(第1実施形態)
以下、フォークリフトの第1実施形態について説明する。以下の説明において、上下とは鉛直方向での上下を示す。
図1及び図2に示すように、フォークリフト10は、車体11と、車体11の前下部に配置された駆動輪12と、車体11の後下部に配置された操舵輪13と、車体11の前方に設けられた荷役装置14と、距離計41と、配線43と、を備える。荷役装置14は、車体11の前部に設けられたマスト15と、バックレスト18と、バックレスト18に固定された一対のフォーク31と、リフトシリンダ20と、ティルトシリンダ21と、を備える。
マスト15は、車体11に対して前後に傾動可能に支持されたアウタマスト16と、アウタマスト16に対して昇降可能なインナマスト17と、を備える。バックレスト18は、インナマスト17に固定されている。バックレスト18及びフォーク31は、インナマスト17とともに昇降する。リフトシリンダ20は、インナマスト17を昇降動作させる。ティルトシリンダ21は、マスト15を傾動動作させる。リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21は、油圧シリンダである。
フォーク31は、バックレスト18に取り付けられる平板状の取付部32と、取付部32から取付部32の厚み方向に延びる平板状の差込部33と、を備える。フォーク31は、取付部32がマスト15に沿って上下方向に延び、差込部33が取付部32の下端からフォークリフト10の前方に向けて延びる態様で取り付けられている。差込部33の厚み方向の両面は、上下方向を向いている。差込部33の厚み方向の両面のうち上を向く面を上面34、下を向く面を下面35と称する。
図2及び図3に示すように、一対のフォーク31のそれぞれには、距離計41が1つずつ取り付けられている。距離計41としては、超音波センサが用いられている。超音波センサは、超音波を送信し、超音波が物体で反射されることによる反射波を受信するまでの時間から物体までの距離を測定する距離計である。
距離計41は、差込部33の先端部36に設けられている。距離計41は、差込部33の側面37に取り付けられている。なお、差込部33の側面37とは上面34と下面35との間で延びる面である。距離計41は、差込部33の上面34よりも上方に突出しないように取り付けられている。本実施形態において、差込部33の厚み方向において、距離計41は上面34と下面35との間に収まるように設けられている。差込部33をフォークリフト10の車幅方向から見ると、距離計41の全体が差込部33に重なり合う。
距離計41は、フォーク31よりも下方に位置する物体までの距離を測定できるように取り付けられている。本実施形態のように、距離計41が超音波センサの場合には、超音波が下方に向けて送信されるように超音波センサは取り付けられている。なお、距離計41は、フォーク31よりも下方に位置する物体までの距離を測定できればよく、差込部33の厚み方向に対して傾いた方向への距離を測定してもよい。即ち、距離計41によって測定される距離は、フォーク31の下方に位置する物体までの最短距離でなくてもよく、差込部33の厚み方向に対して傾いた方向への成分を含んだ距離であってもよい。
配線43は距離計41の測定結果を送信したり、距離計41を駆動させるための信号を距離計41に送信するための部材である。配線43は、差込部33の側面37に沿って、車体11に向けて延びている。
以下の説明において、適宜、一対のフォーク31のうち一方を第1フォーク31A、他方を第2フォーク31B、第1フォーク31Aに取り付けられた距離計41を第1距離計41A、第2フォーク31Bに取り付けられた距離計41を第2距離計41Bとして説明を行う。
図1に示すように、フォーク31には、パレットPが積載される。パレットPは、搬送物を収容する四角箱状の収容部Sと、収容部Sの四隅に設けられた脚部Lと、を備える。本実施形態のパレットPは、メッシュパレットである。フォーク31の差込部33は、脚部L同士の間に差し込まれ、差込部33の上面34によって収容部Sの底を支持する。
図4に示すように、フォークリフト10は、駆動機構51と、油圧機構52と、制御装置53と、補助記憶装置56と、揚高センサ57と、環境センサ58と、を備える。
駆動機構51は、フォークリフト10を走行動作させるための部材であり、駆動輪12を駆動させるための走行用モータや、操舵輪13を操舵させるための操舵機構を含む。
油圧機構52は、リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21への作動油の給排を制御するための部材であり、ポンプを駆動させるための荷役モータや、コントロールバルブを含む。リフトシリンダ20への作動油の給排によってインナマスト17は昇降する。ティルトシリンダ21への作動油の給排によってマスト15は車体11の前後方向に対して傾動する。インナマスト17の昇降とはフォーク31の昇降ともいえる。マスト15の傾動とは、フォーク31の傾動ともいえる。油圧機構52及びティルトシリンダ21によって傾動装置が構成されている。
制御装置53は、CPUやGPU等のプロセッサ54と、RAM及びROM等からなる記憶部55と、を備える。記憶部55は、処理をプロセッサ54に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部55、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置53は、ASIC:Application Specific Integrated CircuitやFPGA:Field Programmable Gate Array等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置53は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
制御装置53は、記憶部55に記憶されたプログラムに従い、駆動機構51及び油圧機構52を制御することで、フォークリフト10を動作させる。本実施形態のフォークリフト10は、操作者による操作が行われることなく、制御装置53による制御によって自動で動作するフォークリフトである。
制御装置53には、配線43によって距離計41が接続されている。制御装置53は、距離計41の測定値を認識することができる。
補助記憶装置56は、制御装置53が読み取り可能な情報を記憶している。補助記憶装置56としては、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブが用いられる。記憶部55に記憶されるプログラムコードや指令は、記憶部55に代えて補助記憶装置56に記憶されてもよい。
揚高センサ57は、路面からフォーク31までの高さである揚高を検出する。制御装置53は、揚高センサ57の検出結果からフォーク31の揚高を認識可能である。
環境センサ58は、フォークリフト10の後方に位置する物体と、フォークリフト10との相対位置を制御装置53に認識させることができるセンサである。環境センサ58としては、例えば、ミリ波レーダー、ステレオカメラ、LIDAR:Laser Imaging Detection and Rangingなどを用いることができる。
図5に示すように、フォークリフト10は、工場、港湾、空港、商業施設などのパレットPを搬送する必要のある作業場で使用される。フォークリフト10は、トラックTに積まれたパレットPをフォーク31に積載する荷取り作業を行った後に、パレットPを搬送する。トラックTの停止位置A1は、予め定められている。フォークリフト10は、荷取り位置A2まで移動した後に、荷取り作業を行う。荷取り位置A2は、予め定められた位置であってもよいし、上位制御装置から指令される位置であってもよい。
補助記憶装置56には、地図情報が記憶されている。地図情報とは、フォークリフト10の用いられる環境の形状、広さなど、フォークリフト10の周辺環境の物理的構造に関する情報である。地図情報は、フォークリフト10の用いられる環境を座標で表したデータといえる。停止位置A1、荷取り位置A2などの位置は、地図情報中の座標として表される。地図情報は、フォークリフト10が用いられる周辺環境を予め把握できていれば、予め補助記憶装置56に記憶されていてもよい。地図情報を予め補助記憶装置56に記憶する場合、建築物の壁、柱など位置の変化しにくい物の座標を地図情報として記憶する。地図情報は、SLAM:Simultaneous Localization and Mappingによるマッピングにより作成されてもよい。マッピングは、例えば、環境センサ58によって得られた座標から局所地図を作成し、この局所地図を自己位置に応じて組み合わせることによって行われる。
制御装置53は、地図情報上でのフォークリフト10の自己位置を推定する自己位置推定を行いながら駆動機構51を制御することで、荷取り位置A2にフォークリフト10を移動させることが可能である。自己位置推定は、例えば、走行用モータの回転数を用いて自己移動量を推定するオドメトリを用いて行われてもよいし、ランドマークと地図情報とのマッチング結果から行われてもよい。また、これらを組み合わせて自己位置推定をしてもよい。フォークリフト10が用いられる環境が屋外であれば、GPS:Global Positioning Systemを用いて自己位置を推定してもよい。なお、自己位置とは、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向の中央の座標である。
図6及び図7に示すように、トラックTは、平ボディのトラックである。トラックTは、荷台TBと、側あおりSSと、後あおりRSと、タイヤT1と、を備える。荷台TBには、パレットPが積まれている。側あおりSSは、荷台TBの側部に設けられている。側あおりSSは、上下方向に回動可能である。後あおりRSは、荷台TBの後部に設けられている。後あおりRSは、上下方向に回動可能である。トラックTの走行中などには、側あおりSS及び後あおりRSによって荷台TBが囲まれている。フォークリフト10が荷取り作業を行う際には、側あおりSS及び後あおりRSは、下方に回動させられており、側あおりSS及び後あおりRSはパレットPに向かい合わない。即ち、フォークリフト10が荷取り作業を行う際には、側あおりSS及び後あおりRSは、フォークリフト10による荷取り作業を阻害しないように回動させられる。
図7に示すように、荷台TBに積まれたパレットPをフォーク31に積載する場合、荷台TB、脚部L、及び収容部Sに囲まれる孔である差込孔IHと差込部33の先端とが向かい合うようにフォーク31の揚高が調整される。そして、フォークリフト10を前進させることで、フォーク31の差込部33を差込孔IHに差し込んでいく。本実施形態では、フォークリフト10を前進させるときに以下の傾斜調整制御を行う。なお、フォーク31の揚高の調整については任意の方法で行うことができる。例えば、フォークリフト10に差込孔IHを検出するセンサを設けて、センサにより検出された差込孔IHと差込部33とが向かい合うようにフォーク31の揚高を調整してもよい。また、上位制御装置からパレットPの座標情報やパレットPの姿勢情報など、差込孔IHの位置に関する情報を取得し、この情報に基づき差込孔IHと差込部33とが向かい合うようにフォーク31の揚高を調整してもよい。
傾斜調整制御について説明する。なお、本実施形態では、フォークリフト10はトラックTの車幅方向から差込孔IHに差込部33を差し込む。即ち、フォークリフト10の前後方向とトラックTの車幅方向とが一致している状態で荷取り作業は行われる。
図8に示すように、ステップS1において、制御装置53はフォークリフト10を前進させる。フォークリフト10が前進することで、フォーク31の差込部33は差込孔IHに差し込まれていく。差込部33を差込孔IHに差し込む際には、フォーク31とフォークリフト10が存在している路面とが平行な状態で差込部33を差込孔IHに差し込んでいく。言い換えれば、フォークリフト10が存在している路面に対してフォーク31が傾斜していない状態で差込部33を差込孔IHに差し込んでいく。なお、ステップS1以降の処理を行う際にも、フォークリフト10の前進は継続される。
次に、ステップS2において、制御装置53は、フォークリフト10の前進中に距離計41によって距離を測定する。本実施形態では、距離計41は、差込部33よりも下方に位置する物体までの距離を測定できるように設けられているため、差込部33が差込孔IHに差し込まれた状態で距離計41により測定される距離は、距離計41から荷台TBの上面B1までの距離である。距離計41は、差込孔IHを形成する面のうち差込部33の下面35に向かい合う上面B1までの距離を測定可能に設けられているといえる。距離計41は、差込部33に設けられているため、距離計41によって測定される距離は、差込部33から荷台TBの上面B1までの距離とみなすことができる。差込部33の厚み方向に対して距離計41と上面34との距離が一定なので、距離計41によって測定される距離は差込部33の上面34から荷台TBの上面B1までの距離と捉えることもできる。ステップS2の処理は、フォークリフト10が前進し、差込部33の一部が差込孔IHに差し込まれた際に行われる。詳細にいえば、ステップS2の処理は、距離計41によって荷台TBの上面B1までの距離が測定できるようになってから行われる。制御装置53は、距離計41の測定結果を所定のサンプリング周期で複数回取得する。
次に、ステップS3において、制御装置53は、距離計41の測定値により得られる直線の傾きを導出する。ここで、差込部33と荷台TBの上面B1とが平行であれば、言い換えれば、フォークリフト10の前後方向に対するフォーク31の傾きと、トラックTの車幅方向に対する荷台TBの傾きとが同一であれば、距離計41の測定値は一定になる。この場合、測定値により得られる直線の傾きは0になる。一方で、フォークリフト10の前後方向に対するフォーク31の傾きと、トラックTの車幅方向に対する荷台TBの傾きとが異なる場合、フォークリフト10が前進するにつれて、測定値が変化する。例えば、図9に示すように、差込部33が差し込まれる方向において、奥に向かうにつれて荷台TBが上方に位置するように荷台TBが傾いている場合で、フォーク31の傾きが荷台TBの傾きよりも小さいと、フォークリフト10が前進するにつれて、荷台TBの上面B1と距離計41との上下方向に対する距離d1が小さくなる。なお、図9では、説明の便宜上、フォーク31の傾きと荷台TBの傾きとの差を誇張して表現している。
図10に示すように、差込部33を差込孔IHに差し込む際のフォークリフト10の走行距離をX軸、距離計41の測定値をY軸とする散布図に、距離計41の測定値Mをプロットしたとする。図10に示す測定値Mは、差込部33が差し込まれる方向において、奥に向かうにつれて荷台TBが上方に位置するように荷台TBが傾いており、フォーク31の傾きが荷台TBの傾きよりも小さい場合に得られる測定値である。即ち、測定値Mは、図9に示した状態での測定値である。測定値Mはフォークリフト10の走行距離に応じて変化することがわかる。なお、フォークリフト10の走行距離が長くなるにつれて差込部33の差込孔IHへの差込量は多くなるため、X軸は差込部33の差込量と捉えることもできる。
制御装置53は、測定値Mから、回帰分析により直線L1を得る。回帰分析としては、例えば、最小二乗法やRANSAC:Random Sample Consensusを用いることができる。回帰分析により得られた直線L1は、近似直線である。
ここで、測定値Mから得られた直線L1は、フォークリフト10の前後方向に対するフォーク31の傾きと、トラックTの車幅方向に対する荷台TBの上面B1の傾きとの差を表しているといえる。直線L1の傾きを算出することで、フォークリフト10の前後方向に対するフォーク31の傾きと、トラックTの車幅方向に対する荷台TBの上面B1の傾きとの差、即ち、フォーク31と荷台TBの上面B1との相対的な傾きを導出できるといえる。また、パレットPは荷台TBの上面B1に置かれているため、トラックTの車幅方向に対する荷台TBの上面B1の傾きは、トラックTの車幅方向に対するパレットPの傾きと同一とみなすことができる。従って、直線L1の傾きは、パレットPに対するフォーク31の傾きと捉えることができる。
制御装置53は、2つの距離計41によって得られた測定値M毎に個別に直線L1の傾きを導出する。即ち、制御装置53は、第1距離計41Aの測定値Mから得られた直線L1の傾きと、第2距離計41Bの測定値Mから得られた直線L1の傾きとを導出する。
図11に示すように、測定値Mにより得られる直線L1のうち第1距離計41Aの測定値Mから得られた直線L1を第1直線L11とし、第2距離計41Bの測定値Mから得られた直線L1を第2直線L21とする。図11に二点鎖線で示すように、第1直線L11と第2直線L21では、傾きが異なる場合がある。また、図11に一点鎖線で示すように、第2直線L21の傾きが第1直線L11の傾きと同じであっても、第2直線L21と第1直線L11で切片が異なる場合がある。これは、第1距離計41Aと第2距離計41Bの取付態様、パレットPの配置位置、トラックTの停止位置A1の傾斜など、種々の要素を原因とするものである。第1距離計41Aと第2距離計41Bとで取付角度に差がある場合や、第1フォーク31Aに対する第1距離計41Aの取付位置と第2フォーク31Bに対する第2距離計41Bの取付位置に差がある場合には、第1直線L11と第2直線L21とで傾きや切片に差が生じる場合がある。パレットPの配置位置によっては、トラックTの一部に偏って荷重が加わることで荷台TBが傾き、この傾きを原因として第1フォーク31Aから荷台TBの上面B1までの距離と、第2フォーク31Bから荷台TBの上面B1までの距離とに差が生じる場合がある。これにより、第1直線L11と第2直線L21とで傾きや切片に差が生じる場合がある。トラックTの停止位置A1が斜面の場合、停止位置A1の傾斜によって荷台TBも傾き、この傾きを原因として第1直線L11と第2直線L21とで傾きや切片に差が生じる場合がある。なお、説明の便宜上、図11に示す第1直線L11の傾きと第2直線L21の傾きとの差、及び第1直線L11の切片と第2直線L21の切片との差は誇張して表現している。
本実施形態において、制御装置53は、第1直線L11の傾きと第2直線L21の傾きの両方に基づき、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出する。例えば、制御装置53は、第1直線L11の傾きと第2直線L21の傾きの中央値をパレットPに対するフォーク31の傾きとして導出する。ステップS3の処理を行うことで、制御装置53は導出部を備えているといえる。
図8に示すように、ステップS4において、制御装置53は油圧機構52を制御することでフォーク31を傾動させる。制御装置53は、フォーク31の傾きと荷台TBの上面B1の傾きとの差が小さくなるようにフォーク31を傾動させる。例えば、制御装置53は、ステップS3で得られたパレットPに対するフォーク31の傾きの分だけ、フォーク31を傾動させる。フォーク31の傾きと荷台TBの上面B1の傾きとの差がなくなるようにフォーク31を傾動させることが好ましいが、フォーク31の傾きと荷台TBの上面B1の傾きとの差が許容範囲内に収まるように制御が行われればよい。許容範囲とは、フォーク31が荷台TBの上面B1やパレットPに接触しない程度でのパレットPに対するフォーク31の傾きを許容するものである。
図9に示す例では、差込部33が差し込まれる方向において、奥に向かうにつれて荷台TBが上方に位置するように荷台TBが傾いており、フォーク31は水平である。この場合、制御装置53は、フォーク31を後傾させることで、フォーク31の傾きと荷台TBの上面B1の傾きとの差を小さくする。
図8に示すように、ステップS5において、制御装置53は、油圧機構52を制御することでフォーク31を昇降させる。制御装置53は、荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離が予め定められた一定値となるようにフォーク31を昇降させる。なお、一定値とは、誤差を許容する所定の範囲である。即ち、制御装置53は、荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離が予め定められた所定の範囲に収まるようにフォーク31の上下方向の位置を調整する。荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離は、距離計41によって測定することができる。前述したように、第1直線L11と第2直線L21で傾きが異なる場合や、第1直線L11と第2直線L21で切片が異なる場合は、第1距離計41Aから荷台TBの上面B1までの距離と第2距離計41Bから荷台TBの上面B1までの距離に差が生じている。本実施形態の制御装置53は、第1距離計41Aと第2距離計41Bの両方に基づき、荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離を導出する。例えば、制御装置53は、第1距離計41Aの測定値Mと第2距離計41Bの測定値Mの中央値を荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離として導出する。
なお、距離計41の取付態様によっては、距離計41は、差込部33の厚み方向に対して傾いた方向への距離を測定する。この場合、荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離は、荷台TBの上面B1と差込部33との間の最短距離ではなく、差込部33の厚み方向に対して傾いた方向への成分を含んだ距離となる。制御装置53は、距離計41の取付態様に応じて、測定値Mを補正して、荷台TBの上面B1とフォーク31との間の最短距離を導出してもよい。
次に、ステップS6において、制御装置53は、差込部33が差込孔IHに所定量差し込まれると、駆動機構51を制御することでフォークリフト10の前進を停止させる。制御装置53は、フォークリフト10の前進を停止させた後には、フォーク31を上昇させることでフォーク31にパレットPを積載する。
第1実施形態の作用について説明する。
制御装置53は、測定値Mによる直線L1の傾きから、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出する。なお、パレットPに対するフォーク31の傾きとは、水平方向に対するパレットPの傾きと、水平方向に対するフォーク31の傾きとの差である。パレットPに対するフォーク31の傾きが大きい状態で差込部33を差込孔IHに差し込むと、差込部33がパレットPや荷台TBの上面B1に接触する場合があり、差込孔IHに十分に差込部33を差し込めなかったり、差込部33を円滑に差し込めない原因となり得る。特に、本実施形態のように、パレットPがトラックTの荷台TBに積まれている場合、荷台TBの傾きによってパレットPが傾く。荷台TBの傾きは、種々の要素によって変化するため、パレットPに対するフォーク31の傾きは不定であり、パレットPの傾きに合わせてフォーク31を傾動させる必要が生じる。また、パレットPは、傾斜の異なる複数の場所に置かれることもあり、パレットPがトラックT以外の場所に置かれる場合であっても同様の課題が生じ得る。
本実施形態のように、測定値Mから得られた直線L1の傾きから、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出し、パレットPに対するフォーク31の傾きが小さくなるようにフォーク31を傾動させることで、パレットPに対するフォーク31の傾きが不定であっても差込部33がパレットPや荷台TBの上面B1に接触することを抑制できる。
なお、フォークリフト10の前後方向に離間して配置される2つのセンサを差込部33に設けることで、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出することも可能である。例えば、荷台TBの上面B1までの距離に応じてオンとオフとが切り替わるセンサをフォークリフト10の前後方向に離間して2つ設けることで、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出することができる。パレットPに対してフォーク31が傾いている場合、フォークリフト10の前後方向に離間したセンサ同士で、荷台TBの上面B1までの距離が異なる。このため、パレットPに対してフォーク31が傾いている場合、フォークリフト10の前後方向に離間したセンサの一方がオン、他方がオフとなる。このように、フォークリフト10の前後方向に離間して配置される2つのセンサを用いることで、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出することが可能である。
しかしながら、上記したように、フォークリフト10の前後方向に離間して配置される2つのセンサを用いる場合、2つのセンサの検出結果の差異を利用してパレットPに対するフォーク31の傾きを導出することになる。2つのセンサの検出結果の差異は、パレットPに対するフォーク31の傾きによって生じる2つのセンサから荷台TBの上面B1までの距離の差である。2つのセンサ同士の離間距離が短い場合、パレットPに対するフォーク31の傾きによって生じる2つのセンサから荷台TBの上面B1までの距離の差が生じにくいため、2つのセンサ同士の離間距離を大きくする必要がある。また、2つのセンサの両方が差込孔IH内に位置していないと、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出することができない。このため、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出するために必要となる差込部33の差込量が多くなる。パレットPに対するフォーク31の傾きを導出するために必要となる差込部33の差込量が多いと、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出する前に差込部33がパレットPや荷台TBに接触するおそれがある。
これに対し、本実施形態のように、距離計41の測定値Mから得られた直線L1の傾きからパレットPに対するフォーク31の傾きを導出する場合、1つの距離計41が差込孔IH内に位置していればパレットPに対するフォーク31の傾きを導出することができる。直線L1の傾きを導出するためには、差込部33を差込孔IHに差し込む必要はあるものの、直線L1の傾きを導出するために必要となる差込部33の差込量は、2つのセンサを用いる場合に必要となる差込量よりも少ない。従って、2つのセンサを用いる場合に比べて、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出するために必要となる差込部33の差込量が少なく、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出する前に差込部33がパレットPや荷台TBに接触することを抑制できる。
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)差込孔IHに差込部33が差し込まれていくときの距離計41の測定値Mは、パレットPに対するフォーク31の傾きによって変化する。パレットPに対するフォーク31の傾きがなければ、直線L1の傾きは0になり、パレットPに対してフォーク31が傾いていれば、直線L1の傾きはパレットPに対するフォーク31の傾きになる。従って、距離計41の測定値Mから、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出することができる。
(1-2)制御装置53は、第1直線L11の傾きと第2直線L21の傾きの両方に基づき、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出している。パレットPに対する第1フォーク31Aの傾きと、パレットPに対する第2フォーク31Bの傾きとは異なっている場合がある。第1直線L11の傾き及び第2直線L21の傾きのうち、いずれかをパレットPに対するフォーク31の傾きとして採用すると、第1フォーク31A及び第2フォーク31BのいずれかがパレットPや荷台TBに接触するおそれがある。第1直線L11の傾きと第2直線L21の傾きの両方に基づき、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出することで、フォーク31がパレットPや荷台TBに接触することを抑制できる。
(1-3)制御装置53は、第1距離計41Aと第2距離計41Bの両方に基づき、荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離を導出している。第1距離計41Aから荷台TBの上面B1までの距離と、第2距離計41Bから荷台TBの上面B1までの距離とは異なっている場合がある。第1距離計41Aの測定値M及び第2距離計41Bの測定値Mのうち、いずれかをフォーク31から荷台TBの上面B1までの距離として採用すると、第1フォーク31A及び第2フォーク31BのいずれかがパレットPや荷台TBに接触するおそれがある。第1距離計41Aと第2距離計41Bの両方に基づき、荷台TBの上面B1と差込部33との間の距離を導出することで、フォーク31がパレットPや荷台TBに接触することを抑制できる。
(1-4)距離計41は、差込部33の先端部36に設けられている。差込部33は、先端部36から差込孔IHに差し込まれていくため、距離計41を差込部33の基端部に設ける場合に比べて、距離計41が差込孔IHに入るために必要となる差込量が少なくなる。結果として、パレットPに対するフォーク31の傾きを導出するために必要となる差込部33の差込量を少なくすることができる。
(1-5)差込部33の厚み方向において、距離計41は差込部33の上面34と下面35との間に収まるように設けられている。パレットP、荷台TB、路面など、差込部33が接触し得る物体と距離計41とが接触することを抑制することができる。
(1-6)距離計41は、差込部33の側面37に設けられている。配線43は、差込部33の側面37に沿って配置すればよいため、配線43の取り回しを行いやすい。
(第2実施形態)
フォークリフトの第2実施形態について説明する。第2実施形態のフォークリフトは、制御装置の行う傾斜調整制御が異なる点を除き、第1実施形態と同様のハードウェア及びソフトウェアを備える。以下、第2実施形態のフォークリフトで行われる傾斜調整制御について説明する。第2実施形態のフォークリフトは、パレットとして、平パレットを積載することを想定したフォークリフトである。
図12及び図13に示すように、平パレットFPは、矩形平板状のパレットである。平パレットFPは、差込孔PIHを形成している差込孔形成面72と、複数の貫通孔73と、を備える。差込孔形成面72は、2つ設けられている。差込孔形成面72は、平パレットFPの4つの側面のうち互いに反対の面となる2つの面同士の間で延びるように設けられている。差込孔形成面72に囲まれる孔が差込孔PIHである。貫通孔73は、平パレットFPを厚み方向に貫通している。貫通孔73は、平パレットFPの厚み方向の面74,75に開口している。貫通孔73は、差込孔PIHに開口している。
差込孔形成面72は、平パレットFPの厚み方向に互いに向かい合う第1内面76と第2内面77とを備える。平パレットFPは、第1内面76が第2内面77よりも下方、即ち、第1内面76が差込孔形成面72の下面、第2内面77が差込孔形成面72の上面となるように配置されている。
第2実施形態の傾斜調整制御では、第1実施形態のステップS1~ステップS6のうちステップS3の処理が第1実施形態とは異なる。ステップS1~ステップS6のうちステップS3を除く処理については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図13に示すように、フォーク31に平パレットFPを積載する際には、差込部33を差込孔PIHに差し込んでいく。この際、距離計41は、貫通孔73のない位置では、第1内面76までの距離を測定する。距離計41は、貫通孔73のある位置では、第1内面76までの距離を測定することができず、平パレットFPが置かれた載置面までの距離を測定することになる。
図14に示すように、フォークリフト10の走行距離をX軸、距離計41の測定値をY軸とする散布図に測定値Mをプロットすると、測定値Mはフォークリフト10の走行距離及び貫通孔73の有無に応じて変化することがわかる。
第1内面76の傾きは、平パレットFPに対するフォーク31の傾きと捉えることができるため、第1内面76までの距離を測定した測定値Mから直線L3を導出することができれば、この直線L3の傾きから平パレットFPに対するフォーク31の傾きを導出することができる。
図14から把握できるように、距離計41により平パレットFPが置かれた載置面までの距離が測定されると、第1内面76までの距離が測定されている場合に比べて、貫通孔73の軸線方向の長さだけ、測定値Mが大きくなる。従って、フォーク31を差込孔PIHに差し込んでいったときに得られた測定値Mから極小値M1を抽出し、極小値M1から直線L3を得ることで、第1内面76までの距離を測定した測定値Mから直線L3を導出することができる。そして、直線L3の傾きから、平パレットFPに対するフォーク31の傾きを導出することができる。
第2実施形態では、第1実施形態の効果(1-2)~(1-6)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(2-1)制御装置53は、測定値Mのうち極小値M1によって得られる直線L3の傾きから、平パレットFPに対するフォーク31の傾きを導出している。平パレットFPのように、貫通孔73が存在する場合であっても、平パレットFPに対するフォーク31の傾きを導出することができる。
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○各実施形態において、距離計41は、差込部33のうちフォークリフト10の前後方向における中央部など、先端部36以外に設けられていてもよい。
○各実施形態において、距離計41としては、光電センサ、レーザーセンサなどを用いてもよい。
○各実施形態において、フォークリフト10は、操作者による操作によって手動で動作するフォークリフトであってもよい。なお、操作者による操作によって手動で動作するフォークリフトには、フォークリフトに搭乗した操作者による操作によって動作するフォークリフトと、遠隔地にいる操作者による遠隔操作によって動作するフォークリフトとの両方が含まれる。制御装置53は、フォークリフト10の操作者が視認可能な位置に配置された表示部に、パレットに対するフォーク31の傾きを表示する。フォークリフト10の操作者は、表示部を確認することで、パレットに対するフォーク31の傾きを認識することができる。そして、フォークリフト10の操作者は、パレットに対するフォーク31の傾きが小さくなるようにフォーク31を傾動させることができる。操作者による操作によって手動で動作するフォークリフト10の場合、フォーク31の傾きは操作者による操作によって調整されるため、制御装置53は、少なくとも、ステップS2及びステップS3の処理を行えればよい。
○各実施形態において、フォークリフト10は、自動での動作と手動での動作を切り替え可能なフォークリフトであってもよい。
○各実施形態において、距離計41は、一対のフォーク31のうち一方にのみ設けられていてもよい。この場合、制御装置53は、距離計41の測定値Mから得られた直線L1の傾きをパレットPに対するフォーク31の傾きとする。
○各実施形態において、距離計41は、1つのフォーク31に複数設けられていてもよい。制御装置53は、1つのフォーク31に設けられた複数の距離計41毎に直線L1の傾きを導出し、傾きの平均値を直線L1の傾きとしてもよい。この場合、測定誤差を均すことができ、測定誤差の影響を軽減し得る。また、1つのフォーク31に複数の距離計41を設けて、距離計41の1つが故障した場合に、故障していない距離計41を用いてパレットPに対するフォーク31の傾きを導出するようにしてもよい。距離計41の1つが故障した場合であっても、傾斜調整制御を行うことができるため、フォークリフト10の冗長性を向上させることができる。
○各実施形態において、第1距離計41A及び第2距離計41Bのうち一方の測定値Mを用いてパレットPに対するフォーク31の傾きを導出してもよい。この場合、第1距離計41A及び第2距離計41Bのうちいずれかが故障した場合に、故障していない距離計41を用いてパレットPに対するフォーク31の傾きを導出する。距離計41の1つが故障した場合であっても、傾斜調整制御を行うことができるため、フォークリフト10の冗長性を向上させることができる。即ち、第1距離計41A及び第2距離計41Bのうち一方は、予備用の距離計として用いてもよい。
○各実施形態において、フォークリフト10が、荷役装置14を前進及び後進させることができるリーチシリンダを備えるフォークリフトであれば、ステップS1の処理を行う際に、荷役装置14のみを前進させて差込部33を差込孔IH,PIHに差し込んでもよい。
○各実施形態において、制御装置53は、差込部33を差込孔IHに差し込む際に、フォークリフト10が存在している路面に対してフォーク31を傾斜させた状態で差込部33を差込孔IHに差し込んでもよい。
○各実施形態において、距離計41は、フォーク31に埋め込まれていてもよい。詳細にいえば、フォーク31に距離計41を収容することができる距離計収容部を設けて、この距離計収容部に距離計41を収容してもよい。
○各実施形態において、パレットは、どのようなパレットであってもよい。ポストパレットなど、パレットが置かれている載置面と差込部33との間にパレットの一部が介在しないパレットであれば、第1実施形態の傾斜調整制御を行えばよい。パレットが置かれている載置面と差込部33との間にパレットの一部が介在しているパレットであれば、第2実施形態の傾斜調整制御を行えばよい。
○第1実施形態において、荷台TBは、コンテナの底部など、荷が置かれるものであれば、どのようなものであってもよい。
○第2実施形態において、測定値Mのうち極大値を用いて直線L3を導出してもよい。極大値を用いた場合、平パレットFPが載置される載置面の距離を測定した測定値Mから直線L3を導出することができる。極大値を用いた場合であっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。従って、第2実施形態において、直線L3を導出するための測定値Mは、極値であればよく、極小値M1であっても極大値であってもよい。
○第2実施形態において、距離計41は、差込部33の厚み方向の面のうち上面34に向かい合う第2内面77までの距離を導出できるように取り付けられていてもよい。即ち、距離計41は、差込部33の上方に存在する物体までの距離を導出できるように差込部33に取り付けられていてもよい。第2内面77の傾きは、平パレットFPに対するフォーク31の傾きと捉えることができるため、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、差込孔を形成する面のうち差込部33の厚み方向の両面のうちいずれかの面に向かい合う面までの距離を測定することができれば、パレットに対するフォーク31の傾きを導出することができる。