JP7352583B2 - 高い強度および高い電気伝導率を有するアルミニウムストリップの製造方法 - Google Patents

高い強度および高い電気伝導率を有するアルミニウムストリップの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高い強度および高い電気伝導率を有するアルミニウムストリップの製造方法、さらには、これらの方法により製造可能なアルミニウムストリップ、またはそのようなアルミニウムストリップから製造されたアルミニウム製品に関する。
アルミニウム導体材料の分野では、合金EN AW-6101Bが、高い電気伝導率および強度を必要とする用途での標準である。これらの導体材料は、通常、急冷もしくは時効処理を含む押出により、または個別の溶体化処理を必要とする圧延プロセスにより製造される。
図1は、電気的なアルミニウム導体用途のアルミニウムストリップを従来技術により製造するそのような方法を示す。ここで、図1には、左から右に個々の方法ステップが図示されており、その下に配置された温度・時間図には、製造の間の材料温度が定性的かつ概略的に図示されている。
図1に示されるプロセスフロー2では、第1のステップ4で、例えば合金EN AW-6101Bのインゴット6が、DCインゴット鋳造においてまず鋳造される。続いて、均質化炉10内での均質化ステップ8の後に、熱間圧延12が、熱間圧延スタンド14上で行われ、続いて、冷間圧延16が、所望の最終厚さまで冷間圧延スタンド18上で行われる。あるいは、均質化は、熱間圧延温度への予熱に統合されてもよい。
電気伝導率および強度の観点から所望の材料特性を達成するために、この製造法では、冷間圧延後に連続炉22内での溶体化処理20が必要であり、それから、材料は最終的に人工時効処理炉26内での人工時効処理焼なまし24に供されて、材料の強度および電気伝導率が再び向上させられる。
図1に図示される方法に加えて、導電体用途のアルミニウムストリップの別のさらなる製造方法が、従来技術、すなわち、Materials and Design 87 (2015) 1-5に公開されているC.H. Liu等の論文「従来の熱機械加工の改良によるAl合金の導電性と強度の向上(Enhancing electrical conductivity and strength in Al alloys by modification of conventional thermal-mechanical process)」から既知である。この論文によると、図1に図示される方法において、ストリップを冷間圧延前に溶体化処理および人工時効処理することにより、改善された電気伝導率および強度を達成することができることが見出された。
図2は、相応するプロセスフロー30を示し、ここで、個々の方法ステップは、同様に左から右に図示されており、その下に配置された温度・時間図には、製造の間の材料温度が定性的かつ概略的に図示されている。
方法30では、方法2のように、まずDCインゴット鋳造4、それから均質化または予熱8、続いてホットストリップの製造のための熱間圧延ステップが同様に行われる。方法30の場合、冷間圧延の代わりに、まず溶体化処理20、続いて人工時効処理炉34内での人工時効処理32が続き、それから、ストリップが最終的に冷間圧延スタンド18上で冷間圧延される。冷間圧延後に、焼なまし炉26内での焼なまし24が同様に行われる。
図2に記載の方法により、たしかに、良好な電気伝導率、強度および延性を有するアルミニウム導体材料を製造することができる。しかしながら、さまざまな方法ステップがあるため、プロセスフローが非常に長く煩雑である。
このような背景から、本発明は、より速く、より効率的であり、それにもかかわらず電気伝導率および強度について良好な特性を達成することが可能な方法を提供するという課題に基づく。
本発明では、本開示の第1の態様によると、この課題は、アルミニウムストリップの製造方法であって、硬化性アルミニウム合金から構成される溶融物を、連続鋳造プロセス、特にツインロール鋳造によりアルミニウムストリップへと初期成形し、アルミニウムストリップを、冷間圧延によりある厚さまで圧延し、かつアルミニウムストリップを、連続鋳造プロセスと冷間圧延との間に人工時効処理する方法により解決される。この方法により、プロセスフローが著しく短縮されており、より速く、より経済的であるにもかかわらず図1の方法により製造されたアルミニウムストリップの強度および電気伝導率と同等の良好な強度と高い電気伝導率とを組み合わせたアルミニウムストリップを製造することが可能であることが見出された。プロセスフローは、特に、図2によるプロセスフローよりも短く、より速く、より経済的である。
連続鋳造プロセス、特にツインロール鋳造法(英語:twin-roll casting)を適用すると、単に、図1および図2による方法で設けられているインゴット鋳造、均質化および熱間圧延という複数の方法ステップが単一の連続鋳造プロセスに置き換えられるだけではない。ストリップが連続鋳造プロセスにより提供されると、図1および図2によるプロセスフローで必要とされるエネルギー消費の多い溶体化処理が不要となることがさらに見出された。それにより、溶体化処理に必要な連続炉の設置が不要となり、投資コストが削減される。
したがって、この方法における連続鋳造プロセス後の冷間圧延は、相応して中間溶体化処理なしで実施されることが好ましい。それにより、大幅なコスト削減およびプロセスチェーンの短縮を達成することができる。
この方法では、硬化性アルミニウム合金から構成される溶融物が、連続鋳造プロセス、特にツインロール鋳造によりアルミニウムストリップへと初期成形される。この連続鋳造プロセスでは、溶融物は連続的にストリップへと成形される。例えば、ツインロール鋳造の場合、2つの冷却された鋳造ロールのロールギャップに溶融物が注がれ、それにより、鋳造ロールの反対側で、連続したアルミニウムストリップがロールギャップから排出される。アルミニウムストリップの厚さは、ロールギャップの厚さにより予め決定される。
この方法では、アルミニウムストリップは、冷間圧延により最終厚さまで圧延される。冷間圧延は、冷間圧延スタンド上で、特に複数回のパスで行われる。
さらに、アルミニウムストリップは、連続鋳造プロセスと冷間圧延との間に人工時効処理される。この目的のために、アルミニウムストリップは、好ましくは、連続鋳造プロセス後に巻き取られてコイルとなり、その後、コイルの形態で人工時効処理炉に送られ、そこで所定の人工時効処理温度で所定の人工時効処理時間をかけて人工時効処理される。人工時効処理は、連続鋳造プロセスと冷間圧延との間のアルミニウムストリップの唯一の熱処理であることが好ましい。
さらに本発明では、本開示の第2の態様によると、上記の課題は、アルミニウムストリップの製造方法であって、硬化性アルミニウム合金から構成される溶融物を、連続鋳造プロセス、特にツインロール鋳造によりアルミニウムストリップへと初期成形し、アルミニウムストリップを、一次冷間圧延にて中間厚さまで圧延し、アルミニウムストリップを、二次冷間圧延にて最終厚さまで圧延し、かつアルミニウムストリップを、一次冷間圧延と二次冷間圧延との間に人工時効処理する方法により解決される。
本開示の第1の態様による方法についての先に記載の利点は、アルミニウムストリップが、連続鋳造プロセスと人工時効処理との間にまず一次冷間圧延に供される場合にも得られることが見出された。特に、このプロセス順序で、第1の態様による方法によって得られる強度/硬化または電気伝導率をさらに上回る強度または硬化および電気伝導率が得られることが試験により示された。さらに、この方法により、プロセスフローにおけるより高い柔軟性が可能になり、ロジスティック上の利点を得ることができる。
一次冷間圧延および二次冷間圧延は、連続鋳造プロセス後に、好ましくは中間溶体化処理なしで行われる。それにより、大幅なコスト削減およびプロセスチェーンの短縮を達成することができる。
一次冷間圧延では、総圧延度(Gesamtabwalzgrad)は、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満である。このようにして、人工時効処理後の二次冷間圧延において、達成すべき強度にとって十分に高い圧延度を達成することができる。一次冷間圧延は、1回の冷間圧延パスだけで実施されることが好ましい。このようにして、プロセスフローが簡素化される。
さらに本発明によると、上記の課題は、本開示の第1の態様による先に記載の方法もしくは本開示の第2の態様による先に記載の方法で製造可能なアルミニウムストリップにより、またはそのようなアルミニウムストリップから製造されたアルミニウム合金製品、例えばアルミニウム金属シートもしくはアルミニウムケーブルにより解決される。アルミニウムストリップまたはアルミニウム合金製品とは、良好な強度と高い電気伝導率とを併せ持つ、連続鋳造プロセス、特にツインロール鋳造で製造された製品に相応する。
本開示の第1の態様による先に記載の方法または本開示の第2の態様による先に記載の方法により、特に、Rp0.2>170MPa、特に>180MPaの範囲の強度と、>30.5MS/mの範囲の電気伝導率とを有するアルミニウム合金ストリップまたは製品を製造することができると見出された。よって、これらの製品は、6101Bタイプの合金の場合、DIN40501-2に準拠した要件を著しく上回っている。
さらに、本開示の第1の態様による先に記載の方法または本開示の第2の態様による先に記載の方法により、特に、Rp0.2と電気伝導率との積が>6000MPa MS/mであるアルミニウム合金ストリップまたは製品を製造することができると見出された。
さらに、本開示の第1の態様による先に記載の方法または本開示の第2の態様による先に記載の方法により、特に、熱間引張試験において、すなわち、DIN EN ISO 6892-1:2017-02に準拠して、ただし引張試料の温度を上昇させて引張試験を実施した場合に、耐力Rp0.2が引張試料の温度80℃で少なくとも160MPaであり、かつ引張試料の温度115℃で少なくとも140MPaであるアルミニウム合金ストリップまたは製品を製造することができると見出された。
さらに、驚くべきことに、本開示の第1の態様による先に記載の方法または本開示の第2の態様による先に記載の方法により、強度が強いにもかかわらず、良好な深絞り性を達成することができると見出された。特に、この方法により、引張試験において破断するまでブランク径を徐々に増加させながらDIN EN 1669に準拠したカップ引張試験で測定した場合に少なくとも1.9の限界絞り比が達成可能なアルミニウム合金ストリップまたは製品を製造することができる。よって、このようなアルミニウム合金ストリップは、冷間成形、特に深絞りによる製品の製造に特に適している。
実際には、連続鋳造プロセスおよび冷間圧延により製造された製品は、連続鋳造プロセスでのみ生じ、冷間圧延後の完成品にも見られる中心部偏析の点で、インゴット鋳造、熱間圧延および冷間圧延により製造された製品と区別することができる。これは、本開示の第1の態様による方法で製造されたアルミニウムストリップおよび本開示の第2の態様による方法で製造されたアルミニウムストリップと、それぞれこれらから製造された製品との双方に当てはまる。
高い電気伝導率と高い強度とが組み合わされていることから、アルミニウムストリップまたはこれから製造された製品は、特に電気用途に適している。さらに本発明によると、同様に、上記の課題は、導電体、特にアルミニウムケーブルに先に記載のアルミニウムストリップまたはアルミニウム製品を使用することにより解決される。
以下に、本開示の第1の態様による先に記載の方法および本開示の第2の態様による先に記載の方法のさまざまな実施形態が説明されており、これらはそれぞれ、本開示の第1の態様による方法および本開示の第2の態様による方法のどちらについても互いに独立して当てはまる。さらに、実施形態は、互いに組み合わせることも可能である。
第1の実施形態では、6xxxタイプのアルミニウム合金がアルミニウム合金として使用される。このような合金は、良好な強度と高い電気伝導率との材料特性の望ましい組み合わせに特に適していることが証明された。
さらなる実施形態では、アルミニウム合金は、重量%で以下の組成:
0.2重量%≦Si≦1.0重量%、
0.2重量%≦Mg≦1.0重量%、
Fe≦0.5重量%、
Mn≦0.4重量%、
Zn≦0.1重量%、
Cu≦0.5重量%、
Zr≦0.2重量%、
それぞれ最大0.05重量%まで、合計で最大0.15重量%までの不純物、
残部のアルミニウム、
を有する。
この合金組成により、高い電気伝導率と良好な強度との望ましい組み合わせが試験で達成された。個々の合金成分の意味は、以下に説明される。
ケイ素およびマグネシウムは、アルミニウムストリップの析出硬化を起こし、それにより、その強度を向上させる。したがって、それぞれ0.2重量%のSiおよびMg最小含有量が合金において意図されている。しかしながら、SiおよびMgの含有量が多すぎると、導電率が悪化する。したがって、SiおよびMgの含有量は、それぞれ1.0重量%に制限される。電気用途に適した強度を達成するために、Si含有量は、0.3~0.6重量%の範囲にあることが好ましく、かつ/またはMg含有量は、0.35~0.6重量%の範囲にあることが好ましい。最適な析出硬化のためには、Mg含有量に対するSi含有量の比は、1.3~1.5の範囲にあることが好ましい。
鉄は電気伝導率を低下させるため、0.5重量%、好ましくは0.3重量%の含有量を上回ってはならない。しかしながら、Feは少量含まれてもよい。それというのも、そうでなければ、溶融物の出発材料の要件が高くなりすぎて、製造コストが増加するためである。したがって、Fe含有量は、0.1~0.3重量%の範囲にあることが好ましい。
マンガンは電気伝導率を著しく悪化させるため、最大0.4重量%、好ましくは最大0.1重量%に制限される。ただし、他方では、すでに非常に少ないMn含有量で良好な粒径安定化がもたらされるため、より高い強度を達成することができる。したがって、合金がこの範囲で少なくとも0.001重量%のMn含有量をも有すると有利であり得る。
銅は電気伝導率を悪化させ、溶融範囲を大きくし、これはツインロール鋳造における鋳造性に悪影響を与えるため、最大0.5重量%、好ましくは最大0.4重量%、さらに好ましくは最大0.3重量%に制限される。少量の銅は、強度、耐熱性、および耐クリープ性を向上させるため、この範囲で狙いを定めてCuを添加すると有効であり得る。
ジルコニウムは、導電率にとって不都合なものであり、液相線温度および合金の溶融範囲を高めるため、0.2重量%に制限される。より良好な導電率を達成するために、Zr含有量は、さらに0.03重量%に制限されることが好ましい。
不純物も同様に導電率を悪化させるため、より良好な導電率を達成するために、個別に0.05重量%、かつ合計で0.15重量%、好ましくはさらに個別に0.03重量%、かつ合計で0.10重量%に制限される。
したがって、特に好ましい実施形態では、アルミニウム合金は、重量%で以下の組成:
0.3重量%≦Si≦0.6重量%、
0.35重量%≦Mg≦0.6重量%、
0.1重量%≦Fe≦0.3重量%、
Mn≦0.1重量%、
Zn≦0.1重量%、
Cu≦0.5重量%、
Zr≦0.03重量%、
それぞれ最大0.03重量%まで、合計で最大0.10重量%までの不純物、
残部のアルミニウム、
を有する。
通常670℃超の温度を有するアルミニウム溶融物は、連続鋳造プロセス、特にツインロール鋳造においてすでに非常に急速に冷却されるため、鋳造ギャップから、特にツインロール鋳造に使用される鋳造ロールのロールギャップから排出される際にストリップ表面で測定されるストリップ温度は、すでに非常に大幅に冷却されている。鋳造ギャップまたはロールギャップから排出される際にストリップ表面で測定されるアルミニウムストリップ温度は、300~450℃の範囲にあることが好ましく、この温度範囲は、例えば、連続鋳造プロセス用の鋳造設備、特にツインロール鋳造設備の鋳造ロールの狙いを定めた冷却または寸法取り、ならびに鋳造ベルト厚および鋳造速度により調整することができる。ツインロール鋳造において溶融物を急速に冷却すると、アルミニウムストリップに有利な組織が形成されて、製造すべきアルミニウムストリップの所望の機械的特性を達成することができる。
さらなる実施形態では、アルミニウムストリップは、連続鋳造プロセスの直後に、ストリップ表面で測定した場合に200℃未満の温度まで冷却される。冷却は、例えば、能動冷却により、例えば、適切な冷却要素を設けることにより、またはアルミニウムストリップを空気に、必要に応じて冷却された空気に曝すことにより行われ得る。アルミニウムストリップを連続鋳造プロセスの直後に200℃未満の温度まで冷却するさらなる能動冷却部を設けることにより、粗い組織の析出を防止することができるため、全体としてより均質な過飽和混晶が形成され、これは、後続の人工時効処理における硬化性に対して有利な影響を与える。
本開示の第1の態様による方法のさらなる実施形態では、アルミニウムストリップは、連続鋳造プロセスと冷間圧延との間に、100℃~210℃、好ましくは170℃~190℃の範囲の時効温度で、かつこの時効温度にて30分~10時間の範囲の時効時間で人工時効処理される。本開示の第2の態様による方法の相応する実施形態では、アルミニウムストリップは、一次冷間圧延と二次冷間圧延との間に、100℃~210℃、好ましくは170℃~190℃の範囲の時効温度で、かつこの時効温度にて30分~10時間の範囲の時効時間で人工時効処理される。試験において、良好な電気伝導率と高い強度との望ましい組み合わせを達成するためには、連続鋳造プロセスと冷間圧延との間の人工時効処理について、このパラメータ範囲が有利であると判明した。
比較的低い析出温度での短い析出時間により、例えば185℃にて45分で、低エージング(unteraltertes)のアルミニウムストリップが得られる。最大強度(質別T6)は、時効時間を少なくとも2時間まで延長することにより、または温度を上昇させる(例えば、205℃で30~60分)ことにより達成され得る。例えば、試験では、8時間にわたる185℃での人工時効処理後に高い強度が達成された。200℃超の高温および少なくとも2時間の長い時効時間により、アルミニウムストリップに粗い析出物が生成し、アルミニウムストリップは過エージング(ueberalterten)範囲(質別T7)に到達する。試験では、この質別は、例えば、8時間にわたる205℃での時効温度で達成された。過エージングの質別は、300℃までの比較的高い温度で焼なましすることによっても生じさせることができる。
質別T6、T7などはそれぞれ、規格EN 515:1993の定義に関連する。
さらなる実施形態では、アルミニウムストリップは、冷間圧延後に焼なましされる。焼なましにより、強度が低下し、同時に電気伝導率および延性が向上する。ここで、焼なまし温度が高く、焼なまし時間が長いほど、電気伝導率が上昇し、強度が低下する。よって、焼なましにより、アルミニウムストリップの電気伝導率と強度との望ましい比率を調整することができる。本開示の第2の態様による方法の場合、相応する実施形態における焼なましは、二次冷間圧延後に行われる。
電気伝導率と強度との間の特に良好な折り合いは、160℃~210℃、好ましくは180℃~190℃の範囲の焼なまし温度で、かつこの焼なまし温度にて少なくとも2時間、好ましくは2~5時間の範囲の焼なまし時間で達成され得る。特に、電気伝導率および強度の最大の変化は、焼なましの最初の2時間以内に起こるが、これらの特性は、その後の焼なまし時間では変化が著しくより少ないことが判明した。したがって、焼なまし時間を2~5時間の期間に制限することにより、過度に長い焼なまし処理によりエネルギーおよび時間を不必要に浪費することなく、焼なまし効果を大幅に達成することができる。
さらなる実施形態では、アルミニウムストリップは、冷間圧延において0.2~3mmの範囲の最終厚さまで圧延される。これらの最終厚さは、導電体技術の用途に適していることが判明した。
さらなる実施形態では、冷間圧延における総変形度(冷間圧延における総圧延度)は、50%を上回る。したがって、材料は、冷間圧延において、厚さが半分以上減少することが好ましい。この高い変形度により、製造すべきアルミニウムストリップのより高い強度を達成することができる。本開示の第2の態様による方法の相応する実施形態では、一次冷間圧延および二次冷間圧延における総変形度、すなわち、一次冷間圧延の最初のパスから二次冷間圧延の最後のパスまでの総変形度は、50%を上回る。二次冷間圧延における総変形度だけで50%を上回ることが好ましい。
同時に、本明細書に記載の方法において、冷間圧延における圧延度は導電率にわずかな影響しか与えないため、50%超の冷間圧延における圧延度で、高い強度および良好な導電率を同時に達成することができると見出された。
冷間圧延は、中間焼なましなしで行われることが好ましい。これにより、最後の焼なまし後に冷間圧延時の総圧延度が達成しやすくなるため、より高い強度を達成することができる。さらに、中間焼なましは硬化析出物の粗大化を招き、それにより望ましくない強度低下が生じ得る。
本開示の第2の態様による方法の相応する実施形態では、一次冷間圧延および二次冷間圧延は、中間焼なましなしで行われることが好ましい。したがって、一次冷間圧延および二次冷間圧延の個々のパスの間で中間焼なましは行われず、その際、一次冷間圧延は、いずれの場合にも1回のパスのみを含むことが好ましい。
一次冷間圧延と二次冷間圧延との間に設けられる人工時効処理は、基本的に中間焼なましと区別される必要がある。中間焼なましがアルミニウムストリップの軟化焼なましに用いられ、したがって、特に300℃超の高温を必要とするのに対し、人工時効処理は、最大300℃、好ましくは最大250℃のより低い温度で行われる。
しかしながら、中間焼なましが実施される場合、良好な強度を達成するためには、中間焼なまし後の圧延度は、50%を上回ることが好ましい。
さらなる実施形態では、アルミニウムストリップは、3~12mmの範囲のストリップ厚で初期成形される。これらのストリップ厚は、一方では、連続鋳造プロセスにおいて、必要に応じて直後の能動冷却においてアルミニウムストリップの急速な冷却を達成するのに適しており、また冷間圧延において所望の最終厚さで所望の圧延度を達成し得るのにも適していると判明した。
機械的特性Rp0.2、RおよびA50mmの測定については、DIN EN ISO 6892-1:2017-02に準拠した引張試験を参照されたい。ビッカース硬さの測定については、DIN EN ISO 6507-1:2006-03、ブリネル硬さHBW2.5/31.25の測定については、EN ISO 6506-1 2015-2を参照されたい。導電率の測定については、DIN EN 2004-1 1993-09に準拠した渦電流法を参照されたい。
これらの方法およびこれらを用いて製造可能なアルミニウムストリップまたは製品のさらなる特徴および利点は、実施例および試験についての以下の説明から明らかとなり、その際、添付の図面が参照される。
従来技術による第1のアルミニウムストリップ製造方法である。 従来技術による第2のアルミニウムストリップ製造方法である。 本明細書に記載の、本開示の第1の態様によるアルミニウムストリップの製造方法の実施例である。 第1の一連の試験および第2の一連の試験の電気伝導率および硬さについての測定結果である。 第1の一連の試験および第2の一連の試験の電気伝導率および硬さについての測定結果である。 一連の試験の電気伝導率および強度パラメータについての測定結果である。 一連の試験の電気伝導率および強度パラメータについての測定結果である。 中心部偏析を有するアルミニウム製品の顕微鏡画像である。 さらなる一連の試験(焼なましなし)の電気伝導率およびブリネル硬さについての測定結果である。 さらなる一連の試験(焼なまし後)の電気伝導率およびブリネル硬さについての測定結果である。 厚さおよび焼なましを関数とする機械的特性についての測定結果である。 厚さを関数とする機械的特性についての測定結果である。 熱間引張試験による機械的特性についての測定結果である。 人工時効処理前後の電気伝導率および機械的特性についての測定結果である。 本明細書に記載の、本開示の第2の態様によるアルミニウムストリップの製造方法の実施例である。 さらなる一連の試験の電気伝導率およびブリネル硬さについての測定結果である。
図1および図2は、すでに先に記載された従来技術による方法を示す。
ここで図3は、本明細書に記載の、本開示の第1の態様による、高い強度および高い電気伝導率を有するアルミニウムストリップの製造方法の実施例を示す。図3では、個々の方法ステップが左から右に概略的に図示されている。その下に描かれている温度・時間図には、個々の方法ステップにおける各材料温度が定性的かつ概略的に図示されている。
方法50では、連続鋳造プロセス、好ましくはツインロール鋳造52が、第1の方法ステップ52で行われる。ツインロール鋳造では、アルミニウム合金から構成される溶融物54が2つの回転鋳造ロール58、60のロールギャップ56に注がれ、それによりアルミニウム溶融物54が固化して、連続したアルミニウムストリップ62が形成される。ロールギャップ56は、アルミニウムストリップ62の厚さが3~12mmの範囲となるように調整されることが好ましい。
溶融物54は、硬化性アルミニウム合金からなり、重量%で以下の組成:
0.3重量%≦Si≦0.6重量%、
0.35重量%≦Mg≦0.6重量%、
0.1重量%≦Fe≦0.3重量%、
Mn≦0.1重量%、
Zn≦0.1重量%、
Cu≦0.5重量%、
Zr≦0.03重量%、
それぞれ最大0.03重量%まで、合計で最大0.10重量%までの不純物、
残部のアルミニウム、
を有することが好ましい。
2つの鋳造ロール58、60は、ロールギャップ56からの出口点64におけるアルミニウムストリップ62の温度が、ストリップ表面で測定した場合に450~300℃の範囲の温度を示すように冷却されることが好ましい。さらに、アルミニウムストリップ62は、ロールギャップ56から排出された直後に、ストリップ表面で測定した場合に200℃未満の温度までさらに冷却されることが好ましい。この目的のために、冷却装置66がロールギャップの下流に配置されていてもよく、この冷却装置66により、アルミニウムストリップ62を、例えば冷却空気流に曝すことができる。アルミニウムストリップ62を十分に速く冷却することにより、過飽和混晶組織が得られる。冷却後に、アルミニウムストリップ62は、巻き取られてコイル68になる。
次の方法ステップ74において、コイル68は、人工時効処理炉76内で人工時効処理され、すなわち、好ましくは、100℃~210℃、好ましくは170℃~190℃の範囲の人工時効処理温度で、かつ(この人工時効処理温度にて)30分~10時間の範囲の人工時効処理時間で人工時効処理される。人工時効処理は、アルミニウムストリップ62の析出強化をもたらす。
人工時効処理後に、次の方法ステップ80において、アルミニウムストリップ62は、冷間圧延スタンド82上で、最終厚さまで冷間圧延される。冷間圧延は、中間焼なましなしおよび50%超の総圧延度で、複数回のパスで行われる。アルミニウムストリップ62の最終厚さは、0.5~3mmの範囲にあることが好ましい。
再び巻き取られてコイル88にされたアルミニウムストリップが、後続の(任意選択的な)方法ステップ86で、焼なまし炉90内で焼なましされる。基本的に、方法ステップ74での時効および方法ステップ86での焼なましについて、異なる炉が使用されてもよいし、同じ1つの炉が使用されてもよい。焼なましは、160℃~210℃、特に180℃~190℃の範囲の焼なまし温度で、かつ(この焼なまし温度にて)少なくとも2時間、好ましくは2~5時間の焼なまし時間で行われることが好ましい。焼なましにより、電気伝導率および延性が上昇し、同時に強度が低下する。このようにして、強度および電気伝導率の望ましい比を必要に応じて調整することができる。
全体として、図3の方法50により、良好な強度と高い電気伝導率とを併せ持つアルミニウムストリップを製造することができる。図1および図2の方法に比べて、図3の方法50は、方法ステップがはるかにより少なくて済むだけでなく、特に、エネルギー消費が多く、(そのために必要な連続炉ゆえに)投資費用の高い溶体化処理(図1および図2の方法ステップ20)なしで済むため、方法50は、より迅速かつ経済的に実施可能である。
本発明の文脈において、図3の方法を使用して製造されたアルミニウムストリップの特性を調べるために試験を実施した。これについて、以下に説明する。
厚さ5mmのアルミニウムストリップを、ツインロール鋳造でアルミニウム合金溶融物から鋳造し、続いて、複数個のストリップ切片に分割した。アルミニウム溶融物の組成は、以下の表1に記載されている(いずれの数値も重量%)。
Figure 0007352583000001
次に、アルミニウムストリップのストリップ切片のいくつかを、さまざまな人工時効処理温度および人工時効処理時間でそれぞれ人工時効処理に供した。正確な人工時効処理パラメータは、以下の表2に記載されている。
人工時効処理後に、該当するストリップ切片を、中間焼なましなしで複数回のパスで1mmの最終厚さまでそれぞれ冷間圧延した。したがって、冷間圧延における総変形度は80%であった。パス1回あたりの厚さの減少は、それぞれ10%であった。
これらの冷間圧延されたストリップ切片を、再びそれぞれ複数個の試料切片に分割した。次に、これらの試料切片のうちのいくつかについて、(さまざまな焼なまし温度およびさまざまな焼なまし時間で)それぞれ焼なましを実施した。
実施された一連の試験の方法パラメータは、以下の表2に記載されている。
Figure 0007352583000002
各時効パラメータから、一連の試験B1~B4は低エージングの質別に対応し、一連の試験C1~C4は質別T6に対応し、一連の試験D1~D4は質別T7(過エージング)に対応し、ここで、呼称(低エージング、T6、T7)は、時効処理された鋳造ストリップを指す。
一連の試験B2~B4、C2~C4およびD2~D4では、焼なまし時間を、それぞれ30分~16時間の間で変えた。
比較例として、表1に記載されているアルミニウム合金を用いてツインロール鋳造において厚さ5mmで鋳造されたアルミニウムストリップのさらなるストリップ切片を加工した。しかしながら、先に記載の試験とは異なり、これらの比較ストリップ切片は、人工時効処理せずに、時効処理なしですぐに最終厚さ1mmまで、またこの場合にも同様に複数回のパスでかつ中間焼なましなしで、冷間圧延した。
続いて、これらの比較ストリップ切片を、(図1の方法と同様に)530℃および15分の保持時間で、実験室レベルの連続炉をシミュレートする砂浴炉(Sandbadofen)内で溶体化処理し、続いて水で急冷した。このようにして製造された生成物を、それぞれ複数個の比較試料切片に分け、続いて、そのうちのいくつかを、205℃で45分の保持時間(質別T6)にして人工時効処理し、他のものを、205℃で8時間の保持時間(質別T7)にして人工時効処理した。以下の表3には、比較例の個々の方法パラメータが記載されている。
Figure 0007352583000003
一連の試験B1~D4、ならびに比較例A1およびA2の個々の試料について、電気伝導率を、DIN EN 2004-1 1993-09に準拠した渦電流法を使用してそれぞれ測定した。さらに、機械的特性を評価するために、ビッカース硬さをDIN EN ISO 6507-1:2006-03に準拠して測定した。さらに、いくつかの試料について引張試験を実施し、引張強度R、耐力Rp0.2および破断点伸びA50mmをDIN EN ISO 6892-1:2017-02に準拠して測定した。
材料の(ビッカース)硬さは、その強度と相関関係にある。よって、ビッカース硬さを測定することにより、容易に強度も導出することができる。基本的に、ここでは、ビッカース硬さが高いほど強度(RまたはRp0.2)も高くなり、その逆も同様であると想定することができる。
図4は、一連の試験C1~C4についての電気伝導率測定およびビッカース硬さ測定の測定結果を示す。図5は、一連の試験D1~D4についての電気伝導率測定およびビッカース硬さ測定の測定結果を示す。水平方向の横軸には、各焼なまし時間が時間単位でプロットされており、左側の縦軸には、電気伝導率がMS/m(メガジーメンス/メートル)単位でプロットされており、右側の縦軸には、ビッカース硬さHV(無次元の値)がプロットされている。「0h」における結果は、試験C1またはD1、すなわち焼なましなしの試験に対応する。図4および図5において、個々の一連の試験C2、C3、C4、またはD2、D3、D4の結果は、曲線により相互に結ばれており、これにより、より良好に分類することができる。さらに、図4および図5には、比較試料A1およびA2で得られた電気伝導率(左側の矢印)およびビッカース硬さ(右側の矢印)の値もプロットされている。
図6は、引張試験の結果を示しており、すなわち、まず試験B1、C1およびD1の試料(すなわち、焼なましなしの「圧延されたままの」質別)について左から右へ、それから比較試験A1およびA2の試料について隣に右へと示す。該当する軸を有する引張強度R(それぞれ右側の棒)および耐力Rp0.2(それぞれ左側の棒)が、それぞれ棒として左側(MPa)に図示されており、破断点伸びA50mmが、該当する軸を有する、線で結ばれた点として右側(%)に図示されている。さらに、電気伝導率測定の該当する結果も棒の上方に記載されている。
図7も同様に、引張試験の結果、すなわち、一連の試験B3、C3、D3、およびB4、C4、D4の試料についての引張試験の結果を示す。この図は、左から右に、185℃で5時間の焼なまし時間のB3、C3およびD3の試料の結果を示し、次に185℃で8時間の焼なまし時間のB3、C3およびD3の試料の結果を示し、最後に、205℃で8時間の焼なまし時間のB4、C4およびC4の試料の結果を示す。R、Rp0.2およびA50mmの結果は、図6と同様にプロットされている。さらに、焼なまし時間が8時間のB3、C3およびD3の試料についても、電気伝導率測定の結果が記載されている。
図4および図5から、焼なまし処理によって、硬さ(または強度)が低下すると同時に、電気伝導率が改善されることが分かる。さらに、最初の2時間以内に最大の変化が生じ、その後は電気伝導率および硬さがわずかに変化するだけであることが分かる。
よって、焼なまし温度および焼なまし時間を適切に調整することにより、電気伝導率と硬さまたは強度との間の望ましい比を調整することができる。図4および図5にも同様に記入されている比較試験A1およびA2の結果は、連続鋳造プロセスと、本明細書に記載の方法による冷間圧延前の人工時効処理との組み合わせにより、冷間圧延前に人工時効処理が行われない比較方法(比較例A1、A2)よりも良好な電気伝導率が達成され得ることを示す。
さらに図6および図7の結果が示すように、本明細書に記載の方法により、比較試験A1およびA2よりも良好な、電気伝導率と強度との比を達成することができる。
DIN 40501-2では、合金EN AW-6101Bの電気用途でのアルミニウム製品について、強度および電気伝導率に関する以下の最小値が定められている。
Figure 0007352583000004
これらの規定値と図6の結果との比較から、一連の試験CおよびDで本明細書に記載の方法を用いると、焼なましなしでも、質別T7の基準により求められるものよりもすでにより良好な電気伝導率を達成することもでき、それでいて、基準により求められるものよりも強度(R、Rp0.2)が著しくより高いことが分かる。
図7から分かるように、高い強度を維持したまま、焼なましにより導電率をさらに改善することができる。
これらの試験は特に、先に記載の方法により、その強度がRp0.2>170MPa、特に>180MPaの範囲にあり、かつその電気伝導率が>30.5MS/mの範囲にあるアルミニウム合金ストリップまたはこれから製造された製品が製造可能であることを示す。特に、Rp0.2と電気伝導率との到達可能な積6000MPa MS/m超は、6101Bタイプの合金の場合、DIN40501-2に準拠した要件をはるかに上回っている。例えば、図4~図7のいくつかの試験(B1、C1、D1、およびB3、C3、D3、後者はそれぞれ8時間の焼なまし時間)の正確な値が、以下の表5に再度記載されており、DIN40501-2の値と比較されている。
Figure 0007352583000005
よって、総括すると、本明細書に記載の方法により、高い電気伝導率と高い強度とを有するアルミニウムストリップまたはこれから製造された製品の製造が可能になる。これはさらに、特に、費用の高い溶体化処理なしで済む、従来の方法(図1および図2を参照)に比べて著しく短縮された製造プロセスにおいて達成される。これにより、電気用途に適したアルミニウムストリップをより短時間かつより経済的に製造することができる。
連続鋳造により製造されたアルミニウムストリップから製造されたアルミニウム製品は、これらのアルミニウム製品に存在する中心部偏析の点で、不連続鋳造(特にインゴット鋳造)により製造されたアルミニウムストリップから製造されたアルミニウム製品と区別することができる。中心部偏析は、連続鋳造法で鋳造されたアルミニウムストリップが外側から内側に急速に冷却されると生じ、後続の処理(時効、冷間圧延など)においても保持される。このような中心部偏析は、不連続鋳造法(特にインゴット鋳造)では生じない。
図8は、一連の試験B1からの試料切片の断面の顕微鏡画像を例示的に示す。顕微鏡画像については、試料切片から金属シート片を切り取り、一方の側端を研磨した。次に、研磨された側端を撮影した。図8は、この写真の切抜部分を示す。顕微鏡画像に使用された金属シート片の側端におけるこの切抜部分の位置は、図8に概略的に記されている。図示されているように、示されている切抜部分は、側端の厚さ全体に及ぶのではなく、中心部偏析が生じる中央の切抜部分を示す。
この断面の顕微鏡画像において、中央に暗い縞模様が確認できる。これは、連続鋳造法において(金属シートの厚さに対して)金属シートの中央で生じる中心部偏析である。それに対して、その上下の領域(すなわち、上側または下側に近い領域)は明るく見える。それというのも、これらの領域では、偏析のないまたは最小限の偏析しかない裸のアルミニウム表面が見えるからである。
本発明の文脈において、図3の方法を使用して製造されたアルミニウムストリップの特性を調べるためにさらなる試験を実施した。これについて、以下に説明する。
ツインロール鋳造において、それぞれ厚さ5.0mmの3つのアルミニウムストリップW1、W2およびW3を鋳造した。アルミニウムストリップW1、W2およびW3の組成は、以下の表6に記載されている(いずれの数値も重量%)。
Figure 0007352583000006
次に、2つのアルミニウムストリップW1およびW2を、8時間の保持時間でそれぞれ人工時効処理に供し、すなわち、ストリップW1の場合は185℃で、ストリップW2の場合は205℃で、それぞれ人工時効処理に供した。人工時効処理後に、2つのアルミニウムストリップを、数時間かけて室温まで冷却し、続いて、中間焼なましなしで、複数回のパスで、厚さ1.0mmまで第1の冷間圧延に供した。したがって、第1の冷間圧延における総圧延度は80%であった。パス1回あたりの厚さの減少は、それぞれ33%であった。
第1の冷間圧延前に、さまざまな中間厚さで、アルミニウムストリップW1およびW2からいくつかの試料切片を採取した。厚さ1.0mmに達した後に、(圧延方向に対して、ストリップの始点、中央点および終点からの)さらなる試料切片をストリップから採取した。
厚さ1.0mmのこれらの試料切片のうちのいくつかを、第2の冷間圧延において、中間焼なましなしで、複数回のパスで、それぞれ最終厚さ0.5mm、0.3mmまでさらに圧延した。
厚さ1mm、0.5mmおよび0.3mmの試料切片のうちのいくつかを、それぞれ185℃、205℃の温度にて5時間の保持時間でそれぞれ焼なましに供した。焼なまし後の冷却は、30℃/hの冷却速度で行った。
ストリップW3について、ストリップ切片を185℃で8時間にわたり人工時効処理し、数時間かけて室温まで冷却した。ストリップW3のさらなるストリップ切片は人工時効処理しなかった。ストリップW3のストリップ切片については、冷間圧延も焼なましも行わなかった。
個々の一連の試験の製造パラメータは、以下の表7に記載されている。
Figure 0007352583000007
最終厚さ1mmの一連の試験(W1.5、W1.8およびW1.11、ならびにW2.5、W2.8およびW2.11)のさまざまな試料切片について、すなわち、圧延方向に対して、ストリップ始点、ストリップ中央点およびストリップ終点からの、それぞれストリップ幅全体(すなわち、圧延方向に対して横方向)のさまざまな位置における試料切片に関して、EN ISO 6506-1 2015-2に準拠したブリネル硬さ測定およびDIN EN 2004-1 1993-09に準拠した渦電流法による導電率測定を実施した。
図9は、一連の試験W2.5(焼なましなし)についてのこれらの測定の結果を示す。図10は、一連の試験W2.11(205℃での焼なまし後)のこれらの測定の結果を示す。横軸は、ストリップ幅全体にわたる測定位置、すなわち圧延方向に対して横方向でのストリップ上の測定位置を示す。左側の縦軸はブリネル硬さHBW2.5/31.25を示し、右側の縦軸は導電率をMS/mで示す。ブリネル硬さの各測定点は実線で結ばれており、電気伝導率の各測定点は破線で結ばれている。圧延方向での各測定位置(ストリップ始点、ストリップ中央点、ストリップ終点)は、対応する記号(黒塗りの点、黒塗りの三角形、黒塗りのひし形)でそれぞれ記されている。
図9の測定は、ストリップの幅(横軸)およびストリップの長さ(ストリップ始点、ストリップ中央点およびストリップ終点における測定)の双方について、非常に均一な硬さおよび導電率を示す。この均一性および導電率は、図10の測定値が示すように、焼なましにより再び増加する。ストリップW1からの試料切片についての一連の試験の測定結果は同等である。
選択される合金組成と、製造法(ストリップ鋳造、人工時効処理、冷間圧延、焼なまし)とにより、硬さおよび導電率の高い均一性が達成されると想定される。合金組成により急冷に対する感度が低くなるため、ストリップ鋳造後に急冷時間をそれほど正確に調整する必要がなく、冷却をより遅くしてもストリップは必要な硬化を達成する。これにより製造プロセスが簡素化される。
さらに、個々の一連の試験のさまざまな試料切片について、引張試験をDIN EN ISO 6892-1:2017-02に準拠して実施し、引張強度R、耐力Rp0.2および破断点伸びA50mmを測定した。引張方向は、それぞれ圧延方向に平行であった。図11は、一連の試験W2.3およびW2.5~W2.13の測定結果を示す。左側の縦軸には、引張強度Rおよび耐力Rp0.2がMPaで記載されており、右側の縦軸には、破断点伸びA50が%で記載されている。
図11の結果は、焼なまし後に、広い厚さ範囲(0.3~2.3mm)にわたり同等の機械的特性が達成されることを示す。これは、特に異なる厚さのアルミニウム金属シートが使用される場合に、または厚さを変える成形ステップ、特に冷間成形ステップが実施される場合に、アルミニウムストリップまたはアルミニウム金属シートを製品へとさらに加工するのに有利である。
一連の試験W1.3およびW1.5~W1.13について、図11に示されるように、同等の値が達成されたが、強度がやや低く、そのため破断点伸びがより高くなっていた。これは、ストリップW1の人工時効処理温度がより低いことに起因する。
さらに、相応する試料切片(厚さ0.3mmを除く)について、DIN EN 2004-1 1993-09に準拠した渦電流法による導電率測定を実施した。その結果は、以下の表8に記載されている。
Figure 0007352583000008
さらに、図12には、一連の試験W1.1~W1.7(焼なましなし)について、耐力Rp0.2、ブリネル硬さHBW2.5/31.25、破断点伸びA50、ならびにMS/mおよび%IACSでの導電率の測定結果が示されている。横軸には、各試料切片の厚さがプロットされており、左側の縦軸には、耐力Rp0.2がMPaでプロットされており、右側の縦軸には、ブリネル硬さHBW2.5/31.25、%での破断点伸びA50、およびMS/mまたは%IACSでの導電率がプロットされている。
記載の方法により、ほぼ同じ導電率を有するアルミニウムストリップが広い厚さ範囲にわたり製造可能であることが示されている。これにより、冷間圧延において少なくとも50%の高い圧延度が可能になり、導電率を低下させることなくアルミニウムストリップの高い強度が達成される。
さらに、限界絞り比(=最大深絞り可能ブランク径を打抜き直径で除したもの)を、引抜試験において破断するまでブランク径を徐々に増加させながらDIN EN 1669に準拠したカップ引張試験で測定した。その際、2.1の限界絞り比を亀裂形成なしで達成することができた。
さらに、一連の試験W1.5、W1.8およびW1.11の相応する試料切片について、熱間引張試験を80℃および115℃で実施した。この目的のために、これらの試料切片のうちのいくつかの引張試料を炉内でそれぞれ80℃、115℃に加熱し、炉内でこれらの温度にて、DIN EN ISO 6892-1:2017-02に準拠した引張試験を実施し、その際、耐力Rp0.2、引張強度Rおよび破断点伸びA50mmを測定した。
熱間引張試験の結果は、図13に示されており、ここで、横軸には、表7に対応する関連した一連の試験が記載されており、左側の縦軸には、MPaでの耐力Rp0.2および引張強度Rがプロットされており、右側の縦軸には、%での破断点伸びA50がプロットされている。熱間引張試験は、左側の3つのカラム群の試料については80℃で、右側の3つのカラム群の試料については115℃で実施した。これらの結果は、これらの試料が高温でも、なおも良好な機械的特性を示すことを示している。特に、80℃での熱間引張試験では、160MPa超の耐力Rp0.2に達し、115℃での熱間引張試験では、140MPa超の耐力Rp0.2に達する。よって、本明細書に記載の方法により製造されたアルミニウムストリップおよびこれから製造された製品は、高温での使用にも適している。
よって、アルミニウムストリップおよび製品は、特にアルミニウム導体の用途に適している。通電導体は、使用時に、特にその比抵抗(spezifischen Widerstands)により発熱し、その際、導体断面積および電流強度に応じて、場合によっては50℃超または80℃超、特定の場合においては100℃超もの温度に達し得る。調べたアルミニウムストリップの機械的特性が高温においても良好であることにより、そのようなアルミニウムストリップから製造されたアルミニウム導体が、そのような温度でも必要な機械的特性を依然として満たすようになる。
連続鋳造と冷間圧延との間の人工時効処理の影響を調べるために、さらなる試験を実施した。この目的のために、連続鋳造(W3.1)および人工時効処理(W3.2)後のストリップW3の試料切片について、DIN EN ISO 6892-1:2017-02に準拠した引張試験、EN ISO 6506-1 2015-2に準拠したブリネル硬さ測定、およびDIN EN 2004-1 1993-09に準拠した渦電流法による導電率測定を実施した。
測定結果は、図14に示されており、ここで、6つのカラム群には、左から右に、MPaでの耐力Rp0.2、MPaでの引張強度R、%での破断点伸びA50、ブリネル硬さHBW2.5/31.25、ならびにMS/mおよび%IACSでの導電率が記載されている。これらの値は、左側の縦軸にその各単位でプロットされている。各カラム群の左側のカラムは、連続鋳造後の試料W3.1(人工時効処理なし)の結果を示し、各カラム群の右側のカラムは、人工時効処理後の試料W3.2の結果を示す。
図14の測定結果が示すように、人工時効処理は、強度(Rp0.2およびR)の増加、破断点伸び(A50mm)の減少、および導電率の増加をもたらす。これは、連続鋳造アルミニウムストリップの人工時効処理において、これまで使用されていたインゴット鋳造では従来的に溶体化処理が必要であった組織変化が達成されることを示す。よって、アルミニウムストリップの人工時効処理可能な適切な組織構造がすでに連続鋳造により達成されるため、連続鋳造プロセスを使用することにより溶体化処理の別個のステップが不要になることが実証された。したがって、人工時効処理前の煩雑かつ高コストの溶体化処理を省略することができる。
ここで図15は、本明細書に記載の、本開示の第2の態様による、高い強度および高い電気伝導率を有するアルミニウムストリップの製造方法の実施例を示す。図3と同様に、個々の方法ステップが左から右に概略的に図示されている。その下に描かれている温度・時間図には、個々の方法ステップにおける各材料温度が定性的かつ概略的に図示されている。
方法100では、連続鋳造プロセス、好ましくはツインロール鋳造102が、第1の方法ステップ102で行われる。ツインロール鋳造では、アルミニウム合金から構成される溶融物104が2つの回転鋳造ロール108、110のロールギャップ106に注がれ、それによりアルミニウム溶融物104が固化して、連続したアルミニウムストリップ112が形成される。ロールギャップ106は、アルミニウムストリップ112の厚さが3~12mmの範囲となるように調整されることが好ましい。
溶融物104は、硬化性アルミニウム合金からなり、重量%で以下の組成:
0.3重量%≦Si≦0.6重量%、
0.35重量%≦Mg≦0.6重量%、
0.1重量%≦Fe≦0.3重量%、
Mn≦0.1重量%、
Zn≦0.1重量%、
Cu≦0.5重量%、
Zr≦0.03重量%、
それぞれ最大0.03重量%まで、合計で最大0.10重量%までの不純物、
残部のアルミニウム、
を有することが好ましい。
2つの鋳造ロール108、110は、ロールギャップ106からの出口点114におけるアルミニウムストリップ112の温度が、ストリップ表面で測定した場合に450~300℃の範囲の温度を示すように冷却されることが好ましい。さらに、アルミニウムストリップ112は、ロールギャップ106から排出された直後に、ストリップ表面で測定した場合に200℃未満の温度までさらに冷却されることが好ましい。この目的のために、冷却装置116がロールギャップの下流に配置されていてもよく、この冷却装置116により、アルミニウムストリップ112を、例えば冷却空気流に曝すことができる。アルミニウムストリップ112を十分に速く冷却することにより、過飽和混晶組織が得られる。冷却後に、アルミニウムストリップ112は、巻き取られてコイル118になる。
次の方法ステップ120において、アルミニウムストリップ112は、一次冷間圧延にて、冷間圧延スタンド122上で、1回の冷間圧延パスで、20%未満の圧延度で、中間厚さまで圧延され、再び巻き取られてコイル124になる。
続いて、次の方法ステップ126において、コイル124は、人工時効処理炉128内で人工時効処理され、すなわち、好ましくは、100℃~210℃、好ましくは170℃~190℃の範囲の人工時効処理温度で、かつ(この人工時効処理温度にて)30分~10時間の範囲の人工時効処理時間で人工時効処理される。人工時効処理は、アルミニウムストリップ112の析出強化をもたらす。
人工時効処理後に、次の方法ステップ130において、アルミニウムストリップ112は、二次冷間圧延にて、冷間圧延スタンド132上で、最終厚さまで冷間圧延される。冷間圧延は、中間焼なましなしで複数回のパスで行われる。冷間圧延スタンド122および冷間圧延スタンド132は、同じ冷間圧延スタンドであってもよいし、異なる冷間圧延スタンドであってもよい。
総圧延度は、一次冷間圧延および二次冷間圧延において、合計(すなわち、鋳造ストリップの厚さから最終厚さまで)50%を上回る。二次冷間圧延のみの圧延度(すなわち、中間厚さから最終厚さまで)ですでに50%を上回ることが好ましい。
アルミニウムストリップ112の最終厚さは、0.5~3mmの範囲にあることが好ましい。
後続の(任意選択的な)方法ステップ136で、再び巻き取られてコイル138にされたアルミニウムストリップが、焼なまし炉140内で焼なましされる。基本的に、方法ステップ126での時効および方法ステップ136での焼なましについて、異なる炉が使用されてもよいし、同じ1つの炉が使用されてもよい。焼なましは、160℃~210℃、特に180℃~190℃の範囲の焼なまし温度で、かつ(この焼なまし温度にて)少なくとも2時間、好ましくは2~5時間の焼なまし時間で行われることが好ましい。焼なましにより、電気伝導率および延性が上昇し、同時に強度が低下する。このようにして、強度および電気伝導率の望ましい比を必要に応じて調整することができる。
全体として、図15の方法100により、良好な強度と高い電気伝導率とを併せ持つアルミニウムストリップを製造することができる。図1および図2の方法に比べて、図15の方法100は、方法ステップがはるかにより少なくて済むだけでなく、特に、エネルギー消費が多く、(そのために必要な連続炉ゆえに)投資費用の高い溶体化処理(図1または図2の方法ステップ20)なしで済むため、方法100は、より迅速かつ経済的に実施可能である。
本発明の文脈において、図15の方法を使用して製造されたアルミニウムストリップの特性を調べるために試験を実施した。これについて、以下に説明する。
厚さ5.0mmのアルミニウムストリップW3aをツインロール鋳造で鋳造した。アルミニウムストリップW3aの組成は、上記の表6に記載の組成物W3の組成と同一である(いずれの数値も重量%)。
アルミニウムストリップW3aをさまざまな切片に分割し、これらをさまざまな手法でそれぞれさらに加工した。
第1の試験群(W3a.1~W3a.6)では、ストリップW3aの切片を、図3の方法に従って、まず8時間の保持時間で人工時効処理に供し、すなわち、それぞれ160℃、175℃、185℃の温度で人工時効処理に供した。人工時効処理後に、これらの切片を、数時間かけて室温まで冷却し、続いて、中間焼なましなしで、複数回のパスで、それぞれ厚さ2.0mm、1.0mmまで冷間圧延に供した。したがって、冷間圧延における総圧延度は、それぞれ60%、80%であった。焼なましは実施しなかった。
第2の試験群(W3a.7~W3a.12)では、ストリップW3aのさらなる切片を、図15の方法に従って、まず一次冷間圧延に供し、その際、これらの切片を、1回のパスで、厚さ4.4mmまで圧延した。したがって、この一次冷間圧延における圧延度は12%であった。続いて、これらの切片を、8時間の保持時間で人工時効処理に供し、すなわち、それぞれ160℃、175℃、185℃の温度で人工時効処理に供し、人工時効処理後に、数時間かけて室温まで冷却した。続いて、これらの切片を、複数回のパスで、かつ中間焼なましなしで、それぞれ厚さ2.0mm、1.0mmまで二次冷間圧延に供した。したがって、二次冷間圧延における圧延度は、それぞれ55%、77%であった。一次冷間圧延および二次冷間圧延の総圧延度は、合計それぞれ60%、80%であった。焼なましは実施しなかった。
第3の試験群(W3a.13~W3a.16)では、ストリップW3aのさらなる切片を、図15の方法に従って、まず一次冷間圧延に供し、その際、これらの切片を、それぞれ1回のパスで、さまざまな厚さ(それぞれ4.75mm、4.5mm、4.25mm、3.5mm)に圧延した。したがって、一次冷間圧延における圧延度は、それぞれ5%、10%、15%、30%であった。続いて、これらの切片を、160℃にて8時間の保持時間で人工時効処理に供し、人工時効処理後に、数時間かけて室温まで冷却した。続いて、これらの切片を、複数回のパスで、かつ中間焼なましなしで、厚さ1.0mmまで二次冷間圧延に供した。したがって、二次冷間圧延における圧延度は、それぞれ79%、78%、76%、71%であった。一次冷間圧延および二次冷間圧延の総圧延度は、合計80%であった。焼なましは実施しなかった。
個々の一連の試験の製造パラメータは、以下の表9に記載されている。
Figure 0007352583000009
一連の試験W3a.1~W3a.6は、図3の方法に対応しており、一連の試験W3a.7~W3a.15は、図15の方法に対応している。
個々の一連の試験のさまざまな試料切片について、EN ISO 6506-1 2015-2に準拠したブリネル硬さ測定およびDIN EN 2004-1 1993-09に準拠した渦電流法による導電率測定を実施した。
図16は、一連の試験W3a.1~W3a.12のこれらの測定の結果を示す。横軸には、MS/mでの電気伝導率がプロットされており、縦軸には、ブリネル硬さHBW2.5/31.25がプロットされている。各データポイントは、一連の試験W3a.1~W3a.12のうちのいずれかに従って加工されたストリップ切片について測定した測定結果を示す。より見やすくするために、図3に従って加工されたストリップ切片についてのデータポイントは、点線(最終厚さ1mmの場合)または一点鎖線(最終厚さ2mmの場合)で結ばれており、図15に従って加工されたストリップ切片についてのデータポイントは、実線(最終厚さ1mmの場合)または破線(最終厚さ2mmの場合)で結ばれている。
図16の結果が示すように、良好な電気伝導率と組み合わせて一貫して良好な硬さまたは強度が達成された。すべての場合において、導電率は、人工時効処理温度が上昇するほど増加するが、一般に、硬さ/強度が犠牲となる。
さらに、図16の結果は、図15による方法によって、相応する最終厚さでの図3による方法よりも、硬さ/強度および電気伝導率について、より良好な結果がさらに一貫して達成されたことを示す。図15による方法に属する線(実線、破線)は、図3による方法に属する線(点線、一点鎖線)よりも、相応して右上にあり、すなわち、より高いブリネル硬さおよびより高い導電率にシフトしている(図16の矢印を参照)。
よって、本開示の第1の態様による方法で達成されたすでに良好な結果を、本開示の第2の態様による方法によりさらに上回ることができる。
一次冷間圧延および二次冷間圧延の各圧延度のみが異なる一連の試験W3a.13~W3a.16のさまざまな試料の場合、約78HB2.5/31.25の実質的に同じブリネル硬さ値、およびより低い二次圧延度でわずかに上昇する実質的に同じ導電率(W3a.13の場合の31.6MS/m~W3a.16の場合の32.0MS/m)が生じる。
さらに、一連の試験W3a.13~W3a.16の試料について引張試験を実施した。その結果、破断点伸びA50mmについては、約5.8%の実質的に同じ値が得られ、引張強度R(W3a.13の場合の268MPa~W3a.16の場合の259)および耐力Rp0.2(W3a.13の場合の274MPa~W3a.16の場合の266MPa)については、より低い二次圧延度でわずかに低下する実質的に同じ値が得られた。
よって、一次圧延度および二次圧延度について調べた範囲において有利な特性が一貫して達成され、その際、導電率および強度の比は、適切な一次圧延度または二次圧延度を選択することにより微調整することが可能である(より高い導電率の場合はより低い二次圧延度、より高い強度の場合はより高い二次圧延度)。

Claims (27)

  1. 高い強度および高い電気伝導率を有するアルミニウムストリップ(62)の製造方法であって、
    - アルミニウム合金から構成される溶融物(54)を、連続鋳造プロセスによりアルミニウムストリップ(62)へと初期成形し、
    - 前記アルミニウムストリップ(62)を、冷間圧延により最終厚さまで圧延し、かつ
    - 前記アルミニウムストリップ(62)を、前記連続鋳造プロセスと前記冷間圧延との間に、100℃~210℃の範囲の焼なまし温度で30分~10時間の範囲の保持時間で人工時効処理する、
    工程を含むとともに、前記アルミニウム合金が、重量%で以下の組成:
    0.3重量%≦Si≦0.6重量%、
    0.35重量%≦Mg≦0.6重量%、
    0.1重量%≦Fe≦0.3重量%、
    Mn≦0.1重量%、
    Zn≦0.1重量%、
    Cu≦0.5重量%、
    Zr≦0.03重量%、
    それぞれ最大0.03重量%まで、合計で最大0.10重量%までの不純物、
    残部のアルミニウム
    を有することを特徴とする、方法。
  2. 前記連続鋳造プロセスは、ツインロール鋳造であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記冷間圧延を、中間溶体化処理なしで、前記連続鋳造プロセス後に行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記アルミニウムストリップ(62)を、前記連続鋳造プロセスの直後に、ストリップ表面で測定した場合に200℃未満の温度まで冷却することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
  5. 前記連続鋳造プロセスの直後に、前記アルミニウムストリップ(62)を能動冷却により冷却することを特徴とする、請求項4記載の方法。
  6. 前記アルミニウムストリップ(62)を、前記連続鋳造プロセスと前記冷間圧延との間に、170℃~190℃の範囲の温度および30分~10時間の範囲の保持時間で人工時効処理することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
  7. 前記アルミニウムストリップ(62)を、前記冷間圧延後に、160℃~210℃の範囲の焼なまし温度で、少なくとも2時間の保持時間で焼なましすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
  8. 前記アルミニウムストリップ(62)を、前記冷間圧延後に、180℃~190℃の範囲の焼なまし温度で焼なましすることを特徴とする、請求項7記載の方法。
  9. 前記アルミニウムストリップ(62)を、前記冷間圧延後に、2~5時間の範囲の保持時間で焼なましすることを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
  10. 前記アルミニウムストリップ(62)を、0.2~3mmの範囲の最終厚さまで冷間圧延することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
  11. 前記冷間圧延における総圧延度が50%を上回ることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
  12. 前記アルミニウムストリップ(62)を、中間焼なましなしで冷間圧延することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
  13. 前記アルミニウムストリップ(62)を、3~12mmの範囲のストリップ厚で初期成形することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
  14. 高い強度および高い電気伝導率を有するアルミニウムストリップ(112)の製造方法であって、
    - アルミニウム合金から構成される溶融物(104)を、連続鋳造プロセスによりアルミニウムストリップ(112)へと初期成形し、
    - 前記アルミニウムストリップ(112)を、一次冷間圧延(120)にて中間厚さまで圧延し、
    - 前記アルミニウムストリップ(112)を、二次冷間圧延(139)にて最終厚さまで圧延し、かつ
    - 前記アルミニウムストリップ(112)を、前記一次冷間圧延(120)と前記二次冷間圧延(130)との間に、100℃~210℃の範囲の焼なまし温度で30分~10時間の範囲の保持時間で人工時効処理する、
    工程を含むとともに、前記アルミニウム合金が、重量%で以下の組成:
    0.3重量%≦Si≦0.6重量%、
    0.35重量%≦Mg≦0.6重量%、
    0.1重量%≦Fe≦0.3重量%、
    Mn≦0.1重量%、
    Zn≦0.1重量%、
    Cu≦0.5重量%、
    Zr≦0.03重量%、
    それぞれ最大0.03重量%まで、合計で最大0.10重量%までの不純物、
    残部のアルミニウム
    を有することを特徴とする、方法。
  15. 前記連続鋳造プロセスは、ツインロール鋳造であることを特徴とする、請求項14記載の方法。
  16. 前記一次冷間圧延及び前記二次冷間圧延を、中間溶体化処理なしで、前記連続鋳造プロセス後に行うことを特徴とする、請求項14または15記載の方法。
  17. 前記アルミニウムストリップ(112)を、前記連続鋳造プロセスの直後に、ストリップ表面で測定した場合に200℃未満の温度まで冷却することを特徴とする、請求項14~16のいずれか一項記載の方法。
  18. 前記連続鋳造プロセスの直後に、前記アルミニウムストリップ(112)を能動冷却により冷却することを特徴とする、請求項17記載の方法。
  19. 前記アルミニウムストリップ(112)を、前記連続鋳造プロセスと前記冷間圧延との間に、170℃~190℃の範囲の温度および30分~10時間の範囲の保持時間で人工時効処理することを特徴とする、請求項14~18のいずれか一項記載の方法。
  20. 前記アルミニウムストリップ(112)を、前記冷間圧延後に、160℃~210℃の範囲の焼なまし温度で、少なくとも2時間の保持時間で焼なましすることを特徴とする、請求項14~19のいずれか一項記載の方法。
  21. 前記アルミニウムストリップ(112)を、前記冷間圧延後に、180℃~190℃の範囲の焼なまし温度で焼なましすることを特徴とする、請求項20記載の方法。
  22. 前記アルミニウムストリップ(112)を、前記冷間圧延後に、2~5時間の範囲の保持時間で焼なましすることを特徴とする、請求項20または21記載の方法。
  23. 前記アルミニウムストリップ(112)を、0.2~3mmの範囲の最終厚さまで冷間圧延することを特徴とする、請求項14~22のいずれか一項記載の方法。
  24. 前記冷間圧延における総圧延度が50%を上回ることを特徴とする、請求項14~23のいずれか一項記載の方法。
  25. 前記アルミニウムストリップ(112)を、中間焼なましなしで冷間圧延することを特徴とする、請求項14~24のいずれか一項記載の方法。
  26. 前記アルミニウムストリップ(112)を、3~12mmの範囲のストリップ厚で初期成形することを特徴とする、請求項14~25のいずれか一項記載の方法。
  27. アルミニウムケーブルのための、請求項1~26のいずれか一項記載の方法により製造可能なアルミニウムストリップ(62、112)、またはそのようなアルミニウムストリップ(62、112)から製造されたアルミニウムケーブルの使用。
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