JP7348585B1 - 衝撃吸収部材 - Google Patents

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Abstract

衝撃吸収部材の軸方向に垂直な断面である第1断面と、第1断面における複数の辺の延長線から規定される断面である第2断面とを備え、第1断面は、第2断面と頂点を共有する共有頂点と、第2断面の頂点に対応するように位置する凹溝と、を備え、凹溝は、内角が180°超の頂点である第1変曲点と、内角が180°未満の頂点である第2変曲点と、を有し、第1断面の少なくとも一部の領域では、第1変曲点と第2変曲点とが、第1断面の周方向に沿って交互に配置され、第1変曲点と第2変曲点を除く第1断面の頂点の少なくとも一つの内角は、100°以上であり、第1断面は、内部に隔壁部を有しない、衝撃吸収部材。

Description

本開示は、衝撃吸収部材に関する。
軸方向の圧壊により衝撃を吸収する衝撃吸収部材が知られている。このような衝撃吸収部材は、軸方向に荷重が入力されると、蛇腹状に連続的な座屈が進行することで衝撃を吸収する。衝撃吸収部材は、例えば自動車車体において、クラッシュボックスとしてサイドメンバー(フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー)の先端に配置される。
例えば特許文献1には、基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域で、かつ該辺の端点を除く位置に、輪郭の内側へ凹んだ溝部を有する衝撃吸収部材が開示されている。また、特許文献2には、筒状部の周壁に、車両前後方向の圧縮に対して強度が部分的に低くなるように材質変性部が設けられているダイカストアルミ合金製クラッシュカンが開示されている。また、特許文献3には、第1閉断面部の四隅部に、横壁部の一部及び縦壁部の一部と協働して長手方向に延びる断面矩形状の第2閉断面部を形成するコーナ壁部を夫々設け、四隅部のコーナ壁部が互いに離隔している衝撃吸収部材が開示されている。また、特許文献4には、軸方向に垂直な断面の断面形状が、断面の中心に対して点対称で、かつ非線対称の多角形である衝突エネルギー吸収構造体が開示されている。このエネルギー吸収体構造においては、上記断面の外郭を四角形としたときのアスペクト比が1.5未満であり、かつ断面を構成する多角形の辺のうち隣接する辺の長さの比が2.3以下である。
また、特許文献5には、基本断面の少なくとも一の辺の一部であってかつ該辺の端点を除く領域が、筒体の内部へ向けて凹んだ溝部を形成するように、屈曲して形成された衝撃吸収部材が開示されている。また、特許文献6には、筒形状の本体部と、該本体部の軸方向の両端部にそれぞれ溶接固定される一対の取付プレートとを備えている衝撃吸収部材が開示されている。さらに、特許文献7には、軸方向の圧壊により衝撃を吸収する衝撃吸収部材であって、その軸方向に沿って延びた筒形状を有し、その軸方向に垂直な断面を第1断面とし、その第1断面における複数の辺の延長線から規定される断面を第2断面とした場合に、その第2断面は、多角形であり、第1断面は、第2断面と頂点を共有する共有頂点と、第2断面の頂点に対応するように位置する凹溝と、を備え、第1断面の頂点の少なくとも一つの内角は、100゜以上である、衝撃吸収部材が開示されている。
国際公開第2005/010398号 日本国特許出願公開第2012-166641号公報 日本国特許出願公開第2017-141860号公報 日本国特許出願公開第2011-218935号公報 日本国特許出願公開第2006-207724号公報 国際公開第2007/029362号 国際公開第2022/085575号
衝撃吸収部材には、衝撃吸収性能および軽量性の両立が求められている。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、衝撃吸収性能および軽量性のバランスが良好な衝撃吸収部材を提供することを主目的とする。
本開示の一態様は、軸方向の圧壊により衝撃を吸収する衝撃吸収部材であって、上記衝撃吸収部材は、上記軸方向に沿って延びた、複数の平面部を含む筒形状を有し、上記衝撃吸収部材の上記軸方向に垂直な断面を第1断面とし、上記第1断面における複数の辺の延長線から規定される断面を第2断面とした場合に、上記第2断面は、180°以上の内角が存在しない多角形であり、上記第1断面は、上記第2断面と頂点を共有する共有頂点と、上記第2断面の頂点に対応するように位置する凹溝と、を備え、上記凹溝は、内角が180°超の頂点である第1変曲点と、内角が180°未満の頂点である第2変曲点と、を有し、上記第1変曲点は、複数設けられ、上記第1断面の少なくとも一部の領域では、上記第1変曲点と上記第2変曲点とが、上記第1断面の周方向に沿って交互に配置され、上記第1変曲点と上記第2変曲点を除く上記第1断面の頂点の少なくとも一つの内角は、100°以上であり、上記第1断面は、内部に隔壁部を有しないことを特徴としている。
本開示によれば、第1断面が、第2断面との共有頂点および凹溝を備え、かつ、その凹溝が複数の第1変曲点と、第2変曲点を有することから、衝撃吸収性能および軽量性のバランス(重さ当たりの衝撃吸収性能)が良好な衝撃吸収部材が得られる。
上記開示において、上記第1断面における上記凹溝の少なくとも一部の領域では、上記第1変曲点と上記第2変曲点とが、上記第1断面の周方向に沿って交互に配置されてもよい。
上記開示において、上記第1断面の幅高さ比が0.70以下であってもよい。
上記開示において、上記第1断面は、上記共有頂点および上記凹溝を複数備え、少なくとも二つの上記凹溝は、上記第2断面における同一の対角線上の頂点の各々に対応する位置に配置されてもよい。上記の対角線は、一つの頂点から延びる複数の対角線のうちの最も長い対角線である。
上記開示において、上記第1断面は、上記共有頂点および上記凹溝を複数備え、上記共有頂点および上記凹溝は、上記第1断面の周方向に沿って、交互に配置されてもよい。
上記開示では、上記第1断面において、180°未満の内角が、全て75°以上、135°以下であり、上記第1変曲点の外角の角度が、全て75°以上、135°以下であってもよい。
本開示における衝撃吸収部材は、衝撃吸収性能および軽量性のバランスが良好であるという効果を奏する。
本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略斜視図である。 本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図である。 従来の衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。 本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図である。 本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図である。 本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図である。 本開示における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。 本開示における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。 参考例1および比較例1、2における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。 参考例1および比較例1、2におけるFEM解析の結果である。 参考例2におけるFEM解析の結果である。 参考例3におけるFEM解析の結果である。 座屈の変形モードを例示する概略正面図である。 参考例4、5および比較例3における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。 参考例4、5および比較例3におけるFEM解析の結果である。 実施例1、比較例4および参考例6における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。 実施例1~3における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。 実施例1~3における衝撃吸収部材の変形挙動を示す斜視図である。 実施例1および比較例5における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。
以下、本開示における衝撃吸収部材について詳細に説明する。以下に示す各図は、理解を容易にするため、各部の大きさ、形状を適宜誇張している。さらに、各図において、便宜上、ハッチングまたは符号を省略する場合がある。
また、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、「上に」または「下に」と表記する場合の態様には、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する態様と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する態様の両方が含まれる。
(実施形態の説明について)
本開示における衝撃吸収部材は、第1断面、第2断面および凹溝を備える筒形状の部材であって、凹溝は、“複数”の変曲点を有することを主な特徴とする。この特徴を説明するにあたって、本実施形態においては、説明の便宜上、まずは凹溝が“1つ”の変曲点を有する場合の衝撃吸収部材を例示して、第1断面や第2断面、凹溝等の定義、および従来技術に対する利点等について説明する。この説明で参照する図面は主に図1~図6である。その説明の後に、凹溝が“複数”の変曲点を有する場合の衝撃吸収部材を例示して、本開示における衝撃吸収部材の主な特徴について説明する。この説明で参照する図面は主に図7~図8である。
(第1断面、第2断面および凹溝の概略)
図1は、本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略斜視図である。また、図2は、本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図であり、具体的には、図1における衝撃吸収部材10の軸方向DAに対して垂直な切断面を示す断面図に相当する。
図1に示す衝撃吸収部材10は、軸方向DAの圧壊により衝撃を吸収する。衝撃吸収部材10は、軸方向DAに沿って延びた筒形状を有する。また、衝撃吸収部材10は、軸方向DAに沿って延在する複数の平面部を有している。
図2に示すように、本開示においては、衝撃吸収部材10の軸方向DAに垂直な断面を第1断面11とする。図2において、第1断面11は、太い実線で記載された断面である。上述したように、衝撃吸収部材10は複数の平面部を有しているため、第1断面11の形状は複数の頂点と各頂点を結ぶ辺で構成された多角形状である。
一方、本開示においては、第1断面11における複数の辺(頂点を結ぶ線分)の延長線から規定される断面を第2断面12とする。図2において、第2断面12は、破線で記載された断面である。
図2に示すように、第2断面12は多角形である。具体的に、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Hまでの8つの頂点を有する八角形である。第1断面11は、第2断面12と頂点を共有する共有頂点を備える。図2において、第1断面11および第2断面12は、頂点A、C、E、Gを共有し、これらが共有頂点に該当する。一方、第1断面11および第2断面12は、頂点B、D、F、Hを共有していない。第1断面11は、頂点B、D、F、Hを跨ぐように凹溝を備える。これらの凹溝は、それぞれ、頂点B´、D´、F´、H´を底部に有する。
本開示における衝撃吸収部材10は、第1断面11が共有頂点と、第2断面12の頂点に対応するように位置する凹溝とを備えることによって、衝撃吸収性能および軽量性のバランス(重さ当たりの衝撃吸収性能)が良好なものとなる。
従来の衝撃吸収部材との違いについて、図3を用いて説明する。図3(a)は、特許文献1の図3に相当する断面である。図3(a)に示す第1断面11は、第2断面12における辺HAの一部および辺DEの一部に、それぞれ凹溝を有する。例えば、辺HAは、凹溝により辺HMおよび辺PAに区画されるが、これらの辺は同一直線上にある。軸方向を考慮すると、辺HMを含む平面部と、辺PAを含む平面部とは、同一平面上にある。このような衝撃吸収部材は、後述する図9および図10で検討する比較例のように衝撃吸収性能および軽量性のバランスについて、改善の余地がある。
また、図3(b)は、後述する比較例2で検討した断面であるが、図3(a)と同様に、凹溝により区画された二つの辺が同一直線上にあるため、後述の図10で示すように衝撃吸収性能および軽量性のバランスについて、改善の余地がある。
これに対して、本開示における第1断面は、第2断面の頂点に対応するように位置する凹溝を備える。このような凹溝により区画された二つの辺は、図3(a)、(b)とは異なり、同一直線上にない。例えば図2において、辺ABと辺BCは、頂点Bに対応する頂点B´を底部に有する凹溝により、辺AIおよび辺JCに区画されるが、これらの辺は同一直線上にない。また、軸方向を考慮すると、辺AIを含む平面部と、辺JCを含む平面部とは、同一平面上にない。そのため、衝撃吸収性能および軽量性のバランスを良好にすることができる。
図3(c)は、特許文献2の図3に相当する断面であり、後述する比較例1で検討した断面でもある。図3(c)に示す第1断面11は、第2断面12における全ての頂点(頂点A~D)に、それぞれ凹溝を有する。すなわち、図3(c)に示す第1断面11は、第2断面12と頂点を共有する共有頂点を有しない。共有頂点は、軸方向において衝撃吸収部材に曲げ応力が発生した場合に、主要な抵抗部位となる。そのため、第1断面が共有頂点を有しないと、曲げ応力に対する抵抗が低い。これに対して、本開示における第1断面は共有頂点を有するため、曲げ応力に対する抵抗が高いという利点がある。
また、図3(d)は、ハニカム構造を有する断面であるが、図3(c)と同様に、第1断面11は、第2断面12と頂点を共有する共有頂点を有しない。そのため、曲げ応力に対する抵抗が低い。
また、図3(d)に示す第1断面11は、内部に隔壁部を有する。このような衝撃吸収部材においては、第1断面11の外縁を構成する平面部P1、P2と、隔壁部を構成する平面部P3とにより、強固な結合構造が構成される。しかしながら、第1断面11の内部に隔壁部を有する衝撃吸収部材においては、軸方向の圧壊時に、結合構造に高い応力が発生し、その応力によって結合構造が破壊される場合がある。したがって、蛇腹状の座屈の発生を促して衝撃吸収性能を向上させる観点では、上記の結合構造の破壊を回避するために複雑な対策が必要になる。これに対して、本開示における衝撃吸収部材によれば、第1断面11が内部に隔壁部を有しないことによって、上記の結合構造の破壊対策を施すことなく、衝撃吸収性能および軽量性のバランスを良好にできるという利点を有する。
また例えば、引張強さが780MPa以上の鋼板等の金属板を用いてハニカム構造の衝撃吸収部材を製造する際には、押出成形のような成形を行うことが困難であるため、複数の金属板どうしを互いに結合してハニカム構造を完成させる必要がある。しかしながら、第1断面11の内部に隔壁部を構築する際の金属板の組み立て作業に負荷がかかり、その作業を自動化することも容易ではない。したがって、衝撃吸収部材の量産を考慮すると、ハニカム構造の衝撃吸収部材に引張強さが780Pa以上の金属板を適用することは困難である。これに対して、本開示における衝撃吸収部材は、第1断面11が内部に隔壁部を有しない構造であるため、引張強さが780MPa以上の金属板を用いた場合でも衝撃吸収部材の量産を実現し易い。これに加え、衝撃吸収部材に高強度の金属板を適用できることによって、衝撃吸収性能および軽量性のバランスをより高いレベルで良好にできるという利点を有する。すなわち、本開示における衝撃吸収部材によれば、ハニカム構造の衝撃吸収部材では得られない利点を有する。
(第1断面、第2断面および凹溝の詳細な説明)
以下、本開示における衝撃吸収部材の第1断面11、第2断面12および凹溝Xについて、より詳細に説明する。
なお、第1断面11の隣り合う2辺がなす角度としては、第1断面11の内側において隣り合う2辺がなす角度と、第1断面11の外側において隣り合う2辺がなす角度という2つの角度がある。本開示における「頂点の内角」とは、第1断面11の内側において隣り合う2辺がなす角度であり、360°-(頂点の外角)に相当する角度である。一方、本開示における「頂点の外角」とは、第1断面11の外側において隣り合う2辺のなす角度であり、360°-(頂点の内角)に相当する角度である。
また、本開示における「頂点」とは、2辺の交点を指すが、2辺の端点の間に一定曲率で形成された円弧部が存在し、2辺の端点がその円弧部を介して接続されている場合には、当該円弧部も「頂点」に該当する。円弧部は、例えば金属板の曲げ加工を行う際に形成される曲げ部であり、一定曲率の円弧部の曲率半径は、例えば12mm以下である。
一方、例えば2辺の端点が円弧部を介して接続されている場合であっても、その円弧部が異なる曲率の円弧が複数連なって形成されている場合には、一定曲率の円弧部を介して2辺が接続されていないため、当該円弧部は「頂点」に該当しない。
本開示においては、衝撃吸収部材の軸方向に垂直な断面を第1断面と定義する。図1および図2に示すように、第1断面11は、衝撃吸収部材10の筒形状を、軸方向DAを法線方向とする平面で切断した場合の断面であり、通常は、筒形状の外縁により規定される閉断面である。
一方、本開示においては、第1断面における複数の辺の延長線から規定される断面を第2断面と定義する。具体的には、図2に示すように、第1断面11における複数の辺(辺AI、辺JC、辺CK、辺LE、辺EM、辺NG、辺GOおよび辺PA)の延長線(図2で示す破線)から規定される断面を第2断面12と定義する。複数の辺は、第2断面12を構成可能な最大数になるように設定する。例えば図2において、第2断面12を構成する複数の辺として、辺AI、辺CK、辺EMおよび辺GOを採用すると、それらの延長線から大きな四角形が規定され得るが、それは第2断面12には該当しない(辺JC等の他の辺を考慮していないため)。
また、第2断面の定義に使用される「第1断面における複数の辺の延長線」は、第1断面を構成する他の辺と交差しない延長線が採用される。図2に示した例では、第1断面11を構成する辺の延長線として、図2の破線で示された延長線の他に、例えば図2の二点鎖線で示された辺IB´の延長線exも存在する。この辺IB´の延長線exは、第1断面11を構成する他の辺KD´と交差するため、延長線exは第2断面の定義に使用される「第1断面における複数の辺の延長線」としては採用されない。同様に、辺JB´、辺KD´、辺LD´、辺MF´、辺NF´、辺OH´、辺PH´の延長線も第1断面11を構成する他の辺と交差するため、第2断面12の定義に使用される延長線としては採用されない。
換言すると、第2断面12は、180°以上の内角が存在しないように規定される。例えば、第2断面12を構成する複数の辺として、辺IB´および辺B´Jを採用すると、頂点B´を有する図形が規定され得るが、それは第2断面12には該当しない(頂点B´の内角が180°以上であるため)。第2断面12は、通常、第1断面11の外縁を囲むように定義される。
本開示においては、第2断面は多角形である。第2断面は、四角形等の2n角形(nは2以上の整数)であってもよく、三角形等の2n+1角形(nは1以上の整数)であってもよい。2n角形の第2断面は、図形としての対称性が高いため、曲げ応力に対する抵抗が、軸方向において均一な衝撃吸収部材が得られる。このような衝撃吸収部材は、例えば、任意の方向からの衝撃(曲げ応力)に対して強いことが要求される部材として有用である。2n+1角形の第2断面は、2n角形の第2断面に比べて図形としての対称性が低いため、曲げ応力に対する抵抗が、軸方向において不均一な衝撃吸収部材が得られる。このような衝撃吸収部材は、例えば、特定の方向からの衝撃(曲げ応力)に対して強いことが要求される部材として有用である。nは、特に限定されず、2以上であってもよく、3以上であってもよく、4以上であってもよい。一方、nは、例えば10以下である。
図4は、本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図であり、図2における第1断面11および第2断面12の一部を示している。図4において、第1断面11は、第2断面12と頂点を共有する共有頂点(頂点A、C)を備える。一方、第1断面11は、第2断面12の頂点(頂点B)に対応するように位置する凹溝Xを備える。第1断面11が凹溝Xを備えることは、以下の手順によって判断される。
まず、第2断面の頂点のうち、第1断面と共有していない頂点(非共有頂点)を特定する。図4では、頂点Bが非共有頂点に該当する。次に、非共有頂点と共有頂点とを結ぶ辺の中間に存在し、第1断面および第2断面が当該辺を共有するか否かの境界である境界点(第1断面の境界頂点)を特定する。図4では、辺BAの中間に存在する第1断面の頂点I、および、辺BCの中間に存在する第1断面の頂点Jが、それぞれ境界頂点に該当する。最後に、非共有頂点を跨ぐ二つの境界頂点を結ぶ直線を想定し、その直線よりも、第2断面の外縁の内側(非共有頂点とは反対側)に、第1断面が変曲点(変曲頂点)を有する場合に、第1断面は凹溝を備えると判断される。図4では、境界頂点である頂点Iおよび頂点Jを結ぶ直線IJを想定し、その直線IJよりも、第2断面12の外縁の内側(非共有頂点である頂点Bとは反対側)に、第1断面11が変曲点(頂点B´)を有するため、第1断面11は凹溝Xを備えると判断される。なお、本明細書においては、内角が180°超の変曲点(後述の第1変曲点13)を凹溝Xの底部頂点と称することがある。
第1断面は、上述した共有頂点を単独で備えていてもよく、複数備えていてもよい。同様に、第1断面は、上述した凹溝を単独で備えていてもよく、複数備えていてもよい。共有頂点および凹溝の数は、任意に組み合わせることができる。また、図2に示すように、共有頂点および凹溝は、第1断面11の周方向に沿って、交互に配置されていることが好ましい。座屈が安定的に進行するためである。第2断面12が2n角形(nは2以上の整数、図2では八角形)である場合、共有頂点および凹溝は、周方向に沿って、一方が連続することなく交互に配置される。また、図示しないが、第2断面12が2n+1角形(nは1以上の整数)である場合、共有頂点および凹溝は、周方向に沿って、一方が連続する連続部が生じ、その連続部を除いて交互に配置される。
図5は、本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図であり、図2における第1断面11および第2断面12の一部を示している。衝撃吸収部材10は、凹溝Xの変曲点(例えば頂点B´)を除く第1断面11の頂点の内角のうち、少なくとも一つの頂点の内角が100°以上である。後述の実施例で示すように、凹溝Xの変曲点を除く第1断面11の少なくとも一つの頂点の内角が100°以上であれば、頂点の内角が90°以下の場合と比較して曲げ応力に対する抵抗力が向上する。凹溝Xの変曲点を除く第1断面11の少なくとも一つの頂点の内角は、105°以上であってもよいし、110°以上であってもよい。
凹溝Xの変曲点を除く第1断面11の少なくとも一つの頂点の内角が100°以上であれば、他の頂点の内角の角度は、特に限定されない。例えば他の頂点の内角の角度は、例えば75°以上であり、90°以上であってもよく、105°以上であってもよい。
第1断面における内角は、軸方向を考慮すると、隣り合う平面部の稜線角に該当する。隣り合う平面部の稜線角が、衝撃吸収部材の形状や板厚等に応じて定まる適切な角度以上であることによって、軸方向の圧壊時に、隣り合う平面部の面外変形に位相ずれが生じやすくなる。これにより、位相を異にする平面部同士の面外変形が相互干渉し、これに伴い、各平面部の抵抗が高まり、衝撃吸収性能および軽量性のバランスが良好なものとなりやすい。
第1断面における180°未満の内角(例えば図5に示す内角θAと内角θI)の角度は、例えば135°以下であり、130°以下であることが好ましい。第1断面における内角は、衝撃吸収部材10の隣り合う平面部の稜線角に該当し、内角の角度(隣り合う平面部の稜線角)が上記の範囲であれば、座屈の安定性を高めることができる。また、第1断面における全ての180°未満の内角が上記範囲内であることが好ましい。
凹溝における底部頂点(後述の第1変曲点13)の外角の角度(例えば図5に示す外角θ)は、特に限定されない。底部頂点の外角の角度は、例えば75°以上であり、90°以上であってもよく、105°以上であってもよい。底部頂点の角度も、第1断面における内角と同様に、隣り合う平面部の稜線角に該当する。このため、隣り合う平面部の稜線角が、衝撃吸収部材の形状や板厚等に応じて定まる適切な角度以上であることによって、位相を異にする面外変形が相互干渉し、平面部の抵抗が高まりやすくなる。
一方、底部頂点(後述の第1変曲点13)の外角の角度は、例えば135°以下であり、130°以下であってもよい。これにより、座屈の安定性を高めることができる。また、凹溝における全ての底部頂点の角度が上記範囲内であることが好ましい。
本開示における衝撃吸収部材の第1断面は、内部に隔壁部を有しない。上述した図3(d)を用いて説明したように、隔壁部を設けた場合には強固な結合構造が構成されるが、軸方向の圧壊時に、結合構造に高い応力が発生する。このため、その応力による結合構造の破壊を回避するために複雑な対策が必要になる。
図6は、本開示における衝撃吸収部材の参考例を示す概略断面図である。図6(a)において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Fまでの6つの頂点を有する六角形である。第1断面11および第2断面12は、頂点C、Fを共有し、これらが共有頂点に該当する。一方、第1断面11および第2断面12は、頂点A、B、D、Eを共有していない。第1断面11は、頂点A、B、D、Eの各々を跨ぐように4つの凹溝Xを備える。これらの凹溝Xは、それぞれ、頂点A´、B´、D´、E´を底部に有する。図6(a)に示すように、共有頂点の数は、凹溝Xの数より少なくてもよい。
なお、少なくとも二つの凹溝Xは、第2断面12における同一の対角線上にある頂点の各々に対応する位置に配置されていることが好ましい。この場合における同一の対角線とは、一つの頂点から延びる複数の対角線のうちの最も長い対角線(以下、「最長対角線」)である。このような衝撃吸収部材によれば、共有頂点と凹溝の配置の対称性が高まり、座屈の安定性が向上する。図6(a)に示す例では、最長対角線として、頂点Aから延びる対角線Y1、頂点Bから延びる対角線Y2、および頂点Cから延びる対角線Y3の3本の最長対角線がある。そして、凹溝Xは、対角線Y1の端点となる頂点A、Dの各々の頂点と、対角線Y2の端点となる頂点B、Eの各々の頂点に対応する位置に配置されている。
図6(b)において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Jまでの10の頂点を有する十角形である。第1断面11および第2断面12は、頂点B、C、E、G、H、Jを共有し、これらが共有頂点に該当する。一方、第1断面11および第2断面12は、頂点A、D、F、Iを共有していない。第1断面11は、頂点A、D、F、Iの各々を跨ぐように4つの凹溝Xを備える。これらの凹溝Xは、それぞれ、頂点A´、D´、F´、I´を底部に有する。図6(b)に示すように、共有頂点の数は、凹溝Xの数より多くてもよい。また、図6(b)に示す例では、最長対角線として、5本の対角線Y1~Y5があり、凹溝Xは、対角線Y1の端点となる頂点A、Fの各々の頂点と、対角線Y4の端点となる頂点D、Iの各々の頂点に対応する位置に配置されている。
図6(c)において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Fまでの6つの頂点を有する六角形である。第1断面11および第2断面12は、頂点A、C、Eを共有し、これらが共有頂点に該当する。一方、第1断面11および第2断面12は、頂点B、D、Fを共有していない。第1断面11は、頂点B、D、Fの各々を跨ぐように3つの凹溝Xを備える。これらの凹溝Xは、それぞれ、頂点B´、D´、F´を底部に有する。図6(c)に示すように、共有頂点の数は、凹溝Xの数と同じであってもよい。
また、図6(d)において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Eまでの5つの頂点を有する五角形である。第1断面11および第2断面12は、頂点A、Dを共有し、これらが共有頂点に該当する。一方、第1断面11および第2断面12は、頂点B、C、Eを共有していない。第1断面11は、頂点B、C、Eの各々を跨ぐように3つの凹溝Xを備える。これらの凹溝Xは、それぞれ、頂点B´、D´、F´を底部に有する。
以上、凹溝Xに1つの変曲点を有する衝撃吸収部材10を例示して第1断面11、第2断面12および凹溝Xの定義等について説明した。次に、凹溝Xに複数の変曲点を有する本開示における衝撃吸収部材1について説明する。なお、以下で説明する衝撃吸収部材1は、凹溝Xの変曲点が複数であることを除き、上述した衝撃吸収部材10と共通の特徴を有している。このため、上述した従来技術に対する衝撃吸収部材10の利点や好ましい形態を採用した場合の効果等は、以下で説明する衝撃吸収部材1においても同様に発現する。そして、本開示における衝撃吸収部材1は、凹溝Xが複数の変曲点を有することによって、参考例として上述した衝撃吸収部材10に対し、衝撃吸収性能および軽量性のバランスがさらに良好なものとなる。
(複数の変曲点を有する凹溝)
図7は、本開示における衝撃吸収部材を例示する概略断面図である。図7に示す衝撃吸収部材1において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Fまでの6つの頂点を有する六角形である。第1断面11および第2断面12は、頂点A、C、D、Fを共有し、これらが共有頂点に該当する。一方、第1断面11および第2断面12は、頂点B、Eを共有していない。第1断面11は、これらの非共有頂点B、Eに対応する位置にそれぞれ凹溝Xを備える。
上記の凹溝Xは、第1変曲点13と、第2変曲点14を有する。本開示における「第1変曲点」とは、凹溝Xの底部にある頂点のうちの内角が180°超の頂点を指す。一方、本開示における「第2変曲点」とは、凹溝Xの底部にある頂点のうちの内角が180°未満の頂点を指す。
図7に示した例においては、頂点Bに対応する凹溝Xの変曲点として、頂点B1´、B2´、B3´が存在し、これらの頂点のうち、内角が180°を超えた頂点B1´、B3´が第1変曲点13に該当する。一方、内角が180°未満の頂点は頂点B2´であり、この頂点B2´が第2変曲点14に該当する。頂点Bに対応する凹溝Xにおいては、第1変曲点13と第2変曲点14が第1断面11の周方向に沿って交互に配置されている。
また、図7に示した例においては、頂点Eに対応する凹溝Xの変曲点として、頂点E1´、E2´、E3´が存在し、これらの頂点のうち、内角が180°を超えた頂点E1´、E3´が第1変曲点13に該当する。一方、内角が180°未満の頂点は頂点E2´であり、この頂点E2´が第2変曲点14に該当する。頂点Eに対応する凹溝Xにおいても、第1変曲点13と第2変曲点14が第1断面11の周方向に沿って交互に配置されている。
本開示における衝撃吸収部材1によれば、凹溝Xが第1変曲点13と第2変曲点14を有し、さらに第1変曲点13が複数設けられている。このため、凹溝Xの変曲点が1つのみである場合と比較して凹溝Xを構成する辺の長さを短くすることができ、各辺における面剛性を高めることができる。これにより、衝撃吸収部材1に軸方向の荷重が入力された際に、衝撃吸収部材1の軸方向において不安定な座屈が生じ難くなり、軸方向荷重が入力された側の端部から、蛇腹状の連続的な座屈が生じ易くなる。その結果、衝撃吸収性能を向上させることができる。
また、本開示における衝撃吸収部材1は、後述の実施例で示すように、凹溝Xが1つの変曲点(第1変曲点)のみを有する衝撃吸収部材と同等以下の重量であっても、その衝撃吸収部材と同等以上の衝撃吸収性能を奏することができる。すなわち、本開示における衝撃吸収部材1は、凹溝Xが1つの変曲点(第1変曲点)のみを有する衝撃吸収部材と比較し、衝撃吸収性能および軽量性のバランスがさらに優れたものである。
加えて、第1変曲点13と第2変曲点14が、第1断面11の周方向に沿って交互に配置されていることによって、凹溝Xの形状の対称性が高まり、座屈の安定性が向上する。これにより、衝撃吸収部材1に規則的な軸圧壊変形が生じ易くなり、衝撃吸収性能の向上に寄与する。
また、図7に示した衝撃吸収部材1においては、頂点Aから延びる最長対角線として対角線Y1と、頂点Bから延びる最長対角線として対角線Y2と、頂点Cから延びる最長対角線として対角線Y3という3本の最長対角線が存在する。そして、凹溝Xは、対角線Y2の端点となる頂点B、Eの各々の頂点に配置されている。図6(a)および図6(b)を参照して既述したように、少なくとも二つの凹溝Xが同一の最長対角線上の頂点の各々に対応する位置に配置されている場合には、共有頂点と凹溝の配置の対称性が高まり、座屈の安定性が向上する。すなわち、図7に示した衝撃吸収部材1は、規則的な軸圧壊変形が生じ易く、衝撃吸収性能が向上し易いものである。
なお、複数の変曲点13、14を有する凹溝Xを備えた衝撃吸収部材1の形状は、図7に示した例に限定されない。図8は、本開示における衝撃吸収部材を例示する概略断面図であり、上述した衝撃吸収性能および軽量性のバランスに優れた衝撃吸収部材の一例である。
図8(a)に示す例において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Fまでの6つの頂点を有する六角形である。第1断面11および第2断面12の共有頂点は、頂点A、C、D、Fであり、非共有頂点である頂点B、Eに対応する位置には、それぞれ凹溝Xが設けられている。
そして、頂点Bに対応する凹溝Xにおいては、変曲点として頂点B1´、B2´、B3´、B4´が存在し、これらの頂点のうち、第1変曲点13は、頂点B1´、B3´、B4´であり、第2変曲点14は、頂点B2´である。また、頂点Eに対応する凹溝Xにおいては、第1変曲点13として頂点E1´、E3´、E4´が設けられ、第2変曲点14として頂点E2´が設けられている。
この衝撃吸収部材1においては、第1断面11の周方向に沿って、第1変曲点13(例えば頂点B1´)、第2変曲点14(例えば頂点B2´)、第1変曲点13(例えば頂点B3´)、第1変曲点13(例えば頂点B4´)が順に配置されている。すなわち、凹溝Xの底部においては、第1変曲点13と第2変曲点14とが交互に配置された領域(例えば頂点B1´から頂点B3´までの領域)と、複数の第1変曲点13が隣り合う領域(例えば頂点B3´から頂点B4´までの領域)が存在する。
このように、第1変曲点13と第2変曲点14は、第1断面11の周方向に沿って交互に配置されない領域があってもよいが、第1断面11の少なくとも一部の領域では、第1変曲点13と第2変曲点14が交互に配置される必要がある。これにより、凹溝Xの形状の対称性が高まり、座屈の安定性を向上させることができる。
図8(b)に示す例において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Fまでの6つの頂点を有する六角形である。共有頂点は、頂点C、Fであり、非共有頂点である頂点A、B、D、Eに対応する位置には、それぞれ凹溝Xが設けられている。
頂点A、Dに対応する各凹溝Xは、それぞれ1つの第1変曲点13(頂点A´、D´)を有する。一方、頂点Bに対応する凹溝Xは、2つの第1変曲点13(頂点B1´、B3´)と、それらの第1変曲点13の間に設けられた第2変曲点14(頂点B2´)を有する。同様に、頂点Eに対応する凹溝Xは、2つの第1変曲点13(頂点E1´、E3´)と、それらの第1変曲点13の間に設けられた第2変曲点14(頂点E2´)を有する。
この図8(b)に示した衝撃吸収部材1は、第1断面11の周方向に沿って、第1変曲点13を1つのみ有する凹溝Xと、複数の第1変曲点13および第2変曲点14とを有する凹溝Xが、第1断面11の周方向に沿って交互に配置された例である。
図8(c)に示す例において、第2断面12は、周方向に沿って、頂点Aから頂点Dまでの4つの頂点を有する四角形である。共有頂点は、頂点B、Dであり、非共有頂点である頂点A、Cに対応する位置には、それぞれ凹溝Xが設けられている。
頂点Aに対応する凹溝Xは、それぞれ2つの第1変曲点13(頂点A1´、A3´)と、それらの第1変曲点13の間に設けられた第2変曲点14(頂点A2´)を有する。同様に、頂点Cに対応する凹溝Xは、2つの第1変曲点13(頂点D1´、D3´)と、それらの第1変曲点13の間に設けられた第2変曲点14(頂点D2´)を有する。各凹溝Xにおいては、第1変曲点13と第2変曲点14とが第1断面11の周方向に沿って交互に配置されている。
以上、本開示における衝撃吸収部材1について説明した。なお、凹溝Xが複数の変曲点を有する場合の変曲点の数は、衝撃吸収部材1の断面サイズに応じて適宜設定される。
この断面サイズに関し、複数の変曲点を有する凹溝Xは、図7~図9に例示した第1断面11の高さd1と幅d2の比(以下、「幅高さ比」)が0.70以下の衝撃吸収部材1に適用されることが好ましい。以下、第1断面11の幅高さ比の定義について説明する。
本開示における「第1断面の高さd1」とは、第2断面12における互いに平行な2辺のうち、最も間隔が長い2辺間の間隔のことを指す。図7に示した例では、第2断面12における互いに平行な2辺の間隔のうち、最も間隔が長い2辺は、辺FAと辺CDであるため、辺FAと辺CDの間隔が、第1断面11の高さd1である。
また、本開示における「第1断面の幅d2」とは、第1断面11の高さd1の方向(高さ方向)に垂直な方向における第1断面11の最大長さのことを指す。図7に示した例において、第1断面11の高さd1の方向に垂直な方向は、図7の紙面横方向であり、この方向における最大長さは、凹溝Xの頂点B2´、E2´間の長さである。このため、頂点B2´、E2´間の長さが、第1断面11の幅d2である。
そして、第1断面11の幅d2/第1断面11の高さd1で算出される値が、「第1断面11の幅高さ比」である。この幅高さ比(d2/d1)が0.70以下である場合には、後述の実施例で示すように、衝撃吸収部材1に安定した座屈が生じ易くなり、変形挙動の安定性を向上させることができる。幅高さ比は、好ましくは、0.65以下であり、より好ましくは、0.60以下であり、さらに好ましくは、0.55以下である。
なお、図8に示した衝撃吸収部材1における第1断面の高さd1および幅d2は、以下の通りである。
図8(a)における第1断面11の高さd1は、辺FAと辺DCの間隔であり、第1断面11の幅d2は、頂点K、J間の長さである。なお、図8(a)に示した例では、頂点K、J間の長さと、頂点L、I間の長さが等しいため、第1断面11の幅d2を頂点L、I間の長さとしてもよい。
図8(b)における第1断面11の高さd1は、辺FAと辺DCの間隔であり、第1断面11の幅d2は、頂点Kの位置における第1断面11の高さd1の方向に垂直な方向の長さ(図中の二点鎖線の長さ)である。なお、図8(b)に示した例においても、第1断面11の幅d2と同一の幅を有する箇所が複数存在するが、それらを代表して頂点Kの位置における幅を第1断面11の幅d2としている。
図8(c)における第1断面11の高さd1は、辺DAと辺CBの間隔であり、第1断面11の幅d2は、頂点C2´の位置における第1断面11の高さd1の方向に垂直な方向の長さ(図中の二点鎖線の長さ)である。なお、図8(c)に示した例では、第1断面11の幅d2と同一の幅を有する箇所が他にも存在するが、それらを代表して頂点C2´の位置における幅を第1断面11の幅d2としている。
以上、本開示における衝撃吸収部材1の幅高さ比(d2/d1)について説明した。
なお、第2断面12の形状によっては、互いに平行な2辺の間隔と、それら2辺とは異なる他の2辺の間隔とが互いに等しくなり、第1断面11の高さd1として定義可能な2辺の組み合わせが複数存在する場合がある。この場合、第1断面11の高さd1として採用する2辺の組み合わせによって幅方向の定義が異なるため、第1断面11の幅d2の長さも複数存在する。すなわち、1つの衝撃吸収部材に対して複数の幅高さ比を定義できる場合がある。このような場合には、複数の幅高さ比のうちの最小の幅高さ比を本開示における幅高さ比として採用する。
以上で説明した本開示における衝撃吸収部材の材料は、例えば、鋼、アルミニウム合金等の金属が挙げられる。また、上記金属の引張強さは、例えば780MPa以上であることが好ましい。より好ましくは、980MPa以上であり、さらに好ましくは1180MPa以上である。なお、本開示における「金属」には、母材に多数の気孔を含む発泡金属は含まない。
また、衝撃吸収部材の板厚は、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上、5mm以下であり、0.5mm以上、1.6mm以下であってもよい。780MPa以上の材料は、衝撃吸収性能には有利であるものの、変形の安定性低下を抑制する観点では改善の余地がある。変形の安定性は曲げ変形に起因して変化するという知見が得られており、同曲率半径の曲げ変形で発生するひずみ量は、板厚が薄いほど有利である。この観点においては、衝撃吸収部材の板厚は1.6mm以下であることが好ましい。
また、衝撃吸収部材は、軸方向の圧壊により衝撃を吸収する任意の用途に用いることができるが、典型的な用途としては、自動車用クラッシュボックスが挙げられる。
本開示における衝撃吸収部材の製造方法は、特に限定されないが、例えば、筒形状を有する素材に、押出、ハイドロフォーミング(液封成形)およびロールフォーミング等の加工のいずれか一つあるいは複数行う方法が挙げられる。衝撃吸収部材の製造方法の他の例としては、鋼板に、プレス曲げ、絞り、巻きおよびロールフォーミング等の加工をいずれか一つあるいは複数行うことにより、第1断面を有する筒形状を形成する方法が挙げられる。
筒形状を閉断面にするために、適宜接合を行ってもよい。接合方法としては、例えば、スポット溶接、カシメおよびスポット摩擦攪拌接合等の断続接合、アーク(プラズマ)溶接、レーザー溶接および摩擦攪拌接合等の連続接合が挙げられる。
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
以下の説明では、本開示における衝撃吸収部材の実施例について説明する前に、各凹溝に1つの底部頂点(第1変曲点)を有する参考例と、比較例についての評価を行う。
[参考例1]
FEM解析により座屈変形挙動を評価した。参考例1では、図9(a)に示す第1断面を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図9(a)に示す第1断面は、軸方向に延びる平面部Pの幅Wp(第1断面を構成する辺)として、Wp1(11mm)およびWp2(9mm)を設定した。なお、図示しないが、図9(a)に示す衝撃吸収部材における第2断面は、図2と同様に八角形である。また、第1断面における180°未満の内角(稜線角)を全てθ1=120°とし、さらに、4つの凹溝の底部頂点の角度(稜線角)を全てθ2=90°とした。また、稜線曲率半径を5mmとし、衝撃吸収部材の軸方向の長さ(部材長さ)を200mmとした。FEM解析には、板厚1.0mmの1180MPa級鋼板の材料特性を用い、ひずみ速度依存性はCowper-Symonds則により考慮し、座屈変形時の変形速度(衝突速度)は5m/sとした。
[比較例1]
比較例1では、図9(b)に示す第1断面を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図9(b)に示す第1断面は、軸方向に延びる平面部Pの幅Wpとして、Wp1(10mm)、Wp2(12mm)およびWp3(8mm)を設定した。また、第1断面における180°未満の内角(稜線角)を全てθ1=90°とし、さらに、4つの凹溝の底部頂点の角度(稜線角)も全てθ1=90°とした。その他の条件は、参考例1と同様にした。
[比較例2]
比較例2では、図9(c)に示す第1断面を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図9(c)に示す第1断面は、軸方向に延びる平面部Pの幅Wpとして、Wp1(12mm)、Wp2(8mm)、Wp3(9mm)およびWp4(12mm)を設定した。また、第1断面における180°未満の内角(稜線角)を全てθ1=90°とし、さらに、4つの凹溝の底部頂点の角度(稜線角)も全てθ1=90°とした。その他の条件は、参考例1と同様にした。参考例1および比較例1、2の設定条件を表1に示す。
Figure 0007348585000001
[評価]
参考例1および比較例1、2におけるFEM解析の結果を図10に示す。図10において、グラフの横軸は載荷点変位δ[mm]を示し、グラフの縦軸は、荷重Fを部材の断面積Ltで除した、単位断面積当たりの荷重F/Lt[kN/mm2]を示す。図10に示すように、参考例1は、比較例1、2に比べて、圧壊ストローク全体を通じて、荷重レベルが高くなることが確認された。具体的に、変位0mm~125mmにおける荷重の平均であるFave/Lt[kN/mm2]は、参考例1が0.53kN/mm2であり、比較例1が0.44kN/mm2であり、比較例2が0.46kN/mm2であった。すなわち、参考例1は、比較例1、2に比べて、衝撃吸収性能および軽量性のバランス(重さ当たりの衝撃吸収性能)が良好であった。
[参考例2、3]
FEM解析により座屈変形挙動を評価した。参考例2、3では、参考例1と同様に、図9(a)に示す第1断面を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。参考例2、3の設定条件を表2に示す。
Figure 0007348585000002
[評価]
参考例2におけるFEM解析の結果を図11に、参考例3におけるFEM解析の結果を図12に示す。図11、図12に示すように、稜線角θ1が130°になるまでは、稜線角θ1が大きくなる程、Fave/Ltの値が良好であった。一方、図12に示すように、稜線角θ1が135°である場合、Fave/Ltの値は若干小さくなった。ここで、図11および図12に示す四角形のプロットは、図13(a)に示すように、座屈が安定的に進行した変形モード(Type I)である。一方、図12に示す三角形のプロットは、図13(b)に示すように、座屈が不安定に進行した変形モード(Unstable)である。図12に示すように、稜線角θ1が130°の場合、変形モードがUnstableになるものの、Fave/Ltの値は最も高くなるため、稜線角θ1は特に130°以下であることが好ましいことが示唆された。
[参考例4]
参考例4では、図14(a)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図14(a)に示す第1断面は、平面部Pの幅Wpとして、Wp1(16mm)およびWp2(14mm)を設定した。第2断面は、四角形である。また、第1断面の共有頂点B、Dの内角(稜線角)を全てθ1=90°、境界頂点I、J、K、Lの内角(稜線角)を全てθ2=100°、底部頂点A′、C´の外角(稜線角)を全てθ3=110°とした。その他の条件は、参考例1と同様にした。
[参考例5]
参考例5では、図14(b)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図14(b)に示す第1断面は、平面部Pの幅Wpとして、Wp1(16mm)およびWp2(14mm)を設定した。第2断面は、四角形である。また、第1断面の共有頂点B、Dの内角(稜線角)を全てθ1=110°、境界頂点I、J、K、Lの内角(稜線角)を全てθ2=90°、底部頂点A′、C´の外角(稜線角)を全てθ3=110°とした。その他の条件は、参考例1と同様にした。
[比較例3]
比較例3では、図14(c)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図14(c)に示す第1断面は、平面部Pの幅Wpとして、Wp1(16mm)およびWp2(14mm)を設定した。第2断面は、四角形である。また、第1断面の共有頂点B、Dの内角(稜線角)、境界頂点I、J、K、Lの内角(稜線角)、および底部頂点A′、C′の外角(稜線角)を全て110°とした。その他の条件は、参考例1と同様にした。参考例4、5および比較例3の設定条件を表1に示す。
Figure 0007348585000003
[評価]
参考例4、5および比較例3におけるFEM解析の結果を図15に示す。図15に示すように、参考例4、5は、比較例3に比べて、圧壊ストローク全体を通じて、荷重レベルが高くなることが確認された。具体的には、変位0mm~125mmにおける荷重の平均であるFave/Lt[kN/mm2]に着目すると、参考例4、5のFave/Ltが比較例3と比べて約10%向上した。すなわち、参考例4、5は、比較例3に比べて、衝撃吸収性能および軽量性のバランス(重さ当たりの衝撃吸収性能)が良好であった。
以上、各凹溝に1つの底部頂点(第1変曲点)を有する衝撃吸収部材の参考例と、比較例とを対比し、参考例の優位性について説明した。続いて、凹溝に複数の第1変曲点と、第2変曲点を有する衝撃吸収部材の実施例について評価を行う。なお、実施例と上述の参考例は、凹溝の変曲点の数は異なるが、凹溝を有するという点では実施例と参考例で共通しているため、上述した比較例に対する参考例の優位性は、実施例においても発現する。
[実施例1]
実施例1では、図16(a)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図16(a)に示す衝撃吸収部材は、共有頂点として頂点A、C、D、Fを有し、非共有頂点B、Eに対応する位置にそれぞれ凹溝を有する。各凹溝には、2つの第1変曲点と、それら第1変曲点の間に配置された第2変曲点とが設けられている。
[比較例4]
比較例4では、図16(b)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図16(b)に示す衝撃吸収部材は、共有頂点として頂点A、B、C、D、E、F、G、Hを有しているが、非共有頂点は存在しない。辺BCおよび辺FGには、凹溝が設けられているが、非共有頂点に対応する位置に設けられた凹溝ではないため、比較例4は、本開示で定義される凹溝を有しない衝撃吸収部材である。
[参考例6]
参考例6では、図16(c)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図16(c)に示す衝撃吸収部材は、共有頂点として頂点A、C、D、Fを有し、非共有頂点B、Eに対応する位置にそれぞれ凹溝を有する。各凹溝には、1つの底部頂点(第1変曲点)が設けられている。
FEM解析のその他の設定条件および解析結果を表4に示す。なお、表4中の「Fave/Lt比」とは、参考例6の衝撃吸収部材のFave/Ltに対する各例の衝撃吸収部材のFave/Ltの比である。すなわち、Fave/Lt比が1を超えることは、参考例6と比較して衝撃吸収性能と軽量性のバランスに優れていることを意味する。
Figure 0007348585000004
[評価]
表4に示すように、実施例1の衝撃吸収部材は、比較例4および参考例6の衝撃吸収部材に対してFave/Lt比が向上している。すなわち、複数の第1変曲点と、それらの第1変曲点の間に第2変曲点とを有する凹溝を備えた衝撃吸収部材は、比較例4および参考例6に対して衝撃吸収性能と軽量性のバランスに優れている。
次に、以下の実施例2と実施例3の衝撃吸収部材のモデルを用いて、上記の実施例1と同様のFEM解析を行い、座屈変形挙動を評価した。
[実施例2]
実施例2では、図17(b)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図17(b)に示す衝撃吸収部材は、図17(a)に示す実施例1の衝撃吸収部材と比較し、第1断面の高さが低いモデルである。
[実施例3]
実施例3では、図17(c)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。図17(c)に示す衝撃吸収部材は、図17(b)に示す実施例2の衝撃吸収部材と比較し、第1断面の高さがさらに低いモデルである。
FEM解析のその他の設定条件および解析結果を表5に示す。なお、表5中の「Fave/Lt比」とは、上述した参考例6の衝撃吸収部材のFave/Ltに対する各例の衝撃吸収部材のFave/Ltの比である。すなわち、Fave/Lt比が1を超えることは、参考例6と比較して衝撃吸収性能と軽量性のバランスに優れていることを意味する。
Figure 0007348585000005
[評価]
表5に示すように、実施例1~3のFave/Lt比は、いずれも1を超えている。すなわち、複数の第1変曲点と、それらの第1変曲点の間に第2変曲点とを有する凹溝を備えた衝撃吸収部材は、参考例6に対して衝撃吸収性能と軽量性のバランスに優れていることが確認される。
図18は、実施例1~3における衝撃吸収部材の変形挙動を示す斜視図である。図18に示すように、実施例1、2では、座屈が安定的に進行する変形モードであったが、実施例3では、座屈が不安定に進行する変形モード(Unstable)であった。前述の表5によれば、実施例1、2の幅高さ比は、実施例3の幅高さ比よりも小さいことから、変形挙動の安定性向上の観点からは、第1断面の幅高さ比は、0.70以下であることが好ましい。
次に、以下の比較例5の衝撃吸収部材のモデルを用いて、上記の実施例1と同様のFEM解析を行い、座屈変形挙動を評価した。
[比較例5]
比較例5では、図19(b)に示す第1断面(実線部)を有する衝撃吸収部材で座屈変形挙動を評価した。比較例5の衝撃吸収部材は、共有頂点として頂点B、D、F、Hを有し、非共有頂点A、C、E、Gに対応する位置にそれぞれ凹溝を有する。
各凹溝には、第1変曲点と第2変曲点が2つずつ設けられ、各凹溝においては、第1断面の周方向に沿って第2変曲点、第1変曲点、他の第1変曲点、他の第2変曲点がこの順で配置されている。例えば非共有頂点Cに対応する位置の凹溝においては、第2変曲点としての頂点C1´、第1変曲点としての頂点C2´、他の第1変曲点としての頂点C3´、他の第2変曲点としてのC4´がこの順で配置されている。また、非共有頂点Gに対応する位置の凹溝においては、第2変曲点としての頂点G1´、第1変曲点としての頂点G2´、他の第1変曲点としての頂点G3´、他の第2変曲点としてのG4´がこの順で配置されている。なお、図19(b)においては、非共有頂点C、Gに対応する凹溝の変曲点にのみ符号(C1´~C4´及びG1´~G4´)を付しているが、非共有頂点A、Eに対応する凹溝においても、非共有頂点C、Gに対応する凹溝と同様の変曲点が存在する。
FEM解析のその他の設定条件および解析結果を表6に示す。なお、表6中の「重量比」とは、比較例5の衝撃吸収部材の重量に対する各例の衝撃吸収部材の重量の比である。すなわち、重量比が1未満であることは、比較例5の衝撃吸収部材よりも軽量であることを意味する。また、表6中の「エネルギー吸収比」とは、比較例5の衝撃吸収部材のエネルギー吸収量に対する各例の衝撃吸収部材のエネルギー吸収量の比である。すなわち、エネルギー吸収量比が1を超えることは、比較例5の衝撃吸収部材よりもエネルギー吸収量が大きく、衝撃吸収性能に優れていることを意味する。
Figure 0007348585000006
[評価]
表6に示すように、実施例1の重量比は1未満である。このため、実施例1の衝撃吸収部材は比較例5の衝撃吸収部材よりも軽量である。また、実施例1のエネルギー吸収量比は1を超えている。このため、実施例1の衝撃吸収部材は、比較例5の衝撃吸収部材よりも衝撃吸収性能に優れている。すなわち、実施例1の衝撃吸収部材は、比較例5の衝撃吸収部材に対して軽量であるにも関わらず衝撃吸収性能が向上しており、衝撃吸収性能と軽量性のバランスに優れている。
特に、比較例5の衝撃吸収部材は、実施例1の衝撃吸収部材の凹溝の数よりも多い4つの凹溝を有しているため、衝撃吸収性能に有利な形状であると考えられるところ、解析結果としては実施例1の衝撃吸収部材の方が衝撃吸収性能に優れていた。このような結果となった理由は、比較例5においては各凹溝の2つの第1変曲点(例えばC2´、C3´)が隣り合って配置されている一方で、実施例1では第1変曲点と第2変曲点が交互に配置されていることによって凹溝を構成する各平面部の面剛性が向上したためと推察される。
以上、本開示にかかる衝撃吸収部材について説明した。本開示においては、衝撃吸収部材の構成を複数例示したが、各衝撃吸収部材の構成は、衝撃吸収部材としての機能を阻害しない範囲で任意に組み合わせることができる。
例えば、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)軸方向の圧壊により衝撃を吸収する衝撃吸収部材であって、
前記衝撃吸収部材は、前記軸方向に沿って延びた、複数の平面部を含む筒形状を有し、
前記衝撃吸収部材の前記軸方向に垂直な断面を第1断面とし、
前記第1断面における複数の辺の延長線から規定される断面を第2断面とした場合に、
前記第2断面は、180°以上の内角が存在しない多角形であり、
前記第1断面は、前記第2断面と頂点を共有する共有頂点と、前記第2断面の頂点に対応するように位置する凹溝と、を備え、
前記凹溝は、
内角が180°超の頂点である第1変曲点と、
内角が180°未満の頂点である第2変曲点と、を有し、
前記第1変曲点は、複数設けられ、
前記第1断面の少なくとも一部の領域では、前記第1変曲点と前記第2変曲点とが、前記第1断面の周方向に沿って交互に配置され、
前記第1変曲点と前記第2変曲点を除く前記第1断面の頂点の少なくとも一つの内角は、100°以上であり、
前記第1断面は、内部に隔壁部を有しない、衝撃吸収部材。
(2)前記第1断面の幅高さ比が0.70以下である、(1)に記載の衝撃吸収部材。
(3)前記第1断面は、前記共有頂点および前記凹溝を複数備え、
少なくとも二つの前記凹溝は、前記第2断面における同一の対角線上の頂点の各々に対応する位置に配置され、
前記対角線は、一つの頂点から延びる複数の対角線のうちの最も長い対角線である、(1)または(2)に記載の衝撃吸収部材。
(4)前記第1断面は、前記共有頂点および前記凹溝を複数備え、
前記共有頂点および前記凹溝は、前記第1断面の周方向に沿って、交互に配置されている、(1)~(3)のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
(5)前記第1断面において、
180°未満の内角が、全て75°以上、135°以下であり、
前記第1変曲点の外角の角度が、全て75°以上、135°以下である、
(1)~(4)のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
10 衝撃吸収部材
11 第1断面
12 第2断面
13 第1変曲点
14 第2変曲点
X 凹溝

Claims (5)

  1. 軸方向の圧壊により衝撃を吸収する衝撃吸収部材であって、
    前記衝撃吸収部材は、前記軸方向に沿って延びた、複数の平面部を含む筒形状を有し、
    前記衝撃吸収部材の前記軸方向に垂直な断面を第1断面とし、
    前記第1断面における複数の辺の延長線から規定される断面を第2断面とした場合に、
    前記第2断面は、180°以上の内角が存在しない多角形であり、
    前記第1断面は、前記第2断面と頂点を共有する共有頂点と、前記第2断面の頂点に対応するように位置する凹溝と、を備え、
    前記凹溝は、
    内角が180°超の頂点である第1変曲点と、
    内角が180°未満の頂点である第2変曲点と、を有し、
    前記第1変曲点は、複数設けられ、
    前記第1断面の少なくとも一部の領域では、前記第1変曲点と前記第2変曲点とが、前記第1断面の周方向に沿って交互に配置され、
    前記第1変曲点と前記第2変曲点を除く前記第1断面の頂点の少なくとも一つの内角は、100°以上であり、
    前記第1断面は、内部に隔壁部を有しない、衝撃吸収部材。
  2. 前記第1断面の幅高さ比が0.70以下である、請求項1に記載の衝撃吸収部材。
  3. 前記第1断面は、前記共有頂点および前記凹溝を複数備え、
    少なくとも二つの前記凹溝は、前記第2断面における同一の対角線上の頂点の各々に対応する位置に配置され、
    前記対角線は、一つの頂点から延びる複数の対角線のうちの最も長い対角線である、請求項1または2に記載の衝撃吸収部材。
  4. 前記第1断面は、前記共有頂点および前記凹溝を複数備え、
    前記共有頂点および前記凹溝は、前記第1断面の周方向に沿って、交互に配置されている、請求項1または2に記載の衝撃吸収部材。
  5. 前記第1断面において、
    180°未満の内角が、全て75°以上、135°以下であり、
    前記第1変曲点の外角の角度が、全て75°以上、135°以下である、
    請求項1または2に記載の衝撃吸収部材。
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