JP7356036B2 - 鍛造用材料、鍛造部材および鍛造部材の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)本発明の一態様に係る鍛造用材料は、外側鋼材と内側鋼材とを備える、側方押出しによる鍛造用材料であって、前記外側鋼材の組成が、質量%で、C:0.15~0.40%、Si:0.05~0.50%、Mn:0.20~1.50%、Cr:0.05~1.50%、P:0.001~0.030%、S:0.005~0.025%、Al:0.005~0.100%、N:0.001~0.025%、V:0.50~3.00%、及びMo:0.80~6.00%を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、前記内側鋼材の組成が、質量%で、C:0.05~0.30%、Si:0.05~0.35%、Mn:0.20~1.00%、Cr:0.01~1.50%、P:0.001~0.030%、S:0.005~0.025%、Al:0.005~0.100%、及びN:0.001~0.025%、を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、前記鍛造用材料が、側方押出しされる箇所において、前記鍛造用材料の軸方向と垂直な面における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2とが式1を満たし、端面拘束圧縮試験にてひずみ速度10s-1で得られた変形抵抗で、相当塑性ひずみ1.5における前記外側鋼材の変形抵抗σ’1と前記内側鋼材の変形抵抗σ’2とが、式2を満たす。
0.90≧S2/(S1+S2)<式1>
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa]<式2>
(2)上記(1)に記載の鍛造用材料では、前記外側鋼材の組成が質量%で、B:0~0.0050%、Nb:0~0.100%、Ti:0~0.100%、及びREM:0~0.020%、からなる群から選択される1種以上をさらに含有してもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の鍛造用材料では、前記外側鋼材と前記内側鋼材との間のクリアランスが0.1mm~2mmであってもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の鍛造用材料では、前記外側鋼材が、ボンデリューベ処理皮膜を有してもよい。
(5)本発明の別の態様に係る鍛造部材は、上記(1)または(2)に記載の組成を備える前記外側鋼材と前記内側鋼材とで形成された基部と、前記基部から外方に突出した突出部とを備え、前記突出部が、前記基部における前記外側鋼材の部分から突設させた外側突部と、前記基部における前記内側鋼材の部分から突設され、且つ前記外側突部内の少なくとも一部の空間に充填された内側突部とを備え、前記外側突部の厚さが0.5mm以上である。
(6)上記(5)に記載の鍛造部材では、前記突出部の根元における前記外側鋼材の面積SP1と前記内側鋼材の面積SP2との比率RPと、前記基部における、前記突出部近傍における前記外側鋼材の面積SB1と前記内側鋼材の面積SB2との比率RBとが、下記式3~式5を満たしてもよい。
RP=SP2/(SP1+SP2)<式3>
RB=SB2/(SB1+SB2)<式4>
|(RP-RB)/RP|≦5%<式5>
(7)上記(5)又は(6)に記載の鍛造部材では、前記外側突部のビッカース硬さが740HV以上であってもよい。
(8)本発明の別の態様に係る鍛造部材の製造方法は、上記(5)~(7)のいずれか一項に記載の鍛造部材の製造方法であって、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の鍛造用材料を鍛造加工する工程と、鍛造された前記鍛造用材料に浸炭焼入焼戻し処理をする工程と、を備え、前記鍛造を、前記鍛造用材料に対する側方押出しとし、前記側方押出しによって、前記基部および前記突出部を成形し、前記突出部は、前記側方押出しに際して、前記内側突部が前記外側突部内に入り込んだ状態とし、前記突出部を、0.90≧S2/(S1+S2)が満たされる箇所に設ける。
1.鍛造用材料を、外側鋼材と内側鋼材とから構成される複合材料とした。
2.鍛造用材料の外側鋼材においては、Mo、V等の合金炭化物生成元素を含有させる成分設計とした。鍛造用材料の外側鋼材は、鍛造後に鍛造部材の表層部を構成することとなる。従って、鍛造用材料の外側部材の成分を上述のように制御することで、鍛造部材の耐摩耗性を確保することができる。
3.鍛造用材料の内側鋼材においては、外側鋼材と比較して、Mo及びV等の合金元素の含有量を低いものとした。これにより、鍛造用材料の鍛造時に成形荷重を低減できる。
4.外側鋼材と内側鋼材とから構成される複合材料に大きな塑性変形を生じさせると、外側鋼材の破断などが生じる場合がある。そこで、外側鋼材の断面積S1と内側鋼材の断面積S2との比率を所定範囲内とした。さらに、外側鋼材の変形抵抗と内側鋼材の変形抵抗とが所定の関係を満たすこととした。これにより、例えば側方押出しのような複雑形状を形成する鍛造加工を、複合材料に適用することが可能となった。
0.90≧S2/(S1+S2) <式1>
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa] <式2>
以下に、まず、本実施形態に係る鍛造用材料について詳細に述べる。
本実施形態に係る鍛造用材料1を構成する外側鋼材11と内側鋼材12の化学成分について説明する。以下に示す各元素の割合(%)は全て質量%を意味する。外側鋼材及び内側鋼材それぞれの化学成分においては、同じ数値範囲の元素もあるし、異なる数値範囲の元素もある。以下の説明では、化学成分毎にその含有量の限定理由を説明する。
C(内側鋼材):0.05~0.30%
炭素(C)は鋼材の強度を確保する上で必須の元素である。鍛造後に鍛造部材の表層部を構成することとなる、鍛造用材料の外側鋼材は、高い耐摩耗性を実現するために、浸炭焼入焼戻し後の硬さが740HV以上である必要がある。外側鋼材のC含有量が0.15%未満では、必要な強度が得られない。一方、外側鋼材のC含有量が0.40%を超えると、外側鋼材の鍛造性が劣化する。そのため、外側鋼材のC含有量を0.15~0.40%とする。外側鋼材のC含有量を0.18%以上、0.20%以上、又は0.25%以上としてもよい。外側鋼材のC含有量を0.38%以下、0.35%以下、又は0.30%以下としてもよい。
Si(内側鋼材):0.05~0.35%
シリコン(Si)は、焼戻し時に析出するε炭化物が粗大なセメンタイトへと遷移することを抑制し、低温焼戻しマルテンサイト鋼の焼戻し軟化抵抗を顕著に増加させるための元素である。外側鋼材において、Si含有量が0.05%未満では前記作用が発揮できない。一方、外側鋼材においてSi含有量が0.50%を超えると、浸炭焼入焼戻し処理時に表層に酸化層が形成され、表面起点の剥離寿命が低下する。そのため、鍛造後に鍛造部材の表層部を構成することとなる、鍛造用材料の外側鋼材のSi含有量を0.05~0.50%とする。外側鋼材のSi含有量を0.08%以上、0.10%以上、又は0.20%以上としてもよい。外側鋼材のSi含有量を0.45%以下、0.40%以下、又は0.30%以下としてもよい。
Mn(内側鋼材):0.20~1.00%
マンガン(Mn)は焼入性を高めると同時に、赤熱脆性を抑制し、熱間延性を向上させる元素である。外側鋼材のMn含有量が0.20%未満では前記作用が発揮できない。一方、外側鋼材のMn含有量が1.50%を超えると、含有量に見合う効果が期待できない。そのため、外側鋼材のMn含有量を0.20~1.50%とする。外側鋼材のMn含有量を0.25%以上、0.30%以上、又は0.40%以上としてもよい。外側鋼材のMn含有量を1.40%以下、1.30%以下、又は1.20%以下としてもよい。
Cr(内側鋼材):0.01~1.50%
クロム(Cr)は鋼材の焼入性を高めると同時に、硬い炭化物を形成し耐摩耗性を向上させる有用な元素である。外側鋼材のCr含有量が0.05%未満では、焼入性向上の効果が得られない。一方、外側鋼材のCr含有量が1.50%を超えると、鍛造性および被削性が劣化するだけでなく、浸炭焼入焼戻し処理時にオーステナイト粒界に粗大な炭化物が形成する。したがって、外側鋼材のCr含有量を0.05~1.50%とする。外側鋼材のCr含有量を0.10%以上、0.20%以上、又は0.30%以上としてもよい。外側鋼材のCr含有量を1.30%以下、1.10%以下、又は1.00%以下としてもよい。
リン(P)は不純物として含まれる元素である。Pは粒界に偏析して粒界強度を下げる。そのため、P含有量はなるべく低い方が良い。そのため、外側鋼材および内側鋼材の両方におけるP含有量の上限を0.030%以下とする。P含有量の好ましい上限は0.020%以下である。外側鋼材および内側鋼材の両方におけるP含有量の好ましい上限は0.018%、0.015%、又は0.010%である。一方、Pは製鋼工程において低減することができるものの、0.001%未満とするには製造コストがかかり、また0.001%未満としても粒界強度が顕著に向上することはない。そのため、外側鋼材および内側鋼材の両方におけるP含有量の下限を0.001%以上、0.002%以上、又は0.005%以上としてもよい。外側鋼材及び内側鋼材においてP含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
硫黄(S)は鍛造用材料の被削性を向上させる。そのため、外側鋼材および内側鋼材の両方において、0.005%以上のSを含有させる。しかし、S含有量が多すぎると、Mnによって固定されなかったSがFeSとして粒界に生成することで、熱間延性が低下する。また、大量に生成したMnSによって、耐摩耗性が低下する。そのため、外側鋼材および内側鋼材の両方におけるS含有量の上限を0.025%以下とする。したがって、外側鋼材および内側鋼材のS含有量をともに0.005~0.025%とする。外側鋼材および内側鋼材のS含有量を0.008%以上、0.010%以上、又は0.015%以上としてもよい。外側鋼材および内側鋼材のS含有量を0.022%以下、0.020%以下、又は0.018%以下としてもよい。外側鋼材及び内側鋼材においてS含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
アルミニウム(Al)は脱酸作用を有するとともに、熱処理の際、Nと結合してAlNを形成することによりオーステナイト粒の粗大化を防止し、靭性を高める効果を持つ。外側鋼材および内側鋼材のAl含有量が0.005%未満ではこれらの効果が発揮されない。一方、外側鋼材および内側鋼材のAl含有量が0.100%を超えると上記効果が飽和する。そのため、外側鋼材および内側鋼材のAl含有量をともに0.005~0.100%とする。外側鋼材および内側鋼材のAl含有量を0.008%以上、0.010%以上、又は0.015%以上としてもよい。外側鋼材および内側鋼材のAl含有量を0.080%以下、0.060%以下、又は0.050%以下としてもよい。外側鋼材及び内側鋼材においてAl含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
窒素(N)はAl、Vと結合して窒化物を形成することによりオーステナイト粒の粗大化を防止し、靭性を高める効果を有する。外側鋼材および内側鋼材のN含有量が0.001%未満ではその効果が小さい。一方、外側鋼材および内側鋼材のN含有量が0.025%を超えると上記効果が飽和する。そのため、外側鋼材および内側鋼材のN含有量をともに0.001~0.025%とする。外側鋼材および内側鋼材のN含有量を0.002%以上、0.005%以上、又は0.010%以上としてもよい。外側鋼材および内側鋼材のN含有量を0.022%以下、0.020%以下、又は0.018%以下としてもよい。外側鋼材及び内側鋼材においてN含有量の数値範囲を異ならせてもよい。
バナジウム(V)はMn、Crと同様に、鋼の焼入性を高める。Vはさらに、Cと結合して硬く微細な炭化物を形成して耐摩耗性を向上させるとともに、結晶粒を微細化して靭性を向上させる有用な元素である。外側鋼材のV含有量が0.50%未満では、耐摩耗性向上効果が発揮できない。一方、外側鋼材のV含有量が3.00%を超えると、鍛造性および被削性が低下する。そのため、外側鋼材のV含有量を0.50~3.00%とする。外側鋼材のV含有量を0.60%以上、0.80%以上、又は1.00%以上としてもよい。外側鋼材のV含有量を2.50%以下、2.00%以下、又は1.50%以下としてもよい。
モリブデン(Mo)は鋼材の焼入性を高めると同時に、硬い炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる有用な元素である。外側鋼材のMo含有量が0.80%未満では上記作用が発揮できない。一方、外側鋼材のMo含有量が6.00%を超えると、鍛造性および被削性が低下する。そのため、外側鋼材のMo含有量を0.80~6.00%とする。外側鋼材のMo含有量を1.00%以上、1.20%以上、又は1.50%以上としてもよい。外側鋼材のMo含有量を5.00%以下、4.00%以下、又は3.00%以下としてもよい。
B(外側鋼材):0~0.0050%
ホウ素(B)はオーステナイト中に僅かに固溶させただけで鋼の焼入性を高める。そのため、浸炭焼入焼戻し時にマルテンサイト組織を効率的に得るために、外側鋼材に含有させてもよい。一方、Bを、0.0050%を超えて外側鋼材に含有させると、多量のBNを形成してNを消費するため、オーステナイト粒の粗大化を招来するおそれがある。そのため、外側鋼材のB含有量を0~0.0050%としてもよい。外側鋼材のB含有量を0.0005%以上、0.0010%以上、又は0.0015%以上としてもよい。外側鋼材のB含有量を0.0045%以下、0.0040%以下、又は0.0030%以下としてもよい。
ニオブ(Nb)は、鋼中でN、Cと結合して炭窒化物を形成する元素である。この炭窒化物はオーステナイト結晶粒界をピンニングし、ひいては粒成長を抑制して組織の粗大化を防止する。この組織の粗大化の防止効果を得るために、外側鋼材に、Nbを0.100%以下含有させてもよい。一方、Nbを、0.100%を超えて外側鋼材に含有させると、素材硬さの上昇に起因して鍛造性が顕著に劣化するおそれがある。そのため、外側鋼材のNb含有量を0~0.100%としてもよい。外側鋼材のNb含有量を0.005%以上、0.010%以上、又は0.020%以上としてもよい。外側鋼材のNb含有量を0.090%以下、0.080%以下、又は0.070%以下としてもよい。
チタン(Ti)は、鋼中でN、Cと結合して炭窒化物を形成する元素である。この炭窒化物はオーステナイト結晶粒界をピンニングし、ひいては粒成長を抑制して組織の粗大化を防止する。この組織の粗大化の防止効果を得るために、外側鋼材に、Tiを0.100%以下含有させてもよい。一方、Tiを、0.100%を超えて外側鋼材に含有させると、素材硬さの上昇に起因して鍛造性が顕著に劣化するおそれがある。そのため、外側鋼材のTi含有量を0~0.100%としてもよい。外側鋼材のTi含有量を0.005%以上、0.010%以上、又は0.020%以上としてもよい。外側鋼材のTi含有量を0.090%以下、0.080%以下、又は0.070%以下としてもよい。
希土類元素(REM)とは、原子番号57のランタンから原子番号71ルテチウムまでの15元素と、原子番号21のスカンジウム及び原子番号39のイットリウムと、の合計17元素の総称である。REMの含有量とは、これら元素の含有量の合計値である。外側鋼材にREMが含有されると、圧延時にMnS粒子の伸延が抑制される。但し、REM含有量が0.020%を超えると、REMを含む硫化物が大量に生成され、鋼の被削性が劣化するおそれがある。そのため、外側鋼材のREM含有量は0~0.020%としてもよい。外側鋼材のREM含有量を0.002%以上、0.005%以上、又は0.008%以上としてもよい。外側鋼材のREM含有量を0.018%以下、0.015%以下、又は0.010%以下としてもよい。
外側鋼材11は中空状の鋼材であり、内側鋼材12は外側鋼材11の内部に配置されている。本実施形態に係る鍛造用材料1を側方押出しに供する場合、図1に示されるように、内側鋼材12を例えば棒鋼とし、外側鋼材11をパイプ状形状とすることが好ましい。図1に示される鍛造用材料1を側方押出しすることによって、図5に示される鍛造部材2を得ることができる。
外側鋼材11は、本実施形態に係る鍛造用材料1を加工して得られる鍛造部材2において、他の鋼部材と接触して摺動する部位である表層部を構成する。よって、本実施形態に係る鍛造用材料1の外側鋼材11は、鍛造部材の表面のうち、摺動を受ける部分を覆ったものでなければならない。外側鋼材11には、浸炭焼入焼戻し後に高い耐摩耗性が必要となる。そのため、外側鋼材11は、前述のようにCr、Mo等の硬質な合金炭化物生成元素と、高濃度のCとを含有させ、所定条件の浸炭焼入焼戻し後にビッカース硬さを740HV以上とする。鍛造用材料の表層部にあたる外側鋼材11の、所定条件の浸炭焼入焼戻し後にビッカース硬さが740HV未満であると、表層部の耐摩耗性を確保できなくなる。ただし、浸炭焼入焼戻し前の段階における外側鋼材11の硬さは特に規定されない。鍛造加工前の段階では、加工性を考慮すると、外側鋼材11の硬さが低いほうが好ましい。
0.90≧S2/(S1+S2) <式1>
なお、鍛造用材料1の全域にわたり式1が満たされる必要はない。少なくとも鍛造によって大きな変形を受ける箇所、即ち側方押出しされる箇所において式1が満たされていればよい。例えば、図2に示されるように、外側鋼材11の面積S1と内側鋼材12の面積S2との割合が一様であってもよい。一方、鍛造用材料1が側方押出しによる鍛造加工用である場合、少なくとも側方押出しされる箇所において式1が満たされていれば足りる。従って、例えば図3に示されるように、鍛造用材料1の一部に外側鋼材11が配されていてもよい。図3の鍛造用材料1では、その両端において式1が満たされないこととなるが、側方押出しされる箇所に外側鋼材11が配されており、この箇所において式1が満たされていればよい。また、例えば図4に示されるように、外側鋼材11の両端がテーパー形状を有することも妨げられない。図4の鍛造用材料1でも、その両端において式1が満たされないこととなるが、側方押出しされる箇所に外側鋼材11が配されており、この箇所において式1が満たされていればよい。
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa] <式2>
ここで、上記変形抵抗はひずみ速度10s-1で端面拘束圧縮試験を行った際の結果である。
本実施形態の鍛造用材料1における内側鋼材12は、必ずしもその全面が外側鋼材11に覆われていなくともよい。他の部品と接触しない表面に内側鋼材12が露出していてもよい(図3参照)。例えば、本実施形態の鍛造用材料1からなる十字軸継手における中心軸方向には内側鋼材12が露出する場合があるが、この部分には耐摩耗性が要求されないため、内側鋼材12が露出していてもよい。また、内側鋼材12の内部に空洞が設けられてもよい。このような鍛造用材料を側方押出しに供した場合、内側鋼材12の内部の空洞は、側方押出し軸が形成される前に内側鋼材12によって充填され、消失すると考えられる。従って、上述した鍛造用材料1の軸方向と垂直な面における内側鋼材12の面積S2に、空洞部の面積は算入しない。
本実施形態の鍛造用材料1を鍛造加工することにより鍛造部材2が成形される。本実施形態の鍛造部材は、外側鋼材21と内側鋼材22とで形成された基部23と、基部23から外方に突出した突出部24とを備えている。鍛造部材2の外側鋼材21及び内側鋼材22の成分は、上述された鍛造用材料1の外側鋼材21及び内側鋼材22の成分と同じである。また、突出部24は、基部23を形成する外側鋼材21の所定の部分から突設させた外側突部241と、基部23を形成する内側鋼材22の部分から突設され、且つ外側突部241内の少なくとも一部の空間に充填された内側突部242とで一体に成形されている。ここで、突出部24を形成する内側突部242は、外側突部241内の全空間に充填されていてもよいが、必ずしも外側突部241内の全空間に充填されている必要はなく、外側突部241内の一部に入り込んだ状態、すなわち、外側突部241と内側突部242との間に空間が形成された状態であってもよい。
RP=SP2/(SP1+SP2) <式3>
RB=SB2/(SB1+SB2) <式4>
|(RP-RB)/RP|≦5% <式5>
ここで、式3~5における記号は、以下の事項を示す。
SP1:突出部24の根元における外側鋼材21の面積
SP2:突出部24の根元における内側鋼材22の面積
RP:SP1及びSP2の比率
SB1:基部23における、突出部24の近傍における外側鋼材21の面積
SB2:基部23における、突出部24の近傍における内側鋼材22の面積
RB:SB1及びSB2の比率
以下、本実施形態の鍛造用材料を用いた鍛造部材の製造方法を説明する。本実施形態に係る鍛造部材の製造方法は、本実施形態に係る鍛造用材料1を鍛造加工する工程と、鍛造された鍛造用材料1に浸炭焼入焼戻し処理をする工程と、を備え、鍛造加工を、鍛造用材料1に対する側方押出しとし、側方押出しによって基部23および突出部24を成形し、突出部24は、側方押出しに際して、内側突部242が外側突部241内に入り込んだ状態とし、突出部24を、0.90≧S2/(S1+S2)が満たされる箇所に設ける。以下、この製造方法について詳細に説明する。
鍛造加工後、鍛造部材に対して850~1100℃で浸炭処理を施す。浸炭処理は炭素の拡散現象を利用する処理であり、例えば、ガス浸炭を行う場合には、アセチレン、プロパン及びエチレン等の炭化水素ガスを用いる。浸炭温度が850℃未満では、鍛造部材に十分な炭素を拡散させるために長時間の加熱処理を要し、コストが嵩む。一方、浸炭温度が1100℃を超えると、著しい粗粒化や混粒化を招来する。そのため、浸炭は850~1100℃の温度域で行う。コストの低廉化や粗粒化の抑制及び混粒化の抑制をさらに高いレベルで実現させるためには、浸炭温度を900~1050℃の温度域で行うことが好ましい。なお、浸炭処理は、真空浸炭、又はプラズマ浸炭であってもよい。
浸炭終了後焼入れ前に、所定の温度で一定時間保持してもよい。浸炭終了後、一定時間保持する目的は、焼入れ時の焼割れの防止やひずみの低減にある。保定温度はCを効率よく拡散させるため850℃以上で10分以上とする。一方、900℃超で60分超保定しても、焼入れ時の焼割れ防止、ひずみ低減の効果は飽和する。従って、保定温度の上限を900℃としてもよい。また、保定時間の上限を60分としてもよい。
浸炭処理終了後、850~1100℃の温度域から焼入れを行う。浸炭処理後に焼入れを行うのは、表層の組織をマルテンサイトとして、硬さを向上させるためである。焼入れ温度850℃未満であれば、フェライト相など、軟質相の割合が増加する可能性があり、十分なマルテンサイト面積率を確保できないため、鋼の硬さが低下する。
焼入れ終了後、130~200℃で焼戻しを行う。焼戻し温度を130℃以上とした場合には、靱性の高い焼戻しマルテンサイトを得ることができる。また、焼戻し温度を200℃以下とすることで、焼戻しによる硬さ低下を防止することができる。なお、これらの効果をそれぞれさらに高いレベルで奏するにためには、焼戻し温度を150~180℃とすることが好ましい。この焼戻し工程を経ることで、本実施形態に係る鍛造部材を得ることができる。
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa]
を満たす場合を、本発明の範囲内であるとして合格と判定した。
比較例10の鍛造用材料は、外側部材の厚さが小さすぎたので、側方押出しの際に外側部材が割れてしまった。このため、比較例10の鍛造用材料からは、鍛造部材を製造することができなかった。
比較例11の鍛造用材料は、その外側鋼材の炭素量が過剰であった。そのため、比較例11ではσが750MPaを上回り、側方押出しの際の成形荷重が過剰となった。
比較例12の鍛造用材料は、その内側鋼材の炭素量が過剰であった。そのため、比較例12ではσが750MPaを上回り、側方押出しの際には、成形荷重が過剰となった。
比較例13の鍛造用材料は、その外側鋼材においてSi含有量が不足していた。そのため、比較例13の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例14の鍛造用材料は、その外側鋼材においてMn含有量が不足していた。そのため、比較例14の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例15の鍛造用材料は、その外側鋼材においてCr含有量が不足していた。そのため、比較例15の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例16の鍛造用材料は、その外側鋼材においてV含有量が不足していた。そのため、比較例16の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例17の鍛造用材料は、その外側鋼材においてMo含有量が不足していた。そのため、比較例17の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
比較例18の鍛造用材料は、単一鋼材からなるものであり、その化学成分は本発明の外側鋼材の化学成分と近い。ただし、V量が本発明の外側鋼材よりも少なくされている。この比較例18の側方押出の際には、成形荷重は過剰とならなかったが、比較例18の鍛造用材料から得られた鍛造部材は、耐摩耗性が不足した。
11 外側鋼材
12 内側鋼材
2 鍛造部材
21 外側鋼材
22 内側鋼材
23 基部
24 突出部
241 外側突部
242 内側突部
Claims (8)
- 外側鋼材と内側鋼材とを備える、側方押出しによる鍛造用材料であって、
前記外側鋼材の組成が、質量%で、
C:0.15~0.40%、
Si:0.05~0.50%、
Mn:0.20~1.50%、
Cr:0.05~1.50%、
P:0.001~0.030%、
S:0.005~0.025%、
Al:0.005~0.100%、
N:0.001~0.025%、
V:0.50~3.00%、及び
Mo:0.80~6.00%
を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、
前記内側鋼材の組成が、質量%で、
C:0.05~0.30%、
Si:0.05~0.35%、
Mn:0.20~1.00%、
Cr:0.01~1.50%、
P:0.001~0.030%、
S:0.005~0.025%、
Al:0.005~0.100%、及び
N:0.001~0.025%、
を含有し、残部がFeおよび不純物より成り、
前記鍛造用材料が、側方押出しされる箇所において、前記鍛造用材料の軸方向と垂直な面における前記外側鋼材の面積S1と前記内側鋼材の面積S2とが式1を満たし、
端面拘束圧縮試験にてひずみ速度10s-1で得られた変形抵抗で、相当塑性ひずみ1.5における前記外側鋼材の変形抵抗σ’1と前記内側鋼材の変形抵抗σ’2とが、式2を満たす
鍛造用材料。
0.90≧S2/(S1+S2) <式1>
σ’1×S1/(S1+S2)+σ’2×S2/(S1+S2)≦750[MPa] <式2> - 前記外側鋼材の組成が質量%で、
B:0~0.0050%、
Nb:0~0.100%、
Ti:0~0.100%、及び
REM:0~0.020%、
からなる群から選択される1種以上をさらに含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の鍛造用材料。 - 前記外側鋼材と前記内側鋼材との間のクリアランスが0.1mm~2mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鍛造用材料。
- 前記外側鋼材が、ボンデリューベ処理皮膜を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の鍛造用材料。
- 請求項1または2に記載の組成を備える前記外側鋼材と前記内側鋼材とで形成された基部と、前記基部から外方に突出した突出部とを備え、
前記突出部が、前記基部における前記外側鋼材の部分から突設させた外側突部と、前記基部における前記内側鋼材の部分から突設され、且つ前記外側突部内の少なくとも一部の空間に充填された内側突部とを備え、
前記外側突部の厚さが0.5mm以上である
ことを特徴とする鍛造部材。 - 前記突出部の根元における前記外側鋼材の面積SP1と前記内側鋼材の面積SP2との比率RPと、
前記基部における、前記突出部近傍における前記外側鋼材の面積SB1と前記内側鋼材の面積SB2との比率RBとが、下記式3~式5を満たすことを特徴とする請求項5に記載の鍛造部材。
RP=SP2/(SP1+SP2) <式3>
RB=SB2/(SB1+SB2) <式4>
|(RP-RB)/RP|≦5% <式5> - 前記外側突部のビッカース硬さが740HV以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の鍛造部材。
- 請求項5~7のいずれか一項に記載の鍛造部材の製造方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の鍛造用材料を鍛造加工する工程と、
鍛造された前記鍛造用材料に浸炭焼入焼戻し処理をする工程と、
を備え、
前記鍛造を、前記鍛造用材料に対する側方押出しとし、
前記側方押出しによって、前記基部および前記突出部を成形し、
前記突出部は、前記側方押出しに際して、前記内側突部が前記外側突部内に入り込んだ状態とし、
前記突出部を、0.90≧S2/(S1+S2)が満たされる箇所に設ける
ことを特徴とする鍛造部材の製造方法。
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