017年版)、第63頁及び第300頁
本発明者等は、特許文献3において提案された低密度石膏系耐力面材を用いた耐力壁に関し、壁倍率を更に増大させるべく、上記性能試験を繰り返し実施した結果、パンチングシェア現象によるパンチングアウト破壊や、縁切れ等の現象を防止することにより、更なる壁倍率の増大が可能であることを認識した。パンチングアウト破壊等の釘打ち部分の破壊又は破断等は、例えば、特許文献1に記載された面材補強方法の如く、金属板等の補強材又は補剛材を釘打ち部分に配設することによって防止し得ると考えられる。
しかしながら、前述のとおり、このような補強材又は補剛材を耐力面材の表面に付加的に取付ける工程を面材製造プロセスに追加し、或いは、このような工程を木構造耐力壁の施工時に付加的に実施した場合、石膏系面材の製造プロセスが煩雑化し、或いは、建設工事の作業性が悪化する事態が生じると想定される。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、釘側面抵抗が増大し、且つ面密度が低下した低密度石膏系耐力面材を使用する木構造耐力壁及びその施工方法において、金属板等の補強材又は補剛材を付加的に取付けることなく、パンチングシェア現象を抑制し又はパンチングアウト破壊の作用を軽減し、これにより、釘打ち部分の破壊又は破断等を抑制し又はその作用を軽減して壁倍率を更に増大させることができる、木構造耐力壁とその施工方法、木構造耐力壁の壁倍率増大方法、及び、石膏系耐力面材を提供することにある。
本開示は、上記目的を達成すべく、石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に対して留め具によって留付けた構造を有する木構造耐力壁において、
前記耐力面材は、板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、該主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから構成され、
前記耐力面材は、壁面の単位面積当りの質量として特定される該耐力面材の面密度又は面重量として、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度又は面重量を有するとともに、500N以上の釘側面抵抗を発揮し、且つ、少なくとも6.5N/mm2以上の圧縮強度を保有しており、
前記留め具は、頭部及び胴部を有し、頭部の面積/胴部の断面積の面積比を6~13の範囲内の値に設定した金属製の釘からなり、
壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位として、20×10-3radよりも大きい値の終局変位(δu)を有することを特徴とする、木構造耐力壁を提供する。
本開示は又、石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に固定する木構造耐力壁の施工方法において、
板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、該主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから構成される石膏系耐力面材であって、壁面の単位面積当りの質量として特定される面密度又は面重量として、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度又は面重量を有するとともに、500N以上の釘側面抵抗を発揮し且つ少なくとも6.5N/mm2以上の圧縮強度を有する石膏系耐力面材を前記木構造壁下地に対して留め具によって留付け、該留め具として、頭部の面積/胴部の断面積の面積比を6~13の範囲内の値に設定した金属製の釘を使用し、
壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位(δu)として、20×10-3radよりも大きい値の終局変位を発揮する木構造耐力壁を構築することを特徴とする、木構造耐力壁の施工方法を提供する。
好ましくは、上記釘は、6.0~10.0mmの範囲内の頭径及び2.0~5.0mmの範囲内の胴径を有する。より好ましくは、釘は、6.8~9.0mmの範囲内の頭径及び2.2~4.2mmの範囲内の胴径を有し、頭部の面積/胴部の断面積の面積比(以下、「頭面積/胴断面積の面積比」という。)は、7~11の範囲内の値に設定される。好適には、上記釘の胴部は、均一な円形横断面を有するストレート・スムース形の胴部であり、尖塔形の先端部を備えており、上記釘の頭部は、頂面視円形輪郭を有する平頭フラット形又は平頭網目付き形の頭部であり、釘打ち作業によって上記耐力面材の外面に着座する環状且つ平坦な着座面と、上記耐力面材の外面が構成する壁面と実質的に同じ面内に釘打ち後に位置するように施工される平坦な頂面とを有する。
好ましくは、石膏系耐力面材は、無機質繊維及び有機系強度向上材を主材又は芯材に混入して石膏系耐力面材としての最低限度の物性(くぎ側面抵抗:500N以上)を確保する一方、面材の面密度はむしろ低減され、比較的低い値(6.5~8.9kg/m2)に設定される。例えば、無機質繊維の配合量は、焼石膏100重量部当り0.3~5重量部、好ましくは2~4重量部である。配合される無機質繊維として、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。ガラス繊維を用いる場合には、径が5~25μm、長さが2~25mmのガラス繊維を好適に使用し得る。また、有機系強度向上材の配合量は、焼石膏100重量部当り、0.3~15重量部、好ましくは1~13重量部である。有機系強度向上材として、例えば、澱粉、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル等を好適に使用し得る。澱粉としては、未加工澱粉及び加工澱粉のいずれをも使用することができる。加工澱粉としては、物理的処理、化学的処理又は酵素的処理を施した澱粉が挙げられる。物理的処理を施した澱粉としては、α化澱粉を好適に使用し得る。化学的処理を施した澱粉としては、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化澱粉を好適に使用し得る。
尚、以下の本明細書の記載において、「石膏系耐力面材としての最低限度の物性」は、500N以上のくぎ側面抵抗を意味するものとする。また、石膏系耐力面材の圧縮強度を変動させる要因として、石膏スラリー(泥漿)の混練状態(混練時間、混練温度等)、石膏原料中に含まれる不純物の種類・量、石膏コアの断面性状、緻密性及び均一性等、石膏コアに含まれる気泡の量、サイズ及び分散状態、石膏コアの含水率又は含水量、石膏コアの比重などが知られている。これらの要因は、圧縮強度を増大又は低減する制御因子として使用し得るかもしれないが、製造条件(石膏原料の種類、泡剤等の添加剤の種類・使用量、混練水の水温、気温・湿度等)と密接に関連する制御因子であるばかりでなく、石膏コアの品質全般に関係しており、比較的低い面密度(6.5~8.9kg/m2の範囲内に面密度)において、所望の圧縮強度(6.5N/mm2以上の圧縮強度)を石膏系耐力面材に与え、しかも、無機質繊維と協働して所望の釘側面抵抗(500N以上の釘側面抵抗)を石膏系耐力面材に与えるという特定の用途に特化して使用し得る性質の制御因子ではない。他方、上記有機系強度向上材は、このような用途に特化して使用することができ、しかも、製造過程において石膏スラリーに付加的に含有せしめればよいので、石膏コアの圧縮強度を増大させる現実的且つ有効な手段を提供する。
本開示に係る石膏系耐力面材の面密度の値(6.5~8.9kg/m2)は、構造用石膏ボード等の従来の石膏系耐力面材の面密度(約9.4kg/m2)よりもかなり小さな値である。このような面密度によれば、石膏系耐力面材の比重及び/又は板厚を低減し、これにより、耐力壁の自重を軽減し又は壁厚を低減することができる。他方、このような面密度の低減は、耐力壁の短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を増大する従来の壁倍率増大方法(即ち、比重及び/又は板厚の増大によって最大耐力(Pmax)を増大させ、これにより、短期基準せん断耐力(P0)を増大させる従来の壁倍率増大方法)とは相反する条件である。しかしながら、特許文献3に記載したとおり、石膏系耐力面材としての最低限度の物性(くぎ側面抵抗:500N以上)を確保しつつ面密度を低下させると、石膏系耐力面材が潜在的に保有する靱性及び変形追随性が塑性域において顕在化する結果、耐力壁の終局変位(δu)及び塑性率(μ)がむしろ増大し、これにより、耐力壁の終局耐力(補正値)(Pu')が増大するので、必ずしも最大耐力(Pmax)を増大させることなく、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率が増大し得る。
更に、本発明者等は、石膏系耐力面材の圧縮強度の増大によって耐力壁の初期剛性(K)が増大する現象を多くの実験により知見し、かかる知見に基づき、鋭意研究を重ねた結果、石膏系耐力面材の圧縮強度を6.5N/mm2以上の値に増大させて耐力壁の初期剛性(K)を増大せしめ、これにより、耐力壁の終局変位(δu)を大きく低下させることなく、その降伏点変位(δv)を低下させ、この結果、塑性率(μ)が比較的大きく増大し得ることを認識するに至った。
即ち、本開示によれば、石膏系耐力面材の圧縮強度を6.5N/mm2以上の値に増大させて耐力壁の初期剛性(K)を(好ましくは)2.0kN/10-3rad以上の値に増大せしめ、これにより、降伏点変位(δv)の値を例えば7.2×10-3rad以下の値に低減させることで、比較的高い終局変位(δu)の値と相俟って、塑性率(μ)の値を比較的大きく増大させることができ、この結果、終局耐力補正値(Pu')として、例えば、7.7kN以上の値を比較的容易に確保することができる。
ちなみに、特許文献3の低密度石膏系耐力面材を用いた耐力壁では、初期剛性(K)は、2.0kN/10-3rad未満の値(例えば、1.9kN/10-3rad)である。尚、前述の構造用石膏ボードは、加振時に生じ得る石膏系耐力面材と留め具との相対位置の変化に起因した石膏系耐力面材の引裂破壊を抑制すべく、釘側面抵抗という耐力因子に着目し、釘側面抵抗を所望の如く増大させるべく開発された石膏系耐力面材であり、上記特許文献3の低密度石膏系耐力面材は、所望の釘側面抵抗を確保しつつ面密度を低下させることにより、塑性域における石膏系耐力面材の靱性及び変形追随性を顕在化して塑性率(μ)及び終局耐力(補正値)(Pu')を増大せしめることを意図したものであり、いずれも、石膏系耐力面材の圧縮強度や、弾性域において生じる初期剛性を耐力向上因子として着目し又は考慮したものではなく、耐力壁の初期剛性と石膏系耐力面材の圧縮強度との構造的関係について検討し又は研究したものでもなかった。
他方、本発明者等の実験によれば、面密度の増大によって圧縮強度は所望の如く増大し得るが、面密度を増大させると面材の自重が増大するだけでなく、終局変位が低下する傾向があることから、有機系強度向上材等による圧縮強度増大の作用を主に用いて圧縮強度を適切な値に増大させることが望ましい。即ち、本開示において、圧縮強度は、主として、適切な面密度の設定と、有機系強度向上材の配合等による圧縮強度増大の作用とによって所望の如く設定される。
好ましくは、面内せん断試験によって測定される耐力壁の降伏点変位(δv)として7.2×10-3rad以下の値を確保し、或いは、上記初期剛性(K)として2.2kN/10-3rad以上の値を確保し且つ上記降伏点変位(δv)として7.2×10-3rad以下の値を確保するべく、7.5N/mm2以上の上記圧縮強度を保有する。例えば、本開示に係る石膏系耐力面材において、降伏点変位(δv)=6.0×10-3rad、初期剛性(K)=2.5kN/10-3rad、終局耐力Pu=15.0kN、終局変位(δu)=30×10-3rad、塑性率(μ)=5.0、ばらつき係数β=1.0であると仮定すると、終局耐力(補正値)(Pu')は、9.0kNである。これに対し、仮に、前述の低密度石膏系耐力面材(特許文献3)と同様、初期剛性(K)=1.9kN/10-3rad(<2.0kN/10-3rad)に設定した場合には、終局耐力Pu=15.0、終局変位(δu)=30×10-3rad、ばらつき係数β=1.0であったとしても、降伏点変位(δv)=7.8×10-3rad、塑性率(μ)=3.8であり、終局耐力(補正値)(Pu')は、約7.7kNであるにすぎない。即ち、耐力面材の圧縮強度を増大させて初期剛性(K)が増大することにより、終局耐力(補正値)(Pu')が比較的大きく増大し、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を比較的大きく増大させることができる。
本開示において、上記圧縮強度は、好ましくは、7.5~13.0N/mm2の範囲内の値、より好ましくは、8.0N/mm2以上の値に設定し得る。また、本開示において、上記初期剛性は、好ましくは、2.2kN/10-3rad~4.0kN/10-3radの範囲内の値、より好ましくは、2.4kN/10-3rad以上の値に設定し得る。更に、本開示によれば、上記降伏点変位(δv)は、好ましくは、3.5×10-3rad~7.2×10-3radの範囲内の値、より好ましくは、6.5×10-3rad以下の値に設定し得る。
本開示の好適な実施形態に係る石膏系耐力面材を備えた耐力壁によれば、面内せん断試験によって測定される塑性率(μ)として4.2以上且つ10.0以下の値、好ましくは、4.3以上の値が得られ、面内せん断試験によって測定される降伏耐力(Py)として、7.7kN以上であって、しかも、上記終局耐力(補正値)(Pu')よりも大きい値、好ましくは、8.0kN以上の値が得られる。尚、本発明者等の実験によれば、初期剛性(K)が増大すると、降伏耐力(Py)も増大する傾向があり、従って、前述の低密度石膏系耐力面材(特許文献3)と同様、降伏耐力(Py)は一般に、終局耐力(補正値)(Pu')よりも大きいことが認められた。
かくして、本開示に係る石膏系耐力面材は、石膏系耐力面材としての最低限度の物性を確保しつつ、面密度の低下により、塑性域における石膏系耐力面材の靱性及び変形追随性が向上して終局耐力(補正値)(Pu')を増大させるだけでなく、初期剛性(K)の増大及び降伏点変位(δv)の低下により、終局耐力(補正値)(Pu')を更に増大させ、これにより、金属板等の補強材又は補剛材を付加的に取付けることなく、石膏系耐力面材の面密度を増大させることもなく、木構造耐力壁の短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を比較的大きく増大させることができる。また、本開示によれば、このような石膏系耐力面材を木構造壁下地に留付ける留め具として、頭面積/胴断面積の面積比を6~13の範囲内の値に設定した金属製の釘を使用し、これにより、金属板等の補強材又は補剛材を付加的に付設又は配設することなく、パンチングアウト破壊を効果的に抑制し又はその作用を軽減することができるので、石膏系耐力面材の上記作用と相俟って、木構造耐力壁の短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を更に効果的又は効率的に増大させることができる。更には、上記耐力面材は、構造用石膏ボードや、前述の低密度石膏系耐力面材(特許文献3)と同様、主材又は芯材の少なくとも表裏面が紙部材で被覆されているので、従来の石膏ボード製造ラインで簡易に製造することができる。好ましくは、本開示の石膏系耐力面材は、芯材の表面又は表層を石膏ボード用原紙で被覆してなる積層構造を有する。尚、「表裏面」は、面材の端縁及び側縁(即ち、四周外縁部)の端面又は側面を除く面材の表面及び裏面を意味する。
好ましくは、上記石膏系耐力面材の板厚は、7.5mm以上12mm未満の値(より好ましくは、8.5mm以上且つ10mm以下の値)、例えば、9.5mm又は9.0mmに設定される。このような板厚の石膏系耐力面材は、12mm以上の板厚を要する構造用石膏ボードに比べ、木構造耐力壁の壁厚低下等を図る上で有利である。所望により、上記石膏硬化体は、980N以下の釘側面抵抗を有する。
好適には、上記石膏系耐力面材は、壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される耐力壁の終局変位(δu)として、24×10-3rad以上(好ましくは、26×10-3rad以上)の終局変位(δu)を耐力壁に生じさせる。比較的高い値に設定された終局変位(δu)の値は、耐力壁の初期剛性(K)の増大及び降伏点変位(δv)の低下と相俟って、塑性率(μ)の値を比較的大きく増大させるので、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を増大させる上で極めて有利である。尚、耐力壁の終局変位(δu)は、塑性域における耐力壁の靱性及び変形追随性を示す指標である。「木造の耐力壁及びその倍率 性能試験・評価業務方法書」によれば、面内せん断試験において1/15radを超えても荷重が低下せず、終局変位の値が得られない場合には、終局変位(δu)は1/15radに設定される。従って、終局変位(δu)の最大値は、1/15rad(66.7×10-3rad)である。
好ましくは、上記石膏系耐力面材の比重は、0.65~0.96の範囲内、好適には、0.7~0.9の範囲内の値(より好適には、0.7~0.8の範囲内の値)に設定される。このような比重の石膏系耐力面材によれば、例えば、板厚は12mm未満であるが、1.0以上の比重を有し、従って、自重が比較的大きい特許文献4の石膏系面材の実施品(例えば、吉野石膏株式会社製「EXボード」(商品名))に比べ、面材を軽量化することができるので、木構造耐力壁の軽量化を図り、或いは、木構造耐力壁の施工性又はその建設作業の作業性等を改善する上で有利である。
また、本開示の好適な実施形態において、石膏系耐力面材の芯材(石膏コア部分)は、主として耐力劣化を防止する耐力劣化防止剤として、オルガノポリシロキサン化合物を含有する。このような耐力面材によれば、特許文献4に記載された石膏系耐力面材と同様、木造外壁の屋外壁面に施工可能な上記耐力面材を提供することができる。
他の観点より、本開示は、石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に対して留め具によって留付けることにより施工される、木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、該主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから前記耐力面材を構成し、
壁面の単位面積当りの質量として特定される前記耐力面材の面密度又は面重量を6.5~8.9kg/m2に低減するとともに、前記耐力面材が500N以上の釘側面抵抗及び6.5N/mm2以上の圧縮強度を発揮するように、前記主材又は前記芯材の石膏硬化体の配合を設定し、
前記留め具として、頭部の面積/胴部の断面積の面積比を6~13の範囲内の値に設定した金属製の釘を使用して、パンチングシェア現象を抑制し又はパンチングアウト破壊の作用を軽減し、
壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位(δu)として、20×10-3radよりも大きい値の終局変位を得ることを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法を提供する。
このような壁倍率増大方法によれば、石膏系耐力面材の面密度を比重及び/又は板厚の低減により低下させ、これにより、耐力壁の自重を軽減し又は壁厚を低減することが可能になる。しかも、このような壁倍率増大方法によれば、前述のとおり、石膏系面材の低密度化によって石膏系面材の(塑性域の)靱性及び変形追随性が向上して終局変位(δu)の値が増大するばかりでなく、石膏系面材の圧縮強度の増大により、耐力壁の初期剛性(K)が増大し、これにより、降伏点変位(δv)の値が低減する。この結果、比較的小さい降伏点変位(δv)の値と、比較的大きい終局変位(δu)の値との相乗効果により、塑性率(μ=δu/δv)の値が比較的大きく増大し、かくして、木構造耐力壁における終局耐力(補正値)(Pu')として、7.7kN以上の値を比較的容易に確保することができる。
本開示は更に、前述の施工方法において使用され、或いは、上記壁倍率増大方法において使用され、木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に対して前記留め具によって留付けられる木構造耐力壁用の石膏系耐力面材であって、
500N以上の釘側面抵抗を発揮し且つ少なくとも6.5N/mm2以上の圧縮強度を保有するとともに、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度又は面重量を有し、
前記留め具と協働して、壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位(δu)を20×10-3radよりも大きい値に増大せしめることを特徴とする、石膏系耐力面材を提供する。
本開示に係る石膏系耐力面材によれば、面密度が低減した低密度の石膏系耐力面材を用いて耐力壁の靱性及び変形追随性を向上させるとともに、この耐力面材を木構造壁下地に対して留め具によって留付けてなる耐力壁に関し、その初期剛性(K)を増大させて降伏点変位(δv)を低下せしめ、これにより、塑性率(μ=δu/δv)を増大させ、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を増大させることが可能になる。本開示に係る石膏系耐力面材は、殊に、終局変位(δu)の値を容易に増大させ難い耐力壁や、その上限に近い終局変位(δu)を既に発揮している耐力壁に関し、壁厚の増大や壁体自重の増大等を招くことなく、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を更に増大させるための耐力面材として、効果的に使用し得る。しかも、本開示の石膏系耐力面材は、主材又は芯材の少なくとも表裏面が紙部材で被覆されているので、従来の石膏ボード製造ラインで簡易に製造することができる。
このような石膏系耐力面材を備えた本開示の木構造耐力壁及びその施工方法、更には、このような石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に対して留め具によって留付けることをその構成とした木構造耐力壁の壁倍率増大方法によれば、特定の寸法及び形状(頭径D、胴径d、及び頭面積/胴断面積の比η)を有する金属製の釘を留め具として用いることにより、石膏系耐力面材のパンチングアウト破壊を効果的に抑制し又はその作用を軽減し、これにより、短期許容せん断耐力(Pa)及び壁倍率を比較的大きく改善し得る。即ち、本開示によれば、木構造耐力壁及びその施工方法、更には、木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、金属板等の補強材又は補剛材を付加的に取付けることなく、石膏系面材の面密度(比重及び/又は板厚)を増大させることもなく(従って、耐力壁の自重及び/又は壁厚を増大させることもなく)、しかも、終局変位(δu)の値を更に増大させることもなく、耐力壁の短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を更に増大させることができる。
また、本開示に係る木構造建築物の耐力壁構造又はその施工方法、或いは、耐力壁施工方法によれば、このような石膏系耐力面材を木構造耐力壁において耐力面材として使用することにより、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を低下させることなく(或いは、効果的に増大させるとともに)、石膏系耐力面材の面密度を低減し、これにより、耐力壁の自重を軽減し又は壁厚を低減し、或いは、耐力壁の施工性等を改善することができる。
更に、本開示に係る木構造建築物の耐力壁構造又はその施工方法、或いは、壁倍率増大方法によれば、初期剛性(K)を増大させて降伏点変位(δv)を低下せしめ、これにより、終局耐力(補正値)(Pu')を増大させ、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率を増大させることができるので、石膏系面材に付加的に設けられる金属板等の補強材又は補剛材による補強又は補剛に依存することなく、石膏系面材の比重及び/又は板厚の増大に依存することもなく、しかも、終局変位(δu)の値の増大に大きく依存することもなく、壁倍率を増大させることが可能になる。
本開示に係る木構造建築物の耐力壁の実施形態を概略的に示す正面図である。 釘によって石膏系耐力面材を木構造軸組に固定した部分を部分拡大して示す耐力壁の部分断面図及び部分破断斜視図である。 図1に示す耐力壁構造体の面内せん断試験において使用された耐力壁試験体の構成を示す正面図、横断面図及び側面図である。 任意の木構造耐力壁の面内せん断試験によって得られる荷重-変形角曲線の包絡線(実線で示す)を参考として示す線図であり、荷重-変形角曲線の包絡線を完全弾塑性モデルの荷重-変形角特性に変換した線形グラフを一点鎖線で示す図である。 本開示の実施例に係る耐力壁を構成する釘と、石膏系耐力面材を木構造の軸組又は枠組に留付けるために従来より使用されてきた二種類の釘とに関し、頭径、胴径、及び頭面積/胴断面積の面積比を示す図表である。 図5に示す従来の二種類の釘(比較例1、2)を用いた木構造耐力壁に関し、面内せん断試験の試験結果を対比して示す図表及び線図である。 図5に示す従来の釘(比較例3)を用いた木構造耐力壁と、図5に示す本実施例の釘を用いた木構造耐力壁とに関し、面内せん断試験の試験結果を対比して示す図表及び線図である。 本開示を構成する石膏系耐力面材の物性、組成及び耐力試験結果を参考例1~4として示すとともに、比較例4に係る石膏系耐力面材の物性、組成及び耐力試験結果を示す図表である。 参考例1~4及び比較例4に関し、耐力壁構造体の面内せん断試験の試験結果を完全弾塑性モデルの荷重-変形角特性として示す線図である。 石膏系耐力面材の圧縮強度を測定する圧縮強度測定方法を概念的に示す圧縮強度試験装置の部分正面図である。
以下、添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態に係る木構造耐力壁の構成について詳細に説明する。
[木構造耐力壁の全体構成について]
図1は、本開示の好適な実施形態に係る木構造建築物の耐力壁の構成を概略的に示す正面図である。また、図2の(A)及び(B)はそれぞれ、図1に示す耐力壁に関し、釘によって石膏系耐力面材を木造軸組に固定した耐力壁の部分を部分拡大して示す耐力壁の部分断面図及び部分破断斜視図である。
図1に示す木構造耐力壁1は、石膏系耐力面材10を鉄筋コンクリート(RC)構造の布基礎F上の木造軸組に固定することによって構築された木造軸組構法の木構造耐力壁である。耐力面材10は、厚さ9.5mm、幅910mm及び高さ約2800~3030mm(例えば、約2900mm)の寸法を有し、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度(例えば、面密度7.5kg/m2)を有する。面密度(面重量とも呼ばれる)は、壁面の正面視における壁面の単位面積(見付面積)当りの質量(重量)である。図2に示す如く、耐力面材10は、所定量の無機質繊維(ガラス繊維)及び有機系強度向上材(澱粉)を混入した平板状石膏コア(石膏芯材)11と、石膏コアの両面を被覆する石膏ボード用原紙(紙部材)12とから構成された石膏系耐力面材である。
耐力壁1は、アンカーボルトBによって布基礎Fの上面に固定された土台2を有する。耐力壁1は、この土台2と、土台2上に所定間隔を隔てて鉛直に配置された柱3、間柱4及び継手間柱4’と、柱3の上端(又は中間部)に支持された水平な横架材(梁、胴差、軒桁、妻桁)5と、上記耐力面材10とから概ね構成される。尚、軸組を構成する土台2、柱3、間柱4、継手間柱4’及び横架材5は、通常の木造建築物において採用される部材断面の木材(角材)である。
耐力面材10は、土台2、柱3、間柱4、継手間柱4’及び横架材5に対し、鉄製又はステンレス鋼製(本例では鉄製)の釘(くぎ)20によって固定される。釘20は、耐力面材10の四周外周帯域において間隔S1を隔てて配置されるとともに、鉛直方向に延びる耐力面材10の中央帯域において間隔S2を隔てて配置される。好ましくは、間隔S1は、50mm~200mmの範囲内の寸法(例えば、75mm)に設定され、間隔S2は、50mm~300mmの範囲内の寸法(例えば、150mm)に設定される。
図2に示す如く、釘20は、頂面視円形輪郭を有する平頭フラット形又は平頭網目付き形の頭部21と、均一な円形横断面を有するストレート・スムース形の胴部22と、胴部22の基端部に位置し、胴部22及び頭部21を一体的に連接する首部23と、胴部22の先端に位置する尖塔形の先端部24とから構成される鉄釘である。頭部21の下面は、耐力面材10の外面に着座する環状の着座面21bを構成する。首部23の外周部分は、局所的にテーパ状又は円錐状に若干拡径して頭部21に連続するので、着座面21bの径方向の寸法は、頭部21及び胴部22の径差とは必ずしも一致せず、径差よりも僅かに小さい値であるが、概ね径差と同等の値である。
一般に、釘20は、頭部21及び胴部22の材質及び形状の他、頭部21の直径(頭径D)、胴部22の直径(胴径d)及び釘20の全長(長さL)等によって特定される。本実施形態において、頭径D、胴径d及び長さLは夫々、7.07mm、2.45mm、約50mmであり、頭部21の頂面21aの見付面積と胴部22の横断面の面積との比η(即ち、頭面積/胴断面積)は、8.32である(図5参照)。本開示において、頭径Dは、好ましくは、6.0~10.0mmの範囲内、より好ましくは、6.8~9.0mmの範囲内の値に設定され、胴径dは、好ましくは、2.0~5.0mmの範囲内、より好ましくは、2.2~4.2mmの範囲内に設定される。また、頭面積/胴断面積の比ηは、好ましくは、6~13の範囲内、より好ましくは、7~11の範囲内の値に設定される。
耐力面材10の石膏コア11は、所定量の無機質繊維及び有機系強度向上材を含有し、500N以上の釘側面抵抗を有する。無機質繊維の配合量は、焼石膏100重量部当り0.3~5重量部、好ましくは2~4重量部である。配合される無機質繊維として、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。ガラス繊維を用いる場合には、径が5~25μm、長さが2~25mmのガラス繊維を好適に使用し得る。また、有機系強度向上材の配合量は、焼石膏100重量部当り、0.3~15重量部、好ましくは1~13重量部である。配合される有機系強度向上材として、例えば、澱粉、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル等が挙げられる。尚、澱粉としては、未加工澱粉及び加工澱粉のいずれも使用することができる。加工澱粉としては、物理的処理、化学的処理又は酵素的処理を施した澱粉が挙げられる。物理的処理を施した澱粉としては、α化澱粉を好適に使用し得る。化学的処理を施した澱粉としては、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化澱粉を好適に使用し得る。有機系強度向上材の配合は、比較的低い面密度(6.5~8.9kg/m2の範囲内に面密度)を確保しつつ、所望の圧縮強度(6.5N/mm2以上の圧縮強度)を耐力面材10に与えるとともに、無機質繊維と協働して耐力面材10の所望の釘側面抵抗(500N以上の釘側面抵抗)を達成し又は確保する効果的な手段であり、加えて、有機系強度向上材の配合が石膏系耐力面材の品質全般に大きく影響しないという点をも考慮すると、耐力面材10の釘側面抵抗を向上する上で、簡易で、しかも、現実的又は実務的に有効な手段である。
耐力面材10の組成及び構造は、JIS A 6901に規定された「構造用石膏ボード」の組成及び構造と類似する。しかしながら、耐力面材10の面密度は、6.5~8.9kg/m2の範囲内の値(例えば、7.5kg/m2)である。従って、耐力面材10は、前述のとおり9.4kg/m2以上の面密度を要するJIS A 6901の「構造用石膏ボード」とは基本的に相違する。また、JIS A 6901に規定された「強化石膏ボード」が知られているが、「強化石膏ボード」も又、9.4kg/m2以上の面密度を要するので、耐力面材10は、「強化石膏ボード」とも基本的に相違する。更に、耐力面材10は、500N以上の釘側面抵抗を発揮するように無機質繊維及び有機系強度向上材を配合した主材又は芯材(石膏コア11)を有する点において、この他の「石膏ボード」とも相違する。即ち、耐力面材10は、現行のJIS A 6901に規定されたいずれの「石膏ボード」にも該当しない。本明細書においては、この意味において、耐力面材10を「石膏系耐力面材」として特定し又は表現するものとする。
一般に、石膏硬化体からなる板状の主材又は芯材の表裏面を紙部材で被覆してなる石膏系耐力面材(「石膏ボード」「強化石膏ボード」及び「構造用石膏ボード」を含む)は、汎用の石膏ボード製造装置によって製造される。石膏ボード製造装置は、例えば、国際公開公報WO2019/058936に記載される如く、焼石膏、接着助剤、硬化促進剤、泡(又は泡剤)等の原料と、焼石膏のスラリー化に要する練り水とを混合して石膏スラリーを調製するミキサーを有する。石膏スラリーは、石膏ボード製造装置の搬送ベルト上の石膏ボード原紙(下紙)上に流し延べられ、石膏ボード原紙(上紙)が石膏スラリー上に積層される。かくして形成された帯状且つ3層構造の連続積層体は、石膏ボード製造装置を構成する粗切断装置、強制乾燥装置、裁断装置等の各装置によって加工され、所定寸法の石膏製品、即ち、石膏スラリーの硬化体(即ち、石膏コア)の両面を石膏ボード用原紙で被覆してなる石膏系面材に成形される。石膏系面材の比重は、主として、石膏スラリー中の泡の配合量によって調節される。
JIS A 6901に規定された構造用石膏ボード、強化石膏ボード及び(普通)石膏ボードを耐力面材として用いた木構造耐力壁に関し、前述の建設省告示第1100号に規定された木造軸組構造の大壁造の面材耐力壁の壁倍率を例示すると、以下のとおりである。
構造用石膏ボード(A種) 1.7
構造用石膏ボード(B種) 1.2
強化石膏ボード 0.9
(普通)石膏ボード 0.9
また、前述の国土交通省告示第1541号に規定された枠組壁工法耐力壁の壁倍率(たて枠相互間隔が50cmを超える耐力壁)を例示すると、以下のとおりである。
構造用石膏ボード(A種) 1.7
構造用石膏ボード(B種) 1.5
強化石膏ボード 1.3
(普通)石膏ボード 1.0
このように建設省又は国土交通省の告示に規定された壁倍率の値は、個別に性能試験を行うことなく一般に採用し得る値である。但し、耐力面材としての有効性を認められる構造用石膏ボード、強化石膏ボード及び(普通)石膏ボードは、12mm以上の板厚を有するものに限定される。このため、新規素材・組成の面材や、板厚12mm未満の石膏系面材を耐力面材として有効に使用する場合、或いは、上記の値とは異なる壁倍率を採用する場合には、前述の性能試験を実施して壁倍率の値を定める必要がある。
前述のとおり、JIS A 6901に規定された前述の構造用石膏ボード及び強化石膏ボードは、面密度9.4kg/m2以上且つ比重0.75以上の物性を要する。これは、面材が耐え得る最大荷重を増大させ、木構造耐力壁の高い短期許容せん断耐力(従って、高い壁倍率)を確保する上で重要な条件であると考えられてきた。殊に、強化石膏ボードよりも高い釘側面抵抗を発揮することを条件とした構造用石膏ボードにおいては、このような面密度及び比重は、低減し得ないものと考えられてきた。即ち、面密度9.4kg/m2以上、比重0.75以上の物性を確保することは、前述の面内せん断試験において得られる耐力壁試験体(木構造耐力壁)の壁倍率を更に増大させる上では必須の条件であると考えられていた。しかしながら、近年の本発明者等の実験により、無機系繊維や有機系強度向上材を添加することにより構造用石膏ボードに匹敵する物性(釘側面抵抗)を与えられた石膏系面材において、面材の板厚を低減し、或いは、泡量を調節して石膏コアの比重を低減し、これにより面密度を低減すると、面材自体が潜在的に保有する靱性又は変形追随性が顕在化し、この結果、耐力壁の終局耐力を有効に利用し且つ耐力壁の塑性率を増大することができ、かくして、耐力壁の短期許容せん断耐力を更に向上し得ることが判明した。この点については、上記特許文献3に詳細に記載したとおりであるが、以下、木構造耐力壁の面内せん断試験の概要について説明するとともに、耐力壁の終局耐力の増大による耐力壁の塑性率の増大と、これに伴う耐力壁の短期許容せん断耐力及び壁倍率の向上とに関し、その一般的事項を参考として説明する。
[木構造耐力壁の面内せん断試験の試験体について]
図3は、図1に示す耐力壁構造体に関する面内せん断試験において使用された耐力壁試験体の構成を示す正面図、横断面図及び側面図である。
図3において、図1及び図2に示す構成要素又は構成部材に相当又は相応する耐力壁試験体の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
本発明者等は、「木造の耐力壁及びその倍率 性能試験・評価業務方法書」に記載された試験体仕様に従って、図1に示す耐力壁構造の試験体として、図3に示す耐力壁構造を有する壁幅1820mm、高さ2730mmの耐力壁試験体(以下、単に「試験体」という。)を製作し、無載荷式試験装置を用いた面内せん断試験を実施した。
図3に示す試験体は、断面105×105mmのスギ製材の土台2及び柱3と、柱3によって支持された断面180×105mmのベイマツ製材の横架材5とからなる木造軸組の主要構造部を有する。柱3間の中央部には、断面45×105mmのスギ製材の継手間柱4’が立設され、柱3と継手間柱4’との間には、断面27×105mmのスギ製材の間柱4が立設される。スギ製材又はベイマツ製材の胴つなぎ5’が、柱3と間柱4との間に架設されるとともに、間柱4と継手間柱4’との間に架設される。試験用治具として、引き寄せ金物40が、土台2及び柱3の接合部に配設されるとともに、横架材5及び柱3の接合部に配設される。土台2、柱3、継手間柱4’、間柱4、横架材5及び胴つなぎ5’は、耐力壁構造の軸材を構成しており、これらの部材(軸材)によって矩形状の軸組が形成される。
図3に示す試験体において、土台2及び横架材5の鉛直離間距離h1、胴つなぎ5’の高さh2、胴つなぎ5’に対する横架材5の相対高さh3を夫々、h1=2625mm、h2=1790mm、h3=835mmに設定し、柱3及び継手間柱4’の間隔(柱芯間隔)w1を、w1=910mmに設定し、壁の長さLは、1.82mに設定した。面材10は、胴つなぎ5’によって上下に分割され、下側の面材10aは、幅910mm、高さ1820mmの寸法を有し、上側に配置された面材10bは、幅910mm、高さ865mmの寸法を有する。面材10a、10bのかかり代寸法h4、h5を、30mmに設定した。
図3に示す試験体において、面材10a、10bを土台2、柱3、継手間柱4’、横架材5及び胴つなぎ5’に留付けるための釘20を、面材10a、10bの縁部帯域全周に亘って等間隔(間隔S1=75mm)に配列した。面材10a、10bを間柱4に留付けるための釘20を、面材10a、10bの鉛直中央帯域に等間隔(間隔S2=150mm)に配列した。
[木構造耐力壁の短期許容せん断耐力及び壁倍率に関する説明(本開示の前提)]
図4は、任意の石膏系耐力面材を用いた面内せん断試験の試験結果を参考として示す説明用の図表及び線図であり、図4には、面内せん断試験によって一般に得られる荷重-変形角曲線が包絡線(実線で示す)として表示されている。図4を参照して、木構造耐力壁の面内せん断試験について説明するとともに、木構造耐力壁の短期許容せん断耐力及び壁倍率の求め方について説明する。
図4には、荷重-変形角曲線の包絡線を完全弾塑性モデルの荷重-変形角特性に変換した線形グラフが一点鎖線で示されている。完全弾塑性モデルは、初期剛性Kを示す線形弾性域の一次関数直線(Y=KX)と、降伏点σsからX軸と平行に延びる塑性変形域(塑性域)の直線(Y=Pu)とから構成される。降伏点σsは、弾性限界を示す。初期剛性Kは、弾性域の一次関数直線(Y=KX)の傾きを示す係数である。包絡線、X軸及びX=δuの各線分によって囲まれる領域の線図上の面積と、X軸、Y=KX、Y=Pu及びX=δuの各線分によって囲まれる領域の線図上の面積とは、等値である。尚、包絡線を完全弾塑性モデルに転換する手法は、「木造の耐力壁及びその倍率 性能試験・評価業務方法書」等の多くの文献に記載されており、材料力学上の周知事項でもあるので、その更なる説明については省略する。
図4には、最大耐力Pmax、0.8Pmax荷重低下域、終局耐力Pu、降伏耐力Py、終局変位δu、降伏点変位δv及び降伏変位δyが示されている。終局変位δu及び降伏点変位δvは夫々、0.8Pmax荷重低下域及び降伏点σsにおける変形角の値である。降伏変位δyは、降伏耐力Py発現時の変形角の値である。また、塑性率μは、終局変位δu/降伏点変位δvの値(比率)である。荷重(耐力)が最大耐力Pmaxの発現後に0.8Pmaxに低下した時、壁体がその耐力を実質的に喪失したものと見做され、面内せん断試験は0.8Pmax荷重低下域において実質的に終了する。
壁倍率は、「木造軸組工法住宅の許容応力度設計[1](2017年版)」、第63頁及び第300頁(非特許文献1)等の多くの技術文献に記載される如く、図4に示す完全弾塑性モデルにより特定される耐力Pmax、Pu、Py及び変位δu、δv、δyに基づいて短期許容せん断耐力(Pa)を算定し、これを所定の耐力(壁長L(m)×1.96(kN/m))で除した値である。即ち、壁倍率は、短期許容せん断耐力(Pa)をこの基準数値(1.96L)で除して指数化した値である。
この点について更に説明すると、壁倍率の算出においては、原則として以下の4種類の耐力の値のうち最も小さい値を示す耐力を短期基準せん断耐力(P0)として特定し、短期基準せん断耐力(P0)に対し、所定の低減係数(α)(耐力低下の要因を評価する係数)を乗じる。一般に、石膏系耐力面材の場合、下記(1)又は(2)の耐力、即ち、降伏耐力(Py)又は終局耐力(補正値)(Pu')が最も小さな値を示す。尚、以下の各耐力の値(Py、Pu、Pmax)より求められる短期基準せん断耐力(P0)の値は、下記の値にばらつき係数(β)を乗じた値である。
(1)降伏耐力(Py)
(2)塑性率(μ)に基づいて補正された終局耐力(Pu)の値(以下、「終局耐力(補正値)(Pu')」という。)
(3)最大耐力(Pmax)の2/3の値
(4)せん断変形角=1/120radの時の耐力(無載荷式又は載荷式の場合)
一般に、前述の構造用石膏ボード(特許文献2)を木構造壁下地に対して留め具によって留付けてなる耐力壁の短期基準せん断耐力(P0)は、上記4種類の耐力の値のうち降伏耐力(Py)によって特定される(P0=β×Py)。壁倍率は、前述のとおり、短期基準せん断耐力(P0)に低減係数(α)を乗じるとともに、所定の耐力(1.96L)で除した値であるので、構造用石膏ボードを木構造壁下地に対して留め具によって留付けてなる耐力壁の壁倍率は、降伏耐力(Py)に比例する。
他方、特許文献3に記載された石膏系面材、即ち、前述の低密度石膏系耐力面材を木構造壁下地に対して留め具によって留付けてなる耐力壁の短期基準せん断耐力(P0)は、通常は、上記4種類の耐力の値のうち終局耐力(補正値)(Pu')が最も小さい値を示し、従って、壁倍率を算定するための短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率は、構造用石膏ボードとは異なり、終局耐力(補正値)(Pu')に比例する。低密度石膏系耐力面材においては、その予期せぬ低密度化の効果として、面密度の低下に起因して石膏系耐力面材が潜在的に保有する靱性及び変形追随性が顕在化し、これにより、耐力壁の終局変位(δu)が増大して20×10-3radよりも大きい値の終局変位(δu)が得られる結果、特許文献3の低密度石膏系耐力面材を木構造壁下地に固定してなる耐力壁は、7.6kNよりも大きい終局耐力(補正値)(Pu')を発揮する。かくして、低密度石膏系耐力面材は、上記のとおり、構造用石膏ボードと比べて面密度が低減したにもかかわらず、構造用石膏ボードと同等の耐力を発揮する。
終局耐力(補正値)(Pu')は、終局耐力(Pu)及び塑性率(μ)に基づいて下式より求められる値であり、短期基準せん断耐力(P0)は、終局耐力(補正値)(Pu')と、その測定値のばらつき係数(β)とに基づいて下式より求められる値である。
Pu'=Pu×0.2×(2μ-1)1/2
P0=β×Pu'
即ち、面密度を低減して面材自体が潜在的に保有する靱性又は変形追随性を顕在化せしめた特許文献3の石膏系耐力面材(即ち、低密度石膏系耐力面材)にあっては、耐力壁の終局変位(δu)が20×10-3radよりも大きな値に増大し、その結果、塑性率μ(=δu/δv)が増大して終局耐力(補正値)(Pu')が増大し、これにより、短期許容せん断耐力(Pa)が増大して壁倍率が増大する。本発明者等は、短期許容せん断耐力(Pa)及び壁倍率を更に増大させるべく面材の留付け構造及び塑性率μを更に検討し、釘20の寸法・形状を変更するとともに、初期剛性が増大して塑性率μが増大し得ることを知見し、本開示に至ったものである。以下、この点について説明する。
[釘20の寸法・形状について]
石膏系耐力面材を木構造の軸組又は枠組に固定してなる従来の木造耐力壁においては、一般に、石膏系耐力面材は、NZ50釘(めっき鉄丸釘:JIS A 5508)によって軸組又は枠組に固定されてきた。NZ50釘は、頭径6.6mm、胴径2.75mm及び釘の長さ50mmの寸法(JIS A 5508)を有し、頭面積/胴断面積の比ηは、5.76である。このような釘によって低密度石膏系耐力面材を木構造の軸組又は枠組に固定してなる木造耐力壁の試験体を用いた面内せん断試験においては、特許文献3に記載したとおり、終局変位(δu)が増大し、この結果、終局耐力(補正値)(Pu')、短期基準せん断耐力(P0)及び壁倍率が増大する。しかしながら、この面内せん断試験においては、試験体に作用する繰り返し加力によって釘穴が破壊してパンチングシェア現象が発生し、これに伴う石膏系耐力面材のパンチングアウト破壊によって試験体の耐力が急激にPu=0.8Pmaxに低下し、これにより、面内せん断試験が終了するという特性ないし特徴が認められた。従って、釘打ち部分の破壊又は破断を抑制し、石膏系耐力面材のパンチングアウト破壊を抑制しない限り、短期許容せん断耐力(Pa)及び壁倍率を更に増大させ難いと考えられる。尚、特許文献1に記載された面材補強方法の如く、金属板等の補強材又は補剛材を釘打ち部分に配設することによってパンチングアウト破壊を抑制又は軽減することも可能であるかもしれないが、このような補強材又は補剛材の付設又は配設は、前述のとおり、石膏系面材の製造プロセスの煩雑化や、建設工事の作業性の悪化を招く要因となる。
図5は、本開示の実施例に係る耐力壁を構成する釘20と、比較例に係る耐力壁を構成する釘N1、N2に関し、頭径D、胴径d、長さL、及び頭面積/胴断面積の面積比ηを比較表として示す図表である。釘20の頭径D、胴径d、長さL、及び頭面積/胴断面積の面積比ηの値は、前述のとおりである。釘N1は、NZ50釘(JIS A 5508)として市場に流通している鉄釘であり、図5に示す値(頭径D=6.62mm、胴径d=2.83mm、頭面積/胴断面積の面積比η=5.48)は、市場において入手した任意の10本のNZ50釘の各部寸法を計測し、各計測値を平均した値であり、JIS A 5508に規定された値とは若干相違する。釘N2は、CN50釘(JIS A 5508)として市場に流通している鉄釘であり、図5に示す値(頭径D=6.67mm、胴径d=2.92mm、頭面積/胴断面積の面積比η=5.2)も又、市場において入手した任意の10本のCN50釘の各部寸法を計測し、各計測値を平均した値であり、JIS A 5508に規定された値とは若干相違する。尚、釘20、N1、N2の長さLは、いずれも約50mmである。
図6は、釘N1を用いた耐力壁(比較例1)と、釘N2を用いた耐力壁(比較例2)とに関し、面内せん断試験の試験結果を対比するための図表及び線図である。図7は、釘20を用いた耐力壁(本開示の実施形態)と、釘N1を用いた耐力壁(比較例3)とに関し、面内せん断試験の試験結果を対比するための図表及び線図である。実施形態及び比較例1~3の石膏系耐力面材10は、いずれも、所定量の無機質繊維(ガラス繊維)及び有機系強度向上材(澱粉)を混入した平板状石膏コア(石膏芯材)11と、石膏コアの両面を被覆する石膏ボード用原紙(紙部材)12とから構成される前述の低密度石膏系耐力面材であり、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度、6.5N/mm2以上の圧縮強度、及び500N以上の釘側面抵抗を有する。
図6に示す試験結果より明らかなとおり、本発明者等は、石膏系耐力面材の場合、必ずしも太い釘(胴径dが比較例1よりも大きい比較例2)がパンチングアウト破壊を抑制する上で有効であるとは限らない(従って、短期許容せん断耐力(Pa)及び壁倍率を向上する上で有利であるとは限らない)ことを確認した。また、図7に示す試験結果より明らかなとおり、本発明者等は、石膏系耐力面材の場合、頭径D、胴径d、及び頭面積/胴断面積の比ηを適切に設定することにより、石膏系耐力面材のパンチングアウト破壊を抑制又は軽減し、短期許容せん断耐力(Pa)及び壁倍率を比較的大きく改善し得ることを確認した。以下、この点に関し、図6及び図7を参照して説明する。
一般に、釘N2(比較例2)の頭径D及び胴径dは、釘N1(比較例1)の頭径D及び胴径dに比べて大きく、従って、パンチングアウト破壊を抑制し又は軽減する上で有利であり、相対的に胴径dが小さい釘N1(細い釘)に比べ、せん断強度において優れると一般に認識されている。しかし、圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度石膏系耐力面材の場合、釘N2は、図6に示す如く、短期許容せん断耐力(Pa)を却って低下させる(従って、壁倍率を低下させる)ことが判明した。これは、面内せん断試験において、パンチングシェア現象が比較的早期に発生し、パンチングアウト破壊による釘打ち部分の破壊又は破断によって耐力(荷重)が早期にPu=0.8Pmaxに低下し(終局変位δuB<δuA)、壁体がその耐力を実質的に喪失したことに起因する。
他方、釘20を用いた本実施例の耐力壁と、釘N1を用いた比較例3の耐力壁とを比較すると、図7に示す如く、釘20の胴径dは、釘N1(比較例3)の胴径dに比べて小さく、釘N1に比べてせん断強度が劣ると一般に認識される細い釘であるにもかかわらず、圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度石膏系耐力面材の場合には、必ずしも、そのような従来の認識又は知見は適応し難く、図7に示す如く、釘20は、釘N1に比べ、短期許容せん断耐力(Pa)を増大せしめる(従って、壁倍率を増大せしめる)。これは、頭面積/胴断面積の面積比ηの相違により、釘20において胴径d及び頭径Dの径差が拡大し、この結果、パンチングシェア現象の発生が遅延し、パンチングアウト破壊による釘打ち部分の破壊又は破断に起因する耐力(荷重)低下(Pu=0.8Pmax)の時期が遅延し、終局変位が増大(δuE>δuC)した結果であると考えられる。
従って、頭径D及び胴径dを7.07mm及び2.45mmに夫々設定するとともに、頭面積/胴断面積を8.32に設定し、これにより、頭部21及び胴部22の径差を拡大し、低密度石膏系耐力面材の表面に着座する環状且つ平坦な着座面21b(図2参照)を十分に確保することにより、圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度石膏系耐力面材を用いた耐力壁1の短期許容せん断耐力(Pa)を効果的に増大させる(従って、壁倍率を効果的に増大させる)ことができる。但し、頭部21及び胴部22の径差の拡大だけではなく、以下の条件を併せて考慮する必要があると考えられる。
(1)面材10が釘打ち時に釘の貫入作用によって割れる現象を抑制するとともに、釘打ち機の使用に適した釘の頭径Dを考慮し、頭径Dを10mm以下、好ましくは、9mm以下に設定する。
(2)パンチングシェア現象を抑制してパンチングアウト破壊の作用を軽減すべく、頭径Dを6mm以上、好適には、6.8mm以上に設定する。
(3)面材10が釘打ち時に釘の貫入作用によって割れる現象を抑制するとともに、面内せん断試験時に面材の縁切れ現象が発生するのを抑制すべく、胴径dを5mm以下、好ましくは、4.2mm以下に設定する。
(4)過大な釘の曲げ変形が面内せん断試験時に発生するのを抑制すべく、胴径dを2mm以上、好ましくは、2.2mm以上に設定する。
(5)首部23の強度が極端に低下するのを抑制すべく、頭面積/胴断面積の比ηを13以下、好ましくは、11以下に設定する。
(6)パンチングシェア現象を抑制する効果を確保すべく、頭面積/胴断面積の比ηを6以上、好ましくは、7以上に設定する。
かくして、圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度石膏系耐力面材を用いた耐力壁1においては、頭径D、胴径d、及び頭面積/胴断面積の比ηを適切な数値範囲内の値に設定し、これにより、頭部21(釘頭)が面材10にめり込むのを抑制し、パンチングシェア現象を抑制又は軽減するとともに、釘打ち時に生じ得る面材10の割れ等を抑制することにより、耐力壁1の短期許容せん断耐力(Pa)を効果的に増大させる(従って、壁倍率を効果的に増大させる)ことができる。殊に、石膏系耐力面材10の場合、頭部21が面材表面と面一になり、しかも、面材10の被覆材(石膏ボード用原紙)12が破損又は損傷しないように釘打ちを行う必要があるが、殊に、頭部21が過大な頭径Dを有する場合、頭部21の頂面21aと面材10の表面とを面一にする際に、面材10が割れる現象が生じ易いので(上記(1))、このような現象を回避する意味においても、頭径D、胴径d、及び頭面積/胴断面積の比ηに関する上記設定は、重要である。
[圧縮強度の増大による初期剛性の増大と、短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率の増大について]
本発明者は、上記の如く特定の寸法及び形状を有する釘20を使用して、圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度の耐力面材10を木構造の軸組又は枠組に固定することにより、耐力壁1の短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率を増大し得ることを認識したが、本発明者は更に、圧縮強度の増大に伴って面材の初期剛性が増大することによっても、耐力壁1の短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率が更に増大し得ることを認識した。即ち、特定の寸法及び形状を有する上記釘20と、圧縮強度及び釘側面抵抗が増大した低密度の耐力面材10とを用いることにより、パンチングシェア現象を抑制又は軽減し得るだけではなく、面材の初期剛性を増大させて塑性率μを増大させることができ、両者の相乗効果として、短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率を効果的又は効率的に増大させることが可能になる。以下、圧縮強度の増大に伴う耐力面材10の初期剛性増大の作用と、これに起因した短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率の増大について説明する。
前述のとおり、石膏系耐力面材10の圧縮強度及び釘側面抵抗は、澱粉、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル等の有機系強度向上材を無機質繊維とともに石膏スラリー混練用ミキサーに供給して適量の有機系強度向上材及び無機質繊維を石膏スラリーに含有せしめることによって増大される。石膏スラリーに対する上記有機系強度向上材の配合は、比較的低い面密度(6.5~8.9kg/m2の範囲内に面密度)を確保しつつ、所望の圧縮強度(6.5N/mm2以上の圧縮強度)を石膏系耐力面材10に与え、しかも、無機質繊維と協働して所望の釘側面抵抗(500N以上の釘側面抵抗)を石膏系耐力面材10に与える効果的な手段であり、加えて、有機系強度向上材の配合が石膏系耐力面材の品質全般に大きく影響しないという点をも考慮すると、簡易で、しかも、現実的又は実務的に有効な手段である。
しかも、耐力面材10の圧縮強度の増大は、耐力壁1の初期剛性Kの増大に寄与し、これにより、耐力壁の終局変位δuを大きく低下させることなく、その降伏点変位δvを低下させ、その結果として、耐力壁1の塑性率μが比較的大きく増大し、かくして、短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率が増大し得ることが、以下に説明するとおり、本発明者等の最近の実験により判明した。
本発明者等は、図8の図表に示す参考例1~4及び比較例4に係る石膏系耐力面材を供試体として製作し、無載荷式試験装置を用いた面内せん断試験を実施した。図8に示す無機質繊維及び有機系強度向上材の配合量は、焼石膏100重量部当りの重量部で示されている。比較例4の石膏系耐力面材は、前述のとおり、所定量の無機質繊維(ガラス繊維)及び有機系強度向上材(澱粉)を混入した平板状石膏コア(石膏芯材)と、石膏コアの両面を被覆する石膏ボード用原紙(紙部材)とから構成される面材であり、いずれも、約7.4~約8.7kg/m2の範囲内の面密度を有し、従来の石膏系耐力面材(特許文献4)に比べて、木構造耐力壁の終局変位δu及び塑性率μが増大し、短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率が増大する性能を有する。但し、参考例1~4及び比較例4の石膏系耐力面材は、本開示に係る釘20ではなく、従来の釘N1(NZ50釘)によって土台2、柱3、間柱4、継手間柱4’、横架材5及び胴つなぎ5’(図3に示す木造軸組)に留付けられた。これは、釘20の使用の効果又は影響をなくし、耐力面材10の圧縮強度増大に起因した耐力壁1の初期剛性Kの増大(従って、耐力壁1の塑性率μの増大)と、これに伴う短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率の増大のみを評価するためである。尚、図8及び図9にその性能を示す耐力壁は、本開示に係る釘20を用いて耐力面材10を木造軸組に留付けた構造を有しないので、参考例1~4として図8及び図9に示されている。
図8及び図9に示された試験結果を参照すると、参考例1~4及び比較例4の各試験体の試験結果は、概ね変形角=20×10-3radに達する前後において最大荷重(最大耐力)Pmax(図3)に達した後、直ちに破壊することなく、その後の繰り返し加力により、0.8Pmax荷重低下域の変形角、即ち、終局変位δu1~δu5(図9)に達するが、終局変位δu1~δu5は、概ね30×10-3rad程度の変形角である。これは、参考例1~4及び比較例4の各試験体が、最大荷重(最大耐力)Pmaxに達した後、最大荷重Pmax時の変形角の概ね1.5倍程度の変形角が生じるまで、その後の繰り返し加力によって塑性変形を持続することを意味する。このような塑性変形の持続性は、前述のとおり、石膏系耐力面材としての最低限度の物性(釘側面抵抗:500N以上)を確保しつつ、面密度を低下させ、石膏板自体が潜在的に保有する靱性又は変形追随性が顕在化したことに起因すると考えられる。
他方、参考例1~4及び比較例4の各圧縮強度等を比較すると、比較例4の石膏系耐力面材の圧縮強度は、6.0N/mm2であり、参考例1~4の石膏系耐力面材の圧縮強度(6.5N/mm2以上)に比べて相対的に低く、比較例4の石膏系耐力面材は、参考例1~4の石膏系耐力面材に比べ、短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率が相対的に低下している。
[耐力面材の圧縮強度の測定について]
図10には、石膏系耐力面材の圧縮強度測定方法が概略的に示されている。
本発明者等が行った石膏系耐力面材の圧縮強度の測定に際し、図10に示す如く、実施例、参考例及び比較例に係る石膏系耐力面材を4cm×4cmの寸法の平板に切断し、実施例、参考例及び比較例について、複数枚の試験片101を製作し、複数枚の同一試験片101を接着せずに4枚積層してなる試験片積層体100を測定装置の上下の載荷板102、103の間に介挿させた。そして、上下の載荷ロッド104によって鉛直方法の圧縮荷重Fv(及び反力Rv)を試験片積層体100に印加し、石膏硬化体からなる主材又は芯材、即ち、試験片101の石膏コア部分を破壊し、破壊時の圧縮荷重Fvを測定した。測定装置として、精密万能試験機(島津製作所製「オートグラフ」、型式:AG-10NKI)を使用した。本発明者等は、試験片積層体100を構成するいずれかの試験片101が圧縮破壊した時点の圧縮荷重Fvを測定し、この測定値を試験片100の面積(16cm2)で除した値を各石膏系耐力面材の圧縮強度として特定した。
かくして特定された参考例1~4及び比較例4の石膏系耐力面材の圧縮強度が、図8に示されている。図8に示すとおり、参考例1~4及び比較例4の石膏系耐力面材の初期剛性Kは、圧縮強度の増減に概ね対応して変化し、圧縮強度を高めることにより、初期剛性Kの値を増大させることができる。また、図8に示すとおり、初期剛性Kの増減により塑性率μを変化させ、終局耐力(補正値)Pu'及び短期許容せん断耐力Paの値を変化させることができる。参考例1~4の諸物性によれば、石膏系耐力面材の圧縮強度が6.5N/mm2以上の値に増大することにより、図8に示すとおり、7.8kN以上の値の終局耐力(補正値)Pu'(5.85kN以上の短期許容せん断耐力Pa)が得られる。
即ち、参考例1~4の石膏系耐力面材は、6.5N/mm2以上の圧縮強度を有し、これに伴う初期剛性Kの増大及び降伏点変位δvの低下により、比較的高い塑性率μを有し、この結果として、参考例1~4の試験体の終局耐力(補正値)Pu'及び短期許容せん断耐力Paは、Pu'=7.8~11.9kN、Pa=5.85~8.92であり、この値は、比較例4の試験体の終局耐力(補正値)(=7.62kN)及び短期許容せん断耐力Pa(=5.72kN)に比べて顕著に増大した値である。また、低減係数α=0.75、ばらつき係数β=1.0と仮定すると、参考例1~4の試験体の壁倍率は、1.64~2.50であり、比較例4の試験体の壁倍率(1.60)に対し、顕著に増大している。換言すると、耐力面材10の圧縮強度の増大により、耐力壁1の初期剛性Kが増大し、この結果、耐力壁の終局変位δuが大きく低下することなく、降伏点変位δvが低下し、これにより、耐力壁1の塑性率μ(=δu/δv)が比較的大きく増大し、かくして、短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率が増大したものと考えられる。
[初期剛性Kの増大に伴う塑性率μの増大について]
前述のとおり、終局耐力(補正値)Pu'は、終局耐力Puを塑性率μに基づいて補正した値であり、短期許容せん断耐力Paは、終局耐力(補正値)Pu'に対して所定の低減係数α及びばらつき係数βを乗じた値であり、壁倍率は、短期許容せん断耐力Paを所定の耐力基準値(L×1.96)で除した値である。従って、壁倍率及び短期許容せん断耐力Paは、終局耐力Puの値に比例するとともに、塑性率μの増大に伴って増大する。塑性率μは、終局変位δuと比例し、降伏点変位δvに反比例する値であり、従って、終局変位δuを増大させ、或いは、降伏点変位δvを低減させることにより、壁倍率及び短期許容せん断耐力Paを増大させることができる。
図9には、参考例1~4及び比較例4の各試験体の試験結果が、完全弾塑性モデルの荷重-変形角特性の線形グラフとして示されている。また、図9には、初期剛性K=2.0kN/10-3radに設定した線形弾性域の一次関数直線Y=KXが、本開示における初期剛性Kの基準線として二点鎖線で示されている。更に、図9には、参考例1~4及び比較例4の各試験体に関し、線形弾性域の一次関数直線Y=K1X~Y=K5X、終局耐力Pu1~Pu5、降伏点σs1~σs5が示されている。図8に示すとおり、参考例1~4の各試験体の初期剛性は、最小値においてK4=2.04kN/10-3radであり、最大値においてK3=2.91kN/10-3radである。他方、比較例4の試験体の初期剛性は、K5=1.94kN/10-3radである。初期剛性Kは、Y=KXの一次関数直線の勾配として図9に顕れており、初期剛性Kが2.0kN/10-3rad以上の値を示す参考例1~4の試験体においては、Y=K1-4Xの各一次関数直線は、初期剛性K=2.0kN/10-3radの基準線よりも急勾配の直線として図9に表され、初期剛性K5が2.0kN/10-3rad未満の値を示す比較例4では、Y=K5Xの一次関数直線は、初期剛性K=2.0kN/10-3radの基準線よりも緩勾配の直線として図9に表されている。即ち、圧縮強度を増大させた参考例1~4の各試験体においては、初期剛性K1-4が2.0kN/10-3rad以上の値を示し、この結果として、比較的小さい降伏点変位δv1~δv4が得られ、比較的大きい終局変位δu1~δu4及び終局耐力Pu1~Pu4と相俟って、比較例4と比べて相対的に大きい終局耐力(補正値)Pu'、短期許容せん断耐力Pa及び壁倍率が図8に示す如く得られる。
図8及び図9に示す如く、参考例1~4の各試験体の初期剛性Kは、2.0kN/10-3radよりも大きく、比較例4の試験体の初期剛性Kは、2.0kN/10-3radよりも小さく、参考例1~4の試験体の降伏点変位δv1~δv4は、比較例4の試験体の降伏点変位δv5よりも顕著に小さい。図8に示すとおり、参考例1~4の試験体によって得られる壁倍率及び短期許容せん断耐力Paは、比較例4の試験体によって得られる壁倍率及び短期許容せん断耐力Paの値よりも著しく大きい。これは、降伏点変位δvの低下に伴う塑性率μの増大が、壁倍率及び短期許容せん断耐力Paの増大に比較的大きく寄与した結果であると考えられる。
以上説明したとおり、本実施例に係る耐力壁1は、以下の特徴を有する。
(1)耐力面材10は、500N以上の釘側面抵抗を発揮し且つ6.5N/mm2以上の圧縮強度を保有するように無機質繊維及び有機系強度向上材を配合した板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから構成される。壁面の単位面積当りの質量として特定される耐力面材10の面密度は、6.5~8.9kg/m2の範囲内の値に設定される。このように圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度の石膏系耐力面材10を用いた耐力壁1においては、頭径Dを6.0~10.0mmの範囲内、胴径dを2.0~5.0mmの範囲内、頭面積/胴断面積の比ηを6~13の範囲内の値に設定することにより、頭部21が面材10にめり込むのを抑制し、パンチングシェア現象を抑制又は低減するとともに、釘打ち時に生じ得る面材10の割れを抑制し、しかも、耐力壁1の短期許容せん断耐力Paを効果的に増大させる(従って、壁倍率を効果的に増大させる)ことができる。
(2)上記の如く圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度の石膏系耐力面材10を用いた耐力壁1においては、その終局変位δuは、例えば、28.09×10-3~34.98×10-3radに増大し、従って、従来の石膏系耐力面材(例えば、特許文献4に記載された石膏系耐力面材)を用いた耐力壁の終局変位δuが20×10-3rad程度の値であったことと対比すると、耐力壁1の終局変位δuは、顕著に増大する。
(3)上記の如く圧縮強度及び釘側面抵抗を増大した低密度の石膏系耐力面材10を用いた耐力壁1においては、参考例1~4(図8及び図9)に係る耐力壁1の降伏点変位δv1~δv4として説明した如く、初期剛性Kの増大に伴って、6.04×10-3~6.80×10-3radに低下しており、この値は、比較例4に係る耐力壁の降伏点変位δv5=7.26×10-3radと比べ、顕著に低下した値である。即ち、上記参考例1~4として説明した耐力面材10は、耐力壁1の終局変位δu1~δu4を増大して塑性率μを増大するだけではなく、耐力壁1の降伏点変位δv1~δv4の低下によっても塑性率μを増大するので、壁倍率及び短期許容せん断耐力Paを比較的大きく増大することができる。
以上、本開示の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本開示は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の範囲内で種々の変形又は変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態及び実施例は、木構造建築物の1階レベルの耐力壁に関するものであるが、本開示は、2階又は3階レベルの耐力壁についても同様に適用し得るものである。2階又は3階レベルの耐力壁の場合、耐力面材の下端部は、2階床又は3階床レベルの横架材等に留付けられる。
また、上記実施形態及び実施例は、木造軸組工法且つ大壁造の耐力壁構造に関するものであるが、木造軸組工法の真壁造又は床勝(床先行)・大壁造の耐力壁構造に本開示を適用してもよい。変形例として、木造枠組壁工法の耐力壁構造に本開示を適用してもよく、この場合、耐力面材は、土台、柱及び横架材に換えて、縦枠、下枠、上枠等に留付けられる。
更に、図3に示す試験体は、石膏板を上下に分割し、高さ方向中間位置に胴つなぎを配設した構造のものであるが、木造軸組の全高と実質的に同じ高さ寸法の石膏板を用いて面内せん断試験を実施してもよい。後者の場合には、更に短期基準せん断耐力を増大し得ると考えられる。
本開示は、木構造建築物の木構造耐力壁及びその施工方法に適用される。殊に、本開示は、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度を有し、500N以上の釘側面抵抗を発揮するように無機質繊維及び有機系強度向上材を混入した板状の石膏硬化体を主材又は芯材とする低密度の石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に金属製の釘によって留付け、耐力面材を木構造壁下地によって構造的に一体的に保持するように構成された木構造耐力壁及びその施工方法に適用される。本開示は又、このような石膏系耐力面材を用いた木構造耐力壁の壁倍率増大方法に適用される。本開示は更に、このような木構造耐力壁、その壁倍率増大方法及びその施工方法において使用される石膏系耐力面材に適用される。本開示によれば、特定の形状及び寸法を有する金属製の釘を用いて耐力面材を木構造壁下地に留付けることにより、補強材又は補剛材を付加的に取付けることなく、石膏系面材の比重及び/又は板厚を増大することもなく、しかも、終局変位(δu)の値を更に増大させることもなく、木構造耐力壁の壁倍率を増大することができるので、その実用的価値又は効果は、顕著である。
本国際出願は、2022年7月30日に出願した日本国特許出願第2022-122390号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
1 耐力壁
2 土台
3 柱
4 間柱
4’ 継手間柱
5 横架材(梁、胴差、軒桁、妻桁)
5’ 胴つなぎ
10、10a、10b 石膏系耐力面材
11 平板状石膏コア(石膏芯材)
12 石膏ボード用原紙(紙部材)
20 釘(留め具)
21 頭部
21a 頂面
21b 着座面
22 胴部
23 首部
24 先端部
D 頭径
d 胴径
L 長さ
η 頭面積/胴断面積の面積比

Claims (31)

  1. 石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に対して留め具によって留付けた構造を有する木構造耐力壁において、
    前記耐力面材は、板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、該主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから構成され、
    前記耐力面材は、壁面の単位面積当りの質量として特定される該耐力面材の面密度又は面重量として、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度又は面重量を有するとともに、500N以上の釘側面抵抗を発揮し、且つ、少なくとも6.5N/mm2以上の圧縮強度を保有しており、
    前記留め具は、頭部及び胴部を有し、頭部の面積/胴部の断面積の面積比を6~13の範囲内の値に設定した金属製の釘からなり、
    壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位として、20×10-3radよりも大きい値の終局変位(δu)を有することを特徴とする、木構造耐力壁。
  2. 請求項1に記載された木構造耐力壁において、
    前記釘の胴部は、均一な円形横断面を有するストレート・スムース形の胴部であり、尖塔形の先端部を備えており、前記釘の頭部は、頂面視円形輪郭を有する平頭フラット形又は平頭網目付き形の頭部であることを特徴とする、木構造耐力壁。
  3. 請求項1に記載された木構造耐力壁において、
    前記釘は、釘打ち作業によって前記耐力面材の外面に着座する環状且つ平坦な着座面と、前記耐力面材の外面が構成する壁面と実質的に同じ面内に釘打ち後に位置するように施工される平坦な頂面とを有することを特徴する、木構造耐力壁。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載された木構造耐力壁において、
    前記耐力面材は、前記面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の初期剛性(K)として2.2kN/10-3rad以上の値を確保すべく、7.5N/mm2以上の前記圧縮強度を保有することを特徴とする、木構造耐力壁。
  5. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載された木構造耐力壁において、
    前記面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の物性として、
    (1)7.2×10-3rad以下の降伏点変位(δv)、
    (2)4.2以上の塑性率(μ)、
    (3)7.7kN以上の終局耐力(Pu)の補正値(Pu')、及び
    (4)7.7kN以上の値であって、前記終局耐力(Pu)の補正値(Pu')よりも大きい降伏耐力(Py)、
    より構成される諸物性のうちの少なくとも1つの物性が、前記面密度又は面重量及び前記釘側面抵抗の設定と、パンチングシェア現象を抑制し又はパンチングアウト破壊の作用を軽減すべく設定された前記釘の頭径、胴径、及び頭部の面積/胴部の断面積の面積比の設定と、によって確保されることを特徴とする、木構造耐力壁。
  6. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載された木構造耐力壁において、
    前記耐力面材は、12mm未満の板厚、及び/又は、0.96以下の比重を有することを特徴とする、木構造耐力壁。
  7. 請求項1に記載された木構造耐力壁において、
    前記耐力面材の前記主材又は前記芯材には、無機質繊維及び/又は有機系強度向上材が配合されていることを特徴とする、木構造耐力壁。
  8. 請求項1又は7に記載された木構造耐力壁において、
    前記石膏系耐力面材の主材又は芯材には、オルガノポリシロキサン化合物が配合されていることを特徴とする、木構造耐力壁。
  9. 石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に固定する木構造耐力壁の施工方法において、
    板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、該主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから構成される石膏系耐力面材であって、壁面の単位面積当りの質量として特定される面密度又は面重量として、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度又は面重量を有するとともに、500N以上の釘側面抵抗を発揮し且つ少なくとも6.5N/mm2以上の圧縮強度を有する石膏系耐力面材を前記木構造壁下地に対して留め具によって留付け、該留め具として、頭部の面積/胴部の断面積の面積比を6~13の範囲内の値に設定した金属製の釘を使用し、
    壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位(δu)として、20×10-3radよりも大きい値の終局変位を発揮する木構造耐力壁を構築することを特徴とする、木構造耐力壁の施工方法。
  10. 請求項9に記載された木構造耐力壁の施工方法において、
    前記釘の胴部は、均一な円形横断面を有するストレート・スムース形の胴部であり、尖塔形の先端部を備えており、前記釘の頭部は、頂面視円形輪郭を有する平頭フラット形又は平頭網目付き形の頭部であることを特徴とする、木構造耐力壁の施工方法。
  11. 請求項9に記載された木構造耐力壁の施工方法において、
    前記釘は、釘打ち作業によって前記耐力面材の外面に着座する環状且つ平坦な着座面と、前記耐力面材の外面が構成する壁面と実質的に同じ面内に釘打ち後に位置するように施工される平坦な頂面とを有することを特徴する、木構造耐力壁の施工方法。
  12. 請求項9乃至11のいずれか1項に記載された木構造耐力壁の施工方法において、
    前記耐力面材は、前記面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の初期剛性(K)として2.2kN/10-3rad以上の値を確保すべく、7.5N/mm2以上の前記圧縮強度を保有することを特徴とする、木構造耐力壁の施工方法。
  13. 請求項9乃至11のいずれか1項に記載された木構造耐力壁の施工方法において、
    前記面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の物性として、
    (1)7.2×10-3rad以下の降伏点変位(δv)、
    (2)4.2以上の塑性率(μ)、
    (3)7.7kN以上の終局耐力(Pu)の補正値(Pu')、及び
    (4)7.7kN以上の値であって、前記終局耐力(Pu)の補正値(Pu')よりも大きい降伏耐力(Py)、
    より構成される諸物性のうちの少なくとも1つの物性が、前記面密度又は面重量及び前記釘側面抵抗の設定と、パンチングシェア現象を抑制し又はパンチングアウト破壊の作用を軽減すべく設定された前記釘の頭径、胴径、及び頭部の面積/胴部の断面積の面積比の設定と、によって確保されることを特徴とする、木構造耐力壁の施工方法。
  14. 請求項9乃至11のいずれか1項に記載された木構造耐力壁の施工方法において、
    前記耐力面材は、12mm未満の板厚、及び/又は、0.96以下の比重を有することを特徴とする、木構造耐力壁の施工方法。
  15. 請求項9に記載された木構造耐力壁の施工方法において、
    前記耐力面材の前記主材又は前記芯材には、無機質繊維及び/又は有機系強度向上材が配合されていることを特徴とする、木構造耐力壁の施工方法。
  16. 請求項9又は15に記載された木構造耐力壁の施工方法において、
    前記石膏系耐力面材の主材又は芯材には、オルガノポリシロキサン化合物が配合されていることを特徴とする木構造耐力壁の施工方法。
  17. 石膏系耐力面材を木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に対して留め具によって留付けることにより施工される、木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    板状の石膏硬化体からなる主材又は芯材と、該主材又は芯材の少なくとも表裏面を被覆する紙部材とから前記耐力面材を構成し、
    壁面の単位面積当りの質量として特定される前記耐力面材の面密度又は面重量を6.5~8.9kg/m2に低減するとともに、前記耐力面材が500N以上の釘側面抵抗及び6.5N/mm2以上の圧縮強度を発揮するように、前記主材又は前記芯材の石膏硬化体の配合を設定し、
    前記留め具として、頭部の面積/胴部の断面積の面積比を6~13の範囲内の値に設定した金属製の釘を使用して、パンチングシェア現象を抑制し又はパンチングアウト破壊の作用を軽減し、
    壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位(δu)として、20×10-3radよりも大きい値の終局変位を得ることを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  18. 請求項17に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    前記釘の胴部は、均一な円形横断面を有するストレート・スムース形の胴部であり、尖塔形の先端部を備えており、前記釘の頭部は、頂面視円形輪郭を有する平頭フラット形又は平頭網目付き形の頭部であることを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  19. 請求項17に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    前記釘は、釘打ち作業によって前記耐力面材の外面に着座する環状且つ平坦な着座面と、前記耐力面材の外面が構成する壁面と実質的に同じ面内に釘打ち後に位置するように施工される平坦な頂面とを有することを特徴する、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  20. 請求項17乃至19のいずれか1項に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    前記面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の初期剛性(K)として2.2kN/10-3rad以上の値を確保すべく、7.5N/mm2以上の前記圧縮強度を前記耐力面材に保有せしめることを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  21. 請求項17乃至19のいずれか1項に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    前記面内せん断試験によって測定される前耐力壁の物性として、
    (1)7.2×10-3rad以下の降伏点変位(δv)、
    (2)4.2以上の塑性率(μ)、
    (3)7.7kN以上の終局耐力(Pu)の補正値(Pu')、及び
    (4)7.7kN以上の値であって、前記終局耐力(Pu)の補正値(Pu')よりも大きい降伏耐力(Py)、
    より構成される諸物性のうち少なくとも1つの物性が、前記面密度又は面重量及び前記釘側面抵抗の設定と、パンチングシェア現象を抑制し又はパンチングアウト破壊の作用を軽減すべく設定された前記釘の頭径、胴径、及び頭部の面積/胴部の断面積の面積比の設定と、によって確保されることを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  22. 請求項17乃至19のいずれか1項に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    前記耐力面材は、12mm未満の板厚、及び/又は、0.96以下の比重を有することを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  23. 請求項17に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    前記耐力面材の前記主材又は前記芯材には、無機質繊維及び/又は有機系強度向上材が配合されていることを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  24. 請求項17又は23に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において、
    前記石膏系耐力面材の主材又は芯材には、オルガノポリシロキサン化合物が配合されていることを特徴とする、木構造耐力壁の壁倍率増大方法。
  25. 請求項9に記載された木構造耐力壁の施工方法において使用され、或いは、請求項17に記載された木構造耐力壁の壁倍率増大方法において使用され、木造軸組工法又は木造枠組壁工法の木構造壁下地に対して前記留め具によって留付けられる、木構造耐力壁用の石膏系耐力面材であって、
    500N以上の釘側面抵抗を発揮し且つ少なくとも6.5N/mm2以上の圧縮強度を保有するとともに、6.5~8.9kg/m2の範囲内の面密度又は面重量を有し、
    前記留め具と協働して、壁の長さ1.82mの耐力壁試験体を用いた面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の終局変位(δu)を20×10-3radよりも大きい値に増大せしめることを特徴とする、石膏系耐力面材。
  26. 請求項25に記載された石膏系耐力面材において、
    前記耐力面材は、12mm未満の板厚、及び/又は、0.96以下の比重を有することを特徴とする、石膏系耐力面材。
  27. 請求項25に記載された石膏系耐力面材において、
    前記面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の初期剛性(K)として2.2kN/10-3rad以上の値を確保すべく、7.5N/mm2以上の前記圧縮強度を保有することを特徴とする、石膏系耐力面材。
  28. 請求項25に記載された石膏系耐力面材において、
    前記面内せん断試験によって測定される前記耐力壁の物性として、
    (1)7.2×10-3rad以下の降伏点変位(δv)、
    (2)4.2以上の塑性率(μ)、
    (3)7.7kN以上の終局耐力(Pu)の補正値(Pu')、及び
    (4)7.7kN以上の値であって、前記終局耐力(Pu)の補正値(Pu')よりも大きい降伏耐力(Py)、
    より構成される諸物性のうち少なくとも1つの物性が、前記面密度又は面重量及び前記釘側面抵抗の設定と、パンチングシェア現象を抑制し又はパンチングアウト破壊を低減すべく設定された前記釘の頭径、胴径、及び頭部の面積/胴部の断面積の面積比の設定と、によって確保されることを特徴とする、石膏系耐力面材。
  29. 請求項25に記載された石膏系耐力面材において、
    前記石膏系耐力面材は、980N以下の釘側面抵抗を有することを特徴とする、石膏系耐力面材。
  30. 請求項25に記載された石膏系耐力面材において、
    前記耐力面材の前記主材又は前記芯材には、無機質繊維及び/又は有機系強度向上材が配合されていることを特徴とする、石膏系耐力面材。
  31. 請求項25に記載された石膏系耐力面材において、
    前記石膏系耐力面材の主材又は芯材には、オルガノポリシロキサン化合物が配合されていることを特徴とする、石膏系耐力面材。
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