JP7342706B2 - 永久磁石およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、自動車や航空機といったモータの小型化を進める業界では、より磁束密度が高い(磁束が集中した)磁石が求められている。
焼結法にて作成する場合、磁石粉末を押し固める際に1方向に磁場をかける。磁場中プレスによって粉末段階で磁石の配向方向を揃える。この場合、磁場中プレスでは多方向の磁場を発生させることが困難であるため、一つの磁石内に非平行な配向を実現することは難しい。
このような焼結法にて作成するハルバッハ磁気回路を構成する磁石として、例えば特許文献1、特許文献2に記載の磁石が挙げられる。
また、このような複数磁化ユニット永久磁石の製造方法として、特定の圧粉磁石用金型を用意して、前記金型に磁性粉末を充填する第1の工程と、前記第1及び第2の磁性部品と、前記第3及び第4の磁性部品の間に磁場を印加し、前記磁性粉末の長手方向に磁化容易方向を決める第2の工程と、前記金型を90度回転して、前記第1及び第3の磁性部品と、前記第2及び第4の磁性部品間に磁場を印加して前記直方体形状の中央部を挟む両側部における磁性粉末の磁化容易方向を前記長さ方向と実質的に直角方向に決める第3の工程と、を含み、中央部と、該中央部を挟む両側部における磁化容易方向が互いに直交した圧粉体を得ることを特徴とする複数磁化ユニット永久磁石の製造方法が記載されている(請求項8等参照)。また、圧粉体を焼結することによって複数磁化ユニット永久磁石が得られると記載されている(0059段落等参照)。
そして、このような複数磁化ユニット永久磁石は複数の磁気異方性を単一の永久磁石内に備えているため、磁化方向の異なる複数の永久磁石を配列して構成されるハルバッハ磁気回路を少ない永久磁石によって構成できると記載されている(0021段落等参照)。
また、このようなR-Fe-B系焼結磁石ユニットの製造方法として、主面に対して直交する配向方向を有する第1R-Fe-B系焼結磁石を準備する工程と、主面の直交方向に対して所定の角度傾いている配向方向を有する第2R-Fe-B系焼結磁石を準備する工程と、前記第1R-Fe-B系焼結磁石の主面に配向方向が向くように第2R-Fe-B系焼結磁石を前記第1R-Fe-B系焼結磁石の両端部に、接着剤や非磁性体のボルト等を用いて接続するR-Fe-B系焼結磁石ユニットの組立工程と、前記R-Fe-B系焼結磁石ユニットの外表面角部を面取りする工程と、前記R-Fe-B系焼結磁石ユニットの外表面を、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、Al、Niのいずれかにて被膜するR-Fe-B系焼結磁石ユニットの被膜形成工程と、からなるR-Fe-B系焼結磁石ユニットの製造方法が記載されている(請求項4、0032段落等参照)。
そして、リニアモータ用磁気回路において、ハルバッハ磁気回路を構成するR-Fe-B系焼結磁石をユニットにして、そのユニット外表面に被膜を形成することで、着磁後のヨークへの接合の際、主に中央部に磁石主面に対して直交する配向方向を有しているR-Fe-B系焼結磁石への面取り工程を省略したことによる面取り量の削減、磁気的隙間の減少や焼結磁石の位置ズレの発生が抑えられる。その結果、あらかじめ設定した計算値に近い磁界強度のリニアモータ用磁気回路を精度よくかつ効率よく作製することができると記載されている(0017段落等参照)。
すなわち、本発明の目的は、より磁束密度(Br)が高いハルバッハ配列構成用の永久磁石を効率的に製造できる永久磁石の製造方法を提供することである。また、より磁束密度(Br)が高いハルバッハ配列構成用の永久磁石を得ることができる。
本発明は以下の(1)~(6)である。
(1)R-T-B構造の主相を有する希土類永久磁石であって、
0.90以上の配向度で特定方向Xへ配向しているエリアAと、
そのエリアAに隣接し、0.90以上の配向度で特定方向Yへ配向しているエリアBとからなり、
前記エリアAと前記エリアBとが一体に成形されていて、
特定方向Xと特定方向Yとのなす角度が20~90度である永久磁石。
(2)前記主相は、アスペクト比が1.2以上の扁平状結晶粒からなり、前記扁平状結晶粒の短手方向が前記特定方向Xまたは前記特定方向Yとなるように並んだ組織を備える、上記(1)に記載の永久磁石。
(3)前記扁平状結晶粒の最大径が2μm以下である、上記(2)に記載の永久磁石。
(4)磁石用粉末に圧密加工を施して予備成形体を得る成形工程と、
前記予備成形体における部分aについて特定方向Xへ1.0以上の圧縮ひずみを加え、同時に部分bについて特定方向Yへ1.0以上の圧縮ひずみを加える熱間押出を行う熱間押出工程と、
を備え、上記(1)~(3)のいずれかに記載の永久磁石を得る、永久磁石の製造方法。
(5)磁石用粉末に圧密加工を施して圧粉成形体を得る圧密工程と、
前記圧粉成形体における特定方向へ圧縮ひずみを加え、配向された熱間加工体を得る熱間加工工程と、
2つの前記熱間加工体を単一化金型の内部へ装入し、0.5未満の圧縮ひずみを加える加熱・加圧処理を施して一体に成形する単一化工程と、
を備え、上記(1)~(3)のいずれかに記載の永久磁石を得る、永久磁石の製造方法。
(6)磁石用粉末を金型に充填し、特定方向に磁場を印加しながら圧密加工を施し、配向済圧粉体を得る磁場プレス工程と、
前記配向済圧粉体を加熱し、配向された焼結体を得る焼結工程と、
2つの前記焼結体を単一化金型の内部へ装入し、0.5未満の圧縮ひずみを加える加熱・加圧処理を施して一体に成形する単一化工程と、
を備え、上記(1)~(3)のいずれかに記載の永久磁石を得る、永久磁石の製造方法。
本発明は、R-T-B構造の主相を有する希土類永久磁石であって、0.90以上の配向度で特定方向Xへ配向しているエリアAと、そのエリアAに隣接し、0.90以上の配向度で特定方向Yへ配向しているエリアBとからなり、前記エリアAと前記エリアBとが一体に成形されていて、特定方向Xと特定方向Yとのなす角度が20~90度である永久磁石である。
このような永久磁石を、以下では「本発明の永久磁石」ともいう。
このような永久磁石の製造方法を、以下では「本発明の第1の製造方法」ともいう。
このような永久磁石の製造方法を、以下では「本発明の第2の製造方法」ともいう。
このような永久磁石の製造方法を、以下では「本発明の第3の製造方法」ともいう。
本発明の永久磁石について説明する。
本発明の永久磁石は、R-T-B構造の主相を有する希土類永久磁石である。
ここで、R-T-B構造とは、希土類元素(R)、遷移元素(T)およびホウ素(B)を主とする結晶構造を意味する。
希土類元素(R)としてはNd、Pr、Dy、Tbを好適例として挙げられる。
遷移元素(T)としてはFe、Co、Niを好適例として挙げられる。
なお、本発明の永久磁石の組成は、ICP分析によって把握することができる。
初めに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、以下の条件にて磁石の観察を行う。
観察倍率:20,000倍
観察条件:2次電子像
観察方向:配向方向に垂直な方向
画像処理条件:針状比
画像処理領域:約740nm×640nm
このようにして50個の結晶粒の各々についてアスペクト比を測定し、これを単純平均して得た値を、その磁石の主相を構成する扁平状結晶粒のアスペクト比とする。
本発明の永久磁石をSEMを用いて観察して得たSEM像(20,000倍)において、主相が占める割合(面積割合)は、おおむね80%以上であることが好ましく、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
本発明の永久磁石はCuを0.1質量%以下含んでもよい。熱間成形性が向上する傾向があるからである。
本発明の永久磁石はGaを0.5質量%以下含んでもよい。熱間成形性が向上する傾向があるからである。
本発明の永久磁石が含み得る不可避的不純物としては元素としてCu、Ga、Al、Si、O、C、N、Hが挙げられる。これらの元素の含有率はCu<0.05%、Ga<0.15%、Al<0.05%、Si<0.15%、O<0.04%、C<0.03%、N<0.003%、H<0.006%であることが好ましい。
図1(I)は本発明の永久磁石の例示であり、図1(II)は、図1(I)におけるD-D'線断面図である。
本発明の永久磁石は、図1に示すように、本発明の永久磁石10はエリアAおよびエリアBからなる。
ただし、図中の点線はエリアAとエリアBとの境界を示す仮想線であり、実際には存在しない。
また、図1(II)における矢印は、配向方向と特定方向Xおよび特定方向Yとを示すものであり、実際には存在しない。
また、高さhは、5~150mmであることが好ましく、20~100mmであることがより好ましく、30~70mmであることがさらに好ましい。
また、長手方向におけるエリアAの幅n1およびエリアBの幅n2も特に限定されず、各々、2~15mmであることが好ましく、3~10mmであることがより好ましく、7~8mmであることがさらに好ましい。
永久磁石の残留磁束密度(Br)および飽和磁束密度(Js)は、パルス励磁型磁気特性測定装置(例えば、東英工業社製、TPM-2-08s25VT)を用い、反磁界補正をして測定する。ここで測定温度(RT)は23℃とする。
ミクロ観察の試料準備として、以下の条件にて準備を行う。
<ミクロ観察準備>
観察試料の切り出し位置:磁石のエリアAとエリアBの界面が含まれる位置
切り出し試料形状 :直方体
観察面:熱間加工時の圧縮方向に対し垂直、かつ、エリアAとエリアBの界面を含む面
このような条件にてミクロ観察用の試料を作製し、観察に使用する。
<ミクロ観察方法>
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、以下の条件にて磁石の観察を行う。
観察倍率:20,000倍
観察条件:2次電子像
観察方向:熱間加工時の圧縮方向に対し、垂直な方向
観察基準面:直方体試料の6面から観察面及び観察面と平行な面を除いた4面のうち、エリアA-エリアBの界面と交わる面の1つ
このような条件にて観察して得られる画像上において、1つの結晶粒の最大径を構成する直線(長軸)を定め、長軸に直交する直線(短軸)を引き、観察基準面とその短軸方向の角度を磁石の配向方向(配向角度)とする。
このようにして50個の結晶粒の各々について配向方向(配向角度)を測定し、これを単純平均して得た値を、その磁石およびその領域(エリア)の配向方向(配向角度)とする。
そして、特定方向Xと特定方向Yとの差、すなわち、図1(II)に示す状態において特定方向Xに対して特定方向Yがなす角度は20~90度であり、30~90度であることが好ましく、45~90度であることがより好ましい。
このような本発明の永久磁石は、ハルバッハ配列を構成するために、好ましく用いることができる。
このような態様を、本発明の永久磁石では、エリアAとエリアBとが一体に成形されている態様と考えている。
なお、このような態様の本発明の永久磁石は、本発明の第1の製造方法によって製造することができる。
このような態様を、本発明の永久磁石では、エリアAとエリアBとが一体に成形されている態様と考えている。
なお、このような態様の本発明の永久磁石は、本発明の第2の製造方法によって製造することができる。
このような態様を、本発明の永久磁石では、エリアAとエリアBとが一体に成形されている態様と考えている。
なお、このような態様の本発明の永久磁石は、本発明の第3の製造方法によって製造することができる。
本発明の第1の製造方法について説明する。
本発明の第1の製造方法は、成形工程と、熱間押出工程とを備える。
本発明の第1の製造方法において成形工程では、原料として磁石用粉末を用いる。
磁石用粉末は、溶解した母合金を回転ロール上に噴射し、超急冷することにより微細な結晶組織を持つ薄帯を得て、この薄帯を150μm以下に粉砕して得ることができる。
母合金の組成は特に限定されず、本発明の永久磁石を得ることができる組成であればよい。通常、希土類元素(R)-遷移元素(T)-ホウ素(B)系の磁石用粉末を用いる。
図2において予備成形体1は、2つの角柱の側面同士を結合したような形状を有し、その長手方向に垂直方向の断面はT字型である。ここで2つの直方体の一方を「部分a」、他方を「部分b」とする。
図3において予備成形体1は、1つの角柱(部分a)と、断面が菱形の柱(部分b)との側面同士を結合したような形状を有している。また、その長手方向に垂直方向の断面は、図2の場合(T字型)とはやや異なる形状を備える。
本発明の第1の製造方法において熱間押出工程では、前述の成形工程によって得られた予備成形体に特定の熱間押出加工を施す。予備成形体に熱間押出加工を施すと、圧縮ひずみ方向が磁化容易軸と平行となる。
図4に示す配向金型5は、上部の挿入口51から図2に示した予備成形体1を挿入し、これを下部の排出口53へ向かって押し出すことで、予備成形体1における部分aおよび部分bの各々に連続的に圧縮ひずみを加えることができる金型である。また、部分aは部分bとは異なる方向から圧縮ひずみを加えることができるように構成されている。図4に示す配向金型5を用いた場合、具体的には、予備成形体1の部分aにおける圧縮ひずみの方向と、部分bにおける圧縮ひずみの方向とは垂直(90度)となる。なお、図4における(I)~(III)は、配向金型5の各部における押し出し方向に垂直方向の断面を表している。
そして、図4に示す配向金型5を好ましくはアルゴンガス雰囲気中または減圧雰囲気中に載置し、好ましくは700~900℃に加熱して温度を一定に保ちながら、上部の挿入口51から図2に示した予備成形体1を挿入し、これに最大で30ton/cm2の圧力を加えて下部の排出口53へ向かって押し出す。ここで挿入から排出までの時間が300秒以内となるように連続的に熱間押出加工を行うことが好ましい。
配向金型5に挿入された予備成形体1は、図4における(I)、(II)の各々の部分においては、図5の(i)、(ii)の各々に示すような断面形状を備え、図中に矢印で示すような圧縮ひずみが加えられる。そして、図4における(III)の部分(排出口53の部分)において、配向金型5の内部では、断面が図5の(iii)の示すような形状を備え、図中に矢印で示す方向に配向している永久磁石が形成されている。
図6に示す配向金型5は、上部の挿入口51から図3に示した予備成形体1を挿入し、これを下部の排出口53へ向かって押し出すことで、予備成形体1における部分aおよび部分bの各々に連続的に圧縮ひずみを加えることができる金型である。また、部分aは部分bとは異なる方向から圧縮ひずみを加えることができるように構成されている。図6に示す配向金型5を用いた場合、具体的には、予備成形体1の部分aにおける圧縮ひずみの方向と、部分bにおける圧縮ひずみの方向とは45度となる。なお、図6における(I)~(III)は、配向金型5における押し出し方向に垂直方向の断面を表している。
そして、図6に示す配向金型5を好ましくはアルゴンガス雰囲気中または減圧雰囲気中に載置し、好ましくは700~900℃に加熱して温度を一定に保ちながら、上部の挿入口51から図3に示した予備成形体1を挿入し、これに最大で30ton/cm2の圧力を加えて下部の排出口53へ向かって押し出す。ここで挿入から排出までの時間が300秒以内となるように連続的に熱間押出加工を行うことが好ましい。
配向金型5に挿入された予備成形体1は、図6における(I)、(II)の各々の部分においては、図7の(i)、(ii)の各々に示すような断面形状を備え、図中に矢印で示すような圧縮ひずみが加えられる。そして、図6における(III)の部分(排出口53の部分)において、配向金型5の内部では、断面が図7の(iii)の示すような形状を備え、図中に矢印で示す方向に配向している永久磁石が形成されている。
なお、歪量は、圧縮ひずみを加える方向における加工後の長さ(t)に対する加工前の長さ(t0)の比の自然対数(ln(t0/t))を意味する。
本発明の第2の製造方法について説明する。
本発明の第2の製造方法は、圧密工程と、熱間加工工程と、単一化工程とを備える。
本発明の第2の製造方法において圧密工程では、原料として磁石用粉末を用いる。
磁石用粉末は、本発明の第1の製造方法において用いた磁石用粉末と同様のものを用いることができる。
本発明の第2の製造方法では、圧密工程によって得られた圧粉成形体に熱間加工を施す。
熱間加工工程では、圧粉成形体における特定方向に圧縮ひずみを加える熱間加工を施す。これによって、圧縮ひずみ方向が磁化容易軸と平行となる。
ここで歪量は1.0~10.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましい。
熱間加工温度は700~900℃とすることが好ましい。また、圧粉成形体には300秒以内の時間、最大で30ton/cm2の圧力を加えることで圧縮ひずみを加えることが好ましい。
例えば、立方体形状の熱間加工体を切り出す場合、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向かって配向している熱間加工体を2つ切り出して、これらの次の単一化工程に供することが可能である。
また、例えば、立方体形状の熱間加工体を切り出す場合、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向かって配向している熱間加工体と、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向う方向に対して45度をなす方向に配向している熱間加工体との2つを切り出して、これらの次の単一化工程に供することが可能である。
本発明の第2の製造方法では、上記の熱間加工工程によって得られた2つの熱間加工体を単一化金型の内部へ装入する。
単一化金型について図8を用いて説明する。
図8(i)は、2つの熱間加工体10α、10βを単一化金型20へ装入した状態を上部から見た図(概略図)である。
図8(i)に示すように、2つの熱間加工体10α、10βは、各々の配向方向が異なるように(図8に示す場合は各々の配向方向がなす角度が45度となるように)、かつ、その側面12αと側面12βとが密着した状態で単一化金型20に装入されている。そして、熱間加工体10αにおいて、その側面12αに対向する面14αは、単一化金型20における支持部22αに密着されている。同様に、熱間加工体10βにおいて、その側面12βに対向する面14βは、単一化金型20における支持部22βに密着されている。
単一化金型20は支持部22α、22βの他に、2つの押出部24を有する。2つの押出部24は、熱間加工体10α、10βにおける側面12α、12βおよび側面14α、14βとは別の側面へ、2つの熱間加工体10を挟み込むように応力を加えることができる。そして、この応力を加えた場合に、支持部22α、22βは移動しないように構成されている。
なお、2つの熱間加工体10α、10βに加熱・加圧処理を施す際の歪量は0.05以上であることが好ましい。
また、2つの熱間加工体には300秒以内の時間、最大で10ton/cm2の圧力を加えることが好ましい。
本発明の第3の製造方法について説明する。
本発明の第3の製造方法は、磁場プレス工程と、焼結工程と、単一化工程とを備える。
本発明の第3の製造方法において磁場プレス工程では、原料として磁石用粉末を用いる。
磁石用粉末は、本発明の第1の製造方法において用いた磁石用粉末と同様のものを用いることができる。
ここで冷間プレスは室温(20±15℃)にて行うことが好ましい。
また、プレス圧力は特に限定されないが、1~20ton/cm2であってよく、3ton/cm2程度であってよい。
また、プレス時間も特に限定されないが、3~30秒であってよく、3秒程度であってよい。
本発明の第3の製造方法では、磁場プレス工程によって得られた配向済圧粉体を加熱して焼結する。
焼結工程では、アルゴンガス雰囲気中または減圧雰囲気中にて、配向済圧粉体を加熱することが好ましい。
加熱温度は900~1200℃とすることが好ましい。
例えば、立方体形状の焼結体を切り出す場合、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向かって配向している焼結体を2つ切り出して、これらの次の単一化工程に供することが可能である。
また、例えば、立方体形状の焼結体を切り出す場合、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向かって配向している焼結体と、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向う方向に対して45度をなす方向に配向している焼結体との2つを切り出して、これらの次の単一化工程に供することが可能である。
本発明の第3の製造方法では、上記の焼結工程によって得られた2つの焼結体を単一化金型の内部へ装入し、0.5未満の圧縮ひずみを加える加熱・加圧処理を施して一体に成形する。
本発明の第3の製造方法における単一化工程は、本発明の第2の製造方法における単一化工程と同様であってよい。本発明の第2の製造方法の単一化工程における処理対象物は熱間加工体であるが、本発明の第3の製造方法の単一化工程では、処理対象物が焼結体に代わるものである。
Nd、Fe、Bを主成分(合計割合が90質量%以上)とする母合金を1500℃で溶解した後、その溶湯をオリフィスからCrめっきを施したCu製の回転ロールに射出(回転ロール周速度:30m/秒)し、急冷合金薄帯を作製した。この急冷合金薄帯をカッターミルで粉砕して篩分けし、最大粒径が150μm以下の磁石用粉末(原料粉)を作製した。そして、この磁石用粉末を冷間プレス機の金型に装填し、大気中において3ton/cm2の圧力を加え、3秒間保時して成形する圧密加工を行い、図2に示す棒状の予備成形体1を作製した。
具体的には、以下の条件により走査型電子顕微鏡による各磁石の観察を行った。
観察倍率:20,000倍
装置:S-4700、日立ハイテクノロジーズ社製
観察条件:2次電子像
観察方向:配向方向に垂直な方向
粒径確認方法:画像処理(winROOF、三谷商事株式会社)
画像処理条件:針状比
画像処理領域:約740nm×640nm
このようにして50個の結晶粒の各々についてアスペクト比を測定し、これを単純平均して得た値をその磁石の主相を構成する扁平状結晶粒のアスペクト比とした。
なお、実施例1の結晶粒径は、最大径1μm以下であった。以下、実施例2~9において同様の結果となった。
結果を第1表および第2表に示す。
実施例1では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が1.0となる金型を用いたが、実施例2では、この圧縮ひずみ(歪量)が2.0となる金型を用いた。そして、それ以外は実施例1と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例1では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が1.0となる金型を用いたが、実施例3では、この圧縮ひずみ(歪量)が3.0となる金型を用いた。そして、それ以外は実施例1と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例1と同様の方法によって磁石用粉末(原料粉)を作製した。そして、この磁石用粉末を冷間プレス機の金型に装填し、大気中において3ton/cm2の圧力を加え、3秒間保時して成形する圧密加工を行い、圧粉成形体を作製した。
なお、熱間加工温度は700~900℃とした。また、圧粉成形体には300秒以内の時間、最大で30ton/cm2の圧力を加えた。
ここで、図8(i)に示すように、2つの熱間加工体10α、10βは、各々の配向方向が異なるように(実施例4の場合は各々の配向方向がなす角度が45度となるように)、かつ、その側面12αと側面12βとが密着した状態で単一化金型20に装入した。
また、熱間加工体10αにおいて、その側面12αに対向する面14αは、単一化金型20における支持部22αに密着させた。同様に、熱間加工体10βにおいて、その側面12βに対向する面14βは、単一化金型20における支持部22βに密着させた。
そして、2つの押出部24によって、2つの熱間加工体10α、10βに、歪量が0.05となる加熱・加圧処理を施した。
なお、加熱・加圧処理における加熱温度は700~900℃とした。また、2つの熱間加工体には300秒以内の時間、最大で30ton/cm2の圧力を加えた。
また、実施例1と同様の方法によって、得られた永久磁石をエリアAの部分とエリアBの部分との各々における残留磁束密度(Br)および飽和磁束密度(Js)を測定し、配向度(Br/Js)を算出した。
結果を第1表および第2表に示す。
実施例4では、得られた熱間加工体から、立方体形状の2つの熱間加工体を切り出す際に、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向う方向に対して45度をなす方向に配向している熱間加工体を切り出したが、実施例5では、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向かって配向している熱間加工体を2つ切り出した。
そして、この2つ熱間加工体を、図9(i)に示す単一化金型20へ装入した。図9(i)は図8(i)と同様、得られた2つの熱間加工体10α、10βを単一化金型20へ装入した状態を上部から見た図(概略図)である。
図9(i)に示すように、2つの熱間加工体10α、10βは、各々の配向方向が異なるように(実施例5の場合は各々の配向方向がなす角度が90度となるように)、かつ、側面12αと側面12βとが密着した状態で単一化金型に装入した。
そして、これら以外については実施例4と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例4では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例6では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.1となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例4と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例5では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例7では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.1となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例5と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例4では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例8では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.2となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例4と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例5では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例9では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.2となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例5と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例1と同様の方法によって磁石用粉末(原料粉)を作製した。そして、この磁石用粉末を金型に装填し、特定方向に磁場を印加しながら冷間プレスを行い、配向済圧粉体を得た。ここでプレス圧力は3ton/cm2であり、プレス時間は3秒以内とした。
そして、実施例4の場合と同様にして、2つの焼結体に歪量が0.05となる加熱・加圧処理を施した。
なお、加熱・加圧処理における加熱温度は700~900℃とした。また、2つの焼結体には300秒以内の時間、最大で30ton/cm2の圧力を加えた。
また、実施例1と同様の方法によって、得られた永久磁石をエリアAの部分とエリアBの部分との各々における残留磁束密度(Br)および飽和磁束密度(Js)を測定し、配向度(Br/Js)を算出した。
結果を第1表および第2表に示す。
実施例10では、得られた焼結体から、立方体形状の2つの焼結体を切り出す際に、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向う方向に対して45度をなす方向に配向している焼結体を切り出したが、実施例11では、立方体形状の特定の面から、その面に対向する面へ向かって配向している焼結体を2つ切り出した。
そして、実施例5の場合と同様にして、2つの焼結体に歪量が0.05となる加熱・加圧処理を施した。
なお、加熱・加圧処理における加熱温度は700~900℃とした。また、2つの焼結体には300秒以内の時間、最大で30ton/cm2の圧力を加えた。
また、実施例1と同様の方法によって、得られた永久磁石をエリアAの部分とエリアBの部分との各々における残留磁束密度(Br)および飽和磁束密度(Js)を測定し、配向度(Br/Js)を算出した。
結果を第1表および第2表に示す。
実施例10では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例12では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.1となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例10と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例11では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例13では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.1となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例11と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例10では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例14では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.2となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例10と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例11では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、実施例15では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.2となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例11と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例1では、図2に示した予備成形体1を図4に示す配向金型5に挿入して熱間加工する際に、予備成形体1における部分aの圧縮ひずみの方向と、部分bの圧縮ひずみの方向とは垂直(90度)となった。これに対して比較例1では、予備成形体における部分aの圧縮ひずみの方向と、部分bの圧縮ひずみの方向とが水平(0度)となるようにした。
そして、それ以外は実施例1と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例1では配向金型5をアルゴンガス雰囲気中または減圧雰囲気中にて700~900℃に加熱し、温度を一定に保ちながら、予備成形体1を挿入し、押し出したが、比較例2では配向金型5をアルゴンガス雰囲気中または減圧雰囲気中にて950℃に加熱し、温度を一定に保ちながら、予備成形体1を挿入し、押し出した。
そして、それ以外は実施例1と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例1では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が1.0となる配向金型5を用いたが、比較例3では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.75となる金型を用いた。そして、それ以外は実施例1と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例4では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、比較例4では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.5となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例4と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例5では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、比較例5では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.5となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例5と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例10では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、比較例6では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.5となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例10と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例11では、得られる永久磁石のエリアAおよびエリアBにおける圧縮ひずみ(歪量)が0.05となるように加熱・加圧処理を施したが、比較例7では、この圧縮ひずみ(歪量)が0.5となるように加熱・加圧処理を施した。そして、それ以外は実施例11と同じ実験を行った。
各種測定結果を第1表および第2表に示す。
実施例4~9は、本発明の第2の製造方法によって、本発明の永久磁石を得た例である。
実施例10~15は、本発明の第3の製造方法によって、本発明の永久磁石を得た例である。
エリアAとエリアBの残留磁束密度の差は、0.1以下である。
エリアAとエリアBの配向度の差は、0.01以下である。
比較例2では実施例1~15とは異なり、高温かつ長時間金型内に滞留する製造方法によって製造しているため、結晶粒が扁平形状から球形状に粒成長し、低アスペクト比となった。そのため、圧縮方向に結晶粒が配向せず、結果として、エリアAおよびエリアBの配向度が0.90未満となった。
比較例3は、予備成形体に加えられる圧縮ひずみが1.0未満と低い。この場合、得られる永久磁石におけるエリアBの配向度が低くなった。エリアAおよびエリアBの磁気特性に差異が大きいと、その永久磁石はハルバッハ配列にて用いることに適さない。
比較例4、5は、熱間加工体に加えられる圧縮ひずみが0.5であり、高い。この場合、得られる永久磁石におけるエリアBの配向度が低くなった。エリアAおよびエリアBの磁気特性に差異が大きいと、その永久磁石はハルバッハ配列にて用いることに適さない。
比較例6、7は、焼結体に加えられる圧縮ひずみが0.5であり、高い。この場合、得られる永久磁石におけるエリアBの配向度が低くなった。エリアAおよびエリアBの磁気特性に差異が大きいと、その永久磁石はハルバッハ配列にて用いることに適さない。
5 配向金型
51 挿入口
53 排出口
10 本発明の永久磁石(好適態様)
10α、10β 熱間加工体
12α、12β 熱間加工体の側面
14α、14β 熱間加工体の別の側面
20 単一化金型
22α、22β 単一化金型の支持部
24 押出部
m 本発明の永久磁石の長さ
h 本発明の永久磁石の高さ
n1 本発明の永久磁石の長手方向におけるエリアAの幅
n2 本発明の永久磁石の長手方向におけるエリアBの幅
Claims (6)
- R-T-B構造の主相を有する希土類永久磁石であって、
0.90以上の配向度で特定方向Xへ配向しているエリアAと、
そのエリアAに隣接し、0.90以上の配向度で特定方向Yへ配向しているエリアBとからなり、
前記エリアAと前記エリアBとが一体に成形されていて、
特定方向Xと特定方向Yとのなす角度が20~90度である永久磁石。 - 前記主相は、アスペクト比が1.2以上の扁平状結晶粒からなり、前記扁平状結晶粒の短手方向が前記特定方向Xまたは前記特定方向Yとなるように並んだ組織を備える、請求項1に記載の永久磁石。
- 前記扁平状結晶粒の最大径が2μm以下である、請求項2に記載の永久磁石。
- 磁石用粉末に圧密加工を施して予備成形体を得る成形工程と、
前記予備成形体における部分aについて特定方向Xへ1.0以上の圧縮ひずみを加え、同時に部分bについて特定方向Yへ1.0以上の圧縮ひずみを加える熱間押出を行う熱間押出工程と、
を備え、請求項1~3のいずれかに記載の永久磁石を得る、永久磁石の製造方法。 - 磁石用粉末に圧密加工を施して圧粉成形体を得る圧密工程と、
前記圧粉成形体における特定方向へ圧縮ひずみを加え、配向された熱間加工体を得る熱間加工工程と、
2つの前記熱間加工体を単一化金型の内部へ装入し、0.5未満の圧縮ひずみを加える加熱・加圧処理を施して一体に成形する単一化工程と、
を備え、請求項1~3のいずれかに記載の永久磁石を得る、永久磁石の製造方法。 - 磁石用粉末を金型に充填し、特定方向に磁場を印加しながら圧密加工を施し、配向済圧粉体を得る磁場プレス工程と、
前記配向済圧粉体を加熱し、配向された焼結体を得る焼結工程と、
2つの前記焼結体を単一化金型の内部へ装入し、0.5未満の圧縮ひずみを加える加熱・加圧処理を施して一体に成形する単一化工程と、
を備え、請求項1~3のいずれかに記載の永久磁石を得る、永久磁石の製造方法。
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