JP7347447B2

JP7347447B2 - 固形石けん

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Publication number: JP7347447B2
Application number: JP2020568098A
Authority: JP
Inventors: 大村上; 知寛脇田
Original assignee: NOF Corp
Current assignee: NOF Corp
Priority date: 2019-01-21
Filing date: 2020-01-16
Publication date: 2023-09-20
Anticipated expiration: 2040-01-16
Also published as: TW202031885A; JPWO2020153216A1; WO2020153216A1; CN112996570B; TWI798524B; CN112996570A; US11744792B2; US20220110857A1

Description

本発明は皮膚の洗浄のために使用される固形石けんに関する。

従来、顔や身体等の皮膚用の洗浄剤には、脂肪酸塩である石けんが多く使用されている。石けんは、洗浄後に独特のさっぱり感を有するだけでなく、生分解性も良好であり、環境に対しても優しい基剤である。中でも、固形石けんは一般的な皮膚用洗浄剤として広く使用されている。固形石けんを構成する脂肪酸には、例えば、ヤシ油、パーム油およびパーム核油などの油脂から製造された混合脂肪酸が使用されており、これらの混合脂肪酸には不飽和脂肪酸が３０～４０質量％程度含有されている。不飽和脂肪酸は、石けんの溶解性や成形性を保持するのに有効であるものの、保存安定性が低く、変色や臭気劣化が生じ易いという問題があった。

固形石けんの保存安定性を向上させるために、飽和脂肪酸のみを使用した固形石けんが提案されている。これにより、変色や臭気劣化は改善されるものの、型打ち時にひび割れが発生して生産性が低下することや使用時の溶解性が低下することが課題であった。これらの課題を解決するために、例えば特許文献１には、炭素数が偶数の飽和脂肪酸のアルカリ金属塩と脂肪酸を含有する固形石けんが提案されている。

また、飽和脂肪酸のみを使用した固形石けんは冷水での泡立ちが良くないことがあった。この課題を解決するために特許文献２には、炭素数が偶数の飽和脂肪酸の塩、２価アルコール、２－メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび（メタ）アクリル酸アルキルエステルを構成モノマーとするポリマー、カチオン化ポリマーを含有する枠練り固形石けんが提案されている。

さらに、シェーバーで顔や身体の産毛を剃る際、すべり性を付与する目的で固形石けんが使用されることがあり、すべり性をより高めるためには石けん濃度が高い状態で顔や身体に塗布することが好ましい。しかし、石けん濃度が高い状態では延びが悪く、広範囲に塗布することが困難であった。そのため、石けん濃度が高い状態での延びが良く、かつ優れたすべり性を付与できる固形石けんが求められていた。

特開２０００－１６０１９６号公報特開２０１６－７９３５０号公報

本発明は固形石けんに関し、生産性に優れること、ぬるま湯のみならず冷水でも泡立ちがし易いこと、肌上での延びおよびすべり性が良好であることを本発明が解決しようとする課題とする。

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の素材を選択し、その配合割合を特定範囲とすることによって、所期の作用効果を奏する固形石けんが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次のとおりである。
（Ａ）炭素数が１２～１８の偶数炭素数を有する飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を７７～９１質量％、
（Ｂ）炭素数が１３～１７の奇数炭素数を有する飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を０．００５～１質量％、
（Ｃ）グリセリンを０．５～５質量％、
（Ｄ）水を５～１８質量％
含有し、不飽和脂肪酸塩を含有しない固形石けん。

本発明の固形石けんは、製造に際して金型に付着し難く、また成形後の石けん表面にひび割れが生じ難いから、生産性に優れる。また本発明の固形石けんは、ぬるま湯での泡立ちが良好であるだけでなく、冷水での泡立ちも良好である。更に本発明の固形石けんは、石けん濃度が高い状態での延びが良く、かつ優れたすべり性を付与することができる。

以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の固形石けんは、下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）、成分（Ｃ）、成分（Ｄ）を含有する。以下、各成分について説明する。
なお、本明細書において記号「～」を用いて規定された数値範囲は「～」の両端（上限および下限）の数値を含む。例えば「２～１０」は２以上１０以下を表す。
また濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「２～１０質量％」および「好ましくは４～８質量％」の記載がある場合、「２～４質量％」、「２～８質量％」、「４～１０質量％」および「８～１０質量％」の記載も包含される。

＜成分（Ａ）：偶数飽和脂肪酸のアルカリ金属塩＞
本発明に用いられる成分（Ａ）は、炭素数が１２～１８の偶数炭素数を有する飽和脂肪酸（本明細書において「偶数飽和脂肪酸」ともいう。）のアルカリ金属塩であり、言い換えれば、炭素数が１２、１４、１６、１８の飽和脂肪酸のアルカリ金属塩である。

成分（Ａ）として用いられる偶数飽和脂肪酸として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸等が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸の３種を組み合わせることが好ましい。成分（Ａ）におけるこれら３種の脂肪酸の含有量は合計で９５～１００質量％であることが好ましく、９７～１００質量％であることがより好ましい。かかる質量比が上記範囲であると、生産性や冷水での泡立ち性の点でより好ましい。

成分（Ａ）に用いられるアルカリ金属は、カリウムおよびナトリウムであって、カリウムおよびナトリウムを組み合わせることが好ましい。さらに偶数飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を得るために、水酸化カリウムおよび水酸化ナリウムを組み合わせて用いて偶数脂肪酸を中和することが好ましい。この場合、水酸化カリウム／水酸化ナトリウムの質量比は１／４～３／２であることが好ましく、１／３～１／１であることがより好ましく、２／５～４／５であることが特に好ましい。かかる質量比が上記範囲であると、生産性や冷水での泡立ち性の点でより好ましい。

成分（Ａ）の含有量は、固形石けん全量中、７７～９１質量％であり、好ましくは７８～９０質量％、より好ましくは８０～８８質量％である。成分（Ａ）の含有量が少なすぎると、生産性および泡立ち性が低下することがある。一方、成分（Ａ）の含有量が多すぎると、生産性、冷水での泡立ち性、延びおよびすべり性が低下することがある。

＜成分（Ｂ）：奇数飽和脂肪酸のアルカリ金属塩＞
本発明に用いられる成分（Ｂ）は、炭素数が１３～１７の奇数炭素数を有する飽和脂肪酸（本明細書において「奇数偶数飽和脂肪酸」ともいう。）のアルカリ金属塩であり、言い換えれば、炭素数が１３、１５、１７の飽和脂肪酸のアルカリ金属塩である。

成分（Ｂ）に用いられる奇数飽和脂肪酸として、トリデカン酸、ペンタデカン酸およびヘプタデカン酸等が挙げられ、ペンタデカン酸およびヘプタデカン酸が好ましく、ペンタデカン酸およびヘプタデカン酸を組み合わせて用いることがより好ましい。
ペンタデカン酸およびヘプタデカン酸を組み合わせて用いる場合、ペンタデカン酸／ヘプタデカン酸の質量比は１／３０～３０／１であることが好ましく、１／１０～１０／１であることがより好ましく、１／５～５／１であることがさらに好ましく、１／３～３／１であることが特に好ましい。かかる質量比が上記範囲であると、延びおよびすべり性の点でより好ましい。
また、成分（Ｂ）におけるペンタデカン酸およびヘプタデカン酸の含有量は合計で９５～１００質量％であることが好ましく、９７～１００質量％であることがより好ましい。ペンタデカン酸およびヘプタデカン酸の含有量が上記範囲であると、延びおよびすべり性をバランスよく得ることができる。

成分（Ｂ）に用いられるアルカリ金属は、カリウムおよびナトリウムであって、カリウムおよびナトリウムを組み合わせることが好ましい。さらに奇数飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を得るために、水酸化カリウムおよび水酸化ナリウムを組み合わせて用いて奇数脂肪酸を中和することが好ましい。この場合、水酸化カリウム／水酸化ナトリウムの質量比は１／４～３／２であることが好ましく、１／３～１／１であることがより好ましく、２／５～４／５であることが特に好ましい。かかる質量比が上記範囲であると、生産性や冷水での泡立ち性の点でより好ましい。

成分（Ｂ）の含有量は、固形石けん全量中、０．００５～１質量％であり、好ましくは０．０１～０．７質量％、より好ましくは０．０３～０．５質量％、特に好ましくは０．０５～０．３質量％である。成分（Ｂ）の含有量が少なすぎると、生産性、冷水での泡立ち性、延びおよびすべり性が低下することがある。一方、成分（Ｂ）の含有量が多すぎると、配合量に見合った効果が見られず、経済的に不利になることがあり、場合によっては、生産性、延びおよびすべり性が低下することがある。

＜成分（Ｃ）：グリセリン＞
本発明に用いられる成分（Ｃ）はグリセリンである。グリセリンは、油脂を加水分解して得られる水溶液を蒸留などにより精製する方法で生産することができる。

成分（Ｃ）の含有量は、固形石けん全量中、０．５～５質量％であり、好ましくは１～４質量％、より好ましくは１．５～３．５質量％である。成分（Ｃ）の含有量が少なすぎると、冷水での泡立ち性、延びおよびすべり性が低下することがある。一方、成分（Ｃ）の含有量が多すぎると、生産性が低下することがある。

＜成分（Ｄ）：水＞
本発明に用いられる成分（Ｄ）は水である。
成分（Ｄ）としては、脱イオン水、イオン交換水、または蒸留水が好ましい。

成分（Ｄ）の含有量は、固形石けん全量中、５～１８質量％であり、好ましくは６～１６質量％、より好ましくは７～１４質量％である。成分（Ｄ）の含有量が少なすぎると、生産性や冷水での泡立ち性が低下することがある。一方、成分（Ｄ）の含有量が多すぎると、生産性が低下することがある。

本発明の固形石けんは、成分（Ａ）～成分（Ｄ）の総含有量が、固形石けん全量中、８２．５５～１００質量％であり、好ましくは８５～１００質量％、より好ましくは９０～１００質量％、特に好ましくは９５～１００質量％である。

＜その他の成分＞
本発明の固形石けんは、成分（Ａ）～成分（Ｄ）の他にも、固形石けんに使われる一般的な成分をその他の成分として含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、植物油脂、動物油脂等の油脂類；脂肪酸；ｐＨ調整剤；酸化防止剤；金属封鎖剤；色素；香料；顔料等が挙げられる。本発明の固形石けんがその他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量は、固形石けん全量中、１７質量％以下であることが好ましく、１０質量％以下であることがより好ましい。
その他の成分として、泡質向上の観点から、飽和脂肪酸を含有することが好ましく、飽和脂肪酸としてラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸の中から１種または複数種を選択することが好ましい。本発明の固形石けんが脂肪酸を含有する場合の脂肪酸の含有量は、好ましくは０．１～１０質量％、より好ましくは０．５～８質量％、特に好ましくは１～５質量％である。

本発明の固形石けんは、上記の各成分の混合物に、枠練り法や機械練り法などの一般的な方法を適用して製造することができる。

以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。下記表１～４に示した組成および成分を用いて、下記の製造例に示した方法により固形石けんを調製した。

＜製造例＞
脂肪酸（成分（Ａ）と成分（Ｂ）の混合脂肪酸）を５Ｌ双腕式混練機（（株）入江商会製、ＰＮＶ－５型）に入れて約８０℃で溶解し、２８質量％水酸化ナトリウム水溶液と２８質量％水酸化カリウム水溶液の混合液を添加して８５～９５℃で約５分間攪拌混合した。その後、グリセリンを添加し、更にその温度で攪拌混合を続けて乾燥させながら水分量を調整した。その組成物をプロッダー（日本化工機（株）製、ミニソーププロッダー）とロールミル（アイメックス（株）製、ＢＲ－１５０型ベンチロール）で３回混練した後、プロッダーでソープバーを得た。その後、型打ち機（日本化工機（株）製、ＦＰ－１７１）により成形して固形石けんを得た。

なお、原料は以下のものを使用した。
・ラウリン酸：試薬特級グレード（東京化成工業（株）製）
・ミリスチン酸：試薬特級グレード（東京化成工業（株）製）
・パルミチン酸：試薬特級グレード（東京化成工業（株）製）
・ステアリン酸：試薬特級グレード（東京化成工業（株）製）
・ペンタデカン酸：試薬特級グレード（東京化成工業（株）製）
・ヘプタデカン酸：試薬特級グレード（東京化成工業（株）製）
・グリセリン：試薬特級グレード（東京化成工業（株）製）

＜成分（Ａ）＞
下記表１に記載の配合にしたがって混合した混合脂肪酸に、表１に記載の水酸化カリウム／水酸化ナトリウムの質量比の混合液を添加し攪拌混合して調製した脂肪酸塩（Ａ１）～（Ａ４）を成分（Ａ）として用いた。

＜成分（Ｂ）＞
下記表２に記載の配合にしたがって混合した混合脂肪酸に、表２に記載の水酸化カリウム／水酸化ナトリウムの質量比の混合液を添加し攪拌混合して調製した脂肪酸塩（Ｂ１）～（Ｂ５）を成分（Ｂ）として用いた。

＜実施例１～１０、比較例１～２＞
表３および４に示す配合にしたがって上記製造例にて固形石けんを調製し、下記の方法により評価した。結果を表３および４に示す。なお、「優」及び「良」を合格と判定した。

（評価方法）
（１）ぬるま湯（３８℃）での泡立ち
２５歳から５５歳までの女性２０名をパネラーとし、両手および固形石けんを約３８℃のぬるま湯で濡らしてから、固形石けんを手で１０回こすった後、約３８℃のぬるま湯を少しずつ加えながら泡立てた際の泡立ちについて、下記基準で評価を行った。
２点：泡立ちが非常に良いと感じた場合。
１点：泡立ちがやや良いと感じた場合。
０点：泡立ちが悪いと感じた場合。
２０名の合計点を求め、以下のように評価した。
優：合計点が３６～４０点
良：合計点が３１～３５点
可：合計点が２１～３０点
不可：合計点が２０点以下

（２）冷水（１０℃）での泡立ち
２５歳から５５歳までの女性２０名をパネラーとし、両手および固形石けんを約１０℃の冷水で濡らしてから、固形石けんを手で１０回こすった後、約１０℃の冷水を少しずつ加えながら泡立てた際の泡立ちについて、下記基準で評価を行った。
２点：泡立ちが非常に良いと感じた場合。
１点：泡立ちがやや良いと感じた場合。
０点：泡立ちが悪いと感じた場合。
２０名の合計点を求め、以下のように評価した。
優：合計点が３６～４０点
良：合計点が３１～３５点
可：合計点が２１～３０点
不可：合計点が２０点以下

（３）肌上での延びおよびすべり性
２５歳から５５歳までの女性２０名をパネラーとし、両手および固形石けんを約３８℃のぬるま湯で濡らしてから、固形石けんを手で１０回こすった後、手で顔や身体に塗布した際の延びおよびすべり性について、下記基準で評価を行った。
２点：延びおよびすべりが非常に良いと感じた場合。
１点：延びおよびすべりがやや良いと感じた場合。
０点：延びおよびすべりが悪いと感じた場合。
２０名の合計点を求め、以下のように評価した。
優：合計点が３６～４０点
良：合計点が３１～３５点
可：合計点が２１～３０点
不可：合計点が２０点以下

（４）生産性
混練機で混合した組成物について、押し出し機と型打ち機を用いて、固形石けん２０個を成形した後、金型への付着物の有無を目視で観察し、さらに成形後の個々の石けんの外観を目視で観察して下記の基準で評価した。
合格品：金型に付着物がなく、成形後の石けん表面にひび割れが見られない。
不合格品：金型に付着物が見られるか、又は成形後の石けん表面にひび割れが見られる。
優：合格品が１９個以上である。
良：合格品が１５～１８個である。
可：合格品が１１～１４個である。
不可：合格品が１０個以下である。

実施例１～１０の固形石けんはいずれも、生産性に優れ、ぬるま湯のみならず冷水でも泡立ちがし易く、肌上での延びおよびすべり性が良好であった。

これに対して比較例１～２では十分な性能が得られていない。
比較例１は成分（Ｂ）が配合されていないため、冷水での泡立ちが悪く、肌上での延びおよびすべり性が不十分であった。
比較例２は成分（Ｂ）の含有量が多いため、生産性が悪く、肌上での延びおよびすべり性が不十分であった。

＜実施例１１＞
下記に示す配合処方により、固形石けんを調製し、上記実施例と同様に評価を行った。
（Ａ）Ａ３８５質量％
（Ｂ）Ｂ３０．０５質量％
（Ｃ）グリセリン１質量％
（Ｄ）水１０質量％
（その他の成分）
ラウリン酸３質量％
クエン酸０．５質量％
トコフェロール０．０５質量％
エチドロン酸４ナトリウム０．２質量％
香料０．２質量％
合計配合量１００質量％

実施例１１の固形石けんは、生産性に優れ、ぬるま湯のみならず冷水でも泡立ちがし易く、肌上での延びおよびすべり性が良好であった。

＜実施例１２＞
下記に示す配合処方により、固形石けんを調製し、上記実施例と同様に評価を行った。
（Ａ）Ａ１８１質量％
（Ｂ）Ｂ３１質量％
（Ｃ）グリセリン５質量％
（Ｄ）水８質量％
（その他の成分）
ラウリン酸３質量％
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム０．８質量％
クエン酸０．１質量％
トコフェロール０．１質量％
エチドロン酸４ナトリウム０．１質量％
エデト酸４ナトリウム０．１質量％
酸化チタン０．１質量％
ＰＥＧ－９Ｍ０．１質量％
ＰＥＧ－６５Ｍ０．１質量％
ポリクオタニウム－７０．１質量％
ポリクオタニウム－１００．１質量％
ポリクオタニウム－５１０．１質量％
ポリクオタニウム－６４０．１質量％
香料０．１質量％
合計配合量１００質量％

実施例１２の固形石けんは、生産性に優れ、ぬるま湯のみならず冷水でも泡立ちがし易く、肌上での延びおよびすべり性が良好であった。

〔関連出願〕
本願は、２０１９年１月２１日出願の日本国特許出願（特願２０１９－００７６０２）に基づく優先権の利益を享受し、その全ての内容が参照によりここに組み込まれる。

Claims

（Ａ）炭素数が１２～１８の偶数炭素数を有する飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を７７～９１質量％、
（Ｂ）炭素数が１３～１７の奇数炭素数を有する飽和脂肪酸のアルカリ金属塩を０．００５～１質量％、
（Ｃ）グリセリンを０．５～５質量％、
（Ｄ）水を５～１８質量％
含有し、不飽和脂肪酸塩を含有しない固形石けん。
さらに、飽和脂肪酸を０．１～１０質量％含有する請求項１に記載の固形石けん。