JP7343191B2 - 液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー - Google Patents

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Description

本発明は液体を混合するためのミキサー、特に2種類以上の液体を混合する液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーにおける混合効率の向上に関する。
従来から、液体クロマトグラフィーなどの各種分析分野において液体を混合するためにスタティックミキサーが利用されている。このスタティックミキサーにはさまざまな種類のものがあり、その用途に合わせて多様な工夫がなされている。特に、昨今では混合する液体等の種類もさまざまであり、ミキサーとしてこれらの液体等に対応できるようにするとともに混合効率を上げるためにいろいろな工夫がなされている。
例えば特許文献1には、パイプの円柱状内部空間の横断面を2つに分割して2本の流路を形成するように捻り羽根エレメントを配置し、この捻り羽根エレメントに形成した前記2本の流路のうちの一方の流路を流れる液状体の一部がもう一方の流路へ流入するように孔を設けることで、撹拌作用をより向上させるとともに撹拌対象である液状体の適用範囲が広く、圧力損失が小さい流体撹拌装置(スタティックミキサー)に関する技術が開示されている。
また、特許文献2には、配管内部において複数個のバルブ(ボールバルブまたはバタフライバルブ)を半開状態で直列に配置し、隣接するバルブのバルブ軸心線周りの位相が異なるように設定することで、通過した液体等の乱流化を促進させて十分な混合を実現できる流体混合装置に関する技術が開示されている。
特開2005-34750号公報 特開2011-83763号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている構造であれば捻り羽根エレメントの所定位置に孔を設けるという従来の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーの構造に簡単な工夫を加えることで撹拌作用を向上させることができるが、あくまでも従来の機構により混合するものであり、混合効率が大きく向上するとは言えない。
同様に、特許文献2のように複数個のバルブを直列配置することで乱流化を促進させて十分な混合を実現できるが、このような特有の構造であってもやはり従来の方法と同様であるため混合効率を格段に向上させることは非常に困難であり、まだまだ改良の余地がある。
本発明は上記従来技術の課題に鑑みて行われたものであって、その目的は従来のスタティックミキサーと比較して混合効率を向上させるとともに、さらに動力部を有するダイナミックミキサーと比較しても遜色のない混合効率を有する液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーを提供することである。
上記課題を解決するために、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーは、
2種類以上の液体が流入する液体流入口と、該液体流入口の後段に接続され前記2種類以上の液体を混合する液体混合ユニットと、該液体混合ユニットの後段に接続され混合された前記2種類以上の液体が流出する液体流出口と、を備えた液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
前記液体混合ユニットは、内部に備える捻り螺旋棒で前記2種類以上の液体を乱流により混合する略円筒形状の細長いキャピラリーミキサーと、該キャピラリーミキサーの後段に位置し流れ込んだ前記2種類以上の液体を内部での拡散または乱流拡散により混合するミキシングチャンバーと、前記ミキシングチャンバーの出口に配置され、前記2種類以上の液体の整流効果を有する多孔質体と、を含んで構成された乱流拡散ミキサー部を有し、
前記ミキシングチャンバーは、少なくとも前記キャピラリーミキサーよりも大きい体積を有し、
さらに前記液体混合ユニットは、少なくとも2つの前記乱流拡散ミキサー部が直列に接続されていることを特徴とする。
また、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーにおいて
前記液体混合ユニットは、前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
前記第1乱流拡散ミキサー部の液体容量は前記第2乱流拡散ミキサー部の液体容量よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーにおいて
前記液体混合ユニットは、前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
前記第1乱流拡散ミキサー部の液体容量は前記第2乱流拡散ミキサー部の液体容量と略同一であることを特徴とする。
また、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーにおいて
前記液体混合ユニットは、前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
前記第1乱流拡散ミキサー部の液体容量は前記第2乱流拡散ミキサー部の液体容量よりも小さいことを特徴とする。
また、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーにおいて
前記液体混合ユニットは、前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
さらに前記液体混合ユニットは、前記第2乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第3乱流拡散ミキサー部を備えることを特徴とする。
また、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーにおいて
前記液体流出口はその内部に捻り螺旋板を備え、該捻り螺旋板により前記液体混合ユニットで混合された前記2種類以上の液体をさらに混合して当該液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーの外部に前記2種類以上の液体を流出することを特徴とする。
また、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーは、前記液体混合ユニットにおける複数の前記乱流拡散ミキサー部の直列接続を切り替える切替バルブ機構を有し、前記切替バルブ機構の切り替え動作により前記液体混合ユニットの液体容量が可変されることを特徴とする。
また、本発明にかかる液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーは少なくとも2つの前記乱流拡散ミキサー部同士を配管接続することで前記液体混合ユニットの液体容量が可変されることを特徴とする。
本発明によれば、液体混合ユニットはキャピラリーミキサー(乱流による混合)とその後段に位置するミキシングチャンバー(拡散または乱流拡散による混合)とそのミキシングチャンバーの出口に配置される多孔質体(整流効果)とを備えた特徴的な乱流拡散ミキサー部を有し、少なくとも2つの乱流拡散ミキサー部が直列に接続されることで、従来よりも混合効率が大幅に向上した液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーを提供できる効果を奏する。
本発明の実施形態に係るスタティックミキサーの概略構成図を示す。 本発明の本実施形態に係るキャピラリーミキサーおよび捻り螺旋棒のイメージ写真を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおいて、キャピラリーミキサーとミキシングチャンバーとの接続部分が角度を有する構造の概略図を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおいて液体流出口に捻り螺旋板を備えた場合の概略図を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおいて液体流出口に多孔質体を備えた場合の概略図を示す。 本実施形態に係るスタティックミキサーにおいて多孔質体を備えた別の構成の概略図を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおいて3個の乱流拡散ミキサー部を直列に接続した場合の概略構成図を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおける変形例の概略構成図を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおける変形例の概略構成図を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおける変形例の概略構成図を示す。 本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおける変形例の概略構成図を示す。 グラジエント送液によるベースライン変動およびノイズの測定結果イメージ図を示す。
10 スタティックミキサー
12 液体流入口
14 液体混合ユニット
16 液体流出口
18 捻り螺旋板
18b 多孔質体
20 第1乱流拡散ミキサー部
22 キャピラリーミキサー
24 ミキシングチャンバー
26 捻り螺旋棒
30 第2乱流拡散ミキサー部
32 キャピラリーミキサー
34 ミキシングチャンバー
36 捻り螺旋棒
40 第3乱流拡散ミキサー部
50 切替バルブ
以下、本発明のスタティックミキサーについて図面を用いて説明するが、本発明の趣旨を超えない限り何ら以下の例に限定されるものではない。
図1に本発明の実施形態に係るスタティックミキサーの概略構成図を示す。同図に示すスタティックミキサー10は、2種類以上の液体が流入する液体流入口12と、該液体流入口12の後段に接続され2種類以上の液体を混合する液体混合ユニット14と、該液体混合ユニット14の後段に接続され混合された2種類以上の液体が流出する液体流出口16と、を備えて構成されている。
液体流入口12は、外部からの液体を当該スタティックミキサー10へ流入させるために設けられている。液体流入口12には、例えば2つ以上の液体タンクおよび液体タンクから液体流入口12までの液体流路が接続されている(図示を省略)。液体タンクにはそれぞれ別の種類の液体が入っており、すなわち、液体流入口12には当該スタティックミキサー10の外部から2種類以上の液体が流入されることとなる。
液体混合ユニット14は、液体流入口12側に位置する第1乱流拡散ミキサー部20と、該第1乱流拡散ミキサー部20よりも液体流出口16側に位置する第2乱流拡散ミキサー部30とが直列に接続されている。本実施形態ではこの特徴的な構造を有する第1乱流拡散ミキサー部20および第2乱流拡散ミキサー部30を利用して2種類以上の液体が効率良く混合されることとなる。
第1乱流拡散ミキサー部20は、内部に備える捻り螺旋棒26で2種類以上の液体を乱流により混合するキャピラリーミキサー22と、該キャピラリーミキサー22の後段に位置し流れ込んだ2種類以上の液体を内部での拡散により混合するミキシングチャンバー24と、を含んで構成されている。
キャピラリーミキサー22は、ステンレス、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを含んだ略円筒形状の細長い配管(パイプ)等で構成されている。キャピラリーミキサー22は、その内径がおよそ0.25~3mm程度であることが好ましく、特に好ましくは0.5~2mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.5~1mm程度であることが好適である。また、キャピラリーミキサーの長手寸法は、その内径寸法(または外径寸法)の5倍以上であることが好ましい。
本実施形態では図2のイメージ写真に示すようにキャピラリーミキサー22の内部に捻り螺旋棒26を有して構成されている。また、本実施形態における捻り螺旋棒26はこのような形状に限られずキャピラリーミキサー22内部で液体を混合できれば他の形状であっても良い。また、図1におけるキャピラリーミキサー22は長手方向に直線の細長い形状を有しているが、例えばキャピラリーミキサー22の長手方向において途中から曲がった曲線形状を含んでいても本発明の効果を発揮することができる。
ミキシングチャンバー24は略円筒形状を有しており、内部には液体が流入して所定時間留まることができる空間を有している。本実施形態におけるミキシングチャンバー24は略円筒形状であるが、例えば円錐形状、円錐形状と円筒形状を組み合わせた形状、球状など他の形状でも構わない。
また、ミキシングチャンバー24は、少なくともキャピラリーミキサー22よりも大きい体積を有して構成されている。ミキシングチャンバー24は、キャピラリーミキサー22の1.2倍以上の体積を有していることが好ましく、より好ましくはキャピラリーミキサー22の2倍以上の体積を有していることが好ましく、さらに好ましくは5倍以上の体積を有していることが好適である。さらにミキシングチャンバー24は、略円筒形状の細長いキャピラリーミキサー22に対して拡幅した形状を有していることが好ましい。
図1では、キャピラリーミキサー22とミキシングチャンバー24は直線的に接続されているが、例えば図3に示すように、キャピラリーミキサー22とミキシングチャンバー24との接続部分が上方向や他の方向に曲げられている構造、すなわち当該接続部分(液体がミキシングチャンバー24に流入する部分)が所定の角度を有する構造にすることも出来る。また、図示を省略しているがミキシングチャンバー24から液体が流出する部分についても所定の角度を有する構造にすることが出来る。
同様に第2乱流拡散ミキサー部30は、内部に備える捻り螺旋棒36で2種類以上の液体を乱流により混合するキャピラリーミキサー32と、該キャピラリーミキサー32の後段に位置し流れ込んだ液体を内部での拡散により混合するミキシングチャンバー34と、を含んで構成されている。
本実施形態において、第1乱流拡散ミキサー部20および第2乱流拡散ミキサー部30は同じ液体容量を有するものであっても良いし、あるいはそれぞれ液体容量の異なる第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30とを直列に接続するようにしても良い。本実施形態に係るスタティックミキサー10では、第1乱流拡散ミキサー部20の液体容量が第2乱流拡散ミキサー部30の液体容量よりも大きい。また、第1乱流拡散ミキサー部20の液体容量は第2乱流拡散ミキサー部30の液体容量よりも小さくすることも出来る。
液体流出口16は、液体混合ユニット14が有する第1乱流拡散ミキサー部20および第2乱流拡散ミキサー部30を通過することで効率良く混合された液体を当該スタティックミキサー10の外部に流出させるために設けられている。例えば成分分析において、液体流出口16は、後段に接続される構成等を当該スタティックミキサー10に接続するための接続口として利用することができる。
このように、外部からの2種類以上の液体は、液体流入口12から流入され、液体混合ユニット14(第1乱流拡散ミキサー部20および第2乱流拡散ミキサー部30)を通過して混合され、その後に液体流出口16を経由して外部に流出される。本実施形態に係るスタティックミキサー10は、概略以上のように構成されている。以下、本実施形態における液体の混合メカニズムについて詳しく説明する。
液体の混合について
上記説明のとおり本実施形態に係るスタティックミキサー10は、液体混合ユニット14で2種類以上の液体を混合している。ここでは、液体混合ユニット14の内部における液体の流れについて説明する。まず、液体流入口12から流入した2種類以上の液体は第1乱流拡散ミキサー部20が有するキャピラリーミキサー22へと到達する。
本実施形態におけるキャピラリーミキサー22は略円筒形状の細長い配管等であり、且つ、細長い配管の内部に捻り螺旋棒26を有して構成されている。捻り螺旋棒26は例えば螺旋状の撹拌部材を有する棒状のステンレスなどであり(図2を参照)、液体流入口12から流入された液体がキャピラリーミキサー22内部を通過することによる乱流作用で2種類以上の液体が混合される(1次混合と呼ぶ)。ここで、本明細書における乱流とは液体の速度や圧力などが不規則に変動する流れのことを言う。
また図1に示すように本実施形態における捻り螺旋棒26は、キャピラリーミキサー22内部の長手方向全体に位置しているが、例えば、長手方向の一部にのみ設けたり、あるいは短い捻り螺旋棒26を1カ所ないし2カ所以上設けることもできる。さらに捻り螺旋棒26はキャピラリーミキサー内部に固定されていても良いし、内部である程度捻り螺旋棒自体が動けるように設けても良い。
キャピラリーミキサー22内部で乱流により1次混合された液体は、後段に位置するミキシングチャンバー24へと流入される。上述のとおりミキシングチャンバー24は、略円筒形状を有しており、内部には液体が流入して所定時間留まることができる空間を有している。
そしてキャピラリーミキサー22内部で1次混合された液体は、ミキシングチャンバー24内部で拡散作用ないし乱流拡散作用によりさらに混合が促進される(2次混合と呼ぶ)。本明細書における拡散とは、異なる2種類以上の液体が一様に混ざり合おうとすることを言う。また、本実施形態における乱流拡散とは、液体がキャピラリーミキサー22からミキシングチャンバー24へ流入されることで該液体の流速が遅くなり、すなわち、液体の流路が広がり、その中で流れの乱れが生じることで混合効果が発生することを意味する。
本実施形態における第1乱流拡散ミキサー部20では、キャピラリーミキサー22による乱流で2種類以上の液体を1次混合し、その後段ではミキシングチャンバー24による拡散ないし乱流拡散でさらに液体の2次混合を行うことで、すなわち、本実施形態において液体混合ユニット14が備える第1乱流拡散ミキサー部20は、段階的な混合を行うことで混合効率を向上させている。
さらに本実施形態における液体混合ユニット14は、上記第1乱流拡散ミキサー部20の後段に第2乱流拡散ミキサー部30が設けられている。この第2乱流拡散ミキサー部30は、上述のとおり第1乱流拡散ミキサー部20と同じものを利用しても良いし、あるいは異なる形状や液体容量のものを利用しても良い。また、本実施形態では第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30とを直接接続しているが、例えば第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30とを適切に接続するための液体流路等(例えば配管等)を設けることもできる。
この時、第1乱流拡散ミキサー部20におけるミキシングチャンバー24は、該ミキシングチャンバー24の内部空間を利用して前段のキャピラリーミキサー22による乱流をさらに促進する効果も期待できる。具体的には、キャピラリーミキサー22による乱流である程度混合された液体の流れを不規則に変えてから、第2乱流拡散ミキサー部30へと送ることができる。
このように本実施形態では第1乱流拡散ミキサー部20で第1混合および第2混合による段階的な混合を行い、さらに後段でも第2乱流拡散ミキサー部30を利用して段階的な混合(第1混合に相当する第3混合、および第2混合に相当する第4混合)を行うことで、混合効率を格段に向上させることができる。
さらに図4に示すように、液体流出口16の内部に捻り螺旋板18を備えることで、乱流による追加混合を行うことができる。すなわち、図4におけるスタティックミキサー10では、新たな構成部材を追加することなく3段階もの段階的な混合ができるので、その結果、混合効率をさらに向上させることができる。
また、図5のように、液体流出口16に液体の整流効果を有する多孔質体18bを備えることも出来る。このような構成とすることで、当該スタティックミキサー10から安定した混合液体をカラム等に流出させることができる。この多孔質体18bは、例えば液体流出口16の内部または、ミキシングチャンバー34の出口(液体流出口16側)に配置しても良い。ここで、本実施形態における多孔質体18bは細孔が非常に多く空いている材料を含んで構成されている。本実施形態では、例えばモノリス構造体(共連続体)、スポンジ構造体(連続気泡構造体)、粉体の焼結体等を多孔質体18bとして利用することができる。また、多孔質体18bは、SUS316などの金属材料やPEEKなどのポリマー材料を含んで構成することができる。
図6には、本実施形態に係るスタティックミキサーにおいて多孔質体を備えた別の構成の概略図を示す。同図に示すように例えば多孔質体18b(液体流出口16)を第1乱流拡散ミキサー部20および第2乱流拡散ミキサー部30の両方に設けることで、第1乱流拡散ミキサー部20による安定した混合液体(第1乱流拡散ミキサー部20による混合状態)を得たうえでその後の第2乱流拡散ミキサー部30によりさらに液体を混合させることができる。
そして、本実施形態では液体混合ユニット14に第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30を備えていたが、例えば図7に示すようにさらに第3乱流拡散ミキサー部40(第3キャピラリーミキサー42、第3ミキシングチャンバー44)を備えることで、混合する液体の種類や条件によってさらなる混合効率の向上が期待できる。この第3乱流拡散ミキサー部40を備えたスタティックミキサー10においても例えば図6に示したような特徴的な構造、すなわち多孔質体18b(または図4に示した捻り螺旋板18)をそれぞれの乱流拡散ミキサー部(20、30、40)の出口側に設けることも出来る。
変形例
図8には、本発明の実施形態に係るスタティックミキサーにおける変形例の概略構成図を示す。同図に示す変形例は基本的には図7に示したスタティックミキサー10と同じ構成部品を有しているが、図7の構成に加えて、液体混合ユニット14の内部において複数の乱流拡散ミキサー部(20、30、40)の直列接続を切り替えるための切替バルブ50を有して構成されている。また、図8では符号を省略してあるが、当然のことながら図1ないし図7と同様にそれぞれの乱流拡散ミキサー部はキャピラリーミキサーおよびミキシングチャンバーを有して構成されている。
図8に示すように本変形例におけるスタティックミキサー10では、液体混合ユニット14の内部に4個の切替バルブ50を備えている。この切替バルブ50は例えば自動で切り替え動作を行う自動切替バルブであっても良いし、あるいは必要に応じて手動で切り替え動作を行う手動切替バルブにすることも出来る。また、複数の乱流拡散ミキサー部(20、30、40)を切り替えるために切替バルブを利用せず、例えばそれぞれの乱流拡散ミキサー部同士を配管で接続するようにしても良い。
図8では、切替バルブ50を調整することで、第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30とを直列に接続するようにしている(図8では第3乱流拡散ミキサー部40は接続されていない)。このように本実施形態に係るスタティックミキサー10に切替バルブ50を利用することで、成分分析などの測定条件に応じて必要な乱流拡散ミキサー部(20、30、40)を適切に選択することが出来る。また、このような切替バルブ50を有する構成であれば、分析条件に合わせて複数台のスタティックミキサーを用意することなく、1台のスタティックミキサーで広範囲の分析に対応することができる。
例えば、第1乱流拡散ミキサー部20の液体容量を125μl、第2乱流拡散ミキサー部30の液体容量を240μl、第3乱流拡散ミキサー部40の液体容量を370μlとした場合には、図8においては365μlの液体容量を有するスタティックミキサー10として利用することができる。
また、図9に示すように切替バルブ50を調整して第2乱流拡散ミキサー部30と第3乱流拡散ミキサー部40とを直列接続することで610μlの液体容量を有するスタティックミキサー10として利用することができる。同様に、図10に示すように切替バルブ50を調整して第1乱流拡散ミキサー部20と第3乱流拡散ミキサー部40とを直列接続することで495μlの液体容量を有するスタティックミキサーとして利用することができる。
さらに、図11に示すように切替バルブ50を調整して第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30と第3乱流拡散ミキサー部40の全てを直列接続することで735μlの液体容量を有するスタティックミキサーとして利用することが出来る。
以下、実施例により、本発明についてさらに具体的な説明を行うが、本発明の趣旨を超えない限り何ら以下の実施例に限定させるものではない。はじめに、直列接続による混合効率の向上について確認を行った。
乱流拡散ミキサー部の直列接続による混合効率の確認
本発明に係るスタティックミキサー10は、第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30を直列に接続して利用することで、良好な混合効率が得られるものである。そこで下記条件で、本発明に係るスタティックミキサー10の混合効率の確認を行った。
・試験方法
まず、リファレンスとしてミキサー(捻り螺旋棒26)を有しない配管における液体の混合状態を混合ノイズ(μV)として測定する。次に、乱流拡散ミキサー部が1個の場合(370μl)、2個の場合(125μl+240μl=365μl)の各流量における混合ノイズ(μV)を測定した。このリファレンスに対してどれだけ混合ノイズが減少したかを低減率として表した。
・条件
溶媒A :20mMギ酸アンモニウム水溶液
溶媒B :アセトニトリル/水(80/20)
A/B :20/80
検出波長 :220nm
流量 :0.25、0.5、1.0mL/min
背圧チューブ :I.D.0.064×500mm
ポンプ型式 :PU-4185-B(日本分光株式会社製)
検出器型式 :UV-4070(日本分光株式会社製)
[表1]
ミキサー液体容量 流量別ノイズの値(μV)
0.25 0.5 1.0 (mL/min)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
リファレンス 6521 3580 1019
370μl 92 52 60
低減率(%) 98.6 98.5 94.1
240μl+125μl 22 22 48
低減率(%) 99.7 99.4 95.3
表1に示すように0.25、0.5、1.0mL/minのどの流量においても乱流拡散ミキサー部が1個の場合よりも乱流拡散ミキサー部が2個の場合のほうが混合ノイズの低減率が高いのが分かる。すなわち、同じ液体混合ユニット14の液体容量を有するスタティックミキサーであれば2個の乱流拡散ミキサー部を直列に接続して利用したほうが、混合効率が良いことが分かる。
ダイナミックミキサーとの比較について
次に、本発明に係るスタティックミキサー10と駆動部を有するダイナミックミキサーとの混合効率の比較を行った。
・試験方法
2種類の液体でグラジエント送液を行い、ダイナミックミキサー(1.5ml)と同液体容量を有するスタティックミキサー(3個の乱流拡散ミキサー部を直列に接続)についてのベースライン変動およびノイズを測定した。
・測定条件
ダイナミックミキサー液体容量:1.5ml
スタティックミキサー液体容量:1.56ml(520μl×3個)
移動相A :水(0.1%TFA含有)
移動相B :70%アセトニトリル(0.1%TFA含有)
流量 :1.0ml/min
検出波長 :220nm、STDレスポンス、Conventionalセル
モジュール間配管:ミキサーまでSUS 0.25mm I.D.
ミキサー以降PEEK 0.25mm I.D.
・グラジエント条件
時間[min] 機能 L(A)側 R(B)側
――――――――――――――――――――――――――――――
0.00 組成比 100% 0%
15.00 組成比 0% 100%
20.00 組成比 0% 100%
25.00 組成比 100% 0%
35.00 組成比 100% 0%
図12に上記グラジエント送液によるベースライン変動および混合ノイズの測定結果イメージ図を示す。同図に示すように、駆動部を有するダイナミックミキサーと本測定によるスタティックミキサーとでは5分経過時において混合ノイズ量が同等であることが分かる。これは本グラジエント送液においてスタティックミキサーはダイナミックミキサーと同等の混合効率であることを表している。
また、30分ないし35分経過時においてダイナミックミキサーよりもスタティックミキサーのほうがベース(測定開始時の縦軸強度0位置)に戻るまでの時間が早いのが分かる。これは、動力部を有するダイナミックミキサーと比較して本実施形態に係るスタティックミキサーのほうが溶媒の置換性が良いことを示している。このように、本実施形態におけるスタティックミキサーは、ダイナミックミキサーと同等の優れた混合効率を有していることが分かった。
以上のように本発明に係るスタティックミキサー10は、液体混合ユニット14がキャピラリーミキサーとその後段に位置するミキシングチャンバーを備えた特徴的な乱流拡散ミキサー部を有し、少なくとも2つの乱流拡散ミキサー部が直列に接続されることで、従来よりも混合効率を大幅に向上させることができる。
さらに、本実施形態に係るスタティックミキサー10における変形例では、4個の切替バルブを利用して3個の乱流拡散ミキサー部(20、30、40)の切替動作を行っているが、例えば、1個の切替バルブにそれぞれの乱流拡散ミキサー部を接続して液体混合ユニット14の液体容量を切り替えられるようにしても良い。そして本実施形態では乱流拡散ミキサー部の直列接続について2個および3個の場合を説明したが、これらの個数に限られず4個以上の乱流拡散ミキサー部を直列接続しても同様の効果を得ることが期待できる。
また、本実施形態ではキャピラリーミキサーとミキシングチャンバーをそれぞれ別々の構成として説明しているが、例えばキャピラリーミキサーとミキシングチャンバーとを一体として製造することも出来る。このような構成とすることで、液体の漏れを解消し、耐圧に強い乱流拡散ミキサー部を得ることができる。その結果、混合効率が良く、耐久性の優れたスタティックミキサーを提供することができる。
そして本実施形態における変形例(図8~図11)では、切替バルブを利用して乱流拡散ミキサー部の切替動作を行っているが、例えば、第1乱流拡散ミキサー部20と第2乱流拡散ミキサー部30(および第3乱流拡散ミキサー部40)とを接続する際に、配管等の接続部材を利用してそれぞれの乱流拡散ミキサー部を任意に選択して接続する(20、30、40を任意に組み合わせる)ことでスタティックミキサー10を構成しても本発明の変形例と同様の効果を得ることが出来る。

Claims (8)

  1. 2種類以上の液体が流入する液体流入口と、
    該液体流入口の後段に接続され前記2種類以上の液体を混合する液体混合ユニットと、
    該液体混合ユニットの後段に接続され混合された前記2種類以上の液体が流出する液体流出口と、
    を備えた液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    前記液体混合ユニットは、
    内部に備える捻り螺旋棒で前記2種類以上の液体を乱流により混合する略円筒形状の細長いキャピラリーミキサーと、
    該キャピラリーミキサーの後段に位置し流れ込んだ前記2種類以上の液体を内部での拡散または乱流拡散により混合するミキシングチャンバーと、
    前記ミキシングチャンバーの出口に配置され、前記2種類以上の液体の整流効果を有する多孔質体と、
    を含んで構成された乱流拡散ミキサー部を有し、
    前記ミキシングチャンバーは、少なくとも前記キャピラリーミキサーよりも大きい体積を有し、
    さらに前記液体混合ユニットは、少なくとも2つの前記乱流拡散ミキサー部が直列に接続されている
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
  2. 請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    前記液体混合ユニットは、
    前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、
    該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
    前記第1乱流拡散ミキサー部の液体容量は前記第2乱流拡散ミキサー部の液体容量よりも大きいことを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
  3. 請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    前記液体混合ユニットは、
    前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、
    該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
    前記第1乱流拡散ミキサー部の液体容量は前記第2乱流拡散ミキサー部の液体容量と略同一であることを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
  4. 請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    前記液体混合ユニットは、
    前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、
    該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
    前記第1乱流拡散ミキサー部の液体容量は前記第2乱流拡散ミキサー部の液体容量よりも小さいことを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    前記液体混合ユニットは、
    前記液体流入口側に位置する第1乱流拡散ミキサー部と、
    該第1乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第2乱流拡散ミキサー部と、を有し、
    さらに前記液体混合ユニットは、前記第2乱流拡散ミキサー部よりも前記液体流出口側に位置する第3乱流拡散ミキサー部を備える
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    前記液体流出口はその内部に捻り螺旋板を備え、該捻り螺旋板により前記液体混合ユニットで混合された前記2種類以上の液体をさらに混合して当該液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーの外部に前記2種類以上の液体を流出する
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    当該液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーは、前記液体混合ユニットにおける複数の前記乱流拡散ミキサー部の直列接続を切り替える切替バルブ機構を有し、
    前記切替バルブ機構の切り替え動作により前記液体混合ユニットの液体容量が可変されることを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーであって、
    当該液体クロマトグラフィー用スタティックミキサーは、少なくとも2つの前記乱流拡散ミキサー部同士を配管接続することで前記液体混合ユニットの液体容量が可変される
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用スタティックミキサー。
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