JP7356791B2 - 香味および保存安定性が向上した果実酒およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)1~100ppbのオークラクトンおよび0.01~10ppmのエラグ酸を含んでなる、果実酒。
(2)ワインである、(1)に記載の果実酒。
(3)亜硫酸無添加ワインである、(1)または(2)に記載の果実酒。
(4)総亜硫酸の含有量が0~350ppmである、(1)~(3)のいずれかに記載の果実酒。
(5)総亜硫酸の含有量が0~180ppmである、(1)~(4)のいずれかに記載の果実酒。
(6)総亜硫酸の含有量が0~30ppmである、(1)~(5)のいずれかに記載の果実酒。
(7)果実酒を製造する方法であって、前記果実酒におけるオークラクトンの含有量を1~100ppb、エラグ酸の含有量を0.01~10ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
(8)果実酒を製造する方法であって、果汁の発酵前、発酵中および発酵後からなる群から選択される少なくとも1つにおいて、前記果汁を含む果汁組成物と、前記果汁組成物に対して0.1g/L~6g/Lのオークチップとを、-5~30℃で4時間~3週間接触させる工程を含んでなる、方法。
(9)前記果汁組成物とオークチップとを接触させる工程が、前記果汁に対して0.25g/L~1g/Lのオークチップを、8~20℃で24~48時間接触させることにより行われる、(8)に記載の方法。
(10)前記果汁がブドウ果汁である、(8)または(9)に記載の方法。
(11)前記オークチップの明度が20~70である、(8)~(10)のいずれかに記載の方法。
(12)果実酒の香味を改善する方法であって、前記果実酒におけるオークラクトンの含有量を1~100ppb、エラグ酸の含有量を0.01~10ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
(13)果実酒の香味の保存安定性を改善する方法であって、前記果実酒におけるオークラクトンの含有量を1~100ppb、エラグ酸の含有量を0.01~10ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
また、大きさとしては、特に限定されないが、好ましくは長さが3~12mmであり、幅が1~8mmであり、厚さが0.5~5mmである。また、粉末状である場合には、好ましくは長さが3mm未満であり、幅が1mm未満であり、厚さが1mm未満である。また、トースティングとしては、特に限定されないが、いわゆるライトトースティング、ミディアムトースティング、ヘビートースティングのいずれであってもよく、トースティングなしでも良く、好ましくは明度(L*a*b*色空間におけるL*値。L*=0が黒、L*=100が白を表す。)が20~70であり、より好ましくは30~50であり、さらにより好ましくは40である。
「おいしい酸化防止剤無添加ワイン<厳選素材>赤」(メルシャン株式会社製)に、オークラクトンおよびエラグ酸の含有量がそれぞれ下記表1となるように、トランス-オークラクトンおよびエラグ酸を添加し、得られたサンプルをそれぞれ180mL容量のビンに詰め、55℃の恒温器内で6日間保存した(添加サンプル1~6)。また、オークラクトンおよびエラグ酸のいずれも添加しないサンプルを180mL容量のビンに詰め、5℃または55℃の恒温器内でそれぞれ6日間保存した(非添加サンプル)。
オークラクトンおよびエラグ酸の含有量を調整することによる保存安定性向上効果を確認するための評価項目として、香味に関する評価項目を設定した。具体的には、「香り」について「果実の香り」、「生臭い香り」および「金属ぽい香り」の3つの項目を、「味」について「果実の味わい」、「複雑な味わい」、「味の厚み」および「収斂味」の4つの項目を設定した。いずれの評価項目についても、オークラクトンおよびエラグ酸のいずれも添加しない5℃保管サンプル(対照)の評価点を3点とし、各サンプルを弱い(1点)から強い(5点)の間で評価した。
保存安定性に関する香味評価の結果を、「香り」については図1-1に、「味」については図1-2-1および1-2-2に示す。なお、各評価項目について、同一の条件(55℃6日間)で保管した添加サンプルと非添加サンプルとの間でStudentのT検定を行った。各図中の「※」は、非添加サンプルに対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
(1)サンプルの調製
「おいしい酸化防止剤無添加ワイン<厳選素材>赤」(メルシャン株式会社製)に、オークチップ(Oak in Wine E-L40、DEMPTOS社製)を1g/Lとなるように添加し、8℃で48時間浸漬した。浸漬完了後、得られたオークチップ浸漬品を濾過し、濾液を180mL容量のビンに詰めた後、5℃で保管して浸漬サンプル(5℃保管)を得た。また、オークチップ浸漬を行わなかった以外は上記浸漬サンプル(5℃保管)と同様の方法により、非浸漬サンプル(5℃保管)を得た。さらに、上記オークチップ浸漬品、およびオークチップ浸漬を行わなかったオークチップ非浸漬品をそれぞれ濾過し、濾液を180mL容量のビンに詰めた後、それぞれ55℃の恒温器内で3日間または6日間保管して、浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)および非浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)を得た。
各サンプル中のオークラクトンの含有量は、GC-MS/MSおよびCIS-TDUにより測定した。具体的には、5mlのサンプルをそれぞれ10mlのバイアルに入れ、内部標準として用いた4-ノナノールを添加した後、Twister(GERSTEL社製)を用いて1時間抽出して測定サンプルを得た。一方、エタノール12%、酒石酸3000mg/L、pH3.2となるように調整したモデルワイン5mlを10mlのバイアルに入れて、トランス-オークラクトン(トランス-クエルクスラクトン)(CAS No.39638-67-0、シグマ社製)をそれぞれ36.92ng/ml、92.3ng/ml、276.9ng/ml、830.7ng/mlおよび2492.1ng/mlの各濃度になるように添加した後、Twisterを用いて1時間抽出して検量線作成用サンプルを得た。得られた検量線作成用サンプルを用いて検量線を作成した。なお、トランス-オークラクトンの異性体であるシス-オークラクトン(シス-クエルクスラクトン)は、上記で得られたトランス-オークラクトンの検量線を用いて定量した。
GC-MS/MSおよびCIS-TDUの分析機器および分析条件を、それぞれ表2および3に示す。
各サンプル中のエラグ酸の含有量は、LC/MS/MSにより測定した。具体的には、0.1%のHCl-MeOHを用いて、サンプルを0.1ppm、0.5ppm、1ppmおよび2ppmのそれぞれの濃度になるようにサンプルを希釈して検量線作成用のサンプルを得た。得られた検量線作成用サンプルを用いて検量線を作成した。
オークチップ浸漬による香味向上効果を確認するための官能評価を、浸漬サンプル(5℃保管)および非浸漬サンプル(5℃保管)を用いて行った。官能評価の評価項目として、「香り」については「果実の香り」、「生臭い香り」および「金属ぽい香り」の3つの項目を、「味」については「果実の味わい」、「複雑な味わい」、「味の厚み」および「収斂味」の4つの項目を設定した。いずれの評価項目についても、非浸漬サンプル(5℃保管)の評価点を3点(対照)とし、浸漬サンプル(5℃保管)を弱い(1点)から強い(5点)の間で評価した。
官能評価の結果を、「香り」については図2に、「味」については図3に示す。なお、各評価項目について、対照の評価点3点に対してStudentのT検定を行った。図中の「※」は、対照に対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
オークチップ浸漬による保存安定性向上効果を確認するために、総合的な香味の官能評価を、各保管条件で保管した非浸漬サンプルおよび浸漬サンプルを用いて行った。総合的な香味について、非浸漬サンプル(5℃保管)および浸漬サンプル(5℃保管)の評価点をそれぞれ5点(対照)とし、各保管条件で保管した非浸漬サンプルおよび浸漬サンプルを以下の評価基準により評価した。
5点:5℃で保管した対照と比較して香味の差を認めない
4点:5℃で保管した対照と比較して香味がやや劣る
3点:5℃で保管した対照と比較して香味が劣るが、品質としては許容範囲内である(品質限界)
2点:5℃で保管した対照と比較して香味が劣り、品質が保持されているとは言えない
1点:5℃で保管した対照と比較して香味が著しく劣る
保存安定性に関する総合的な香味評価の結果を図4に示す。なお、総合的な香味評価について、温度および光照射の有無について同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルと浸漬サンプルとの間でStudentのT検定を行った。図中の「※」は、浸漬サンプルにおいて、同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルに対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
オークチップ浸漬による保存安定性向上効果を確認するための官能評価を、浸漬サンプル(5℃保管)および非浸漬サンプル(5℃保管)を用いて行った。官能評価の評価項目として、上記「(4)官能評価」と同様の「香り」および「味」の7つの項目を設定した。いずれの評価項目についても、非浸漬サンプル(5℃保管)および浸漬サンプル(5℃保管)の評価点を3点(対照)とし、各保管条件で保管した非浸漬サンプルおよび浸漬サンプルを弱い(1点)から強い(5点)の間で評価した。
保存安定性に関する項目ごとの香味評価の結果を、「香り」については図5に、「味」については図6-1および6-2に示す。なお、各評価項目について、温度および光照射の有無について同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルと浸漬サンプルとの間でStudentのT検定を行った。図中の「※」は、浸漬サンプルにおいて、同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルに対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
(1)サンプルの調製
「ビストロ<濃い赤>」(メルシャン株式会社製)に、オークチップ(Oak in Wine E-L40、DEMPTOS社製)を1g/Lとなるように添加し、15℃で36時間浸漬した。浸漬完了後、得られたオークチップ浸漬品を濾過し、濾液を180mL容量のビンに詰めた後、5℃で保管して浸漬サンプル(5℃保管)を得た。また、オークチップ浸漬を行わなかった以外は上記浸漬サンプル(5℃保管)と同様の方法により、非浸漬サンプル(5℃保管)を得た。さらに、上記オークチップ浸漬品、およびオークチップ浸漬を行わなかったオークチップ非浸漬品をそれぞれ濾過し、濾液を180mL容量のビンに詰めた後、それぞれ55℃の恒温器内で3日間または6日間保管して、浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)および非浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)を得た。
オークチップ浸漬による香味向上効果を確認するために、実施例2と同様に「香り」および「味」の7つの項目を設定し、実施例2と同様の方法により、香味に関する官能評価を行った。
官能評価の結果を、「香り」については図7に、「味」については図8に示す。なお、各評価項目について、対照の評価点3点に対してStudentのT検定を行った。図中の「※」は、対照に対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
オークチップ浸漬による保存安定性向上効果を確認するために、実施例2と同様に「香り」および「味」の7つの項目を設定し、実施例2と同様の方法により、保存安定性に関する項目ごとの香味評価を行った。
保存安定性に関する項目ごとの香味評価の結果を、「香り」については図9に、「味」については図10-1および10-2に示す。なお、各評価項目について、温度および光照射の有無について同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルと浸漬サンプルとの間でStudentのT検定を行った。図中の「※」は、浸漬サンプルにおいて、同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルに対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
(1)サンプルの調製
「おいしい酸化防止剤無添加ワイン<厳選素材>白」(メルシャン株式会社製)に、オークチップ(Oak in Wine E-L40、DEMPTOS社製)を0.25g/Lとなるように添加し、20℃で24時間浸漬した。浸漬完了後、得られたオークチップ浸漬品を濾過した。得られた濾液を、溶存酸素が1ppm以下になるまで窒素パージし、180mL容量のビンに詰めた後、5℃で保管して浸漬サンプル(5℃保管)を得た。また、オークチップ浸漬を行わなかった以外は上記浸漬サンプル(5℃保管)と同様の方法により、非浸漬サンプル(5℃保管)を得た。さらに、上記オークチップ浸漬品、およびオークチップ浸漬を行わなかったオークチップ非浸漬品をそれぞれ濾過し、濾液を上記と同様の方法により窒素パージし、180mL容量のビンに詰めた後、それぞれ55℃の恒温器内で3日間または6日間保管して、浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)および非浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)を得た。
オークチップ浸漬による香味向上効果を確認するために、実施例2と同様に「香り」および「味」の7つの項目を設定し、パネルを9名としたこと以外は実施例2と同様の方法により、香味に関する官能評価を行った。
官能評価の結果を、「香り」については図11に、「味」については図12に示す。なお、各評価項目について、対照の評価点3点に対してStudentのT検定を行った。
図中の「※」は、対照に対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
オークチップ浸漬による保存安定性向上効果を確認するために、実施例2と同様に「香り」および「味」の7つの項目を設定し、パネルを9名としたこと以外は実施例2と同様の方法により、保存安定性に関する項目ごとの香味評価を行った。
保存安定性に関する項目ごとの香味評価の結果を、「香り」については図13に、「味」については図14-1および14-2に示す。なお、各評価項目について、温度および光照射の有無について同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルと浸漬サンプルとの間でStudentのT検定を行った。図中の「※」は、浸漬サンプルにおいて、同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルに対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
(1)サンプルの調製
「ビストロ白」(メルシャン株式会社製)に、オークチップ(Oak in Wine E-L40、DEMPTOS社製)を0.25g/Lとなるように添加し、20℃で24時間浸漬した。浸漬完了後、得られたオークチップ浸漬品を濾過し、濾液を180mL容量のビンに詰めた後、5℃で保管して浸漬サンプル(5℃保管)を得た。また、オークチップ浸漬を行わなかった以外は上記浸漬サンプル(5℃保管)と同様の方法により、非浸漬サンプル(5℃保管)を得た。さらに、上記オークチップ浸漬品、およびオークチップ浸漬を行わなかったオークチップ非浸漬品をそれぞれ濾過し、濾液を180mL容量のビンに詰めた後、それぞれ55℃の恒温器内で3日間または6日間保管して、浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)および非浸漬サンプル(55℃3日保管または55℃6日保管)を得た。
オークチップ浸漬による香味向上効果を確認するために、実施例2と同様に「香り」および「味」の7つの項目を設定し、実施例2と同様の方法により、香味に関する官能評価を行った。
官能評価の結果を、「香り」については図15に、「味」については図16に示す。なお、各評価項目について、対照の評価点3点に対してStudentのT検定を行った。
図中の「※」は、対照に対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
オークチップ浸漬による保存安定性向上効果を確認するために、実施例2と同様の方法により、保存安定性に関する総合的な香味評価を行った。
保存安定性に関する総合的な香味評価の結果を図17に示す。なお、総合的な香味評価について、温度および光照射の有無について同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルと浸漬サンプルとの間でStudentのT検定を行った。図中の「※」は、浸漬サンプルにおいて、同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルに対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
オークチップ浸漬による保存安定性向上効果を確認するために、実施例2と同様に「香り」および「味」の7つの項目を設定し、実施例2と同様の方法により、保存安定性に関する項目ごとの香味評価を行った。
保存安定性に関する項目ごとの香味評価の結果を、「香り」については図18に、「味」については図19-1および19-2に示す。なお、各評価項目について、温度および光照射の有無について同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルと浸漬サンプルとの間でStudentのT検定を行った。図中の「※」は、浸漬サンプルにおいて、同一の保管条件で保管した非浸漬サンプルに対して危険率5%で有意に差があることを意味する。
Claims (9)
- 1~100ppbのオークラクトンおよび0.02~10ppmのエラグ酸を含み、
総亜硫酸の含有量が0~30ppmである、果実酒(マロラクティック発酵を経て得られるワインを除く)。 - ワインである、請求項1に記載の果実酒。
- 亜硫酸無添加ワインである、請求項1または2に記載の果実酒。
- 果実酒(マロラクティック発酵を経て得られるワインを除く)を製造する方法であって、前記果実酒におけるオークラクトンの含有量を1~100ppb、エラグ酸の含有量を0.02~10ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
- 果実酒(マロラクティック発酵を経て得られるワインを除く)を製造する方法であって、果汁の発酵前、発酵中および発酵後からなる群から選択される少なくとも1つにおいて、前記果汁を含む果汁組成物と、前記果汁組成物に対して0.25g/L~1g/Lのオークチップとを、8~20℃で24~48時間接触させる工程を含んでなる、方法。
- 前記果汁がブドウ果汁である、請求項5に記載の方法。
- 前記オークチップの明度が20~70である、請求項5または6に記載の方法。
- 果実酒(マロラクティック発酵を経て得られるワインを除く)の香味を改善する方法であって、前記果実酒におけるオークラクトンの含有量を1~100ppb、エラグ酸の含有量を0.02~10ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
- 果実酒(マロラクティック発酵を経て得られるワインを除く)の香味の保存安定性を改善する方法であって、前記果実酒におけるオークラクトンの含有量を1~100ppb、エラグ酸の含有量を0.02~10ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
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オークタンニンについてご存じですか?,Chene Developpement Newsletter,No.6,2007年 |
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