JP7343872B2 - 果樹の栽培方法 - Google Patents

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Description

本発明は、果樹の栽培方法に関し、特には、低カリウム果実の生産が可能である果樹の栽培方法に関するものである。
日本では、高度経済成長期に農作物の収量増加のために肥料消費量が増大した。この肥料の過剰施用により植物に養分が蓄積し、環境や人体への悪影響が懸念されている。このような問題から、施肥量の削減が検討されている。
一方、植物にとって、カリウムは、物質代謝・浸透圧調節・気孔の開閉・転流など様々な場で働く主要な栄養素であり、植物は、カリウムを土壌中にあるだけ吸収するが、植物体への影響はみられない。また、土壌中にカリウムが不足しても根が土壌粒子を分解し、カリウムを補おうとする。
カリウムは、人間にとっても基本的なミネラルの一つであるが、腎臓病患者のように腎機能が低下すると、カリウムが体内に蓄積し、様々な病気を併発する恐れもあることから、透析でカリウムを体外へ排出することが必要である。腎臓病患者は世界的に増加しており、例えば日本では2011年に透析患者数が30万人に達したとの報告もある。医療の発達により患者の増加は鈍ると思われるが、患者数は今後も漸増するものと考えられる。
カリウムを体内に溜めこまない対策として、1)カリウムの摂取量を制限する、2)農作物を水にさらす又は茹でることでカリウムを削減する、3)低カリウム農作物を摂取することなどが挙げられ、低カリウム農作物の作出が期待されている。
これまで、ホウレンソウ・レタス・トマト・メロン・イチゴ等の草本性植物の水耕栽培によって低カリウム農作物を作出したことが報告されている(非特許文献1~4)。具体的には、カリウム濃度を制限した養液で農作物を栽培する手法が報告されており、可食部におけるカリウム含有量は、葉菜類では70%以上、果菜類では50%程度減少したとされている。
小川ら,2007 日作紀(Jpn. J. Crio Sci.)「腎臓病透析患者のための低カリウム含有量ホウレンソウの栽培方法の確立」 Ogawa et al., 2012 Environ. Control Biol. "Cultivation Methods for Leafy Vegetables and Tomatoes with Low Potassium Content for Dialysis Patients" Asao et al., 2013 Scientia Holticulturae "Impact of reduced potassium nitrate concentrations in nutrient solution on the growth, yield and fruit quality of melon in hydroponics" Mondel et al., 2016 The Japanese Society for Horticultural Science "Reduction of Potassium (K) Content in Strawberry Fruits through KNO3 Management of Hydroponics"
しかしながら、果樹等の木本性植物は、水耕栽培が難しく、また、土壌の存在により養分の制御が難しいことから、低カリウム化の研究は行われていない。
このような状況下、本発明の目的は、低カリウム果実の生産が可能である果樹の栽培方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、カリウムを制限した養液を用いて果樹を栽培する際に、果樹の根域を制限することで、低カリウム果実を生産できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の果樹の栽培方法は、カリウムを含まない肥料を用いて果樹の根域制限栽培を行う第1工程であって、前記根域制限栽培が天然素材系培地および非天然素材系培地から選択される有機材料培地を用いる第1工程を含むことを特徴とする。
本発明の果樹の栽培方法の好適例においては、前記根域制限栽培が容器栽培である。
本発明の果樹の栽培方法の他の好適例においては、前記第1工程において、カリウムを含まない肥料を用いて果樹の根域制限栽培を行う前に、果樹の根域に対して水洗を行う。
本発明の果樹の栽培方法の他の好適例においては、前記第1工程が、開花期又は着色期に開始される。
本発明の果樹の栽培方法の他の好適例においては、前記第1工程が、3ヶ月以内の期間行われる。
本発明の果樹の栽培方法の他の好適例においては、前記第1工程の前にカリウムを含む肥料を用いて果樹の栽培を行う第2工程を更に含む。
本発明の果樹の栽培方法の他の好適例においては、前記第1工程の後にカリウムを含む肥料を用いて果樹の栽培を行う第3工程を更に含む。
本発明の果樹の栽培方法の他の好適例においては、前記果樹がブルーベリーである。
本発明によれば、低カリウム果実の生産が可能である果樹の栽培方法を提供することができる。
実験1の栽培方法の概略図を示す。 実験1における各器官のカリウム(K)含有量の測定結果を示す。 実験2の実験結果を示す。 実験3の栽培方法の概略図を示す。 実験3における果実品質及び可食部のカリウム含有量の測定結果を示す。 実験3における葉及び可食部のカリウム、カルシウム及びマグネシウム含有量の測定結果を示す。 実験4の栽培方法の概略図を示す。 実験4における果実品質及び可食部のカリウム含有量の測定結果を示す。 実験5の栽培方法の概略図を示す。 実験5における処理開始前、K制限期間及びK施用期間の植物体の写真を示す。 実験5における果実品質及び可食部のカリウム含有量の測定結果を示す。 実験5において葉におけるカリウム、カルシウム及びマグネシウムの含有量の経時的変化を示す。 実験5において葉におけるカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄及びマンガン含有量の相対比の経時的変化を示す。
以下に、本発明の果樹の栽培方法を詳細に説明する。
本発明の果樹の栽培方法は、カリウムを含まない肥料を用いて果樹の根域制限栽培を行う工程を含む。本明細書において、この工程を第1工程やK制限工程ともいう。K制限工程によって果樹の栽培を行うことによって、根、茎、葉及び果実の各器官中におけるカリウムの含有量を減少させることができ、低カリウム果実の生産を行うことができる。また、本発明者は、K制限工程によれば、低カリウム化に加えて、果樹の葉においてカルシウムの含有量を増加できることを見出した。ブルーベリー等の果樹の葉は、茶の原料として利用できるため、本発明により生産される果樹の葉は、カルシウム含有量の高い茶の原料として好適である。
本発明の果樹の栽培方法において、第1工程に用いる肥料は、カリウムを含まない肥料であり、該肥料を水に溶かした培養液(養液)であることが好ましい。
肥料は、植物を生育させるため、一般に、窒素(N)、カリウム(K)、リン(P)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)を含み、更に、硫黄(S)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、塩素(Cl)等の元素を含むものが通常である。これに対して、上記第1工程に用いる肥料は、カリウムを含まないため、根、茎、葉及び果実の各器官中におけるカリウムの含有量を減少させることができる。本明細書において「カリウムを含まない肥料」とは、カリウム元素の含有量が0である肥料を指すが、例えば養液として使用する場合、肥料の溶解に用いる水、特には水道水にカリウムが含まれる。このため、第1工程において肥料を養液の形態として用いる場合においては、養液中に含まれるカリウム量は0であることが好ましいものの、水道水中に含まれる程度の無視できる量、例えば、10ppm以下の量は、本発明の目的を害しない範囲の量であり、許容できる。
第1工程に用いる肥料は、窒素(N)、リン(P)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)を含むことが好ましく、更に、硫黄(S)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、塩素(Cl)等の元素を含むものがより好ましい。言い換えれば、第1工程に用いる肥料は、カリウムを除けば、通常の肥料の処方に従うものが好ましい。例えば、第1工程に用いる肥料は、園試処方、園試処方の各成分の濃度を2分の1とする1/2園試処方等の処方において、硝酸カリウム(KNO)を硝酸(HNO)に置換したK制限処方に従い調製される培養液(K制限養液)であることが好ましい。園試処方、1/2園試処方、及び1/2園試処方の硝酸カリウムを硝酸に置換したK制限処方の例を表1に示す。
Figure 0007343872000001
第1工程に用いる肥料は、HNOの含有量が0.2392~0.2644g/L、NHPOの含有量が0.0722~0.0798g/L、Ca(NO)・4HOの含有量が0.4484~0.4988g/L、MgSO・7HOの含有量が0.2337~0.2583g/L、HBOの含有量が0.00408~0.00450g/L、MnCl・4HOの含有量が0.002579~0.002851g/L、ZnSO・7HOの含有量が0.000188~0.000208g/L、CuSO・5HOの含有量が0.000057~0.000063g/L、NaMoO・2HOの含有量が0.0000356~0.0000394g/L、C1012NaFe・3HO(キレート鉄,EDTA-Fe)の含有量が0.009670~0.010688g/Lであり、カリウムを含まない培養液であることが好ましい。
第1工程において肥料を養液として用いる場合においては、果樹の種類に応じてpHを調整することが好ましく、例えばブルーベリーのように酸性の土壌を好む果樹の栽培においては、養液のpHが4.0~5.5であることが好ましい。pHの調整には、ダウン剤(リン酸)、水酸化ナトリウム等を使用することができる。
第1工程において、果樹の栽培は、根域制限栽培にて行われる。果樹は、土壌中に根を張る領域(根域)が広く深いことから、一般的な栽培では養分の制御が容易ではない。このため、カリウムを含まない肥料を用いることに加えて、果樹の根域制限栽培を行うことで、低カリウム果実の生産を行うことができる。
本明細書において「根域制限栽培」とは、土壌の量を制限した培地において果樹の栽培を行うことを指し、容器に植物を植えて、土壌の量を制限する手法や、土壌の代わりに果樹(根)の支持体として培土(固形培地ともいう)を用いる手法等が好適に挙げられ、これらの手法を併用することがより好ましい。
本明細書において「容器に植物を植えて栽培を行う手法」を「容器栽培」と称する。容器としては、鉢、プランター、コンテナー等が挙げられ、鉢を容器とするポット栽培が好ましい。
本明細書において、土壌の代わりに果樹(根)の支持体として使用できる固形培地としては、天然素材系培地と非天然素材系培地(人工培土ともいう)に分類できる。また、天然素材系培地及び非天然素材系培地は、それぞれ無機材料培地と有機材料培地に分類できる。ここで、天然素材系の無機材料培地としては、例えば、礫、砂等の粒状のもの等が挙げられ、天然素材系の有機材料培地としては、例えば、モミガラ、オガクズ等の粒状のもの、ヤシ殻等の繊維状のもの、バーク、ピートモス、ヤシ殻ダスト等が挙げられる。また、非天然素材系の無機材料培地としては、例えば、人工礫、くん炭、多孔質セラミック等の粒状のもの、ロックウール(スラブ、粒状綿も含む)等の繊維状のもの、パーライト、バーミキュライト等が挙げられる。非天然素材系の有機材料培地としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、酢酸セルロース等の樹脂から構成されるフォーム状又はスポンジ状のもの、セルロース、ポリエステル繊維等の樹脂から構成される繊維状のもの、粒状ポリエステル等の樹脂から構成される粒状のもの等が挙げられる。また、これら固形培地は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1工程において、果樹の根域制限栽培は、養分を蓄積せず、また、水洗が容易であることから、容器栽培であることや、天然素材系および非天然素材系の有機材料培地を用いることが望ましい。また、有機材料培地は肥料の保持が低いことが好ましい。すなわち、塩基置換容量が低い素材が好ましい。また、非天然素材系の有機材料培地としては、ポリウレタン樹脂から構成されるフォーム状又はスポンジ状の培地が好ましい。
なお、塩基置換容量とは、陽イオン交換容量(CEC)とも称され、塩基置換容量が低い程、肥料を保持する能力が低いことを示す。塩基置換容量は10meq/100g以下であることが好ましい。塩基置換容量の下限値は、特に制限されるものではなく、例えば5meq/100g以上である。また、本明細書において、塩基置換容量は、土壌粒子に吸着したアンモニアをナトリウムで置換し、出てきたアンモニアをホルマリンで酸性化合物に変換して、アルカリ中和滴定で量を求める簡便法によって測定される値である。
本発明の果樹の栽培方法において、第1工程(K制限工程)は、開花期又は着色期に開始されることが好ましく、着色期に開始されることがより好ましい。本発明の果樹の栽培方法は、低カリウム果実の生産を目的とすることから、収穫期の前からK制限工程を行うことが好ましく、また、収穫期に入り、果実を収穫している間もK制限工程を行うことが好ましい。一方、K制限工程の開始時期が早すぎると、カリウム欠乏症等の発症の恐れもあるため、収穫期において、カリウム欠乏症等の発症もなく、果実等の可食部でのカリウム含有量が十分に低減できるような時期にK制限工程を開始することが好ましい。従って、第1工程(K制限工程)を、開花期又は着色期に開始することが好ましく、着色期に開始することがより好ましい。
本明細書において、果樹のライフサイクルは、萌芽期の開始から開花期の開始までの期間を栄養成長期とし、開花期の開始から、着色期を経て、収穫期の終わりまでの期間を生殖成長期とし、収穫期の終わりから萌芽期の開始までの期間を休眠期とする。
ここで、「萌芽期」とは、芽を出す時期であり、本明細書においては、休眠期から最初の芽の形成が目視にて確認できた時を「萌芽期の開始」とし、「開花期の開始」までを「萌芽期」とする。「開花期」とは、花が咲いている時期であり、本明細書においては、萌芽期から最初の開花が目視にて確認できた時を「開花期の開始」とする。「着色期」とは、果実が徐々に柔らかくなり色づき、熟していく時期であり、本明細書においては、果実表面が一部でも成熟した果実が持つ色(ブルーベリーの場合は青紫色)に着色した果実が目視にて最初に確認できた時を「着色期の開始」とし、「収穫期の開始」までを「着色期」とする。「収穫期」とは、成熟した果実を収穫する時期であり、成熟した果実が目視にて最初に確認できた時を「収穫期の開始」とし、樹全体に着生された果実が全て収穫されたことを目視にて確認できた時を「収穫期の終わり」とする。
本発明の果樹の栽培方法において、第1工程(K制限工程)は、3ヶ月以内の期間行われることが好ましく、1ヶ月以上3ヶ月以内の期間行われることがより好ましい。本発明の果樹の栽培方法は、低カリウム果実の生産を目的とすることから、K制限工程を長い期間行うことが好ましいものの、K制限工程を行う期間が長すぎると、カリウム欠乏症等の発症の恐れもあるため、収穫期において、カリウム欠乏症等の発症もなく、果実等の可食部でのカリウム含有量が十分に低減できるような期間でK制限工程を行うことが好ましい。従って、第1工程(K制限工程)は、3ヶ月以内の期間行われることが好ましく、1ヶ月以上3ヶ月以内の期間行われることがより好ましい。
本発明の果樹の栽培方法は、第1工程(K制限工程)において、カリウムを含まない肥料を用いて果樹の根域制限栽培を行う前に、果樹の根域に対して水洗を行うことが好ましい。本発明の果樹の栽培方法は、K制限工程を行う期間を除けば、栄養成長期及び生殖成長期においてカリウムを含む肥料を用いて果樹の栽培を行うことが好ましく、K制限工程を開始する際に、果樹の根域(例えば培地など)に対して水洗を行い、土壌や、土壌の代わりである固形培地中に蓄積したカリウムを洗い流すことが好ましい。カリウムを含まない肥料を用いて果樹の根域制限栽培を開始する前に、果樹の根域に対して水洗を行うことによって、根、茎、葉及び果実の各器官中におけるカリウムの含有量を大幅に減少させることができる。
水洗は、水(例えば水道水)を用いる通常の灌水によって行うことができる。水洗は、期間を長くするほど蓄積したカリウムを洗い流すことができるが、例えば、水洗後の排液の電気伝導率(Electric Conductivity,EC)が水(例えば水道水)のECと同程度になるまで行うことが好ましい。本発明において、水洗は、水洗後の排液ECが0.1~0.5mS/cmの範囲になるまで行うことが好ましく、0.1~0.2mS/cmの範囲になるまで行うことが更に好ましい。本明細書において、電気伝導率は、水溶液塩類の総量の指標となり、市販品のECメーターを用いて容易に測定できる。
本発明において、水洗の期間は1日以上5日以下の期間であることが好ましい。また、水洗は、1日に1回でもよいし、1日に複数回、例えば3~8回行ってもよいが、1日の灌水量は、培養土1Lあたり500~1000mLの範囲内であることが好ましい。
本発明においては、水洗を行う場合、植物の培地は、非天然素材系の有機材料培地を用いることが好ましく、ポリウレタン樹脂から構成されるフォーム状又はスポンジ状の培地を用いることが更に好ましい。これら好ましい固形培地であれば、他の培地と比較して急速に排液ECを低下させることができる。
第1工程(K制限工程)において、日長時間、光強度、潅水量、温度、相対湿度、CO濃度、培地pH、培地EC(Electric Conductivity(電気伝導度):肥料濃度を推定できる)等の各種パラメーターを植物の生育に適した範囲に調節することが好ましい。また、このようなパラメーターは、光源、暖房機、冷房設備、送風機、除湿器、加湿器、換気扇、ドライミスト及び遮光カーテンといった各種の装置を単独で或いは組み合わせて使用することで実現することができる。そのためには、これら装置を組み込んだ人工光を利用した閉鎖系室や、これら装置を備える通常の太陽光を利用した温室が好ましいが、潅水量および養液の制御が可能な装置を備える露地も利用できる。
例えば、相対湿度は約30~80%の範囲とすることが好ましく、CO濃度は約400~600μmol・mol-1の範囲とすることが好ましく、培地pHは約4.0~5.5の範囲とすることが好ましく、培地ECは約0.7~1.2mS/cm程度とすることが好ましい。
本発明の果樹の栽培方法は、第1工程(K制限工程)を開始するまでの栽培法について特に制限されるものではないが、第1工程(K制限工程)の前にカリウムを含む肥料を用いて果樹の栽培を行う工程を更に含むことが好ましい。本明細書において、この工程を第2工程ともいう。
本発明の果樹の栽培方法において、第2工程に用いる肥料は、カリウムを含む肥料であり、該肥料を水に溶かした培養液(養液)であることが好ましい。
第2工程に用いる肥料は、窒素(N)、カリウム(K)、リン(P)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)を含むことが好ましく、更に、硫黄(S)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、塩素(Cl)等の元素を含むものがより好ましい。言い換えれば、第2工程に用いる肥料は、通常の肥料の処方に従うものが好ましい。例えば、第2工程に用いる肥料は、園試処方や園試処方の各成分の濃度を2分の1とする1/2園試処方等に従い調製される培養液であることが好ましい。
第2工程に用いる肥料は、KNOの含有量が0.384~0.424g/L、NHPOの含有量が0.0722~0.0798g/L、Ca(NO)・4HOの含有量が0.4484~0.4988g/L、MgSO・7HOの含有量が0.2337~0.2583g/L、HBOの含有量が0.00408~0.00450g/L、MnCl・4HOの含有量が0.002579~0.002851g/L、ZnSO・7HOの含有量が0.000188~0.000208g/L、CuSO・5HOの含有量が0.000057~0.000063g/L、NaMoO・2HOの含有量が0.0000356~0.0000394g/L、C1012NaFe・3HO(キレート鉄,EDTA-Fe)の含有量が0.009670~0.010688g/Lである培養液であることが好ましい。
第2工程において肥料を養液として用いる場合においては、果樹の種類に応じてpHを調整することが好ましく、例えばブルーベリーのように酸性の土壌を好む果樹の栽培においては、養液のpHが4.0~5.5であることが好ましい。pHの調整には、ダウン剤(リン酸)、水酸化ナトリウム等を使用することができる。
第2工程において、果樹の栽培は、第1工程と同様に、根域制限栽培にて行われることが好ましい。ここで、「根域制限栽培」としては、容器に植物を植えて、土壌の量を制限する手法や、土壌の代わりに果樹(根)の支持体として固形培地を用いる手法等が好適に挙げられ、これらの手法を併用することがより好ましい。
第2工程において、容器栽培としては、ポット栽培が好ましい。また、第2工程において、土壌の代わりに果樹(根)の支持体として使用できる固形培地としては、天然素材系および非天然素材系の有機材料培地が望ましい。また、有機材料培地は肥料の保持が低いことが好ましい。すなわち、塩基置換容量が低い素材が好ましい。塩基置換容量は10meq/100g以下であることが好ましい。塩基置換容量の下限値は、特に制限されるものではなく、例えば5meq/100g以上である。また、非天然素材系の有機材料培地としては、ポリウレタン樹脂から構成されるフォーム状又はスポンジ状の培地が更に好ましい。
本発明の果樹の栽培方法において、第2工程は、例えば栄養成長期に開始してもよいし、開花期に開始してもよい。そして、第2工程は、第1工程(K制限工程)が行われるまで(第1工程において水洗を行う場合は水洗を開始するまで)行うことが好ましい。
本発明の果樹の栽培方法において、第2工程の期間は、特に制限されるものではないが、例えば第2工程を栄養成長期から開始し、第1工程の開始まで行う場合、第2工程の期間は、1ヶ月以上3ヶ月以内の期間を例示することができ、また、第2工程を開花期から開始し、第1工程の開始まで行う場合、第2工程の期間は、0.5ヶ月以上2ヶ月以内の期間を例示することができる。
上記第2工程において、日長時間、光強度、潅水量、温度、相対湿度、CO濃度、培地pH、培地EC(Electric Conductivity(電気伝導度):肥料濃度を推定できる)等の各種パラメーターを植物の生育に適した範囲に調節することが好ましい。また、このようなパラメーターは、光源、暖房機、冷房設備、送風機、除湿器、加湿器、換気扇、ドライミスト及び遮光カーテンといった各種の装置を単独で或いは組み合わせて使用することで実現することができる。そのためには、これら装置を組み込んだ人工光を利用した閉鎖系室や、これら装置を備える通常の太陽光を利用した温室が好ましいが、潅水量および養液の制御が可能な装置を備える露地も利用できる。
例えば、相対湿度は約30~80%の範囲とすることが好ましく、CO濃度は約400~600μmol・mol-1の範囲とすることが好ましく、培地pHは約4.5~5.5の範囲とすることが好ましく、培地ECは約0.7~1.2mS/cm程度とすることが好ましい。
本発明の果樹の栽培方法は、第1工程(K制限工程)の後にカリウムを含む肥料を用いて果樹の栽培を行う工程を更に含むことが好ましい。本明細書において、この工程を第3工程又はK施用工程ともいう。K施用工程によって果樹の栽培を行うことによって、第1工程(K制限工程)により低減したカリウムの含有量を回復させることができる。これにより、カリウム欠乏症の発生を防止することができ、果樹の栽培を継続して行うことが可能となる。このため、本発明の果樹の栽培方法は、第1工程及び第3工程を含むサイクル又は第2工程、第1工程及び第3工程を含むサイクルを繰り返し行うことで、継続的な低カリウム果実の生産が期待できる。
本発明の果樹の栽培方法において、第3工程に用いる肥料は、カリウムを含む肥料であり、該肥料を水に溶かした培養液(養液)であることが好ましい。
第3工程に用いる肥料は、窒素(N)、カリウム(K)、リン(P)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)を含むことが好ましく、更に、硫黄(S)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、塩素(Cl)等の元素を含むものがより好ましい。言い換えれば、第3工程に用いる肥料は、通常の肥料の処方に従うものが好ましい。例えば、第3工程に用いる肥料は、園試処方や園試処方の各成分の濃度を2分の1とする1/2園試処方等に従い調製される培養液であることが好ましい。
第3工程に用いる肥料は、KNOの含有量が0.384~0.424~g/L、NHPOの含有量が0.0722~0.0798g/L、Ca(NO)・4HOの含有量が0.4484~0.4988g/L、MgSO・7HOの含有量が0.2337~0.2583g/L、HBOの含有量が0.00408~0.00450g/L、MnCl・4HOの含有量が0.002579~0.002851g/L、ZnSO・7HOの含有量が0.000188~0.000208g/L、CuSO・5HOの含有量が0.000057~0.000063g/L、NaMoO・2HOの含有量が0.0000356~0.0000394g/L、C1012NaFe・3HO(キレート鉄,EDTA-Fe)の含有量が0.009670~0.010688g/Lである養液であることが好ましい。
第3工程において肥料を養液として用いる場合においては、果樹の種類に応じてpHを調整することが好ましく、例えばブルーベリーのように酸性の土壌を好む果樹の栽培においては、養液のpHが4.0~5.5であることが好ましい。pHの調整には、ダウン剤(リン酸)、水酸化ナトリウム等を使用することができる。
第3工程において、果樹の栽培は、第1工程と同様に、根域制限栽培にて行われることが好ましい。ここで、「根域制限栽培」としては、容器に植物を植えて、土壌の量を制限する手法や、土壌の代わりに果樹(根)の支持体として固形培地を用いる手法等が好適に挙げられ、これらの手法を併用することがより好ましい。
第3工程において、容器栽培としては、ポット栽培が好ましい。また、第3工程において、土壌の代わりに果樹(根)の支持体として使用できる固形培地としては、天然素材系および非天然素材系の有機材料培地が望ましい。また、有機材料培地は肥料の保持が低いことが好ましい。すなわち、塩基置換容量が低い素材が好ましい。塩基置換容量は10meq/100g以下であることが好ましい。塩基置換容量の下限値は、特に制限されるものではなく、例えば5meq/100g以上である。また、非天然素材系の有機材料培地としては、ポリウレタン樹脂から構成されるフォーム状又はスポンジ状の培地が更に好ましい。
本発明の果樹の栽培方法において、第3工程(K施用工程)は、果樹の葉においてカリウム欠乏症が確認される前に開始することが好ましく、具体的には果樹の葉の褐変や巻き込みが発生する前に開始することが好ましい。果樹の葉においてカリウム欠乏症が確認される前に第3工程を開始することで、第1工程(K制限工程)により低減したカリウムの含有量をより確実に回復させることができる。
本発明の果樹の栽培方法において、第3工程(K施用工程)は、例えば第1工程(K制限工程)と同程度の期間行うことができ、3ヶ月以内の期間行われることが好ましく、1ヶ月以上3ヶ月以内の期間行われることがより好ましい。
上記第3工程において、日長時間、光強度、潅水量、温度、相対湿度、CO濃度、培地pH、培地EC(Electric Conductivity(電気伝導度):肥料濃度を推定できる)等の各種パラメーターを植物の生育に適した範囲に調節することが好ましい。また、このようなパラメーターは、光源、暖房機、冷房設備、送風機、除湿器、加湿器、換気扇、ドライミスト及び遮光カーテンといった各種の装置を単独で或いは組み合わせて使用することで実現することができる。そのためには、これら装置を組み込んだ人工光を利用した閉鎖系室や、これら装置を備える通常の太陽光を利用した温室が好ましいが、潅水量および養液の制御が可能な装置を備える露地も利用できる。
例えば、相対湿度は約30~80%の範囲とすることが好ましく、CO濃度は約400~600μmol・mol-1の範囲とすることが好ましく、培地pHは約4.0~5.5の範囲とすることが好ましく、培地ECは約0.7~1.2mS/cm程度とすることが好ましい。
本発明の果樹の栽培方法において、対象となる果樹は、特に制限されるものではないが、ブルーベリー、ラズベリー、ミカンやレモン等の柑橘類、桜桃、リンゴ、梨、ビワ、ブドウ、マンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツ等の果樹などが好適に挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<実験1>
[材料及び方法]
材料:サザンハイブッシュブルーベリー「Sharpblue」を用いた。
期間:2015年5月6日~7月15日(71日間)
場所:軒高温室
栽培方法:培地としてピートモスを用いたポットでの養液土耕栽培(植え替えから処理開始までは水道水による灌水を行った)。図1は、実験1の栽培方法の概略図を示す。
処理区:
・対照区:2015年5月6日から7月15日まで(開花期から収穫期において)表1に示される1/2園試処方に従い調製された培養液(以下、単に「1/2園試処方」という)を用いて栽培を行った。
・K着色期制限区:2015年5月6日から6月10日まで(開花期から着色期)1/2園試処方を用い、2015年6月11日から7月15日まで(着色期から収穫期において)表1に示されるK制限処方に従い調製された培養液(以下、単に「K制限養液」という)を用いて栽培を行った。
・K開花期制限区:2015年5月6日から7月15日まで(開花期から収穫期において)K制限養液を用いて栽培を行った。
対照区及びK着色期制限区では6株の苗木、K開花期制限区では3株の苗木を対象に栽培が行われた。
[結果]
各器官のカリウム(K)含有量の測定結果を図2に示す。なお、第2-1図において、各器官の3つのバーは、左から対照区、K着色期制限区、K開花期制限区の測定結果を示す。
第2-1図は、カリウム減少率が、K開花期制限区>K着色期制限区であり、また、葉>根>茎>果実であったことを示す。
第2-2図は、K開花期制限区及びK着色期制限区で対照区より有意にカリウムが減少したが、K開花期制限区とK着色期制限区の間に有意な差はなかったことを示す。
[考察]
K制限によって植物体の成育と果実品質に影響を及ぼすことなく、K制限区で可食部のカリウムが有意に減少した。これにより、ピートモス及びポットを利用した養液土耕栽培において低カリウム果実の生産が可能であることが示唆された。
カリウム含有量は、K制限期間が長いほど各器官で有意に減少し、特に葉で顕著だったが、可食部ではそれほど差がなかった。可食部のカリウム含有量についてK制限期間による有意な差はみられなかったが、制限期間が長いほどカリウムは減少した。
図示しないが、カルシウム含有量は、葉においてK開花期制限区が対照区よりも有意に増加した。制限したカリウムの代替要素としてカルシウムが考えられる。
<実験2>
[材料及び方法]
材料:サザンハイブッシュブルーベリー「Sharpblue」を用いた。
場所:軒高温室
方法:培地としてピートモスを用いた処理区(ピートモス区)及び培地としてサントリーミドリエ株式会社から購入した「パフカル」を用いた処理区(パフカル区)を用意した。各処理区では、ポットに土のみを入れ、各3ポットで実験が行われた。1/2園試処方を潅水してから1、3及び5日後、その後水道水を灌水してから、1、3及び5日後の排液ECを測定した。結果を図3に示す。
[結果及び考察]
パフカル区の排液ECは、1/2園試処方のEC近くまで上昇し、水道水を与えると急速に低下した。
1/2園試処方による灌水の5日後におけるパフカル区の排液ECは、1/2園試処方のECと同じ値を示した。この結果より、パフカルは、ピートモスより、養分を蓄積しない培地、すなわち、塩基置換容量が小さいと考えられる。
排液ECの最大から処理終了時の減少率は、パフカル区>ピートモス区であった。パフカルは、ピートモスより、培地の水洗が容易であることが考えられる。
<実験3>
[材料及び方法]
材料:(果樹)サザンハイブッシュブルーベリー「Sharpblue」を用いた。(培地)サントリーミドリエ株式会社から購入した「パフカル」を用いた。
期間:2017年2月22日~5月16日(84日間)
場所:軒高温室
栽培方法:ポットでの養液土耕栽培から2016年5月にパフカルに植え替えて、栽培を行い、2017年2月22日から一部のポットに対してK制限処理を開始した。2017年2月22日まではいずれも1/2園試処方にて栽培を行った。図4は、実験3の栽培方法の概略図を示す。
処理区:
・対照区:2017年2月22日から5月16日まで(着色期から収穫期において)1/2園試処方を用いて栽培を行った。
・K制限区:2017年2月22日から5月16日まで(着色期から収穫期において)K制限養液を用いて栽培を行った。
各処理区では、7株の苗木を対象に栽培が行われた。
[結果]
果実品質及び可食部のカリウム含有量の測定結果を図5に示す。図5は、対照区とK制限区の間に果実品質の差はないが、可食部のカリウム含有量では、対照区と比較してK制限区で有意に減少したことを示す。
葉及び可食部のカリウム、カルシウム及びマグネシウム含有量の測定結果を図6に示す。図6から分かるように、カリウム含有量は、葉及び可食部ともにK制限区で有意に減少した。カルシウム含有量は、葉についてK制限区で増加したが、可食部ではK制限区で減少した。マグネシウム含有量は、葉及び可食部ともに対照区とK制限区で差はなかった。
[考察]
Kを制限しても果実品質に影響はなく、可食部のカリウム含有量を有意に減少させることができた。培地としてパフカルを用いることにより、低カリウム果実の生産の可能性が示唆された。
可食部のカリウム含有量は、対照区と比較して有意に減少したが、さらに減少させるためには更なる改良を行う必要がある。
カルシウム含有量は、葉についてK制限区で有意に増加した。これは、制限したカリウムの代替要素としてカルシウムが考えられる。
パフカルは、あまり養分を蓄積させない培地であるものの、多少は養分が蓄積しているものと考えられた。そのため、実験1のK着色期制限区と同程度のカリウム減少率に留まったものと考えられる。
<実験4>
[材料及び方法]
材料:(果樹)サザンハイブッシュブルーベリー「Sharpblue」を用いた。(培地)サントリーミドリエ株式会社から購入した「パフカル」を用いた。
期間:2017年10月3日~11月28日(57日間、このうち10月3日~7日の5日間は洗浄期間である)
場所:軒高温室
栽培方法:ポットでの養液土耕栽培を行い、K制限処理開始前にすべての対象に対して培地を水道水で洗浄し、培地中に蓄積したカリウムを洗い流した。水道水による洗浄を行うまではいずれも1/2園試処方にて栽培を行った。水道水による洗浄では、5日間で30Lの水道水を灌水し、その結果、排液ECは0.16mS/cmまで下がった。図7は、実験4の栽培方法の概略図を示す。
処理区:
・対照区:水道水による洗浄後、即ち2017年10月8日から11月28日まで(着色期から収穫期において)1/2園試処方を用いて栽培を行った。
・K制限区:水道水による洗浄後、即ち2017年10月8日から11月28日まで(着色期から収穫期において)K制限養液を用いて栽培を行った。
各処理区では、7株の苗木を対象に栽培が行われた。
[結果]
果実品質及び可食部のカリウム含有量の測定結果を図8に示す。図8は、対照区とK制限区の間に果実品質の差はないが、可食部のカリウム含有量では、対照区と比較してK制限区で有意に減少したことを示す。
[考察]
Kを制限しても果実品質に影響はなく、可食部のカリウム含有量を有意に減少させることができた。パフカルと水洗の組み合わせは、可食部のカリウム含有量を50%程度まで減少させることができる低カリウム果実生産の栽培システムであると考えられる。
上記より、培地の洗浄が低カリウム果実を生産する上で効果的であると考えられる。
なお、これまでの実験において、カリウム欠乏症は確認されていない。このため、実験5では、カリウム欠乏症がどの段階で発生するのかを確認する実験を行った。
<実験5>
[材料及び方法]
材料:(果樹)サザンハイブッシュブルーベリー「Sharpblue」を用いた。(培地)サントリーミドリエ株式会社から購入した「パフカル」を用いた。
期間:2017年2月22日~11月28日(280日間)
場所:軒高温室
栽培方法:ポットでの養液土耕栽培。2017年2月22日から5ヵ月間(着色期から収穫期の間)K制限養液を用いて栽培を行い(この期間をK制限期間とする)、2017年7月27日から4ヵ月間1/2園試処方を用いて栽培を行った(この期間をK施用期間とする)。4株の苗木を対象に栽培が行われた。図9は、実験5の栽培方法の概略図を示す。
[結果]
処理開始前、K制限期間及びK施用期間の植物体の写真を図10に示す。カリウム欠乏症は、K制限処理を開始してから3ヶ月後に出始め、5ヶ月後には植物体の全体にみられた。剪定してK施用後、カリウム欠乏症は現れなかった。
果実品質及び可食部のカリウム含有量の測定結果を図11に示す。第11-1表は、1果実重が対照区と比較してK制限期間の3ヶ月後から有意に減少し、糖度も減少傾向がみられたことを示す。第11-1図は、K制限期間の2~5ヶ月後の間で可食部のカリウムは有意に減少しなかったが、対照区と比べるとカリウムは31~45%減少したことを示す。図11の結果から、K制限期間は3ヶ月以内が適していると考えられる。なお、図11において、対照区は、同時期・栽培方法の実験3における対照区の収穫果実の測定結果である。
葉におけるカリウム、カルシウム及びマグネシウムの含有量の経時的変化を図12に示す。カリウムの含有量は、K制限期間の5ヶ月後まで減少し、K施用期間に切り替えてから増加した。カルシウムとマグネシウムの含有量は、K制限期間の5ヶ月後まで増加し、K施用期間に切り替えてから減少した。
葉におけるカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄及びマンガン含有量の相対比の経時的変化を図13に示す。各バーは、下から順にK、Ca、Mg、Fe、Mnの相対比を示す。図13は、カリウムが減るとカルシウムが増え、カリウムが増えるとカルシウムが減ったことを示す。
[考察]
K欠乏症は、K制限期間を開始してから3ヶ月で出始め、5ヶ月後には植物体全体に拡がった。また、剪定して1/2園試処方を与えるとその後はK欠乏症がみられなかった。これらの結果から、K制限期間は3ヶ月以内が適しており、また、K施用を再開すればK欠乏症の発生はなくなるものと考えられる。
K制限期間を長くしても(2~5ヶ月の間で)可食部のカリウム含有量は減少しなかった。カリウムが他の器官から果実に転流した可能性が考えられる。即ち、果実はsink activityが強い可能性がある。
葉のカリウム含有量は、K施用期間の開始から3ヶ月後には、K制限処理前と同程度まで増加(回復)した。また、葉のカルシウムとマグネシウムの含有量は、ピーク時(K施用期間の開始から5ヶ月後)より有意に減少(回復)した。このことから、葉のK・Ca・Mgにおいて、K制限期間での含有量の増加又は減少が、K施用期間により回復できることが分かる。
以上より、K制限期間は3ヶ月以内が適しており、また、その後のK施用によって植物体を回復させることができる。
多量要素は、K欠乏による増加または減少からの回復が早い。

Claims (7)

  1. カリウムを含まない肥料を用いて果樹の根域制限栽培を行う第1工程であって、前記根域制限栽培が天然素材系培地および非天然素材系培地から選択される有機材料培地を用いる第1工程を含み、前記果樹がブルーベリーであることを特徴とするブルーベリーの栽培方法。
  2. 前記根域制限栽培が容器栽培であることを特徴とする請求項1に記載のブルーベリーの栽培方法。
  3. 前記第1工程において、カリウムを含まない肥料を用いて果樹の根域制限栽培を行う前に、果樹の根域に対して水洗を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のブルーベリーの栽培方法。
  4. 前記第1工程が、開花期又は着色期に開始されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のブルーベリーの栽培方法。
  5. 前記第1工程が、3ヶ月以内の期間行われることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のブルーベリーの栽培方法。
  6. 前記第1工程の前にカリウムを含む肥料を用いて果樹の栽培を行う第2工程を更に含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のブルーベリーの栽培方法。
  7. 前記第1工程の後にカリウムを含む肥料を用いて果樹の栽培を行う第3工程を更に含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のブルーベリーの栽培方法。
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