JP7349907B2 - 微生物抑制方法及び微生物抑制システム - Google Patents

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Description

本発明は、微生物抑制方法及び微生物抑制システムに関する。
カビや菌等の微生物を抑制する方法として、特許文献1、2には、オゾンを用いる方法が記載されている。オゾンによる殺菌力には、オゾンが水に溶けて分解する時に生じるヒドロキシラジカルが関与しており、特許文献1,2には、オゾンガスを導入する雰囲気の相対湿度を80%以上に高めることによって殺菌効果を高めた例が記載されている。
特許文献3には、カビの増殖を抑える効果を有する香料組成物を、室温下で自然揮散させる方法が記載されている。
特開平5-31162号公報 特開2017-18267号公報 特開2002-179509号公報
特許文献1、2に記載の方法は、オゾンを発生させる必要があるため簡便さに欠ける。
特許文献3に記載の香料組成物は、簡便に使用できるが、微生物抑制効果が必ずしも充分ではない。また特許文献2に記載の香料組成物は疎水性が高く、高湿度雰囲気中で揮散させても微生物抑制効果は向上しない。
本発明は、簡便に使用でき、優れた微生物抑制効果が得られる、微生物抑制方法及び微生物抑制システムを提供する。
本発明は以下の態様を有する。
[1] 下記(A)成分及び下記(B)成分を、相対湿度70%以上の雰囲気中に揮散させる、微生物抑制方法。
(A)成分:ClogP値が1.5~5であるアルデヒド化合物。
(B)成分:炭素数が2~4のグリコール化合物。
[2] 前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比を表す、(A)/(B)が0.01~2.0である、[1]の微生物抑制方法。
[3] 前記(A)成分が、炭素数6~11の脂肪族アルデヒド及び炭素数6~11の芳香族アルデヒドからなる群から選ばれる1種以上を含む、[1]又は[2]の微生物抑制方法。
[4] 前記(A)成分が、シトラール、シトロネラール、デカナール、ベンズアルデヒド、及びシンナムアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上を含む、[3]の微生物抑制方法。
[5] 前記(A)成分及び前記(B)成分を含む微生物抑制剤組成物を前記雰囲気中に揮散させる、[1]~[4]のいずれかの微生物抑制方法。
[6] 前記微生物抑制剤組成物が、さらに下記(C)成分を含む、[5]の微生物抑制方法。
(C)成分:水。
[7] 前記微生物抑制剤組成物の総質量に対して、前記(B)成分と前記(C)成分の合計の含有量が40~99質量%であり、かつ、前記(C)成分に対する前記(B)成分の質量比を表す、(B)/(C)が0.2~4である、[6]の微生物抑制方法。
[8] 前記微生物抑制剤組成物中の前記(C)成分を揮発させて、前記雰囲気を加湿する、[6]又は[7]の微生物抑制方法。
[9] 前記(A)成分及び前記(B)成分を含まない水蒸気源を揮発させて、前記雰囲気を加湿する、[1]~[8]のいずれかの微生物抑制方法。
[10] 処理対象空間を加湿する加湿装置と、前記処理対象空間に下記(A)成分及び下記(B)成分を揮散させる揮散装置を備える微生物抑制システム。
(A)成分:ClogP値が1.5~5であるアルデヒド化合物。
(B)成分:炭素数が2~4のグリコール化合物。
本発明の微生物抑制方法は、簡便に使用でき、優れた微生物抑制効果が得られる。
本発明の微生物抑制システムは、簡便に使用でき、優れた微生物抑制効果が得られる。
本明細書において、微生物の抑制とは、微生物の一部又は全部を死滅させること(殺菌、除菌、殺カビ等)、微生物の生育を抑制すること(抗菌、抗カビ等)、又はこれらの組み合わせを意味する。
≪微生物抑制方法≫
本発明の微生物抑制方法は、下記(A)成分及び下記(B)成分を特定湿度の雰囲気中に揮散させる。
(A)成分:ClogP値が1.5~5であるアルデヒド化合物。
(B)成分:炭素数が2~4のグリコール化合物。
(A)成分と(B)成分は、これらを混合した状態で揮散させてもよく、混合しない状態でそれぞれを揮散させてもよい。
具体的には、(A)成分と(B)成分を、一括して又は別々に含む微生物抑制剤組成物を揮散させる方法が好ましい。
本発明の微生物抑制方法を適用する処理対象は、例えば、浴室、クローゼット、靴箱等の密閉空間の内面、エアコン内部に存在する面、カーテン、靴、衣服等の物品である。
本発明における「雰囲気」は処理対象の雰囲気を意味し、少なくとも処理対象に接している。
相対湿度を保持しやすい点で、処理対象は密閉空間内に存在することが好ましい。例えば処理対象がエアコン内部の面である場合、エアコンに気密性を有する覆いを被せるなどして、処理対象を密閉空間内に存在させることが好ましい。
本明細書において、「密閉空間」とは、完全に密閉された空間及び空間の空気の流れが少ない準密閉空間(空間の空気の入れ替えが1時間当たり30体積%以下の空間)を含む。
≪各成分及び微生物抑制剤組成物≫
<(A)成分>
(A)成分は、ClogP値が1.5~5のアルデヒド化合物である。「アルデヒド化合物」は、アルデヒド基を有する化合物を意味する。(A)成分は微生物の細胞膜中に溶け込み、内部の構造を変性させることで微生物抑制効果を発現する。(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
「ClogP値」とは、親油性(疎水性)の指標となる値であり、この値が大きいほど、より疎水的な性質を有し、この値が小さいほど、より親水的な性質を有することを意味する。
具体的に、化合物xの「ClogP値」は、化合物xの「1-オクタノール/水の分配係数P」を常用対数で表した値である。分配係数Pは、1-オクタノールと水との2液相の溶媒系に、化合物xが溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味する。
本明細書におけるClogP値は、f値法(疎水性フラグメント定数法)により、化合物の化学構造をその構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数・f値を積算して求めることができる(例えば、Clog 3 Reference Manual DaylightSoftware 4.34,Albert Leo,David Weininger, Version 1,March 1994 参照)。
(A)成分のClogP値が前記の範囲内であると、(A)成分と(B)成分を高湿度雰囲気中に揮散させることによる微生物抑制の向上効果が充分に得られやすい。
(A)成分の分子量は95~175が好ましく、125~160がより好ましく、140~160がさらに好ましい。前記の範囲内であると微生物抑制効果に優れる。
(A)成分の沸点は140~250℃が好ましく、170~250℃がより好ましく、200~230℃がさらに好ましい。前記の範囲内であると常温(5~40℃)での揮散を制御しやすい。
本明細書において「沸点」は1気圧(101,325Pa)における沸点を意味する。
(A)成分は、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒドが好ましい。脂肪族アルデヒドは、分子内に環構造を有さない非環式化合物であって、アルデヒド基を有する化合物を意味する。芳香族アルデヒドは分子内にベンゼン環を有し、かつアルデヒド基を有する化合物を意味する。
アルデヒド化合物の炭素数は6~11が好ましく、7~10がより好ましい。炭素数が前記の範囲内であると、(A)成分が適度に揮散して微生物抑制効果が高まりやすい。
脂肪族アルデヒドの炭素数は6~11が好ましく、8~11がより好ましく、9~10がさらに好ましい。
芳香族アルデヒドの炭素数は6~11が好ましく、7~10がより好ましく、7~9がさらに好ましい。
脂肪族アルデヒドの具体例としては、
シトラール(ClogP値3.45、沸点229℃)、
シトロネラール(ClogP値3.53、沸点204℃)、
デカナール(ClogP値3.76、沸点207℃)、
ヒドロキシシトロネラール(ClogP値2.11、沸点241℃)、
オクチルアルデヒド(ClogP値2.78、沸点171℃)、
ノニルアルデヒド(ClogP値3.27、沸点191℃)、
デシルアルデヒド(ClogP値3.76、沸点207℃)、
トリメチルヘキシルアルデヒド(ClogP値3.09、沸点167℃)、
トランス-2-ヘキサナール(ClogP値1.58、沸点146℃)、
2,6-ノナジエール(ClogP値2.84、沸点187℃)、
シス-4-デセナール(ClogP値3.55、沸点222℃)が挙げられる。
芳香族アルデヒドの具体例としては、ベンズアルデヒド(ClogP値1.71、沸点179℃)、シンナムアルデヒド(ClogP値1.82、沸点248℃)が挙げられる。
微生物抑制効果がより高まりやすい点で、(A)成分が、シトラール、シトロネラール、デカナール、ベンズアルデヒド、及びシンナムアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
(A)成分が、シトラール及びシトロネラールの一方又は両方を含むことがより好ましい。
<(B)成分>
(B)成分は、炭素数が2~4のグリコール化合物である。本明細書において「グリコール化合物」は2個の水酸基がそれぞれ異なる炭素原子に結合している2価アルコールを意味する。(B)成分は、(A)成分による微生物抑制作用の向上効果に寄与する。(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
グリコール化合物の炭素数が前記の範囲内であると、(A)成分の微生物抑制効果を向上させることができる。
(B)成分の沸点は180~250℃が好ましく、180~215℃がより好ましく、185~200℃がさらに好ましい。前記の範囲内であると常温(5~40℃)での(A)成分の揮散を制御しやすく、(A)成分と組み合わせて微生物制御効果を高めやすい。
(B)成分の具体例としては、
プロピレングリコール(別名:1,2-プロパンジオール、沸点188℃)、
エチレングリコール(別名:1,2-エタンジオール、沸点197℃)、
1,3-プロパンジオール(沸点211℃)、
1,2-ブタンジオール(沸点193℃)、
1,3-ブタンジオール(沸点207℃)、
1,4-ブタンジオール(沸点228℃)、
ジエチレングリコール(沸点245℃)が挙げられる。
微生物抑制効果がより高まりやすい点で、(B)成分がプロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、及びジエチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
(B)成分が、プロピレングリコール及びエチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
<(C)成分>
微生物抑制剤組成物は(C)成分を含んでもよい。(C)成分は水である。(C)成分は、雰囲気の相対湿度の上昇に寄与する。
<(D)成分>
微生物抑制剤組成物は必要に応じて(D)成分を含んでもよい。
(D)成分はノニオン性界面活性剤である。(D)成分は、微生物抑制剤組成物の均一性を向上及び分離防止に寄与する。
(D)成分の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル等の、多価アルコールの脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、アルカノールアミド等が挙げられる。
多価アルコールの脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合で連結されている化合物である。多価アルコールの脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物における脂肪酸の炭素数は8~20が好ましく、12~18がより好ましい。アルキレンオキシドの平均付加モル数は、5~200モルが好ましく、10~100モルがより好ましい。
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
微生物抑制剤組成物の総質量に対する(D)成分の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。ゼロでもよい。上記上限値以下であると、(A)成分および(B)成分の揮散を妨げることなく、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
<その他の成分>
微生物抑制剤組成物は任意成分として、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分又は(D)成分のいずれにも該当しないその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
その他の成分として、例えば、(A)成分以外の香料成分、(D)成分以外の界面活性剤、除菌剤、抗菌剤、防腐剤、苦味剤、着色剤等が挙げられる。
微生物抑制剤組成物を揮散させる方法の態様として、例えば下記態様(I)~(IV)が挙げられる。
態様(I):(A)成分及び(B)成分を含有する微生物抑制剤組成物を揮散させる態様。
態様(II):(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する微生物抑制剤組成物を揮散させる態様。
態様(III):(A)成分を含有し(B)成分を含有しない第1の微生物抑制剤組成物と、(B)成分を含有し(A)成分を含有しない第2の微生物抑制剤組成物を同時に揮散させる態様。
態様(IV):(A)成分を含有し(B)成分を含有しない第1の微生物抑制剤組成物と、(B)成分及び(C)成分を含有し(A)成分を含有しない第2の微生物抑制剤組成物を同時に揮散させる態様。
態様(I)、(II)において、微生物抑制剤組成物の総質量に対する(A)成分の含有量は、1質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲の下限値以上であると優れた微生物抑制効果が得られやすい。上限値以下であると他の成分との良好なバランスが得られやすい。
態様(I)、(II)において、微生物抑制剤組成物の総質量に対する(B)成分の含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。(B)成分の含有量が前記の範囲内であると、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
態様(I)、(II)において、微生物抑制剤組成物の総質量に対して、(A)成分と(B)成分の合計の含有量((A)+(B))は20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。上記下限値以上であると優れた微生物抑制効果が得られやすい。
また、(B)成分に対する(A)成分の質量比を表す、(A)/(B)は0.01~2.0が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.2~0.7がさらに好ましい。(A)/(B)が前記の範囲内であると、(A)成分と(B)成分の両方が充分に揮散やすく、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
態様(I)において、例えば、(A)成分と、(B)成分とを含み、微生物抑制剤組成物の総質量に対して、(A)成分が1~50質量%、(B)成分が10~99質量%、(A)+(B)が11~100質量%、かつ(A)/(B)が0.01~2.0である微生物抑制剤組成物が好ましい。(A)成分と(B)成分の合計が100質量%未満であるとき、残部はその他の成分である。
態様(II)において、微生物抑制剤組成物の総質量に対する(C)成分の含有量は、15~80質量%が好ましく、30~65質量%がより好ましい。
(C)成分の含有量が前記の範囲内であると、(A)成分および(B)成分の揮散速度の低下を抑えつつ、雰囲気の相対湿度を高めやすい。
態様(II)において、微生物抑制剤組成物の総質量に対して、(B)成分と(C)成分の合計の含有量((B)+(C))は50~99質量%が好ましく、60~96質量%がより好ましく、75~90質量%がさらに好ましい。前記の範囲内であると、(C)成分による雰囲気の加湿を行いつつ、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
態様(II)において、(C)成分に対する(B)成分の質量比を表す、(B)/(C)は0.2~4が好ましく、0.3~2がより好ましい。(B)/(C)を前記の範囲内であると、(B)成分による微生物抑制作用の向上効果を損なうことなく(C)成分の揮散により雰囲気の湿度を上昇できることから、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
態様(II)において、例えば、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分を含み、微生物抑制剤組成物の総質量に対して、(A)成分が1~50質量%、(B)成分が10~84質量%、(C)成分が15~80質量%、(A)+(B)が20~85質量%、(B)+(C)が25~99質量%、(A)/(B)が0.012~2.0、かつ(B)/(C)が0.2~4である微生物抑制剤組成物が好ましい。(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計は100質量%を超えない。(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計が100質量%未満であるとき、残部はその他の成分である。
態様(II)において、例えば、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分を含み、微生物抑制剤組成物の総質量に対して、(A)成分が1~50質量%、(B)成分が10~84質量%、(C)成分が15~80質量%、(D)成分が0.1~10質量%、(A)+(B)が20~84質量%、(B)+(C)が50~98質量%、(A)/(B)が0.012~2.0、かつ(B)/(C)が0.2~4.0である微生物抑制剤組成物が好ましい。(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計は100質量%を超えない。(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計が100質量%未満であるとき、残部はその他の成分である。
態様(III)において、第1の微生物抑制剤組成物の総質量に対する(A)成分の含有量は、1質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると優れた微生物抑制効果が得られやすい。上限は100質量%でもよい。
第2の微生物抑制剤組成物の総質量に対する(B)成分の含有量は、1質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると優れた微生物抑制効果が得られやすい。上限は100質量%でもよい。
態様(IV)において、第1の微生物抑制剤組成物の総質量に対する(A)成分の含有量は、態様(III)と同様である。
第2の微生物抑制剤組成物の総質量に対する(B)成分の含有量は、17質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると優れた微生物抑制効果が得られやすい。上限は、(C)成分とのバランスの点から97質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
第2の微生物抑制剤組成物の総質量に対する(C)成分の含有量は、3~80質量%が好ましく、25~65質量%がより好ましく、35~55質量%がさらに好ましい。前記の範囲内であると、(B)成分の揮散速度の低下を抑えつつ、雰囲気の相対湿度を高めやすい。
態様(IV)において、第2の微生物抑制剤組成物の総質量に対して、(B)成分と(C)成分の合計の含有量((B)+(C))は20質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。上記下限値以上であると(C)成分による雰囲気の加湿を行いつつ、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
また、(C)成分に対する(B)成分の質量比を表す、(B)/(C)は0.2~32が好ましく、0.3~4がより好ましく、0.3~2がさらに好ましい。(B)/(C)を前記の範囲内であると、(B)成分による微生物抑制作用の向上効果を損なうことなく(C)成分の揮散により雰囲気の湿度を上昇できることから、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
態様(III)、(IV)において、第2の微生物抑制剤組成物に含まれる(B)成分に対する、第1の微生物抑制剤組成物に含まれる(A)成分の質量比を表す、(A)/(B)は0.01~2.0が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.2~0.7がさらに好ましい。(A)/(B)が前記の範囲内であると、優れた微生物抑制効果が得られやすい。
<揮散方法>
以下において「微生物抑制剤組成物」には、前記第1の微生物抑制剤組成物、前記第2の微生物抑制剤組成物も含まれる。
処理対象の雰囲気中に(A)成分と(B)成分を揮散させる方法は、微生物抑制剤組成物を揮散させる方法が好ましい。
微生物抑制剤組成物を揮散させる方法は、微生物抑制剤組成物を50℃以上に加熱して揮散させる方法でもよく、非加熱で揮散(自然揮散)させる方法でもよい。非加熱で揮散させる際の微生物抑制剤組成物の温度は、例えば5~40℃が好ましい。
密閉空間に(A)成分と(B)成分(好ましくは微生物抑制剤組成物)を存在させて自然揮散させる場合、空間の容積当たりの(A)成分及び(B)成分の合計の存在量は、5g/m以上が好ましく、30g/m以上がより好ましい。
微生物抑制剤組成物を揮散させる際の使用形態は、揮散できる形態であればよい。例えば、液状の微生物抑制剤組成物を揮散可能な容器に収容した形態;不織布、ろ紙、多孔質体などの担体に、液状の微生物抑制剤組成物を含浸させた形態;ゲル化剤等を用いて、液状の微生物抑制剤組成物を固化した、固形状(ゲル状を含む)の形態;等が挙げられる。
前記ゲル化剤は、公知のゲル状芳香剤の製造に用いられるゲル化剤を使用できる。ゲル化剤の具体例としては、ウレタン系高分子、アクリル酸系高分子、ポリビニルアルコール系高分子等の合成高分子、ゼラチン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム等の天然高分子が挙げられる。
微生物抑制効果が高まりやすい点で、液状の微生物抑制剤組成物が担体に含浸した含浸体を用いることが好ましい。
担体の材質としては、紙、パルプ、ビスコース等のセルロース系担体、エチレン-酢酸ビニール系樹脂、オレフィンポリマー等の合成樹脂系担体、ケイ酸カルシウム等の無機系担体、木片チップ等が例示できる。これらのなかでも天然由来の紙、パルプ、セルロース系担体が好ましい。担体の材質が互いに異なる2種以上の含浸体を用いてもよい。
担体の形状は特に限定されない。例えば球状、楕円体状、卵状、円柱状、角柱状、棒状、円盤状、角板状、不定形状等、種々の形状を用いることができる。担体の形状が互いに異なる2種以上の含浸体を用いてもよい。
担体の大きさは特に限定されない。担体の大きさが互いに異なる2種以上の含浸体を用いてもよい。
<加湿方法>
本発明の微生物抑制方法では、処理対象の雰囲気の相対湿度を70%以上に調整する。前記相対湿度は80%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。
処理対象の雰囲気の温度は1~50℃が好ましく、10~40℃がより好ましく、15~35℃がさらに好ましい。
前記相対湿度は経時的に変化してもよい。処理対象の雰囲気の相対湿度が70%以上であり、かつ該雰囲気中に揮散した(A)成分及び(B)成分が存在する状態が、連続して保持される保持時間が、3時間以上であることが好ましく、6時間以上がより好ましく、10時間以上がさらに好ましい。
処理対象の雰囲気を加湿する方法として、例えば、方法(1):前記雰囲気中に水蒸気源を存在させ、水蒸気源を揮発させる方法、方法(2):前記雰囲気中に蒸気式加湿装置等で発生させた水蒸気を導入する方法が挙げられる。方法(1)と方法(2)を併用してもよい。
前記蒸気式加湿装置は、電力を用いて水を気化して蒸気を発生する装置を意味する。
方法(1)において、水蒸気源は、水を含む液体でもよく、水を含む液体を揮発可能な担体に含浸させた担持体でもよい。例えば前記雰囲気中に水蒸気源を存在させて放置することにより前記雰囲気の相対湿度を高めることができる。水蒸気源は複数を併用してもよい。
前記水蒸気源として、(C)成分を含む微生物抑制剤組成物を用いることができる。すなわち、微生物抑制剤組成物中の(C)成分を揮発させて、処理対象の雰囲気を加湿することができる。例えば、密閉空間内に(C)成分を含む微生物抑制剤組成物(例えば前記態様(II)、(IV)における微生物抑制剤組成物)を存在させて、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を揮散させることにより、密閉空間内を加湿することができる。
また、(A)成分及び(B)成分のいずれも含まない水蒸気源を用いることもできる。例えば、浴室等の密閉空間の壁を、シャワー等を用いて水で濡らして水蒸気源とする方法、クローゼットや靴箱等の密閉空間内に、霧吹きや水噴霧式加湿装置を用いて水を噴霧して水蒸気源とする方法、エアコンの熱交換器部分に、霧吹き等を用いて水を噴霧して水蒸気源とする方法、冷房運転を停止した直後の熱交換器が結露している状態において前記結露を水蒸気源として用いる方法、等が挙げられる。
前記水噴霧式加湿装置は、超音波の音波エネルギー、圧力等のエネルギー源を用いて水を噴霧する装置を意味する。
本発明の微生物抑制方法では、例えば、処理対象の雰囲気を相対湿度70%以上に加湿し、相対湿度を70%以上に維持しつつ、前記雰囲気中に(A)成分及び(B)成分を揮散させる。又は、処理対象の雰囲気中に(A)成分及び(B)成分を揮散させつつ加湿して相対湿度を70%以上に高めてもよい。
<微生物抑制システム>
本発明の微生物抑制方法を実施するのに好適な微生物抑制システムとして、処理対象の雰囲気に(A)成分及び(B)成分を揮散させる揮散装置と、前記雰囲気を加湿する加湿装置とを備える微生物抑制システムが挙げられる。
加湿装置は、処理対象の雰囲気を相対湿度70%以上に加湿できるものであればよい。例えば、水噴霧式加湿装置や蒸気式加湿装置を用いることができる。
揮散装置は、前記微生物抑制剤組成物を開放空間に収容する収容部と、前記収容部内の微生物抑制剤組成物を加熱する加熱部を備える装置が好ましい。
揮散装置と加湿装置は別体でもよく、一体化されていてもよい。
本発明の微生物抑制方法によれば、揮散した(A)成分及び(B)成分と、前記雰囲気中の水蒸気が、前記雰囲気中に存在する微生物に接触することにより、優れた微生物抑制効果が得られる。
かかる微生物抑制効果が得られる理由は明確ではないが、以下のように推測される。
微生物が接する雰囲気の湿度が高いと、微生物が保有する水分量が多くなる。(A)成分は疎水的であるが、両親媒性である(B)成分が存在することと、微生物が保有する水分量が多くなることにより、(A)成分が微生物の細胞膜中に溶け込む量が増大し、微生物抑制効果が向上すると考えられる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
[評価方法]
<供試用カビプレートの作製>
ポテトデキストロース寒天(Difco社製)の斜面培地にて、25℃、1週間培養したCladosporium cladosporioides NBR6348を、滅菌した0.05%Tween80(関東化学製)水溶液に分散し、約10CFU/mLの胞子液を調製した。次いで、該胞子液をプラスチック板(FRP板、50mm×50mm)に0.5mL接種し、室温にて一晩乾燥固定し(薄膜状、板上の菌数は約10CFU)、カビプレートを作製した。
以下、微生物抑制剤組成物と接触させるカビプレートを試験用カビプレート、微生物抑制剤組成物と接触させないカビプレートを参照用カビプレートという。
<加湿方法・揮散方法>
(1)内容積8L(内寸:W155×D260×H170mm)のプラスチック製の評価用ボックスを用意した。以下の操作は25℃の環境下で行った。
(2)湿度の調整方法
[方法(a):飽和水溶液を用いた加湿方法]
下記の飽和水溶液200mLを内容積870mLのプラスチック製容器(岩崎工業社製、以下同様)に注ぎ、蓋をせずに評価用ボックスの底面に置いた。これと同時に温湿度データロガー(T&D社製品名TR-72wf、以下同様)を評価用ボックスの底面に置いた。評価用ボックスの蓋を取り付けて密閉し、1時間静置して加湿終了とした。加湿終了時のデータロガーの表示湿度を読み取り、試験開始時の湿度とした。飽和水溶液の種類と試験開始時の湿度は以下の通りであった。
硫酸カリウム飽和水溶液:相対湿度約95%。
塩化カリウム飽和水溶液:相対湿度約85%。
塩化ナトリウム飽和水溶液:相対湿度約75%。
臭化ナトリウム飽和水溶液:相対湿度約60%。
[方法(b):加湿装置を用いた加湿方法]
小型卓上加湿器(Jacess社製品名HF503、水噴霧式加湿装置)及び温湿度データロガーを評価用ボックスの底面に置き、評価用ボックスの蓋を取り付けて密閉した。評価用ボックスの外部から加湿器を操作して水道水を約0.2g噴霧し、1時間静置して加湿終了とした。加湿終了時のデータロガーの表示湿度を読み取り、試験開始時の湿度とした。
[方法(c):微生物抑制剤組成物以外の水蒸気源を用いない加湿方法]
温湿度データロガーを評価用ボックスの底面に置き、評価用ボックスの蓋を取り付けて密閉した。5分間静置して加湿終了とした。加湿終了時のデータロガーの表示湿度を読み取り、試験開始時の湿度とした。
(3)前記方法(a)、方法(b)又は方法(c)において、加湿終了後、直ちに評価用ボックスの蓋を開けて、ろ紙(東洋濾紙社製定性ろ紙NO.2)を直径7cmの円形に切り取ったもの)を入れたプラスチックシャーレ(アテクト社製品名「浅型シャーレ滅菌済みSLE」、直径9cm、高さ1.5cm、以下同様)を評価用ボックスの底面中央に置いた。これと同時に試験用カビプレートを箱の底面に置いた。
プラスチックシャーレ内のろ紙に、各例の微生物抑制剤組成物1.0gを滴下し、速やかに評価用ボックスの蓋を被せて密閉し、試験を開始した。
密閉した評価用ボックスを12時間静置した後、評価用ボックスの蓋を開け、試験用カビプレートと温湿度データロガーを回収し、試験を終了した。
(4)参照用カビプレートは相対湿度70%(気温25℃)に調節した実験室内に12時間静置して、回収した。
(5)回収した試験用カビプレート及び参照用カビプレートを用い、下記の方法で微生物抑制効果を評価した。また、回収した温湿度データロガーの記録から、評価用ボックス内の相対湿度が70%以上であった保持時間を1時間単位で算出した。
<微生物抑制効果の評価方法>
試験用カビプレート及び参照用カビプレートに各々GPLP液体培地(日本製薬株式会社製)10mLを添加し菌を洗い出し、その液をポテトデキストロース寒天培地(関東化学会社製)に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測し、生菌数を算出した。生菌数は常用対数(log)に変換した。参照用カビプレートの生菌数の常用対数の値から、試験用カビプレートの生菌数の常用対数の値を差し引いた値を除菌活性値とした。除菌活性値が大きいほど微生物抑制効果が高い。下記の評価基準に従い、微生物抑制効果を評価した。◎◎~○を微生物抑制効果が高い、△~×を微生物抑制効果が低いと判定した。
(評価基準)
◎◎:除菌活性値が3.0以上。
◎:除菌活性値が2.5以上3.0未満。
○:除菌活性値が2.0以上2.5未満。
△:除菌活性値が1.0以上2.0未満。
×:除菌活性値が1.0未満。
[使用原料]
<(A)成分>
(A-1):シトロネラール、ClogP値3.53、分子量154.2、沸点204℃、東京化成工業社製、(-)-シトロネラール。
(A-2):シトラール、ClogP値=3.45、分子量152.2、沸点229℃、東京化成工業社製、シトラール(cis-,trans-混合物)。
(A-3):デカナール、ClogP値=3.76、分子量156.3、沸点207℃、東京化成工業社製。
(A-4):ベンズアルデヒド、ClogP値=1.71、分子量106.1、沸点179℃、東京化成工業社製。
(A-5):シンナムアルデヒド、ClogP値=1.82、分子量132.2、沸点248℃、富士フイルム和光純薬社製、シンナムアルデヒド(和光特級)。
<(A’)成分(比較成分)>
(A’-1):トリデカナール、ClogP値=5.24、分子量198.4、沸点251℃、東京化成工業社製。
(A’-2):ペンタナール、ClogP値=1.31、分子量86.1、沸点103℃、東京化成工業社製。
<(B)成分>
(B-1):プロピレングリコール、東京化成工業社製、1,2-プロパンジオール。
(B-2):エチレングリコール、東京化成工業社製。
(B-3):1,3-プロパンジオール、東京化成工業社製。
(B-4):1,3-ブタンジオール、東京化成工業社製。
<(B’)成分(比較成分)>
(B’-1):グリセロール、富士フイルム和光純薬社製、グリセリン(試薬特級)。
(B’-2):デカノール、東京化成工業社製。
(B’-3):1,5-ペンタンジオール、東京化成工業社製。
<(C)成分>
(C-1)水:イオン交換水。
<(D)成分>
(D-1):ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、青木油脂工業社製、ブラウノンRCW-60、ノニオン性界面活性剤。
(例1~35)
例1~26は実施例、例27~35は比較例である。
表1~3に示す配合の全成分を混合して各例の微生物抑制剤組成物を調製した。なお、表中の配合量は純分換算値である。また、表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。
各例の微生物抑制剤組成物について、上記の方法で微生物抑制効果を評価した。結果を表中に示す。表中、保持時間の単位を表す「h」は「時間」である。
Figure 0007349907000001
Figure 0007349907000002
Figure 0007349907000003
表1~3に示すように、例1~26は微生物抑制効果が良好であった。
微生物抑制剤組成物が(A)成分を含まない例27は、微生物抑制効果が劣った。
微生物抑制剤組成物が(B)成分を含まない例28は、微生物抑制効果が劣った。
相対湿度が60%の雰囲気中で微生物抑制剤組成物を揮散させた例29、30は、微生物抑制効果が劣った。
(A)成分よりもClogP値が大きい又は小さいアルデヒド化合物を用いた例31、32は、微生物抑制効果が劣った。
(B)成分の代わりに、3価アルコール又は1価アルコールを用いた例33、34は、微生物抑制効果が劣った。
(B)成分よりも炭素数が大きい2価アルコールを用いた例35は、微生物抑制効果が劣った。

Claims (10)

  1. 下記(A)成分及び下記(B)成分を、相対湿度70%以上の雰囲気中に揮散させる、微生物抑制方法。
    (A)成分:ClogP値が1.5~5であるアルデヒド化合物。
    (B)成分:炭素数が2~4のグリコール化合物。
  2. 前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比を表す、(A)/(B)が0.01~2.0である、請求項1に記載の微生物抑制方法。
  3. 前記(A)成分が、炭素数6~11の脂肪族アルデヒド及び炭素数6~11の芳香族アルデヒドからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の微生物抑制方法。
  4. 前記(A)成分が、シトラール、シトロネラール、デカナール、ベンズアルデヒド、及びシンナムアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項3に記載の微生物抑制方法。
  5. 前記(A)成分及び前記(B)成分を含む微生物抑制剤組成物を前記雰囲気中に揮散させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物抑制方法。
  6. 前記微生物抑制剤組成物が、さらに下記(C)成分を含む、請求項5に記載の微生物抑制方法。
    (C)成分:水。
  7. 前記微生物抑制剤組成物の総質量に対して、前記(B)成分と前記(C)成分の合計の含有量が40~99質量%であり、かつ、前記(C)成分に対する前記(B)成分の質量比を表す、(B)/(C)が0.2~4である、請求項6に記載の微生物抑制方法。
  8. 前記微生物抑制剤組成物中の前記(C)成分を揮発させて、前記雰囲気を加湿する、請求項6又は7に記載の微生物抑制方法。
  9. 前記(A)成分及び前記(B)成分を含まない水蒸気源を揮発させて、前記雰囲気を加湿する、請求項1~8のいずれか一項に記載の微生物抑制方法。
  10. 処理対象の雰囲気に下記(A)成分及び下記(B)成分を揮散させる揮散装置と、前記雰囲気を加湿する加湿装置とを備える、微生物抑制システム。
    (A)成分:ClogP値が1.5~5であるアルデヒド化合物。
    (B)成分:炭素数が2~4のグリコール化合物。
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