JP2016002003A - 複数種の酵母を利用した果実酒とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】HDMF濃度が増強された果実酒又は甘味果実酒の製造方法及び果実酒又は甘味果実酒を提供する。
【解決手段】HDMF配糖体を含有する果汁に第1の酵母を添加することにより発酵を行い、前記第1の酵母よりアルコール耐性が高い第2の酵母を前記果汁に添加することにより発酵を行うことにより、HDMF濃度を増強させることを含む、果実酒又は甘味果実酒の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本願は、果実の発酵方法、果実酒又は甘味果実酒の製造方法、及び当該方法により製造される果実酒又は甘味果実酒に関する。
酒類の製造において、発酵条件は最終製品の品質に影響する重要な因子である。従来から、発酵条件を制御して、最終製品に新たな風味を付与する試みがなされてきている。例えば、複数の酵母を用いて果汁を発酵することによって、既存の製品にはないユニークな風味が付与された酒類を製造する試みがなされている。
平5−44266(特許文献1)には、果汁を第1の発酵に供した後、更に、第1の酵母とは異なる酵母を用いる第2の発酵に供することによる、酒類の製造方法が記載されている。平7−167(特許文献2)には、2種以上の異なる酵母を混合培養することによる、酸味の増加・糖酸比率の調整が容易なワインの製造方法が記載されている。昭63−230069(特許文献3)には、S.ルウシキーを単独又は他の酵母と混合接種してアルコール発酵を行うことによって、或いはアルコール発酵終了後にS.ルウシキーを接種することによって、リンゴ酸を増加させる、高品質ワインの製造方法が記載されている。
そして、ワインの香りに関し、マスカット・ベリーAのような特定のブドウ品種を原料として製造されたワインには、他のワインに比して、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン(以下、「HDMF」とする。)という香り成分の濃度が高いことが知られている(非特許文献1)。
平5−44266 平7−167 昭63−230069
小林弘憲、丹澤史子、松山修平、佐々木佳菜子、大澤和人、生駒元、斉藤浩、J.ASEV Jpn.,Vol.24,No.2(2013)
しかし、発酵を制御することにより、HDMFを増強させ、HDMFに由来する香りを特徴とする果実酒や甘味果実酒を得るという試みは、これまで行われていない。本発明は、果汁を発酵させることによりHDMFを増強する方法、及びHDMFが増強された、果実酒又は甘味果実酒の製造方法を提供することを目的とする。
以上の事情に鑑み、本願の発明者は、果実酒の果汁に含まれるHDMFの配糖体に着目し、鋭意検討を行った。その結果、果汁の発酵において、特定の酵母の組み合わせを用い、かつ発酵を複数回行うことによって、発酵後のHDMF濃度を顕著に増強できることを見出した。このような知見に基づいて、本発明を完成させた。
本発明は、限定されるものではないが、以下に関する。
(1)果汁を発酵させることによって2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン(HDMF)を生成することを含む、果実酒又は甘味果実酒の製造方法であって、前記果汁はHDMF配糖体を含有し、前記の発酵は、前記果汁に第1の酵母を添加した後、第2の酵母を添加することにより行われ、そして前記第2の酵母は前記第1の酵母よりアルコール耐性又はアルコール発酵能が高い、前記製造方法。
(2)前記の発酵において、添加した前記第1の酵母の数に対して、酵母の総数が1.1倍以上になった後、前記第2の酵母を添加する、(1)に記載の方法。
(3)前記の発酵において、前記第1の酵母が添加された果汁の比重が1.09g/cm以下に低下した後、前記第2の酵母を添加する、(1)に記載の方法。
(4)前記第1の酵母を添加し、24時間以上経った後、前記第2の酵母を添加する、(1)に記載の方法。
(5)前記第1の酵母は、前記第2の酵母に比べ、単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性が高い、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記果汁にブドウ果汁が含まれる、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記果汁にイチゴ果汁、パイナップル果汁、又はその組合わせが含まれる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記果実酒がワインである、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(9)前記第1の酵母がハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属であり、前記第2の酵母がサッカロマイセス(Saccharomyces)属である、(1)に記載の方法。
(10)HDMFを2000μg/l以上含む、果実酒又は甘味果実酒。
(11)HDMF配糖体を含有する果汁に第1の酵母を添加することにより、発酵を行うこと、及び前記第1の酵母よりアルコール耐性が高い第2の酵母を前記果汁に添加することにより、発酵を行ない、HDMF濃度を増強させることを含む、果汁の発酵方法。
(12)HDMFを2000μg/l以上含む、発酵させた果汁。
本発明によれば、果汁に含まれるHDMF配糖体から、HDMFを効率よく生成することができるため、HDMFの濃度が高い発酵させた果汁、ひいてはHDMFの濃度が高い果実酒又は甘味果実酒を得ることができる。特定の酵母の組み合わせを用いて、果汁を特定の条件の下で複数回発酵させることによる、上記のような効果は知られておらず、全くの予想外であった。
図1は、イチゴ果汁をβ−グルコシダーゼで処理することによる、HDMF配糖体とHDMFの濃度変化を示す。HDMFの標準品のピークに基づいて試料中のHDMFのピークを特定した。 図2は、酵母のHDMFの生産能を示す。酵母を用いてイチゴ果汁を発酵させ、果汁中のHDMF濃度を測定した。◆:サッカロマイセス・セレビシエ、■:ハンセニアスポラ・ビナエ、△:ハンセニアスポラ・ウバラム。 図3は、酵母による果汁の発酵における、酵母の総数の変化を示す。■:サッカロマイセス・セレビシエ、○:ハンセニアスポラ・ビナエ。 図4は、酵母による果汁の発酵における、果汁の比重の変化を示す。■:サッカロマイセス・セレビシエ、○:ハンセニアスポラ・ビナエ。 図5は、酵母による果汁の発酵における、HDMFの変化を示す。 図6は、酵母による果汁の発酵における、酵母の総数の変化を示す。■:サッカロマイセス・セレビシエを用いた1回の発酵、◇:ハンセニアスポラ・ビナエを用いた1回の発酵、△:ハンセニアスポラ・ビナエを用いた1回目の発酵を行った後、サッカロマイセス・セレビシエを用いた2回目の発酵を行った。 図7は、ハンセニアスポラ・ビナエを用いた1回目の発酵を行った後、サッカロマイセス・セレビシエを用いた2回目の発酵を行った場合における、HDMFの変化を示す。
発明の実施をするための形態
<果実酒又は甘味果実酒の製造方法>
本発明は、果汁を発酵させることによってHDMFを生成することを含む、果実酒又は甘味果実酒の製造方法であって、前記果汁はHDMF配糖体を含み、前記の発酵は、第1の酵母を前記果汁に添加した後、第2の酵母を添加することによって行われ、そして、前記第2の酵母は前記第1の酵母よりアルコール耐性が高い、前記製造方法を提供する。
果実酒及び甘味果実酒
本明細書でいう果実酒とは、本発明の方法に従って果汁を発酵することによって得られる、酒飲料である。果実酒の例として、ブドウ果汁を発酵させることにより得られるワイン、イチゴ果汁を発酵させることにより得られるイチゴ酒、及びパイナップル果汁を発酵させることにより得られるパイナップル酒が挙げられる。本明細書でいう甘味果実酒とは、果実酒に該当しない、(1)果実又は果実に加水したものに糖類を添加し、これを発酵させることにより得られる酒類、(2)前記(1)の酒類に糖類、香味料、色素、ブランデー等を加えることにより得られる酒類、(3)前記(1)又は(2)の酒類に植物を浸漬し、植物由来の成分を浸出させた酒類をいう(日本洋酒酒造組合ホームページ)。即ち、甘味果実酒には、果実酒にブランデー等の蒸留酒を添加することによってアルコール度数を高めたもの、及び果実酒に薬草や香草等の植物を浸漬し、当該植物由来の成分を浸出させたもの等が含まれる。甘味果実酒の例として、白ワインにワインの蒸留液を混和し、シェリー酵母の存在下で樽貯蔵することにより得られるシェリー、及びワインに薬草や色素を添加することにより得られるベルモット等が挙げられる(国税庁ホームページ)。
上記のように、果実酒と甘味果実酒は、日本国の酒税法の観点から区別されているが、いずれも果汁を原料とすることにおいて共通するため、本発明の方法により製造することができる。
HDMF
本明細書でいうHDMFは、フラネオール(フィルメニッヒ(Firmenich)社の登録商標)とも呼ばれ、種々のワインにおける重要な香り成分として知られている化合物である(Pavla Polaskova et al., Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 2478-2489)。本発明においては、果汁が酵母によって発酵されると、当該果汁に存在するHDMF配糖体からHDMFが生成する。ここでいうHDMF配糖体は、HDMFグルコシドである。HDMFは、果実酒及び甘味果実酒においては、イチゴ様、キャラメル様、あるいはキャンディ様の香りに寄与することが期待できる。例えば、ワインにおいて、HDMFを増強することにより、イチゴ様、キャラメル様、あるいはキャンディ様の香りの特徴を付与できることが期待できる。
果汁
本明細書でいう果汁とは、本発明による製造方法において、果実酒及び甘味果実酒の主な原料であって、HDMFの配糖体を含むものであればよい。そして、本発明の果汁は、1種類の果汁を単独で用いてもよいし、2種類以上の果汁を組み合わせて用いてもよい。本発明において使用できる果汁は、特に限定されないが、ブドウ果汁、イチゴ果汁、パイナップル果汁等が挙げられる。ここで、前記ブドウ果汁は、例えば、マスカット・ベリーAから調製することができる。
本発明の果汁において用いる果汁の1態様として、ブドウ果汁を単独で用いることが挙げられる。別の態様として、イチゴ果汁を単独で用いることが挙げられる。更に別の態様として、ブドウ果汁とイチゴ果汁を組み合わせて用いることが挙げられる。更にまた別の態様として、ブドウ果汁とパイナップル果汁を組み合わせて用いることができる。ここで、果汁として、2種類の果汁を組み合わせて用いる場合、第1の果汁及び第2の果汁の混合体積比は、例えば、98:2〜2:98、90:10〜10:90、70:30〜30:70、60:40〜40:60に設定することができる。
果汁のHDMF配糖体の含量は、当該果汁が酵母により発酵されることによって、果汁中のHDMF濃度が上昇するような含量であればよく、例えば、次のような基準で設定することができる。果汁のHDMF配糖体の含量について、下限をHDMFの閾値に基づいて設定し、上限を果実酒又は甘味果実酒の風味全体に及ぼすHDMFの影響に基づいて設定することができる。例えば、HDMF配糖体の含量に関し、下限を2000μg/l以上、2500μg/l以上、3000μg/l以上に設定することができ、上限を11000μg/l以下、10000μg/l以下、8000μg/l以下、6000μg/l以下に設定することができる。果汁のHDMF配糖体の含量が11000μg/lを超える場合、HDMFが過剰に生成し、果実酒又は甘味果実酒の風味全体のバランスを著しく変化させる可能性がある。果汁のHDMF配糖体の含量は、用いる果汁に含まれるHDMF配糖体により調整することができる。例えば、HDMF配糖体を含有するブドウ果汁、イチゴ果汁、及びパイナップル果汁等は、本発明の果汁として好ましく用いることができる。或いは、天然物から抽出したHDMF配糖体や有機合成により得られるHDMF配糖体を果汁に添加することによって、当該配糖体含量を調整することもできる。
発酵に用いる酵母
本発明において、果汁の発酵には酵母を用いる。発酵中に、果汁に含まれるHDMF配糖体が、β−グルコシダーゼにより分解され、HDMFが生成される。β−グルコシダーゼは、酵母内に存在するものであっても、発酵中に果汁に分泌されるものであってもよい。
そして、本発明の方法においては、果汁の発酵が進むに従い、アルコール度数が上昇するため、発酵が進んでから開始される2回目の発酵においては、アルコール耐性が高い酵母を用いることが好ましい。ここで、アルコール耐性が高い酵母とは、1回目の発酵で用いる酵母に比べてアルコール耐性が高い酵母を意味する。よって、アルコール耐性が高い酵母は、1回目の発酵で用いる酵母のアルコール耐性との関係で相対的に定めることができる。即ち、1回目の発酵で用いる第1の酵母を最初に定め、そして当該酵母に比べてアルコール耐性が高い酵母を2回目の発酵で用いる第2の酵母に定めることができる。或いは、2回目の発酵で用いる第2の酵母を最初に定め、そして当該酵母に比べてアルコール耐性が低い酵母を1回目の発酵で用いる第1の酵母に定めてもよい。なお、本明細書において、1回目の発酵で用いる酵母を「第1の酵母」、2回目の発酵で用いる酵母を「第2の酵母」ということもある。ここで、酵母のアルコール耐性は、当業者に知られたいずれの方法によっても評価することができる。例えば、発酵中の果汁の比重を確認する方法が挙げられる。果汁の比重は、果汁の糖濃度を反映するため、酵母の発酵能が高い程、果汁の比重が速く低下する。そして、発酵が進行すると、アルコール度数が高くなる。即ち、発酵全体を通して果汁の比重を速く低下させるためには、酵母は、発酵能だけでなく、アルコール耐性を有している必要がある。よって、発酵における果汁の比重を測定し、比重の低下速度に基づいて、酵母のアルコール耐性を評価することができる。或いは、発酵中の果汁のHDMF含有量を確認することによっても、酵母のアルコール耐性を評価することができる。発酵において、果汁に存在するHDMF配糖体が、酵母の作用により分解され、HDMFが生成する。発酵全体を通してHDMFを生成させるには、酵母は、HDMFの生成能だけでなく、アルコール耐性を有している必要がある。よって、発酵における果汁のHDMF含有量の変化に基づいて、酵母のアルコール耐性を評価することができる。
本発明の方法において、アルコール耐性を基準として酵母を選択する場合の一態様として、1回目の発酵に用いる第1の酵母としてサッカロマイセス属以外の酵母を選択し、2回目の発酵に用いる第2の酵母としてサッカロマイセス(Saccharomyces)属の酵母を選択することができる。サッカロマイセス属は、一般的に、アルコール耐性が高いことが知られている。第1の酵母として用いることのできるサッカロマイセス属以外の酵母として、例えば、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属、トルラスポラ(Torulaspora)属等の酵母が挙げられる。さらに、ハンセニアスポラ属の酵母として、例えば、ハンセニアスポラ・ビナエ(Hanseniaspora・vineae)及びハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora・uvarumu)等が挙げられる。そして、第2の酵母として用いることのできるサッカロマイセス属の酵母として、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces・cerevisiae)、サッカロマイセス・バイアヌス(Saccharomyces・bayanus)等が挙げられる。
本発明において、果汁の発酵に用いる酵母は、別の基準に従って選択することができる。例えば、酵母のアルコール発酵能を基準として、酵母を選択することができる。2回目の発酵において用いる第2の酵母は、アルコール発酵能が高い酵母であることが好ましい。ここで、アルコール発酵能が高い酵母とは、1回目の発酵で用いる酵母のアルコール発酵能との関係で相対的に定めることができる。即ち、1回目の発酵で用いる第1の酵母を定め、当該酵母に比べてアルコール発酵能が高い酵母を2回目の発酵で用いる第2の酵母に定めることができる。或いは、2回目の発酵で用いる第2の酵母を最初に定め、当該酵母に比べて、アルコール発酵能が低い酵母を1回目の発酵に用いる第1の酵母に定めてもよい。ここで、酵母のアルコール発酵能は、当業者に知られたいずれの方法によっても評価することができる。例えば、発酵中の果汁を任意の時間でサンプリングし、アルコール度数を測定することによって評価することができる。アルコール度数は、当業者に知られたいずれの方法によって測定することができるが、例えば、国税庁所定分析法により測定することができる。本発明の方法において、アルコール発酵能を基準として酵母を選択する場合の一態様として、1回目の発酵に用いる第1の酵母としてサッカロマイセス属以外の酵母を選択し、2回目の発酵に用いる第2の酵母としてサッカロマイセス属の酵母を選択することができる。サッカロマイセス属は、一般的な酵母よりもアルコール発酵能が高いことが知られている。第1の酵母として用いることのできるサッカロマイセス属以外の酵母として、例えば、ハンセニアスポラ属、トルラスポラ属等の酵母が挙げられる。さらに、ハンセニアスポラ属の酵母として、例えば、ハンセニアスポラ・ビナエ及びハンセニアスポラ・ウバラム等が挙げられる。そして、第2の酵母として用いることのできるサッカロマイセス属の酵母として、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・バイアヌス等が挙げられる。
本発明において用いる酵母を選択するために採用できる別の基準として、酵母の単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性を挙げることができる。β−グルコシダーゼは、HDMF配糖体の分解を触媒する酵素であり、HDMFの生産効率に影響する。よって、β−グルコシダーゼ生産能を有する酵母は、発酵果汁のHDMF濃度を増強させることに有用である。β−グルコシダーゼ生産能を有することは、第1の酵母及び第2の酵母のいずれにとっても、好ましい特性である。また、第1の酵母は、前記第2の酵母に比べ、単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性が高い方がよい。その場合、第1の酵母と第2の酵母は、β−グルコシダーゼ活性との関係で相対的に定めることができる。即ち、1回目の発酵で用いる第1の酵母を定め、当該酵母に比べて単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性が低い酵母を2回目の発酵で用いる第2の酵母に定めることができる。或いは、2回目の発酵で用いる第2の酵母を最初に定め、当該酵母に比べて単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性が高い酵母を1回目の発酵に用いる第1の酵母に定めてもよい。ここで、酵母の単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性は、当業者に知られたいずれの方法を用いて測定してもよい。例えば、比色法により測定することができる。本発明の方法において、単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性を基準に発酵に用いる酵母を選択する場合の一態様として、サッカロマイセス属以外の酵母及びサッカロマイセス属の酵母を選択することができる。サッカロマイセス属以外の酵母として、例えば、ハンセニアスポラ属、トルラスポラ属等の酵母を挙げることができる。さらに、ハンセニアスポラ属として、例えば、ハンセニアスポラ・ビナエ及びハンセニアスポラ・ウバラム等を挙げることができる。そして、サッカロマイセス属の酵母として、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・バイアヌス等が挙げられる。より理解を容易にする目的で、サッカロマイセス属又はハンセニアスポラ属の酵母を一例にして説明する。G. Fia et al., Study of β-glucosidase production by wine-related yeasts during alcoholic fermentation. A new rapid fluorimetric method to determine enzymatic activity(Journal of applied microbiology, 2005)の表2に示すように、色々な酵母についてのβ−グルコシダーゼ活性の相対比較ができる。例えば、サッカロマイセス属の酵母よりもハンセニアスポラ属の酵母の方が、単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性が高いと判断できる。そして、それらの酵母を用いてブドウ果汁を発酵させた場合、β−グルコシダーゼ活性は、前記文献の図4及び5に示されるような挙動を示してもよい。例えば、第2の酵母をサッカロマイセス属とし、よりβ−グルコシダーゼ活性が高いハンセニアスポラ属の酵母を第1の酵母に用いてブドウ果汁を発酵させる場合、第2の酵母であるサッカロマイセス属を添加する前に、第1の酵母であるハンセニアスポラ属の酵母がそのβ−グルコシダーゼ活性により、発酵中の果汁に存在するHDMF配糖体を分解し、HDMF含有量を増やすことができる。
以上で説明した基準の1つを用いることにより、本発明において用いる酵母を選択することができる。即ち、アルコール耐性、アルコール生産能、及び単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性のいずれか1つにより、酵母を選択してもよい。或いは、以上で説明した基準の2つを用いることにより、本発明において用いる酵母を選択してもよい。例えば、アルコール耐性及びアルコール生産能、アルコール耐性及び単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性、又はアルコール生産能及び単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性の組み合わせにより、酵母を選択してもよい。更に、以上で説明した基準の全てを用いることにより、本発明において用いる酵母を選択してもよい。即ち、アルコール耐性、アルコール生産能、及び単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性の組み合わせにより、酵母を選択してもよい。
果汁の発酵
本発明においては、果汁の発酵は、複数種類の酵母を用いて複数回行う。例えば、少なくとも2種類の酵母を用い、2回の発酵を行うことができる。
1回目の発酵において、第1の酵母は、1×10〜2×10で添加することができる。ここでいう添加とは、果汁と第1の酵母が接触することを包含するものであり、例えば、果汁が収容された発酵容器等に第1の酵母を移送すること、第1の酵母が収容された容器に果汁を移送すること、並びにそれぞれ別の容器に収容された果汁と第1の酵母を、前後して或いは同時に、別の容器に移送することを含む。1回目の発酵のための温度は、第1の酵母が生育可能な温度であればよく、例えば、10〜35℃、15〜30℃、20〜25℃に設定することができる。
1回目の発酵を実施する時間は、第1の酵母を果汁と接触させてから、所定時間に設定することができる。発酵時間は、1回目の発酵を十分に進行させつつ、2回目の発酵を効率的に行うことができるような時間に設定することができる。例えば、第1の酵母を果汁に接触させてから10時間〜100時間、20時間〜80時間、30時間〜70時間に設定することができる。
或いは、1回目の発酵を、発酵に関するパラメーターを指標にして実施することができる。このようなパラメーターは、発酵中の果汁をサンプリングし、目的とするパラメーターを測定することによって行うことができる。例えば、1回目の発酵は、第1の酵母の増殖を指標にして行うことができる。より詳細には、1回目の発酵開始後の酵母の総数を監視し、酵母の総数が一定数に達するまで、1回目の発酵を行う。酵母の総数は、当業者によく知られたいずれの方法によっても測定することができる。例えば、発酵させた果汁を適宜希釈し、血球計算盤を用いて酵母の総数をカウントすることができる。本発明においては、別段の記載がない限り、当該方法を用いて酵母の総数を測定する。血球計算盤を用いる測定法より測定される酵母の総数を指標とする場合、発酵槽の下1/3より上の部分からサンプリングした果汁中の酵母の総数が、1×10〜1×10cells/ml、3×10〜5×10cells/ml、5×10〜3×10cells/mlに達するまで1回目の発酵を行うことができる。また、1回目の発酵は、発酵開始時に投入した酵母の数に対する倍率を指標にして行うこともできる。例えば、1回目の発酵開始時に投入した第1の酵母の数に対して、発酵中の果汁における酵母の総数が、1〜2倍、1.1〜1.5倍、1.1〜1.3倍に達するまで1回目の発酵を行うことができる。
酵母の総数を指標として1回目の発酵を行う場合、1回目の発酵開始後の酵母の総数を監視し、酵母の増殖が落ち着くまで、1回目の発酵を行うこともできる。ここで、本明細書でいう「増殖が落ち着くまで」とは、次のような現象として説明することができる。第1の酵母による発酵が開始すると、酵母は果汁内を循環しながら、高い増殖速度で活発に増殖する。発酵が進行するにつれて、酵母の増殖速度は徐々に低下し、やがて酵母の総数はプラトーに達する。この際、酵母による果汁内の循環の程度も徐々に弱くなり、発酵槽の下部に沈降する酵母の割合が高くなって行く。即ち、増殖が落ち着くまでとは、酵母の総数がプラトーに達することをいうが、発酵の進行に伴って、発酵槽の下部に沈降する酵母の割合が高くなるため、果汁中の実際の酵母の総数が、測定値と一致しないことがあり、特に、酵母の増殖速度が低下し始めた場合に、そのような傾向があることを見出している。例えば、酵母の増殖速度がピークを越えて低下に転じた場合、酵母は果汁内で沈降を開始するため、発酵槽の下1/3より上の部分からサンプリングした果汁を測定した場合、測定値が低下するため、酵母の総数が見かけ上、減少する。しかし、果汁内の酵母の実際の総数は、プラトーに達するが、減少はしないことを確認している。血球計算盤を用いる測定法より測定される酵母の総数を指標とする場合、発酵槽の下1/3より上の部分からサンプリングした果汁中の酵母の総数が、プラトーに達した後、1×10〜1×10cells/ml、3×10〜5×10cells/ml、5×10〜3×10cells/mlに達するまで1回目の発酵を行うことができる。また、1回目の発酵は、発酵開始時に投入した酵母の数に対する倍率を指標にして行うこともできる。発酵中の果汁における酵母の総数がプラトーに達した後、発酵開始時に投入した酵母の数に対する発酵中の酵母の総数の倍率が、1〜2倍、1.1〜1.5倍、1.1〜1.3倍に達するまで1回目の発酵を行うことができる。
別の例として、1回目の発酵は、発酵中の果汁の比重を指標にして行うことができる。ここで、果汁の比重は、果汁の糖濃度を反映するため、当該比重を測定することによって、発酵の進行度合いを把握することができる。果汁の比重は、当業者によく知られたいずれの方法によっても測定することができる。本明細書においては、別段の言及がなければ、比重計によって、果汁の比重を測定する。本発明においては、例えば、果汁の比重が1.03〜1.09g/cm、1.04〜1.08g/cm、1.04〜1.06g/cmに達するまで1回目の発酵を行うことができる。果汁の比重が下限値を下回ると、第2の酵母生育するための糖が不足し、2回目の発酵を十分に進行させることができず、上限値を上回ると、第1の酵母によるHDMFの生成が十分に行われる前に2回目の発酵が開始されることになるため、HDMFの生成を効率的に行うことができなくなるため、好ましくない。
以上で説明した指標:発酵時間、酵母の総数、果汁の比重、のいずれか1つ又は2以上の組み合わせに基づいて1回目の発酵から2回目の発酵に切り替えることができる。
2回目の発酵において、第2の酵母は、1×10〜2×10で添加することができる。ここでいう添加とは、1回目の発酵を経た果汁と第2の酵母が接触することを包含するものであり、例えば、1回目の発酵を経た果汁が収容された発酵容器等に第2の酵母を移送すること、第2の酵母が収容された容器に1回目の発酵を経た果汁を移送すること、並びにそれぞれ別の容器に収容された1回目の発酵を経た果汁と第2の酵母を、前後して或いは同時に、別の容器に移送することを含む。第2回目の発酵のための温度は、第2の酵母が生育可能な温度であればよく、例えば、10〜35℃、15〜30℃、20〜25℃に設定することができる。
2回目の発酵を実施する時間は、第2の酵母を果汁と接触させてから、所定時間に設定することができる。発酵時間は、2回目の発酵を十分に進行させつつ、後の工程を効率的に行うことができるような時間に設定することができる。例えば、第2の酵母を1回目の発酵を経た果汁に接触させてから10時間〜100時間、20時間〜80時間、30時間〜70時間に設定することができる。
或いは、2回目の発酵を、発酵に関するパラメーターを指標にして行うことができる。このようなパラメーターは、発酵中の果汁をサンプリングし、目的とするパラメーター、例えば、1回目の発酵と同様のパラメーターを指標にすることができる。より詳細には、2回目の発酵中の酵母が、増殖のピークを越えた後、増殖が落ち着いたと判断できる酵母の総数に達するまで2回目の発酵を行うことができる。例えば、2回目の発酵において、酵母の総数について血球計算盤を用いる方法により測定した値が1×10〜1×10cells/ml、3×10〜5×107cells/ml、5×10〜3×107cells/mlに達するまで2回目の発酵を行うことができる。或いは、2回目の発酵は、2回目の発酵の開始時に投入した酵母の数に対する酵母の総数の倍率を指標にして行うことができる。2回目の発酵開始時に投入した酵母の数に対する発酵中の酵母の総数が、1〜10倍、2〜7倍、3〜5倍に達するまで2回目の発酵を行うことができる。別の例として、2回目の発酵は、発酵中の果汁の比重を指標にして行うことができる。例えば、果汁の比重が1.00〜1.04g/cm、1.00〜1.03g/cm、1.00〜1.02g/cm、に達するまで2回目の発酵を行うことができる。
発酵後の工程
2回目の発酵を経た果汁を、そのまま果実酒又は甘味果実酒とすることができる。また、必要に応じ、当該果汁を濾過することにより、酵母等の固形分を除去した清澄液を得、当該清澄液を果実酒又は甘味果実酒とすることもできる。当該果汁の濾過は、限定されないが、例えば、遠心分離により行うことができる。
また、2回目の発酵を経た果汁は、果実酒又は甘味果実酒の中間体としても有用である。当該果汁を熟成させることによって、複雑かつ豊かな香りを有する果実酒又は甘味果実酒を得ることができる。限定されないが、熟成は、樽熟成または瓶熟成することによって行うことができる。別の例として、当該果汁を、他の果実酒又は甘味果実酒、日本酒、清酒、焼酎、ウイスキー等の酒飲料と混合するための中間体とすることもできる。また別の例として、当該果汁を、炭酸入り酒飲料の中間体とすることもできる。
<容器詰め果実酒又は甘味果実酒>
本発明の果実酒、甘味果実酒、及びその中間体は、例えば、容器に充填して容器詰めとすることが好ましい。容器詰めにすると、酸素との接触を極力防ぐことができるため保存の面で好ましく、また輸送の面でも好ましい。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、アルミ缶等の金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器、及びガラス瓶等の通常の形態で提供することができる。
<その他の成分>
本発明の製造方法においては、本発明の効果が発揮される限りにおいて、上記で説明した成分又は原料以外にも、食品添加物として認可されている成分、並びに古くから使用実績があり安全であると認識されている成分を広く用いることができる。このような成分は、製造過程での原料の劣化を防止し、中間体や製品の保存性を向上させる等の利点がある。限定されないが、このような成分の一例として、亜硫酸塩等が挙げられる。また、本発明の果実酒及び甘味果実酒にも、同様に、このような成分を含有させることができる。
本発明を以下に示す具体例を用いて説明する。以下の具体例は、本発明の理解を容易にすることを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
[試験例1]HDMFの生成機構
HDMFの配糖体がβ−グルコシダーゼにより分解され、HDMFが生成することを確認した。
HDMF配糖体を含油するイチゴ果汁を調製した。当該果汁にβ−グルコシダーゼを10U/mlで添加し、50℃で24時間処理した。一方、対照として、酵素無添加の果汁を同様の条件で処理した。酵素反応の停止は、反応液を90℃で10分間処理することによって行った。
液体クロマトグラフィー(LC)を用い、HDMF及びHDMF配糖体の量を測定した。測定対象の果汁および発酵させた果汁をよく混和し、メタノールで10倍に希釈した。当該希釈液を、PTFE製フィルター(東洋濾紙社製、孔径0.2μm、直径25mm)で濾過し、濾液を得た。当該濾液を、分析に供した。LCの測定条件を以下に示す。
使用機種
・LC:1290Infinity(Agilent Technologies社製)
LC条件
・移動相:(A)50mM酢酸アンモニウム水溶液、(B)メタノール
・流速:0.3ml/分
・グラジエント条件:0−14分(5%B)、14.5分(95%B)、15−19.5分(100%B)、20−25分(5%B)
・カラム:Waters社製 ACQUITY UPLC(R) BEH Phenyl 1.7μm 2.1×150mm×2本直列
・カラム温度:45℃
・導入量:2μl
・検出波長:280nm
上記の条件でHDMF(東京化成工業社製)の標準品を分析し、予め検量線を作成した。当該検量線を用い、試料中のHDMFを定量した。HDMFおよびHDMFの配糖体は1モルあたりの吸光度が同じと推定されたため、HDMFの配糖体の定量もHDMFの検量線を用いて行った。上記条件におけるHDMFの溶出時間は12.6分、HDMF配糖体の溶出時間は13.8分であった。
結果を図1に示す。β−グルコシダーゼで処理しなかったイチゴ果汁に比べ、処理した果汁では、フラネオール配糖体に対応すると思われるピーク面積が減少し、フラネオールに対応するピーク面積が増加することが観察された。よって、HDMFは、果汁においては、HDMF配糖体として存在していることが明らかとなった。
[試験例2]酵母によるHDMF生成の検討
HDMF配糖体を含む果汁を酵母により発酵させることによる、HDMF濃度が増加について検討した。
HDMF配糖体を含む果汁として、イチゴ果汁を用いた。明細書に記載した基準に従って、サッカロマイセス・セレビシエ、ハンセニアスポラ・ビナエ、及びハンセニアスポラ・ウバラムを選択した。
酵母のそれぞれをイチゴ果汁に添加し、25℃で発酵を行った。発酵開始前、発酵開始後3日及び6日にサンプリングし、試験例1に示した方法に従ってHDMFを検出し、濃度を算出した。
結果を図2に示す。選択した酵母のいずれを用いた場合にも、HDMFの濃度が増加した。ハンセニアスポラ・ビナエとハンセニアスポラ・ウバラムを発酵に用いた場合、発酵開始から3日までの方が、発酵開始後3日以降よりも、HDMFの生成効率が高いことが確認された。一方、サッカロマイセス・セレビシエを発酵に用いた場合、発酵開始から3日までよりも、発酵開始後3日以降の方が、HDMFの生成効率が高いことが確認された。このことより、ハンセニアスポラ・ビナエとハンセニアスポラ・ウバラムのようなハンセニアスポラ属の酵母は、アルコール度数が比較的低い発酵初期から中期において、効率的にHDMFを生成させることに有効であり、第1の酵母に適していることが理解できる。そして、サッカロマイセス・セレビシエのようなサッカロマイセス属の酵母は、アルコール度数が比較的高い発酵中期から後期において、効率的にHDMFを生成させることに有効であり、第2の酵母に適していることが理解できる。
[試験例3]
酵母の増殖又は果汁の比重と、果汁中のHDMF濃度の関連性について検討した。
南米産の白ブドウからブドウ果汁を調製した。欧州産のイチゴからイチゴ果汁を調製した。ブドウ果汁とイチゴ果汁を1:1で混合した。当該混合液は、転化糖度を約20%、HDMF配糖体を10600μg/lで含んでいた。当該混合液を滅菌処理し、果汁とした。
果汁に酵母を以下のように添加し、25℃で発酵を行った:
試料1 サッカロマイセス・セレビシエを10×10cells/mlとなるように添加;
試料2 ハンセニアスポラ・ビナエを10×10cells/mlとなるように添加。
発酵開始前(0日)、並びに発酵開始後1日〜9日の果汁を抜き取った。抜き取った果汁について、酵母の総数及び比重を測定した。そして、前記0日、3日、及び9日の果汁中のHDMF濃度を、試験例1に示した方法により測定した。
サッカロマイセス・セレビシエを用いて発酵を行った場合(試料1)、酵母の総数は、発酵開始後から急激に増加し、発酵開始後2日でピークを迎え、その後減少した(図3)。このことから、2日をピークとする発酵が1回起こっていることがわかる。また、比重は、発酵開始後から急激に減少し、発酵開始後3日でほぼ下限に達した(図4)。これらの結果から、サッカロマイセス・セレビシエによる発酵の程度は、酵母の総数及び果汁の比重によって把握できることが判明した。
ハンセニアスポラ・ビナエを用いて発酵を行った場合(試料2)、酵母の総数は、発酵開始後1日でピークを迎え、その後減少した(図3)。このことから、緩やかかつ短期間の発酵が1回起こっていることがわかる。また、比重は、発酵開始後から穏やかに減少し、発酵開始後7日においても、下限に達していなかった(図4)。これらの結果から、ハンセニアスポラ・ビナエによる発酵の程度は、酵母の総数及び果汁の比重によって把握できることが判明した。
果汁中のHDMF濃度の測定結果を図5に示す。酵母としてサッカロマイセス・セレビシエを用いた方が、ハンセニアスポラ・ビナエを用いた場合に比べ、わずかにHDMFの濃度が高いものの、大きな差はなかった。そして、いずれの酵母を用いた場合においても、発酵開始から3日までは、HDMFの濃度が上昇したが、3日以降はほとんど変化しなかった。
以上の結果より、酵母を用いた発酵におけるHDMF濃度の上昇は、酵母の発酵挙動と相関性があり、酵母の総数や果汁の比重を指標として把握できることが判明した。
また、サッカロマイセス・セレビシエに比べ、ハンセニアスポラ・ビナエによる発酵が穏やかであることの理由の一つとして、ハンセニアスポラ・ビナエは、サッカロマイセス・セレビシエに比べてアルコール耐性が低いことが考えられる。このことより、ハンセニアスポラ・ビナエのようなアルコール耐性の低い酵母は、発酵開始からアルコール度数が比較的低い発酵前半での使用に適していること、そして、サッカロマイセス・セレビシエのようなアルコール耐性の高い酵母は、アルコール度数が高くなる発酵前半以降での使用に適していると考えられる。
[試験例4]
発酵におけるHDMF濃度は、酵母の増殖又は果汁の比重の挙動と相関があるとの考えに基づき、酵母の増殖を指標として、果汁中のHDMF濃度を効率的に増強することを試みた。
試験例2に従って、ブドウ果汁とイチゴ果汁の混合液を調製し、滅菌処理した後、果汁とした。
果汁に酵母を以下のように添加し、25℃で発酵を行った:
試料1 サッカロマイセス・セレビシエを10×10cells/mlとなるように添加した;
試料2 ハンセニアスポラ・ビナエを10×10cells/mlとなるように添加した;
試料3 ハンセニアスポラ・ビナエを10×10cells/mlとなるように添加し(1回目の発酵)、3日(72時間)後にサッカロマイセス・セレビシエを添加した(2回目の発酵)。
発酵開始前(0日)、並びに発酵開始後1日〜7日の果汁を抜き取った。抜き取った果汁について、酵母の総数を測定した。そして、1回目の発酵の開始前(0日)、開始後3日、開始後6日の果汁中のHDMF濃度を、試験例1に示した方法により測定した。
サッカロマイセス・セレビシエを単独で発酵させた場合(試料1)、酵母の総数は、発酵開始直後から急激に増加し、2日で最大となった(図6)。このことから、2日をピークとする発酵が1回起こったことがわかる。ハンセニアスポラ・ビナエ(試料2)は、発酵開始後から緩やかに増殖し、1日で最大に達した後、減少に転じた。一方、ハンセニアスポラ・ビナエとサッカロマイセス・セレビシエの組み合わせに係る試料3においては、発酵開始時に第1の酵母としてハンセニアスポラ・ビナエを添加してから第2の酵母を添加するまでは、ハンセニアスポラ・ビナエ単独に係る試料2と同様の挙動を示した。試料3において、ハンセニアスポラ・ビナエの増殖が落ち着いた発酵開始後3日に、サッカロマイセス・セレビシエを第2の酵母として添加し、2回目の発酵を開始したところ、酵母の総数は穏やかに増加した。酵母の総数は、発酵開始後4日(2回目の発酵の開始後1日)でピークに達し、その後減少に転じた。
各試料中のHDMF濃度の変化を図7に示した。単一の酵母で発酵を行った試料1(サッカロマイセス・セレビシエ)及び試料2(ハンセニアスポラ・ビナエ)では、酵母の違いに関わらず、HDMF濃度は同程度で増加した。また、試料1及び2においては、HDMF濃度の増加は、発酵を開始して3日目でほぼ横ばいになり、6日目でもほとんど変化がみられなかった。一方、ハンセニアスポラ・ビナエとサッカロマイセス・セレビシエの組み合わせに係る試料3については、1回目の発酵開始後3日までは、単一の酵母で発酵を行った試料1及び2と同程度でHDMF濃度を増加させた。しかし、試料3では、1回目の発酵開始後6日においても、HDMF濃度は増加傾向にあり、試料1及び2に比べ、著しく濃度が高くなった。図6と7の結果より、発酵における酵母の総数を指標として、発酵を制御することによって、HDMF濃度を効率的に上昇できることが判明した。ハンセニアスポラ属の酵母とサッカロマイセス属の酵母という特定の組み合わせを用い、発酵時間又は酵母の総数を指標とした特定条件の下で果汁の発酵を行うことによって、発酵全体を通してHDMFが生成し、果汁のHDMF濃度が顕著に高まることは、全くの予想外であった。
また、HDMF濃度と相関性のある果汁の比重を指標とした場合にも、同様の効果が得られることが理解できる。

Claims (12)

  1. 果汁を発酵させることによって2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン(HDMF)を生成することを含む、果実酒又は甘味果実酒の製造方法であって、
    前記果汁はHDMF配糖体を含有し、
    前記の発酵は、前記果汁に第1の酵母を添加した後、第2の酵母を添加することにより行われ、そして
    前記第2の酵母は前記第1の酵母よりアルコール耐性又はアルコール発酵能が高い、
    前記製造方法。
  2. 前記の発酵において、添加した前記第1の酵母の数に対して、酵母の総数が1.1倍以上になった後、前記第2の酵母を添加する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記の発酵において、前記第1の酵母が添加された果汁の比重が1.09g/cm以下に低下した後、前記第2の酵母を添加する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第1の酵母を添加し、24時間以上経った後、前記第2の酵母を添加する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記第1の酵母は、前記第2の酵母に比べ、単位菌体当たりのβ−グルコシダーゼ活性が高い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記果汁にブドウ果汁が含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記果汁にイチゴ果汁、パイナップル果汁、又はその組合わせが含まれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記果実酒がワインである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記第1の酵母がハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属であり、前記第2の酵母がサッカロマイセス(Saccharomyces)属である、請求項1に記載の方法。
  10. HDMFを2000μg/l以上含む、果実酒又は甘味果実酒。
  11. HDMF配糖体を含有する果汁に第1の酵母を添加することにより、発酵を行うこと、
    前記第1の酵母よりアルコール耐性が高い第2の酵母を前記果汁に添加することにより、発酵を行い、
    HDMF濃度を増強させること
    を含む、果汁の発酵方法。
  12. HDMFを2000μg/l以上含む、発酵させた果汁。
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