JP7346045B2 - 赤色飲料 - Google Patents

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本発明は、赤色飲料に関する。
現在市販されている赤色飲料は、着色料を添加したものがほとんどであるが、近年の健康ブームやオーガニックブームに起因して、天然由来の色素を添加したものが望まれている。赤色飲料として、例えば、ピンクジンジャーエールと呼ばれるショウガ風味の炭酸飲料が知られている。
特開2012-80846号公報
赤色飲料などの着色飲料は、光や熱に晒されると退色しやすいという問題を有している。したがって、本発明は、上述の近年の要望を満たしつつ、上記問題を改善することを目的とする。すなわち、本発明は、天然由来の色素を含み、保存中に色調変化を起こしにくい赤色飲料を提供することを目的とする。
本発明によると、飲料と、アントシアニン含有根菜類の抽出物とを含む赤色飲料が提供される。
本発明によれば、天然由来の色素を含み、保存中に色調変化を起こしにくい赤色飲料が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を説明することを目的とし、本発明を限定することを意図していない。
<赤色飲料>
赤色飲料は、飲料と、アントシアニン含有根菜類の抽出物とを含む。
「赤色飲料(reddish beverage)」は、アントシアニン含有根菜類の抽出物を含むことにより、赤系の色を有する飲料を指す。したがって、赤色飲料は、赤みがかった色を有していればよく、ピンク色や赤紫色を有していてもよい。赤色飲料は、例えば、50.00~100.00のL値、10.00~50.00のa値および-10.00~10.00のb値を示す。本明細書において、L値、a値およびb値は、透過法を用いて測定した際のCIE Lab表色系における値を指す。また、赤色飲料は、好ましくは、2.0~4.0のpHを有し、より好ましくは2.0~3.5のpHを有する。赤色飲料は、アントシアニン含有根菜類の抽出物を含み、且つ上記範囲のpHを有することにより、保存中に起こる色調の変化をより顕著に抑制することができる。
赤色飲料は、飲料と、アントシアニン含有根菜類の抽出物とを混合することにより調製することができる。
「飲料」は、アントシアニン含有根菜類の抽出物と混合される任意の飲料であり、例えば、炭酸飲料、水、スポーツ飲料、栄養ドリンク、果汁飲料、アルコールなどが挙げられる。「飲料」は、好ましくは、炭酸飲料、果汁飲料である。
「アントシアニン含有根菜類」は、アントシアニンを含有する任意の根菜類である。「根菜類」は、野菜のうち、土壌中で生育する部分、例えば根や地下茎などを食用にするものを指す。「アントシアニン含有根菜類」は、例えば、ムラサキサツマイモ、ムラサキニンジン、ムラサキダイコン、ムラサキジャガイモ、赤カブなどが挙げられる。
「アントシアニン含有根菜類」は、通常、土壌中で生育する部分、例えば根や地下茎などにアントシアニンを含有するため、その部分が、赤紫色ないし紫色を有する。「アントシアニン含有根菜類」は、好ましくは、ムラサキサツマイモまたはムラサキニンジンであり、より好ましくは、ムラサキサツマイモである。
ムラサキサツマイモは、アントシアニンを根に含有するサツマイモ(Lpomoea batatas)をいう。ムラサキニンジンは、アントシアニンを根に含有するニンジン(Daucus carota)をいう。ムラサキダイコンは、アントシアニンを根に含有するダイコン(Raphanus sativus)をいう。ムラサキジャガイモは、アントシアニンを地下茎に含有するジャガイモ(Solanum tuberosum)をいう。赤カブは、アントシアニンを根に含有するカブ(Brassica rapa)をいう。
「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、アントシアニン含有根菜類からアントシアニンを抽出する工程を含む方法により得られたアントシアニン抽出物である。したがって、「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、飲料に添加されると、赤みがかった色を飲料に付与することができる。アントシアニンの抽出は、例えば、アントシアニン含有根菜類のアントシアニン含有部分を搾汁するか、または水やエタノールなどで抽出することにより行うことができる。得られたアントシアニン抽出物は、例えば、抽出により得られた粗抽出液であってもよいし、粗抽出液を濾過により清澄化して得られた清澄液であってもよいし、清澄液を濃縮して得られた濃縮液であってもよいし、清澄液を乾燥させて得られた乾燥物であってもよい。
好ましい態様において、「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、アントシアニン含有根菜類からアントシアニンを抽出する工程と、得られた粗抽出液を濾過により清澄化する工程とを含む方法により得られたアントシアニン抽出液である。ここで濾過は、例えば、濾滓濾過、限外濾過、または微細濾過により行うことができる。かかるアントシアニン抽出液は、不純物が除去されているため、不純物が赤色飲料の退色に影響する可能性を減らすことができる。
あるいは、好ましい態様において、「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、アントシアニン含有根菜類に由来するアントシアニンを含有し、660nmにおける透過率が60~99T%であるアントシアニン抽出液である。透過率は、分光光度計、例えば、SE 6000(日本電色工業株式会社)により測定することができる。かかるアントシアニン抽出液は、不純物の含量が低減されているため、不純物が赤色飲料の退色に影響する可能性を減らすことができる。
「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、商業的に入手可能であり、例えば、ムラサキマサリ濃縮汁Bx50(宮崎県農協果汁株式会社)、紫さつまいも濃縮ジュースYM(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、ムラサキイモエキス800(日農化学工業株式会社)、紫にんじんジュースPC(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などが挙げられる。
より好ましい態様において、「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、ムラサキサツマイモからアントシアニンを抽出する工程と、抽出工程により得られた粗抽出液を濾過により清澄化する工程とを含む方法により得られるアントシアニン抽出液である。ここで濾過は、例えば、濾滓濾過、限外濾過、または微細濾過により行うことができる。かかるアントシアニン抽出液は、不純物が除去されているため、不純物が赤色飲料の退色に影響する可能性を減らすことができる。かかるアントシアニン抽出液の例として、ムラサキイモエキス800(日農化学工業株式会社)が挙げられる。
あるいは、より好ましい態様において、「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、ムラサキサツマイモに由来するアントシアニンを含有し、660nmにおける透過率が60~99T%であるアントシアニン抽出液である。透過率は、分光光度計、例えば、SE 6000(日本電色工業株式会社)により測定することができる。かかるアントシアニン抽出液は、不純物の含量が低減されているため、不純物が赤色飲料の退色に影響する可能性を減らすことができる。かかるアントシアニン抽出液の例として、ムラサキイモエキス800(日農化学工業株式会社)が挙げられる。
「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、赤色飲料が所定の赤色を呈する量で、赤色飲料中に含まれ得る。「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、例えば、赤色飲料が50.00~100.00のL値、10.00~50.00のa値および-10.00~10.00のb値を示す量で、赤色飲料中に含まれ得る。すなわち、「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、赤色飲料が50.00~100.00のL値、10.00~50.00のa値および-10.00~10.00のb値を示すように、飲料に配合することができる。
例えば、「アントシアニン含有根菜類の抽出物」としてムラサキイモエキス800(日農化学工業株式会社)を使用した場合、ムラサキイモエキス800を、飲料に対して0.001~0.1質量%の量で、飲料に配合することができる。
赤色飲料は、飲料に通常使用される添加剤、例えば、甘味料、酸味料、香辛料、香料、食物繊維などを更に含んでいてもよい。特に食物繊維はシトラスファイバーであることが好ましく、赤色の色合いが良好となるからである。
赤色飲料は、アントシアニン含有根菜類の抽出物を含むことにより、保存中に光や熱による色調変化を起こしにくいという効果を奏する。この効果は、赤色飲料が、飲料の退色を防止することが公知の添加剤、例えば酸化防止剤や金属イオンを含んでいなくても発揮することができる。また、後述の実施例では、アントシアニン含有根菜類の抽出物を含む赤色飲料に、酸化防止剤や色保持効果を有する金属イオンを添加すると、光や熱による退色がやや加速する場合があった。したがって、赤色飲料は、酸化防止剤を含まないことが好ましい。また、赤色飲料は、色保持効果を有する金属イオン、例えば鉄イオンや亜鉛イオンを含まないことが好ましい。
以上述べたとおり、本発明によれば、天然由来の色素を含み、保存中に色調変化を起こしにくい赤色飲料を提供することができる。
<容器詰め赤色飲料>
別の側面によれば、上述の「赤色飲料」と、赤色飲料を充填した容器とを含む容器詰め赤色飲料が提供される。「赤色飲料」は、上記で説明したとおりである。赤色飲料を充填するための容器は、任意の容器であってもよく、光不透過性容器(例えば、アルミニウムまたはスチールなどの金属製の容器)または光透過性容器(例えば、ペットボトル、ガラス瓶)の何れであってもよい。上述のとおり、赤色飲料は、保存中に光や熱による色調変化を起こしにくいという効果を奏する。したがって、容器が光を透過する材質からつくられていても、上記効果は発揮される。すなわち、容器は、光透過性容器であってもよい。
<飲料用添加剤>
別の側面によれば、上述の「アントシアニン含有根菜類の抽出物」を含む飲料用添加剤が提供される。「アントシアニン含有根菜類の抽出物」は、上記で説明したとおりである。かかる飲料用添加剤は、飲料に添加することにより、上述の赤色飲料を調製することができる。かかる飲料用添加剤は、保存中に光や熱による色調変化を起こしにくい赤色飲料を調製できるという効果を奏する。
<赤色飲料の赤色変化抑制方法>
別の側面によれば、上述の「アントシアニン含有根菜類の抽出物」を上述の「飲料」に添加することを含む、赤色飲料の赤色変化抑制方法が提供される。この方法は、上記説明に従って実施することができる。
[実施例1]
実施例1では、種々の赤色色素を含む赤色飲料を調製し、光や熱に対する色調変化を調べた。
<赤色飲料の調製>
赤色飲料1-1
赤ぶどうRed4000 Bx68(Empresas Lourdes S.A.)を水と混合し、赤色飲料1-1を調製した。具体的には、赤ぶどうRed4000 Bx68を、水に対して0.1213質量%の量で配合した。この配合量は、果汁ストレート換算で0.75質量%であった(0.1213×68/11=0.75)。赤ぶどうRed4000 Bx68のストレートBxは11として計算した。赤色色素は、赤色飲料のL値が87.5、a値が17.3、b値が1.6になる量で配合した。
赤色飲料1-2
赤色色素を、赤色飲料のL値が47.1、a値が62.1、b値が16.7になる量で配合したこと以外、赤色飲料1-1と同様の手順で、赤色飲料1-2を調製した。具体的には、赤ぶどうRed4000 Bx68を、水に対して0.75質量%の量で配合した。この配合量は、果汁ストレート換算で4.636質量%であった(0.75×68/11=4.636)。赤ぶどうRed4000 Bx68のストレートBxは11として計算した。
赤色飲料1-3
マキベリー濃縮果汁 Bx65(Bayas Del Sur S.A.)を水と混合し、赤色飲料1-3を調製した。具体的には、マキベリー濃縮果汁 Bx65を、水に対して0.0544質量%の量で配合した。この配合量は、果汁ストレート換算で0.208質量%であった(0.0544×65/17=0.208)。マキベリー濃縮果汁 Bx65のストレートBxは17として計算した。赤色色素は、赤色飲料のL値が88.9、a値が15.4、b値が2.7になる量で配合した。
赤色飲料1-4
赤色色素を、赤色飲料のL値が79.5、a値が26.9、b値が5.0になる量で配合したこと以外、赤色飲料1-3と同様の手順で、赤色飲料1-4を調製した。具体的には、マキベリー濃縮果汁 Bx65を、水に対して0.1088質量%の量で配合した。この配合量は、果汁ストレート換算で0.416質量%であった(0.1088×65/17=0.416)。マキベリー濃縮果汁 Bx65のストレートBxは17として計算した。
赤色飲料1-5乃至1-13
下記の赤色色素を使用したこと以外、赤色飲料1-1と同様の手順で、赤色飲料1-5乃至1-13を調製した。
赤色飲料1-5:ムラサキマサリ濃縮汁 Bx50(宮崎県農協果汁株式会社)
赤色飲料1-6:紫さつまいも濃縮ジュースYM(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
赤色飲料1-7:紫にんじんジュースPC(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
赤色飲料1-8:ぶどう濃縮果汁HA(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
赤色飲料1-9:exGrape Total PPR(SUN BRIGHT CO., LTD)
赤色飲料1-10:カシスエキス-35(タマ生化学株式会社)
赤色飲料1-11:ムラサキイモエキス800(日農化学工業株式会社)
赤色飲料1-12:ニチノー 赤シソ200(日農化学工業株式会社)
赤色飲料1-13:サンレッドYMF(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
なお、各飲料のpH及び酸度の調整はクエン酸(扶桑化学工業株式会社)とクエン酸ナトリウム(扶桑化学工業株式会社)によって、Brix値の調整は果糖ぶどう糖液糖(日本食品化工株式会社)によって行なった。
<評価方法>
光に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を25℃の温度の下に10000ルクスの光を照射した状態で2週間置いた。熱に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を45℃の温度の下に遮光状態で1ヶ月間置いた。コントロール飲料として、赤色飲料を5℃の温度の下に遮光状態で1ヶ月間置いた。
上記条件下に置いた後、赤色飲料を目視により観察し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
A:コントロール飲料と同じ色調を示し、退色が観察されなかった
B:コントロール飲料と比べると退色が僅かに観察された
C:コントロール飲料と比べると退色が目立って観察された
赤色飲料のpHは、pH METER F-52(株式会社堀場製作所)により測定した。赤色飲料の糖度(Brix値)は、RX-5000α-Bev(株式会社アタゴ)により測定した。赤色飲料の酸度は、COM-1750(平沼産業株式会社)により測定した。pH、糖度(Brix値)および酸度については、赤色飲料を95℃達温により殺菌し、200mL PETボトルに充填した後、20℃まで液温が下がったところで測定した。
また、上記条件下に置く前の赤色飲料のa値から、上記条件下に置いた後の赤色飲料のa値を引いた値を、上記条件下に置く前の赤色飲料のa値で割った値(Δa/a)を求めた。a値は、SE6000(日本電色工業株式会社)により測定した。
<評価結果>
目視による評価結果を下記表1-1に示し、Δa/aの評価結果を下記表1-2に示す。
目視による評価結果およびΔa/aの評価結果から、以下のことが示された。赤色色素としてムラサキサツマイモの抽出物を含む赤色飲料(すなわち、赤色飲料1-5、1-6、1-11および1-13)は、光や熱に対する退色が起こりにくかった。また、赤色色素としてムラサキニンジンの抽出物を含む赤色飲料(すなわち、赤色飲料1-7)は、光や熱に対する退色が起こりにくかった。一方、他の赤色色素を含む赤色飲料(すなわち、赤色飲料1-1、1-3、1-8、1-9、1-10および1-12)は、光や熱に対する退色が目立って観察された。赤色飲料1-2および1-4は、赤色色素の配合量が多く、飲料に透明感がなかった。このように、赤ぶどうの抽出物を含む赤色飲料およびマキベリーの抽出物を含む赤色飲料は、紫色ないし赤紫色を示したが、ムラサキサツマイモの抽出物を含む赤色飲料およびムラサキニンジンの抽出物を含む赤色飲料は、朱色ないしピンク色系の透明感のある色調を示した。
これらの結果から、ムラサキサツマイモの抽出物やムラサキニンジンの抽出物を赤色色素として使用すると、朱色ないしピンク色系の透明感のある色調を有し、保存中に色調変化を起こしにくい赤色飲料を調製できることが示された。
[実施例2]
実施例2では、酸化防止剤の添加効果を調べた。酸化防止剤として、ビタミンC(CSPC weisheng Pharma ceutical., Ltd.)およびエンジュHJK-4507(エンジュ抽出物)(稲畑香料株式会社)を使用した。酸化防止剤は、退色や風味の劣化を防止する目的で、飲料に添加される添加剤である。
<赤色飲料の調製>
実験2-1
赤ぶどうRed4000 Bx68(Empresas Lourdes S.A.)を赤色色素として使用し、実施例1と同様の手順で下記4種類の赤色飲料を調製した。pH2.6の赤色飲料の場合、赤色色素は、赤色飲料のL値が47.1、a値が62.0、b値が16.0になる量で配合した。pH3.7の赤色飲料の場合、赤色色素は、赤色飲料のL値が58.6、a値が38.4、b値が7.7になる量で配合した。
(1)赤色飲料(pH2.6)
(2)赤色飲料(pH3.7)
(3)ビタミンCを添加した赤色飲料(pH3.7)
(4)エンジュ抽出物を添加した赤色飲料(pH3.7)
pHの調整は、pH METER F-52(株式会社堀場製作所)により行った。ビタミンCは、水に対して0.008質量%の量で添加した。エンジュ抽出物は、水に対して0.02質量%の量で添加した。
実験2-2
赤色色素としてムラサキマサリ濃縮汁 Bx50(宮崎県農協果汁株式会社)を使用し、pH2.6の赤色飲料の場合、この赤色色素を赤色飲料のL値が58.0、a値が48.2、b値が2.0になる量で配合したこと以外、実験2-1と同様の手順で赤色飲料を調製した。pH3.7の赤色飲料の場合、赤色色素は、赤色飲料のL値が74.5、a値が27.5、b値が-2.2になる量で配合したこと以外、実験2-1と同様の手順で赤色飲料を調製した。
実験2-3
赤色色素として紫にんじんジュースPC(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)を使用したこと以外、実験2-2と同様の手順で4種類の赤色飲料を調製した。
実験2-4
赤色色素としてムラサキイモエキス800(日農化学工業株式会社)を使用したこと以外、実験2-2と同様の手順で4種類の赤色飲料を調製した。
実験2-5
赤色色素としてサンレッドYMF(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)を使用したこと以外、実験2-2と同様の手順で4種類の赤色飲料を調製した。
各飲料のpH、酸度およびBrix値の調整は、実施例1と同様の方法により行った。
<評価方法>
光に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を25℃の温度の下に10000ルクスの光を照射した状態で2週間置いた。熱に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を45℃の温度の下に遮光状態で2週間置いた。コントロール飲料として、赤色飲料を5℃の温度の下に遮光状態で2週間置いた。
上記条件下に置いた後、赤色飲料を目視により観察し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
A:コントロール飲料と同じ色調を示し、退色が観察されなかった
B:コントロール飲料に比べわずかに退色が観察されただけであった
C:コントロール飲料と比べると退色が確認されたが、許容範囲内であった
D:コントロール飲料と比べると退色が目立って観察された
また、上記条件下に置く前の赤色飲料のa値から、上記条件下に置いた後の赤色飲料のa値を引いた値を、上記条件下に置く前の赤色飲料のa値で割った値(Δa/a)を求めた。a値は、SE6000(日本電色工業株式会社)により測定した。
<評価結果>
目視による評価結果を下記表2-1に示し、Δa/aの評価結果を下記表2-2に示す。
目視による評価結果およびΔa/aの評価結果から、以下のことが示された。
実験2-1において、赤色飲料(pH3.7)に酸化防止剤を添加したところ、酸化防止剤を添加しなかった赤色飲料と同程度に、光や熱による退色を抑制することができた。ただし、実験2-1で調製された赤色飲料はすべて、赤色色素の配合量が多く、飲料に透明感がなかった。
実験2-2において、赤色飲料(pH3.7)に酸化防止剤を添加したところ、酸化防止剤を添加しなかった赤色飲料と比べて、光による退色を抑制することができた。また、実験2-2において、赤色飲料(pH3.7)に酸化防止剤を添加したところ、酸化防止剤を添加しなかった赤色飲料と同程度に、熱による退色を抑制することができた。
実験2-3において、赤色飲料(pH3.7)に酸化防止剤を添加したところ、酸化防止剤を添加しなかった赤色飲料と比べて、光による退色を抑制することができたが、熱による退色がやや加速する場合があった。
実験2-4において、赤色飲料(pH3.7)に酸化防止剤を添加したところ、酸化防止剤を添加しなかった赤色飲料と同程度に、光や熱による退色を抑制することができた。
実験2-5において、赤色飲料(pH3.7)に酸化防止剤を添加したところ、酸化防止剤を添加しなかった赤色飲料と同程度に、光や熱による退色を抑制することができた。
以上の結果をまとめると、赤色飲料は、酸化防止剤を含んでいなくても光や熱による退色を抑制することができた。一方、赤色飲料に酸化防止剤を添加したところ、酸化防止剤は、光による退色を抑制することができたが、赤色色素のタイプによっては、熱による退色をやや加速させる場合があった。これらの結果から、本発明の赤色飲料は、酸化防止剤を含んでいなくても光や熱による退色を抑制することができるため、酸化防止剤を含む必要はない。すなわち、本発明の赤色飲料は酸化防止剤を含まないことが好ましい。
また、ムラサキイモエキス800を赤色色素として用いた場合に特に優れた退色抑制効果が達成されたことから、赤色色素のタイプについては、粗抽出液よりも、濾過により不純物が除去され清澄化された抽出液の方が好ましいと考えられる。
[実施例3]
実施例3では、金属イオンの添加効果を調べた。金属イオンとして、サンフェロール(クエン酸第一鉄ナトリウム)(三菱ケミカルフーズ株式会社)およびイーストミネラル亜鉛(亜鉛酵母)(オリエンタル酵母工業株式会社)を使用した。これら金属イオンは、飲料の色を保持する目的で、飲料に添加される添加剤である。
<赤色飲料の調製>
実験3-1
ムラサキマサリ濃縮汁 Bx50(宮崎県農協果汁株式会社)を赤色色素として使用し、実施例1と同様の手順で下記3種類の赤色飲料を調製した。赤色色素は、赤色飲料のL値が72.9、a値が21.8、b値が1.9になる量で配合した。
(1)赤色飲料(pH3.7)
(2)サンフェロール(鉄イオン)を添加した赤色飲料(pH3.7)
(3)イーストミネラル亜鉛(亜鉛イオン)を添加した赤色飲料(pH3.7)
pHの調整は、pH METER F-52(株式会社堀場製作所)により行った。サンフェロールは、水に対して0.01質量%の量で添加した。イーストミネラル亜鉛は、水に対して0.0725質量%の量で添加した。
実験3-2
赤色色素として紫にんじんジュースPC(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)を使用したこと以外、実験3-1と同様の手順で3種類の赤色飲料を調製した。
実験3-3
赤色色素としてムラサキイモエキス800(日農化学工業株式会社)を使用したこと以外、実験3-1と同様の手順で3種類の赤色飲料を調製した。
実験3-4
赤色色素としてサンレッドYMF(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)を使用したこと以外、実験3-1と同様の手順で3種類の赤色飲料を調製した。
各飲料のpH、酸度およびBrix値の調整は、実施例1と同様の方法により行った。
<評価方法>
光に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を25℃の温度の下に10000ルクスの光を照射した状態で2週間置いた。熱に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を45℃の温度の下に遮光状態で2週間置いた。コントロール飲料として、赤色飲料を5℃の温度の下に遮光状態で2週間置いた。
上記条件下に置いた後、赤色飲料を目視により観察し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
A:コントロール飲料と同じ色調を示し、退色が観察されなかった
B:コントロール飲料に比べわずかに退色が観察されただけであった
C:コントロール飲料と比べると退色が確認されたが、許容範囲内であった
D:コントロール飲料と比べると退色が目立って観察された
また、上記条件下に置く前の赤色飲料のa値から、上記条件下に置いた後の赤色飲料のa値を引いた値を、上記条件下に置く前の赤色飲料のa値で割った値(Δa/a)を求めた。a値は、SE6000(日本電色工業株式会社)により測定した。
<評価結果>
目視による評価結果を下記表3-1に示し、Δa/aの評価結果を下記表3-2に示す。
目視による評価結果およびΔa/aの評価結果から、以下のことが示された。実験3-1乃至3-4において、赤色飲料(pH3.7)に金属イオンを添加したところ、金属イオンを添加しなかった赤色飲料と比べて、光や熱による退色がやや加速した。したがって、本発明の赤色飲料は、金属イオンを含んでいなくても光や熱による退色を抑制することができるため、金属イオンを含む必要はない。すなわち、本発明の赤色飲料は金属イオンを含まないことが好ましい。
[実施例4]
実施例4では、赤色色素としてムラサキサツマイモの抽出物を使用して、ショウガ風味の赤色炭酸飲料を調製し、光や熱に対する色調変化を調べた。具体的には、下記表4-1および4-2に記載される組成で赤色炭酸飲料を調製した。
表4-1および4-2に記載される原材料は、以下のとおり入手した。括弧内に一括表示を併記する。
果糖ぶどう糖液糖(果糖ぶどう糖液糖):日本食品化工株式会社
グラニュー糖(砂糖):フジ日本精糖株式会社
国産リンゴ酢I(りんご酢):横井醸造工業株式会社
生姜汁J-国産(生姜汁):株式会社あさの
精製クエン酸(無水)(酸味料):扶桑化学工業株式会社
クエン酸ナトリウム(酸味料):扶桑化学工業株式会社
ジンジャーFL A56061(香辛料抽出物):高砂香料工業株式会社
ジンジャーFL A57367(香辛料抽出物):高砂香料工業株式会社
ヘスペリジンS(糖転移ヘスペリジン):株式会社林原
ムラサキイモエキス800(ムラサキイモエキス):日農化学工業株式会社
アヤムラサキマサリ濃縮汁Bx50(ムラサキマサリ汁):宮崎農協果汁株式会社
ビタミンC(酸化防止剤(ビタミンC)):CSPC weisheng Pharma ceutical., Ltd.
シトリファイ100M20(シトラスファイバー):鳥越製粉株式会社
KM-72(シリコーン樹脂製剤):信越化学工業株式会社
表4-1および4-2において、原材料の配合量は、水100gに対する質量[g]で記す。また、表4-1および4-2において、Bxは、赤色炭酸飲料の糖度(Brix値)を示し、Acは、赤色炭酸飲料の酸度を示し、pHは、赤色炭酸飲料のpHを示し、Gas vol.は、赤色炭酸飲料のガスボリュームを示す。
なお、各飲料のpH、酸度およびBrix値の調整は、実施例1と同様の方法により行った。
<評価方法>
光に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を25℃の温度の下に10000ルクスの光を照射した状態で2週間置いた。熱に対する色調変化を調べるために、赤色飲料を45℃の温度の下に遮光状態で2週間置いた。コントロール飲料として、赤色飲料を5℃の温度の下に遮光状態で2週間置いた。
上記条件下に置いた後、赤色飲料を目視により観察し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
A:コントロール飲料と同じ色調を示し、退色が観察されなかった
B:コントロール飲料に比べわずかに退色が観察されただけであった
C:コントロール飲料と比べると退色が確認されたが、許容範囲内であった
D:コントロール飲料と比べると退色が目立って観察された
<評価結果>
目視による評価結果を下記表4-1および4-2に示す。
表4-1および4-2に記載されるショウガ風味の赤色炭酸飲料は、組成について以下の特徴を有する。赤色飲料4-1は、ムラサキサツマイモの抽出物の配合量が0.020であり、酸化防止剤としてビタミンCを含み、pHが3.46である。赤色飲料4-2、4-3および4-4は、ムラサキサツマイモの抽出物の配合量が0.020であり、栄養強化剤として糖転移ヘスペリジンを含み、それぞれpHが3.48、3.07および2.59である。赤色飲料4-5、4-6、4-7は、ムラサキサツマイモの抽出物の配合量が0.014であり、栄養強化剤として糖転移ヘスペリジンを含み、それぞれpHが3.46、3.07および2.60である。赤色飲料4-8、4-9、4-10は、ムラサキサツマイモの抽出物の配合量が0.010であり、栄養強化剤として糖転移ヘスペリジンを含み、それぞれpHが3.50、3.06および2.58である。
赤色飲料4-11は、シトラスファイバーを添加したこと以外は、赤色飲料4-10と同じ組成を有する。赤色飲料4-12は、クエン酸の添加量を増やすことによりpHを2.2まで下げたこと以外は、赤色飲料4-10と同じ組成を有する。
表4-1および4-2の結果から、ムラサキサツマイモの抽出物および種々の飲料用添加剤を用いてショウガ風味の赤色炭酸飲料を調製した場合も、得られた赤色飲料は、朱色ないしピンク色系の透明感のある色調を示し、保存中に光や熱による色調変化が起こりにくいという効果を奏することが示された。シトラスファイバーを添加した場合、赤色炭酸飲料の色調が特に良好であった。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 飲料と、
アントシアニン含有根菜類の抽出物と
を含む赤色飲料。
[2] 前記アントシアニン含有根菜類がムラサキサツマイモまたはムラサキニンジンである[1]に記載の赤色飲料。
[3] 前記アントシアニン含有根菜類がムラサキサツマイモである[1]または[2]に記載の赤色飲料。
[4] 前記抽出物が、ムラサキサツマイモからアントシアニンを抽出する工程と、前記抽出工程により得られた粗抽出液を濾過により清澄化する工程とを含む方法により得られるアントシアニン抽出液である[3]に記載の赤色飲料。
[5] 前記抽出物は、ムラサキサツマイモに由来するアントシアニンを含有し、660nmにおける透過率が60~99T%であるアントシアニン抽出液である[3]または[4]に記載の赤色飲料。
[6] 2.0~4.0のpHを有する[1]~[5]の何れか1に記載の赤色飲料。
[7] 前記抽出物は、前記赤色飲料が50.00~100.00のL値、10.00~50.00のa値および-10.00~10.00のb値を示す量で含まれる[1]~[6]の何れか1に記載の赤色飲料。
[8] 酸化防止剤を含まない[1]~[7]の何れか1に記載の赤色飲料。
[9] 前記飲料が炭酸飲料又は果汁飲料である[1]~[8]の何れか1に記載の赤色飲料。
[10] [1]~[9]の何れか1に記載の赤色飲料と、前記赤色飲料を充填した容器とを含む容器詰め赤色飲料。
[11] 前記容器が光透過性容器である[10]に記載の容器詰め赤色飲料。
[12] アントシアニン含有根菜類の抽出物を含む飲料用添加剤。
[13] アントシアニン含有根菜類の抽出物を飲料に添加することを含む、赤色飲料の赤色変化抑制方法。

Claims (5)

  1. ムラサキサツマイモの抽出物を飲料に添加することと、得られた飲料を2.0~4.0のpHに調整することとを含む、酸化防止剤を含まない赤色飲料の赤色変化抑制方法であって、前記抽出物が、ムラサキサツマイモからアントシアニンを抽出する工程と、前記抽出工程により得られた粗抽出液を濾過により清澄化する工程とを含む方法により得られるアントシアニン抽出液である方法。
  2. 前記抽出物は、ムラサキサツマイモに由来するアントシアニンを含有し、660nmにおける透過率が60~99T%であるアントシアニン抽出液である請求項1に記載の方法
  3. 前記抽出物は、前記赤色飲料が50.00~100.00のL値、10.00~50.00のa値および-10.00~10.00のb値を示す量で含まれる請求項1または2に記載の方法
  4. 前記赤色飲料がシトラスファイバーを更に含む請求項1~の何れか1項に記載の方法
  5. 前記飲料が炭酸飲料又は果汁飲料である請求項1~の何れか1項に記載の方法
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