JP7356281B2 - 樹脂ペレット、及び成形体の製造方法 - Google Patents
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[1]エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)を含む樹脂ペレットであって、表面からの距離が20~120μmの領域におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)の結晶化度Xdに対する、表面からの距離が0~20μmの領域におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)の結晶化度Xsの比率(Xs/Xd)が、0.85~1.05である樹脂ペレット;
[2]炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(B)をさらに含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(B)の含有量がアルミニウム換算で30~6000ppbである[1]の樹脂ペレット;
[3]炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(B)が酢酸アルミニウム及びプロピオン酸アルミニウムの一方又は双方である[2]の樹脂ペレット;
[4]不飽和カルボン酸(C)をさらに含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する不飽和カルボン酸(B)の含有量が1~200ppmである[1]~[3]のいずれかの樹脂ペレット;
[5]不飽和カルボン酸(C)の分子量が1000以下である[4]の樹脂ペレット;並びに
[6][1]~[5]のいずれかの樹脂ペレットを溶融成形する工程を備える成形体の製造方法;
のいずれかを提供することで達成される。
本発明の樹脂ペレットは、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)(以下、「EVOH(A)」と称することがある)を含む樹脂ペレットであって、表面からの距離が20~120μmの領域におけるEVOH(A)の結晶化度Xdに対する、表面からの距離が0~20μmの領域におけるEVOH(A)の結晶化度Xsの比率(Xs/Xd)が、0.85~1.05である樹脂ペレットである。
EVOH(A)は、エチレン単位とビニルアルコ-ル単位とを有する共重合体である。EVOH(A)は、通常、エチレン-ビニルエステル共重合体のケン化により得られる。エチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化は公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的であるが、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルであってもよい。
本発明の樹脂ペレットは、炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(B)をさらに含むことが好ましい。このようなアルミニウム塩(B)をさらに含むことで、結晶化度Xdに対する結晶化度Xsの比率(Xs/Xd)が0.85~1.05である樹脂ペレットを得られやすくなり、溶融加工性をより高めること等ができる。
本発明の樹脂ペレットは、不飽和カルボン酸(C)をさらに含むことが好ましい。不飽和カルボン酸(C)をさらに含むことで、結晶化度Xdに対する結晶化度Xsの比率(Xs/Xd)が0.85~1.05である樹脂ペレットを得られやすくなり、溶融加工性をより高めること等ができる。
本発明の樹脂ペレットは、本発明の効果を損なわない範囲で、EVOH(A)以外の樹脂、アルミニウム塩(B)以外の金属塩、不飽和カルボン酸(C)以外の酸、ホウ素化合物、酸化防止剤、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、補強材等、他の成分を含んでいてもよい。
本発明の樹脂ペレットの製造方法としては、例えば、EVOH(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)を凝固液中にストランド状に押し出し、得られたストランドを切断して含水ペレットとし、必要に応じて、所定の成分を溶解させた水溶液に含水ペレットを浸漬させ、その後、この含水ペレットを乾燥処理する方法が挙げられる。この方法において、(i)凝固液の温度を比較的低温(例えば0℃以上10℃以下)にしておくこと、(ii)含水ペレットを浸漬させる水溶液にアルミニウム塩(B)及び不飽和カルボン酸(C)の少なくとも一方、好ましくは双方を含有させておくこと、並びに(iii)乾燥処理を比較的緩やかな条件(例えば80℃で3時間及び105℃で16時間程度)で行うことが好ましい。このようにすることで、表面領域のEVOHの結晶化度とその内側のEVOHの結晶化度とが近くなり、結晶化度比率(Xs/Xd)が所定範囲の本発明の樹脂ペレットを効率的に得ることができる。なお、本発明の樹脂ペレットは、上記方法によって製造されたものに限定されるものではない。
本発明の成形体の製造方法は、本発明の樹脂ペレットを溶融成形する工程を備える。本発明の成形体の製造方法は、原料として本発明の樹脂ペレットを用いること以外は、従来のEVOHのペレットを用いて溶融成形する方法と同様である。本発明の製造方法により、フィルム、シート、チューブ、袋、容器等の成形体を得ることができる。なお、得られる成形体は、本発明の樹脂ペレットのみから形成されていてもよく、他の材料から形成された部分を有していてもよい。例えば、本発明の樹脂ペレットから形成される層と、他の樹脂層とを有する多層構造体も、成形体の一形態である。
(1)EVOH(A)の合成
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、酢酸ビニルを110kg、メタノール27.5kgを仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで反応槽圧力(エチレン圧力)が3.7MPaとなるようにエチレンを導入した。反応槽内の温度を60℃に調整した後、開始剤として38.5gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製「V-65」)をメタノール溶液として添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を3.7~3.8MPaに、重合温度を60℃に維持した。4時間後に酢酸ビニルの重合率が44%となったところで冷却して重合禁止剤としてのソルビン酸を80g添加し重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下で未反応の酢酸ビニルを除去した後、メタノールを添加してエチレン-酢酸ビニル共重合体の20質量%メタノール溶液を得た。
次に、ジャケット、攪拌機、窒素導入口、還流冷却器及び溶液添加口を備えた500L反応槽に上記で得たエチレン-酢酸ビニル共重合体の20質量%メタノール溶液を全量仕込んだ。この溶液に窒素を吹き込みながら60℃に昇温し、水酸化ナトリウムの濃度が2規定のメタノール溶液を50L添加した。水酸化ナトリウムの添加終了後、系内温度を60℃に保ちながら2時間攪拌してケン化反応を進行させた。その後酢酸25kgを添加してケン化反応を停止した。その後、80℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水を添加し、反応槽外にメタノールを留出させ、EVOH樹脂を析出させた。デカンテーションにより析出したEVOHを収集し、ミキサーで粉砕した。得られたEVOH粉末を1g/Lの酢酸水溶液(浴比20:粉末1kgに対して水溶液20Lの割合)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行った。次いで、酢酸0.5g/L及び酢酸ナトリウム0.1g/Lを含有する水溶液10Lに4時間攪拌浸漬してから脱液した。これを60℃で16時間乾燥させることでEVOHの粗乾燥物を28kg得た。
ジャケット、攪拌機及び還流冷却器を備えた80L攪拌槽に、EVOHの粗乾燥物28kg、質量比で水/メタノール=35/65の溶液28kgを仕込み、70℃に昇温してEVOHの粗乾燥物を溶解させた。この溶解液を直径4mmのガラス管を通して、5℃に冷却した水/メタノール=90/10(質量比)の混合液中に押し出してストランド状に析出させ、このストランドをストランドカッターでペレット状にカットすることでEVOHの含水ペレットを得た。得られたEVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社製ハロゲン水分計「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量10gの条件で測定したところ、EVOH樹脂の乾燥質量基準で51質量%であった。
上記(2)で得たEVOHの含水ペレットを1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。脱液後、酢酸水溶液を更新し同様の操作を行った。酢酸水溶液で洗浄してから脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製することで、ケン化反応時の触媒残渣が除去された、含水率50質量%のEVOHの含水ペレットを得た。当該含水ペレットをソルビン酸、酢酸アルミニウム、酢酸ナトリウム、酢酸及びリン酸を含む水溶液に投入し、定期的に攪拌しながら4時間浸漬し、脱液した。なお、表1に記載の通りのソルビン酸含有量とアルミニウム含有量になるように、各成分の水溶液濃度を調整した。その後、80℃で3時間、及び105℃で16時間乾燥させることで、ソルビン酸、酢酸アルミニウム、酢酸、ナトリウム塩及びリン酸化合物を含有したEVOH樹脂ペレットを得た。
上記(3)で得られた樹脂ペレットのNMR測定を行ったところ、樹脂組成物中のEVOHのエチレン含量は32モル%、ケン化度は99%以上であった。なお、測定に際しては内部標準物質としてテトラメチルシラン、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)-d6に溶解し、500MHzの1H-NMR(日本電子株式会社製:「GX-500」)を用いて80℃で測定した。
上記(3)で得られた樹脂ペレットについて、JIS-K7121に準じて、示差走査熱量計(DSC)(セイコー電子工業株式会社製「RDC220/SSC5200H」)を用いて、30℃から215℃まで10℃/分の速度にて昇温した後100℃/分で-35℃まで急冷して再度-35℃から195℃まで10℃/分の昇温速度にて測定を実施した。2nd runのチャートから得られる融解ピーク温度(Tpm)をEVOHの融点として求めたところ、いずれの実施例及び比較例でも融点は183℃であった。
乾燥樹脂ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたクロロホルム抽出液中のソルビン酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中のソルビン酸の量を定量した。なお、定量に際しては、ソルビン酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
上記(3)で得られた樹脂ペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。30分後蓋をし、湿式分解装置(株式会社アクタック製:「MWS-2」)により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することで分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し純水でメスアップした。この溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社製「OPTIMA4300DV」)により含有金属の分析を行い、ナトリウム元素及びリン元素の含有量を求めた。いずれの実施例及び比較例でもナトリウム塩含有量は、ナトリウム元素換算値で100~200ppmであり、リン酸化合物含有量は、リン酸根換算値で10ppm以下であった。
乾燥樹脂ペレット15gを白金るつぼに量り取り、硝酸と硫酸とを用いて乾式分解を行った。灰化した試料に塩酸約2mLを加え、50mL容ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メスフラスコに定容し、孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過して試料溶液を調製した。該溶液を用いて、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置「IRIS AP」)により樹脂組成物中のアルミニウム含有量(ppb)を測定した。
上記(3)で得られた樹脂ペレットについて、下記条件で広角X線回折測定を行った。
実験場所:大型放射光施設・SPring-8 BL03XU
X線条件:1μmに集光したX線
X線波長:0.1305nm
カメラ距離:約80mm
露光時間:1秒(照射ダメージがない条件)
検出器:2次元平面検出器
上記(3)で得られた樹脂ペレットについて、下記装置を用いて押出加工試験を行い、溶融加工性を評価した。
加工機:株式会社プラスチック工学研究所製可視化押出機
口径:40mm
L/D:26
温度プロファイル:供給部/圧縮部/計量部=180/205/220℃
スクリュ:単軸フルフライト(溝深さ:6.1mm/1.8mm、圧縮比:3.0)
回転数:60rpm
1分間継続して押出機から吐出されるチップをサンプリングし、吐出速度を求めた。
押出機に装着した樹脂圧計を用いて押出加工中の圧縮部と出口の樹脂圧力を測定し、圧縮部と出口の樹脂圧力の差を算出した。
可視化窓を通して、圧縮部の状態を一分間目視で観察し続け、以下の基準で評価した。
A:ソリッドベッドとメルトプールとが完全に分離した状態を継続していた。
B:ソリッドベッドが分裂し、メルトプール部分に浮遊する状態を5回以上確認した。
押出加工試験後に、パージング樹脂としてポリエチレン樹脂を押出機中に通過させた。スクリュを抜き出し、残留するパージング樹脂を除去した。パージング樹脂を除去した後に残留するスクリュ付着物を回収して質量を測定した。
上記(1)において、重合禁止剤をソルビン酸からトランス-桂皮酸に変更し、添加量を100gに変更したこと、上記(2)において溶解液の押出温度を表1に示す通りとしたこと、及び上記(3)においてソルビン酸の代わりにトランス-桂皮酸を含む水溶液に浸漬した以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。なお、表1に記載の通りの桂皮酸含有量とアルミニウム含有量になるように、各成分の水溶液濃度を調整した。
乾燥樹脂ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、アセトン100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたアセトン抽出液中のトランス-桂皮酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中のトランス-桂皮酸の量を定量した。なお、定量に際しては、トランス-桂皮酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
上記(3)において、乾燥条件を80℃で3時間及び105℃で16時間から、80℃で3時間の乾燥を一度だけ行うことに変更し、含水率28質量%の状態でEVOHの含水ペレットを取り出した以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットを二軸押出機に投入し、下記の条件で水分をベントから留去することで再度造粒した。得られた造粒物の含水率を上述のEVOH含水ペレットと同様の方法で測定したところ、17質量%であった。その後、造粒物を105℃で16時間乾燥させることで、ソルビン酸、酢酸アルミニウム、酢酸、ナトリウム塩及びリン酸化合物を含有した樹脂ペレットを得た。
押出機:株式会社日本製鋼所製TEX44
L/D:45.5
口径:30mmφ
スクリュ:同方向完全噛合型
回転数:300rpm
ダイホール:3mmφ、5穴
樹脂温度:120℃
Claims (4)
- エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)を含む樹脂ペレットであって、
表面からの距離が20~120μmの領域におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)の結晶化度Xdに対する、表面からの距離が0~20μmの領域におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)の結晶化度Xsの比率(Xs/Xd)が、0.85~1.05であり、
炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(B)をさらに含み、
エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(B)の含有量がアルミニウム換算で30~6000ppbであり、
不飽和カルボン酸(C)をさらに含み、
エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する不飽和カルボン酸(C)の含有量が10~200ppmである樹脂ペレット。 - 炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(B)が酢酸アルミニウム及びプロピオン酸アルミニウムの一方又は双方である請求項1に記載の樹脂ペレット。
- 不飽和カルボン酸(C)の分子量が1000以下である請求項1又は請求項2に記載の樹脂ペレット。
- 請求項1~3のいずれかに記載の樹脂ペレットを溶融成形する工程
を備える成形体の製造方法。
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