JP7351503B2 - 熱抵抗情報取得装置、熱抵抗情報取得方法、プログラム、および接触情報取得装置 - Google Patents

熱抵抗情報取得装置、熱抵抗情報取得方法、プログラム、および接触情報取得装置 Download PDF

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Description

本発明は、熱抵抗情報取得装置、熱抵抗情報取得方法、プログラム、および接触情報取得装置に関する。
界面熱抵抗は、物質が接触している境界で熱の流れが阻害され、温度が不連続に変化する現象である。この界面熱抵抗は、例えば様々な電子機器において内部から外部への排熱を阻害し、熱を原因とする問題を引き起こし得る。
特許文献1には、第1物質のみから成る単層試料と、第2物質のみからなる単層試料とを積層した2層試料の積層板間または薄膜間の界面部分の界面熱抵抗を測定するに際して、第1物質のみからなる単層試料の表面をパルス加熱した後の温度応答と、第2物質のみからなる単層試料の表面をパルス加熱した後の温度応答を観測することが開示されている。
特開2001-116711号公報
ところで、例えば界面熱抵抗の低減にはその発生メカニズムの理解が必要であり、そのためには発生メカニズムを構成する要素と現象の関連性を明らかにするため、新たな界面熱抵抗に関する情報の取得装置が求められることがあった。
本明細書に開示される技術は、界面熱抵抗に関する情報を取得することを目的とする。
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱する加熱部と、前記試料の側面における前記界面を含む領域であって、前記加熱部によって加熱された領域の温度分布を検知する検知部と、前記検知部によって検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得する取得部とを備える熱抵抗情報取得装置である。
ここで、前記取得部が取得した前記熱抵抗に関する情報を表示させる表示部を有するとよい。
また、前記表示部は、前記界面における熱抵抗に相当する数値を表示させるとよい。
また、前記加熱部および前記試料を相対移動させ、当該試料における前記領域を変位させる変位部を備えるとよい。
また、前記検知部は、前記界面から放射された赤外線を集光するレンズと、当該レンズによって集光された光を検知するサーモグラフィとを有するとよい。
また、前記取得部は、前記検知部によって検知された温度分布の振幅および位相遅れの少なくとも一方に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得するとよい。
また、前記試料の前記第1層において、前記加熱部によって光が照射される光照射領域の中心から当該試料の前記側面までの距離が、当該光照射領域の外径よりも小さいとよい。
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱するステップと、前記試料の側面における前記界面を含む領域であって前記第1層に照射される光によって加熱された領域の温度分布を検知するステップと、検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得するステップとを備える熱抵抗情報取得方法である。
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、コンピュータに界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱する機能と、前記試料の側面における前記界面を含む領域であって、前記第1層に照射される光によって加熱された領域の温度分布を検知する機能と、検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得する機能とを実行させるプログラムである。
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、界面を有する第1部材および第2部材を含む試料における当該第1部材に対し光を照射し当該試料を加熱する加熱部と、前記試料の側面における前記界面を含む領域の温度分布を検知する検知部と、前記検知部によって検知された温度分布に基づいて、前記界面における前記第1部材および前記第2部材の接触状態に関する情報を取得する取得部とを備える接触情報取得装置である。
本明細書に開示される技術によれば、界面熱抵抗に関する情報を取得することができる。
本実施の形態に係る配向同定装置を示す概略構成図である。 コンピュータの機能構成図である。 (a)および(b)は、界面熱抵抗の測定原理を示す説明図である。 測定試料における加熱領域を示す説明図である。 (a)および(b)は、測定試料における厚み方向の振幅及び位相遅れの理論曲線を示す。 界面熱抵抗測定装置の動作を説明するフローチャートである。 (a)は加熱周波数1Hzにおける振幅の分布図を示し、(b)は加熱周波数1Hzにおける位相遅れの分布図を示す。 (a)は加熱周波数20Hzにおける振幅の分布図を示し、(b)は加熱周波数20Hzにおける位相遅れの分布図を示す。 (a)は加熱周波数1Hzにおける厚み方向の距離および振幅の関係を示す図であり、(b)は加熱周波数1Hzにおける厚み方向の距離および位相遅れの関係を示す図である。 (a)は加熱周波数20Hzにおける厚み方向の距離および振幅の関係を示す図であり、(b)は加熱周波数20Hzにおける厚み方向の距離および位相遅れの関係を示す図である。 コンピュータのハードウェア構成例を示した図である。 変形例における測定試料の構成を説明する図である。
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<界面熱抵抗測定装置1の構成>
図1は、本実施の形態に係る界面熱抵抗測定装置1を示す概略構成図である。
まず、図1を参照して、本実施の形態が適用される界面熱抵抗測定装置1の構成を説明する。
図1に示すように、本実施の形態が適用される界面熱抵抗測定装置1は、板状に形成された測定試料100を支持するホルダ2と、参照光を出力する発光ダイオード3と、測定試料100の一方の面(表面)を撮像するCCD撮像素子4と、一方向に延びるレール5と、このレール5に設けられホルダ2を支持する第1XYZステージ6と、レール5に設けられ発光ダイオード3およびCCD撮像素子4を支持する第2XYZステージ7とを備える。
また、界面熱抵抗測定装置1は、加熱用光源として機能するダイオードレーザ10と、ダイオードレーザ10から出射されたレーザ光のビーム径を拡大するビームエキスパンダ15と、測定試料100の表面に照射されるレーザ光のビーム径を調整する(絞る)マイクロスコープ16とを備える。
また、界面熱抵抗測定装置1は、測定試料100の第1側面107(後述)に対向して設けられたマイクロレンズ(顕微赤外レンズ)18と、マイクロレンズ18によって集光された光を受ける赤外線サーモグラフィ(ロックインサーモグラフィ)17と、赤外線サーモグラフィ17からの信号を受けるコンピュータ20と、周期的信号を発生させダイオードレーザ10および赤外線サーモグラフィ17へと出力する周期的信号発生器30とを備える。
このように構成された界面熱抵抗測定装置1においては、ダイオードレーザ10から出射されたレーザ光が、ビームエキスパンダ15およびマイクロスコープ16を経た後に、測定試料100へと照射される。この測定試料100においては、レーザ光が照射される箇所(領域)が周期的に加熱される。すなわち、測定試料100の表面における特定の点(位置)が、スポット周期加熱される。付言すると、界面熱抵抗測定装置1においては、測定試料100の加熱にレーザ光を用いることで、測定試料100の加熱の制御が容易になる。
また、ダイオードレーザ10のレーザ光により加熱された測定試料100の温度は、赤外線サーモグラフィ17によって測定される。なお、赤外線サーモグラフィ17は、ダイオードレーザ10によりスポット周期加熱される領域を含む予め定めた範囲(領域)を、赤外線画像として撮像(測定)する。さらに説明をすると、例えば、スポット周期加熱される領域(略円形)の寸法(直径)が0.1μm~1mmである。また、赤外線サーモグラフィ17により撮像される領域(略長方形)の寸法(一辺)は0.1mm~5mmである。
この赤外線サーモグラフィ17には、周期的信号発生器30より周期的信号が入力される。また、赤外線サーモグラフィ17で測定された温度のデータ(温度分布データ)は、周期的信号とともにコンピュータ20へと出力される。
コンピュータ20は、赤外線サーモグラフィ17とあわせて、所定間隔のフレームレートに基づいて、赤外線画像の取り込みと演算とを連続的に実行し、時間の経過とともに変化する温度変化量から平均化した画像を作成する(ロックイン方式)。さらに説明をすると、赤外線サーモグラフィ17で得られたデータは、コンピュータ20により演算処理され、試料1の界面101(後述)における熱抵抗(詳細は後述)が算出される。
<コンピュータ20の機能構成>
図2は、コンピュータ20の機能構成図である。
次に、図2を参照して、本実施の形態が適用されるコンピュータ20の機能構成を説明する。
図2に示すように、本実施の形態が適用されるコンピュータ20は、赤外線サーモグラフィ17(図1参照)から入力される温度分布データおよび周期的信号を取得するデータ取得部21と、データ取得部21によって取得された温度分布データおよび周期的信号に基づいて温度分布の振幅を算出する振幅分布算出部22と、データ取得部21によって取得された温度分布データおよび周期的信号に基づいて位相遅れ分布を算出する位相遅れ分布算出部23と、測定された振幅および位相遅れに基づいて界面熱抵抗を算出する界面熱抵抗算出部24と、算出された界面熱抵抗の算出結果を表示する算出結果表示部25とを備える。
本実施の形態のコンピュータ20は、赤外線サーモグラフィ17により検出された測定試料100(図1参照)の温度分布に基づいて、測定試料100の界面101(後述)における界面熱抵抗を算出する。さらに説明をすると、コンピュータ20は、測定試料100の温度分布の変化の振幅および応答の遅れに基づいて、測定試料100を構成する複数部材同士の接触状態を特定する。
<測定原理>
図3(a)および(b)は、界面熱抵抗の測定原理を示す説明図である。
図4は、測定試料100における加熱領域Haを示す説明図である。
次に、図3(a)、図3(b)、および図4を参照しながら、本実施の形態における界面熱抵抗の測定原理を説明する。以下では、まず測定試料100の構造について説明をしたのち、測定試料100の界面熱抵抗の測定原理について詳細に説明する。
図3(a)に示すように、測定試料100は、平板状の部材である。測定試料100は、各々平板状の部材であり、例えば等方性黒鉛などにより形成される第1層100Aおよび第2層100Bを積層して形成される。ここで、図3(b)に示すように、測定試料100においては、界面(Contact Interface)101を介して、第1層100Aおよび第2層100Bが接触して設けられる。
なお、第1層100Aおよび第2層100Bは、接着剤や熱融着など周知の技術により互いに固定されてもよいし、互いに固定せずにホルダ2(図1参照)などによって挟み込んで支持されてもよい。また、図示の例における第1層100Aおよび第2層100Bは、同一の厚みであり各々厚さdで形成されている。なお、第1層100Aおよび第2層100Bの厚さdは、加熱軸(Heating Axis)上における第1層100Aおよび第2層100Bの寸法として捉えることができる。また、ここでは第1層100Aおよび第2層100Bを同一の厚さdとして説明をするが、互いに異なる厚みであってもよい。
また、測定試料100は、レーザ光が照射される側、すなわち第1層100Aの表面である第1表面103と、レーザ光が照射される側とは反対側、すなわち第2層100Bの表面である第2表面105(図3(b)参照)とを有する。また、測定試料100は、測定試料100の外周面、すなわち4つの側面のうちの2つの側面として第1側面107および第2側面108を有する。
ここで、図3(a)に示すように、第1側面107には、マイクロレンズ18および赤外線サーモグラフィ17が対向して設けられる。すなわち、赤外線サーモグラフィ17は、測定試料100の第1側面107における熱分布を測定する。さらに言い替えると、赤外線サーモグラフィ17は、測定試料100の厚さ方向における熱分布を測定する。
赤外線サーモグラフィ17は、第1側面107から放射される赤外線を測定する。ここで、第1側面107が平坦であるほど、熱分布の測定精度は向上する。例えば、測定試料100の第1側面107を研磨などすることにより、第1側面107の表面粗さを低減するとよい。さらに説明をすると、第1側面107の表面粗さを、4つの側面のうちの赤外線サーモグラフィ17によって観察されない側面である第2側面108の表面粗さよりも低くする(滑らかにする)とよい。
次に、図3(a)および図4を参照しながら、測定試料100におけるダイオードレーザ10のレーザ光が照射される光照射領域Haについて説明をする。まず、図3(a)に示すように、本実施の形態において、ダイオードレーザ10のレーザ光は、測定試料100の第1表面103の中心(例えば略長方形状である第1表面103の重心106)に照射されずに、第1表面103の中心よりも外周側に照射される。
図4に示す例においては、光照射領域Haは、第1側面107側の端部109に位置する。ここで、光照射領域Haは、第1表面103において、ダイオードレーザ10のレーザ光が照射され予め定めた値よりも光強度が大きい領域をいう。さらに説明をすると、図示の例においては、第1表面103におけるレーザ光の光強度が最大強度の点をレーザ中心Hpとする。そして、レーザ中心Hpの光強度との関係で、光照射領域Haを定める。具体的には、光強度がレーザ中心Hpの1/e2以上となる領域を光照射領域Haとする。図示の例においては、第1表面103における光照射領域Haは略円形である。また、光照射領域Haの直径は、ビーム径Dbである。
さて、光照射領域Haは、端部109からはみ出す部分が小さくなる位置に配置される。このことにより、例えばレーザ光が端部109よりも外側を通過し、レーザ光による加熱強度が低減することが抑制する。図示の例においては、レーザ中心Hpが端部109からはみ出さない位置にレーザ光が照射される。さらに説明をすると、端部109からレーザ中心Hpまでの距離を距離Wとすると、距離Wは、0よりも大きく、ビーム径Dbよりも小さい(0<W<Db)。より好ましくは、距離Wは、ビーム径Dbの1/4よりも大きく、ビーム径Dbの3/4よりも小さい(Db/4<W<3Db/4)。このことにより、レーザ光による加熱強度が低減することが抑制され、第1側面107における熱分布の測定精度が向上し得る。なお、距離Wは、上記に限定されるものではない。例えば、距離Wは、0よりも大きく、ビーム径Dbの倍の大きさよりも小さい(0<W<2Db)態様でもよいし、あるいは0よりも大きく、測定試料100の厚さ2dよりも小さい態様でもよい(0<W<2d)
次に、図3(a)、図3(b)、および図4を参照しながら、本実施の形態における測定試料100の測定原理について具体的に説明する。まず、本実施の形態においては、赤外線サーモグラフィ17を用いて界面101の動的な熱伝播の様子から界面熱抵抗を計測する。付言すると、本実施の形態においては、界面熱抵抗を空間的に分解し、熱抵抗要素の寄与を評価する。
ここで、界面熱抵抗には、界面101における界面熱抵抗の値に応じて温度が不連続になり、また一方で熱流束は連続するという定量的な定義がある。本実施の形態においては、この定義を境界条件として界面101を挟む部材(第1層100Aおよび第2層100B)の熱伝導方程式を連立して解き、界面101前後のそれぞれの部材中の周期的な熱源に対する温度応答の挙動を予測する。
さらに説明をすると、まず、無限遠まで広がる媒質中の原点(r=0)に周期的点熱源があるとき、温度応答は波のように振る舞い、熱源から距離rにおける温度の時間応答T(r,t)は、原点での温度振幅をTとして以下に示す式(1)で表される。
Figure 0007351503000001
ここで、μ=(1+i)√(ω/2D)であり、ωは加熱角周波数(iは虚数単位)、Dは熱拡散率である。次に点熱源からr=hの位置にある界面101を考え、その界面101において界面熱抵抗Rが存在することを考える。界面101での温度ジャンプと熱流束連続の界面条件より、界面101での温度波の反射・透過係数は点熱源からの距離hの変数として式(2)で表される。ここで、加熱側層を第1層(A層)100Aとし、非加熱側層を第2層(B層)100Bとする。
Figure 0007351503000002
λは熱伝導率である。測定系としては、図3(b)のように,r=dに界面101を有し第1層100Aおよび第2層100Bを含む系を考える。厚さ2dの薄板状である測定試料100の端部109を、レーザースポットで周期的に加熱し、第1側面107内の温度応答を赤外線サーモグラフィ17で検出する。ここで、レーザ光(Laser)を延長した直線を加熱軸とすると、加熱軸上の第1層100Aおよび第2層100Bの温度応答は、界面101、第1表面103、および第2表面105で反射と透過を繰り返す温度波の重ね合わせで表現される。反射・透過温度波は、熱源から反射・透過面までの熱拡散距離に応じた式(1)による温度応答と式(2)による係数の積で表され、第1層100Aおよび第2層100Bの温度応答の非時間変化部A(r)およびB(r)は、式(3)および式(4)で表される。
Figure 0007351503000003
Figure 0007351503000004
ここで,nは反射・透過回数を表し,GAnおよびGBnは反射・透過係数からなる係数である。これらの総和により、加熱軸上における第1層100Aおよび第2層100Bの温度応答は式(5)で表される。
Figure 0007351503000005
なお、第1層100Aおよび第2層100Bは同一材料であり、厚みが等しく、また試料表裏面は断熱であることを仮定している。式(5)により加熱軸上r方向における温度波の振幅と位相遅れプロファイルが得られ、r=dの界面において振幅と位相遅れが不連続となる。
図5(a)および(b)は、測定試料100における厚み方向の振幅及び位相遅れの理論曲線を示す。
次に、図5(a)および(b)を参照しながら、上記測定原理に従った測定試料100における厚み方向の振幅及び位相遅れの理論値について説明をする。
図5(a)および(b)に示すように、上記測定原理に従って、界面熱抵抗Rが1.0×10-9K/Wから1.0×10-4K/Wまで6通りの値における、試料厚み方向の振幅及び位相遅れの理論曲線が得られた。界面熱抵抗値の増加にしたがって、横軸中央部の界面での振幅・位相遅れのジャンプ量の増加が確認できる。第1層100Aおよび第2層100Bの熱伝導率と熱拡散率が既知の場合、振幅と位相遅れのジャンプ量は界面熱抵抗Rのみに依存するため、赤外線サーモグラフィ17で計測した温度応答の振幅と位相遅れプロファイルに、界面熱抵抗値をパラメータとしてフィッティングすることで界面熱抵抗の数値が測定される。
上記のように、マイクロレンズ18を備えたロックインサーモグラフィである赤外線サーモグラフィ17を用いることにより、マイクロスケールの界面101前後の熱伝播の様子が可視化される。また、周期加熱と赤外線サーモグラフィ17を用いることにより、微弱な温度応答信号を高精度に検出し得る。また、長時間にわたる高精度制御が必要な定常熱流制御を不要とし得る。
また、熱抵抗要素の寄与を評価可能な界面熱抵抗計測を行うためにロックインサーモグラフィである赤外線サーモグラフィ17に、高分解能顕微赤外レンズであるマイクロレンズ18を導入する。これにより、測定試料100全体の総括熱抵抗に対する微小領域ごとの界面熱抵抗を計測し得る。
また、赤外線サーモグラフィ17を測定試料100の第1側面107側に対向する位置が設けられる。この構成においては、測定試料100周辺の空間、より具体的には測定試料100にレーザ光が照射される側とは反対側(第2表面105側)の空間が小さい場合であっても、界面熱抵抗の測定を可能とし得る。
また、本実施の形態とは異なる従来の定常熱流法などの計測手法では、複雑な熱抵抗要素が寄与し合った結果である総括的な界面熱抵抗は計測されるものの、その要素を分解した計測を行うことは、要素ごとの熱流量と温度を精密に計測することの困難さから十分ではなかった。一方で、界面熱抵抗測定装置1においては、本発明では熱流量および温度ではなく、赤外線サーモグラフィ17を用いて界面101の動的な熱伝播の様子から界面熱抵抗を計測することで、要素を分解した計測を行い得る。
また、本実施の形態においては、従来の計測法と比較して、計測のセットアップが容易でかつ短時間で計測可能である。また、電子機器などの熱設計において従来の計測法では個々の界面熱抵抗を計測するのは困難であるため、予め推定値を用いてマージンを持たせて設計し、製造後の試験により推定値の確度を検証する方法がとられている。しかしながら、本実施の形態においては、事前計測が可能となり、熱設計精度の向上、余分なマージンの排除による設計の効率化・機器の高性能化、検証試験の短縮による開発製造期間の短縮・コストの削減を実現し得る。
<動作>
次に、図1、図2および図6を参照して、本実施の形態における界面熱抵抗測定装置1の動作を説明する。図6は、界面熱抵抗測定装置1(図1参照)の動作を説明するフローチャートである。
まず、界面熱抵抗測定装置1におけるダイオードレーザ10から出射されたレーザ光により、測定試料100の第1表面103がスポット周期加熱される(ステップ601)。
そして、赤外線サーモグラフィ17により測定される第1側面107の温度分布により、振幅分布算出部22が振幅分布を算出する(ステップ602)。また、赤外線サーモグラフィ17により測定される第1側面107の温度分布により、位相遅れ分布算出部23が位相遅れ分布を算出する(ステップ603)。
そして、算出された振幅分布および位相遅れ分布に基づき、界面熱抵抗算出部24が界面熱抵抗を算出する(ステップ604)。
そして、算出結果表示部25が、振幅分布、位相遅れ分布、界面熱抵抗の算出結果を液晶ディスプレイなどの表示手段(不図示)に表示する(ステップ605)。
<測定結果>
図7(a)は、加熱周波数1Hzにおける振幅の分布図を示す。
図7(b)は、加熱周波数1Hzにおける位相遅れの分布図を示す。
図8(a)は、加熱周波数20Hzにおける振幅の分布図を示す。
図8(b)は、加熱周波数20Hzにおける位相遅れの分布図を示す。
なお、図7および図8の各図における中心付近横方向に界面101が位置し、図中上方が測定試料100の第1表面103側である。
図9(a)は、加熱周波数1Hzにおける厚み方向の距離および振幅の関係を示す図である。
図9(b)は、加熱周波数1Hzにおける厚み方向の距離および位相遅れの関係を示す図である。
図10(a)は、加熱周波数20Hzにおける厚み方向の距離および振幅の関係を示す図である。
図10(b)は、加熱周波数20Hzにおける厚み方向の距離および位相遅れの関係を示す図である。
なお、図9および図10の各図における横軸は、厚み方向の距離を示す。
次に、図7乃至図10を参照して、測定試料100を用いた測定結果を説明する。
まず、測定試料100は、等方性黒鉛IG―110を2枚接着加圧硬化後、第1側面107を研磨し作成した。なお、測定試料100の成形前後の厚さの差異から、界面101の厚さは約5μmと推定される。
測定条件は、表1に示す通りである。
Figure 0007351503000006
図7および図8に示すように、測定試料100の周期加熱に対する温度応答に、赤外線サーモグラフィ17を用いたロックイン解析を行い、得られた振幅と位相遅れの分布図が観察された。図7および図8の各図において、測定試料100表面(第1表面103)上の振幅・位相遅れの値が最も大きい点が加熱点(レーザ中心Hp、図4参照)であり、加熱点を中心として振幅・位相遅れが同心円状に減少しているのが確認できる。そして、界面101を境に振幅・位相遅れの値が不連続となっており、界面101で振幅・位相遅れジャンプが発生することが確認できる。なお,各図における第1表面103よりさらに上方(レーザー入射方向)においても振幅・位相遅れの分布が確認できるは試料周囲の大気に伝導した応答を検出しているとも考えられる。
さて、図7および図8に示す振幅と位相遅れの分布図から、加熱軸上の振幅・位相遅れの値を抽出し、上記の測定原理に従って、温度応答の理論曲線を、界面熱抵抗値をパラメータとしてフィッティングすることで、図9および図10に示す結果が得られた。なお、振幅は加熱点において1となるように正規化した。また、フィッティング条件は、表2に示す通りである。
Figure 0007351503000007
図9および図10に示すように、フィッティングを行った結果、振幅・位相遅れともに厚み方向0.3mm付近より大きい領域において、理論曲線と実測プロットの良好な一致が見られる。
振幅と位相遅れそれぞれについてフィッティング解析を行い、算出された界面熱抵抗値は、表3に示す通りである。
Figure 0007351503000008
本測定とは異なる非定常的な手法による同等スケール試料の界面熱抵抗測定報告例として、1.2×10-6~1.1×10-5K/W(B. Dongmei et al., Appl. Therm. Eng., 111, (2017) 768-775)が報告されており本測定結果と同等のオーダーであることから妥当な結果であると推察される。
<コンピュータ20のハードウェア構成>
図11は、コンピュータ20のハードウェア構成例を示した図である。
図11に示すように、コンピュータ20は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)125と、記憶手段であるメインメモリ126およびHDD(Hard Disk Drive)127とを備える。ここで、CPU125は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行する。また、メインメモリ126は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域である。HDD127は、各種プログラムに対する入力データや各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域である。そして、コンピュータ20が備えるこれらの構成部材により、上記図2などで説明した各機能構成が実行される。
なお、コンピュータ20は、赤外線サーモグラフィ17など外部との通信を行うための通信インターフェイス(通信I/F)128を備えている。また、CPU125が実行するプログラム(例えば、上記界面熱抵抗を算出するプログラム)は、予めメインメモリ126に記憶させておく形態の他、例えばCD-ROM等の記憶媒体に格納してCPU125に提供したり、あるいは、ネットワーク(不図示)を介してCPU125に提供したりすることも可能である。
<その他>
上記の説明においては、界面101の界面熱抵抗の値を出力することを説明したが、界面熱抵抗に関する情報を出力するものであればこれに限定されない。例えば、閾値との比較結果のみを出力してもよい。さらに説明をすると、例えば、閾値よりも大きい界面熱抵抗が得られたときは特定の画像(例えば、特定の数値や記号)を表示し、閾値よりも小さい界面熱抵抗が得られたときは他の画像(例えば、他の特定の数値や記号)を表示するようにしてもよい。さらに説明をすると、界面熱抵抗値に相当する数値などを表示するようにしてもよい。
また、上記の説明においては、式(1)乃至式(5)などを用いた測定原理を説明したが、第1側面107内の温度応答を赤外線サーモグラフィ17で検出した信号に基づき、熱抵抗に関する情報を取得するものであれば、特に限定されない。
ここで、界面熱抵抗は、試料同士の接触状態(上記の例においては第1層100Aおよび第2層100B)によって変化する。ここで、試料同士の接触状態としては、例えば、試料同士の接着の強度や、試料同士を押し付けあう圧力の大小などが含まれる。また、試料同士の接触状態としては、界面101、第1層100A、第2層100Bなどにおけるボイド(空隙)や亀裂、接触不良、第1層100Aおよび第2層100Bの間に配置されるグリスや接着剤の未塗布領域の有無、あるいは異物質の介在などが含まれる。なお、上記の界面熱抵抗測定装置1は、測定試料100における第1層100Aおよび第2層100Bの接触状態に関する情報を取得する装置として捉えることができる。
また、第1XYZステージ6などを用いて、測定試料100と、マイクロレンズ18および赤外線サーモグラフィ17との相対位置を変化させて、界面101における界面熱抵抗を測定する測定点を移動させてもよい。すなわち、界面熱抵抗の測定点を界面101において走査させてもよい。
また、赤外線サーモグラフィ17が検出した第1側面107内の温度分布の変化を観察し、温度分布に基づいて試料の接触状態を決定する関数を更新する機械学習を行い、得られた関数に基づき界面熱抵抗に関する情報を出力してもよい。
また、図示の例とは異なり、測定試料100におけるダイオードレーザ10のレーザ光が照射される光照射領域Haを含む第1表面103の温度分布を検出する他の赤外線サーモグラフィ(不図示)を設け、他の赤外線サーモグラフィからの信号をコンピュータ20で解析することによって、第1層100Aの熱拡散率および/または第2層100Bの熱拡散率など、面内方向およびまたは厚み方向の熱物性値を測定してもよい。
さらに、測定試料100は第1層100Aおよび第2層100Bを含む2層からなる構造に限定されるものではなく、フィラー材を含む3層以上から構成されてもよい。さらに説明をすると、第1層100Aおよび第2層100Bの間に、第3層として、接着剤や熱伝導グリスを配置する構成や、サーマルインターフェイスマテリアル(TIM、例えばシート状のゴム層やゲル層、グラファイトシート)などを配置する構成であってもよい。また、第3層以上設けた多層形状でももちろんよい。
図12は、変形例における測定試料1000の構成を説明する図である。
図12に示すように、測定試料1000は、第1層1000A、第2層1000B、および第3層1000Cを積層し、第1層1000Aおよび第2層1000Bの界面に第1接着層1001、第2層1000Bおよび第3層1000Cの界面に第2接着層1002を有する構成であってもよい。ここで、第1接着層1001および第2接着層1002は、例えば接着剤、熱伝導グリス、サーマルインターフェイスマテリアルなどにより構成される。上記の界面熱抵抗測定装置1によれば、測定試料1000における、第1層1000A、第2層1000B、および第3層1000Cの各層の熱拡散率や、各層間の熱抵抗などを測定することも可能である。
なお、ダイオードレーザ10は、加熱部の一例である。測定試料100は、試料の一例である。マイクロレンズ18および赤外線サーモグラフィ17は、検知部の一例である。マイクロレンズ18は、レンズの一例である。赤外線サーモグラフィ17は、サーモグラフィの一例である。界面熱抵抗算出部24は、取得部の一例である。算出結果表示部25は、表示部の一例である。第1XYZステージ6は、変位部の一例である。第1層100Aは、第1部材の一例である。第2層100Bは、第2部材の一例である。界面熱抵抗測定装置1は、熱抵抗測定装置の一例である。
上記の説明においては、第1XYZステージ6および第2XYZステージ7を共通のレール5に設けることを説明したが、各々別の支持部材(例えば、レール)によって支持されてもよい。
また、上記の説明においては、振幅分布算出部22が振幅分布を算出(ステップ602)した後に、位相遅れ分布算出部23が位相遅れ分布を算出(ステップ603)することを説明したが、振幅分布の算出および位相遅れ分布の算出が同時に実行されてもよいし、振幅分布の算出の前に位相遅れ分布の算出が実行されてもよい。
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
1…界面熱抵抗測定装置、10…ダイオードレーザ、17…赤外線サーモグラフィ、20…コンピュータ、22…振幅分布算出部、23…位相遅れ分布算出部、24…界面熱抵抗算出部、100…測定試料

Claims (12)

  1. 界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱する加熱部と、
    前記試料の側面における前記界面を含む領域であって、前記加熱部によって加熱された領域の温度分布を検知する検知部と、
    前記検知部によって検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得する取得部と
    を備え、
    前記情報は、振幅および位相遅れを含む
    熱抵抗情報取得装置。
  2. 前記取得部が取得した前記熱抵抗に関する情報を表示させる表示部を有する
    請求項1記載の熱抵抗情報取得装置。
  3. 前記表示部は、前記界面における熱抵抗に相当する数値を表示させる
    請求項記載の熱抵抗情報取得装置。
  4. 前記加熱部および前記試料を相対移動させ、当該試料における前記領域を変位させる変位部を備える
    請求項1乃至3のいずれか1項記載の熱抵抗情報取得装置。
  5. 前記検知部は、前記界面から放射された赤外線を集光するレンズと、当該レンズによって集光された光を検知するサーモグラフィとを有する
    請求項1乃至4のいずれか1項記載の熱抵抗情報取得装置。
  6. 前記取得部は、前記検知部によって検知された温度分布の振幅および位相遅れの少なくとも一方に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得する
    請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱抵抗情報取得装置。
  7. 前記試料の前記第1層において、前記加熱部によって光が照射される光照射領域の中心から当該試料の前記側面までの距離が、当該光照射領域の外径よりも小さい
    請求項1乃至6のいずれか1項記載の熱抵抗情報取得装置。
  8. 界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱するステップと、
    前記試料の側面における前記界面を含む領域であって前記第1層に照射される光によって加熱された領域の温度分布を検知するステップと、
    検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得するステップと
    を備え、
    前記情報は、振幅および位相遅れを含む
    熱抵抗情報取得方法。
  9. コンピュータに
    界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱する機能と、
    前記試料の側面における前記界面を含む領域であって、前記第1層に照射される光によって加熱された領域の温度分布を検知する機能と、
    検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得する機能と
    を実行させ、
    前記情報は、振幅および位相遅れを含む
    プログラム。
  10. 界面を有する第1部材および第2部材を含む試料における当該第1部材に対し光を照射し当該試料を加熱する加熱部と、
    前記試料の側面における前記界面を含む領域の温度分布を検知する検知部と、
    前記検知部によって検知された温度分布に基づいて、前記界面における前記第1部材および前記第2部材の接触状態に関する情報を取得する取得部と
    を備え、
    前記情報は、振幅および位相遅れを含む
    接触情報取得装置。
  11. 界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱する加熱部と、
    前記試料の側面における前記界面を含む領域であって、前記加熱部によって加熱された領域の温度分布を検知する検知部と、
    前記検知部によって検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得する取得部と、
    前記加熱部および前記試料を相対移動させ、当該試料における前記領域を変位させる変位部と
    を備える熱抵抗情報取得装置。
  12. 界面を有する第1層および第2層を含む試料における当該第1層に対し光を照射し当該試料を加熱する加熱部と、
    前記試料の側面における前記界面を含む領域であって、前記加熱部によって加熱された領域の温度分布を検知する検知部と、
    前記検知部によって検知された温度分布に基づいて、前記試料の前記界面における熱抵抗に関する情報を取得する取得部と
    を備え、
    前記試料の前記第1層において、前記加熱部によって光が照射される光照射領域の中心から当該試料の前記側面までの距離が、当該光照射領域の外径よりも小さい
    熱抵抗情報取得装置。
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