JP7354898B2 - 排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法 - Google Patents

排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法 Download PDF

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本発明は、排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法に関する。詳しくは、複数の炭化珪素多結晶基板を互いに隙間を空けて積層する方向に配列する縦型配列構造の基板処理装置等を用いて、炭化珪素多結晶ウエハを製造する方法および排出される排ガスの処理方法に関するものである。
炭化珪素(SiC)は、2.2~3.3eVの広い禁制帯幅を有するワイドバンドギャップ半導体であり、その優れた物理的、化学的特性から、例えば、高周波電子デバイス、高耐圧かつ高出力電子デバイス、青色から紫外にかけての短波長光デバイス等をはじめとして、炭化珪素によるデバイス(半導体素子)作製の研究開発が盛んに行われている。SiCデバイスの実用化を進めるにあたっては、高品質のSiCエピタキシャル成長のために大口径の炭化珪素基板を製造することが求められている。現在、その多くは、種結晶を用いた昇華再結晶法(改良レーリー法、改良型レーリー法等と呼ばれる)やCVD法(化学的気相蒸着法)等で製造されている。
CVD法を利用する炭化珪素基板の製造方法は、原料ガスを気相反応させ、基材面上に炭化珪素生成物を析出させて被膜を生成した後、基材を除去するものであり、緻密で高純度の炭化珪素基板を得ることができる。また、基材は切削や研磨等により除去されるが、基材に炭素材を用いると空気中で熱処理することにより除去できる。
特許文献1には、CVD法による炭化珪素基板の製造方法として、基材の表面に化学蒸着法により炭化珪素膜を形成し、その後前記基材を除去して得られた炭化珪素基板の両面に、更に炭化珪素膜を形成することを特徴とする、化学蒸着法による炭化珪素基板の製造方法が提案されている。
また、非特許文献1や2には、Si粒子の発生を抑制し、高速にSiCを成膜するために、珪素系の原料ガスとしてクロロシラン系ガス、例えばSiCl4、SiHCl3等を用いることが提案されている。原料ガス中のクロロシラン系ガスのうち、成膜対象となる基板にSiCとなって析出する量は一部であり、大部分はSiCとならずに廃棄ガスとして排気される。そして、廃棄ガスの温度の低下とともに、クロロシラン系ガスは高次のクロロシランポリマーとなって、排気配管等に析出し、これにより排気配管等が閉塞するおそれがある。
高次のクロロシランポリマーは、配管を閉塞するだけではなく、大気中の水分により加水分解し、例えば非特許文献3に示すように、不完全な加水分解物が爆発性化合物を形成するおそれのあることが知られている。そのため、高次のクロロシランポリマーが付着した排気配管等や部品の取り扱い方法や、これらの洗浄には注意が必要である。
そのため、特許文献2では、メチルトリクロロシランガスを原料として使用してSiCを生成させる成膜装置において、成膜装置から排出された排気ガスの温度を低下させずに750℃~850℃に保持して、これを排気ガス処理装置(改質炉)内に導入し、さらにクロロシラン系ガスを含む排気ガスにクロロメタンガスを添加して反応させることが開示されている。これにより、排気ガス中のSiCl2系ガスをSiCl4、SiHCl3、CH3SiCl3やC2H3SiCl3等に改質することができるため、排気ガス温度を低下させても高次のクロロシランポリマーの生成を抑制することができることが開示されている。さらに、特許文献2では、排気ガスが排気ガス処理装置内で固体SiCとして析出すること、そして固体SiCを形成することが、高次のクロロシランポリマーの生成の低減に有効であることが記載されている。
特開平8-188408号公報 WO2018/008642
平井敏雄・後藤孝・梶利彦 窯業協会誌Vol.91、No11、(1983) 503 石田夕起 J. Vac. Soc. Jpn. Vol. 54, No. 6,(2011) 346 三菱マテリアル株式会社四日市工場 高純度多結晶シリコン製造施設 爆発火災事故調査報告書 http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/01/01/14-0612a.pdf
しかしながら、特許文献2の方法では、排気ガス中のクロロシラン系ガスを全て固体SiCにすることはできておらず、高次のクロロシランポリマーが排気配管等へ析出することで、排気配管等が閉塞してしまうことを、完全には防止することができないおそれがある。また、排気ガス中にSiCl4、SiHCl3、CH3SiCl3やC2H3SiCl3等の気化温度の高く、可燃性かつ有害なクロロシラン系ガスを含むため、低温の回収装置で排気ガスを回収することが必要という問題がある。
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑み、高次のクロロシランポリマーが排気配管等に析出することを防止し、排気配管等が閉塞することを抑制することのできる、排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の排ガス処理方法は、化学蒸着により炭化珪素多結晶を成膜する成膜室から排出される、塩素含有珪素源ガスを含有する排ガスを、炭化珪素析出板を備える、室内温度が1400K~1800Kの排ガス処理室へ導入する排ガス導入工程と、前記炭化珪素析出板へ接触する前記排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siを、1.1~2.0:1に制御するモル比制御工程と、前記モル比制御工程後の前記排ガスを、前記炭化珪素析出板で反応させて、炭化珪素を析出させる炭化珪素析出工程と、を含む。
本発明であれば、高次のクロロシランポリマーが排気配管等に析出することを防止し、排気配管等が閉塞することを抑制することのできる、排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法を提供することができる。
炭化珪素多結晶ウエハの製造装置1000の上面からみた断面を示す概略図である。 第1面110を成膜室110の内部から見た正面概略図である。 第2面120を成膜室110の内部から見た正面概略図である。 基板ホルダー500の模式図である。 混合ガスの噴出について説明する模式図である。 排ガス処理装置900a、900bの上面からみた断面を示す概略図である。 炭化珪素多結晶ウエハの製造装置2000の断面概略図である。 炭化珪素多結晶ウエハの製造装置3000の上面からみた断面を示す概略図である。 炭化珪素析出板943の模式図である。 排ガス処理装置900d、900eの上面からみた断面を示す概略図である。
本発明者らは上記のような課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、例えばホットウォール式のCVD装置において、SiCの成膜室に隣接してSiC析出板を有するガス処理装置を設け、このガス処理装置に成膜室から排出される排気ガスを導入し、排気ガスに炭素源ガスを適宜添加して、ガス処理装置中のC/Siガス濃度比を1.1以上2.0以下に制御し、その後排気ガスをSiC析出板で反応させることで、固体SiCを形成することによって、高次のクロロシランポリマーが排気配管等に析出することを防止し、排気配管等が閉塞することを抑制できることを見出した。
以下、本発明の排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〈炭化珪素多結晶ウエハの製造装置1000〉
図1に、本発明の排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法に用いることのできる、炭化珪素多結晶ウエハの製造装置の一実施形態として、製造装置1000の上面からみた断面を示す概略図を示す。製造装置1000は、成膜室100と、混合ガス噴出口200と、混合ガス排出口300と、ヒータ400と、基板ホルダー500と、排ガス処理装置900を備える。
〈成膜室100〉
成膜室100は、第1面110と、第1面110と対向する第2面120と、第1面110と第2面120とをつなぐ4つの側面130からなる直方体状の内形を有する。直方体状の内形とすることで、複数の基板600を成膜室100に設置した場合において、基板と基板との間の隙間と基板と側面130との間の隙間の形状が同一または近似とすることができる。そのため、基板と基板との間を流れる混合ガスと同様に、側面130と基板との間を流れる混合ガスも、混合ガス噴出口200から混合ガス排出口300へ向かって均一に流すことができる。その結果として、基板に対して均一でばらつきの少ない膜を成膜することができる。
例えば、成膜室100の内形が直方体状ではなく、筒状の場合には、基板と基板との間の隙間と基板と側面130との間の隙間の形状が大きく異なるため、基板と基板との間を流れる混合ガスと、側面130と基板との間を流れる混合ガスとが均一に流れなくなる。その結果として、基板と基板との間で成膜した膜と、基板と側面130との間で成膜した膜が不均一となり、基板間でばらつきの大きい膜が成膜されるおそれがある。
なお、成膜室100の内形は、基板ホルダー500と基板ホルダー500に保持された基板600が入る大きさがあればよく、成膜に関与しない混合ガスが混合ガス噴出口200から混合ガス排出口300へ向かって流れて、成膜室100から排出されてしまうような余分な空間をできるだけ設けないことが好ましい。
また、成膜室100は黒鉛製であることが好ましい。黒鉛であれば直方体状への加工が容易であり、また、成膜時に不活性雰囲気下とすることで、高温となる成膜条件に十分な耐久性を持つことができる。
〈混合ガス噴出口200〉
混合ガス噴出口200は、成膜室100の第1面110またはその近傍にあり、原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを前記成膜室100に噴出する。混合ガス噴出口200は複数あることが好ましいが、1つであってもよい。混合ガス噴出口200が複数あることにより、1つのみの場合と比べて成膜室100へ混合ガスをより均一に噴出することができる。混合ガス噴出口200の一例としては、混合ガスが流通する混合ガス導入管210において、混合ガスが噴出される開口端部に相当する。そして、混合ガス噴出口200は、第1面110にあってもよく、図1に示すように第1面110の近傍であって、成膜室100の内部側や、混合ガスのガス漏れが無いことを前提として成膜室100の外部にあってもよい。近傍は、例えば第1面110から20mm程度が目安となる。なお、混合ガス噴出口200の温度を制御できるよう、混合ガス導入管210を適宜加熱できるヒータや冷却できるクーラー等の温度制御手段を備えてもよい。
図2に、第1面110を成膜室110の内部から見た正面概略図を示す。図2では、第1面110に4個の混合ガス噴出口200が、一列に配置されている。4個の混合ガス噴出口200が並ぶ方向は、基板ホルダー500において基板600が並んで積層される方向と一致させることができる。各混合ガス噴出口200のそれぞれから、混合ガスを均等に排出することが可能である。混合ガス噴出口200の内径は、混合ガス噴出口200の数や噴出条件によって最適のものを用いればよく、混合ガスの噴出に問題が無ければ特に限定されないが、例えば10mm~25mmの範囲に設定することができる。また、隣接する混合ガス噴出口200同士の距離は、混合ガス噴出口200の数や噴出条件によって最適のものを用いればよく、混合ガスの噴出に問題が無ければ特に限定されないが、例えば2mm~16mmの範囲に設定することができる。また、第1面110には、混合ガス噴出口200が複数の行と複数の列とによって配置されていてもよい。
〈混合ガス排出口300〉
混合ガス排出口300は、成膜室100の第2面120またはその近傍にあり、混合ガスを成膜室100から排出する。混合ガス排出口300の一例としては、混合ガスが成膜室100の外部へ排出されるために流通する混合ガス排出管310において、混合ガスが排出される開口端部に相当する。そして、混合ガス排出口300は、第2面120にあってもよく、図1に示すように第2面120の近傍であって、成膜室100の内部側や、混合ガスのガス漏れが無いことを前提として成膜室100の外部にあってもよい。近傍は、例えば第2面120から20mm程度が目安となる。なお、炭化珪素等が混合ガス排出口300や混合ガス排出管310において析出しないよう、混合ガス排出口300や混合ガス排出管310を温度制御するべく、適宜加熱できるヒータや冷却できるクーラー等の温度制御手段を備えてもよい。
図3に、第2面120を成膜室100の内部から見た正面概略図を示す。図3では、第2面120の中央に1個の混合ガス排出口300が配置されている。混合ガス排出口300は、炭化珪素等が多少成膜しても混合ガスを問題なく排出できれば、1個であってもよく、複数あってもよいが、炭化珪素等が多少成膜しても混合ガスを問題なく排出できるよう、第2面の一辺の1/5~1/2程度の開口直径を持つものが好ましい。
〈ヒータ400〉
ヒータ400は、成膜室100の4つの側面130を囲み、成膜室100を加熱する。ヒータ400を制御することによって、成膜室100の温度を基板に膜を成膜させるのに適した温度に制御することができる。ヒータ400としては、熱CVD法に有用なヒータを用いることができ、例えば筒状のカーボンヒータやカンタルヒータを用いることができる。
〈基板ホルダー500〉
図4に基板ホルダー500の模式図を示す。図4(a)が基板600を保持した基板ホルダー500の側面図であり、図4(b)が成膜室100の内部において第1面110側から見た基板ホルダー500の正面図である。基板ホルダー500は、複数の基板600を、基板600同士を非接触で等間隔に積層して保持可能であり、成膜室100の第1面110と第2面120との間において、基板600の成膜対象面610を成膜室100の側面130と平行に設置可能である。
図4において、基板ホルダー500は、上保持棒510と下保持棒520によって基板600を上下の2か所より挟んで保持することができ、上保持棒510と下保持棒520のいずれも基板600を保持するための溝511、521を有するものである。ただし、基板ホルダーとしてはこれに限定されず、上下に加えて前後にも保持棒を有し、3か所または4か所で基板を保持することができる。
基板ホルダー500は、例えば上保持棒510と下保持棒520のいずれもが、成膜室100の側面130のうち、上側面130aと下側面130bとそれぞれ密接していることで、成膜に関与しない混合ガスが大量に混合ガス噴出口200から混合ガス排出口300へ向かって流れて、成膜室100から大量に排出されてしまうことを防止することができる。
なお、図4(b)では、基板600の成膜対象面610は成膜室100の側面130のうち、左側面130cと右側面130dと平行に設置されており、上側面130aおよび下側面130bと垂直に設置されている。ただし、基板ホルダー500の形状を変えることにより、基板600の成膜対象面610が左側面130cと右側面130dと垂直に設置され、上側面130aおよび下側面130bと平行に設置されることもできる。すなわち、基板600は、垂直方向に積層してもよく、水平方向に積層してもよい。ただし、成膜対象面610が混合ガス噴出口200に面するように、成膜対象面610を第1面110および第2面120と平行となるように基板600を設置すると、基板の間に混合ガスが均一に流れなくなるため、好ましくない。
また、基板600の成膜対象面610と左側面130cとの隙間の幅700、および右側面130dとの隙間の幅710が、等間隔に積層した基板600間のそれぞれの隙間の幅720と同一であると、これらの隙間を混合ガスが均一に流れるため、基板間や同一成膜対象面において、厚みのバラツキの少ない膜を成膜することができる。
〈混合ガスの噴出速度〉
図5に、混合ガスの噴出について説明する模式図を示す。混合ガスにおける分子同士の衝突を無視した場合の混合ガスの広がりを模式的に示したものであり、混合ガスに加圧等せずに第1面の混合ガス噴出口200から自然に拡散する場合の拡散速度をVd、混合ガスを加圧等して混合ガス噴出口200から噴出する場合の噴出速度をVgとする。
拡散速度Vdが噴出速度Vgよりも速い場合、混合ガス800の拡散がゆっくりと進むため(図5(a))、原料ガスの成膜室100への供給量が少なくなり、成膜速度が遅くなるおそれがある。混合ガス噴出口200が混合ガスによって成膜しないように、成膜室100において基板600と混合ガス噴出口200との距離をある程度設けることで混合ガス噴出口の温度を低温(例えば1200K以下)に制御しようとすると、混合ガス800が基板600へ到達するまでに距離があるため、より成膜に時間がかかることとなる。
この点を考慮して、製造装置1000では、混合ガス噴出口200から噴出される混合ガスの噴出速度を、前記混合ガスの拡散速度よりも早くすることができるものである。すなわち、噴出速度Vgを拡散速度Vdよりも早くすることで(図5(b))、混合ガス810が混合ガス噴出口200より強制的に排出される。これにより、成膜室100において基板600と混合ガス噴出口200との距離をある程度設けた場合であっても、成膜速度の低下を抑えることができる。すなわち、従来法と同等の成膜速度を維持しつつ、混合ガス噴出口200が混合ガスによって成膜して口径が小さくなっていくことや、混合ガス噴出口200が塞がってしまうことを防止することができる。
噴出速度Vgを拡散速度Vdよりも早くするべく、混合ガス810を混合ガス噴出口200より強制的に排出することは、例えば、ガス量をレギュレータやコンプレッサ、吸引装置等の噴出速度制御手段により調整することで可能である。例えば、噴出速度Vgを0.4m/秒以上とすることで、従来法と同等の成膜速度を維持しつつ、混合ガス噴出口200が混合ガスの成膜によって口径が小さくなっていくことや、混合ガス噴出口200が塞がってしまうことを容易に防止することができる。さらに、噴出速度Vgが1m/秒以上であれば、従来法よりも成膜速度を明確に早めることが可能であり、成膜処理時間をより効果的に短縮することができる。また、本発明の製造装置1000において、複数の混合ガス噴出口200が設けられる場合、基板ホルダー500が保持可能な基板600の枚数と、混合ガス噴出口200の口数との比は、1:0.4~1.5であることが好ましい。基板ホルダー500が保持可能な基板600の枚数と、混合ガス噴出口200の口数との比は、1:0.4~1.5であれば、上記のガス速度やガス流量の均一性を満足しつつ、成膜速度の低下を防止することができる。
製造装置1000において、混合ガス噴出口200と基板ホルダー500との最短距離は、150mm以上であることが好ましい。混合ガス810の噴出速度やガス流量、混合ガス噴出口200の口数によっても、最適な最短距離は異なるものの、上記の最短距離が150mm以上であれば、成膜室100における基板600周辺の成膜温度よりも、混合ガス噴出口200周辺の温度を十分に下げることができる。これにより、混合ガス噴出口200が混合ガスの成膜によって口径が小さくなっていくことや、混合ガス噴出口200が塞がってしまうことを容易に防止することができる。
〈排ガス処理装置900〉
排ガス処理装置900は、成膜室100から排出される排ガスを処理する装置であり、具体的には、成膜室100の下流に配置され、排ガス処理装置900内で排ガス中の塩素含有珪素源ガスと炭素とを反応させて、炭化珪素を析出させる装置である。排ガス処理装置900内で排ガス中の珪素を炭化珪素として回収することにより、排ガス中の珪素を希釈することができる。そのため、排気配管350等の、排ガス処理装置900の下流にあり、排ガス処理装置900から排出される排気ガスを製造装置1000の外部へ排出する設備に高次のクロロシランポリマーが析出することを防止し、設備の内部が閉塞することを抑制することができる。
排ガス処理装置900は、その内部を炭化珪素の析出に適した温度に調製できるよう、ヒータ400に囲まれて配置されることが好ましい。
[排ガス処理装置の実施形態1]
図6に、排ガス処理装置900a、900bの上面からみた断面を示す概略図を示す。図6(a)には、排ガス処理装置900の一態様として排ガス処理装置900aを示し、図6(b)には、排ガス処理装置900aとは異なる態様の排ガス処理装置900bを示す。
排ガス処理装置900aは、箱状の筐体910aを有し、成膜室100から排出される排ガスを筐体910a内部へ導入する排ガス導入口920aと、排ガスを筐体910a内部から外部へ排出する排ガス排出口930aを備える。例えば、排ガス導入口920aが図1に示す混合ガス排出管310と直接接続することにより、成膜室100から排出される排ガスを排ガス処理装置900aに導入することができる。また、排ガス排出口930aが図1に示す排気配管350と直接接続することにより、排ガス処理装置900aから排気配管350へ排ガスを排出することができる。
そして、排ガス処理装置900aは、筐体910aの内部に炭素源ガスを導入することのできる炭素源ガス導入管950aを備えることができる。これにより、炭化珪素を効率的に析出させることができるよう、排ガス中の炭素と珪素の含有量を調製することができる。なお、排ガス処理装置900aは、排ガス中の炭素と珪素の含有量を検出する検出手段や、排ガス処理装置900a内部を炭化珪素の析出に好適な温度に制御できるよう、温度測定手段やヒータ400の制御手段を備えていてもよい。
また、筐体910aの内部には、炭化珪素を析出させる板として、複数の炭化珪素析出板940aを備える。塩素含有珪素源ガスと炭素から化学蒸着により炭化珪素が生成する反応は、固体表面のみで起こるため、排ガスから効率良く炭化珪素を生成するためには、排ガスを固体表面に効率的に衝突させることが好ましい。そこで、排ガスを炭化珪素析出板940aの表面に効率的に衝突させて、炭化珪素析出板940aの表面に炭化珪素を効率的に析出させることができるよう、複数の炭化珪素析出板が排ガスの流通を阻害するように筐体910aの内部に配置されていることが好ましい。
例えば、排ガス処理装置900aの場合には、筐体910a内部の中央に形成された板状の炭化珪素析出板941aと、筐体910aの内壁より突出するように形成された板状の炭化珪素析出板942aを備える。炭化珪素析出板941a、942aのいずれも、それらの長手方向が排ガス導入口920aより侵入する排ガスの侵入方向と平行となるように配置されている。そして、炭化珪素析出板941a、942aが排ガス導入口920aから排ガス排出口930aへ向けて交互に配置されている。
図6(a)では、炭化珪素析出板941aは3つ備えられているが、排ガス処理装置900の設置態様により任意の数を備えることができ、3つに限定されない。炭化珪素析出板941aが1つであっても排ガスより炭化珪素を析出させることが可能であり、2つ以上備えられていることが好ましく、4よつ以上備えられていることがより好ましい。
一方、図6(b)に示す排ガス処理装置900bの場合には、筐体910a内部の中央に形成された炭化珪素析出板941bと、筐体910aの内壁より突出するように形成された板状の炭化珪素析出板942bを備える。排ガス処理装置900aとは異なり、炭化珪素析出板941bは中央部が排ガス排出口930aの方へ屈曲したくの字状の断面を有し、排ガス排出口930aから排ガス導入口920aへ向けて広がるテーパー状となっている。また、炭化珪素析出板942bは炭化珪素析出板942aと同様に板状であるものの、先端が排ガス導入口920aの方へ傾くように傾斜して設置されている。これにより、筐体910aの内部に侵入した排ガスが通り抜けられずに留まりやすくなる領域Aができるため、排ガス処理装置900aの場合よりも排ガスの流通がより阻害されることで、炭化珪素析出板940bの表面に炭化珪素をより効率的に析出させることができる。
なお、排ガス処理装置900bは、排ガス処理装置900aと同様に、箱状の筐体910a、排ガス導入口920a、排ガス排出口930a、および炭素源ガス導入管950aを備える。
[排ガス処理装置の実施形態2]
また、図1の製造装置1000では、成膜室100に隣接する箱状の筐体910aを有する排ガス処理装置900について例示したが、これに限定されず、箱状の排ガス処理装置900を設置する場所が無い場合には、例えば、製造装置の空いた空間に対応する形状に排ガス処理装置900を設けてもよい。
例えば、図7に示す製造装置2000は、成膜室100の外部を覆うように排ガス処理装置900cが設けられており、排ガス処理装置900cの末端に排気配管350aが設置されている(図7(a))。図7(b)は、図7(a)のAA’断面図であり、排ガス処理装置900cは、成膜室100の外部を覆い、セラミック炉芯管1300の内部にある外筒1100に覆われている。
図7(c)は、図7(a)の領域Rにおける排ガス処理装置900cの断面図である。排ガス処理装置900cは、排ガスが通過する空間960と、排ガスを遮断する壁970a、bとが交互に配置されている。図7(d)は、図7(c)のBB’断面図であり、図7(e)は、図7(c)のCC’断面図である。図7(d)、図7(e)に示すように、壁970a、bには排ガスが通過できる通過口980a、980bが設けられている。排ガス流通が滞るように、通過口980aが壁970aの左右端部付近に設けられているのに対し、通過口980bが壁970bの上下端部付近に設けられている。
排ガス処理装置900cを排ガスが通過することにより、空間960の内壁や通過口980a、980bの内壁に炭化珪素を析出させることができる。
炭化珪素析出板940a、940bの面積は、炭化珪素の析出速度(すなわち塩素含有珪素源ガスの消費速度)で変わるが、炭化珪素の析出に好適な温度として排ガス処理装置900の内部の温度を1400K~1800Kとする場合には、炭化珪素の成膜速度として50~100μm/hrまたはそれ以上の成膜速度での成膜が期待できる。成膜速度が50μm/hrの場合、塩素含有珪素源ガスの消費量は4モル/平方メータ/hrであり、成膜速度が100μm/hrの場合の塩素含有珪素源ガスの消費量は8モル/平方メータ/hrに相当するので、排ガス中の塩素含有珪素源ガスの全量を処理可能な面積の炭化珪素析出板940a、940bを排ガス処理装置900が有すれば、塩素含有珪素源ガスの全量を炭化珪素として回収する処理が可能になる。なお、成膜室100中で炭化珪素が成膜されるため、排ガス中の塩素含有珪素源ガスの濃度は原料ガス中の塩素含有珪素源ガスの濃度よりは少なくなる。
[排ガス処理装置の実施形態3]
図9に炭化珪素析出板943の模式図を示す。図9(a)は、炭化珪素析出板943の側面断面図であり、図9(b)は、炭化珪素析出板943の斜視図である。また、図10に、排ガス処理装置900d、900eの上面からみた断面を示す概略図を示す。
塩素含有珪素源ガスと炭素から化学蒸着により炭化珪素を生成する反応は、固体表面でのみ起きる。そのため、排ガスから効率良く炭化珪素を生成するためには、排ガスを固体表面に効率的に衝突させることが好ましい。このような観点から、炭化珪素析出板940a、940bは、それらの表面を固体表面として炭化珪素を析出させる態様の析出板であるが、一方で、炭化珪素析出板943は、内部に充填された炭素粒子の表面を固体表面として炭化珪素を析出させる態様の析出板である。
〈炭化珪素析出板943〉
炭化珪素析出板943は、炭素粒子10が充填された中空の内部空間943aと、排ガスが流通する方向D1において内部空間943aよりも上流にあり、排ガスが流通する方向D1と交差するおもて面943bと、排ガスが流通する方向D1において内部空間943aよりも下流にあり、排ガスが流通する方向D1と交差するうら面943cを備える。そして、おもて面943bには、排ガスを内部空間943aへ導入する導入口943dが設けられており、うら面943cには、排ガスを内部空間943aから排出する排出口943eが設けられている。
炭化珪素析出板943は、その筐体943fが炭化珪素析出板941aと同形状であってもよく、異なる形状であってもよい。図9の場合、炭化珪素析出板943の筐体943fが円柱形状であり、おもて面943bおよびうら面943cが円形で、内部空間943aの半径がRであり、内部空間943aの高さがHである。ただし、排ガス処理装置の内部形状に応じて、炭化珪素析出板943の筐体943fの形状は任意に変更可能である。例えば、円柱形状に代えて多角柱形状であってもよい。
導入口943dおよび排出口943eの大きさは、炭素粒子10が内部空間943aより外部へ流出することを抑制できるよう、炭素粒子10の平均粒径(D50)2r(ここで、rは炭素粒子10の半径)より小さいことが好ましい。特に、排出口943eから排ガスと共に炭素粒子10が排出されないよう、排出口943eの大きさは炭素粒子10の粒径の下限値未満であることが好ましい。
また、導入口943dおよび排出口943eは、排ガスの導入や排出が用意となるように複数設けられていることが好ましい。さらに、導入口943dや排出口943eが設けられた円形板状のおもて面943bおよびうら面943cに代えて、炭素粒子10が内部空間943aより外部へ流出しない大きさの目開きのカーボン製のメッシュを用いてもよい。さらに、排ガスの導入および排出がされて、炭素粒子10の流出が防止できるのであれば、おもて面943bおよびうら面943cに代えて、カーボン製のフェルトを用いてもよい。
排ガス処理装置は、その設置態様により、炭化珪素析出板943を任意の数を備えることができる。例えば、図10(a)に示す排ガス処理装置900dのように炭化珪素析出板943を1つのみ備えてもよく、図10(b)に示す排ガス処理装置900eのように炭化珪素析出板943を複数備えてもよい。
また、炭化珪素析出板943は交換可能であり、炭素粒子10で炭化珪素を十分に析出させた炭化珪素析出板943を新品の炭化珪素析出板943に交換し、排ガスの処理を継続することが可能である。
さらに、炭化珪素析出板943は、内部空間943aの高さHを増減させてもよい。高さHを増減させる場合、好ましくは10mm以上200mm以下がよい。なお、図10(b)に示す排ガス処理装置900eのように炭化珪素析出板943を複数備える場合には、それぞれの円柱の高さHの合計が、10mm以上200mm以下とすることが好ましい。
炭化珪素析出板943を1つ用いるのであれば内部空間943aの高さHの合計、複数の炭化珪素析出板943を用いるのであれば高さHの合計が10mm以上200mm以下の範囲内であれば、内部空間943aにある炭素粒子10に炭化珪素を効率よく析出させることができる。高さHまたは高さHの合計が10mmより小さい場合、炭素粒子10の表面積として炭化珪素の析出に必要な表面積が十分にないことで、炭化珪素の析出が不十分であることにより、高次のクロロシランポリマーが排気配管等に析出することを防止できず、排気配管等が閉塞することを抑制できないおそれがある。また、高さHまたは高さHの合計が200mmより大きい場合、排ガスが流通する方向D1において上流にある炭素粒子10に炭化珪素が析出される一方で、下流にある炭素粒子10に炭化珪素が析出しないことで、炭素粒子10が十分に利用されない場合がある。
(炭素粒子10)
炭素粒子10の平均粒径(D50)は、1mm以上10mm以下が好ましい。平均粒径が1mm以上10mm以下であれば、内部空間943aにある炭素粒子10に炭化珪素を効率よく析出させることができる。平均粒径が1mmより小さい場合は、排ガスの流れることによる抵抗(流体抵抗)が大きくなりすぎて炭化珪素の析出する効率が低下する場合があり、平均粒径10mmより大きい場合、炭素粒子10の表面積として炭化珪素の析出に必要な表面積が十分確保できないことで、炭化珪素の析出が不十分であることにより、高次のクロロシランポリマーが排気配管等に析出することを防止できず、排気配管等が閉塞することを抑制できないおそれがある。
内部空間943aにある炭素粒子10に炭化珪素をより効率よく析出させることを考慮すると、平均粒径(D50)が2.0mmであり、D10~D90の範囲が0.5mm~2.6mmの炭素粒子10を使用することが好ましい。さらに、流体抵抗が大きくなると炭化珪素の析出する効率が低下することを考慮し、例えば呼び径10(ASTM:目開き2mm)の篩を用いて平均粒径未満の炭素粒子10を除去して、粒径が2.0mm~2.3mmの炭素粒子10を用いることが好ましい。
また、炭素粒子10の嵩密度、即ち内部空間943aにおける炭素粒子の充填率は40体積%より大きく60体積%以下が好ましい。充填率が40体積%より大きく60体積%以下であれば、内部空間943aにある炭素粒子10に炭化珪素を効率よく析出させることができる。析出効率を考えた場合、充填率が40体積%より小さい場合は、残部の炭素粒子10間の隙間の合計体積が内部空間943aに対して60体積%より多くなってしまい、炭素粒子10と接触しない排ガスが排出口943eより排出されるおそれがあり、炭化珪素の析出が不十分であることにより、高次のクロロシランポリマーが排気配管等に析出することを防止できず、排気配管等が閉塞することを抑制できないおそれがある。また、充填率が60体積%より大きい場合には、流体抵抗が大きくなりすぎて炭化珪素の析出する効率が低下するおそれがある。
ここで、炭素粒子10は可能な限り粒径がそろっていることが好ましい。炭素粒子10の粒径が揃っていない場合には、炭化珪素が炭素粒子10の表面に析出することにより炭化珪素を含めた粒径が変化するため、流体抵抗が大きくなりすぎる場合や、内部空間943aで部分的に利用されない炭素粒子10が生じる場合がある。具体的には、粒径が2.0mm~2.3mmの炭素粒子10を用いれば、流体抵抗が大きくなりすぎることを防止し、内部空間943aに充填された炭素粒子10の表面へ炭化珪素を無駄なく効率的に析出させることができる。
炭化珪素の効率的な析出に十分な内部空間943aに充填された炭素粒子10の比表面積(単位体積あたりの表面積)は、炭化珪素の析出速度(塩素含有珪素源ガスの消費速度)で変わる。例えば、炭化珪素を析出させる際の温度が1400K~1800Kの場合では、炭化珪素の成膜速度が50~100μm/hr以上となることが期待できる。ここで、炭化珪素の成膜速度が50μm/hrの場合には、塩素含有珪素源ガスの消費量は4モル/平方メータ/hrに相当し、炭化珪素の成膜速度が100μm/hrの場合には、塩素含有珪素源ガスの消費量は8モル/平方メータ/hrに相当する。この塩素含有珪素源ガスの消費量を考慮して、原料ガス中に含まれる塩素含有珪素源ガスを全量処理可能な比表面積以上の比表面積を、内部空間943aに充填された炭素粒子10が有すれば、炭化珪素を析出させることにより塩素含有珪素源ガスを全量処理可能である。成膜室100中で炭化珪素膜が成膜されるため、排ガス中の塩素含有珪素源ガスの量は、原料ガスの塩素含有珪素源ガスの量よりは少ないためである。
炭素粒子10を用いた炭化珪素析出板943の場合、炭素粒子10の表面における炭化珪素の析出は排ガスが流通する方向D1に面する領域で起きる。例えば、図10(a)の領域11で示すように、炭素粒子10の表面において、炭化珪素の析出は排ガスが流通する方向D1に面する上流側の半面で生じやすい。これを考慮すると、炭素粒子10の比表面積は、炭化珪素析出板943のおもて面943bの内部空間943aの表面943gの面積(πR)の2倍以上であることが好ましい。
例えば炭化珪素析出板943の円柱状の内部空間943aの半径をR、高さをHとし、炭素粒子10の半径をr、内部空間943aに充填された炭素粒子10の相対嵩密度をC(0<C<1)とすると、内部空間943aに充填された炭素粒子10の個数Nは、[数1]に示す以下の式により算出することができる。
Figure 0007354898000001
そして、内部空間943aに充填された炭素粒子10の表面積の合計(全表面積)は、[数2]に示す以下の式により算出することができる。
Figure 0007354898000002
また、炭素粒子10の比表面積は、炭化珪素析出板943のおもて面943bの内部空間943aの表面943gの面積(πR)の2倍以上であることが好ましいことを考慮すると、全表面積は、2πR2以上であることが好ましい。この場合、炭素粒子10の半径rは、[数3]から導かれる[数4]に示す式により算出することができる。
Figure 0007354898000003
Figure 0007354898000004
なお、炭素粒子10として用いることができる活性炭等は、実際には細孔を有するために、実際の比表面積は炭素粒子10の粒子形状を基に算出した場合よりも大きくなるが、炭素粒子10の表面に炭化珪素が成膜することで細孔がなくなる。そのため、炭素粒子10の比表面積は、ガス吸着に炭素粒子を用いる場合の比表面積を基にするのではなく、炭素粒子10の粒子形状から求めた表面積で計算することが、より好ましい。
なお、炭化珪素析出板943を用いた場合は、炭素粒子10の表面のみならず、炭化珪素析出板943の表面に炭化珪素が析出してもよい。例えば、おもて面943bの表面において炭化珪素が析出することが想定される。
排ガス処理装置900を構成する各部材は、使用環境に耐えられるよう黒鉛製であることが好ましい。黒鉛であれば排ガス処理装置の任意の形状への加工が容易であり、また、排ガス処理時に不活性雰囲気下とすることで、高温となる成膜条件に十分な耐久性を持つことができる。なお、排ガス処理装置900に炭化珪素が十分に析出したら、排ガス処理装置900を新品に交換することで、引き続き高次のクロロシランポリマーが排気配管350等に析出することを防止し、排気配管350等が閉塞することを抑制することができる。
(その他の構成)
本発明の一実施形態の製造装置1000は、上記の構成の他、更なる構成を備えていてもよい。例えば、図1に示すように、成膜室100が内部に挿入された、例えばカーボン製の円筒状の外筒1100、外筒1100の内部において成膜室100を第1面110の外部から固定する保持治具1200、外筒1100が内部に挿入され、外筒1100との間にArガス等の不活性ガスを流通させるセラミック炉芯管1300、外筒1100およびセラミック炉芯管1300をそれらの両端において固定する固定フランジ1400、成膜室100を外筒1100およびセラミック炉芯管1300と共に内部に収める筐体1500を備えてもよい。また、未図示ではあるが、成膜室100の室内の温度や第1面100の温度、混合ガス噴出口200の温度を測定することのできる温度計等の温度測定手段、ヒータ400の発熱を制御するスイッチ等の制御手段や発熱させるための電源等を備えることができる。
[排ガス処理方法]
次に、本発明の排ガス処理方法の一例として、製造装置1000を用いる排ガス処理方法について説明する。本発明の排ガス処理方法は、以下に説明する排ガス導入工程と、モル比制御工程と、炭化珪素析出工程と、を含む。
〈排ガス導入工程〉
本工程は、化学蒸着により炭化珪素多結晶を成膜する成膜室100から排出される、塩素含有珪素源ガスを含有する排ガスを、複数の炭化珪素析出板を備える、室内温度が1400K~1800Kの排ガス処理室(製造装置1000においては排ガス処理装置900)へ導入する工程である。
排ガス中には、以下に説明する炭化珪素の原料ガスとなる塩素含有珪素源ガスおよび炭素源ガスと、さらにこれらの原料ガスを運搬する役目を持つアルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスや水素ガス等のキャリアガスが含まれ、更に適宜窒素ガス等のドーパントガスやアルゴンガスを含んでもよい。
(塩素含有珪素源ガス)
塩素含有珪素源ガスとしては、熱CVD法による炭化珪素のCVD成長に用いられるものであれば、特に制限はない。例えば、クロロシランガスとして、SiH3Cl、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合したものを好適に用いることができる。また、これらのクロロシランの単量体のみならず、2量体のガスを用いることもできる。
(炭素源ガス)
炭素源ガスとしては、塩素含有珪素源ガスと同様に公知のものを用いることができ、一般的には炭化水素ガスを使用することができる。例えば、常温付近でガス状態であってハンドリングする上で好都合であることから、炭素数が5以下の飽和炭化水素、又は、炭素数が5以下の不飽和炭化水素からなる炭素源ガスであるのがよく、これらの1種又は2種以上を混合したものを好適に用いることができる。特に、炭素数が5以下の炭化水素から選ばれた1種または2種以上であり、メタン、エタン、プロパン、ブタンやこれらに類似する炭化水素ガスを、適宜炭素源ガスとして用いることができる。また、芳香族炭化水素等のガスも使用可能ではあるが、一般に分解速度が遅く、カーボンの凝集体を作りやすいので注意が必要である。また、炭素源ガスのキャリアガスとしては、ガス同士の反応を抑えることができることから、水素を用いるのが好ましい。
(室内温度)
排ガス処理室の室内温度は1400K~1800Kとすることで、排ガス中の塩素含有珪素源ガスを効果的に炭化珪素へ変換することができる。室内温度が1400K未満の場合には、炭化珪素への変換が不十分となり、高次のクロロシランポリマーが排気配管350等に析出することで、排気配管350等が閉塞するおそれがある。また、室内温度が1800Kより高いと、炭化珪素の化学蒸着に好適な温度よりも高くなってしまうことにより、炭化珪素への変換量が低下するおそれがある。なお、排ガス処理室の室内温度は、ヒータ400を用いて制御することができる。
〈モル比制御工程〉
本工程は、炭化珪素析出板へ接触する前の排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siを、1.1~2.0:1に制御する工程である。炭化珪素析出板940a、940bや、炭化珪素析出板943の内部にある炭素粒子10等の固体表面に吸着する速度は、塩素含有珪素源ガスの方が炭素源ガスよりも早く、特にCHガスは吸着速度が遅い。そのため、排ガス中の炭素の量が珪素の量よりも多い方が、炭化珪素の生成量が多くなる。その一方で、排ガス処理室の室内温度が1000℃(1273.15K)以上の温度の場合には、塩素含有珪素源ガスの蒸気圧が無視できなくなり、成膜室100の原料ガス組成として塩素含有珪素源ガスよりも炭素源ガスを過剰にすると、炭化珪素多結晶膜の組成比として炭素が過剰になるため、成膜室100内において炭素量を過剰にすることは難しい。ただし、排ガス処理室内では、塩素含有珪素源ガスが炭化珪素に変換されればよいので、排ガス中のガス組成として炭素源ガスを塩素含有珪素源ガスよりも過剰にすることができる。
そこで、炭化珪素析出板940a、940b、943等へ接触する前の排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siを、1.1~2.0:1に制御することで、塩素含有珪素源ガスを炭化珪素へ効率よく変換することができる。モル比C:Siが<1.1:1の場合には、固体表面への吸着速度は塩素含有珪素源ガスの方が炭素源ガスよりも速いため、塩素含有珪素源ガスと炭素源ガスのガス量のバランスが悪くなり、効率的に炭化珪素へ変換することができないおそれがある。また、モル比C:Siが>2.0:1の場合には、排ガス中の塩素含有珪素源ガスの濃度が薄くなり、塩素含有珪素源ガスが炭化珪素析出板940a、940bや、炭化珪素析出板943の内部にある炭素粒子10等へ効果的に衝突しないことで、効率的に炭化珪素へ変換することができないおそれがある。なお、排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siは、排ガス中の炭素と珪素の含有量を検出する検出手段を用いて制御することができる。
モル比制御工程において、炭化珪素析出板へ接触する前の排ガスに対し、炭素と珪素のモル比C:Siが1.1~2.0:1となるように、炭素源ガスを混合してもよい。成膜室100から排出された排気ガス中の、炭素と珪素のモル比C:Siが1.1~2.0:1であれば、炭素源ガスを混合することは必須ではない。ただし、排ガス中の炭素が少ない場合には、例えば炭素源ガス導入管950aより排ガス処理室内へ炭素源ガスを導入し、炭化珪素析出板940a、940b、943等へ接触する前の排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siを、1.1~2.0:1に調製することができる。
なお、炭素源ガスとしては、上記の炭素源ガスの項目で説明したガスを使用することができる。また、炭素源ガスを導入することによって排ガス処理室の室内温度が1400K未満に低下しないよう、排ガス処理室へ導入する前の炭素源ガスを温めておくことができる。例えば、ヒータ400を用いて炭素源ガス導入管950aを加熱することにより、炭素源ガスを温めることができる。
〈炭化珪素析出工程〉
本工程は、モル比制御工程後の排ガスを、炭化珪素析出板で反応させて、炭化珪素を析出させる工程である。例えば、排ガスを炭化珪素析出板940a、940b等へ衝突させて、炭化珪素析出板940a、940b等の表面に炭化珪素を析出させることができる。また、排ガスを炭化珪素析出板943の内部にある炭素粒子10へ衝突させて、炭素粒子10の表面に炭化珪素を析出させることができる。炭化珪素を析出させた結果として、高次のクロロシランポリマーが排気配管350等に析出することを防止し、排気配管350等が閉塞することを抑制できる。
(その他の工程)
本発明の排ガス処理方法は上記の工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、排ガスを排ガス処理室から排気配管350へ排出する工程や、上記した排ガス処理室へ導入する前の炭素源ガスを温める工程が挙げられる。
[炭化珪素多結晶ウエハの製造方法]
次に、本発明の炭化珪素多結晶ウエハの製造方法について説明する。本発明の炭化珪素多結晶ウエハの製造方法は、本発明の排ガス処理方法を含む。排ガス処理方法については上記したとおりであり、説明は省略する。
本発明の炭化珪素多結晶ウエハの製造方法は、本発明の排ガス処理方法の他、成膜工程等、炭化珪素多結晶ウエハを製造するための工程を含むことができる。以下、本発明の炭化珪素多結晶ウエハの製造方法の一例として、製造装置1000を用いる炭化珪素多結晶ウエハの製造方法について説明する。
(成膜工程)
成膜工程は、成膜室100において、基板ホルダー500に基板600同士を非接触で等間隔に積層され、かつ、成膜対象面610を側面130と平行に設置された複数の基板600に対し、複数の混合ガス噴出口200から混合ガス810を成膜室100に噴出すると共に、混合ガス排出口300から混合ガス810を成膜室100から排出して、混合ガス810を成膜対象面610と平行な方向に流通させて、基板600に膜を成膜する工程である。このように成膜すれば、基板間や同一成膜対象面において、厚みのバラツキの少ない膜を成膜することができる。
また、基板600の成膜対象面610と左側面130cとの隙間の幅700、および右側面130dとの隙間の幅710が、等間隔に積層した基板600間のそれぞれの隙間の幅720と同一であると、これらの隙間を混合ガスが均一に流れるため、基板間や同一成膜対象面において、より厚みのバラツキの少ない膜を成膜することができる。
例えば、図5を用いて説明したように、混合ガス噴出口200から噴出される混合ガス810の噴出速度Vgを、混合ガス810の拡散速度Vdよりも早くすることが好ましい。
炭化珪素多結晶ウエハの製造方法においては、炭化珪素の原料となる塩素含有珪素源ガスと炭素源ガスが原料ガスとなり、原料ガスとさらにこれらの原料ガスを運搬する役目を持つアルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスや水素ガス等のキャリアガスを混合したものが、混合ガス810となる。混合ガス810は更に適宜窒素ガス等のドーパントガスやアルゴンガスを含んでもよい。塩素含有珪素源ガスや炭素源ガス、キャリアガス等については、排ガス処理方法においてした説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
さらに、炭化珪素多結晶膜を成膜する場合には、塩素含有珪素源ガスにおける珪素原子数に対する炭素源ガスにおける炭素原子数の比(C/Si)が重要であり、C/Siを0.7~1.3に制御することにより、基板600に炭化珪素多結晶の薄膜をエピタキシャル成長させることが容易となり、成長速度を大きくすることができて生産性の向上に繋がる。C/Siが0.7~1.3から外れた場合には、珪素原子と炭素原子の存在割合のバランスが悪くなることで、炭化珪素多結晶の成膜が困難となるおそれや、成膜速度が遅くなるおそれ、成膜に関与しない原料ガスが増えて無駄になるおそれがある。例えば、C/Siが0.7未満であると、未反応のSiが金属状態で膜に付着(ドロップレット)してしまうおそれがあり、欠陥発生の原因となる。また、C/Siが1.3を超えると、バンチングと呼ばれる表面段差が発生するおそれがあり、デバイスを作製する上で悪影響を与えることがある。より好ましくは、C/Siを0.8~1.2とする。
炭化珪素多結晶薄膜の成長速度は10μm/時間~70μm/時間とするのが好適であり、その際の塩素含有珪素源ガスについては、上記で好適な例として挙げた塩素含有珪素源ガスの濃度が1体積%~10体積%になるようにするのがよく、好ましくは2体積%~4体積%であるのがよい。一方の炭素源ガスについては、好適な例として挙げた炭素源ガスの濃度が0.01体積%~1体積%以下になるようにするのがよく、好ましくは0.02体積%~0.06体積%であるのがよい。なお、この濃度範囲は、一例としてC38の場合について例示したものであり、この濃度範囲を目安として、他の炭素源ガスを用いる場合には、カーボン(C)の量で等量となるように変更すればよい。例えば、炭素源ガスとしてメタン(CH)を用いる場合には、この濃度範囲の上限値及び下限値をそれぞれ3倍にすればよい。
また、炭化珪素多結晶薄膜の成長圧力については、成長温度と同様、炭化珪素薄膜をCVD成長させる際の一般的な条件をそのまま採用することができる。例えば、成長圧力を10,000Pa~110,000Paの範囲とするのがよい。
また、本発明の炭化珪素多結晶ウエハの製造方法では、複数のSi基板又はC基板を基板600とし、その成膜対象面610のそれぞれに炭化珪素多結晶薄膜を成長させることができる。一度の成膜処理における基板600の枚数については、特に制限はないが、5~10枚の基板から20枚~30枚、またはそれ以上の数の基板600まで、同時に成膜させることができる。
そして、基板600のそれぞれの表面に成長させる炭化珪素多結晶薄膜の膜厚については、適宜設定することができ、特に制限はないが、一般的には0.2mm以上5mm以下の範囲の膜厚に設定することができる。
また、本発明の炭化珪素多結晶ウエハの製造方法においては、炭化珪素多結晶薄膜をCVD成膜させる際の成長温度は1400K以上1800K以下の範囲にするのがよい。本発明では、結晶系が3Cの炭化珪素多結晶ウエハの製造を主目的としており、一般に、成長温度が1800Kより高い温度では、炭化珪素の成膜においてエピタキシャル成長が起こる場合があり、結晶系が4Hの六方晶が3Cと共に成膜されるおそれがある。また、成長温度が1400Kより低いと、炭化珪素の成長速度が遅くなり、厚い膜を作成するのに適していない条件となるおそれがある。炭化珪素の成膜において、温度が高くなると成長速度が速くなることから、結晶系が3Cの炭化珪素多結晶を高速成膜(10μm/Hr以上)できるよう、成長温度は上記のように1400K以上1800K以下の範囲にするのがよい。
(その他の工程)
本発明の炭化珪素多結晶ウエハの製造方法は、上記した成膜工程や排ガス処理方法以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、基板ホルダー500に基板600同士を非接触で等間隔に積層して、基板600を基板ホルダー500に設置する工程や、基板600を設置した基板ホルダー500を成膜室100に設置する工程、製造装置1000を成膜できる状態に立ち上げる工程、成膜工程後に成膜室100を冷却する工程、成膜後の基板を成膜室100から取り出す工程等が挙げられる。
[実施例]
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の内容に制限されるものではない。
[実施例1]
基板600として、直径4インチ(100mm)、厚み1mmの炭素基板を9枚用意した。図1に示す炭化珪素多結晶ウエハの製造装置1000を用いて、熱CVD法により、基板600の成膜対象面610となる両面に炭化珪素多結晶膜を成膜し、炭化珪素多結晶ウエハを製造した。炭化珪素多結晶ウエハを製造後、排ガス処理装置900の下流に配置された排気配管350の内部を観察し、高次のクロロシランポリマー等の排ガス中の塩素含有珪素源ガスに起因する付着物の有無を確認した。
〈炭化珪素多結晶ウエハの製造装置1000〉
外筒1100は黒鉛製の両端坩堝から形成された筒状の形状であり、セラミック炉芯管1300に挿入されたものである。セラミック炉芯管1300および外筒1100の両端は金属製の固定フランジ1400で密閉され、黒鉛材料の酸化防止のために、内部にArガスが導入されている。そして、外筒1100の内部に成膜室100が保持冶具1200で固定されている。黒鉛製の混合ガス導入管210は、成膜室100の内部に混合ガス噴出口200が位置するように、保持治具1200および第1面100に挿入されて設置される。そして、黒鉛製の混合ガス排出管310は、成膜室100の内部に混合ガス排出口300が位置するように、第2面120に挿入されて設置される。成膜室100から排出される排ガスは、混合ガス排出管310を介して排ガス導入口920aより筐体910aの内部へ導入され、筐体910aの内部から排ガス排出口930aを介して排気配管350へ排出される。また、セラミック炉芯管1300を囲む円筒状の黒鉛製ヒータ400が設置されており、さらに、成膜室100および排ガス処理装置900aを外筒1100およびセラミック炉芯管1300と共に内部に収める筐体1500を備える。そして、成膜室100に供給された混合ガス810は、排気配管350に接続された未図示の真空ポンプを用いて製造装置1000から外部へ排出可能である。
製造装置1000において、セラミック炉芯管1300の寸法は外径210mm、内径190mmで厚みは均一であり、長さが700mmである。外筒1100は外径180mm、内径170mmで厚みは均一であり、長さが700mmである。また、成膜室100は、外形が118mm角で長さが320mmの直方体状であり、内形が110mm角で長さが312mmの直方体状であり、厚みは均一である。
(ガス噴出口200)
図2に示すように、第1面110に内径が12mmの混合ガス噴出口200が1列に4個配置されている。4つの混合ガス噴出口200は、管中心で22mmの等間隔に配置されている。また、混合ガス噴出口200の列は、第1面110における幅方向(列と直交する方向)の中央部に配置されている。
(排ガス処理装置900a)
実施例1では、排ガス処理装置として図6(a)に示す黒鉛製の排ガス処理装置900aを使用した。排ガス処理装置900aは、筐体910aの外形が118mm角で長さが320mmの直方体状であり、内形が110mm角で長さが312mmの直方体状であり、厚みは均一である。また、筐体910a内部の中央に並列して等間隔に3枚設置された板状の炭化珪素析出板941aは縦110mm、横90mmであり、厚みは4mmで均一である。そして、筐体910aの内壁より突出するように等間隔で形成され、炭化珪素析出板941aの間に配置された板状の炭化珪素析出板942aは、縦110mm、横45mmであり、厚みは4mmで均一である。また、排ガス導入口920aおよび排ガス排出口930aの開口径は56mmであり、混合ガス排出管310および排気配管350の内径と同一である。なお、炭素源ガス導入管950aの内径は10mmとした。
(基板600の設置)
図4に示す態様のように、9枚の基板600を基板ホルダー500に設置した。基板600は、溝511および溝521によって基板ホルダー500に固定された状態で、成膜室100に設置した。図4(b)に示す態様のように、基板ホルダー500の上保持棒510は、上側面130aとの間に混合ガス810が侵入しないように上側面130aと密接させ、下保持棒520は、下側面130bとの間に混合ガス810が侵入しないように下側面130bと密接させた。基板600の成膜対象面610と左側面130cとの隙間の幅700、右側面130dとの隙間の幅710および、等間隔に積層した基板600間のそれぞれの隙間の幅720と同一とし、それぞれ10mmとした。なお、混合ガス噴出口200と基板ホルダー500との最短距離は、150mmとした。
(炭化珪素多結晶膜の成膜)
黒鉛材料の酸化防止のために、外筒1100およびセラミック炉芯管1300との間、および筐体1500内にArガスを流した。そして、未図示の真空ポンプによって成膜室100内を真空排気した後、混合ガス導入管210を使って水素ガスを毎分200cm3の流量で成膜室100へ導入しながら、成膜室100内の圧力を大気圧(101,325Pa)に調整した。その後、圧力を一定に保ちながら、第1面110の温度を1100K以下、および混合ガス噴出口200の温度を1200K以下に維持しつつ、成膜室100内の温度を1550Kまで上げた。そして、成膜室100へ導入する水素ガスの流量を毎分3.0リットルまで増加させた。その状態を3分間保持した後、この水素ガスへSiCl4ガスを毎分0.3リットル、CHガスを毎分0.3リットル、窒素ガスを毎分1.0リットル、水素ガスを毎分1.0リットル混合して混合ガス810とし、Vg>Vdの状態で基板600へ炭化珪素多結晶膜の熱CVDによる成膜を開始した。
成膜温度および、排ガス処理温度すなわち排ガス処理装置900aの内部温度を1700Kとし、排ガスのガス処理効率を8モル/平方メータ/hrとした、原料ガスのSiCl4を0.3リットル/分導入するので、塩素含有珪素源ガスの導入量は0.8モル/hrであった。排ガスの処理に必要な炭化珪素析出板941aおよび炭化珪素析出板942aの面積は、0.1平方メートルとなった。また、炭化珪素析出板941aおよび炭化珪素析出板942aへ接触する排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siが1.33:1となるように、炭素源ガス導入管950aより排ガス処理装置900aへCHガスを0.1リットル/分導入した。炭素源ガス導入管950aより排ガス処理装置900aへ導入したCHガスは、純度100%のCHガスであり、キャリアガスは使用しなかった。
成膜処理を10時間行った後、混合ガス810の供給やヒータ400による加熱を止めて基板600を室温まで冷却後、基板ホルダー500より炭化珪素多結晶膜が成膜した基板600を取り出した。炭化珪素は正常に成膜され、成膜に問題はなかった。また、成膜後の排気配管350の内部を観察し、高次のクロロシランポリマー等の排ガス中の塩素含有珪素源ガスに起因する付着物の有無を確認したところ、塩素含有珪素源ガスに起因する付着物は無かった。なお、炭素源ガスが過剰量となったことにより、炭素源ガスの分解物であるススが、排気配管350の内部に少量付着していたが、排気配管350が閉塞するような量のススではなかった。
[実施例2]
排ガス処理装置900aに代えて排ガス処理装置900dを使用した他は、実施例1と同様に炭化珪素多結晶ウエハの製造装置1000を使用し、同様の方法および条件で成膜処理を行って成膜後の排気配管350の内部を観察した。
(排ガス処理装置900d)
実施例2では、排ガス処理装置として図10(a)に示す黒鉛製の排ガス処理装置900dを使用した。排ガス処理装置900dは、筐体910aの外径が176mmで長さが320mmの円柱体状であり、内径が168mmで長さが312mmの円柱体状であり、厚みは均一である。炭化珪素析出板943は筐体910aの内壁に密接して固定されており、筐体943fの外径が168mmで高さ58mm、内部空間943aの半径Rは80mm、高さ50mmである。内部空間943aには炭素粒子10として活性炭(大阪ガス株式会社製球状白鷺X7000H-3(粒径0.500~2.360mm)を使用した。活性炭の粒径2.3mm、内部空間943aに充填された活性炭の充填率を50体積%とすると、充填された活性炭の表面積の合計は3.15m2となり、おもて面943bの面積(0.08m×0.08m×π=0.2m2)の2倍以上となり、炭素粒子10の比表面積はおもて面943bの面積より十分大きい。なお、導入口943dおよび排出口943eは円形であり、活性炭が通過できないよう直径0.5mm未満とした。
また、排ガス導入口920aおよび排ガス排出口930aの開口径は56mmであり、混合ガス排出管310および排気配管350の内径と同一である。なお、炭素源ガス導入管950aの内径は10mmとした。
成膜を10時間行った後、混合ガス810の供給やヒータ400による加熱を止めて基板600を室温まで冷却後、基板ホルダー500より炭化珪素多結晶膜が成膜した基板600を取り出した。炭化珪素は正常に成膜され、成膜に問題はなかった。また、成膜後の排気配管350の内部を観察し、高次のクロロシランポリマー等の排ガス中の塩素含有珪素源ガスに起因する付着物の有無を確認したところ、塩素含有珪素源ガスに起因する付着物は無かった。
[比較例1]
原料ガス中のSiClガスの導入量を毎分0.4リットルとし、炭素源ガス導入管950aより排ガス処理装置900aへCHガスを導入しない以外は、実施例1と同様の方法で成膜処理を行って成膜後の排気配管350の内部を観察した。炭化珪素析出板941aおよび炭化珪素析出板942aへ接触する排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siは、1:1であった。炭化珪素は正常に成膜され、成膜に問題はなかったものの、原料の塩素含有珪素源ガスに起因する付着物が排気配管350の内部に約50g付着していた。なお、排気配管350の内部におけるススの付着は認められなかった。
[比較例2]
原料ガス中のSiCl4ガスの導入量を毎分0.4リットルとし、炭素源ガス導入管950aより排ガス処理装置900dへCH4ガスを導入しない以外は、実施例2と同様の方法で成膜処理を行って成膜後の排気配管350の内部を観察した。炭素粒子10へ接触する排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siは、1:1であった。炭化珪素は正常に成膜され、成膜に問題はなかったものの、原料の塩素含有珪素源ガスに起因する付着物が排気配管350の内部に約2g付着していた。なお、排気配管350の内部におけるススの付着は認められなかった。
[従来例]
排ガス処理装置900を備えておらず、排ガスが混合ガス排出管310より製造装置の外部へ排出される他は、製造装置1000と同構成である炭化珪素多結晶ウエハの製造装置3000(図8)を使用し、実施例と同様の条件で成膜処理を行って、成膜後の混合ガス排出管310の内部を観察した。炭化珪素は正常に成膜され、成膜に問題はなかったものの、原料の塩素含有珪素源ガスに起因する付着物が混合ガス排出管310の内部に約110g付着していた。また、排気配管350の内部には、多量のススの付着も認められた。
[まとめ]
以上、実施例において示したように、本発明の排ガス処理方法および炭化珪素多結晶ウエハの製造方法であれば、炭化珪素多結晶ウエハを問題なく製造しつつ、高次のクロロシランポリマーが排気配管等に析出することを防止し、排気配管等の閉塞を抑制できることが確認できた。
10 炭素粒子
11 領域
100 成膜室
110 第1面
120 第2面
130 側面
130a 上側面
130b 下側面
130c 左側面
130d 右側面
200 混合ガス噴出口
210 混合ガス導入管
300 混合ガス排出口
310 混合ガス排出管
350 排気配管
400 ヒータ
500 基板ホルダー
510 上保持棒
511 溝
520 下保持棒
521 溝
600 基板
610 成膜対象面
800 混合ガス
810 混合ガス
900 排ガス処理装置
900a 排ガス処理装置
900b 排ガス処理装置
900c 排ガス処理装置
900d 排ガス処理装置
900e 排ガス処理装置
910a 筐体
920a 排ガス導入口
930a 排ガス排出口
940a 炭化珪素析出板
940b 炭化珪素析出板
941a 炭化珪素析出板
941b 炭化珪素析出板
942a 炭化珪素析出板
942b 炭化珪素析出板
943 炭化珪素析出板
943a 内部空間
943b おもて面
943c うら面
943a 内部空間
943d 導入口
943c うら面
943a 内部空間
943e 排出口
943f 筐体
943g 表面
950a 炭素源ガス導入管
960 空間
970a 壁
970b 壁
980a 通過口
980b 通過口
1000 製造装置
1100 外筒
1200 保持治具
1300 セラミック炉芯管
1400 固定フランジ
1500 筐体
2000 製造装置
3000 製造装置
D1 方向
H 高さ
R 半径
Vg 噴出速度
Vd 拡散速度

Claims (6)

  1. 化学蒸着により炭化珪素多結晶を成膜する成膜室から排出される、塩素含有珪素源ガスを含有する排ガスを、炭化珪素析出板を備える、室内温度が1400K~1800Kの排ガス処理室へ導入する排ガス導入工程と、
    前記炭化珪素析出板へ接触する前記排ガス中の炭素と珪素のモル比C:Siを、1.1~2.0:1に制御するモル比制御工程と、
    前記モル比制御工程後の前記排ガスを、前記炭化珪素析出板で反応させて、炭化珪素を析出させる炭化珪素析出工程と、
    を含む、排ガス処理方法。
  2. 前記炭化珪素析出工程は、前記排ガスを前記炭化珪素析出板へ衝突させて、当該炭化珪素析出板の表面に炭化珪素を析出させる工程である、請求項1に記載の排ガス処理方法。
  3. 前記炭化珪素析出板は、
    炭素粒子が充填された中空の内部空間と、
    前記排ガスが流通する方向において前記内部空間よりも上流にあり、前記排ガスが流通する方向と交差するおもて面と、
    前記排ガスが流通する方向において前記内部空間よりも下流にあり、前記排ガスが流通する方向と交差するうら面と、
    前記おもて面に設けられた前記排ガスを前記内部空間へ導入する導入口と、
    前記うら面に設けられた前記排ガスを前記内部空間から排出する排出口を備え、
    前記炭化珪素析出工程は、前記排ガスを前記炭素粒子へ衝突させて、当該炭素粒子の表面に炭化珪素を析出させる工程である、請求項1に記載の排ガス処理方法。
  4. 前記炭素粒子の比表面積は、前記おもて面の面積の2倍以上である、請求項3に記載の排ガス処理方法。
  5. 前記モル比制御工程において、前記炭化珪素析出板へ接触する前の前記排ガスに対し、炭素と珪素のモル比C:Siが1.1~2.0:1となるように、炭素源ガスを混合する、請求項1~4のいずれかに記載の排ガス処理方法。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の排ガス処理方法を含む、炭化珪素多結晶ウエハの製造方法。
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