以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10が搭載された車両11の構成例を示す概略図である。図1に示すように、車両11には、エンジン12を動力源に用いたパワートレイン13が搭載されている。エンジン12のクランク軸14には、ベルト機構15を介してスタータジェネレータ(モータジェネレータ)16が連結されている。また、エンジン12にはトルクコンバータ17を介して変速機構18が連結されており、変速機構18にはデファレンシャル機構19等を介して車輪20が連結されている。
エンジン12の吸気系30には吸気マニホールド31が設けられており、この吸気マニホールド31には吸入空気量を調整するスロットルバルブ32が設けられている。また、エンジン12には、吸気ポートやシリンダに燃料を噴射するインジェクタ33が設けられるとともに、イグナイタや点火コイルからなる点火装置34が設けられている。また、スロットルバルブ32、インジェクタ33および点火装置34には、マイコン等からなるエンジンコントローラ35が接続されている。さらに、エンジン12の排気系36には排気マニホールド37が設けられており、この排気マニホールド37には排出ガスを浄化する触媒コンバータ38が設けられている。
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ16は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。このスタータジェネレータ16は、クランク軸14に駆動される発電機として機能するだけでなく、クランク軸14を回転させる電動機として機能する。例えば、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合や、発進時や加速時においてエンジン12を補助する場合に、スタータジェネレータ16は力行状態に制御され、スタータジェネレータ16は電動機として機能する。
スタータジェネレータ16は、ステータコイルを備えたステータ40と、フィールドコイルを備えたロータ41と、を有している。また、スタータジェネレータ16には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ42、レギュレータ、マイコンおよび各種センサ等からなるISGコントローラ43が設けられている。ISGコントローラ43によってフィールドコイルやステータコイルの通電状態を制御することにより、スタータジェネレータ16の発電電圧やモータトルクを制御することができる。
また、パワートレイン13には、エンジン12を始動回転させるスタータモータ44が設けられている。後述するように、乗員によってスタータボタン45が押されると、メインコントローラ80からエンジンコントローラ35に制御信号が出力され、エンジンコントローラ35によってスタータリレー46がオン状態に切り替えられる。これにより、スタータモータ44のピニオン47は、突出位置に移動してトルクコンバータ17のリングギヤ48に噛み合い、リングギヤ48およびこれに連結されるクランク軸14を回転駆動する。
[電源回路]
車両用制御装置10が備える電源回路50について説明する。図2は電源回路50の一例を簡単に示した回路図である。図2に示すように、電源回路50は、スタータジェネレータ16に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ(蓄電体,第1蓄電体)51と、これと並列にスタータジェネレータ16に電気的に接続される鉛バッテリ(第2蓄電体)52と、を備えている。なお、リチウムイオンバッテリ51を積極的に放電させるため、リチウムイオンバッテリ51の端子電圧は、鉛バッテリ52の端子電圧よりも高く設計されている。また、リチウムイオンバッテリ51を積極的に充放電させるため、リチウムイオンバッテリ51の内部抵抗は、鉛バッテリ52の内部抵抗よりも小さく設計されている。
スタータジェネレータ16の正極端子16aには正極ライン53が接続され、リチウムイオンバッテリ51の正極端子51aには正極ライン54が接続され、鉛バッテリ52の正極端子52aには正極ライン55を介して正極ライン56が接続される。これらの正極ライン53,54,56は、接続点57を介して互いに接続されている。また、スタータジェネレータ16の負極端子16bには負極ライン58が接続され、リチウムイオンバッテリ51の負極端子51bには負極ライン59が接続され、鉛バッテリ52の負極端子52bには負極ライン60が接続される。これらの負極ライン58,59,60は、基準電位点61を介して互いに接続されている。
図1に示すように、鉛バッテリ52の正極ライン55には、正極ライン62が接続されている。この正極ライン62には、各種アクチュエータや各種コントローラ等の電気機器63からなる電気機器群64が接続されている。また、鉛バッテリ52の負極ライン60には、バッテリセンサ65が設けられている。バッテリセンサ65は、鉛バッテリ52の充放電電流や端子電圧を検出する機能を有するとともに、充放電電流等から鉛バッテリ52の充電状態であるSOC(State Of Charge)を検出する機能を有している。また、バッテリセンサ65は、図示しない通電ラインを介して鉛バッテリ52の正極端子52aにも接続されている。なお、鉛バッテリ52のSOCとは、鉛バッテリ52の電気残量を示す比率であり、鉛バッテリ52の満充電容量に対する蓄電量の比率である。例えば、鉛バッテリ52が上限容量まで充電された場合には、SOCが100%として算出され、鉛バッテリ52が下限容量まで放電した場合には、SOCが0%として算出される。
電源回路50には、リチウムイオンバッテリ51およびスタータジェネレータ16からなる第1電源系71が設けられており、鉛バッテリ52および電気機器63からなる第2電源系72が設けられている。そして、第1電源系71と第2電源系72との間に設けられる正極ライン(通電径路)56を介して、リチウムイオンバッテリ51と鉛バッテリ52とは互いに並列接続されている。この正極ライン56には、過大電流によって溶断する電力ヒューズ73が設けられるとともに、オン状態とオフ状態とに制御される第1スイッチ(スイッチ)SW1が設けられている。また、リチウムイオンバッテリ51の正極ライン54には、オン状態とオフ状態とに制御される第2スイッチSW2が設けられている。
スイッチSW1をオン状態に制御することにより、第1電源系71と第2電源系72とが互いに接続される一方、スイッチSW1をオフ状態に制御することにより、第1電源系71と第2電源系72とが互いに切り離される。また、スイッチSW2をオン状態に制御することにより、電源回路50にリチウムイオンバッテリ51が接続される一方、スイッチSW2をオフ状態に制御することにより、電源回路50からリチウムイオンバッテリ51が切り離される。これらのスイッチSW1,SW2は、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであっても良く、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。なお、スイッチSW1,SW2は、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
図1に示すように、電源回路50には、バッテリモジュール74が設けられている。このバッテリモジュール74は、リチウムイオンバッテリ51を有するとともに、スイッチSW1,SW2を有している。また、バッテリモジュール74は、マイコンや各種センサ等からなるバッテリコントローラ75を有している。さらに、バッテリモジュール74には、リチウムイオンバッテリ51の充放電電流、端子電圧および温度等を検出するバッテリセンサ76が設けられている。また、バッテリコントローラ75は、バッテリセンサ76から送信される充放電電流等に基づいて、リチウムイオンバッテリ51の充電状態であるSOC(State Of Charge)を算出する機能を有している。さらに、バッテリコントローラ75は、リチウムイオンバッテリ51のSOC等に基づいて、スイッチSW1,SW2を制御する機能を有している。なお、リチウムイオンバッテリ51のSOCとは、リチウムイオンバッテリ51の電気残量を示す比率であり、リチウムイオンバッテリ51の満充電容量に対する蓄電量の比率である。例えば、リチウムイオンバッテリ51が上限容量まで充電された場合には、SOCが100%として算出され、リチウムイオンバッテリ51が下限容量まで放電した場合には、SOCが0%として算出される。
[制御系]
図3は車両用制御装置10が備える制御系の一例を示す概略図である。図1および図3に示すように、車両用制御装置10は、パワートレイン13や電源回路50等を互いに協調させて制御するため、マイコン等を備えた制御ユニットであるメインコントローラ80を有している。メインコントローラ80は、エンジン12を制御するエンジン制御部81、スタータジェネレータ16を制御するISG制御部(モータ制御部)82、およびスイッチSW1,SW2を制御するスイッチ制御部83を有している。また、メインコントローラ80は、後述するアイドリングストップ制御を実行するアイドリング制御部84を有しており、後述するモータアシスト制御を実行するアシスト制御部85を有している。さらに、メインコントローラ80は、後述するエンジン初始動後の暖機運転制御を実行する暖機制御部86を有している。
メインコントローラ80や前述した各コントローラ35,43,75は、CANやLIN等の車載ネットワーク90を介して互いに通信自在に接続されている。メインコントローラ80は、各種コントローラや各種センサからの情報に基づいて、パワートレイン13や電源回路50等を制御する。なお、メインコントローラ80は、ISGコントローラ43を介してスタータジェネレータ16を制御し、バッテリコントローラ75を介してスイッチSW1,SW2を制御する。また、メインコントローラ80は、エンジンコントローラ35を介して、スロットルバルブ32、インジェクタ33および点火装置34を制御する。
図3に示すように、メインコントローラ80に接続されるセンサ類として、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ91、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ92、スロットルバルブ32の開度を検出するスロットル開度センサ93、クランク軸14の回転速度であるエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ94、エンジン12を循環する冷却液の温度(以下、冷却水温と記載する。)を検出する冷却水温センサ95、触媒コンバータ38の温度を検出する触媒温度センサ96、吸気系30を流れる吸入空気量を検出するエアフローメータ97等がある。また、メインコントローラ80には、各コントローラ35,43,75から、インジェクタ33、点火装置34、スロットルバルブ32、スタータジェネレータ16およびバッテリモジュール74等の作動情報が入力される。
[スタータジェネレータの発電制御]
続いて、メインコントローラ80によるスタータジェネレータ16の発電制御について説明する。メインコントローラ80のISG制御部82は、ISGコントローラ43に制御信号を出力し、スタータジェネレータ16を発電状態に制御する。例えば、ISG制御部82は、リチウムイオンバッテリ51のSOCが低下すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を上げて燃焼発電状態に制御する一方、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上昇すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を下げて発電休止状態に制御する。なお、後述する図4以降の各図面に示す「ISG」とは、スタータジェネレータ16である。
図4はスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。なお、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態とは、エンジン動力によってスタータジェネレータ16を発電させる状態、つまりエンジン内で燃料を燃焼させてスタータジェネレータ16を発電させる状態である。例えば、リチウムイオンバッテリ51のSOCが所定の下限値を下回る場合には、リチウムイオンバッテリ51を充電してSOCを高めるため、エンジン動力によってスタータジェネレータ16を発電させる。このように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が、鉛バッテリ52およびリチウムイオンバッテリ51の端子電圧よりも上げられる。これにより、図4に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ51、電気機器群64および鉛バッテリ52等に対して電流が供給され、リチウムイオンバッテリ51や鉛バッテリ52が緩やかに充電される。
図5はスタータジェネレータ16を発電休止状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ51のSOCが所定の上限値を上回る場合には、リチウムイオンバッテリ51を積極的に放電させるため、エンジン動力を用いたスタータジェネレータ16の発電が休止される。このように、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が、鉛バッテリ52およびリチウムイオンバッテリ51の端子電圧よりも下げられる。これにより、図5に黒塗りの矢印で示すように、リチウムイオンバッテリ51から電気機器群64に電流が供給されるため、スタータジェネレータ16の発電を停止させることができ、エンジン負荷を軽減することができる。なお、発電休止状態におけるスタータジェネレータ16の発電電圧としては、リチウムイオンバッテリ51を放電させる発電電圧であれば良い。例えば、スタータジェネレータ16の発電電圧を0Vに制御しても良く、スタータジェネレータ16の発電電圧を0Vよりも高く制御しても良い。
前述したように、メインコントローラ80のISG制御部82は、リチウムイオンバッテリ51のSOCに基づきスタータジェネレータ16を燃焼発電状態や発電休止状態に制御しているが、車両減速時には多くの運動エネルギーを回収して燃費性能を高めることが求められる。そこで、車両減速時には、スタータジェネレータ16の発電電圧が引き上げられ、スタータジェネレータ16は回生発電状態に制御される。これにより、スタータジェネレータ16の発電電力を増加させることができるため、運動エネルギーを積極的に電気エネルギーに変換して回収することができ、車両11のエネルギー効率を高めて燃費性能を向上させることができる。例えば、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト走行時や、ブレーキペダルが踏み込まれる減速走行時には、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。
ここで、図6はスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する際には、前述した燃焼発電状態よりもスタータジェネレータ16の発電電圧が上げられる。これにより、図6に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ51や鉛バッテリ52に対して大きな電流が供給されるため、リチウムイオンバッテリ51や鉛バッテリ52は急速に充電される。また、リチウムイオンバッテリ51の内部抵抗は、鉛バッテリ52の内部抵抗よりも小さいことから、発電電流の大部分はリチウムイオンバッテリ51に供給される。
なお、図4~図6に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際に、スイッチSW1,SW2はオン状態に保持されている。つまり、車両用制御装置10においては、スイッチSW1,SW2の切替制御を行うことなく、スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するだけで、リチウムイオンバッテリ51の充放電を制御することが可能である。これにより、簡単にリチウムイオンバッテリ51の充放電を制御することができるだけでなく、スイッチSW1,SW2の耐久性を向上させることができる。
[スタータジェネレータの力行制御]
続いて、メインコントローラ80によるスタータジェネレータ16の力行制御について説明する。アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動する場合や、モータアシスト制御においてエンジン12を補助する場合には、メインコントローラ80からISGコントローラ43に制御信号が出力され、ISGコントローラ43によってスタータジェネレータ16が力行状態に制御される。
メインコントローラ80のアイドリング制御部84は、自動的にエンジン12を停止させて再始動するアイドリングストップ制御を実行する。アイドリング制御部84は、エンジン運転中に所定の停止条件が成立した場合に、燃料カット等を実施してエンジン12を停止させる一方、エンジン停止中に所定の始動条件が成立した場合に、スタータジェネレータ16を力行状態に制御してエンジン12を再始動させる。なお、アイドリング制御部84は、アイドリングストップ制御を実行する際に、エンジン制御部81やISG制御部82に制御信号を出力し、エンジン12やスタータジェネレータ16を制御する。
ここで、図7はアイドリングストップ制御においてスタータジェネレータ16を力行状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。図7に示すように、アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動時には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に制御される。つまり、スタータジェネレータ16によってエンジン12を始動回転させる場合には、スイッチSW1をオフ状態に切り替えることにより、第1電源系71と第2電源系72とが互いに切り離される。これにより、リチウムイオンバッテリ51からスタータジェネレータ16に大電流が供給される場合であっても、第2電源系72の電気機器群64に対する瞬間的な電圧低下を防止することができ、電気機器群64等を正常に機能させることができる。
また、メインコントローラ80のアシスト制御部85は、発進時や加速時等にスタータジェネレータ16を力行状態に制御し、スタータジェネレータ16によってエンジン12を補助するモータアシスト制御を実行する。なお、アシスト制御部85は、モータアシスト制御を実行する際に、ISG制御部82に制御信号を出力し、スタータジェネレータ16を制御する。
ここで、図8はモータアシスト制御においてスタータジェネレータ16を力行状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。図8に示すように、モータアシスト制御に伴ってスタータジェネレータ16を力行状態に制御する際には、スイッチSW1,SW2は共にオン状態に制御される。このように、スタータジェネレータ16によってエンジン12を補助する場合には、スイッチSW1,SW2をオン状態に制御することにより、電気機器群64に対して鉛バッテリ52とリチウムイオンバッテリ51との双方が接続される。これにより、電気機器群64の電源電圧を安定させることができ、車両用制御装置10の信頼性を向上させることができる。なお、モータアシスト制御においては、前述したエンジン再始動時に比べて、スタータジェネレータ16の消費電力が少ないことから、スイッチSW1をオン状態に制御することが可能である。
[エンジン初始動制御]
次いで、スタータモータ44を用いてエンジン12を始動するエンジン初始動制御について説明する。エンジン初始動制御とは、車両11の制御システムを起動させて最初にエンジン12を始動する制御である。このエンジン初始動制御においては、乗員によってスタータボタン45が押されると、メインコントローラ80によってスタータリレー46がオン状態に切り替えられ、スタータモータ44によってエンジン12が始動回転つまりクランキングされる。
ここで、図9はエンジン初始動制御における電流供給状況の一例を示す図である。図9に示すように、エンジン初始動制御においては、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータリレー46がオン状態に制御される。これにより、鉛バッテリ52からスタータモータ44に電流が供給され、スタータモータ44を回転させることでエンジン12が始動される。なお、前述の説明では、エンジン初始動制御においてスタータモータ44を回転させているが、これに限られることはなく、エンジン初始動制御において、スイッチSW2をオン状態に制御してスタータジェネレータ16を回転させても良い。
[エンジン暖機制御]
前述したエンジン初始動後(エンジン始動後)において、エンジン12の冷却水温が所定温度を下回る場合には、メインコントローラ80の暖機制御部86によって、エンジン12の燃料噴射量や吸入空気量を増加させるエンジン暖機制御(以下、暖機制御と記載する。)が実行される。この暖機制御によってエンジン12の暖機運転を実行することにより、エンジン12の冷却水温を早期に上昇させることができるため、アイドリングストップ制御におけるエンジン12の停止条件を早期に成立させることができ、アイドリングストップ制御を早期に開始することができる。また、エンジン12の暖機運転を実行することにより、触媒コンバータ38の温度を早期に上昇させることができるため、触媒コンバータ38を早いタイミングで適切に機能させることができ、排出ガスを適切に浄化することができる。
また、エンジン初始動後の暖機制御において、エンジン12の冷却水温や触媒コンバータ38の温度を素早く上昇させるためには、エンジン12に対する燃料噴射量や吸入空気量を増加させることが必要であるが、エンジン回転数を大きく上昇させることは乗員に違和感を与える要因であった。そこで、メインコントローラ80の暖機制御部86およびISG制御部82は、暖機制御におけるエンジン回転数の過度な上昇を抑制するため、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態や逆トルク駆動状態に制御することにより、スタータジェネレータ16の制動トルクを高めてエンジン回転数の過度な上昇を抑制している。
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ16は、発電状態や力行状態に制御することができるだけでなく、前述したように逆トルク駆動状態に制御することが可能である。ここで、スタータジェネレータ16の逆トルク駆動状態とは、リチウムイオンバッテリ51等からの電力をスタータジェネレータ16によって消費し、且つスタータジェネレータ16からエンジン12に制動トルクを出力する作動状態である。これに対し、スタータジェネレータ16の発電状態(燃焼発電状態,回生発電状態)とは、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ51等に電力を供給し、且つスタータジェネレータ16からエンジン12に制動トルクを出力する作動状態である。なお、スタータジェネレータ16の力行状態とは、リチウムイオンバッテリ51等からの電力をスタータジェネレータ16によって消費し、且つスタータジェネレータ16からエンジン12に加速トルクを出力する作動状態である。
[スタータジェネレータのインバータ回路]
以下、ISGコントローラ43に設けられるインバータ42の回路構成について説明した後に、インバータ42によるスタータジェネレータ16の制御状況について簡単に説明する。図10はインバータ42の回路構成の一例を簡単に示した回路図である。図10に示すように、ISGコントローラ43に組み込まれるインバータ42は、正極端子16aに接続される正極ライン100と、負極端子16bに接続される負極ライン101と、を有している。このインバータ42の正極ライン100には、正極ライン53,54等を介してリチウムイオンバッテリ51の正極端子51aが接続されており、インバータ42の負極ライン101には、負極ライン58,59等を介してリチウムイオンバッテリ51の負極端子51bが接続されている。また、正極ライン100と負極ライン101とは、互いに並列接続されるU相ラインU1、V相ラインV1およびW相ラインW1を介して接続されている。
U相ラインU1は、互いに並列接続されるスイッチング素子S1およびダイオードD1からなる上側アームA1と、互いに並列接続されるスイッチング素子S2およびダイオードD2からなる下側アームA2と、を有している。上側アームA1と下側アームA2との接続点には通電ラインU2が接続されており、この通電ラインU2はU相のステータコイルCuに接続されている。
V相ラインV1は、互いに並列接続されるスイッチング素子S3およびダイオードD3からなる上側アームA3と、互いに並列接続されるスイッチング素子S4およびダイオードD4からなる下側アームA4と、を有している。上側アームA3と下側アームA4との接続点には通電ラインV2が接続されており、この通電ラインV2はV相のステータコイルCvに接続されている。
W相ラインW1は、互いに並列接続されるスイッチング素子S5およびダイオードD5からなる上側アームA5と、互いに並列接続されるスイッチング素子S6およびダイオードD6からなる下側アームA6と、を有している。上側アームA5と下側アームA6との接続点には通電ラインW2が接続されており、この通電ラインW2はW相のステータコイルCwに接続されている。
なお、図示する例では、各ステータコイルCu,Cv,Cwを中性点で接続する所謂スター結線を採用しているが、これに限られることはなく、各ステータコイルCu,Cv,Cwを閉回路として接続する所謂デルタ結線を採用しても良い。また、図10に示した概略図Xには、スタータジェネレータ16の一例として、3相3スロットのステータ40および2極のロータ41を備えたスタータジェネレータを示しているが、これに限られることはなく、他のステータやロータを備えたスタータジェネレータであっても良い。
[インバータ制御(発電状態)]
図11(A)および(B)は、インバータ42によるスタータジェネレータ16の制御状況の一例を示す図である。図11(A)および(B)には、スタータジェネレータ16の概略図Xに示したロータ41の回転角において、スタータジェネレータ16を発電状態に制御したときの状況が示されている。なお、スタータジェネレータ16の概略図Xにおいて、矢印αはロータ41の回転方向を示し、矢印βはモータトルクの発生方向を示している。
図11(A)に示すように、図示するロータ41の回転角においては、スイッチング素子S1~S4,S6がオフ状態に制御され、スイッチング素子S5のみがオン状態に制御され、ステータコイルCu,Cvに電流を環流させる回路が形成される。そして、矢印で示すように、ステータコイルCu,Cvには、ロータ41の磁力に反発する方向に電流が流れてエネルギーが蓄積される。その後、図11(B)に示すように、全てのスイッチング素子S1~S6がオフ状態に制御されると、矢印で示すように、ステータコイルCu,Cvに蓄えられたエネルギーが解放され、電流がダイオードD6,D1を経てリチウムイオンバッテリ51の正極端子51aに流れ込む。つまり、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ51に電力が供給される。
このように、スタータジェネレータ16が発電状態に制御されると、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ51等に電力が供給され、矢印βで示すように、ロータ41には回転方向とは逆方向の制動トルクが作用する。つまり、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態等の発電状態(第1制動状態)に制御することにより、リチウムイオンバッテリ51に電力が供給され且つエンジン12に制動トルクが出力される。
[インバータ制御(逆トルク駆動状態)]
図12はインバータ42によるスタータジェネレータ16の制御状況の一例を示す図である。図12には、スタータジェネレータ16の概略図Xに示したロータ41の回転角において、スタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御したときの状況が示されている。なお、スタータジェネレータ16の概略図Xにおいて、矢印αはロータ41の回転方向を示し、矢印βはモータトルクの発生方向を示している。
図12に示すように、図示するロータ41の回転角においては、スイッチング素子S1,S3,S4,S6がオフ状態に制御され、スイッチング素子S2,S5がオン状態に制御される。これにより、リチウムイオンバッテリ51の正極端子51aから流れる電流は、スイッチング素子S5、ステータコイルCv、ステータコイルCuおよびスイッチング素子S2を経て、リチウムイオンバッテリ51の負極端子51bに流れる。つまり、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51の電力が消費される。また、スタータジェネレータ16の概略図Xに示すように、ステータコイルCuが巻かれるティースはS極になり、ステータコイルCvが巻かれるティースはN極になる。このため、矢印βで示すように、ロータ41には回転方向とは逆方向の制動トルクが作用する。
このように、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態に制御されると、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51等の電力が消費され、矢印βで示すように、ロータ41には回転方向とは逆方向の制動トルクが作用する。つまり、スタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態(第2制動状態)に制御することにより、リチウムイオンバッテリ51の電力が消費され且つエンジン12に制動トルクが出力される。
[インバータ制御(力行状態)]
図13はインバータ42によるスタータジェネレータ16の制御状況の一例を示す図である。図13には、スタータジェネレータ16の概略図Xに示したロータ41の回転角において、スタータジェネレータ16を力行状態に制御したときの状況が示されている。なお、スタータジェネレータ16の概略図Xにおいて、矢印αはロータ41の回転方向を示し、矢印βはモータトルクの発生方向を示している。
図13に示すように、図示するロータ41の回転角においては、スイッチング素子S2~S5がオフ状態に制御され、スイッチング素子S1,S6がオン状態に制御される。これにより、リチウムイオンバッテリ51の正極端子51aから流れる電流は、スイッチング素子S1、ステータコイルCu、ステータコイルCvおよびスイッチング素子S6を経て、リチウムイオンバッテリ51の負極端子51bに流れる。つまり、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51の電力が消費される。また、スタータジェネレータ16の概略図Xに示すように、ステータコイルCuが巻かれるティースはN極になり、ステータコイルCvが巻かれるティースはS極になる。このため、矢印βで示すように、ロータ41には回転方向と同方向の力行トルクが作用する。
このように、スタータジェネレータ16が力行状態に制御されると、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51等の電力が消費され、矢印βで示すように、ロータ41には回転方向と同方向の力行トルクが作用する。つまり、スタータジェネレータ16を力行状態に制御することにより、リチウムイオンバッテリ51の電力が消費され且つエンジン12に力行トルクが出力される。
[エンジン暖機制御の実行手順(実施形態1:フローチャート)]
続いて、前述したエンジン始動後の暖機制御について詳細に説明する。図14および図15はエンジン暖機制御の実行手順(実施形態1)の一例を示すフローチャートである。図14および図15に示したフローチャートにおいては、符号A~Cを付した箇所で互いに接続されている。また、図16(A)はスタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図であり、図16(B)はスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図14に示すように、ステップS10では、エンジン初始動制御によるエンジン始動が完了したか否かが判定される。ステップS10において、エンジン始動が完了したと判定された場合には、ステップS11に進み、エンジン12の冷却水温Tengが所定の温度閾値Ta以下であるか否かが判定される。ステップS11において、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回る場合には、既にエンジン12や触媒コンバータ38の温度が高いことから、エンジン12の暖機運転を行うことなくルーチンを抜ける。一方、ステップS11において、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下である場合には、ステップS12に進み、エンジン12の暖機運転が実行される。この暖機運転においては、エンジン12のアイドリング運転時に比べて、吸入空気量を増加させるようにスロットルバルブ32が制御され、燃料噴射量を増加させるようにインジェクタ33が制御され、点火時期を遅角させるように点火装置34が制御される。なお、エンジン12のアイドリング運転時とは、暖機終了後のエンジン12をアイドリング状態で運転させるとき、つまりアクセル操作を行わずにエンジン12を一定の回転速度で無負荷運転させるときを意味している。
このように、エンジン12の暖機運転において、吸入空気量および燃料噴射量を増やすことにより、エンジン12および触媒コンバータ38を早期に暖めることができる。また、エンジン12の暖機運転において、点火時期を遅角させる点火リタード制御を実行することにより、暖機運転中のエンジントルクを下げることができ、吸入空気量および燃料噴射量を増やすことができるため、エンジン12および触媒コンバータ38をより早期に暖めることができる。さらに、エンジン12の暖機運転において、点火時期を遅角させる点火リタード制御を実行することにより、排気ポートに流れる排出ガスの温度を高めることができ、触媒コンバータ38を早期に暖めることができる。
続いて、図15に示したステップS13に進み、リチウムイオンバッテリ51のSOCが、所定の上側切替値(閾値)SH以上であるか否かが判定される。ステップS13において、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SH以上であると判定された場合、つまりリチウムイオンバッテリ51の充電が困難である場合には、ステップS14に進み、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態に制御される。図16(A)に示すように、スタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御することにより、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51の電力を消費しながら、スタータジェネレータ16によって暖機運転中のエンジン12に制動トルクを与えることができる。これにより、暖機運転におけるエンジン回転数の上昇を抑制することができるため、乗員に違和感を与えることなく吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。
このように、エンジン12の暖機運転が実行されると、図15に示したステップS15に進み、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下であるか否かが判定される。ステップS15において、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回ると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖められた場合には、ステップS16に進み、エンジン12の暖機運転を終了させ、ステップS17に進み、スタータジェネレータ16の通常制御が実行される。つまり、エンジン12の暖機運転が終了した後には、リチウムイオンバッテリ51のSOC等に基づき、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態や発電休止状態に制御される。
また、ステップS15において、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下であると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖まっていない場合には、エンジン12の暖機運転を継続するため、ステップS18に進み、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SHよりも低い下側切替値SLを下回るか否かが判定される。ステップS18において、リチウムイオンバッテリ51のSOCが下側切替値SL以上であると判定された場合には、リチウムイオンバッテリ51の放電を継続することができるため、ステップS14に進み、スタータジェネレータ16の逆トルク駆動状態が継続される。
一方、ステップS18において、リチウムイオンバッテリ51のSOCが下側切替値SLを下回ると判定された場合には、リチウムイオンバッテリ51の放電を継続することが困難であるため、ステップS19に進み、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に切り替えられる。図16(B)に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御することにより、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51を充電しながら、スタータジェネレータ16によって暖機運転中のエンジン12に制動トルクを与えることができる。これにより、暖機運転におけるエンジン回転数の上昇を抑制することができるため、乗員に違和感を与えることなく吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。
このように、エンジン12の暖機運転が実行されると、図15に示したステップS20に進み、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下であるか否かが判定される。ステップS20において、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回ると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖められた場合には、ステップS16に進み、エンジン12の暖機運転を終了させ、ステップS17に進み、スタータジェネレータ16の通常制御が実行される。
また、ステップS20において、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下であると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖まっていない場合には、エンジン12の暖機運転を継続するため、ステップS21に進み、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SHを上回るか否かが判定される。ステップS21において、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SH以下であると判定された場合には、リチウムイオンバッテリ51の充電を継続することができるため、ステップS19に進み、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態が継続される。
一方、ステップS21において、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SHを上回ると判定された場合には、リチウムイオンバッテリ51の充電を継続することが困難であるため、ステップS14に進み、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態に切り替えられる。このように、スタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御することにより、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51を放電させながら、スタータジェネレータ16によって暖機運転中のエンジン12に制動トルクを与え続けることができる。
これまで説明したように、エンジン12の暖機運転が実行される場合に、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値(閾値)SHよりも低いときには、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態(第1制動状態)に制御される。一方、エンジン12の暖機運転が実行される場合に、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SHよりも高いときには、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態(第2制動状態)に制御される。このように、リチウムイオンバッテリ51のSOCに基づいて、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態または逆トルク駆動状態に制御したので、SOCに応じて充電や放電が制限されるリチウムイオンバッテリ51の影響を受けることなく、エンジン12の暖機運転中にスタータジェネレータ16を用いてエンジン回転数の過度な上昇を抑えることができる。これにより、乗員に違和感を与えることなく暖機運転中の吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。
また、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御された状態のもとで、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SHまで上昇したときには、リチウムイオンバッテリ51の充電が制限されるため、図16(A)に示すように、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態に切り替えられる。さらに、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態に制御された状態のもとで、リチウムイオンバッテリ51のSOCが下側切替値SLまで低下したときには、リチウムイオンバッテリ51の放電が制限されるため、図16(B)に示すように、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に切り替えられる。
すなわち、スタータジェネレータ16の逆トルク駆動状態と燃焼発電状態とを交互に繰り返すことにより、暖機運転の全期間に渡ってリチウムイオンバッテリ51のSOCを所定範囲に収めることができる。これにより、SOCに応じて充電や放電が制限されるリチウムイオンバッテリ51の影響を受けることなく、暖機運転の全期間に渡ってスタータジェネレータ16からエンジン12に制動トルクを与え続けることができる。これにより、乗員に違和感を与えることなく暖機運転中の吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。
また、図16(A)および(B)に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態と逆トルク駆動状態とに制御する場合には、スイッチSW1,SW2がオン状態に制御されている。これにより、暖機運転中においても電気機器群64に対してリチウムイオンバッテリ51やスタータジェネレータ16を接続することができ、電気機器群64の電源を安定させることができる。
[エンジン暖機制御の実行手順(実施形態1:タイミングチャート)]
図17はエンジン暖機制御の実行手順(実施形態1)の一例を示すタイミングチャートである。図17に時刻t1で示すように、スタータモータ44等によってエンジン12が始動されると(符号a1)、エンジン12の暖機運転を開始するため、吸入空気量を増加させる吸気増量制御が実行され(符号b1)、燃料噴射量を増加させる燃料増量制御が実行され(符号c1)、点火時期を遅らせる点火リタード制御が実行される(符号d1)。このとき、リチウムイオンバッテリ51のSOCは上側切替値SHを下回るため(符号e1)、スタータジェネレータ16は制動トルクを出力する燃焼発電状態に制御され(符号f1)、燃焼発電状態のスタータジェネレータ16によってエンジン負荷が高められる。
続いて、時刻t2で示すように、燃焼発電状態のスタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51が充電され、リチウムイオンバッテリ51のSOCが上側切替値SHまで上昇すると(符号e2)、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態から逆トルク駆動状態に切り替えられる(符号f2)。このように、スタータジェネレータ16は制動トルクを出力する逆トルク駆動状態に制御され(符号f2)、逆トルク駆動状態のスタータジェネレータ16によってエンジン負荷が高められる。そして、時刻t3で示すように、逆トルク駆動状態のスタータジェネレータ16によって電力が消費され、リチウムイオンバッテリ51のSOCが下側切替値SLまで低下すると(符号e3)、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態から燃焼発電状態に切り替えられる(符号f3)。
このように、エンジン12の暖機運転が継続され、時刻t4で示すように、エンジン12の冷却水温Tengが温度閾値Taまで上昇すると(符号g1)、エンジン12の暖機運転を終了させるため、吸入空気量を増加させる吸気増量制御が停止され(符号b2)、燃料噴射量を増加させる燃料増量制御が停止され(符号c2)、点火時期を遅らせる点火リタード制御が停止される(符号d2)。そして、スタータジェネレータ16は発電休止状態に制御される(符号f4)。
前述したように、リチウムイオンバッテリ51のSOCに基づいて、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態または逆トルク駆動状態に制御することにより、暖機運転の全期間に渡って、スタータジェネレータ16から制動トルクを出力することができ、スタータジェネレータ16によってエンジン回転数の過度な上昇を抑えることができる。これにより、乗員に違和感を与えることなく暖機運転中の吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。なお、図示する例では、暖機運転終了後に、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御しているが、これに限られることはなく、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態等に制御しても良い。
[エンジン暖機制御の実行手順(実施形態2:フローチャート)]
前述の説明では、リチウムイオンバッテリ51のSOCが、下側切替値SLを下回ってから上側切替値SHを上回るまでは、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御しており、リチウムイオンバッテリ51のSOCが、上側切替値SHを上回ってから下側切替値SLを下回るまでは、スタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御しているが、これに限られることはない。例えば、リチウムイオンバッテリ51のSOCが所定の蓄電閾値S1を下回る場合に、暖機運転の全期間に渡ってスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御し、リチウムイオンバッテリ51のSOCが所定の蓄電閾値S1を上回る場合に、暖機運転の全期間に渡ってスタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御しても良い。
ここで、図18はエンジン暖機制御の実行手順(実施形態2)の一例を示すフローチャートである。図18に示すように、ステップS30では、エンジン初始動制御によるエンジン始動が完了したか否かが判定される。ステップS30において、エンジン始動が完了したと判定された場合には、ステップS31に進み、エンジン12の冷却水温Tengが所定の温度閾値Ta以下であるか否かが判定される。ステップS31において、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回る場合には、既にエンジン12や触媒コンバータ38の温度が高いことから、エンジン12の暖機運転を行うことなくルーチンを抜ける。一方、ステップS31において、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下である場合には、ステップS32に進み、エンジン12の暖機運転が実行される。この暖機運転時には、エンジン12のアイドリング運転時に比べて、吸入空気量を増加させるようにスロットルバルブ32が制御され、燃料噴射量を増加させるようにインジェクタ33が制御され、点火時期を遅角させるように点火装置34が制御される。このように、エンジン12の暖機運転においては、吸入空気量および燃料噴射量が増やされるため、エンジン12および触媒コンバータ38を早期に暖めることができる。また、エンジン12の暖機運転においては、点火時期を遅らせる点火リタード制御を実行することにより、排気ポートに流れる排出ガスの温度を高めることができ、触媒コンバータ38を早期に暖めることができる。
続いて、ステップS33に進み、リチウムイオンバッテリ51のSOCが、所定の蓄電閾値(閾値)S1を下回るか否かが判定される。ステップS33において、リチウムイオンバッテリ51のSOCが蓄電閾値S1を下回ると判定された場合、つまりリチウムイオンバッテリ51の充電が許容される場合には、ステップS34に進み、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。このように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御することにより、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51を充電しながら、スタータジェネレータ16によって暖機運転中のエンジン12に制動トルクを与えることができる。これにより、暖機運転中におけるエンジン回転数の上昇を抑制することができるため、乗員に違和感を与えることなく吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。
このように、エンジン12の暖機運転が実行されると、ステップS35に進み、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回るか否かが判定される。ステップS35において、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下であると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖まっていない場合には、エンジン12の暖機運転を継続するため、ステップS34に進み、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態が継続される。一方、ステップS35において、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回ると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖められた場合には、ステップS36に進み、エンジン12の暖機運転を終了させ、ステップS37に進み、スタータジェネレータ16の通常制御が実行される。つまり、エンジン12の暖機運転が終了した後には、リチウムイオンバッテリ51のSOC等に基づきスタータジェネレータ16が燃焼発電状態や発電休止状態に制御される。
一方、ステップS33において、リチウムイオンバッテリ51のSOCが蓄電閾値S1以上であると判定された場合、つまりリチウムイオンバッテリ51の放電が許容される場合には、ステップS38に進み、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態に制御される。このように、スタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御することにより、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ51の電力を消費しながら、スタータジェネレータ16によって暖機運転中のエンジン12に制動トルクを与えることができる。これにより、暖機運転中におけるエンジン回転数の上昇を抑制することができるため、乗員に違和感を与えることなく吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。
このように、エンジン12の暖機運転が実行されると、ステップS39に進み、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回るか否かが判定される。ステップS39において、冷却水温Tengが温度閾値Ta以下であると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖まっていない場合には、エンジン12の暖機運転を継続するため、ステップS38に進み、スタータジェネレータ16の逆トルク駆動状態が継続される。一方、ステップS39において、冷却水温Tengが温度閾値Taを上回ると判定された場合、つまりエンジン12や触媒コンバータ38が十分に暖められた場合には、ステップS36に進み、エンジン12の暖機運転を終了させ、ステップS37に進み、スタータジェネレータ16の通常制御が実行される。
これまで説明したように、エンジン12の暖機運転が実行される場合に、リチウムイオンバッテリ51のSOCが蓄電閾値(閾値)S1よりも低いときには、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態(第1制動状態)に制御される。一方、エンジン12の暖機運転が実行される場合に、リチウムイオンバッテリ51のSOCが蓄電閾値S1よりも高いときには、スタータジェネレータ16が逆トルク駆動状態(第2制動状態)に制御される。このように、リチウムイオンバッテリ51のSOCに基づいて、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態または逆トルク駆動状態に制御したので、SOCに応じて充電や放電が制限されるリチウムイオンバッテリ51の影響を受けることなく、エンジン12の暖機運転中にスタータジェネレータ16を用いてエンジン回転数の過度な上昇を抑えることができる。これにより、乗員に違和感を与えることなく暖機運転中の吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。
[エンジン暖機制御の実行手順(実施形態2:タイミングチャート)]
図19および図20は、エンジン暖機制御の実行手順(実施形態2)の一例を示すタイミングチャートである。図19にはスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する状況が示されており、図20にはスタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御する状況が示されている。
図19に時刻t1aで示すように、スタータモータ44等によってエンジン12が始動されると(符号a1)、エンジン12の暖機運転を開始するため、吸入空気量を増加させる吸気増量制御が実行され(符号b1)、燃料噴射量を増加させる燃料増量制御が実行され(符号c1)、点火時期を遅らせる点火リタード制御が実行される(符号d1)。このとき、リチウムイオンバッテリ51のSOCは蓄電閾値S1を下回るため(符号e1)、スタータジェネレータ16は制動トルクを出力する燃焼発電状態に制御され(符号f1)、燃焼発電状態のスタータジェネレータ16によってエンジン負荷が高められる。
続いて、時刻t2aで示すように、スタータジェネレータ16によってエンジン負荷を高めつつエンジン12の暖機運転が継続され、エンジン12の冷却水温Tengが温度閾値Taまで上昇すると(符号g1)、エンジン12の暖機運転を終了させるため、吸入空気量を増加させる吸気増量制御が停止され(符号b2)、燃料噴射量を増加させる燃料増量制御が停止され(符号c2)、点火時期を遅らせる点火リタード制御が停止される(符号d2)。そして、スタータジェネレータ16は発電休止状態に制御される(符号f2)。
このように、リチウムイオンバッテリ51のSOCが蓄電閾値S1よりも低い場合には、暖機運転の全期間に渡ってスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御しても良い。この場合であっても、スタータジェネレータ16によってエンジン回転数の過度な上昇を抑えることができるため、乗員に違和感を与えることなく暖機運転中の吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。なお、図示する例では、暖機運転終了後に、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御しているが、これに限られることはなく、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態等に制御しても良い。
次いで、図20に時刻t1bで示すように、スタータモータ44等によってエンジン12が始動されると(符号a1)、エンジン12の暖機運転を開始するため、吸入空気量を増加させる吸気増量制御が実行され(符号b1)、燃料噴射量を増加させる燃料増量制御が実行され(符号c1)、点火時期を遅らせる点火リタード制御が実行される(符号d1)。このとき、リチウムイオンバッテリ51のSOCは蓄電閾値S1を上回るため(符号e1)、スタータジェネレータ16は制動トルクを出力する逆トルク駆動状態に制御され(符号f1)、逆トルク駆動状態のスタータジェネレータ16によってエンジン負荷が高められる。
続いて、時刻t2bで示すように、スタータジェネレータ16によってエンジン負荷を高めつつエンジン12の暖機運転が継続され、エンジン12の冷却水温Tengが温度閾値Taまで上昇すると(符号g1)、エンジン12の暖機運転を終了させるため、吸入空気量を増加させる吸気増量制御が停止され(符号b2)、燃料噴射量を増加させる燃料増量制御が停止され(符号c2)、点火時期を遅らせる点火リタード制御が停止される(符号d2)。そして、スタータジェネレータ16は発電休止状態に制御される(符号f2)。
このように、リチウムイオンバッテリ51のSOCが蓄電閾値S1よりも高い場合には、暖機運転の全期間に渡ってスタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御しても良い。この場合であっても、スタータジェネレータ16によってエンジン回転数の過度な上昇を抑えることができるため、乗員に違和感を与えることなく暖機運転中の吸入空気量や燃料噴射量を増やすことができ、エンジン12や触媒コンバータ38を素早く暖めることができる。なお、図示する例では、暖機運転終了後に、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御しているが、これに限られることはなく、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態等に制御しても良い。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明(実施形態1)では、燃焼発電状態または逆トルク駆動状態を判定するため、エンジン12の暖機運転が開始される際に、リチウムイオンバッテリ51のSOCを閾値である上側切替値SHと比較判定しているが、これに限られることはない。例えば、上側切替値SHとは別の閾値Saを設定することにより、エンジン12の暖機運転が開始される際に、SOCが閾値Saを下回る場合にはスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御し、SOCが閾値Saを上回る場合にはスタータジェネレータ16を逆トルク駆動状態に制御しても良い。
前述の説明では、エンジン12の冷却水温Tengに基づいて暖機運転を実行するか否かを判定しているが、これに限られることはなく、他の温度を用いて暖機運転を実行するか否かを判定しても良い。例えば、触媒コンバータ38の温度に基づいて暖機運転を実行するか否かを判定しても良い。また、前述の説明では、エンジン12に連結されるモータジェネレータとして、クランク軸14にベルト機構15を介して連結されるスタータジェネレータ16を挙げているが、これに限られることはなく、クランク軸14に対して直に連結されるモータジェネレータであっても良い。
前述の説明では、電源回路50に2つの蓄電体が設けられているが、これに限られることはなく、電源回路50に1つの蓄電体だけが設けられていても良い。また、第1蓄電体(蓄電体)としてリチウムイオンバッテリ51を採用しているが、これに限られることはなく、第1蓄電体(蓄電体)として他の種類のバッテリやキャパシタを採用しても良い。また、第2蓄電体として鉛バッテリ52を採用しているが、これに限られることはなく、第2蓄電体として他の種類のバッテリやキャパシタを採用しても良い。また、図示する例では、リチウムイオンバッテリ51の正極ライン54にスイッチSW2を設けているが、これに限られることはない。例えば、図2に一点鎖線で示すように、リチウムイオンバッテリ51の負極ライン59にスイッチSW2を設けても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ80に、各種制御部81~86を設けているが、これに限られることはない。他の制御ユニットに、各種制御部81~86の一部や全部を設けても良い。