実施形態の画像形成装置では、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止可能となる。以下、実施形態の画像形成装置について詳細に説明する。なお以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。また、重複した構成の説明は省略する場合がある。
先ず、図1を用いて、実施形態の画像形成装置の側面図を説明する。
図1において、画像形成装置10は、コントロールパネル13、無線タグ通信装置201、及びプリンタ部18を有する。プリンタ部18は、制御部100、給紙カセット16a、16b等を備える。制御部100は、コントロールパネル13、無線タグ通信装置201、及びプリンタ部18を制御する。制御部100は、プリンタ部18におけるシートの搬送を制御する。シートの搬送の制御とは、シートの搬送タイミング、シートの停止位置、シートの搬送速度等を制御することである。
コントロールパネル13は、入力キーと、表示部とを備える。例えば、入力キーは、ユーザによる入力を受け付ける。例えば、表示部は、タッチパネル式である。表示部は、ユーザによる入力を受け付け、ユーザへの表示を行う。例えば、コントロールパネル13は、画像形成装置10の動作に関する項目を設定可能に表示部に表示する。コントロールパネル13は、ユーザによって設定された項目を制御部100に通知する。
給紙カセット16a、16bは、無線タグが設けられたシートを収納する。なお、給紙カセット16a、16bは、無線タグが設けられていないシートももちろん収納できる。以下の説明において、特に断らない限り、シートは無線タグが設けられたシートとする。シートには、例えば紙、プラスチックフィルム等の素材が用いられる。
プリンタ部18は、画像形成動作を行う。例えば、プリンタ部18は、画像データが示す画像をシートに形成する。以下の説明では、シートに画像を形成することを印刷とも表現する。プリンタ部18は、中間転写ベルト21を備える。プリンタ部18は、従動ローラ41、及びバックアップローラ40等で中間転写ベルト21を支持する。プリンタ部18は、中間転写ベルト21を矢印m方向に回転する。
プリンタ部18は、4組の画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kを備える。各画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kは、各々Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)の画像形成用とされる。画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kは、中間転写ベルト21の下側で、中間転写ベルト21の回転方向に沿って配置される。
以下、各画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kのうち、Y(イエロー)の画像形成ステーション22Yを例に挙げて説明する。なお、画像形成ステーション22M、22C及び22Kについては、画像形成ステーション22Yと同様の構成を備えるため、詳細な説明を省略する。
画像形成ステーション22Yは、帯電チャージャ26、露光走査ヘッド27、現像装置28及び感光体クリーナ29を備える。帯電チャージャ26、露光走査ヘッド27、現像装置28及び感光体クリーナ29は、矢印n方向に回転する感光体ドラム24の周囲に配置される。
画像形成ステーション22Yは、1次転写ローラ30を備える。1次転写ローラ30は、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム24と対向する。
画像形成ステーション22Yは、感光体ドラム24を帯電チャージャ26で帯電後、露光走査ヘッド27によって露光する。画像形成ステーション22Yは、感光体ドラム24上に静電潜像を形成する。現像装置28は、トナーとキャリアとにより形成される二成分の現像剤を用い、感光体ドラム24上の静電潜像を現像する。
1次転写ローラ30は、感光体ドラム24に形成されるトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kは、1次転写ローラ30によって、中間転写ベルト21上にカラートナー像を形成する。カラートナー像は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)のトナー像を順次重ねて形成される。感光体クリーナ29は、感光体ドラム24に残留するトナーを1次転写後に除去する。
プリンタ部18は、2次転写ローラ32を備える。2次転写ローラ32は、中間転写ベルト21を介してバックアップローラ40と対向する。2次転写ローラ32は、シートに、中間転写ベルト21上のカラートナー像を一括して2次転写する。なお、以下の説明において「トナー像」という場合、カラートナー像と1色のみのトナー像のいずれであってもよいものとする。トナー像は、消色トナーを用いたトナー像であってもよい。
搬送路33aは、合流部44aから分岐部44bまでの搬送路である。搬送路33aは、搬送部の一例である。搬送路33bは、両面印刷装置38内を通過する搬送路であり、分岐部44bから合流部44aまでの搬送路である。搬送路33cは、分岐部44bから排紙トレイ20までの搬送路である。
給紙カセット16a、給紙カセット16b、または手差しトレイ16cから取り出されたシートの先端は、停止している2本のレジストローラ31が接触している部分に突き当てられる。レジストローラ31に突き当てられたシートはシートの傾きが修正される。制御部100は、回転する中間転写ベルト21のトナー像の位置に合せてレジストローラ31の回転を開始してシートを2次転写ローラ32の位置に移動させる。制御部100は、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像を2次転写ローラ32によってシートに2次転写する。制御部100は、シートを搬送路33aに搬送し、定着装置34によってトナー像をシートに定着することで画像を形成する。制御部100は、画像が形成されたシートを搬送路33cに搬送することで、シートを排紙する。
両面印刷の場合、制御部100は、表面に画像が形成されたシートを、搬送路33cに搬送する。制御部100は、シート全体が分岐部44bを通過したのち、スイッチバックして搬送路33bにシートを搬送する。その後、制御部100は、シートを両面印刷装置38内の搬送路を経由して合流部44aに搬送し、レジストローラ31を経由して搬送路33aに搬送する。そして制御部100は、定着装置34によってトナー像を定着することでシートの裏面に画像を形成する。制御部100は、裏面に画像が形成されたシートを搬送路33cに搬送することで、シートを排紙する。
無線タグ通信装置201は、図示しない演算装置及び記憶装置を備える。無線タグ通信装置201は、制御部100と通信可能である。無線タグ通信装置201は、シートの無線タグと通信することで、無線タグから情報を読んだり、無線タグに情報を書く。本実施形態における無線タグは、例えばRFID(Radio Frequency Identifier)タグである。無線タグ通信装置201は、矢印k方向に電波を送信する。無線タグ通信装置201は、無線タグ通信装置201により検出された、無線タグから送信された電波の受信電力強度(以下、「RSSI」という)を制御部100に送信する。以下の説明において、「無線タグのRSSI」とは、無線タグから送信された電波のRSSIを示すものとする。また、「シートのRSSI」とは、シートに設けられた無線タグから送信された電波のRSSIを示すものとする。
プリンタ部18において形成される画像は、2次転写ローラ32において2次転写される前に、露光走査ヘッド27から感光体ドラム24上に静電潜像が形成される。感光体ドラム24上に形成された静電潜像は、トナー像として中間転写ベルト21に1次転写される。さらに、中間転写ベルト21に1次転写されたトナー像は、レジストローラ31の位置に搬送された無線タグシートに2次転写される。
次に、図2を用いて、実施形態の画像形成装置の機能ブロック図を説明する。
図2において、画像形成装置10は、制御部100、コントロールパネル13、プリンタ部18、及び無線タグ通信装置201を有する。
制御部100は、演算装置51及び記憶装置52を備える。演算装置51は、記憶装置52に記憶された画像処理プログラムに従い、コントロールパネル13、プリンタ部18、及び無線タグ通信装置201を制御する。
演算装置51は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。記憶装置52は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。データ受信部53は、PC(Personal Computer)などのホストから、印刷する画像を示す印刷データ(例えば、ページ記述言語で記述されたデータ等)を受信し、受信した印刷データを記憶装置52に記憶する。画像データ展開部54は、データ受信部53によって記憶装置52に記憶された印刷データから印刷条件を決定したりすることで、プリンタ部18が印刷可能なデータ(例えば、ラスタデータ等)に展開して、記憶装置52に記憶する。
プリンタ部18は、定着装置34、2次転写ローラ32、及び現像装置28を含む。プリンタ部18は、画像データ展開部54によって記憶装置52に記憶されたデータに基づきシートに画像を形成する。
次に、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止する制御について説明する。図3は、画像形成装置10において、シートが存在可能な位置の例を示す図である。図3において、シートS1は、給紙カセット16aに載置されたシートを示す。シートS2は、排紙トレイ20に載置されたシートを示す。シートS3は、手差しトレイ16cに載置されたシートを示す。上記給紙カセット16a、16b、排紙トレイ20、及び手差しトレイ16cは、載置部の一例である。
シートS0は、搬送路33aを搬送中のシートを示す。各シートには無線タグが設けられている。シートS0、S1、S2、S3に設けられた無線タグを、それぞれ無線タグT0、T1、T2、T3とする。
本実施形態において、無線タグに情報を書く対象となっているシート(以下、「対象シート」ともいう)は、搬送路33aを搬送中のシートである。
図3に示される状態で、無線タグ通信装置201が矢印k方向に電波を送信する。電波を受信した各無線タグは、無線タグ通信装置201に対して電波を返信する。無線タグ通信装置201は、各シートに設けられた無線タグから電波を受信する。このとき、各無線タグのRSSIは、各無線タグの位置や、電波の指向性などによって異なる。
さらに、シートS1、S2、S3は静止しているが、シートS0は搬送されている。よって、シートS0が搬送中は、無線タグT1、T2、T3のRSSIは変化しないが、無線タグT0のRSSIは変化する。
本実施形態では、対象シートを搬送させて検出されたRSSIにもとづき情報を書くタイミングを制御する。この制御の具体例として、2つの実施例を用いて説明する。いずれの実施例においても、制御部100は、搬送中の対象シートの無線タグと、載置部に載置されたシートの無線タグとをRSSIによって区別するための閾値を取得する。制御部100は、RSSIが閾値により定まる範囲内にある場合に、当該RSSIとなった無線タグに対して情報を書くように無線タグ通信装置201を制御する。以下の説明では、無線タグTX(X=0~3)のRSSIを、R(X)と表現することがある。例えば、無線タグT0のRSSIは、R(0)と表現される。
(第1実施例)
第1実施例は、R(1)、R(2)、R(3)とR(0)とを比較して制御する実施例である。図4は、シートを搬送した際に無線タグ通信装置201で検出された、R(0)、R(1)、R(2)、R(3)を示す図である。図4に示されるグラフは、横軸が時間を示し、縦軸がRSSIを示す。なお、無線タグ通信装置201によるRSSIの検出は、所定間隔ごとに行われる。そのため、本来のグラフは離散的なものであるが、図4では分かりやすくするために連続的に描かれている。
シートは、給紙カセット16aから搬送され、排紙トレイ20に排紙される。そのため、R(0)は、R(1)と同じ値から単調に増加する。R(0)は、搬送路33aあたりを搬送中に最大値(P)となり、減少に転ずる。その後、R(0)は単調に減少し、シートが排紙トレイ20に搬送されると、R(2)と同じ値となる。
制御部100は、区間(R(1),P]内のいずれかの値を、閾値THとして導出する。すなわち、載置されているシートのRSSIの最大値より大きく、R(0)の最大値以下のいずれかの値を、閾値THとして導出する。導出方法の具体例は後述する。閾値THによって、制御部100は、対象シートの無線タグとそれ以外のシートの無線タグとを区別することができる。
制御部100は、対象シート1枚分を搬送することで、閾値THを導出する。そして、制御部100は、画像形成時に、閾値により定まる範囲内にある場合に、当該RSSIとなった無線タグに対して情報を書くように無線タグ通信装置201を制御する。図4の例において、「閾値により定まる範囲」とは、閾値TH以上の範囲[TH,+∞)である。実際の制御において、制御部100は、R(0)が閾値TH以上となったタイミングで、無線タグに対して情報を書くように無線タグ通信装置201を制御する。
このように、R(0)が範囲[TH,+∞)に含まれない状態から含まれたタイミングで情報を書くため、情報を書くために必要な時間をできるだけ多く確保することができる。情報を書く時間を多く確保できると、書き込み失敗等のエラーの発生を抑制できる。また搬送速度の向上も図れることから生産性も向上できる。
上述した閾値TH以上の範囲は、搬送部によって搬送中のシートに設けられた無線タグから受信された電波の受信電力強度の最大値を含む範囲である。さらに、閾値TH以上の範囲は、載置部に載置されたシートに設けられた無線タグから受信された電波の受信電力強度を含まない範囲である。このようにすることで、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止可能となる。
以上説明した制御をフローチャートを用いて説明する。図5は、制御部100による閾値導出処理の制御の流れを示すフローチャートである。制御部100は、対象シートを搬送するために、プリンタ部18に搬送開始命令を送信する(ACT101)。制御部100は、無線タグ通信装置201により検出されたRSSIをデータ受信部53で受信する。制御部100は、データ受信部53で受信されたRSSIを取得する(ACT102)。ここでは、R(0)、R(1)、R(2)、R(3)が取得される。制御部100は、搬送開始命令を送信してから経過した経過時間と、取得したRSSIを関連付けて、記憶装置52に記憶する。
制御部100は、対象シートの搬送が終了したか否かを判定する(ACT104)。搬送が終了した場合には、プリンタ部18から搬送が終了したことを示すメッセージが制御部100に送信される。制御部100は、上記メッセージを受信したか否かで対象シートの搬送が終了したか否かを判定できる。
搬送が終了していない場合には(ACT104:NO)、制御部100は、ACT102で再びRSSIを取得する(ACT102)。搬送が終了した場合には(ACT104:YES)、制御部100は、閾値を導出し(ACT105)、導出した閾値を記憶装置52に記憶して(ACT106)、処理を終了する。このように、搬送が終了するまでに、ACT102が繰り返される。したがって、複数個のR(0)、R(1)、R(2)、R(3)が取得される。本実施形態では、10個程度の取得を想定しているが、RSSIのばらつきなどに応じて取得個数を適宜定めるようにしてもよい。
閾値の具体的な導出例について説明する。上記フローチャートに示されるように、閾値導出処理において取得された複数個のR(0)、R(1)、R(2)、R(3)の平均値をそれぞれAvR(0)、AvR(1)、AvR(2)、AvR(3)とする。制御部100は、AvR(0)、AvR(1)、AvR(2)、AvR(3)を導出する。制御部100は、載置部のシートの無線タグのRSSIの最大値M1として、max(AvR(1)、AvR(2)、AvR(3))を導出する。また、制御部100は、複数個取得されたR(0)の最大値M2として、max(R(0))を導出する。
制御部100は、導出されたM1、M2から、M1とM2の平均値(M1+M2)/2を導出する。制御部100は、導出された(M1+M2)/2を閾値THとする。このような平均値を単純に閾値とする方法は処理負荷が比較的小さい導出方法である。他の導出方法として、無線タグの個体差などによるRSSIのばらつきを考慮して閾値THを導出する導出方法が挙げられる。
閾値の導出方法は、上述した導出方法に限るものではなく、制御部100が対象シートの無線タグとそれ以外のシートの無線タグとを区別することができる導出方法であれば、どのような導出方法であってもよい。
上述した閾値導出処理で記憶された閾値は画像形成時に用いられる。図6は、制御部100による画像形成時無線タグ制御処理の制御の流れを示すフローチャートである。制御部100は、画像形成を開始するために、プリンタ部18に画像形成開始命令を送信する(ACT201)。制御部100は、無線タグ通信装置201により検出されたRSSIをデータ受信部53で受信する。制御部100は、データ受信部53で受信されたR(0)を取得する(ACT202)。
制御部100は、R(0)が閾値により定まる範囲内か否かを判定する(ACT203)。ここでの範囲は、閾値TH以上という範囲である。したがって、ACT203では、R(0)≧THか否かが判定される。R(0)が範囲内の場合には(ACT203:YES)、制御部100は、R(0)が検出された無線タグに情報を書き(ACT205)、処理を終了する。
R(0)が範囲内ではない場合には(ACT203:NO)、制御部100は、画像形成が終了したか否かを判定する(ACT204)。画像形成が終了した場合には、プリンタ部18から画像形成が終了したことを示すメッセージが制御部100に送信される。制御部100は、上記メッセージを受信したか否かで画像形成が終了したか否かを判定できる。
画像形成が終了していない場合には(ACT204:NO)、制御部100は、ACT202で再びR(0)を取得する(ACT202)。画像形成が終了した場合には(ACT204:YES)、制御部100は、処理を終了する。
上記画像形成時無線タグ制御処理では、対象シートの無線タグのみ検出可能なRSSIが検出された無線タグに情報を書くため、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止可能となる。
図4で説明したグラフは、R(0)が最大値をとるグラフであったが、必ずしも最大値をとらない場合にも本実施例を適用できる。具体的に図7を用いて説明する。
図7は、シートを搬送した際に無線タグ通信装置201で検出された、R(0)、R(1)、R(2)、R(3)を示す図である。図7において、シートは、手差しトレイ16cから搬送され、排紙トレイ20に排紙されるものとする。R(0)は、R(3)と同じ値から単調に増加する。R(0)は、搬送路33aあたりを搬送中に最大値(P)となり、減少に転ずる。その後、R(0)は単調に減少し、シートが排紙トレイ20に搬送されると、R(2)と同じ値となる。
このように、R(0)が最大値をとらない場合に、制御部100は、2つの閾値TH1、TH2を導出する。TH1はP+a、TH2はP-bである。ここで、a、bは正であり、P+a<R(1)、かつP-b>R(3)を満たす値である。
制御部100は、対象シート1枚分を搬送することで、上述した閾値TH1、TH2を導出する。そして、制御部100は、画像形成時に、閾値により定まる範囲内にある場合に、当該RSSIとなった無線タグに対して情報を書くように無線タグ通信装置201を制御する。図7の例において、「閾値により定まる範囲」とは、閾値TH2以上、かつ閾値TH1以下の範囲[TH2,TH1]である。実際の制御において、制御部100は、R(0)が閾値TH2以上となり、かつR(0)が閾値TH1以下となったタイミングで無線タグに対して情報を書くように無線タグ通信装置201を制御する。
このように、R(0)が範囲[TH2,TH1]に含まれない状態から含まれたタイミングで情報を書くため、情報を書くために必要な時間をできるだけ多く確保することができる。情報を書く時間を多く確保できると、書き込み失敗等のエラーの発生を抑制できる。また搬送速度の向上も図れることから生産性も向上できる。
以上説明したように、第1実施例は、R(1)、R(2)、R(3)とR(0)とを比較して制御することで、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止することができる。
(第2実施例)
第2実施例では、搬送部によってシートを複数回搬送させ、複数回搬送させたときの搬送中のシートに設けられた無線タグから受信された複数のRSSIにもとづき制御する実施例である。具体的には、搬送中のシートのそれぞれからR(0)を取得し、閾値を導出して制御する実施例である。以下の説明では、分かりやすくするために、シートを2回搬送させた場合の実施例について説明する。
図8は、シートを2回搬送した際に無線タグ通信装置201で検出された、2つのR(0)を示す図である。図8に示されるグラフは、横軸が時間を示し、縦軸がRSSIを示す。なお、無線タグ通信装置201によるRSSIの検出は、所定間隔ごとに行われる。そのため、本来のグラフは離散的なものであるが、図8では分かりやすくするために連続的に描かれている。
図8に示されるように、1回目のシートのRSSIの最大値をP1とし、2回目のシートのRSSIの最大値をP2(>P1)とする。制御部100は、2つの閾値TH3、TH4を導出する。TH3はP2+c、TH4はP1-dである。ここで、c、dは正であり、RSSIのばらつきを吸収するための値である。c、dは、例えば無線タグの特性やRSSIのばらつきについての統計量等にもとづき、予め定めておく。
このように、制御部100は、各シートで検出された最大値のうちの、最大値と最小値から閾値TH3、TH4を導出する。そして、制御部100は、画像形成時に、閾値により定まる範囲内にある場合に、当該RSSIとなった無線タグに対して情報を書くように無線タグ通信装置201を制御する。図8の例において、「閾値により定まる範囲」とは、閾値TH4以上、かつ閾値TH3以下の範囲[TH4,TH3]である。実際の制御において、制御部100は、R(0)が閾値TH4以上となり、かつR(0)が閾値TH3以下の場合に、無線タグに対して情報を書くように無線タグ通信装置201を制御する。
閾値TH4以上、かつ閾値TH3以下の範囲は、搬送部によってシートを複数回搬送させ、複数回搬送させたときの搬送中のシートに設けられた無線タグから受信された複数の受信電力強度の最大値を含む範囲である。このようにすることで、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止可能となる。
以上説明した制御をフローチャートを用いて説明する。図9は、制御部100による閾値導出処理の制御の流れを示すフローチャートである。制御部100は、対象シートを搬送するために、プリンタ部18に搬送開始命令を送信する(ACT301)。制御部100は、無線タグ通信装置201により検出されたRSSIをデータ受信部53で受信する。制御部100は、データ受信部53で受信されたRSSIを取得する(ACT302)。ここでは、R(0)が取得される。制御部100は、搬送開始命令を送信してから経過した経過時間と、取得したR(0)を関連付けて、記憶装置52に記憶する。
制御部100は、対象シートの搬送が終了したか否かを判定する(ACT304)。搬送が終了した場合には、プリンタ部18から搬送が終了したことを示すメッセージが制御部100に送信される。制御部100は、上記メッセージを受信したか否かで対象シートの搬送が終了したか否かを判定できる。
搬送が終了していない場合には(ACT304:NO)、制御部100は、ACT302で再びRSSIを取得する(ACT302)。搬送が終了した場合には(ACT304:YES)、制御部100は、所定枚のシートの搬送が終了したか否かを判定する(ACT305)。ここでの所定枚は、例えば5枚など予め定めておく。枚数が多いほど閾値の精度はよくなる。
所定枚のシートの搬送が終了していない場合には(ACT305:NO)、制御部100は、対象シートを搬送するために、再びプリンタ部18に搬送開始命令を送信する(ACT301)。所定枚のシートの搬送が終了した場合には(ACT305:YES)、制御部100は、閾値を導出し(ACT306)、導出した閾値を記憶装置52に記憶して(ACT307)、処理を終了する。このように、1回の搬送が終了するまでに、ACT302が繰り返される。したがって、複数個のR(0)が取得される。本実施形態では、10個程度の取得を想定しているが、RSSIのばらつきなどに応じて取得個数を適宜定めるようにしてもよい。また、上記所定枚もRSSIのばらつきなどに応じて適宜定めるようにしてもよい。
上述した閾値導出処理で記憶された閾値は画像形成時に用いられる。画像形成時無線タグ制御処理は、第2実施例においても、図6で示した処理であるため、説明を省略する。なお、図8に示した閾値の場合は、図6のACT203の範囲は、上記[TH4,TH3]である。
以上説明したように、第2実施例は、複数のR(0)を取得し、閾値を導出して制御することで、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止することができる。
以上説明した第1実施例、及び第2実施例において、無線タグ通信装置201が無線タグに送信する電波の出力の大きさを変更可能としてもよい。出力の大きさの変更は、例えば、閾値が導出できない場合、または閾値が導出できるが、「閾値により定まる範囲」が非常に狭く、実用上問題がある場合などに有効である。出力の大きさの変更が可能な場合、制御部100は、出力を大きくしたり、または小さくすることで、閾値を導出してもよい。これにより、閾値の精度を高めることができるため、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止することができる。
以上説明した第1実施例、及び第2実施例において、閾値の導出や、無線タグへの情報を書くための指示は、制御部100が行っているが、これに限るものではない。例えば、無線タグ通信装置201とPC(Personal Computer)とを通信可能とし、さらに制御部100とPCとを通信可能としておく。そのうえで、閾値の導出や、無線タグへの情報を書くための指示はPCが行い、シートの搬送等に係る制御は制御部100が行うようにしてもよい。制御部100のみで処理を行う場合と比較して、処理負荷が分散されることもあり、また一般的にPCの方がリソースに余裕がある。そこで、比較的負荷の大きい統計処理や、細かい制御をPCに行わせることにより、閾値の精度を高めることができるため、対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止することができる。
本実施形態は、搬送中のシートに設けられた無線タグから受信されたRSSIが変化することを利用して対象外の無線タグに誤って情報を書くことを防止する。これにより、例えばシートを物理的に変形させるための搬送路など、特別な搬送路を設ける必要はないことから、余分な製造コストや製品コストは生じない。また、特別な搬送路を設ける必要はないため、一般的な画像形成装置に無線タグ通信装置を取り付け、画像形成装置のファームウェアを更新するだけよいため、非常に安価に、また容易に本実施形態を実現できる。
上述した実施形態における画像形成装置の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。